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特許7418420熱エネルギー分配システムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】熱エネルギー分配システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24D 10/00 20220101AFI20240112BHJP
【FI】
F24D10/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021517972
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019076684
(87)【国際公開番号】W WO2020074337
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】18199127.4
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500377871
【氏名又は名称】エー.オン、スベリゲ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】E.ON Sverige Aktiebolag
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ペール、ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ、スゴクストレム
(72)【発明者】
【氏名】フレードリク、ローゼンクビスト
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223394(JP,A)
【文献】特開2014-181846(JP,A)
【文献】特開2013-119973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギー分配システムを制御するための方法であって、前記システムは、
熱および/または冷房を流体ベースで分配するための分配グリッド(110)と、
熱および/または冷房を生成するための、ならびに、前記熱および/または前記冷房を前記分配グリッド(110)に送達するための、1または複数の生成プラント(120)と、
複数のローカル制御ユニット(140)であって、それぞれのローカル制御ユニット(140)は、複数の建物(200)内のローカル分配システム(150)の各々と関連付けられ、前記ローカル分配システム(150)の各々は、配置されたそれぞれの建物(200)内に快適な暖房および/または快適な冷房を分配するように構成されており、それぞれのローカル制御ユニット(140)は更に、前記分配グリッド(110)からの前記関連付けられたローカル分配システム(150)の熱の取出しを制御するように構成されている、複数のローカル制御ユニット(140)とを含み、 前記方法は、
前記分配グリッド(110)に接続されたローカル分配システムによる、前記分配グリッド(110)からの経時的に予想される全体的な熱および/または冷房の取出しに関する、ならびに前記1または複数の生成プラント(120)内の予想される熱および/または冷房の生成能力に関する予測データを決定することであって、前記予測データが、前記分配グリッド(110)からの前記ローカル分配システムの前記全体的な熱および/または冷房の取出しに関する、予め記録された時間分解されたデータを含む、ことと、
時間分解された制御信号を制御サーバ(130)で決定することであって、前記制御信号は前記予測データに基づいており、前記ローカル制御ユニットのうちの少なくとも1つのローカル制御ユニットと関連付けられ、前記時間分解された制御信号は、暖房または冷房の設定点温度として使用される基準となるステアリング温度に対する温度オフセットに関する情報を含むことと、
前記制御サーバ(130)からの前記制御信号を、前記ローカル制御ユニットのうちの前記少なくとも1つのローカル制御ユニットのそれぞれに送信することと、
前記ローカル制御ユニット(140)のうちの前記少なくとも1つのローカル制御ユニットのそれぞれで、前記制御信号を受信することと、
対応する建物(200)の外側の温度に基づいて、前記関連付けられたローカル分配システム(150)のための対応する基準となるステアリング温度を、前記ローカル制御ユニット(140)のうちの前記少なくとも1つで決定することと、
前記対応する基準となるステアリング温度と、前記時間分解された制御信号の前記温度オフセットとに基づいて、対応するステアリング温度を、前記ローカル制御ユニット(140)のうちの前記少なくとも1つで決定することと、
前記決定されたステアリング温度に基づいて、前記分配グリッド(110)からの前記ローカル分配システム(150)の熱および/または冷房の前記取出しを経時的に調整することとを含む、方法。
