(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ピーク電力対平均電力比制御
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20240112BHJP
H04B 7/0426 20170101ALI20240112BHJP
【FI】
H04L27/26 200
H04B7/0426
(21)【出願番号】P 2022544151
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052779
(87)【国際公開番号】W WO2021155917
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォズーニ, ミラド
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン, ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ラポルテ, ピエール‐アンドレ
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/227111(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/147775(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069117(WO,A1)
【文献】Christoph Studer et al.,PAR-Aware Large-Scale Multi-User MIMO-OFDM Downlink,IEEE Journal on Selected Areas in Communications,米国,IEEE,2013年02月,VOL.31, NO2,pp.303-313
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 7/0426
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
M個のアンテナ素子のそれぞれを介した送信のためのN個の時間領域信号サンプルを有する通信シンボルのピーク対平均電力比(PAPR)制御のための無線通信送信機の方法であって、前記方法は、
閉形式の近位オペレータを有し、区間[0,a[内で微分可能であるPAPRコスト関数
f(x)を適用すること(110)であって、xは、送信用のサンプルの集合を示し、aは、時間領域信号サンプルごとの最大許容振幅に対応する閾値を示し、前記近位オペレータは、チューニング用のパラメータλを含む、ことと、
前記パラメータλに対して値を選択すること(140)であって、前記選択することは、PAPRと前記無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性との間のトレードオフを行うこと(142)を含む、ことと、
前記パラメータλについての前記選択された値に対する最適化問題の解として、サンプルの前記集合に対してプリコーディングを選択すること(150)であって、前記最適化問題は、少なくとも前記PAPRコスト関数を含むコスト関数全体の最小化を含み、前記最適化問題を解くことは、前記PAPRコスト関数の前記近位オペレータを使用することを含む、ことと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記PAPRコスト関数は
、区間[a,∞)内で無限大の値を有する、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記PAPRコスト関数は、対数バリア関数(202)又はフーバー関数である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記対数バリア関数は、
であり、Aは伝達関数を表
し、L=MNである、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法であって、前記PAPRコスト関数の前記近位オペレータは、
として定義され
、vは、L個の要素を有する所与の複素ベクトルである、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法であって、前記最適化問題は、
であり、g(x)は、チャネル伝達ペナルティ関数である、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
である、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法であって、前記最適化問題を解くことは、各反復が前記近位オペレータを使用する反復最適化アルゴリズムを適用することを含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記反復最適化アルゴリズムは、Douglas-Rachfordオペレータ分割アルゴリズム及び/又は交互方向乗数法(ADMM)である、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法であって、前記無線通信送信機の前記少なくとも1つの他の特性は、誤差ベクトル振幅(EVM)を含む、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法であって、前記トレードオフを行うことは、前記少なくとも1つの他の特性を改善するためにPAPRを増加させることを含む、方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法であって、前記パラメータλに対して前記値を選択することは、前記アンテナ素子の個数Mと前記時間領域信号サンプルの個数Nと、PAPR及び前記無線通信送信機の前記少なくとも1つの他の特性に対するユースケース要求条件とに基づいて、前記パラメータλについての値のルックアップテーブルをアドレス指定すること(144)を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記パラメータλの複数の値について前記最適化問題を解くこと(120)と、それに応じて前記ルックアップテーブルにポピュレートすること(130)と、を更に含む、方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法であって、前記選択されたプリコーディングを使用して、前記M個のアンテナ素子を介して前記N個の時間領域信号サンプルを送信すること(160)を更に含む、方法。
【請求項15】
