(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】船舶推進システム、船舶の推進制御方法および船舶の推進制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B63H 3/10 20060101AFI20240112BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20240112BHJP
B63H 21/20 20060101ALI20240112BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B63H3/10
B63H21/21
B63H21/20
B63H21/17
(21)【出願番号】P 2022063443
(22)【出願日】2022-04-06
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 誠也
(72)【発明者】
【氏名】宮前 亮
(72)【発明者】
【氏名】江崎 秀明
(72)【発明者】
【氏名】崎元 謙一
(72)【発明者】
【氏名】廣島 成哉
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094074(JP,A)
【文献】特開2013-006531(JP,A)
【文献】特開2018-177060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 3/10
B63H 21/12 - 21/17
B63H 21/20
B63J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生する主機と、
前記主機によって回転駆動される可変ピッチプロペラと、
前記主機によって回転駆動される発電機と、
前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機のうち前記可変ピッチプロペラを駆動する第1運転モードにおいては、前記主機の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速に応じて前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御し、
前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機を駆動する第2運転モードにおいては、前記第1運転領域の前記出力の上限を前記発電機の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を前記第2運転領域内で設定する船舶推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶推進システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1運転モードから前記第2運転モードに移行する際には、前記第1運転モードのときに比べて前記主機の回転速度を増加させ且つ前記可変ピッチプロペラの翼角を低減させるように、前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を前記第2運転領域内で設定する船舶推進システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の船舶推進システムにおいて、
前記制御装置は、前記第2運転モードにおいては、前記第1運転領域の前記出力の上限の引き下げ量を前記発電負荷の要求量に応じて変更する船舶推進システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の船舶推進システムにおいて、
前記制御装置は、前記第2運転モードにおいては、前記第2運転領域を前記回転速度に関して2等分した場合の低速側の運転領域内で前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を設定する船舶推進システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の船舶推進システムにおいて、
前記制御装置は、
前記翼角が一定の下で船速に応じて変化する前記回転速度と前記出力との関係を示すプロペラ特性を複数の前記翼角ごとに記憶しており、
前記第2運転モードにおいては、複数の前記プロペラ特性のうち、前記第2運転領域内で前記目標船速を満たす前記回転速度および前記出力を含む前記プロペラ特性に基づいて、前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を設定する船舶推進システム。
【請求項6】
請求項5に記載の船舶推進システムにおいて、
前記制御装置は、前記第2運転モードにおいては、前記第2運転領域内で前記目標船速を満たす前記回転速度および前記出力を含む前記プロペラ特性のうち、前記目標船速を満たす前記回転速度が最も低い前記プロペラ特性に基づいて、前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を設定する船舶推進システム。
【請求項7】
駆動力を発生する主機と、前記主機によって回転駆動される可変ピッチプロペラと、前記主機によって回転駆動される発電機とを備えた船舶において、前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御する、船舶の推進制御方法であって、
