(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】湿気硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20240112BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20240112BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20240112BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240112BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240112BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240112BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240112BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20240112BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20240112BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240112BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240112BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240112BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240112BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/06
C09J175/08
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
C08L75/04
C08L75/06
C08L75/08
C08K3/26
C08K3/36
C08K5/10
C08K5/5415
C08G18/40
(21)【出願番号】P 2021538339
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(86)【国際出願番号】 US2020012182
(87)【国際公開番号】W WO2020142688
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-21
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン、ビンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、チュウユン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス、レオナルド
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102624(JP,A)
【文献】特開2018-076509(JP,A)
【文献】特開平08-218053(JP,A)
【文献】特開平08-218054(JP,A)
【文献】特開2002-348463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、
20~50重量パーセント(wt.%)の湿気硬化性ポリマー系と、
30~60wt.%の炭酸カルシウムフィラー系であって、前記
炭酸カルシウムフィラー系が、
70ナノメートル(nm)~15マイクロメートル(μm)の球相当平均径を有する5~50wt.%の炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、
15μm超~200μmの球相当平均径を有する50~95wt.%の炭酸カルシウムの第2の球状粒子とを有し、
前記第1の球状粒子および前記第2の球状粒子の前記wt.%が、前記炭酸カルシウムフィラー系の総重量に基づいている、炭酸カルシウムフィラー系と、
5~15wt.%の種子油系脂肪酸エステルと、
0.1~10wt.%のシラン系接着促進剤とを含み、
前記湿気硬化性ポリマー系、前記炭酸カルシウムフィラー系、前記種子油系脂肪酸エステルおよび前記シラン系接着促進剤の前記wt.%は、前記接着剤組成物の総重量に基づいている、接着剤組成物。
【請求項2】
前記接着剤組成物が、0.5~4wt.%のシリカ系レオロジー調整剤をさらに含み、前記wt.%が、前記接着剤組成物の総重量に基づく、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記湿気硬化性ポリマー系が、無溶媒である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記湿気硬化性ポリマー系が、イソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物であり、前記湿気硬化性ポリマー系が1重量パーセント(wt.%)~14wt.%の遊離イソシアネート含有量(%NCO)を有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリオール成分が、1,000g/mol~6,000g/molの数平均分子量を有する、または
前記イソシアネート成分が、500g/mol~12,000g/molの数平均分子量を有する、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記イソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記炭酸カルシウムフィラー系が、ケイ酸アルミニウムを含まない、または
前記種子油系脂肪酸エステルが、大豆油から生成されたメチルエステルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記接着剤組成物が、0.01 1/秒の剪断速度で500Pa・s~10000Pa・sの粘度を有する、または
前記接着剤組成物が、0.01 1/秒の剪断速度で800Pa・sおよび5000Pa・sの粘度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記接着剤組成物が、未硬化状態で0.5Hz~25Hzのクロスオーバーポイントを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して接着剤組成物に関し、より詳細には、床材とともに使用するための湿気硬化性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用および商業用の床材として使用できるさまざまな素材がある。これらの最も一般的な床材は、カーペット、木材、タイルである。ゴム床板も、パディング特性、反発特性、音響特性を加えるように設計された用途の広い床板のオプションである。このような床板は、屋外(遊び場、公園)および屋内(ガレージ、体育館、病院など)の用途など、衝撃の大きい場所に使用される。これらの床材は、コンクリート、合板、パーティクルボードまたはチップボード、ビニールタイルまたはセラミックタイル、セメントバッカーボードなど、多種多様な基材の上に設置される。
【0003】
床板の設置は、釘もしくはボルトなどの機械式ファスナー、接着剤、または機械式固着機構を使用して行うことができる。機械式ファスナーは通常、木質床板で使用される。しかし、機械式固着機構は、ラミネート床への設置で通常使用される接着剤を使用しない極めて一般的な設置方法である。これら両方の設置を修理に戻すことは迅速だが、これらの方法には、音響特性の劣化、不均一な接続、温度および湿度のさまざまな気候条件の変動による床の座屈などの欠点を有する。その結果、これらの床材のほとんどの取り付け方法として接着剤の使用が選択されてきた。これらのエラストマー技術としては、高水性アクリレート、ポリウレタン分散液、一液湿気硬化型ポリウレタン、二液型ポリウレタンおよびエポキシ接着剤が挙げられる。
【0004】
床材用接着剤は、ノッチ付きコテを使用して手動で床に塗布する。この塗布方法により、基材との良好な接触を維持しながら、確実に効率的に被覆する。接着剤組成物をコテ塗りすると、確実に接着剤組成物が開口領域の端に均一に広がる隆起が間隔をあけて生じ、完全に被覆された均一な厚さの連続層が形成される。コテの選択は、設置される床面積の場所、サイズ、床の種類、および被覆の要件によって決まる。基材を一緒に接着することに加えて、接着剤組成物層は、バリア性および音響特性などのさらなる利点も提供する。しかし、本質的により優れたバリア性および音響特性を有するゴムなどの床板では、接着剤組成物層が果たす主な役割は接着性である。コンクリート/アスファルトおよびゴムの両基材の表面の凹凸により、機械的結合により優れた接着性が得られる。したがって、顧客への宣伝は、接着剤組成物の量を減らし、より良い被覆を達成することである。被覆は、平均的な均一な接触面積として定義される。これは、接着剤組成物を塗布するために狭い寸法のコテを使用することによって達成することができる。しかし、より粘度の高い床材用接着剤組成物は、隆起を維持するが、コテで塗るのが難しい。狭い寸法のコテを使用できるように粘度を下げると、隆起の保持が不十分な流動可能な系になる。したがって、隆起を維持しながら効率的な手動のコテ塗りを可能にする最適な粘度が必要である。