プログラム命令を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、データ処理ユニットにロード可能であり、前記コンピュータプログラムが前記データ処理ユニットによって実行されると請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法の実行を生じさせるように構成されている、コンピュータプログラム。
【請求項16】
M個のアンテナ素子(447, 448, 449)のそれぞれを介した送信のためのN個の時間領域信号サンプルを有する通信シンボルのピーク対平均電力比(PAPR)制御のための、かつ、無線通信送信機のための装置であって、前記装置は制御回路(400, 500)を備え、当該制御回路は、
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法の実行を生じさせるように構成される、装置。
【請求項17】
請求項1
6に記載の装置を備える無線通信送信機。
【請求項18】
請求項
17に記載の無線通信送信機を備える無線基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全体として無線通信の分野に関する。より具体的には、本開示は無線通信送信機のピーク対平均電力比(PAPR)を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの無線通信システムでは、低減されたピーク対平均電力比(PAPR:peak-to-average power ratio)が望ましいと考えられうる。例えば、PAPR低減は、無線送信機の無線部分における改善された(例えば、増加した)エネルギー効率を伴いうる。PAPR低減は、例えば、任意の適切なクレストファクタ低減(CFR:crest-factor reduction)技術(例えば、クリッピング及び/又はフィルタリング)によって達成されうる。
【0003】
PAPR低減のための例示的なアプローチは、http://arxiv.org/abs/1401.3420から利用可能な非特許文献1に記載されている。
【0004】
しかしながら、PAPR低減のためのこのアプローチ及び他のアプローチは、いくつかのシナリオにおいて1つ以上不利な効果を有しうる。例示的な不利な効果は、通信チャネルの計算複雑度の増加、レイテンシの増加、及びエラーベクトル振幅(EVM:error vector magnitude)の増加を含む。
【0005】
したがって、PAPR制御のための代替的なアプローチが必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】"Democratic representations" by Studer, Goldstein, Yin, and Baraniuk, 2014(URL: http://arxiv.org/abs/1401.3420)
【発明の概要】
【0007】
本明細書で使用される場合に、用語「含む、備える(comprises/comprising)」(「含む、備える(includes/including)」によって置き換え可能である)は、記述された特徴、整数、ステップ、又はコンポーネントの存在を特定すると解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネント、又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことが強調されるべきである。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、コンテキストが明らかにそれ以外を示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0008】
概して、構成が本明細書で言及される場合、それは物理的製品(例えば装置)として理解されるべきである。物理的製品は、1つ以上のコントローラ、1つ以上のプロセッサ等の形態の制御回路といった、1つ以上のパーツを備えうる。
【0009】
また、概して、用語「エネルギー」が本明細書で言及される場合、その言及は用語「パワー」に等しく適用可能であると解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0010】
また、概して、PAPRが本明細書で言及される場合、その言及はクレストファクタに等しく適用可能であると解釈されるべきである(例えば、PAPR低減はクレストファクタ低減に対応してもよく、PAPR制御はクレストファクタ制御に対応してもよく、逆もまた同様である)。
【0011】
いくつかの実施形態の目的は、上記又は他の欠点の少なくともいくつかを解決又は緩和、軽減若しくは除去することである。
【0012】
第1の態様は、M個のアンテナ素子のそれぞれを介した送信のためのN個の時間領域信号サンプルを有する通信シンボルのピーク対平均電力比(PAPR)制御のための無線通信送信機の方法である
【0013】
本方法は、閉形式の近位オペレータを有し、区間[0,a[内で微分可能であるPAPRコスト関数f(x)を適用することを含み、xは、送信用のサンプルの集合(例えば、周波数領域サンプル)を示し、aは、時間領域信号サンプルごとの最大許容振幅に対応する閾値を示し、前記近位オペレータは、チューニング用のパラメータλを含む。
【0014】
本方法は更に、前記パラメータλに対して値を選択することであって、前記選択することは、PAPRと前記無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性との間のトレードオフを行うことを含む、ことと、前記パラメータλについての前記選択された値に対する最適化問題の解として、サンプルの前記集合に対してプリコーディングを選択することと、を含む。
【0015】
前記最適化問題は、少なくとも前記PAPRコスト関数を含むコスト関数全体の最小化を含み、前記最適化問題を解くことは、前記PAPRコスト関数の前記近位オペレータを使用することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記PAPRコスト関数は、前記区間[a,∞)内で無限大の値を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記PAPRコスト関数は、対数バリア関数又はフーバー関数である。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記対数バリア関数は、
であり、Aは伝達関数を表す。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記PAPRコスト関数の前記近位オペレータは、
として定義される。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記最適化問題は、
