(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、その原料組成物、その製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20240112BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240112BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240112BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240112BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20240112BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20240112BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20240112BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240112BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01F1/057 110
B22F1/00 Y
B22F1/05
B22F3/00 F
B22F3/24 B
B22F9/04 C
B22F9/04 D
B22F9/04 E
C22C33/02 H
C22C38/00 303D
H01F41/02 G
(21)【出願番号】P 2022548091
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2021095068
(87)【国際公開番号】W WO2021238783
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】202010478497.3
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】藍琴
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】牟維国
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-075717(JP,A)
【文献】特開2017-157833(JP,A)
【文献】特開2018-186134(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111161949(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111081443(CN,A)
【文献】再公表特許第2011/070847(JP,A1)
【文献】特表2022-543491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
B22F 1/00
B22F 1/05
B22F 3/00
B22F 3/24
B22F 9/04
C22C 33/02
C22C 38/00
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片であって、質量百分率で下記の成分
からなり、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
Nd及びNd以外の希土類金属R、前記Nd及びNd以外の希土類金属Rの合計含有量は29~33mas%であり、前記Rは、重希土類元素RHをさらに含み、前記RHの含有量の範囲は、0~1.2mas%であるが、0ではなく、
B:0.9~1.05mas%、
Co:0.5~2.0mas%、
M:0~2.0mas%、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含み、
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、
Fe:63.95~68.65mas%、
mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味し、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片の相構造は、柱状結晶主相と粒界相とを含み、前記粒界相には、CuリッチNbリッチ相が含まれる、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片。
【請求項2】
前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、29.5~32mas%であり、
前記Rは、Prをさらに含み、前記Prの含有量の範囲は、0~8mas%であり、
前記RHは、DyおよびTbの一種または複数種を含み、
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、0.1~0.5mas%であり、
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、0.1~1mas%であり、
前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、
前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%で
ある、
ことを特徴とする請求項
1に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片。
【請求項3】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片を使用するネオジム鉄ホウ素永久磁石材料であって、質量百分率で下記の成分
からなり、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
Nd及びNd以外の希土類金属R、且つ前記Rは、重希土類元素RHを含み、前記Nd及びNd以外の希土類金属Rの合計含有量は29~33mas%であり、前記RHの含有量の範囲は、0.6~2.1mas%であり、
B:0.9~1.05mas%、
Co:0.5~2.0mas%、
M:0~2.0mas%、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含み、
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、
Fe:63.95~68.65mas%、
mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする
請求項1に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片を使用するネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項4】
前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、30~32.5mas%であり、
前記Rは、Prを含み、前記Prの含有量の範囲は、0~8mas%であり、
前記RHは、DyおよびTbの一種または複数種を含み
、
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、0.6~1.2mas%であり、
前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、
