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特許7418581縁の保護コーティングを生成するための装置及び方法
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  • 特許-縁の保護コーティングを生成するための装置及び方法 図1
  • 特許-縁の保護コーティングを生成するための装置及び方法 図2
  • 特許-縁の保護コーティングを生成するための装置及び方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】縁の保護コーティングを生成するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20240112BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240112BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B05C1/02 101
B05D1/28
B05D3/00 B
B05C1/02 104
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022535448
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 DE2020101050
(87)【国際公開番号】W WO2021115539
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】102019134132.9
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515050297
【氏名又は名称】マンキーヴィッチ ゲブリューダー ウント コンパニー (ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー)
【氏名又は名称原語表記】Mankiewicz Gebr. & Co. GmbH& Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】コスタ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェインホールド,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーナー,ヨーヒェン
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202018001242(DE,U1)
【文献】独国実用新案第202008011551(DE,U1)
【文献】特開平11-057562(JP,A)
【文献】特開平10-193220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/02
B05D 1/28
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にコーティング材料を適用するための装置であって、
側に歯部が設けられた可撓性ベースプレートと、
前記歯部が設けられた側に並行に設けられたチャネルと、
前記チャネルの前記歯部が設けられた側の反対側に設けられた少なくとも1つのシーリングリップとを有する、装置。
【請求項2】
前記可撓性ベースプレートは、10mm以下の曲げ半径を達成することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記歯部は、前記ベースプレートに垂直な複数の歯を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記歯部が設けられた側の外縁には前記歯が無い部分が設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記歯は、前記ベースプレートを越えて突出する長さ部分を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記チャネルは、規則的に配置された複数の出口を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記チャネルは、少なくとも1つの補給穴を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
コーティング材料の適用のための請求項1~7のいずれか1項に記載の装置の使用。
【請求項9】
保護コーティングを生成するための方法であって、
コーティング材料を準備するステップ(a)と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置によって、部材に前記コーティング材料を適用するステップ(b)と、
コーティング得られるまで、適用された前記コーティング材料を硬化するステップ(c)と、を含む方法。
【請求項10】
前記ステップ(a)において、前記コーティング材料として腐食保護コーティングを生成するためのコーティング材料が用いられることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)において、前記コーティング材料は、前記部材の表面の一部分のみに適用されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)において、ロータブレード、翼又は水中翼の縁にのみコーティングがなされることを特徴とする、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲率が大きい部材の表面にコーティングを適用するための装置及び方法に関する。具体的に、本発明は、部材の縁に又はその上にコーティング材料を適用するための装置及び方法、特に、腐食保護コーティング材料を適用するための装置及び方法に関する。さらに本発明は、気体又は液体媒体中で動く部材の腐食保護としてのこれらのコーティングの使用、特にロータブレード、翼又は水中翼の縁の保護としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食による機械的ストレスに曝される物体の表面には、通常、腐食保護が施されている。以下、腐食の用語は、気体又は液体媒体中において液滴又は粒子の形状で動く液体又は固体により引き起こされる材料の損傷として定義される。周知の例は、風力タービン及びヘリコプターのロータブレード、航空機の翼、及び船舶のスクリュープロペラにおける雨、霰、塵又は砂による腐食である。
