(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ノズル配列および冷却モジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240112BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H05K7/20 M
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2022528701
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 GB2020052933
(87)【国際公開番号】W WO2021099772
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520018266
【氏名又は名称】アイスオトープ・グループ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ICEOTOPE GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロングハースト,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】マッテソン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】アモス,デイビッド
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0037221(US,A1)
【文献】特表2020-532875(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02151863(EP,A1)
【文献】特開2011-129620(JP,A)
【文献】特開2003-243593(JP,A)
【文献】特開2018-117039(JP,A)
【文献】米国特許第04977444(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部
品の直接的な液体冷却
のためのノズル配列であって、
冷却液を吐出するためのノズルと、
前記冷却液を分散させるように構成されたマウントとを備え、前記マウントは前記電子部品に結合されるようにさらに構成され、
前記ノズルは、使用時、前記冷却液が前記ノズルから前記マウントを通して吐出されて前記マウントによって分散されるように、前記マウントに結合さ
れ、
前記マウントは、前記電子部品に解放可能に結合されるように構成される、
ノズル配列。
【請求項2】
前記マウントは、使用時、前記冷却液を前記電子部品の上に吐出するように構成される、請求項1に記載のノズル配列。
【請求項3】
前記マウントは、使用時、前記冷却液を前記電子部品の表面上に分散させるように構成される、請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項4】
前記マウントは、冷却液を吐出するための開口を含む、
請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項5】
前記マウントは、冷却液を分散させるための複数の溝を含む、
請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項6】
前記マウントは、冷却液を吐出するための開口を含み、前記複数の溝は前記開口から分岐する
、請求項5に記載のノズル配列。
【請求項7】
前記マウントは、前記電子部品に直接結合されるように構成される、
請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項8】
前記マウントは、スナップ嵌め接続によって前記電子部品に結合されるように構成される、
請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項9】
前記マウントは2つ以上の弾性フランジを含み、各弾性フランジの遠端はフックを含む、請求項
8に記載のノズル配列。
【請求項10】
前記マウントは一体の要素である、
請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項11】
前記マウントは、前記マウントを前記電子部品に取り付けるための一体化した取り付け手段を含む、
請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項12】
前記ノズルは、押し嵌め接続によって前記マウントに結合されるように構成される、
請求項1または2に記載のノズル配列。
【請求項13】
前記ノズルは、前記マウントの前記開口に結合するための管状突起部を含
む、請求項4に記載
のノズル配列。
【請求項14】
