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特許7418553オブジェクトのマーキング、製造方法、及び認証方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】オブジェクトのマーキング、製造方法、及び認証方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/16 20060101AFI20240112BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20240112BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G06K19/16
G06K7/14 017
G06K7/14 034
G06K19/06 037
G06K19/06 065
G06K19/06 075
G06K19/06 093
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022514021
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020074092
(87)【国際公開番号】W WO2021038050
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】19194679.7
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522079377
【氏名又は名称】オーセンティック ビジョン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルグミュラー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス、トーマス
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084056(JP,A)
【文献】特表2015-526946(JP,A)
【文献】特表2015-520895(JP,A)
【文献】国際公開第2018/046746(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0034773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06K 7/00 - 7/14
G06K 19/00 - 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセキュリティ要素と少なくとも第2のセキュリティ要素とを含む複数のセキュリティ要素を備え、
前記複数のセキュリティ要素各々は、データセグメントのセットに関連付けられ、前記セキュリティ要素各々は、視角及び/又は照明方向を含む撮影条件に応じて、前記関連付けられた前記データセグメントのうちの1つを光電子的に読み取り可能な表現で表したコードセグメントを表示し、
異なる別個のデータセグメントが、異なるコードセグメントによって表されると共に、前記第1のセキュリティ要素に関連付けられたセットと前記第2のセキュリティ要素に関連付けられたセットとが、少なくとも1つのデータセグメントにおいて異なることを特徴とする、
オブジェクトマーキング。
【請求項2】
一定の照明方向に対して、前記セキュリティ要素に関連付けられた前記セット内の前記データセグメントの各々は、別個の視角領域に関連付けられ、前記別個の視角領域内で、それぞれの前記データセグメントを表す前記コードセグメントのコントラストが、同じセットからのすべての他のデータセグメントを表す前記コードセグメントのコントラストよりも高いことを特徴とする、請求項1に記載のオブジェクトマーキング。
【請求項3】
前記第1のセキュリティ要素の前記セットの前記データセグメントに関連付けられた少なくとも1つの視角領域であって、前記第2のセキュリティ要素の前記セットの前記データセグメントに関連付けられた視角領域の各々とは異なる、少なくとも1つの視角領域があることを特徴とする、請求項2に記載のオブジェクトマーキング。
【請求項4】
すべての前記コードセグメントは、予め定義された符号でそれぞれの前記データセグメントを表し、前記予め定義された符号は、前記符号により識別可能なデータセグメントの最大数を与え、前記複数のセキュリティ要素各々のデータセグメントの前記セット内のデータセグメントの数が、前記最大数の1/100未満であることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のオブジェクトマーキング。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の複数のオブジェクトマーキングを含むことを特徴とする、オブジェクトマーキングのセット。
【請求項6】
複数のセキュリティ要素を備え、基礎材料の特定の領域を、前記特定の領域が光電子的に読み取られかつ他の領域から識別され得るように前記他の領域から区切ることにより、オブジェクトマーキングを製造可能な基礎材料であって、
前記特定の領域は、第1のセキュリティ要素と少なくとも第2のセキュリティ要素とを含み、
前記複数のセキュリティ要素各々は、データセグメントのセットに関連付けられ、前記複数のセキュリティ要素各々は、視角及び/又は照明方向を含む撮影条件に応じて、前記関連付けられた前記データセグメントのうちの1つを光電子的に読み取り可能な表現で表したコードセグメントを表示し、
異なる別個のデータセグメントが、異なるコードセグメントによって表されると共に、前記第1のセキュリティ要素に関連付けられたセットと前記第2のセキュリティ要素に関連付けられたセットとが、少なくとも1つのデータセグメントにおいて異なることを特徴とする、
基礎材料。
【請求項7】
基礎材料上の前記複数のセキュリティ要素各々の位置は、モデルに従って互いに対して予め設定されており、前記複数のセキュリティ要素各々関連付けられた前記セットの前記データセグメントは、前記モデルに従って予め設定されていることを特徴とする、請求項6に記載の基礎材料。
【請求項8】
すべてのコードセグメントは、予め定義された符号でそれぞれの前記データセグメントを表し、前記予め定義された符号が、誤り検出又は誤り訂正のための情報を含むことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の基礎材料。
【請求項9】
前記予め定義された符号は、前記符号により識別可能なデータセグメントの最大数を与え、すべてのセキュリティ要素のデータセグメントの前記セット内のデータセグメントの数が、前記最大数の1/100未満であることを特徴とする、請求項8に記載の基礎材料。
【請求項10】
請求項6から請求項9までのいずれかに記載の基礎材料の特定の領域であって、光電子的に読み取られかつ他の領域から識別され得る特定の領域を含むオブジェクトマーキングを認証する方法であって、
前記特定の領域は、前記複数のセキュリティ要素のうち、第1のセキュリティ要素と、少なくとも第2のセキュリティ要素とを含み、前記方法は、
前記オブジェクトマーキングの第1の画像を、第1の角度から、又は第1の照明方向の下で撮影するステップと、
前記第1の画像内の第1のセキュリティ要素によって表示される第1のコードセグメントを識別するステップと、
前記第1のコードセグメントを復号して第1のデータセグメントを取得するステップと、
前記オブジェクトマーキングの第2の画像を、第2の角度から、又は第2の照明方向の下で撮影するステップと、
前記第2の画像内の前記第1のセキュリティ要素によって表示される第2のコードセグメントを識別するステップと、
前記第2のコードセグメントを復号して第2のデータセグメントを取得するステップと、
前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素各々関連付けられたデータセグメントのセットを記憶したモデルから、前記第1のデータセグメント及び前記第2のデータセグメントを含むデータセグメントのセットが存在するかどうかを判断するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記方法が、
前記第1の画像内又は前記第2の画像内の第2のセキュリティ要素によって表示される第3のコードセグメントを識別するステップと、
前記第3のコードセグメントを復号して第3のデータセグメントを取得するステップと、
前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素各々関連付けられたデータセグメントの前記セットを記憶し、前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素各々の互いに対する相対的な位置を記憶するモデルから、前記第1のセキュリティ要素に対して位置決めされた前記第2のセキュリティ要素が、前記第3のデータセグメントを含むデータセグメントのセットに関連付けられているかどうかを判断するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素がタイル状に配置され、前記複数のセキュリティ要素によって表示されるコードセグメントの各々がタイルアレイを形成し、1つのセキュリティ要素によって表示される前記コードセグメントが、他のセキュリティ要素によって表示される前記コードセグメントと連続して配置されており、
前記方法が、
a)前記第1の画像内の第1のサンプルタイルを識別するステップと、
b)予め定められた位置上の前記第1のサンプルタイルを含む第1のサンプルタイルアレイによって形成された前記第1の画像内の第1のサンプルコードセグメントを復号して、第1のサンプルデータセグメントを取得するステップと、
c)前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素に関連付けられたデータセグメントの前記セットを記憶したモデルから、前記第1のサンプルデータセグメントを含むデータセグメントのセットが少なくとも1つ存在するか否かを判断するステップと、
d)ステップc)においてそのようなセットが決定できない場合に、そのようなセットが見つかるまで、異なる第1のサンプルタイルを用いてステップa)~c)を繰り返すステップと、
l)現在の前記第1のサンプルコードセグメントを前記第1のコードセグメントとして識別するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記ステップl)の前に、
e)前記第2の画像内の第1のサンプルタイルを識別するステップと、
f)第1のサンプルタイルアレイによって形成された前記第2の画像内の第2のサンプルコードセグメントを復号して、第2のサンプルデータセグメントを取得するステップと、
g)前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素に関連付けられたデータセグメントの前記セットを記憶したモデルから、前記第1のサンプルデータセグメントを含む前記少なくとも1つのセットの少なくとも1つが前記第2のサンプルデータセグメントを含むか否かを判断するステップと、
h)ステップg)においてそのようなセットが決定できない場合に、そのようなセット
が見つかるまで、ステップa)~g)を繰り返すステップと、
m)現在の前記第2のサンプルコードセグメントを前記第2のコードセグメントとして識別するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記ステップl)の前に、
