(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ガスアトマイズ金属粉末の連続生産のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/08 20060101AFI20240112BHJP
C22B 9/04 20060101ALI20240112BHJP
C22B 9/20 20060101ALI20240112BHJP
F27D 11/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B22F9/08 A
C22B9/04
C22B9/20
F27D11/06 Z
(21)【出願番号】P 2021533379
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 US2019047345
(87)【国際公開番号】W WO2020041370
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521075273
【氏名又は名称】ビーメタル コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】521075077
【氏名又は名称】テノヴァ エッセ.ピ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケンパー、ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ハンシッカー、テリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒラー、グス
(72)【発明者】
【氏名】シュープ、カイル
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108650(JP,A)
【文献】特開2016-029195(JP,A)
【文献】特開昭60-187459(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104232898(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00,9/08
C21C 5/52
C22B 9/04,9/16,9/20
F27D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトマイズ金属粉末を
連続生産する方法であって、
a)金属を含む原材料を
電気アーク炉に供給するステップと、
b)前記原材料を
制御された温度で溶融金属に溶融
して、前記
電気アーク炉内
で前記溶融金属の上部に形成される別個の液体スラグの層として不純物
および介在物を除去するステップと、
c)前記
電気アーク炉を傾斜させ、前記
電気アーク炉に形成された注ぎ口または出銑口の少なくとも1つを通して液体金属を注湯することにより、前記溶融金属を前記
電気アーク炉から
第1の受動加熱可能な取鍋内に取り出すステップと、
d)溶融金属で満たされた前記
第1の受動加熱可能な取鍋を
第1の誘導加熱された精製保持容器
に移動するステップであって、前記
第1の誘導加熱された精製保持容器は、第1の電磁場を生成し、前記
第1の誘導加熱された精製保持容器内部で誘導的に熱を生成し、前記
第1の受動加熱可能な取鍋の内部で前記溶融金属をさらに加熱し、それによって前記溶融金属を液体状態に維持するように構成されるステップと、
e)前記
第1の誘導加熱された精製保持容器
を精製ステーションを通して移動させて真空酸素脱炭プロセスを適用し、前記液体金属から望ましくない不純物、介在物、またはガスを除去すると同時に、前記溶融金属を誘導加熱することによって、前記第1の電磁場で前記
第1の受動加熱可能な取鍋内に保持された前記溶融金属の温度を制御する
とともに前記液体金属を撹拌するステップと、
f)
ステップa)からe)までを、第2の受動加熱可能な取鍋および第2の誘導加熱された精製保持容器を用いて繰り返すステップと、
g)
制御された真空および不活性雰囲気チャンバを有し、内部に加熱されたタンディッシュを含むガスアトマイズ器ステーションを準備するステップであって、前記制御された真空および不活性雰囲気チャンバは、第1の受容領域からの第1のドアおよび第2の受容領域からの第2のドアを介して前記制御された真空および不活性雰囲気チャンバへのアクセスを提供するステップと、
前記
第1の受動加熱可能な取鍋を、
前記精製ステーションの前記
第1の誘導加熱された精製保持容器から、ガスアトマイズ器の第1の受容領
域に位置する
第1の誘導加熱アトマイズ器保持容器
の空洞内部に移動させるステップであって、前記
第1の誘導加熱アトマイズ器保持容器は、第2の電磁場を生成し、それによって前記
第1の受動加熱可能な取鍋を介して、前記
第1の誘導加熱アトマイズ器保持容器の前記空洞内部で誘導的に熱を生成し、それによって前記溶融金属を液体状態に維持するようにも構成されるステップと、
h)
前記第2の受動加熱可能な取鍋を、前記精製ステーションにある前記第2の誘導加熱された精製保持容器から、ガスアトマイズ器の第2の受容領域に位置する第2の誘導加熱アトマイズ器保持容器の空洞内部に移動させるステップであって、前記第2の誘導加熱アトマイズ器保持容器は、第3の電磁場を生成し、それによって前記第2の受動加熱可能な取鍋を介して、前記第2の誘導加熱アトマイズ器保持容器の前記空洞内部で誘導的に熱を生成し、それによって前記溶融金属を液体状態に維持するように構成されるステップと、
i)
前記第1の受容領域内に位置する第1の誘導加熱アトマイズ保持容器を傾斜させ、内部に溶融金属を含む前記第1の受動加熱可能な取鍋を、前記第1のドアを通して、前記制御された真空および不活性雰囲気チャンバを通して、前記加熱されたタンディッシュに向けて運び、前記第1の誘導加熱アトマイズ保持容器から前記第1の受動加熱可能な取鍋内部の前記溶融金属を誘導加熱することができる電磁場を印加し、前記加熱されたタンディッシュに入る前記溶融金属を加熱することによって、前記第1の受動加熱可能な取鍋内の前記溶融金属の温度を制御し続けながら、前記加熱されたタンディッシュ内の金属の最小レベルを維持するように制御された速度で、前記第1の誘導加熱アトマイズ保持容器に含まれ、前記第1の受容領域内に位置する前記第1の受動加熱可能な取鍋から、前記第1のドアを通って、前記加熱されたタンディッシュに前記溶融金属を注湯するステップと、
j)
前記第1の受動加熱可能な取鍋によって提供され、前記加熱されたタンディッシュから流出する液体金属の流れに、前記加熱されたタンディッシュに結合されたノズルを通して高圧不活性ガスを印加して、アトマイズチャンバ内に液滴のスプレーを生成し、前記液滴が冷却して前記アトマイズチャンバ内に形成された円錐形の底部に落ちるときに球形を形成するステップと、
k)前記第2の受容領域内に位置する第2の誘導加熱アトマイズ保持容器を傾斜させ、内部に溶融金属を含む前記第2の受動加熱可能な取鍋を、前記第2のドアを通して、前記制御された真空および不活性雰囲気チャンバを通して、前記加熱されたタンディッシュに向けて運び、前記第2の受動加熱可能な取鍋内部の前記溶融金属を誘導加熱することができる電磁場を印加し、前記加熱されたタンディッシュに入る前記溶融金属を加熱することによって、前記第2の受動加熱可能な取鍋内の前記溶融金属の温度を制御し続けながら、前記加熱されたタンディッシュ内の金属の最小レベルを維持するように制御された速度で、前記第2の誘導加熱アトマイズ保持容器に含まれ、前記第2の受容領域内に位置する前記第2の受動加熱可能な取鍋から、前記第2のドアを通って、前記加熱されたタンディッシュに前記溶融金属を注湯するステップであって、前記第2の誘導加熱アトマイズ保持容器を傾斜させることは、前記第1の誘導加熱アトマイズ保持容器が前記加熱されたタンディッシュ内への溶融金属の注湯が完了した後に行われるステップと、
l)前記第2の受動加熱可能な取鍋によって提供され、前記加熱されたタンディッシュから流出する液体金属の流れに、前記ノズルを通して高圧不活性ガスを印加して、前記アトマイズチャンバ内に液滴のスプレーを生成し、前記液滴が冷却して前記アトマイズチャンバ内に形成された前記円錐形の底部に落ちるときに球形を形成するステップと、
m)排出ホッパーを介して前記アトマイズチャンバから球状粉末を取り出すステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記