冷却モジュールであって、
複数の発熱部品を収容する容器を備え、前記発熱部品は、1つまたは複数の低温部品と、1つまたは複数の中温部品と、1つまたは複数の高温部品とを含み、前記冷却モジュールはさらに、
請求項1または2に記載の第1ノズル配列をさらに備え、前記第1ノズル配列は冷却液を中温部品の上へ方向付けるために配置される、冷却モジュール。
【請求項15】
前記低温部品は、前記冷却モジュール内の他の部品と比較して低い熱出力を生成し、前記高温部品は、前記冷却モジュール内の他の部品と比較して高い熱出力を生成し、前記中温部品は、前記冷却モジュール内の他の部品と比較して中間の熱出力を生成する、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【請求項16】
前記ノズル配列は、冷却液を前記中温部品の伝熱面の最も高温の部分へ方向付けるように構成される、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【請求項17】
冷却液を前記容器の中に流すように構成されたポンプと、
前記ポンプから前記ノズル配列に冷却液を運ぶように配置された少なくとも1本の管とをさらに備え
、
前記ノズルは前記少なくとも1本の管のそれぞれの端部に押し嵌め結合するように構成される、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【請求項18】
前記冷却モジュールは、高温部品の上または周りに装着されるヒートシンクをさらに備え、前記ヒートシンクはベースと保持壁とによって規定される体積を含み、前記冷却モジュールは、冷却液を前記体積の中へ方向付けるためのノズルをさらに備える、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【請求項19】
前記1つまたは複数の低温部品を少なくとも部分的に浸漬するための、前記容器内の冷却液のレベルをさらに備える、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【請求項20】
前記冷却モジュールは、高温部品の上または周りに装着されるヒートシンクをさらに備え、前記ヒートシンクはベースと保持壁とによって規定される体積を含み、前記冷却モジュールは、冷却液を前記体積の中へ方向付けるためのノズルをさらに備え、
前記体積内の冷却液のレベルは、前記容器内の冷却液の前記レベルよりも高い
、請求項
19に記載の冷却モジュール。
【請求項21】
前記容器のベースから離れて装着される部品と、
請求項1または2に記載の第2ノズル配列とをさらに備え、前記第2ノズル配列は冷却液を前記部品の上へ方向付けるために配置される、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【請求項22】
前記冷却液は一次冷却液であり、前記冷却モジュールはさらに、二次冷却液を受けて前記一次冷却液から前記二次冷却液に熱を伝達するように構成された熱交換器を備える、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【請求項23】
前記1つまたは複数の中温部品は、ソリッドステートドライブ、入力/出力装置、また
は電源ユニット、のうちの1つを含む、請求項
14に記載の冷却モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノズル配列および冷却モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの種類の電気/電子部品は、動作時に発熱する。特に、電気コンピュータ部品(マザーボード、中央処理装置(CPU)、およびメモリモジュールなど)は、使用時に相当な量の熱を放散し得る。電気部品が高温に加熱されると、損傷が生じたり、性能に影響を及ぼしたり、安全上の問題が生じたりする可能性がある。そのため、電気部品を効果的かつ安全に冷却するための効率的で高性能なシステムを見出すために相当な労力が費やされてきた。
【0003】
これまで、電気部品の冷却は、たとえばファンを使った空冷によって実現されるのが一般的であった。しかし、空冷を使用して電気部品の均一な冷却を実現することは困難である。さらに、近年の発熱部品の高性能化は、このような装置のピーク性能を制限する空冷によって十分な冷却を提供することが困難であることを意味している。
【0004】
さらに他の種類の冷却システムは、液体冷却を使用する。さまざまな液体冷却アセンブリが実証されてきたが、一般に電気部品は、発熱する電気部品と冷却剤との間の熱交換のための大きな表面積を提供するように冷却液に浸漬される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