i)前記第1のサンプルタイルアレイに対して位置決めされた第2のサンプルタイルアレイによって形成された第3のサンプルコードセグメントを復号して、第3のサンプルデータセグメントを取得するステップと、
j)前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素に関連付けられたデータセグメントの前記セットを記憶し、前記基礎材料の前記複数のセキュリティ要素の互いに対する相対位置を記憶するモデルから、前記第3のサンプルデータセグメントが、ステップe)で予備的に識別された前記セットが属する前記セキュリティ要素に対してそれぞれ位置決めされた前記セキュリティ要素に属するデータセグメントの前記セットに含まれるかどうかを判断するステップと、
k) ステップj)においてそのようなセットが決定できない場合に、そのようなセットが見つかるまで、ステップa)~d)及びステップe)~j)を、そのようなセットが見つかるまで繰り返すステップと、
n)現在の前記第3のサンプルコードセグメントを第3のコードセグメントとして識別
するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
オブジェクトマーキングを製造する方法であって、
基礎材料の複数のセキュリティ要素を含む領域をランダムに、擬似ランダムに、又は決定法論的に選択するステップであって、前記領域が、前記複数のセキュリティ要素の少なくとも2つのセキュリティ要素を含む、ステップと、
前記選択された領域が光電子的に読み取られ、前記基礎材料の選択されていない部分から識別され得るように、前記選択された領域を前記基礎材料の選択されていない部分から区切るステップと、
を含み、
前記複数のセキュリティ要素各々は、データセグメントのセットに関連付けられ、前記セキュリティ要素各々は、視角及び/又は照明方向を含む撮影条件に応じて、前記関連付けられた前記データセグメントのうちの1つを光電子的に読み取り可能な表現で表したコードセグメントを表示し、
異なるデータセグメントは異なるコードセグメントで表され、前記複数のセキュリティ要素の前記少なくとも2つのセキュリティ要素から生成可能なペアの各々について、前記ペアの一方のセキュリティ要素に関連付けられたセットと、前記ペアの他方のセキュリティ要素に関連付けられたセットとが、少なくとも1つのデータセグメントにおいて異なることを特徴とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は第1のセキュリティ要素と少なくとも第2のセキュリティ要素とを備えるオブジェクトマーキングに関し、各セキュリティ要素はデータセグメントのセットに関連付けられ、各セキュリティ要素は撮影条件、特に視角及び/又は照明方向に応じて、それぞれのセキュリティ要素に関連付けられたセットのデータセグメントのうちの1つの光電子的な可読表現であるコードセグメントを示す。さらに、本開示は、オブジェクトマーキングのセットに関する。
【0002】
さらに、本開示は、オブジェクトマーキングを製造するための基礎材料であって、第1のセキュリティ要素及び少なくとも第2のセキュリティ要素を備え、各セキュリティ要素がデータセグメントのセットに関連付けられ、各セキュリティ要素が捕捉条件、特に視角及び/又は照明方向に応じて、それぞれのセキュリティ要素に関連付けられたセットのデータセグメントのうちの1つの光電子的な可読表現であるコードセグメントを示す、基礎材料に関する。本開示はまた、オブジェクトマーキングを認証するための認証方法、及びオブジェクトマーキングを製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
認証又は検証のための多数のタイプのオブジェクトマーキング、及びそれらのオブジェクトマーキングを製造することができる基礎材料、ならびにそれらのオブジェクトマーキングを認証又は検証するための方法が、最新技術において提案されている。例えば、国際特許出願公開第2018/046746号は、マーカ及びセキュリティ特徴を含むシート状の製品を示す。マーカは機械可読コードである。セキュリティ特徴は、マーカとは別のセキュリティデバイスによって実現される。それらは、2つの光学可変デバイス(OVD:optically variable device)を並べて配置したものであり、例えば、カメラ又は肉眼から知覚可能な異なる色変化を示す異なる回折格子をOVDとして用いている。したがって、セキュリティ特徴の存在は、2つのOVDが異なって見えることを保証することによって、カメラを備えるプログラム可能なデバイスを用いて容易に認識及び検証することができる。このセキュリティ特徴は、基本的に同じ光学可変画像を表示するが、異なる開始角度を有する。シート状製品は複数の異なるマーカを有し、各マーカは、ランダムに選択されたセキュリティ要素に隣接する。
【0004】
光学回折効果、即ち、光学的に可変なデバイスが「発する」か、又は「示すように見える」画像は、照明条件及び視角に依存する。典型的な設定では、点状光源が仮定され、セキュリティ特徴を形成する回折格子の特性は、この特定の照明シナリオ用に設計される。設計プロセスでは、所望の方法で入射光を回折するように、即ち、ある(方位角)角で特定の画像を表示するように物理的構造が開発される。より具体的には、特定の位置にある点状の光源が想定され、回折格子は、異なる特定の視角で特定の画像、例えば、特定の色又は形状などを示すように設計される。したがって、セキュリティ要素の既知の挙動は、この特定の照明シナリオに限定される。光学回折セキュリティ装置の表示画像は、本質的に照明条件及び視角に依存するので、定義された環境条件を保証することができない場合、セキュリティ特徴の実際の内容を読み取ることは、実際には本質的に困難な問題となる。したがって、光学回折セキュリティ要素は、制御されていない条件下では、少なくともある程度は、予測不可能な反応をする。この問題を克服するための典型的なアプローチは、何らかの装置又は他の手段(例えば、ユーザガイダンス、特別な動作、トレーニングなど)を提供して、設計プロセス中に使用される環境条件と少なくとも同様の条件を保証することである。本発明の主題は、検証のための制御された環境という制限を克服することである。
【0005】
国際特許出願公開第2018/046746号で紹介されたシート状製品は、特に、カメラを備えるプログラム可能なデバイスによって検証されるように、特に最適化されており、マーカは、周囲のセキュリティ特徴の所望の挙動を決定するために使用される。しかしながら、実際の制御されていない設定では、検証プロセス中に、定義された照明状況が確立され得ることは殆どない。したがって、セキュリティデバイスは、設計プロセスにおいて想定されるものとは異なる反応をする。したがって、照明に依存する光学的に可変なセキュリティデバイスから、照明に影響されない特徴を抽出することを余儀なくされる。当然ながら、これは本質的に解決するのが困難な問題であり、制御不可能な照明条件や、外部の予測不可能な要因の影響を考慮するために、検証/認証の厳密性や正確性とロバスト性との間のトレードオフが常に必要である。これは、検証設定に複数の点状光源が存在する場合、特に困難になる。また、拡散照明は、不特定多数の(弱い)点状光源として理解することができる。このような多重光源設定では、入射光が平行光ではないために、必然的に異なる回折光ビームが、カメラを備えるプログラム可能なデバイス上に重畳され、最終的に1つの角度で見える複数の重畳画像が生成される。そのため、重ね合わされた反射光をフィルタリングして識別する信頼できる方法がなく、特定の角度で正しい放射画像(emitted image)を検証することが大きな課題となる。
【0006】
従来、光学可変デバイスは、主として、光学的に好ましい効果を提供することを第1の目的として設計される。このようなデバイスのセキュリティは、主に、他の誰も製造することができない構造を使用すること、即ち、複製を困難にすることにある。検証のためには専門的な知識が必要であり、通常、回折格子の正しい物理的構造を検証するために、実験室条件下でマイクロ構造及びナノ構造を評価する。例えば、コンピュータビジョン手段による提示された画像に基づく、マクロスケールでの自動化された検証可能性は、通常は全く考慮されていない。最先端の光学可変デバイスの顕著な例として、レインボーホログラム(典型的には色彩的な反射を伴う0次/1次回折格子)、幾何学的形状のアニメーション、例えば、回転又は移動する物体、ズーム効果(ナノ構造、マイクロミラー等で生成されることが多い)などが挙げられる。このようなOVDの主な目的(即ち、光学的に目に心地よく、実験室条件下で検証可能であること)に起因して、シームレスなアニメーションや連続的な色変化を作り出すこと生成することがしばしば試みられる。そのように考えられた理想的なケースでは、従来の光学可変デバイスは、見る角度を変えることで互いに色の濃淡のある単一領域として提供される不特定多数の画像を用いて、滑らかな光学的に可変な効果を提供するように設計されている。特にレインボーホログラムでは、入射した白色光が回折格子で単に回折されるだけなので、これは物理的に実現される。それらは、滑らかな色遷移を示す1つの「画素」のみを含むので、これらのOVDは、任意の形態の異なる又は別個のデータセグメントを記憶し、符号化することはできない。
【0007】
一方、米国特許出願公開2012/0211567号では、アニメーション表示されたバーコード、特に連続する一連のバーコードが開示されており、情報列を符号化している。各バーコードが異なる視角で表示されるように、異なる視角で異なるバーコードの表示に影響を及ぼす光学層が提供される。この解決策の目的は、1つのバーコードの領域に記憶されるデータ容量を増加させることである。この目的を達成するために、理想的な照明条件が暗に想定され、実際に必要とされる。しかしながら、上述したように、このような照明条件は、おそらくデータストレージ用途では受け入れられるが、セキュリティマーキング用途では許容されない。この場合、信頼性があり利便性が高い認証はユーザに受け入れてもらうための鍵であり、最終的には詐欺及び偽造を発見するために必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、制御されていない検証環境における予測不可能な画像という固有の問題を克服することにある。特に、本開示は、検証精度及び正確さにおける妥協を少なくしながら、カメラを備えるプログラム可能なデバイスを使用してよりロバストな検証を可能にする、オブジェクトマーキングの光学的に可変なセキュリティ要素の特別な設計を提供するものとする。
【0009】
