(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】重希土類合金、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、原料及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 28/00 20060101AFI20240112BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240112BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20240112BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20240112BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240112BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20240112BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240112BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240112BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C22C28/00 A
C22C38/00 303D
C22C19/07 D
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C33/02 J
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F9/04 E
B22F9/04 D
B22F9/04 C
(21)【出願番号】P 2022547798
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2021095091
(87)【国際公開番号】W WO2021249159
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】202010528355.3
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】蒋智鵬
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】施堯
(72)【発明者】
【氏名】ルオ イン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/122667(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103219117(CN,A)
【文献】特開昭62-200551(JP,A)
【文献】特開昭62-212945(JP,A)
【文献】特開平04-067334(JP,A)
【文献】特開2006-210893(JP,A)
【文献】特開2007-250605(JP,A)
【文献】特開2016-184689(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103426578(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110853857(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00,28/00
C22C 38/00-38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主合金及びサブ合金を含み、
前記主合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
R:28.5~33.5mas%、
M:0~5mas%、
B:0.85~1.1mas%、
Fe:60~70mas%、
前記R、前記M、前記B及び前記Feの合計含有量は100mas%であり、
mas%とは、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記Rは希土類元素であり、前記RはNdを含み、
前記Mは、Co、Cu、Al、Ga、Ti、Zr、W、Nb、V、Cr、Ni、Zn、Ge、Sn、Mo、Pb、Biのうちの1種または複数種を含み、
前記サブ合金は、重希土類合金であり、前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分
からなり、
RH:30~100mas%、ただし、100mas%ではなく、
X:0~20mas%、ただし、0ではなく、
B:0~1.1mas%、
Feおよび/またはCo:15~69mas%、
前記RH、前記X、前記B及び前記Feおよび/またはCoの合計含有量は100mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味し、
前記RHは、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種または複数種の重希土類元素を含み、
前記Xは、Tiおよび/またはZrであり、
前記主合金と前記サブ合金との質量比は(90~100):(0~10)であり、ここで、前記主合金は100mas%ではなく、前記サブ合金は0mas%ではなく、mas%は、前記主合金及び前記サブ合金の総重量における質量百分率を意味する、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項2】
前記RHの含有量の範囲は、30~90mas%であり、
および/または、前記RHの種類は、Tb、Dy、HoおよびGdのうちの1種または複数種の重希土類元素を含み、
および/または、前記Xの含有量の範囲は、3~15mas%であり、
および/または、前記Bの含有量の範囲は、0~0.9mas%であり、
mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項3】
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、30~75mas%であり、
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、3~75mas%であり、
前記RHがHoを含む場合、前記Hoの含有量の範囲は、2~50mas%であり、
前記RHがGdを含む場合、前記Gdの含有量の範囲は、2~50mas%であり、
前記RHがTb及びDyを含む場合、「Tb+Dy」は、30~90mas%であり、
