(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電力変換器のBUS電圧バランス調整方法、電力変換器、記憶媒体及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240112BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20240112BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02M7/493
(21)【出願番号】P 2022534304
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2020134312
(87)【国際公開番号】W WO2021110172
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】201911245063.2
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樊 珊 珊
(72)【発明者】
【氏名】林 国 仙
(72)【発明者】
【氏名】董 秀 鋒
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-043660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0236603(US,A1)
【文献】米国特許第10153710(US,B1)
【文献】国際公開第2010/082265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器のBUS電圧バランス調整方法であって、
前記電力変換器の複数の相電圧のうち、正の最大相のBUS電圧と負の最大相のBUS電圧との差を電圧バランスループの誤差入力として、各相の電圧バランス調整デューティ比を計算するステップと、
主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差に応じて、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定するステップであって、前記主相は、前記複数の相電圧のうち、絶対値が最大の相であるステップと、
前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、各相のBUS電圧に対してバランス調整を行うステップと、
を含む電力変換器のBUS電圧バランス調整方法。
【請求項2】
前記電力変換器の複数の相電圧のうち、正の最大相のBUS電圧と負の最大相のBUS電圧との差を電圧バランスループの誤差入力として、各相の電圧バランス調整デューティ比を計算するステップの前に、さらに、
前記変換器の前記複数の相電圧をサンプリングするステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
主相のBUS電圧と他の相のBUS電圧の平均値との差に応じて、各相の駆動デューティ比の調整方向を決定するステップは、
前記主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第1既定電圧より大きい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を下げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を上げる方向であることと、
前記主相に対応するBUS電圧値と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第2既定電圧より小さい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を上げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を下げる方向であることと、
前記主相に対応するBUS電圧値と全てのBUS電圧の平均値との差が前記第2既定電圧より大きく、且つ第1既定電圧より小さい場合、各相のBUS電圧を調整しないことと、
のうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、各相のBUS電圧に対してバランス調整を行うステップは、
前記各相の駆動デューティ比の調整方向に応じて、前記各相の電圧バランス調整デューティ比と、各相のフィードフォワードデューティ比及び電流ループから出力されるPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせるステップと、
各相が重ね合わせられたデューティ比に基づいて、各相に対応するBUS電圧を調整するステップと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、各相のBUS電圧に対してバランス調整を行うステップは、
前記各相の電圧バランスループ出力値を各相の瞬時入力電圧サンプリング値に重ね合わせて、各相のフィードフォワードデューティ比を計算するステップと、
前記各相のフィードフォワードデューティ比と電流ループから出力されるPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせるステップと、
各相が重ね合わせられたデューティ比に基づいて、各相に対応するBUS電圧を調整するステップと、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各相が重ね合わせられたデューティ比に基づいて、各相に対応するBUS電圧を調整するステップは、
各相が重ね合わせられたデューティ比に応じて各相の変調波を得るステップと、
前記各相の変調波をPWM駆動信号に変換するステップと、
前記PWM駆動信号に応じて、前記変換器の制御パワースイッチのオンとオフを制御し、且つ、各相に対応するBUS電圧を調整するステップと、
を含む請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
制御ユニットと電力変換ユニットとを含む電力変換器であって、前記制御ユニットは電圧バランスループを含み、
前記電圧バランスループは、前記電力変換器の複数の相電圧のうち、正の最大相のBUS電圧と負の最大相のBUS電圧との差を誤差入力として、各相の電圧バランス調整デューティ比を計算して、主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差に応じて、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定するように構成されており、前記主相は、前記複数の相電圧のうち、絶対値が最大の相であり、
前記電力変換ユニットは、前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、前記電力変換器の各相のBUS電圧に対してバランス調整を行うように構成された
電力変換器。
【請求項8】
前記制御ユニットはさらに、
