(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20240112BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20240112BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2022007053
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2022-01-20
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598122843
【氏名又は名称】オートリブ エー・エス・ピー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】ジェフェリー・ダニエル・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】チャンスー・チョイ
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/174892(WO,A1)
【文献】特開2019-055696(JP,A)
【文献】特開2019-167083(JP,A)
【文献】特開2016-190542(JP,A)
【文献】特開2016-132385(JP,A)
【文献】特開2000-159045(JP,A)
【文献】特開2020-164151(JP,A)
【文献】特開2017-056888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0126946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を保護するために車両内に設置されるように適合されており、座席の前方に膨張及び展開するバッグ状クッションを含み、前記乗員を拘束するように適合されているエアバッグ装置であって、前記クッションは、膨張した状態において、
前記車両の後部に向かって膨張する主膨張セクションと、
車両幅方向における前記主膨張セクションの両側で前記車両の前記後部に向かって突出する一対のローブと、
前記車両幅方向において前記主膨張セクションと前記ローブのそれぞれとの間にそれぞれ設けられており、前記車両の前記後部に向かって膨張する一対の二次膨張セクションと、
前記車両幅方向における前記クッションの内部の側面に取り付けられた第1の端部、及び前記二次膨張セクションの内面に取り付けられた第2の端部をそれぞれが有する一対のテザーであって、前記突出ローブが前記主膨張セクションを中心に振れることを防止するように適合されている一対のテザーとを備え、
前記一対のテザーのそれぞれは、単一の布片で形成されており、前記単一の布片は、折り畳まれており、それにより、折り畳まれた前記テザーは、折り畳まれた側と開放側とを有し、
折り畳まれた前記テザーには、内層及び外層が設けられており、それにより、前記クッションの前記膨張した状態において、折り畳まれた前記テザーに張力がかけられて、折り畳まれた前記テザーはY字形状を形成
し、
前記テザーの前記布の前記開放側は、前記テザーの前記第2の端部において設けられており、それにより、前記テザーの前記開放側において、前記内層及び前記外層の縁面のそれぞれは、前記二次膨張セクションを硬化させるために前記二次膨張セクションの前記内面に形成及び固定されている、エアバッグ装置。
【請求項2】
前記テザーの前記第2の端部において、前記内層は、前記主膨張セクションと前記二次膨張セクションとの間の第1の境界に接続されており、前記外層は、前記二次膨張セクションと前記突出ローブとの間の第2の境界に接続されている、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記テザーの前記布の前記折り畳まれた側は、前記テザーの前記第2の端部において設けられており、それにより、折り畳まれた面は、前記テザーの前記折り畳まれた側において前記内層と前記外層との間に形成されており、前記二次膨張セクションの前記内面に全体的に固定されている、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記車両幅方向における前記テザーの折り畳まれた面幅は、前記二次膨張セクションの幅に概ね等しい、請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記テザーのそれぞれは、前記第1の端部における第1の垂直寸法と、前記第2の端部における第2の垂直寸法とを有し、前記第2の垂直寸法は、前記クッションの前記膨張した状態において、前記第1の垂直寸法よりも大きい、