前記RHがTb及びHoを含む場合、「Tb+Ho」は、30~90mas%であり、
前記RHがTb及びGdを含む場合、「Tb+Gd」は、30~90mas%であり、
前記RHがTb、Dy及びGdを含む場合、「Tb、Dy及びGd」は、30~90mas%であり、
前記RHがTb、Dy、Ho及びGdを含む場合、「Tb、Dy、Ho及びGd」は、30~90mas%であり、
mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項2に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項4】
前記XがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、3~15%であり、
前記XがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、3~10%であり、
前記XがZrとTiとの混合物を含む場合、前記Zrと前記Tiとの質量比は、1:99~99:1であり、
mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項5】
前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
Dy:69~75mas%、
Zr:6.5~7.5mas%、
B:0~0.6mas%、
残部はFeおよび/またはCoであり、
または、前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
Dy:69~75mas%、
Ti:6.5~7.5mas%、
B:0~0.6mas%、
残部はFeおよび/またはCoであり、
mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項6】
前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
Dy:75mas%、
Zr:7.27mas%、
B:0.5mas%、
残部はFeおよび/またはCoであり、
または、前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
Dy:69mas%、
Ti:7.5mas%、
B:0.5mas%、
残部はFeおよび/またはCoであり、
mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項5に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項7】
前記主合金と前記サブ合金との質量比は、(95~99):(1~5)で
あり、
および/または、前記Rの含有量は、29~32.5mas%で
あり、
および/または、前記Ndの含有量は、17~28.5mas%で
あり、
および/または、前記Rの種類は、Pr、Dy、Tb、Ho及びGdのうちの1種または複数種を
含み、
および/または、前記Mの含有量の範囲は、2.5~4mas%で
あり、
および/または、前記Mの種類は、Ga、Al、Cu、Co、Ti、Zr及びNbのうちの1種または複数種を
含み、
および/または、前記Bの含有量の範囲は、0.9~1.05mas%で
あり、
mas%は、前記主合金における質量百分率を意味
する、
ことを特徴とする請求項
1に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項8】
前記RがPrを含む場合、前記Prの含有量は、0~10mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記RがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、0.5~6mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記RがGdを含む場合、前記Gdの含有量の範囲は、0.2~2mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記RがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、0~5mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記RがHoを含む場合、前記Hoの含有量の範囲は、0~5mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記RがDy及びGdを含む場合、前記Dyと前記Gdとの質量比は、1:99~99:1であり、
前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量の範囲は、0~1mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記MがAlを含む場合、前記Alの含有量の範囲は、0~1mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記MがCuを含む場合、前記Cuの含有量の範囲は、0~1mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記MがCoを含む場合、前記Coの含有量の範囲は、0~2.5mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~1mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、0~1mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量の範囲は、0~0.5mas%であるが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項7に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料。
【請求項9】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法であって、以下のステップを含み、
請求項
1~8のいずれか一項に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料における前記主合金及び前記サブ合金の溶融液をそれぞれ鋳造し、即ち主合金片及びサブ合金片を得、前記主合金片及び前記サブ合金片を水素破砕、微粉砕した混合物を成形かつ焼結処理し、即ち前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を
得、
