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特許7418580不純物含有量の少ないABSゴム粉末及びその調製方法並びにABS樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】不純物含有量の少ないABSゴム粉末及びその調製方法並びにABS樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/16 20060101AFI20240112BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20240112BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C08F6/16
C08L25/12
C08L25/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022534831
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2019127650
(87)【国際公開番号】W WO2021127935
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】521147204
【氏名又は名称】万華化学集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 17, Tianshan Rd, YEDA, Yantai 264000 Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】韓強
(72)【発明者】
【氏名】張琴花
(72)【発明者】
【氏名】麻寧
(72)【発明者】
【氏名】趙以兵
(72)【発明者】
【氏名】孫双翼
(72)【発明者】
【氏名】劉波
(72)【発明者】
【氏名】孫一峰
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-520458(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106065037(CN,A)
【文献】特開平03-095205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物含有量の少ないABSゴム粉末の調製方法であって、
前記ABSゴム粉末を処理し、
前記処理は、
前記ABSゴム粉末を水又はアルカリ液で洗浄して前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量を監視し、前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量≦9000ppmになるまで前記水又はアルカリ液で洗浄し、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末を得るステップを含み、
前記可溶性有機炭素は、前記ABSゴム粉末における水に又はアルカリ液に溶解可能な有機炭素部分であり、
前記処理を行う前の前記ABSゴム粉末は、
ブタジエンと選択可能な第2のモノマーとを乳化重合し、ポリブタジエンラテックスを得るステップ(1)と、
前記ポリブタジエンラテックス、スチレン、アクリロニトリル及び選択可能な第3のモノマーを乳化重合し、グラフトABSラテックスを得るステップ(2)と、
前記グラフトABSラテックスを凝集-熟成処理してから、濾過して乾燥させ、前記ABSゴム粉末を得るステップ(3)を含む方法を用いて調製される、ことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
前記ABSゴム粉末を処理し、
前記処理は、
前記ABSゴム粉末を水又はアルカリ液で洗浄して前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量を監視し、前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量≦5000ppmになるまで前記水又はアルカリ液で洗浄し、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記処理は、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末を水又は酸液で洗浄して前記ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を監視し、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末における鉄イオンの含有量≦50ppmになるまで前記水又は酸液で洗浄するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末における鉄イオンの含有量≦10ppmになるまで前記水又は酸液で洗浄する、ことを特徴とする請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記アルカリ液は含有量の質量百分率が0.1~3%の水溶液であり、
前記アルカリ液は、アンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液から選ばれる、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の調製方法。