電気アーク炉をスラグドアに向けて傾斜させ、前記別個の液体スラグを前記
電気アーク炉からスラグポットに注湯することを可能にすることによって、前記
電気アーク炉から
前記第1の受動加熱可能な取鍋
または前記第2の受動加熱可能な取鍋内に前記溶融金属を取り出すステップc)の前に、前記別個の液体スラグの層が前記
電気アーク炉から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
第1の受動加熱可能な取鍋
及び前記第2の受動加熱可能な取鍋は、電磁放射波長に対して大部分が透過的であり、それによって内部に含まれる前記液体金属が、前記受動加熱可能な取鍋自体を過熱することなく、電磁エネルギーによって加熱されることを可能にする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融金属はまた、電磁場を介して前記タンディッシュ内で加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記球状粉末は、前記アトマイズチャンバから取り出され、一連のスクリーンおよびブレンダーに送られて、前記球状粉末を粒子サイズによって製品として分類する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記望ましくない不純物、介在物、またはガスは、炭素、水素、酸素、および窒素のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記精製ステーションは、真空酸素脱炭システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の受動加熱可能な取鍋及び前記第2の受動加熱可能な取鍋のうちの少なくとも1つを前記ガスアトマイズ器内から移動させて、前記第1の受動加熱可能な取鍋及び前記第2の受動加熱可能な取鍋のうちの前記少なくとも1つを電気アーク炉ステーションに戻してステップa)からi)までを繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の誘導加熱アトマイズ保持容器の機能は、前記ガスアトマイズ器ステーションによって受け取られ、処理を受けている後続の受動加熱された取鍋に対して交互にされる、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
アトマイズ金属粉末を
連続生産するためのシステムであって、
制御された真空および不活性雰囲気チャンバを有し、内部に加熱されたタンディッシュを含む
ガスアトマイズ器ステーションであって、前記制御された真空および不活性雰囲気チャンバは、少なくとも
2つの受容領域からの少なくとも1つのドアを介して少なくとも
2つの誘導加熱アトマイズ保持容器のための前記加熱されたタンディッシュへのアクセスを提供する、
ガスアトマイズ器ステーションと、
液体金属を含むように構成された少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋であって、前記少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋は、電磁放射波長に対して大部分が透過的であるため、前記少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋自体を過熱することなく、前記少なくとも
2つの誘導加熱アトマイズ保持容器によって提供される電磁場によって、前記少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋に含まれる液体金属は、前記受動加熱可能な取鍋に含まれながら加熱することができ、前記少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋から提供される溶融金属は、前記少なくとも
2つの誘導加熱アトマイズ保持容器の動作によって、前記少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋から、前記少なくとも1つのドアを通って前記制御された真空および不活性雰囲気チャンバに注湯されながら、前記加熱されたタンディッシュ内で処理される、少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋と、
前記加熱されたタンディッシュに位置するノズルであって、前記ノズルは、前記加熱されたタンディッシュか
らアトマイズチャンバに流出する溶融金属の流れに高圧不活性ガスを印加して、前記アトマイズチャンバ内に液滴のスプレーを生成し、前記液滴が冷却して前記アトマイズチャンバ内に形成された円錐形の底部に落ちるときに球形を形成するように構成された、ノズルと、
前記アトマイズチャンバか
らアトマイズ粉末を取り出すことができるように適合された、排出ホッパーと
を備え、
1つの誘導加熱アトマイズ保持容器の受動加熱可能な取鍋に含まれる液体金属は、先行する受動加熱可能な取鍋に含まれる液体金属の注湯に続いて、他の誘導加熱アトマイズ保持容器に注湯することができ、前記加熱されたタンディッシュの出力に位置するノズルは、前記加熱されたタンディッシュの出力から前記アトマイズチャンバへと流出する溶融金属の流れに高圧不活性ガスを印加して、前記アトマイズチャンバ内に液滴のスプレーを生成し、前記液滴が冷却して前記アトマイズ粉末になり、前記アトマイズチャンバ内に形成された円錐形の底部に落ちるときに球形を形成するようになっている、システム。
【請求項11】
原材料を液体金属に溶融するように機械的に適合され、原材料から生成された加熱された液体金属を
電気アーク炉の傾斜運動によって少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋に取り出すための穴または注ぎ口の少なくとも1つを有する、
電気アーク炉と、
VODおよび
少なくとも2つの誘導加熱精製保持容器を含む精製ステーションであって、前記受動加熱可能な取鍋は、精製中に配置され、望ましくない炭素、水素、酸素、窒素およびその他を含む不純物、介在物、または前記液体金属からのガスを除去するために真空酸素脱炭のプロセスが実行され、前記誘導加熱精製保持容器は、前記誘導加熱精製保持容器の内部に電磁場を生成するための電気コイルを備える、精製ステーションとをさらに備え
、
溶融金属は、前記
電気アーク炉を処理した後、および前記
ガスアトマイズ器ステーションによって処理される前の前記精製ステーションによる処理中に、前記少なくとも
2つの受動加熱可能な取鍋に運ばれるようになっている、請求項
10に記載のシステム
。
【請求項12】
分類ハードウェアを使用して前記アトマイズ粉末を取り出すように構成された排出システムをさらに有する、請求項
10に記載のシステム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、アトマイズ金属粉末を生産するためのシステムおよび方法に関するものである。より具体的には、実施形態は、ガスアトマイズ金属粉末の連続生産を可能にするシステムおよび方法に関するものである。
【0002】
また、実施形態は、積層造形、金属射出成形(「MIM」)、および金属粉末を利用する他の生産プロセスの原材料として有用なガスアトマイズ金属粉末の連続生産を可能にするシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ガスアトマイズ金属粉末は、積層造形(3D印刷)およびMIM市場で一般的に使用されている。これらの産業は、サイズ、形状、および化学的性質に関して厳しい要件を備えた非常に特殊な粉末を必要とする。物理的に、金属粉末は、制御された均一な密度、粒子サイズ、および形状を有する必要がある。これらの物理的特性により、自由流動性で高密度に充填され、粒子間の隙間を最小限に抑え、積み重ねたときに均一な層を形成できる粉末が可能になる。化学的には、粉末は非常に制御された特性を有する必要がある。例えば、ステンレス鋼および超合金粉末において、ニッケル(「Ni」)、コバルト(「Co」)、および炭素(「C」)のレベルには、非常に特定の範囲がある。この金属の化学的性質は、アトマイズ用の液体金属を作るために使用される原材料の投入によって制御することができる。粉末はまた、酸素、窒素、水素などの大気ガスが非常に少ない必要がある。これらのガスレベルも原材料の投入量によって概して制御されるが、特定の精製ステップによって、ならびにアトマイズ用の金属が高温の液相線状態になると、周囲雰囲気との接触が最小限に抑えられることを保証することによって制御することもできる。
