(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】フォトレジストトップコート組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20240112BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G03F7/11 501
H01L21/30 575
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022203971
(22)【出願日】2022-12-21
【審査請求日】2022-12-23
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イルヴィンダー カウル
(72)【発明者】
【氏名】ドリス エイチ.カン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ツォン
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240982(JP,A)
【文献】特開2010-275498(JP,A)
【文献】特開2021-107939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジストトップコート組成物であって、
式(1)のモノマーから形成される第1の重合単位:
【化1】
(式中、R
1は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、R
2及びR
3は、独立して、水素原子或いは置換又は非置換C1~C8アルキル基を表し、R
4は、置換又は非置換C1~C4アルキレン基を表し、Xは、炭素原子を表し、
(i)R
2及びR
3の少なくとも1つは、置換又は非置換C3~C8シクロアルキル基を表し、或いは
(ii)R
2及びR
3の少なくとも1つは、Xと一緒になった場合、分岐構造を含む置換又は非置換C3~C8アルキル基を表し、或いは
(iii)R
2とR
3が一緒に環を形成する)と、
式(2)のモノマーから形成される第2の重合単位:
【化2】
(式中、R
5は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、R
6は、置換又は非置換C1~C4アルキレン基を表し、Rf
1は、独立して、C1~C4フルオロアルキル基を表し、第1のポリマー中の式(1)の重合単位の全含有量は、前記第1のポリマーの全重合単位に基づいて1~80重量%であり、前記第1のポリマーは、前記組成物の全固形分に基づいて1~20重量%の量で前記組成物中に存在する)と、を含むフッ素化された第1のポリマーと、
第2のポリマーと、
エステル溶媒と1つ以上の更なる有機溶媒とを含む有機系溶媒系と、を含み、
前記組成物は、光酸発生剤化合物を実質的に含まない、フォトレジストトップコート組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の更なる有機溶媒は、アルコール溶媒を含む、請求項1に記載のフォトレジストトップコート組成物。
【請求項3】
前記エステル溶媒は、イソブチルイソブチレート又はイソアミルアセテートであり、前記アルコール溶媒は、メチルイソブチルカルビノールである、請求項2に記載のフォトレジストトップコート組成物。
【請求項4】
前記フォトレジストトップコート組成物は、前記第1及び第2のポリマーとは異なるフッ素化された第3のポリマーを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のフォトレジストトップコート組成物。
【請求項5】
前記第1、第2及び第3のポリマーとは異なる第4のポリマーを更に含む、請求項4に記載のフォトレジストトップコート組成物。
【請求項6】
R
2及びR
3の少なくとも1つは、置換又は非置換C3~C8シクロアルキル基を表す、請求項
1に記載のフォトレジストトップコート組成物。
【請求項7】
R
2及びR
3の少なくとも1つは、Xと一緒になった場合、分岐構造を含む置換又は非置換C3~C8アルキル基を表す、請求項
1に記載のフォトレジストトップコート組成物。
【請求項8】
各Rf
1は、トリフルオロメチル基である、請求項
1に記載のフォトレジストトップコート組成物。
【請求項9】
パターン形成方法であって、
(a)基材上にフォトレジスト層を形成する工程と、
(b)前記フォトレジスト層上にフォトレジストトップコート層を形成する工程と、
(c)前記フォトレジストトップコート層及び前記フォトレジスト層を活性化放射線に露光する工程と、
(d)前記露光されたトップコート層及びフォトレジスト層を現像剤と接触させてレジストパターンを形成する工程と、を含むパターン形成方法であって、
前記フォトレジストトップコート層は、フォトレジストトップコート組成物から形成され、
前記フォトレジストトップコート組成物は、
式(1)のモノマーから形成される第1の重合単位:
【化3】
(式中、R
1は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、R
2及びR
3は、独立して、水素原子或いは置換又は非置換C1~C8アルキル基を表し、R
4は、置換又は非置換C1~C4アルキレン基を表し、Xは、炭素原子を表し、
(i)R
2及びR
3の少なくとも1つは、置換又は非置換C3~C8シクロアルキル基を表し、或いは
(ii)R
2及びR
3の少なくとも1つは、Xと一緒になった場合、分岐構造を含む置換又は非置換C3~C8アルキル基を表し、或いは
(iii)R
2とR
3が一緒に環を形成する)と、
式(2)のモノマーから形成される第2の重合単位:
【化4】
(式中、R
5は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、R
6は、置換又は非置換C1~C4アルキレン基を表し、Rf
1は
、独立して、C1~C4フルオロアルキル基を表し、第1のポリマー中の式(1)の重合単位の全含有量は、前記第1のポリマーの全重合単位に基づいて1~80重量%であり、前記第1のポリマーは、前記組成物の全固形分に基づいて1~20重量%の量で前記組成物中に存在する)と、を含むフッ素化された第1のポリマーと、
第2のポリマーと、
エステル溶媒と1つ以上の更なる有機溶媒とを含む有機系溶媒系と、を含み、
前記組成物は、光酸発生剤化合物を実質的に含まない、パターン形成方法。
【請求項10】
