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特許7418519第IX因子融合タンパク質及びそれらの製造方法及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】第IX因子融合タンパク質及びそれらの製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240112BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240112BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240112BHJP
   C07K 14/745 20060101ALI20240112BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C07K19/00
C07K14/745
C07K16/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P7/04
A61K38/36
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022145321
(22)【出願日】2022-09-13
(62)【分割の表示】P 2021034342の分割
【原出願日】2016-08-03
(65)【公開番号】P2022171790
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】62/200,590
(32)【優先日】2015-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/281,993
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505007364
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジツェン リウ
(72)【発明者】
【氏名】アージャン ヴァン デル フライヤー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アール. ライト
(72)【発明者】
【氏名】エクタ セス チャブラ
(72)【発明者】
【氏名】トンヤオ リウ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ティー. ピータース
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クルマン
(72)【発明者】
【氏名】アイマン イスマイル
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502459(JP,A)
【文献】特表2013-534426(JP,A)
【文献】Chung-Yang Kao et.al.,Thromb Haemost,2013年,110,pp.244-256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
A61P 7/04
A61K 38/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含む第IX因子(FIX)融合タンパク質であって、ここで、
a)前記第1のポリペプチド鎖は、以下:
i)FIXポリペプチドと、前記FIXポリペプチド内に挿入されたXTENであって、ここで、前記FIXポリペプチドは、配列番号2のFIXポリペプチドアミノ酸配列を含み、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、および、配列番号2のアミノ酸174からなる群より選択される挿入部位でXTENが挿入され、ここで、前記XTENが、42アミノ酸~288アミノ酸を含む、FIXポリペプチドおよびXTEN;ならびに、
ii)第1のFcドメインであって、前記XTENを含む前記FIXポリペプチドに融合された、第1のFcドメイン、
を含み、そして、
b)前記第2のポリペプチド鎖は、第2のFcドメインを含み、
ここで、前記第1のFcドメイン及び前記第2のFcドメインは共有結合を介して会合する、前記FIX融合タンパク質。
【請求項2】
前記XTENが、配列番号2のアミノ酸166に対応する挿入部位で前記FIXポリペプチド内に挿入される、請求項1に記載のFIX融合タンパク質。
【請求項3】
前記第1のFcドメインが、配列番号228のアミノ酸配列を含む、請求項1または請求項2に記載のFIX融合タンパク質。
【請求項4】
前記第2のFcドメインが、配列番号228のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質をコードする配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項7】
請求項に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
ヒト対象において凝固疾患もしくは状態を予防、治療、改善または管理するための組成物であって、請求項1~のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質を含み、前記対象は血友病Bを有する、組成物。
【請求項10】
前記対象が重篤な血友病Bを有する、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出した配列表の参照
本出願と共に提出したASCIIテキストファイル(名称:2159_466PC03_SeqListing_ST25.txt;サイズ:688,154バイト;及び作成日:2016年8月2日)中で電子的に提出した配列表の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
血友病B(クリスマス病としても知られる)は、世界で最も多く見られる遺伝性出血障害の1つである。血友病は、インビボ及びインビトロでの血液凝固活性の低下を引き起こし、罹患した個体の生涯にわたって広範な医学的監視を要する。介入を行わない場合、罹患した個体は関節内における突発性出血を起こすこととなり、該出血によって重度の痛み及び衰弱性の不可動状態を生じ;筋肉中への出血は筋組織における血液貯留を引き起こし;咽喉及び頸部の突発性出血は、直ちに治療しなければ窒息を引き起こす場合があり;腎出血を引き起こし;及び手術、軽度の偶発的な受傷、または抜歯の後の重篤な出血もよく見られる。
【0003】
正常なインビボでの血液凝固は、少なくとも、セリンプロテアーゼ第II因子(プロトロンビン)、第VII因子、第IX因子、第X因子及び第XI因子(可溶性血漿タンパク質);膜貫通タンパク質組織因子及び血漿タンパク質第V及び第VIII因子を含む補助因子;フィブリノゲン、トランスグルタミナーゼ第XIII因子、リン脂質(活性化血小板を含む)、及びカルシウムを必要とする。一部のインビトロ凝固試験に関しては、カリクレイン、高分子量キニノゲン、及び第XII因子を含む更なるタンパク質が必要であり、これらは病理学的条件下においてインビボで役割を果たし得る。
【0004】
血友病においては、血液凝固が特定の血漿凝固因子の欠損によって妨げられる。血友病Bは、第IX因子(FIX)タンパク質の合成の低下もしくは該FIXタンパク質の欠損のいずれかに起因し得るFIXの不足または活性が低い欠陥のあるFIX分子よって起こる。血友病の治療は、FIXを高度に富化させた外因性因子濃縮物によって、欠損した凝固因子を置換することによって行われる。しかしながら、かかる濃縮物を血液からつくり出すことは、以下に記載するように技術的困難を伴う。
【0005】
血漿からのFIXの精製(血漿由来FIX;pdFIX)では、ほぼ、完全にγ-カルボキシル化されたFIXのみが得られる。しかしながら、FIXは血漿中に低濃度(5μg/mL)でしか存在しないために、かかる血漿からのFIXの精製は非常に困難である。Andersson,Thrombosis Research 7:451 459(1975)。更に、血液からの精製はHIV及びHCVなどの感染性因子の除去または不活性化を要する。加えて、pdFIXは半減期が短く、そのために頻繁に投与する必要がある。組換え第IX因子(rFIX)も利用可能であるが、pdFIXと同様の短い半減期及び頻繁な投与の必要性(例えば、予防のために週に2~3回)という悩みがある。
死亡率の低下、関節損傷の予防及び生活の質の改善は、血漿由来及び組換えFIXの開発による重要な成果であった。長期的に出血から保護することは、血友病B患者の治療におけるもう1つの重要な進歩となる。したがって、有効な活性を維持しながら半減期がより長い、改良された組換えFIXに対する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Andersson,Thrombosis Research 7:451 459(1975)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも1のXTENを含む第IX因子融合タンパク質が開示される。一態様において、本発明は、第IX因子(FIX)ポリペプチドと、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内に挿入された少なくとも1のXTENとを含み、凝血促進活性を示すFIX融合タンパク質を提供する。
【0008】
本発明は、FIXポリペプチドと、上記FIXポリペプチドのC末端に融合され、長さが42のアミノ酸より長く且つ144のアミノ酸より短いアミノ酸配列を含むXTENとを含むFIX融合タンパク質も提供する。
【0009】
本発明のFIX融合タンパク質は、それを必要とする患者における凝固疾患もしくは疾病の予防、治療、改善、または管理方法を提供することを含むいくつかの用途を有する。一実施形態において、上記方法は、有効量の本明細書に記載のFIX融合タンパク質を(例えば、皮下投与によって)投与するステップを含む。
【0010】
本発明はまた、FIXポリペプチドの半減期の延長方法であって、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内にXTENを挿入し、それによってFIX融合タンパク質を構築することを含み、上記FIXタンパク質が凝血促進活性を示す、上記方法も提供する。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
第IX因子(FIX)ポリペプチドと、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で前記FIXポリペプチド内に挿入された少なくとも1のXTENとを含み、凝血促進活性を示すFIX融合タンパク質。
(項目2)
前記挿入部位が、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する、項目1に記載のFIX融合タンパク質。
(項目3)
前記XTENが、少なくとも約5アミノ酸、少なくとも約6のアミノ酸、少なくとも約12のアミノ酸、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸、または少なくとも約288のアミノ酸を含む、項目1または2に記載のFIX融合タンパク質。
(項目4)
第2のXTENを更に含む、項目1~3のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質。
(項目5)
前記XTENが、配列番号2のアミノ酸166に対応する挿入部位で前記FIXポリペプチド内に挿入され、第2のXTENが前記FIXポリペプチドのC末端に融合された、項目4に記載のFIX融合タンパク質。
(項目6)
Fcドメインを更に含む、項目1~5のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質。
(項目7)
第2のFcドメインを含む、項目6に記載のFIX融合タンパク質。
(項目8)
2のポリペプチド鎖を含み、前記第1のポリペプチド鎖が前記Fcドメインに融合された前記FIXポリペプチドを含み、前記第2のポリペプチド鎖が第2のFcドメインを含み、前記第1のFcドメインと前記第2のFcドメインとが共有結合によって会合している、項目7に記載のFIX融合タンパク質。
(項目9)
前記FIXポリペプチドがR338L FIX変異体である、項目1~8のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質。
(項目10)
項目1~9のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(項目11)
項目10に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(項目12)
項目10に記載のポリヌクレオチドまたは項目11に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目13)
項目1~9のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質、項目10に記載のポリヌクレオチド、項目11に記載の発現ベクター、または項目12に記載の宿主細胞、及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
(項目14)
有効量の項目1~9のいずれか1項に記載のFIX融合タンパク質、項目10に記載のポリヌクレオチド、項目11に記載の発現ベクター、項目12に記載の宿主細胞、または項目13に記載の組成物を投与することを含む、それを必要とする患者における凝固疾患もしくは疾病の予防、治療、改善、または管理方法。
(項目15)
第1の連鎖及び第2の連鎖を含む第IX因子(FIX)融合タンパク質であって、
a.前記第1の連鎖が、
i.FIXポリペプチドと、
ii.配列番号2のアミノ酸166に対応する挿入部位で前記FIXポリペプチド内に挿入され、少なくとも約72のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1のXTENと、
iii.前記少なくとも1のXTENの前記FIXポリペプチドに融合された第1のFcドメインと
を含み、
b.前記第2の連鎖が第2のFcドメインを含み、
前記第1のFcドメインと前記第2のFcドメインとが共有結合によって会合しており、凝血促進活性を示す前記FIX融合タンパク質。
【0011】
更なる発明の実施形態は以下の説明及び図面から明らかになろう。
【0012】
参照による援用
本明細書に開示される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的且つ個別に参照により援用されることが示されているのと同様の程度に、参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】種々の挿入部位で(例えば、配列番号2のアミノ酸に対応する、アミノ酸52、アミノ酸59、アミノ酸66、アミノ酸80、アミノ酸85、アミノ酸89、アミノ酸103、アミノ酸105、アミノ酸113、アミノ酸129、アミノ酸142、アミノ酸149、アミノ酸162、アミノ酸166、アミノ酸174、アミノ酸188、アミノ酸202、アミノ酸224、アミノ酸226、アミノ酸228、アミノ酸230、アミノ酸240、アミノ酸257、アミノ酸265、アミノ酸277、アミノ酸283、アミノ酸292、アミノ酸316、アミノ酸341、アミノ酸354、アミノ酸392、アミノ酸403、及びアミノ酸413で)挿入された、または上記FIXポリペプチドのC末端に融合された、42のアミノ酸のXTEN(例えばAE42)を含むFIX融合タンパク質の活性を示すグラフである。C末端融合XTEN配列は、FIXと上記C末端融合物との間にトロンビン開裂性部位を含む。Y軸は、発色アッセイによる、馴化培地中の、ベース構築物(FIX-R338L)の活性のパーセントとしてのFIX活性を示す。X軸は特定の挿入部位を、(配列番号2に対応する)アミノ酸番号及び1文字のアミノ酸の略称として示す。FIXの対応するドメイン(例えば、GLA、EGF1、EGF2、リンカー、AP、及び触媒ドメイン)、リンカー領域、ならびにC末端がX軸の下に示される。
図2】種々の挿入部位で(例えば、配列番号2のアミノ酸に対応するアミノ酸103、アミノ酸105、アミノ酸142、アミノ酸149、アミノ酸162、アミノ酸166、アミノ酸174、アミノ酸224、アミノ酸413で)挿入された、または上記FIXポリペプチドのC末端(アミノ酸415)に融合された、42のアミノ酸の(AE42)、72のアミノ酸の(AE72)、144のアミノ酸の(AE144)、288のアミノ酸の(AE288)、及び864のアミノ酸の(AE864)XTENを含むFIX融合タンパク質の活性を示すグラフである。Y軸は、発色アッセイによる、馴化培地中の、ベース構築物(FIX-R338L)の活性のパーセントとしてのFIX活性を示す。X軸は、各挿入部位及び特定の挿入部位のドメイン(例えば、EGF2、AP、及び触媒ドメイン)または領域(例えば、リンカー及びC末端)を、(配列番号2に対応する)アミノ酸番号として示す。矢印は、更なる実験のために選択された挿入部位を示す(図3の3A~3Bを参照のこと)。
図3】3AはR338L FIX変異体の上記領域及びドメインの概略図である。特定のアミノ酸残基(例えば、N105、D166、及びE224)及びC末端が、潜在的な異種部分、例えばXTENの挿入部位として強調されている。3Bは3種の異なる角度からのブタFIX(PDB:1PFX)の3次元構造の図解を示す図である。挿入部位N105、D166、及びE224、C末端、及びR338L突然変異体の位置(例えば、R338L FIX変異体における)を表示する。
図4】1もしくは2のXTEN(例えば、42、72、144、及び288のアミノ酸のXTEN)、または1のXTEN及び1のFcドメイン、またはFIXFcを含むFIX融合タンパク質の相対的な活性をまとめた図である。Y軸は、発色アッセイによる、馴化培地中の、ベース構築物(FIX-R338L)の活性のパーセントとしてのFIX活性を示す。X軸は構築物番号を示し、X軸の下の表は試験した各構築物のXTEN及びFcの組成を示す。EGF2(105)、AP(166)、60ループ(224)、及びC末端XTENまたはFcは、XTENまたはFcが挿入または融合された位置を示す。X軸の下の表の各ボックス中の数字(XTENの大きさを示す、例えば42、72、144、及び288)ならびに「Fc」は、いずれの部分が当該FIXポリペプチド内に挿入されているかまたは該FIXポリペプチドのC末端に融合されているかを示す。
図5】5Aは、血友病Bマウスにおいて単回ボーラス静脈内投与後に測定し、rFIX及びrFIXFcと比較した、種々の長さのトロンビン開裂性C末端XTEN融合物を有する様々なFIX融合タンパク質(例えば、FIX-CT.288(288のアミノ酸のXTEN、例えばAE288)及びFIX-CT.864(864のアミノ酸のXTEN、例えばAE864))の、時間に対する投与したFIXの凝固活性の血漿百分位数を示すグラフである。5Bは、血友病Bマウスにおいて単回ボーラス静脈内投与後に測定し、rFIX及びrFIXFcと比較した、活性化ペプチド(AP)ドメインに挿入された種々の長さのXTEN融合物を有する様々なFIX融合タンパク質(例えば、FIX-AP.144、FIX-AP.72、及びFIX-AP.42)の、時間に対する投与したFIXの凝固活性の血漿百分位数を示すグラフである。5Cは、5A及び5Bに示した単回静脈内ボーラス投与したFIX融合タンパク質の、計算した薬物動態学的パラメータの編集したグラフである。Y軸には、表示した分子のそれぞれの血漿活性回収率の百分位数を示す。X軸は計算した平均滞留時間(MRT、単位:時間)を示し、円の面積は用量当たりの計算した相対的な曲線下面積(AUC/D、単位:時間/kg/mL)を表わす。
図6】6Aは、血友病Bマウスにおいて単回ボーラス静脈内投与後に測定し、rFIX及びrFIXFcと比較した、活性化ペプチド(AP)ドメインに挿入された種々の長さのXTEN融合物を有する様々なFIX融合タンパク質(例えばFIXFc-AP.72及びFIXFc-AP.42)またはEGF2ドメインに挿入された上記XTEN融合物を有する上記融合タンパク質(例えばFIXFc-EGF.42)の、時間に対する投与したFIXの凝固活性の血漿百分位数を示すグラフである。6Bは、6Aに示した単回静脈内ボーラス投与したFIX融合タンパク質の計算した薬物動態学的パラメータの編集したグラフである。Y軸には、表示した分子のそれぞれの血漿活性回収率の百分位数を示す。X軸は計算した平均滞留時間(MRT、単位:時間)を示す。円の面積は用量当たりの計算した相対的な曲線下面積(AUC/D、単位:時間/kg/mL)を表わす。
図7】7Aは、血友病Bマウスにおいて単回ボーラス皮下投与後に測定し、rFIX及びrFIXFcと比較した、FIXポリペプチドのC末端に融合された288のアミノ酸のトロンビン開裂性XTENを含むFIX融合タンパク(rFIX-CT.288)、FIXポリペプチドのAPドメイン内に挿入された72のアミノ酸のXTENを含むFIX融合タンパク質(rFIXFc-AP.72)、及びFIXポリペプチドのEGF2ドメイン内に挿入された42のアミノ酸のXTENを含むFIX融合タンパク質(rFIXFc-EGF2.42)の、時間に対する投与したFIXの凝固活性の血漿百分位数を示すグラフである。7Bは、7Aに示した単回皮下ボーラス投与したFIX融合タンパク質の計算した薬物動態学的パラメータの編集したグラフである。Y軸には、表示した分子のそれぞれの生物学的利用能の百分位数を示す。X軸は計算した平均滞留時間(MRT、単位:時間)を示す。円の面積は用量当たりの計算した相対的な曲線下面積(AUC/D、単位:時間/kg/mL)を表わす。
図8】8Aは、回転トロンボエラストメトリー(ROTEM)によって測定した、ヒト血友病B血液における、rFIXFc及びFIXのAPドメイン内に挿入された72のアミノ酸のXTENを含むFIX融合タンパク質(例えば、rFIXFc-AP-XTEN.72)の凝固時間(単位:秒)のグラフである。8Bは、ヒト血友病B血液における、rFIXFc及びFIX融合タンパク質(例えば、rFIXFc-AP-XTEN.72)のアルファ角(単位:度)のグラフである。8Cは、ヒト血友病B血液における、rFIXFc及びFIX融合タンパク質(例えば、rFIXFc-AP-XTEN.72)の最大血餅硬度(MCF)(単位:mm)のグラフである。
図9】尾切断出血モデルにおいてrFIXFcと比較したrFIXFc-AP.72の急性の有効性を示すグラフである。示した結果は、表示した治療薬及び投与に対する、投与5分後における、30分間にわたる各個体の及び中央値での失血量(μl)である。アスタリスクは、ビヒクル対他の全ての治療薬に関して有意なp値であることを示している。データは、rFIXFc-AP.72を投与したマウスにおいて、rFIXFcと比較して類似のまたは向上した有効性を示している。
図10】尾静脈の切断後の時間(単位:時間)(X軸)に対してプロットした、生存するHemBマウスのパーセンテージ(Y軸)を示すグラフである。全てのマウスに、尾静脈の切断の72時間前に、FIXFc(点線)を静脈内でまたはFIXFc-AP.72を皮下で、表示したIU/kg(FIXFc-AP.72:100IU/kg(黒丸)、50IU/kg(灰色の三角)、及び15IU/kg(灰色の逆三角);rFIXFc:100IU/kg(白丸)、50IU/kg(白三角)、及び15IU/kg(白の逆三角);ビヒクル(閉じた灰色の丸)で事前投与した。rFIXFcまたはFIXFc-AP.72のいずれかを投与したマウスの生存率のプロットは、ビヒクル処置したマウスと比較した場合、全て有意に異なる(p<0.0001、ログランク(マンテル・コックス)検定。
図11】11Aは、時間に対してプロットした、静脈内注射(破線)または皮下注射(実線)のいずれかによって単回ボーラス(200IU/kg)のrFIX(灰色)またはrFIXFc-AP.72融合タンパク質(黒)を投与した血友病Bマウスの、1段階血漿アッセイによって測定したFX活性の血漿レベルを示すグラフである。11Bは、Phoenix WinNonLin 6.2.1ソフトウェア(Pharsight、Certara)を用いたノンコンパートメント解析(NCA)を用いて決定された薬物動態学的パラメータを示す図である。
図12】12AはrFIXFc-AP.72一本鎖Fcのドメイン構造を図解する模式図である。12BはrFIXFc-AP.72二本鎖Fcのドメイン構造を示す模式図である。「FIX HC」とはFIXの重鎖を指し、「FIX LC」とはFIXの軽鎖を指し、これはFIXのEGF及びGLAドメインを含み、APとはFIXの活性化ペプチドを指す。
図13】実施例で用いられるFIX-XTEN構築物を、一致する配列番号、説明及びプラスミドコードでまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、FIXポリペプチド及び少なくとも1の異種部分を含むFIX融合タンパク質、ならびにその製造及び使用方法を提供する。ある特定の態様において、本FIX融合タンパク質は、上記FIXポリペプチド内に挿入された、上記FIXポリペプチドのC末端に融合された、またはそれらの両方である少なくとも1の異種部分を含み、本FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。特定の態様において、上記異種部分はXTENである。
【0015】
I.定義
本開示を通じて、用語“a” entity(実体)または“an” entityとは1または複数の当該実体を指し、例えば、「a polynucleotide(ポリヌクレオチド)」は1または複数のポリヌクレオチドを表すと理解されるべきものである。したがって、「a」(または「an」)、「1または複数の」、及び「少なくとも1の」という用語は、本明細書では同義で用いることができる。
【0016】
更に、本明細書では、「及び/または」とは、2の指定された特徴または構成要素のそれぞれの、それらの他方を伴うまたは伴わない明示と解釈されるべきものである。したがって、本明細書における「A及び/またはB」などの句において用いられる「及び/または」という用語は、「A及びB」と、「AまたはB」と、「A」(単独)と、「B」(単独)とを含むことを意図する。同様に、「A、B及び/またはC」などの句において用いられる「及び/または」という用語は、以下の態様、すなわち、A、B及びCと;A、BまたはCと;AまたはCと;AまたはBと;BまたはCと;A及びCと;A及びBと;B及びCと;A(単独)と;B(単独)と;C(単独)とのそれぞれを包含することを意図する。
【0017】
本明細書において、態様が「含む(comprising)」という用語によって何処に記載されていても、「~からなる(consisting of)」及び/または「~から本質的になる(consisting essentially of」という言葉で記述される他の類似の態様も提供されるということが理解されるべきものである。
【0018】
別段の定義がなされない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示において用いられる多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0019】
単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI)に承認された形態によって表示される。数値範囲は当該範囲を画定する数字を含む。別段の表示がない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの向きで左から右に書かれる。本明細書に記載される見出しは本開示の種々の態様を限定するものではなく、該態様は本明細書全体を参照することによって理解することができる。したがって、このすぐ後に定義される用語は、明細書全体を参照することにより完全に定義される。
【0020】
本明細書では、「約」という用語は、概略、おおまかに、おおよそ、またはほぼを意味するために用いられる。「約」という用語が数値範囲と共に用いられる場合には、記載された数値の上下に境界を拡張することによって当該範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、数値を記載された値の上下に、例えば10パーセントの上下(高低)の変動により変更することができる。
【0021】
「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、単一の核酸ならびに複数の核酸を包含することを意図し、単離された核酸分子または構築物、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、在来型のホスホジエステル結合または非在来型の結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に存在するようなアミド結合)を含む。「核酸」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1または複数の核酸セグメント、例えばDNAまたはRNA断片を指す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、その本来の環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えば、ベクター中に含まれるFIXポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されたと考えられる。単離されたポリヌクレオチドの更なる例としては、異種宿主細胞中に維持されるかまたは溶液中の他のポリヌクレオチドから(部分的にまたは実質的に)精製された組換えポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたRNA分子としては、本発明のポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロRNA転写物が挙げられる。本発明に係る単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成的に生成したかかる分子を更に包含する。更に、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、または転写終結シグナルなどの調節エレメントを含んでいてもよい。
【0022】