または、前記製造方法は、以下のステップを含み、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料における前記主合金及び前記サブ合金の溶融液をそれぞれ鋳造し、即ち主合金片及びサブ合金片を得、前記主合金片及び前記サブ合金片をそれぞれ水素破砕し、そして、前記主合金片及び前記サブ合金片の前記水素破砕された粗粉を混合し、その後、混合された粗粉を微粉砕、成形かつ焼結処理し、即ち前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得、
または、前記製造方法は、以下のステップを含み、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料における前記主合金及び前記サブ合金の溶融液をそれぞれ鋳造し、即ち主合金片及びサブ合金片を得、前記主合金片及び前記サブ合金片をそれぞれ水素破砕かつ微粉砕し、前記主合金片及び前記サブ合金片の微粉砕された微粉を混合し、その後、混合された微粉を成形かつ焼結処理し、即ち前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を
得る、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法。
【請求項10】
前記微粉砕の工程は、酸化ガス含有量50ppm以下の雰囲気下で行われる、
ことを特徴とする請求項9に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重希土類合金、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、原料及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネオジム鉄ホウ素希土類永久磁石材料は、高い残留磁束密度、高い保磁力及び高いエネルギー積という特徴を有するため、パワーエレクトロニクス、通信、情報、モータ、交通、オフィス・オートメーション、医療機器、軍事などの分野で広く使用されており、かつ、小型で高度に統合されたハイテク製品の市場における応用、例えばハードディスク用のボイスコイルモータ(VCM)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、電気自動車などを可能にする。以上の市場需要を満たすには、より低いコストで高い残留磁束密度及び高い保磁力の両方を有するネオジム鉄ホウ素磁石を製造する必要があり、特に、新エネルギー車の分野における永久磁石モータは、作動温度が高いため、磁石により高い保磁力を持たせることが要求されている。
【0003】
現在、従来技術において、ネオジム鉄ホウ素永久磁石の保磁力を向上させる方法は、主に以下の幾つかがある。
1)単一合金製造工程:ネオジム鉄ホウ素磁石の保磁力を向上させるように、Tb2Fe14B、Dy2Fe14Bが高い結晶磁気異方性磁場(HA)を有することを利用して、合金溶解製錬工程において直接にTb、Dyの純金属、またはTb、Dyを含む合金を添加するが、Tb、Dy元素によって形成されたTb2Fe14B、Dy2Fe14Bの飽和磁化(Ms)は、Nd2Fe14Bの飽和磁化よりもはるかに低くなるため、磁石の残留磁束密度を明らかに低下させてしまい、かつ、当該工程のTb、Dy重希土類元素の添加量が比較的大きくなり、原料コストが高くなる。
2)粒界拡散工程:塗布、スパッタ付着、蒸着などの方法により、焼結後のネオジム鉄ホウ素磁石の表面に、重希土類元素DyまたはTbを含む拡散源物質(無機希土類化合物、希土類金属または希土類合金を含む)を付着させ、その後、粒界ネオジムリッチ相融点以上かつ磁石焼結温度以下の温度で高温拡散を行い、DyまたはTbを磁石粒界に沿って内部に浸透させ、Nd2Fe14B主相の結晶粒表層に異方性場(anisotropy field)が高い(Nd,Dy)2Fe14Bまたは(Nd,Tb)2Fe14B硬質磁性層を形成することにより、磁石の保磁力を向上させる。Dy、Tbが主相結晶粒の最外縁領域にのみ分布し、当該方法はDy、Tb重希土類の使用量を大幅に削減でき、それと共に、結晶粒内拡散深さが限られているため、磁石の残留磁束密度の低下を効果的に抑制することができる。しかし、当該方法は、機器に対する要求が高く、投資が大きく、操作が複雑であり、同時に、拡散深さが限られており、一般的に磁石の厚さが1cmを超えないことが要求され、大型の磁石を製造することができない。
3)二重合金法は、磁石の微細構造と磁性相の境界構造を改善することにより保磁力を向上させる方法であり、この方法は、重希土類元素が豊富な合金を副相とし、主相合金成分はNd2Fe14B化学組成の量論比に近く、そして、主相と副相を混合してから、プレス、焼結、アニーリングによって磁石を得る。この方法は、永久磁石のサイズに制限されておらず、大型で保磁力が高いネオジム鉄ホウ素磁石を製造することができる。しかし、焼結段階の温度が高いため、副相として添加された重希土類元素は主相に大量に拡散し、磁石の残留磁束密度を低下させてしまい、同時に、重希土類元素は、主相への大量拡散による保磁力の向上効果が結晶粒表面に分布することにより粒界構造を改善する効果よりも小さく、これにより、重希土類の利用率が低下し、保磁力の向上が制限されてしまう。
【0004】
したがって、重希土類の利用率が高く、高い残留磁束密度を保持すると共に、保磁力を大きく向上させることもできるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を早急に必要としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術において二重合金法を用いてR-T-B系永久磁石材料を製造する場合、副相における重希土類元素が焼結工程において主相に過剰に拡散したため、磁石の残留磁束密度を低下させ、保磁力の向上が制限され、かつ、重希土類の利用率が低いという欠陥を解消するために、重希土類の利用率が高く、高い残留磁束密度を保持すると共に、保磁力を大きく向上させることもできる重希土類合金、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、原料及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術考案を採用する。
【0007】
本発明の第1の目的としては、希土類合金が提供され、前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
RH:30~100mas%、ただし、100mas%ではなく、
X:0~20mas%、ただし、0ではなく、
B:0~1.1mas%、
Feおよび/またはCo:15~69mas%、
各成分の合計は100mas%であり、
mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味し、