このような背景から、請求項1に従うノズル配列が提供される。請求項15に従う冷却モジュールがさらに提供される。本発明のさらに他の特徴は従属請求項および本明細書に詳述されている。加えて、ノズル配列および冷却モジュールの特徴に対応する方法の特徴が提供され得る。
【0006】
本開示によれば、電子部品を冷却するためのノズル配列が提供され、上記ノズル配列は、冷却液を吐出するためのノズルと、上記冷却液を分散させるように構成されたマウントとを含み、上記マウントは上記電子部品に結合されるようにさらに構成され、上記ノズルは、使用時、上記冷却液が上記ノズルから上記マウントを通して吐出されて上記マウントによって分散されるように、上記マウントに結合される。
【0007】
好ましくは、上記マウントは、使用時、上記冷却液を上記電子部品の上に吐出するように構成される。
【0008】
好ましくは、上記マウントは、使用時、上記冷却液を上記電子部品の表面上に分散させるように構成される。
【0009】
好ましくは、上記マウントは、冷却液を吐出するための開口を含む。
好ましくは、上記マウントは、冷却液を分散させるための複数の溝を含む。
【0010】
好ましくは、上記複数の溝は上記開口から分岐する。
好ましくは、上記マウントは、上記電子部品に直接結合されるように構成される。
【0011】
好ましくは、上記マウントは、上記電子部品に解放可能に結合されるように構成される。
【0012】
好ましくは、上記マウントは、スナップ嵌め接続によって上記電子部品に結合されるように構成される。
【0013】
好ましくは、上記マウントは2つ以上の弾性フランジを含み、各弾性フランジの遠端はフックを含む。
【0014】
好ましくは、上記マウントは一体の要素である。
好ましくは、上記マウントは、上記マウントを上記電子部品に取り付けるための一体化した取り付け手段を含む。
【0015】
好ましくは、上記ノズルは、押し嵌め接続によって上記マウントに結合されるように構成される。
【0016】
好ましくは、上記ノズルは、上記マウントの上記開口に結合するための管状突起部を含み得る。
【0017】
本開示によれば、本開示に係るノズル配列と、電子部品とを含む装置がさらに提供される。
【0018】
本開示によれば、本開示に係るノズル配列から電子部品の上に冷却液を吐出するための方法がさらに提供される。
【0019】
本開示によれば、冷却モジュールがさらに提供され、上記冷却モジュールは、複数の発熱部品を収容する容器を含み、上記発熱部品は、1つまたは複数の低温部品と、1つまたは複数の中温部品と、1つまたは複数の高温部品とを含み、上記冷却モジュールはさらに、冷却液を中温部品の上へ方向付けるためのノズル配列を含む。
【0020】
好ましくは、上記低温部品は、上記冷却モジュール内の他の部品と比較して低い熱出力を生成し、上記高温部品は、上記冷却モジュール内の他の部品と比較して高い熱出力を生成し、上記中温部品は、上記冷却モジュール内の他の部品と比較して中間の熱出力を生成する。
【0021】
好ましくは、上記ノズル配列は、冷却液を上記中温部品の伝熱面の最も高温の部分へ方向付けるように構成される。
【0022】
好ましくは、上記冷却モジュールは、冷却液を上記容器の中に流すように構成されたポンプと、上記ポンプから上記ノズル配列に冷却液を運ぶように配置された少なくとも1本の管とをさらに含み、上記ノズル配列はノズルを含み、上記ノズルは上記少なくとも1本の管のそれぞれの端部に押し嵌め結合するように構成される。
【0023】
好ましくは、上記ノズル配列は本開示に係るノズル配列である。
好ましくは、上記冷却モジュールは、高温部品の上または周りに装着されるヒートシンクをさらに含み、上記ヒートシンクはベースと保持壁とによって規定される体積を含み、上記冷却モジュールは、冷却液を上記体積の中へ方向付けるためのノズルをさらに含む。
【0024】
好ましくは、上記冷却モジュールは、上記1つまたは複数の低温部品を少なくとも部分的に浸漬するための、上記容器内の冷却液のレベルをさらに含む。
【0025】
好ましくは、上記体積内の冷却液のレベルは、上記容器内の冷却液の上記レベルよりも高い。
【0026】
好ましくは、上記冷却モジュールは、上記容器のベースから離れて装着される部品と、冷却液を上記部品の上へ方向付けるためのノズル配列とをさらに含む。好ましくは、上記ノズル配列は本開示に従う。
【0027】
好ましくは、上記冷却液は一次冷却液であり、上記冷却モジュールはさらに、二次冷却液を受けて上記一次冷却液から上記二次冷却液に熱を伝達するように構成された熱交換器を含む。
【0028】
好ましくは、上記1つまたは複数の中温部品は、ソリッドステートドライブ、入力/出力装置、または電源ユニット、のうちの1つを含む。
【0029】
本発明はさまざまな方法で実施することができ、以下に好ましい実施形態を、例示としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示に係るノズル配列を含む、本開示に係る冷却モジュールの等角図である。
【
