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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】均一なビームを有するエキシマレーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/082 20060101AFI20240112BHJP
   H01S 3/034 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01S3/082
H01S3/034
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021556258
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2020057287
(87)【国際公開番号】W WO2020187908
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】62/821,239
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514323268
【氏名又は名称】コヒーレント レーザーシステムズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブラーギン, イーゴル
(72)【発明者】
【氏名】ミシュリャエフ, ティムル
(72)【発明者】
【氏名】ファン デア ヴィルト, パウル
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04920541(US,A)
【文献】特開2008-042072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0037609(US,A1)
【文献】国際公開第2009/125745(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0158281(US,A1)
【文献】国際公開第2004/095661(WO,A1)
【文献】特開2000-124528(JP,A)
【文献】米国特許第06292505(US,B1)
【文献】特開昭63-088882(JP,A)
【文献】特開平10-284778(JP,A)
【文献】特開2002-359417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを発生させるエキシマレーザであって、
通電させられたガス混合物を含有するレーザチャンバと、
前記レーザビームのある波長において高反射率を有する第1の背面ミラーと、
前記レーザビームの前記波長において部分的反射性である第2の背面ミラーであって、前記第1および第2の背面ミラーは、前記レーザチャンバの一端に位置し、前記第2の背面ミラーは、前記第1の背面ミラーと前記レーザチャンバとの間に位置し、前記第1および第2の背面ミラーは、相互に対して第1の角度で傾斜させられている、第2の背面ミラーと、
第1の出力結合ミラーと、
第2の出力結合ミラーであって、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザビームの前記波長において部分的反射性であり、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザチャンバの反対端に位置し、前記第1および第2の出力結合ミラーは、相互に対して第2の角度で傾斜させられている、第2の出力結合ミラーと
を備える、エキシマレーザ。
【請求項2】
前記第1および第2の背面ミラーは両方とも、前記レーザビームの光軸に対して傾斜させられている、請求項1に記載のエキシマレーザ。
【請求項3】
前記第1および第2の出力結合ミラーは両方とも、前記レーザビームの光軸に対して傾斜させられている、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項4】
前記第1の角度は、前記第2の角度に等しい、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項5】
前記第1および第2の背面ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項6】
前記第1および第2の出力結合ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項7】
前記第1の角度および前記第2の角度は両方とも、0.05ミリラジアンより大きい、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項8】
前記第2の背面ミラーは、前記レーザビームの前記波長において20%~80%の範囲内の反射率を有する、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項9】
前記第2の背面ミラーは、前記レーザビームの前記波長において35%~65%の範囲内の反射率を有する、請求項8に記載のエキシマレーザ。
【請求項10】