であり、g(x)は、チャネル伝達ペナルティ関数である。
【0021】
【0022】
いくつかの実施形態において、前記最適化問題を解くことは、各反復が前記近位オペレータを使用する反復最適化アルゴリズムを適用することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記反復最適化アルゴリズムは、Douglas-Rachfordオペレータ分割アルゴリズム及び/又は交互方向乗数法(ADMM)である。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記無線通信送信機の前記少なくとも1つの他の特性は、誤差ベクトル振幅(EVM)を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記トレードオフを行うことは、前記少なくとも1つの他の特性を改善するためにPAPRを増加させることを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記パラメータλに対して前記値を選択することは、前記アンテナ素子の個数Mと前記時間領域信号サンプルの個数Nと、PAPR及び前記無線通信送信機の前記少なくとも1つの他の特性に対するユースケース要求条件とに基づいて、前記パラメータλについての値のルックアップテーブルをアドレス指定することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、本方法は、前記パラメータλの複数の値について前記最適化問題を解くことと、それに応じて前記ルックアップテーブルにポピュレートすることと、を更に含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、本方法は、前記選択されたプリコーディングを使用して、前記M個のアンテナ素子を介して前記N個の時間領域信号サンプルを送信することを更に含む。
【0029】
第2の態様は、プログラム命令を含むコンピュータプログラムを有する、非一時的コンピュータ読取可能媒体を含むコンピュータプログラム製品である。前記コンピュータプログラムは、データ処理ユニットにロード可能であり、前記コンピュータプログラムが前記データ処理ユニットによって実行されると第1の態様による方法の実行を生じさせるように構成されている。
【0030】
第3の態様は、M個のアンテナ素子のそれぞれを介した送信のためのN個の時間領域信号サンプルを有する通信シンボルのピーク対平均電力比(PAPR)制御のための、かつ、無線通信送信機のための装置である。
【0031】
前記装置は、制御回路を備え、当該制御回路は、閉形式の近位オペレータを有し、区間[0,a[内で微分可能であるPAPRコスト関数f(x)を適用することであって、xは、送信用のサンプルの集合を示し、aは、時間領域信号サンプルごとの最大許容振幅に対応する閾値を示し、前記近位オペレータは、チューニング用のパラメータλを含む、ことを行わせるように構成される。
【0032】
前記制御回路は更に、前記パラメータλに対して値を選択することであって、前記選択することは、PAPRと前記無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性との間のトレードオフを行うことを含む、ことと、前記パラメータλについての前記選択された値に対する最適化問題の解として、前記時間領域信号サンプルに対してプリコーディングを選択することと、を行わせるように構成される。
【0033】
前記最適化問題は、少なくとも前記PAPRコスト関数を含むコスト関数全体の最小化を含み、前記最適化問題を解くことは、前記PAPRコスト関数の前記近位オペレータを使用することを含む。
【0034】
第4の態様は、第3の態様の装置を備える無線通信送信機である。
【0035】
第5の態様は、第4の態様の線通信送信機を備える無線基地局である。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記の態様のうちのいずれかは、他の態様のうちのいずれかについて上記で説明した種々の特徴のうちのいずれかと同一の、又は対応する特徴を更に有しうる。
【0037】
概して、(xによって示される)送信用のサンプルの集合は、送信用の時間領域信号サンプル及び/又は送信用の周波数領域サンプルでありうる。
【0038】
例えば、送信用のサンプルの集合は、直交周波数分割多重(OFDM)シナリオにおける送信用のN個の時間領域信号サンプルに対応する送信用の周波数領域サンプルの集合でありうる。
【0039】
また、概して、(xによって示される)送信用のサンプルの集合は、例えば、NM個のサンプルであってもよく、例えば、ベクトル内に配置されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態の利点は、PAPR制御のための代替的なアプローチが提供されることである。
【0041】
いくつかの実施形態の利点は、エネルギー効率がPAPR低減によって改善されうることである。
【0042】
いくつかの実施形態の利点は、PAPR低減のためのいくつかの従来技術のアプローチと比較して、計算複雑度が変化しない(又は非常にわずかに増加する)ことである。
【0043】
いくつかの実施形態の利点は、PAPR制御が改善されうることである。例えば、いくつかの実施形態によるPAPR制御は、PAPR低減を、1つ以上の不利な効果(例えば、EVMの増加)とのトレードオフの対象とすることを可能にしうる。例えば、そのようなトレードオフは、1つ以上の不利な効果に関する所定の要求要件(制約)が条件とされうる。所定の要求条件は、例えば、検討中の無線通信ユースケースと関連付けられうる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
更なる目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細な説明から明らかになる。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、その代わりに、例示的な実施形態を示すことに重点が置かれている。
【0045】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態による例示的な方法ステップを示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態による例示的なペナルティ関数を示すプロットである。
【
図3】
図3は、いくつかの実施形態の適用によって達成可能な例示的なEVM及びPAPR分布を示すシミュレーションプロットのペアである。