【0005】
考慮すべき別の態様は、これらの調製系に対する剪断の影響である。インストーラーは、最大の被覆を得ようとして、接着剤組成物を繰り返し剪断する。これらの調製系は、通常、ポリマー、希釈剤、溶剤可塑剤などを含む液相と、フィラー、レオロジー調整剤、スペーサーなどを含む固相との均質混合物である。ポリマーの絡み合い、ファンデルワールス力、およびは水素結合などの相互作用は、調製物の安定性ならびに接着剤組成物の流動性を維持するのに役立つ。剪断プロセスは、接着剤組成物の粘度の低下をもたらし、液体様に挙動する接着剤組成物および隆起の損失をもたらす力を損なわせ得る。しかし、接着剤組成物の充填密度が増加すると、相構造を損なわせ流動性を誘発するために大量の力とエネルギーが必要となる。したがって、粘度が低く、より小さなノッチコテでのコテ塗りのしやすさを向上させるとともに、隆起を保持しながら最大の被覆を可能にする高い剪断抵抗を有する接着剤組成物を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、床材用途に使用するための接着剤組成物を提供し、高い剪断抵抗とともに低粘度を提供し、最大の被覆を可能にするようにコテで塗られた隆起を保持するのに役立つ。接着剤組成物は、20~50重量パーセント(wt.%)の湿気硬化性ポリマー系、30~60wt.%の炭酸カルシウムフィラー系、5~15wt.%の種子油系脂肪酸エステル、および0.1~10wt.%のシラン系接着促進剤を含み、湿気硬化性ポリマー系、炭酸カルシウムフィラー系、種子油系脂肪酸エステルおよびシラン系接着促進剤のwt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。炭酸カルシウム系は、70ナノメートル(nm)~15マイクロメートル(μm)の球相当平均径を有する5~50wt.%の炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、15μm超~200μmの球相当直径を有する、50~95wt.%の炭酸カルシウムの第2の球状粒子とを有し、第1の球状粒子および第2の球状粒子のwt.%は、炭酸カルシウムフィラー系の総重量に基づく。様々な実施形態では、接着剤組成物は、シリカ系レオロジー調整剤をさらに含むことができる。例えば、接着剤組成物は、0.5~4wt.%のシリカ系レオロジー調整剤をさらに含むことができ、wt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。
【0007】
本開示の接着剤組成物とともに、様々な湿気硬化性ポリマー系を使用することができる。例えば、湿気硬化性ポリマー系は、イソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物であり、湿気硬化性ポリマー系は、1重量パーセント(wt.%)~14wt.%の遊離イソシアネート含有量(%NCO)を有する。様々な実施形態では、湿気硬化性ポリマー系は、溶媒を含まないものであり得る。
【0008】
ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールは、本明細書で論じるように、親水性構造または疎水性構造を提供するために、エチレンオキシド(EO)および/またはプロピレンオキシド(PO)を使用してキャップを外すか、またはキャップすることができる。
【0009】
様々な実施形態では、ポリオール成分は、1,000g/mol~6,000g/molの数平均分子量を有する。様々な実施形態では、イソシアネート成分は、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
様々な実施形態の場青、イソシアネート成分は、500g/mol~12,000g/molの数平均分子量を有する。イソシアネート成分は、当技術分野で知られているように、モノマーおよび/またはポリマーであり得る。
【0011】
本開示の実施形態は、炭酸カルシウムフィラー系がケイ酸アルミニウムを含まないものも含む。種子油系脂肪酸エステルの具体例としては、大豆油から生成されるメチルエステルが挙げられる。本明細書に示すように、他の種子油の使用も可能であり得る。
【0012】
様々な実施形態では、本出願の接着剤組成物は、0.01 1/秒の剪断速度で500Pa・s~10000Pa・sの粘度を有する。好ましくは、本出願の接着剤組成物は、0.01 1/秒の剪断速度で、800Pa・sおよび5000Pa・sの粘度を有する。本開示の接着剤組成物は、未硬化状態で0.5Hzと25Hzとの間のクロスオーバーポイントも含む。接着剤組成物の粘度およびクロスオーバーポイントは、実施例のセクションに記載のように、100Hz~10-5Hzの剪断速度勾配を使用して、25℃の等温温度での定常状態の流動段階で測定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】剪断速度の関数として表2において見られる比較例C~Gの粘度を示す。
【
図2】剪断速度の関数として表3において見られる比較例H~Kの粘度を提供する。
【
図3】剪断速度の関数として表4において見られる比較例HおよびLならびに実施例1の粘度を提供する。
【
図4】剪断速度の関数として表5において見られる比較例M~Pの粘度を示す。
【
図5】剪断速度の関数として表6において見られる比較例Q~Sおよび実施例2の粘度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、床材用途に使用するための接着剤組成物を提供し、高い剪断抵抗とともに低粘度を提供し、最大の被覆を可能にするようにコテで塗られた隆起を保持するのに役立つ。本開示の接着剤組成物は、様々な基材(例えば、カーペット、木材、ゴムおよびタイル)を、他の材料の中でも、コンクリート、合板、パーティクルボードもしくはチップボード、ビニ-ルタイルもしくはセラミックタイル、またはセメントバッカーボードに固定する。本開示の接着剤組成物は、粘度および他のレオロジー特性の両方を提供し、複数の剪断事象の後でさえ、所望の隆起および粘度を提供および維持しながら、手動適用(例えば、ノッチ付きコテを使用)を容易にする。手短に言えば、本開示の接着剤組成物は、高い剪断抵抗と、より小さなノッチコテでのコテ塗りのしやすさを向上させるための低い粘度との所望の組み合わせを提供し、隆起を保持して最大の被覆を可能にする。
【0015】
接着剤組成物は、20~50重量パーセント(wt.%)の湿気硬化性ポリマー系、30~60wt.%の炭酸カルシウムフィラー系、5~15wt.%の種子油系脂肪酸エステル、および0.1~10wt.%のシラン系接着促進剤を含み、湿気硬化性ポリマー系、炭酸カルシウムフィラー系、種子油系脂肪酸エステルおよびシラン系接着促進剤のwt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。炭酸カルシウム系は、70ナノメートル(nm)~15マイクロメートル(μm)の球相当平均径を有する5~50wt.%の炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、15μm超~200μmの球相当直径を有する、50~95wt.%の炭酸カルシウムの第2の球状粒子とを有し、第1の球状粒子および第2の球状粒子のwt.%は、炭酸カルシウムフィラー系の総重量に基づく。様々な実施形態では、接着剤組成物は、シリカ系レオロジー調整剤をさらに含むことができる。例えば、接着剤組成物は、0.5~4wt.%のシリカ系レオロジー調整剤をさらに含むことができ、wt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。
湿気硬化性ポリマー系
【0016】
本明細書で論じるように、接着剤組成物は、20~50wt.%の湿気硬化性ポリマー系を含む。接着剤組成物に使用される湿気硬化性ポリマー系の他の好ましいwt.%範囲には、20~40wt.%、20~30wt.%、30~50wt.%、30~40wt.%、および40~50wt.%が含まれ、wt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。
【0017】
様々な実施形態では、本明細書で提供される湿気硬化性ポリマー系は、溶媒を含まないものであり得る。本明細書で使用され場合、「溶媒」は、
好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、極めて特に好ましくは0.05重量%未満、特に0.01重量%未満の量で、大気圧(1バール)で200℃未満の沸点を有する低分子量有機化合物として定義される。溶媒は、一般的に、高粘度ポリマーに添加され、ポリマーを可溶化し、調製物の粘度を低下させる。一般的に、接着剤調製物に使用される有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-メトキシプロピルアセテート、N-メチルピロリドンである。床接着剤の調製における有害化学物質の使用を最小限に抑え、揮発性有機化合物(VOC)と有害大気汚染物質(HAP)の排出を削減するために、これらの溶媒は使用されなかった。
【0018】