前記第1および第2の出力結合ミラーの各々は、前記レーザビームの前記波長において5%未満の反射率を有する、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項11】
前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザビームの前記波長において同一の反射率を有する、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項12】
前記第1の角度は、全て前記レーザビームに対して直角入射する共振器ミラーを有する同等のエキシマレーザから、5%~20%の範囲内のレーザビームの周角発散である、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項13】
前記第2の角度は、全て前記レーザビームに対して直角入射する共振器ミラーを有する同等のエキシマレーザから、5%~20%の範囲内のレーザビームの周角発散である、請求項に記載のエキシマレーザ。
【請求項14】
レーザビームを発生させるエキシマレーザであって、
通電させられたガス混合物を含有するレーザチャンバと、
前記レーザチャンバの一端に位置し、前記レーザビームのある波長において高反射率を有する背面ミラーと、
第1の出力結合ミラーと、
第2の出力結合ミラーであって、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザビームの前記波長において部分的反射性であり、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザチャンバの反対端に位置し、前記第1および第2の出力結合ミラーは、相互に対して相対的傾斜角度で傾斜させられ、前記第1および第2の出力結合ミラーの各々の法線は、前記レーザビームの光軸に対して0.05~0.2ミリラジアンの角度だけ傾斜させられ、前記第1および第2の出力結合ミラーは両方とも、前記背面ミラーに対して傾斜させられている、第2の出力結合ミラーと
を備える、エキシマレーザ。
【請求項15】
前記第1および第2の出力結合ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、請求項14に記載のエキシマレーザ。
【請求項16】
レーザビームを発生させるエキシマレーザであって、
通電させられたガス混合物を含有するレーザチャンバと、
前記レーザビームのある波長において高反射率を有する第1の背面ミラーと、
前記レーザビームの前記波長において部分的反射性である第2の背面ミラーであって、前記第1および第2の背面ミラーは、前記レーザチャンバの一端に位置し、前記第2の背面ミラーは、前記第1の背面ミラーと前記レーザチャンバとの間に位置し、前記第1および第2の背面ミラーは、相互に対して相対的傾斜角度で傾斜させられ、前記第1および第2の背面ミラーの各々の法線は、前記レーザビームの光軸に対して0.05~0.2ミリラジアンの角度だけ傾斜させられている、第2の背面ミラーと、
前記レーザビームの前記波長において部分的反射性である出力結合ミラーであって、前記出力結合ミラーは、前記レーザチャンバの反対端に位置し、前記出力結合ミラーは、前記第1および第2の背面ミラーの両方に対して傾斜させられている、結合ミラーと
を備える、エキシマレーザ。
【請求項17】
前記第1および第2の背面ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、請求項16に記載のエキシマレーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/821,239号の優先権を主張し、その開示が、その全体として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、ガス放電レーザに関する。本発明は、特に、エキシマガス放電レーザのための共振器ミラー配列に関する。
【背景技術】
【0003】
エキシマレーザは、電磁スペクトルの紫外線領域内で高出力レーザ放射を発生させる。利得媒体は、流動する加圧されたガス混合物であり、流動する加圧されたガス混合物は、典型的には、希ガス、ハロゲン化合物ガス、および緩衝ガスを含む。ガス混合物は、2つの細長電極間の短電流パルスによって通電させられ、励起された弱結合二量体をガス放電中に生成する。例えば、ガス混合物は、キセノン(Xe)ガスおよび塩化水素(HCl)ガスに加え、中和緩衝ガスとしてヘリウム(He)またはネオン(Ne)を含むことができる。通電させられると、308nmのレーザ線を有する電子的に励起されたXeCl二量体が、生成される。他の例は、193nmのレーザ線を有するフッ化アルゴン(ArF)二量体、および351nmのレーザ線を有するフッ化キセノン(XeF)二量体である。
【0004】