前記変換器の前記複数の相電圧をサンプリングするように構成されたサンプリングサブユニットを含む請求項7に記載の電力変換器。
【請求項9】
前記電圧バランスループは、
前記主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第1既定電圧より大きい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を下げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を上げる方向である方法と、
前記主相に対応するBUS電圧値と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第2既定電圧より小さい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を上げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を下げる方向である方法と、
前記主相に対応するBUS電圧値と全てのBUS電圧の平均値との差が前記第2既定電圧より大きく、且つ第1既定電圧より小さい場合、各相のBUS電圧を調整しない方法と、
のうちの少なくとも1つの方法により、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定する請求項7に記載の電力変換器。
【請求項10】
前記制御ユニットはさらに、
サンプリングされた前記複数の相電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するように構成されたアナログデジタル変換サブユニットと、
目標電圧と各相の入力相電圧から、各相のフィードフォワードデューティ比を計算により得るように構成されたフィードフォワードサブユニットと、
各相のBUS電圧の平均値と目標として設定されたBUS電圧との差を誤差入力として計算し、電流ループの設定値を出力するように構成された電圧ループと、
前記電流ループの設定値と各相の電流との差を電流ループの入力として、PWMデューティ比の微調整部分を出力するように構成された電流ループと、
前記各相の駆動デューティ比の調整方向に応じて、前記各相の電圧バランス調整デューティ比と、各相のフィードフォワードデューティ比及びPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせ、各相の重ね合わせ後のデューティ比に基づいて各相の変調波を得て、前記各相の変調波をPWM駆動信号に変換してから前記電力変換ユニットに出力するように構成されたPWM駆動サブユニットと、
を含む請求項7に記載の電力変換器。
【請求項11】
前記制御ユニットはさらに、
サンプリングされた前記複数の相電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するように構成されたアナログデジタル変換サブユニットと、
各相のBUS電圧の平均値と目標として設定されたBUS電圧との差を誤差入力として計算し、電流ループの設定値を出力するように構成された電圧ループと、
前記電流ループの設定値と各相の電流との差を電流ループの入力として、PWMデューティ比の微調整部分を出力するように構成された電流ループと、
前記各相の電圧バランスループ出力値を各相の瞬時入力電圧サンプリング値に重ね合わせて、各相のフィードフォワードデューティ比を計算するように構成されたフィードフォワードサブユニットと、
前記各相の駆動デューティ比の調整方向に応じて、前記各相のフィードフォワードデューティ比及びPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせ、各相の重ね合わせ後のデューティ比に基づいて各相の変調波を得て、前記各相の変調波をPWM駆動信号に変換してから前記電力変換ユニットに出力するように構成されたPWM駆動サブユニットと、
を含む請求項7に記載の電力変換器。
【請求項12】
前記電力変換ユニットはさらに、
前記PWM駆動信号に応じて、前記変換器の制御パワースイッチのオンとオフを制御し、且つ、各相に対応するBUS電圧を調整するように構成された請求項10又は11に記載の電力変換器。
【請求項13】
コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、実行時
に請求項1から6の何れか一項に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項14】
メモリとプロセッサとを含む電子装置であって、前記メモリにはコンピュータプログラムが記憶されており、前記プロセッサは
、請求項1から6の何れか一項に記載の方法を実行するために前記コンピュータプログラムを実行するように構成された
電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は出願番号が201911245063.2で、出願日が2019年12月06日である中国特許出願に基づいて提出され、その中国特許出願の優先権を主張し、その中国特許出願の全文を参考として本願に援用する。
【0002】
本発明は、スイッチング電源変換の技術分野に関し、具体的には、電力変換器のBUS電圧バランス調整方法、電力変換器、記憶媒体及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
需要と技術の共同推進により、三相整流器製品は高出力密度、高効率、低コストの発展趨勢を示している。エネルギー製品の種類の絶え間ない拡大に伴い、三相給電の直流電源製品も充電スタンドモジュール、データセンターHVDCモジュールに広がって、電力レベルも大幅に向上した。三相PFCのトポロジーは、大まかに、パッシブ整流、ハイブリッド整流およびアクティブPFCの三つの種類に分けられる。前期ではダイオードを用いて無制御整流を行う回路をパッシブ整流システムと呼ぶ。ハイブリッド整流システムの最も典型的な応用は、無制御整流ブリッジの入力側に3次高調波電流を注入してTHDを下げることである。しかし、パッシブ整流でもハイブリッド整流でも入力電流の高調波含有量が高く、出力電圧が入力電圧に制限される欠点があり、現在では、アクティブPFC回路の方が多く応用されている。
【0004】
アクティブPFCは三相整流器と単相モジューラ組み合わせ式三相整流器に分けられる。三相整流器は主に6スイッチブースト整流器、Vienna整流器、六スイッチBuck整流器、Swiss整流器がある。前二者が昇圧型で、後二者が降圧型であり、昇圧型回路はより高い母線電圧を採用でき、効率がより高く、最もよく使われる三相整流トポロジーである。その中で、Vienna整流器は3レベル構造を採用してデバイスの応力と磁気部品の体積を減少させ、6スイッチブースト整流器と比べて、より高い効率と電力密度を持っており、現在業界で一般的に使用されているトポロジー構造である。モジュール化された単相回路を組み合わせてなる三相変換器はすべてのスイッチングデバイスの応力の統一を実現でき、各相はHブリッジ構造を採用して星型またはデルタ型接続により三相変換器を構成し、変換器全体の効率は各電力変換ユニットの効率レベルに依存し、すべてのデバイススイッチの応力レベルが下げられると、その性能は必然的に従来の三相整流器より優れる。単相モジューラ組み合わせ変換技術によれば、三相整流器の変換効率を98%に高めることができ、ワイドギャップデバイスとSMDパワーデバイスの応用によりスイッチング周波数を高め、パワーデバイスと磁気部品の体積を減少させ、機器全体の電力密度を高め、機器全体のコストを下げることができる。