前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%であり、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、Cをさらに含み、前記Cの含有量の範囲は、0.1~0.2mas%であり、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、Oをさらに含み、前記Oの含有量の範囲は、0.04~0.13mas%または0.07~0.13mas%で
ある、
ことを特徴とする請求項
3に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料。
【請求項5】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造するための原料組成物であって、質量百分率で下記の成分からなり、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
Nd及びNd以外の希土類金属R、前記Nd及びNd以外の希土類金属Rの合計含有量は29~33mas%であり、前記Rは、重希土類元素RHをさらに含み、前記RHの含有量の範囲は、0~1.2mas%であるが、0ではなく、
B:0.9~1.05mas%、
Co:0.5~2.0mas%、
M:0~2.0mas%、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含み、
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、
Fe:63.95~68.65mas%、
mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項3に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造するための原料組成物。
【請求項6】
前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、29.5~32mas%であり、
前記Rは、Prを含み、前記Prの含有量の範囲は、0~8mas%であり、
前記RHは、DyおよびTbの一種または複数種を含み、
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、0.1~0.5mas%であり、
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、0.1~1mas%であり、
前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、
前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%であり、
ことを特徴とする請求項5に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造するための原料組成物。
【請求項7】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質であって、質量百分率で下記の成分からなり、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
Nd及びNd以外の希土類金属R、前記Nd及びNd以外の希土類金属Rの合計含有量は29~33mas%であり、前記Rは、重希土類元素RHをさらに含み、前記RHの含有量の範囲は、0~1.2mas%であるが、0ではなく、
B:0.9~1.05mas%、
Co:0.5~2.0mas%、
M:0~2.0mas%、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含み、
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、
Fe:63.95~68.65mas%、
mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項3に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質。
【請求項8】
前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、29.5~32mas%であり、
前記Rは、Prをさらに含み、前記Prの含有量の範囲は、0~8mas%であり、
前記RHは、DyおよびTbの一種または複数種を含み、
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、0.1~0.5mas%であり、
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、0.1~1mas%であり、
前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、
前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%であり、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質は、Cをさらに含み、前記Cの含有量の範囲は、0.1~0.2mas%であり、
前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質は、Oをさらに含み、前記Oの含有量の範囲は、0.04~0.13mas%または0.07~0.13mas%である、
ことを特徴とする請求項7に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質。
【請求項9】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質の製造方法であって、前記製造方法は、以下のステップを含み、
請求項
5または
6に記載の原料組成物を溶解製錬して、合金片を得、前記合金片を製粉、成型、焼結し、
前記合金片の厚さは、0.2mm~0.4mmであり、
前記合金片は、請求項
1または
2に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片であり、
前記溶解製錬の温度は、1300~1700℃であり、
前記製粉は、水素破砕の製粉及びジェットミル製粉を含み、前記水素破砕の製粉は、水素吸収、脱水素、冷却処理を含み、前記水素吸収の温度は、20~200℃であり、
前記脱水素の温度は、400~650℃であり、
前記ジェットミル製粉後の粉末粒径D50は、3μm~8μmであり、
前記焼結の温度は、1000~1200℃であり、前記焼結の時間は、0.5~10hである、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質の製造方法。
【請求項10】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法であって、前記製造方法は、以下のステップを含み、
請求項
7または
8に記載のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質を粒界拡散処理し、
前記粒界拡散処理に用いられる重希土類金属は、DyおよびTbの一種または複数種を含み、前記重希土類金属の含有量の範囲は、0~0.6mas%であるが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味し、
前記粒界拡散の温度は、800~1000℃であり、
前記粒界拡散の時間は、12~90hであり、
前記粒界拡散の後に、さらに熱処理を行い、前記熱処理の温度は、470℃~510℃とし、
前記熱処理の時間は、2~4時間である、