【0004】
積層造形およびMIM市場のための適切な物理的および化学的特性を備えた金属粉末を生産および供給するために使用される主要な商業的方法は、真空誘導ガスアトマイズ(「VIGA」)と呼ばれるアプローチである。このプロセスでは、真空誘導溶解炉が不活性ガスアトマイズ器(アトマイザー)と組み合わされる。出発原材料(通常、適切な合金のプレキャストバー)は、真空下および/または不活性ガス雰囲気中で電磁誘導を使用して溶融される。均質な溶融物と適切な化学組成が達成されると、一般的に炉を傾斜させることによって材料をタンディッシュに注湯する。次に、金属の流れがタンディッシュの底部からアトマイズノズルシステムに流れ込み、そこで高圧の不活性ガスにさらされ、液滴にアトマイズされ、液滴はアトマイズチャンバ内で固化して、制御されたサイズ分布と球形の粉末を形成する。このタイプの粉末生産に関連する特許には、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4が含まれる。
【0005】
VIGA生産プロセスには、特定の欠点および非効率性がある。第一に、生産プロセスは非効率的で遅い。VIGAシステムは、金属粉末生産プロセスのすべてのフェーズを1つのユニットに組み込んでいる。溶解、精製、およびアトマイズはすべて、完全に接続され密閉された1つのユニット内で行われる。誘導溶解炉およびタンディッシュは、アトマイズチャンバに接続された真空チャンバ内に保持される。溶融炉が真空チャンバ内に密閉されると、チャンバを開けて次のヒートを溶融するために誘導炉を補充する前にプロセス全体を完了する必要がある。これは、金属粉末の生産が連続プロセスではなくバッチで行われることを意味する。金属粉末の典型的な生産工程は4時間近くかかることがあり、以下のように要約できる。
1.誘導炉に充填-5分
2.溶解-60分
3.精製-30分
4.化学組成の調整-40分
5.アトマイズ-50分(@10kg/分)
6.タンディッシュの変更-45分
【0006】
次の生産ヒートのステップ1は、6つのステップすべてが完了するまで開始できない。これは、VIGAシステムのアトマイズ部分が総稼働時間の約15~20%しか使用されていないことを意味する。第二に、誘導溶解炉は真空チャンバ内に密閉されているため、限られた化学的調整しか行えない。この欠点により、原材料として使用できる原材料の柔軟性と種類が制限される。これは、VIGAシステムの主要な原材料投入量が、アトマイズに望まれる適切な合金化学組成に非常に近いプレキャスト金属バーであることを意味する。ステンレス鋼の粉末を作るときに明らかなこの欠点の一例は、炭素含有量である。ステンレス鋼の粉末は、一般的に非常に低い炭素レベルを必要とする。誘導炉を真空チャンバ内に密閉すると、酸素注入精製によって炭素を除去することができなくなる。したがって、通常、より高価な低炭素原材料を使用する必要がある。また、スラグプロセスを通じて介在物または有害な元素を除去する機能もない。「スラッギング」は冶金学のプロセスであり、石灰(CaO)とドロマイト石灰(CaO-MgO「ドロライム」)の特定の組み合わせを溶融炉に添加して、金属が液相線になったら原材料装填物内の不純物を除去できる。これらの不純物は、ガス状の一酸化炭素としての炭素、および液体酸化物としてのシリコン、マンガン、リン、および一部の鉄で構成される可能性があり、石灰およびドロライムと結合してスラグを形成する。溶解操作の最後に、液体金属は取鍋にタップ(注湯)されるが、スラグは通常、別の開口部、ドア、または出銑口を通して除去されるため、スラグは取鍋に入る液体金属と混合しない。VIGAシステムの密閉された誘導炉には、スラグ形成剤を適切に装填する能力も、金属とは別にスラグを除去する空間または能力もない。スラグプロセスが欠けているため、誘導炉に装填できる原材料の種類が再び制限される。
【0007】
第三に、誘導炉での溶融は、真空および不活性ガスチャンバが密閉された後にのみ起こるので、各ヒートの生産を最大にするために、溶融炉は、固体で高密度の金属投入物で効率的に充填されなければならない。したがって、装填される材料の形状とサイズには制限がある。さらに、この材料の取り扱いと炉への配置は、サイズと形状に関するもう1つの制限である。最終的に、これには通常、特別なサイズのプレキャストインゴットまたはバーが必要である。これらの原材料の制限により、コストが大幅に増加し、VIGA生産システムの装填に使用できる原材料の柔軟性が低下する。これらのバーは、所望の組成、形状、およびサイズになるように事前に調製する必要がある。バーは通常、既知の溶解、精製、成形、および固化技術を使用して事前にサプライヤーによって生産され、「原材料」としてアトマイズ施設に販売される。したがって、VIGA炉のオペレータは、これらのバーおよびインゴットに割増金額を支払う必要があり、独自に作成することはできず、サプライヤーから入手できる化学組成に限定される。
【0008】
特定の他の生産システムは、より連続的な生産プロセスを作るために、および/または電気アーク炉(EAF)技術を含めるために、VIGA生産システムを改善しようと試みてきた。これらは広く利用されておらず、いくつかの独自の欠点がある。これらのシステムの例は、特許文献5、特許文献6、および特許文献7に記載されている。これらの従来の生産システムでは、溶解炉はアトマイズ器から分離しており、液体金属は取鍋で溶解ステーションからアトマイズステーションに移送される。次に、取鍋は、スライドゲートを通して液体金属をアトマイズ器にボトムポアする。ボトムポア法は、取鍋をアトマイズチャンバに物理的に接続することを可能にするので、ノズルシステムへの液体金属の排出は、周囲空気からの酸素および他の望ましくないガスの望ましくない吸収を制限するが排除しない、半制御された雰囲気で行われる。このガス吸収により、粉末は積層造形またはMIMの現在のほとんどの用途に不適切になる。
【0009】
スライドゲートシステムのさらなる欠点は、正常に動作するために特定の最小流量と金属量が必要になることである。溶銑取鍋用のスライドゲートシステムの商用サプライヤーは、最低5メートルトンの体積と毎分200キログラム/分の流量を必要とする。この流量は、現在のノズル技術が積層造形およびMIMに適した金属粉末を生産するために動作する流量(10~20kg/分)よりもはるかに大きい。さらに、現在の技術で設計されているように、システムは、取鍋が金属をアトマイズ器に直接送達するように設計されているため、取鍋からアトマイズ器への液体金属のチップ注湯は、制御された雰囲気チャンバ内で行われず、したがって、金属を酸素および窒素との望ましくないガス相互作用にさらす。このガス吸収により、粉末は積層造形またはMIMのほとんどの用途に不適切になる。
【0010】
現在の技術における別の問題は、液体金属を溶融ステーションからアトマイズステーションに輸送するとき、および取鍋からアトマイズ器にタッピングする間の取鍋の熱損失を管理することである。アトマイズするときは、液相線を超える特定の最低温度が必要である。この最小値を達成するには2つの方法がある。1つ目は、材料の移送およびタッピング中に経験されるであろういくらかの冷却を可能にするのに十分な液相線を超えるレベルの温度まで溶融時に金属を「過熱」することである。2つ目のオプションは、金属が取鍋にある間に熱を加えて、安定した温度を維持することである。過熱は、生産のタイミングまたは遅延の柔軟性を考慮せず、取鍋内の金属凝固のリスクにつながる。過熱された金属はまた、空気にさらされると材料を酸化する傾向が大きくなる。
【0011】
特許文献6に記載されているような抵抗性加熱によって、または誘導加熱によって加熱された取鍋は、より良い解決策である。しかしながら、このオプションを使用すると、重大な欠点が設計され、発生する。さらに、加熱された取鍋は、通常、特許文献6のような電気接続などの電源を備えていなければならず、誘導加熱の場合、一般的に、誘導コイルのための水冷を含まなければならない。これらの接続の各々は、取鍋と共に移送するか、または各々のステーションで切断して再接続する必要がある。これは、重大な運用上の非効率性およびリスクをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第4343750号明細書