【請求項6】
前記酸液は含有量の質量百分率が0.1~3%の水溶液であり、
且つ前記ABSゴム粉末を水で洗浄する場合、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末を水又は酸液で洗浄し、前記ABSゴム粉末をアルカリ液で洗浄する場合、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末を酸液で洗浄し、
前記酸液は、酢酸水溶液、塩酸水溶液又は硫酸水溶液から選ばれる、ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ(3)に記載の凝集-熟成処理は前記グラフトABSラテックスに凝集剤を加えて凝集してから、0.5~2時間熟成することである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ(1)では、前記乳化重合は、前記ブタジエン、選択可能な前記第2のモノマー、乳化剤、選択可能な緩衝剤、連鎖移動剤、開始剤及び水を混合し、60~90℃で前記乳化重合を行い、前記ポリブタジエンラテックスを得て、前記ポリブタジエンラテックスの粒径は、200~400nmであることを含み、
ステップ(1)では、重量部で前記ブタジエンは90~100部、前記第2のモノマーは0~10部、前記乳化剤は1~5部、前記緩衝剤は0~1部、前記連鎖移動剤は0.2~0.7部、前記開始剤は0.1~0.5部、前記水は100~150部である、ことを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップ(1)では、重量部で前記ブタジエンは93~98部、前記第2のモノマーは2~7部、前記乳化剤は2~4部、前記緩衝剤は0.3~0.7部、前記連鎖移動剤は0.3~0.6部、前記開始剤は0.2~0.4部、前記水は110~140部である、ことを特徴とする請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
ステップ(2)では、前記乳化重合は、前記ポリブタジエンラテックス、前記スチレン、前記アクリロニトリル、選択可能な前記第3のモノマーを、乳化剤、開始剤、連鎖移動剤、選択可能な緩衝剤及び選択可能な水と混合し、60~90℃で前記乳化重合を行うステップを含み、
ステップ(2)では、重量部で前記ポリブタジエンラテックスは55~70部、前記スチレンは20~35部、前記アクリロニトリルは5~20部、前記第3のモノマーは0~5部、前記乳化剤は0.2~1部、前記開始剤は0.1~0.5部、前記連鎖移動剤は0.1~1部、前記緩衝剤は0~0.01部、前記水は0~20部である、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の調製方法。
【請求項11】
ステップ(2)では、重量部で前記ポリブタジエンラテックスは60~65部、前記スチレンは25~30部、前記アクリロニトリルは10~15部、前記第3のモノマーは1~3部、前記乳化剤は0.4~0.8部、前記開始剤は0.2~0.4部、前記連鎖移動剤は0.3~0.7部、前記緩衝剤は0.006~0.008部、前記水は5~15部である、ことを特徴とする請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
ステップ(1)では、前記第2のモノマーはスチレン、アクリロニトリル又はメタクリル酸メチルから選ばれる1種又は複数種であり、
ステップ(2)では、前記第3のモノマーはブタジエン及び/又はメタクリル酸メチルから選ばれる、ことを特徴とする請求項~11のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項13】
ステップ(1)及び(2)では、前記乳化剤はアニオン系乳化剤から選ばれ、オレイン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム又は不均化ロジン酸カリウムから選ばれる1種又は複数種であり、
前記緩衝剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムから選ばれる1種又は複数種であり、
前記連鎖移動剤はt-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー又は3-メルカプトプロピオン酸イソオクチルから選ばれる1種又は複数種であり、
ステップ(1)では、前記開始剤は過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム又は過硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は複数種であり、
ステップ(2)では、前記開始剤は酸化-還元開始剤から選ばれ、ただし、前記酸化-還元開始剤における酸化剤成分は過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド又はクメンヒドロペルオキシドから選ばれる1種又は複数種であり、前記酸化-還元開始剤における還元剤成分はホルムアルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、乳糖、グルコース、ソルボース、果糖、麦芽糖又は硫酸鉄(II)から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