本開示の接着剤組成物とともに、様々な湿気硬化性ポリマー系を使用することができる。例えば、湿気硬化性ポリマー系は、イソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物であり、湿気硬化性ポリマー系は、1重量パーセント(wt.%)~14wt.%の遊離イソシアネート含有量(%NCO)を有する。様々な実施形態では、湿気硬化性ポリマー系は、過剰のイソシアネート(例えば、ジイソシアネート)をイソシアネート反応性組成物(例えば、ポリオール)と組み合わせることによって形成され、イソシアネート成分のイソシアネート(NCO)基の1つは、ポリオールのヒドロキシル(OH)基の1つと反応する。ポリオールのもう一方の端は別のイソシアネートと反応し、得られたイソシアネートプレポリマーは両末端にイソシアネート基を有する。湿気硬化性ポリマー系は、ジイソシアネート自体でもよいが、湿気硬化性ポリマー系の形成に使用されるイソシアネートと比較して、分子量が大きく、粘度が高く、重量によるイソシアネート含有量(%NCO)が低く、蒸気圧が低い。過剰量のジイソシアネートが使用される限り、ジオールに加えて、トリオールまたはより高い官能ポリオールも反応におけるポリオールとして使用され得る。湿気硬化性ポリマー系の形成において、2対1より大きいジイソシアネート対ポリオールのモル比を使用することもできる。
【0019】
様々な実施形態では、湿気硬化性ポリマー系の形成に使用されるポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリオールを含むことができる。ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールはまた、本明細書で論じるように、親水性構造または疎水性構造を提供するために、当技術分野で知られているように、エチレンオキシド(EO)および/またはプロピレンオキシド(PO)を使用してキャップを外すか、またはキャップすることができる。実施形態では、ポリエーテルポリオールは、分子あたり少なくとも2個、例えば2個または3個のヒドロキシル基を有するものを含むことができ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、またはエピクロロヒドリンなどのエポキシドの重合によってそれ自体で、BF3の存在下のいずれかで、または、水、アンモニア、アルコール、アミンなどの相対水素原子を有する出発成分へのこれらのエポキシドの化学的付加プロセスによって、任意選択で混合物(エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物など)として、または連続して、調製することができる。適切な出発成分の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール-(1,3)または-(1,2)、グリセロール、トリメチロールプロパン、4,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルプロパン、アニリン、エタノールアミンまたはエチレンジアミンが挙げられる。スクロース系ポリエーテルポリオールも使用できる。多くの場合、主たる量の第一級OH基(ポリエーテル中に存在するすべてのOH基に基づいて90重量%まで)を含むポリエーテルを使用することが好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールの例としては、二価アルコールおよび/または三価アルコールなどの多価と、二塩基性カルボン酸などの多塩基との反応生成物として形成されるものが含まれる。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルまたはそれらの混合物を使用することができる。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式であってもよく、例えばハロゲン原子によって置換されていてもよく、および/または不飽和であってもよい。適切なポリカルボン酸の例としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、任意選択でモノマー脂肪酸、ジメチルテレフタレートおよびテレフタル酸-ビス-グリコールエステルと混合される、オレイン酸などの二量体および三量体の脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
適切な多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール-(1,2)および-(1,3)、ブチレングリコール-(1,4)および-(2,3)、ヘキサンジオール-(1,6)、オクタンジオール-(1,8)、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール(1,4-ビス-ヒドロキシ-メチルシクロヘキサン)、2-メチル-1,3-プロパン-ジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール-(1,2,6)、ブタントリオール-(1,2,4)、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトールおよびソルビトール、メチルグリコシド、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ならびにポリブチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエステルはまた、ある割合のカルボキシル末端基を含んでもよい。s-カプロラクトンなどのラクトン、またはコヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸のポリエステルも使用できる。
【0022】
そのようなポリオール成分は、プロパンジオール-(1,3)、ブタンジオール-(1,4)および/またはヘキサンジオール-(1,6)などのジオールの反応生成物などのポリカーボネートポリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、またはホスゲンも含み得る
【0023】
ポリオール成分は、1,000g/mol~6,000g/molの数平均分子量を有することができる。他の数平均分子量値も可能である。本明細書で報告される数平均分子量値は、当技術分野で知られているように、末端基分析によって決定される。
【0024】
適切なポリオールの他の例としては、少なくとも300のヒドロキシル当量を有するプロピレンオキシドで形成されたポリマーまたはコポリマーが挙げられる。プロピレンオキシドは、1,3-プロピレンオキシドであってもよいが、より一般的には1,2-プロピレンオキシドである。コポリマーの場合、コモノマーは、例えばエチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、1,2-ヘキサンオキシドなどの他の共重合可能なアルキレンオキシドである。コポリマーは、重合アルキレンオキシドの総重量に基づいて、75重量%以上、好ましくは85重量%以上の重合プロピレンオキシドを含み得る。コポリマーは、好ましくは重合エチレンオキシドを15重量%以下、特に5重量%以下含む。プロピレンオキシドのポリマーまたはコポリマーは、公称官能価が少なくとも2.0でなければならない。公称機能は、好ましくは2.5~6、より好ましくは2.5~4、または2.5~3.3である。プロピレンオキシドのポリマーまたはコポリマーのヒドロキシル当量は、少なくとも300、好ましくは少なくとも500、より好ましくは500~3200であり、いくつかの実施形態では600~3000、特定の実施形態では800~2500である。ポリオールは、ブレンドで形成することもでき、ポリオールブレンドは、ジオールとトリオールのブレンドを含む。ジオールは、500~8,000グラム/moleの平均分子量(Mw)およびトリオールは、2500~6500グラム/moleの平均分子量(Mw)を有することができる。
【0025】
様々な実施形態において、ポリオール成分は、10mg KOH/g~700mg KOH/gのヒドロキシル価を有することができる。さらに他の実施形態において、ポリオール成分は、15mg KOH/g~100mg KOH/g、または20mg KOH/g~50mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。本明細書で使用される場合、ヒドロキシル価は、1グラムのポリオールまたは他のヒドロキシル化合物中のヒドロキシル含有量に等しい水酸化カリウムのミリグラム数である。ポリオールはまた、1.6~6、例えば2~6、または3~5の数平均イソシアネート反応性基官能基を有することができる。
【0026】
本開示では、本開示の湿気硬化性ポリマー系を形成する際に、ポリオール成分以外の他のイソシアネート反応性組成物を使用することができる。これにより、湿気硬化性ポリマー系の二成分系が可能になり、本明細書で提供されるようなポリオールの代わりに、またはポリオールに加えて、アミンを硬化剤として使用することができる。このようなイソシアネート反応性組成物は、芳香族ジアミン、例えば、第1のアミノ基に対してオルト位に少なくとも1つのアルキル置換基、および第2のアミノ基に対してオルト位に2つのアルキル置換基を含むもの、またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのアルキル置換基は、少なくとも2つの炭素原子を含む。特定の実施形態において、イソシアネートに対するジアミンの反応性は、例えば、メチレン-ビス-クロロアニリン(MOCA)のように、ハロゲン、エステル、エーテルまたはジスルフィド基などの電子吸引性置換基によって低減されていない。特定の実施形態において、そのようなジアミンは、イソシアネートと反応する他の官能基を含まない。特定の実施形態において、前述のアルキル置換基は、最大20個の炭素原子を有することができ、直鎖型長鎖または分岐型長鎖であり得る。