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ローブのそれぞれは、前記主膨張セクションの後端面及び前記二次膨張セクションの後端面よりもさらに前記車両の前記後部に向かって突出する、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記二次膨張セクションのそれぞれは、前記車両幅方向における前記主膨張セクションの拡大範囲及び前記車両幅方向における前記ローブのそれぞれの拡大範囲よりも小さい前記車両幅方向における拡大範囲内で、前記車両の前記後部に向かって凸状に膨張する、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記二次膨張セクションの曲率半径は、前記クッションの前記膨張した状態において、前記主膨張セクションの曲率半径及び前記ローブの曲率半径よりも小さい、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記クッションの展開中に、前記テザーに張力がかけられ、このため、張力がかけられた前記テザーは、前記主膨張セクションと前記ローブのそれぞれとの間に配置された、前記突出ローブのローブクラップを防止するための前記二次膨張セクションを硬化させる、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両内に設置される乗員保護装置に関する。特に、本開示は、座席の前方に膨張及び展開するバッグ状クッションを含むエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションにおける記載は、本開示に関連する背景技術情報を単に提供し、先行技術を構成しない。
【0003】
フロントエアバッグ、カーテンエアバッグ、及びサイドエアバッグを安全拘束装置として含むエアバッグ装置は、世界中で販売されている自動車両において必須である。車両衝撃の事象又は転覆事象において、エアバッグのそれぞれと連結されたインフレータは、トリガされ、車両の衝撃方向に従ってエアバッグをそれぞれ展開する。特に、前部座席の乗員を主に車両の前方における衝撃から保護するために、運転者の座席には、フロントエアバッグがステアリングホイールの中央に設けられており、乗客用エアバッグは、インスツルメントパネルの内部に又はインスツルメントパネルの近隣領域内に、助手席の近傍に設けられている。加えて、前列座席及び後列座席のそれぞれの乗員を側面衝突又はその後に発生する転覆から保護するために、側窓に沿って膨張及び展開するカーテンエアバッグは、車両のルーフレールの近傍に設けられており、乗員の直側に膨張及び展開するサイドエアバッグは、座席の側部内に設けられている。
【0004】
様々なエアバッグ装置のエアバッグクッションは、乗員の身体の部分に適合する形状で作製され得、このため、乗員は効率的に拘束され得る。例えば、乗客用フロントエアバッグクッションにおいて、フロントエアバッグクッションの両側は、乗員の頭部を保護するためのエアバッグクッションの中央部分よりもさらに拡張し、それにより、乗員の頭部は、フロントエアバッグクッションの拡張された側によって覆われ得、保護され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加えて、最新のエアバッグは、衝撃力が斜め前方/後方方向から車両に作用する斜め衝突に適応可能である必要がある。斜め衝突において、乗員は、座席の前方に配置されたエアバッグクッションに、斜め方向に沿う角度で入る。そのような場合、乗員の頭部が座席の前方のエアバッグクッションと接触するときに、上から見て首を中心とする回転が頭部に発生し得る。そのような頭部の回転は、人体の構造の観点から乗員の損傷値を増加させる要因となる可能性が高いため、そのような回転を効率的に防止する要求がある。
【0006】
上述のように、いくつかのフロントエアバッグ設計は、拡張された側を特徴とし、拡張された側は、頭部が衝突において車両の前方又は斜め方向に移動したときに乗員の頭部を支持するのに役立つ。しかしながら、フロントエアバッグクッションからの拡張された側の形状は、衝突中に乗員の頭部を拘束するときに保持されないリスクがある。
【0007】
本開示は、乗員を保護するために車両内に設置されるように適合されているエアバッグ装置に関する。エアバッグ装置は、座席の前方に膨張及び展開するバッグ状クッションを含み、乗員を拘束するように適合されている。エアバッグクッションの膨張した状態において、クッションは、車両の後部に向かって膨張する主膨張セクションと、車両幅方向における主膨張セクションの両側で車両の後部に向かって突出する一対のローブ(lobe)と、車両幅方向において主膨張セクションとのローブのそれぞれとの間にそれぞれ設けられており、車両の後部に向かって膨張する一対の二次膨張セクションと、車両幅方向におけるクッションの内部の側面に取り付けられた第1の端部、及び二次膨張セクションの内面に取り付けられた第2の端部をそれぞれが有する一対の内部テザーとを含む。