【請求項2】
前記予測データが、天気予報に関する情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予測データが、前記分配グリッド(110)からの1または複数の特定のローカル分配システムの熱および/または冷房の前記取出しに関する、予め記録された時間分解されたデータを更に含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
予測データを決定する動作が、建物(200)の種類に関するデータを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記時間分解された制御信号が、定期的に送信される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記時間分解された制御信号が、定期的に送信される時間分解された制御信号の送信と送信の間の期間よりも長い、好ましくは少なくとも5倍長い時間長を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記時間分解された制御信号が、前記分配グリッド(110)からの前記ローカル分配システム(150)の熱および/または冷房の前記取出しの需要の上昇が予測される前に、前記分配グリッド(110)からの前記ローカル分配システム(150)の熱および/または冷房の前記取出しの変更を前記ローカル制御ユニット(140)が開始するように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
熱エネルギー分配システムであって、前記システムは、
熱および/または冷房を流体ベースで分配するための分配グリッド(110)と、
熱および/または冷房を生成するための、ならびに、前記熱および/または前記冷房を前記分配グリッド(110)に送達するための、1または複数の生成プラント(120)と、
複数のローカル制御ユニット(140)であって、それぞれのローカル制御ユニット(140)は、複数の建物(200)内のローカル分配システム(150)の各々と関連付けられ、前記ローカル分配システム(150)の各々は、配置されたそれぞれの建物(200)内に快適な暖房および/または快適な冷房を分配するように構成されており、それぞれのローカル制御ユニットは更に、前記分配グリッド(110)からの前記関連付けられたローカル分配システム(150)の熱の取出しを制御するように構成されている、複数のローカル制御ユニット(140)と、
前記分配グリッド(110)に接続されたローカル分配システムによる、前記分配グリッド(110)からの経時的に予想される全体的な熱および/または冷房の取出しに関する、ならびに前記1または複数の生成プラント(120)内の予想される熱および/または冷房の生成能力に関する予測データを決定するように構成される、予測サーバであって、前記予測データが、前記分配グリッド(110)からの前記ローカル分配システムの前記全体的な熱および/または冷房の取出しに関する、予め記録された時間分解されたデータを含む、予測サーバと、
時間分解された制御信号を決定するように構成されている制御サーバ(130)であって、前記制御信号は前記予測データに基づいており、前記ローカル制御ユニットのうちの少なくとも1つと関連付けられ、前記時間分解された制御信号は、暖房または冷房の設定点温度として使用される基準となるステアリング温度に対する温度オフセットに関する情報を含む、制御サーバ(130)とを含み、
前記制御サーバ(130)は、前記制御サーバ(130)から前記制御信号を送信するように構成される送信器を含み、
それぞれのローカル制御ユニットは、
前記制御サーバ(130)から送信される制御信号を受信するように構成される、受信器(145)と、
前記基準となるステアリング温度と、前記受信された制御信号の前記温度オフセットとに基づいてステアリング温度を決定するために、前記ローカル制御ユニット(140)により制御される前記ローカル分配システム(150)の前記建物(200)の外側の温度に基づいた基準となるステアリング温度を決定し、前記決定されたステアリング温度に基づいて、前記分配グリッド(110)からの前記ローカル分配システム(150)の熱および/または冷房の前記取出しを調整するように構成される、レギュレータとを含む、熱エネルギー分配システム。
【請求項9】
分配グリッド(110)に接続されたローカル分配システムによる、前記分配グリッド(110)からの経時的に予想される全体的な熱および/または冷房の取出しに関する、ならびに、熱および/または冷房を生成し、前記熱および/または前記冷房を前記分配グリッド(110)に送達するように構成されている生成プラント(120)内の予想される熱および/または冷房の生成能力に関する予測データを決定し、前記予測データが、前記分配グリッド(110)からの前記ローカル分配システムの前記全体的な熱および/または冷房の取出しに関する、予め記録された時間分解されたデータを含むものであり、
