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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】静電チャック用高密度耐食層配置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240112BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20240112BHJP
   C04B 35/117 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
C04B35/117
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021559397
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 US2020027618
(87)【国際公開番号】W WO2020214494
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】62/836,277
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1906266.0
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506139473
【氏名又は名称】モーガン・アドヴァンスド・セラミックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MORGAN ADVANCED CERAMICS, INC.
【住所又は居所原語表記】2425 Whipple Road, Hayward, CA 94544, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】リー、チェンツィン
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0151467(US,A1)
【文献】特開平11-314970(JP,A)
【文献】特開平01-317164(JP,A)
【文献】特開平08-175888(JP,A)
【文献】特開昭63-064982(JP,A)
【文献】特開昭62-264638(JP,A)
【文献】特開2005-210077(JP,A)
【文献】特開2002-203893(JP,A)
【文献】特開2002-141407(JP,A)
【文献】米国特許第06641939(US,B1)
【文献】特表2017-526187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057880(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
C04B 35/117
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.第1のセラミック層、
B.第2のセラミック層、
C.前記第1のセラミック層と前記第2のセラミック層との間に配置されたメタライズ層
を含む、静電チャック用層配置であって、
前記第1のセラミック層は、
少なくとも90.0重量%の、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、遷移金属酸化物、またはそれらの組み合わせ、および
0.1~10.0重量%の範囲の酸化タンタル(Ta
を含
前記第1のセラミック層の上面またはその近傍のTa 濃度は、前記第1のセラミック層と前記メタライズ層との界面またはその近傍のTa 濃度より低い、静電チャック用層配置。
【請求項2】
前記第1のセラミック層は、上部誘電体層である、請求項1に記載の層配置。
【請求項3】
前記上部誘電体層は、20μm~200μmの範囲の厚さを有する、請求項2に記載の層配置。
【請求項4】
前記第1のセラミック層は、少なくとも98重量%のアルミナを含む、請求項1に記載の層配置。
【請求項5】
前記第1のセラミック層は、少なくとも99.0重量%の、酸化タンタル、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、および遷移金属酸化物の合計を含む、請求項1に記載の層配置。
【請求項6】
前記メタライズ層は、白金、パラジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、およびそれらの合金からなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の層配置。
【請求項7】
前記第2のセラミック層は、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の層配置。
【請求項8】
前記第1のセラミック層と前記メタライズ層との界面にTa相をさらに含む、請求項1に記載の層配置。
【請求項9】
前記メタライズ層の近傍の前記第1のセラミック層中のTa相の断面積は、前記第1のセラミック層の上面の近傍の前記第1のセラミック層中のTa相の断面積より20%超大きい、請求項1に記載の層配置。
【請求項10】
前記第1のセラミック層の密度は、その理論最大密度の97%超である、請求項1に記載の層配置。
【請求項11】
前記第2のセラミック層の密度は、前記第1のセラミック層の密度より低い、請求項1に記載の層配置。
【請求項12】