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態による例示的な通信シナリオを示す概略的なブロック図である。
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態による例示的な装置を示す概略的なブロック図である。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態による例示的なコンピュータ読取可能媒体を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
既に上述したように、本明細書で使用される場合に、用語「含む、備える(comprises/comprising)」(「含む、備える(includes/including)」によって置き換え可能である)は、記述された特徴、整数、ステップ、又はコンポーネントの存在を特定すると解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネント、又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことが強調されるべきである。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、コンテキストが明らかにそれ以外を示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0047】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明及び例示する。しかしながら、本明細書に開示されるソリューションは、多くの異なる形態で実現することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0048】
以下では、PAPR制御のための代替的なアプローチが提供される実施形態について説明する。
【0049】
図1は、いくつかの実施形態による例示的な方法100を示す。本方法は、無線通信デバイス、無線通信送信機、ネットワークノード、又は無線基地局等の装置によって実行されうる。
【0050】
本方法は、M個のアンテナ素子の各々を介した送信のためのN個の時間領域信号サンプルを有する通信シンボルのPAPR制御のためのものである。
【0051】
典型的には、N>1かつM>1である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本方法は、アンテナ素子の個数Mが比較的大きい(例えば、M>10、M>100、又はM>1000)大規模なアンテナシステムシナリオ(例えば、マッシブMIMOシナリオ)において適用される。いくつかの典型的な例によれば、M=64又はM=128である。
【0053】
いくつかの実施形態では、本方法は、送信用の時間領域信号サンプルの個数Nが比較的大きい(例えば、N>10、N>100、又はN>1000)シナリオにおいて適用される。
【0054】
個数Nは、典型的には、OFDMシンボルを生成するために逆高速フーリエ変換(IFFT)において使用されるポイントの個数に等しくてもよい。
【0055】
いくつかの典型的な例によれば、512≦N≦8096であり、N=512、N=1024、N=2048、及びN=4096は、具体的に典型的な値を表す。
【0056】
N個の時間領域信号サンプルは、例えば、各々が1つ以上の受信機アンテナを有する1つ以上の無線通信受信機を対象としうる。
【0057】
典型的には、アンテナ素子の個数Mは、ユーザ数よりも多い(ユーザは、例えば、受信機の数を指しうる)。これはチャネルに関してヌル空間を提供し、これは以下に例示されるように、最適化及び/又はトレードオフのために利用されうる。
【0058】
いくつかの実施形態では、N個の時間領域信号サンプルは、直交周波数分割多重(OFDM)シンボルの時間領域信号サンプル(即ち、長さNのOFDMシンボル)でありうるとともに、M個のアンテナ素子の各々は、N個のサブキャリアを使用して、対応するOFDMシンボルを送信しうる。
【0059】
ステップ110において、PAPRコスト関数f(x)が、送信用のサンプルの集合(collection)に適用される。例えば、PAPRコスト関数は、ベクトルx=x1...xL に対して適用されてよく、当該ベクトルは、単一のベクトルにスタックされた送信用の周波数領域サンプル(例えば、M個のアンテナ素子の各々についてのN個の周波数領域サンプル)のベクトルを示す。
【0060】
ベクトルxは、送信用のプリコーディングされたベースバンドベクトルを表すものと見なされうるとともに、方法100の目的として、適切なプリコーディング(即ち、信号情報コンテンツが予め定められている場合、適切なx)を見つけることと見なされうる。適切なプリコーディングは、例えば、無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性(例えば、EVM、複雑度、及びレイテンシのうちの1つ以上)の要求条件も満たしながら、PAPRを可能な限り低く(又は、PAPR要求条件件よりも低く)維持するプリコーディングでありうる。
【0061】
概して、無線通信送信機の他の特性は、EVM、複雑度、及びレイテンシのうちの1つ以上を含みうる。
【0062】
また、概して、EVM、複雑度、及びレイテンシのうちの1つが本明細書で言及される場合、この記述は、言及されていなくても、EVM、複雑度、及びレイテンシを含む、無線通信送信機の任意の他の適切な特性に等しく適用可能であることを意味する。
【0063】
なお、xは、必ずしもベクトルとして表される必要はない。他の可能性は、例えば、種々の行列表現を含む。
【0064】
PAPRコスト関数f(x)は、閉形式の近位オペレータ(proximal operator)を有し、区間[0,a[内で微分可能である。更に、PAPRコスト関数の近位オペレータは、チューニング用のパラメータλを有する。いくつかの実施形態では、PAPRコスト関数は、区間[a,∞)内で無限大の値(infinite value)を有する。
【0065】
値aは、時間領域信号サンプルごとの最大許容振幅に対応する閾値を示す。これは、代替的には、最大許容電力に対応するパラメータ値Pに関して表現されてもよい。
【0066】
適切なPAPRコスト関数の例には、対数バリア関数(log-barrier)及びフーバー(Huber)関数が含まれる。
【0067】
【0068】
対数バリア関数は、
と表され、Aは伝達関数を表す。伝達関数Aは、任意の適切な伝達関数又は単位行列でありうる。例えば、伝達関数は、
と表され、Fはフーリエ変換行列を表し、Tは置換行列又は単位行列を表す。
【0069】
PAPRコスト関数f(x)の近位オペレータは、以下のように表される。
【0070】