複数のローカル制御ユニットのそれぞれに対して、時間分解された制御信号を決定し、前記制御信号は前記予測データに基づいており、対応するローカル制御ユニットと関連付けられ、前記時間分解された制御信号は、建物(200)内の暖房または冷房の設定点温度として使用される基準となるステアリング温度に対する温度オフセットに関する情報を含み、
前記決定された制御信号を、前記対応するローカル制御ユニットに送信するように構成される、制御サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー分配システムを制御するための方法に関する。本発明はまた、熱エネルギー分配システムに関する。
【背景技術】
【0002】
快適な暖房/冷房の分野において、快適な暖房または冷房に対する需要が外部要因に大きく依存する可能性があることは周知の事実である。例えば、寒い日、または猛吹雪もしくは暴風雨などの気象イベントのある日には、快適な暖房に対する需要が高くなり得る。住宅用建物の居住者が一般的により多くの集団で集まることで、住宅を占領することのない休日に、快適な暖房に対する需要が減少する可能性がある。また、スポーツイベントまたはパレードなどのイベントでは、居住者が大勢で家を空けることもある。速効性のある暖房システムは通常、それよりも遅いそれらの同等品を稼働させるよりも高額であり、環境に優しいものではないため、需要におけるピークを処理しなければならないときに問題が発生する。例えば、石油またはガスのヒーターは、より環境に優しい地熱暖房よりも早く動作させることができる。更に、需要を補うためにこのヒーターを最大能力で稼働させるには、高額となる可能性がある。冷房システムも同様に、非常によく晴れた日などの気象イベントによって、そのようなサービスの需要が促進される可能性がある。少なくともこれらの理由のために、快適な暖房および/または冷房を送達するための、より効率的な方法が求められている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、上記で言及された問題のうちのいくつかを少なくとも軽減することである。この目的は、熱エネルギー分配システムを制御するための方法によって達成され、システムは、
熱および/または冷房を流体ベースで分配するための分配グリッドと、
熱および/または冷房を生成するための、ならびに、熱および/または冷房を分配グリッドに送達するための、1または複数の生成プラントと、
複数のローカル制御ユニットであって、それぞれのローカル制御ユニットは、建物内のローカル分配システムと関連付けられ、ローカル分配システムは、1または複数の建物内に快適な暖房および/または快適な冷房を分配するように構成されており、それぞれのローカル制御ユニットは更に、分配グリッドからの関連付けられたローカル分配システムの熱の取出しを制御するように構成されている、複数のローカル制御ユニットとを含み、
方法は、
分配グリッドに接続されたローカル分配システムによる、分配グリッドからの経時的に予想される全体的な熱/および冷房の取出しに関する、ならびに1または複数の生成プラント内の予想される熱および/または冷房の生成能力に関する予測データを決定することと、
時間分解された制御信号を制御サーバで決定することであって、制御信号は予測データに基づいており、このローカル制御ユニットのうちの少なくとも1つと関連付けられていることと、
制御信号を、制御サーバから関連付けられたローカル制御ユニットに送信することと、
関連付けられたローカル制御ユニットで、制御信号を受信することと、
制御信号に応答して、分配グリッドからのローカル分配システムの熱および/または冷房の取出しを経時的に調整することとを含む。
【0004】
この方法によって、例えば気象イベントなどの環境イベントによる、および/または消費者の習慣による需要のピークの予測を用いて、ローカル分配システム内の生成プラントなどの暖房もしくは冷房施設を効率的に利用することができる。例えば、朝の時間帯に水道水を暖めるための予想される熱の取出しのピークに応答して、朝の時間帯の間に快適な暖房のための熱の取出しを減少させる制御信号を送信することにより、更なる生成プラントを作動させる必要性を回避することができる。例えば、生成プラントの予測されるダウンタイムの間に、快適な暖房のための熱の取出しを一時的に減少させることができる。予測データを使用して熱および/または冷房の取出しを調整することによって、かつ、時間分解された制御信号を使用することによって、生成プラントによって認識される全体的な需要ピークを平滑化、あるいは相殺することが可能となる。予測データを使用することによって、かつ、時間分解された制御信号を使用することによって、必要とされる周波数、および制御サーバとローカル制御ユニットとの間の通信の必要とされる稼働時間に関しての必要条件を低減させることができる。予測データを有し、熱および/または冷房の取出しを経時的に調整することによって、更なる生成プラントを作動させなければならない回数を減少させることができる。その上、この方法は、生成プラントによって認識される全体的な需要ピークを平滑化することができるため、この方法を利用して、更なる生成プラントを作動させるための実際のニーズに対して、予想を越える需要ピークによって更なる生成プラントを作動させることがこれから必要となるという認識から、時間を延長することも可能となり、それによって、需要ピークに応答して、よりゆっくりした応答時間を有する、より環境に優しい生成プラントを開始させることができる。