【0005】
2BUSのVienna整流器などの伝統的な整流器でも、3BUSの単相モジューラ組み合わせ式三相整流器でも、BUS電圧不平衡の問題が存在する。各相のハードウェア規格に違いがあるため、あるいは負荷が非対称で、三相入力電圧が不平衡である場合、BUS電圧は不平衡になることがある。BUS電圧不平衡は、機器全体の出力リップルが大きすぎて、各入力指標が悪くなり、ひいては電圧が比較的高いウェイのBUS電圧が直流コンデンサや他のスイッチングデバイスの耐電圧範囲を超えてしまい、デバイスを破損させてしまうこともある。
【0006】
そのため、各ウェイのBUSの電圧バランスを実現するために、いくつかの制御ポリシーを加える必要がある。従来の電圧バランスポリシーはハードウェアポリシーとソフトウェアポリシーに分けられる。ハードウェアポリシーとは、回路トポロジーに補助電圧バランス回路を追加することで、この回路は通常、複数のスイッチトランジスタ、コンデンサ、インダクタなどの素子で構成され、デバイスのコストを増やしてしまう。従来のソフトウェアポリシーの方は、ソフトウェアに電圧バランス制御ポリシーを加え、2ウェイのBUS電圧をサンプリングして差を取り、PIループによって調整して、最終的に各ウェイのスイッチトランジスタのオンオフ時間を制御することで、2ウェイのBUSの電圧バランスを実現する。この案はデバイスのコストを増やす必要はないが、2BUSの従来の三相整流器にしか適用できず、3BUSを持つ単相モジューラ組み合わせ式三相整流器には適用できない。3つ以上のBUSの電圧バランス誤差計算では、2BUSの電圧バランスポリシーを踏襲して、2つずつ差を取るか、最大と最小のBUS電圧の差を電圧バランスループの誤差入力とすれば、BUS電圧バランスを効果的に実現することができないばかりか、BUS電圧の不平衡を悪化させることもあり得る。3BUSの単相モジューラ組み合わせ式三相整流器とマルチBUSの整流トポロジーが大電力充電モジュールの将来の発展方向であり、3BUSとマルチBUSトポロジーのBUS電圧バランス問題はまた、このようなトポロジーが必ず直面する問題である。そのため、3BUS及びマルチBUSトポロジーに対するBUS電圧バランスソリューションが強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施例は電力変換器のBUS電圧バランス調整方法、電力変換器、記憶媒体及び電子装置を提供することで、整流回路のBUS電圧バランス制御問題を含み、関連する技術的問題のうちの一つを少なくともある程度解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によれば、電力変換器のBUS電圧バランス調整方法を提供し、前記方法は、前記電力変換器の複数の相電圧のうち、正の最大相のBUS電圧と負の最大相のBUS電圧との差を電圧バランスループの誤差入力として、各相の電圧バランス調整デューティ比を計算するステップと、主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差に応じて、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定するステップであって、前記主相は、前記複数の相電圧のうち、絶対値が最大の相であるステップと、前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、各相のBUS電圧に対してバランス調整を行うステップと、
を含む。
【0009】
本発明のもう一つの実施例によれば、電力変換器を提供し、前記電力変換器は、制御ユニットと電力変換ユニットを含み、前記制御ユニットは電圧バランスループを含み、前記電圧バランスループは、前記電力変換器の複数の相電圧のうち、正の最大相のBUS電圧と負の最大相のBUS電圧との差を誤差入力として、各相の電圧バランス調整デューティ比を計算して、主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差に応じて、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定するように構成されており、ここで、前記主相は、前記複数の相電圧のうち、絶対値が最大の相であり、前記電力変換ユニットは、前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、前記電力変換器の各相のBUS電圧に対してバランス調整を行うように構成されている。
【0010】
本発明のさらにもう一つの実施例によれば、記憶媒体を提供し、前記記憶媒体にはコンピュータプログラムが記憶されており、前記コンピュータプログラムは、実行時に上記の何れか一つの方法実施例におけるステップを実行するように構成されている。
【0011】
本発明のさらにもう一つの実施例によれば、メモリとプロセッサとを含む電子装置を提供し、前記メモリにはコンピュータプログラムが記憶されており、前記プロセッサは、上記の何れか一つの方法実施例におけるステップを実行するために前記コンピュータプログラムを実行するように構成されている。
【0012】
ここで説明される図面は、本発明のさらなる理解を提供するためのものであり、本願の一部を構成し、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのものであり、本発明を不当に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例による電力変換器のBUS電圧バランス調整方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例による電力変換装置の模式図である。
【
図3】本発明の実施例による電力変換ユニットの模式図である。
【
図4】本発明の実施例1による電力変換装置の制御模式図である。
【
図5】本発明の実施例1によるスイッチング周期内のPWM変調波と駆動波形である。
【
図6】本発明の実施例1による三相交流入力電圧波形図である。
【
図7】本発明の実施例1によるスイッチング周期内のPWM変調波と駆動波形である。
【
図8】本発明の実施例1による電圧バランス制御アルゴリズムのフローチャートである。
【
図9】本発明の実施例2による電力変換装置の制御模式図である。
【
図10】本発明の実施例2による三相交流入力電圧波形図である。
【
図11】本発明の実施例2による電圧バランス制御アルゴリズムのフローチャートである。
【
図12】本発明の実施例による電力変換器の模式図である。
【
図13】本発明の実施例による電子装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付図面を参照し、実施例と組み合わせて、本発明を詳しく説明する。なお、矛盾しない限り、本願における実施例および実施例における特徴は互いに組み合わせてもよい。