前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機のうち前記可変ピッチプロペラを駆動する第1運転モードにおいては、前記主機の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速に応じて前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御することと、
前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機を駆動する第2運転モードにおいては、前記第1運転領域の前記出力の上限を前記発電機の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を前記第2運転領域内で設定することとを備える、船舶の推進制御方法。
【請求項8】
駆動力を発生する主機と、前記主機によって回転駆動される可変ピッチプロペラと、前記主機によって回転駆動される発電機とを備えた船舶において、前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御することをコンピュータに実行させるための、船舶の推進制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機のうち前記可変ピッチプロペラを駆動する第1運転モードにおいては、前記主機の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速に応じて前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御することと、
前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機を駆動する第2運転モードにおいては、前記第1運転領域の前記出力の上限を前記発電機の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を前記第2運転領域内で設定することとを実行させる、船舶の推進制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、船舶推進システム、船舶の推進制御方法および船舶の推進制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、主機によって回転駆動される可変ピッチプロペラと、主機によって回転駆動される軸発電機とを備えた船舶の推進システムが知られている。この推進システムでは、可変ピッチプロペラおよび軸発電機を同時に駆動する際、主機が過負荷状態とならないように、可変ピッチプロペラの翼角が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1の推進システムでは、可変ピッチプロペラおよび軸発電機を同時に駆動する際、過負荷の運転領域での主機の運転を回避するために、可変ピッチプロペラの推力が低下する方向に翼角が制御される。その結果、船速が低下する。そのため、軸発電機における所望の発電量は確保し得るが、所望の船速を満たすことができない。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の船速を維持しつつ、発電機による所望の発電量を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された船舶推進システムは、駆動力を発生する主機と、前記主機によって回転駆動される可変ピッチプロペラと、前記主機によって回転駆動される発電機と、前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機のうち前記可変ピッチプロペラを駆動する第1運転モードにおいては、前記主機の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速に応じて前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御し、前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機を駆動する第2運転モードにおいては、前記第1運転領域の前記出力の上限を前記発電機の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を前記第2運転領域内で設定する。
【0007】
ここに開示された船舶の推進制御方法は、駆動力を発生する主機と、前記主機によって回転駆動される可変ピッチプロペラと、前記主機によって回転駆動される発電機とを備えた船舶において、前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御する方法である。船舶の推進制御方法は、前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機のうち前記可変ピッチプロペラを駆動する第1運転モードにおいては、前記主機の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速に応じて前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御することと、前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機を駆動する第2運転モードにおいては、前記第1運転領域の前記出力の上限を前記発電機の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を前記第2運転領域内で設定することとを備える。