【0005】
予測データは、天気予報に関する情報を含んでもよい。このようにして、嵐、猛吹雪、または熱波などの事象を、より効率的に補うことができる。
【0006】
予測データは、分配グリッドからのローカル分配システムの全体的な熱および/または冷房の取出しに関する、予め記録された時間分解されたデータを含んでもよい。これにより、特定の現象、または容易に予測される現象に紐付かない、微妙な天気の変動などの、規則的ではあるが予想することが困難な場合がある需要ピークを補うことが可能となり得る。これにより、天候に関係するものではないが、営業日、休日などの規則的な現象、またはスポーツイベントなどの同様に快適な暖房/冷房が必要となる変則的な現象を補うことも可能となる。いくつかのこのような予め記録された時間分解されたデータは、天候データから切り離されている場合があるということに注目されるであろう。それは、例えば、その日が休日なのか、または営業日なのかによって、全体的な暖房/冷房への要求における全体的な差異が左右されることに関連し得る。いくつかのこのようなデータは、時間分解された制御信号が、予め記録されたデータと天気予報との関連性に基づき得るように、天候データに関連付けられて予め記録されていてもよい。例えば、特定の気象現象により、その日が休日なのかまたは営業日なのかに左右される全体的な熱および/または冷房の取出しが、どのように異なる結果となり得るのかを考慮に入れることができる。
【0007】
予測データは更に、分配グリッドからの1または複数の特定のローカル分配システムの熱および/または冷房の取出しに関する、予め記録された時間分解されたデータを含み得る。これにより、局所的な現象に起因した需要ピークを補うことが可能になり得る。例えば、大型のショッピングセンターには終夜営業キャンペーンがある場合があり、または局所的な需要ピークの原因となる、他の類似したイベントが発生する場合がある。このような需要ピークは、例えば、そのローカル分配システムへの暖房または冷房の供給を局所的に増加させるか、および/または周囲のローカル分配システムからの取出しを一時的に減少させるきっかけとなり得る。分配グリッドからの1または複数の特定のローカル分配システムの熱および/または冷房の取出しに関する、この予め記録された時間分解されたデータは、分配グリッドからのローカル分配システムの全体的な熱および/または冷房の取出しに関する予め記録された時間分解されたデータを天候データと切り離すことができるか、または関連付けることができる方法と同様な方法で、天候データと切り離すことができるか、または関連付けることができる。
【0008】
予測データを決定する動作には、建物の種類に関するデータが含まれていてもよい。建物の種類は、住宅用建物、商業用建物、一戸建て、またはアパートのうちの1つであってよい。異なる種類の建物では、上記で言及された現象のそれぞれに対して異なるように反応し得る。従って、例えば、猛吹雪が集合住宅よりも一戸建てに影響を及ぼすということが事前に分かっている場合、一戸建てが多数あることが分かっている地区は、分配グリッドから熱を引き出すことが可能であってもよい一方で、予想される全体的な熱の取出し、および予想される生成能力に関する予測データにより、更なる生成プラントが指示されるか、そうでない場合は更なる生成プラントを短い期間に配備することが必要となることが指示される場合、集合住宅は、それらの熱の取出しを一時的に減少させるように制御される。
【0009】
予測データを決定する動作は、追加的にまたは代替的に、個々の建物からの履歴の消費データを使用することを含んでもよい。予測データを決定する動作は、追加的にまたは代替的に、個々の建物からの予測された消費データを使用することを含んでもよい。
【0010】
方法は、対応する建物の外側の温度を測定することを更に含んでもよく、それぞれのローカル制御ユニットは、測定された対応する建物の外側の温度に基づいて、関連付けられたローカル分配システムの分配グリッドからの熱の取出しを制御するように構成されていてもよい。これは、システムからの熱の取出しをより効率的に行うことができるという利点を有する。
【0011】