【0015】
なお、本発明の明細書、請求の範囲及び上記図面における用語「第1」、「第2」等は類似の対象を区別するためのものであり、必ずしも特定の順序又は前後の順番を記述するためのものではない。
【0016】
電力変換器における各BUSコンデンサの電圧が一致しない問題について、本実施例において、電力変換器のBUS電圧バランス調整方法を提供する。
図1は本発明の実施例による方法のフローチャートで、
図1に示すように、当該フローは以下のステップを含む。
【0017】
ステップS102:前記電力変換器の複数の相電圧のうち、正の最大相のBUS電圧と負の最大相のBUS電圧との差を電圧バランスループの誤差入力として、各相の電圧バランス調整デューティ比を計算する。
【0018】
ステップS104:主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差に応じて、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定し、ここで、前記主相は、前記複数の相電圧のうち、絶対値が最大の相である。
【0019】
ステップS106:前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、各相のBUS電圧に対してバランス調整を行う。
【0020】
本実施例のステップS102の前に、さらに、前記変換器の前記複数の相電圧をサンプリングするステップを含んでもよい。
【0021】
本実施例のステップS104において、前記主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第1既定電圧より大きい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を下げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を上げる方向である。前記主相に対応するBUS電圧値と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第2既定電圧より小さい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を上げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を下げる方向である。前記主相に対応するBUS電圧値と全てのBUS電圧の平均値との差が前記第2既定電圧より大きく、且つ第1既定電圧より小さい場合、各相のBUS電圧を調整しない。
【0022】
本実施例のステップS106において、次の2つの方法によって、各相のBUS電圧に対してバランス調整を行うことができる。
【0023】
方法1:前記各相の駆動デューティ比の調整方向に応じて、前記各相の電圧バランス調整デューティ比と、各相のフィードフォワードデューティ比及び電流ループから出力されるPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせ、各相が重ね合わせられたデューティ比に基づいて、各相に対応するBUS電圧を調整する。
【0024】
方法2:前記各相の電圧バランスループ出力値を各相の瞬時入力電圧サンプリング値に重ね合わせて、各相のフィードフォワードデューティ比を計算し、前記各相のフィードフォワードデューティ比と電流ループから出力されるPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせ、各相が重ね合わせられたデューティ比に基づいて、各相に対応するBUS電圧を調整する。
【0025】
本実施例のステップS106において、各相が重ね合わせられたデューティ比に基づいて、各相に対応するBUS電圧を調整するステップは、各相が重ね合わせられたデューティ比に応じて各相の変調波を得るステップと、前記各相の変調波をPWM駆動信号に変換するステップと、前記PWM駆動信号に応じて、前記変換器の制御パワースイッチのオンとオフを制御し、且つ、各相に対応するBUS電圧を調整するステップと、を含む。
【0026】
上記の実施例において、ハードウェアコストを余計に増やすことなく、ソフトウェアに電圧バランス制御ループを追加することができ、このループの制御誤差は、入力電圧の正の最大相に対応するBUS電圧と入力電圧の負の最大相に対応するBUS電圧をリアルタイムでサンプリングして差を取ることで得られる。誤差をPIループによって調整してから、主相に対応するBUS電圧と三相のBUSの平均値との差によって、電圧バランスループの出力を各相の制御システムに注入するときの調整方向を決定する。ループ誤差の計算は、入力される三相電圧が位置する異なるセクターによって決定され、絶えず循環して変化している。各相の電圧バランス補償方向も入力電圧の主相に対応するBUS電圧によって決まる。同時に、主相も時間とともに交互に変化している。3BUS及びマルチBUS整流回路のBUS電圧バランス制御過程がより複雑で、制御対象がより正確であるため、各相のBUSコンデンサの充放電時間を正確に変化させ、最終的に充電エネルギーのバランスを実現する。
【0027】
本発明の実施例により提供される技術案を理解しやすくするために、以下では、具体的な実施例に関連して詳細に説明する。
【0028】
本実施例は3BUS及びマルチBUS変換器における直流BUSコンデンサの電圧バランス制御方法を提供することにより、マルチBUS三相変換器における各BUSコンデンサの電圧が一致しない問題を解決する。
【0029】
図1に示すように、本実施例において、電力変換装置は、電源ユニット、インダクタユニット、電力変換ユニットグループと制御ユニットを含む。ここで、電源ユニットは一つの三相交流電源を含み、三つのインダクタユニットはインダクタで構成され、電力回路の充放電を実現し、電力変換ユニットグループは三つの電力変換ユニットを含む。電源ユニットの三相出力はそれぞれ三つのインダクタユニットと直列に接続され、それぞれの電力変換ユニットの一端の入力はそれぞれ対応するインダクタユニットに接続され、他端が星形結線されている。各電力変換ユニットの出力に一つのBUSコンデンサが接続されている。各電力変換ユニットの出力BUS電圧は、電力変換装置の電力変換結果とされる。
【0030】
前記制御ユニットは、各電力変換ユニットに接続され、対応する制御信号を各電力変換ユニットに入力して、各電力変換ユニットのスイッチオンオフ時間を制御することで、各電力変換ユニットの出力するBUS電圧が目標値に達するようにする。前記制御ユニットには、各ウェイのBUS電圧のバランスを保証するために、電圧バランスループをさらに含む。
【0031】
本実施例の電圧バランスポリシーは以下の技術案を採用することができる。
入力電圧の正の最大相に対応するBUS電圧と入力電圧の負の最大相に対応するBUS電圧との差を計算し、電圧バランスループの誤差入力とする。主相に対応するBUS電圧とBUS平均値との差を計算して、電圧バランスループの調整方向を決定する。電圧バランスループの出力を、既に決められた調整方向に従って三相整流器の各相の制御システムに注入する。PWM発生モジュールによってPWM制御信号を発生させ、そして駆動モジュールによって三相変換器における各電力変換ユニット内のスイッチングデバイスのオンとオフを制御することで、各ウェイのBUSコンデンサの充放電時間を制御し、最終的に電圧バランスの効果を達成する。