【0027】
特定の実施形態において、芳香族ジアミンは、第1のアミノ基に対してオルト位に少なくとも1つのアルキル置換基、および第2のアミノ基に対してオルト位に1~3個の炭素原子を有する2つのアルキル置換基を含むが、これらのうちの2つはアルキル置換基には、2個または3個の炭素原子が含まれている。このような芳香族ジアミンの例としては、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、および3,5,3’,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。
【0028】
もちろん、上記の芳香族アミンは、互いに混合物として使用してもよいし、他の活性芳香族アミンと組み合わせて使用してもよい。
【0029】
特定の実施形態において、各アミノ基の両オルト位に1~3個の炭素原子を有する線状アルキル置換基を有するが、ただし、アルキル置換基のうちの2つは、2または3個の炭素原子を含む、芳香族ジアミンが使用される。いくつかの実施形態では、ジアミンは、室温で液体であり、ポリオール、特にポリエーテルポリオールと混和性である。このような化合物の例は、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、またはこの化合物と1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼンとの混合物である。
【0030】
本開示の特定の実施形態において、イソシアネート反応性組成物は、当技術分野で知られているように、アミノシランも含むことができる。
【0031】
様々な実施形態では、イソシアネート成分は、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。様々な実施形態では、イソシアネート成分は、500g/mol~12,000g/molの数平均分子量を有する。イソシアネート成分は、当技術分野で知られているように、モノマーおよび/またはポリマーであり得る。さらに、イソシアネート成分は、135~170のイソシアネート当量を有することができ、モノマージフェニルメタンジイソシアネート(MDI)中のMDIの異性体の混合物であるいわゆるMDI生成物、またはモノマーMDI中のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物であるいわゆるポリマーMDI生成物を有することができる。
【0032】
湿気硬化性ポリマー系の形成に使用されるイソシアネート成分の例としては、本明細書に記載の芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、および/または脂環式イソシアネートが挙げられる。芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、および/または脂環式イソシアネートは、式R(NCO)2で表されるモノマー有機ジイソシアネートを含むことができ、式中、Rは、2~6個の炭素原子を有する2価の脂肪族炭化水素基、5~9個の炭素原子を有する2価の脂環式炭化水素基、または5~10個の炭素原子を有する2価の芳香族炭化水素などの有機基を表す。イソシアネート成分の他の適切な例には、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートが含まれる。例示的なポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の様々な異性体、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、水素化MDI(H12MDI)、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3′-ジメチルオキシ-4,4′-ビフェニルジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、4,4′,4″-トリフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、水素化ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、および4,4′-ジメチルジフェニルメタン-2,2′,5,5′-テトライソシアネートが挙げられる。前述のポリイソシアネートのいずれも、尿素、イソシアヌレート、ウレチジンジオン、アロフォネート、ビウレット、カルボジイミド、ウレタン、または他の結合を含むように修飾され得る。
【0033】
湿気硬化性ポリマー系の形成に使用される適切なジイソシアネートの例には、以下が含まれる。1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;1,12-ドデカメチレンジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-および-1,4-ジイソシアネート。1-イソシアナト-2-イソシアナトメチルシクロペンタン;1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、ビス-(4-イソシアナト-シクロヘキシル)-メタン;1,3-および1,4-ビス-(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン;ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン;2,4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン;ビス-(4-イソシアナト-3-メチル-シクロヘキシル)-メタン;α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-および/または-1,4-キシリレンジイソシアネート;1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン;2,4-および/または2,6-ヘキサヒドロ-トルイレンジイソシアネート;1,3-および/または1,4-フェニレンジイソシアネート;2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネート;2,2-、2,4-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはMDI(ポリマーMDI)のより高次の同族体。1,5-ジイソシアナトナフタレン;およびそれらの組み合わせ。MDIの2,4’および4,4’異性体は、1:100~50:50の重量比でイソシアネート成分中に存在し得る。例えば、MDIの2,4’異性体は、イソシアネート成分の全重量に基づいて、1wt.%~50wt.%(例えば、1.25wt.%~50wt.%、1.3wt.%~35wt.%、1.5wt.%~30wt.%など)の量で存在し得る。MDIの4,4’異性体の重量パーセントは、イソシアネート成分の総重量に基づいて、MDIの2,4’異性体の重量パーセントより大きくてもよい。例えば、MDI系プレポリマーを形成するための調製物は、ポリウレタンプレポリマーを形成するための調製物の総重量100wt.%に基づく1.5wt.%~40wt.%(例えば、1.5wt.%~30wt.%)の2,4’異性体MDI含有量と、MDIの4,4’異性体の残りの部分とを有する。いくつかの実施形態によれば、MDIの4,4’異性体および/またはMDIの2,4’異性体で説明されない残りのイソシアネート成分は、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IIPDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、カルボジイミドまたはメチレンジフェニルイソシアネートのアロフォネートまたはウレトンイミン付加物およびそれらの混合物を含み得る。
【0034】
4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネート、例えば、4,4’,4“-トリフェニルメタントリイソシアネートおよびポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートなどの3つ以上のイソシアネート基を含み、アニリン/ホルムアルデヒド縮合体をホスゲン化して得られるモノマーイソシアネートは、湿気硬化性ポリマー系の形成において使用できる。イソシアヌレート、ウレトジオン、ビウレット、ウレタン、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、カルボジイミド、および/またはオキサジアジントリオン基を含有する、モノマーイソシアネートから調製されるイソシアネート付加物も適している。特定の実施形態において、イソシアネートは、Brookfield DVE粘度計を使用して測定した場合、25℃で300mPa・s以下の粘度を有する。
【0035】