ことを特徴とするネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、その原料組成物、その製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石材料は、電子部品をサポートするための重要な材料として開発され、開発の方向は、高磁気エネルギー積と高保磁力の方向に向かう。R-T-B系永久磁石材料(Rは希土類元素の少なくとも1つである)は、永久磁石の中で最高性能の磁石として知られ、ハードディスクドライブのボイスコイルモーター(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モーター、産業機器用モーターなどのさまざまなモーター及び家電製品に使用される。
【0003】
従来技術では、直面する技術的課題の一つとしては、高融点金属、例えばNb、Ti及びZrなどの含有量が低い場合、焼結が困難になり、磁石の保磁力が低下してしまうことである。しかし、高融点金属の含有量が高い場合、残留磁束密度も低下してしまう。
【0004】
直面する技術的課題のもう一つとしては、従来のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の熱処理温度区間が狭く、大熱処理炉でネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を熱処理する場合、積載位置によっては焼結磁石の性能が大きく変動し、量産に不利になることである。
【0005】
したがって、磁気特性(残留磁束密度及び保磁力)を確保し、かつ耐減磁性能が良好であるとともに、熱処理温度区間を確保することができるR-T-B系永久磁石材料は早急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料が磁気特性、耐減磁性能及び熱処理温度区間を同時に確保することができないという欠陥を解消するために、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料、原料組成物、製造方法、並びに応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は以下の技術考案を提供する。
【0008】
本発明の第1の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造するための原料組成物が提供され、質量百分率で下記の成分を含み、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
本発明において、当業者であれば分かるように、前記原料組成物は、一般的にNd及びNd以外の希土類金属Rを含み、前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、一般的に29~33mas%である。原料組成物におけるBの含有量は、一般的に0.85~1.2mas%である。各成分の含有量の合計を100mas%にするように、Feは、一般的にネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における原料組成物の各成分の含有量に応じて増加したり減少したりし、一般的に63.95~68.65mas%である。そのため、前記原料組成物は、当業者の一般的な理解に従って調合される。
【0009】
ここで、前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、好ましくは、29.5~32mas%であり、例えば、30.4mas%、30.5mas%、29.8mas%、30.7mas%または31.7mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0010】
ここで、前記Rには、Prがさらに含まれてもよい。前記Prの含有量の範囲は、好ましくは0~8mas%であり、例えば0.7mas%または0.2mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0011】
ここで、前記Rは、好ましくは重希土類元素RHをさらに含み、前記重希土類元素RHとは、ランタン系列元素のうち、原子番号が64以上である元素を指す。
【0012】
前記RHの含有量の範囲は、0~1.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば、0.2mas%、1.1mas%、0.4mas%または0.5mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0013】
前記RHとは、一般的にGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種又は複数種の重希土類元素である。好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbを含む。より好ましくは、前記RHは、Hoおよび/またはGdをさらに含む。より好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbである。
【0014】
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、好ましくは0.1~0.5mas%であり、例えば、0.2mas%または0.3mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0015】
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、好ましくは0.1~1mas%であり、例えば、0.5mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0016】
本発明において、前記原料組成物におけるBの含有量は、本分野における通常の含有量であることができ、好ましくは、前記Bの含有量の範囲は0.9~1.05mas%であり、例えば、0.98mas%または0.94mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、例えば、0.33mas%または0.41mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0019】
本発明において、前記原料組成物には、Coがさらに含まれてもよい。前記Coの含有量は、本分野における通常の含有量であることができ、好ましくは0.5~2.0mas%であり、例えば、0.7mas%または1mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0020】
本発明において、前記原料組成物には、Mがさらに含まれてもよく、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含む。前記Mの含有量の範囲は、好ましくは0~2.0mas%であり、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0021】
ここで、前記Mは、好ましくはAl、Ga、ZrおよびTiの一種または複数種を含む。
【0022】
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0023】
前記MがAlを含む場合、前記Alの含有量の範囲は、0~0.5mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0024】
前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量の範囲は、0~0.3mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0025】
前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記原料組成物における質量百分率を意味する。
【0026】