前記トップコート層は、スピンコーティングによって形成され、前記第1のポリマーは、前記スピンコーティング中に前記トップコート層の上面に移動し、前記トップコート層の上面は、前記第1のポリマーから本質的になる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト組成物の上に適用されることができるフォトレジストトップコート組成物に関する。本発明は更に、フォトレジストトップコート組成物を使用するパターン形成方法に関する。本発明は、半導体デバイスの形成のための液浸リソグラフィープロセスにおいてトップコート層として特定の適用可能性がある。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは、画像を基材に転写するために使用される。フォトレジストの層を基材上に形成し、次いで、フォトレジスト層をフォトマスクを通して活性化放射線の供給源に露光する。フォトマスクは、活性化放射線に対して不透明である領域と、活性化放射線に対して透明である他の領域とを有する。活性化放射線への露光によってフォトレジストコーティングの光誘導化学変換がもたらされ、これによってフォトマスクのパターンをフォトレジストがコーティングされた基材に転写する。露光後に、フォトレジストをベークし、現像剤溶液と接触させて現像して、基材の選択的加工を可能にするレリーフ画像を提供する。
【0003】
半導体デバイスの集積密度を高める及びナノメートル範囲の寸法を有する構造体の形成を可能にするために、高解像度性能を有するフォトレジスト及びフォトリソグラフィー加工ツールが開発されてきたし、開発され続けている。半導体デバイスにおいてnmスケールの形状サイズを達成するための1つの手法は、フォトレジスト層の露光のために、短波長、例えば、193nm以下を有する活性化放射線を使用することである。リソグラフィー性能を更に改善するために、画像形成デバイスのレンズの開口数(NA)を効果的に増加させるための液浸リソグラフィーツール、例えば、ArF(193nm)光源を有するスキャナーが開発されてきた。これは、画像形成デバイスの最終面と、半導体ウェハーの上面との間に、比較的高い屈折率の流体、典型的には水を使用することによって達成される。
【0004】
液浸リソグラフィーにおいて、液浸流体とフォトレジスト層との間の直接接触が、液浸流体へのフォトレジストの成分の浸出をもたらすことがある。この浸出は、光学レンズの汚染を引き起こすことがあり、液浸流体の有効な屈折率及び透過特性の変化をもたらすことがある。この問題に対処する取り組みにおいて、フォトレジストトップコート層が液浸流体と下にあるフォトレジスト層との間のバリア層として導入されている。
【0005】
所定の走査速度について低い後退接触角(RCA)を示すトップコートは、ウォーターマーク欠陥をもたらすことがある。露光ヘッドがウェハーに渡って移動するにつれて水滴が後に残されるときにこれらの欠陥が生じる。結果として、レジスト成分の水滴中への浸出のためにレジスト感度が変わり、水が下にあるレジスト中に浸透することができる。自己分離するトップコート組成物の使用が、例えば、(非特許文献1)、及びGallagherらの(特許文献1)、及びWangらの(特許文献2)で提案されている。自己分離されたトップコートは、液浸流体及びフォトレジストの両方の界面における所望の特性、例えば、液浸流体界面における増加した水後退接触角、及びフォトレジスト界面における良好な現像剤溶解性を有する調整された材料を理論的に可能にする。
【0006】
後退接触角の増加は、液浸流体界面における増加した疎水性を有するトップコート材料の使用によって達成することができ、フッ素化ポリマーの使用によって典型的に達成することができる。ウォーターマーク欠陥の低減を可能にする以外にも、トップコートの後退接触角の増加は一般的に、増加した走査速度の使用を可能にし、より大きいプロセス処理量をもたらす。このようなプラスの効果にもかかわらず、疎水性の高い材料を使用すると、他の欠陥のタイプ、例えば、ウェハー周辺でスパイク状のコーティングの不連続として現れるデウェット(dewet)コーティング欠陥などのマイナスの原因となる可能性がある。このような欠陥は、レジストパターンの適切な形成及び下位層へのパターン転写を妨げ得、これによってデバイス収率に悪影響を与え得る。これらの欠陥は、例えば、微細架橋(micro-bridging)、コンタクトホールの欠失、ラインピンチング、又はCDシフトの1つ以上の形態をとる場合がある。従って、高い後退接触角と低いデウェットコーティング欠陥レベルとのバランスを有するトップコート層が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2007/0212646A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0183976A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第930542A1号明細書
【文献】米国特許第6,692,888号明細書
【文献】米国特許第6,680,159号明細書
【文献】米国特許第6,057,083号明細書
【文献】欧州特許出願公開第01008913A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第00930542A1号明細書
【文献】米国特許第6,136,501号明細書
【文献】米国特許第5,843,624号明細書
【文献】米国特許第6,048,664号明細書
【文献】欧州特許出願公開第01008913A1号明細書
【文献】米国特許第6,048,662号明細書
【文献】PCT/US01/14914号
【文献】米国特許第6,306,554号明細書
【文献】米国特許第7,244,542号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Self-segregating Materials for Immersion Lithography,Daniel P.Sanders et al.,Advances in Resist Materials and Processing Technology XXV,Proceedings of the SPIE,Vol.6923,pp.692309-1-692309-12(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最新技術に伴なう1つ以上の問題に取り組む、改良されたフォトレジストトップコート組成物及びこのような材料を使用するフォトリソグラフィー法が当技術分野において継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、フォトレジストトップコート組成物が提供される。本組成物は、
式(1)のモノマーから形成される第1の重合単位:
【化1】
(式中、R
1は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、R
2及びR
3は、独立して、水素原子或いは置換又は非置換C1~C8アルキル基を表し、R
4は、置換又は非置換C1~C4アルキレン基を表し、Xは、炭素原子を表し、(i)R
2及びR
3の少なくとも1つは、置換又は非置換C3~C8シクロアルキル基を表し、或いは(ii)R
2及びR
3の少なくとも1つは、Xと一緒になった場合、分岐構造を含む置換又は非置換C3~C8アルキル基を表し、或いは(iii)R
2とR
3が一緒に環を形成する)と、
式(2)のモノマーから形成される第2の重合単位:
【化2】
(式中、R
5は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、R
6は、置換又は非置換C1~C4アルキレン基を表し、Rf