本明細書では、「コード領域」または「コード配列」とは、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの一部である。「終結コドン」(TAG、TGAまたはTAA)は一般的にはアミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部であると見なしてもよいが、但し、いずれの隣接する配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写終結因子、イントロンなどはコード領域の一部ではない。コード領域の境界は、一般的には、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドンと、得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端の翻訳終結コドンとによって決定される。本発明の2以上のコード領域は、単一のポリヌクレオチド構築物中に、例えば単一のベクター上に、または別個の複数のポリヌクレオチド構築物中に、例えば別個の(異なる)複数のベクター上に存在してもよい。その結果、単一のベクターが単一のコード領域のみを含有していてもよく、または2以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば以下に説明するように、単一のベクターが結合ドメイン-A及び結合ドメイン-Bを別々にコードしてもよいこととなる。更に、本発明のベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、本発明の結合ドメインをコードする核酸に融合しているかまたは融合していないかのいずれかの異種コード領域をコードしていてもよい。異種コード領域としては、限定はされないが、分泌シグナルペプチドまたは異種機能ドメインなどの特殊化したエレメントまたはモチーフが挙げられる。
【0023】
哺乳動物細胞によって分泌されるある特定のタンパク質は分泌シグナルペプチドと会合しており、該分泌シグナルペプチドは、粗面小胞体を通る成長タンパク質鎖の輸送が開始されると成熟タンパク質から切断される。当業者であれば、シグナルペプチドは一般に当該ポリペプチドのN末端に融合しており、完全なすなわち「全長」ポリペプチドから切断される、分泌された、すなわち「成熟した」形態のポリペプチドを生成することを認識している。ある特定の実施形態においては、天然のシグナルペプチド、または作動可能に会合している当該ポリペプチドの分泌を指示する能力を保持している、その配列の機能性誘導体。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)もしくはマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはそれらの機能を有する誘導体を用いることもできる。
【0024】
「下流」という用語は、基準となるヌクレオチド配列に対して3’側に位置するヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態において、下流のヌクレオチド配列は転写の開始点に続く配列に関係する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写の開始部位の下流に位置する。「下流」は、基準となるヌクレオチド配列のC末端側に位置するペプチド配列を指す場合もある。
【0025】
「上流」という用語は、基準となるヌクレオチド配列に対して5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態において、上流のヌクレオチド配列はコード領域または転写の開始点の5’側に位置する配列に関係する。例えば、殆どのプロモーターは転写の開始部位の上流に位置する。「上流」は、基準となるヌクレオチド配列のN末端側に位置するペプチド配列を指す場合もある。
【0026】
本明細書では、「調節領域」という用語は、コード領域の上流(5’側非コード配列)、内部、または下流(3’側非コード配列)に位置し、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節領域としては、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステムループ構造を挙げることができる。コード領域が真核細胞における発現を意図する場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列は通常、当該コード配列に対して3’側に位置することとなる。
【0027】
例えばポリペプチドである遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、プロモーター及び/または1もしくは複数のコード領域に作動可能に会合している他の転写または翻訳調節エレメントを含んでいてもよい。作動可能な会合において、例えばポリペプチドである遺伝子産物のためのコード領域は、上記遺伝子産物の発現を1または複数の調節領域の影響下または制御下に置くような形態で、上記調節領域(複数可)に会合している。例えば、プロモーターの機能を誘導することによって、コード領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAが転写され、且つ上記プロモーターと上記コード領域との間の連結の特質が、上記プロモーターの上記遺伝子産物の発現を指示する能力に干渉しない、または転写されるDNAテンプレートの能力に干渉しないならば、当該コード領域とプロモーターとは「作動可能に会合している」。プロモーター以外の他の転写調節エレメント、例えばエンハンサー、作動因子、抑制因子、及び転写終結シグナルも、コード領域に作動可能に会合して、遺伝子産物発現を指示することができる。
【0028】
種々の転写調節領域が当業者に公知である。これらの転写調節領域としては、限定はされないが、サイトメガロウイルス(最初期プロモーター、イントロン-Aと共に)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーター及びエンハンサーセグメントなどの、但しこれらに限定されない、脊椎動物細胞で作用する転写調節領域が挙げられる。他の転写調節領域としては、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来する転写調節領域、ならびに真核細胞中で遺伝子発現を制御することができる他の配列が挙げられる。更なる好適な転写調節領域としては、組織特異的プロモーター及びエンハンサー、ならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
【0029】
同様に種々の翻訳調節エレメントが当業者に公知である。これらの翻訳調節エレメントとしては、リボソーム結合部位、翻訳開始コドン及び終結コドン、ならびにピコルナウイルス由来のエレメント(特に、内部リボソーム侵入部位、すなわちCITE配列とも呼ばれるIRES)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0030】
本明細書では、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを産生するプロセスを指す。発現には、限定はされないが、当該ポリヌクレオチドのメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、小ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または任意の他のRNA産物への転写、及びmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。発現は「遺伝子産物」を産生する。本明細書では、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであってよい。本明細書に記載の遺伝子産物は、転写後修飾、例えばポリアデニル化またはスプライシングを伴う核酸、または、翻訳後修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、またはタンパク質分解切断を伴うポリペプチドを更に包含する。
【0031】
「ベクター」とは、宿主細胞への核酸のクローニング及び/または導入のための任意のビヒクルを指す。ベクターはレプリコンであってもよく、レプリコンには、別の核酸セグメントが複製されるように、該別のセグメントが結合する。「レプリコン」とは、インビボでの自律複製の単位として作用する、すなわちそれ自体の制御下で複製する能力を有する任意の遺伝エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。「ベクター」という用語は、インビトロ、エクスビボまたはインビボで核酸を細胞に導入するためのウイルス及び非ウイルスビヒクルの両方を包含する。例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む多数のベクターが公知であり、本技術分野で使用されている。適宜のベクターへのポリヌクレオチドの挿入は、適宜のポリヌクレオチド断片を、相補的な付着端を有する選択されたベクターに結合することによって実現することができる。
【0032】
ベクターを、当該ベクターを取り込んだ細胞を選別または識別する選別可能なマーカーまたはレポーターをコードするように操作してもよい。選別可能なマーカーまたはレポーターの発現によって、当該ベクター上に含まれる他のコード領域を取り込んで発現する宿主細胞を識別及び/または選別することが可能になる。本技術分野において公知であり且つ使用されている選別可能なマーカー遺伝子の例としては、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、ピューロマイシン、ビアラフォス除草剤、スルホンアミド等に対する耐性を付与する遺伝子、及び表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわちアントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。本技術分野において公知であり且つ使用されているレポーターの例としては、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、-ガラクトシダーゼ(LacZ)、-グルクロニダーゼ(Gus)等が挙げられる。選別可能なマーカーはレポーターと見なすこともできる。
【0033】
「プラスミド」とという用語は、多くの場合、当該細胞の中心代謝の一部ではなく、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である遺伝子を有する染色体外エレメントを指す。かかるエレメントは、多数のヌクレオチド配列が、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片及びDNA配列を適宜の3’非翻訳配列と共に細胞中に導入することができる特有の構築物中に結合されまたは組換えられている、任意の起源に由来する、一本鎖もしくは二本鎖のDNAまたはRNAの、線状、環状、または高次コイルである、自律的に複製する配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってよい。
【0034】
用いることができる真核生物ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、及びポックスウイルススベクター、例えばワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定はされない。非ウイルスベクターとしては、プラスミド、リポソーム、荷電脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体、及び生体高分子が挙げられる。
【0035】
「クローニングベクター」とは、逐次複製する単位長さの核酸であり、プラスミド、ファージまたはコスミドなどの複製開始点を含む「レプリコン」を指し、上記複製開始点には、別の核酸セグメントが複製されるように、該別のセグメントが結合する。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞型、例えばバクテリアにおいて複製することが可能であり、且つもう一方の細胞型、例えば真核細胞において発現することが可能である。クローニングベクターは一般的には、目的の核酸配列を挿入するためのベクター及び/または1もしくは複数の多重クローニング部位を含む細胞の選択に使用できる1つまたは複数の配列を含む。
【0036】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞への挿入後に、挿入された核酸配列の発現を可能にするように設計されたビヒクルを指す。上記挿入された核酸配列は、上述の調節領域に作動可能に会合している。
【0037】
ベクターは、本技術分野で周知の方法、例えば、トランスフェクション、電気穿孔、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクタートランスポーターによって宿主細胞に導入される。
【0038】
本明細書では、「培養する」、「培養すること」及び「培養」とは、細胞増殖または分裂を可能にする、または細胞を生存状態に維持するインビトロ条件下で細胞をインキュベートすることを意味する。本明細書では、「培養細胞」とはインビトロで増殖させる細胞を意味する。
【0039】
本明細書では、「ポリペプチド」という用語は、単一の「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を指し、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結された単量体(アミノ酸)からなる分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2以上のアミノ酸の任意の連鎖または複数の連鎖を指し、特定の長さの産物を指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2以上のアミノ酸の連鎖または複数の連鎖を指すために用いられる任意の他の用語は「ポリペプチド」の定義の中に含まれ、「ポリペプチド」という用語はこれらの用語のいずれかに代えて、またはこれらの用語のいずれかと同義で用いることができる。「ポリペプチド」という用語はまた、限定はされないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、または非天然起源のアミノ酸による修飾を含む上記ポリペプチドの発現後修飾の産物をいうことも意図する。ポリペプチドは天然の生物学的供給源または生み出された組換え技術に由来してもよいが、必ずしも指定の核酸配列から翻訳されるものではない。ポリペプチドは化学合成によることを含む、任意の形態で生成させることができる。
【0040】
「単離された」ポリペプチドまたはその断片、変異体、もしくは誘導体とは、その天然の環境にないポリペプチドを指す。特定のレベルの精製を必要とはしない。例えば、単離されたポリペプチドは、単にその天然または自然の環境から取り出されていてもよい。組み換えによって産生されたポリペプチド及び宿主細胞中で発現されたタンパク質は、任意且つ適宜の技法によって分離され、分画され、または部分的もしくは実質的に精製された天然または組換えポリペプチドがそうであるように、本発明の目的のために単離されたと見なされる。
【0041】
本明細書では、「宿主細胞」という用語は、組換え核酸を内部に保有するもしくは内部に保有することができる細胞または細胞の集団を指す。宿主細胞は原核細胞(例えばE.coli)であってもよく、あるいは、該宿主細胞は真核細胞、例えば真菌細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、もしくはSchizosaccharomyces pombeなどの酵母細胞)、及び昆虫細胞(例えばSf-9)または哺乳動物細胞(例えば、HEK293F、CHO、COS-7、NIH-3T3)などの種々の動物細胞であってもよい。
【0042】
ポリペプチドの断片または変異体、及びそれらの任意の組み合わせも本発明に包含される。「断片」または「変異体」という用語は、本発明のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子に言及する場合、言及しているポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合ドメインもしくはFc変異体のFcRn結合親和性、またはFIX変異体の凝固活性)の少なくとも一部を保持している任意のポリペプチドを包含する。ポリペプチドの断片は、本明細書の他の箇所で論じる特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解断片ならびに欠失断片を包含するが、天然起源の全長ポリペプチド(または成熟ポリペプチド)は含まない。本発明のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子の変異体は、上述の断片、及びアミノ酸の置換、欠失、または挿入に起因する改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。変異体は天然起源または非天然起源であってよい。非天然起源の変異体は本技術分野で公知の変異誘発技法を用いて産生させることができる。変異体ポリペプチドは、保存的なもしくは非保存的なアミノ酸の置換、欠失または付加を含むことができる。本明細書に開示される1つの特定のFIX変異体はR338L FIX(パドゥバ)変異体(配列番号2)である。例えば、Simioni,P.,et al.,‘‘X-Linked Thrombophilia with a Mutant Factor IX(Factor IX Padua),’’ NEJM 361:1671-75(October 2009)を参照されたく、該文献はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0043】
「保存的アミノ酸置換」とは、当該アミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基によって置き換えられた置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基の群は本技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、ポリペプチド中のアミノ酸が同一の側鎖群に属する別のアミノ酸によって置換されている場合、当該の置換は保存的であると見なされる。別の実施形態において、アミノ酸のストリング(a string of amino acids)は、側鎖群を構成するアミノ酸の順序及び/または組成が異なる構造的に類似したストリングによって保存的に置換することができる。
【0044】
2のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の「パーセント表記配列同一性」という用語は、当該の2の配列の最適なアラインメントに対して導入する必要がある付加または削除(すなわちギャップ)を考慮に入れた、比較ウィンドウ全体にわたる、該配列が共有する、同一の一致する位置の数を指す。一致する位置は、任意の位置であって、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が標的配列及び参照配列の両方の当該位置に示されている上記位置である。ギャップはヌクレオチドまたはアミノ酸ではないことから、標的配列に示されるギャップはカウントされない。同様に、標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸はカウントされ、参照配列に属するヌクレオチドまたはアミノ酸はカウントされないことから、参照配列に示されるギャップはカウントされない。
【0045】
配列同一性のパーセンテージは、両方の配列において同一のアミノ酸残基または核酸塩基が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を得ること、上記一致する位置の数を比較するウィンドウ内の位置の総数で除すこと、及び上記結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。2の配列間の配列の比較及びパーセント表記配列同一性の決定は、オンライン使用及びダウンロード用の両方の、容易に利用可能なソフトウェアを用いて実施することができる。好適なソフトウェアプログラムは、様々な供給源から且つタンパク質配列及びヌクレオチド配列の両方のアラインメント用に入手可能である。パーセント表記配列同一性を決定するための1つの好適なプログラムとしては、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から利用可能であるBLASTプログラム一式の一部であるbl2seqがある。bl2seqはBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2の配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列を比較するために用いられる一方、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために用いられる。他の好適なプログラムとしては、例えば、EMBOSS生命情報科学プログラム一式の一部であるNeedle、Stretcher、Water、またはMatcherがあり、www.ebi.ac.uk/Tools/psaにおいてthe European Bioinformatics Institute(EBI)からも利用可能である。
【0046】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの標的配列内の異なる領域は、それぞれ独自のパーセント表記配列同一性を有していてもよい。上記パーセント表記配列同一性の値は小数第2位で四捨五入されることに留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は80.1に切り捨てられる一方、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数になることにも留意されたい。
【0047】
当業者であれば、パーセント表記配列同一性の計算のための配列アラインメントの作成は、専ら一次配列データによって進められるバイナリー配列-配列比較に限定されるものではないことを理解しよう。配列アラインメントは多重整列に由来してもよい。多重配列アラインメントを作成するための1つの好適なプログラムとしては、www.clustal.orgから利用可能なClustalW2がある。別の好適なプログラムとしては、www.drive5.com/muscle/から利用可能なMUSCLEがある。ClustalW2及びMUSCLEは、上記に代えて、例えばEBIからも利用可能である。
【0048】
配列アラインメントは、配列データを、構造データ(例えば結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば変異の位置)、または系統発生学的データなどの異種の出所からのデータと統合することによって作成することができることも理解されよう。多重配列アラインメントを作成するために異種データを統合する好適なプログラムとしては、www.tcoffee.orgにおいて利用可能な、また上記に代えてEBIからも利用可能なT-Coffeeがある。また、パーセント表記配列同一性を計算するために用いられる最終的なアラインメントは、自動的にまたは手動でのいずれでキュレートされてもよいことも理解されよう。
【0049】
本明細書では、第IX因子タンパク質配列における「~に対応するアミノ酸」、「~に対応する部位」、または「等価なアミノ酸」は、第1のFIX配列と第2のFIX配列との間の同一性または類似性を最大化するようなアラインメントによって識別される。第2のFIX配列において等価なアミノ酸を識別するために用いられる番号は、第1のFIX配列において対応するアミノ酸を識別するために用いられる番号に基づく。
【0050】
本明細書では、「挿入部位」という用語は、FIXポリペプチド(一般的には成熟FIXポリペプチド)、またはその断片、変異体、もしくは誘導体における、異種部分を挿入することができる位置の隣接する上流のアミノ酸残基の番号を指す。「挿入部位」は番号として特定され、該番号は、上記挿入部位が対応し、上記挿入の位置に隣接するN末端側である、R338L FIX(パドゥバ)変異体(配列番号2)中のアミノ酸の番号である。例えば、「上記EGF2ドメインは配列番号2のアミノ酸105に対応する挿入部位にXTENを含む」という表現は、異種部分が、配列番号2のアミノ酸105とアミノ酸106とに対応する2のアミノ酸の間に位置することを示す。但し、当業者であれば、いずれのFIX変異体においても対応する位置を容易に識別することができるであろうし、本開示はR338L FIX(パドゥバ)変異体において単独で行われる挿入に限定されるものではない。逆に、本明細書に開示される挿入は、凝血促進活性を有する任意のFIX変異体またはその断片において、上記R338L FIX変異体の位置に対応する位置で行うことができる。
【0051】
本明細書では、「アミノ酸の隣接する下流」という表現は、当該アミノ酸の末端カルボキシル基のすぐ隣の位置を指す。同様に、「アミノ酸の隣接する上流」という表現は、当該アミノ酸の末端アミン基のすぐ隣の位置を指す。したがって、本明細書では、「挿入部位の2のアミノ酸の間」という表現は、XTENまたは任意の他のポリペプチドが挿入される2の隣接するアミノ酸の間の位置を指す。
【0052】
本明細書では、「挿入されている」(inserted)、「挿入される」(is inserted)、「~に挿入された」(inserted into)という用語または文法的に関連する用語は、R338L FIX(パドゥバ)変異体(配列番号2)における類似の位置に対応する、融合ポリペプチド中のXTENの位置を指す。当業者であれば、配列番号1として示されるものなどの他のFIXポリペプチド配列に関する、対応する挿入位置を識別する方法を理解しよう。本明細書では、上記用語は、当該組換えFIXポリペプチドのR338L FIX(パドゥバ)変異体と対比した特徴を指し、当該融合ポリペプチドを製造したいずれの方法またはプロセスも示さず、示唆せずまたは暗示しない。例えば、本明細書において提供される融合ポリペプチドに関して、「XTENが、FIXポリペプチドの残基105の隣接する下流で、EGF2ドメイン中に挿入されている」という表現は、当該融合ポリペプチドがXTENを、R338L FIX変異体(配列番号2)中のアミノ酸105に対応するアミノ酸の隣接する下流に、例えば、R338L FIX変異体のアミノ酸105及び106アミノ酸に対応するアミノ酸によって囲まれた状態で含んでいる。
【0053】
「融合」または「キメラ」タンパク質は、第2のアミノ酸配列に連結した第1のアミノ酸配列を含み、第1のアミノ酸配列は天然においては第2のアミノ酸配列に自然に連結することはない。通常、別個のタンパク質中に存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチド中で結合することができ、または通常同一のタンパク質中に存在するアミノ酸配列を本融合ポリペプチド、例えば、本発明のFIXドメインのIg Fcドメインとの融合物中に新たな編成で配置することができる。融合タンパク質は、例えば、化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされたポリヌクレオチドを創生し、翻訳することによって創生される。融合タンパク質は、非ペプチド結合である共有結合または非共有結合によって第1のアミノ酸配列と会合している第2のアミノ酸配列を更に含んでいてもよい。
【0054】
「異種の」及び「異種部分」という用語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または他の部分が、当該ポリヌクレオチド等が比較されている相手の実体のポリヌクレオチド等とは異なる実体に由来することを意味する。例えば、異種ポリペプチドは、合成品であっても、あるいは異なる種、1つの個体の異なる細胞型、または別個の個体の同一もしくは異なる型の細胞に由来していてもよい。一態様において、異種部分は、別のポリペプチドに融合し、融合ポリペプチドまたは融合タンパク質を生成するポリペプチドである。別の態様において、異種部分は、ポリペプチドまたはタンパク質に接合したPEGなどの非ポリペプチドである。
【0055】
本明細書では、「半減期」という用語は、インビボでの特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、対象に投与された量の半量が当該の動物における循環及び/または他の組織から除去されるのに要する時間によって表すことができる。所与のポリペプチドのクリアランス曲線が時間の関数として描かれている場合、該曲線は通常、急速なα相及びより長いβ相を有する二相性である。上記α相は一般的には、投与されたポリペプチドの血管内空間と血管外空間との間での平衡化を表しており、部分的にはポリペプチドの大きさによって決定される。上記β相は一般的には、血管内空間における当該ポリペプチドの異化を表わす。いくつかの実施形態において、FIX及びFIXを含む融合タンパク質は単相性であり、したがってα相がなく、単一のβ相のみを有する。したがって、ある特定の実施形態において、本明細書では、半減期という用語は、上記β相中の当該ポリペプチドの半減期を指す。一般的なヒトにおけるヒト抗体のβ相での半減期は21日である。
【0056】
本明細書では、「連結された」及び「融合された」という用語は、第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列であって、それぞれ第2のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列に共有結合もしくは非共有結合した上記アミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列は、直接第2のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列と結合しているかまたは並べられていてもよく、あるいは、介在する配列が第1の配列を第2の配列に結合させてもよい。「連結された」という用語は、第1のアミノ酸配列の第2のアミノ酸配列に対する、そのC末端またはN末端での融合を意味するのみならず、第1のアミノ酸配列(または第2のアミノ酸配列)全体の、第2のアミノ酸配列(または第1のアミノ酸配列)中の任意の2のアミノ酸への挿入も包含する。一実施形態において、第1のアミノ酸配列はペプチド結合またはリンカーによって第2のアミノ酸配列に連結されている。第1のヌクレオチド配列はホスホジエステル結合またはリンカーによって第2のヌクレオチド配列に連結することができる。上記リンカーは、ペプチドもしくはポリペプチド(ポリペプチド鎖に対して)またはヌクレオチドもしくはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖に対して)または任意の化学的部分(ポリペプチド及びポリヌクレオチド鎖の両方に対して)であってよい。「連結された」という用語はまた、ハイフン(-)によっても示される。