【0003】
腐食に対する表面の耐性は、衝撃力を吸収するのに十分な弾性があり、同時に十分な硬さ及び耐摩耗性を示すコーティングの適用により達成される。部材、例えばロータブレードの全面は、これらの腐食保護コーティングによりコーティングされ得る。しかし、特に曝露を受ける例えばロータブレードの先端等の部材の表面領域のみにコーティングすることも可能である。
【0004】
以下、縁の保護及び縁の保護コーティングの用語は、部材の縁に適用されたコーティング、特に腐食保護コーティングとして定義される。縁は、2つの面が互いに隣接する部材の部分を意味する。
【0005】
ロータブレード、翼又は水中翼の先端は、通常、液体又はペースト状のコーティング材料の適用が困難となる曲率が大きい表面である。国際公開第2008/157013号は、塗布器によってロータブレードにペースト状の修復ラッカーを適用する方法を開示する。これらの塗布器は、ロータブレードコーティングに対する腐食損傷を修復するために用いられる。ロータブレードの空気力学的特性を維持するために、腐食により引き起こされる窪み、摩耗又は穴は、過剰な材料の適用により翼の形状を損なうことなく、コーティングで平らにされなければならない。一般に、修復プロセスの際にコーティングの損傷を受けた部分のみが修復され、全面と比較して小さい部分である。周知の塗布器は、ロータブレードの全長にわたって均一な層厚を有しなければならない縁の保護コーティングを適用するのに適切ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、腐食保護コーティング、特に縁の保護コーティングを提供するための改善された装置及び方法を提供することである。本発明の解決しようとする課題は、本願の特許請求の範囲に従って解決される。さらに実施形態は、本明細書に開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る装置は、例えばコーティング材料等の液体又はペースト状の材料が、湾曲した基材の表面に均一且つ連続的に適用され得るように、ドクターブレードの様式で設計される。本発明に係る装置を用いて、材料は部材の縁に又は縁上に容易に適用され得る。その装置は、可撓性材料からなるベースプレートを有し、それの少なくとも片側に歯部が設けられている。ベースプレート上において、少なくとも1つの補給穴及び複数の出口を有するチャネルが、歯部が設けられた側に並行する。液体又はペースト状等のコーティング材料は、補給穴を介して案内され、出口を介して部材の表面に適用される。シーリングリップは、チャネルの歯部が設けられた側と反対側に設けられ、該シーリングリップは材料又はコーティング材料の望まれない漏出を防止する。
【0008】
ベースプレートの適切な材料は、十分な可撓性を有し、耐薬品性を有するプラスチックである。以下、化学物質(薬品)に対する耐性の用語は、関数値の低減なく、化学物質により引き起こされるストレスに耐える物質の特性として定義される。好ましい実施形態において、採用されたプラスチック材料は、コーティング材料組成物の成分の作用に対して耐性を有し、特に、腐食保護コーティングを生成するコーティング材料の作用に対して耐性を有する。以下、コーティング材料の用語は、基材に適用された後に硬化を通してコーティングを形成する液体又はペースト状の組成物として定義される。硬化プロセスは、溶媒を蒸発させることによる乾燥、及び組成物の成分の化学反応の両方を含む。
【0009】
その特別な設計により、本発明に係る装置は、コーティングされるための部材の外径に対して非常に精密に適合され得る。本発明に係る好ましい実施形態において、可撓性ベースプレートは、10mm以下の曲げ半径を有する。従って、特に1000~1600MPa、好ましくは1050~1550MPa、より好ましくは1100~1500MPaの範囲の弾性率を有するプラスチックが採用される。
【0010】
本発明における歯部は、ベースプレートの少なくとも片側に設けられた構造からなる。それは、一側のみに設けられてもよく、さらにそれに隣接する側に設けられてもよい。歯部は、ベースプレートにおいて互いに並行する歯幅(h)及び間隔(i)を備えた複数の歯を含む。歯幅(h)は、0.2~0.7mm、好ましくは0.3~0.6mm、より好ましくは0.4~0.5mmの範囲である。2つの歯の間隔(i)は、1.6~2.6mm、好ましくは1.8~2.4mm、より好ましくは2.0~2.2mmである。
【0011】
歯は、それらはプレートに対して垂直であり、高さ(e)を有するように設計される。さらに、歯は長さ(g)を有し、長さ部分はプレートの側端を越えて突出する。本発明において、歯長さ(f)に対応するこの部分の長さは、好ましくは歯高さ(e)に対応する。歯高さ(e)及び歯長さ(f)は、0.2~5.0mmの範囲である。採用されたコーティング材料の粘度に依存して、適用された液体又はペースト状のコーティング材料の層厚は、歯間隔(i)に対する歯高さ(e)の選択された比率を通じて決定され得る。以下において、これは、未乾燥塗膜の層厚を意味する。
【0012】
保護コーティングは通常層が厚く、乾燥塗膜の層厚で100~1000μmである。以下、乾燥塗膜の層厚の用語は、硬化又は乾燥されたコーティングの厚さとして定義される。従って、そのような保護コーティングを生成するために、採用されたコーティング材料は、対応する未乾燥塗膜の層厚で適用されなければならない。
【0013】
特に、翼又はロータブレードの縁の保護コーティングは、これらの部材の空気力学的特性を損なってはならず、すなわちコーティング材料は、重いストレスを受ける先端におけるコーティングが必要な層厚を有するように適用されなければならない。その一方で、層厚は、翼又はロータブレードの空気力学的外形における変更による欠陥を避けるために、翼又はロータブレードの表面において可能な限り小さくすべきである。先端の乾燥塗膜の層厚は、好ましくは100~2000μmの範囲であり、表面の乾燥塗膜の層厚は50μm未満である。好ましい一実施形態において、本発明に係る装置は、これらの層厚プロファイルを得るために、ベースプレートの歯側の外縁に歯が無い部分を有する。中央の歯部分に対する歯が無い部分の縁側の長さの比率は、所望の層厚プロファイル及びコーティングされる部材の形状に従って選択される。
【0014】