RHは、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種または複数種の重希土類元素を含み、
前記Xは、Tiおよび/またはZrである。
【0008】
本発明において、前記重希土類合金は、本分野における他の通常の元素を含むことができるが、この場合に元素を添加する時に、前記重希土類合金において、Feおよび/またはCoを除いて、既存の元素の質量百分率の含有量は変化せず、Feおよび/またはCoは、残部を100%まで補足し、すなわち、各元素の使用量について、Feおよび/またはCoを除いた既存の元素の質量百分率の含有量は変化せず、Feおよび/またはCo元素の質量百分率の含有量のみを減少させたり増加させたりして、各元素の合計含有量を100%にすることを実現する。
【0009】
本発明において、前記RHの含有量の範囲は、好ましくは30~90mas%であり、より好ましくは40~80mas%であり、例えば69mas%、60.2mas%、62.5mas%または75mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0010】
本発明において、前記RHの種類は、好ましくはTb、Dy、HoおよびGdのうちの1種または複数種の重希土類元素を含み、より好ましくはTbまたは/およびDyである。
【0011】
本発明において、前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、好ましくは30~75mas%であり、例えば、50.2mas%、30mas%または34mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0012】
本発明において、前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、3~75mas%であることが好ましく、例えば5mas%、50mas%または69mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0013】
本発明において、前記RHがHoを含む場合、前記Hoの含有量の範囲は、2~50mas%であることが好ましく、例えば2.3mas%または10mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0014】
本発明において、前記RHがGdを含む場合、前記Gdの含有量の範囲は、2~50mas%であることが好ましく、例えば5mas%または23.2mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0015】
本発明において、前記RHがTb及びDyを含む場合、「Tb+Dy」は、30~90mas%であることが好ましく、例えば35mas%または37mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0016】
本発明において、前記RHがTb及びHoを含む場合、「Tb+Ho」は、30~90mas%であることが好ましく、例えば60.2mas%または36.3mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0017】
本発明において、前記RHがTb及びGdを含む場合、「Tb+Gd」は、30~90mas%であることが好ましく、例えば35mas%または57.2mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0018】
本発明において、前記RHがTb、Dy及びGdを含む場合、「Tb、Dy及びGd」は、30~90mas%であることが好ましく、例えば40mas%または57.2mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0019】
本発明において、前記RHがTb、Dy、Ho及びGdを含む場合、「Tb、Dy、Ho及びGd」は、30~90mas%であることが好ましく、例えば62.5mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0020】
本発明において、前記Xの含有量の範囲は、好ましくは3~15mas%であり、例えば7.27mas%、7.5mas%、8mas%または8.25mas%であり、より好ましくは3~10mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0021】
本発明において、前記XがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、3~10%であることが好ましく、例えば7.27mas%、4mas%または2mas%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0022】
本発明において、前記XがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、3~15%であることが好ましく、例えば、7.5mas%、4mas%または6.25mas%であり、好ましくは3~10%であり、mas%とは、前記重希土類合金における質量百分率を意味する。
【0023】
本発明において、前記XがZrとTiとの混合物を含む場合、前記Zrと前記Tiとの質量比は、1:99~99:1であることが好ましく、例えば8:25または1:1である。
【0024】
本発明において、前記Bの含有量の範囲は、0~0.9mas%であり、例えば0.5mas%である。
【0025】
本発明において、前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
Dy:69~75mas%、
Zr:6.5~7.5mas%、
B:0~0.6mas%、
残部はFeおよび/またはCoである。
【0026】
本発明において、前記重希土類合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
Dy:69~75mas%、
Ti:6.5~7.5mas%、
B:0~0.6mas%、
残部はFeおよび/またはCoである。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、前記重希土類合金の成分及び含有量は、下記番号1~5のいずれか(mas%)とすることができる。
【0028】
本発明の第2の目的としては、前記重希土類合金が二重合金法により製造されたネオジム鉄ホウ素永久磁石材料においてサブ合金(「副合金」ともいう)としての応用を提供することである。
【0029】
本発明の第3の目的としては、主合金とサブ合金とを含み、前記サブ合金は上述した重希土類合金であるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料が提供され、
前記主合金は、質量百分率で下記の成分を含み、
