(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】過給機付き焼却炉
(51)【国際特許分類】
F23L 5/02 20060101AFI20240112BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20240112BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20240112BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20240112BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20240112BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20240112BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20240112BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20240112BHJP
F02C 7/08 20060101ALI20240112BHJP
F02C 6/04 20060101ALI20240112BHJP
F02C 1/05 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F23L5/02
F23G5/44 F
F23G5/46 A
F23G5/30 A
F23L15/00 A
F23J15/00 F
F23L15/00 Z
F23G5/50 E
F02C6/00 Z
F02C7/08 Z
F02C6/04
F02C1/05
(21)【出願番号】P 2022069351
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2017055494の分割
【原出願日】2017-03-22
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中出 貴大
(72)【発明者】
【氏名】服部 修策
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直人
(72)【発明者】
【氏名】小関 泰志
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159481(JP,A)
【文献】特開2015-145738(JP,A)
【文献】特開2007-170705(JP,A)
【文献】特開平01-121613(JP,A)
【文献】実開平05-061626(JP,U)
【文献】国際公開第2014/119499(WO,A1)
【文献】特開2003-056363(JP,A)
【文献】特開平02-101313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 5/02
F23G 5/44
F23G 5/46
F23G 5/30
F23L 15/00
F23J 15/00
F23G 5/50
F02C 6/00
F02C 7/08
F02C 6/04
F02C 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンと前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機と、
焼却炉の排ガスから熱回収する第1の熱交換器と、
前記コンプレッサで圧縮された空気を前記第1の熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給する圧縮空気供給ラインと、
前記タービンから出た空気を前記焼却炉に吹き込む空気吹き込みラインと、
前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器と、
前記焼却炉の立上げ時に前記燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機と、
前記焼却炉の立上げ時に空気を前記焼却炉に導く酸素供給ラインと、
更に、白煙防止用の空気を前記第1の熱交換器を通過した前記焼却炉の排ガスとの熱交換により昇温する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器により昇温された白煙防止用の空気を煙突及び前記酸素供給ラインに送るブロワとを備え、前記酸素供給ラインは、前記第2の熱交換器により昇温された
前記白煙防止用の空気を前記焼却炉に導くことを特徴とする過給機付き焼却炉。
【請求項2】
前記酸素供給ラインに、前記燃焼器のバーナの稼働中における前記焼却炉の吐出空気比が自立運転時の吐出空気比よりも低下したときに開かれ、前記吐出空気比が回復してきたときに閉じられるバルブを設けたことを特徴とする請求項1に記載の過給機付き焼却炉。
【請求項3】
前記焼却炉が流動焼却炉であり、前記酸素供給ラインは前記流動焼却炉のフリーボードに接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の過給機付き焼却炉。
【請求項4】