典型的には、ガス混合物は、最大数キロヘルツの繰り返し率で通電させられ得、ガス放電は、数ナノ秒~数百ナノ秒の持続時間にわたって持続させられ得、出力レーザパルスは、数ナノ秒~数数十ナノ秒の持続時間を有し、平均出力レーザ電力は、最大数百ワットとなり得る。最も強力な最新の産業用エキシマレーザは、XeClに基づいており、最大1ジュールのパルスエネルギーを最大600ヘルツのパルス繰り返し率で発生させる。例えば、Coherent Inc.(Santa Clara, California)製のLambda SXエキシマレーザである。そのようなエキシマレーザは、非常に高いパルスエネルギー安定性および安定したビームパラメータを維持しながら、1億パルス超にわたって継続的に動作することができる。さらに大きいパルスエネルギーを要求する用途では、2つ以上のエキシマレーザの出力は、ビーム混合光学系、およびパルス送達の同期によって組み合わせられることができる。そのようなビーム混合および同期は、それぞれ米国特許第7,408,714号および第8,238,400号に説明され、それらの各々が、本発明の譲受人に譲渡され、各々の完全な開示が、参照することによって本明細書に援用される。
【0005】
1つの重要な用途は、シリコンのレーザ再晶析であって、これは、消費者電子デバイス画面および大型ディスプレイ画面のための平坦パネルの製造において使用されるプロセスである。シリコンは、半導体基部であり、半導体基部の上に画面内の電子回路がリフォグラフィプロセスによって形成される。再晶析プロセスでは、ガラス基板上の非晶質シリコンの薄い層が、所望の結晶性微小構造が取得されるまで、レーザ放射のパルス状ビームによって繰り返し溶融される。基板およびその上のシリコン層は、レーザ放射源、およびレーザ放射を送達する光学系に対して走査される。シリコン層上に入射するレーザ放射のビームは、細長「線ビーム」に成形され、走査方向に直交する方向に沿って、均一な強度分布を有する。エキシマレーザは、このプロセスにおける好ましい源であり、「エキシマレーザアニーリング」と称される。これは、繊細なプロセスである。最適エネルギー密度を有する安定かつ均一な強度分布を維持することが重要である。
【0006】
エキシマレーザビームを線ビームに成形するための方法および装置は、米国特許第7,428,039号および第7,615,722号に説明され、それらは、本発明の譲受人に譲渡され、その完全な開示が参照することによって本明細書に援用される。これらの方法は、ビーム均質化を組み込み、それによって、1つ以上の源からのレーザビームは、空間的に分割され、分割されたビームは、シリコン層上に投影され、その上に重ねられる。例えば、各々が短軸において約0.4mmおよび長軸において750mm~1500mmの寸法を有する線ビームが、10~30回投影され、重ねられる。ビーム均質化は、エキシマレーザからの大ビームを収容するレンズアレイを含む、高価かつ複雑な光学配列を要求する。例えば、ビームは、15mm×35mmの横方向寸法を有する。
【0007】
さらに、平均化は、シリコン層上の各場所を複数のレーザパルスに暴露することによって達成される。例えば、10~20回の連続レーザパルスである。それでもなお、このプロセスを使用して製造される画面の性能は、より安定かつより均一な線ビームを形成することにより、結晶性微小構造における変動を低減させることよって、さらに改良され得る。不安定性および非均一性の1つの原因は、ガス放電中の不安定性、ガス流動中の乱流、およびガス含有窓の汚染によって引き起こされるエキシマレーザビームの横方向空間モードにおける微細構造である。この微細構造は、不安定であり、パルス毎に有意に変化する。エキシマレーザの出力ビーム内の任意の場所におけるエネルギー密度は、10%を上回るか、またはさらに20%を上回る標準偏差を有し得る一方、全体的ビームの統合されたエネルギーは、0.3%未満の標準偏差を有する。微細構造は、特に、レンズアレイ内の個々のレンズ要素より小さくなると、粗雑な構造より均質化することが困難である。
【0008】
最小限の微細構造を有するレーザビームを生み出すエキシマレーザに対するニーズがある。具体的には、微細構造内に最小限の明るさコントラストを有するレーザビームを生み出す。好ましくは、この明るさコントラストの低減は、効率、パルスエネルギー、平均電力、または任意の他の臨界ビームパラメータを損なわせず達成され得る。マイクロリソグラフィおよびレーザリフトオフ等のエキシマレーザの他の用途もまた、微細構造内の明るさコントラストを低減させることから利点を享受し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7,408,714号明細書
【文献】米国特許第8,238,400号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面では、レーザビームを発生させるエキシマレーザは、通電させられたガス混合物を含有するレーザチャンバと、レーザビームのある波長において高反射率を有する第1の背面ミラーと、レーザビームの波長において部分的反射性である第2の背面ミラーとを備える。第1および第2の背面ミラーは、レーザチャンバの一端にある。第2の背面ミラーは、第1の背面ミラーとレーザチャンバとの間に位置する。第1および第2の背面ミラーは、相互に対して第1の角度で傾斜させられている。第1の出力結合ミラーおよび第2の出力結合ミラーが、提供される。第1および第2の出力結合ミラーは、レーザチャンバの反対端に位置する。第1および第2の出力結合ミラーは、相互に対して第2の角度で傾斜させられている。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