本発明のさらなる実施形態において、歯は、一側又は両側に円形及び/又は楕円形に設計される。驚くべきことに、基材上におけるより小さい接触面を有する歯が特に有利であることが見出された。一方で、この事実は、適用の際に装置の滑りのリスクを低減し、他方で容易に消失し得る細い線条のみが生成される。以下、線条の用語は、適用プロセスの際に、基材上にある歯がこれらの領域における被覆を妨げるため、材料が適用されない又は極めて僅かの材料のみが適用され得る線として定義される。
【0015】
さらなる好ましい実施形態において、本発明に係る装置は、歯を有する側に並行に配置され、適用されるコーティング材料を案内するチャネルを有する。さらに、歯を有する側に対向する側におけるチャネルは、案内されたコーティング材料が流れ出ることができる複数の開口を有する。これらの出口は、コーティング材料が基材に均一に適用されるように規則的な間隔で設けられていることが好ましい。連続的な供給を可能とするために、チャネルは、少なくとも1つの補給穴を有し得る。チャネルは、2つの補給穴が設けられていることが好ましく、それらのそれぞれは、反対側に設けられている。補給穴を介して、装置は、コーティング材料の均一な所定の供給を可能にする吐出システムに接続され得る。
【0016】
本発明に係るチャネルは、可能な限り低いコーティング材料の流れ抵抗を維持するために、適切な断面を示す。従って、チャネルの断面のサイズ及び出口のサイズは、例えば粘度等のコーティング材料の特性に依存する。
【0017】
さらに有利な実施形態において、チャネルは、可撓性ベースプレートの動きを妨げないために可撓性であるように設計されている。適切な実施形態は、適用プロセスの際に均一な材料の流れを保証するために十分な安定性を有する管状又は波状要素である。チャネルは、波状ホース又は波状パイプとして設計されることが好ましい。
【0018】
さらに好ましい実施形態において、チャネルは、歯を有する側に特定の間隔で設けられている。こうして、適用プロセスの際に、コーティング材料のリザーバが基材表面と本発明に係る装置との間に形成される。言及された間隔及びその結果のリザーバは、採用されたコーティング材料が出口を取って連続的に均一に流れ出るように選択される。
【0019】
さらに、装置は、チャネルの歯がある側と反対側に設けられた少なくともシーリングリップを示すことが好ましい。シーリングリップは、リザーバの範囲を定め、コーティング材料の望まれない漏出又は漏れを避ける。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図2及び図3は、本発明に係る装置の代表的な実施形態を模式的に示す。
図1図1は、本発明に係るドクターブレード(1)を示す。可撓性ベースプレート(2)は、一側に歯部(3)を有する。さらに、チャネル(4)は、ベースプレート(2)に設けられている。その2つの端部のそれぞれにおいて、チャネルが補給穴(5)を有する。複数の出口(6)は、歯部(3)に対応するチャネル(4)の側に設けられている。シーリングリップ(7)はその反対側に設けられている。
図2図2は、ドクターブレード(3)の歯部を有する側の拡大された詳細を示す平面図である。歯部は、ベースプレートにおいて互いに並行する歯幅(h)及び間隔(i)を備えた複数の歯(3a)を含む。歯(3a)は、それらが歯長さ(f)として定義される長さによってベースプレートを越えて突出するように設計されている。
図3図3は、ドクターブレードの歯(3a)の1つを示す断面図である。歯(3a)は、プレート(2)に垂直となるように設計されており、高さ(e)を有する。それは、プレート(2)の側端を越えて突出する歯長さ(f)として定義される長さ部分を含む全長(g)を有する。示された実施形態において、歯長さ(f)は歯高さと同等である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る装置は、部材の縁に又は縁上にコーティング材料を適用するために特に用いられ得る。その特性により、その装置は、例えば部材の縁等の曲率が大きい表面の外形に容易に適合できる。従って、保護コーティングを生成するのに必要となる、特にロータブレード、翼又は水中翼の先端における腐食保護のためのコーティングを生成するのに必要となるコーティング材料の連続的且つ均一な適用が達成される。本発明に係る装置によると、上記のようにコーティング材料は中断されること無く、一定の層厚プロファイルで適用され得る。
【0022】
本発明のさらなる実施形態において、その装置は、保護コーティングを生成するための方法に採用される。その方法は以下のステップを含む:
(a)コーティング材料を準備する。
(b)本発明に係る装置によって部材にコーティング材料を適用する。
(c)コーティングが得られるまで適用されたコーティング材料を硬化する。
【0023】
本発明に係る方法は、100~2000μm、好ましくは300~1500μm、より好ましくは450~1000μm、最も好ましくは600~750μmの範囲の乾燥塗膜の層厚を示す厚い層の保護コーティングの生成を可能とする。これにより、これらの層厚は、好ましくは部材の縁、より好ましくは水中翼、翼及びロータブレードの先端に生成される。
【0024】
本発明において、腐食保護コーティングを生成するためのコーティング材料が採用されることが好ましい。
【0025】
独国特許出願公開第102017003034号明細書から周知であるように、コーティング材料組成物が特に好ましく使用される。それぞれの場合において、これらの組成物は、結合材として三官能基のポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、又はポリカプロラクトンポリオールとポリカーボネートジオールを含む親成分と、硬化剤として結晶化耐性イソシアネート機能性プレポリマーを含む硬化材成分を有する。独国特許出願公開第102017003034号明細書に開示された腐食保護コーティングを生成するための組成物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本発明において、コーティング材料は、ステップ(b)で部材の表面の一部分のみに適用されることが好ましい。コーティング材料は、部材の縁に又は縁上に提供されることが好ましい。
【0027】
適用されたコーティング材料の硬化は、10~70℃、好ましくは15~26℃、さらに好ましくは40~70℃、特に50~65℃の範囲の温度でステップ(c)において、コーティングが得られるまで行われることが好ましい。
【0028】
本発明に係る方法は、ロータブレード、翼又は水中翼の縁にコーティングするために、特に多くの腐食に曝される縁をコーティングするために用いられることが好ましい。

図1
図2
図3