【0032】
本実施例において、前記主相とは、入力電圧の絶対値が最大の相をいう。前記電圧バランス調整の方向とは、主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧より大きい場合、主相の調整方向は「+」で、他の二相の調整方向は「-」となる。すなわち、主相のデューティ比を増大させ、対応するBUS電圧を低下させ、他の二相のデューティ比を減少させ、対応するBUS電圧を上昇させることで、三ウェイのBUS電圧の電圧バランス効果を達成する。主相に対応するBUS電圧値とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧より小さい場合、主相の調整方向は「-」で、他の二相の調整方向は「+」となる。すなわち、主相のデューティ比を減少させ、対応するBUS電圧を上昇させ、他の二相のデューティ比を増大させ、対応するBUS電圧を減少させることで、三ウェイのBUS電圧の電圧バランス効果を達成する。主相に対応するBUS電圧値とBUS電圧の平均値との差が△uより小さく且つ-△u より大きい場合、電圧バランス調整をしない。
【0033】
さらに、この電圧バランス制御ループの出力を、既に決められた調整方向に従って三相整流器の各相の制御システムに注入する。決定された調整方向に応じて、電圧バランスループの出力を制御システムの出力デューティ比に直接重ね合わせ、パワースイッチトランジスタのオンオフ時間を直接制御することができる。また、電圧バランスループの出力を各相のフィードフォワードデューティ比の計算に注入し、フィードフォワード計算における入力相電圧の大きさを調整することでフィードフォワードデューティ比の大きさを調整し、最終的に各相のパワースイッチトランジスタのオンオフ時間を調整することが可能である。電圧バランスループ出力の注入点は、制御システムの任意の制御ノードを選択することができる。異なる注入点の選択による電圧バランス効果への影響は大きくない。
【0034】
本実施例において、ループ誤差の計算、制御ループの設計及び補償調整制御方向の計算が含まれる。本実施例で使用するデジタルコントローラはDSPを含むが、これに限定されず、シングルチップマイコンやARMなど他のコントローラとして実施してもよい。本発明の実施例で使用する電圧バランスループ制御アルゴリズムは、比例レギュレータ、積分レギュレータ、比例積分レギュレータ、比例積分微分などのレギュレータを含むが、これらに限定されない。本発明の実施例に適用するトポロジーは単相モジューラ組み合わせ式三相整流器に限定されず、他の単相、三相マルチBUSのトポロジー構造、例えば単相マルチウェイPFC直列回路、三相星型、デルタ型PFCトポロジー回路なども適用される。
【0035】
本実施例によれば、3BUS及びマルチBUSの三相電力変換装置に簡単で使いやすく、低コストのデジタル電圧バランス制御方法を提供する。従来のソフトウェア電圧バランス制御方法では解決できないマルチBUS三相整流変換器の直流コンデンサの電圧バランス問題を解決した。このような電圧バランス制御方法を採用すると、マルチBUSの電圧差を規定範囲内に制御できるとともに、整流モジュールの出力リップルをうまく低減させ、入出力の指標を高めることができる。
【0036】
実施例1
本実施例において、単相モジューラ組み合わせ式三相PFC整流トポロジーは、高効率、高電力密度と低コストという業界のニーズを大幅に実現できる。
図2に示すように、この電力変換装置は主に、電源ユニット、インダクタユニット、電力変換ユニットグループと制御ユニットを含む。ここで、電源ユニットは一つの三相交流電源を含み、三つのインダクタユニットはインダクタで構成され、電力回路の充放電を実現し、電力変換ユニットグループは三つの電力変換ユニットを含む。電源ユニットの三相出力はそれぞれ三つのインダクタユニットと直列に接続され、それぞれの電力変換ユニットの一端の入力はそれぞれ対応するインダクタユニットに接続され、他端が星形結線されている。各電力変換ユニットの出力に一つのBUSコンデンサが接続されている。各電力変換ユニットの出力BUS電圧は、電力変換装置の電力変換結果とされる。
【0037】
本実施例における電力変換ユニットは
図3に示すように、Q1、Q2は2つの電力MOSトランジスタで、高周波スイッチトランジスタであり、駆動PWM1、PWM2は制御ユニットが計算により得られ、PWM駆動デューティ比の大きさを制御することでMOSトランジスタのオンオフ時間を制御することで、BUSコンデンサC1の電圧の大きさを制御する。VT1、VT2は産業用周波数逆流トランジスタで、パワーダイオードを含むが、これに限定されず、MOSトランジスタなどのパワースイッチトランジスタを採用することもできる。高周波MOSトランジスタの中点COMは昇圧インダクタに接続され、産業用周波数ダイオードの中点Nは他のパワーユニットのN点と接続され、星型接続を構成する。
【0038】
本実施例の制御ユニットは
図4に示すように、制御ユニットが入力電圧、インダクタ電流およびBUS電圧をサンプリングし、ループ制御計算によって各電力変換モジュールの制御信号を得ることで、安定したBUS電圧を得る。詳細には、制御ユニットはサンプリングサブユニット、アナログデジタル変換サブユニット、フィードフォワード、電圧ループ、電流ループ、電圧バランスサブユニットおよびPWM駆動サブユニットを含む。
【0039】
具体的には、本実施例において、サンプリングサブユニットは、演算増幅器などの信号調整回路によって、三相電源の線間電圧、三相インダクタのインダクタ電流、三相BUSのBUS電圧をサンプリングし、サンプリングされたアナログ量をメイン制御チップDSPのADCポートに送り込む。
【0040】
さらに、DSP内部のアナログデジタル変換サブユニットは、サンプリングしたアナログ信号をデジタル信号に変換し、実際の電圧電流値に復元し、電圧ループ、電流ループおよび電圧バランスサブユニットの計算に入れる。
【0041】
【0042】
電圧バランス制御ポリシーをかけていない場合、フィードフォワードデューティ比D0と微調整デューティ比D1を重ね合わせて、各相の比較値である変調波Ua、Ub、Ucを計算し、
図5に示すように、それぞれ正と負の半周期の三角キャリア波と比較して各相のスイッチング駆動波形Sa、Sb、Scを得て、それぞれ各相の電力変換ユニットに送り込んで、スイッチトランジスタのオンオフを制御する。このときの主相はA相で正の半周期にあり、B相とC相の相電圧は負の半周期にあり、その他の時刻の生成される波形はこれと似ている。このとき、各相のBUS電圧が目標値に近いことしか保証できず、三相のBUS電圧が完全に等しくなるように効果的に制御することはできない。このため、実施例では電圧バランスサブユニットを追加した。
【0043】
詳しくは、