前記燃焼器は、前記焼却炉の立上げ時に、前記燃焼用空気によりオイルまたはガスを燃焼して発生した燃焼ガスを、前記圧縮空気供給ラインを介して前記タービンに供給することを特徴とする請求項1または2に記載の過給機付き焼却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機を利用して炉内に空気を供給する過給機付き焼却炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動焼却炉などの焼却炉においては、空気を炉内に供給して砂層部を流動させながら焼却を行うが、砂層部を流動させるだけの空気を生成するために多くの電力を必要としている。そこで過給機付き焼却炉が開発されている。
【0003】
過給機付き焼却炉は、焼却炉から排出される高温の排ガスとの熱交換により昇温した空気を利用してタービンを回転させ、その回転動力によりコンプレッサを駆動して圧縮空気を生成する過給機を備えている。しかし立ち上げ時においては焼却炉の排ガス温度が低く、排ガスから十分な熱量を回収することができないため、過給機を円滑に始動することができない。
【0004】
そこで特許文献1に記載されているように、タービンの上流側に送風機と燃焼器とを配備し、送風機で発生させた燃焼用空気を燃焼器のバーナで加熱してタービンに供給することにより、過給機を円滑に始動できるようにした過給機付き焼却炉が提案されている。
【0005】
しかしこの過給機付き焼却炉では、バーナ着火時には低酸素濃度の排ガスがタービンを経由して焼却炉に供給されるため、炉内空気量が不足して効率的な焼却が行えないという問題があった。この問題を解決するためには焼却炉に供給する空気量を増やす必要があり、過給機の運転範囲を過剰に設計することとなって、設備コストの増加を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、燃焼器のバーナ着火時における炉内空気量の不足を防止し、効率的な焼却を可能とした過給機付き焼却炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の過給機付き焼却炉は、タービンと前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機と、焼却炉の排ガスから熱回収する第1の熱交換器と、前記コンプレッサで圧縮された空気を前記第1の熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給する圧縮空気供給ラインと、前記タービンから出た空気を前記焼却炉に吹き込む空気吹き込みラインと、前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器と、前記焼却炉の立上げ時に前記燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機と、前記焼却炉の立上げ時に空気を前記焼却炉に導く酸素供給ラインと、更に、白煙防止用の空気を前記第1の熱交換器を通過した前記焼却炉の排ガスとの熱交換により昇温する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器により昇温された白煙防止用の空気を煙突及び前記酸素供給ラインに送るブロワとを備え、前記酸素供給ラインは、前記第2の熱交換器により昇温された前記白煙防止用の空気を前記焼却炉に導くことを特徴とするものである。なお、前記焼却炉が流動焼却炉であり、前記酸素供給ラインは前記流動焼却炉のフリーボードに接続されていることが好ましい。
【0009】
なお、前記酸素供給ラインに、前記燃焼器のバーナの稼働中における前記焼却炉の吐出空気比が自立運転時の吐出空気比よりも低下したときに開かれ、前記吐出空気比が回復してきたときに閉じられるバルブを設けることが好ましい。
【0010】
また、前記燃焼器は、前記焼却炉の立上げ時に、前記燃焼用空気によりオイルまたはガスを燃焼して発生した燃焼ガスを、前記圧縮空気供給ラインを介して前記タービンに供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の過給機付き焼却炉は、焼却炉の立上げ時に燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機と、焼却炉の立上げ時に空気を焼却炉に導く酸素供給ラインを備えるので、焼却炉の立上げ時に過給機を駆動することができるとともに、バーナ着火時における炉内空気量の不足を防止し、効率的な焼却が可能である。また、第2の熱交換器により昇温された空気を焼却炉に導くようにすれば、焼却炉の温度低下を防ぐことができる。
【0012】
請求項2のように、前記酸素供給ラインに、前記燃焼器のバーナの稼働中における前記焼却炉の吐出空気比が自立運転時の吐出空気比よりも低下したときに開かれ、前記吐出空気比が回復してきたときに閉じられるバルブを設ければ、余分な空気が焼却炉1に供給される無駄をなくすることができる。
【0013】
請求項3のように、酸素供給ラインが予熱された空気を焼却炉のフリーボードに導くようにしておけば、砂層部に供給する場合よりも圧損が少なくなり、酸素供給ラインのブロワの動力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に