湿気硬化性ポリマー系は、イソシアネート成分とポリオール成分(例えば、ポリエーテルポリオール)を20~100℃で結合させることによる従来の方法で調製され、いくつかの実施形態では、ウレタン形成触媒、例えば、第三級アミンまたはスズ化合物の存在下で調製される。イソシアネート成分とポリオール成分の相対量は、最終製品の所望の遊離NCO含有量に到達するように選択される。一般に、ジイソシアネートの当量は、ポリオール成分の当量よりも多い。本開示の特定の実施形態において、イソシアネート成分およびポリオール成分はそれぞれ、イソシアネート成分およびポリオール成分で生成された湿気硬化性ポリマー系が、1重量パーセント(wt.%)~14wt.%の遊離イソシアネート含有量(%NCO)を有するような量で使用される。遊離イソシアネート含有量(%NCO)は、当技術分野で知られているように、湿気硬化性ポリマー系の生成中に決定され、達成される(例えば、未反応のNCO基による質量を取得し、この質量をイソシアネートの全質量で割って、イソシアネート反応性組成物であり、その結果に100を掛けて%NCOを得る)。生成される湿気硬化性ポリマー系はまた、好ましくは、Brookfield DVE粘度計を使用して測定された1,000~10,000mPa・s、または1,000~5,000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0036】
湿気硬化性ポリマー系は、水と反応することができ、そのような水は、本開示の接着剤組成物が使用される空間の空気中に存在し得る。好ましくは、使用される水の量は、湿気硬化性ポリマー系における反応に利用可能なイソシアネート基のモル過剰である。
【0037】
炭酸カルシウムフィラー系
接着剤組成物はさらに、30~60wt.%の炭酸カルシウムフィラー系を含む。接着剤組成物に使用される炭酸カルシウムフィラー系の他の好ましいwt.%範囲としては、30~50wt.%、30~40wt.%、40~60wt.%、40~50wt.%および50~60wt.%が挙げられ、wt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。様々な実施形態において、炭酸カルシウムフィラー系は、ケイ酸アルミニウムを含まない。
【0038】
様々な実施形態では、炭酸カルシウムフィラー系は、球形状を有する炭酸カルシウム(CaCO3)を含む。本明細書で使用する場合、回転楕円体形状には、扁長回転楕円体、扁平回転楕円体および/または球体が含まれる。様々な実施形態では、炭酸カルシウムの球状粒子の2つの群が、本開示の炭酸カルシウムフィラー系を構成する。具体的には、炭酸カルシウムフィラー系は、70ナノメートル(nm)~15マイクロメートル(μm)の球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、15μm超~200μmの球相当直径を有する炭酸カルシウムの第2の球状粒子とから形成される。第1の球状粒子および第2の球状粒子についてそれぞれ単一の値の球相当平均径が与えられているが、各々は、サイズ分布を有し、第一の球状粒子または第二の球状粒子のいずれかの所定のサイズについて45μm以上(Plus325メッシュ、wt.%)の球相当平均径を有する炭酸カルシウム粒子のwt.%は、第1の球状粒子について0.003wt.%~0.8wt.%であり、2番目の球状粒子について8~20wt.%であることが理解される。
【0039】
好ましくは、炭酸カルシウムフィラー系は、1μm~10μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、15μm~40μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第2の球状粒子とから形成され、ここで、第1の球状粒子と第2の球状粒子のwt.%は、炭酸カルシウムフィラー系の総重量に基づく。より好ましくは、炭酸カルシウムフィラー系は、2μm~5μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、20μm~30μmの等価球形平均直径を有する炭酸カルシウムの第2の球状粒子とから形成される。ここで、第1の球状粒子および第2の球状粒子のwt.%は、炭酸カルシウムフィラー系の総重量に基づく。特定の一実施形態において、炭酸カルシウムフィラー系は、3μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、25μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第2の球状粒子とから形成される。
【0040】
様々な実施形態では、炭酸カルシウムフィラー系は、本明細書に記載の70nm~15μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子を5~50wt.%、および本明細書に記載の15μm超~200μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第2の球状粒子を50~95wt.%有する。好ましくは、炭酸カルシウムフィラー系は、本明細書に記載の70nm~15μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子を25~50wt.%、および本明細書に記載の15μm超~200μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第2の球状粒子を50~75wt.%有する。好ましい一実施形態において、炭酸カルシウムフィラー系は、本明細書に記載の70nm~15μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子を50wt.%、および本明細書に記載の15μm超~200μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウム第2の球状粒子を50wt.%有する。別の好ましい実施形態において、炭酸カルシウムフィラー系は、本明細書に記載の70nm~15μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第1の球状粒子を25wt.%、および本明細書に記載の、15μm超~200μmの球相当平均径を有する炭酸カルシウムの第2の球状粒子を75wt.%有する。
【0041】
本明細書で提供される第1の球状粒子および第2の球状粒子のwt.%は、炭酸カルシウムフィラー系の総重量に基づく。本明細書で提供される炭酸カルシウムフィラー系につて、第1の球状粒子と第2の球状粒子の両方のwt.%は合計で100wt.%である。言い換えれば、本明細書で提供される炭酸カルシウムフィラー系には、他のフィラーは存在しない。
【0042】
代替実施形態において、炭酸カルシウムフィラー系とともに使用できる他のフィラーとしては、沈降炭酸カルシウムおよびコロイド状炭酸カルシウム、強化シリカ、例えばヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカゲルおよび疎水化シリカおよびシリカゲルなど、粉砕石英、石英粉末、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、マイカ、タルクなどが挙げられるが、これらのうちの1つまたは複数に限定されない。そのような追加のフィラーが存在する場合(すなわち、炭酸カルシウムフィラー系に他のフィラーが存在する場合)、炭酸カルシウムフィラー系および他のフィラーは、接着剤組成物の総重量の20~80wt.%、さらに一般的に30~70wt.%、さらにより一般的に40~60wt.%を占める。
【0043】
種子油系脂肪酸エステル
接着剤組成物は、5~15wt.%の種子油系脂肪酸エステルをさらに含み、そのwt.%は、接着剤組成物の総重量に基づいており、種子油系脂肪酸エステルが可塑剤として作用する。本開示の種子油系脂肪酸エステルは、種子油のグリセロール成分を異なるアルコールと置換する種子油のエステル交換によって生成される脂肪酸エステルである。種子油の好ましい例としては、大豆油が挙げられる。また有用な植物油の他の例としては、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナツ油、ナタネ油、コーン油、ゴマ油、綿実油、キャノーラ油、ベニバナ油、アマニ油、パーム油、ブドウ種子油、ブラックキャラウェイ油、カボチャ核油、ボラージシード油、樹木胚芽油、アプリコットカーネル油、ピスタチオ油、アーモンド油、マカデミアナッツ油、アボカド油、シーバックソーン油、ヘンプ油、ヘーゼルナッツ油、月見草油、野バラ油、アザミ油、クルミ油、ヒマワリ油、ジャトロファ種子油、またはこれらの油のうち2つ以上の組み合わせが挙げられる。他の種子油の使用も可能である。有用になり得る動物製品の例としては、ラード、牛脂、魚油、およびこれらの製品の2つ以上の混合物が含まれる。さらに、藻類などの生物から得られる油も使用できる。植物系、藻類系、および動物系の油脂を組み合わせて使用することもできる。
【0044】
エステル交換反応に使用されるアルコールの例には、C1~C18の有機部分を含む有機モノアルコールまたは有機多価アルコールのうち1種または複数種が含まれる。より好ましくは、アルコールは、C1~C6モノアルコールであり、存在する場合、C4~C6基は、直鎖または分岐鎖アルキル基であり得る。最も好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびそれらの混合物から選択され、通常はメタノールが使用される。
【0045】
当技術分野で認識され、知られているように、種子油系脂肪酸エステルは、種子油のエステル交換反応によって調製することができ、その間、種子油のトリグリセリドが強酸または強塩基の存在下でアルコールと反応し、脂肪酸アルキルエステルとグリセロールの混合物を生成する。好ましくは、脂肪酸メチルエステルを生成するためにステル交換プロセスにおいてメタノールが使用される。例えば、好ましい一実施形態において、種子油系脂肪酸エステルは、大豆油から生成されるメチルエステルである。大豆油から生成された好ましいメチルエステルの市販例としては、CHEMPOINTから商品名SOYGOLDとして販売されている大豆油メチルエステルが含まれており、SOYGOLD 1100は、大豆油メチルエステルの好ましい一例である。