【0057】
本明細書では、「~と会合している」という用語は、第1のアミノ酸鎖と第2のアミノ酸鎖との間に形成された共有結合または非共有結合を指す。一実施形態において、「~と会合している」という用語は、非ペプチド結合である共有結合または非共有結合を意味する。この会合はコロン、すなわち(:)で表示してもよい。別の実施形態において、会合はペプチド結合以外の共有結合を意味する。例えば、アミノ酸システインは、第2のシステイン残基上のチオール基とジスルフィド結合すなわちブリッジを形成することができるチオール基を含む。殆どの天然起源のIgG分子においては、CH1及びCL領域はジスルフィド結合によって会合し、2の重鎖は、Kabat付番方式を用いた239及び242に対応する位置(EU付番方式では226位または229位)で2のジスルフィド結合によって会合している。共有結合の例としては、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、パイ結合、デルタ結合、グリコシド結合、アゴスチック結合、曲がった結合、双極子結合、パイの逆結合、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、共役、超共役、芳香族性、ハプト数、または反結合が挙げられるが、これらに限定はされない。非共有結合の非限定的な例としては、イオン結合(例えば、カチオン-パイ結合または塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素錯体、低障壁水素結合、または対称水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、金親和性、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、または化学的極性が挙げられる。
【0058】
本明細書では、「切断部位」または「酵素切断部位」という用語は、酵素によって認識される部位を指す。ある特定の酵素切断部位は細胞内プロセシング部位を含む。一実施形態において、ポリペプチドは、凝固カスケードの間に活性化される酵素によって切断される酵素切断部位を有しているので、かかる部位の切断は血餅形成の部位で起こる。例示的なかかる部位としては、例えば、トロンビン、第XIa因子または第Xa因子によって認識される部位が挙げられる。例示的なFXIa切断部位としては、例えば、TQSFDFTR(配列番号166)及びSVSQTSKLTR(配列番号167)が挙げられる。例示的なトロンビン切断部位としては、例えば、DFLAEGGGVR(配列番号168)、TTKIKPR(配列番号169)、LVPRG(配列番号170)及びALRPR(配列番号171)が挙げられる。他の酵素切断部位は本技術分野において公知である。
【0059】
本明細書では、「プロセシング部位」または「細胞内プロセシング部位」という用語は、ポリペプチドの翻訳後に作用する酵素の標的である、当該ポリペプチド中の一種の酵素切断部位を指す。一実施形態において、かかる酵素はゴルジ内腔からトランス-ゴルジ区画への輸送中に作用する。細胞内プロセシング酵素は、当該細胞からのタンパク質の分泌の前にポリペプチドを切断する。かかるプロセッシング部位の例としては、PACE/フューリン(PACEはPaired basic Amino acid Cleaving Enzymeの頭字語である。)群のエンドペプチダーゼによって標的とされる部位が挙げられる。これらの酵素はゴルジ膜に局在化しており、配列モチーフArg-[任意の残基]-(LysまたはArgで)-Argのカルボキシ末端側でタンパク質を切断する。本明細書では、「フューリン」群の酵素としては、例えば、PCSK1(PC1/Pc3としても知られる)、PCSK2(PC2としても知られる)、PCSK3(フューリンもしくはPACEとしても知られる)、PCSK4(PC4としても知られる)、PCSK5(PC5もしくはPC6としても知られる)、PCSK6(PACE4としても知られる)、またはPCSK7(PC7/LPC、PC8、もしくはSPC7としても知られる)が挙げられる。その他のプロセシング部位は本技術分野で公知である。本明細書において言及される「プロセシング可能なリンカー」という用語は、細胞内プロセシング部位を含むリンカーを指す。
【0060】
複数のプロセシング部位または切断部位を含む構築物においては、かかる部位は同一であってもまたは異なっていてもよいことが理解されよう。
【0061】
本明細書では、「プロセシング可能なリンカー」とは、少なくとも1の細胞内プロセシング部位を含むリンカーを指し、該リンカーは本明細書の他の箇所に記載される。
【0062】
本明細書では、「ベースライン」とは、投薬を行う前の対象における最低の血漿FIXレベルの測定値である。上記FIX血漿レベルは投与前の2の時点で測定することができる。すなわち、スクリーニングのための往訪時及び投与の直前である。あるいは、(a)治療前のFIX活性が1%未満であり、検出可能なFIX抗原を有しておらず、且つナンセンス遺伝子型を有する対象におけるベースラインは0%と定義することができ、(b)治療前のFIX活性が1%未満であり、且つ検出可能なFIX抗原を有する対象のベースラインは0.5%に設定することができ、(c)治療前のFIX活性が1~2%である対象のベースラインはCmin(PKの検討全体を通じて最低の活性)であり、及び(d)治療前のFIX活性が2%以上である対象のベースラインは、2%に設定することができる。
【0063】
本明細書では、「対象」とはヒトを意味する。本明細書における対象としては、少なくとも1回の制御されない出血症状の発現があったことが判っている個人、制御されない出血症状の発現を伴う疾患または障害、例えば出血性疾患または障害、例えば血友病Bであると診断されている個人、制御されない出血症状の発現を起こしやすい個人、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。対象としてはまた、特定の活動、例えば、外科手術、スポーツ活動、または任意の激しい活動の前に、1または複数の制御されない出血症状の発現の危険性がある個人も挙げることができる。上記対象のベースラインFIX活性は、1%未満、0.5%未満、2%未満、2.5%未満、3%未満、または4%未満であってよい。対象としては小児のヒトも挙げられる。小児のヒトの対象は、出生時~20才、好ましくは出生時~18才、出生時~16才、出生時~15才、出生時~12才、出生時~11才、出生時~6才、出生時~5才、出生時~2才、及び2~11才である。
【0064】
本明細書では、治療する、治療、治療することとは、例えば、疾患もしくは疾病の重篤度の低減;疾患経過の継続期間の短縮;疾患もしくは疾病に伴う1もしくは複数の症状の改善;疾患もしくは疾病を有する対象に対する有益な効果の提供であって、必ずしも当該疾患もしくは疾病の治癒を伴わない上記提供;または疾患もしくは疾病に伴う1もしくは複数の症状の予防を指す。一実施形態において、「治療すること」または「治療」とは、本発明の融合タンパク質を投与することによって、対象において、FIXのトラフレベルを、少なくとも約1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dL、または20IU/dLに維持することを意味する。別の実施形態において、治療することまたは治療とは、FIXのトラフレベルを、約1~約20IU/dL、約2~約20IU/dL、約3~約20IU/dL、約4~約20IU/dL、約5~約20IU/dL、約6~約20IU/dL、約7~約20IU/dL、約8~約20IU/dL、約9~約20IU/dL、または約10~約20IU/dLに維持することを意味する。疾患もしくは疾病の治療またはそれらを治療することとは、対象におけるFIX活性を、非血友病の対象におけるFIX活性の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%に相当するレベルに維持することも包含する。治療に必要な最低限のトラフレベルは1種または複数種の公知の方法によって測定することができ、それぞれの人に対して調節(増加または減少)することができる。
【0065】
本明細書では、止血障害とは、フィブリン血餅を形成する能力の低下または該能力の欠如に起因する、自発的にまたは外傷の結果としてのいずれかで出血する傾向を特徴とする、遺伝性または後天性の疾病を意味する。かかる障害の例としては血友病が挙げられる。3種の主たる形態は血友病A(第VIII因子欠乏症)、血友病B(第IX因子欠乏症または「クリスマス病」)及び血友病C(第XI因子欠乏症、軽度の出血傾向)である。他の止血障害としては、例えば、フォンビルブラント病、第XI因子欠乏症(PTA欠乏症)、第XII因子欠乏症、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子の欠乏または構造上の異常、GPIbの欠損症または欠乏症であるバーナード・スーリエ症候群が挙げられる。VWFの受容体であるGPIbは欠損する場合があり、一次血餅形成(一次止血)の不足及び出血傾向の増加)、ならびにグランツマン及びネーゲリの血小板無力症(グランツマン血小板無力症)に繋がる場合がある。(急性及び慢性の形態の)肝不全において、肝臓による凝固因子の産生が不十分になり、これが出血の危険性を高める場合がある。
【0066】
本明細書では、「急性出血」という用語は、根本的な原因にかかわらず、出血症状の発現を指す。例えば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝性出血障害(例えば、第VII因子欠乏症)、血小板障害、または凝固因子に対する抗体の発生に起因する抵抗性を有する場合がある。
【0067】
II.FIX融合タンパク質
本発明は、FIXポリペプチド、及び該FIXポリペプチド内に挿入された少なくとも1の異種部分、該FIXポリペプチドのC末端に融合された少なくとも1の異種部分、またはそれらの両方を含むFIX融合タンパク質を対象とする。本FIX融合タンパク質は、上記異種部分の挿入または該異種部分への融合後に、1または複数のFIX活性を保持することができる。一実施形態において、上記FIX活性は凝血促進活性である。「凝血促進活性」という用語は、天然FIXに代わって血液における凝固カスケードに関与する、本発明のFIXタンパク質の能力を意味する。例えば、本発明の組換えFIXタンパク質は、該タンパク質が、例えば発色アッセイにおいて試験される、第VIII因子(FVIII)の存在下で第X因子(FX)を活性化された第X因子(FXa)へと変換することができる場合に、凝血促進活性を有する。別の実施形態において、上記FIX活性はテナーゼ複合体を生成する能力である。他の実施形態において、上記FIX活性はトロンビン(または血餅)を生成する能力である。
【0068】
本発明の組換えFIXタンパク質は、天然の成熟ヒトFIXの凝血促進活性の100%を示す必要はない。実際、特定の態様において、本発明のFIXポリペプチドに挿入された異種部分は当該タンパク質の半減期または安定性を有意に増加させることができ、その結果より低い活性は十分に許容される。したがって、ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、天然FIXの凝血促進活性の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%を有する。但し、いくつかの発明の実施形態において、本発明の組換えFIXタンパク質は、FIXパドゥバR338L高活性変異体を含有するタンパク質に関して、天然FIXの活性の100%よりも大きな活性、例えば、天然FIXの活性の少なくとも約105%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%もしくは200%またはそれ以上を有する場合がある。
【0069】
凝血促進活性は、任意且つ適宜のインビトロまたはインビボアッセイによって測定することができる。FIXの上記活性は、血餅の生成を監視すること(凝固アッセイ)によって凝固カスケードの下流で、またはFVIII-FIX複合体による活性化に続くFXの酵素活性を直接測定すること(発色アッセイ)によって上流でのいずれかで測定することができる(例えば、Barrowcliffe et al.,Semin.Thromb.Haemost.28:247-56(2002);Lee et al.,Thromb.Haemost.82:1644-47(1999);Lippi et al.,Clin.Chem.Lab.Med.45:2-12(2007)を参照されたい。)。したがって、凝血促進活性は、発色基質アッセイ、凝固アッセイ(例えば、1段階もしくは2段階凝固アッセイ)、またはそれらの両方を用いて測定することができる。発色アッセイの機構は、活性化されたFIXがFVIII、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下でFXをFXへと変換する血液凝固カスケードの原理に基づいている。FX活性はFXに特異的なp-ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解によって評価される。405nMで測定されるp-ニトロアニリンの初期放出速度は、FXa活性に、延いては当該試料中のFIX活性に正比例する。上記発色アッセイは、国際血栓症及び止血学会(the International Society on Thrombosis and Hemostasis)(ISTH)の科学及び標準化委員会(the Scientific and Standardization Committee)(SSC)の第VIII因子及び第IX因子小委員会(the Factor VIII and Factor IX Subcommittee)によって推奨されている。
【0070】
凝血促進活性を測定するために有用な他の好適なアッセイとしては、例えば、Scheiflinger及びDockalに対する米国出願公開第2010/0022445号に開示されるアッセイが挙げられ、該公開公報はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0071】
ある特定の態様において、本発明の組換えFIXタンパク質の凝血促進活性が天然の成熟FIXと比較され、ある特定の態様において、該活性が国際標準と比較される。
【0072】
上記少なくとも1の異種部分は、以下により詳細に説明するように、任意の異種部分を含んでいてもよく、または当該FIXタンパク質の特性を改善することができる部分であってもよい。例えば、一態様において、本発明に有用な異種部分は、当該FIXタンパク質の半減期を延長することができる部分、または当該FIXタンパク質の安定性を向上させることができる部分であってもよい。本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIXポリペプチド中に挿入または該ポリペプチドに融合された複数の異種部分を有していてもよい。一実施形態において、上記複数の異種部分は同一である。別の実施形態において、上記複数の異種部分は異なる。他の実施形態において、上記異種部分は、XTEN、アルブミン、アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合性低分子、Fcドメイン、FcRn結合パートナー、PAS、CTP、PEG、HES、PSA、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0073】
いくつかの実施形態において、少なくとも1の異種部分が当該FIXポリペプチドのドメイン内に挿入され、ドメイン間には挿入されない。FIXポリペプチドは、複数のドメイン、例えば、γ-カルボキシグルタミン酸(GLA)ドメイン、上皮成長因子様1(EGF1)ドメイン、上皮成長因子様2(EGF2)ドメイン、活性化ペプチド(AP)ドメイン、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカー、及び触媒ドメイン(例えば、セリンプロテアーゼドメイン)を含む。FIX酵素前駆体は461のアミノ酸を含む。すなわち、アミノ酸1~28(配列番号3に対応する)がシグナルペプチドであり、アミノ酸29~46(配列番号3に対応する)がプロペプチドであり、その後に415のアミノ酸のFIXタンパク質配列が続く。この415のプロセッシングを受けたFIXにおいて、アミノ酸1~145(配列番号1または配列番号2に対応する)はFIX軽鎖であり、アミノ酸146~180は活性化ペプチドであり、アミノ酸181~415(配列番号1または配列番号2に対応する)は触媒FIX重鎖である。上記軽鎖及び重鎖内で、GLAドメインは配列番号1または配列番号2のアミノ酸1~46に対応し、EGF1ドメインは配列番号1または配列番号2のアミノ酸47~84に対応し、EGF2ドメインは配列番号1または配列番号2のアミノ酸85~127に対応し、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカーは配列番号1または配列番号2のアミノ酸128~145に対応し、APドメインは配列番号1または配列番号2のアミノ酸146~180に対応し、触媒ドメインは配列番号1または配列番号2のアミノ酸181~415に対応する。
【0074】
ある特定の実施形態において、少なくとも1の異種部分がFIXポリペプチドの1または複数のドメイン内に挿入される。例えば、少なくとも1の異種部分、例えばXTENは、GLAドメイン、EGF1ドメイン、EGF2ドメイン、APドメイン、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカー、触媒ドメイン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるドメイン内に挿入されていてもよい。1つの特定の実施形態において、上記少なくとも1の異種部分、例えばXTENは、GLAドメイン、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸1~46内に挿入される。1つの特定の実施形態において、上記少なくとも1の異種部分、例えばXTENは、EGF1ドメイン、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸47~83内に挿入される。1つの特定の実施形態において、上記少なくとも1の異種部分、例えばXTENは、EGF2ドメイン、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸84~125内に挿入される。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分、例えばXTENは、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカー、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸132~145内に挿入される。1つの特定の実施形態において、上記少なくとも1の異種部分、例えばXTENは、APドメイン、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸146~180内に挿入される。いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分、例えばXTENは、触媒ドメイン、例えば配列番号1または配列番号2のアミノ酸181~415内に挿入される。
【0075】
いくつかの実施形態において、1または複数の異種部分は種々の挿入部位内に挿入されてもよい。ある特定の実施形態において、少なくとも1の異種部分、例えばXTENが1または複数のこれらの挿入部位に挿入されることによって、FIX活性を喪失することはなく、及び/または当該FIXタンパク質の特性の向上を誘導する。例えば、少なくとも1の異種部分が、配列番号2のアミノ酸103(すなわち、配列番号2のアミノ酸103に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸105(すなわち、配列番号2のアミノ酸105に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸142(すなわち、配列番号2のアミノ酸142に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸149(すなわち、配列番号2のアミノ酸149に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸162(すなわち、配列番号2のアミノ酸162に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸166(すなわち、配列番号2のアミノ酸166に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸174(すなわち、配列番号2のアミノ酸174に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸224(すなわち、配列番号2のアミノ酸224に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸226(すなわち、配列番号2のアミノ酸226に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸228(すなわち、アミノ酸228に対応するアミノ酸の隣接する下流)、配列番号2のアミノ酸413(すなわち、配列番号2のアミノ酸413に対応するアミノ酸の隣接する下流)及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入されていてもよく、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。
【0076】
一実施形態において、上記異種部分、例えばXTENは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸149、配列番号1または配列番号2のアミノ酸162、配列番号1または配列番号2のアミノ酸166、配列番号1または配列番号2のアミノ酸174、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入される。別の実施形態において、上記異種部分、例えばXTENは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸224、配列番号1または配列番号2のアミノ酸226、配列番号1または配列番号2のアミノ酸228、配列番号1または配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入される。他の実施形態において、上記異種部分、例えばXTENは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸103、配列番号1または配列番号2のアミノ酸105、及びそれらの両方からなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入される。別の実施形態において、上記異種部分、例えばXTENは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸103、配列番号1または配列番号2のアミノ酸142で当該FIXポリペプチド内に挿入される。
【0077】
以下により詳細に考察するように、上記異種部分は、様々な長さであってよいXTENであってよい。例えば、上記XTENは、少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸、少なくとも約288のアミノ酸、または少なくとも約864のアミノ酸を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、上記XTENは、AE42、AG42、AE72、AG72、AE144、AG144、AE288、AG288、AE864、及びAG864からなる群より選択される。FIXポリペプチド中に挿入されてもよい、または該ポリペプチドに融合されていてもよいXTENの非限定的な例は本明細書の他の箇所に挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、42のアミノ酸を含むXTEN、例えばAE42またはAG42が、配列番号1または2のアミノ酸103、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸142、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入され、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。
【0079】
いくつかの実施形態において、72のアミノ酸を含むXTEN、例えば、AE72またはAG72が、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入されるか、または上記XTENがC末端に融合され、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。
【0080】
いくつかの実施形態において、144のアミノ酸を含むXTEN、例えば、AE144またはAG144が、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入され、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。
【0081】
いくつかの実施形態において、288のアミノ酸を含むXTEN、例えば、AE288またはAG288が、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入され、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。
【0082】
更に他の実施形態において、864のアミノ酸を含むXTEN、例えば、AE864またはAG8648が、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入され、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。
【0083】
本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIX内に挿入された、当該FIXのC末端に融合された、またはそれらの両方である第2の異種部分、例えば第2のXTENを更に含んでいてもよい。第2の異種部分は、配列番号1または2のアミノ酸103、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸142、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、配列番号1または2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入されていてもよく、または第2のXTENは当該FIXポリペプチドのC末端に融合されている。いくつかの実施形態において、第1のXTEN及び第2のXTENは、それぞれ、配列番号1または2のアミノ酸105及び配列番号1または2のアミノ酸166;配列番号1または2のアミノ酸105及び配列番号1または2のアミノ酸224;配列番号1または2のアミノ酸105及びC末端に融合された;配列番号1または2のアミノ酸166及び配列番号1または2のアミノ酸224;配列番号1または2のアミノ酸166及びC末端に融合された;ならびに配列番号1または2のアミノ酸224及びC末端に融合されたからなる群より選択される、配列番号1または2のアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入され及び/または当該FIXポリペプチドのC末端に融合される。一実施形態において、第1のXTENは配列番号1または2のアミノ酸166に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入されており、第2のXTENは当該FIXポリペプチドのC末端に融合されている。
【0084】
第2のXTENは、少なくとも約6のアミノ酸、少なくとも約12のアミノ酸、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸、または少なくとも約288のアミノ酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、第2のXTENは、6のアミノ酸、12のアミノ酸、36のアミノ酸、42のアミノ酸、72のアミノ酸、144のアミノ酸、または288のアミノ酸を含む。第2のXTENは、AE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、AG144、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されてもよい。1つの特定の実施形態において、第2のXTENはAE72またはAE144である。
【0085】