前記第1のセラミック層は、遷移金属酸化物をドープしたアルミナと、0.5重量%~10.0重量%のTaとを含む静電荷散逸性材料を含み、前記遷移金属酸化物は、前記第1のセラミック層中のセラミック材料の総重量に基づいて1.0重量%~8.0重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の層配置。
【請求項13】
前記遷移金属酸化物は、チタニア(TiO)を含む、請求項12に記載の層配置。
【請求項14】
前記第1のセラミック層は、2.0重量%~6.0重量%のTaを含む、請求項12に記載の層配置。
【請求項15】
層状配置は、同時焼成層状配置である、請求項1に記載の層配置。
【請求項16】
請求項1に記載の層配置を含む静電チャック。
【請求項17】
前記第1のセラミック層は、少なくとも60V/μmの破壊電圧を有する、請求項16に記載の静電チャック。
【請求項18】
A.グリーン状態の第1の材料を含むベース層を形成すること、
B.高融点メタライズ形成材料を前記ベース層に塗布してメタライズ層を形成すること、
C.グリーン状態の第2の材料を含む上部層を前記メタライズ層の上に配置すること、
D.前記ベース層、前記メタライズ層、および前記上部層を十分な温度および時間で同時焼成して液体Ta相を形成すること
を含む、静電チャック用層配置の製造方法であって、
前記液体Ta相は、前記上部層、前記メタライズ層、および前記ベース層の間の界面に向かって移動し、
同時焼成状態では、前記上部層は、少なくとも90.0重量%の、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、またはそれらの組み合わせと、0.1~10.0重量%の範囲の酸化タンタル(Ta)とを含む第1のセラミック材料を含む、静電チャック用層配置の製造方法。
【請求項19】
前記第1のセラミック材料は、99.0重量%超のアルミナと、1.0重量%未満のTaとを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法によって形成された層配置を含む製品。
【請求項21】
ハロゲンガス環境でシリコンウエハを製造するプロセスであって、前記シリコンウエハは、請求項18に記載の方法によって形成された静電チャックにより静電的に保持される、プロセス。
【請求項22】
前記ハロゲンガス環境は、塩素または三塩化ホウ素ガスを含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記プロセスは、イオン注入を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
A.第1のセラミック層、
B.第2のセラミック層、
C.前記第1のセラミック層と前記第2のセラミック層との間に配置されたメタライズ層
を含む、静電チャック用層配置であって、
前記第1のセラミック層は、遷移金属酸化物をドープしたアルミナと、2.0重量%~10.0重量%のTaとを含む静電荷散逸性材料を含み、前記遷移金属酸化物は、前記第1のセラミック層中のセラミック材料の総重量に基づいて1.0重量%~8.0重量%の範囲の量で存在する、静電チャック用層配置。
【請求項25】
前記遷移金属酸化物をドープしたアルミナは、前記第1のセラミック層の少なくとも90重量%を占める、請求項24に記載の層配置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電チャック用層配置、その製造方法、および前述の層配置を含有する静電チャックに関する。具体的には、開示は、静電チャック中の上部誘電体層と絶縁層との間に配置されたメタライズ層に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャック(ESC)は、半導体デバイス作製プロセスでシリコンウエハなどの基板を固定するのに広く使用されている。ESCは、導電層がセラミック絶縁体間に挟まれてそれらがデバイスと直接接触することを防ぐ層状構造である。アルミナおよび窒化アルミニウムが、ESCで主に使用されるセラミックである。導電層は、しばしば「トレース」または「電極」と呼ばれ、典型的にはモリブデンおよびタングステンなどの高融点金属から作られる。トレースは、セラミック層を貫通して外部電源からの電気エネルギーを提供する、「ビア」と呼ばれる層間導電路によってさらに接続される。
【0003】
米国特許第5,671,116号は、セラミックESCを製造するための同時焼成方法論を教示する。このプロセスでは、まず、セラミックテープが、それらを結合させる様々な有機および無機バインダと混合されたテープキャスティング粉末によって形成される。次いで、導電性トレースが、グリーン状態のセラミックテープの上にメタライズされる。次いで、メタライズされたグリーンテープは、互いの上に積み重ねられ、次いでプレスされてそれらを積層させる。ビアは、セラミック層に開けられたビアホールに高融点金属ペーストまたは粉末を挿入することによって形成される。次いで、結果として得られる積層グリーン部品は、高温で同時焼成されてモノリスESC体を作る。
【0004】
しばしば誘電体層と呼ばれ、ウエハと直接接触するESCの上部セラミック層は、ESCで最も重要なセラミック層である。その主要な機能は、ウエハとその下の電極との間に絶縁層を提供することである。その絶縁耐力は、ウエハを固定するために加えられる電場の破壊力に耐えなければならない。それはまた、処理中に電極材料からデバイスに移動する任意の金属不純物を防ぐ。エッチングおよび堆積などのプロセスチャンバでは、フッ素および塩素などの刺激の強いガスが使用され、それらは性質がますます腐食性になっている。そのような場合、セラミック層の組成物は、腐食性プロセスガスによって溶解してデバイスを汚染してはならないことが最重要である。