【文献】米国特許第4272463号明細書
【文献】米国特許第3695795号明細書
【文献】米国特許第3752611号明細書
【文献】特開昭54-139870号公報
【文献】英国特許第2081748号明細書
【文献】欧州特許第3173499号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
金属粉末システムの従来技術では、特定の精製能力が存在する。しかしながら、すべての場合において、精製はEAFまたは誘導のいずれかの溶解炉で完全に完了する。溶解炉ですべての精製を行うことは、可能な精製の種類を制限し、非効率的なプロセスが作成される。精製は、溶解と同時に行うことはできず、溶解ステーションと精製ステーションが分離している場合に起きる。必要なのは、現在の最先端技術の欠点を克服することができるガスアトマイズ金属粉末の連続生産を可能にするシステムおよび方法である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下の概要は、開示された実施形態に固有の革新的な構成のいくつかの理解を容易にするために提供されており、完全な説明を意図するものではない。実施形態の様々な態様の完全な理解は、明細書、特許請求の範囲、図面、および要約の全てを全体として理解することによって得ることができる。
【0015】
実施形態は、積層造形、金属射出成形(「MIM」)、および金属粉末を利用する他の生産プロセス用の原材料として使用するためのガスアトマイズ金属粉末の連続生産方法に関するものである。
【0016】
実施形態の一構成によれば、それは、精製ステーションから溶融金属を含む受動加熱可能な取鍋を受け取るためのシステムおよび方法を提供することによって、ガスアトマイズ金属粉末の連続生産を提供し、真空酸素脱炭のプロセスを印加して、溶融金属から望ましくない不純物、介在物、またはガスを除去して、雰囲気制御ガスアトマイズ器に入れることができ、受動加熱可能な取鍋を含み、溶融金属を加熱できる誘導加熱アトマイズ器保持容器がガスアトマイズ器内で傾斜され、誘導加熱アトマイズ器保持容器からの誘導加熱によって受動加熱可能な取鍋内の液体金属の温度を制御し続けながら、同時に高圧不活性ガスをタンディッシュから流れ落ちる溶融金属の流れへノズルを通して印加しながら、溶融金属を制御された速度で加熱されたタンディッシュに注湯して、アトマイズチャンバ内で液滴のスプレーを生成し、液滴が冷却してアトマイズチャンバ内に形成された底部に落下するときに球形を形成する構成である。
【0017】
実施形態の一構成によれば、それは、金属スクラップおよび他の供給原材料の原材料装填物を電気アーク炉(「EAF」)に供給し、原材料を適切に制御された温度で液体金属に溶融して特定の不純物および介在物を別の液体スラグ層に除去し、炉を傾斜させて注ぎ口または出銑口を通して注湯することにより、誘導加熱によって温度制御された取鍋(これを本明細書では「受動加熱可能な取鍋」と呼ぶ)にEAFから金属を取り出すか、またはタッピングし、溶融金属で満たされた受動加熱可能な取鍋を精製ステーションに機械的に移動し、それによって取鍋を誘導加熱精製保持容器に入れ、密閉されたキャップを受動加熱可能な取鍋上に配置するか、または精製ステーション全体が密閉タンクまたは保持容器内に含まれ、真空酸素脱炭のプロセスを行って、液体金属中の炭素、水素、酸素、窒素、およびその他の望ましくない不純物、介在物、またはガスを除去し、受動加熱可能な取鍋を誘導加熱精製保持容器からガスアトマイズ器の誘導加熱アトマイズ器保持容器に機械的に移送し、誘導加熱アトマイズ器保持容器を機械的手段(例えば、油圧シリンダー)によってガスアトマイズ器の制御された真空および不活性雰囲気チャンバ内へ移動し、保持容器が一連のロックおよびシール(例えば、ドア)を用いて送達されるとき注湯チャンバ内の雰囲気を制御し、誘導加熱アトマイズ器保持容器からの誘導加熱による受動加熱可能な取鍋内の液体金属の温度を制御し続けながら、制御された雰囲気を含めることもできるガスアトマイズ器内の誘導加熱アトマイズ器保持容器を傾斜させて、液体金属を制御された速度で加熱されたタンディッシュに注湯して、タンディッシュ内の金属の最小レベルを維持し、タンディッシュに位置するノズルを通して高圧不活性ガスを印加してアトマイズチャンバ内に液滴のスプレーを生成し、液滴が冷却してアトマイズチャンバの円錐形の底部に落ちるときに球形を形成し、アトマイズチャンバから球状粉末を取り出し、それを一連のスクリーンおよびブレンダーに通して、球状粉末を粒子サイズで分類することを伴う生産プロセスをさらに提供する構成である。
【0018】
別の一構成によれば、EAFのスラグは、別個の開口部、ドア、または出銑口を通して除去することができるので、受動加熱可能な取鍋に入る液体金属と混合しない。
【0019】
別の一構成によれば、構造を金属または非金属のいずれかとすることができ、誘導加熱コイルからの電磁放射波長に対して大部分が透過的であり、液体金属が受動加熱可能な取鍋自体を過熱することなく、誘導によって受動加熱可能な取鍋内にある間に加熱および攪拌することを可能にする受動加熱可能な取鍋を提供することができる。この構成は、EAFを最初にタッピングした後、アトマイズ器から固体粉末が取り出されるまで、周囲の空気にさらされることなく液体金属をそれぞれの処理ステップに進めることができるため、プロセスにとって重要である。
【0020】
別の一構成によれば、溶融金属で満たされた受動加熱可能な取鍋をEAFから精製ステーションに移動するステップの後、EAFは、原材料の次の装填のために準備され、液体金属の次の生産ヒートのために溶融を再開することができる。
【0021】
別の一構成によれば、受動加熱可能な取鍋が、取鍋を加熱するために適合された誘導加熱装置(例えば、電気コイル)を備えた受動加熱された精製保持容器内に配置される精製ステーションに溶融金属で満たされた受動加熱可能な取鍋を移動するステップは、クレーンまたは他の機構を使用して達成することができる。
【0022】
さらに別の一構成によれば、密封されたキャップを受動加熱可能な取鍋または容器の上に配置することができるか、または容器全体を精製ステーションの密封されたタンク内に移動させることができ、真空酸素脱炭のプロセスを行って、液体金属中の炭素、水素、酸素、窒素、およびその他の望ましくない不純物またはガスを除去することができる。精製プロセスで生じたスラグは、スキミング、スプーニング、またはその他の方法で除去できる。
【0023】
さらに別の一構成によれば、保持容器は、実施形態に係る、受動加熱可能な取鍋で使用するのに適した誘導加熱装置を備えることができる。
【0024】
別の一構成によれば、非常に薄いスラグ層が溶融金属表面上に残り、液体金属を大気から保護することができる。
【0025】
別の一構成によれば、受動加熱可能な取鍋が精製ステーションから金属粉末を生産できるガスアトマイズ器に移送された後、精製ステーションは、次いでEAFから別の取鍋を受け取る準備ができている可能性がある。
【0026】
別の一構成によれば、アトマイズ器は、制御された真空および不活性雰囲気の注湯チャンバを有することができる。
【0027】
さらに別の一構成によれば、ガスアトマイズ器は、受動加熱可能な取鍋を通して金属を加熱するための誘導加熱装置を備えた1つまたは複数の傾斜誘導加熱アトマイズ器保持容器を含むことができる。第1の誘導加熱アトマイズ器保持容器は、アトマイズを行う制御された真空および不活性雰囲気チャンバの外側に取鍋を受け入れることができ、機械的手段(例えば、油圧シリンダー)によって制御された真空および不活性雰囲気チャンバ内に移動して、第2の誘導加熱アトマイズ器保持容器がチャンバから取り外された後で注湯することができ、第1および第2の保持容器は、チャンバ内に交互に配置し、それによって連続処理流を提供することができる。
【0028】
別の一構成によれば、アトマイズチャンバ内の雰囲気は、保持容器の位置を交互にしながら、またはそれらを移動しながら、一連のロックおよびシール(すなわち、閉じたときに開いてシールするドア)によって制御することができる。
【0029】
別の一構成によれば、液体金属は、制御された金属流としてタンディッシュの底部または開口部からアトマイズノズルシステムに供給することができる。
【0030】
別の一構成によれば、タンディッシュはまた、液体金属の温度を制御するために誘導加熱することができる。
【0031】