レーザビームを発生させるエキシマレーザであって、
通電させられたガス混合物を含有するレーザチャンバと、
前記レーザビームのある波長において高反射率を有する第1の背面ミラーと、
前記レーザビームの前記波長において部分的反射性である第2の背面ミラーであって、前記第1および第2の背面ミラーは、前記レーザチャンバの一端に位置し、前記第2の背面ミラーは、前記第1の背面ミラーと前記レーザチャンバとの間に位置し、前記第1および第2の背面ミラーは、相互に対して第1の角度で傾斜させられている、第2の背面ミラーと、
第1の出力結合ミラーと、
第2の出力結合ミラーであって、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザビームの前記波長において部分的反射性であり、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザチャンバの反対端に位置し、前記第1および第2の出力結合ミラーは、相互に対して第2の角度で傾斜させられている、第2の出力結合ミラーと
を備える、エキシマレーザ。
(項目2)
前記第1および第2の背面ミラーは両方とも、前記レーザビームの光軸に対して傾斜させられている、項目1に記載のエキシマレーザ。
(項目3)
前記第1および第2の出力結合ミラーは両方とも、前記レーザビームの光軸に対して傾斜させられている、項目1または項目2に記載のエキシマレーザ。
(項目4)
前記第1の角度は、前記第2の角度に等しい、項目1~3のいずれかに一項に記載のエキシマレーザ。
(項目5)
前記第1および第2の背面ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、項目1~4のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目6)
前記第1および第2の出力結合ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、項目1~5のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目7)
前記第1の角度および前記第2の角度は両方とも、0.05ミリラジアンより大きい、項目1~6のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目8)
前記第2の背面ミラーは、前記レーザビームの前記波長において20%~80%の範囲内の反射率を有する、項目1~7のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目9)
前記第2の背面ミラーは、前記レーザビームの前記波長において35%~65%の範囲内の反射率を有する、項目8に記載のエキシマレーザ。
(項目10)
前記第1および第2の出力結合ミラーの各々は、前記レーザビームの波長において5%未満の反射率を有する、項目1~9のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目11)
前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザビームの前記波長において同一の反射率を有する、項目1~10のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目12)
前記第1の角度は、全て前記レーザビームに対して直角入射する共振器ミラーを有する同等のエキシマレーザから、5%~20%の範囲内のレーザビームの周角発散である、項目1~11のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目13)
前記第2の角度は、全て前記レーザビームに対して直角入射する共振器ミラーを有する同等のエキシマレーザから、5%~20%の範囲内のレーザビームの周角発散である、項目1~12のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目14)
レーザビームを発生させるエキシマレーザであって、
通電させられたガス混合物を含有するレーザチャンバと、
前記レーザチャンバの一端に位置し、前記レーザビームのある波長において高反射率を有する背面ミラーと、
第1の出力結合ミラーと、
第2の出力結合ミラーであって、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザビームの前記波長において部分的反射性であり、前記第1および第2の出力結合ミラーは、前記レーザチャンバの反対端に位置し、前記第1および第2の出力結合ミラーは、相互に対して相対的傾斜角度で傾斜させられ、前記第1および第2の出力結合ミラーは両方とも、前記背面ミラーに対して傾斜させられている、第2の出力結合ミラーと
を備える、エキシマレーザ。
(項目15)
前記第1および第2の出力結合ミラーは両方とも、前記レーザビームの光軸に対して傾斜させられている、項目14に記載のエキシマレーザ。
(項目16)
前記第1および第2の出力結合ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、項目14または項目15に記載のエキシマレーザ。
(項目17)