【0005】
高い絶縁破壊強さを維持するために、セラミックは、ほぼ完全に高密度でなければならない。米国特許US4678683、US5207437、およびUS5104834は全て、層状メタライズ構造の焼結中にセラミックを高密度化するための液相焼結助剤として、カルシアおよびマグネシアとともにシリカを使用することを開示する。アルミナ中のそのような組成物は、高密度の焼結体を与えるが、いくつかの落とし穴を有する:
・組成物は、半導体作製プロセス中にフッ素および塩素などハロゲンプラズマガスに攻撃され、
・組成物は、液相形成に関連する比較的高い不純物含有量を有する。不純物は、誘電体層を通ってガス処理環境中および有害にもシリコンウエハの表面上により移動しやすいため、高い不純物含有量は、組成物を高温処理環境に適さないものにする。
【0006】
したがって、耐食性および処理環境中への不純物の移動に対する耐性の両方があるESCを開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、
A.第1のセラミック層、
B.第2のセラミック層、
C.第1のセラミック層と第2のセラミック層との間に配置されたメタライズ層
を含む、静電チャック用層配置が提供され、
第1のセラミック層は、少なくとも90.0重量%の、
(i)アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、もしくはそれらの組み合わせ、または
(ii)遷移金属酸化物をドープしたアルミナ、および
好ましくは、第1のセラミック層を、第1のセラミック層の理論最大密度(すなわち、気孔率0%)の少なくとも97%、または98%、または98.5%、または99.0%に高密度化するのに十分な酸化タンタル(Ta)を含む。酸化タンタル(Ta)は、好ましくは0.05~10.0重量%の範囲で存在する。
【0008】
いくつかの実施形態では、焼結助剤として使用された、比較的少量の酸化タンタル(例えば、2.0重量%未満)が、高密度、高純度のセラミックを生成することができることが見出された。これらの実施形態では、第1のセラミック層は、好ましくは、少なくとも90.0重量%の、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、またはそれらの組み合わせを含む。
【0009】
他の実施形態では、より多くのTaが、第1のセラミック層を高密度化するためのTa液相を形成するのに必要とされ得る(例えば、2.0重量%~6.0重量%、または10重量%以上)。これらの実施形態では、第1のセラミック層は、好ましくは、少なくとも90.0重量%の、チタニアなどの遷移金属酸化物をドープしたアルミナを含む。
【0010】
Taは、大抵の環境中で高度に不活性であり、したがって、処理環境中に移動する傾向が低い。処理環境は、450℃超、または550℃超、または650℃超、または750℃超であってよい。
【0011】
好ましくは、少なくとも92.0重量%、または少なくとも94.0重量%、または少なくとも96.0重量%、または少なくとも98.0重量%、または少なくとも99.0重量%の、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、遷移金属酸化物、またはそれらの組み合わせが存在する。
【0012】
第1の層は、少なくとも95.0重量%、または少なくとも97.0重量%、または少なくとも98.0重量%、または少なくとも99.0重量%、または少なくとも99.5重量%、または少なくとも99.8重量%の、酸化タンタル、およびアルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、遷移金属酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0013】
第1のセラミック層は、好ましくは、アルミナまたはAlNを含む。
【0014】
第1のセラミック層は、好ましくは、8.0重量%以下のTa、または6.0重量%以下もしくは4.0重量%以下のTa、または2.0重量%以下もしくは1.5重量%以下のTa、または1.0重量%以下もしくは0.8重量%以下のTa、または0.7重量%以下もしくは0.6重量%以下のTa、または0.5重量%以下もしくは0.4重量%以下のTaを含む。好ましくは、第1のセラミック層は、0.2重量%以上のTa、または0.3重量%以上のTaを含む。必要なTaの量は、第1のセラミック層の組成、要求される目標密度ならびに/または目標焼結温度および時間、ならびに層配置が曝露されることになるプロセス環境に依存し得る。より高レベルのTaは、高密度化プロセスにおける著しいさらなる利益を提供しない場合があるが、より低レベルは、目標条件で目標密度要求を提供するのに十分でない場合がある。
【0015】
好ましくは、第1のセラミック層は、上部誘電体層である。上部誘電体層は、処理チャンバ中でウエハと直接接触し得、したがって、誘電体層の表面には、好ましくは実質的に揮発性不純物種(例えば、CuおよびNa)がない。
【0016】
好ましくは、第1のセラミック層は、第1のセラミック層とメタライズ層との界面にTa相を含む。
【0017】
一実施形態では、層状配置の製造の同時焼成プロセス中に、層状配置は、一定期間、Taの融点未満に加熱され、メタライズ層および隣接する第2のセラミック層の周りの、より多孔性の領域に引き寄せられる液体Ta-アルミナ相の形成をもたらす。好ましくは、Taは、1600℃以下、より好ましくは1400℃以下で、第1のセラミック層内に液相を形成することができる。
【0018】