別の一構成によれば、第1の誘導加熱アトマイズ器保持容器は、注湯ステーションから取り外され、第1の誘導加熱アトマイズ器保持容器がアトマイズ器内で空になった後、第2の誘導加熱アトマイズ器保持容器と交換することができる。
【0032】
別の一構成によれば、タンディッシュは、アトマイズノズルシステムへの金属の連続的な流れを依然として有しながら、保持容器の切り替えのための時間を提供するのに十分な金属を保持するように構成することができる。第2の誘導加熱アトマイズ器保持容器は、第1の保持容器からの液体金属のアトマイズが完了する前に準備された精製ステーションからの液体金属で満たされた第2の受動加熱可能な取鍋を保持することができる。このように、保持容器が切り替えられている間、常に1つの保持容器は注湯され、1つは精製された液体金属を保持する次の受動加熱可能な取鍋と、アトマイズノズルシステムに供給するのに十分な液体金属を保持する最大容積を備えたタンディッシュとを受け取ることができるため、液体金属の連続的な流れが常にアトマイズに利用できる。
【0033】
前述の態様および他の目的および利点は、本明細書に記載されるように今や達成することができる。
【0034】
同様の符号が、別の図全体を通して同一または機能的に類似の要素を指し、明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図は、実施形態をさらに説明し、詳細な説明と共に、本明細書に開示される実施形態を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】実施形態の構成に係るプロセスの流れ図を示す。
【
図3】実施形態の構成に係るプロセスの流れ図を示す。
【
図4】実施形態の構成に係るプロセスの流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の非限定的な例で論じられる特定の値および構成は、変えることができ、単に1つまたは複数の実施形態を説明するために引用され、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0037】
例示的な実施形態は、具体的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、ここで以下により完全に説明される。開示された実施形態は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、実施形態の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。同様の符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0038】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」という用語は、記載された構成、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の構成、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことがさらに理解される。
【0039】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、用語は、明示的に述べられた意味を超えて、文脈において示唆または暗示される微妙な意味を有し得る。同様に、本明細書で使用される場合の「一実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らず、本明細書で使用される場合の「別の一実施形態では」という句は、必ずしも異なる実施形態を指すとは限らない。例えば、特許請求された主題は、全体的または部分的に例示的な実施形態の組み合わせを含むことが意図されている。
【0040】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される(技術用語および科学用語を含む)すべての用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈での意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された、または過度に形式的な意味で解釈されないことが理解される。
【0041】
本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬、または組成物に関して実施することができ、逆もまた同様であることが考えられる。さらに、本発明の組成物を使用して、本発明の方法を達成することができる。
【0042】
本明細書に記載の特定の実施形態は、本発明の限定としてではなく、例示として示されていることが理解されるであろう。本発明の主な構成は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態で使用することができる。当業者は、または決められた実験のみを使用して、本明細書に記載の特定の手順との等価物を多数認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、特許請求の範囲によって網羅される。
【0043】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合の「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味する場合があるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本出願全体を通して、「約」という用語は、値には、デバイスの固有の誤差変動、値を決定するために使用されている方法、または研究対象間に存在する変動が含まれることを示すために使用される。
【0044】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの任意の形態の含む(comprising))、「有する(having)」(および「有する(have)」および「有する(has)」などの任意の形態の有する(having))、「含む(includeing)」(および「含む(includes)」および「含む(include)」などの任意の形態の含む(include))、または「含有する(containing)」(および「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの任意の形式の含有する(containing))は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、引用されていない要素、または方法ステップを除外しない。
【0045】
本明細書で使用される場合の「またはそれらの組み合わせ」という用語は、その用語に先行するリストされた項目のすべての順列および組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうちの少なくとも1つを含むことを意図しており、特定の文脈で順序が重要な場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABもまた含まれる。この例を続けると、例えば、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、1つまたは複数の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。当業者は、文脈から明らかでない限り、通常、任意の組み合わせの項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0046】
本明細書に開示および特許請求されるすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして過度の実験なしに作製および実行することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して説明されているが、当業者には、バリエーションが組成物および/または方法に、および本明細書に記載の方法のステップまたはステップのシーケンスに、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく適用され得ることが明らかであろう。当業者に明らかなそのようなすべての同様の代替物および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内であると見なされる。