1つの特定の実施形態において、第2のXTENは、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は、第3、第4、第5、及び/または第6のXTENを更に含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記シグナルペプチド及びプロペプチド配列を含まない、配列番号54~配列番号153からなる群より選択される配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記シグナルペプチド及びプロペプチド配列を含まない、配列番号54~配列番号153からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記シグナルペプチド及びプロペプチド配列を含まない、配列番号119、120、121、及び123からなる群より選択される配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記シグナルペプチド及びプロペプチド配列を含まない、配列番号119、120、123、121及び226または122からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記シグナルペプチド及びプロペプチド配列を含まない、FIX-AP.72、FIX-AP.144、FIX-CT.72、FIX-CT.144、FIX-AP.288及びFIX-CT.288からなる群より選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は2種の異なる型の異種部分を含む。いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド、XTEN、及びFcドメイン(もしくはFcRn結合パートナー)またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記XTENは当該FIX内に挿入され、上記Fcドメイン(もしくはFcRn結合パートナー)またはその断片は当該FIXのC末端に融合される。いくつかの実施形態において、上記XTENは、表3に列挙される挿入部位から選択される1または複数の挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入される。一実施形態において、上記XTENは、配列番号1または2のアミノ酸103、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸142、配列番号1または2のアミノ酸149、配列番号1または2のアミノ酸162、配列番号1または2のアミノ酸166、配列番号1または2のアミノ酸174、配列番号1または2のアミノ酸224、配列番号1または2のアミノ酸226、配列番号1または2のアミノ酸228、及び配列番号1または2のアミノ酸413からなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入され、上記Fcドメイン(もしくはFcRn結合パートナー)またはその断片は当該FIXのC末端に融合される。ある特定の実施形態において、上記XTENは、配列番号1または2のアミノ酸105、配列番号1または2のアミノ酸166、及び配列番号1または2のアミノ酸224からなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入され、上記Fcドメイン(もしくはFcRn結合パートナー)またはその断片は当該FIXのC末端に融合される。いくつかの実施形態において、上記XTENは、AE42、AE72、及びAE144から選択される。
【0089】
本発明のある特定の態様において、本FIX融合タンパク質は1または2のポリペプチド鎖を含む。一実施形態において、本FIX融合タンパク質は2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖はFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)に融合された当該FIXポリペプチドを含み、第2のポリペプチド鎖は第2のFcドメインを含み、第1のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)とは共有結合によって会合している。
【0090】
別の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド及びFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含む単一のポリペプチド鎖を含む。1つの特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記FIXポリペプチドと上記Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)とを連結するリンカーを更に含む。別の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド、Fcドメイン、及び第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含む。1つの特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)とを連結するリンカーを更に含む。別の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)、及び第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含み、上記FIXポリペプチドはリンカーによって上記Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と連結している。別の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、FIXポリペプチド、Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)、及び第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)を含み、上記FIXポリペプチドは第1のリンカーによって上記Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と連結し、上記Fcドメイン(またはFcRn結合パートナー)はリンカーによって第2のFcドメイン(またはFcRn結合パートナー)と連結している。ある特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、
(i) FIX(X)-F1、
(ii) FIX(X)-L1-F1、
(iii) FIX(X)-F1-F2、
(iv) FIX(X)-L1-F1-F2、
(v) FIX(X)-L1-F1-L2-F2、
(vi) FIX(X)-F1-L1-F2、
(vii) FIX(X)-F1:F2、
(viii) FIX(X)-L1-F1:F2、及び
(ix) それらの任意の組み合わせ
からなる群より選択される式を含み、式中、FIX(X)は1または複数の本明細書に記載の挿入部位に挿入されたXTENを有するFIXポリペプチドであり、L1及びL2のそれぞれはリンカーであり、F1はFcドメインまたはFcRn結合パートナーであり、F2は第2のFcドメインまたは第2のFcRn結合パートナーであり、(-)はペプチド結合または1もしくは複数のアミノ酸であり、(:)は共有結合、例えばジスルフィド結合である。
【0091】
上記リンカー(LI及びL2)は同一であってもまたは異なっていてもよい。上記リンカーは開裂性であってもまたは非開裂性であってもよく、該リンカーは1または複数の細胞内プロセシング部位を含んでいてもよい。上記リンカーの非限定的な例は本明細書の他の箇所に記載される。任意の上記リンカーを用いて、FIXを異種部分(例えばXTENもしくはFc)と結合させてもよく、または第1の異種部分(例えば第1のFc)を第2の異種部分(例えば第2のFc)と結合させてもよい。
【0092】
ある特定の実施形態において、上記リンカーはトロンビン切断部位を含む。1つの特定の実施形態において、上記トロンビン切断部位はXVPRを含み、但し、Xは任意の脂肪族アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシン)である。1つの特定の実施形態において、上記トロンビン切断部位はLVPRを含む。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、SFLLRN(配列番号190)を含むPAR1非活性部位相互作用モチーフを含む。いくつかの実施形態において、上記PAR1非活性部位相互作用モチーフは、P、PN、PND、PNDK(配列番号191)、PNDKY(配列番号192)、PNDKYE(配列番号193)、PNDKYEP(配列番号194)、PNDKYEPF(配列番号195)、PNDKYEPFW(配列番号196)、PNDKYEPFWE(配列番号197)、PNDKYEPFWED(配列番号198)、PNDKYEPFWEDE(配列番号199)、PNDKYEPFWEDEE(配列番号200)、PNDKYEPFWEDEES(配列番号201)、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるアミノ酸配列を更に含む。他の実施形態において、上記リンカーはFXIa切断部位LDPRを含む。
【0093】
1つの特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質はFIXポリペプチド及びXTENを含む異種部分を含み、該XTENは、開裂性であっても開裂性でなくてもよいリンカーによってまたはリンカーなしで当該FIXポリペプチドのC末端に融合しており、且つ長さが42のアミノ酸よりも長く864のアミノ酸よりも短い、好ましくは長さが144のアミノ酸よりも短いアミノ酸配列を含む。上記XTENは、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、もしくは71のアミノ酸よりも長く、140、139、138、137、136、135、134、133、132、131、130、129、128、127、126、125、124、123、122、121、120、119、118、117、116、115、114、113、112、111、110、109、108、107、106、105、104、103、102、101、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、76、75、74、または73などのアミノ酸よりも短い、またはそれらの任意の組み合わせであるアミノ酸配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、上記XTENは長さが72のアミノ酸である。1つの特定の実施形態において、上記XTENはAE72である。別の実施形態において、上記XTENは、配列番号35と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は、少なくとも1の挿入されたXTEN配列及び、開裂性であっても開裂性でなくてもよいリンカーによってまたはリンカーなしで当該FIXポリペプチドのC末端に融合しているXTENを含む異種部分を含む。いくつかの実施形態において、上記XTENは長さが864のアミノ酸よりも短く、好ましくは長さが144のアミノ酸より短い。他の実施形態において、上記XTENは、長さが244、140、130、120、110、100、90、80、または75のアミノ酸より短いアミノ酸配列を含む。
【0095】
他の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、
(i) FIX-X
(ii) FIX-L1-X
(iii) FIX(X)-X
(iv) FIX(X)-L1-X
(v) FIX(X)-L1:X
(vi) それらの任意の組み合わせ
からなる群より選択される式を含み、式中、FIXはFIXポリペプチドであり、FIX(X)は1または複数の本明細書に記載の挿入部位中に挿入された少なくとも1のXTENを有するFIXポリペプチドであり、(X)は42のアミノ酸よりも長く、144のアミノ酸よりも短いXTENあり、Xは42のアミノ酸よりも長く、864のアミノ酸よりも短い288のアミノ酸など、好ましくは144のアミノ酸よりも短いXTEN(例えば、72のアミノ酸を有するXTEN)であり、L1はリンカーであり;(-)はペプチド結合または1もしくは複数のアミノ酸であり、(:)は共有結合、例えばジスルフィド結合である。
【0096】
上記リンカー(L1)は同一であってもまたは異なっていてもよい。上記リンカーは、必要に応じて開裂性であってもまたは非開裂性であってもよく、該リンカーは1または複数の細胞内プロセシング部位を含んでいてもよい。上記リンカーの非限定的な例は本明細書の他の箇所に記載される。任意の上記リンカーを用いて、FIXを異種部分(例えばXTENもしくはFc)と結合させてもよい。以下は多くの発明の実施形態に好適なリンカーの非限定的な例である。
【化1】
【0097】
ある特定の他の実施形態において、上記リンカーはトロンビン切断部位を含む。1つの特定の実施形態において、上記トロンビン切断部位はXVPRを含み、但し、Xは、任意の脂肪族アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、またはイソロイシン)である。1つの特定の実施形態において、上記トロンビン切断部位はLVPRを含む。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、SFLLRN(配列番号190)を含むPAR1非活性部位相互作用モチーフを含む。いくつかの実施形態において、上記PAR1非活性部位相互作用モチーフは、P、PN、PND、PNDK(配列番号191)、PNDKY(配列番号192)、PNDKYE(配列番号193):PNDKYEP(配列番号194)、PNDKYEPF(配列番号195)、PNDKYEPFW(配列番号196)、PNDKYEPFWE(配列番号197)、PNDKYEPFWED(配列番号198)、PNDKYEPFWEDE(配列番号199)、PNDKYEPFWEDEE(配列番号200)、PNDKYEPFWEDEES(配列番号201)、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるアミノ酸配列を更に含む。ある特定の他の実施形態において、上記リンカーは、上記PAR1非活性部位相互作用モチーフに結合することができるLDPRを含むFXIa切断部位を含む。
【0098】
ある特定の実施形態において、C末端でXTENに融合されたFIXポリペプチドは、第2のXTENを更に含んでいてもよい。第2のXTENは、本明細書に開示の挿入部位を始めとする、但しこれらに限定されない、本FIX融合タンパク質の任意の部分に融合または挿入されていてもよい。本FIX融合タンパク質は、第3のXTEN、第4のXTEN、第5のXTEN、または第6のXTENを更に含んでいてもよい。
【0099】
本発明のFIX融合タンパク質は天然FIXと比較して活性のレベルを維持している。いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は、天然FIXの凝血促進活性の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または100%を有する。凝血促進活性は、発色基質アッセイ、1段階凝固アッセイ、またはそれらの両方を含む、但しこれらに限定されない、本技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。
【0100】
II.A.第IX因子
ヒト第IX因子(FIX)は、血液凝固カスケードの内因系経路の重要な構成要素であるセリンプロテアーゼである。本明細書では、「第IX因子」すなわち「FIX」は、凝固因子タンパク質ならびにその種変異体及び配列変異体を指し、ヒトFIX前駆体ポリペプチド(「プレプロ」)の461の単鎖アミノ酸配列、成熟ヒトFIXの415の単鎖アミノ酸配列(配列番号1)、及びR338L FIX(パドゥバ)変異体(配列番号2)を包含するが、これらに限定はされない。FIXは、血液凝固FIXの一般的な特性を有する任意の形態のFIX分子を包含する。本明細書では、「第IX因子」及び「FIX」は、ドメインGla(γ-カルボキシグルタミン酸残基を含有する領域)、EGF1及びEGF2(ヒト上皮増殖因子に相同な配列を含有する領域)、活性化ペプチド(「AP」、成熟FIXのR136-R180残基によって形成される)、及びC末端プロテアーゼドメイン(「プロ」)、または本技術分野で公知のこれらのドメインの同義語を含むポリペプチドを包含することを意図し、または当該の天然タンパク質の生物学的活性の少なくとも一部を保持するトランケートされた断片または配列変異体であってもよい。FIXまたは配列変異体は、米国特許第4,770,999号及び第7,700,734号に記載されるようにクローニングされており、また、ヒト第IX因子をコードするcDNAは、単離、特徴づけられ、発現ベクター中にクローニングされている(例えば、Choo et al.,Nature 299:178-180(1982);Fair et al.,Blood 64:194-204(1984);及びKurachi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.79:6461-6464(1982)を参照のこと)。Simioni et al,2009によって特徴づけられたFIXの1つの特定の変異体であるR338L FIX(パドゥバ)変異体(配列番号2)は機能獲得型突然変異を含み、該突然変異はパドゥバ変異体が天然FIXと比較して活性が8倍近く増加することと関係がある(表1)。FIX変異体はまた、当該FIXポリペプチドのFIX活性に影響を及ぼさない1または複数の保存的アミノ酸置換を有する任意のFIXポリペプチドを包含してもよい。
【表1】
【0101】
上記FIXポリペプチドは、3の領域、すなわち、28のアミノ酸(配列番号3のアミノ酸1~28)のシグナルペプチド、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化に必要な18のアミノ酸(アミノ酸29~46)のプロペプチド、及び415のアミノ酸の成熟第IX因子(配列番号1または2)からなるプレプロポリペプチド鎖(配列番号1)として合成された55kDaのポリペプチドである。上記プロペプチドは、上記ガンマ-カルボキシグルタミン酸ドメインに対してN末端側の18のアミノ酸残基の配列である。上記プロペプチドはビタミンK依存性ガンマカルボキシラーゼと結合し、次いで内因性プロテアーゼ、最も可能性が高いのはフューリンまたはPCSK3としても知られるPACE(Paired basic Amino acid Cleaving Enzyme)によってFIXの前駆体ポリペプチドから切断される。ガンマカルボキシル化が起こらなければ、Glaドメインがカルシウムに結合して、当該タンパク質を負に荷電したリン脂質表面に固定するのに必要な正しい立体構造をとることができず、それによって第IX因子の機能が損なわれる。カルボキシル化が行われたとしても、保持されたプロペプチドはカルシウム及びリン脂質への最適な結合に必要なGlaドメインの立体構造の変化を妨害することから、Glaドメインは、適正な機能を果たすためには上記プロペプチドの切断にも依存している。ヒトにおいては、肝細胞によって、生成した成熟第IX因子が概略17重量%の炭水化物を含有する415のアミノ酸残基の単鎖タンパク質である不活性な酵素前駆体として血流中に分泌される(Schmidt,A.E.,et al.(2003) Trends Cardiovasc Med,13:39)。
【0102】
上記成熟FIXは、N末端からC末端への構成で、GLAドメイン、EGF1ドメイン、EGF2ドメイン、活性化ペプチド(AP)ドメイン、及びプロテアーゼ(または触媒)ドメインである数種のドメインからなる。短いリンカーがEGF2ドメインをAPドメインに結合している。FIXは、それぞれR145~A146及びR180~V181によって形成される2の活性化ペプチドを含有する。活性化に続いて、上記単鎖FIXは2の連鎖がジスルフィド結合によって連結された二本鎖分子となる。凝固因子を、該因子の活性化ペプチドを置換することによって操作してもよく、その結果活性化特異性が変化する。哺乳類動物において、第IXa因子を産生するためには、成熟したFIXが活性化された第XI因子によって活性化される必要がある。FIXのFIXaへの活性化に際して、上記プロテアーゼドメインがFIXの触媒活性を提供する。活性化された第VIII因子(FVIIIa)が第FIXa因子の活性を完全に発現させるための特異的な補因子である。
【0103】
他の実施形態において、FIXポリペプチドは、Thr148対立遺伝子形態の血漿由来の第IX因子を含み、内因性第IX因子と同様の構造的及び機能的特徴を有する。
【0104】
機能を有する非常に多くのFIX変異体が公知である。国際公開第WO02/040544A3号は、4ページ、9~30行及び15ページ、6~31行に、ヘパリンによる阻害に対する向上した抵抗性を示す変異体を開示する。国際公開第WO03/020764A2号は、表2及び表3(14~24ページ)及び12ページ、1~27行に、低下したT細胞免疫原性のFIX変異体を開示する。国際公開第WO2007/149406A2号は、4ページ、1行~19ページ、11行に、増加したタンパク質安定性、増加したインビボ及びインビトロ半減期、及びプロテアーゼに対する増加した耐性を示す、機能を有する変異FIX分子を開示する。WO2007/149406A2も、19ページ、12行~20ページ、9行に、キメラ及び他の変異体FIX分子を開示する。国際公開第WO08/118507A2号は、5ページ、14行~6ページ、5行に、増加した凝固活性を示すFIX変異体を開示する。国際公開第WO09/051717A2号は、9ページ、11行~20ページ、2行に、N結合及び/またはO結合グリコシル化部位の数が増加し、その結果増加した半減期及び/または回収率を有するFIX変異体を開示する。国際公開第WO09/137254A2号も、2ページ、段落[006]~5ページ、段落[011]及び16ページ、段落[044]~24ページ、段落[057]に、グリコシル化部位の数が増加した第IX因子変異体を開示する。国際公開第WO09/130198A2号は、4ページ、26行~12ページ、6行に、グリコシル化部位の数が増加し、その結果半減期が増加した機能性変異体FIX分子を開示する。国際公開第WO09/140015A2号は、11ページ、段落[0043]~13ページ、段落[0053]に、ポリマー(例えばPEG)の複合化に用いることができるCys残基の数が増加した、機能性FIX変異体を開示する。2011年7月11日に出願され、2012年1月12日にWO2012/006624として公開された国際出願第PCT/US2011/043569号に記載のFIXポリペプチドも、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0105】
また、血友病患者において、機能しない数百種のFIXにおける突然変異体が特定されており、それらの多くが国際公開第WO09/137254A2号の11~14ページ、表5に開示される。かかる機能しない突然変異体は本発明には含まれないが、如何なる突然変異体によって、機能性FIXポリペプチドが生じる可能性がより高いかまたはより低いかに関する更なる指針を提供する。
【0106】
一実施形態において、上記FIXポリペプチド(または融合ポリペプチドの第IX因子部分)は、配列番号1または2に示される配列(配列番号1または2のアミノ酸1~415)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を、あるいはプロペプチド配列と共に、またはプロペプチド配列及びシグナル配列と共に(全長FIX)含む。別の実施形態において、上記FIXポリペプチドは、配列番号2に示される配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0107】
第IX因子の凝固活性は国際単位(複数可)(IU)として表される。1IUのFIX活性は、1ミリリットルの正常なヒト血漿中のFIXの量にほぼ相当する。第IX因子活性の測定には、1段階凝固アッセイ(活性化部分トロンボプラスチン時間、aPTT)、トロンビン生成時間(TGA)及び回転トロンボエラストメトリー(ROTEM(登録商標))を含むいくつかのアッセイが利用可能である。本発明は、ヒト、非ヒト霊長動物、(家畜を含む)哺乳動物由来などの天然の、及びFIXの生物学的活性または生物学的機能の少なくとも一部を保持している非天然配列変異体である、及び/または凝固因子関連の疾患、欠乏、障害または疾病(例えば、外傷、外科手術に関連した凝固因子の欠乏の出血症状の発現)の予防、治療、調節、または改善に有用な、FIX配列、配列断片に対する相同性を有する配列を企図する。ヒトFIXに対する相同性を有する配列は、NCBI BLASTなどの標準的な相同性検索技法によって見出すことができる。
【0108】
II.B.異種部分
本発明のFIX融合タンパク質は、上記FIXポリペプチド内の1または複数の部位に挿入された、C末端に融合された、またはそれらの両方である少なくとも1の異種部分を有していてもよく、凝血促進活性を有し、且つ宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。「異種部分」は異種ポリペプチド部分、もしくは非ポリペプチド部分、またはそれらの両方を含んでいてもよい。ある特定の態様において、上記異種部分はXTENである。いくつかの態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、上記FIXポリペプチド内の1または複数の部位に挿入された少なくとも1のXTENを含む。他の態様において、FIX融合タンパク質は、上記FIXポリペプチド内の1または複数の部位に挿入された少なくとも1の異種部分を含み、該異種部分は半減期を延長する部分(例えば、インビボで半減期を延長する部分)である。
【0109】
当該FIXがその凝血促進活性の少なくとも一部を保持する挿入部位を見出すことによって、1または複数のこれらの同一の部位においてFIXタンパク質に融合される場合に、半減期の延長を伴う体系化されていないまたは体系化された特性のいずれかを有する他のペプチド及びポリペプチドを挿入することが可能になると考えられる。異種部分(例えば半減期を延長する部分)の非限定的な例としては、アルブミン、アルブミン断片、免疫グロブリンのFc断片、FcRn結合パートナー、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、トランスフェリン、米国特許出願第20100292130号のPASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、ペプチドが挙げられ、50%未満~50%超の異なる程度の二次構造を有する、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタメート(E)及びプロリン(P)から選択される2種のアミノ酸の、6~40のアミノ酸の短いポリペプチドがとりわけ、FIXの上記特定された活性な挿入部位に挿入するのに適していると思われる。
【0110】
ある特定の態様において、異種部分は本FIX融合タンパク質のインビボまたはインビトロ半減期を増加させる。他の態様において、異種部分は本FIX融合タンパク質の可視化及び位置の特定を容易にする。FIX融合タンパク質の可視化及び/または位置の特定は、インビトロ、インビボ、エクスビボ、またはそれらの組み合わせとすることができる。他の態様において、異種部分は本FIX融合タンパク質の安定性を増加させる。本明細書では、「安定性」という用語は、本技術分野で認知された、環境条件(例えば、高いまたは低い温度)に対して、本FIX融合タンパク質の1または複数の物理的特性が維持されることの尺度を指す。ある特定の態様において、上記物理的特性は本FIX融合タンパク質の共有結合構造の維持(例えば、タンパク質分解切断、不要な酸化または脱アミド化がないこと)である。他の態様において、上記物理的特性は、本FIX融合タンパク質が適切に折り畳まれた状態で存在していること(例えば、可溶性または不溶性の凝集体または沈殿物がないこと)である場合もある。一態様において、上記本FIX融合タンパク質の安定性は、当該FIX融合タンパク質の生物物理学的特性、例えば、熱安定性、pH-アンフォールディングプロファイル、グリカンの安定な除去、溶解性、生化学的機能(例えば、他のタンパク質に結合する能力)など、及び/またはそれらの組み合わせをアッセイすることによって測定される。別の態様において、生化学的機能は相互作用の結合親和性によって実証される。一態様において、タンパク質の安定性の1つの尺度は熱安定性、すなわち熱負荷に対する耐性である。安定性は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)等の当該分野で公知の方法を用いて測定することができる。熱安定性の測定方法としては、示差走査熱量測定法(DSC)、示差走査蛍光光度法(DSF)、円偏光二色性(CD)、及び熱負荷アッセイが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0111】
特定の態様において、FIX融合タンパク質中の1または複数の挿入部位に挿入された異種部分は当該FIX融合タンパク質の生化学的活性を保持する。特定の実施形態において、上記異種部分はXTENである。一実施形態において、上記生化学的活性はFIX活性であり、該活性は発色アッセイによって測定することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、少なくとも1の異種部分は、該異種部分のN末端、C末端、またはN末端及びC末端の両方に位置するリンカーを介して挿入部位に間接的に挿入されている。上記異種部分のN末端及びC末端のリンカーは同一であるかまたは異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、いくつかのリンカーが、上記異種部分の一方または両方の末端にタンデムで隣接していてもよい。いくつかの実施形態において、上記リンカーは「Gly-Serペプチドリンカー」である。「Gly-Serペプチドリンカー」とという用語はグリシン及びセリン残基を含むペプチドを指す。
【0113】
例示的なGly/Serペプチドリンカーとしては、アミノ酸配列(GlySer)(配列番号161)(但し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、46、50、55、60、70、80、90、または100に等しいかそれ以上の整数)が挙げられるが、これに限定はされない。一実施形態において、n=1、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号161)である。一実施形態において、n=2、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号162)である。別の実施形態において、n=3、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号172)である。別の実施形態において、n=4、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号173)である。別の実施形態において、n=5、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号174)である。更に別の実施形態において、n=6、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号175)である。別の実施形態において、n=7、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号176)である。更に別の実施形態において、n=8、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号177)である。別の実施形態において、n=9、すなわち、上記リンカーは(GlySer)(配列番号178)である。更に別の実施形態において、n=10、すなわち、上記リンカーは(GlySer)10(配列番号179)である。