方法は、測定された建物の外側の温度に基づいて、関連付けられたローカル分配システムの基準となるステアリング温度(steering temperature)を、対応するローカル制御ユニットで決定することを更に含んでもよい。このようにして、建物の外側の温度に取出しを適応させることができる。例えば、建物の外側の温度が比較的低い場合、熱の取出しは比較的高くてもよく、それに対応して、建物の外側の温度が比較的高い場合、熱の取出しは比較的低くてもよい。別の実施例によれば、建物の外側の温度が比較的低い場合、冷熱の取出しは比較的低くてもよく、それに対応して、建物の外側の温度が比較的高い場合、冷熱の取出しは比較的高くてもよい。
【0012】
基準となるステアリング温度は、ローカル分配システム内の熱伝達流体の供給温度を調整する、レギュレータの設定点温度であってよい。
【0013】
レギュレータは、熱伝達流体の供給温度を調整するのに適切な、任意の種類のレギュレータであってよい。例えば、レギュレータは、P、PI、PD、PIDコントローラ、またはより高度なカスケードコントローラであってよい。熱伝達流体は、熱および冷熱を伝達するために、どちらにも使用してもよいことが理解されよう。このように、レギュレータは、ローカル分配システムの熱または冷熱の取出しまたはその使用に影響し得る。
【0014】
対応するローカル制御ユニットへの制御信号には、温度オフセットに関する情報が含まれていてもよく、方法は更に、測定された建物の外側の温度および温度オフセットに基づいて、減少したステアリング温度を決定することを含んでもよい。
【0015】
減少したステアリング温度は、少なくとも1つのローカル制御ユニットで決定することができる。ローカル制御ユニットは、例えば、測定された建物の外側の温度、および設定された所望の室内温度などの局所的な要因を考慮に入れた、基準となるステアリング温度を決定し、次いで、受信された温度オフセットに基づいて減少したステアリング温度を決定してもよい。少なくとも1つのローカル制御ユニットは、減少したステアリング温度に基づいて、分配グリッドからの関連付けられたローカル分配システムの熱の取出しを制御するように構成されてもよい。従って、分配グリッドからの関連付けられたローカル分配システムの熱の取出しが減少し得る。これにより、分配グリッドからの更なる均一な熱の取出しが達成され得る結果となる。更に、分配グリッドからの熱の取出しの需要が高いときには、異なる時間に分配グリッドから熱を引き出すことができるようにすることにより、大部分の、またはすべてのローカル分配システムが、少なくともいくらかの熱を得ることができるか、または代替的に熱を配分することができるということを確実にすることができる。分配グリッドからの冷熱の取出しについて、同じことが適用される。
【0016】
時間分解された制御信号は、定期的に送信されていてもよい。このように、方法は、より最新の予測に依拠することと、制御サーバとローカル制御ユニットとの間の通信を最小化することとをうまく両立させることができる。
【0017】
時間分解された制御信号は、時間分解された制御信号の送信と送信の間の期間よりも長い、好ましくは少なくとも5倍長い時間長を有してもよい。これにより、例えば、制御信号を送信する役割を果たすサーバとの連絡が絶たれた場合であっても、多くの場合、あまり最新でない予想というのは、電力のステアリングの予測によらない方法に戻るよりも、それでもまだよいものであるため、効率性を向上させることが可能となる。
【0018】
熱エネルギー分配システムを制御するための方法は、端的には、分配グリッドに接続されたローカル分配システムによる、分配グリッドからの経時的に予想される全体的な熱/および冷房の取出しに関する、ならびに1または複数の生成プラント内の予想される熱および/または冷房の生成能力に関する予測データを決定することと、時間分解された制御信号を制御サーバで決定することであって、制御信号は予測データに基づいており、少なくとも1つのローカル制御ユニットと関連付けられていることと、制御信号を、制御サーバから関連付けられたローカル制御ユニットに送信することと、関連付けられたローカル制御ユニットで、制御信号を受信することと、制御信号に応答して、分配グリッドからのローカル分配システムの熱および/または冷房の取出しを経時的に調整することとを含むと言うことができる。
【0019】
更に、熱エネルギー分配システムが提供される。システムは、
熱および/または冷房を流体ベースで分配するための分配グリッドと、
熱および/または冷房を生成するための、ならびに、熱および/または冷房を分配グリッドに送達するための、1または複数の生成プラントと、
複数のローカル制御ユニットであって、それぞれのローカル制御ユニットは、建物内のローカル分配システムと関連付けられ、ローカル分配システムは、1または複数の建物内に、快適な暖房および/または快適な冷房を分配するように構成されており、それぞれのローカル制御ユニットは更に、分配グリッドからの関連付けられたローカル分配システムの熱の取出しを制御するように構成されている、複数のローカル制御ユニットと、