1は、独立して、C1~C4フルオロアルキル基を表し、
第1のポリマー中の式(1)の重合単位の全含有量は、第1のポリマーの全重合単位に基づいて1~80重量%であり、第1のポリマーは、組成物の全固形分に基づいて1~20重量%の量で組成物中に存在する)と、を含むフッ素化された第1のポリマーと、
第2のポリマーと、
エステル溶媒と1つ以上の更なる有機溶媒とを含む有機系溶媒系と、を含み、
この場合、フォトレジストトップコート組成物は、光酸発生剤化合物を実質的に含まない。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、パターン形成方法が提供される。この方法は、(a)基材上にフォトレジスト層を形成する工程と、(b)フォトレジスト層上にフォトレジストトップコート層を形成する工程であって、フォトレジストトップコート層が本明細書に記載のフォトレジストトップコート組成物から形成される工程と、(c)フォトレジストトップコート層及びフォトレジスト層を活性化放射線に露光する工程と、(d)露光されたトップコート層及びフォトレジスト層を現像剤と接触させてレジストパターンを形成する工程と、を含む。
【0012】
本発明の更に別の態様によれば、コーティングされた基材が提供される。コーティングされた基材は、基材上のフォトレジスト層と、本明細書に記載のフォトレジストトップコート組成物からフォトレジスト層上に形成されたフォトレジストトップコート層とを含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、「置換(された)(substituted)」は、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン(即ち、F、Cl、Br、I)、C1~C10アルキル、C6~C10アリール、又は前述の少なくとも1つを含む組み合わせから選択される1つ以上の置換基で置き換えられた1つ以上の水素原子を有することを意味する。冠詞「a」及び「an」は、別記しない限り1つ以上を包括している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
トップコート組成物
本発明のトップコート組成物は、フッ素化された第1のポリマーと、第2のポリマーと、エステル溶媒を含む有機系溶媒系とを含み、1つ以上の更なる任意の成分を含むことができる。
【0015】
フォトレジスト層の上に塗布される本発明の好ましいトップコート組成物は、液浸リソグラフィープロセスにおいて用いられる液浸流体中へのフォトレジスト層の成分の移動を最小限にする又は防止することができる。本発明の好ましいトップコート組成物において、第1のポリマーは、コーティングプロセス中に組成物の他のポリマーから自己分離する表面活性ポリマーである。本明細書で使用される場合、用語「液浸流体」は、液浸リソグラフィーを行なうために露光ツールのレンズとフォトレジストがコーティングされた基材との間に挟まれた、流体、典型的には水を意味する。
【0016】
また本明細書で使用される場合、トップコート層は、同じ方法において、しかしトップコート組成物層を使用せずに加工される同じフォトレジストシステムに対してトップコート組成物を使用した時に減少量の酸又は有機材料が液浸流体中に検出される場合、液浸流体中へのフォトレジスト材料の移動を抑制すると考えられる。液浸流体中のフォトレジスト材料の検出は、(オーバーコートされたトップコート組成物層を有する及び有さない)フォトレジストの露光前に及び次に液浸流体を通しての露光によって(オーバーコーティングされたトップコート組成物層を有する及び有さない)フォトレジスト層をリソグラフィー加工した後に液浸流体の質量分光分析によって行なうことができる。好ましくは、トップコート組成物は、一切のトップコート層を使用しない(即ち、液浸流体がフォトレジスト層と直接に接触する)同じフォトレジストに対して液浸流体中に存在するフォトレジスト材料(例えば、質量分光分析によって検出される酸又は有機化合物)の少なくとも10パーセントの低減をもたらし、より好ましくはトップコート組成物は、トップコート層を使用しない同じフォトレジストに対して液浸流体中に存在するフォトレジスト材料の少なくとも20、50、又は100パーセントの低減をもたらす。
【0017】
本発明の好ましいトップコート組成物は、欠陥特性の、例えば、デウェットコーティング欠陥の改善を可能にすることができる。更に、本発明のトップコート組成物は、好ましい接触角特性、例えば、より大きいプロセス処理量に解釈できる高い走査速度を可能にする際に液浸リソグラフィー方法において重要である液浸流体界面での特性である、後退接触角(RCA)を示すことができる。本組成物は、乾式リソグラフィーにおいて又はより典型的には液浸リソグラフィープロセスにおいて使用することができる。露光波長は、フォトレジスト組成物によっての場合を除いて特に限定されないが、300nm未満、例えば、248nm、193nmの波長又はEUV波長(例えば、13.4nm)が典型的である。193nm液浸リソグラフィープロセスでの組成物の使用が特に好ましい。
【0018】
本発明において有用なポリマーは、水性アルカリ現像剤、例えば、水酸化4級アンモニウム溶液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、典型的には0.26Nの水性TMAHを使用するレジスト現像工程において、組成物から形成されたトップコート層を除去できるように水性アルカリに可溶性である。
【0019】
重合アクリレート基、ポリエステル、又は、例えば、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、重合芳香族(メタ)アクリレート、及び重合ビニル芳香族モノマーによって提供されるなどの、他の繰り返し単位及び/又はポリマー主鎖構造を含むポリマーなどの、様々なポリマーが、本発明のトップコート組成物に用いられ得る。典型的には、ポリマーは、少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むが、1つ以上のホモポリマーの使用が有益であり得る。異なるポリマーが、好適には、様々な相対量で存在し得る。
【0020】
本発明のトップコート組成物のポリマーは、例えば、1つ以上の、疎水性基、弱酸基、強酸基、分岐状の任意に置換されたアルキル又はシクロアルキル基、フルオロアルキル基、又はエステル、エーテル、カルボキシ、又はスルホニル基などの、極性基などの、様々な繰り返し単位を含むことができる。ポリマーの繰り返し単位上の特定の官能基の存在は、例えば、ポリマーの意図される官能性に依存するであろう。
【0021】
特定の好ましい態様では、トップコート組成物の1つ以上のポリマーは、リソグラフィー加工中に反応する1つ以上の基、例えば、酸及び熱の存在下で開裂反応を受けることができる1つ以上の光酸-酸不安定基、例えば、酸不安定エステル基(例えば、t-ブチルアクリレート又はt-ブチルメタクリレート、アダマンチルアクリレートの重合によって提供されるようなt-ブチルエステル基)及び/又はビニルエーテル化合物の重合によって提供されるようなアセタール基を含むであろう。このような基の存在は、関連ポリマーを現像剤溶液中により可溶性にすることができ、これによって現像プロセス中の現像性及びトップコート層の除去を支援する。