ステップ(3)では、前記凝集剤は塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸又は酢酸から選ばれる1種又は複数種であり、
前記凝集剤は、濃度の質量百分率が2~10%の凝集剤水溶液であり、前記凝集剤の添加量は前記グラフトABSラテックスにおける固形分の4~6wt%である、ことを特徴とする請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
上記請求項1~14のいずれか一項に記載の調製方法で調製された不純物含有量の少ないABSゴム粉末をSAN樹脂とブレンドしてABS樹脂を調製して得られ、前記ABS樹脂のイエローインデックス≦18である、ことを特徴とするABS樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジニアリングプラスチックABS樹脂製造の技術分野に属し、特にイエローインデックスの低いABS樹脂の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ABS樹脂は、ブタジエン、スチレン及びアクリロニトリルを三元共重合で得られる5つの主要な合成樹脂の1つであり、機械、自動車、電子機器、計器・メータ、紡織及び建築などの分野に広く使用されており、用途が非常に広い熱可塑性エンジニアリングプラスチックである。
【0003】
現在、ABS樹脂の調製方法は、連続バルク法と乳化グラフト-バルクSANブレンド法の2種の方法が広く使用されている。現段階で、乳化グラフト-バルクSANブレンド法は、技術が先進的で、製品の範囲が幅広く、単一セットの装置の産量が多く、汚染が低いという利点を有し、ABS樹脂製造の主流の方法になっている。
【0004】
乳化グラフト-バルクSANブレンド法の製造ステップは、次の通りである。まず、ブタジエンを重合してポリブタジエンラテックス(PBL)を製造し、次にポリブタジエンラテックスをスチレンとアクリロニトリルとグラフト重合させ、凝集乾燥した後にABSグラフト粉末を得て、さらにABSグラフト粉末をバルク法で製造されたSAN樹脂とブレンドして造粒し、ABS樹脂を得る。
【0005】
自動車、家電製品などのいくつかの使用分野では、外観に対する要求が高く、ABS樹脂が低いイエローインデックスを有することが要求される。
【0006】
特許CN109608782Aは、グラフト粉末のシェル部分にエポキシ基を有する官能性モノマーを導入し、エポキシ基でシアノ基と反応させることにより受熱過程でABS樹脂におけるアクリルシアノ基間の環化反応を遅くすることで、ABS樹脂のイエローインデックスを低下させる耐黄変性ABS樹脂の調製方法を開示している。この方法は、加工過程でのABS樹脂のイエローインデックスを低下させることができるが、ABS樹脂自体のイエローインデックスに対する改善は大きくなく、且つ導入したエポキシ基官能性モノマーとアクリルシアノの反応過程を制御できず、多くの副反応がある。
【0007】
特許CN201711360467Xは、ABS樹脂に黄変防止剤を添加する方法でABSのイエローインデックスを低下させる高性能長時間作用型耐黄変性ABS材料及びその調製方法を開示している。特許CN103819802Bは、酸化防止剤330、酸化防止剤168、酸化防止剤1076を添加することで複合酸化防止剤を調製し、他の補助剤と配合した相乗効果により、酸化誘導期間を延ばし、イエローインデックスを低下させる高密度ポリエチレン複合補助剤及びその調製方法を開示している。上記2つの特許は、いずれも補助剤を追加することにより、製品のイエローインデックスを改善し、製品のコストを向上させている。
【0008】
連続バルク調製プロセスと比較して、乳化グラフト-バルクSANブレンド法で調製されたABS樹脂の色が黄色に近接しており、これは、乳化グラフト-バルクSANブレンド法でABS粉末ユニットを製造するときに大量の補助剤を使用するためである。
【0009】
したがって、低いイエローインデックスを有する乳化グラフト-バルクSANブレンドプロセスでABS樹脂を製造する製造方法を開発することが急務となっている。
【発明の概要】
【0010】
これを考慮して、本発明は、不純物含有量の少ないABSゴム粉末及びその調製方法並びにそれから製造されたABS樹脂を提供し、ABSゴム粉末における可溶性有機炭素又は可溶性有機炭素及び鉄イオンの含有量を制御することによりイエローインデックスの低いABS樹脂を得る。
【0011】
本発明の目的を実現するために、本発明は下記の技術案を採用する。
本発明の第1の態様は不純物含有量の少ないABSゴム粉末の調製方法を提供し、前記ABSゴム粉末を処理し、前記処理は、
前記ABSゴム粉末を洗浄液1で洗浄して前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量を監視し、前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量≦9000ppmになるまで前記洗浄液1で洗浄し、例えば、可溶性有機炭素の含有量は8600ppm、4500ppm、4377ppm、3700ppmである、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末を得るステップを含む。
【0012】
いくつかの好ましい実施形態では、前記ABSゴム粉末を処理し、前記処理は、