前記相対的傾斜角度は、0.05ミリラジアンより大きい、項目14~16のいずれか一項に記載のエキシマレーザ。
(項目18)
レーザビームを発生させるエキシマレーザであって、
通電させられたガス混合物を含有するレーザチャンバと、
前記レーザビームのある波長において高反射率を有する第1の背面ミラーと、
前記レーザビームの前記波長において部分的反射性である第2の背面ミラーであって、前記第1および第2の背面ミラーは、前記レーザチャンバの一端に位置し、前記第2の背面ミラーは、前記第1の背面ミラーと前記レーザチャンバとの間に位置し、前記第1および第2の背面ミラーは、相互に対して相対的傾斜角度で傾斜させられている、第2の背面ミラーと、
前記レーザビームの前記波長において部分的反射性である出力結合ミラーであって、前記出力結合ミラーは、前記レーザチャンバの反対端に位置し、前記出力結合ミラーは、前記第1および第2の背面ミラーの両方に対して傾斜させられている、結合ミラーと
を備える、エキシマレーザ。
(項目19)
前記第1および第2の背面ミラーは、透明な楔形状基板の対向する表面上にある、項目18に記載のエキシマレーザ。
(項目20)
前記相対的傾斜角度は、0.05ミリラジアンより大きい、項目18または項目19に記載のエキシマレーザ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
明細書内に組み込まれその一部を構成する付随の図面は、本発明の好ましい実施形態を図式的に例証し、上記に与えられる概略的説明および下記に与えられる好ましい実施形態の説明とともに、本発明の原理を解説する役割を果たす。
【0012】
図1A図1Aは、パルス状レーザビームを発生させ、レーザチャンバと、2つの窓と、高反射性ミラーと、出力結合ミラーとを含む先行技術のエキシマレーザを図式的に例証する側面図である。
【0013】
図1B図1Bは、複合パルス状レーザビームを発生させ、2つの背面ミラーと、2つの出力結合ミラーとを含み、2つの背面ミラーが相互に対して傾斜させられ、2つの出力結合ミラーが相互に対して傾斜させられている、本発明によるエキシマレーザの1つの好ましい実施形態を図式的に例証する側面図である。
【0014】
図2A図2Aは、図1Aの先行技術のエキシマレーザのさらなる詳細を図式的に例証する拡大側面図である。
【0015】
図2B図2Bは、図1Bのエキシマレーザのさらなる詳細を図式的に例証する拡大側面図である。
【0016】
図3A図3Aは、図1Aおよび2Aに例証されるタイプの先行技術のエキシマレーザからのパルス状レーザビームの横方向空間モードの近視野カメラ画像である。
【0017】
図3B図3Bは、図1Bおよび図2Bに例証されるタイプのエキシマレーザからの複合パルス状レーザビームの横方向空間モードの近視野カメラ画像である。
【0018】
図4A図4Aは、図3Aの先行技術のエキシマレーザからのパルス状レーザビームの重心における相対的エネルギー偏差対パルス数を図式的に例証するグラフである。
【0019】
図4B図4Bは、図3Bのエキシマレーザからの複合パルス状レーザビームの重心における相対的エネルギー偏差対パルス数を図式的に例証するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、同様の構成要素が同様の番号によって指定される図面を参照すると、図1Aは、先行技術のエキシマレーザ10を図式的に例証する側面図であり、エキシマレーザ10は、レーザチャンバ12と、2つの窓14と、高反射性ミラー16と、出力結合ミラー18とを含む。レーザチャンバ12は、流動し加圧されているガス混合物を含有する。ガス混合物は、2つの細長電極間を流動する電流の短パルスによって通電させられ、それによって、励起された二量体分子を含むパルス状ガス放電を生成する。細長電極、パルス状電流を注入する電力供給源、ガスリザーバ、ガス混合物を加圧するためのポンプ、およびガス混合物を流動させるための送風機は、例証の明確性のために、図面から省略される。高反射性ミラー16および出力結合ミラー18は、ガス放電についての線形レーザ共振器を形成し、線形レーザ共振器は、光軸22に沿って伝搬するパルス状レーザビーム20を発生させる。
【0021】
窓14は、レーザビーム20の波長において高透過率を有する。図面では、窓は、直角入射角におけるレーザビーム20とともに描写される。この配列では、窓は、レーザビームの波長において反射防止コーティングされ得る。代替配列では、コーティングされていない窓が、Brewster角度に向けられ得る。高反射性ミラー16は、約100%の反射率を有する。出力結合ミラー18は、典型的に4%~10%、最も典型的には5%~8%の反射率を有する。両ミラーは、通常、平面を有する。レーザビーム20は、境界光線によって描写され、実線は、空洞内レーザビームを示し、破線は、出力レーザビームを示す。
【0022】
図2Aは、レーザ共振器の各端部におけるエキシマレーザ10のさらなる詳細を図式的に例証する拡大図である。高反射性ミラー16および出力結合ミラー18は両方とも、レーザビーム20に対して略直角入射角に向けられる。ガス放電中の高い利得に起因して、比較的高い出力結合器透過率が要求され、したがって、出力結合ミラー上に入射する空洞内ビームの多くの部分が、出力ビームになる。出力ビームは、遠視野φ内に周角ビーム発散を有し、これは、典型的に、1ミリラジアン(mrad)の桁であり、短寸法より長寸法において若干大きい。短寸法におけるビーム発散は、より典型的には、0.8mrad~1.5mradの範囲内である。