【0022】
ポリマーは有利には、トップコート層の特性を調整するように選択することができ、それぞれ一般的に1つ以上の目的又は機能の役割を果たす。このような機能は、例えば、フォトレジストプロファイル調整、トップコート表面調整、欠陥の低減及びトップコートとフォトレジスト層との間の界面混合の低減のうちの1つ以上を含む。
【0023】
トップコート組成物は、1つ以上の異なるタイプの繰り返し単位を含むことができる1つ以上のマトリックスポリマーを含み、2つ又は3つの異なる繰り返し単位が典型的である。マトリックスポリマーは、好ましくは、例えば、微細架橋に起因する全体的な欠陥を低減するために、十分に高い現像剤溶解速度を提供する。マトリックスポリマーのための典型的な現像剤溶解速度は、300nm/秒より大きく、好ましくは500nm/秒より大きい。マトリックスポリマーは、フッ素化又は非フッ素化であることができる。いくつかのフォトレジスト材料について、フッ素化トップコートマトリックスポリマーは、トップコート層と下にあるフォトレジスト層との間の界面混合を低減する又は最小限にすることができる。従って、マトリックスポリマーの1つ以上の繰り返し単位は、例えば、C1~C4フルオロアルキル基、典型的にフルオロメチルなどのフルオロアルキル基でフッ素化されることができ、例えば、スルホンアミド基(例えば、-NHSO2CF3)又はフルオロアルコール基(例えば、-C(CF3)2OH)として存在し得る。
【0024】
マトリックスポリマーは、表面活性ポリマーの表面エネルギーよりも高い表面エネルギーを有し、表面活性ポリマーと好ましくは不混和性であり、表面活性ポリマーがマトリックスポリマーから相分離して、トップコートフォトレジスト界面から離れてトップコート層の上面に移動することを可能にする。マトリックスポリマーの表面エネルギーは、典型的に30~60mN/mである。
【0025】
本発明による例示的なマトリックスポリマーは、以下を含む。
【化3】
【化4】
【0026】
1つ以上のマトリックスポリマーが、典型的には、トップコート組成物の全固形分に基づいて50~99.9重量%、より典型的に85~95重量%の組合せ量で組成物中に存在する。マトリックスポリマーの重量平均分子量は典型的に、400,000未満、例えば、5000~50,000、5000~15,000又は5000~25,000ダルトンである。
【0027】
表面活性ポリマーをトップコート組成物中に提供して、トップコート/液浸流体界面の有益な表面特性をもたらす。特に、表面活性ポリマーは、有益にも、水に対して望ましい表面特性、例えば、トップコート/液浸流体界面での改善された静的接触角(SCA)、後退接触角(RCA)、前進接触角(ACA)又は滑落角(SA)の1つ以上を提供することができる。特に、表面活性ポリマーは、より高いRCAを可能にすることができ、それは、より速い走査速度及び増加したプロセス処理量を可能にすることができる。乾燥状態のトップコート組成物の層は、好ましくは75~90°、より好ましくは80~90°の水後退接触角を有する。語句「乾燥状態の」は、全組成物に基づいて、8重量%以下の溶媒を含むことを意味する。
【0028】
表面活性ポリマーは、好ましくは、水性アルカリ可溶性である。表面活性ポリマーは、好ましくは、マトリックスポリマーよりも低い表面エネルギーを有する。好ましくは、表面活性ポリマーは、マトリックスポリマー、並びにトップコート組成物中に存在する任意の他のポリマーよりも著しく低い表面エネルギーを有し、それらと実質的に不混和性である。このようにして、トップコート組成物は、自己分離性であることができ、この場合、表面活性ポリマーは、コーティング中に他のポリマーから離れてトップコート層の上面に移動する。これによって、得られたトップコート層は、液浸リソグラフィープロセスの場合にトップコート/液浸流体界面にあるトップコート層の上面において表面活性ポリマーが豊富である。表面活性ポリマーの所望の表面エネルギーは特定のマトリックスポリマー及びその表面エネルギーに依存するが、表面活性ポリマーの表面エネルギーは、典型的に25~35mN/m、好ましくは25~30mN/mである。表面活性ポリマーの表面エネルギーは、典型的には、マトリックスポリマーの表面エネルギーよりも5~25mN/m少なく、好ましくはマトリックスポリマーの表面エネルギーよりも5~15mN/m少ない。
【0029】
表面活性ポリマーは、フッ素化されており、式(1)のモノマーから形成された第1の重合単位を含む:
【化5】
(式中、R
1は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、水素原子又はメチルが典型的であり、R
2及びR
3は、独立して、水素原子或いは置換又は非置換C1~C8アルキル基を表し、R
4は、置換又は非置換C1~C4のアルキレン基を表す)。式(1)では、以下の条件の1つ以上が満たされる:(i)R
2及びR
3の少なくとも1つは、置換又は非置換C3~C8シクロアルキル基を表し、又は(ii)R
2及びR
3の少なくとも1つは、R
2、R
3、R
4が結合している、炭素原子とともに分岐構造を形成する置換又は非置換C3~C8アルキル基を表し、或いは(iii)R
2とR
3が一緒に環を形成する。表面活性ポリマー中の式(1)の重合単位の全含有量は、表面活性ポリマーの全重合単位に基づいて1~80重量%である。
【0030】
一般式(1)の適切なモノマーは、例えば、以下を含む。
【化6】
【0031】
表面活性ポリマーは、式(2)のモノマーから形成される第2の重合単位を更に含む:
【化7】
(式中、R
5は、水素原子、フッ素原子、C1~C4アルキル基、又はC1~C4フルオロアルキル基を表し、水素原子又はメチルが、典型的であり、R
6は、置換又は非置換C1~C4アルキレン基を表し、Rf
1は、独立して、C1~C4フルオロアルキル基を表し、トリフルオロメチルが、典型的である)。表面活性ポリマー中の式(2)の重合単位の全含有量は、典型的には、表面活性ポリマーの全重合単位に基づいて20~99重量%である。
【0032】
一般式(2)の適切なモノマーは、例えば、以下を含む。
【化8】
【0033】
表面活性ポリマーは、第1及び第2の重合単位とは異なる1つ以上の更なる重合単位を含むことができる。適切な更なる重合単位は、例えば、酸不安定基、塩基不安定基、スルホンアミド基、アルキル基及びエステル基から選択される1つ以上の基を含むものを含む。好ましくは、このような酸不安定基、塩基不安定基、スルホンアミド基、アルキル基及びエステル基はフッ素化されている。
【0034】
本発明による表面活性ポリマーでの使用に適した更なる単位のタイプは、以下のモノマーの1つ以上の重合単位を含む。
【化9】
【0035】
表面活性ポリマーとして有用な例示的なポリマーは、例えば、以下を含む:
【化10】
(式中、xは、2~99重量%であり、yは、1~98重量%であり、aは、2~98重量%であり、bとcは、それぞれ1~97重量%であり、xとyの合計は、100重量%であり、a、b及びcの合計は、100重量%である)。
【0036】