【0047】
ここで説明するのは、積層造形、金属射出成形(「MIM」)、および金属粉末を利用する他の生産プロセスの原材料として使用するためのガスアトマイズ金属粉末の連続生産を可能にするためのシステムおよび方法である。この説明は、実施形態の範囲を限定することを意味するものではなく、好ましい実施形態および実施形態の代替の構成を説明するために提供される。実施形態の範囲は、本明細書で提供される特許請求の範囲内に提示される。
【0048】
これらの新しいシステムおよび方法の目的は、金属粉末を生産するために使用される現在の既知の技術に関連する欠点を排除することである。具体的には、本明細書に記載のシステムおよび方法を使用して、既存の金属粉末生産方法に固有の酸化および他のガス吸収の可能性を最小限に抑えることにより、優れた品質の粉末を生産することができる。これは、取鍋自体を加熱せずに金属または原材料の誘導加熱を行うことを可能にし得る非金属または金属取鍋を使用することで実現できる。このような取鍋は、本明細書では「受動加熱可能な取鍋」と呼ばれる。これにより、任意の制御されていない不活性でない雰囲気の中で、ある容器から別の容器に液体金属を注湯する必要がなくなる。
【0049】
この生産システムの第1の目的では、プロセスを3つの主要な生産ステップ、(i)溶融、(ii)精製、および(iii)アトマイズに、そして並行して、および連続して起こる別個の活動として分離することが好ましい。これにより、スループットを劇的に向上させることができ、金属の連続流をアトマイズノズルに送ることを可能にする。また、オペレータが各生産ステップに介入して、現在利用できない程度の管理を追加できるため、品質管理を強化することもできる。特に、精製ステップは、溶解炉で行われるように制約されているだけではない場合、より高度で柔軟にすることができる。
【0050】
この生産方法の第2の目的は、ガスアトマイズ金属粉末のVIGA生産システムよりも効率および性能を改善することである。VIGAシステムは、ガスアトマイズ金属粉末の主要な商業的生産システムであるが、次のチャートに示すように、動作時間の15~20%しか金属粉末を生成しない非効率的なバッチプロセスである。
【表1】
【0051】
対照的に、提案された生産方法は、次のチャートに示すように、連続プロセスを作成することができ、それにより、システムが稼働している時間の100%で金属粉末を生産することができる。これにより、スループットが劇的に向上し、運用コストを削減できる。
【表2】
【0052】
これの第3の目的は、金属粉末を生産するための投入物として使用することができる原材料の柔軟性を高めることである。現在の生産システムは、金属粉末の所望の合金のプレキャストバーに大きく依存している。提案された生産プロセスでは、溶融金属を精製するためのEAF溶融および真空酸素脱炭(VOD)システムにより、金属スクラップおよびその他の安価な投入物の使用が可能になる。独立したEAFによりスラグの精製が可能になり、VODシステムにより大幅に強化された脱気と介在物の除去が可能になる。EAFはまた、誘導炉よりも幅広い形状と原材料密度を可能にする。
【0053】
生産システムの第4の目的は、温度および雰囲気を最大限に制御しながら、液体金属を各生産ステップに移送することである。VIGAシステムは、すべての生産ステップを単一の密閉されたアトマイズタワー内に収容し、連続的にではなくバッチで生産することにより、これら2つの目的を達成している。他の従来技術のスキームは、場合によっては大気に曝され、および/または加熱されない、底部タッピング取鍋を使用する。ガス吸収と過熱の要件は、これらの移送取鍋システムの制約である。さらに、底部タッピングを備えた取鍋は、3D印刷用の粉末を生産するために使用されるアトマイズノズルに適さない最小流量のスライドゲートシステムに依存している。提案された生産システムは、電磁放射波長に対してほぼ透過的であり、受動加熱可能な取鍋自体を過熱することなく誘導によって受動加熱可能な取鍋内にありながら液体金属を加熱および攪拌することを可能にする、構造が金属または非金属の受動加熱可能な取鍋を使用することによってこれを解決できる。この受動加熱可能な取鍋は、精製とアトマイズの両方のステップで誘導によって加熱することができる。さらに、受動加熱可能な取鍋は、アトマイズユニット内の可動保持容器に安全に持ち上げて出し入れできるため、保持容器が取鍋を受け取り、密閉された真空チャンバに移動した後にのみ、適切な流量で傾斜注湯が可能になる。溶銑をEAFからVODに、VODからアトマイズ器に単一の受動加熱可能な取鍋で輸送することにより、複数回の注湯またはタップが不要になり、効率、安全性、および製品品質が向上する。単一の受動加熱可能な取鍋プロセスは、金属が適切な化学的性質と品質仕様に精製された後、金属粉末形成プロセスを通じてそれらの特性を維持できることを保証する。これにより、既存のプロセスの品質基準の何れも犠牲にすることなく、この新しいプロセスのすべての生産性とコストのメリットが得られる。ガスアトマイズ金属粉末を生産するためのこの新しい方法の特性および利点は、
図1に示される概略フロー図およびシステムを参照するときに、よりよく理解することができる。
【0054】
図1を参照すると、六角形のラベル「1」でマークされた領域によって示される提案された生産プロセスの第1のステップは、EAF105内で金属スクラップおよび他の原材料を溶融することができる。必要に応じて水冷され、1つまたは複数のグラファイト電極107が炉に入る屋根102で覆うことができる、耐火物で裏打ちされた容器をEAF105は含むことができる。EAF105は、(i)湾曲した底部108を有する金属シェルと、(ii)シェル内の耐火物ライニング104または炉床と、(iii)1つまたは複数の電極107が通過できる、耐火物で裏打ちおよび/または水冷され得る屋根103とを含むことができる。電極107は、グラファイトで作ることができ、支持および移動システムによってEAF105の外部で制御することができる。電極107を通して電流を供給して、金属装填物によりアークを形成することができる。このアークは、金属を溶かすための熱を発生させることができる。
【0055】
EAF105は、バッチ溶融プロセスとして動作することができ、「ヒート」として知られる溶鋼のバッチを生成する。EAFの操作サイクルは、タップツータップサイクルと呼ばれ、次の操作で構成される。
・炉の準備
・炉に装填
・原材料の溶融
・液体金属の精製
・スラグドアを通したスラグ除去操作
・タッピング注ぎ口を通した溶銑タッピング
【0056】
炉の準備-炉のターンアラウンドとも呼ばれる炉の準備は、前のタッピングが完了してから、炉が次のヒートのために原材料を装填する準備ができるまでの期間である。この期間中、アームクランプの下の炉の電極の長さを調整することができ、炉の耐火物ライニングを検査して、起こりうる耐火物の損傷をチェックすることができる。必要に応じて、炉床、スラグリン、出銑口、注ぎ口の修理を行うことができる。炉の修理は、ガンによる耐火物または泥スリンガーを使用して行うことができる。
【0057】
炉に装填-主に金属スクラップおよび他の金属関連製品の原材料混合物をホッパーに装填することができ、そこでその原材料混合物は、高精度のスケールによって正確に秤量することができ、ホッパーから、例えば、ベルトおよびシュートシステムを介して、EAF105に供給することができる。金属を溶融して液体状態にしている間、原材料をEAF105に連続的に加えることができる。原材料の装填には、石灰、炭素、およびその他のフラックスも含めることができ、これらは、原材料金属材料と共に塊として装填することができるか、またはEAF105内の溶融金属によって作成された溶融浴に注入することができる。
【0058】
溶融-電流を電極107に供給することができ、原材料混合物の金属部分によってアークを作り出すことができる。電気アーク温度は3000℃に達する。原材料混合物の温度は、原材料混合物が移動しても溶融中に一定の電力入力を維持するために電極を上下させることによって調整することができる。提案されたプロセスによって生産される特定の金属グレード(ステンレス鋼、高炭素工具鋼、インコネル、その他のニッケル合金、コバルトクロム、および超合金)により、装填物内の高酸化性金属を保存するために、化学的力(すなわち、バーナーまたは酸素ランシング)の使用は非常に制限され得るか、または実際には回避され得る。最終原材料が完全に装填されて溶融すると、EAF105は「平坦な浴」の状態に達することができる。この時点で、浴の温度とサンプルを採取できる。浴の化学組成の分析により、炉のオペレータは化学組成の補正が必要かどうかを判断できる。