前記ABSゴム粉末を洗浄液1で洗浄して前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量を監視し、前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量≦5000ppmになるまで前記洗浄液1で洗浄し、例えば、可溶性有機炭素の含有量は4500ppm、4377ppm、3700ppmである、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末を得るステップを含む。
【0013】
いくつかの具体的な実施形態では、前記ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量M≦9000ppmになるまで洗浄し、例えば、可溶性有機炭素の含有量は8600ppm、4500ppm、4377ppm、3700ppmであり、その後、洗浄したABSゴム粉末を濾過して40~80℃でその水の含有量が約1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末を得る。
【0014】
上記で係る調製方法では、洗浄したABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量≦9000ppm、例えば、8600ppm、4500ppm、4377ppm、3700ppmに制御し、好ましくは、洗浄したABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量≦5000ppm、例えば、4500ppm、4377ppm、3700ppmに制御する。上記調製方法では、上記処理で重合物ゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量の範囲を制御することにより、系内に残ったTOC(全有機炭素)における可溶性部分(即ち、可溶性有機炭素)の質量濃度が低いほど、重合物ゴム粉末に寄与する不純物が少なく、それから調製された樹脂のイエローインデックスが低い。本発明に係る「可溶性有機炭素」とはABSゴム粉末における水に又はアルカリ液に溶解可能な有機炭素部分を指す。
【0015】
本発明において、係る重合物ゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量の単位「ppm」は前記ABSゴム粉末の質量に基づいて計算される。
【0016】
本発明の研究者は、研究過程において、可溶性有機炭素はABSゴム粉末の重合過程で導入されることが多く、重合過程で残った未反応のアクリロニトリルモノマー、乳化剤及び反応過程で生成されるオリゴマーのうち、アクリロニトリルのモノマーとオリゴマーは高温で架橋反応を起こし、長いアクリロニトリルセグメントが環化により共役し、共役二重結合が可視光における青いバンドを吸収し、生成物を黄土色のように見せることができ、また、乳化剤における二重結合は酸素によって容易に酸化され、色が暗くなり、これにより最終的なABS樹脂製品のイエローインデックスが増加することにつながり、本発明の調製方法の過程において、前記ABSゴム粉末を洗浄液1で洗浄し、可溶性有機炭素の含有量が上記の範囲に低減するまでABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量を監視することにより、黄変の原因となるABSゴム粉末における有機物の含有量を効果的に低下させることを発見した。
【0017】
更に、本発明の研究者は、ABSゴム粉末の調製過程に鉄イオンが導入されることを発見し、以下のような条件で説明されるが、本発明で説明される条件に限定されない。例えば、乳化重合の過程で、硫酸鉄(II)を開始剤における還元成分とするときに、鉄イオンが反応系に入り;例えば、酢酸の凝集でポリブタジエン凝集ラテックスを調製するとき、及び/又は、硫酸又は他の酸性物質を凝集剤としてグラフトラテックスを凝集するときに、酸による金属容器の腐食により、金属容器内の鉄が三価鉄の酸性塩の形で反応系に入る。系内の二価鉄イオンが酸化された後、水に溶解可能な硫酸鉄と水に溶解しない水酸化鉄が形成され、三価鉄イオンの独特の黄色は、製品のイエローインデックスの増加につながる。また、二価鉄イオンは可変原子価金属イオンとして、高温でABSゴム粉末に残った二重結合に触媒作用を奏す、それによって共役基を含む副生成物の生成が進行し、製品の黄変をもたらす。本発明において、係る鉄イオンは二価鉄イオン及び/又は三価鉄イオンを含む。
【0018】
いくつかの具体的実施形態では、上記で得られた不純物含有量の少ないABSゴム粉末を洗浄液2で洗浄し続け、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を監視し、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末における鉄イオンの含有量≦50ppm、例えば、46ppm、17.3ppm、17ppm、9ppm、8.2ppm、8ppm、7ppmになるまで前記洗浄液2で洗浄する。
【0019】
いくつかの具体的実施形態では、前記ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量≦50ppmになるまで洗浄してから、洗浄したABSゴム粉末を濾過し、40~80℃でその水の含有量が約1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末を得る。
【0020】