液浸リソグラフィーのための表面活性ポリマーの下限は、一般に、フォトレジスト成分の浸出を防止する必要性によって決められる。表面活性ポリマーは、トップコート組成物の全固形分に基づいて、0.1~30重量%、より典型的に3~20重量%又は5~15重量%の量で組成物中に存在する。表面活性ポリマーの重量平均分子量Mwは、典型的には400,000未満、好ましくは5000~50,000、より好ましくは5000~25,000ダルトンである。
【0037】
任意の更なるポリマーが、トップコート組成物中に存在することができる。例えば、レジストフィーチャ(feature)のプロファイルを調整する目的のため、及び/又はレジスト上部損失を制御するために、1つ以上の更なるポリマーを提供することができる。更なるポリマーは、典型的には、マトリックスポリマーと混和性であり、表面活性ポリマーと実質的に不混和性であり、その結果、表面活性ポリマーはトップコート/フォトレジスト界面から離れて他のポリマーからトップコート表面に自己分離することができる。好ましい態様によれば、フォトレジストトップコート組成物は、フッ素化され、マトリックスポリマー及び表面活性ポリマーとは異なる第3のポリマーを含む。更に好ましい態様によれば、フォトレジストトップコート組成物は、フッ素化されたこうした第3のポリマーと、マトリックスポリマー、表面活性ポリマー、及び第3のポリマーとは異なる第4のポリマーも含む。
【0038】
有機系溶媒系は、エステル溶媒及び1つ以上の更なる有機溶媒を含む。「有機系」とは、溶媒系が、残留水を含まない、又は、例えば、全溶媒に基づいて0.05~1重量%の量で存在し得る他の汚染物質を含まない、50重量%を超える有機溶媒、典型的には90~100重量%、より典型的には99~100重量%、又は100重量%の有機溶媒を含むことを意味する。トップコート組成物を調合及び流延する典型的な溶媒材料は、トップコート組成物の成分を溶解又は分散させるが下にあるフォトレジスト層を感知できる程度に溶解しない任意の材料である。溶媒系は、異なる溶媒の混合物、例えば、2つ、3つ、又はそれ以上の溶媒を含む。
【0039】
好ましいエステル溶媒は、一般式(I):
【化11】
(式中、R
20は、C1~C8アルキルから選択され、R
21は、C3~C8アルキルから選択される)で表されるものを含む。R
20及びR
21を合わせた炭素原子の総数は、好ましくは5より大きい。適切なこのようなエステル溶媒は、例えば、イソアミルアセテート、プロピルペンタノエート、イソプロピルペンタノエート、イソプロピル3-メチルブタノエート、イソプロピル2-メチルブタノエート、イソプロピルピバレート、イソブチルイソブチレート、2-メチルブチルイソブチレート、2-メチルブチル2-メチルブタノエート、2-メチルブチル2-メチルヘキサノエート、2-メチルブチルヘプタノエート、ヘキシルヘプタノエート、n-ブチルn-ブチレート、イソアミルn-ブチレート、イソアミルイソバレレート、及びこれらの組み合わせを含む。これらのうち、イソブチルイソブチレート、イソアミルアセテートが好ましい。エステル溶媒の望ましい沸点は、溶媒系の他の成分によって異なるが、140~180℃の沸点が典型的である。エステル溶媒は、典型的には、溶媒系に基づいて、10~70重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは30~50重量%の量で存在する。
【0040】
溶媒系は、1つ以上の更なる有機溶媒を含む。限定するものではないが、適切な更なる溶媒は、例えば、アルコール、エーテル、アルカン、ケトン、及びこれらの組み合わせを含む。
【0041】
適切なアルコールは、例えば、n-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール及び1-デカノールなどのC4~C10一価アルコール、並びにこれらの混合物を含む。これらのうち、4-メチル-2-ペンタノール及び2-メチル-1-ブタノールが好ましい。好ましくは、溶媒系は、溶媒系に基づいて、典型的には30~80重量%、より典型的には40~60重量%の量で存在するアルコール溶媒を含む。典型的には、アルコールの沸点は、エステル溶媒の沸点よりも低く、120~140℃の沸点が典型的である。
【0042】
適切なエーテル溶媒は、例えば、以下の一般式(II):
R22-O-R23-O-R24-OH(II)
(式中、R22は、任意に置換されたC1~C2アルキル基であり、R23及びR24は、独立して、任意に置換されたC2~C4アルキル基、及び異性体混合物を含むこのようなヒドロキシアルキルエーテルの混合物から選択される)のものなどのヒドロキシアルキルエーテルを含む。例示的なヒドロキシアルキルエーテルは、ジアルキルグリコールモノ-アルキルエーテル及びこれらの異性体、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、これらの異性体及びこれらの混合物を含む。これらのうち、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。好ましくは、溶媒系は、ヒドロキシアルキルエーテル溶媒を含み、これは、典型的には溶媒系に基づいて3~15重量%の量で存在する。ヒドロキシアルキルエーテルの沸点は、溶媒系の他の成分よりも高く、170~200℃の沸点が典型的である。これにより、ヒドロキシアルキルエーテル溶媒は、コーティングプロセス中にトップコート組成物中の他のポリマーから表面活性ポリマーの相分離を促進し、自己分離するトップコート構造を提供することができる。より高い沸点のヒドロキシアルキルエーテル溶媒は、コーティング中のチップの乾燥効果を低減又は防止することもできる。
【0043】
他の適切なエーテル溶媒は、例えば、式(III)のものなどのアルキルエーテルを含む:
R25-O-R26 (III)
(式中、R25及びR26は、C2~C8アルキル、好ましくはC3~C6アルキル、より好ましくはC4~C5アルキルから独立して選択される)。適切なアルキルエーテルは、例えば、イソブチルエーテル、イソペンチルエーテル、イソブチルイソヘキシルエーテル、及びこれらの混合物を含む。適切なアルカン溶媒は、例えば、C8~C12n-アルカン、例えば、n-オクタン、n-デカン及びドデカン、これらの異性体、並びにこれらの混合物を含む。適切なケトン溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、及びこれらの混合物を含む。アルキルエーテル溶媒、アルカン溶媒、及びケトン溶媒は、使用される場合、独立して、例えば、溶媒系に基づいて10~70重量%の量で存在し得る。
【0044】
特に好ましいのは、例えば、エステル溶媒、アルコール溶媒、及びヒドロキシアルキルエーテル溶媒を含むものなど、3つの溶媒を有する溶媒系である。特に好ましい溶媒系は、イソブチルイソブチレート、4-メチル-2-ペンタノール、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルイソブチレート、2-メチル-1-ブタノール、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、イソアミルアセテート、4-メチル-2-ペンタノール、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル、並びにイソアミルアセテート、4-メチル-2-ペンタノール、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルを含む。