分配グリッドに接続されたローカル分配システムによる、分配グリッドからの経時的に予想される全体的な熱/および冷房の取出しに関する、ならびに1または複数の生成プラント内の予想される熱および/または冷房の生成能力に関する予測データを決定するように構成される、予測サーバと、
時間分解された制御信号を決定するように構成された制御サーバであって、制御信号は予測データに基づいており、このローカル制御ユニットのうちの少なくとも1つと関連付けられている、制御サーバと、
制御サーバから制御信号を送信するように構成される、送信器と、
制御信号を受信するように構成される、受信器と、
分配グリッドからのローカル分配システムの熱および/または冷房の取出しを調整するように構成される、レギュレータとを含む。
【0020】
上記で言及される方法の特徴は、適用可能であれば、熱エネルギー分配システムにも適用される。過度な繰り返しを避けるため、上記を参照されたい。
【0021】
本発明の更なる適用性の範囲は、下記で与えられる発明を実施するための形態により明らかになるであろう。しかしながら、発明を実施するための形態および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に実例として与えられているということを理解すべきであり、これによって、この発明を実施するための形態から、本発明の範囲内の種々の変更および変形が、当業者には明らかとなるであろう。
【0022】
従って、デバイスおよび方法は変更される可能性があるため、本発明は、特定の記載されたデバイスの構成部品、または記載された方法の動作に限定されるものではないことを理解すべきである。本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈によって明確に指示されない限り、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1つまたは複数の要素があることを意味するものと意図されるということに留意しなければならない。従って、例えば、「ユニット(a unit)」または「ユニット(the unit)」に対する言及は、いくつかのデバイス等を含み得る。更に、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」という語、および類似の表現は、他の要素または工程を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】熱エネルギー分配システムの概略図である。
図2】熱エネルギー分配システム内のローカル分配システムの概略図である。
図3】熱エネルギー分配システムを制御するための方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、本発明の好ましい実施形態を示す、添付の概略図を参照して、一例としてより詳細に本発明を説明する。
【0025】
図1は、熱エネルギー分配グリッド110および生成プラント120を含む、熱エネルギー分配システムを示す。分配グリッド110は、生成プラント120から暖房または冷房媒体を提供する主管路111と、暖房または冷房媒体を生成プラント120に輸送する戻り管路112とを含む。暖房または冷房媒体は、生成プラント120における暖房または冷房に適切な、主管路111と戻り管路112によって輸送することができる、水などの任意の流体であってよい。暖房または冷房媒体は、これ以降は「熱流体」と称する。生成プラント120は、地熱プラント、流体を加熱もしくは冷却する電気を動力源とするプラントであってもよく、または、ガスもしくはオイルなどの燃料を燃焼することによって駆動されるものであってもよい。重要なのは、生成プラント120が暖房または冷房媒体を加熱または冷却し、これを分配グリッド110に送り出すように構成されているという点だけである。分配グリッド110は、2つ以上の生成プラント120を含んでもよい。熱エネルギーグリッド110は、建物200a、200bに接続されている。建物200a、200bは、生成プラント120に対して異なる距離に位置している。建物200は、住宅用建物、商用または事務所用建物、アパート、一戸建てまたは工業用建物などの、熱エネルギーグリッド110に接続するのに好適な任意の種類の建物であってよい。
【0026】
熱エネルギー分配システムは、建物200に接続されたローカル分配システム150を含む。ローカル分配システム150は、建物200内部の暖房または冷房を分配するように構成されており、ラジエータ、空調ユニット、および建物200内部の温度を調整するように構成された他のデバイスを含んでもよい。ローカル分配システム150は、複数の建物200または1棟の建物200にサービスを提供することができる。ローカル分配システム150は、建物200の内部に配置されていてもよい。ローカル分配システム150は、建物200の外部に少なくとも部分的に配置されていてもよい。ローカル分配システム150は、ローカル制御ユニット140に関連付けられている。ローカル制御ユニット140は、分配グリッド110から建物200への暖房または冷房の取出しを調整するように構成されている。