結果として、上部誘電体層の上面(Ta欠乏相)のTa濃度は、第1のセラミック層とメタライズ層との界面のTa相(例えば、ガラス)より低いTa濃度を有する。好ましくは、第1のセラミック層の上面のTa濃度は、メタライズ層と第1のセラミック層との界面のTa相のTa濃度より、少なくとも20%、または50%、または80%低い。Taのこの分布は、Taは大抵のガス環境に反応しないが、フッ素ガスと反応しやすいため有利である。したがって、ガス環境と直接接触する表面は、Taが少ない。さらに、使用されるセラミック酸化物がアルミナである実施形態では、Taが、フッ素ガスに対してTa単独より高耐食性であり得るアルミナ系ガラスを形成すると考えられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、メタライズ層の近傍のタンタル相の断面積(例えば、メタライズ層から最大30μm以下の点でおよそ300μm以上(例えば、20μm×15μm)の最小試料断面積)は、上部誘電体層の表面の近傍のタンタル相の断面積(例えば、表面から最大30μm以下の点でおよそ300μm以上(例えば、20μm×15μm)の最小試料断面積)の、20%超、または40%超、または80%超、または100%超、または150%超、または200%超を有する。
【0020】
Ta相は、比較的高い融点および比較的低い蒸気圧を有する。Ta相は、1000℃以上までの温度で耐食性かつ不揮発性であるだけでなく、第1のセラミック層を通って処理チャンバ中に移動するより揮発性の高い不純物を防ぐ障壁を形成する。したがって、層配置は、半導体の製造においてウエハを汚染しない一方で、高温腐食性環境中で信頼性のある動作を行うことができることの利益を有する。
【0021】
具体的には、イオン注入チャンバなどの非エッチング用途では、Taが、マグネシアおよびカルシアなどの他のバインダと比較して低い蒸気圧を有するため、酸化タンタルドープアルミナESCは、はるかに清浄な処理環境を与える。
【0022】
腐食性ガス内での、Ta誘電体上部層を有するESCの不活性な性質は、ESCが、従来のESCと比較して長期間にわたってその機械的健全性を維持することも可能とする。
【0023】
高温焼結中の液体Ta相の形成は、セラミック層とメタライズ層との結合も助け、したがって、ESC中の異なる層の剥離を防ぐ。
【0024】
第1のセラミック層の厚さは、典型的には、10μm~1.0mm、または20μm~500μm、または30μm~400μm、または40ミクロン~300μm、または50μm~200μmであり、第1のセラミック層の特定の用途および組成に応じて、その間の全ての部分範囲および値を含む。第1のセラミック層が、イオン注入プロセスで使用されるESCの上部誘電体層である場合、誘電体層は、500V~2000Vの電圧範囲に耐える必要がある。エッチングまたは堆積プロセスで使用されるESCでは、誘電体層は、3000V~6000V、好ましくは1000V~3000Vの電圧に耐える必要があり得る。
【0025】
一実施形態では、上部誘電体層は、少なくとも60V/μm、または少なくとも70V/μm、または少なくとも80V/μmの破壊電圧を有する。
【0026】
Al(99.5重量)-Ta(0.5重量%)誘電体層では、絶縁破壊電圧は、およそ2000V/milまたは80V/μmである。安全マージンを加える場合、誘電体層のおおよその厚さは、10μmまたは20μm~200μmであり得る。本明細書の実施形態の層配置の優れた絶縁破壊強さは、(Morgan Advanced Ceramics、Hayward、CAから入手可能な)Al-995(商標)およびAl-998(商標)などの従来の高純度誘電体層と比較して、同じ印加電圧で薄い誘電体層の使用を可能とする。
【0027】
第1のセラミック層の密度は、好ましくは、0%の気孔率を有するセラミック材料の理論最大密度の97%超、より好ましくは98%超、さらにより好ましくは99%超である。あるいは、第1のセラミック層のボイド含有率は、好ましくは、3%v/v未満、より好ましくは2%v/v未満、さらにより好ましくは1%v/v未満である。
【0028】
第1のセラミック層の密度は、3.90g/cm超、または3.91g/cm超、または3.92g/cm超、または3.93g/cm超、または3.94g/cm超、または3.95g/cm超であってよい。
【0029】
第2のセラミック層の密度は、好ましくは、第1のセラミック層の密度より低い。第2のセラミック層は、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
第1および第2の層を形成するセラミック材料は、好ましくは約0.5~5μm、より好ましくは1~3μmの平均粒子径を有する。
【0031】
第1および第2のセラミック層は、好ましくは、同じセラミック構成成分を含む。好ましい実施形態では、第1および第2のセラミック層は、アルミナを含む。この実施形態の中では、第2のセラミック層は、好ましくは、高いアルミナ含有量を有する(例えば、Al-998(商標))。より高純度のアルミナは、焼結助剤が実質的にないため、焼結および高密度化するのがより困難である。そのため、第2のセラミック層の密度は、概して第1のセラミック層より低く、したがって、第2のセラミック相に向かってかつ第2のセラミック層の中に、液体Ta相が移動することを容易にする。第2のセラミック相中への液体Ta相の移動は、メタライズ層界面の隣接部のみであり得る(すなわち、第2のセラミック層全体を通して広がらない)。
【0032】