【0045】
トップコート組成物は、1つ以上の他の任意の成分を含むことができる。例えば、組成物は、反射防止特性を強化するための化学線染料及び造影剤、ストリエーション防止剤等の1つ以上を含むことができる。使用される場合、このような任意の添加剤は、典型的には、トップコート組成物の全固形分に基づいて、0.1~10重量%などの少量で組成物中に存在する。
【0046】
本発明のトップコート組成物は、光酸発生剤化合物(PAG)を実質的に含まない。トップコート組成物中のPAGの存在又は過剰なPAG含有量は、下にあるフォトレジスト層の成分の液浸流体への浸出を引き起こす可能性がある。このような浸出は、露光ツールの光学レンズを汚染し、液浸流体の実効屈折率及び透過特性に変化をもたらす可能性がある。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」とは、トップコート組成物の全固形分に基づいて、1重量%以下、典型的には0.5重量%未満、0.1重量%未満、又は0重量%を意味する。
【0047】
本発明のトップコート組成物は、好ましくは、フォトレジスト組成物で一般的に使用されるような塩基消光剤化合物、例えばアミン化合物を実質的に含まない。このような塩基消光剤化合物の共役酸は、典型的にはpKa>0を有する。トップコート組成物中の塩基消光剤の存在は、下にあるフォトレジスト層の露光領域におけるポリマーの脱保護を防止することができ、これは架橋欠陥をもたらす可能性がある。
【0048】
組成物から形成されるトップコート層は、典型的には、193nmにおいて1.4以上、好ましくは193nmにおいて1.47以上の屈折率を有する。屈折率は、オーバーコート組成物の、マトリックスポリマー、表面活性ポリマー、又は他の成分の組成を変化させることによって調節することができる。例えば、オーバーコート組成物中の有機物含有量の相対量の増加は、層の屈折率の増加を提供し得る。好ましいオーバーコート組成物層は、目標露光波長において液浸流体及びフォトレジストの屈折率の間の屈折率を有するであろう。
【0049】
フォトレジストトップコート組成物は、以下の公知の手順に従って調製することができる。例えば、組成物は、組成物の固形成分を溶媒成分中に溶解させることによって調製することができる。組成物の所望の全固形分含有量は、組成物中の特定のポリマー及び所望の最終層厚さなどの要因に依存するであろう。好ましくは、オーバーコート組成物の固形分は、組成物の全重量に基づいて、1~10重量%、より好ましくは1~5重量%である。全組成物の粘度は、典型的に1.5~2センチポアズ(cp)である。
【0050】
フォトレジスト組成物
本発明の方法において有用なフォトレジスト組成物は、酸感受性であるマトリックスポリマーを含む化学増幅型フォトレジスト組成物を含むが、それは、フォトレジスト組成物の層の一部として、ポリマー及び組成物層が、ソフトベーク、活性化放射線への露光及び露光後ベークの後に光酸発生剤によって発生した酸との反応の結果として現像剤への溶解性の変化を受けることを意味する。レジスト調合物は、ポジ型又はネガ型であることができるが、典型的にはポジ型である。ポジ型フォトレジストでは、マトリックスポリマー中の光酸不安定エステル又はアセタール基などの酸不安定基が活性化放射線への露光及び熱処理時に光酸促進脱保護反応を受けるとき溶解性の変化が典型的にはもたらされる。本発明のために有用な適したフォトレジスト組成物は市販されている。
【0051】
193nmなどの波長で画像形成するために、マトリックスポリマーは、典型的には、フェニル、ベンジル、又は他の芳香族基を実質的に含まず(例えば、15モル%未満)又は完全に含まず、この場合、このような基は、放射線を高度に吸収する。芳香族基を実質的に又は完全に含まない適切なポリマーは、全てShipley Companyの(特許文献3)並びに(特許文献4)及び(特許文献5)に開示されている。好ましい酸不安定基は、例えば、アセタール基、又はマトリックスポリマーのエステルのカルボキシル酸素に共有結合している3級非環状アルキル炭素(例えば、t-ブチル)又は3級脂環式炭素(例えば、メチルアダマンチル)を含有するエステル基を含む。
【0052】
適切なマトリックスポリマーは、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルフェンキルアクリレート、エチルフェンキルメタクリレート等、並びに他の非環状アルキル及び脂環式(アルキル)アクリレートなどの、酸不安定(アルキル)アクリレート単位を好ましくは含む、(アルキル)アクリレート単位を含有するポリマーを更に含む。このようなポリマーは、例えば、(特許文献6)、(特許文献7)及び(特許文献8)、並びに(特許文献9)に記載されている。他の適切なマトリックスポリマーは、例えば、任意に置換されたノルボルネンなどの非芳香族環状オレフィン(環内二重結合)の重合単位を含有するもの、例えば、(特許文献10)及び(特許文献11)に記載されているポリマーを含む。更に他の適切なマトリックスポリマーは、(特許文献12)及び(特許文献13)に開示されているなどの、重合酸無水物単位、特に重合無水マレイン酸及び/又はイタコン酸無水物単位を含有するポリマーを含む。
【0053】
ヘテロ原子、特に酸素及び/又は硫黄を含有する繰り返し単位(しかし無水物以外の、即ち、単位はケト環原子を含有しない)を含有する樹脂もまた、マトリックスポリマーとして適している。ヘテロ脂環式単位はポリマーの主鎖に縮合することができ、ノルボルネン基の重合によって提供されるような縮合炭素脂環式単位及び/又は無水マレイン酸又は無水イタコン酸の重合によって提供されるような無水物単位を含むことができる。このようなポリマーは、(特許文献14)及び(特許文献15)に開示されている。他の適したヘテロ原子基含有マトリックスポリマーは、(特許文献16)に開示されているような、1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素又は硫黄)含有基、例えば、ヒドロキシナフチル基で置換された重合炭素環アリール単位を含有するポリマーを含む。
【0054】
上記のマトリックスポリマーの2つ以上のブレンドを好適にはフォトレジスト組成物に使用することができる。
【0055】
フォトレジスト組成物に使用するための適切なマトリックスポリマーは市販されており、当業者によって容易に製造することができる。マトリックスポリマーは、レジストの露光されたコーティング層を適切な現像剤溶液中で現像可能にするのに十分な量でレジスト組成物中に存在する。典型的には、マトリックスポリマーは、レジスト組成物の全固形分に基づいて、50~95重量%の量で組成物中に存在する。マトリックスポリマーの重量平均分子量Mwは、典型的には、100,000未満、例えば、5000~100,000、より典型的に5000~15,000である。
【0056】