本発明は、冒頭で述べたオブジェクトマーキングを提案し、異なる別個のデータセグメントが異なるコードセグメントによって表され、第1のセキュリティ要素に関連するセットと第2のセキュリティ要素に関連するセットとが、少なくとも1つのデータセグメントにおいて異なっている。その結果、各セキュリティ要素は、撮影条件に応じて、少なくとも2つの異なるコードセグメントを表示する(即ち、その光反射特性に従って表示する)。撮影条件は、視角及び/又は照明方向を含むことができ、異なるコードセグメントを明らかにするためには、一方又は両方の変化が必要である。各コードセグメントは、データセグメントを光電子的に読み取ることができる表現である。同じデータセグメントは、1つ又は複数のコードセグメントによって表すことができる。各コードセグメントは、正確に1つのデータセグメントを表す。コードセグメントによって表されるデータセグメントは、それぞれのセキュリティ要素に関連するデータセグメントの限定されたセットに属する。第1のセキュリティ要素は、データセグメントの第1のセットに関連付けられる。第2のセキュリティ要素は、データセグメントの第2のセットに関連付けられる。各セットは、少なくとも2つのデータセグメントを含むことができる。データセグメントの第1のセットは、データセグメントの第2のセットとは異なる。例えば、第1のセット又は第2のセットのいずれかに含まれ、両方のセットには含まれないデータセグメントが少なくとも1つ存在する可能性がある。その結果、セキュリティ要素によって示されるコードセグメント、最終的にはセキュリティ要素自体が異なる。オブジェクトマーキングは、同じ意味で異なる3つ以上のセキュリティ要素を含むことができる。即ち、オブジェクトマーキングは、データセグメントの対応する数のセットに関連する3つ以上のセキュリティ要素を含むことができ、セットの各ペアは、上記定義に従って異なっている。このセキュリティ要素のグループ内では、各セキュリティ要素は、このように他のセキュリティ要素とは区別することができる。考慮されるセット間にどれだけ類似性があるか(例えば、複数のセット内のデータセグメントの数又は比率)に応じて、対応する数の撮影条件の下でそれらのコードセグメントの1つ又は複数を読み取ることによって、そのようなグループ内の任意の2つのセキュリティ要素を区別することが可能である。各セキュリティ要素が示すコードセグメントの最大数はあらかじめ定義されている可能性があり、少なくともこの数のコードセグメントが任意の2つのセキュリティ要素から読み取られたときに、それらを区別することが可能である。
【0010】
本開示の範囲を限定することなく、オブジェクトマーキングはさらに、類似のセキュリティ要素、即ち、データセグメントの同じセットに関連する2つ以上のセキュリティ要素を含んでもよい。類似のセキュリティ要素のグループが複数ある場合、それらのグループは、それらのサイズ(即ち、セキュリティ要素の数)及び/又はそれらのメンバー間の相対的な配置(例えば、同じグループからのセキュリティ要素間の距離や、同じグループからの最近接の方向なお)が異なっていてもよい。これらの特性及び測定は、別個であるが類似のセキュリティ要素が、それぞれの隣接する(又は連続する)非類似のセキュリティ要素によって区別され得ることを提供する。言い換えれば、隣接する(又は連続する)異なるセキュリティ要素を読み取ることが可能である場合、類似のセキュリティ要素であっても区別できる場合が多い。本質的には、関連するセキュリティ要素の幾何学的距離に基づいて、データセグメントの2つ以上のセットが結合される。そして、第1の結合されたセットと第2の結合されたセットとは、少なくとも1つのデータセグメントにおいて異なっている。この場合の理解を容易にするために、セキュリティ要素の様々な「近傍」を参照する。
【0011】
異なるセキュリティ要素又は異なる近傍領域を区別することを利用して、所与の基礎材料から製造することができるオブジェクトマーキングの多様性を増大させることができる。多様性の増加は、任意の2つの真正なオブジェクトマーキングが同一又は類似している可能性が低くなることを意味する。オブジェクトマーキングを偽造するための労力は、偽造しなければならない異なるインスタンスの数に比例する。なぜなら、同じインスタンスを複製することは、一般に、比較的少ない労力しか必要としないからである。好ましい設定では、これは同一、の区別できないパターン(つまり、本質的に物理的な真正品のレプリカ)を用いて検証されたオブジェクトマーキングの相対頻度を観察することによって達成することができる。この観察は、カメラを備えた単一の検証デバイスからすべての検証を撮影することによって、又はカメラを含む複数のプログラム可能なデバイスの検証データが撮影されるデータベースから行うことができる。真正品のレプリカの確率が低いため、レプリカの頻度に低い閾値が存在する可能性があり、したがって、平均を超える数のレプリカを生成するために使用される場合、偽造を容易に検出することができる。したがって、多様性が高くなれば、簡単に検出される危険が無い偽造をよりコストがかかり、最終的には魅力的でないものにする。
【0012】
本発明はさらに、上記で定義された数のオブジェクトマーキングを含むオブジェクトマーキングのセットを提案する。例えば、セットは、上記で定義されたタイプの2つ以上のオブジェクトマーキングを含む。オブジェクトマーキングのセットは、特に、100を超える、1000を超える、又は10000を超えるオブジェクトマーキングを含む場合、単一のオブジェクトマーキングの統計的特性を示す。具体的には、例えば、データセグメントの任意の特定のセットを有するセキュリティ要素の平均繰り返し率、又はデータセグメントの任意の特定の近傍又は結合されたセットの繰り返し率は、オブジェクトマーキングのセットから決定することができ、さもなければ、セットサイズはそのような繰り返し頻度の上限の境界を決定する。言い換えれば、セットの統計的特性は、上述した多様性の定量的かつ測定可能な表現である。
【0013】
さらに、本発明は、冒頭に述べたような基礎材料を提案し、異なる別個のデータセグメントが異なるコードセグメントによって表され、第1のセキュリティ要素に関連するセットと第2のセキュリティ要素に関連するセットとは、少なくとも1つのデータセグメントにおいて異なっている。基礎材料は、オブジェクトマーキングを製造するために提供される。任意選択で、基礎材料は、少なくとも2つのオブジェクトマーキング、又は少なくとも3つ以上のオブジェクトマーキングを製造するのに十分な数のセキュリティ要素を含んでいる。例えば、基礎材料は、2つのセキュリティ要素を大幅に超えるセキュリティ要素の二次元アレイ、例えば、少なくとも5×5のセキュリティ要素のアレイ、又は少なくとも10×10のセキュリティ要素のアレイ、又は少なくとも20×20のセキュリティ要素のアレイから構成されてもよい。本開示の範囲を限定することなく、基礎材料は、上記の単一のオブジェクトマーキングについて説明したように、さらに同様のセキュリティ要素、即ち、データセグメントの同じセットに関連付けられた2つ以上のセキュリティ要素を含むことができる。区別可能な「近傍」に関して、上述した単一のオブジェクトマーキングについて説明したことはすべて、類似の可能性として基礎材料にも適用される。さらに、再び本開示の範囲を限定することなく、基礎材料は、セキュリティ要素の繰り返しシーケンスを有することができ、繰り返し周期、即ちセキュリティ要素の繰り返しインスタンス間の距離は、単一のオブジェクトマーキングの寸法よりも著しく大きく、例えば少なくとも10倍大きいか、又は少なくとも100倍大きい。
【0014】
さらに、本開示の範囲を限定することなく、本発明は、少なくとも2つの異なるセキュリティ要素をランダム又は擬似ランダムに組み合わせることによって、オブジェクトマーキングを製造する方法を提案する。ランダムな組み合わせは、区別可能なセキュリティデバイスの「近傍」構成を変更することによって、即ち、異なるオブジェクトマーキングに対して異なるようにそれらを配置することによって達成されてもよい。本方法によって少なくとも2つの異なるセキュリティ要素を含むセキュリティデバイスを製造するために、区別可能なセキュリティ要素の限定されたセットからランダム又は擬似ランダムに選択し、それらを特定の幾何学的配置でランダム又は擬似ランダムに配置するように構成された装置を使用することができる。より具体的には、セキュリティ要素は、光学的に可変なデバイスを製造するのに適した任意の手段を用いて予め製造されてもよい。さらに、予め製造されたセキュリティ要素を、(オブジェクトマーキングを形成する)担体材料又はオブジェクト自体に転写するのに適した任意の登録転写プロセスを使用することができる。例えば、登録されたホットスタンピング又はコールドスタンピング、デジタルコールドフォイルなどを使用して、少なくとも2つのOVD様のセキュリティ要素を担体材料又はオブジェクトに転写して、本発明によるセキュリティデバイス及びオブジェクトマーキングを製造することができる。
【0015】
本発明はまた、オブジェクトマーキングを認証するための対応する方法を提案し、オブジェクトマーキングは、基礎材料の光電子的に識別可能に区切られた領域(例えば、オブジェクトマーキングを、任意選択で担体材料上に、又は直接オブジェクト上に形成する)を含み、基礎材料は上記で開示されたような基礎材料であり、領域は、第1のセキュリティ要素と、少なくとも第2のセキュリティ要素とを含み、
この方法は、
オブジェクトマーキングの第1の画像を、第1の角度から、又は第1の照明方向の下で撮影するステップと、
第1の画像内の第1のセキュリティ要素によって表示される第1のコードセグメントを識別するステップと、
第1のコードセグメントを復号して第1のデータセグメントを取得するステップと、
オブジェクトマーキングの第2の画像を、第2の角度から、又は第2の照明方向の下で撮影するステップと、
第2の画像内の第1のセキュリティ要素によって表示される第2のコードセグメントを識別するステップと、
第2のコードセグメントを復号して第2のデータセグメントを取得するステップと、
基礎材料のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶したモデルから、第1のデータセグメント及び第2のデータセグメントを含むデータセグメントのセットが存在するかどうかを判断するステップと、
を含む。
【0016】
上記の方法は、本質的に、第1のセキュリティ要素に含まれるデータセグメントの組み合わせが、データセグメントのすべての有効なセットの定義を含む記憶されたモデルに従って、データセグメントの対応するセットを有するかどうかを確認する。一致するものが見つからない場合、即ち、対応するセットが見つからない場合、セキュリティ要素は偽造されたオブジェクトマーキングに属している可能性がある。
【0017】
特定のセキュリティ要素の認証のために、その特定のセキュリティ要素について、すべての可能なコードセグメントのうち少なくとも2つのコードセグメントのサブセットのみを観察することで十分な場合がある。好ましい設定では、認証方法は、その特定のセキュリティ要素についてのM個の可能なコードセグメント(モデルから既知)のうちのN個のコードセグメントが、異なる角度から又は異なる撮影条件(例えば、照明)下で観察されたときに、真正性を確認するように設定されてもよい。
【0018】
パラメータN及びMの例は、以下の通りである。
N=2(Nは2以上でなければならない)、M=5(MはN以上でなければならない、例えば、M=N+1、M=N+2、M=N+3、M=N+4)である。すべてのコードセグメントは独立しているので、M=5のうちのどのN=2が復号されるかは問題ではない。任意の組み合わせで十分である。
【0019】
一般に、特定のセキュリティ要素の2つ以上の異なるコードセグメントを観察するには、照明の方向(例えば、光源及びセキュリティ要素の配置)は変更しないままで、視角を変更すれば十分であり得る。
【0020】
最後に、本発明は、オブジェクトマーキングを製造する方法を提案する。
この方法は、基礎材料の領域をランダムに、擬似ランダムに、又は決定法論的に選択するステップであって、基礎材料は本明細書に開示されるような基礎材料であり、選択された領域は第1のセキュリティ要素と少なくとも第2のセキュリティ要素とを含む、ステップと、選択された領域を、基礎材料の選択されていない部分から光電子的に識別可能に区切るステップと、を含む。
【0021】