別の実施形態では、第1のセラミック層は、遷移金属酸化物をドープしたアルミナと、0.1重量%または0.5重量%~10.0重量%の酸化タンタル(Ta)とを含む静電荷散逸性材料を含む。遷移金属酸化物は、好ましくは、第1のセラミック層中のセラミック材料の総重量に基づいて1.0重量%~8.0重量%の範囲(好ましくは、1.5重量%~7.5重量%の範囲、または2.0重量%~7.0重量%の範囲)の量で存在する。この実施形態の中では、遷移金属酸化物をドープしたアルミナは、好ましくは、第1のセラミック層の少なくとも90重量%を占める。
【0033】
アルミナのドーピングは、参照により本明細書に組み込まれるUS6,641,939に開示されているように、ドープアルミナの抵抗率の制御を可能とする。
【0034】
遷移金属酸化物は、Re、Ti、V、Fe、Cr、Co、Mn、Ni、MoおよびNbの酸化物からなる群から選択されてよい。遷移金属酸化物は、好ましくはチタニアである。
【0035】
粒界相の連続性およびTa-チタン酸液相の濡れ角は、ドープアルミナの抵抗率を制御すると考えられる。1600℃以下の同時焼成温度でTa-チタン酸液相を形成するために、高純度アルミナと比較して多くの量のTaを、チタニアドープアルミナに加える必要があった(例えば、2.0重量%~10重量%の範囲のTa)。
【0036】
遷移金属酸化物ドープアルミナの第1のセラミック層を含む実施形態では、第1のセラミック層は、好ましくは、少なくとも20V/μm、または少なくとも30V/μm、または少なくとも40V/μmの破壊電圧を有する。
【0037】
第2の態様では、第1の態様の層状配置を含む静電チャックが提供される。
【0038】
第3の態様では、
A.第1または第2のセラミック層を形成して、グリーン状態のベース層を作り出す工程、
B.メタライズ層をベース層に塗布する工程、
C.第1または第2のセラミック層をメタライズ層の上に配置して、グリーン状態の上部層を形成する工程であって、前述の第1のセラミック層は、同時焼成状態では、
少なくとも90重量%の、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、遷移金属酸化物、またはそれらの組み合わせと、第1のセラミック層を、第1のセラミック層の理論密度の少なくとも97%、または98%、または98.5%、または99.0%に高密度化するのに十分な酸化タンタル(Ta)とを含み、酸化タンタル(Ta)は、好ましくは0.1~10.0重量%の範囲である、工程、
D.層を十分な温度および時間で同時焼成して液体Ta相を形成する工程
を含む、静電チャック用層配置の製造方法が提供され、
液体Ta相は、第1のセラミック層、メタライズ層、および第2のセラミック層の間の界面に向かって移動する。
【0039】
第4の態様では、
A.グリーン状態の第1の材料を含むベース層を形成する工程、
B.高融点メタライズ形成材料をベース層に塗布してメタライズ層を形成する工程、
C.グリーン状態の第2の材料を含む上部層をメタライズ層の上に配置する工程、
D.ベース層、メタライズ層、および上部層を十分な温度および時間で同時焼成して液体Ta相を形成する工程
を含む、静電チャック用層配置の製造方法が提供され、
液体Ta相は、上部層、メタライズ層、およびベース層の間の界面に向かって移動し、
同時焼成状態では、上部層は、少なくとも90.0重量%の、アルミナ、チタニア、ZrO、Y、AlN、Si、SiC、またはそれらの組み合わせと、0.1~10.0重量%の範囲の酸化タンタル(Ta)とを含む第1のセラミック材料を含む。
【0040】
層配置を形成する他の方法が可能であり、例えば、層をともに結合するのに、同時焼成ではなく接着剤を使用する。しかしながら、同時焼成は、上部層の表面からメタライズ層へのTa濃度勾配を促進し、それにより、
・メタライズ層またはその近傍に、誘電体層の表面に向かう揮発性不純物の移動を防ぐ障壁を作り出し、
・誘電体層とメタライズ層との間に結合層を作り出して、誘電体層とメタライズ層との剥離を防ぎ、
・実質的に揮発性不純物がなく、イオン注入チャンバなどの雰囲気が重要な環境中で動作することができる、不活性誘電体層表面を提供する
ため、一般に好ましい。
【0041】
好ましくは、第2のセラミック層はベース層であり、第1のセラミック層は上部層である。
【0042】
さらなる層(例えば、ヒータ層)が、同時焼成の前に配置に加えられてよい。さらなる層は、好ましくはベース層に加えられ、それにより、第1のセラミック層を上部層として維持する。
【0043】
メタライズ層と隣接するセラミック層との界面は、部分的には、熱膨張および/またはボイド形成のミスマッチのため、剥離およびボイド形成を起こしやすい。第1のセラミック層中の液体Ta相は、メタライズ層界面に向かって移動して、メタライズ層と隣接するセラミック層との間により強固な結合を形成する。
【0044】
典型的には、第1のセラミック層を、第1のセラミック層の理論最大密度の97.0重量%超に高密度化する温度および時間は、液体Ta相がメタライズ層の付着を改善するのに十分である。しかしながら、同時焼成条件を長時間(例えば、1時間超または2時間超)維持することは、さらなる好影響を与え得る。延長された同時焼成時間は、Ta相の移動のため、グリーン状態の表面と比較して、Taのレベルが低下した第1のセラミック層の表面ももたらし得る。表面層中のより低レベルの(例えば、グリーン状態の表面と比較して10%、または20%、または50%低い)Taは、塩素(ClおよびBCl)ガス環境、またはさらにはフッ素ガス環境中での用途に適した表面をもたらす。
【0045】
好ましくは、高密度化プロセス中、第2のセラミック層の密度は、第1のセラミック層の密度より低く、これは第2のセラミック相中および層境界の周りのより高いボイド含有率が、第2のセラミック層に向かう液体Ta相の移動を促進するためである。
【0046】