フォトレジスト組成物は、活性化放射線への露光時に組成物のコーティング層に潜像を生じるために十分な量で使用される光酸発生剤(PAG)などの光活性成分を更に含む。例えば、光酸発生剤は好適には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、約1~20重量%の量で存在している。典型的には、非化学増幅型材料と比較して化学増幅型レジストのためにPAGのより少ない量が適している。適切なPAGは、化学増幅型フォトレジストの技術分野において公知であり、例えば、トップコート組成物に関して上で記載されたものを含む。
【0057】
フォトレジスト組成物のための適切な溶媒は、例えば:2-メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルラクテート及びエチルラクテートなどのラクテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、エチルエトキシプロピオネートなどのプロピオネート、及びメチル-2-ヒドロキシイソブチレート、メチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、並びにアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及び2-ヘプタノンなどのケトンを含む。上で記載された溶媒の2つ、3つ以上のブレンドなどの溶媒のブレンドもまた適している。溶媒は、典型的には、フォトレジスト組成物の全重量に基づいて、90~99重量%、より典型的には95~98重量%の量で組成物中に存在する。
【0058】
フォトレジスト組成物はまた、他の任意の材料を含むことができる。例えば、組成物は、化学線染料及び造影剤、ストリエーション防止剤、可塑剤、速度向上剤、増感剤等の1つ以上を含むことができる。使用される場合、このような任意の添加剤は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、0.1~10重量%などの少量で組成物中に存在する。
【0059】
レジスト組成物の好ましい任意の添加剤は、添加塩基である。適切な塩基は、当技術分野において公知であり、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N1,N1,N3,N3-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル-)プロパン-2-イルカルバメートなどの直鎖状及び環状アミド及びこれらの誘導体、ピリジン、及びジ-tert-ブチルピリジンなどの芳香族アミン、トリイソプロパノールアミン、n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシ-エチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザントリイル))テトラエタノール、及び2-(ジブチルアミノ)エタノール、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノールなどの脂肪族アミン、1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、1-ピロリジンカルボン酸tert-ブチル、2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボン酸tert-ブチル、ピペラジン-1,4-ジカルボキン酸ジ-tert-ブチル及びN(2-アセトキシ-エチル)モルホリンなどの環状脂肪族アミンを含む。添加塩基は好適には、比較的少量において、例えば、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、0.01~5重量%、好ましくは0.1~2重量%において使用される。
【0060】
フォトレジストは公知の手順に従って調製することができる。例えば、レジストは、フォトレジストの固形成分を溶媒成分中に溶解させることによってコーティング組成物として調製することができる。フォトレジストの所望の全固形分含有量は、組成物中の特定のポリマー、最終層厚さ及び露光波長などの要因に依存するであろう。典型的には、フォトレジストの固形分は、フォトレジスト組成物の全重量に基づいて1~10重量%、より典型的に2~5重量%変動する。
【0061】
リソグラフィー加工
スピンコーティング、浸漬、ローラーコーティング又は他の従来のコーティング技術によるなどで液体フォトレジスト組成物を基材に塗布することができ、スピンコーティングが典型的である。スピンコーティングの場合、利用される特定のスピニング装置、溶液の粘度、スピナーの速度及びスピニングのために考慮される時間量に基づいて所望のフィルムの厚さを提供するためにコーティング溶液の固形分を調節することができる。
【0062】
本発明の方法において使用されるフォトレジスト組成物は、好適には、フォトレジストを適用するための従来の方法で基材に適用される。例えば、マイクロプロセッサー又は他の集積回路部品の製造のために表面上に特徴を有するシリコンウェハー又は1つ以上の層でコーティングされたシリコンウェハーの上に組成物を適用することができる。また、アルミニウム-酸化アルミニウム、ヒ化ガリウム、セラミック、石英、銅、ガラス基材等を好適には使用することができる。フォトレジスト組成物は典型的に、反射防止層、例えば、有機反射防止層の上に適用される。
【0063】
本発明のトップコート組成物をフォトレジスト組成物に関して上に記載されたような任意の適した方法によってフォトレジスト組成物の上に適用することができ、スピンコーティングが典型的である。
【0064】
フォトレジストを表面上にコートした後、それを加熱して(ソフトベークして)、典型的には、フォトレジストコーティングが不粘着性になるまで溶媒を除去することができ、又はトップコート組成物が適用された後にフォトレジスト層が乾燥されることができ、フォトレジスト組成物及びトップコート組成物層の両方の溶媒が単一熱処理工程において実質的に除去されることができる。
【0065】
次いで、オーバーコーティングされたトップコート層を有するフォトレジスト層は、フォトレジストの光活性成分のために活性化する放射線にパターン化フォトマスクを通して露光される。露光は典型的には、液浸スキャナーを使用して行われるが、代わりに乾燥(非液浸)露光ツールを使用して行なうことができる。
【0066】
露光工程中、フォトレジスト組成物層は、活性化放射線にパターン通りに露光されて、露光領域と未露光領域との間の溶解度に差が生じる。組成物のために活性化する放射線にフォトレジスト組成物を露光することへの本明細書での言及は、放射線がフォトレジスト組成物に潜像を形成できることを示す。露光は、典型的には、レジスト層の露光領域と非露光領域とにそれぞれ対応する、光学的に透明な領域と光学的に不透明な領域とを有するパターン化フォトマスクを通して行われる。代わりに、このような露光は、典型的には電子ビームリソグラフィーのために用いられる、直接描画法において、フォトマスクなしで行われ得る。活性化放射は、典型的には、248nm、193nmなどの300nm未満の波長、又は13.5nmなどのEUV波長を有し、193nm液浸リソグラフィーが典型的である。露光に続いて、組成物の層は、典型的には、約70℃~約160℃の範囲の温度でべークされる。