【0008】
ここに開示された船舶の推進制御プログラムは、駆動力を発生する主機と、前記主機によって回転駆動される可変ピッチプロペラと、前記主機によって回転駆動される発電機とを備えた船舶において、前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御することをコンピュータに実行させるためのプログラムである。船舶の推進制御プログラムは、コンピュータに、前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機のうち前記可変ピッチプロペラを駆動する第1運転モードにおいては、前記主機の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速に応じて前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を制御することと、前記主機が前記可変ピッチプロペラおよび前記発電機を駆動する第2運転モードにおいては、前記第1運転領域の前記出力の上限を前記発電機の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、前記目標船速に応じた前記主機の回転速度および前記可変ピッチプロペラの翼角を前記第2運転領域内で設定することとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
前記船舶推進システムによれば、所望の船速を維持しつつ、発電機による所望の発電量を確保することができる。
【0010】
前記推進制御方法によれば、所望の船速を維持しつつ、発電機による所望の発電量を確保することができる。
【0011】
前記推進制御プログラムによれば、所望の船速を維持しつつ、発電機による所望の発電量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、船舶推進システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、制御装置およびその周辺機器のブロック図である。
【
図3】
図3は、制御装置の第2運転モードにおける動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1運転領域および第2運転領域を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2運転領域において目標値を導出する動作を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、船舶推進システム100の概略構成を示す図である。
【0014】
船舶推進システム100は、船舶を推進するためのシステムである。船舶推進システム100は、主機3と、可変ピッチプロペラ4と、電動発電機5と、制御装置6とを備えている。主機3、可変ピッチプロペラ4および電動発電機5は、船体に推力を与える推進機構2を形成する。
【0015】
主機3は、駆動力を発生するものであり、例えば、ディーゼルエンジンである。主機3には、燃料供給器31が設けられている。燃料供給器31は、主機3に供給する燃料の単位時間当たりの供給量を変更することで、主機3の回転速度(詳しくは、主機3の出力軸30の回転速度)を変更する。
【0016】
主機3の出力軸30は、減速装置20を介して可変ピッチプロペラ4に接続されている。減速装置20は、主機3の駆動力を減速して可変ピッチプロペラ4に伝達する。
【0017】
可変ピッチプロペラ4は、船舶に推力を与える推進器である。可変ピッチプロペラ4は、主機3によって回転駆動されて推力を発生させる。つまり、可変ピッチプロペラ4は、主機3から減速装置20を介して伝えられた駆動力によって回転する。可変ピッチプロペラ4の回転速度は、主機3の回転速度に応じて変化する。
【0018】
可変ピッチプロペラ4は、可変ピッチプロペラ4の翼角(即ち、ピッチ角)を変更する翼角変更装置41を有している。翼角変更装置41は、例えば、可変ピッチプロペラ4の翼角を変更するための駆動力を発生させる油圧式または電動式のアクチュエータを含んでいる。
【0019】
電動発電機5は、電動動作および発電動作を択一的に行う。つまり、電動発電機5は、発電機としての機能および電動機としての機能を有している。電動発電機5は、主機3によって回転駆動される。電動発電機5は、減速装置20を介して主機3に接続されている。さらに、電動発電機5は、減速装置20を介して可変ピッチプロペラ4に接続されている。電動発電機5は、発電機の一例である。
【0020】
電動発電機5は、いわゆる軸発電機である。即ち、電動発電機5は、発電動作をする場合には、主機3によって駆動され発電を行う。電動発電機5は、発電した電力を電力変換装置13へ供給する。電動発電機5は、電力変換装置13を介して船内母線11に電気的に接続されている。
【0021】
さらに、電動発電機5は、回生ブレーキとしても機能して発電を行う。詳しくは、可変ピッチプロペラ4の回転力は、減速装置20を介して電動発電機5に伝達し得る。可変ピッチプロペラ4の回転力が減速装置20を介して電動発電機5に伝わることによって、電動発電機5は駆動されて発電する。
【0022】