ここで、近位オペレータにおいてパラメータλがどのようにチューニングに利用可能であり続けるかを、PAPRコスト関数として対数バリア関数が使用されるケースについて説明する。
【0071】
が所与の複素ベクトルであり、
がプリコーディング用の変数のベクトルを示す場合、
と表現される対数バリア関数の近位オペレータは、以下のようにうることができる:
これは、第1項は、位相ベクトル
とは無関係であり、第2項は、
について最小化されるためである。最後の目的関数は、凸で微分可能であり、また、i=1,...,Lに対してr
iに関して可分であることは注目に値する。最小値は、以下の一次導関数検定を呼び出すことによって見い出されうる:
【0072】
したがって、対数バリア関数の近位オペレータは、パラメータλが存続し、かつ、チューニングに利用可能である閉形式で表現されうる。
【0073】
チューニングに利用可能なパラメータλを有することの利点は、PAPRと、無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性(例えば、EVM、複雑度、及びレイテンシのうちの1つ以上)との間のトレードオフが可能であることである。したがって、パラメータλは、トレードオフパラメータと見なされうる。
【0074】
ステップ140において、パラメータλの値が選択される。当該選択は、サブステップ142によって示されるように、PAPRと無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性との間のトレードオフを実行することを含む。
【0075】
トレードオフは、例えば、特定のPAPR値と、無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性の対応する値とを比較して、無線通信送信機の他の特性のうちの少なくとも1つについての対応する値の改善(例えば、通信チャネルの計算複雑度の減少、レイテンシの減少、及び/又はEVMの減少)と引き換えに、PAPRの増加を決定することを含みうる。特定のPAPR値は、例えば、任意の従来技術の方法の適用から生じる、又はチューニングが可能でない任意の方法から生じるPAPR値であってもよい。
【0076】
代替的又は追加的には、トレードオフは、PAPRのための1つ以上のユースケース要求条件、及び無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性への適応を含みうる。例えば、無線通信ユースケースは、PAPRがPAPR閾値を下回ること、EVMがEVM閾値を下回ること、計算複雑度が複雑度閾値を下回ること、及び、レイテンシがレイテンシ閾値を下回ること、のうちの1つ以上を必要としうる。そのようなユースケース要求条件は、例えば、無線通信の標準化(例えば、PAPR、EVM、レイテンシ)によって、及び/又は製品仕様(例えば、PAPR、複雑度)によって設定されうる。
【0077】
ステップ150において、送信対象のサンプルに対してプリコーディングが選択される。プリコーディングを選択することは、周波数領域サンプルに対して振幅及び/又は位相を選択することを含みうる。
【0078】
プリコーディングは、パラメータλに対して選択された値に対する最適化問題の解として選択される。最適化問題は、少なくともPAPRコスト関数を含むコスト関数全体(overall cost function)の最小化を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、最適化問題は、PAPRコスト関数のみを最小化することを含みうる。
【0080】
いくつかの実施形態では、最適化問題は、第1項としてPAPRコスト関数を含み、第2項として別のコスト関数g(x)を含む、以下のコスト関数全体の最小化を含みうる:
【0081】
いくつかの実施形態では、g(x)は、チャネル伝達ペナルティ関数であってもよい。例えば、エラーフリーチャネル伝達は、
によって表されてよく、Hは、エンドツーエンドチャネル伝達関数を表し、sは、送信された情報信号を表す。いずれの場合も、チャネル伝達ペナルティ関数は、以下のように定義されうる
【0082】
概して、最適化問題を解くことは、PAPRコスト関数の近位オペレータを使用することを含みうる。例えば、最適化問題を解くことは、各反復が近位オペレータを使用する反復最適化アルゴリズムを適用することを含みうる。反復最適化アルゴリズムの例には、Douglas-Rachfordオペレータ分割アルゴリズム及び交互方向乗数法(ADMM:alternating direction method of multipliers)が含まれる。
【0083】
いくつかの実施形態では、パラメータλは、近位オペレータ変数及び/又はDouglas-Rachford分割アルゴリズムで使用されるステップサイズ及び/又は交互方向乗数法(ADMM)のステップサイズを表す。
【0084】
プリコーディングが選択される場合、本方法は、オプションのステップ160によって示されるように、選択されたプリコーディングを使用してM個のアンテナ素子を介してN個の時間領域信号サンプルを送信することを更に含みうる。
【0085】
いくつかの実施形態では、ステップ140は、オプションのサブステップ143によって示されるように、パラメータλの値を選択するプロセスにおいて最適化問題を解くことを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、最適化問題は、無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性の、対応する所定のプリコーディング選択肢(precoding alternatives)及び/又は対応する所定の値を提供するために、オプションのステップ120によって示されるように、パラメータλの複数の値のための事前計算ステップにおいて予め解かれる。
【0087】
次いで、ステップ140は、無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性の対応する所定の値に基づいて、パラメータλの値を選択することを含みうる。ステップ150は、所定のプリコーディング選択肢に基づいて、プリコーディングを選択することを含みうる。
【0088】
例えば、パラメータλの値は、事前計算ステップで使用される複数の値のうちの1つとして選択されてもよく、その結果、無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性の対応する所定の値は、(例えば、上記で詳述されたようなユースケースの)適用可能な要求条件を満たす。次いで、プリコーディングは、対応する所定のプリコーディング選択肢として選択されてもよい。
【0089】