基礎材料の領域を選択するための方法は、結果として得られるオブジェクトマーキングの多様性に寄与することができる。ランダム及び擬似ランダムな選択は、正当な比較的高い繰り返し率を有する不注意な繰り返しが生じないことを保証する。したがって、これらの手段は、多様性をさらに増加させる。選択領域の形状、寸法、又は任意の他の光電子的に読み取り可能な特性を変化させることができる。選択は、基礎材料からのカット又はスタンピング、複数のセキュリティ要素をオブジェクト上に直接結合するか、又は基礎材料を部分的にオーバープリントし、ネガティブ選択マスクを使用して、基礎材料がこのマスキングされた領域内でのみ見えるようにすることによって行うことができる。
【0022】
別の好ましい設定では、モデルを通して、基礎材料内からの選択位置が既知であるので、提案された基礎材料は、国際公開第2015/079014号公報に提案されているようなセキュリティデバイスを製造するために使用され、及び/又は例えば国際公開第2013/188897号公報に照会されているようなセキュリティシステムにおいて使用されるために、特に好適である。このような特定の設定において、例えば製造公差に起因する、選択プロセスを通して導入されるランダム性は、本質的に基礎材料をマッピングする、モデルからの先験的な既知の幾何学的情報と結合される。
【0023】
セキュリティ要素が、例えば、虹色効果、即ち滑らかな色変化を有するセキュリティ要素の代わりに、データセグメントを光電子的に表すコードセグメントを表示することを提供することによって、オブジェクトマーキングの認証は、はるかにロバストになる。その理由は、コードセグメントが実際に有効なデータセグメントを表しているかどうかを判断できるためである。ランダムな照明条件や拡散照明条件によって、無効なセキュリティ要素が有効なデータセグメントを表すコードセグメントを誤って表示する可能性は、無効なカラーシフト画像や単純な幾何学的形状が、有効な画像を誤って表示する可能性よりもはるかに低い。さらに、データセグメントを表すコードセグメントを表示するセキュリティ要素によって、コードセグメントを走査することから、オリジナルの基礎材料におけるそのコードセグメントの位置(又は少数の有効な位置のうちの1つ)を決定することができ、データセグメント(又は近傍領域)のセットと位置とを関連付けるモデルを介して、その有効性を検証することができる。言い換えれば、セキュリティ要素は、モデル内のランドマークとして使用される(例えば、オブジェクトマーキングが製造される基礎材料をマッピングする)。セキュリティ要素は少なくとも1つのデータセグメントにおいて異なるので、撮影条件を変化させることによって位置を決定することができる。代替的に又は追加的に、セットに応じて、第1のセキュリティ要素と第2のセキュリティ要素とを単一の撮影条件のみの下で撮影し、(隣接する又は連続するセキュリティ要素の)隣接するセットの対応する組み合わせを探すことによって、位置を決定することもできる。その場合、「近傍」は、モデル内のランドマークとして機能することができる。この設定における少なくとも1つのセキュリティ要素の検証のために、少なくとも第2のコードセグメント(及び対応するデータセグメント)が、実際にOVDが存在することを保証するために(かつ、例えば、単一の撮影環境からのOVDを表す印刷されたレプリカではないことを保証するために)、少なくとも第2の異なる撮影環境から観察される必要があることは注目に値する。さらに、本明細書で開示されるオブジェクトマーキング、特にセキュリティ要素は、従来のバーコードよりも多くの情報を符号化するためにアニメーション化されたバーコードの使用を可能にしないことに注目すべきである。代わりに、認証のためにアニメーションバーコードを使用することができる。
【0024】
撮影条件に応じてコードセグメントを表示することは、それぞれのコードセグメントが少なくとも何らかの形態で物理的に表示されることと理解される。特に、各コードセグメントに対して少なくとも1つの撮影条件が存在し、その撮影条件の下で、そのコードセグメントは、そのセキュリティ要素の他のコードセグメントから区別でき、及び/又はそのセキュリティ要素のセットのデータセグメントを表すコードセグメントから光電子的に識別できる。視角とは、オブジェクトマーキング、より具体的にはそれぞれのセキュリティ要素の視角を意味する。実際の適用では、厳密に言えば、隣接するセキュリティ要素についての視角及び撮影条件は、既にわずかに異なることに言及することが重要である。これは、従来の光学可変デバイスでは解決困難な問題である。幾何学的なオフセットが無視できるほどロバストな特性を有する光学可変デバイスを設計することができる。あるいは、我々の経験では実用的ではないが、第1のコードセグメントから観察された表示画像と、隣接する第2のコードセグメントの予想される表示画像を結論付けるために採用される数学的モデルとから、撮影条件が推定されてもよい。
【0025】
本開示で達成可能な1つの利点は、認証が本質的に、特定のデータセグメントが特定のセキュリティ要素のデータセグメントのセットに属するかどうかを確認することである。この検証方法は非常にロバストであり、セキュリティデバイス全体、より具体的には、オブジェクトマーキング全体の幾何学的歪みに起因して、単一の撮影画像内で生じる撮影条件の多様性を考慮する必要はもはやない。
【0026】
第2のセキュリティ要素のコードセグメントは、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは完全に、第1のセキュリティ要素のコードセグメントとオーバラップしていない。第1のセキュリティ要素に関連するセットからのデータセグメントを表すコードセグメントは、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは完全に、第2のセキュリティ要素に関連するセットからのデータセグメントを表すコードセグメントとオーバラップしていない。また、セキュリティ要素自体、即ち、第1のセキュリティ要素と第2のセキュリティ要素は、少なくとも部分的にオーバラップしていないか、(完全に)オーバラップしていない可能性がある。即ち、それらは、第1のセキュリティ要素と第2のセキュリティ要素との間にオーバラップが無いように配置されてもよい。それらは、例えば、隣接して、連続して、又は互いに距離を置いて配置されてもよい。
【0027】
任意選択で、各セキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットは、撮影条件全体の下で示されるコードセグメントの集合体によって光電子的に読み取り可能に表されるデータセグメントの集合体である。任意選択で、各セキュリティ要素に関連付けられたデータセグメントのセット内の各データセグメントについて、少なくとも1つの定義された撮影条件下で前記データセグメントを光電子的に読み取り可能に表す少なくとも1つのコードセグメントが存在する。即ち、各セキュリティ要素に関連するデータセグメントのセット内のデータセグメントを光電子的に読み取り可能に表す各コードセグメントは、少なくとも1つの定義された撮影条件下で前記セキュリティ要素によって表示される。
【0028】
本発明のオブジェクトマーキングの特定の実施形態によれば、一定の照明方向に対して、セキュリティ要素に関連するセット内の各データセグメント(したがって、それぞれのセキュリティ要素によって示された各コードセグメント)は、別個の視角領域に関連付けられ、その視角領域では、それぞれのデータセグメントを表すコードセグメントのコントラストは、同じセットからのすべての他のデータセグメントを表すコードセグメントのコントラストよりも高い。言い換えれば、コードセグメントは、それらが読み出されることが可能な視角範囲又は領域に関連付けられている。逆に、各視角は、1つの特定のコードセグメント(したがって、データセグメント)のみに帰属することができるが、各コードセグメントは、複数の異なる視角から見ることができる。一般に、視角範囲は実際の照明に依存し、複数の分布光源の場合には実際にオーバラップすることがある。また、実際の適用において、特定のデータセグメントは、複数の別個の視角又は視角領域に関連付けられてもよく、各視角又は視角領域は、厳密に1つのデータセグメントに排他的に帰属することができ、即ち、セキュリティ要素に関連する特定のセットのデータセグメントの間で、視角又は視角領域の相互に排他的な分布が存在してもよいことにも注目すべきである。
【0029】
この文脈では、任意選択で、第1のセキュリティ要素のセットのデータセグメントに関連する少なくとも1つの視角領域があってもよく、この視角領域は、第2のセキュリティ要素のセットのデータセグメントに関連する視角領域のそれぞれとは異なる。その結果、第1のセキュリティ要素が表示されたコードセグメントを変更する一方で、第2のセキュリティ要素が表示されたコードセグメントを変更しない、少なくとも1つの視角が存在してもよい。より一般的に言えば、切り替え特性は、第1のセキュリティ要素と第2のセキュリティ要素との間で異なっていてもよい。例えば、切り替え特性は、データセグメントの第1のセット及びデータセグメントの第2のセットの異なるサイズに起因して異なっていてもよい。例えば、データセグメントの第1のセットは9つのデータセグメントから構成されてもよく、データセグメントの第2のセットは18のデータセグメントから構成されてもよく、第1のセキュリティ要素は0°と180°との間で20°ごとに異なるコードセグメントを示し(即ち、切り替えを行う)、第2のセキュリティ要素は0°と180°との間で10°ごとに異なるコードセグメントを示す(即ち、切り替えを行う)。
【0030】
各コードセグメントは、構造化画像、特にバーコード様構造、好ましくは二次元コード、より好ましくは二次元アレイコードであってもよい。これらのタイプの画像は、光電子的に読み取るのが比較的容易である。特に、構造化画像は、異なる照明条件下で構造を識別するのに十分なコントラストを与えることができる。
【0031】
より具体的には、各コードセグメントは二次元アレイコードであってもよい。各コードセグメントはタイルアレイであり、データセグメントは、コードセグメントの各タイルが、少なくとも2つの光学的に区別可能な状態(例えば、暗い状態、明るい状態、黒い状態、又は白い状態)のうちの1つを取ることによって、コードセグメントによって表される。また、第1のセキュリティ要素によって表示されるコードセグメントは、第2のセキュリティ要素によって示されるコードセグメントに連続して配置される。二次元アレイコードは、連続するコードセグメントのタイル間に区切りを設けることなく、及び/又はパターンを見つけることなく行うことができる。
【0032】
本開示の一実施形態によれば、すべてのコードセグメントは、予め定義された符号でそれぞれのデータセグメントを表すことができ、予め定義された符号は、好ましくは誤り検出又は誤り訂正のための情報を含んでいる。
【0033】
任意選択で、予め定義された符号は、可能な異なるデータセグメントの最大数を可能にすることができ、各セキュリティ要素のデータセグメントのセット内のデータセグメントの数が、可能な異なるデータセグメントの最大数の1/100未満、好ましくは1/1000未満、より好ましくは1/10000未満とすることができる。言い換えれば、可能なデータセグメント(及び、結果的に、コードセグメント)の一部のみが実際に使用されてもよい。読み取りエラー(reading error)がコードセグメントのすべての部分に略等しく関係すると仮定すると、読み取りエラーは、使用されていないデータセグメントを読み取る可能性が高いので、これを使用して読み取りエラーを検出することができる。この点において、使用されるデータセグメントは、例えば、それらを表すコードセグメントが2つ以上のタイル(タイル化された2Dアレイコードの場合)、好ましくは2つ以上のタイルにおいて異なるように選択することができ、その結果、1つのタイルが反転すると未使用のデータセグメントとなり、検出可能な読み取りエラーとなる。