第1および第2のセラミック層は、乾式プレスまたはテープキャスティングを含む、任意の好適な技術によって形成されてよい。一実施形態では、第2の層は、乾式プレスによって形成され、第1の層は、テープキャスティングされる。そのようなプロセスの詳細は、参照により本明細書に組み込まれるUS20170057880に提供されている。テープキャスティングは、好ましくは、誘電体層が、200μm未満、より好ましくは100μm未満の厚さを有する場合に使用される。
【0047】
第2のセラミックグリーン層の厚さは、主にその特定の用途に依存して幅広く変動し得る。しかしながら、一般にその厚さは、約0.1mm~約5mmの範囲である。好ましくは、セラミックグリーン層は、均一または少なくとも実質的に均一な厚さのものである。
【0048】
メタライズ
メタライズ層は、高融点メタライズ形成材料を含み得、すなわち、同時焼成中に、高融点メタライズ形成材料は、導電性高融点金属相を基板上に形成する。一般に、メタライズ形成材料は、当該技術分野で知られており、市販されている。メタライズ形成材料は、好ましくは、同時焼成温度より著しく低い融点(例えば、50℃または100℃未満)を有する。メタライズ材料は、好ましくは、白金、パラジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、およびそれらの合金からなる群から選択される金属である。
【0049】
通常、メタライズ形成材料は、有機バインダおよび溶媒中に懸濁した高融点金属粒子を含むペーストまたはインクの形態である。メタライズ材料は、基板への金属の付着をさらに支援するいくらかのガラス形成成分(例えば、SiO、MgCO、カオリン)も含有し得る。しかしながら、形成される液体Ta相が基板へのメタライズ層の付着を改善し得るため、そのような添加は任意選択である。
【0050】
一般に、高融点金属粒子は、約0.1ミクロン~約20ミクロンの範囲の大きさである。
高融点金属は、その粒子が、本焼結性セラミック組成物の焼結中にともに焼結されて連続導電相を生成することができる、任意の金属であり得る。高融点金属は、セラミック組成物の焼結中に固体でなければならず、好ましくは、タングステンまたはモリブデンである。
【0051】
メタライズ材料を、多くの従来技術によってセラミック層と接触させることができる。一般に、メタライズ材料は、セラミック層の上および/または中に、予め選択された静電チャック電極パターンで堆積または印刷される。通常、メタライズ材料は、セラミック層上にスクリーン印刷される。
【0052】
作製
多層セラミック基板を有するモノリス体の作製では、複数のセラミックグリーン層が作製され、メタライズ材料は、それらの全てではないとしてもほとんどに、予め選択されたパターンで接触または印刷される。ビアまたは貫通孔が、層の相間接続のために必要に応じてシートに開けられてよく、通常ペースト状のメタライズ材料で充填されてよい。次いで、シートは、一般にサンドイッチを形成する予め選択された方法で、ともに積み重ねられ、すなわち、互いに重ね合わされる。スタックは、圧力下、および主にその特定の組成物によって決定可能であるが、通常約100℃より低い温度下で積層されて積層構造を形成し得、次いでそれが同時焼成される。
【0053】
メタライズ塗料を塗布した後、静水圧プレスが使用されて、グリーンテープおよび/または乾式プレスグリーンシートの複数の層が組み立てられ得る。典型的な圧力は、約103MPa(15kpsi)までであるが、より高い圧力が、必要に応じて使用されてよい。静水圧プレスは、テープ間の良好な積層を生成するだけでなく、焼成中の多層テープ構造の均一な収縮も確実にする。
【0054】
焼成された積層組立体が静電チャックとして使用される場合、同時焼成セラミック部品の外部表面または面は、基板ウエハと誘電体層の支持表面との間に最大表面積の接触があるように、実質的に平坦であることが必要であろう。同時焼成セラミック部品の平坦性を提供するために、層状配置を平坦に焼成する方法は、
a)少なくとも1つの実質的に平坦な表面を有する絶縁セッター上に層状配置を支持する工程、
b)層状配置が、絶縁セッターの実質的に平坦な表面と絶縁重りとの間にあるように、少なくとも1つの実質的に平坦な表面を有する絶縁重りを層状配置上に設置するかまたは組み立てる工程
を含む。
【0055】
工程(a)および(b)は、次いで、不活性ガス環境(例えば、N)または還元ガス環境(例えば、H)で焼結温度に焼成される。好ましくは、物品に隣接するセッターおよび/または重りの少なくとも1つの表面は、実質的に平坦に機械加工される。グリーン物品と接触するセッターおよび/もしくは重りの少なくとも1つの面を実質的に平坦に機械加工することによって、グリーン層状配置は、その平坦性を維持するか、または焼成中にセッターおよび/もしくは重りの表面の平坦性を取り込むことになる。例えば、後者の場合、グリーン層状配置は、乾式プレスまたは静水圧プレスまたはさらには取り扱いなどのその形成プロセスの結果として、完全に平坦ではないか、または不完全さを有し、セッターおよび重りの実質的に平坦な表面間でグリーン層状配置を焼成することによって、重りが加える圧力は、層状配置に、セッターおよび/または重りの平坦な表面の平坦性を実質的に取り込ませる。
【0056】
本構造は、好ましくは、同時焼成されて、約5ミクロン超のボイドのない焼結セラミック基板、および高融点金属の付着性導電相で構成される焼結構造を生成する。
【0057】