【0008】
本開示では、クッションの内部に対称的に取り付けられた一対の内部テザーは、突出ローブが主膨張セクションを中心に振れることを防止するように適合されている。したがって、クッションの展開中に、テザーに張力がかけられ、張力がかけられたテザーは、主膨張セクションとローブのそれぞれとの間に配置された二次膨張セクションを硬化させ、このため、硬化した二次膨張セクションは、突出ローブのローブクラップ(lobe clap)を防止するように適合されている。
【0009】
本開示のさらなる態様によれば、一対のテザーのそれぞれは、単一の布片から形成されており、単一の布片は、折り畳まれており、それにより、折り畳まれたテザーは、折り畳まれた側と開放側とを有する。加えて、折り畳まれたテザーには、内層及び外層が設けられており、それにより、クッションの膨張した状態において、折り畳まれたテザーに張力がかけられて、折り畳まれたテザーはY字形状を形成する。テザーの第2の端部において、内層は、主膨張セクションと二次膨張セクションとの間の第1の境界に接続されており、外層は、二次膨張セクションと突出ローブとの間の第2の境界に接続されている。
【0010】
本開示のさらなる態様によれば、テザーの布の折り畳まれた側は、テザーの第2の端部において設けられており、それにより、折り畳まれた面は、テザーの折り畳まれた側において内層と外層との間に形成されており、二次膨張セクションの内面に全体的に固定されている。テザーの折り畳まれた面幅は、車両幅方向における二次膨張セクションの幅に概ね等しい。
【0011】
本開示の別の態様によれば、テザーの布の開放側は、テザーの第2の端部において設けられており、それにより、テザーの開放側において、内層及び外層の縁面のそれぞれは、二次膨張セクションの内面に形成及び固定されている。
【0012】
本開示のさらなる態様によれば、テザーのそれぞれは、第1の端部における第1の垂直寸法と、第2の端部における第2の垂直寸法とを有し、第2の垂直寸法は、クッションの膨張した状態において、第1の垂直寸法よりも大きい。
【0013】
本開示のさらなる態様によれば、ローブのそれぞれは、主膨張セクションの後端面及び二次膨張セクションの後端面よりもさらに車両の後部に向かって突出する。二次膨張セクションのそれぞれは、車両幅方向における主膨張セクションの拡大範囲及び車両幅方向における突出ローブの拡大範囲よりも小さい車両幅方向における拡大範囲内で、車両の後部に向かって凸状に膨張する。加えて、二次膨張セクションの曲率半径は、クッションの膨張した状態において、主膨張セクションの曲率半径及びローブの曲率半径よりも小さい。
【0014】
適用可能性のさらなる領域は、本明細書に提供されている説明から明らかになる。説明及び特定の例は、例示のためのみであることが意図されており、本開示の範囲を限定することは意図されていないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示が十分に理解されるために、本開示の様々な形態について、添付の図面を参照してここで例として説明する。
【0016】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施形態による、車両外側から見たエアバッグクッションを示す。
【
図1B】
図1Bは、車両の後部から見たエアバッグクッションを示す。
【0017】
【
図2C】
図2Cは、
図2Aに示す主膨張セクション、二次膨張セクション、及び突出ローブの近傍の拡大図である。
【0018】
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による
図1AのエアバッグクッションのA-A断面図を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、
図3のエアバッグクッションの内部に単一の布を有するテザーを示す。
【0019】
【
図4】
図4は、本開示の別の実施形態による
図1AのエアバッグクッションのA-A断面図を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、
図4のエアバッグクッションの内部に単一の布を有するテザーを示す。
【0020】
【
図5】
図5は、先行技術としてのエアバッグクッションの展開中に主膨張セクションを中心に振れる突出ローブのローブクラップの発生を示す。
【0021】