【0034】
セキュリティ要素の互いに対する位置は、予め決定されていてもよい。これらの位置は、例えば、モデルに格納され、他の(少なくとも部分的に)類似したセキュリティデバイスの近傍を識別し、区別するために使用されてもよく、したがって、区別可能なオブジェクトマーキングの多様性を向上させることができる。
【0035】
したがって、基礎材料に関して、基礎材料上のセキュリティ要素の位置は、モデルに従って互いに対して予め決定されてもよく、セキュリティ要素に関連するセットのデータセグメントは、モデルに従って予め決定されてもよい。
【0036】
したがって、オブジェクトマーキングが、セキュリティ要素を、ランダムに、擬似ランダムに、又は決定論的に幾何学的配置に配置することによって製造される場合、前記セキュリティ要素の位置は、モデル又はデータベースに記録される場合がある。この情報は、検証中にアクセスすることができる。
【0037】
任意選択で、すべてのコードセグメントは、予め定義された符号でそれぞれのデータセグメントを表すことができ、予め定義された符号は、好ましくは誤り検出又は誤り訂正のための情報を含む。誤り検出は、関連するコードセグメントの再読み取り(即ち、繰り返し読み取りを試みること)をトリガするのに特に有用であり、このような再読み取りは、一般に、異なる照明条件下で有利に行われ、同じ読み取りエラーが繰り返されない可能性を増大させる。誤り訂正は、コードセグメントのよりロバストな光電子的な読み取りを提供し、コードセグメントの小さい部分の読み取りエラーはしばしば許容され得る。このように、誤り検出と誤り訂正の両方が、読み取りのロバスト性に寄与する。これにより、真正のオブジェクトマーキングが拒絶される(誤った拒絶)可能性が低くなる。特に、周知の誤り訂正符号、例えばリードソロモン符号を使用すると、例えば16ビットなどの非常に小さいデータセグメントで使用された場合、誤り訂正の容量が大きいため、誤った復号(false-decode)に対して脆弱であることが知られていることに言及する価値がある。
【0038】
単一のオブジェクトマーキングについて上述したことの拡張として、予め定義された符号は、可能な異なるデータセグメントの最大数を可能にし、すべてのセキュリティ要素のデータセグメントのセット内の(即ち、基礎材料上の)別個のデータセグメントの数は、可能な異なるデータセグメントの最大数の1/100未満、好ましくは1/1000未満、より好ましくは1/10000未満であってもよい。データセグメントのこの疎な使用は、上述のように、誤り訂正符号における非常に小さいデータセグメントによる既知の脆弱性に対する誤った拒絶の数をさらに最小限に抑えるために利用することができる。
【0039】
オブジェクトマーキングを認証するための方法に関して、
本方法は、
第1の画像内又は第2の画像内の第2のセキュリティ要素によって表示される第3のコードセグメントを識別するステップと、
第3のコードセグメントを復号して第3のデータセグメントを取得するステップと、
基礎材料のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶し、基礎材料のセキュリティ要素の互いに対する相対的な位置を記憶するモデルから、第1のセキュリティ要素に対して位置決めされた第2のセキュリティ要素が、第3のデータセグメントを含むデータセグメントのセットに関連付けられているかどうかを判断するステップと、
をさらに含むことができる。
この例では、第2のセキュリティ要素の光学可変性が検証され、さらに、含まれる情報は、オブジェクトマーキングの多様性を向上させるために使用される。
【0040】
本方法の認証方法の特定の実施形態によれば、オブジェクトマーキングが一部を構成する基礎材料のセキュリティ要素は、タイル状に配置されていてもよく、セキュリティ要素によって表示されるコードセグメントの各々が、タイルアレイであり、1つのセキュリティ要素によって表示されるコードセグメントが、より大きなタイルアレイが形成されるように、他のセキュリティ要素によって表示されるコードセグメントと連続して配置されている。
【0041】
本方法は、
a)第1の画像内の第1のサンプルタイルを識別するステップと、
b)予め定められた位置上の第1のサンプルタイルを含む第1のサンプルタイルアレイによって形成された第1の画像内の第1のサンプルコードセグメントを復号して、第1のサンプルデータセグメントを取得するステップと、
c)基礎材料のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶したモデルから、第1のサンプルデータセグメントを含むデータセグメントのセットが少なくとも1つ存在するか否かを判断するステップと、
d)ステップc)においてそのようなセットが決定できない場合に、そのようなセットが見つかるまで、異なる第1のサンプルタイルを用いてステップa)~c)を繰り返すステップと、
l)現在の第1のサンプルコードセグメントを第1のコードセグメントとして識別するステップと、
をさらに含むことができる。
【0042】
任意選択で、より具体的には、本方法は、ステップ1)の前に、
e)第2の画像内の第1のサンプルタイルを識別するステップと、
f)第1のサンプルタイルアレイによって形成された第2の画像内の第2のサンプルコードセグメントを復号して、第2のサンプルデータセグメントを取得するステップと、
g)基礎材料のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶したモデルから、第1のサンプルデータセグメントを含む少なくとも1つのセットの少なくとも1つが第2のサンプルデータセグメントを含むか否かを判断するステップと、
h)ステップg)においてそのようなセットが決定できない場合に、そのようなセットが見つかるまで、ステップa)~g)を繰り返すステップと、
m)現在の第2のサンプルコードセグメントを第2のコードセグメントとして識別するステップと、
をさらに含むことができる。
【0043】
最後に、任意選択で認証方法をさらに改良するために、本方法はステップl)の前に、適用可能な場合には、ステップm)の前に、
i)第1のサンプルタイルアレイに対して位置決めされた第2のサンプルタイルアレイによって形成された第3のサンプルコードセグメントを復号して、第3のサンプルデータセグメントを取得するステップと、
j)基礎材料のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶し、基礎材料のセキュリティ要素の互いに対する相対位置を記憶するモデルから、第3のサンプルデータセグメントが、ステップe)で予備的に識別されたセットが属するセキュリティ要素に対してそれぞれ位置決めされたセキュリティ要素に属するデータセグメントのセットに含まれるかどうかを判断するステップと、
k) ステップj)においてそのようなセットが決定できない場合に、そのようなセットが見つかるまで、ステップa)~d)及びステップe)~j)、好ましくはステップe)~h)を、そのようなセットが見つかるまで繰り返すステップと、
n)現在の第3のサンプルコードセグメントを第3のコードセグメントとして識別するステップと、
をさらに含むことができる。
【0044】
ここで、図面を参照する。図面は、本開示を説明するためのものであり、本開示を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1a図1aは6つの完全なセキュリティ要素を有する本開示によるオブジェクトマーキングを製造するための基礎材料の第1の実施形態を概略的に示し、オブジェクトマーキングの下には、セキュリティ要素の2つに関連する2組のデータセグメントを視覚的に示す。
図1b図1bはオブジェクトマーキングを模式的に示し、3つの異なる視角で表示されるコードセグメントを示す。
図2図2はオブジェクトマーキングを製造するための本開示による基礎材料の第2の実施形態を概略的に示し、16個のセキュリティデバイスがコードセグメントとして二次元アレイコードを示し、ここでは、異なる視角でのコードセグメントが示されている。
図3a図3aは本開示によるオブジェクトマーキングの認証方法を模式的に示す。
図3b図3bは本開示によるオブジェクトマーキングの認証方法を模式的に示す。
図3c図3cは本開示によるオブジェクトマーキングの認証方法を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示による基礎材料(basis material)1、ひいてはオブジェクトマーキング8の基本構成要素として、第1の実施形態では、カメラを含むプログラム可能なデバイスで検証可能であるように最適化されたセキュリティ要素2が提案されている。基礎材料1のセキュリティ要素2は、それぞれ非常に限定された、識別可能な画像の離散的なセットを表示することしかできない。これは、照明の設定と視角の組み合わせの数が不定であるために、この限定されたセットの各画像は、複数の視角から見えることを意味する。実際には、そのようなセキュリティデバイス2は、(方位角の)角度の範囲に対して特定の画像を示す、即ち±5度に対して同じ画像を示す光学素子を作成することによって設計されてもよい。これは、レンチキュラーレンズ、回折格子、マイクロミラーやマイクロレンズ、ナノ構造などを用いて実現することができる。
【0047】
セキュリティ要素の表示画像は、「従来の」意味での画像、例えば、幾何学的形状、形状の組み合わせ、異なる色、ピクセル化された画像などとすることができる。本開示では、これらの画像は、コードセグメントとも呼ばれる。続いて、基礎材料(通常、シート状製品)の異なる可能な構造と、本開示の異なる実施形態とを説明する。
【0048】
本開示の主な機能の概要を説明するために、図1aでは、利用可能な画像のセットがラテン語アルファベットの小文字、即ち{a、・・・、z}の画像からなる設定を想定している。図1aはさらに、複数のセキュリティ要素2を含む、提案された基礎材料1の一部を例示的に示している。ここでは理解を容易にするために、第1のセキュリティ要素3及び第2のセキュリティ要素4に着目して説明する。
【0049】
第1のセキュリティ要素3は、見る角度に応じて、画像の第1のセット6(即ち、一般には、データセグメントの第1のセットからのデータセグメントを表すコードセグメント)のうちの1つの画像(即ち、一般には、コードセグメント)5を示すように構成される。第2のセキュリティ要素4は、見る角度に応じて、画像の第2のセット7(即ち、一般には、データセグメントの第2のセットからのデータセグメントを表すコードセグメント)のうちの1つの画像(即ち、一般には、コードセグメント)5を示すように構成される。
【0050】
2つのセット6、7における画像の数は、角度コヒーレンスと同様に異なっていてもよく、即ち、第1のセット6内の画像は、第2のセット7内の画像とは異なる切り替え特性を有していてもよい。また、セット自体が区別可能であること、即ち、すべての要素が等しくないことを条件として、特定の画像が複数のセット(例えばセット6とセット7)に現れてもよい。
【0051】
先に概説したように、基礎材料1から選択する、即ち、オブジェクトマーキング9を製造するために、様々な製造プロセスが可能である。
【0052】