焼結中、第1のセラミック層は、好ましくは、所望の密度のセラミック基板を生成するためのTa液相を含む。好ましくは、Ta液相は、焼結金属粒子を隣接するセラミック層に結合する。焼結中、セラミックの焼結を可能とする液相の一部は、毛細管現象によって焼結する高融点金属粒子間の隙間に移動し、基板への高融点金属相の付着を支援する、高融点金属の連続相と混ざった相、通常はガラス相をもたらす。焼結温度は、主に特定のセラミック組成物に依存して幅広く変動し得るが、一般に1300℃超であり、通常約1350℃~約2100℃の範囲である。例えば、焼結性液相Ta-アルミナ組成物では、約1500℃~約1600℃の焼結温度が典型的である。
【0058】
静電チャックを形成する構成要素の処理についてのさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれるUS20170057880に見られ得る。
【0059】
タンタルは、便宜上、酸化物形態(Ta)として表され、タンタルは他の形態で存在し得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】静電チャックを形成する層配置の分解図である(正確な縮尺ではない)。
図2】実施形態による第1のセラミック層(上)、メタライズ層、および第2のセラミック層のSEM画像である。
図3図2の拡大SEM画像である。
図4】腐食試験後のAl-Ta組成物の重量減少(×10-4g/cm)のグラフである。
図5】腐食試験後のAl-Ta組成物の曲げ強さ(MPa)である。
図6】層配置の断面のSEM画像である。
図7】誘電体層の上部の断面のSEM画像である。
図8】誘電体層の中間部の断面のSEM画像である。
図9】誘電体層の底部の断面のSEM画像である。
図10】誘電体層中のタンタル相の存在を強調したSEM画像およびEDSスペクトルである。
図11a】デジタル画像ソフトウェアで処理された図9のSEM画像の一部である。
図11b】デジタル画像ソフトウェアで処理された図9のSEM画像の一部である。
図11c】デジタル画像ソフトウェアで処理された図9のSEM画像の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1を参照すると、乾式プレスから形成された上面22を有する厚さ150μmの上部誘電体層20、モリブデン系塗料組成物を含む電極相30(20μm)、厚さ約50μmの乾式プレス絶縁層40、モリブデン系塗料組成物を含むヒータ層(20μm)50、および厚さ150μmのベース層を含む、直径300mmの静電チャック10がある。
【0062】
誘電体層20、絶縁層40、およびベース層60の各々は、高純度アルミナを含んだ。誘電体層20は、99.5重量%のAl、0.5重量%のTa、および微量レベルの不純物を含んだ。薄い絶縁層40およびベース層60の両方は、99.8重量%のAl(Al-998(商標))の公称純度を有するアルミナ粉末から形成された。他の好適なアルミナ粉末としては、Al-995(商標)が挙げられる。高純度アルミナは、アルミナ配合物(Al-998(商標)、AL-995(商標)、およびE-1構成物)の主成分を形成し、アルミナ粒子は、~1.2μmの平均粒子径、~3.5m/gの表面積を有する。
【0063】
セラミック層は、US20170057880の段落57~62に記載されているように、噴霧乾燥アルミナ、バインダ、分散剤、および他の添加剤を使用して乾式プレスされた。
【0064】
図2を参照すると、同時焼成層配置10は、その中に分布した小さなボイドを含有する誘電体層20を含む。誘電体層20の上部70は、誘電体層20とメタライズ層30との間の界面領域80に比べてTaの割合が低いと予想される。メタライズ層は、焼結金属粒子およびガラス相を含み、そのいくらかは、メタライズ組成物の一部であったものであり得、いくらかは、誘電体層の中のTaに由来したものであり得る。絶縁層40は、誘電体層30と比較して高い割合でボイドを含む。
【0065】
界面領域80の拡大画像は、誘電体層20のバルクと比較して高い割合のこの領域中のボイドを示す。
【0066】
例:
試料
試料E-1は、99.5重量%のAl、および0.5重量%のTaの組成を有する。他の不純物は、0.1重量%未満である。Taは、1.0μm未満の平均粒子径を有し、(Alと比較して)小さい粒子径分布は、Al中のTaの均一な分散を支援する。E-1は、3.96g/cmの密度を有する。
【0067】
試料CE-1は、Morgan Advanced Ceramics(Hayward、CA)から入手可能なAl-995(商標)であり、99.5重量%のAl、およびガラス形成材料を含む0.5重量%の他の材料(Taを除く)の組成を有する。CE-1は、3.91g/cmの密度を有する。試料(E-1およびCE-1)は、室温で15Kpsiの圧力下で積層され、次いで、1575℃で2時間、H中で同時焼成された。
【0068】
試料E-2は、2.0重量%のTiO、4.0重量%のTa、0.1重量%未満の他の不純物、および残部Alの組成を有する。E-2は、3.96g/cmの密度を有する。
【0069】
試料CE-2は、エネルギー分散型X線分光(EDS)分析で、TiO、MgO、CaOおよびSiOの微量成分とともに主成分Alの存在を確認した、市販の組成物である。CE-2は、3.85g/cmの密度を有する。
【0070】
試料(E-2およびCE-2)は、室温で15Kpsiの圧力下で積層され、次いで、1600℃で2時間、H中で同時焼成された。
【0071】
耐食性および曲げ強さ
重量および曲げ強さが既知であり、15.5cmの平均試料表面積を各々有するCE-1およびE-1の試料を、各々濃度20%v/vの塩酸、硫酸、硝酸、または水酸化カリウムの水溶液150mlとともに、90℃で11週間、テフロン(登録商標)試験容器に入れた。次いで、試料を再秤量し、曲げ強さを再試験し、平均結果を図4および図5に提供した。
【0072】