【0027】
図2には、ローカル分配システム150がより詳細に示されている。熱流体は、主管路111から熱/冷熱抽出器155に流れ込む。熱/冷熱抽出器155は、熱交換器であってよい。あるいは、熱抽出器155はヒートポンプであってよい。熱/冷熱抽出器155は、主管路111の熱流体の流れから、熱/冷熱を抽出するように構成されている。熱/冷熱抽出器155は、抽出された熱/冷熱を、主管路111の熱流体の流れから、ローカル分配システム150のローカル熱流体に渡すように構成されている。ローカル分配システム150のローカル熱流体は、ラジエータまたは空調ユニットなどの熱的要素156に送り出される。熱的要素156は、建物200内部の暖気または冷気に適応する、任意のデバイスであってよい。ローカル制御ユニット140は、一対の熱センサ(図示せず)に接続され、循環して熱的要素156に入る熱流体のステアリング温度Tsteerを感知し、循環して熱的要素156から出る熱流体の戻り温度Tretを感知するように適応されている。ローカル制御ユニット140は、建物200を所望の温度まで加熱または冷却するように、ステアリング温度Tsteerおよび戻り温度Tretを使用して熱交換器155を調整する。熱的要素156を通る熱流体の流れを調整する、バルブなどのレギュレータ(図示せず)によって調整が行われる。また、ローカル制御ユニット140には温度計170が接続されている。温度計170は建物200の外側の大気温度を測定するものであり、この大気温度を、ローカル制御ユニット140がより正確に建物200内部の温度を調整するために使用することができる。ローカル制御ユニット140は、設定点温度として使用される、基準となるステアリング温度Tsteerを設定する。設定点温度と所望の温度との間の温度オフセットを決定することによって調整が行われる。オフセットは、設定点温度に加算される温度の値であり得る。この温度の値は、正であっても、または負であってもよく、建物200内の暖房または冷房に対する要望を反映している。オフセットはまた、設定点温度に適用される百分率値であってよい。設定点温度と、建物の外側の温度と、温度オフセットに基づいて、減少したステアリング温度が決定される。この減少したステアリング温度は、レギュレータを制御するために使用される。建物200内部の温度の調整は、レギュレータによって制御することができる限りにおいて、無論、異なる様式で行うことができる。
【0028】
図1には更に、予測サーバ180が示されている。予測サーバ180は、建物200による熱エネルギー分配グリッド110の使用に影響を及ぼし得る、予測されたイベントに関する予測データを決定するように構成されている。このようなイベントとは、例えば、気象イベントのことであってよい。また、そのようなイベントとは、建物に入ったり出たりする多数の人々を予測することで、建物による分配グリッド110の使用に影響を及ぼし得るイベント、例えばスポーツイベント、祝祭日、買い物イベント等であってもよい。予測サーバ180はまた、分配グリッド110からの履歴となる熱流体の取出しに関するデータを決定する。このことは、例えば、履歴の記録を調べることにより、かつ、これらに基づいて推定を行うことによって実行することができる。例えば、クリスマスイブに、送達グリッド110からの取出しが過去5年間で通常よりも20%高かった場合、予測サーバ180は、今年も同様、クリスマスイブに取出しが20%高くなるという影響があるものとして予測データを決定してもよい。このことは単なる例に過ぎず、分配グリッド110からの予想される熱流体の取出し、および/または生成プラント120の予想される能力に関係する限りにおいて、任意の高度化レベルを有する任意の方法によって予測データを生成してもよい。履歴データは、分配グリッド110に接続された特定のローカル制御ユニット140の取出しだけでなく、分配グリッド110からの全体的な取出しにも関係し得る。予測データには、建物200の種類の情報が含まれていてもよい。この情報は、特定の気象イベントが、ある種類の建物には大きく影響を及ぼす可能性があるものの、他の建物ではそうでないような値であってもよい。例えば、ショッピングモールでは、予想される大雨によって訪問客の大幅な減少が見られる場合があり、これにより、分配グリッド110からの熱の取出しを増加させることが必要となる。これは、ショッピングモールを訪れる人が少なくなる可能性が最も高くなるためである。ショッピングモール内に人が少ないと、人自身ではショッピングモール自体を温められず、ショッピングモールにいる客の室内環境を好ましいものにするために、更なる暖房が必要となる。
【0029】