R:28.5~33.5mas%、
M:0~5mas%、
B:0.85~1.1mas%、
Fe:60~70mas%、
各成分の合計は100mas%であり、
mas%とは、前記主合金における質量百分率を意味し、
前記Rは希土類元素であり、前記RはNdを含み、
前記Mは、Co、Cu、Al、Ga、Ti、Zr、W、Nb、V、Cr、Ni、Zn、Ge、Sn、Mo、Pb、Biのうちの1種または複数種を含み、
前記主合金と前記サブ合金との質量比は(90~100):(0~10)であり、ここで、前記主合金は100mas%ではなく、前記サブ合金は0mas%ではなく、mas%は、前記主合金及び前記サブ合金の総重量における質量百分率を意味する。
【0030】
本発明において、前記主合金において、元素の種類を増加させたり減少させたりする時に、前記主合金の総重量は変化する。この場合、各元素の使用量について、Feを除いた既存の元素の質量百分率の含有量は変化せず、Fe元素の質量百分率の含有量のみを減少させたり増加させたりして、各元素の合計含有量を100%にすることを実現する。
【0031】
本発明において、前記主合金と前記サブ合金との質量比は、好ましくは(95~99):(1~5)であり、例えば97:3または92:8である。
【0032】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは29~32.5mas%であり、例えば31.07mas%、31.3mas%または31.76mas%であり、mas%とは、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0033】
本発明において、前記RにおけるNdの添加形態は、本分野における通常のものであってもよく、例えば、PrNdの形態で、または、純粋なNdの形態で、または、純粋なPrとNdとの混合物の形態で、または、PrNd、及び純粋なPrとNdの混合物を組み合わせて添加する。PrNdの形態で添加した場合、PrNdにおけるPrとNdとの重量比は25:75または20:80である。
【0034】
本発明において、前記Ndの含有量は、好ましくは17~28.5mas%であり、例えば19.7mas%、21mas%或または22.5mas%であり、mas%とは、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0035】
本発明において、前記Rの種類は、好ましくはPr、Dy、Tb、Ho及びGdのうちの1種または複数種をさらに含んでもよい。
【0036】
そのうち、前記RがPrを含む場合、Prの添加形態は、本分野における通常のものであってもよく、例えば、PrNdの形態で、または、純粋なPrとNdとの混合物の形態で、または、PrNd、及び純粋なPrとNdの混合物を組み合わせて添加する。PrNdの形態で添加した場合、PrNdにおけるPrとNdとの重量比は25:75または20:80である。
【0037】
ここで、前記RがPrを含む場合、前記Prの含有量は、0~10mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば5.26mas%、5.6mas%または6mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0038】
ここで、前記RがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、0.5~6mas%であることが好ましく、例えば5mas%、4.27mas%、1mas%または1.3mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0039】
ここで、前記RがGdを含む場合、前記Gdの含有量の範囲は、0.2~2mas%であることが好ましく、例えば0.46mas%、0.5mas%、1mas%または1.5mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0040】
ここで、前記RがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲を本分野の通常のものとすることができ、0~5mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0041】
ここで、前記RがHoを含む場合、前記Hoの含有量の範囲を本分野の通常のものとすることができ、0~5mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0042】
ここで、前記RがDy及びGdを含む場合、前記Dyと前記Gdとの質量比は、1:99~99:1であり、例えば10:1、1:1または13:15であることができる。
【0043】
本発明において、前記Mの含有量の範囲は、好ましくは2.5~4mas%であり、例えば2.19mas%、1.97mas%、2.85mas%、1.65mas%または1.94mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0044】
本発明において、前記Mの種類は、好ましくはGa、Al、Cu、Co、Ti、Zr及びNbのうちの1種または複数種を含み、例えば、前記Mの種類は、Ga、Al、Cu、Co、Nb及びZr、Ga、Al、Cu、Co、Nb及びTi、Ga、Al、Cu及びCo、Ga、Al、Cu、Ti、Zrを含む。
【0045】
ここで、前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量の範囲は、0~1mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば0.26mas%、0.3mas%、0.1mas%または0.5mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0046】
ここで、前記MがAlを含む場合、前記Alの含有量の範囲は、0~1mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば0.25mas%、0.19mas%、0.5mas%、0.05mas%または0.04mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0047】
ここで、前記MがCuを含む場合、前記Cuの含有量の範囲は、0~1mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば0.21mas%、0.1mas%または0.2mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0048】