結果は、試料CE-1(アルミナ-MgO-シリカ)と比較して、試料E-1(アルミナ-Ta)の耐食性および曲げ強さが改善されたことを実証する。
【0073】
誘電特性
試料E-1
ASTM D149に従って、室温で破壊電圧を決定した。結果(表1)は、Al-Ta誘電体層が、従来の高純度アルミナ誘電体層と比較して2倍をはるかに超える破壊電圧を有し、それにより、より薄い誘電体層の使用を可能とすることを示す。
【0074】
【表1】
【0075】
試料CE-1は、室温で800V/milの絶縁破壊電圧が報告されている。
【0076】
破壊電圧を、E-1およびCE-1と同じ条件下で処理した、99.8重量%のアルミナ(Morgan Advanced CeramicsからのAl998(商標))を含む上部誘電体層を含むESCでも決定した。密度は3.92g/cmであり、破壊電圧は、569~943V/milの間で変動し、平均741V/milであった。
【0077】
【表2】
【0078】
CE-2の破壊電圧は、11V/μmであった。
【0079】
E-2の体積抵抗率は、CE-2の1×10-11Ωcmに対して、2×10-11Ωcmであった。
【0080】
本明細書の層配置は、先行技術(例えば、US6,641,939)の従来の静電荷散逸性材料と比較して、高い破壊電圧(表2)、耐食性、および密度を提供することができる。
【0081】
第1のセラミック層の高密度化
試料を、焼結温度および時間を調節したことを除いて前述のように処理した。第1のセラミック層の密度は、温度および焼結温度に維持された期間の影響を受けた。表3に示すように、焼結温度および時間の組み合わせは、高密度化プロセスに影響を与える。焼結温度が十分に高い場合、時間は、液相のボイド空間への浸透の制限要因であり得、高密度化を図り得る。
【0082】
【表3】
【0083】
第1のセラミック層中のタンタルの分布
図6~9を参照すると、Taの濃度が、表面の近傍の断面領域の上部誘電体170(試料(A))、誘電体層の中間部の断面領域120(試料(B))、およびメタライズ層130の近傍の、誘電体層の底部の断面領域180(試料(C))において決定された。実質的な量のTaは、第2のセラミック層140中に見られなかったが、それは、金属静電チャック電極パターン130によって分離されているのではなく、第1および第2のセラミック層が界面接続する場所に存在しやすい場合がある。
【0084】
誘電体層の構成要素の断面表面積を、画像処理ソフトウェアツールであるImageJ(商標)を使用して決定した。(黒色として識別される)画像中のボイド空間およびアーチファクトを、総断面積から除いた。次いで、試料Bのタンタル相の検証(図10)に示すような、対応するEDSスペクトルから検証された組成とともに、タンタル部分のトーンに基づく閾値を使用して、グラフィックデータをバイナリ形式(白色-タンタル部分、黒色-他)に変換した。次いで、白色画素に対する黒色画素の割合を使用して、誘電体層の上部(A)、中間部(B)、および底部(C)のタンタル部分の断面積の割合を計算した。
【0085】
試料(C)の画像解析プロセスが図11a~cに示され、試料画像領域(図11a)は、最初に、ボイドおよびアーチファクトを除去するようにスクリーニングされ(図11b)、次いで、画像処理ツールを使用して、(図11bで識別されたボイドおよびアーチファクト領域を除く)残りの領域に対して識別された(図11c)タンタル相の断面積(白色)を特定する。同じ処理工程を、試料(A)および(B)のタンタル相の断面積の計算に使用した。
【0086】
(C)ではメタライズ層から最大30μm以下の点、および(A)では誘電体層表面から最大30μm以下の点で、およそ312μm(26μm×12μm)の試料断面積を使用して、誘電体層の上部(A)、中間部(B)、および底部(C)を解析し、EDS分析を使用して結果を表4に示した。表4に示すように、(試料の総有効面積、すなわち、総試料面積からボイドおよびアーチファクトが占める試料面積を差し引いたものに対する)タンタルの割合は、誘電体層の底部(C)で最高であり、タンタルの割合は、誘電体層の上部(A)に向かって徐々に減少した。これは、試料領域A(図7)、試料領域B(図8)、および試料領域C(図9)のSEM画像で参照され、メタライズ層130の上の図9では、Ta相(斑点状の白色相)がかなり多い。
【0087】
【表4】
【0088】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「様々な実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、材料、または特性が、開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所での「1つ以上の実施形態では」、「ある実施形態では」、「様々な実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」などの語句の出現は、開示の同じ実施形態に必ずしも言及していない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされ得る。
【0089】
本明細書の開示は、特定の実施形態に関する説明を提供したが、これらの実施形態は、開示の原理および用途の単なる例示にすぎないことが理解されるべきである。様々な修正および変形を、その趣旨および範囲を逸脱することなく本開示に行うことができることが当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変形を含めることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c