【0046】
シラン系接着促進剤
接着剤組成物は、0.1~10wt.%のシラン系接着促進剤をさらに含み、wt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。本開示のシラン系接着促進剤は、アミン基、イソシアネート基またはエポキシ基の末端反応性基を有する二官能性シラノールカップリング剤であり得る。適切な例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GLEO)イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。他の有用な接着促進剤の例としては、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-ガンマ-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-フェニル-ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能基トリメトキシシランおよびガンマ-アミノプロピル-メチルジエトキシシランが挙げられる。組成物は、存在する場合、一般的に、0.1~10wt。%、より一般的に0.5~8wt.%、さらにより一般的に1~6wt.%の接着促進剤を含む。
【0047】
任意の添加剤
様々な実施形態では、接着剤組成物は、任意の添加剤をさらに含むことができる。例えば、接着剤組成物は、0.5~4wt.%のシリカ系レオロジー調整剤をさらに含むことができ、wt.%は、接着剤組成物の総重量に基づく。シリカ系レオロジー調整剤の例としては、商品名AEROSIL R202またはAEROSIL R805(EVONIK)で市販されているようなポリジメチルシロキサン処理ヒュームドシリカが挙げられる。
【0048】
接着剤組成物は、様々な他の任意の添加剤をさらに含むことができ、存在する場合、任意の添加剤は、接着剤組成物の総重量に基づいて、0.1wt.%~5wt.%の量で存在し得る。任意の添加剤の例としては、モレキュラーシーブ粉末(例えば、商品名SYLOSIVでW.R.Graceから入手可能)などのゼオライトが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであってもよい。ゼオライトの量は、接着剤組成物の総重量に基づいて、0.1wt.%~2wt.%であり得る。任意の添加剤のさらなる例には、接着剤組成物が缶またはシリンダーから分配されるときに、イソシアネート(複数可)とイソシアネート反応性成分との間の反応が起こるように、接着剤組成物の遊離イソシアネートと大気水分との間の反応を促進するための触媒がさらに含まれる。そのような触媒の例には、アミン触媒、金属錯体、またはそれらの組み合わせが含まれる。触媒は、接着剤組成物の総重量に基づき、0.01wt.%~1wt.%、0.05wt.%~0.5wt.%、0.1wt.%~1wt.%、または0.1wt.%~0.2wt.%の量で存在し得る。
【0049】
アミン触媒は、少なくとも1つの第三級窒素原子(例えば第三級アミン)を含み、接着剤組成物中の遊離イソシアネート基を触媒することができる有機化合物を含み得る。例としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルピペラジン、ピペラジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-エチル-モルホリン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル(「DMDEE」)、2-メチルプロパンジアミン、メチルトリエチレンジアミン、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N’’-トリス(ジメチルアミノ-プロピル)sym-ヘキサヒドロトリアジン、およびそれらの混合物などのアミジンまたはグアニジンが挙げられる。さらなる実施形態において、アミン触媒は、ビス(2-ジメチルアミノ-エチル)エーテル、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチル-エタノールアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,Nを含む。-エチルモルホリン、スズ、亜鉛およびビスマスに基づく有機金属触媒、例えばジブチルスズジラウレートおよび/またはそれらの混合物。
【0050】
さらなる任意の添加剤としては、顔料、難燃剤、抗菌剤、熱安定剤、パラフィンまたは脂肪アルコールまたはジメチルポリシロキサン、鎖延長剤、追加のレオロジー添加剤、染料、接着促進剤、老化および耐候性に対する安定剤、可塑剤、静真菌性物質および静菌性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本開示の実施形態は、本開示の接着剤組成物の製造方法も提供する。本開示の接着剤組成物を調製する方法は、以下の手順を含み得る。本明細書に記載のwt。%による湿気硬化性ポリマー系および種子油系脂肪酸エステルの両方を混合ユニット(例えば、マMyersミキサーまたはRossミキサー)に入れ、真空下(26インチ Hg、88KPa)約40~60rpmの低rpm設定で約30分間、混合物が透明になり、気泡が見えなくなるまで、混合する。次に、この混合物に粉末状のモレキュラーシーブ(例えば、GRACE Sylosiv A3)を添加した後、混合物を約40℃~45℃まで加熱する。炭酸カルシウムの第1の球状粒子を添加した後、真空(26インチ Hg、88KPa)下で約30分間、ミキサーのrpmを70~80rpmに上げ、すべての粉末を湿らせる。第1の球状粒子を混合した後、この混合物に炭酸カルシウムの第2の球状粒子を添加し、混合物の温度を40℃未満(例えば、30℃)まで下げる。第2の球状粒子を複数回で投入する場合、各投入に続いて1~2分間高剪断(例えば、4000rpm)を行った後、低rpm(例えば、40rpm)を使用し、固形物を完全に湿らせる。すべての固形物を投入した後、真空(26インチ Hg、88KPa)を適用し、低剪断(例えば、40rpm)と高剪断(例えば、4000rpm)を交互に合計約30分間攪拌する。30分後、混合物を目視検査して、混合物が目に見える固形物のない滑らかなペーストであることを確認する(固形物が見える場合は、高剪断下でさらに10分間混合する)。次に、レオロジー調整剤(例えば、ヒュームドシリカ)を混合物に添加して、低剪断下で混合(例えば、10~60rpmで混合)してレオロジー調整剤を湿らせる。次に、低温(例えば、30℃などの40℃未満)で30分間、低剪断(例えば、10~60rpmでの混合)のみを使用して、真空(26インチ Hg、88KPa)を適用する。30分後、混合物をチェックして、目に見える固形物のない滑らかなペーストであることを確認する。固形物が検出された場合、低剪断(例えば、10~60rpmでの混合)のみを使用してさらに10分間混合する。次に、シラン系接着促進剤および触媒を混合物に加え、真空下(26インチ Hg、88KPa)で低剪断下(例えば、10~60rpmでの混合)で15分間混合する。その後の使用のために、本開示の接着剤組成物を気密容器に詰める。
【0052】
様々な実施形態では、本出願の接着剤組成物は、0.01 1/秒の剪断速度で、500Pa・s~10000Pa・sの粘度を有する。好ましくは、本出願の接着剤組成物は、0.01 1/秒の剪断速度で、800Pa・sおよび5000Pa・sの粘度を有する。本開示の接着剤組成物は、未硬化状態で0.5Hzと25Hzとの間のクロスオーバーポイントも含む。接着剤組成物の粘度およびクロスオーバーポイントは、実施例のセクションに記載のように、100Hz~10-5Hzの剪断速度勾配を使用して、25℃の等温温度での定常状態流動段階で測定される。
【0053】
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
接着剤組成物であって、
20~50重量パーセント(wt.%)の湿気硬化性ポリマー系と、
30~60wt.%の炭酸カルシウムフィラー系であって、前記炭酸カルシウムフィラー系が、
70ナノメートル(nm)~15マイクロメートル(μm)の球相当平均径を有する5~50wt.%の炭酸カルシウムの第1の球状粒子と、
15μm超~200μmの球相当平均径を有する50~95wt.%の炭酸カルシウムの第2の球状粒子とを有し、
前記第1の球状粒子および前記第2の球状粒子の前記wt.%が、前記炭酸カルシウムフィラー系の総重量に基づいている、炭酸カルシウムフィラー系と、
5~15wt.%の種子油系脂肪酸エステルと、
0.1~10wt.%のシラン系接着促進剤とを含み、
前記湿気硬化性ポリマー系、前記炭酸カルシウムフィラー系、前記種子油系脂肪酸エステルおよび前記シラン系接着促進剤の前記wt.%が、前記接着剤組成物の前記総重量に基づいている、接着剤組成物。
項2.
前記接着剤組成物が、0.5~4wt.%のシリカ系レオロジー調整剤をさらに含み、前記wt.%が、前記接着剤組成物の総重量に基づく、項1に記載の接着剤組成物。
項3.
前記湿気硬化性ポリマー系が、無溶媒である、項1に記載の接着剤組成物。
項4.