本発明において、好ましくは、前記原料組成物は、質量百分率で下記の成分からなり、
Nd:29~30.5mas%、
Tb:0.5~1.2mas%、
B:0.925~0.94mas%、
Nb:0.25~0.3mas%、
Cu:0.55~0.6mas%、
Co:0.5~1mas%、
残部はFeである。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、前記原料組成物の成分及び含有量は、下記番号1~6のいずれか(mas%)とすることができる。
【0028】
本発明の第2の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片が提供され、質量百分率で下記の成分を含み、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0029】
本発明において、好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片の相構造は、柱状結晶主相と粒界相とを含み、前記粒界相には、CuリッチNbリッチ相が含まれる。「リッチ」とは、当該元素の粒界における含有量が当該元素の主相における含有量よりも高いことを意味し、CuリッチNbリッチ相は、この位置でCu及びNbの両方の含有量が高いことを表す。
【0030】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片は、前記のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造するための原料組成物を溶解製錬、鋳造して得られるものである。
【0031】
本発明において、当業者であれば分かるように、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片は、一般的にNd及びNd以外の希土類金属Rを含み、前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は29~33mas%である。Bの含有量は、一般的に0.85~1.2mas%である。各成分の含有量の合計を100mas%にするように、Feは、一般的にネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における各成分の含有量に応じて増加したり減少したりし、一般的に63.95~68.65mas%である。そのため、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片は、当業者の一般的な理解に従って調合されて得られる。
【0032】
ここで、前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、好ましくは、29.5~32mas%であり、例えば、30.4mas%、30.5mas%、29.8mas%、30.7mas%または31.7mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0033】
ここで、前記Rには、Prがさらに含まれてもよい。前記Prの含有量の範囲は、好ましくは0~8mas%であり、例えば0.7mas%または0.2mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0034】
ここで、前記Rは、好ましくは重希土類元素RHをさらに含み、前記重希土類元素RHとは、ランタン系列元素のうち、原子番号が64以上である元素を指す。
【0035】
前記RHの含有量の範囲は、0~1.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば、0.2mas%、1.1mas%、0.4mas%または0.5mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0036】
前記RHとは、一般的にGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種又は複数種の重希土類元素である。好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbを含む。より好ましくは、前記RHは、Hoおよび/またはGdをさらに含む。より好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbである。
【0037】
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、好ましくは0.1~0.5mas%であり、例えば、0.2mas%または0.3mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0038】
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、好ましくは0.1~1mas%であり、例えば、0.5mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0039】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片におけるBの含有量は、本分野における通常の含有量であることができ、好ましくは、前記Bの含有量の範囲は0.9~1.05mas%であり、例えば、0.98mas%または0.94mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0040】
本発明において、好ましくは、前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、例えば、0.33mas%または0.41mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0041】
本発明において、好ましくは、前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0042】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片には、Coがさらに含まれてもよい。前記Coの含有量は、本分野における通常の含有量であることができ、好ましくは0.5~2.0mas%であり、例えば、0.7mas%または1mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0043】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片には、Mがさらに含まれてもよく、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含む。前記Mの含有量の範囲は、好ましくは0~2.0mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0044】
ここで、前記Mは、好ましくはAl、Ga、ZrおよびTiの一種または複数種を含む。
【0045】
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0046】
前記MがAlを含む場合、前記Alの含有量の範囲は、0~0.5mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0047】
前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量の範囲は、0~0.3mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0048】
前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば、0.01mas%または0.07mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片における質量百分率を意味する。