代替的又は追加的には、パラメータλの値は、事前計算ステップで使用される複数の値のうちの2つの間の補間として選択されてもよく、その結果、無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性の値は、場合によっては、適用可能な要求条件を満たすことになる。次いで、プリコーディングは、対応する2つの所定のプリコーディング選択肢間の補間として選択されてもよい。
【0090】
事前計算ステップの結果に基づいて、パラメータλの値及びプリコーディングを選択するための、多くの他の代替案もありうることに留意されたい。
【0091】
いくつかの実施形態では、本方法は、パラメータλの、対応する複数の値を使用して、最適化問題に対する複数の解に基づいて(オプションのステップ130によって示されるように)ルックアップテーブルをポピュレートする(populating)ことを含む。いくつかの実施形態では、これは、アンテナ素子の個数M及び/又は時間領域信号サンプルの個数Nの、種々の適用可能な値に対して実行される。ルックアップテーブル以外の多くの他の実装が可能であることに留意されたい。
【0092】
例えば、最適化問題に対する複数の解は、事前計算ステップ120で達成されるものを含みうる。代替的又は追加的には、最適化問題に対する複数の解は、サブステップ143において達成される解を含みうる。後者は、方法100の反復実行中にルックアップテーブルを連続的にポピュレートすることにつながりうる。
【0093】
ルックアップテーブルが十分にポピュレートされているとき、それは、オプションのサブステップ144によって示されるように、パラメータλの値の選択のためのサブステップ142のトレードオフを実行するために使用されうる。
【0094】
例えば、パラメータλの値は、アンテナ素子の個数Mと、時間領域信号サンプルの個数Nと、PAPR及び無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性に対するユースケース要求条件とに基づいて、ルックアップテーブルをアドレス指定することによって、当該ルックアップテーブルをポピュレートするために使用される複数の値のうちの1つとして選択されうる。
【0095】
例えば、非特許文献1(上記参照)に記載されたPAPR低減のための従来技術のアプローチと比較して、本明細書に提示されるアプローチのいくつかの実施形態は、以下の利点のうちの1つ以上を有する:
‐コスト関数及びその近位オペレータを微分することが可能であり、最適化を単純化し、及び/又は、より多くの最適化アルゴリズムを適用可能にすることができる。
‐PAPRと無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性との間のトレードオフを可能にする、最適化問題に対する解におけるチューニングパラメータの存在。
【0096】
非特許文献1(上記参照)では、PAPRコスト関数が、以下のインジケータ関数によって定義される。
【0097】
インジケータ関数は、微分可能ではない近位オペレータを有する。更に、チューニングパラメータは、本明細書に記載のアプローチによる最適化問題に対する解を通して消滅する。
【0098】
図2は、PAPRコスト関数f(x)として使用されうる例示的なペナルティ関数、いくつかの従来技術のソリューションに従って使用されるインジケータ関数201、及び本明細書で提案される対数バリア関数202
を示す。x軸は、203に示される最大許容値aを有する、1つの時間領域信号サンプルの信号振幅
を示し、y軸は、対数バリア関数についてのサンプルのコスト値、即ち、
を示す。
【0099】
図3は、いくつかの実施形態の適用によって達成可能なEVM及びPAPR分布の例を示す。
【0100】
この例では、1000回のチャネル実現シミュレーションが実行されており、MIMO空間レイヤの個数は2に等しく、振幅閾値は3dBの等価的なPAPRに設定されており、OFDMサブキャリアの個数がN=100に設定されており、送信アンテナブランチの個数がM=32に設定されている。Douglas-Rachfordオペレータ分割アルゴリズムの3回の反復が、対数バリア関数としてf(x)を有し、かつ、
を有する
として定義される最適化問題に使用される。
【0101】
プロット(a)は、チューニングパラメータ(301:λ=0.004、302:λ=0.003、303:λ=0.002、304:λ=0.001、305:λ=0であり、λ=0の結果は非特許文献1のアプローチによって達成可能な結果と一致する)の異なる値に対するEVMの確率密度関数(PDF)を示す。x軸は、(基準サンプル振幅の%単位の)EVM値を表し、0%~40%に及ぶ。y軸は、確率密度関数値を表し、0から1.4に及ぶ。
【0102】
プロット(b)は、チューニングパラメータ(311:λ=0、312:λ=0.001、313:λ=0.002、314:λ=0.003、315:λ=0.004であり、λ=0の結果は非特許文献1のアプローチによって達成可能な結果と一致する)の異なる値に対するPAPRの確率密度関数(PDF)を示す。x軸は、(dB単位の)PAPR値を表し、0.5から3.0に及ぶ。y軸は、確率密度関数値を表し、0から10に及ぶ。
【0103】
低い値のEVMと低い値のPAPRとの間に(λの選択に対応して)行われる明確なトレードオフがあることが分かる。
【0104】
非特許文献1で導入されたアルゴリズムと同じ性能が、λ=0をチューニングすることによって達成可能であることも分かる。
【0105】
図4は、いくつかの実施形態が適用可能でありうる例示的な通信シナリオを概略的に示す。
【0106】
図4の左側は、M個のアンテナ素子を有する無線通信送信機に関するものであり、
図4の右側は、K個の複数の無線通信受信機に関するものである。無線通信送信機と複数の無線通信受信機とは、周波数選択チャネル(CH)450によって分離されている。
【0107】
N個のフラットフェージングサブチャネルに対応し、かつ、各々が、K個の受信機(ユーザ)に対応する長さKを有する、N個のベクトルメッセージ
は、送信対象の情報を表し、408、409に示されるように、無線通信送信機に入力される。デジタルプリコーダ(DP)410を通過した後、それらは、周波数領域サンプルベクトル
418,419で表され、それは、置換行列Tに対応する再並べ替えデジタルモジュール(RO)420に入力される。並べ替えの後、結果として生じるサンプルベクトル
427、428、429の各々は、
に対応するそれぞれの逆高速フーリエ変換(IFFT)431,432,433を通過し、結果として生じる時間領域信号437,438,439は、それぞれの送信機パス(TP)441,442,443に入力され、M個のアンテナ素子447,448,449のうちのそれぞれの1つを介して送信される。各送信機パス441,442,443は、例えば、並直列変換器、サイクリックプレフィックスプリペンダ、及び電力増幅器を備えうる。