図6の△t時刻を例にとると、A、B、Cはそれぞれ三相入力相電圧で、△t時刻にサンプリングによって三相入力相電圧を計算してから、三相電圧の絶対値の大きさを比較すると、このときのA相の電圧は絶対値が最大で、正の半周期にあり、正の最大相で、主相でもあり、B相は負の最大相であり、C相は中間相である。正と負の最大相A相、B相に対応するBUS電圧の差を取り、差値を電圧バランスループの誤差入力とする。電圧バランスループ(Pレギュレータ、PIレギュレータおよびPIDレギュレータを含むが、これらに限定されない)によって計算して絶対値を取ると、電圧バランス調整デューティ比D2を得る。このデューティ比は、各相の電圧バランス調整方向に応じて最終のデューティ比に重ね合わせる必要がある。
【0044】
さらに、電圧バランス調整方向は主相のBUS電圧と三相のBUS電圧の平均値との差によって決まる。詳細には、主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧△uより大きい場合、すなわち主相BUSの電圧が高めである場合、主相の電圧バランス調整方向は「+」で、他の二相の電圧バランス調整方向は「-」となり、主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧-△uより小さい場合、すなわち主相BUSの電圧が低めである場合、主相の電圧バランス調整方向は「-」で、他の二相の電圧バランス調整方向は「+」となり、主相に対応するBUS電圧値とBUS電圧の平均値との差が△uより小さく且つ-△uより大きい場合、電圧バランス調整をしない。
【0045】
詳細には、
図6の△t時刻でA相に対応するBUS電圧がBUS平均値に比べて高めであると仮定すると、このときA相の電圧バランス調整方向は「+」で、B相、C相の電圧バランス調整方向は「-」で、A相のデューティ比はフィードフォワードと電流ループのデューティ比にD2を加えて、B相、C相のデューティ比の方は、元のデューティ比からD2を差し引く。電圧バランスポリシーをかけた後の変調波は
図7のように、本実施例では正の半周期のキャリア波と負の半周期のキャリア波の方向が逆であるため、正の半周期にあるA相の変調波を反転させると、元の比較値Ua、Ub、Ucは全て下へ△Uだけシフトし、電圧バランス後の比較値Ua’、Ub’、Uc’を得る。つまり、変調波に同じ量が重ね合わせられ、入力電流のバランスが保証され、波形に歪みが生じない。
図7から分かるように、処理後の変調波はUa’<Ua、Ub’>Ub、Uc’>Ucで、キャリア波と比較して得られる駆動波形は、図中のSa’、Sb’、Sc’である。電圧バランス制御ポリシーをかけると、A相の駆動デューティ比が増加し、B相とC相のデューティ比が減少し、且つ、増加、減少の差値が等しいため、A相BUSコンデンサの充電時間が短縮され、BUS電圧が低下し、B相とC相のBUSコンデンサの充電時間が長くなり、対応するBUS電圧が上昇することで、三相のBUS電圧のバランスを達成する。
図6中の△t時刻で、主相A相に対応するBUS電圧が三相BUSの平均値より低い場合、電圧バランス調整方向は
図7と逆になり、A相のBUS電圧が三相のBUS電圧値と等しい場合、電圧バランス調整を行わず、各相駆動波形はSa、Sb、Scのままである。他の任意の時刻および他の電圧不平衡状態での調整方法はこれに類似する。
【0046】
本実施例で使用する三相電圧バランス制御フローは
図8に示す。主に以下のステップが含まれる。
【0047】
ステップS801:三相入力の相電圧サンプリングから正の最大相、負の最大相および主相を判断し、ここで、主相は入力相電圧の絶対値が最大の相である。
【0048】
ステップS802:正の最大相と負の最大相に対応するBUS電圧の差を計算し、電圧バランスループの誤差入力とする。
【0049】
ステップS803:誤差を電圧バランスループに入力して計算し、電圧バランスループはPIレギュレータ、PIDレギュレータを使用しても、他の制御アルゴリズムを使用してもよく、本実施例では電圧バランスループの出力の絶対値を取ってD2を得る。
【0050】
ステップS804:主相のBUS電圧と三相BUS電圧の平均値との差に応じて、各相の駆動デューティ比の調整方向を判断する。つまり、主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧△uより大きい場合、主相の駆動デューティ比の調整方向は「+」で、他の二相は「-」となり、主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧-△uより小さい場合、主相の駆動デューティ比の調整方向は「-」で、他の二相は「+」となり、主相に対応するBUS電圧値とBUS電圧の平均値との差が△uより小さく且つ-△uより大きい場合、電圧バランス調整をしない。
【0051】
ステップS805:各相駆動の調整方向に応じて、電圧バランスループから出力される絶対値D2を各相の駆動デューティ比に重ね合わせる。
【0052】
以上の実施例により、PWM駆動サブユニットにおいてPWM変調波を最適化して駆動信号を得て、駆動回路によって電力変換ユニット内のパワースイッチトランジスタに作用して、各ウェイのコンデンサの充電時間を制御することで、アクティブ電圧バランスの効果を達成する。
【0053】
本実施例において、簡単な計算と論理的判断を行うだけであるので、デジタル制御に非常に適している。以上の技術案におけるコントローラはシングルチップマイコン、DSP、ARMなどを含むが、これらに限定されず、この技術案は単相モジューラ組み合わせ式の三相PFC回路に使用できるが、これに限定されず、マルチウェイ電圧バランスを必要とするあらゆる整流回路にも使用できる。
【0054】
実施例2
本実施例の電力部分は実施例1と同様で、
図9に示すように、この電力変換装置は主に、電源ユニット、インダクタユニット、電力変換ユニットグループと制御ユニットを含む。ここで、電源ユニットは一つの三相交流電源を含み、三つのインダクタユニットはインダクタで構成され、電力回路の充放電を実現し、電力変換ユニットグループは三つの電力変換ユニットを含む。電源ユニットの三相出力はそれぞれ三つのインダクタユニットと直列に接続され、それぞれの電力変換ユニットの一端の入力はそれぞれ対応するインダクタユニットに接続され、他端が星形結線されている。各電力変換ユニットの出力に一つのBUSコンデンサが接続されている。各電力変換ユニットの出力BUS電圧は、電力変換装置の電力変換結果とされる。
【0055】
図9に示すように、制御ユニットが入力電圧、インダクタ電流およびBUS電圧をサンプリングし、ループ制御計算によって各電力変換モジュールの制御信号を得ることで、安定したBUS電圧を得る。詳細には、制御ユニットはサンプリングサブユニット、アナログデジタル変換サブユニット、電圧ループ、電流ループ、電圧バランスサブユニット、フィードフォワードおよびPWM駆動サブユニットを含む。
【0056】
具体的には、サンプリングサブユニットは、演算増幅器などの信号調整回路によって、三相電源の線間電圧、三相インダクタのインダクタ電流、三相BUSのBUS電圧をサンプリングし、サンプリングされたアナログ量をメイン制御チップDSPのADCポートに送り込む。
【0057】
さらに、DSP内部のアナログデジタル変換サブユニットは、サンプリングしたアナログ信号をデジタル信号に変換し、実際の電圧電流値に復元し、フィードフォワード、電圧ループ、電流ループおよび電圧バランスサブユニットの計算に入れる。