図1を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1において、1は焼却炉であり、この実施形態では砂層部2を持ち、下水汚泥や都市ごみなどの廃棄物を焼却する流動焼却炉である。しかし焼却炉1の型式は必ずしもこれに限定されるものではない。焼却炉1から排出される850℃程度の高温の排ガスは、第1の熱交換器3と、その出口側に接続された第2の熱交換器4を通過したうえ、集塵機に送られて処理され、最終的に煙突から放出される。
【0016】
5は焼却炉1に燃焼空気を供給するための過給機であり、タービン6とその回転動力により直接駆動されるコンプレッサ7とを備えている。コンプレッサ7は空気を吸引して圧縮し、圧縮された空気は第1の熱交換器3に送られる。この第1の熱交換器3は焼却炉1から排出される高温の排ガスによってコンプレッサ7で圧縮した空気を昇温する機能を有する熱交換器である。このようにコンプレッサ7で圧縮した空気は第1の熱交換器3で加熱されて保有エネルギが増加した状態で圧縮空気供給ライン8を通じてタービン6に供給されるので、コンプレッサ7が空気を圧縮するために要するエネルギ以上の回転動力を得ることができ、いわゆる自立運転が可能となる。タービン6の出口側は空気吹き込みライン9を介して焼却炉1の砂層部2に接続されており、焼却炉1による焼却のために使用される。
【0017】
上記のように過給機付き焼却炉においては、タービン6によってコンプレッサ7の駆動に必要な動力を確保できるため、焼却炉1の運転状態によってはコンプレッサ7の駆動に必要な電力はゼロになる。しかし立ち上げ時には焼却炉1からの回収エネルギが小さいため過給機5を駆動できない。そこで
図1に示されるように、第1の熱交換器3で予熱された空気をタービン6に供給する圧縮空気供給ライン8上に、燃焼器11と、この燃焼器11に燃焼用空気を供給する送風機10とが設けられている。
【0018】
燃焼器11のバーナ12着火時には、送風機10によって燃焼器11に燃焼用空気が供給され、燃焼器11はバーナ12によってオイルまたはガスが燃焼され、発生した燃焼ガスをタービン6に供給して過給機5を駆動する。しかし燃焼器11から供給される空気はバーナ12の排ガスを含み酸素濃度が低下しているため、空気吹き込みライン9から焼却炉1に供給すると炉内の酸素濃度が低下し、円滑な焼却が妨げられるおそれがある。
【0019】
そこで本実施形態ではさらに、第2の熱交換器4により予熱された空気を焼却炉1に導く酸素供給ライン13が形成されている。この実施形態では第2の熱交換器4は白煙防止器であり、ブロワ14が吐出した空気を第2の熱交換器4で予熱し、煙突に送って白煙を防止している。酸素供給ライン13はこの白煙防止用空気の一部を焼却炉1のフリーボード部15に送り、炉内の酸素濃度を高めるものである。この空気は第2の熱交換器4により予熱されているため、焼却炉1に供給しても急激な炉内温度の低下を防ぐことができる。また焼却炉1のフリーボード部15は砂層部2よりも圧力が低いので、酸素供給ライン13のブロワ14の動力を小さくすることができる。
【0020】
このようにこの実施形態では、酸素供給ライン13は白煙防止用空気を焼却炉1に送ったが、焼却炉1の排ガスから熱回収して予熱空気を得ることができるものであれば、その他の空気を利用することもできる。また、酸素供給ライン13を焼却炉1の砂層部2に接続してもよい。
【0021】
このように構成された過給機付き焼却炉は、立ち上げ時に送風機10と燃焼器11とによってタービン6に空気を供給し、過給機5を円滑に始動させることが可能となる。タービン6を通過した空気は燃焼器11のバーナ12の排ガスを含むため酸素濃度が低下しているが、酸素供給ライン13から焼却炉1に空気が供給されるため、炉内の酸素濃度の低下を防止することができる。
【0022】
なお、燃焼器11のバーナ12の稼働中に焼却炉1の吐出空気比を計測し、吐出空気比が自立運転時の吐出空気比よりも低下したときに酸素供給ライン13のバルブ16を開として焼却炉1に酸素を供給し、吐出空気比が回復してきたときにバルブ16を閉とする運転方法を採用すれば、余分な空気が焼却炉1に供給される無駄をなくすることができる。
【0023】
焼却炉1の吐出空気比の測定は、例えば焼却炉1の排ガス経路に取付けた酸素濃度計17を用いて容易に行うことができるが、その測定方法は任意である。
【0024】
なお、この実施形態では立ち上げ時を例に説明したが、焼却炉からの回収エネルギが小さくなるなどの理由で燃焼器のバーナ着火を必要とするとき(例えば、焼却炉内の急激な温度低下時)であれば、いつでも本発明を適用することができる。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、燃焼器11のバーナ12の着火時における焼却炉内の空気量の不足を防止し、効率的な焼却が可能となる。また本発明によれば、従来のように過給機5の運転範囲を過剰に設計する必要もなくなり、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 焼却炉
2 砂層部
3 第1の熱交換器
4 第2の熱交換器
5 過給機
6 タービン
7 コンプレッサ
8 圧縮空気供給ライン
9 空気吹き込みライン
10 送風機
11 燃焼器
12 バーナ
13 酸素供給ライン
14 ブロワ
15 フリーボード部
16 バルブ
17 酸素濃度計