他のいくつかの具体的実施形態では、前記不純物含有量の少ないABSゴム粉末における鉄イオンの含有量≦10ppm、例えば、9ppm、8.2ppm、8ppm、7ppmになるまで、本発明の上記で得られた不純物含有量の少ないABSゴム粉末を洗浄液2で洗浄する。
【0021】
本発明において、前記洗浄液1は水又はアルカリ液から選ばれ、前記アルカリ液は含有量の質量百分率が0.1~3%の水溶液であり、いくつかの好ましい実施形態において、前記アルカリ液はアンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液から選ばれる。
【0022】
前記洗浄液2は水又は酸液から選ばれ、且つ前記洗浄液1が水から選ばれる場合、前記洗浄液2は水又は酸液から選ばれ、前記洗浄液1がアルカリ液から選ばれる場合、前記洗浄液2は酸液から選ばれ、前記酸液は、好ましくは酢酸水溶液、塩酸水溶液又は硫酸水溶液から選ばれる。
【0023】
本発明に係るABSゴム粉末は市販のABSゴム粉末製品を採用可能であり、例えば、韓国錦湖ERMA151B、HR-150F、HR-181、HR-183、HR-85、寧波台化BP-828、イノベーティブプラスチック(米国):338、360、日本SANYA S-3811、山東万達WD-132、WD-133、新湖(常州)石化DP60であり、本発明に係るABSゴム粉末の重合方法も従来の重合方法を選択可能であるが、特定の重合方法に限定されず、例えば、前記処理を行う前の前記ABSゴム粉末は、
ブタジエンと選択可能な第2のモノマーとを乳化重合し、ポリブタジエンラテックスを得るステップ(1)と、
前記ポリブタジエンラテックス、スチレン、アクリロニトリル及び選択可能な第3のモノマーを乳化重合し、グラフトABSラテックスを得るステップ(2)と、
前記グラフトABSラテックスを凝集-熟成処理してから、濾過して乾燥させ、前記ABSゴム粉末を得るステップ(3)とを含む方法を用いて調製され、
好ましくは、ステップ(3)に記載の凝集-熟成処理は前記グラフトABSラテックスに凝集剤を加えて凝集してから、0.5~2時間熟成することである。
【0024】
いくつかの具体的実施形態の中で、本発明のステップ(1)では、前記乳化重合は、前記ブタジエン、選択可能な前記第2のモノマー、乳化剤、選択可能な緩衝剤、連鎖移動剤、開始剤及び水を混合し、60~90℃で前記乳化重合を行い、前記ポリブタジエンラテックスを得て、前記乳化重合は、好ましくは前記ポリブタジエンラテックスの粒径が200~400nmになるまで行うことを含み、
ステップ(1)では、重量部で前記ブタジエンは90~100部、前記第2のモノマーは0~10部、前記乳化剤は1~5部、前記緩衝剤は0~1部、前記連鎖移動剤は0.2~0.7部、前記開始剤は0.1~0.5部、前記水は100~150部あり、
好ましくは、ステップ(1)では、重量部で前記ブタジエンは93~98部、前記第2のモノマーは2~7部、前記乳化剤は2~4部、前記緩衝剤は0.3~0.7部、前記連鎖移動剤は0.3~0.6部、前記開始剤は0.2~0.4部、前記水は110~140部である。
【0025】
いくつかの具体的実施形態では、本発明のステップ(2)では、前記乳化重合は、前記ポリブタジエンラテックス、前記スチレン、前記アクリロニトリル、選択可能な前記第3のモノマーを、乳化剤、開始剤、連鎖移動剤、選択可能な緩衝剤及び選択可能な水と混合し、60~90℃で前記乳化重合を行い、ブタジエンの転化率≧95%のときに減圧脱気し、残った低沸点物質を除去し、ブタジエンの残留モノマー≦1000ppmになるときにポリブタジエンラテックスを得るステップを含み、
ステップ(2)では、重量部で前記ポリブタジエンラテックスは55~70部、前記スチレンは20~35部、前記アクリロニトリルは5~20部、前記第3のモノマーは0~5部、前記乳化剤は0.2~1部、前記開始剤は0.1~0.5部、前記連鎖移動剤は0.1~1部、前記緩衝剤は0~0.01部、前記水は0~20部であり、
好ましくは、ステップ(2)では、重量部で前記ポリブタジエンラテックスは60~65部、前記スチレンは25~30部、前記アクリロニトリルは10~15部、前記第3のモノマーは1~3部、前記乳化剤は0.4~0.8部、前記開始剤は0.2~0.4部、前記連鎖移動剤は0.3~0.7部、前記緩衝剤は0.006~0.008部、前記水は5~15部である。
【0026】
いくつかの具体的実施形態では、本発明のステップ(1)では、前記第2のモノマーはスチレン、アクリロニトリル又はメタクリル酸メチルから選ばれる1種又は複数種であり、
本発明のステップ(2)では、前記第3のモノマーはブタジエン及び/又はメタクリル酸メチルから選ばれる。
【0027】
いくつかの具体的実施形態では、本発明のステップ(1)及び(2)では、前記乳化剤はアニオン系乳化剤から選ばれ、好ましくはオレイン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム又は不均化ロジン酸カリウムから選ばれる1種又は複数種であり、
前記緩衝剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムから選ばれる1種又は複数種であり、
前記連鎖移動剤はt-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー又は3-メルカプトプロピオン酸イソオクチルから選ばれる1種又は複数種であり、
本発明のステップ(1)では、前記開始剤は過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム又は過硫酸アンモニウムから選ばれる1種又は複数種であり、