【0049】
本発明において、好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片は以下の製造方法によって製造され、上記の原料組成物を溶解製錬すればよい。
ここで、好ましくは、前記合金片の厚さは、0.2mm~0.4mmであり、例えば、0.3mmである。
【0050】
ここで、好ましくは、前記溶解製錬の温度は、1300~1700℃である。
【0051】
本発明において、好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片は、質量百分率で下記の成分からなり、
Nd:29~30.5mas%、
Tb:0.5~1.2mas%、
B:0.925~0.94mas%、
Nb:0.25~0.3mas%、
Cu:0.55~0.6mas%、
Co:0.5~1mas%、
残部はFeである。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、損失を無視して、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片の成分及び含有量は、下記番号1~6のいずれか(mas%)とすることができる。
【0053】
本発明の第3の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質が提供され、質量百分率で下記の成分を含み、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0054】
本発明において、当業者が分かるように、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質は、一般的にNd及びNd以外の希土類金属Rを含み、前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、一般的に29~33mas%である。Bの含有量は、一般的に0.85~1.2mas%である。各成分の含有量の合計を100mas%にするように、Feは、一般的にネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における各成分の含有量に応じて増加したり減少したりし、一般的に63.95~68.65mas%である。そのため、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質は、当業者の一般的な理解に従って調合されて得られる。
【0055】
ここで、前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、好ましくは、29.5~32mas%であり、例えば、30.4mas%、30.5mas%、29.8mas%、30.7mas%または31.7mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0056】
ここで、前記Rには、Prがさらに含まれてもよい。前記Prの含有量の範囲は、好ましくは0~8mas%であり、例えば0.7mas%または0.2mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0057】
ここで、前記Rは、好ましくは重希土類元素RHをさらに含み、前記重希土類元素RHとは、ランタン系列元素のうち、原子番号が64以上である元素を指す。
【0058】
前記RHの含有量の範囲は、0~1.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、例えば、0.2mas%、1.1mas%、0.4mas%または0.5mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する
【0059】
前記RHとは、一般的にGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種又は複数種の重希土類元素である。好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbを含む。より好ましくは、前記RHは、Hoおよび/またはGdをさらに含む。より好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbである。
【0060】
前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、好ましくは0.1~0.5mas%であり、例えば、0.2mas%または0.3mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0061】
前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、好ましくは0.1~1mas%であり、例えば、0.5mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0062】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質におけるBの含有量は、本分野における通常の含有量であることができ、好ましくは、前記Bの含有量の範囲は0.9~1.05mas%であり、例えば、0.98mas%または0.94mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0063】
本発明において、好ましくは、前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、例えば、0.33mas%または0.41mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0064】
本発明において、好ましくは、前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0065】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質には、Cがさらに含まれてもよい。前記Cの含有量の範囲は、好ましくは0.1~0.2mas%であり、例えば、0.11mas%、0.12mas%または0.15mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0066】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質には、Oがさらに含まれてもよく、前記Oの含有量の範囲は、好ましくは0.04~0.13mas%または0.07~0.13mas%であり、例えば、0.11mas%または0.12mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0067】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質には、Coがさらに含まれてもよい。前記Coの含有量は、本分野における通常の含有量であることができ、好ましくは0.5~2.0mas%であり、例えば、0.7mas%または1mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0068】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質には、Mがさらに含まれてもよく、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含む。前記Mの含有量の範囲は、好ましくは0~2.0mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0069】