【0058】
具体的には、サンプリングで得られた三相のBUS電圧からBUS電圧の平均値を算出し、目標として設定されたBUS電圧と差を取り、電圧ループの誤差入力を得て、電圧ループ(Pレギュレータ、PIレギュレータおよびPIDレギュレータを含むが、これらに限定されない)により出力電流ループの設定値を計算する。電流ループの設定値とリアルタイムでサンプリングされた各相電流との差は、電流ループの入力として、電流ループ(Pレギュレータ、PIレギュレータおよびPIDレギュレータを含むが、これに限定されない)の出力D1はPWMデューティ比の微調整部分となる。
【0059】
【0060】
具体的には、電圧バランスループの誤差入力は正の最大相に対応するBUS電圧と負の最大相に対応するBUS電圧との差であり、電圧バランスループ(Pレギュレータ、PIレギュレータおよびPIDレギュレータを含むが、これらに限定されない)によって出力|△U|を計算する。重ね合わせ記号に応じて、各相のフィードフォワードの計算に入れる。
【0061】
さらに、重ね合わせ記号は主相の電圧バランス調整方向と入力電圧方向の積で決定され、電圧バランス調整方向は主相のBUS電圧と三相BUSの平均値との差で決定される。主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧△uより大きい場合、すなわち主相BUSの電圧が高めである場合、主相の電圧バランス調整方向は「-」となり、主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧-△uより小さい場合、すなわち主相BUSの電圧が低めである場合、主相の電圧バランス調整方向は「+」となり、主相に対応するBUS電圧値とBUS電圧の平均値との差が△uより小さく且つ-△uより大きい場合、電圧バランス調整方向は「0」となり、すなわち、調整しない。主相入力電圧が正の半周期である場合、入力電圧方向は「+」で、主相入力電圧が負の半周期である場合、入力電圧方向は「-」となる。主相の電圧バランス調整方向と主相入力電圧方向との積は、各相のフィードフォワード計算式におけるVinの重ね合わせ記号であり、重ね合わせ値は何れも電圧バランスループの出力|△U|である。
【0062】
【0063】
本実施例で使用する三相電圧バランス制御フローは
図11に示す。主に以下のステップが含まれる。
【0064】
ステップS1101:三相入力の相電圧サンプリングから正の最大相、負の最大相および主相を判断し、ここで、主相は入力相電圧の絶対値が最大の相である。
【0065】
ステップS1102:正の最大相と負の最大相に対応するBUS電圧の差を計算し、電圧バランスループの誤差入力とする。
【0066】
ステップS1103:電圧バランスループはPIレギュレータ、PIDレギュレータを使用しても、他の制御アルゴリズムを使用してもよく、本実施例では電圧バランスループの出力の絶対値を取って|ΔU|を得る。
【0067】
ステップS1104:主相のBUS電圧と三相のBUS電圧の平均値との差に応じて、電圧バランス調整方向を判断する。主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧△uより大きい場合、すなわち主相BUSの電圧が高めである場合、主相の電圧バランス調整方向は「-」となり、主相に対応するBUS電圧とBUS電圧の平均値との差がある特定の電圧-△uより小さい場合、すなわち主相BUSの電圧が低めである場合、主相の電圧バランス調整方向は「+」となり、主相に対応するBUS電圧値とBUS電圧の平均値との差が△uより小さく且つ-△uより大きい場合、電圧バランス調整方向は「0」となり、すなわち、調整しない。
【0068】
ステップS1105:主相入力電圧の半周期の正負を判断し、正の半周期にある場合、入力電圧方向は「+」で、負の半周期にある場合、入力電圧方向は「-」となる。
【0069】
ステップS1106:主相の電圧バランス調整方向と入力電圧の方向との積、すなわち電圧バランス重ね合わせ記号に応じて、電圧バランスループの出力を各相の瞬時入力電圧サンプリング値Vinに重ね合わせて、フィードフォワードのデューティ比の計算に入れる。
【0070】
ステップS1107:各相のフィードフォワードデューティ比D0を電流ループの出力D1に加算し、各相の変調波を得て、PWM駆動サブユニットによって、三角キャリア波と比較して、各電力変換ユニットのパワースイッチの駆動信号を得る。
【0071】
以上の方法で直接フィードフォワードのデューティ比を最適化して最終的な駆動信号を得て、駆動回路によってパワースイッチに作用して、各ウェイのコンデンサの充電時間を制御することで、アクティブ電圧バランスの効果を達成する。この方法によれば、簡単な計算と論理的判断を行うだけであるので、デジタル制御に非常に適しており、ハードウェアコストを増やす必要はない。以上の技術案におけるコントローラはシングルチップマイコン、DSP、ARMなどを含むが、これらに限定されず、この技術案は単相モジューラ組み合わせ式の三相PFC回路に使用できるが、これに限定されず、マルチBUS電圧バランスを必要とするあらゆる整流回路にも使用できる。
【0072】
図12を参照し、本発明のもう一つの実施例によれば、電力変換器12を提供し、前記電力変換器12は、制御ユニット121と電力変換ユニット122を含み、前記制御ユニット121は電圧バランスループ1211を含み、前記電圧バランスループ1211は、前記電力変換器12の複数の相電圧のうち、正の最大相のBUS電圧と負の最大相のBUS電圧との差を誤差入力として、各相の電圧バランス調整デューティ比を計算して、主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差に応じて、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定するように構成されており、ここで、前記主相は、前記複数の相電圧のうち、絶対値が最大の相であり、前記電力変換ユニット122は、前記各相の駆動デューティ比の調整方向と前記各相の電圧バランス調整デューティ比に基づいて、前記電力変換器12の各相のBUS電圧に対してバランス調整を行う。
【0073】
図4及び
図9を参照し、いくつかの実施例において、前記制御ユニットはさらに、前記変換器の前記複数の相電圧をサンプリングするように構成されたサンプリングサブユニットを含む。
【0074】
いくつかの実施例において、前記電圧バランスループは、少なくとも以下の方法のうちの一つにより、前記各相の駆動デューティ比の調整方向を決定する。前記主相のBUS電圧と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第1既定電圧より大きい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を下げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を上げる方向である。前記主相に対応するBUS電圧値と全ての相のBUS電圧の平均値との差が第2既定電圧より小さい場合、前記主相の駆動デューティ比の調整方向は、前記主相のBUS電圧を上げる方向であり、他の相の駆動デューティ比の調整方向は、他の相のBUS電圧を下げる方向である。前記主相に対応するBUS電圧値と全てのBUS電圧の平均値との差が前記第2既定電圧より大きく、且つ第1既定電圧より小さい場合、各相のBUS電圧を調整しない。