図4】部品に結合された本開示に係るノズル配列の等角図である。
【
図5】
図4のノズル配列および部品の分解図である。
【
図6】
図4および
図5のノズル配列および部品の断面側面図である。
【
図10】本開示に係るノズル配列のマウントの等角図である。
【
図12】冷却液が通る経路を方向矢印で示す、
図11の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1および
図2を参照して、本開示に従うノズル配列2を含む、本開示に係る冷却モジュール1が示されている。
図1および
図2の冷却モジュール1の分解図が示されている
図3も考慮すべきである。冷却モジュール1は、たとえばサーバブレードアセンブリを含み得る。
【0032】
冷却モジュール1は、複数の電気/電子部品を収容する容器10(蓋なしで示す)を含む。(電気および電子という用語は本明細書において類似するものとして使用される。)これらの部品は動作時に発熱し得る。冷却モジュール1内の部品は、相対的に低い温度を生成する部品11と、相対的に高い温度を生成する部品12と、相対的に中間の温度を生成する部品13とを含み得る。各カテゴリーの部品の絶対的な熱出力は、本開示と関係がない。関係があるのは、冷却モジュール1における各部品の他の部品に対する熱出力である。低温部品11は、冷却モジュール1内のすべての部品によって生成される熱のレベルによって決定される範囲の下部付近にあり、高温部品12はこの範囲の上部付近にあり、中温部品13はこの範囲の中央付近にある。中温部品13は、ソリッドステートドライブ(SSD)15、入力/出力装置、および電源ユニットを含み得るが、これらに限定されるわけではない。
【0033】
いくつかの低温部品11、高温部品12、および中温部品13は、コンピュータマザーボードであり得る回路基板14に装着される。
図1~
図3には、2つのこのような同一の回路基板14が容器10の中に示されている。
【0034】
容器10は、動作時、一次冷却液と呼ばれることがある誘電性冷却液(図示せず)で満たされている。冷却液は導電性ではないが、通常は熱伝導性であり、伝導および/または対流によって熱を運ぶことができる。容器10の内部の冷却液(以下「容器冷却剤」と呼ぶ)の量は、低温部品11を少なくとも部分的に覆うまたは浸漬するのに十分であるが、必ずしも低温部品11を完全に浸漬するとは限らない。動作時に使用される冷却液のレベルについては後述する。冷却液は、ポンプ20によって管21を流れて熱交換器22に移動する。熱交換器22は、二次冷却液(一般的に水または水性である)を受け、容器10内の冷却液からこの二次冷却液に熱を伝達する。二次冷却液は、インターフェイス接続部23を介して熱交換器22に与えられ、インターフェイス接続部23を介して熱交換器22から出る。冷却された一次冷却液は、ポンプ20によって熱交換器22から管24を通って冷却剤マニホールド25に出て、冷却剤マニホールド25からさらに他の管26を通ってノズル30,31および60から出るように方向付けられる。
【0035】
冷却モジュール1は一般的にラックマウント型モジュールであり、容器10内の部品は、たとえばマザーボードおよび関連部品を含むコンピュータサーバ回路の少なくとも一部であることが好ましい。したがって、冷却モジュール1の高さは、ラックユニット1個分(1U、44.45mmに相当)であってもよく、またはラックユニット整数個分であってもよい。冷却モジュール1は、複数のこのような冷却モジュール(そのうちの1つ、いくつか、もしくはすべては、本明細書に開示されている冷却モジュール1とは異なる内部構造を有し得る)を収容する対応するラックに据え付けられるように構成されてもよく、またはこの対応するラックに据え付けられてもよい。この構成では、二次冷却液は、直列または並列に配列された冷却モジュール同士の間で共有されてもよい。これを可能にするために、プレナムチャンバおよび/またはマニホールドがラックに設けられてもよい。効率性および安全性のために他の部品(電源レギュレータ、1つもしくは複数のポンプ、または同様の装置など)がラックに設けられてもよい。
【0036】
第1のヒートシンク40が高温部品12(
図3に見える)に装着され得る。各ヒートシンク40は、マウント41とマウント41に固定された平面基板42とからなるベースと、平面基板42に取り付けられた保持壁43と、突起部44(ピンの形態で示す)と、基板42をマウント41に取り付ける固定ねじ45とを含み得る。このように、平面基板42は高温部品12の直上に位置し、高温部品12から、ベース(平面基板42)と保持壁43とによって規定されてその中に突起部44が設けられる体積に熱を伝達する。
【0037】