本明細書に示す図面は、例示のためのみであり、本開示の範囲を限定することは何ら意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明は本質的に単に例示であり、本開示、用途、又は使用を限定することは意図されていない。図面全体において、対応する参照番号は、同様の又は対応する部分及び特徴を示すことを理解されたい。
【0023】
図1A~
図1Cを参照すると、本発明の一実施形態によるエアバッグ装置100が示されている。
図1A、
図1B、及び
図1Cでは、エアバッグ装置100は、車両内の前部助手席102に座っている乗員を拘束するための乗客用エアバッグとして実施され、乗客用エアバッグは、左ハンドル車両内の右側座席102にある。以下、したがって、車両幅方向における車両外側とは、車両の右側を意味し、車両幅方向における車両内側とは、車両の左側を意味する。
【0024】
図1A~
図1Cに示すように、エアバッグ装置100のクッション200は、インスツルメントパネル108内に設けられた格納部106内に格納されている。(
図2Aも参照されたい)。格納部106は、座席102に対して車両の前部に向かって設置されており、エアバッグクッション200に加えて、ガス発生装置であるインフレータ114も格納する。エアバッグクッション200は通常、格納部106内に格納されており、座席102の前方に膨張及び展開する。エアバッグクッション200は、バッグ形状を有し、エアバッグクッション200の面を構成する複数の基布片又はブランクを重ね合わせて置くことと、ワンピース織(one-piece woven、OPW)を使用して複数の基布を縫合、接着、又は紡織し織ることとによって形成される。
【0025】
図1Aは、車両外側から見たエアバッグクッション200を示し、
図1Bは、車両の後部から見たエアバッグクッション200を示す。エアバッグクッション200は、本体部分202と、本体部分202の車両後方側に設けられた一対のローブ204及び206とを含む。格納部106(
図2を参照されたい)から、エアバッグクッション200の本体部分202は、インスツルメントパネル108の上面と車両のフロントガラス104との間の空間を充填するように、車両の後部に向かって膨張及び展開する。
図1A及び
図1Bに示すように、本体部分202は、エアバッグクッション200の大部分を占める。車両後方側の本体部分202の一部分は、(試験用人体模型(anthropomorphic test dummy、ATD)の形態で表されている)乗員112の頭部110を車両の前部から拘束する前方膨張セクション208を有する。一対のローブ204及び206は、エアバッグクッション200の本体部分202に対して、車両の後部内にわずかに上側に設けられており、本体部分202から突出する。加えて、ローブ204及び206は、車両幅方向における前方膨張セクション208の両側に設けられており、前方膨張セクション208よりもさらに車両の後部に向かって突出するように膨張して、乗員112の側頭部111を含む頭部110を主に拘束する。
【0026】
図1Cは、車両の後部からの詳細図を示す。
図1Cに示すように、一対のローブ204とローブ206との間に配置されたエアバッグクッション200の前方膨張セクション208は、主膨張セクション210と、一対の二次膨張セクション212及び214とを含む。二次膨張セクション212及び214はそれぞれ、車両幅方向における主膨張セクション210の両側に設けられており、それにより、二次膨張セクション212及び214のそれぞれは、主膨張セクション210とローブ204及び206のそれぞれとの間に配置されている。
【0027】
図2Aは、
図1Aに示すエアバッグクッション200のA-A断面図である。
図2Aに示すように、インフレータ114の一部は、エアバッグクッション200にガスを供給するためにエアバッグクッション200内に挿入されており、エアバッグクッション200は、座席102に向かって膨張及び展開し、車両の前部から乗員112を拘束する。一般に、インフレータ114は、格納部106の内部のクロスビームなどの車両の剛性部分に固定されている(
図1Aを参照されたい)。
【0028】
図2Aに示すように、一対の内部テザー216及び218は、エアバッグクッション200の内部に設けられている。第1のテザー216は、車両の外側220に配置されており、第2のテザー218は、車両の内側222に配置されている。第1のテザー216及び第2のテザー218は、同一であり、エアバッグクッション200の内部に対称的に設けられているため、以下、第1のテザー216の特徴について説明する。
【0029】