【0108】
無線通信受信機の各々は、アンテナ488,489及び受信機パス(RP)491,492を備えうる。各受信機パスは、例えば、サイクリックプレフィックス除去器と、直並列変換器と、N個の周波数領域サンプルを復元するための高速フーリエ変換(FFT)とを備えうる。
【0109】
無線通信送信機は更に、N個の周波数領域サンプルベクトル
418,419を受信するコントローラ(CNTR)400を備える。コントローラは、例えば、
図1に関連して上述した方法ステップのうちの1つ以上を実行する(又は実行させる)ように構成されうる。特に、コントローラは、
図1に関連して説明したようにプリコーディングを選択し、それに応じて、
図4の制御信号401によって示されるようにデジタルプリコーダ410を制御するように構成されうる。代替的又は追加的に、コントローラは、選択されたプリコーディングを実施するように、送信機の他の部分(例えば、送信機パス441,442,443のコンポーネント)を制御するように構成されうる。
【0110】
図5は、いくつかの実施形態による例示的な装置510を概略的に示す。
【0111】
本装置は、無線通信デバイス、無線通信送信機、ネットワークノード、及び無線基地局のうちの1つ以上を備えるか、備えることが可能でありうるか、又はそれらの中に備えられうる。更に、本装置は、
図1に関連して上述された方法ステップのうちの1つ以上を実行する(又は実行させる)ように構成されうる。
【0112】
本装置は、M個のアンテナ素子のそれぞれを介して送信するためのN個の時間領域信号サンプルを有する通信シンボルのPAPR制御のためのものである(
図4と比較されたい)。
【0113】
N個の時間領域信号サンプルは、例えば、各々が1つ以上の受信機アンテナを有する1つ以上の無線通信受信機を対象としうる。
【0114】
いくつかの実施形態では、N個の時間領域信号サンプルは、直交周波数分割多重(OFDM)シンボル、即ち、長さNのOFDMシンボルのN個の時間領域信号サンプルであってよく、M個のアンテナ素子の各々は、N個のサブキャリアを使用して対応するOFDMシンボルを送信してもよい。
【0115】
本装置は、コントローラ500(CNTR;例えば、
図4の400と比較して、制御回路又は制御モジュール)を備える。
【0116】
コントローラは、閉形式を有する近位オペレータを有し、区間[0,a[内で微分可能であるPAPRコスト関数f(x)の、(例えば、L=MNとして、周波数領域サンプルのベクトル
によって表される)送信用のサンプルのコレクションへの適用(
図1のステップ110と比較されたい)を生じさせるように構成され、ここで、aは、時間領域信号サンプルごとの最大許容振幅に対応する閾値を示し、近位オペレータは、チューニング用のパラメータλを含む。
【0117】
この目的のために、コントローラは、コスト関数回路又はコスト関数モジュール(CF)501を備えるうるか、又はさもなければそれに関連付けられうる(例えば、接続されるうるか、又は接続可能でありうる)。コスト機能回路又はコスト機能モジュールは、例えば、1つ以上のコスト関数を記憶し、適用のために適切なコスト関数を提供するように構成されたメモリでありうる。
【0118】
コントローラは更に、パラメータλの値の選択(
図1のステップ140と比較)を生じさせるように構成され、当該選択は、PAPRと無線通信送信機の少なくとも1つの他の特性との間のトレードオフ(
図1のステップ142と比較)の性能を含む。
【0119】
この目的のために、コントローラは、チューニングセレクタ(TS;例えば、チューニング選択回路又はチューニング選択モジュール)502を備えうるか、又はさもなければそれに関連付けられうる(例えば、接続されうるか、又は接続可能でありうる)。チューニングセレクタは、パラメータλに対して値を選択するように構成されうる。
【0120】
コントローラは更に、パラメータλに対して選択された値についての最適化問題に対する解として、サンプルに対するプリコーディングの選択(
図1のステップ150と比較)を生じさせるように構成され、当該最適化問題は、少なくともPAPRコスト関数を含むコスト関数全体の最小化を含み、最適化問題を解くことは、PAPRコスト関数の近位オペレータを使用することを含む。
【0121】
この目的のために、コントローラは、プリコーディングセレクタ(PS;例えば、プリコーディング選択回路又はプリコーディング選択モジュール)503を備えうるか、又はさもなければそれに関連付けられうる(例えば、接続されうるか、又は接続可能でありうる)。プリコーディングセレクタは、サンプルに対してプリコーディングを選択するように構成されうる。
【0122】
コントローラは更に、選択されたプリコーディングを使用して、M個のアンテナ素子を介してN個の時間領域信号サンプルの送信(
図1のオプションステップ160と比較)を生じさせるように構成されうる。
【0123】
この目的のために、コントローラは、送信機(TX;例えば、送信回路又は送信部)530に関連付けられうる(例えば、接続されうる、又は接続可能でありうる)。送信機は、装置510に含まれても、含まれなくてもよく、選択されたプリコーディングを使用してM個のアンテナ素子を介してN個の時間領域信号サンプルを送信するように構成されうる。
【0124】
コントローラは更に、パラメータλの1つ以上の値について最適化問題を解く(
図1のオプションのステップ120及び143と比較)ことを生じさせるように構成されうる。
【0125】
この目的のために、コントローラは、最適化器(OPT;例えば、最適化回路又は最適化モジュール)505を備えうるか、又はさもなければそれに関連付けられうる(例えば、接続されうるか、又は接続可能でありうる)。最適化器は、パラメータλの1つ以上の値について最適化問題を解くように構成されうる。
【0126】
コントローラは更に、コントローラ500に含まれる、又はさもなければそれに関連付けられる(例えば、接続される、又は接続可能である)ルックアップテーブル(LUT;例えば、ルックアップテーブル回路又はルックアップテーブルモジュール)504のポピュレーション(population)及び/又はアドレス指定(addressing)(
図1のオプションのステップ130及び144と比較)を生じさせるように構成されうる。
【0127】
上記で例示されたように、最適化問題は、f(x)が、送信された振幅が閾値を超えることができないという要求条件に関連しうるとともに、送信された情報コンテンツの正しいチャネル伝達の要求条件に関連しうる場合に、
として定義されうる。典型的には、コスト関数f(x)及びg(x)が両方とも凸関数でありうる。
【0128】
より具体的には、それらは凸集合にわたるインジケータ関数(