ここで、前記MがCoを含む場合、前記Coの含有量の範囲は、0~2.5mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば1.2mas%、1.15mas%、2mas%または1.3mas%であり、より好ましくは1~2mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0049】
ここで、前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~1mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば0.1mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0050】
ここで、前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、0~1mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば0.25mas%、0.1mas%または0.095mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0051】
ここで、前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量の範囲は、0~0.5mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば0.02mas%または0.05mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0052】
本発明において、前記Bの含有量の範囲は、好ましくは0.9~1.05mas%であり、例えば0.99mas%、1mas%または0.95mas%であり、mas%は、前記主合金における質量百分率を意味する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料は、下記番号1~5のいずれか(mas%)とすることができる。
【0054】
本発明の第4の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法が提供され、以下のステップを含み、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料における前記主合金及び前記サブ合金の溶融液をそれぞれ鋳造し、即ち主合金片及びサブ合金片を得、前記主合金片及び前記サブ合金片を水素破砕、微粉砕した混合物を成形かつ焼結処理し、即ち前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得る。
【0055】
本発明において、好ましくは、前記製造方法は、以下のステップを含み、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料における前記主合金及び前記サブ合金の溶融液をそれぞれ鋳造し、即ち主合金片及びサブ合金片を得、前記主合金片及び前記サブ合金片の混合物を水素破砕、微粉砕、成形かつ焼結処理し、即ち前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得る。
【0056】
または、前記製造方法は、以下のステップを含み、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料における前記主合金及び前記サブ合金の溶融液をそれぞれ鋳造し、即ち主合金片及びサブ合金片を得、前記主合金片及び前記サブ合金片をそれぞれ水素破砕し、そして、前記主合金片及び前記サブ合金片の前記水素破砕された粗粉を混合し、その後、混合された粗粉を微粉砕、成形かつ焼結処理し、即ち前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得る。
【0057】
または、前記製造方法は、以下のステップを含み、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料における前記主合金及び前記サブ合金の溶融液をそれぞれ鋳造し、即ち主合金片及びサブ合金片を得、前記主合金片及び前記サブ合金片をそれぞれ水素破砕かつ微粉砕し、前記主合金片及び前記サブ合金片の微粉砕された微粉を混合し、その後、混合された微粉を成形かつ焼結処理し、即ち前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得る。
【0058】
本発明において、前記鋳造、前記水素破砕、前記微粉砕、前記成形、及び焼結は、すべて本分野における通常の操作及び条件である。
【0059】
本発明において、前記溶融液を本分野における通常の方法で製造することができ、例えば、溶解炉で溶解製錬すればよい。前記溶解炉の真空度は、5×10-2Pa未満であってもよい。前記溶解製錬の温度は、1300℃~1600℃であってもよい。
【0060】
本発明において、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造工程であることができ、例えば、薄帯連続鋳造法、インゴット法、遠心鋳造法、急冷法。
【0061】
本発明において、前記水素解砕は、本分野の従来どおりのものであってもよく、1~6時間であってもよい。本発明において、前記水素破砕の条件は、本分野における通常の条件であることができる。前記水素破砕の温度は、400℃~650℃であってもよい。前記水素破砕の時間は、1~6時間とすることができる。
【0062】
本発明において、前記微粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕工程であることができ、例えば、ジェットミル粉砕であり、好ましくは、酸化ガス含有量が50ppm以下の雰囲気下で行う。前記微粉砕後の粉末粒径は2~7μmであってもよい。
【0063】
本発明において、前記成形の条件を本分野の通常のものとすることができ、例えば、磁場強度が0.5T~3.0Tであるプレス機でプレスして生の圧粉体とする。ここで、前記プレスの時間は、本分野における通常の時間であることができ、例えば3~30sとすることができる。本発明において、前記焼結処理の条件を本分野の通常のものとすることができる。前記焼結処理の温度は、1000℃~1100℃であってもよい。前記焼結処理の時間は、4~20時間であり、好ましくは6hであり、
【0064】
本発明の第3の目的としては、前述のようなネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法により製造されたネオジム鉄ホウ素永久磁石材料が提供される。
【0065】