図2Aでは、第1のテザー216は、エアバッグクッション200の外側220の内面221に取り付けるための第1の端部213と、二次膨張セクション212の内面に取り付けるための第2の端部215とを含む。第1のテザー216と同様に、第2のテザー218はまた、エアバッグクッション200の内側222の内面223に取り付けるための第1の端部217と、二次膨張セクション214の内面に取り付けるための第2の端部219とを含む。両方のテザー216及び218はそれぞれ、エアバッグクッション200の内部の二次膨張セクション212及び214のそれぞれに接続されており、エアバッグクッション200が膨張及び展開すると、主膨張セクション210と二次膨張セクション212及び214とを含む前方膨張セクション208を引っ張るように、両方のテザー216及び218に張力がかけられる。
【0030】
図2Aに示すように、テザー216及び218はそれぞれ、車両長手方向に沿ってエアバッグクッション200の中心線Cに近接する内層226及び228と、突出ローブ204及び206に近接する外層227及び229とを含む。
図2Aでは、第1及び第2のテザー216及び218はそれぞれ、単一の布片224で形成されており、単一の布片224は、エアバッグクッション200の内部の内面への固定のための第1の端部213及び217並びに第2の端部215及び219をそれぞれ形成するように(
図3Aを参照されたい)、折り畳まれている。本開示の他の実施形態によれば、テザーは、エアバッグクッション200を取り付ける及びエアバッグクッション200に張力をかけるための複数の層を有する少なくとも2つの別個の布片で形成され得る。外層227及び229はそれぞれ、内層226及び228よりも突出ローブ204及び206に近接する部分に接続されており、内層226及び228は、車両長手方向に沿って外層227及び229からエアバッグクッション200の中心線Cに向かう所定の距離にある部分に接続されている。例えば、テザー216及び218の第2の端部215及び219における内層226及び228と外層227及び229との間の車両幅方向における距離は、二次膨張セクション212及び214の幅距離に概ね等しい。
【0031】
図2Bは、
図1Bのエアバッグクッション200のB-B断面図である。
図2Bは、第1のテザー216の内層226及び外層227を示す。第1のテザー216の内層226及び外層227は、第1のテザー216の第1の端部213から第2の端部215に向かって徐々に広がる同一の形状で形成されている。
図2A及び
図2Bに示すように、第2の端部215において、内層226及び外層227は、前方膨張セクション208に固定されており、第1の端部213において、内層226及び外層227は、エアバッグクッション200の外側220の内面221に固定されている。同様に、第2のテザー218の内層228及び外層229は、第2のテザー218の第1の端部217から第2のテザー218の第2の端部219に向かって徐々に広がる同一の形状である。加えて、第2の端部219において、第2の内層228及び第2の外層229は、前方膨張セクション208に固定されており、第1の端部217において、内層228及び外層229はまた、エアバッグクッション200の内側222の内面223に固定されている。したがって、エアバッグクッション200が膨張及び展開すると、第1及び第2のテザー216及び218の内層及び外層226、227、228、及び229は、張力が凸状にかけられるように、前方膨張セクション208を車両の前部に向かって効率的に引っ張ることができる。
【0032】
図1B及び
図2Aに示すように、前方膨張セクション208は、第1及び第2のテザー216及び218の内層226及び228と外層227及び229とによって、主膨張セクション210と二次膨張セクション212及び214とで形成されており、第1及び第2のテザー216及び218の内層226及び228並びに外層227及び229は、クッション200の内部に取り付けられており、張力がかけられている。主膨張セクション210は、車両幅方向における中央側で乗員112に向かって凸状に湾曲及び対向するように膨張する(
図1Cを参照されたい)。二次膨張セクション212及び214はまた、主膨張セクション210と突出ローブ204及び206のそれぞれとの間で乗員112に向かって凸状に湾曲及び対向するように膨張する。
【0033】
図1A及び
図2Aに示すように、エアバッグクッション200は、展開される前、インスツルメントパネル108の格納部106内に格納されている。衝撃が車両に発生したときに、
図1に示すように、動作信号は、センサ(図示せず)からエアバッグ装置100に送信され、エアバッグクッション200は、車両の前部座席に座っている乗員112に向かって膨張及び展開する。