ここで、前記Mは、好ましくはAl、Ga、ZrおよびTiの一種または複数種を含む。
【0070】
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0071】
前記MがAlを含む場合、前記Alの含有量の範囲は、0~0.5mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0072】
前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量の範囲は、0~0.3mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0073】
前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質における質量百分率を意味する。
【0074】
本発明において、好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質は、質量百分率で下記の成分からなり、
Nd:29~30mas%、
Tb:0.5~1.2mas%、
B:0.925~0.94mas%、
Nb:0.25~0.3mas%、
Cu:0.55~0.6mas%、
C:0.011~0.02mas%、
O:0.07~0.13mas%、
Co:0.5~1mas%、
残部はFeである。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、損失を無視して、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質の成分及び含有量は、下記番号1~6のいずれか(mas%)とすることができる。
【0076】
本発明の第4の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料が提供され、質量百分率で下記の成分を含み、
重希土類金属RH、
Nb:0.25~0.5mas%、
Cu:0.55~0.8mas%、
mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0077】
本発明において、当業者が分かるように、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、一般的にNd及びNd以外の希土類金属Rを含み、前記Rは、前記RHを含み、前記Nd及びNd以外の希土類金属Rの合計含有量は、一般的に29~33mas%である。Bの含有量は、一般的に0.85~1.2mas%である。各成分の含有量の合計を100mas%にするように、Feは、一般的にネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における各成分の含有量に応じて増加したり減少したりし、一般的に63.95~68.65mas%である。そのため、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、当業者の一般的な理解に従って調合される。
【0078】
ここで、前記希土類金属Rは、一般的に軽希土類元素および前記重希土類元素RHを含み、軽希土類元素とは、低い原子番号及び小さい質量を有する希土類元素を意味し、前記重希土類元素RHとは、一般的に原子番号が高くて質量が大きな希土類元素を指す。
【0079】
ここで、前記Nd及び前記Rの合計含有量の範囲は、30~32.5mas%であり、例えば、30.8mas%、30.9mas%、30.1mas%、31.1mas%または32.1mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0080】
ここで、前記Rには、Prがさらに含まれてもよい。前記Prの含有量の範囲は、好ましくは0~8mas%であり、例えば0.7mas%または0.2mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0081】
本発明において、前記RHの含有量の範囲は、好ましくは0.6~2.5mas%であり、例えば、0.8mas%、1.7mas%、0.9mas%、1.1mas%または2.1mas%であり、好ましくは0.6~1.8mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0082】
本発明において、前記RHとは、一般的にGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びScのうちの1種又は複数種の重希土類元素である。好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbを含む。より好ましくは、前記RHは、Hoおよび/またはGdをさらに含む。より好ましくは、前記RHは、Dyおよび/またはTbである。
【0083】
ここで、前記RHがDyを含む場合、前記Dyの含有量の範囲は、好ましくは0.1~0.8mas%であり、例えば、0.2mas%、0.3mas%または0.7mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0084】
ここで、前記RHがTbを含む場合、前記Tbの含有量の範囲は、好ましくは0.6~1.2mas%であり、例えば、0.6mas%、1mas%または1.1mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0085】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料におけるBの含有量は、本分野における通常の含有量であることができ、好ましくは、前記Bの含有量の範囲は0.9~1.05mas%であり、例えば、0.98mas%または0.94mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0086】
本発明において、好ましくは、前記Nbの含有量の範囲は、0.3~0.5mas%であり、例えば、0.33mas%または0.41mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0087】
本発明において、好ましくは、前記Cuの含有量の範囲は、0.6~0.8mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0088】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、Oがさらに含まれてもよく、前記Oの含有量の範囲は、好ましくは0.04~0.13mas%または0.07~0.13mas%であり、例えば、0.11mas%または0.12mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0089】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、Coがさらに含まれてもよい。前記Coの含有量の範囲は、好ましくは0.5~2.0mas%であり、例えば、0.7mas%または1mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0090】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、Cがさらに含まれてもよい。前記Cの含有量の範囲は、好ましくは0.1~0.2mas%であり、例えば、0.11mas%、0.12mas%または0.15mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0091】