建物200、生成プラント120、および予測サーバ180はすべて、制御サーバ130に接続されている。制御サーバ130は、ローカル分配システム150および予測サーバ180からの測定値を受信するように適応されている。制御サーバ130は、送信器(図示せず)によって建物200内部のレギュレータ(図示せず)に伝達される、時間分解された制御信号を決定するように構成されている。測定値は、受信器145によってローカル分配システムで受信される。時間分解された制御信号は、例えば、ローカル制御ユニット140への入力値を含有するデータ配列であってもよい。ローカル制御ユニット140は、この場合、データ配列内の次の値を使用して、例えば制御信号の時間分解能が時間であれば、1時間ごとに建物200内部の温度を調整する。制御信号の時間分解能は、分、秒、日、または熱制御システムで使用するのに好適な任意の他の時間枠によるものであってよく、その場合、ローカル制御ユニット140は、時間分解能に応じた周波数で温度を調整する。
【0030】
制御サーバ130は、時間分解された制御信号を生成するために、予測サーバ180からの予測データだけでなく、他の入力も使用する。このような他の入力とは、例えば、建物200内部の所望の温度、生成プラント120の能力、気象データ、アキュムレータのエネルギーレベル、地面/土壌の温度、風力予測データ、地理測位データ、電力消費量、または他のパラメータであってよい。いくつかの異なる方法で予測データを使用してもよい。1つの可能性としては、例えば蛇口からの給湯の取出しの増加が予想される場合に、分配グリッド110からの取出しを少し前に減少させることが可能となることであり、これは、要求が増大するときに、暖められた水の需要により速やかに対応することができることを意味する。快適な暖房または冷房の取出しの増加が予想される場合、例えば、建物200に特定の角度で日光が射す期間、または人々が仕事から建物200に帰宅する期間に、むしろローカル制御ユニット140は、分配グリッド110からの取出しを少し前に増加させて、ピークが予想されるときまでに所望の温度を達成しながら、分配グリッド110からの急激な取出しを回避するようにしてもよい。
【0031】
一実施例によれば、ローカル制御ユニット140は、快適な暖房の取出しの増加が予想されるときに、蛇口から給湯するためのアキュムレータのタンク内の水を加熱するために分配グリッド110からの熱の取出しを増加させて、快適な暖房の取出しの増加が予想される少し前に水を最高温度まで加熱するようにしてもよい。本実施例によれば、快適な暖房の取出しが増加する間に、蛇口からの給湯を生じさせるための熱の取出しを減少させることが達成され得る。従って、快適な熱の取出しが増加することが予想される間に、分配グリッド110からの熱の取出しの総需要が低下する。
【0032】
生成プラント120が何らかの方法で生成が減少するような機能不全に陥った場合、制御サーバ130は、時間分解された制御信号を異なるローカル分配システム150に調整することが可能であり、これにより、分配システム110からの取出しを、建物200a、200bの全体にわたってより均一に配分するように協働させることができる。このことは、生成プラント120の能力が、いくつかの建物200a、200bの全体にわたってより公平に配分されることに寄与し、それぞれの建物では、快適な暖房または冷房の低下がより小さくなるのを体験する。これは、生成プラント120に近い建物200aがそれほど深刻でない取出しの低下を体験する一方で、生成プラント120から遠く離れて配置されている建物200bでは、深刻な取出しの低下を体験することとは対称的である。
【0033】
制御サーバ130は、特定の期間、例えば1週間の、ローカル制御ユニット140の時間分解された制御信号を計算する。しかしながら、制御サーバ130は、これよりも頻繁に、例えば毎日、新規の時間分解された制御信号でローカル制御ユニット140を更新してもよい。これにより、ローカル制御ユニット140と制御サーバ130との間の不必要な通信を避けながらも、新規の情報がタイムリーに用いられることに寄与する。
【0034】
上記に基づいて、熱エネルギー分配システム110を制御するための方法を実行することができる。まず、S1で予測データを決定する。S2で時間分解された制御信号を決定する制御サーバ130に、データを送信する。S3で制御サーバ130からローカル制御ユニット140に制御信号を送信し、S4ではローカル制御ユニット140でデータを受信する。S5で、ローカル制御ユニット140が、分配グリッド110からのローカル分配システム150の熱および/または冷房の取出しを経時的に調整する。図3は、このような方法のフロー図を示すものである。
【0035】
本明細書に記載される実施形態の多数の変形が存在するが、これらの変形は、依然として添付の特許請求の範囲によって規定されるように本発明の範囲内にあるということが想定される。
【0036】
例えば、ローカル分配システム150は、例えば、更なるヒートポンプ150および熱的要素156を建物200に追加することにより、2つ以上の建物200を含み得るということに留意されたい。また、ローカル分配システム150は、2つ以上の建物200に接続されていてもよい。
図1
図2
図3