図2の201と比較)であってもよい。例えば、f(x)は、∞ノルム(又は最大ノルム)有界集合に対するインジケータ関数でありうる。g(x)は、アフィン集合に対するインジケータ関数(例えば、線形方程式のシステムに対する全ての解の集合)でありうる。これは、以下のように明示的に定式化されうる:
【0129】
この場合、f(x)及びg(x)の両方は微分不可能である。最適化問題に対する解を見つけることを試みる1つの方法は、近位オペレータを反復的に呼び出す、以下のDouglas-Rachford (DR)分割アルゴリズムを適用することである:
【0130】
ここで、近位オペレータが、
と表され、かつ、k=0,1,2, ...が、反復回数を表す場合に、
は、
を表し、
は、
を表す。このアルゴリズムでは、パラメータλは、反復ごとにステップサイズを決定する役割を有する(
から最適に向かう距離、例えば、f(x)の最小の距離)。
【0131】
関数f(x)が凸集合上のインジケータ関数である場合、近位オペレータは射影となる。これにより、パラメータλが消失する。
【0132】
このため、インジケータ関数が、例えば、非特許文献1(上記参照)のように使用される場合、最適化問題は微分不可能になるが、近位オペレータを使用して解くことができ、その結果、投射Onto Convex Sets(POCS)アルゴリズムをもたらす。しかし、これは、パラメータλが消失し、かつ、PAPRと無線通信送信機の1つ以上の他の特性との間のトレードオフに使用されうる、対応する自由度が失われることにつながる。
【0133】
上記で詳述したように、対数バリア関数
は、インジケータ関数の代わりにPAPRコスト関数として使用されうる。この関数は微分可能であり、前述の関数
と同様に、チューニングパラメータがトレードオフのために利用可能であることを伴う。更に、非特許文献1(上記参照)のコンテキストに適した最適化問題は、以下のように定式化されうる:
これを解くことは、非特許文献1におけるアプローチと比較して、同一又は同等の複雑度を有する。
【0134】
説明された実施形態及びそれらの均等物は、ソフトウェアもしくはハードウェア又はそれらの組合せで実現されうる。実施形態は、汎用回路によって実行されてもよい。汎用回路の例は、デジタル信号プロセッサ(DSP)、中央演算処理装置(CPU)、コプロセッサユニット、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び他のプログラマブルハードウェアを含む。代替的又は追加的に、実施形態は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の専用回路によって実行されてもよい。汎用回路及び/又は専用回路は、例えば、無線通信デバイス、無線通信送信機、ネットワークノード、又は無線基地局等の装置に関連付けられるか、又はその中に含まれうる。
【0135】
実施形態は、本明細書で説明される実施形態のいずれかによる構成、回路、及び/又はロジックを備える電子装置(無線通信デバイス、無線通信送信機、ネットワークノード、又は無線基地局等)内に現れうる。代替又は追加として、電子装置(無線通信デバイス、無線通信送信機、ネットワークノード、又は無線基地局等)は、本明細書で説明される実施形態のいずれかによる方法を実行するように構成されうる。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、コンピュータプログラムプロダクトは、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)メモリ、プラグインカード、組み込みドライブ、又は読み取り専用メモリ(ROM)等の有形又は非有形のコンピュータ読取可能媒体を含む。
図6は、コンパクトディスク(CD)ROM600の形態の例示的なコンピュータ読取可能媒体を示す。コンピュータ読取可能媒体は、プログラム命令を含むコンピュータプログラムを記憶している。コンピュータプログラムは、例えば、無線通信デバイス、無線通信送信機、ネットワークノード、又は無線基地局610に含まれうる、データプロセッサ(PROC;例えば、データ処理回路又はデータ処理ユニット)620にロード可能である。データプロセッサにロードされると、コンピュータプログラムは、データプロセッサに関連付けられているか、又はデータプロセッサに含まれるメモリ(MEM)630に格納されうる。いくつかの実施形態によれば、コンピュータプログラムは、データプロセッサにロードされ、当該データプロセッサによって実行されるとき、例えば、
図1に示されるか、又は本明細書で説明される方法のいずれかに従って、方法ステップの実行を生じさせうる。
【0137】
概して、本明細書で使用されるあらゆる用語は、異なる意味が明確に与えられている、及び/又は、それが使用されるコンテキストから暗示されない限り、関連する技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。
【0138】
本明細書では、種々の実施形態を参照してきた。しかしながら、当業者は、請求項の範囲内に依然として含まれる、記載された実施形態に対する多数の変形例を認識するであろう。
【0139】
例えば、本明細書に記載される方法の実施形態は、特定の順序で実行されるステップを通じた例示的な方法を開示する。しかしながら、これらの一連の事象は、特許請求の範囲から逸脱することなく、別の順序で起こりうることが認識される。更に、いくつかの方法ステップは順番に実行されるものとして説明されているが、並行して実行されてもよい。したがって、本明細書に開示される任意の方法のステップは、ステップが別のステップの後又は先行して明示的に記載されない限り、及び/又は、ステップが別のステップの後又は先行しなければならないことが暗示的である場合を除き、開示される正確な順序で実行される必要はない。
【0140】
同様に、実施形態の記載において、機能ブロックを特定のユニットに分割することは、限定することを意図するものではないことに留意されたい。逆に、これらの分割は例にすぎない。1つのユニットとして本明細書に記載される機能ブロックは、2つ以上のユニットに分割されてもよい。更に、2つ以上のユニットとして実装されるものとして本明細書で説明される機能ブロックは、より少ない(例えば、単一の)ユニットにマージされてもよい。
【0141】
本明細書に開示される実施形態のいずれかの任意の特徴は、適切な場合にはいつでも、任意の他の実施形態に適用されうる。同様に、任意の実施形態の任意の利点は、任意の他の実施形態に適用さてよく、逆もまた同様である。
【0142】
したがって、説明された実施形態の詳細は、説明の目的のために提起された例にすぎず、特許請求の範囲内に含まれるあらゆる例が、その中に包含されることが意図されることを理解されたい。