【0023】
図3Aは、図1Aおよび2Aに例証されるタイプの先行技術のエキシマレーザからのレーザビームの横方向空間モードの近視野カメラ画像である。レーザビームは、約15mm×35mmの寸法を有し、これは、ここでは水平×垂直である。レーザビームの長垂直寸法は、電極間の物理的分離距離によって決定される。ガス混合物を通って流動する電流は、垂直である。レーザビームの短水平寸法は、電極の幅および構成によって決定される。
【0024】
微細構造は、垂直「ストリーマ」によって左右され、一部は、ビームの全高に延在し、これは、ビームがガス放電中で増幅されるにつれて、空間モード上に転写される。パルス毎に変化する利得中の空間変調は、上記に議論されるガス放電中の不安定性およびガス流動中の乱流に起因する。パルス毎に不変である微細構造の静的成分は、窓の汚染によって引き起こされる損失における空間変調と、集中紫外線レーザ放射によって誘発される窓への損傷による空間変調とに起因する。汚染および損傷は、レーザの動作の間蓄積し、窓が置換されるまで、性能を劣化させる。窓置換は、長い間隔が空く保守手続である。
【0025】
図1Bは、本発明によるエキシマレーザ30の1つの好ましい実施形態を図式的に例証する側面図である。エキシマレーザ30は、レーザチャンバの各端部に位置する2つのミラーを有する。一端には、第1の背面ミラー32および第2の背面ミラー34が存在し、第2の背面ミラー34は、第1の背面ミラー32とレーザチャンバ12との間に位置する。第1の背面ミラー32は、高反射性ミラー16と同様に、レーザビーム20の波長において約100%の高反射率を有する。第2の背面ミラー34は、部分的反射性であり、20%~80%の範囲内、最も好ましくは、35%~65%の範囲内の反射率を有する。反対端には、第1の出力結合ミラー36および第2の出力結合ミラー38が存在する。エキシマレーザ10内の出力結合ミラー18と同様に、第1の出力結合ミラー36および第2の出力結合ミラー38は両方とも、比較的低い反射率を有し、したがって、2つの出力結合ミラー上に入射する空洞内ビームの多くの部分が、出力ビームとなる。例えば、各ミラーは、5%未満の反射率を有する。
【0026】
図2Bは、レーザ共振器の各端部におけるエキシマレーザ30のさらなる詳細を図式的に例証する拡大図である。第1の背面ミラー32および第2の背面ミラー34は両方とも、傾斜させられている。第1の背面ミラー32の法線は、光軸22に対して角度θを有し、第2の背面ミラー34の法線は、光軸22に対して角度θを有する。第1の出力結合ミラー36および第2の出力結合ミラー38の両方もまた、傾斜させられている。第1の出力結合ミラー36の法線は、光軸22に対して角度θを有し、第2の出力結合ミラー38の法線は、光軸22に対して角度θを有する。
【0027】
描かれるように、第1の背面ミラー32は、第1の出力結合ミラー36と略平行であり
【化1】

、第2の背面ミラー34は、第2の出力結合ミラー38と略平行である
【化2】

が、これは、本発明のエキシマレーザが機能するために要求される条件ではない。第1および第2の背面ミラーは、個別の光学構成要素として描写され、各光学構成要素は、平行な平面を有し、表面のうちの1つは、ミラーである。代替および便宜的配列は、これらの背面ミラーが1つの楔形状光学構成要素の対向する表面であるものである。同様に、第1および第2の出力結合ミラーは、別の楔形状光学構成要素の対向する表面であり得る。
【0028】
ミラー傾斜の効果が、図1Bに描写される。空洞内ビームが部分的反射性の第2の背面ミラー34と、弱反射性出力結合ミラー36および38とによって分割されることに起因して、レーザビーム20は、本質的に複合ビームとなる。この分割は、図面中に異なる破線境界光線によって示される複合出力ビームを生み出す。成分出力ビームは、必ずしも同一電力を有するわけではないが、主成分は、いくつかの実施形態では、ほぼ同一電力を有し得る。相互に対する成分出力ビームの伝搬角度は、例証目的のために、誇張されている。エキシマレーザ30では、光軸22は、複合出力ビームに沿った連続場所においてビーム重心を接続する線として画定され、ビーム重心は、その横方向空間モードの一次モーメントによって決定される。
【0029】
図2Bに戻ると、ミラー32~38の傾斜角度θ~θもまた、誇張されている。本発明者らは、微細構造内の明るさコントラストの有意な低減が、エキシマレーザ10等の共振器ミラー傾斜を有していない同等エキシマレーザの周角発散φの5%~20%の範囲内の傾斜角度を用いて取得され得ることを見出した。例として、直角入射における共振器ミラーを用いて1mradの周角ビーム発散を有するエキシマレーザに関して、0.05mrad~0.2mradの角度θ~θだけ直角入射からミラー32~38を傾斜させることは、微細構造の有意なぼけを引き起こし得る。この例示的エキシマレーザに関して、微細構造の有用なぼけを達成するために、第1の背面ミラー32は、第2の背面ミラー34に対して少なくとも0.05mradだけ傾斜させられ、第1の出力結合ミラー36は、第2の出力結合ミラー38に対して少なくとも0.05mradだけ傾斜させられ得る。