一方、電動発電機5は、電動動作をする場合には、可変ピッチプロペラ4を回転する駆動力を発生させる。電動発電機5の駆動力は、減速装置20を介して可変ピッチプロペラ4に伝わる。船舶推進システム100は、電動発電機5とは別の発電機である主発電機10をさらに備えている。電動発電機5は、主発電機10からの電力によって電動機として動作する。例えば、主発電機10は船内母線11を介して電動発電機5に電気的に接続される。
【0023】
つまり、可変ピッチプロペラ4は、主機3および電動発電機5の一方または双方からの駆動力によって回転し、推力を発生させる。可変ピッチプロペラ4の回転速度は、駆動源となる主機3および電動発電機5の一方または双方の回転速度に応じて変化する。
【0024】
船舶推進システム100は、操船装置12をさらに備えている。操船装置12は、例えば、船体に設置される。操船装置12は、運転手からの操船の指令を受け付ける。操船装置12が受け付ける指令は、例えば、運転モードに基づく運転の実行と停止、運転モードの切り換え、及び船速の変更等である。
【0025】
船舶推進システム100は、主機3の回転速度を検出する回転速度センサ32をさらに備えている。
【0026】
回転速度センサ32は、例えば、主機3に設置され、主機3の出力軸30の回転速度を検出する。尚、本開示において、「主機3の回転速度を検出する」ことには、主機3の回転速度を直接検出することは勿論、主機3の回転速度と相関性を有する、可変ピッチプロペラ4の回転速度を検出することを含む。
【0027】
図2は、制御装置6およびその周辺機器のブロック図である。制御装置6は、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角等、船舶推進システム100の全体を制御する。制御装置6は、記憶部61と、処理部62とを有している。
【0028】
記憶部61は、各種プログラムおよび各種データを記憶する、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体である。記憶部61は、ハードディスク等の磁気ディスク、CD-ROMおよびDVD等の光ディスク、または半導体メモリによって形成されている。
【0029】
具体的に、記憶部61は、運転領域データ611、プロペラ特性データ612、等船速曲線データ613および推進制御プログラム614等を記憶している。
【0030】
運転領域データ611は、主機3の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域の情報である(
図4参照)。つまり、第1運転領域は、運転可能な主機3の回転速度および出力の範囲である。プロペラ特性データ612は、可変ピッチプロペラ4の翼角が一定の下で船速に応じて変化する主機3の回転速度と出力との関係を示すプロペラ特性の情報である。プロペラ特性は、可変ピッチプロペラ4の複数の翼角ごとに記憶されている。この例では、プロペラ特性の一例として、翼角ごとに設定された複数のプロペラカーブLaが用いられる(
図5参照)。等船速曲線データ613は、船速が一定となる主機3の回転速度と出力との関係を示す等船速曲線Lbの情報である(
図5参照)。等船速曲線Lbは、複数の船速ごとに記憶されている。これら各種データは、処理部62によって読み出される。
【0031】
推進制御プログラム614は、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御することをコンピュータ、即ち、処理部62に実行させるためのプログラムである。推進制御プログラム614は、処理部62によって読み出されて実行される。
【0032】
処理部62は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)及び/又はDSP(Digital Signal Processor)等の各種プロセッサと、RAM(Random Access Memory)及び/又はROM(Read Only Memory)等の各種半導体メモリとを有している。処理部62は、記憶部61から推進制御プログラム614等を読み出して実行する。
【0033】
処理部62は、2つの運転モード(即ち、第1運転モード及び第2運転モード)を切り換えて実行する。処理部62は、各運転モードにおいて、船速が目標船速となるように、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する。第1運転モードは、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5のうち可変ピッチプロペラ4を駆動する運転モードであり、第2運転モードは、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を駆動する運転モードである。
【0034】
処理部62には、操船装置12で受け付けられた操船の指令が入力される。つまり、処理部62には、運転モードおよび目標船速が、例えば操船装置12から入力される。さらに、処理部62には、回転速度センサ32の検出結果が入力される。また、処理部62は、第1クラッチ21を制御して、主機3と減速装置20との間の動力の伝達の有無を切り換える。処理部62は、第2クラッチ22を制御して、電動発電機5と減速装置20との間の動力の伝達の有無を切り換える。また、処理部62は、燃料供給器31、翼角変更装置41および電動発電機5のそれぞれに指令を出力する。
【0035】
具体的に、処理部62は、モード切換部621と、運転領域設定部622と、目標値導出部623と、制御部624とを、機能ブロックとして有している。
【0036】