本発明において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料には、Mがさらに含まれてもよく、前記Mは、Al、Ga、Zr、TiおよびHfの一種または複数種を含む。前記Mの含有量の範囲は、好ましくは0~2.0mas%であり、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0092】
ここで、前記Mは、好ましくはAl、Ga、ZrおよびTiの一種または複数種を含む。
【0093】
前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0094】
前記MがAlを含む場合、前記Alの含有量の範囲は、0~0.5mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0095】
前記MがGaを含む場合、前記Gaの含有量の範囲は、0~0.3mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0096】
前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量の範囲は、0~0.2mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0097】
本発明において、好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、質量百分率で下記の成分からなり、
Nd:29~30mas%、
Tb:0.6~1.2mas%、
B:0.925~0.94mas%、
Nb:0.25~0.3mas%、
Cu:0.55~0.6mas%、
C:0.11~0.12mas%、
O:0.07~0.13mas%、
Co:0.5~1mas%、
残部はFeである。
【0098】
本発明の好ましい実施形態において、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の成分及び含有量は、下記番号1~5のいずれか(mas%)とすることができる。
【0099】
本発明の第5の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質の製造方法が提供され、前記製造方法は、下記のステップを含み:上記のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造するための原料組成物を溶解製錬し、即ち合金片を得、そして、前記合金片を製粉、成型、焼結すればよい。
【0100】
本発明において、前記合金片の厚さは0.2mm~0.4mmであり、例えば0.3mmである。
【0101】
本発明において、好ましくは、前記合金片は、上記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片である。
【0102】
本発明において、前記溶解製錬の操作及び条件は本分野の通常の溶解製錬工程であってもよく、一般的に前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物をインゴット工程及びストリップキャスティング工程により溶解製錬鋳造し、合金片を得る。
【0103】
当業者が分かるように、希土類元素が通常溶解製錬及び焼結工程において損失してしまうため、最終製品の品質を確保するために、一般的に溶解製錬過程において、原料組成物の製剤に希土類元素(一般的にNd元素である)を余分に0~0.3mas%添加し、パーセントとは、余分に添加された希土類元素の質量が前記原料組成物の総質量に占める質量百分率を意味し、また、この余分に添加された希土類元素の含有量は原料組成物の範囲に含まれない。
【0104】
本発明において、前記溶解製錬の温度は、1300~1700℃であってもよい。
【0105】
本発明において、前記溶解製錬の装置は、一般的に高周波真空溶解炉、例えば高周波真空誘導急速凝固メルトスピニング炉である。溶解製錬の過程では、ごく一部の酸素元素、例えば0~0.013wt%を導入することも可能である。
【0106】
本発明において、前記製粉の操作及び条件は本分野の通常の製粉工程であってもよく、一般的に水素破砕の製粉及びジェットミル製粉を含む。
【0107】
ここで、前記水素破砕の製粉は、一般的に水素吸収、脱水素、冷却処理を含む。前記水素吸収の温度は、一般的に20~200℃である。前記脱水素の温度は、一般的に400~650℃である。前記水素吸収の圧力は、一般的に50~600kPaである。
【0108】
ここで、前記ジェットミル製粉は、一般的に0.1~2MPa、好ましくは0.5~0.7MPaの条件下で行われる。前記ジェットミル製粉におけるガス流は、例えば窒素ガス及び/又はアルゴンガスとすることができる。前記ジェットミル製粉の効率は、装置によって異なり、例えば、30~400kg/hとすることができ、さらに、例えば、200kg/hである。
【0109】
ここで、前記ジェットミル製粉後の粉末粒径D50は、3μm~8μmであることができ、例えば、D50は4μmである。
【0110】
本発明では、前記ジェットミル製粉の過程において、一般的に酸素含有量を100ppm以下に制御する必要がある。酸素含有量を制御する手段は、本分野の通常のものとすることができる。
【0111】
本発明において、前記成型の操作及び条件は、本分野における通常の成型工程であることができる。例えば、磁場成型方法である。前記磁場成型方法の磁場強度は、一般的に1.5T以上である。
【0112】
本発明において、前記焼結の操作及び条件は、本分野における通常の焼結工程であることができ、例えば、真空焼結工程及び/又は不活性雰囲気焼結工程である。前記真空焼結工程又は前記不活性雰囲気焼結工程は、すべて本分野における通常の操作である。不活性雰囲気を利用して焼結工程を行う場合、前記焼結の開始段階は、真空度5×10-3Pa未満の条件下で行われることができる。前記不活性雰囲気は、本分野の通常の不活性ガスを含む雰囲気であってもよく、ヘリウムガス、アルゴンガスに限定されない。
【0113】
本発明において、前記焼結の温度は、1000~1200℃、好ましくは、1030~1090℃とすることができる。前記焼結の時間は、0.5~10h、好ましくは、2~8hとすることができる。
【0114】
本発明の第6の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質が提供され、それは、上記の製造方法で製造されている。
【0115】
本発明の第7の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法が提供され、前記製造方法は、以下のステップを含み、上記のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質を粒界拡散すればよい。
【0116】
本発明において、前記粒界拡散処理は、本分野の通常の工程に従って処理されることができ、例えば、重希土類金属のコーティング操作、物理気相成長操作または蒸着操作により粒界拡散処理を実現する。
【0117】
ここで、前記重希土類金属は、Dyおよび/またはTbを含む。前記重希土類金属の含有量の範囲は、0~0.6mas%であることが好ましいが、0ではなく、mas%とは、前記ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0118】
ここで、前記重希土類金属は、一般的にフッ化物の形態、例えば、フッ化テルビウムまたはフッ化ジスプロシウムでコーティングされ、導入されたフッ素元素は、最終的な磁石成分の元素範囲に含まれない。
【0119】
前記物理気相成長操作とは、一般的にマグネトロンプラズマスパッタリングを指し、重希土類Dyおよび/またはTbターゲットを不活性ガスで衝突させ、重希土類Dyおよび/またはTbイオンを生成し、磁場の制御によって基材表面に均一に付着させることである。前記蒸着法とは、一般的に重希土類Dyおよび/またはTbにより一定の真空度(例えば5~0.05Pa)及び一定の温度(例えば500~900℃)で重希土類Dyおよび/またはTbの蒸気を生成し、重希土類元素が基材の表面に豊富に集まっていることを指す。