前記湿気硬化性ポリマー系が、イソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物であり、前記湿気硬化性ポリマー系が1重量パーセント(wt.%)~14wt.%の遊離イソシアネート含有量(%NCO)を有する、項1に記載の接着剤組成物。
項5.
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項4に記載の接着剤組成物。
項6.
前記ポリオール成分が、1,000g/mol~6,000g/molの数平均分子量を有する、項5に記載の接着剤組成物。
項7.
前記イソシアネート成分が、500g/mol~12,000g/molの数平均分子量を有する、項4~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
項8.
前記イソシアネート成分が、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項4~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
項9.
前記炭酸カルシウムフィラー系が、ケイ酸アルミニウムを含まない、項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
項10.
前記種子油系脂肪酸エステルが、大豆油から生成されるメチルエステルである、項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
項11.
前記接着剤組成物が、0.01 1/秒の剪断速度で500Pa・s~10000Pa・sの粘度である、項1~10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
項12.
前記接着剤組成物が、0.01 1/秒の剪断速度で800Pa・sおよび5000Pa・sの粘度を有する、項1~10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
項13.
前記接着剤組成物が、未硬化状態で0.5Hz~25Hzのクロスオーバーポイントを有する、項1~12のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
ここで、本開示のいくつかの実施形態について、以下の実施例で詳細に記載する。
【実施例】
【0054】
実施例において、例えば、以下を含む、材料の様々な用語および呼称を使用した。
【表1-1】
【表1-2】
【0055】
プレポリマー合成
VORANOL(商標)2000LMおよびVORANOL(商標)CP6001を、60℃の乾燥窒素で、ポリオールの含水量が200パーツパーミリオン(ppm)未満になるまでパージする。プレポリマー合成のために、メカニカルスターラー、熱電対、窒素注入口を備えた4首丸底フラスコを準備する。80グラム(g)のVORANOL(商標)2000LMと、80gのVORANOL(商標)CP6001とを、乾燥窒素(N2)ガス下で丸底フラスコに入れ、5分間混合して、ポリオール混合物を形成する。40gのISONATE(商標)50OPをポリオール混合物に加え、5分間混合して、ポリオール/イソシアネート混合物を形成する。2-エチルヘキサン酸スズ(II)(T9触媒)を50ppm(ポリオール/イソシアネート混合物に基づいて)の濃度でポリオール/イソシアネート混合物に加え、攪拌しながら70℃まで加熱する。反応の完了を%NCO滴定により決定するまで、混合物を70℃で2時間維持する。目標イソシアネート含有量は、4.13±0.01wt.%である。調製物に使用するためにプレポリマーを冷却する。実施例および比較例を本明細書に提供する。
【0056】
接着剤組成物の調製
実施例および比較例の調製におけるすべての真空は、26インチHg、88KPaである。実施例および比較用接着剤組成物を、本明細書で提供するように、1台のQuart Double Planetary ROSS ミキサー(Ross&Son Company)で調製する。実施例および比較例用の接着剤組成物を調製する一般的な手順は以下の通りである。実施例(EX)および比較例(CE)について、表2~6に示した量(値を組成物の総重量に基づく重量パーセントとして示す)の成分をROSSミキサーに以下のように添加する。まず、プレポリマーおよび可塑剤を加えて液体成分を形成する。ROSSミキサー中の液体成分を50℃に温め、真空下で22回転/分(rpm)で30分間混合する。30分後、窒素下で真空状態を解除して、液体成分が脱気され、透明な液体であることを確認する。次に、モレキュラーシーブを加え、真空下、22rpmで30分間混合する。混合後、窒素下で真空状態を解除し、液体成分系の均質性を確認する。第1のフィラーを液体成分系に追加し、30分間混合する。次に、第2のフィラーを液体成分系および第1のフィラーに添加し、真空下で30分間混合する。フィラーの添加が完了したら、窒素下で真空状態を解除する。レオロジー調整剤を加え、真空下で20分間混合する。これに続いて接着促進剤を添加し、真空下で20分間混合する。窒素下で真空状態を解除し、粘度およびレオロジー試験のために調製された系のサンプルを採取する。調製系に触媒(調製された系に基づいて750ppm)を添加し、真空下で20分間混合して、接着剤組成物を形成する。さらなる試験のために、窒素下で接着剤組成物をカートリッジに充填する。
【表2】
【0057】
25mmの鋼鉄製平行平板と450μmのギャップとを備えたAR2000 Rheometer(TA Instruments)を使用して、各実施例および比較例のための接着剤組成物の粘度を測定する。接着剤組成物を剪断速度100 1/秒で、25℃で30秒間プレ剪断することにより、サンプルの剪断履歴を消去する。100Hz~10-5Hzの剪断速度勾配を使用して、25℃の等温温度で、定常状態流動段階で粘度およびクロスオーバーポイントを測定する。
【0058】
図1は、剪断速度の関数として表2に見られる比較例C~Gの粘度を示す。
図1から分かるように、接着剤組成物はずり減粘が高く、応力を受けるとこれらの材料が流動し始めることを示している。これらの接着剤組成物は2つ以上の相を含むため、それらは構造化された流体と見なされ、そのレオロジー流動挙動は、固相と液相との相互作用によって支配される。これらの相互作用が、適用された剪断によって損なわれると、材料の構造が破壊され、流動が生じる。この臨界応力レベルのポイントは降伏応力と呼ばれ、本開示では、接着剤組成物のコテ塗りプロセスの開始を容易にすると考えられ、次に材料の粘度に直接相関する。粘度が高いほど、接着剤組成物のコテ塗りプロセスが困難であることを示している。
図1に示すように、各接着剤組成物の粘度は、フィラー粒径と接着剤組成物の粘度との間の相関関係を示している。より大きな粒径の調製物は、パッケージ密度が低く、結果として粘度が低くなる。しかし、比較的小さなフィラー粒径の調製物は、高度にパックされた調製物となり、粘度が高くなる。表内のPa・sで示された粘度データは、0.01 1/秒の剪断速度である。これは、接着剤組成物をコテで塗布する際に生じる一般的な剪断速度である。
【0059】