モード切換部621は、第1運転モードと第2運転モードとを切り換えて設定する。モード切換部621は、操船装置12から送られた指令に基づいて第1運転モードと第2運転モードとを切り換える。つまり、モード切換部621は、操船装置12から送られた信号に応じて、第1運転モードおよび第2運転モードの何れかを設定する。運転手は、操船装置12において第1運転モードと第2運転モードとの切換操作を行う。この運転手の切換操作に応じた操作信号が、指令として処理部62に送られる。
【0037】
運転領域設定部622は、モード切換部621によって設定された運転モードに応じて、主機3の運転領域を設定する。具体的に、第1運転モードが設定された場合は、運転領域設定部622は、運転領域として第1運転領域を設定する。より詳しくは、運転領域設定部622は、第1運転モードにおいては、記憶部61から運転領域データ611を読み出して第1運転領域を設定する。
【0038】
また、第2運転モードが設定された場合は、運転領域設定部622は、運転領域として第2運転領域を設定する。具体的に、運転領域設定部622は、第2運転モードにおいては、第1運転領域の出力の上限を電動発電機5の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定する。ここに、発電負荷は、第2運転モードにおいて電動発電機5に発電させるために必要な主機3の出力である。より詳しくは、運転領域設定部622は、第1運転領域の出力の上限の引き下げ量を発電負荷の要求量に応じて変更する。例えば、電動発電機5に要求される発電量が増加すると、前述の引き下げ量が増加し、電動発電機5に要求される発電量が減少すると、前述の引き下げ量が減少する。
【0039】
発電負荷は、例えば、船内母線11に繋がっている電力負荷機器側から制御装置6の処理部62に自動的に入力される。なお、発電負荷は、一定量の負荷(例えば、定格発電負荷)として記憶部61に予め記憶されていてもよい。この場合、運転領域設定部622は、記憶部61から一定量の発電負荷を読み出して、その発電負荷に応じて第1運転領域の出力の上限を引き下げる。
【0040】
目標値導出部623は、船速が目標船速となる、主機3の目標回転速度および可変ピッチプロペラ4の目標翼角を導出する。具体的に、目標値導出部623は、第1運転モードにおいては、第1運転領域内で目標船速に応じて主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する。つまり、目標値導出部623は、第1運転領域内で目標船速を満たす目標回転速度および目標翼角を導出して設定する。
【0041】
また、目標値導出部623は、第2運転モードにおいては、目標船速に応じた主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を第2運転領域内で設定する。より詳しくは、目標値導出部623は、複数のプロペラカーブLaのうち、第2運転領域内で目標船速を満たす主機3の回転速度および出力を含むプロペラカーブLaに基づいて、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角をそれぞれ目標回転速度および目標翼角として導出する。さらに言えば、目標値導出部623は、第2運転領域を主機3の回転速度に関して2等分した場合の低速側の運転領域内で目標船速に応じた主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角をそれぞれ目標回転速度および目標翼角として設定する。
【0042】
制御部624は、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する。具体的に、制御部624は、回転速度センサ32の検出値(即ち、主機3の回転速度)が、目標値導出部623によって導出された目標回転速度になるように、主機3の回転速度を制御する。制御部624は、燃料供給器31に指令を出して燃料供給量を変更させることにより、主機3の回転速度を変更させる。また、制御部624は、可変ピッチプロペラ4の翼角が、目標値導出部623によって導出された目標翼角になるように、可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する。制御部624は、翼角変更装置41に指令を出すことにより、可変ピッチプロペラ4の翼角を変更させる。
【0043】
次に、前述した船舶推進システム100の動作について説明する。
【0044】
まず、操船装置12における運転手の切換操作に応じて、モード切換部621が第1運転モードを設定した場合について説明する。第1運転モードが設定されると、制御部624は、第2クラッチ22を遮断状態に切り換える。これにより、主機3は、可変ピッチプロペラ4だけを駆動する状態になる。第1運転モードにおいては、運転領域設定部622が、運転領域として第1運転領域を設定する。そして、目標値導出部623は、第1運転領域内で目標船速を満たす目標回転速度および目標翼角を導出する。制御部624は、主機3の回転速度が目標回転速度になるように、主機3の回転速度を制御すると共に、可変ピッチプロペラ4の翼角が目標翼角になるように、可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する。
【0045】
次に、運転モードが第1運転モードから第2運転モードに移行した場合、即ち、第1運転モードから第2運転モードに切り換えられた場合について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、制御装置6の第2運転モードにおける動作を示すフローチャートである。
【0046】