【0120】
本発明において、前記粒界拡散の温度は、800~1000℃、例えば900℃であってもよい。
【0121】
本発明において、前記粒界拡散の時間は、12~90h、例えば24hであってもよい。
【0122】
本発明において、前記の粒界拡散の後に、本分野の常法に従って熱処理をさらに行う。
【0123】
本発明において、前記熱処理の温度は、470℃~510℃であってもよい。
【0124】
本発明において、前記熱処理の時間は、2~4時間、例えば3時間であってもよい。
【0125】
本発明において、原料の純度及び製造工程の影響のため、導入されたCとOの不純物は、原料組成物及び合金片製品の範囲内に含まれない。製造工程では、一般に潤滑剤等が添加され、導入された炭素不純物の含有量は、本分野の通常のものであり、一般的に0.1~0.2mas%である。導入された酸素不純物の含有量は、本分野の通常のものであり、一般的に1300ppm以下である。
【0126】
本発明の第8の目的としては、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料が提供され、それは、上記の製造方法で製造されている。
【0127】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好ましい実施例を得ることができる。
【0128】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0129】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
1)本発明のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の角型比は良好であり、いずれも99%以上であり、
2)本発明のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の温度性能が良好であり、20~150℃Hcjの温度係数|β|は、いずれも0.422%であり、
3)本発明のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の熱処理温度区間が広くて、470~510℃であり、
4)本発明のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、Br≧14kGs、保磁力≧25kOeである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】
図1は、実施例2におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片の微細組織である。
【発明を実施するための形態】
【0131】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
【0132】
表1 ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を製造するための原料組成物(mas%)
注:「/」は、当該元素が含まれていないことを表す。
【0133】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の製造方法は以下の通りである。
【0134】
本発明の各実施例および比較例において、導入される炭素の不純物、酸素の不純物の含有量は、本分野における通常の含有量である。
(1)溶解製錬及び鋳造工程:表1に示す成分に従って、調製した表1原料をアルミナ製の坩堝に入れ、高周波真空溶解炉において0.05Paの真空中で1500℃の条件で真空溶解製錬した。高周波真空誘導急速凝固メルトスピニング炉にアルゴンガスを導入して鋳造し、そして、合金を急冷し、合金片を得、合金片の厚さは0.3mmである。
(2)水素破砕製粉工程:急冷合金を置く水素破砕用炉を室温で真空引きした後、純度99.9%の水素ガスを水素破砕用炉内に導入して水素ガス圧力を90kPaに維持する。水素吸収を十分に行った後、真空引きしながら昇温し、十分に脱水素する。その後、冷却し、水素破砕した粉末を取り出す。ここで、水素吸収の温度は室温であり、脱水素の温度は、550℃である。
(3)ジェットミル製粉工程:水素破砕した粉末を、窒素ガス雰囲気下(酸素含有量を100ppm以下に制御する必要がある)及び粉砕室圧力0.65MPaの条件下でジェットミル粉砕し(ジェットミル製粉の効率は、装置によって異なり、例えば、200kg/hとすることができる)、微粉を得、粒径D50は4μmである。
(4)成型工程:ジェットミルを経た後の粉末に潤滑剤(例えば、ステアリン酸亜鉛、炭素不純物を導入する)を添加し、1.5T以上の磁場強度でプレスして成型する。
(5)焼結工程:各成型体を焼結炉に搬入して焼結し、0.5Pa未満の真空下かつ1030~1090℃で2~8h焼結し、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質を得た。
(6)粒界拡散の工程:ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の基質の表面を清浄化した後、それぞれDyのフッ化物またはTbのフッ化物により調製された原料を用いて、磁石に全面噴霧してコーティングし、コーティングした磁石を乾燥し、高純度のArガス雰囲気で、850℃の温度で24時間拡散熱処理する。室温まで冷却された。そして、470~510℃の温度で3時間熱処理を行い、即ちネオジム鉄ホウ素永久磁石材料を得、ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の成分の含有量を以下の表2に示す。
[効果実施例]
【0135】
実施例1~5及び比較例1~5のネオジム鉄ホウ素永久磁石材料をそれぞれ選択し、その磁気特性、成分及び温度係数を測定し、EPMAを用いて実施例2におけるネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の合金片の微細組織を観察する。
【0136】
(1)ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料の各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES、Icap6300)を用いて測定される。成分の検出結果を下記の表2に示す。
【0137】
表2 ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料(mas%)
注:「/」は、当該元素が含まれていないことを表す。
【0138】
(2)磁気特性の評価:焼結磁石は、中国計量院のNIM-10000H型BH大塊希土類永久磁石非破壊測定システムを用いて磁気特性検出を行い、磁気特性の検出結果を以下の表3に示す。
【0139】
(3)温度安定性の試験:温度安定性は、一般的に各磁気特性の温度変化係数で表され、温度が1℃変化するごとに磁気特性が変化する百分率を指し、永久磁石材料の磁気特性が外部温度場で変化しないことを保つ能力が示され、その絶対値は小さいほど良好になる。温度係数の絶対値の計算式は以下の通りである。
算出した結果を表3に示す。
【0140】
表3
「Br」は、残留磁束密度であり、「Hcj」は、保磁力である。
【0141】
(4)合金片の微細組織検出:実施例2の合金片を選択して、FE-EPMA検出を行う。試験の方法は、合金片の断面を象眼、研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)を用いて検出を行うことである。面走査によって合金片におけるNb、Cu元素の分布を特定する。
図1において、粒界には、CuリッチNbリッチ相が存在する。