図1bは、基礎材料1から選択された後の、第1のセキュリティ要素3及び第2のセキュリティ要素5を含むオブジェクトマーキング9を例示的に示す。図1bは更に、異なる角度10から見たときの前記選択の表示画像(即ち、コードセグメント)5を示す。第1の角度10αから見ると、第1のセキュリティ要素3は、第1のセキュリティ要素3に対応する画像のセット6のメンバーである画像(即ち、コード)「a」を表示する。同じ角度で見ると、第2のセキュリティ要素4は、第2のセキュリティ要素4に対応する画像のセット7のメンバーである画像(即ち、コード)「z」を表示する。
【0053】
同様に、角度10βでは、第1のセキュリティ要素3は「s」を示し、第2のセキュリティ要素4は「v」を示し、どちらも、対応する画像のセット6、7のメンバーである。利用可能な画像のセットが非常に限定されており、照明/遠近法のシナリオの可能な数は不定であるために、画像の異なる組合せ又はすべての組合せが可能になることがあることに留意されたい。例えば、角度10γの観察下では、第1のセキュリティ要素3は再び画像5として「a」(角度10αの場合と同様)を示し、第2のセキュリティ要素4は画像5として「b」を表示する。このシナリオは、基礎材料1の設計において、異なるセキュリティ要素2に対して異なる切り替え特性(即ち、異なる光学素子及び光学特性)が採用されている場合にさらに起こり得る。また、第1のセキュリティ要素3は、画像の異なるセットを有することに加えて、第2のセキュリティ要素4とは異なる切り替え特性/切り替え角度を有していてもよい。
【0054】
表記上の注意として、以降の図では分かり易くするために、異なるセキュリティ要素2を表すために大文字のA、・・・、Pを使用する。第1のセキュリティ要素3を文字「A」で表し、第2のセキュリティ要素4を文字「B」で表すことにする。画像の第1のセット6における第1の画像(即ち、コードセグメント)5は「A_1」として表記され、第2の画像は「A_2」と表記される。同様に、対応する画像の第2のセット7のうちの第2のセキュリティ要素4に対する第1の画像(即ち、コードセグメント)5は「B_1」と表記され、第2の画像は「B_2」と表記されることになる。
【0055】
最も単純な場合、各コードセグメントは、対応するデータセグメントと1:1の関係を有する。しかしながら、本開示の範囲は、複数のコードセグメント(例えば、A_1.1、A_1.2など)が同じデータセグメント(例えば、A_1)を表すことができる状況にも及ぶものである。セットに関連付けられるのは、データセグメントである。簡単にするために、以下の図面の説明に関連して、「画像」、「コードセグメント」、及び「データセグメント」という用語を同義語として使用し、「5」とラベル付けする。
【0056】
実際の適用では、特定の画像を検証又は読み取るために、カメラを備えたプログラム可能なデバイス上でコンピュータビジョン手段を使用する場合、画像の読み取り/復号自体の正確さが常に問題となる。冒頭で述べたカラーシフト画像の例は、簡単そうに聞こえるが、コンピュータビジョンの分野では、色の読み取りと(絶対的な、さらには相対的な)分類は依然として非常に難しい問題である。したがって、異なる表示画像として異なる色を選択することは推奨されない。幾何学的形状や一般に良好なコントラストを有する構造化画像は、より確実に読み取り及び復号を行うことができるが、それでも追加の対策を講じることなく、復号エラー(decoding error)を完全に回避することは不可能である。そのため、実際の適用では、一般的な画像や文字の画像(図1で使用されるような)を使用したとしても、実質的にエラーのない読み取りが必要とされる場合には、重要な問題が発生する。そして、これは本発明の目的のために本当に必要なことであり、復号された画像から、そのデータセグメント表現が特定のセキュリティ要素のデータセグメントのセットのメンバーであるか否かを判断する信頼性の高い方法が必要だからである。また、読み取りエラーのために真正なオブジェクトマーキングが拒否されることで、消費者による採用が妨げられることは、絶対に避けなければならない。
【0057】
好ましい実施形態では、画像5は、カメラを備えるプログラム可能なデバイスによって自動化された方法で、容易かつ実質的にエラーのない読み取りが可能であるように設計されている。正しい読み取りを保証するための1つの可能な手段は、チェックサム/パリティのような構造を、可能な画像の各々に埋め込むことである。この概念は、電気通信の分野では周知である。画像は、少なくとも2つの別々に読み取り可能/復号可能な部分に構造化されており、これらの部分の間には関連がある。情報技術の分野では、これらの部分はそれぞれ、「コードワード」、「ペイロード」、「パリティ」と呼ばれることが多い。コードワード/部分は、別々に読み取られて復号され、復号された結果は互いに照合される。それらが一致する場合、正しい読み取りが確認される。情報技術の分野で具現化されている代表的な方式は、チェックサム、巡回冗長検査符号(CRC)又は誤り訂正(EC)符号である。視覚的に復号可能なバーコードの分野では、特にリードソロモン符号(誤り訂正符号の一例)が一般的である。
【0058】
したがって、本開示の1つの可能な実施形態として、カメラを備えるプログラム可能なデバイスを使用してロバストな読み取り可能性/復号可能性のために最適化された画像5を使用することを提案する。直感的な選択は、誤り訂正符号、例えばリードソロモン符号で符号化されたコードワードを表す、バーコードのような構造(例えば、二次元コードやピクセル単位の構造)を使用することである。
【0059】
このような符号化は、任意の種類のデジタルデータセグメント(例えば、数字、英数字、バイナリデータなど)を符号化する可能性を提供する。好ましい設定では、数字又は英数字の識別子が二次元様の構造で符号化されてもよく、可能な画像のセットは符号化された識別子のセットに対応する。
【0060】
データマトリックス(Data Matrix)コードやQRコード(登録商標)などの標準的なバーコード構造を使用することができるが、我々は、誤り訂正符号、例えばリードソロモン符号を使用して、コードワードの構造及び配置をカスタマイズして使用することを提案する。これは、スペース及びデータ容量の点でより効率的であり、即ち、可能な画像の数を増加させる。これは、これらの標準的なバーコード構造が、バージョン情報を符号化するための特別な構造又はパターンや、画像内のコードのサイズをローカライズして決定するためのファインダパターン(Finder-patterns)などを使用していることに起因するものである。我々は、後述するように、このような構造を、一般的に使用されるファインダパターンなどを使用せずに、ローカライズして復号する方法を提案する。
【0061】
見る角度によって異なる空間的にオーバラップするリンクされたバーコード構造を、光学回折層を用いて表示することは、例えば、米国特許出願公開第2012/0211567 号公報から既に知られている。米国特許出願公開第2012/0211567号公報は、異なる角度から見たときに、異なるバーコードが表示されるように機能する光学層を使用することを提案している。これらの文献はさらに、符号化を使用して、それらの少なくとも2つの視角に依存するコードを一緒にリンクし、それらの順序を決定することを提案する。本発明の主な目的は、データ記憶容量の増加であり、したがって、異なるコードを読み取る際に、データを1つのデータセグメントに組み直す(reassemble)ためにリンクを確立する努力がなされている。
【0062】
本発明では、視角依存画像/コードセグメント/データセグメントが互いに独立していることを強調したい。さらに、本発明は、データストレージ用途(data-storage applications)とは対照的に、データセグメントの特定のセットからデータセグメントの一部分のみが復号される必要があるように設計されている。復号の順序は無関係である。なぜなら、復号されたデータセグメントが、特定のセキュリティ要素を識別するデータセグメントの特定のセットに属すること(membership)のみが重要であるためである。最後に、本発明の主題は、少なくとも1つの視角から少なくとも1つのデータセグメントを復号することによって特定のセキュリティ要素のアイデンティティを決定し、モデルからの先験的知識を使用して(好ましくは、異なる撮影条件下で他のコードセグメントを復号し、それらに対応するセットメンバシップを決定することを考慮して)基礎材料内での位置を決定することと、セキュリティ要素を識別するデータセグメントのセットとそれらの相互の幾何学的関係とを記憶することとによって、基礎材料内でのセキュリティ要素の位置を識別することである。したがって、例えば、米国特許出願公開第2012/0211567号公報とは大幅に異なり、異なるデータセグメント/コードセグメント間の関係は、データセグメント/コードセグメント自体にリンク情報や順序情報を(物理的に)符号化する代わりに、予め定めたモデルを介して決定される。
【0063】
図2は、本開示の好ましい実施形態を示す図である。可能な画像の範囲は6×6画素によって制限され、これは黒又は白のいずれかであり得る。基礎材料1は、タイル状に配置された複数のセキュリティ要素2を含む。例えば、セキュリティ要素Aとして識別される第1のセキュリティ要素3は、セキュリティ要素Bとして識別される第2のセキュリティ要素4に連続して(又は直接隣接して)配置される。セキュリティ要素2の各々は、異なる角度又は照明条件から見たときに、N個の異なる画像のうちの1つを表示する光学可変要素を具現化する。そして、セキュリティ要素Aとして識別される第1のセキュリティ要素3は、異なる撮影条件α、β、・・・・πの下で、この特定のセキュリティ要素について可能な画像のセット6において、N個の異なる画像5であるA_1、A_2、・・・、A_Nの間で切り替えることができる。第2のセキュリティ要素4に対しては、利用可能な画像B_1、B_2、・・・、B_Nを有する同様の第2の画像のセット7が定義される。
【0064】
実際の設定では、切り替え感度、即ち、切り替え効果の「速度」とロバスト性との間のトレードオフを行う必要があることに言及することが重要である。特に、拡散照明や、同様の強度を有する複数の点状光源が存在する場合、複数の画像間でクロストークが発生することがある、即ち、M個の可能な画像のセット内のN個の画像のうちの2つ以上が、異なる強度で重畳される可能性がある。この場合、誤り訂正機能は特に有用になる。なぜなら、誤り訂正機能により、重畳された画像間である程度フィルタリングすること、或いは、少なくとも現在の条件下では画像を確実に読み取ることができないと判断することを可能にするからである。
【0065】
実際の設定では、読み取りの際に複数の照明(光)源が存在することがよくある。例えば、カメラを備える検証デバイスにリンクされた専用光源が存在する場合がある、現実的な条件下で動作する場合、常に一定の環境光が残っているか、或いは、専用光源と重なる点状光源(ランプ、太陽など)が存在する場合がある。また、別の実際の設定では、専用光源ではなく、複数の「自然な」光源の重なりが存在する場合がある。さらに、カメラを備える検証デバイスに複数の専用光源を装備することが有益であり得、これらの光源は、一度に1つずつオン及びオフを切り替えることもできるが、好ましい設定では、同時にオンに切り替えられて、多かれ少なかれ指向性のある異なる光源を混在させる。
【0066】