まず、操船装置12における運転手の切換操作に応じて、モード切換部621が第2運転モードを設定する(ステップS1)。モード切換部621が第2運転モードを設定すると、制御部624は、第2クラッチ22を接続状態に切り換える。これにより、主機3は、可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を駆動する状態となる。
【0047】
続くステップS2では、運転領域設定部622に発電負荷が入力される。例えば、船内母線11に繋がっている電力負荷機器側から運転領域設定部622に発電負荷が入力される。
【0048】
続くステップS3では、運転領域設定部622が、運転領域を設定する。具体的には、
図4に示すように、運転領域設定部622は、運転領域を、第1運転領域から第2運転領域に設定変更する。
図4は、第1運転領域および第2運転領域を示すグラフである。
【0049】
運転領域設定部622は、第1運転領域の出力の上限Taを発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定する。この例では、第2運転領域の出力の上限Tbは、第1運転領域よりも発電負荷の分だけ低く設定される。
【0050】
続くステップS4では、目標値導出部623に目標船速Vsが入力される。例えば、操船装置12において運転手が目標船速Vsを入力することにより、操船装置12から目標値導出部623に目標船速Vsが入力される。
【0051】
続くステップS5では、目標値導出部623が、目標回転速度Rsおよび目標翼角θsを導出する。つまり、
図5に示すように、目標値導出部623は、主機3の回転速度の目標値である目標回転速度Rsと、可変ピッチプロペラ4の翼角の目標値である目標翼角θsを導出する。
図5は、第2運転領域において目標値を算出する動作を説明するグラフである。
【0052】
具体的に、目標値導出部623は、記憶部61のプロペラ特性データ612から複数のプロペラカーブLaを読み出す。また、目標値導出部623は、記憶部61の等船速曲線データ613から等船速曲線Lbを読み出す。この等船速曲線Lbは、目標船速Vsに対応した等船速曲線である。読み出された複数のプロペラカーブLaおよび等船速曲線Lbは、第2運転領域に設定される。そして、目標値導出部623は、目標船速Vsに応じた目標回転速度Rsおよび目標翼角θsを第2運転領域内で設定する。
【0053】
目標値導出部623は、第2運転領域内で目標船速Vsを満たす主機3の回転速度および出力を含むプロペラカーブLaのうち、目標船速Vsを満たす回転速度が最も低いプロペラカーブLaに基づいて、主機3の目標回転速度Rsおよび可変ピッチプロペラ4の目標翼角θsを設定する。
【0054】
具体的には、
図5に示すように、目標値導出部623は、第2運転領域内でプロペラカーブLaと等船速曲線Lbとが交わる交点Pに対応する主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を、それぞれ目標回転速度Rsおよび目標翼角θsとして導出する。より詳しくは、第2運転領域内で複数のプロペラカーブLaと等船速曲線Lbとが交わる場合、複数のプロペラカーブLaと等船速曲線Lbとの複数の交点のうち、主機3の回転速度が最も低い交点P、即ち第2運転領域の出力の上限Tbに最も近い交点Pに対応する回転速度および翼角が、それぞれ目標回転速度Rsおよび目標翼角θsとして導出される。
【0055】
つまり、
図5に示すように、交点Pは、第2運転領域を主機3の回転速度に関して線Lcで2等分した場合の低速側(即ち、
図5において線Lcの左側)の運転領域内で目標船速Vsに応じた動作点である。また、交点Pは、第1運転モードから第2運転モードに移行する際、第1運転モードのときに比べて主機3の回転速度を増加させ且つ可変ピッチプロペラ4の翼角を低減させるように、目標船速Vsに応じた主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角が第2運転領域内で設定された動作点ともいえる。つまり、図示しないが、交点Pは、第1運転モードのときの動作点が、
図5において右側にシフトされた点と言える。尚、
図5におけるプロペラカーブLaでは、右側のプロペラカーブLaほど翼角が小さい。
【0056】
このように、複数の交点のうち、第2運転領域を主機3の回転速度に関して2等分した場合の低速側の運転領域内の交点Pを選択することにより、運転効率のより高い領域で主機3を運転することができる。さらには、複数の交点のうち、主機3の回転速度が最も低い交点Pを選択することにより、さらに運転効率のより高い領域で主機3を運転することができる。主機3の回転速度が高い領域では、主機3の損失の増加や可変ピッチプロペラ4の推進効率の低下等により主機3の運転効率が低下する。このようにして、第2運転モードでは、目標船速Vsに応じた目標回転速度Rsおよび目標翼角θsが導出される。
【0057】
続くステップS6では、制御部624が、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する。具体的に、主機3の回転速度は、目標回転速度Rsになるように制御され、可変ピッチプロペラ4の翼角は、目標翼角θsとなるように制御される。これにより、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を同時に駆動する場合において、目標船速Vsを満たしつつ、所望の発電量を確保することができる。言い換えれば、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を駆動する場合において、主機3が過負荷状態となることを阻止しつつ、所望の船速および発電量の両方を満たすことができる。以上より、制御装置6の動作が終了する。尚、第2運転モードから第1運転モードに移行した場合は、前述した第1運転モードにおける動作と同様の動作が行われる。