本発明のステップ(2)では、前記開始剤は酸化-還元開始剤から選ばれ、ただし、前記酸化-還元開始剤における酸化剤成分は過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド又はクメンヒドロペルオキシドから選ばれる1種又は複数種であり、前記酸化-還元開始剤における還元剤成分はホルムアルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、乳糖、グルコース、ソルボース、果糖、麦芽糖又は硫酸鉄(II)から選ばれる1種又は複数種である。いくつかの具体的実施形態では、前記開始剤における酸化剤成分と還元剤成分の質量比は1~30:1、例えば、10:1、20:1、25:1である。
【0028】
いくつかの具体的実施形態では、本発明のステップ(2)では、前記凝集剤は塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸又は酢酸から選ばれる1種又は複数種であり、
前記凝集剤は、好ましくは濃度の質量百分率が2~10%の凝集剤水溶液であり、前記凝集剤の添加量は前記グラフトABSラテックスにおける固形分(固体質量)の4~6wt%である。
【0029】
本発明の第2の態様はABS樹脂を提供し、上記調製方法で調製されたABSゴム粉末をSAN樹脂とブレンドして前記ABS樹脂を調製して得られ、前記ABS樹脂のイエローインデックス≦18である。
【0030】
当業者に知られているように、SAN樹脂はスチレンアクリロニトリルの共重合体で、高い機械的強度を有するエンジニアリングプラスチックであり、ABS樹脂とはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体を指し、一般にSAN樹脂とABSゴム粉末を機械的にブレンドし、溶融して造粒し、乾燥させて調製して得えられ、ABSゴム粉末はABS樹脂を調製する原料に属する。
【0031】
いくつかの具体的実施形態では、重量部で前記機械的にブレンドする原料は20~40部の前記ABSゴム粉末、60~80部の前記SAN樹脂、0.1~0.8部の酸化防止剤及び潤滑剤を含み、ただし、酸化防止剤は、好ましくは2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、β-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸-n-ステアリルアルコール、テトラキス-[β-(3,5ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]-ペンタエリスリトールエステル、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジラウリルチオジプロピオン酸エステルから選ばれる1種又は複数種であり、例えば、酸化防止剤は市販のドイツBASF、B900を使用可能であり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム及びN,N-エチレンビスオクタデカンアミドから選択可能である。
【0032】
当業者に知られているように、SAN樹脂のイエローインデックスは非常に低く、ABS樹脂のイエローインデックスに与える影響が小さく、無視可能である。市販で取得可能であり、例えば、ELIX Polymers公司SAN 230G、250G、260G、280G、中石油大慶公司のSAN 327、325、350、国亨公司のSAN 168、奇美PN118L150などから選ばれる1種である。
【0033】
上記の技術案を採用して下記の技術効果を実現する。
本発明に係る不純物含有量の少ないABSゴム粉末の調製方法は、従来の技術に基づいて、ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量≦9000ppmに制御することにより、ABSゴム粉末における不純物含有量を低減し、好ましくは、同時にABSゴム粉末における鉄イオンの含有量≦50ppmに制御することにより、ゴム粉末における不純物含有量をさらに低減する。
【0034】
本発明は上記で得られたABSゴム粉末をABS樹脂の調製に使用することにより、得られた樹脂イエローインデックス≦18になり、ABS樹脂の使用分野が広がる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、具体的な実施例によって本発明の技術案及びその効果をさらに説明する。以下の実施例は、本発明の内容を説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。本発明の構想を使用して行われる本発明に対する簡単な変更は、すべて本発明が保護請求している範囲内に含まれる。
【0036】
本発明の実施例では以下のテスト方法を採用した。
(1)イエローインデックス:標準ASTM D6166、米国BYK Gardner計器を採用し、
(2)可溶性有機炭素の含有量:
ABSゴム粉末10gを取り、含有量の質量百分率が1%のKOH水溶液100gに十分に溶解し、不溶性物質を濾過し、残った濾液における可溶性有機炭素の含有量を検出し、濾液における可溶性有機炭素の含有量の検出は標準HJ 501-2009、Analytikjena multi N/C(登録商標) 3000シリーズTOC分析計を使用し、
ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量=10*濾液における可溶性有機炭素の含有量であり、