複数の光源や拡散光によって生じる複数の画像間のクロストークは、読み出しの際に活用することができる。モデルから得られる情報に基づいて、誤り訂正機能を利用して、重畳画像を分解し、複数のコードセグメントを復号することが可能である。これにより、重畳画像が、特定のセキュリティ要素に対して利用可能なコードセグメントのセットに属する、少なくとも2つの異なるコードセグメントにうまく分解され得る場合には、特定の状況下で1枚の撮影画像からセキュリティ要素を検証することができる。
【0067】
このような分解を達成するための非常に簡単な方法は、以下の通りである。
- 重畳画像から重畳画像内の支配的なコードセグメントの強度を決定する。
(例えば、グレースケール値及びヒストグラム分析によって)
- 他のすべての強度をフィルタリングして、顕著なコードセグメントを分離する。
- 分離された顕著なコードセグメントを復号する。
- 対応するセキュリティ要素、したがって特定のセキュリティ要素で使用可能なコードセグメントのセットを決定する。
- 他の可能性のある強度についても同様に進め、復号を試みる。
- 第2のコードセグメントがあり、それが復号可能であり、かつ、その特定のセキュリティ要素について利用可能なコードセグメントのセットと一致する場合には、そのセキュリティ要素は、有効かつ真正であると見なすことができる。
【0068】
別の好ましい設定では、支配的なコードセグメントの強度を見つけようとせず、すべての可能な強度にわたって単純に繰り返すことができる。各強度について、「可能な」コードセグメントを分離する。それが復号可能である場合、即ち、誤り訂正及び誤り検出が成功した場合、これは有効なコードセグメントであると仮定し、対応するセキュリティ要素を決定する。次に、残りの可能な強度について繰り返し、各強度についてフィルタリングを行い、それらの強度で可能なコードセグメントの復号を試みる。コードセグメントが復号可能であり、そのコードセグメントが、対応するセキュリティ要素の利用可能なコードセグメントのセットのメンバーである、少なくとも第2の強度が存在する場合、そのセキュリティ要素は真正であると見なすことができる。
【0069】
これらの各ケースにおいて、照明環境が、異なるコードセグメントを分離し、フィルタリングするのに適した光源の適切な重ね合わせを含むという前提条件の下で、セキュリティ要素(ひいては、セキュリティデバイスの少なくとも一部)の真正性を、1枚の撮影画像から検証することができる。
【0070】
この6×6画素の例では、識別可能なピクチャの数は理論的には2^36(2の36乗)である。単純な設定では、これは2^36個の異なる識別子を符号化可能であることを意味する。しかしながら、この場合、誤り訂正の余地がなく、正しい復号を保証することができない。誤り訂正符号が使用される場合、例えば、誤り訂正のために12ビットを使用し、ペイロードとして24ビットを使用すれば、識別可能な画像の数を2^24に減らすことができる。
【0071】
第1のセキュリティ要素3及び第2のセキュリティ要素4について、画像のセット6、7の各々について、少数、例えば、N=5の画像を選択した場合、これにより、単にセキュリティ要素をシート状製品上にタイル状に配置することによって、シート状製品のかなり大きな領域をすでに「符号化」することを可能にする。しかしながら、実際の用途では、特に、カメラを備える検証用のプログラム可能なデバイスとして、撮影画質が悪いスマートフォン又はタブレット端末を使用する場合、よりロバストな誤り訂正能力を必要とする。このような耐性のある高再現性の設定(例えば、16ビットのペイロード、20ビットの誤り訂正)では、かなり大量の「破壊された」データ(例えば、悪い画像品質、2値化及び分類の誤りなどに起因する)を訂正することができる。しかしながら、その代償として、誤った読み取り(false read)、即ち、誤った識別子を復号する可能性がより高くなるか、又はその可能性さえある。
【0072】
検証設定では、次いで、シート状製品のモデル、即ち、各セキュリティ要素についての可能な画像のセットを、カメラを備える検証用のプログラム可能なデバイスが利用できるようにすることが有利である。このモデルは、シート状製品を設計するためのブループリントとして提示されるので、先験的に知られている。上述したような高冗長性設定において、1つの誤った読み取りが発生する可能性があるが(確かに、すでにかなり低い確率ではあるが)、第2の復号で再び誤った読み取りが発生する可能性は極めて低く、特に、これら2回の誤った読み取りが、(例えば、2^16枚の利用可能な画像のうちの)N=5枚の画像の同じセットの2枚の画像メンバーに対応する可能性は非常に低い。したがって、同一のセキュリティ要素を異なる角度から撮影した2つの画像を使用し、両方の識別子がこの特定のセキュリティ要素を定義する画像のセットの一部であるかどうかを確認することによって、誤った読み取りをさらに削減したり、実質的に除去したりすることができる。
【0073】
代替的に又は追加的に、異なるセキュリティ要素の相対的な空間的関係を使用することができる。したがって、例えば、第1のセキュリティ要素(利用可能な画像A_1、・・・、A_Nのモデル化されたセット6を有する) で、P_2 などの誤った画像がデコードされ、隣接する第2のセキュリティ要素(B_1、・・・、B_Nのセット7を有する)で、B_2が正しくデコードされている場合、どちらか1つが誤った復号であることは、モデルから明らかである。第1の領域3がセット6(A_1、・・・、A_N)のうちの画像5にデコードされ、第2の領域4がセット7(B_1、・・・、B_N)の画像5にデコードされる場合、これは正しい読み取りが2回安全に行われたと見なすことができる。我々は、誤り検出/誤り訂正能力のない画像を使用する場合に、このような幾何学的な関係をモデルに組み込むことで、誤った復号の可能性を最小限にするのに特に有用であり得ることを強調したい。
【0074】
一般に、例えば、標準的な二次元コードフォーマットでは、6×6要素のような小さなコードは存在しない。これは単に、そのような短いペイロードでは誤った復号のリスクが高すぎて、実際の用途に適さないからである。それにもかかわらず、上記で概説したのと同様に、本開示は、画像の角度及び/又は空間的関係を利用することによって、実質的にエラーのない読み取り設定で、そのような小さなコードを使用することを可能にする。これは、カメラを備えるプログラム可能なデバイスにおいて、シート状製品の予め決定されたモデルから利用可能な先験的知識を用いることにより、復号の正確性を高めることによって可能となる。より適切なコードサイズ(例えば、10×10以上)よりも小さいこのような小さなコードを使用する利点は、少なくとも1つのセキュリティ要素を含む必要があるセキュリティデバイスがより小さくなり、それでもなお実質的にエラー無しで復号することが可能であることである。
【0075】
このような設定では、即ち、少なくとも2つのセキュリティ要素の復号を使用し、正しい復号を確認するために基礎材料のモデルを使用することで、誤った復号が発生することは事実上不可能である。
【0076】
画像を復号する、即ち、適切な画像のセットを決定する実質的にエラーの無い方法を有することは、2つの有益な設定を可能にする。
【0077】
可能な画像のセットによって特徴付けられるセキュリティ要素は、基礎材料内の絶対位置に帰属する識別子(一意的又はほぼ一意的な)として機能することができる。重要なのは、可能な画像のセットを決定し、対応するセキュリティ要素を識別するために、N個の画像すべてを復号する必要がないことに留意することである。例えば、異なる角度からの2つの画像が復号され、これら2つの画像を含むセットがシート状製品の利用可能なモデルから決定され得るならば十分である。そのセットも他のセットと同じ画像のペアを含むことができないように構造化されていることを考慮すると、この想定された実施形態では、画像のペアは、基礎材料内のすべてのセットにわたって一意であることになる。
【0078】
セキュリティ要素における符号化は、ファインダパターン、周波数パターン、又は任意のその他のセグメンテーション/ローカライゼーション手段などの、二次元コードの典型的な構造を必要としない。セキュリティ要素は、1つのセキュリティ要素が終了し、次のセキュリティ要素が開始する場所を示すインジケータなしに、タイル状に並べて配置することができる。高い特異性(誤った読み取りの可能性が低い)は、現在表示されている画像上でウィンドウを1画素ずつスライドさせることを可能にする。可能な位置のそれぞれが復号される。復号可能である(即ち、識別子が抽出される)場合、この特定の画像/識別子を含むすべての可能なセットが、モデルから事前に決定される。第2のステップでは、空間的又は角度的に異なる画像が復号される。角度の異なる画像の場合(即ち、第2の撮影画像から)、第2の復号された識別子について、すべての予め定めたセットを検索する。この第2の画像/識別子を含まないすべてのセットは、もはや候補ではない。これを繰り返し行うことによって、セキュリティ要素を識別すると同時に、他の撮影画像のその後の読み取りに対しそのセキュリティ要素の境界を定義することを可能にする、1つのセットのみが残ることになる。空間的に異なる画像を使用する場合には、同じ撮影画像を用いてもよい。以下では6×6コードを想定する。識別子を復号可能な各候補位置に対して、カメラを備えるプログラム可能なデバイスは、隣接する6×6領域についても同様に復号を試みるように構成される。これらの領域のいずれかが復号可能である場合、この領域に対してすべての可能なセットが決定され、識別可能なセキュリティ要素のセットが残される。観察された2つのセキュリティ要素の相対的な空間的関係を利用し、それを予め定めたモデルを用いて識別子のセットの関係と照合することによって、一致する組み合わせ(例えば、隣接するセットのペア)を見つけることができ、再び、隣接する2つのセキュリティ要素と、セキュリティ要素の境界とを識別することができる。これは、セキュリティ要素がタイル状に配置されているためである。当然ながら、符号が許せば、未使用ビットを特定のビットパターンに設定してもよい。この特定のビットパターンを使用してヒューリスティック(Heuristics)を設計し、復号可能な領域、即ち、セキュリティ要素の位置及び境界を見つけるプロセスを高速化することができる。
【0079】
本開示は、決して、比較的小さな画像サイズ、即ち6×6画素に限定されるものではない。誤り訂正符号は、あるサイズ、即ち、Nrビット以降では、そもそも誤った読み取りを防止するのに十分な特異性を有しているので、より大きな画像に対しては、識別のための上述の戦略は必要でない可能性がある。より大きな容量を有するより大きなコードの場合、誤った復号を回避するために、事前に定義されたモデルからの先験的知識を使用することによって、追加の戦略を必要としない場合がある。より大きなコードを使用するこのような設定では、隣接するコードのペアが基礎材料内の位置を識別するために使用されることを考慮すると、各識別子が、特定の局所的な近傍で正確に1回発生するか又は2回発生しないように、シート状製品をある方法で符号化することが可能かもしれない。したがって、適度に大きな容量/サイズを有するコードによって提供される高い特異性/実際にエラーのない復号と、各識別子は最大1セットの可能な画像に含まれ得るという事実とによって、1回の復号成功は、セキュリティ要素の境界を決定し、特定のセキュリティ要素を識別するのに十分である。このため、シート状製品内の正確な絶対位置も知ることができる。
【0080】