【0059】
EAF精製-EAF精製操作は、伝統的に、リン、硫黄、アルミニウム、ケイ素、マンガン、および炭素の除去を伴う。酸素は、アルミニウム、ケイ素、およびマンガンと反応して、スラグ成分である金属酸化物を形成する。これらの金属は、炭素の前に酸素と反応する傾向がある。理想的には、酸素はEAF105に注入されないため、原材料混合物に存在する酸化鉄(FeO)が酸素源となり、次のような反応が可能になり得る。
【化1】
【0060】
溶融浴は、通常、1600℃を超える温度に達する可能性がある。次のガスアトマイズプロセスでは、液体金属に溶解する気体の量を制限することが重要になる可能性がある。例えば、鋼に窒素が含まれている場合、1600℃では純鉄への最大溶解度は450ppmである。
【0061】
スラグ除去-スラグ除去操作は、タッピングの前に実行して、液体浴の表面からスラグを除去することができる。スラグは、原材料混合物に添加された石灰、ドロライム、およびその他のフラックスの添加によって形成され、そのスラグは、不純物から金属浴を洗浄することと、液体浴と雰囲気との間の断熱層を維持することの2つの重要な目的を果たしている。そのようなスラグは、プロセスの次のステップでは望ましくない元素を運ぶので、スラグドア110を通してEAFから除去することができる。EAF105は、スラグドア110に向かって後方に傾けることができるので、スラグは、EAF105からあふれて、ドア110を出て、スラグポット109または同等の収集装置に入る。その後、スラグを冷却させ、適切に処分することができる。多くの場合、スラグは骨材または道路の盛土として使用できるため、リサイクル可能である。
【0062】
タッピング-炉内で所望の溶銑組成および温度が達成されると、炉の注ぎ口103に形成された出銑口を開けることができ、炉を傾け、六角形のラベル「2」でマークされた領域によって示される次の操作に移すために金属を受動加熱可能な取鍋111に注湯する。タッピングプロセス中に、浴分析と所望の鋼種に基づいてバルク合金の添加が行われる。脱酸剤を添加して、さらに処理する前に酸素含有量を下げることができる。
【0063】
図1のラベル「2」でマークされた領域に示されるように、生産プロセスの第2のステップは、液体金属101のさらなる精製、脱気、および冶金学的調整のための精製ステーションであるVOD120に輸送する前に、受動加熱可能な取鍋111内の液体金属101の移送を含む。
【0064】
取鍋移送-金属がEAF105からタッピングされた後の本生産プロセスにおける重要な差別化ステップは、取鍋のタイプと、材料のVOD120精製ステーションへの、そして最終的にはアトマイズ器140への移送である。具体的には、本プロセスで使用される取鍋は、構造が金属または非金属のいずれかであり、電磁放射波長に対してほぼ透過的であり、取鍋自体を過熱することなく誘導加熱によって取鍋内にありながら液体金属を加熱することができ、したがって、取鍋は、本明細書では「受動加熱可能な取鍋」111と呼ばれる。このタイプの取鍋は、金属を周囲空気にさらす必要なしに、後続のプロセスステップに移送することができる。
【0065】
受動加熱可能な取鍋111は、処理ステーション間で容易に輸送され、待機中の誘導加熱保持容器117内に配置されるように特別に設計することができる。受動加熱可能な取鍋111は、スリーブのように誘導加熱保持容器117に嵌合できる。受動加熱取鍋111および誘導加熱保持容器117は、受動加熱可能な取鍋が所定の位置に配置されるとしっかりと嵌合するが、例えば、輸送用のクレーンによって容易に取り外すことができるように設計することができる。このようにして、誘導加熱保持容器に形成されたコイル118からの誘導加熱によって液体金属の温度を維持することができ、液体金属を取鍋から各々の下流の処理ステーションに注湯する必要はない。
【0066】
精製、脱気、および二次冶金-受動加熱可能な取鍋111は、内部に含まれる液体金属を精製ステーションであるVOD120に移送することができる。この精製ステーションは、受動加熱可能な取鍋を受け入れ、液体金属に誘導加熱および攪拌を供給するように設計された誘導加熱精製保持容器117と、真空チャンバを形成するためのタンクまたは密閉取鍋屋根122とを含むことができる。タンクまたは屋根122は、液体金属への合金の添加を可能にするためにポート123を備えて設計することができる。精製ステーションの2つの主要なステップは、次のように見ることができる。
1.(i)溶融金属の取鍋に少量のフェロアロイを添加し、必要に応じて(ii)真空条件下で酸素を注入して炭素以外の元素の酸化を防ぐことによる炭素除去による、金属組成の最終調整(VODプロセス)
2.溶融金属を真空脱気により処理することによる、水素、酸素、窒素などの溶存ガスの除去。タンク脱気の実行は、(i)液体金属中の溶存ガスの濃度を下げるため、(ii)液体金属の組成と浴温を均一化するため、および(iii)液体金属から酸化物含有物質を除去するために使用され得る。
【0067】
図1に示されるように、六角形ラベル「3」でマークされた領域において、生産プロセスの第3のステップは、受動加熱可能な取鍋111内の液体金属の、2つの誘導加熱アトマイズ器保持容器131、132のうちの1つへの移送であり、最終的にその容器を、金属粉末を処理して生産するためのアトマイズ器140へと送達する。
【0068】
スラグ除去-精製および脱気後の最初の操作は、浴の表面からスラグの残留物を除去することであり、これは手動操作とすることができる。これは、液体金属の表面に浮かんでいるスラグを取り除くために、スプーン、レーキ、またはその他のプロセスで行うことができる。
【0069】
誘導加熱アトマイズ器保持容器への移送-次に、受動加熱可能な取鍋111は、クレーンによって持ち上げられ、アトマイズ器ステーション140に移送することができる。アトマイズ器ステーション140は、2つの傾斜型誘導加熱アトマイズ器保持容器131、132を備えることができる。精製ステーションと同様に、アトマイズ器ステーション140内のこれらの誘導加熱アトマイズ器保持容器131、132は、受動加熱可能な取鍋111がスリーブにしっかりと嵌合するように設計することができる。前述のように、コイル118によって生成される誘導加熱によって、溶融金属内で熱を維持することができる。例えば、誘導加熱アトマイズ器保持容器131は、アトマイズが行われるアトマイズ器ステーション140の制御された真空および不活性雰囲気チャンバ141の外側に受動加熱可能な取鍋111を受け入れることができる。誘導加熱アトマイズ器保持容器131は、油圧機構143などの機械的装置によって、制御された真空および不活性雰囲気チャンバ141に移動され、次いで、注湯ステーション154の位置に移動され、そこで最終的にタンディッシュ150に注湯され得る。アトマイズチャンバ140内の雰囲気は、制御された真空および不活性雰囲気チャンバ141の壁に開口部を作成するように動作可能なドア148として概して示される一連のロックおよびバルブによって制御することができ、誘導加熱アトマイズ器保持容器131はその中に配置される。これらのドア148はまた、使用されていないときの誘導加熱アトマイズ器保持容器131が溶銑の新しい受動加熱可能な取鍋111を受け取る間、および保持容器がタンディッシュ150の近くで注湯位置に切り替えられて、液体金属をタンディッシュ150に放出する間、注湯ステーション154内の雰囲気を維持することを可能にし得る。
【0070】
図1に示すように、六角形のラベル「4」でマークされた領域において、生産プロセスの第4のステップは、液体金属を粉末にアトマイズすることである。アトマイズ器ステーション140は、2つの主要なセクション:それぞれの誘導加熱アトマイズ器保持容器131、132をそれぞれ受け入れるための2つの受け入れ領域151、152から構成される上部チャンバと、中央の密閉された不活性ガスおよび真空雰囲気注湯ステーション154とから構成することができる。受容領域内からの誘導加熱アトマイズ器保持容器131、132は、注湯ステーション154内の制御された雰囲気を維持するために、前述のようにロックおよびシールのシステムを含むことができるドア148を通して注湯ステーション154に送達することができる。注湯ステーション154は、一度に誘導加熱アトマイズ器保持容器131、132のうちの1つからの液体金属が傾斜され、受動加熱可能な取鍋111から誘導加熱タンディッシュ150に溶銑の制御された流れを送達する場所とすることができる。次に、タンディッシュ150は、下部密閉アトマイズチャンバ157内に位置するアトマイズノズル155に金属を送達することができる。下部密閉アトマイズチャンバ157は、粉末タイプを変更する前に容易に洗浄することを可能にする、取り外し可能な円錐形下部セクション156を備えた鉛直シリンダーとすることができる。