【0075】
いくつかの実施例において、前記制御ユニットはさらに、サンプリングされた前記複数の相電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するように構成されたアナログデジタル変換サブユニットと、目標電圧と各相の入力相電圧から、各相のフィードフォワードデューティ比を計算により得るように構成されたフィードフォワードサブユニットと、各相のBUS電圧の平均値と目標として設定されたBUS電圧との差を誤差入力として計算し、電流ループの設定値を出力するように構成された電圧ループと、前記電流ループの設定値と各相の電流との差を電流ループの入力として、PWMデューティ比の微調整部分を出力するように構成された電流ループと、前記各相の駆動デューティ比の調整方向に応じて、前記各相の電圧バランス調整デューティ比と、各相のフィードフォワードデューティ比及びPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせ、各相の重ね合わせ後のデューティ比に基づいて各相の変調波を得て、前記各相の変調波をPWM駆動信号に変換してから前記電力変換ユニットに出力するように構成されたPWM駆動サブユニットと、を含む。
【0076】
いくつかの実施例において、前記制御ユニットはさらに、サンプリングされた前記複数の相電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換するように構成されたアナログデジタル変換サブユニットと、各相のBUS電圧の平均値と目標として設定されたBUS電圧との差を誤差入力として計算し、電流ループの設定値を出力するように構成された電圧ループと、前記電流ループの設定値と各相の電流との差を電流ループの入力として、PWMデューティ比の微調整部分を出力するように構成された電流ループと、前記各相の電圧バランスループ出力値を各相の瞬時入力電圧サンプリング値に重ね合わせて、各相のフィードフォワードデューティ比を計算するように構成されたフィードフォワードサブユニットと、前記各相の駆動デューティ比の調整方向に応じて、前記各相のフィードフォワードデューティ比及びPWMデューティ比の微調整部分を重ね合わせ、各相の重ね合わせ後のデューティ比に基づいて各相の変調波を得て、前記各相の変調波をPWM駆動信号に変換してから前記電力変換ユニットに出力するように構成されたPWM駆動サブユニットと、を含む。
【0077】
いくつかの実施例において、前記電力変換ユニットはさらに、前記PWM駆動信号に応じて、前記変換器の制御パワースイッチのオンとオフを制御し、且つ、各相に対応するBUS電圧を調整するように構成されている。
【0078】
以上の実施態様の説明を通して、当業者は、上記の実施例の方法によれば、ソフトウェアに必要な汎用ハードウェアプラットフォームを加える方法(勿論ハードウェアによることも可能であるが、多くの場合では前者がより良い実施方法)で実現できることを明確に理解できる。このような理解に基づいて、本発明実施例の技術案は、本質としては、又は先行技術に対して貢献する部分は、ソフトウェア製品の形式で体現できる。当該コンピュータソフトウェア製品は記憶媒体(例えばROM/RAM、磁気ディスク、光ディスク)の中に記憶でき、一台の端末機器(携帯電話、コンピュータ、サーバ、又はネットワーク機器等でもよい)に本発明の各実施例で説明する方法を実行させるためのいくつかの命令を含む。
【0079】
本発明の実施例はさらに記憶媒体を提供し、当該記憶媒体にはコンピュータプログラムが記憶されており、当該コンピュータプログラムは、実行時に上記の何れか一つの方法実施例におけるステップを実行するように構成されている。
【0080】
本実施例において、上記記憶媒体は、USBメモリ、読み取り専用メモリ(Read-Only Memory、ROMと略称する)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAMと略称する)、モバイルハードディスク、磁気ディスク又は光ディスクなど、コンピュータプログラムを記憶できる各種媒体を含むが、これらに限定されない。
【0081】
図13を参照すると、本発明の実施例はさらにメモリ1301とプロセッサ1302とを含む電子装置を提供し、当該メモリ1301にはコンピュータプログラムが記憶されており、当該プロセッサ1302は、上記の何れか一つの方法実施例におけるステップを実行するためにコンピュータプログラムを実行するように構成されている。
【0082】
いくつかの実施例において、上記電子装置はさらに、伝送装置及び入出力装置を含んでもよく、当該伝送装置は上記プロセッサと接続され、当該入出力装置は上記プロセッサと接続されている。
【0083】
本実施例おける具体的な例は、上記実施例及び代替の実施形態に記載された例を参照することができ、本実施例はここでは説明を省略する。
【0084】
本発明の上記実施例において、ハードウェアコストを余計に増やすことなく、ソフトウェアに電圧バランス制御ループを追加することができ、このループの制御誤差は、入力電圧の正の最大相に対応するBUS電圧と入力電圧の負の最大相に対応するBUS電圧をリアルタイムでサンプリングして差を取ることで得られる。誤差をループによって調整してから、主相に対応するBUS電圧と他の相のBUSの平均値との差によって、電圧バランスループの出力を各相の制御システムに注入するときの調整方向を決定する。これによって、各相のBUSコンデンサの充放電時間を正確に変化させ、各相のBUS電圧のバランスを実現する。
【0085】
明らかに、上記の本発明の各モジュール又は各ステップは、汎用のコンピューティング装置で実現でき、これらは単一のコンピューティング装置に集中してもよいし、あるいは、複数のコンピューティング装置からなるネットワーク上に分散してもよい。また、それらはコンピューティング装置が実行可能なプログラムコードで実現でき、したがって、それらを記憶装置に記憶させてコンピューティング装置によって実行できる。そして場合によっては、ここに示されたまたは説明されたステップは、異なる順序で実行することができ、または、それらをそれぞれの集積回路モジュールに作製し、あるいは、それらのうちの複数のモジュール又はステップを単一の集積回路モジュールに作製して実現できることは、当業者であれは理解できるはずである。このように、本発明は、いかなる特定のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにも限定されない。
【0086】
以上の記載は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。当業者にとって、本発明には各種の変更と変化が可能である。本発明の原則内で行われた修正、等価物による置換、改良等は本発明の保護範囲内に含まれるべきである。