【0058】
以上のように、第1の技術に係る船舶推進システム100は、駆動力を発生する主機3と、主機3によって回転駆動される可変ピッチプロペラ4と、主機3によって回転駆動される電動発電機5(即ち、発電機)と、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する制御装置6とを備える。制御装置6は、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5のうち可変ピッチプロペラ4を駆動する第1運転モードにおいては、主機3の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速Vsに応じて主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御し、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を駆動する第2運転モードにおいては、第1運転領域の出力の上限Taを電動発電機5の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、目標船速Vsに応じた主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を第2運転領域内で設定する。
【0059】
また、第1の技術に係る船舶の推進制御方法は、駆動力を発生する主機3と、主機3によって回転駆動される可変ピッチプロペラ4と、主機3によって回転駆動される電動発電機5(即ち、発電機)とを備えた船舶において、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御する方法である。船舶の推進制御方法は、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5のうち可変ピッチプロペラ4を駆動する第1運転モードにおいては、主機3の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速Vsに応じて主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御することと、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を駆動する第2運転モードにおいては、第1運転領域の出力の上限Taを電動発電機5の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、目標船速Vsに応じた主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を第2運転領域内で設定することとを備える。
【0060】
また、第1の技術に係る船舶の推進制御プログラム614は、駆動力を発生する主機3と、主機3によって回転駆動される可変ピッチプロペラ4と、主機3によって回転駆動される電動発電機5(即ち、発電機)とを備えた船舶において、主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御することをコンピュータに実行させるためのプログラムである。船舶の推進制御プログラム614は、コンピュータに、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5のうち可変ピッチプロペラ4を駆動する第1運転モードにおいては、主機3の回転速度および出力に基づいて規定された第1運転領域内で目標船速Vsに応じて主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を制御することと、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を駆動する第2運転モードにおいては、第1運転領域の出力の上限Taを電動発電機5の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定し、目標船速Vsに応じた主機3の回転速度および可変ピッチプロペラ4の翼角を第2運転領域内で設定することとを実行させる。
【0061】
これらの構成によれば、主機3が可変ピッチプロペラ4および電動発電機5を駆動する際、主機3の第1運転領域の出力の上限Taを電動発電機5の発電負荷に応じて引き下げることにより第2運転領域を設定しているため、即ち、発電負荷に対処する分の主機3の出力を予め確保しているため、確実に所望の発電量を確保することができる。そして、発電負荷の対処分を差し引いた後の第2運転領域内で、目標船速Vsに応じた主機3の回転速度(即ち、目標回転速度Rs)および可変ピッチプロペラ4の翼角(即ち、目標翼角θs)を設定するため、所望の船速を維持しつつ、電動発電機5による所望の発電量を確保することができる。言い換えれば、主機3が過負荷状態になることを回避しつつも、所望の船速および発電量を満たすことができる。
【0062】
また、第2の技術に係る船舶推進システム100では、第1の技術に係る船舶推進システム100において、制御装置6は、第1運転モードから第2運転モードに移行する際には、第1運転モードのときに比べて主機3の回転速度を増加させ且つ可変ピッチプロペラ4の翼角を低減させるように、目標船速Vsに応じた主機の目標回転速度Rsおよび可変ピッチプロペラ4の目標翼角θsを第2運転領域内で設定する。