カメラを備えるプログラム可能なデバイスが光学可変デバイス(OVD:optical variable devices)と共に使用される主な目的の1つは、その存在、ひいては真正性を検証するための自動化された方法を提供することである。カメラ以外に追加の機器がない場合、これは通常、コンピュータビジョン手段と、様々な角度及び/又は照明条件から撮影された複数の画像、即ちビデオストリームを評価するように構成されたコンピュータプログラムとによって達成される。あるいは、複数のカメラから同時に撮影された複数の画像を処理してもよい。ここでの技術水準(the state of the art)は、色の変化(0次/1次回折デバイス)や、画像又は形状の特定のアニメーション効果や、コントラストの切り替えなどを評価することである。制御されていない環境のために、セキュリティとロバスト性・可読性との間のトレードオフが大きく、即ち、中程度の特異性(即ち、セキュリティ)しか達成できない。一般に、高いセキュリティが要求される場合には、反射特性の代わりにOVDの物理的構造を評価するフォレンジック装置(forensic equipment)や専用の読取装置を用いた2次評価が、認証プロセスに採用される。
【0081】
同時に、カメラを備えるプログラム可能なデバイスなどの標準的な機器を使用する用途では、訓練を受けていないユーザがセキュリティデバイスの真正性を検証できることを目標としている場合が多く、この場合、ユーザは便利な(したがって、ロバストである)認証プロセスを期待する。その結果、OVD又はOVDの存在さえも、せいぜい大まかな評価しかできない。色変化するOVDの場合、これは例えば、「任意の」色変化を受け入れることが、少なくともOVDの存在を確認するための方法であることが多いことを意味する。OVDの存在を確認することは、セキュリティデバイスを形成する三次元OVDと、その絵/写真のコピーとを区別するために必要であることが多い。多くの場合、照明や撮影時の不自然な変化により、OVDの印刷されたレプリカ(「写真コピー」)の撮影画像には、色変化やぼやけ等の点で、様々な種類の好ましくない撮影条件(例えば、拡散照明)下でオリジナルのOVDが示すよりも多くのバリエーションが誘発される。したがって、OVDの存在検出に関する二値判定の閾値(yes/no)は、特定の条件下で印刷されたレプリカがOVDとして受け入れられる一方、真正なOVDが撮影された画像に有意な差異(significant variance)を有していない(例えば、わずかな色変化のみ)ために拒絶されるポイントに近づくことが多い。
【0082】
また、本開示の主題は、光学可変デバイスの存在を確認する非常に確実な方法を提供することである。異なる角度や照明設定から少なくとも2つの画像を撮影し、誤り訂正と組み合わせて、同じセキュリティ要素のために少なくとも2つの画像を復号することによって(これらの画像は、当然、その特定のセキュリティ要素の可能な画像のセットに存在する必要がある)、OVDが存在することが略確実となる。なぜなら、写真コピーや印刷されたレプリカでは、この画像切り替え挙動を示すことができないからである。さらに、コードの切り替えがマーカの符号化を介して誤り訂正されるため、画像の変化が観察されたとしても、エラーが発生する可能性を無視できることを意味する。
【0083】
図3a~図3cは、図2による基礎材料1から作成されたオブジェクトマーキングの認証方法に関するものである。この例では、オブジェクトマーキングは基礎材料1の一部を含み、この部分はマスキング層によって部分的に覆われている。基礎材料1のセキュリティ要素2は、タイル状に配置されている。セキュリティ要素によって示される各コードセグメントは、(二次元、単色の)タイルのアレイである。1つのセキュリティ要素によって示されるコードセグメントは、他のセキュリティ要素によって示されるコードセグメントと連続して配置され、全体として(二次元、単色の)タイルのより大きなアレイが形成される。マスキング層は、基礎材料1の光電子的に識別可能な区切られた領域を確保する。この領域は、第1のセキュリティ要素3と第2のセキュリティ要素4とを含む。
【0084】
このオブジェクトマーキングの認証方法は、オブジェクトマーキングの第1の画像12を第1の角度から又は第1の照明方向の下で、撮影することを含む。図3aに示す第1の画像12は、第1の撮影条件(例えば、第1の視角)下での光電子的に識別可能に区切られた領域の視覚的外観を示す。この方法は、第1の画像12内の推定された第1のセキュリティ要素によって示される第1のサンプルコードセグメント13を識別することを含む。ここで「サンプル」は、これが第1のコードセグメントの候補であることを示す。実際の第1のコードセグメントを識別するために、第1のサンプルコードセグメント13が復号されて、第1のサンプルデータセグメント15が取得される。
【0085】
より詳細には、ステップa)で、第1の画像12において第1のサンプルタイル11が識別される。次に、ステップb)で、予め定めた位置上の前記第1サンプルタイル11を含む第1のサンプルタイルアレイ14によって形成された第1の画像12における第1のサンプルコードセグメント13が復号されて、第1のサンプルデータセグメント15が取得される。ステップc)で、この第1のサンプルデータセグメント15に基づいて、基礎材料1のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶するモデル16から、前記第1のサンプルデータセグメント15(即ち、データセグメント候補)を含むデータセグメントの少なくとも1つのセット6が存在するかどうかが判断される。
【0086】
ステップc)でそのようなセットが決定できない場合、データセグメント候補は拒絶され、そのようなセットがステップc)で見つかるまで、ステップa)~c)が、異なる第1のサンプルタイルを用いて繰り返される。例えば、第1のサンプルタイル11の右隣の次のタイルが、新しい「第1のサンプルタイル」として識別され、上述のステップが繰り返される。これは、セキュリティ要素のタイル単位で所定の(既知の)幅(ここでは、6つのタイルの幅)に相当する数のステップがカバーされるまで繰り返すことができ、次いで、最初の第1のサンプルタイル11の直下のタイルを新しい「第1のサンプルタイル」として特定し、上述のステップを繰り返してもよい。第1のサンプルデータセグメント15(即ち、データセグメント候補)を含むデータセグメントの少なくとも1つのセット6が見つかるとすぐに、例えば、図3aのセットAはA_1を含み、現在の第1のサンプルコードセグメント13は、予備的に第1のコードセグメントとして識別される。
【0087】
特定のシーケンス、即ち、特定の順序ではないが、本方法はまた、異なる撮影条件下で(例えば、第2の角度から及び/又は第2の照明方向の下で)オブジェクトマーキングの第2の画像17を撮影することも含んでいる。これを図3bに示す。第1のセキュリティ要素によって示される第2のコードセグメントは、第2の画像17において識別される。第2のコードセグメントを識別するために、第2のサンプルコードセグメント18が復号されて、第2のサンプルデータセグメント19が取得される。
【0088】
これは、第1のデータセグメントの場合と同様に機能することができる。即ち、ステップe)で、第1のサンプルタイル11が第2の画像17において識別される(一般に、任意に、例えば、第2の画像17の左上隅に最も近いタイル)。ステップf)で、第1のサンプルタイルアレイ14によって形成された第2の画像17における第2のサンプルコードセグメント18が復号されて、第2のサンプルデータセグメント19が取得される。ステップg)で、モデル16から、第1のサンプルデータセグメント15を含むモデル16のセットのうちの少なくとも1つが、第2のサンプルデータセグメント19も含むかどうかが判断される。
【0089】
ステップg)でそのようなセットが決定できない場合、ステップh)はループを示し、ステップg)においてそのようなセット6が見つかるまで、ステップa)~g)が繰り返されることを示す。事実上これは、一致する第2のサンプルコードセグメントを特定できない場合、第1のサンプルコードセグメントが拒絶され、その結果、両方のサンプルコードセグメントが却下され、サンプルコードセグメントの有効な組み合わせが見つかるまで、異なるタイル位置及び境界が走査されることを意味する。一方、両方のサンプルデータセグメントを有するセットが見つかった場合、ステップm)で、現在の第2のサンプルコードセグメント18が、第2のコードセグメントとして識別される。即ち、この方法は、基礎材料1のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶しているモデル16から、第1のサンプルデータセグメント15及び第2のサンプルデータセグメント19を含むデータセグメントのセットが存在するか否かを判断する。肯定の場合、即ち、このようなデータセグメントのセット6がモデル16の一部である場合にのみ、オブジェクトマーキングを真正であると判定することができる。
【0090】
さらに、図3cに示すように、この方法は、第1の画像12内の推定される第2のセキュリティ要素によって示される第3のサンプルコードセグメントを識別することを含んでいる(但し、同様に、第2の画像17を使用してもよく、又は第1の画像12と第2の画像17の両方を使用してもよい)。識別された第3のコードセグメントは、第3のサンプルデータセグメントを得るために復号される。復号された第3のサンプルデータセグメントに基づいて、モデルから、第3のサンプルデータセグメントを含むデータセグメントのセットに関連付けられた第1のセキュリティ要素(第1及び第2のサンプルデータセグメントによって識別される)に対して位置決めされた第2のセキュリティ要素が存在するかどうかが判断される。このため、モデル16は、基礎材料のセキュリティ要素に関連するデータセグメントのセットを記憶するだけではなく、基礎材料のセキュリティ要素の互いに対する相対位置も記憶する。
【0091】
したがって、オブジェクトマーキングの真正性を確認する前に、本方法は以下を含む。
ステップi)で、第1のサンプルタイルアレイ14に対して位置決めされた第2のサンプルタイルアレイ21によって形成された第3のサンプルコードセグメント20が復号されて、第3のサンプルデータセグメント22が取得すること。ステップj)で、基礎材料1のセキュリティ要素2に関連付けられたデータセグメントのセット6、7と、基礎材料1のセキュリティ要素2の互いに対する相対位置23とを含むモデル16から、第3のサンプルデータセグメント22が、(第1及び第2のサンプルデータセグメントが属するセットを検索する手段によって予備的に識別される)セキュリティ要素3に対してそれぞれ位置決めされたセキュリティ要素4に属するデータセグメントのセット7に含まれるか否かを判断すること。
【0092】
そのようなセットを決定できない場合は、ステップk)に戻り、そのようなセットが見つかるまで、ステップa)からj)を繰り返す。セットが見つかると、ステップn)で、現在のサンプルコードセグメント13、18、20を、有効なコードセグメントとして識別する。このため、モデル16は、データセグメントのどのセットが、基礎材料1上の連続するセキュリティデバイスに関連付けられているかという情報を含む。
【0093】
要約すると、上述の方法は、本質的に、所与のタイルからオフセットされたコードセグメントによって表されるデータセグメント及びそれらの各配置がモデル16において一致をもたらすまで、任意のタイルから開始するタイルアレイの(少なくとも)2つの画像12、17を走査し、各ターンで異なるタイルを選択するものである。そのような一致が見つからない場合、オブジェクトマーキングは拒絶される(即ち、真正性を確認することができない)。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c