冷却液は、ノズル30を介して各第1のヒートシンク40に供給される。ノズル30は、冷却剤を基板42の平面に対して垂直に方向付けるように配置される。これにより、冷却液の噴射または流れが、第1のヒートシンク40の基板42と保持壁43とによって規定される体積に強制的に直接送り込まれる。その結果、放熱性が向上する。これは特に、空冷システムのように、冷却剤がヒートシンク基板の平面と平行な方向においてヒートシンクの上を流れるように方向付けられるシステムと比較した場合のことである。
【0038】
ノズル30は、基板42と保持壁43とによって規定される体積の中心に冷却剤を直接供給する。この例では、その体積の中心は、高温部品12に隣接している(かつ高温部品12の直上にある)、基板42の領域の最も高温の部分に対応する。これにより、最も低温の冷却剤が各第1のヒートシンク30の最も高温の領域に接触するように方向付けられるような逆方向の流れが提供される。冷却剤は、最も高温の部分から保持壁43に向かって外向きに放射状に移動する。冷却剤が保持壁43からあふれ出て容器冷却剤とともに集まるように、十分な冷却剤がノズル30を介して体積内にポンピングされる。
【0039】
側壁として作用する保持壁43は、異なるレベルの冷却剤を可能にする。各第1のヒートシンク30の体積内の冷却剤は相対的に高いレベルにあるのに対して、低温部品11を少なくとも部分的に浸漬する容器10内の冷却剤はそれよりも低いレベルにある。これにより、すべての部品を同じ高さで覆う他の同様のシステムよりも、使用する冷却液を大幅に減らすことができる。
【0040】
それによっていくつかの利点が実現される。第1に、使用する誘電性冷却剤が減り、この冷却剤は高価であり得るため、コストを大幅に削減することができる。誘電性冷却液は一般的に非常に重い。使用する冷却液が減ることにより、冷却モジュール1の据え付けおよび/または持ち上げをより簡単にすることができる。また、冷却モジュール1の据え付けに必要なインフラストラクチャを減らすことができる。加えて、冷却モジュール1は、はるかに多くの一次冷却液を使用する同様のシステムよりも取り扱いが容易である。容器10の大部分の中の一次冷却液のレベルは、容器の上部に近くない。その結果、部品の保守または交換中にこぼれる可能性は低い。漏れるリスクも低くなる。
【0041】
保持壁43は、堰止め効果を生み出す。相対的に低いレベルにある容器10内の冷却剤は、冷却液がない場合は通常は空気で冷却される低温部品10を冷却する。低温部品10は冷却液に完全に浸漬される必要はない。
【0042】
電源ユニットを冷却するために第2のヒートシンク50が設けられてもよい。第2のヒートシンク50は、第1のヒートシンクのようにベース(図示せず)と保持壁51とによって規定される体積を含み得るものであり、ノズル31がこの体積内に冷却液を吐出する。したがって、第2のヒートシンク50によって、冷却液が保持壁51からあふれ出て容器冷却剤とともに集まるという同様の堰止め効果がもたらされ得る。
【0043】
中温部品13は、高温部品12よりも必要な冷却が少ないため、第1または第2のヒートシンク40,50に関連するコスト、複雑さ、およびスペースの増加の根拠とならない場合がある。それでもやはり、中温部品13は低温部品11よりも発熱量が多いので、浸漬冷却のみによって実現される冷却よりも大きい冷却を中温部品13に提供することが有利であろう。それぞれの中温部品13の上に冷却液を直接吐出することによって、中温部品13のうちの1つ以上に追加冷却を提供してもよい。
【0044】
図4~
図6に示すようなノズル配列2を用いて、冷却液を中温部品13の上へ方向付けてもよい。ノズル配列2は、一般に、ノズル61に結合されたマウント60(
図10~
図13にさらに詳細に示す)を含み得る。
【0045】
マウント60は、第1の側面71および対向する第2の側面72を有する概して平面状の要素70を含み得る。平面要素70に開口73が設けられてもよく、開口73から冷却液が吐出されてもよい。平面要素70の第1の側面71は、開口73から吐出される冷却液を分散させるための分散手段を含み得る。たとえば、平面要素70の第1の側面に、開口73から分岐する複数の溝74が設けられてもよい。
【0046】
平面要素70の概して対向する端から2本以上のアーム75が延びてもよい。アーム75は、平面要素70の平面と概して平行に延びてもよい。アーム75は、平面要素70の第1および第2の側面71,72と共通する第1および第2の側面71,72を有し得る。
【0047】
マウント60は、マウント60を中温部品13に取り付けるための取り付け手段80をさらに含み得る。好ましくは、マウントは、マウント60が一体の要素であるように、一体化した取り付け手段80を含み得る。好ましくは、取り付け手段80は、中温部品13への解放可能な取り付けを提供するように構成されてもよい。特に、取り付け手段80は、スナップ嵌め接続を提供するように構成されてもよい。たとえば、各アーム75の遠端から弾性フランジ81が延びてもよい。弾性フランジ81は、アーム75の第1の側面71から、平面要素70の平面に対して概して垂直な方向に延びてもよい。各フランジ81の遠端にフック82が設けられてもよく、フック82はフランジ81からアーム75と概して平行な方向に、アーム75の近端に向かって延びてもよい。