【0067】
その後、フィルムは、典型的には、例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液、典型的には、0.26Nの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液などの4級水酸化アンモニウム溶液、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、又はメチルジエチルアミンなどのアミン溶液、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンなどのアルコールアミン、ピロール又はピリジンなどの環状アミンから選択された水性塩基現像剤で処理することによって現像される。一般に、現像は、当技術分野において認められている手順に従う。
【0068】
フォトレジスト層の現像後に、現像された基材は、例えば、当技術分野に公知の手順に従ってレジストの露出された基材領域を化学的にエッチング又はめっきすることによって、レジストの露出されたこれらの領域上で選択的に加工されることができる。このような加工の後、基材上に残っているレジストは、公知の剥離手順を使用して除去することができる。
【0069】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するものである。
【実施例】
【0070】
ポリマーの合成:
以下のモノマーを使用して、下記のポリマーを調製した。実施例におけるモノマー比は、ポリマーのモル百分率(モル%)に基づいて提供される。
【化12】
各ポリマーの、NMRで決定された組成比、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算値で決定された重量平均分子量Mw及び多分散度(PDI=Mw/Mn)を表1に示す。
【0071】
実施例1(ポリマーP1)
反応容器に618.4gのメチルイソブチルカルビノール(MIBC)を入れ、約2.5時間に渡って90℃に加熱した。モノマー供給溶液は、267.6gのMIBCと263.2gのモノマーM6とを組み合わせることによって調製した。340.2gのMIBCと10.52gのV-601開始剤(FUFILM Wako Pure Chemical Corp.)を組み合わせることによって、開始剤供給溶液を調製した。容器内のMIBCが89.5℃に達したとき、モノマー供給溶液及び開始剤供給溶液を反応容器に導入し、それぞれ2時間及び3時間に渡って供給した。攪拌しながら反応容器を更に7時間90℃に維持し、次いで室温まで冷却してポリマーP1を固形分16.5重量%で得た。
【0072】
実施例2(ポリマーP2)
反応容器に32.53gのプロピレングリコールメチルエーテル(PGME)を入れ、97℃に加熱した。28.10gのPGME、31.17gのモノマーM6、及び3.28gのモノマーM7を組み合わせることにより、モノマー供給溶液を調製した。4.43gのPGMEと0.49gのVAZO-67開始剤(FUFILM Wako Pure Chemical Corp.)を組み合わせることによって、開始剤供給溶液を調製した。モノマー供給溶液と開始剤供給溶液を反応容器に導入し、それぞれ2時間及び3時間に渡って供給した。攪拌しながら反応容器を更に4時間97℃に維持し、次いで室温まで冷却してポリマーP2を得た。
【0073】
実施例3(ポリマーP3)
反応容器に30.0gのイソブチルイソブチレート(IBIB)を入れ、99℃に加熱した。28.57gのIBIB、40.0gのモノマーM1、及び1.44gのV-601開始剤(FUFILM Wako Pure Chemical Corp.)を組み合わせることによって、モノマー供給溶液を調製した。モノマー供給溶液を2時間に渡って反応容器に導入し、反応混合物を更に5時間加熱した。次いで、反応混合物を室温まで冷却してポリマーP3を得た。
【0074】
実施例4(ポリマーP4)
反応容器に7.0gのPGMEを入れ、90℃に加熱した。6.6gのPGME、21.21gのモノマーM1、9.24gのモノマーM2、11.55gのモノマーM4、及び1.05gのV-601開始剤(FUFILM Wako Pure Chemical Corp.)を組み合わせることによって、モノマー供給溶液を調製した。モノマー供給溶液を1.5時間に渡って反応容器に導入し、反応混合物を更に3時間加熱した。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。ポリマー溶液を2:1メタノール/H2O溶媒ブレンド中で沈殿させて、ポリマーP4を固体として得た。
【0075】
実施例5~17(ポリマーP5~P17)
ポリマーP5~P17は、ポリマーP4について記載した方法と同様の方法で合成した。
【0076】
【0077】
トップコート組成物の調製:
固体成分を表2に示される量で溶媒系に添加することによってトップコート組成物を調合した。各々の混合物を0.2μmのPTFEディスクを通して濾過した。上記のポリマーに加えて、固体成分は、以下のようなポリマーP18を含んでいた。
P18[Mw=10.76kDa、PDI=2.3]
【化13】
【0078】
デウェットコーティング欠陥試験:
120℃で30秒間ヘキサメチルジシラザンを下塗りした300mmシリコンウェハー上にTEL Lithiusウェハートラックでトップコート組成物をコーティングすることにより、コーティング欠陥試験を実施した。1.6秒のディスペンス時間及び90℃で60秒間のソフトベークを使用して組成物を385Åの厚さにコーティングした。コーティングされたトップコート層の画像は、KLA-Tencor Surfscan SP2ウェハー表面検査ツールで取得した。画像は、半径方向に延びるウェハー周辺でスパイクとして現れるコーティングの不連続性(即ち、コーティングの欠如)であるデウェット欠陥について視覚的に検査した。ウェハー上にデウェット欠陥がゼロであることが判明した場合は、良好な結果(○)と見なされ、1つ以上のコーティング欠陥は、悪い結果(×)と見なされた。結果を表2に示す。
【0079】
動的後退接触角(dRCA)試験:
200mmシリコンウェハーをTEL ACT-8ウェハートラックにおいてヘキサメチルジシラザン(HMDS)を使用して120℃で30秒間下塗りし、それぞれのトップコート組成物を385Åでコーティングし、90℃で60秒間ソフトベークした。各トップコート組成物の後退接触角(RCA)は、脱イオンミリポア濾過水を使用してKruss接触角角度計にて測定した。測定は、50μLの液滴サイズと0°(水平)傾斜から開始する1単位/秒の傾斜速度で実行した。RCAは、横方向の液滴の動きの開始時と、水滴がカメラビューから外れるまで約1度ずつ徐々に大きくなる傾斜テーブル角度(TTA)で測定した。20°TTAで行われた測定値を報告する。結果を表2に示し、81°を超えるトップコートRCAが、本発明のトップコート組成物について達成されたことが実証される。
【0080】