【0114】
別の例示的なGly/Serペプチドリンカーは、アミノ酸配列Ser(GlySer)(配列番号180)(但し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、46、50、55、60、70、80、90、または100に等しいかそれ以上の整数)を含む。一実施形態において、n=1、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号180)である。一実施形態において、n=2、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号181)である。別の実施形態において、n=3、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号182)である。別の実施形態において、n=4、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号183)である。別の実施形態において、n=5、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号184)である。更に別の実施形態において、n=6、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号185)である。更に別の実施形態において、n=7、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号186)である。更に別の実施形態において、n=8、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号187)である。更に別の実施形態において、n=9、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)(配列番号188)である。更に別の実施形態において、n=10、すなわち、上記リンカーはSer(GlySer)10(配列番号189)である。
【0115】
ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙された挿入部位に挿入された1の異種部分を含む。他の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙された2の挿入部位に挿入された2の異種部分を含む。ある特定の実施形態において、上記2の異種部分は、表8に列挙された2の挿入部位に挿入される。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙された3の挿入部位に挿入された3の異種部分を含む。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙された4の挿入部位に挿入された4の異種部分を含む。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙された5の挿入部位に挿入された5の異種部分を含む。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙された6の挿入部位に挿入された6の異種部分を含む。いくつかの態様において、上記全ての挿入された異種部分は同一である。他の態様において、上記挿入された異種部分の少なくとも1は、残余の挿入された異種部分と異なる。
【0116】
上記少なくとも1の異種部分、例えばXTENへの上記FIXポリペプチドの融合は、本発明の融合タンパク質の物理的または化学的特性、例えば薬物動態に影響を与えることができる。特定の実施形態において、FIXタンパク質に連結した上記異種部分は、少なくとも1種の薬物動態学的特性増加させ、例えば、増加した終末相半減期または増加した曲線下面積(AUC)とし、その結果、本明細書に記載の融合タンパク質は、野生型FIXまたは当該異種部分をもたない対応するFIXと比較して、長い期間インビボに留まる。更なる実施形態において、本発明に用いられるXTEN配列は、少なくとも1種の薬物動態学的特性、例えば、終末相半減期の増加、皮下投与に対する回収率の増加及び/または生物学的利用能の増加、曲線下面積(AUC)の増加を増加させ、その結果、本明細書に記載の融合タンパク質は、野生型FIXまたは当該異種部分をもたない対応するFIXと比較して、長い期間インビボに留まる。
【0117】
ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質の半減期を増加させる異種部分は、限定はされないが、アルブミン、免疫グロブリンFc領域、XTEN配列、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリン、アルブミン結合部分、またはこれらのポリペプチドの任意の断片、誘導体、変異体、もしくは組み合わせを含む。ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は半減期を増加させる異種ポリペプチドを含み、該異種ポリペプチドはXTEN配列である。他の関連する態様において、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらの部分の任意の誘導体、変異体、もしくは組み合わせなどの非ポリペプチド部分のための結合部位を含んでいてもよい。
【0118】
他の実施形態において、本発明のFIX融合タンパク質は1または複数のポリマーに複合化している。上記ポリマーは水溶性または非水溶性であってよい。該ポリマーは、共有結合もしくは非共有結合でFIXまたはFIXに複合化した他の部分に結合していてもよい。上記ポリマーの非限定的な例としては、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、またはポリ(アクリロイルモルホリン)であってよい。
【0119】
ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、1、2、3またはそれ以上の異種部分を含み、該異種部分は、それぞれ同一または異なる分子であってよい。いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は1または複数のXTENを含む。他の実施形態において、本FIX融合タンパク質は1または複数のXTEN及び1または複数のFcドメインを含む。1つの特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記FIX内に挿入されたXTEN及び該FIXのC末端に融合されたFcを含んでいてもよい。
【0120】
本発明のFIX融合タンパク質は、天然FIX、rFIXFc、またはFIX R338Lと比較して増加したインビボ半減期を有し得る。いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記異種部分をもたない天然FIXと比較して、または上記異種部分をもたないFIX R338Lと比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍長いインビボ半減期を有することができる。1つの特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記異種部分をもたない上記FIXポリペプチドよりも2倍を超える長さのインビボ半減期を有する。
【0121】
他の実施形態において、本FIX融合タンパク質のインビボ半減期は、異種部分をもたないFIXポリペプチドのインビボ半減期よりも、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも約14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、または少なくとも約34時間長くてもよい。
【0122】
II.B.1.XTEN
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分はXTENである。本明細書では、「XTEN配列」とは、生理学的条件下で二次または三次構造をとることがないまたはその程度が小さい配列を有する、主として小さな親水性アミノ酸からなる、非天然起源の、実質的に非反復配列を有する、長尺のポリペプチドを指す。XTENは、融合タンパク質のパートナーとして、本発明のFIX配列に連結されて融合タンパク質を創生した場合に、ある特定の所望の薬物動態学的、物理化学的及び薬学的特性を与える運搬体として作用することができる。かかる望ましい特性としては向上した薬物動態学的パラメータ及び溶解特性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書では、「XTEN」には、詳細には、単鎖抗体または軽鎖もしくは重鎖のFc断片などの抗体あるいは抗体断片は含まれない。
【0123】
ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIX中に挿入された少なくとも1のXTENまたはその断片、変異体、もしくは誘導体を含み、本FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、且つ宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。ある特定の態様において、2の上記異種部分がXTEN配列である。いくつかの態様において、3の上記異種部分がXTEN配列である。いくつかの態様において、4の上記異種部分がXTEN配列である。いくつかの態様において、5の上記異種部分がXTEN配列である。いくつかの態様において、6の上記異種部分がXTEN配列である。
【0124】
いくつかの実施形態において、本発明にとって有用なXTEN配列は、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800、または2000よりも多いアミノ酸残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。ある特定の実施形態において、XTENは、約20を超えて約3000までのアミノ酸残基、30を超えて約2500までの残基、40を超えて約2000までの残基、50を超えて約1500までの残基、60を超えて約1000までの残基、70を超えて約900までの残基、80を超えて約800までの残基、90を超えて約700までの残基、100を超えて約600までの残基、110を超えて約500までの残基、または120を超えて約400までの残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。1つの特定の実施形態において、上記XTENは、長さが42のアミノ酸よりも長く且つ144のアミノ酸よりも短いアミノ酸配列を含む。
【0125】
本発明のXTEN配列は、5~14(例えば9~14)のアミノ酸残基の配列モチーフまたは該配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含んでいてもよく、上記モチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタメート(E)及びプロリン(P)からなる群より選択される4~6種のアミノ酸(例えば5種のアミノ酸)を含む、上記アミノ酸から本質的に構成される、または上記アミノ酸から構成される。US2010-0239554A1を参照されたい。
【0126】
いくつかの実施形態において、上記XTENは、非オーバーラッピング配列モチーフであって、該配列の約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%または約100%が、表2Aから選択される単一モチーフファミリーから選択される非オーバーラッピング配列の複数のユニットからなり、その結果ファミリーモチーフとなる上記非オーバーラッピング配列モチーフを含む。本明細書では、「ファミリー」とは、上記XTENが、表2Aの単一モチーフカテゴリー、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BC、またはBD XTENのみから選択されるモチーフを有すること、及びファミリーモチーフに属さない当該XTEN中の他のアミノ酸が、コード化ヌクレオチドによる制限部位の組み込み、切断部位の組み込みを可能にするなどの必要な特性を実現するように、またはFIXへのより良好な連結を実現するように選択されることを意味する。XTENファミリーのいくつかの実施形態において、XTEN配列は、ADモチーフファミリーの、またはAEモチーフファミリーの、またはAFモチーフファミリーの、またはAGモチーフファミリーの、またはAMモチーフファミリーの、またはAQモチーフファミリーの、またはBCファミリーの、またはBDファミリーのモチーフファミリーの非オーバーラッピング配列モチーフの複数のユニットを含み、得られるXTENは上記の範囲の相同性を示す。他の実施形態において、上記XTENは表2Aのモチーフファミリーの2つ以上のモチーフ配列の複数のユニットを含む。これらの配列を選択して、以下により詳細に説明する、当該モチーフのアミノ酸組成によって付与される、正味電荷、親水性、二次構造をとらないこと、または反復性がないことなどの特性を含む、所望の物理的/化学的特性を実現することができる。本段落に上述の実施形態において、上記XTENに組み込まれるモチーフを、本明細書に記載の方法を用いて選択し且つ組み立てて、約36~約3000のアミノ酸残基のXTENを得ることができる。
【表2A-1】
【表2A-2】
【0127】
FIX中への挿入またはFIXへの連結のためのXTENは様々な長さを有していてよい。一実施形態において、上記XTEN配列(複数可)の長さは本融合タンパク質において達成されるべき特性または機能に基づいて選択される。XTENは、意図する特性または機能に応じて、短いもしくは中間の長さの配列または、運搬体としての役割を果たすことができるより長い配列であってもよい。ある特定の実施形態において、上記XTENは、約6~約99アミノ酸残基の短いセグメント、約100~約399のアミノ酸残基の中間の長さ、ならびに約400~約1000の及び最大で約3000のアミノ酸残基のより長い長さを含む。したがって、FIX中に挿入されたまたはFIXに連結された上記XTENは、長さが、約6、約12、約36、約40、約42、約72、約96、約144、約288、約400、約500、約576、約600、約700、約800、約864、約900、約1000、約1500、約2000、約2500、または最大で3000のアミノ酸残基の長さであってよい。他の実施形態において、上記XTEN配列は、長さが、約6~約50、約50から約100、約100~150、約150~250、約250~400、約400~約500、約500~約900、約900~1500、約1500~2000、または約2000~約3000のアミノ酸残基である。FIX中に挿入されたまたはFIXに連結されたXTENの正確な長さは、上記FIXの活性に悪影響を与えることなく変化し得る。一実施形態において、本明細書で用いられる1または複数のXTENは、42のアミノ酸、72のアミノ酸、144のアミノ酸、288のアミノ酸、576のアミノ酸、または864のアミノ酸の長さを有し、且つ上記XTENファミリー配列、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BCまたはBDの1または複数から選択することができる。
【0128】
いくつかの実施形態において、本発明で用いられるXTEN配列は、AE42、AG42、AE48、AM48、AE72、AG72、AE108、AG108、AE144、AF144、AG144、AE180、AG180、AE216、AG216、AE252、AG252、AE288、AG288、AE324、AG324、AE360、AG360、AE396、AG396、AE432、AG432、AE468、AG468、AE504、AG504、AF504、AE540、AG540、AF540、AD576、AE576、AF576、AG576、AE612、AG612、AE624、AE648、AG648、AG684、AE720、AG720、AE756、AG756、AE792、AG792、AE828、AG828、AD836、AE864、AF864、AG864、AM875、AE912、AM923、AM1318、BC864、BD864、AE948、AE1044、AE1140、AE1236、AE1332、AE1428、AE1524、AE1620、AE1716、AE1812、AE1908、AE2004A、AG948、AG1044、AG1140、AG1236、AG1332、AG1428、AG1524、AG1620、AG1716、AG1812、AG1908、AG2004、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される配列と、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。US2010-0239554A1を参照されたい。1つの特定の実施形態において、上記XTENは、AE42、AE72、AE144、AE288、AE576、AE864、AG42、AG72、AG144、AG288、AG576、AG864、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0129】
一実施形態において、上記XTEN配列は、AE36(配列番号217)、AE42(配列番号34)、AE72(配列番号35)、AE78(配列番号218)、AE144(配列番号36)、AE144_2A(配列番号37)、AE144_3B(配列番号38)、AE144_4A(配列番号39)、AE144_5A(配列番号40)、AE144_6B(配列番号41)、AG144(配列番号42)、AG144_A(配列番号43)、AG144_B(配列番号44)、AG144_C(配列番号45)、AG144_F(配列番号46)、AE288(配列番号47)、AE288_2(配列番号48)、AG288(配列番号49)、AE576(配列番号50)、AG576(配列番号51)、AE864(配列番号52)、AG864(配列番号53)、XTEN_AE72_2A_1(配列番号202)、XTEN_AE72_2A_2(配列番号203)、XTEN_AE72_3B_1(配列番号204)、XTEN_AE72_3B_2(配列番号205)、XTEN_AE72_4A_2(配列番号206)、XTEN_AE72_5A_2(配列番号207)、XTEN_AE72_6B_1(配列番号208)、XTEN_AE72_6B_2(配列番号209)、XTEN_AE72_1A_1(配列番号210)、XTEN_AE72_1A_2(配列番号211)、XTEN_AE144_1A(配列番号212)、AE150(配列番号213)、AG150(配列番号214)、AE294(配列番号215)、AG294(配列番号216)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。
【0130】
いくつかの実施形態において、XTENの100%未満のアミノ酸が、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタメート(E)及びプロリン(P)から選択され、または該配列の100%未満が、表2Aの配列モチーフまたは表2BのXTEN配列からなる。かかる実施形態において、上記XTENの残余のアミノ酸残基は、その他の14種の天然L-アミノ酸のいずれかから選択されるが、上記XTEN配列が少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の親水性アミノ酸を含有するように、親水性アミノ酸から優先的に選択されてもよい。上記複合化構築物において利用される上記XTEN中の疎水性アミノ酸の含有量は、5%未満、または2%未満、または1%未満の疎水性アミノ酸含有量であってよい。XTENの構築においてあまり好ましくない疎水性残基としては、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、及びメチオニンが挙げられる。また、XTEN配列中の以下のアミノ酸、すなわち、メチオニン(例えば、酸化を回避するため)、またはアスパラギン及びグルタミン(脱アミド化を回避するため)の含有量は、5%未満もしくは4%未満もしくは3%未満もしくは2%未満もしくは1%未満であってもよく、またはXTENは上記アミノ酸を含まなくてもよい。
【0131】
別の実施形態において、上記XTEN配列は、AE36(配列番号217)、AE42(配列番号34)、AE72(配列番号35)、AE78(配列番号218)、AE144(配列番号36)、AE144_2A(配列番号37)、AE144_3B(配列番号38)、AE144_4A(配列番号39)、AE144_5A(配列番号40)、A144_6B(配列番号41)、AG144(配列番号42)、AG144_A(配列番号43)、AG144_B(配列番号44)、AG144_C(配列番号45)、AG144_F(配列番号46)、AE288(配列番号47)、AE288_2(配列番号48)、AG288(配列番号49)、AE576(配列番号50)、AG576(配列番号51)、AE864(配列番号52)、AG864(配列番号53)、XTEN_AE72_2A_1(配列番号202)、XTEN_AE72_2A_2(配列番号203)、XTEN_AE72_3B_1(配列番号204)、XTEN_AE72_3B_2(配列番号205)、XTEN_AE72_4A_2(配列番号206)、XTEN_AE72_5A_2(配列番号207)、XTEN_AE72_6B_1(配列番号208)、XTEN_AE72_6B_2(配列番号209)、XTEN_AE72_1A_1(配列番号210)、XTEN_AE72_1A_2(配列番号211)、XTEN_AE144_1A(配列番号212)、AE150(配列番号213)、AG150(配列番号214)、AE294(配列番号215)、AG294(配列番号216)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。特定の実施形態において、上記XTEN配列は、AE72、AE144、及びAE288からなる群より選択される。本発明の特定のXTEN配列のアミノ酸配列を表2Bに示す。
【表2B-1】
【表2B-2】
【表2B-3】
【表2B-4】
【表2B-5】
【0132】
更なる実施形態において、本発明で用いられるXTEN配列は、本発明の融合タンパク質の物理的または化学的特性、例えば薬物動態に影響を及ぼす。本発明で用いられるXTEN配列は、以下の有利な特性、すなわち、立体構造の柔軟性、水に対する高い溶解性、高いプロテアーゼ耐性、低免疫原性、哺乳動物の受容体への低結合性、または流体力学的(またはストークス)半径の増加の1種または複数種を示すことができる。特定の実施形態において、本発明におけるFIXタンパク質に連結されたXTEN配列は、より長い終末相半減期、増加した生物学的利用能または曲線下面積(AUC)など、薬物動態学的特性を増加させ、その結果、本明細書に記載のタンパク質は、野生型FIXと比較して、長い期間インビボに留まる。更なる実施形態において、本発明に用いられるXTEN配列は、より長い終末相半減期または曲線下面積(AUC)の増加などの薬物動態学的特性を増加させ、その結果、FIXタンパク質は、野生型FIXと比較して、長い期間インビボに留まる。
【0133】
いくつかの実施形態において、上記FIXタンパク質は、天然のFIX、rFIXFc、FIX R338L、もしくは上記XTENをもたない対応するFIXタンパク質よりも少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍長いインビボ半減期を示す。1つの特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質のインビボ半減期は、異種部分をもたないFIXポリペプチドよりも2倍を超えて長い場合がある。
【0134】
他の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、異種部分をもたないFIXポリペプチドのインビボ半減期よりも、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも約14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、または少なくとも約34時間長いインビボ半減期を示す。
【0135】
上記XTEN配列を含むタンパク質の物理的/化学的特性を決定するために、様々な方法及びアッセイを用いることができる。かかる方法としては、分析用遠心法、EPR、HPLC-イオン交換、サイズ排除HPLC、逆相HPLC、光散乱、キャピラリー電気泳動、円二色性、示差走査熱量測定、蛍光分析、イオン交換HPLC、サイズ排除HPLC、IR、NMR、ラマン分光法、屈折率測定、及びUV/可視分光法が挙げられるが、これらに限定はされない。更なる方法がAmau et al.,Prot Expr and Purif 48,1-13(2006)に開示される。
【0136】
本発明に従って用いることができるXTENの更なる例が米国特許公開第2010/0239554A1号、第2010/0323956A1号、第2011/0046060A1号、第2011/0046061A1号、第2011/0077199A1号、もしくは第2011/172146A1号、または国際特許公開第WO2010091122A1号、第WO2010144502A2号、第WO2010144508A1号、第WO2011028228A1号、第WO2011028229A1号、第WO2011028344A2号、第WO2014/011819A2号、または第2015/023891号に記載される。
【0137】
いくつかの態様において、FIX融合タンパク質は、FIX内に挿入されているか、FIXのC末端に融合されているか、またはそれらの両方である1または複数のXTEN配列を含む。一実施形態において、上記1または複数のXTEN配列はGLAドメイン内に挿入されている。別の実施形態において、上記1または複数のXTEN配列はEGF1ドメイン内に挿入されている。他の実施形態において、上記1または複数のXTEN配列はEGF2内に挿入されている。更に他の実施形態において、上記1または複数のXTEN配列はAP内に挿入されている。更に他の実施形態において、上記1または複数のXTEN配列は触媒ドメイン内に挿入されている。いくつかの実施形態において、上記1または複数のXTEN配列は上記FIXのC末端に融合されている。
【0138】
特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される挿入部位に挿入された1または複数のXTEN配列を含む。他の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される2の挿入部位に挿入された2のXTEN配列を含む。ある特定の態様において、上記2のXTEN配列は表8に列挙される2の挿入部位に挿入されている。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される3の挿入部位に挿入された3のXTEN配列を含む。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される4の挿入部位に挿入された4のXTEN配列を含む。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される5の挿入部位に挿入された5のXTEN配列を含む。ある特定の態様において、FIX融合タンパク質は、表7に列挙される6の挿入部位に挿入された6のXTEN配列を含む。いくつかの態様において、全ての上記挿入されたXTEN配列は同一である。他の態様において、少なくとも1の上記挿入されたXTEN配列は残余の挿入されたXTEN配列と異なる。
【0139】
いくつかの態様において、FIX融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で当該FIXポリペプチド内に挿入された1のXTENを含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。いくつかの態様において、FIX融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内に第2のXTENを含むか、または第2のXTENは上記FIXポリペプチドのC末端に融合され、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を示す。1つの特定の態様において、FIX融合タンパク質は、当該FIXのC末端に融合された1のXTEN配列を含み、該XTENは、長さが42のアミノ酸よりも長く且つ144のアミノ酸よりも短いアミノ酸配列を含む。
【0140】
II.B.2.Fc領域またはFcRn結合パートナー
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分は、Fc領域(例えば、FcRn結合パートナー)またはその断片である。ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIX内に挿入された、該FIXのC末端に融合された、またはそれらの両方である少なくとも1のFc領域(例えば、FcRn結合パートナー)を含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、且つ宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。本明細書では、「Fc」または「Fc領域」とは、別段の明示がない限り、Fcドメイン、その変異体、または断片を含む機能性胎児性Fc受容体(FcRn)結合パートナーであってもよい。FcRn結合パートナーは、FcRn受容体が特異的に結合することができ、その結果として生じる、アルブミンを始めとする、但しそれには限定されない、当該FcRn結合パートナーのFcRn受容体による能動輸送を伴う任意の分子である。したがって、Fcという用語は、機能性である、IgG Fcの任意の変異体を包含する。上記FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶学に基づいて記載されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Burmeister et al.,Nature 372:379(1994))。上記Fcの上記FcRnとの主要な接触領域はCH2ドメインとCH3ドメインとの接合部の近傍である。Fc-FcRnの接触部は全て単一のIg重鎖内である。FcRn結合パートナーとしては、全IgG、IgGのFc断片、及びFcRnの完全な結合領域を含むIgGの他の断片が挙げられるが、これらに限定はされない。Fcは、免疫グロブリンのヒンジ領域を伴なってまたは伴わずに免疫グロブリンのCH2ドメイン及びCH3ドメインを含んでいてもよい。融合タンパク質中でFc領域の所望の特性、例えば、半減期、例えばインビボ半減期の増加を維持するFc断片、変異体、または誘導体も含まれる。無数の突然変異体、断片、変異体及び誘導体が、例えば、PCT公開第WO2011/069164A2号、第WO2012/006623A2号、第WO2012/006635A2号、または第WO2012/006633A2号等に記載されており、これらは全て、それらの全体が本明細書に参照により援用される。