図2Aに示すように、エアバッグクッション200が膨張及び展開したときに、第2の端部215及び219において、内層226及び228はそれぞれ、主膨張セクション208と二次膨張セクション212及び214のそれぞれとの間の内側境界230及び232を構成する部分に接続されており、外層227及び229はそれぞれ、二次膨張セクション212及び214のそれぞれと突出ローブ204及び206のそれぞれとの間の外側境界231及び233を構成する部分に接続されている。したがって、
図2Aに示すように、エアバッグクッション200の拡大及び展開により、第1及び第2のテザー216及び218の内層226及び228並びに外層227及び229に張力がかけられ、第1及び第2のテザー216及び218の内層226及び228並びに外層227及び229が前方膨張セクション208のそれぞれの部分を車両の前部に向かって引っ張ったときに、主膨張セクション210並びに二次膨張セクション212及び214は、乗員112を拘束するために、車両の後部に向かって凸状に膨張する。加えて、エアバッグクッション200が膨張した状態において、内層及び外層226、227、228、及び229を有するテザー216及び218に張力がかけられて、内層及び外層226、227、228、及び229を有するテザー216及び218はY字形状を形成する(
図3及び
図4を参照されたい)。
【0034】
図1A及び
図1Cを再び参照すると、エアバッグクッション200は、前方膨張セクション208を含む本体部分202で乗員の頭部110を拘束するように、車両の前部から後部に向かって乗員112に対して膨張する。しかしながら、斜め衝突中に、乗員112は、車両の前部に向かって移動し得、また、車両内側又は車両外側で斜め前方に移動し得る。斜め衝突において乗員を拘束するために、
図1C及び
図2Aに示すように、ローブ204及び206が、車両幅方向における前方膨張セクション208の両側から車両後方側に突出するように設けられている。
【0035】
図1C及び
図2Aに示すように、エアバッグクッション200の内部の取り付けられた及び張力がかけられたテザー216及び218に起因して、車両幅方向における前方膨張セクション208の両側にある突出ローブ204及び206は、エアバッグクッション200の傾き及びねじれのリスクを低減することによって、乗員112の頭部110及び側頭部111を拘束するように硬化する。特に、張力がかけられたテザー216及び218は、二次膨張セクション212及び214に固定されており、二次膨張セクション212及び214はそれぞれ、主膨張セクション210と突出ローブ204及び206のそれぞれとの間で凸状に湾曲する。
図1B及び
図1Cに示すように、二次膨張セクション212及び214が主膨張セクション208とローブ204及び206との間で押しつぶされることなく突出ローブ204及び206を支持するために、二次膨張セクション212及び214に張力が凸状にかけられ、二次膨張セクション212及び214は硬化する。したがって、エアバッグクッション200の内部の張力がかけられたテザー216及び218によって硬化した二次膨張セクション212及び214は、クッション200の展開中のローブクラップのリスクを低減又は排除する(
図5を参照されたい)。突出ローブを有する従来のエアバッグクッションでは、
図5に示すように、エアバッグクッションの展開中に、突出ローブは、前方膨張セクションを中心に振れることがあり、これはローブクラップと呼ばれる。しかしながら、本開示では、主膨張セクション210と突出ローブ204及び206のそれぞれとの間にそれぞれ配置された二次膨張セクション212及び214は、エアバッグクッション200の展開中のローブクラップのリスクを低減するように構成されている。
【0036】
本開示では、張力がかけられたテザー216及び218は、突出ローブ204及び206の硬さを改善し、エアバッグクッション200の展開中に乗員112の頭部110を拘束するための突出ローブ204及び206の曲がり又は座屈を低減する。加えて、クッション200の膨張した状態における張力がかけられたテザー216及び218に起因して、エアバッグクッション200の幅は、斜め衝突におけるカーテンエアバッグの同時展開のためのより大きいクリアランスを可能にするように、車両幅方向においてより狭くなる。したがって、本開示におけるエアバッグクッション200の構成は、展開中のフロントエアバッグクッション200とサイドカーテンエアバッグ(図示せず)との間の干渉リスクを低減する。
【0037】
図2Aに戻って参照すると、車両幅方向における主膨張セクション210の両側に配置された二次膨張セクション212及び214は、主膨張セクション210並びに突出ローブ204及び206のそれぞれの拡大範囲よりも小さい拡大範囲内で膨張する。
図2Cは、
図2Aの突出ローブ204、二次膨張セクション212、及び主膨張セクション210の近傍の拡大図である。