【0063】
この構成によれば、第1運転モードのときの動作点よりも主機3の回転速度を増加させ且つ可変ピッチプロペラ4の翼角を低減させるように第2運転モードの動作点をシフトするため、確実に第2運転領域内で目標船速Vsを満たす目標回転速度Rsおよび目標翼角θsを導出することができる。よって、主機3が過負荷状態となることを確実に回避することができる。
【0064】
また、第3の技術に係る船舶推進システム100では、第1または第2の技術に係る船舶推進システム100において、制御装置6は、第2運転モードにおいては、第1運転領域の出力の上限Taの引き下げ量を発電負荷の要求量に応じて変更する。
【0065】
この構成によれば、第1運転領域の出力の上限Taの引き下げ量を発電負荷の要求量に見合った適切な値に設定することができる。そのため、第2運転領域を無駄に狭めることなく適切に設定することができる。
【0066】
また、第4の技術に係る船舶推進システム100では、第1乃至第3の技術の何れか1つに係る船舶推進システム100において、制御装置6は、第2運転モードにおいては、第2運転領域を回転速度に関して2等分した場合の低速側の運転領域内で目標船速Vsに応じた主機3の目標回転速度Rsおよび可変ピッチプロペラ4の目標翼角θsを設定する。
【0067】
この構成によれば、より低い目標回転速度Rsを設定することができるため、運転効率のより高い運転領域で主機3を運転することができる。
【0068】
また、第5の技術に係る船舶推進システム100では、第1乃至第4の技術の何れか1つに係る船舶推進システム100において、制御装置6は、翼角が一定の下で船速に応じて変化する主機3の回転速度と出力との関係を示すプロペラカーブLa(即ち、プロペラ特性)を複数の翼角ごとに記憶している。そして、制御装置6は、第2運転モードにおいては、複数のプロペラカーブLaのうち、第2運転領域内で目標船速Vsを満たす主機3の回転速度および出力を含むプロペラカーブLaに基づいて、主機3の目標回転速度Rsおよび可変ピッチプロペラ4の目標翼角θsを設定する。
【0069】
この構成によれば、予め記憶したプロペラカーブLaのうち目標船速Vsを満たすプロペラカーブLaに基づいて、目標回転速度Rsおよび目標翼角θsを設定するので、簡易に目標回転速度Rs等を導出することができる。
【0070】
さらに、第6の技術に係る船舶推進システム100では、第5の技術に係る船舶推進システム100において、制御装置6は、第2運転モードにおいては、第2運転領域内で目標船速Vsを満たす主機3の回転速度および出力を含むプロペラカーブLaのうち、目標船速Vsを満たす主機3の回転速度が最も低いプロペラカーブLaに基づいて、主機3の目標回転速度Rsおよび可変ピッチプロペラ4の目標翼角θsを設定する。
【0071】
この構成によれば、目標船速Vsを満たすプロペラカーブLaのうち、目標船速Vsを満たす主機3の回転速度が最も低いプロペラカーブLaに基づくようにしたため、主機3の運転効率をできるだけ向上させることが可能な目標回転速度Rsを簡易に設定することができる。
【0072】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0073】
例えば、運転領域設定部622において、第1運転領域の出力の上限Taの引き下げ量は、実際の発電負荷そのものではなく、安全率を見込んで発電負荷よりも少し多めの負荷としてもよい。その場合、主機3が過負荷状態になることをより確実に回避することができる。
【0074】
また、前記実施形態では、第2運転モードにおいて、第2運転領域を回転速度に関して2等分した場合を説明したが、第2運転領域の等分数はこれに限らず、3等分以上であってもよい。例えば、第2運転領域を回転速度に関して3等分した場合は、最も低速側の運転領域内で目標船速Vsに応じた主機3の目標回転速度Rsおよび可変ピッチプロペラ4の目標翼角θsを設定してもよい。
【0075】
また、目標値導出部623は、複数のプロペラカーブLaと等船速曲線Lbとの複数の交点のうち、第2運転領域の上限Tbに最も近い交点以外の交点Pに対応する回転速度および翼角をそれぞれ目標回転速度Rsおよび目標翼角θsとして算出してもよい。
【0076】
また、ステップS1とステップS2とは、順序が逆になってもよいし、並行して行われてもよい。
【0077】
また、ステップS4は、ステップS1やステップS2と並行して行われてもよい。
【0078】
また、主機3は、ディーゼルセンジンに限定されず、ガスタービンエンジン、蒸気タービン、ガソリンエンジン、ガスエンジン等であってもよい。
【0079】
また、電動発電機5は、電動機としての機能を有さない発電機であってもよい。また、主発電機10で発生した電力は、例えば、電動発電機5に加えて、船内母線11を介して電動発電機5以外の他の船内機器に供給されてもよい。
【0080】
また、船舶推進システム100が備える、推進機構2、主機3、減速装置20、可変ピッチプロペラ4、電動発電機5、回転速度センサ32等の個数は、限定されない。
【0081】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0082】
100 船舶推進システム
3 主機
4 可変ピッチプロペラ
5 電動発電機(発電機)
6 制御装置
La プロペラカーブ(プロペラ特性)
Ta 上限
Vs 目標船速
614 推進制御プログラム