【0071】
精製ステーション120から受動加熱可能な取鍋111を受け取り、注湯ステーション154内の所定の位置に配置した後、誘導加熱アトマイズ器保持容器132を傾斜させて、タンディッシュ150内の金属の最小レベルを維持するために制御された速度で、加熱されたタンディッシュ150に液体金属を注湯することができる。注湯する間、受動加熱可能な取鍋111内の液体金属の温度は、前述のように誘導加熱によって制御され続けることができる。タンディッシュ150からの液体金属は、制御された金属流としてアトマイズノズル155に提供することができる。タンディッシュ150はまた、液体金属の温度を制御するために誘導加熱することができる。高圧不活性ガスをアトマイズノズル155に印加することができ、これは、アトマイズチャンバ157内でアトマイズ金属粉末150を形成する液滴のスプレーを生成し、それらが冷却してアトマイズチャンバ157の円錐形の底部156に落下するときに球形を形成する。誘導加熱アトマイズ器保持容器131が空の場合、それを注湯ステーションから取り外して、別の誘導加熱アトマイズ器保持容器132と交換することができる。タンディッシュ150は、アトマイズノズル155への制御された連続的な金属の流れを依然として有しながら、誘導加熱アトマイズ器保持容器131、132の切り替えのための時間を提供するのに十分な金属を保持できる。その後に装填された誘導加熱アトマイズ器保持容器132はまた、第1の(前の)誘導加熱アトマイズ器保持容器131からの液体金属のアトマイズが完了する前に準備された、VOD120精製ステーションからの液体金属で満たされた第2の受動加熱された取鍋112を保持することができる。このように、常に1つの保持容器が注湯され、もう1つは精製された液体金属の次の取鍋を受け取るために利用できるため、液体金属の連続流がアトマイズに常に利用できる。球状粉末159は、排出ホッパー158でアトマイズチャンバの底部(例えば、円錐形の底部156)から取り出すことができ、そこで一連のスクリーンおよびブレンダーを通して処理され、生成物を粒子サイズによって分類することができる。
【0072】
図2を参照すると、流れ図は、実施形態の構成に係る方法を示している。ブロック210において、図は、精製ステーション120から溶融金属を含む受動加熱可能な加熱された取鍋111を受け取るステップを示し、真空酸素脱炭のプロセスが、溶融金属から望ましくない不純物、介在物、またはガスを大気制御ガスアトマイズ器ステーション140中に除去するために印加され、誘導加熱アトマイズ器保持容器131は、受動加熱可能な取鍋111およびその中に含まれる溶融金属を含み、ガスアトマイズ器内で傾斜され、誘導加熱によって受動加熱可能な取鍋111内の液体金属の温度を制御し続けながら、同時にノズルを通して高圧不活性ガスをタンディッシュ150から流出する溶融金属の流れに印加しながら、溶融金属を制御された速度で加熱されたタンディッシュ150に注湯して、アトマイズチャンバ157内に液滴のスプレーを生成し、液滴が冷却してアトマイズチャンバ157内に形成された底部に落ちるとき球形を形成する。次に、ブロック215に示されるように、溶融金属が空になったら受動加熱可能な取鍋111を取り外し、溶融金属を含み、処理用に大気制御ガスアトマイズ器ステーション140によって受け取られる後続の受動加熱可能な取鍋112に対してプロセスを繰り返すステップが示される。
【0073】
図3を参照すると、実施形態の構成に係る別の流れ図が示されている。ブロック310は、受動加熱可能な取鍋111を使用して、それに注湯された溶融加熱液体金属をEAF105から取り出すステップを示す。次に、ブロック315に示すように、受動加熱可能な取鍋が誘導加熱精製保持容器117内に配置され、真空酸素脱炭のプロセスが印加されて、溶融金属から望ましくない不純物、介在物、またはガスを除去する精製ステーション120に、溶融金属で満たされた受動加熱可能な取鍋111が、EAF105から移動される。ブロック320において、受動加熱可能な取鍋111およびそこに含まれる溶融金属は、精製ステーション120から大気制御ガスアトマイズ器ステーション140に移送され、受動加熱可能な取鍋111およびそこに含まれる溶融金属を含む誘導加熱アトマイズ器保持容器131は傾斜され、誘導加熱アトマイズ器保持容器131からの誘導加熱によって受動加熱可能な取鍋111内の液体金属温度を制御し続けながら、タンディッシュ150に結合されたノズル155を通して高圧不活性ガスを印加しながら、制御された速度で溶融金属を加熱されたタンディッシュ150に注湯して、アトマイズチャンバ157内で液滴のスプレーを生成し、液滴が冷却してアトマイズチャンバ157内に形成された底部に落下するときに球形を形成する。次に、ブロック325に示されるように、一連のスクリーンおよびブレンダーを通して粒子サイズで分類するために球状粉末を送達するために使用される排出ホッパー158へと球形粉末159をアトマイズチャンバ157から取り出すステップが示される。
【0074】
図4を参照すると、実施形態の構成に従って、別の流れ図が示されている。ブロック410を参照すると、金属を含む原材料を電気アーク炉(「EAF」)105に供給する第1のステップが示される。次に、ブロック415に示されるように、原材料は、制御された温度で加熱された液体金属に溶融され、不純物および介在物が、別個の液体スラグ層として除去される。次に、ブロック420に示されるように、加熱された液体金属は、EAF105を傾斜し、EAF105に形成された注ぎ口または出銑口103の少なくとも1つを通して液体金属を注湯することによって、EAF105から受動加熱可能な取鍋111に取り出される。ブロック425において、溶融金属101で満たされた受動加熱可能な取鍋111を精製ステーション120に移動し、それにより、受動加熱可能な取鍋111が、第1の加熱された保持容器117に配置されるステップが示される。次に、ブロック430において、真空酸素脱炭のプロセスが印加されて、液体金属中の炭素、水素、酸素、窒素、および他の望ましくない不純物、介在物、またはガスが除去される。次に、ブロック435において、受動加熱可能な取鍋111は、精製ステーション120の加熱された保持容器117から、ガスアトマイズ器ステーション140の受容領域141の近くの第1の保持容器131に移送される。ブロック440において、受動加熱可能な取鍋111は、次に、精製ステーション120の加熱された保持容器117から、ガスアトマイズ器ステーション140の受容領域141の第1の保持容器131に移送される。ブロック445において、第1の保持容器131は、ガスアトマイズ器ステーション140内で傾斜され、誘導加熱によって受動加熱可能な取鍋111内の液体金属の温度を制御し続けながら、液体金属を制御された速度で加熱されたタンディッシュ150に注湯して、タンディッシュ150内の金属の最小レベルを維持する。ブロック450では、高圧不活性ガスが、タンディッシュ150にまたはその下にノズル155を通して印加されて、アトマイズチャンバ157内に液滴のスプレーを生成し、液滴が冷却してアトマイズチャンバ157内に形成された円錐形の底部156に落下するときに球形の粉末159を形成する。次に、ブロック455に示されるように、粉末を一連のスクリーンおよびブレンダーに送達して、粒子サイズによって球状粉末を分類するために使用される排出ホッパー158に球状粉末159をアトマイズチャンバ157から取り出すことができる。
【0075】
上記に開示された他の構成および機能の変形例、またはそれらの代替物は、望ましくは、他の多くの異なるシステムまたはアプリケーションに組み合わせることができることが理解されるだろう。また、その中の様々な現在予測しないまたは予期しない代替、修正、変形、または改善が、その後、当技術分野の当業者によってなされる可能性があり、これらもまた、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されることを理解すべきである。