【0030】
傾斜角度を選択する際、微細構造をぼかすための成分ビームの混合を高めることと、望ましくないこともある複合出力ビームの周角発散φ’を増加させることとの間に、妥協が存在する。周角発散φに対して小さい傾斜角度を選択することは、光軸22を中心とした各傾斜の向きがあまり臨界的ではないことを意味する。いくつかの向きは、微細構造をぼかすためにより良好であることが見出されている。これは、微細構造が、そうでなければ図3Aに見られる垂直ストリーマによって左右されるためである可能性が最も高い。同様に、相対的傾斜角度θ+θおよびθ+θは、個々の傾斜角度θ~θより、微細構造をぼかすために臨界的である。しかしながら、
【化3】

および
【化4】

を選択することによって光軸を中心として対称的に傾斜させることは、全体的周角発散φ’を最小限にすることに役立つ。
【0031】
図3Bは、図1Bおよび2Bに例証されるタイプの本発明のエキシマレーザからのレーザビームの横方向空間モードの近視野カメラ画像である。背面ミラー32および34は、透明楔形状基板の対向する側に堆積させられたコーティングであった。出力結合ミラー36および38もまた、同じ基板の対向する側に堆積されたコーティングであった。楔状基板の厚さは、約5mmであった。楔角度は、約0.12mradであった。2つの楔は、相互に対して約90であり、水平軸および垂直軸に対して約45に向けられた。これらの向きは、パルスエネルギー、パルスエネルギー安定性、ビーム発散、およびビーム対称性を含む、全体的レーザ性能を最適化するように実験的に決定された。各楔の薄縁は、図3Bにおいて視認されるように、底の角に最も近い。反射率は、第2の背面ミラー34に関して約50%であり、出力結合ミラー36および38の各々に関して約2.75%であった。
【0032】
図3Bの複合出力ビームは、同等の先行技術のエキシマレーザによって発生させられた図3Aのビームに関する約1.0mradの発散角度φと比較して、約1.3mradの発散角度φ’を有する。図3Bの複合出力ビーム内の微細構造は、図3Aのビームの微細構造と比較して実質的にぼかされている。図3Aにおいてみられる垂直ストリーマは、図3Bではほぼ見えない。図3Bの本発明のエキシマレーザは、図3Aの先行技術のエキシマレーザの効率の約99%を有していた。このかなりわずかな効率の1%の低減が、窓置換によって引き起こされる効率変化に匹敵する。
【0033】
図4Aは、図3Aの先行技術のエキシマレーザからのレーザビームの1000枚のカメラ画像から測定された相対的エネルギー偏差対パルス数を図式的に例証するグラフである。各カメラ画像は、1つのレーザパルスを捕捉する。エネルギー偏差は、各画像の重心に最も近いピクセルのものである。標準偏差は、6.46%である。図4Bは、図3Bの本発明のエキシマレーザからの複合出力ビームの1000枚のカメラ画像から測定された相対的エネルギー偏差対パルス数を図式的に例証するグラフである。標準偏差は、4.42%である。図3Bおよび図4Bは、本発明のエキシマレーザの出力ビームが、同等の先行技術のエキシマレーザの出力ビームより有意に均一かつ安定することを示す。
【0034】
本発明のエキシマレーザの利点は、より弱く、およびしたがってよりコストがかからないビームホモジナイザが、先行技術のエキシマレーザと同一の処理品質を達成するために使用されることができることである。別の利点は、出力ビーム内の不安定性および非均一性が、プロセスのための最大許容限界に到達するのにより長くかかるので、ガス交換および窓置換の間の時間間隔が延ばされることができることである。これらの保守手続間の平均時間間隔またはスケジュールされた時間間隔を延ばすことは、レーザ休止時間および所有コストを低減させる。
【0035】
本発明の一実施形態は、2つの背面ミラーと、2つの出力結合ミラーとを有するように上記に説明されるが、付加的な部分的反射性背面ミラーおよび/または付加的な出力結合ミラーが、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、微細構造をさらに軽減するために含まれ得る。本発明の別の実施形態では、エキシマレーザは、高反射性である1つの背面ミラーと、複数の出力結合ミラーとを有する。本発明のさらに別の実施形態では、エキシマレーザは、高反射性背面ミラーと、複数の部分的反射性背面ミラーと、1つの出力結合ミラーとを有する。
【0036】
上記に説明される共振器ミラーは、平面を有していたが、エキシマレーザミラー表面は、時として、若干の曲率を有する。当業者が認識するように、本発明の原理は、若干の曲率を有する共振器ミラーにも適用されることができる。
【0037】
本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態の観点から上記に説明される。しかしながら、本発明は、本明細書に説明および描写される実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、本明細書に添付の請求項によってのみ限定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B