図2Cでは、突出ローブ204の湾曲に沿う中心C1を有する第1の円、二次膨張セクション212の湾曲に沿う中心C2を有する第2の円、及び主膨張セクション210の湾曲に沿う中心C3を有する第3の円が画定されている。加えて、二次膨張セクション212内に画定された第2の円の曲率半径r2は、突出ローブ204内に画定された第1の円の曲率半径r1及び主膨張セクション210内に画定された第3の円の曲率半径r3よりも小さい。
【0038】
図2Bに戻って参照すると、第1のテザー216は、突出ローブ204及び206の垂直範囲を覆うのに十分な垂直寸法を有する。
図2Bに示すように、第1のテザー216の第1の端部213における垂直寸法、及び第1のテザー216の第2の端部215における垂直寸法は、互いに異なる。第1のテザー216の第1の端部213における垂直寸法VD1は、第1のテザー216の第2の端部215における垂直寸法VD2よりも小さい。例えば、エアバッグクッション200が展開されたときに、第2の端部215及び219における垂直寸法VD2の長さは、第1の端部213及び217における垂直寸法VD1の長さよりも大きい(
図3B及び
図4Bも参照されたい)。
【0039】
図3~
図3Bは、本開示の第1の実施形態による、一対のテザー216及び218を有するエアバッグクッション200の簡略図を示す。
図3に示すように、テザー216及び218のそれぞれは、単一の布224で形成されており、単一の布224は、エアバッグクッション200の内部の内面に折り畳まれ固定されており、それにより、第1及び第2のテザー216及び218の単一の布224は、折り畳まれた側223と開放側225とを有する。本開示の第1の実施形態では、単一の布224の折り畳まれた側223は、テザー216及び218のそれぞれの第2の端部215及び219として形成されており、エアバッグクッション200の二次膨張セクション212及び214のそれぞれに固定されており、単一の布224の開放側225は、テザー216及び218のそれぞれの第1の端部213及び217として形成されており、エアバッグクッション200の外側及び内側220及び222の内面221及び223に固定されている。加えて、
図3A~
図3Bに示すように、第1及び第2のテザー216及び218の折り畳まれた側223には、折り畳まれた面234が設けられており、折り畳まれた面234は、クッション200の膨張した状態において二次膨張セクション212及び214を硬化させるために、第2の膨張セクション212及び214に全体的に(斜線領域)固定されている。本開示の第1の実施形態では、したがって、車両幅方向における主膨張セクション210の両側に配置された硬化した二次膨張セクション212及び214は、突出ローブ204及び206が主膨張セクション210を中心に振れることを防止する。
【0040】
図4~
図4Bは、本開示の第2の実施形態による、一対のテザー316及び318を有するエアバッグクッション200の簡略図を示す。
図4に示すように、テザー316及び318のそれぞれは、単一の布324で形成されており、単一の布324は、エアバッグクッション200の内部の内面に折り畳まれ固定されており、それにより、第1及び第2のテザー316及び318の単一の布324は、折り畳まれた側323と開放側325とを有する。本開示の第2の実施形態では、単一の布324の折り畳まれた側323は、テザー316及び318のそれぞれの第1の端313及び317として形成されており、エアバッグクッション200の外側及び内側220及び222の内面221及び223に固定されており、単一の布324の開放側325は、テザー316及び318のそれぞれの第2の端部315及び319として形成されており、エアバッグクッション200の二次膨張セクション212及び214のそれぞれに固定されている。加えて、
図4Bに示すように、第1及び第2のテザー316及び318の開放側325には、縁面334が設けられており、縁面334は、二次膨張セクション212及び214を硬化させるために、二次膨張セクション212及び214に全体的に(斜線領域)固定されている。したがって、車両幅方向における主膨張セクション210の両側に配置された硬化した二次膨張セクション212及び214は、突出ローブ204及び206が主膨張セクション210を中心に振れることを防止する。
【0041】
本発明は、車両内に設置されるエアバッグ装置であって、乗員を拘束するために座席の前方に膨張及び展開するバッグ状クッションを含むエアバッグ装置において使用され得る。
【0042】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態を構成するが、本発明は、添付の特許請求の範囲の適切な範囲及び公正な意味から逸脱することなく、修正、変形及び変更が可能であることが理解されよう。