【0048】
マウント60のサイジングは、良好な嵌合を確実にするように、中温部品13ごとに前もって求められてもよい。あるいは、マウント60は、たとえばアーム75を伸縮式にすることによって調整可能であってもよい。
【0049】
ノズル61は、管26に解放可能に結合されてノズル61に冷却液を供給するように構成されてもよい。これは押し嵌め接続によるものであってもよい。たとえば、
図4~
図6に示すように、ノズル61から延びる第1の管状突起部90が管26の中に収まるように構成されてもよい。あるいは、第1の管状突起部90は、管26が第1の管状突起部90の中に収まるように構成されてもよい。
【0050】
ノズル61はさらに、押し嵌め接続などによって、マウント60に解放可能に結合されるように構成されてもよい。たとえば、ノズル61から延びる第2の管状突起部91は、マウント60の開口73に挿入されると押し嵌め接続を提供するように構成されてもよい。代替の実施形態では、ノズル61はマウント60に恒久的に結合されてもよい。たとえば、ノズル61およびマウント60は一体の部分として形成されてもよい。
【0051】
ノズル配列2は、中温部品13に冷却液を直接供給することを可能にする。加えて、ノズル配列は、中温部品13の局所的な領域に冷却液を供給することを可能にする。中温部品13の表面上のマウント60の位置決めは、発熱量が最大の中温部品13の領域上に開口73が位置するように最適化されてもよい。マウント60の位置決めをこのように最適化すると、ノズル配列2によって提供される冷却の効率を有利に高めることができる。
【0052】
冷却モジュール1内のいくつかの部品は、容器10のベースから離れて装着されてもよく(図示せず)、たとえば、回路基板のより高い位置に装着されてもよく、またはメザニン回路基板に装着されてもよい。このような部品の配置は、部品が容器冷却剤への浸漬冷却によって冷却不可能であることを意味し得る。代わりに、ノズル配列2を有利に使用してこのような部品を冷却してもよい。
【0053】
工具が不要な押し嵌め接続およびスナップ嵌め接続を利用することにより、ノズル配列2を簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。その結果、冷却モジュール1内の回路基板14(1つ以上の中温部品13を含み得る)または他の中温部品13の交換を容易かつ迅速に行うことができる。ノズル61にはさらに、管5およびノズル2における帯電を取り除くために、アースまたは接地点に結合可能なアース点4が設けられてもよい。
【0054】
ノズル配列2を組み付けるために、ノズル61を、第1の管状突起部90を管21に挿入することによって管21に結合してもよく、ノズル61の第2の管状突起部91をマウント60の開口73に挿入することによってマウント60にさらに結合してもよい。
【0055】
ノズル配列2は、冷却モジュール1内の選択された中温部品13にそれぞれ結合されてもよい。特に、ノズル配列2のマウント60は、取り付け手段80を介して中温部品13に直接結合されてもよい。中温部品13の表面上のマウント60の位置決めは、発熱量が最大の中温部品13の表面の領域上にマウント60の開口73が位置するように最適化されてもよい。中温部品13の上のマウント60の位置の例を
図7~
図9に示す。
【0056】
動作時、ポンプ20は容器10から冷却液を吸引し、冷却液を熱交換器22を通して冷却剤マニホールド25を介して管26に送り込み得るものであり、冷却液は管26からそれぞれのノズル30,31,60によって吐出され得る。ノズル30,31は、第1および第2のヒートシンク40,50内に冷却液を吐出して高温部品12を冷却し得る。ヒートシンク40,50からあふれ出た冷却液は容器冷却剤とともに集まり得るものであり、浸漬冷却によって低温部品11を冷却するために使用され得る。
【0057】
ノズル61は、中温部品13の上に冷却液を直接吐出し得る。特に、中温部品13の上のマウント60の位置決めにより、中温部品13の表面の最も高温の領域の上に冷却液が吐出され得る。ノズル61から吐出された冷却液は、平面要素70の第1の側面71上の開口73から分岐した複数の溝74によって、中温部品13の表面上に分散され得る。結果として生じる冷却液の流路が
図12および
図13において矢印76で示されている。分散された冷却液は、中温部品13の端から滝のように落ちて容器冷却剤とともに集まり得る。
【0058】
このように、ノズル配列2は、方向付けられた追加冷却を選択された中温部品13に提供することを可能にする。さらに、冷却液は、中温部品13の最も高温の領域へ方向付けられ得るとともに、中温部品13の表面上に均一に分散され得る。このように中温部品13を冷却することにより、冷却剤システムの実用性を効率的に高めて経済性を高めることができる。