(3)金属イオン含有量:標準SL 394.1-2007、米国Agilent 720 ICP-OESスペクトロメーターを使用し、
(4)ラテックス粒径の検出:調製されたサンプルを取り、脱イオン水で質量濃度が0.05%に希釈してから、マルバーン-Nano-ZS90型粒度分析計でテストした。
【0037】
以下の実施例で使用された原料の情報は次の通りである。
SAN樹脂:鎮江奇美、PN118L150、
酸化防止剤:ドイツBASF、B900、
攀花化学(上海)有限公司、618、
ABSゴム粉末1:常州(新湖)石化、DP60、
ABSゴム粉末2:自社製、調製方法は次の通りである。
【0038】
本発明の実施例において、使用された他の原料及び他の試薬は、本分野における従来の試薬であり、それらの純度仕様は分析試薬である。
【0039】
ここで、ABSゴム粉末の調製例において、各部の数はいずれも重量部であり、
(1)ポリブタジエンラテックスの調製:各成分の重量部でオレイン酸カリウム1.5重量部、不均化ロジン酸カリウム1.5部、ブタジエン95部、スチレン5部、炭酸カリウム0.05部、水酸化カリウム0.05部、t-ドデシルメルカプタン(TDM)0.45部、過硫酸カリウム0.3部及び脱イオン水130部を反応釜に加え、70℃まで昇温して重合反応させ、ブタジエン転化率≧95%になるときに減圧脱気し、残った低沸点物質を除去し、ブタジエンの残留モノマー≦1000ppmになるときにポリブタジエンラテックスを得て、
上記ポリブタジエンラテックスに質量濃度が5%の酢酸溶液をゆっくりと加え、攪拌を開始し、粒径が300nmになるときに、質量濃度が5%のKOH溶液をゆっくりと加え、pHを10に調整するときに、凝集したポリブタジエンラテックスを得て、前記ポリブタジエンラテックスの粒径は300nmであり、
(2)各成分の重量部でグラフト釜に凝集したポリブタジエンラテックス63部を加え、80℃まで昇温し、クメンヒドロペルオキシド0.25部、乳糖0.01部、硫酸鉄(II)0.00015部、スチレン28部、アクリロニトリル12部、t-ドデシルメルカプタン(TDM)0.45部、ブタジエン5部、ピロリン酸ナトリウム0.007部、オレイン酸カリウム0.6部及び脱イオン水10部を加えて重合反応させ、アクリロニトリル転化率が97%になるときにグラフトABSラテックスを得て、
(3)上記で得られたグラフトABSラテックス100部を取り、それに4部の10%硫酸マグネシウム水溶液及び1部の5%酢酸水溶液を加え、2時間エージングした後に、濾過して80℃で水の含有量が1%になるまで乾燥させ、ABSゴム粉末1を得た。
【0040】
等重量部の上記で調製されたABSゴム粉末1を取り、可溶性有機炭素及び鉄イオンの含有量をテストし、可溶性有機炭素含有量を12000ppm、鉄イオンの含有量を94.2ppmとして測定した。
【0041】
等重量部の市販のDP60 ABSゴム粉末を取り、可溶性有機炭素及び鉄イオンの含有量をテストし、可溶性有機炭素含有量を10000ppm、鉄イオンの含有量を17.8ppmとして測定した。
【0042】
実施例1
上記で調製された1kgのABSゴム粉末1を取り、5kgの含有量の質量百分率が0.5%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、ABSゴム粉末1における可溶性有機炭素の含有量を8600ppm、鉄イオンの含有量を94ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末1を得た。
【0043】
実施例2
実施例1で調製された1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末1を取り、それに1kg重量部の含有量の質量百分率が1%の水酸化ナトリウム水溶液を加え続けて洗浄し、ABSゴム粉末1における可溶性有機炭素の含有量を4377ppm、鉄イオンの含有量を94ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末2を得た。
【0044】
実施例3
上記で調製された1kgのABSゴム粉末1を取り、1kgの脱イオン水で洗浄し、ABSゴム粉末1における可溶性有機炭素の含有量を8900ppm、鉄イオンの含有量を83ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末3を得た。
【0045】
実施例4
実施例3で調製された1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末3を取り、それに3kgの重量部の脱イオン水を加え続けて洗浄し、ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量を4500ppm、鉄イオンの含有量を57ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末4を得た。
【0046】
実施例5
1kgの実施例1で得られた不純物含有量の少ないABSゴム粉末1を取り、それに1kgの含有量の質量百分率が1%の酢酸水溶液を加えて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を46ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末1-1を得て、