【0141】
上記1または複数のFcドメインは、上記FIXポリペプチド内に挿入されているか、該ポリペプチドのC末端に融合されているか、またはその両方であってよい。いくつかの実施形態において、上記Fcドメインは上記FIXポリペプチドに融合されている。いくつかの実施形態において、上記Fcドメインは、XTENなどの、上記FIX内に挿入されているかまたは上記XTENのC末端に融合されている別の異種部分に融合されている。いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質は第2のFcドメインを含む。第2のFcドメインは、例えば、1または複数の共有結合を介して第1のFcドメインと会合していてもよい。
【0142】
II.B.3.アルブミン
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分は、アルブミン、アルブミン結合ドメイン、もしくはアルブミン結合低分子、またはそれらの変異体、誘導体もしくは断片である。特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、上記FIX内に挿入された、上記FIXのC末端に融合された、またはそれらの両方である少なくとも1のアルブミンポリペプチドまたはその断片、変異体、もしくは誘導体を含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。ヒト血清アルブミン(HSAまたはHA)は、その完全長の形態で609のアミノ酸のタンパク質であり、血清の浸透圧の相当部分を担い、且つ内因性及び外因性リガンドの運搬体としても作用する。本明細書では、「アルブミン」という用語は、完全長アルブミンまたはその機能を有する断片、変異体、誘導体、または類似体を包含する。アルブミンまたはその断片もしくは変異体の例は、米国特許公開第2008/0194481A1号、第2008/0004206A1号、第2008/0161243A1号、第2008/0261877A1号、もしくは第2008/0153751A1号、またはPCT出願公開第2008/033413A2号、第2009/058322A1号、または第2007/021494A2号に開示され、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0143】
アルブミン結合ポリペプチド(ABP)は、限定されるものではないが、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合ペプチド、またはアルブミンに結合することができるアルブミン結合抗体断片を損なう場合がある。Kraulis et al.,FEBS Lett.378:190-194(1996)及びLinhult et al.,Protein Sci.11:206-213(2002)によって開示されたレンサ球菌タンパク質G由来のドメイン3が細菌アルブミン結合ドメインの例である。アルブミン結合ペプチドの例としては、核となる配列DICLPRWGCLW(配列番号163)を有する一連のペプチドが挙げられる。例えば、Dennis et al.,J.Biol.Chem.2002,277:35035-35043(2002)を参照されたい。アルブミン結合抗体断片の例は、Muller and Kontermann,Curr.Opin.Mol.Ther.9:319-326(2007);Roovers et al.,Cancer Immunol.Immunother.56:303-317(2007),及びHolt et al.,Prot.Eng.Design Sci.,21:283-288(2008)に開示され、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0144】
ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIX中に挿入された、該FIXのC末端に融合された、またはそれらの両方であるアルブミンに結合することができる非ポリペプチド低分子、その変異体、または誘導体(例えばアルブミン結合低分子)のための少なくとも1の結合部位を含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。例えば、本発明のFIX融合タンパク質は、1または複数の挿入部位で上記FIX内に結合された、または該FIXのC末端に融合された1または複数の有機アルブミン結合部分を含んでいてもよく、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。かかるアルブミン結合部分の一例には、Trussel et al.,Bioconjugate Chem.20:2286-2292(2009)によって開示される2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)がある。
【0145】
いくつかの実施形態において、上記アルブミン結合ポリペプチド配列は、Gly-Serペプチドリンカー配列によって、C末端、N末端、または両方の末端に隣接している。いくつかの実施形態において、上記Gly-SerペプチドリンカーはGlySer(配列番号161)である。他の実施形態において、上記Gly-Serペプチドリンカーは(GlySer)(配列番号162)である。
【0146】
II.B.4.CTP
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)またはその断片、変異体もしくは誘導体である。ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIX中に挿入されているか、該FIXのC末端に融合されているか、またはそれらの両方である少なくとも1のCTPまたはその断片、変異体、もしくは誘導体を含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。組換えタンパク質中に挿入された1または複数のCTPペプチドは、当該のタンパク質の半減期を増加させることが知られている。例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,712,122号を参照されたい。例示的なCTPペプチドとしては、DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL(配列番号164)またはSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ(配列番号165)が挙げられる。例えば、参照により援用される、米国特許出願公開第2009/0087411A1号を参照されたい。いくつかの実施形態において、上記CTP配列は、Gly-Serペプチドリンカー配列によって、C末端、N末端、または両方の末端に隣接する。いくつかの実施形態において、上記Gly-SerペプチドリンカーはGlySer(配列番号161)である。他の実施形態において、上記Gly-Serペプチドリンカーは(GlySer)(配列番号162)である。
【0147】
II.B.5.PAS
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分はPASペプチドである。ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIX中に挿入されているか、該FIXのC末端に融合されているか、またはそれらの両方である少なくとも1つのPASペプチドまたはその断片、変異体、もしくは誘導体を含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。本明細書では、「PASペプチド」または「PAS配列」とは、主としてアラニン及びセリン残基を含む、または主としてアラニン、セリン及びプロリン残基を含み、生理学的条件下でランダムコイルの立体構造を形成するアミノ酸配列を意味する。したがって、上記PAS配列は、本融合タンパク質中において上記異種部分の一部として用いることができる、アラニン、セリン、及びプロリンを含む、それらから本質的になる、もしくはそれらからなる、ビルディングブロック、アミノ酸ポリマー、または配列カセットである。アミノ酸ポリマーは、アラニン、セリン、及びプロリン以外の残基がPAS配列中の微量成分として添加される場合、ランダムコイル立体構造を形成することもできる。「微量成分」とは、アラニン、セリン、及びプロリン以外のアミノ酸が、ある程度まで、例えば、アミノ酸の約12%、すなわち上記PAS配列の100のアミノ酸の約12まで、約10%まで、約9%まで、約8%まで、約6%、約5%、約4%、約3%、すなわち約2%、または約1%、上記PAS配列中に添加されていてもよいことを意味する。上記アラニン、セリン、及びプロリン以外のアミノ酸は、Alg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、及びValからなる群より選択することができる。生理学的条件下では、PASペプチドはランダムコイル立体構造を形成し、それにより本発明の組換えタンパク質に対してインビボ及び/またはインビトロ安定性の増加を媒介することができ、凝血促進活性を有する。
【0148】
上記PASペプチドの非限定的な例としては、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号154)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号155)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号156)、APSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号157)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号158)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号159)、ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号160)またはそれらの任意の変異体、誘導体、断片、もしくは組み合わせが挙げられる。PAS配列の更なる例は、例えば、米国特許公開第2010/0292130A1号及びPCT出願公開第WO2008/155134A1号から公知である。欧州交付特許第2173890号。
【0149】
いくつかの実施形態において、上記PAS配列は、Gly-Serペプチドリンカー配列によって、C末端、N末端、または両方の末端に隣接する。いくつかの実施形態において、上記Gly-SerペプチドリンカーはGlySer(配列番号161)である。他の実施形態において、上記Gly-Serペプチドリンカーは(GlySer)(配列番号162)である。
【0150】
II.B.6.HAP
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分は、ホモ-アミノ酸ポリマー(HAP)ペプチドまたはその断片、変異体もしくは誘導体である。ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、上記FIX内に挿入されているか、該FIXのC末端に融合されているか、またはそれらの両方である少なくとも1のホモ-アミノ酸ポリマー(HAP)ペプチドまたはその断片、変異体、もしくは誘導体を含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。HAPペプチドは、少なくとも50のアミノ酸、少なくとも100のアミノ酸、120のアミノ酸、140のアミノ酸、160のアミノ酸、180のアミノ酸、200のアミノ酸、250のアミノ酸、300のアミノ酸、350のアミノ酸、400のアミノ酸、450のアミノ酸、または500のアミノ酸の長さであるグリシンの反復配列を含んでいてよい。HAP配列は、当該HAP配列に融合または連結された部分の半減期を延長することができる。上記HAP配列の非限定的な例としては、それらに限定はされないが、(Gly)、(GlySer)またはSer(GlySer)が挙げられ、式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。一実施形態において、nは、20,21,22,23,24,25,26,26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40である。別の実施形態において、nは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200である。例えば、Schlapschy M et al.,Protein Eng.Design Selection,20:273-284(2007)を参照されたい。
【0151】
II.B.7.有機ポリマー
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1の異種部分は、有機ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリシアル酸、またはヒドロキシエチルデンプンである。ある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、当該FIX中に挿入されているか、該FIXのC末端に融合されているか、またはそれらの両方である非ポリペプチド異種部分またはその断片、変異体、もしくは誘導体のための少なくとも1の結合部位を含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。例えば、本発明のFIX融合タンパク質は、上記FIX配列内に結合されているか、該FIXのC末端に結合されているか、またはそれらの両方である1または複数のポリエチレングリコール(PEG)部分を含んでいてもよく、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。
【0152】
ペグ化FIXは、FIXと少なくとも1のポリエチレングリコール(PEG)分子との間で形成される複合体を指すことができる。多種多様な分子量及び平均分子量範囲のPEGが市販されている。PEGの平均分子量範囲の一般的な例としては、約200、約300、約400、約600、約1000、約1300~1600、約1450、約2000、約3000、約3000~3750、約3350、約3000~7000、約3500~4500、約5000~7000、約7000~9000、約8000、約10000、約8500~11500、約16000~24000、約35000、約40000、約60000、及び約80000ダルトンが挙げられるが、これらに限定はされない。これらの平均分子量は単なる例として記載されており、何ら限定することを意味するものではない。
【0153】
本発明のFIX融合タンパク質は、ペグ化してモノまたはポリ(例えば、2~4)PEG部分を含んでいてもよい。ペグ化は本技術分野で公知のペグ化反応のいずれかによって行うことができる。ペグ化タンパク質生成物の調製方法は、概括的には、(i)ポリペプチドをポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)と、本発明のペプチドが1または複数のPEG基に結合した状態となる条件下で反応させること、及び(ii)反応生成物を得ることを含むこととなる。一般に、当該反応の最適反応条件は、既知のパラメータ及び所望の結果に基づいて個々の場合に応じて決定される。
【0154】
当業者に利用可能ないくつかのPEG結合方法、例えば、Malik F et al.,Exp.Hematol.20:1028-35(1992);Francis,Focus on Growth Factors 3(2):4-10(1992);欧州特許公開第EP0401384号、第EP0154316号、及び第EP0401384号;及び国際特許出願公開第W092/16221号及び第WO95/34326号がある。非限定的な例として、FIX変異体は、本明細書に記載の1または複数の挿入部位またはその付近でのシステイン置換を含んでいてもよく、該システインはPEGポリマーに更に複合化されていてもよい。参照によりその全体が本明細書に援用される、Mei et al.,Blood 116:270-279(2010)及び米国特許第7,632,921号を参照されたい。
【0155】
他の実施形態において、上記有機ポリマーはポリシアル酸(PSA)である。PSAは、特定の細菌株によって及びある特定の細胞中の哺乳動物中で産生される、天然起源のシアル酸の非分枝ポリマーである。例えば、Roth J.et al.(1993) in Polysialic Acid:From Microbes to Man,eds.Roth J.,Rutishauser U.,Troy F.A.(BirkhauserVerlag,Basel,Switzerland),pp.335-48を参照されたい。PSAは、限定された酸加水分解またはノイラミニダーゼによる消化、または天然の、細菌由来の形態のポリマーの分画によって、n=約80以上のシアル酸残基からn=2までの様々な重合度で産生することができる。当業者に利用可能な多数のPSA結合方法、例えば上記の同一のPEG結合方法がある。ある特定の態様において、活性化したPSAをFIX上のシステインアミノ酸残基に結合することもできる。例えば、米国特許第5846951号を参照されたい。
【0156】
他の実施形態において、上記有機ポリマーはヒドロキシエチルデンプン(HES)ポリマーである。特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質は、1または複数の部位で上記FIX内に複合化されているか、該FIXのC末端に融合されているか、またはそれらの両方である少なくとも1のHESポリマーを含み、当該FIX融合タンパク質は凝血促進活性を有し、宿主細胞中、インビボまたはインビトロで発現させることができる。
【0157】
III.ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、及び製造方法
本発明は、更に、本明細書に記載のFIX融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、上記ポリヌクレオチドもしくは上記ベクターを含む宿主細胞、または上記FIX融合タンパク質の製造方法を提供する。
【0158】
FIX融合タンパク質をコードする上記ポリヌクレオチドは、単一のヌクレオチド配列、2のヌクレオチド配列、3のヌクレオチド配列、またはそれ以上であってよい。一実施形態において、単一のヌクレオチド配列は、FIXポリペプチド及び異種部分(例えばXTEN)を含むFIX融合タンパク質、例えば、FIXポリペプチド及び、該FIXポリペプチド内に挿入されたXTEN、該FIXポリペプチドのC末端に融合されたFcドメイン、及び任意選択のリンカーによって上記FIXポリペプチドに融合された第2のFcドメインを含むFIX融合タンパク質をコードする。別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドは2のヌクレオチド配列を含み、第1のヌクレオチド配列はFIXポリペプチド及び該FIXポリペプチド内に挿入されたXTENをコードし、第2のヌクレオチド配列は異種部分、例えばFcをコードする。他の実施形態において、上記ポリヌクレオチドは2のヌクレオチド配列を含み、第1のヌクレオチド配列は、FIXポリペプチド、該FIXポリペプチド内に挿入されたXTEN、及び該FIXポリペプチドに融合されたFcドメインをコードし、第2のヌクレオチド配列は第2のFcドメインをコードする。上記コードされたFcドメインは発現後に共有結合を形成してもよい。
【0159】
いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質をコードする上記ポリヌクレオチドはコドン最適化されている。
【0160】
本明細書では、発現ベクターとは、適宜の宿主細胞に導入されたときに、挿入されたコード配列を転写及び翻訳するために必要な要素を含む任意の核酸構築物、またはRNAウイルスベクターの場合、複製及び翻訳するために必要な要素を指す。発現ベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、及びそれらの誘導体を包含することができる。
【0161】
本明細書では、遺伝子発現制御配列とは、プロモーター配列またはプロモーター-エンハンサーの組み合わせなどの、当該遺伝子発現制御配列が作動可能に連結されたコード核酸の効率的な転写及び翻訳を促進する、任意の調節ヌクレオチド配列である。上記遺伝子発現制御配列は、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターなどの、哺乳動物またはウイルスのプロモーターであってよい。構成的哺乳動物プロモーターとしては、以下の遺伝子、すなわち、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、β-アクチンプロモーター、及び他の構成的プロモーターの遺伝子のためのプロモーターが挙げられるが、これらに限定はされない。真核細胞において構成的に作用するウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えばSV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの末端反復配列(LTR)、及び他のレトロウイルス由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは当業者に公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとしては、誘導性プロモーターも挙げられる。誘導性プロモーターは誘導剤の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下で誘導され、転写及び翻訳を促進する。他の誘導性プロモーターは当業者に公知である。
【0162】
本発明の目的のために、多数の発現ベクター系を用いることができる。これらの発現ベクターは、一般的には、宿主生物中でエピソームとしてまたは宿主の染色体DNAの不可欠な部分として複製可能である。発現ベクターは、プロモーター(例えば、天然に会合しているプロモーターまたは異種プロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメント、及び転写終結配列を含む、但しこれらに限定されない発現制御配列を含んでいてもよい。上記発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることができるベクター中の真核生物プロモーター系であることが好ましい。発現ベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはSV40ウイルスなどの動物ウイルス由来のDNAエレメントを利用することもできる。他の発現ベクターは内部リボソーム結合部位を有するポリシストロニック系の使用を含む。
【0163】
一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にする選別マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含む(例えば、Itakuraetal、米国特許第4,704,362号を参照のこと)。当該DNAをその染色体中に組み込んだ細胞を、トランスフェクトされた宿主細胞の選別を可能にする1種または複数種のマーカーを導入することによって選別することができる。上記マーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性、殺生剤耐性(例えば抗生物質)または銅などの重金属に対する耐性を付与することができる。上記選別可能なマーカー遺伝子は、発現されるべきDNA配列に直接連結するか、または同時形質転換によって同一細胞中に導入するかのいずれかとすることができる。
【0164】
最適化されたFIX配列を発現するのに有用なベクターの例としてはNEOSPLA(米国特許第6,159,730号)がある。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスβ-グロビンの主要なプロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエキソン1及びエキソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子及びリーダー配列を含む。このベクターは、可変領域及び定常領域遺伝子を組み込み、細胞中にトランスフェクトし、続いてG418含有培地中において選別し、且つメトトレキセート増幅を行うと、抗体を非常に高レベルで発現することが見出されている。ベクター系は米国特許第5,736,137号及び第5,658,570号においても教示され、それらのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に援用される。この系は高発現レベル、例えば30pg超/細胞/日を与える。他の例示的なベクター系が、例えば、米国特許第6,413,777号に開示される。
【0165】
他の実施形態において、本発明のポリペプチドは多シストロン性構築物を用いて発現される。これらの発現系においては、多量体結合タンパク質の複数のポリペプチドなどの複数の目的とする遺伝子産物を、単一の多シストロン性構築物から産生させることができる。これらのシステムは、内部リボソーム侵入部位(IRES)を有利に用いて、真核生物宿主細胞において比較的高レベルのポリペプチドを与える。適合性のあるIRES配列が、これも本明細書に援用される、米国特許第6,193,980号に開示される。
【0166】
より概括的には、ポリペプチドをコードするベクターまたはDNA配列が調製されれば、当該発現ベクターを適宜の宿主細胞に導入することができる。すなわち、上記宿主細胞を形質転換することができる。上記宿主細胞への上記プラスミドの導入は、上記に議論した、当業者に周知の様々な技法によって実現することができる。上記形質転換された細胞を、当該FIXポリペプチドの産生に適した条件下で増殖させて、FIXポリペプチドの合成に関してアッセイを行う。例示的なアッセイ技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞ソーター分析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0167】
組換え宿主からポリペプチドを単離する方法の説明において、「細胞」及び「細胞培養物」という用語は、別段の明確な明示がない限り、ポリペプチドの供給源を表わすために同義で用いられる。換言すれば、「細胞」からのポリペプチドの回収とは、遠沈した細胞全体から、または培地と懸濁した細胞の両方を含む細胞培養物からのいずれかを意味する場合がある。
【0168】
タンパク質発現のために用いられる宿主細胞株は、好ましくは哺乳動物起源、最も好ましくはヒトまたはマウス起源の細胞株である。例示的な宿主細胞株は上述されている。FIX活性を有するポリペプチドの製造方法の一実施形態において、上記宿主細胞はHEK293細胞である。FIX活性を有するポリペプチドの製造方法の別の実施形態において、上記宿主細胞はCHO細胞である。
【0169】
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子はまた、細菌または酵母または植物細胞などの非哺乳動物細胞においても発現させることができる。この点に関して、細菌などの種々の単細胞非哺乳動物微生物、すなわち、培養または発酵で増殖させることができる微生物も形質転換させることができることが理解されよう。形質転換しやすい細菌としては、Escherichia coliまたはSalmonellaの株などの腸内細菌科に属する細菌、Bacillus subtilisなどのBacillaceae、Pneumococcus、Streptococcus、及びHaemophilus influenzaeが挙げられる。上記ポリペプチドは、細菌中で発現される場合、一般的には封入体の一部となることが更に理解されよう。上記ポリペプチドを単離し、精製し、次いで機能をもつ分子へと組み立てるする必要がある。
【0170】
あるいは、本発明のポリヌクレオチド配列は、遺伝子導入動物のゲノムへの導入及びその後の該遺伝子導入動物の乳における発現のための導入遺伝子中に組み込まれてもよい(例えば、Deboer et al.,US5,741,957,Rosen,US5,304,489,及びMeade et al.,US5,849,992を参照のこと)。好適な導入遺伝子としては、カゼインまたはβ-ラクトグロブリンなどの乳腺特異的遺伝子由来のプロモーター及びエンハンサーと作動可能に連結したポリペプチドのためのコード配列が挙げられる。
【0171】
インビトロでの産生により、大量の所望のポリペプチドを得るためのスケールアップが可能となる。組織培養条件下での哺乳動物細胞の培養技法は本技術分野で公知であり、例えば、エアリフト型反応器もしくは連続撹拌反応器中での均一浮遊培養、または例えば中空繊維中、マイクロカプセル中、アガロースマイクロビーズもしくはセラミックカートリッジ上での固定化(immobilized)または封入(entrapped)細胞培養が挙げられる。必要及び/または所望であれば、ポリペプチドの溶液を、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後に、または本明細書に記載のHICクロマトグラフィーステップの前もしくはその後に、慣用的なクロマトグラフィー法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロース上でのクロマトグラフィーまたは(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって精製してもよい。任意選択で、下流での精製を容易にするために、親和性タグ配列(例えば、His(6)タグ)を当該ポリペプチド配列内に結合させてもまたは含ませてもよい。
【0172】
発現後、本FIXタンパク質を、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含む、本技術分野の標準的な手順に従って精製してもよい(概括的には、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,N.Y.(1982)を参照のこと)。医薬用途には、少なくとも約90%~95%の均一性の実質的に純粋なタンパク質が好ましく、98%~99%またはそれ以上の均一性の上記タンパク質が最も好ましい。