明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、Nd2Fe14B主相と、主相間に分布する粒界相とを含み、前記粒界相には、Zr-B相および/またはTi-B相が含まれ、前記Zr-B相および/または前記Ti-B相の比例関係が「(」であり、前記X、前記Mは、前記Rとは別々に請求項1に記載されたものであり、Tは、Feおよび/またはCoであり、ここで、a<b<2a、10at%<x<40at%、10at%<y<40at%、20at%<z<80at%、5at%<p<20at%である。
【0066】
ここで、好ましくは、前記粒界相には、RHの酸化物がさらに含まれ、前記RHの種類は、前述のようなものである。
【0067】
ここで、好ましくは、前記粒界相におけるZrおよび/またはTi元素の含有量は、Nd2Fe14B主相におけるZrおよび/またはTi元素の含有量よりも高い。
【0068】
ここで、好ましくは、前記xの範囲は、20~35at%であり、at%は各元素の原子パーセントである。
【0069】
ここで、好ましくは、前記yの範囲は、20~35at%であり、at%は各元素の原子パーセントである。
【0070】
ここで、好ましくは、前記zの範囲は、25~45at%であり、at%は各元素の原子パーセントである。
【0071】
ここで、好ましくは、前記pの範囲は、10~25at%であり、at%は各元素の原子パーセントである。
【0072】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好適な実施例を得ることができる。
【0073】
本発明において、「(BH)max」とは、最大エネルギー積(maximum energy product)である。「Br」とは、残留磁束密度を意味し、永久磁石材料が飽和磁化された後、外磁場を撤去して保持できる磁性を残留磁束密度と呼ぶ。「Hc」とは、保磁力であり、磁極化強度保磁力がHcj(固有保磁力)であり、磁気誘導強度保磁力がHcbである。「Hk/Hcj」とは、角型比(squareness ratio)である。
【0074】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0075】
本発明の積極的な進歩的効果は、本発明の重希土類合金がサブ合金としてネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造することに用いられる場合、重希土類の利用率が高く、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料に高い残留磁束密度を保持させると共に、保磁力を大きく向上させることもできるということにある。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、実施例1で製造された磁石をFE-EPMAで面走査することによって形成したPr、O、Co、Zr、B、CP、Nd、Al、Cu、Nb、Dy、Ga及びGd元素の分布図である。
【
図2】
図2は、実施例1で製造された焼結磁石のFE-EPMAの後方散乱電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
【0078】
実施例1~5及び比較例1~5
(1)鋳造工程:以下の表1における実施例1~5及び比較例1~5に示される原料成分及び対応する合金Aと合金Bの配合比率に従って、対応する配合比率の組成物を真空溶解炉に入れ、5×10-2Paの真空中で1450℃の温度でそれぞれ真空溶解製錬し、その後、ストリップ連続鋳造方法により溶解製錬された溶融液をそれぞれ鋳造し、主合金片及びサブ合金片を製造する。
(2)水素破砕工程:室温で、ステップ(1)における主合金片及びサブ合金片の混合物を550℃で3時間水素破砕処理して、即ち粗粉砕粉末を得る。
(3)微粉粋処理:ジェットミルにおいてステップ(2)における粗粉砕された粉末を50ppm以下の酸化ガス含有量の雰囲気下で微粉砕し、平均粒径D50が4μmの微粉砕粉末を得る。
(4)成形工程:磁場強度2.0Tプレスで15秒間プレスして生の圧粉体を形成し、その後、圧力260MPaの条件で15秒間維持し、即ち成形体を得る。
(5)焼結工程:成形体を1070℃の温度で7時間焼結し、焼結雰囲気を真空またはアルゴンガス雰囲気にして、即ちネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得る。
【0079】
表1 ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物の成分と含有量(mas%)
注:「/」は、当該元素が含まれていないことを表す。
【0080】
以下の表2におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の成分及び含有量は、損失を無視して表1のデータから算出した公称成分である。
【0081】
表2 ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の成分と含有量(mas%)
注:「/」は、当該元素が含まれていないことを表す。
【効果実施例】
【0082】
実施例1~5及び比較例1~5で製造されたネオジム鉄ホウ素永久磁石材料をそれぞれ取り、FE-EPMAを用いて磁石の相構造を観察する。
【0083】
(1)磁気特性の検出:ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は中国計量院のPFM14.CN型超高保磁力永久磁石測定器を用いて磁気特性検出を行った。
【0084】
【0085】
「(BH)max」とは、最大エネルギー積(maximum energy product)である。「Br」とは、残留磁束密度を意味し、永久磁石材料が飽和磁化された後、外磁場を撤去して保持できる磁性を残留磁束密度と呼ぶ。「Hc」とは、保磁力であり、磁極化強度保磁力がHcj(固有保磁力)であり、磁気誘導強度保磁力がHcbである。「Hk/Hcj」とは、角型比(squareness ratio)である。
【0086】
(2)FE-EPMAによる検出
【0087】
図1は、実施例1で製造された磁石をFE-EPMAで面走査することによって形成したPr、O、Co、Zr、B、CP、Nd、Al、Cu、Nb、Dy、Ga、Gd元素の分布図である。
【0088】
【0089】
表4及び
図2に示されるように、点3は、通常の粒界相であり、点4は主相であり、粒界において、Zr-B相(点2)が生成されることによって、RHは、Bと結合できず、Oと結合してRHの酸化物相(点1)のみを形成することができ、そのため、点1における重希土類の含有量は高く、点2におけるBの含有量が高く、また、RHの酸化物の融点が高いため、RHが粒界から主相へ過剰に拡散して主相におけるBと結合することを抑制し、これは、本発明のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の特性向上の理由をメカニズム的に説明した。