コテで塗られた接着剤組成物の隆起が保持されるのを、これらの構造流体の粘弾性挙動を決定するのに役立つ振動レオロジーを使用して調べる。これは、接着剤組成物を応力とひずみの周期的変動にさらすことによって決定される。接着剤組成物の粘弾性挙動は、貯蔵弾性率G’と、損失弾性率G’’とによって特徴付けられ、それぞれ、測定された応力応答に対する固体様の寄与および流体様の寄与を特徴付ける。振動数の関数としての貯蔵(G’)弾性率および損失(G’’)弾性率に対するひずみ振幅依存性は、接着剤組成物の流動挙動を決定するのに役立つ。G’’がG’を追い越す(G’)と損失(G’’)のクロスオーバーポイント後、流動挙動と隆起保持の損失が示された。表2に見られるように、粒子が小さいほどクロスオーバー振動数が高くなり、相互作用を損なわせて流動を誘発するには、より大きなひずみ振幅が必要であることを示している。しかし、この高い振動数は、高い粘度で達成される。
【表3】
【0060】
図2は、剪断速度の関数として表3に見られる比較例H~Kの粘度を示す。
図2から分かるように、接着剤組成物はずり減粘しており、応力を受けるとこれらの材料が流動し始めることを示している。
図2も、2種のフィラーを1:1の比率で有する各接着剤組成物の粘度が、フィラー粒径の組み合わせ(より大きなフィラー粒子、例えばCC-103とRemind15、およびより小さい粒子、例えばKaMIN 100、AtomiteおよびGAMACO)と、接着剤組成物の粘度との相関性を有することを示す。DINP可塑剤の存在下で大きな粒径の調製物と小さな粒径の調製物を組み合わせると、パッケージ密度が高くなり、その結果、一般的に、接着剤組成物をコテで塗布する際に用いられる剪断速度で粘度が高くなる(例えば、1,000Pa・s超)。しかし、接着剤組成物においての2種の比較的大きなフィラー粒径を組み合わせると、比較的密度の低いパックされた調製物がもたらされ、相対粘度がより低くなる。表内のPa・sで示された粘度データは、0.01 1/秒の剪断速度である。これは、接着剤組成物をコテで塗布する際に生じる一般的な剪断速度である。
【0061】
表3はまた、粒子が小さいほどクロスオーバー振動数を高くさせるのに役立ち、相互作用を損なわせて流動を誘発するには、より高いひずみ振幅が必要であることを示しており、したがってより多くの剪断がこれらの接着剤組成物によって許容され得ることを示している。ケイ酸アルミニウム(KaMIN(登録商標)100)の小さな粒子を有するCE Hのクロスオーバー値が、炭酸カルシウムの小さな粒子(AtomiteおよびGAMACO)を有する比較の接着剤組成物CE I~CE Kよりもはるかに高いことは注目に値する。しかし、CE Hのこの高い振動数は、高い粘度で達成され、これは、この調製物の欠点である。
【表4】
【0062】
図3は、剪断速度の関数として表4に見られる比較例HおよびLおよび実施例1の粘度を示す。
図3から分かるように、接着剤組成物はずり減粘しており、応力を受けるとこれらの材料が流動し始めることを示している。
図3も、2種のフィラーを1:1の比率で有する各接着剤組成物の粘度が、フィラー粒径の組み合わせ(より大きなフィラー粒子、例えばCC-103とRemind15、およびより小さい粒子、例えばKaMIN 100、AtomiteおよびGAMACO)と、接着剤組成物の粘度との相関性を有することを示す。DINP可塑剤の存在下で大きな粒径の調製物と小さな粒径の調製物を組み合わせると、パッケージ密度が高くなり、その結果、一般的に、接着剤組成物をコテで塗布する際に用いられる剪断速度で粘度が高くなる(例えば、1,000Pa・s超)。対照的に、CE Lと比較して、EX1における可塑剤としてのSOYGOLD(登録商標)1100を使用すると、炭酸カルシウムフィラー系と本開示の種子油系脂肪酸エステルとを、接着剤組成物をコテで塗布する際に生じる一般的な剪断速度で組み合わせた相乗効果が明らかに示される。EX1のクロスオーバー値が、炭酸カルシウムの大きな粒子(AtomiteおよびGAMACOと比較して、CC-103およびRemind15)が、CE LにおけるDINP可塑剤と比較して、EX1における種子油系脂肪酸エステル可塑剤の使用が唯一の相違であるCE Lよりも大幅に高いことも注目に値する。
【表5】
【0063】
図4は、剪断速度の関数として表5に見られる比較例M~Pの粘度を示す。
図4から分かるように、接着剤組成物はずり減粘しており、応力を受けるとこれらの材料が流動し始めることを示している。
図4も、2種のフィラーを3:1の比率で有する各接着剤組成物の粘度が、フィラー粒径の組み合わせ(より大きなフィラー粒子、例えばCC-103とRemind15、およびより小さい粒子、例えばKaMIN 100、AtomiteおよびGAMACO)と、接着剤組成物の粘度との相関性を有することを示す。DINP可塑剤の存在下で大きな粒径の調製物と小さな粒径の調製物を組み合わせると、パッケージ密度が高くなり、その結果、一般的に、接着剤組成物をコテで塗布する際に用いられる剪断速度で粘度が高くなる(例えば、1,000Pa・s超)。しかし、接着剤組成物において2種の比較的大きなフィラー粒径を組み合わせると、密度の低いパックされた調製物がもたらされ、相対粘度がより低くなる。表内のPa・sで示された粘度データは、0.01 1/秒の剪断速度である。これは、接着剤組成物をコテで塗布する際に生じる一般的な剪断速度である。
【0064】
表5はまた、粒子が小さいほどクロスオーバー周波数が高くなることを示しており、相互作用を損なわせて流動を誘発するには、より大きなひずみ振幅が必要であることを示している。炭酸カルシウム(GAMACO)の小さな粒子を有するCE Pのクロスオーバー値が、異なる炭酸カルシウム(Atomite)またはケイ酸アルミニウム(KaMIN)の小さな粒子を有する比較の接着剤組成物CE M~CE Oよりもはるかに高いことは注目に値する。
【表6】
【0065】
図5は、剪断速度の関数として表6に見られる比較例Q~Sおよび実施例2の粘度を示す。
図5から分かるように、接着剤組成物は、ずり減粘しており、応力を受けるとこれらの材料が流動し始めることを示している。
図5はまた、2種のフィラーを3:1の比率で有する各接着剤組成物の粘度が、フィラー粒径の組み合わせ(より大きな炭酸カルシウムフィラー粒子、例えばCC-103およびより小さな炭酸カルシウム粒子、例えばGAMACO)と、接着剤組成物の粘度との相関性を有することを示す。DINP可塑剤の存在下で大きな炭酸カルシウム粒径の調製物と小さな炭酸カルシウム粒径の調製物を組み合わせると、パッケージ密度が高くなり、その結果、一般的に、接着剤組成物をコテで塗布する際に用いられる剪断速度で粘度が高くなる(例えば、1,000Pa・s超)。対照的に、CE Sと比較して、実施例2における可塑剤としてのSOYGOLD(登録商標)1100を使用すると、炭酸カルシウムフィラー系と本開示の種子油系脂肪酸エステルとを、接着剤組成物をコテで塗布する際に生じる一般的な剪断速度で組み合わせた相乗効果が明らかに示される。実施例2のクロスオーバー値は、炭酸カルシウムの大きな粒子(GAMACOと比較してCC-103)を有する実施例2のクロスオーバー値が、CE SにおけるDINP可塑剤と比較して、実施例2における種子油系脂肪酸エステル可塑剤の使用が唯一の相違であるCE Sよりも大幅に高いことも注目に値する。この結果は、CC103およびRemind 15に見られるより広い粒子分布の炭酸カルシウムに起因する可能性があると考えられる。GAMACOなどの微粒子分布の炭酸カルシウムとブレンドすると、これは、フィラーのパッキングの改善となる。さらに、その疎水性鎖を有するメチルエステル系の大豆可塑剤の存在は、ポリマーの鎖の絡み合いを改善するのに役立ち得る。その結果、フィラーのパッケージングと鎖の絡み合いの組み合わせにより、調製された系において相の組織化された相互作用構造が得られる。