【0173】
一実施形態において、上記宿主細胞は真核細胞である。本明細書では、真核細胞とは明確な核を有する任意の動物または植物細胞を指す。動物の真核細胞としては、脊椎動物、例えば哺乳動物の細胞、及び無脊椎動物、例えば昆虫の細胞が挙げられる。植物の真核細胞としては、詳細には酵母細胞を挙げることができるが限定はされない。真核細胞は原核細胞、例えば細菌とは異なる。
【0174】
特定の実施形態において、上記真核細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞は哺乳動物に由来する任意の細胞である。哺乳動物細胞としては、詳細には哺乳動物細胞株が挙げられるがこれらに限定はされない。一実施形態において、上記哺乳動物細胞はヒト細胞である。別の実施形態において、上記哺乳動物細胞はヒト胚性腎臓細胞株であるHEK293細胞である。HEK293細胞は、CRL-1533として、バージニア州マナサスのAmerican Type Culture Collectionより、及び293-H細胞、カタログ番号11631-017または293-F細胞、カタログ番号11625-019として、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)より入手可能である。いくつかの実施形態において、上記哺乳動物細胞は、網膜由来のヒト細胞株であるPER.C6(登録商標)細胞である。PER.C6(登録商標)細胞はCrucell(オランダ国ライデン)より入手可能である。他の実施形態において、上記哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。CHO細胞はバージニア州マナサスのAmerican Type Culture Collectionより入手可能である。(例えば、CHO-K1;CCL-6)。更に他の実施形態において、上記哺乳動物細胞はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞である。BHK細胞はバージニア州マナサスのAmerican Type Culture Collectionより入手可能である。(例えば、CRL-1632)。いくつかの実施形態において、上記哺乳動物細胞は、HEK293細胞とヒトB細胞株のハイブリッド細胞株であるHKB11細胞である。Mei et al.,Mol.Biotechnol.34(2):165-78(2006)。
【0175】
更に他の実施形態において、トランスフェクトされた細胞は安定にトランスフェクトされている。これらの細胞は、当業者に公知の従来の技法を用いて、安定な細胞株として選別し且つ維持することができる。
【0176】
本タンパク質のDNA構築物を含有する宿主細胞を適宜の増殖培地中で増殖させる。本明細書では、「適宜の増殖培地」という用語は、細胞の増殖に必要な栄養素を含む培地を意味する。細胞増殖に必要な栄養素としては、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、及び成長因子を挙げることができる。任意選択で、上記培地は1種または複数種の選別因子を含有していてもよい。任意選択で、上記培地は仔ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を含有していてもよい。一実施形態において、上記培地は実質的にIgGを含有しない。上記増殖培地は、一般に、例えば、薬物選別、または上記DNA構築物上のもしくは該DNA構築物と共に同時トランスフェクトされた選別可能なマーカーによって補完される必須栄養素の欠乏によって、上記DNA構築物を含有する細胞を選別する。培養された哺乳動物細胞は、一般に、市販の血清含有培地または無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)中で増殖させる。一実施形態において、上記培地はCD293(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)である。別の実施形態において、上記培地はCD17(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)である。用いられる特定の細胞株に適した培地の選択は当業者のレベル内である。
【0177】
いくつかの実施形態において、上記核酸、ベクター、または宿主細胞は、タンパク質転換酵素をコードする更なるヌクレオチドを更に含む。上記タンパク質転換酵素は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン5型(PCSK5またはPC5)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン7型(PCSK7またはPC5)、酵母Kex2、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン3型(PACEまたはPCSK3)、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記タンパク質転換酵素はPACE、PC5またはPC7である。特定の実施形態において、上記タンパク質転換酵素はPC5またはPC7である。参照により本明細書に援用される、国際出願公開第WO2012/006623号を参照されたい。別の実施形態において、上記タンパク質転換酵素はPACE/フューリンである。
【0178】
特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって製造されるFIX融合タンパク質に関する。
【0179】
ある特定の態様において、本発明の宿主細胞は、インビボまたはインビトロで本FIX融合タンパク質を発現することができる。インビトロでの産生により、大量の所望の本発明の改変ポリペプチドを得るためのスケールアップが可能となる。FIX融合タンパク質は、本FIX融合タンパク質が発現される条件下で、本明細書に記載の宿主細胞を培養することによって産生することができる。組織培養条件下での哺乳動物細胞の培養技法は本技術分野で公知であり、例えば、エアリフト型反応器もしくは連続撹拌反応器中での均一浮遊培養、または例えば中空繊維中、マイクロカプセル中、アガロースマイクロビーズもしくはセラミックカートリッジ上での固定化または封入細胞培養が挙げられる。必要及び/または所望であれば、ポリペプチドの溶液を、慣用的なクロマトグラフィー法、例えばゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC、DEAE-セルロース上でのクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーによって精製してもよい。他の態様において、上記宿主細胞はインビボで本FIX融合タンパク質を発現する。
【0180】
一実施形態において、本発明は、FIX融合タンパク質の製造方法であって、本明細書に記載されるように、異種部分を挿入部位に挿入すること、上記FIXのC末端に異種部分を融合すること、またはそれらの両方を含み、上記FIX融合タンパク質が凝血促進活性を示す上記方法を含む。
【0181】
別の実施形態において、本発明は、FIXタンパク質の半減期を、該FIXタンパク質の凝血促進活性を失うまたは低下させることなく増加させる方法であって、本明細書に記載されるように、異種部分を挿入部位に挿入すること、上記FIXのC末端に異種部分を融合すること、またはそれらの両方を含み、上記FIX融合タンパク質が、凝血促進活性、及び上記異種部分をもたない上記FIXタンパク質と比較して半減期の増加を示す上記方法を含む。
【0182】
他の実施形態において、本発明は、FIX融合タンパク質の構築方法であって、本明細書に記載の、挿入部位中の、上記FIXのC末端に融合した、またはそれらの両方の少なくとも1の異種部分を含む上記FIX融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を設計することを含む上記方法を提供する。
【0183】
ある特定の実施形態において、本発明は、FIX融合タンパク質の発現の増加方法であって、本明細書に記載されるように、異種部分を挿入部位に挿入すること、上記FIXのC末端に融合すること、またはそれらの両方を含み、上記FIX融合タンパク質が凝血促進活性を示す上記方法を含む。
【0184】
更に他の実施形態において、本発明は、FIX融合タンパク質の凝血促進活性の保持方法であって、本明細書に記載されるように、異種部分を挿入部位に挿入すること、上記FIXのC末端に異種部分を融合すること、またはそれらの両方を含み、上記FIX融合タンパク質が凝血促進活性を示す上記方法を提供する。
【0185】
IV.医薬組成物及び治療方法
本発明は、本発明のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物を用いて、本方法を必要とするヒトの対象における凝固疾患もしくは疾病または出血性疾病の予防、治療、改善、または管理方法を更に提供する。例示的な方法は、治療上有効な量の本発明のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物/製剤を、本方法を必要とする対象に投与することを含む。他の態様において、本発明の融合タンパク質をコードするDNAを含む組成物が、それを必要とする対象に投与されてもよい。本発明のある特定の態様において、本発明のFIX融合タンパク質を発現する細胞が、それを必要とする対象に投与されてもよい。本発明のある特定の態様において、上記医薬組成物は、(i)FIX融合タンパク質、(ii)FIX融合タンパク質をコードする単離された核酸、(iii)FIX融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター、(iv)FIX融合タンパク質をコードする単離された核酸及び/またはFIX融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターを含む細胞、または(v)それらの組み合わせを含み、当該医薬組成物は許容される賦形剤または担体を更に含む。
【0186】
本発明のFIX融合タンパク質は、患者に静脈内投与、皮下投与、または経口投与することができる。ある特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は静脈内注射によって対象に投与される。他の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、皮下注射によって対象に投与される。上記注射は単回ボーラスから構成されてもよい。対象は複数回の注射を受けてもよい。
【0187】
本発明の融合タンパク質は予防的に用いることができる。本明細書では、「予防的処置」という用語は、出血症状の発現の前に分子を投与することを指す。一実施形態において、一般的な止血剤を必要とする上記対象は、外科手術を受けているか、または受けようとしている。本発明の融合タンパク質を予防薬として術前または術後に投与してもよい。本発明の融合タンパク質を、急性出血症状の発現を制御するために、術中または術後に投与してもよい。上記外科手術としては、肝移植、肝切除、歯科処置、または幹細胞移植が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0188】
本発明の融合タンパク質はオンデマンド処置にも用いられる。「オンデマンド処置」という用語は、出血症状の発現の徴候に応じて、または出血を起こす場合がある活動の前に融合タンパク質を投与することを指す。一態様において、上記オンデマンド処置は、受傷後などの出血が始まったとき、または外科手術の前などの出血が予期される場合に対象に施される。別の態様において、上記オンデマンド処置は、接触を伴うスポーツなどの出血の危険性を高める活動の前に施される。
【0189】
他の実施形態において、本融合タンパク質は、急性の出血症状の発現を制御、改善、または治療するために用いられる。他の実施形態において、本FIX融合タンパク質は、上記異種部分をもたない対応するFIXタンパク質と比較して、1種または複数種の薬物動態学的パラメータを示す。PKパラメータは、FIX抗原レベル(本明細書中では、多くの場合、「抗原」として挿入句的に表記される。)またはFIX活性レベル(本明細書中では、多くの場合、「活性」として挿入句的に表記される。)を基にする場合がある。文献においては、多くの場合、一部の対象の血漿中に、投与された(すなわち外因性の)FIXを、FIXに対する抗体を用いて測定することができることに支障をきたす内因性の不活性なFIXが存在するために、PKパラメータはFIX活性レベルを基にしている。しかしながら、本明細書において提供されるFc融合タンパク質の一部としてFIXが投与される場合には、上記異種ポリペプチドに対する抗体を用いて、投与された(すなわち外因性の)FIX抗原を正確に測定することができる。また、ある特定のPKパラメータはモデル予測データ(本明細書中では、多くの場合、「モデル予測」として挿入句的に表記される)または観察データ(本明細書中では、多くの場合、「観察」として挿入句的に表記される)を基にすることができ、好ましくは観察データを基にする。
【0190】
本FIX融合タンパク質は、本技術分野で公知の任意の手段によって対象に投与することができる。例えば、本FIX融合タンパク質は、局所(例えば、経皮または眼)、経口、頬側、鼻腔、膣、直腸、または非経口(例えば、皮下、皮内、血管内/静脈内、筋内、脊髄、頭蓋内、髄腔内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液包内、及び腹腔内注入)投与によって投与することができる。1つの特定の実施形態において、本FIX融合タンパク質は皮下注射によって投与される。上記皮下注射としては、例えば、本FIX融合タンパク質の単回ボーラスを始めとする1回または複数回のボーラスを挙げることができる。あるいは、本FIX融合タンパク質は、静脈内注射によって投与することができる。
【0191】
本FIX融合タンパク質の用量は、特定の融合タンパク質の性質及び対象の疾病の性質に応じて変化し得る。いくつかの実施形態において、本FIX融合タンパク質の用量は、1~1000IU/kgの間の本FIX融合タンパク質を含んでいてもよい。
【0192】
出血性疾病は血液凝固障害により起こる場合がある。血液凝固障害は凝血異常と呼ばれる場合もある。一例において、本開示の医薬組成物によって治療することができる血液凝固障害は血友病である。別の例において、本開示の医薬組成物によって治療することができる血液凝固障害は血友病Bである。
【0193】
いくつかの実施形態において、出血性疾病に関連する出血(bleeding)の種類は、関節内出血、筋肉出血(bleed)、口腔出血(bleed)、出血(hemorrhage)、筋肉中への出血(hemorrhage)、口腔出血(hemorrhage)、外傷、頭部外傷、消化管出血(bleeding)、頭蓋内出血(hemorrhage)、腹腔内出血(hemorrhage)、胸腔内出血(hemorrhage)、骨折、中枢神経系での出血(bleeding)、後腹膜臓器での出血(bleeding)、咽頭後空間での出血(bleeding)、及び腸腰筋鞘での出血(bleeding)から選択される。
【0194】
他の実施形態において、出血性疾病に罹患している上記対象は、例えば、外科手術上の予防または周術期管理を含む外科手術に対する処置を必要とする。一例において、上記外科手術は小手術及び大手術から選択される。例示的な外科手技としては、抜歯、扁桃摘出術、鼠径ヘルニア切除術、滑膜切除術、開頭術、骨接合術、外傷手術、頭蓋内手術、腹腔内手術、胸腔内手術、関節置換術(例えば、膝関節全置換、股関節置換等)、心臓手術、及び帝王切開術が挙げられる。
【0195】
別の例において、上記対象は同時に第VIII因子による治療を受ける。本発明の化合物はFIXaを活性化することができることから、上記対象へFIXaを投与する前に、FIXaポリペプチドを予備活性化するために該化合物を用いてもよい。
【0196】
本発明の方法は、予防的処置またはオンデマンド処置を必要とする対象に実施してもよい。
【0197】
本発明のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物は、例えば、局所(例えば、経皮または眼)、経口、頬側、鼻腔、膣、直腸または非経口投与を含む任意且つ適宜の投与形態用に製剤化されてもよい。
【0198】
本明細書では、非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば静脈内)、筋内、脊髄、頭蓋内、髄腔内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液包内及び腹腔内注射、ならびに任意の同様の注射または注入技法を包含する。特に、本発明のFIX融合タンパク質を含む医薬組成物は、皮下投与用に処方されてもよい。本組成物はまた、例えば、懸濁液剤、乳化液剤、持続放出製剤、クリーム剤、ジェル剤または散剤であってもよい。本組成物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤及び担体と共に、座薬として製剤化されてもよい。
【0199】
一例において、上記医薬製剤は液体製剤、例えば、緩衝、等張性水溶液である。別の例において、本医薬組成物は、生理学的pH、または略生理学的pHを有する。他の例において、上記水性製剤は生理学的または略生理学的浸透圧及び塩分を有する。上記水性製剤は塩化ナトリウム及び/または酢酸ナトリウムを含んでいてもよい。いくつかの例において、本発明の組成物は凍結乾燥されている。
【0200】
本発明の融合タンパク質は、出血性凝固障害、関節内出血、筋肉出血(bleed)、口腔出血(bleed)、出血(hemorrhage)、筋肉中への出血(hemorrhage)、口腔出血(hemorrhage)、外傷、頭部外傷、消化管出血(bleeding)、頭蓋内出血(hemorrhage)、腹腔内出血(hemorrhage)、胸腔内出血(hemorrhage)、骨折、中枢神経系での出血(bleeding)、後腹膜臓器での出血(bleeding)、咽頭後空間での出血(bleeding)、及び腸腰筋鞘での出血(bleeding)からなる群より選択される出血性疾患または障害の治療に対する遺伝子治療手法を用いて、哺乳動物、例えば、ヒトの患者においてインビボで産生させることができ、このことは治療上有益となろう。一実施形態において、上記出血性疾患または障害は血友病である。別の実施形態において、上記出血性疾患または障害は血友病Bである。これは、適宜の発現制御配列に作動可能に連結した、融合タンパク質をコードする適宜の核酸の投与を含む。ある特定の実施形態において、これらの配列はウイルスベクター中に組み込まれる。かかる遺伝子治療に適したウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン・バールウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる。上記ウイルスベクターは複製欠損ウイルスベクターであってよい。他の実施形態において、アデノウイルスベクターはそのE1遺伝子またはE3遺伝子に欠失を有する。アデノウイルスベクターが用いられる場合、上記哺乳動物は選別可能なマーカー遺伝子をコードする核酸に曝露させなくてもよい。他の実施形態において、上記配列は、当業者に公知の非ウイルスベクター中に組み込まれる。
【0201】
本発明の実施は、別段の表示がない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来の技術を用いることとなり、それらは本技術分野の範囲内である。かかる技法は文献において詳細に説明される。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:(1989);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,ed.,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1992),DNA Cloning,D.N.Glover ed.,Volumes I and II(1985);Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait ed.,(1984);Mullis et al.U.S.Pat.No:4,683,195;Nucleic Acid Hybridization,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984);Transcription And Translation,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984);Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,(1987);Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press,(1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.,N.Y.;Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,J.H.Miller and M.P.Calos eds.,Cold Spring Harbor Laboratory(1987);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology,Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London(1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,(1986);Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)を参照されたい。
【0202】
免疫学の全般的な原理を記載する標準的な参考資料としては、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York;Klein,J.,Immunology:The Science of Self-Nonself Discrimination,John Wiley & Sons,New York(1982);Roitt,I.,Brostoff,J.and Male D.,Immunology,6th ed.London:Mosby(2001);Abbas A.,Abul,A.and Lichtman,A.,Cellular and Molecular Immunology,Ed.5,Elsevier Health Sciences Division(2005);及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)が挙げられる。
【0203】
ここまで本発明を詳細に説明してきたが、以下の実施例を参照することによって本発明がより明確に理解されよう。これらの実施例は例証のみを目的として本明細書に付随するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0204】
実施例1:活性なFIX-XTEN変異体の識別
FIX融合タンパク質であって、FIXポリペプチドを、上記FIXタンパク質の特性を向上させるための1または複数のXTEN挿入物と共に含む上記FIX融合タンパク質を構築した。但し、XTEN修飾物の位置、長さ、組成及び数は容易に変えることができ、FIXの活性及びクリアランスに対するこれら修飾物の影響を評価することができる。
【0205】
本実施例は、FIX活性を損なうことなくXTENの導入を受け入れることができ、且つ他の面では修飾されていないFIXの融合タンパク質及び組換えFIX-Fc融合タンパク質の両方に対してこの手法を適用することができる、FIX中の部位を特定することを目的とする。
【0206】
方法
開始Met残基をコードするATGコドンに隣接する5’側にコザック翻訳開始配列(GCCGCCACC)を導入した後に、FIXポリペプチドコード配列を発現ベクターpcDNA4/myc-His C(INVITROGEN(商標)、カリフォルニア州カールスバッド)中、BsiWI部位とPmeI部位との間に結合させた。
【0207】
ポリエチレンイミン(PEI、Polyscience、ペンシルベニア州ウォリントン)を用いて、HEK293F細胞(INVITROGEN(商標)、カリフォルニア州カールスバッド)をプラスミドでトランスフェクトした。上記一過性にトランスフェクトされた細胞を、FREESTYLE(商標)293培地またはFREESTYLE(商標)293培地とCD OPTICHO(商標)培地(INVITROGEN(商標)、カリフォルニア州カールスバッド)との混合培地中で増殖させた。トランスフェクションの5日後に上記細胞培養培地を回収し、発色FIX活性アッセイまたはaPTT FIX活性アッセイによってFIX活性を分析した。
【0208】
AniaraのBIOPHEN第IX因子キットを用いて発色によるFIX活性を測定し、全てのインキュベーションを37℃のプレートヒーター上で振とうしながら実施した。6ウェルプレートからのFIX-XTEN変異体の一過性トランスフェクション培地からの細胞培養回収物を、トリスBSA希釈緩衝液(R4)を用いて所望のFIX活性範囲に希釈した。FIX標準液もトリスBSA希釈緩衝液中で調製した。上記標準液、希釈した細胞培養物試料、及びプールした正常なヒト血漿アッセイ対照(50μL/ウェル)を、2つの同一組成の試料による繰返しでLMMULON(登録商標)2HB 96ウェルプレートに添加した。ヒト第X因子、FVIII:C及びフィブリン重合禁止剤(50μL)、50μLの第XIa因子のトロンビン、リン脂質及びカルシウムとの混合液、及び50μLの第Xa因子特異的発色基質(SXa-11)を、それぞれの添加の間に2分間のインキュベーションを行いながら、各ウェル中に逐次添加した。基質と共にインキュベートした後、50μLの20%酢酸を添加して呈色反応を停止させ、SPECTRAMAX(登録商標)plus(MOLECULAR DEVICES(登録商標))装置を用いて405nmでの吸光度を測定した。データ解析はSOFTMAX(登録商標)Proソフトウェア(バージョン5.2)を用いて行った。
【0209】
1段階での活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイを用いてFIX活性を評価した。SYSMEX(登録商標)CA-1500装置(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、ニューヨーク州タリータウン)を用いてFIX-XTEN aPTT活性を測定した。アッセイ用の標準曲線を作成するために、WHO第IX因子標準液を、培養培地の濃度を試験試料に一致させて偽トランスフェクション培地で希釈した。6ウェルプレートからのFIX-XTEN変異体の一過性トランスフェクション培地からの細胞培養回収物を、偽トランスフェクション培地を用いて所望のFIX活性範囲に希釈した。希釈後に、Sysmex装置を用い、以下のようにして、上記aPTTアッセイを実施した。すなわち、50μLの希釈した標準液及び試料を、50μLのSiemensのFIXを枯渇させたヒト血漿と、次いで50μLのSiemensのActin FSL(エラグ酸)活性化剤と混合した。この混合物を1分間インキュベートした。続いて50μLのSiemensのCaClを上記混合物に添加し、この混合物を240秒間インキュベートした。このインキュベーション直後の凝固時間を測定した。試験試料のFIX活性を測定するために、ログスケールを用いて上記標準液の凝固時間をプロットし、凝固時間とFIX活性との間の式を外挿し、次いでFIX-XTENの活性を上記標準曲線に対して算出した。
【0210】
挿入部位の選択
Protein Data BankのFIX構造、1PFX、1IXA、1CFI、1CFH、1EDM、3LC3、3LC5、1RFN、1X7A及び3KCGを解析して、FIX中のXTEN挿入のための部位を選択した。GLAドメイン内へのXTEN挿入は、リン脂質表面と内皮下IV型コラーゲンへのFIXの固定化におけるGLAドメインの重要な役割により回避した。XTEN挿入部位は、以下の選択基準、すなわち、1)アルゴリズムソフトウェアASA View(http://www.abren.net/asaview/)及びGet Area(http://curie.utmb.edu/getarea.html)によって計算した到達可能な表面積、2)水素/重水素交換質量分析(H/DX-MS)によって評価した溶媒の到達可能性、3)限定された二次構造エレメント内の部位の除外、4)顕著な種間でのタンパク質配列の可変性による位置の優先性、及び5)既知の血友病Bの突然変異に近位の部位の除外と共に、Protein Data Bankにおける利用可能なFIXの構造の解析によって選択した。
【0211】
EGF1ドメイン中の4の部位、EGF2ドメイン中の5の部位、APドメインとEGF2ドメインとの間のリンカー領域中の2の部位、AP(活性化ペプチド)ドメイン中の4の部位及び触媒ドメイン中の18の部位がXTENの挿入に対して選択された(表6)。
【表6】
【0212】
42アミノ酸XTENの挿入及びC末端融合の活性スクリーニング
XTENの導入によって生じる活性低下に起因する潜在的なFIX活性の減損を打ち消すためのスキャフォールドとして、高活性FIXパドゥバ変異体(R338L)を用いた。42残基のXTENエレメント(AE42)を、上記の選択基準を用いて選択した部位に挿入するかまたはFIXのC末端に融合した。これらの変異体のFIX活性を、上述のトランスフェクトされたHEK293細胞の馴化培地中で評価した。FIX-AE42のFIX活性を、XTENをもたないベース構築物、FIX-R338Lの百分率として示す(図1)。
【0213】
FIX発色アッセイによって判定されるように、XTEN挿入は限られた部位で許容された(図1及び表7)。FIX中の合計33の部位を選択し、AE-42の挿入によって評価を行った。これらのうち、EGF2ドメイン中の2、EGF2ドメインとAPドメインとの間のリンカー領域中の1、APドメイン中の4、及び触媒ドメイン中の4が、C末端を含めて、FIX活性アッセイによって許容される部位として特定された(図1及び表7)。
【表7-1】
【表7-2】
【0214】
より長いXTEN挿入物及びC末端融合物の活性
次に、より長いXTEN(AE72、144、及び288)を、AE42の挿入に対して許容されることが示された部位で同様に試験した。FIX活性を上述のようにして測定し、XTENをもたないベース構築物であるFIX-R338Lのパーセンテージとして示す(図2)。