1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末1-1に2kgの含有量の質量百分率が3%の酢酸水溶液を加え続けて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を8ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末1-2を得た。
【0047】
実施例6
1kgの実施例2で得られた不純物含有量の少ないABSゴム粉末2を取り、それに1.5kgの含有量の質量百分率が2%の酢酸水溶液を加えて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を44ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末2-1を得て、
1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末2-1に2kgの含有量の質量百分率が3%の酢酸水溶液を加え続けて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を8.2ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末2-2を得た。
【0048】
実施例7
1kgの実施例3で得られた不純物含有量の少ないABSゴム粉末3を取り、それに3kgの水を加えて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を47ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末3-1を得て、
1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末3-1に7kgの水を加え続けて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を9ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末3-2を得た。
【0049】
実施例8
1kgの実施例4で得られた不純物含有量の少ないABSゴム粉末4を取り、それに1kgの水を加えて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を46ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末4-1を得て、
1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末4-1に7kgの水を加え続けて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を8ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末4-2を得た。
【0050】
実施例9
上記で調製された1kgの市販のDP60 ABSゴム粉末を取り、0.5kgの含有量の質量百分率が0.5%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、DP60 ABSゴム粉末における可溶性有機炭素の含有量を7300ppm、鉄イオンの含有量を17.3ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末5を得て、
その後、それに1kgの含有量の質量百分率が0.5%の水酸化ナトリウム水溶液を加え続けて洗浄し、ABSゴム粉末5における可溶性有機炭素の含有量を3700ppm、鉄イオンの含有量を17ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末6を得た。
【0051】
実施例10
実施例9で調製された1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末5を取り、それに2kgの含有量の質量百分率が3%の酢酸水溶液を加えて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を7ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末5-1を得た。
【0052】
実施例11
実施例9で調製された1kgの不純物含有量の少ないABSゴム粉末6を取り、それに2kgの重量部の含有量の質量百分率が3%の酢酸水溶液を加えて洗浄し、ABSゴム粉末における鉄イオンの含有量を7ppmとして監視し、濾過し、水の含有量が1%になるまで乾燥させ、不純物含有量の少ないABSゴム粉末6-1を得た。
【0053】
比較例1
上記で調製されたABSゴム粉末1である。
【0054】
比較例2
市販のDP60 ABSゴム粉末である。
【0055】
上記実施例1~11、比較例1~2で得られたABSゴム粉末をそれぞれSAN樹脂とABS樹脂を調製し、具体的には下記の方法で使用可能である。
24重量部のABSゴム粉末、76重量部のPN118L150のSAN樹脂、0.1重量部の酸化防止剤B900、0.2重量部のステアリン酸マグネシウム、2重量部のN,N-エチレンビスオクタデカンアミドを高速混練機で5分間混練してから、混合材料を二軸押出機で溶融・造粒・ブレンドして造粒し、それぞれ下記のABS樹脂を得た。上記ABS樹脂を80℃のオーブンで2時間乾燥させ、イエローインデックスをテストし、テスト結果を表1に示す。
【0056】
【表1】