【0215】
AP中の部位及びFIXのC末端のまたはC末端近傍の部位のみにおいて、より長いXTEN(AE144、AE288またはAE864)が許容された(図2)。馴化培地において検出されたFIX活性は導入されたXTENの長さと逆の相関を示した(図2、表7)。FIXの異なるドメイン中の4の挿入が許容される部位を、コンビナトリアルライブラリをつくるために選択した。
【0216】
複数のXTEN挿入物
単一のXTENの変異体を用いて得られた結果に基づいて、種々の長さの且つ4の異なる位置の複数のXTEN挿入物を有するFIX変異体(図4及び表8を参照のこと)のFIX活性を、トランスフェクトされたHEK293細胞の馴化培地中で、aPTTアッセイにより評価した(表8~10)。FIX活性を、XTENをもたないベース構築物であるFIX-R338Lのパーセンテージとして示す(図4)。
【表8-1】
【表8-2】
【表9】
【表10-1】
【表10-2】
【0217】
3の群、単一のXTENを有するFIX、二元のXTEN挿入物を有するFIX及び単一のXTEN挿入物を有するFIX-Fcが検出可能な活性を示した一方、3以上の部位での挿入/融合の組み合わせはFIX活性が消失した(図4)。
【0218】
結論として、FIX中にはいくつかのXTEN挿入が許容される部位が存在し、選ばれた組み合わせのXTEN挿入物変異体はFIX活性を保持する。ここで特定された活性なFIX-XTEN変異体は、血友病Bマウスにおける薬物動態学的特性の特徴づけの候補である。
【0219】
実施例2:FIX融合タンパク質ならびにその血漿回収率及びAUC/D
第IX因子欠損(HemB,B6.129P2-F9tm1Dws/J,MGI:1932297)マウス(Lin.et al.,1997)は、当初Darrel Stafford博士(ノースカロライナ大学、チャペルヒル)より入手した。オス/メスのHemBマウスに、それぞれ50または200IU/kgのFIX融合タンパク質(例えば、FIX-CT.288(FIXポリペプチドのC末端に融合されたAE288 XTEN)、FIX-CT.864(FIXポリペプチドのC末端に融合したAE864 XTEN)、FIX-AP.144(FIXポリペプチドのAPドメイン内のD166の後に挿入されたAE144 XTEN)、FIX-AP.72(FIXポリペプチドのAPドメイン内のD166の後に挿入されたAE72 XTEN)、FIX-AP.42(FIXポリペプチドのAPドメイン内のD166の後に挿入されたAE42 XTEN)、FIXFc、及びFIX)の単回静脈内ボーラス注射を、t=0時間において、10mL/kgの投与容量で静脈内注射した。投与の5分後から投与の168時間(7日)後まで血液を採取した。表示した各時点について、約100μLのクエン酸塩添加血液を、時点当たり3~4頭のマウスから、後眼窩または端末大静脈での採血によって採取した。マウス当たり最大3回の時点で採血を行った。5000rpmで8分間の遠心分離によって血漿を単離し、血漿試料をドライアイス-エタノール浴中で瞬間凍結し、分析を行うまで-80℃で保存し、分析は、活性化剤としてデイドベーリング試薬及びアクチンFSLを、そして活性の標準として投与物質を用いた、Sysmex-CA1500凝固分析装置上での1段階での活性化トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイによって行った。図5の5A~5Bに、注射した用量の%として血漿活性をプロットする。平均滞留時間(MRT)及び他の薬物動態学的(PK)パラメータをPhoenix WinNonlin 6.2.1(Pharsight、NCA解析によるCertera)により、ノンコンパートメント解析を用いて計算した。図5CはMRT(X軸)に対する相対的血漿回収率(Y軸)を示す。円の面積は用量当たりの曲線下面積(AUC/D、単位:時間/kg/mL)を表し、XTENの長さが増加すると共に、FIX血漿活性回収率及びAUC/Dが増加することを示している(図5の5C)。これらの図は、大きなXTEN長(C末端における288及び864またはAPドメイン中の144、72、及び42)を有するFIX融合タンパク質は、静脈内ボーラス投与後に、血漿回収率の60%に及ぶ長さ依存性の増加及びAUC/Dの増加を示す。
【0220】
実施例3:FIX融合タンパク質及びそれらの半減期
FIX欠損マウスに、50または200IU/kgの本FIX融合タンパク質、すなわち、288のアミノ酸を有するXTEN(例えばAE288)に融合されたFIX、72のアミノ酸を有するXTEN(例えばAE72)がAPドメイン中、D166の後に挿入されたFIX-Fc、42のアミノ酸を有するXTEN(例えばAE42)がAPドメイン中、D166の後に挿入されたFIX-Fc、及び対照(例えばFIXFc及びFIX)を静脈内投与した。血漿を採取し、FIX活性の分析及びPK分析を実施例5に記載の方法と同様にして実施した。図6の6Aは注射した用量の%として血漿活性をプロットする。薬物動態学的(PK)パラメータをWinNonlin 6.2.1(Pharsight、NCA解析によるCerteraを用いて計算し、図6の6BはMRT(X軸)に対する相対的血漿回収率(Y軸)を示す。円の面積は用量当たりの曲線下面積(AUC/D、単位:時間/kg/mL)を表し、FIXFcの活性化ペプチド(AP)ドメインへのXTEN配列の挿入によって、rFIXFc単独の平均滞留時間よりも長い平均滞留時間が、FIXに比較して延長されることを示す(図6の6B)。また、血漿活性回収率及びAUC/DがXTEN長の増加に伴って向上する(図6の6A~6B)。rFIX-CT.288(配列番号226)及びrFIXFc-AP.72(配列番号151)のAUC/Dは、rFIXFcと比較してそれぞれ3.4倍及び4.5倍向上した(図6の6A~6B)。これは、静脈内投与したrFIXと比較した場合、それぞれ8.5倍及び14.5倍に相当する(図6の6A~6B)。したがって、APドメイン中へのXTENの挿入をrFIXFc-R338LにおけるFcに媒介される半減期の延長と組み合わせることによって、半減期ならびに血漿回収率及びAUC/用量の増加の両方が、rFIX及びrFIXFcのそれに比較して拡大される。
【0221】
実施例4:皮下送達によるFIX融合タンパク質の薬物動態の向上
FIX欠損マウスに、t=0において、50または200IU/kgのFIX融合タンパク質、すなわち、288のアミノ酸のXTEN(例えばAE288)にC末端で融合されたFIX(FIX-CT.288)、72のアミノ酸のXTEN(例えばAE72)をAPドメイン中に有するFIXFc(FIXFc-AP.72)、42のアミノ酸のXTEN(例えばAE42)をEGF2ドメイン中に有するFIXFc(例えばFIXFc-EGF.42)、及び対照(FIXFc及びFIX)を皮下投与した。血漿を採取し、FIX活性の分析及びPK分析を実施例1に記載の方法と同様にして実施した。図7の7Aは注射した用量の%として血漿活性をプロットする。薬物動態学的(PK)パラメータをWinNonlin 6.2.1(Pharsight、NCA解析によるCerteraを用いて計算し、図7の7BはMRT(X軸)に対する相対的血漿回収率(Y軸)を示す。円の面積は用量当たりの曲線下面積(AUC/D、単位:時間/kg/mL)を表し、rFIXのカルボキシ末端におけるXTENポリペプチドの融合またはFIXFcの活性化ペプチド(AP)ドメインもしくはEGF2ドメインへのXTEN配列の挿入によって、上記FIX融合タンパク質の皮下投与プロファイルが大幅に向上することを示す(図7の7B)。HemBマウスにおいて皮下投与に関し、rFIXFcと比較して、rFIXFc-AP.72及びrFIX-CT.288のAUC/Dは6~9倍向上し、生物学的利用能は1.5~2倍向上し、且つCmax/Dは3~10倍向上している。rFIXと比較した場合、FIXFc-AP.72及びrFIX-CT.288の薬物動態学的パラメータの向上は、rFIXと比較して、それぞれ、28~40倍のAUC/Dの向上、3倍の生物学的利用能の増加及び15~30倍のCmax/Dの向上である(図7の7A~7B)。
【0222】
まとめると、皮下投与に関して、上記FIX融合タンパク質(例えば、rFIX-CT.288及びrFIXFc-AP.72)は、rFIXFcの静脈内投与と比較した場合、2.6倍及び1.9倍のAUC/Dの向上を示し、後者は、ヒトにおける予防のための週1回またはそれよりも低頻度での静脈内投与を支持する。
【0223】
実施例5:FIX融合タンパク質のインビトロでの有効性
ヒト血友病Bの血液に、3、10、及び30IU/dLの表示した用量のrFIXFc(白丸、点線)またはFIX融合タンパク質(例えばrFIXFc-AP.72)(黒丸、実線)またはビヒクル(白三角)を添加した(図8の8A~8C)。回転トロンボエラストメトリー(ROTEM)を用いて全血凝固特性を測定し、当該血液の再石灰化(NATEM)によって凝固を開始させた。rFIXFc-AP.72は、血友病Bの血液中において、凝固時間(CT、単位:秒)、アルファ角(単位:度)及び最大血餅硬度(MCF、単位:mm)に関して、rFIXFcと比較して同様の活性を示した(図8の8A~8C)。各時点におけるデータは4~5の同一組成の試料による繰返しの平均値+/-標準偏差である(図8の8A~8C)。
【0224】
rFIXFc-AP.72及びrFIX-CT.288は、HemBマウスにおいて、rFIX及びrFIXFcの両方と比較して、皮下投与での薬物動態の大幅な向上を示している。有効性及び相対成長率に対処するための更なる検討が、前臨床動物モデルにおいて進行中である。
【0225】
実施例6:急性マウス尾切断出血モデルにおけるrFIXFc-AP.72のインビトロでの有効性
既報(Dumont et al.,Blood,119(13):3024-3030,2012)のとおりに、尾の先端を切断した後に、投与したマウスにおける全失血量を測定する、盲検化マウス尾切断出血モデルにおいて急性の有効性を検討した。簡単に説明すると、8~15週齢のオスの血友病Bマウス(Lin et al.,Blood(1997) 90:3962-3966)を、50mg/kgのケタミンと0.5mg/kgのデクスメデトミジンとの混合物で麻酔した。尾を37℃の生理的食塩水に10分間浸漬して側脈を拡張させ、続いてビヒクル(3.88g/LのL-ヒスチジン、23.8g/Lのマンニトール、11.9g/Lのスクロース、3.25g/Lの塩化ナトリウム、0.01%(w/v)のポリソルベート20(pH 7.1)、3%のヒト血清アルブミン)、rFIXFc-AP.72、またはrFIXFcのいずれかを、50、100、及び200IU/kgで静脈内尾部静脈注射した。投与の5分後に尾の遠位先端部の5mmを切断し、事前に重量を測定した、13mLの生理的食塩水が入った管の中に30分間浸漬した。失血量を重量で定量した。統計的有意性をGraphPad Prism 6において、対応のない両側t検定を用いて算出した。かかる両側t検定は、上記50、100、及び200IU/kgの用量のrFIXFc-AP.72はビヒクルと有意に異なることを示した(P値<0.0001)。また、データは、低用量、例えば50IU/kgのrFIXFc-AP.72によって、同一の低用量、すなわち50IU/kgのrFIXFcと比較して、失血量が有意に低くなることを示している。これらの結果から、この出血モデルにおいては、rFIXFcに比較して、rFIXFc-AP.72の同等または向上した急性の有効性が実証される。
【0226】
実施例7:予防的なマウス尾静脈切断出血モデルにおけるFIXFc-AP.72のインビボでの有効性
既報(Toby et al.,PLOS One,DOI:10.1371/journal.pone.0148255,2016;Pan et al.,Blood 114:2802-2822(2009))のとおりに、外側尾静脈の切断後の、投与した血友病Bマウスの生存時間を測定する盲検化マウス尾静脈切断(TVT)出血モデルにおいて、長期の有効性を検討した。簡単に説明すると、8~15週齢のオスの血友病Bマウス(Lin et al.,Blood 90:3962-3966(1997))に、15、50、100IU/kgのFIX活性のrFIXFcまたはこれに対応する皮下用量のFIXFc-AP.72を静脈内投与し、ビヒクルをボーラス投与したマウスと比較した。投与の72時間後に、全てのマウスを麻酔し、尾の径が2.7mmの部分で一方の外側尾静脈を切断した。TVTの直後から9~11時間の間、次いで24時間の一昼夜の時点で、再出血及び(マウスが瀕死であった場合に決定された安楽死までの時間として定義される)死亡時刻を含む定性的な終点を監視し、毎時間記録した。24時間の検討の終了時に全てのマウスを安楽死させ、死亡または瀕死ではないマウスを24時間生存していたと判定した。
【0227】
GraphPad Prism 6を用いて、データをTVT後のパーセント表記の生存率としてプロットした。ビヒクルを皮下投与したマウス(点線)、FIXFc-AP.72を皮下投与したマウス(実線、閉じた記号)またはFIXFcを静脈内投与したマウス(破線、白抜きの記号)(15IU/kg、50IU/kg、100IU/kg n=30であるビヒクル投与以外はn=20/用量)(図10)。対応するIU/kg表記の用量で皮下投与したFIXFc-AP.72対静脈内投与したrFIXFcで処置したマウスの生存率曲線は、試験した全ての用量において、等価の静脈内投与したrFIXFcと比較して、FIXFc-AP.72を皮下投与したHemBマウスの生存率が向上したことを示した(図10)。
【0228】
実施例8:HemBマウスにおけるrFIXと比較したFIXFc-AP.72(FIX-216、二重鎖Fc)の静脈内及び皮下投与での薬物動態学的パラメータの向上
血友病-Bマウスに、200IU/kgのFIXFc-AP.72(FIX-216、二重鎖Fc)またはrFIXのいずれかを投与した。表示した時点で、血液を後眼窩での採血によって採取した。活性の標準として投与物質を用いた1段階凝固アッセイ活性によって、FIXの血漿レベルを測定した。図11の11Aにおいて、血漿活性を注射した用量の%としてプロットする。図11の11Bは、Phoenix WinNonLin 6.2.1(Pharsight、Certara)を用い、NCA(ノンコンパートメント)解析によって計算した薬物動態学的パラメータの表を示す。rFIXに対するFIX-216について示された薬物動態学的パラメータの向上には、平均滞留時間(MRT)、AUC/用量及び他のパラメータが含まれる。
【0229】
FIXFc-AP.72の皮下投与において、マウスにおける投与後概略20時間のtmax、及び同様(IU/kg)の静脈内投与したrFIXまたはrFIXFcと比較した場合の血漿活性レベルの向上が示されている。本発明者らは、HemBマウスにおける上記TVT出血モデルを用いて、投与後72時間において、皮下投与したFIXFc-AP.72が、試験した全ての用量において静脈内投与したrFIXFcと比較して、インビボでの有効性が向上したことを示している。同様に、HemBマウス尾切断出血モデルにおける急性の有効性試験によって、静脈内投与したFIXFc-AP.72がrFIXFcと比較して有効性が向上することが示された。これらのデータは、ヒトにおけるFIXFc-AP.72の週1回またはそれよりも低頻度での予防的皮下投与の可能性を支持する。
【0230】
詳細な実施形態の上述の説明は本発明の概括的な特徴を十分に明らかにすることとなるので、他の者は当業者の範囲内の知識を適用することにより、過度の実験をすることなく、発明の概括的な概念から逸脱することなく、かかる詳細な実施形態を種々の用途に対して容易に改変及び/または適合させることができる。したがって、かかる適合及び改変は、本明細書に提示される教示及び指針に基づけば、上記開示された実施形態の均等物の意味及び範囲の内であることが意図される。本明細書における語法または用語は説明を目的とするものであって限定を目的とするものではなく、本明細書の用語または語法は、本明細書の教示及び指針に照らして当業者によって解釈されるべきものであることを理解する必要がある。
【0231】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示された本発明の詳述及び実施を考慮すれば当業者には明らかとなろう。上記詳述及び実施例は単に例示的と見なされるべきものであり、本発明の真の範囲及び趣旨は後述の特許請求の範囲によって示されることを意図する。
【0232】
本出願は、2015年8月3日出願の米国仮出願第62/200,590号及び2016年1月22日出願の同第62/281,993号の優先権を主張し、上記出願はそれらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0233】
実施形態
E1. 第IX因子(FIX)ポリペプチドと、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内に挿入された少なくとも1のXTENとを含み、凝血促進活性を示すFIX融合タンパク質。
【0234】
E2. 上記挿入部位が、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する、E1に記載のFIX融合タンパク質。
【0235】
E3. 上記挿入部位が、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する、E1またはE2に記載のFIX融合タンパク質。
【0236】
E4. 上記挿入部位が、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、及び両方からなる群より選択されるアミノ酸に対応する、E1~E3のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0237】
E5. 上記挿入部位が配列番号2のアミノ酸142に対応する、E1~E4のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0238】
E6. 上記XTENが、少なくとも約6のアミノ酸、少なくとも約12のアミノ酸、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸、または少なくとも約288のアミノ酸を含む、E1~E5のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0239】
E7. 上記XTENが、AE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、AG144、またはそれらの任意の組み合わせを含む、E1~E6のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0240】
E8. 上記XTENが、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、E1~E7のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0241】
E9. 上記XTENがAE72またはAE144を含む、E7またはE8に記載のFIX融合タンパク質。
【0242】
E10. 第2のXTENを更に含む、E1~E9のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0243】
E11. 第2のXTENが、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内に挿入されているか、または第2のXTENが、上記FIXポリペプチドのC末端もしくは該FIXポリペプチドのC末端に融合されているリンカーのいずれかに融合されている、E10に記載のFIX融合タンパク質。
【0244】
E12. 上記XTEN及び第2のXTENが、それぞれ、
i.配列番号2のアミノ酸105及び配列番号2のアミノ酸166、
ii.配列番号2のアミノ酸105及び配列番号2のアミノ酸224、
iii.配列番号2のアミノ酸105及びC末端に融合された、
iv.配列番号2のアミノ酸166及び配列番号2のアミノ酸224、
v.配列番号2のアミノ酸166及びC末端に融合された、ならびに
vi.配列番号2のアミノ酸224及びC末端に融合された
からなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内に挿入され及び/または上記FIXポリペプチドのC末端に融合される、E10またはE11に記載のFIX融合タンパク質。
【0245】
E13. 上記XTENが、配列番号2のアミノ酸166に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内に挿入され、第2のXTENが上記FIXポリペプチドのC末端に融合された、E10またはE11に記載のFIX融合タンパク質。
【0246】
E14. 第2のXTENが、少なくとも約6のアミノ酸、少なくとも約12のアミノ酸、少なくとも約36のアミノ酸、少なくとも約42のアミノ酸、少なくとも約72のアミノ酸、少なくとも約144のアミノ酸、または少なくとも約288のアミノ酸を含む、E10~E13のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0247】
E15. 第2のXTENが、AE42、AE72、AE864、AE576、AE288、AE144、AG864、AG576、AG288、AG144、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、E10~E14のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0248】
E16. 第2のXTENがAE72またはAE144である、E15に記載のFIX融合タンパク質。
【0249】
E17. 第2のXTENが、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、E10~E16のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0250】
E18. 第3、第4、第5、または第6のXTENを更に含む、E10~E17のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0251】
E19. FIXポリペプチドと、上記FIXポリペプチドのC末端に融合され、長さが42のアミノ酸より長く且つ144のアミノ酸より短いアミノ酸配列を含むXTENとを含むFIX融合タンパク質。
【0252】
E20. 上記XTENが、50、55、60、65、もしくは70のアミノ酸より長く且つ140、130、120、110、100、90もしくは80のアミノ酸より短い、またはそれらの任意の組み合わせのアミノ酸配列を含む、E19に記載のFIX融合タンパク質。
【0253】
E21. 上記XTENの長さが72のアミノ酸である、E20に記載のFIX融合タンパク質。
【0254】
E22. 上記XTENがAE72である、E21に記載のFIX融合タンパク質。
【0255】
E23. 上記XTENが、配列番号35と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、E19に記載のFIX融合タンパク質。
【0256】
E24. Fcドメインを更に含む、E1~E23のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0257】
E25. 上記Fcドメインが上記FIXポリペプチドまたは上記XTENに融合されている、E24に記載のFIX融合タンパク質。
【0258】
E26. 第2のFcドメインを含む、E24またはE25に記載のFIX融合タンパク質。
【0259】
E27. 第2のFcドメインが第1のFcドメインと会合している、E26に記載のFIX融合タンパク質。
【0260】
E28. 2のポリペプチド鎖を含み、第1のポリペプチド鎖が上記Fcドメインに融合された上記FIXポリペプチドを含み、第2のポリペプチド鎖が第2のFcドメインを含み、第1のFcドメインと第2のFcドメインとが共有結合によって会合している、E26またはE27に記載のFIX融合タンパク質。
【0261】
E29. 上記FIXポリペプチドと、上記Fcドメインと、第2のFcドメインと、上記Fcドメインと第2のFcドメインとを連結するリンカーとを含む単一のポリペプチド鎖である、E26またはE27に記載のFIX融合タンパク質。
【0262】
E30. 上記リンカーが1または複数の細胞内プロセッシング部位を更に含む、E29に記載のFIX融合タンパク質。
【0263】
E31. 上記リンカーが(GlySer)を含み、但しnは1~100の整数である、E29またはE30に記載のFIX融合タンパク質。
【0264】
E32. 上記シグナルペプチド及びプロペプチド配列を含まない、配列番号54~配列番号153からなる群より選択される配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、E1~E31に記載のFIX融合タンパク質。
【0265】
E33. 天然FIXの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または100%の凝血促進活性を有する、E1~E32のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0266】
E34. 上記凝血促進活性が発色基質アッセイ、1段階凝固アッセイ、またはそれらの両方によって測定される、E33に記載のFIX融合タンパク質。
【0267】
E35. 上記FIXポリペプチドがR338L FIX変異体である、E1~E34のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0268】
E36. 上記R338L FIX変異体が、配列番号2と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、E35に記載のFIX融合タンパク質。
【0269】
E37. E1~E36のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【0270】
E38. E37に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【0271】
E39. E37に記載のポリヌクレオチドまたはE38に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0272】
E40. 上記FIX融合タンパク質がインビボで発現される、E39に記載の宿主細胞。
【0273】
E41. 上記FIX融合タンパク質がインビトロで発現される、E39に記載の宿主細胞。
【0274】
E42. FIX融合タンパク質の製造方法であって、E39に記載の宿主細胞を上記FIX融合タンパク質が発現される条件下で培養することを含む、上記方法。
【0275】
E43. E1~E36のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質、E37に記載のポリヌクレオチド、E38に記載の発現ベクター、またはE39~E41のいずれか1に記載の宿主細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【0276】
E44. 有効量のE1~E36のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質、E37に記載のポリヌクレオチド、E38に記載の発現ベクター、E39~E41のいずれか1に記載の宿主細胞、E43に記載の組成物を投与することを含む、それを必要とする患者における凝固疾患もしくは疾病の予防、治療、改善、または管理方法。
【0277】
E45. 上記投与することが上記患者への皮下投与を含む、E44に記載の方法。
【0278】
E46. 患者における凝固疾患もしくは疾病の診断または画像診断方法であって、E1~E36のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質、E37に記載のポリヌクレオチド、E38に記載の発現ベクター、E39~E41のいずれか1に記載の宿主細胞を上記対象の試料と接触させることを含む上記方法。
【0279】
E47. FIXポリペプチドの半減期の延長方法であって、配列番号2のアミノ酸103、配列番号2のアミノ酸105、配列番号2のアミノ酸142、配列番号2のアミノ酸149、配列番号2のアミノ酸162、配列番号2のアミノ酸166、配列番号2のアミノ酸174、配列番号2のアミノ酸224、配列番号2のアミノ酸226、配列番号2のアミノ酸228、配列番号2のアミノ酸413、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内にXTENを挿入し、それによってFIX融合タンパク質を構築することを含み、上記FIXタンパク質が凝血促進活性を示す、上記FIXポリペプチドの半減期の延長方法。
【0280】
E48. 第1の連鎖及び第2の連鎖を含む第IX因子(FIX)融合タンパク質であって、
a.第1の連鎖が、
i.FIXポリペプチドと、
ii.配列番号2のアミノ酸166に対応する挿入部位で上記FIXポリペプチド内に挿入され、少なくとも約72のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1のXTENと、
iii.上記少なくとも1のXTENの上記FIXポリペプチドに融合された第1のFcドメインと
を含み、
b.第2の連鎖が第2のFcドメインを含み、
第1のFcドメインと第2のFcドメインとが共有結合によって会合しており、凝血促進活性を示す、上記FIX融合タンパク質。
【0281】
E49. 上記少なくとも1のXTENが、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む、E48に記載のFIX融合タンパク質。
【0282】
E50. 上記FIX融合タンパク質の第1の連鎖が、配列番号227のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ上記FIX融合タンパク質の第2の連鎖が、配列番号228のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む、E48またはE49に記載のFIX融合タンパク質。
【0283】
E51. 上記FIX融合タンパク質の第1の連鎖が配列番号227のアミノ酸配列を含み、且つ上記FIX融合タンパク質の第2の連鎖が配列番号228のアミノ酸配列を含む、E48~E50のいずれか1に記載のFIX融合タンパク質。
【0284】
以下のベクター配列は、上述の実施例及び本出願中の他所において参照される。以下の記号の説明は当該情報の理解の助けになろう。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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