(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】非晶質シリコン複合体の製造方法、及び非晶質シリコン複合体の製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 33/023 20060101AFI20240112BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240112BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C01B33/023
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
(21)【出願番号】P 2022559987
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2020014454
(87)【国際公開番号】W WO2021201360
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0041073
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521378288
【氏名又は名称】コリア メタル シリコン カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チェ, チョン オ
(72)【発明者】
【氏名】ユ, チョン シク
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0109057(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0009817(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0009807(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0070302(KR,A)
【文献】特開平10-294112(JP,A)
【文献】特開2013-199395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/000-33/193
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する段階と、
前記シリコン溶湯が結晶化されない間に固化されるように、前記シリコン溶湯を冷却装置で冷却し、非晶質シリコン粉末を獲得する段階と、
前記非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを獲得する段階と、
前記非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を獲得する段階と、
前記第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を獲得する段階と、
前記第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を獲得する段階と、を含む、非晶質シリコン複合体の製造方法
であって、
ここで、前記冷却装置は、
一端に、前記シリコン溶湯が流入される入口部を具備し、前記シリコン溶湯が一方向に移動する内部空間を具備するボディと、
前記ボディの他端に配され、冷却された前記シリコン溶湯が流出され、前記一方向にテーパ状になる出口部と、
前記ボディの外周面に複数個配され、前記内部空間に冷却流体を噴射する噴射孔と、を具備する、
非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項2】
前記噴射孔は、
前記ボディの周囲方向に沿って複数個の噴射列に配され、互いに隣接する前記噴射列に含まれたそれぞれの前記噴射孔が互い違いに配される、請求項
1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項3】
前記噴射孔は、
噴射角度が30°ないし45°であり、噴射形態が円形であり、互いに隣接する噴射孔が、前記ボディとなす配置角度が互いに異なる、請求項
1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項4】
前記非晶質シリコン粉末を獲得する段階は、
前記シリコン溶湯を冷却する段階と、
冷却された前記シリコン溶湯をフィルタリングし、前記非晶質シリコン粉末と前記冷却流体とを分離する段階と、
分離された前記冷却流体を前記冷却装置に移送し、前記噴射孔を介して噴射する段階と、を含む、請求項
1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項5】
前記非晶質シリコン粉末を獲得する段階において、
冷却速度は、100K/secないし105K/secであり、
前記冷却装置の内部空間を流動する前記シリコン溶湯の移動速度は、0.9L/minないし1.1L/minである、請求項1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項6】
前記非晶質ナノシリコンを獲得する段階は、
前記非晶質シリコン粉末を一次湿式粉砕する段階と、
一次湿式粉砕された前記非晶質シリコン粉末を二次湿式粉砕する段階と、を含み、
前記一次湿式粉砕する段階において、
粉砕速度は、1,900rpmないし2,100rpmであり、ビード径は、1mm、3mmまたは5mmのうちいずれか一つであり、粉砕時間は、0.5時間ないし1時間であり、
前記二次湿式粉砕する段階において、
粉砕速度は、2,400rpmないし2,600rpmであり、ビード径は、0.1mm、0.3mm、0.65mmまたは0.8mmのうちいずれか一つであり、粉砕時間は、1.0時間ないし1.5時間である、請求項1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項7】
前記第1混合物を獲得する段階は、
前記非晶質ナノシリコンに、前記第1ピッチと蒸溜水とを混合し、前記第1混合物を形成する段階と、
前記第1混合物を噴霧乾燥させる段階と、を含む、請求項1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1混合物を噴霧乾燥させる段階において、
ディスクを利用し、前記第1混合物を噴霧乾燥させるが、乾燥温度は、240℃ないし270℃であり、前記ディスクの回転速度は、5,000rpmないし10,000rpmであり、
噴霧乾燥後、前記第1混合物において、前記非晶質ナノシリコンの重量%は、60ないし70wt%であり、前記第1ピッチの重量%は、30ないし40wt%である、請求項
7に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
【請求項9】
シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する溶融炉と、
前記シリコン溶湯を冷却し、非晶質シリコン粉末を形成する冷却装置と、
前記非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを形成する湿式粉砕装置と、前記非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を形成する混合装置と、
前記第1混合物を噴霧乾燥させる噴霧乾燥装置と、
前記第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を形成するコーティング装置と、
前記第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を形成する熱処理装置と、を含み、
前記冷却装置は、
一端に、前記シリコン溶湯が流入される入口部を具備し、前記シリコン溶湯が一方向に移動する内部空間を具備するボディと、
前記ボディの他端に配され、冷却された前記シリコン溶湯が流出され、前記一方向にテーパ状になる出口部と、
前記ボディの外周面に複数個配され、前記内部空間に冷却流体を噴射する噴射孔と、を具備し、
前記噴射孔は、前記ボディの周囲方向に沿って複数個の噴射列に配され、互いに隣接する前記噴射列に含まれたそれぞれの前記噴射孔が、前記一方向に互い違いに配される噴射孔を具備する、非晶質シリコン複合体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質シリコン複合体の製造方法、及び非晶質シリコン複合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池の負極活物質として、炭素系素材である黒鉛が主に使用されている。しかしながら、黒鉛は、リチウム保存能(約370mAh/g)が低く、高容量のリチウム二次電池のための負極材料として使用するには、限界がある。
【0003】
それにより、相対的に高いリチウム保存能(約4,200mAh/g)を有しているシリコンが黒鉛を代替することができる素材として注目されている。ただし、シリコンは、そのような高いリチウム保存能のために、リチウム二次電池の充電時または放電時、リチウムと反応し、大きい体積変化を示す。それにより、リチウム二次電池に、クラックまたは短絡のような損傷が生じてしまう。
【0004】
前述の背景技術は、発明者が、本発明導出のために保有していたか、あるいは本発明の導出過程において習得した技術情報であり、必ずしも本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術とすることはできない。
【0005】
本発明は、使用時に体積変化を最小化させることができる非晶質シリコン複合体の製造方法、及び非晶質シリコン複合体の製造装置を提供することを目的にする。ただし、そのような課題は、例示的な物であり、それにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法は、シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する段階、前記シリコン溶湯が結晶化されない間に固化されるように、前記シリコン溶湯を冷却装置で冷却し、非晶質シリコン粉末を獲得する段階、前記非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを獲得する段階、前記非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を獲得する段階、前記第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を獲得する段階、及び前記第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を獲得する段階を含む。
【0007】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、前記冷却装置は、一端に、前記シリコン溶湯が流入される入口部を具備し、前記シリコン溶湯が一方向に移動する内部空間を具備するボディ、前記ボディの他端に配され、冷却された前記シリコン溶湯が流出され、前記一方向にテーパ状になる出口部、及び前記ボディの外周面に複数個配され、前記内部空間に冷却流体を噴射する噴射孔を具備しうる。
【0008】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、前記噴射孔は、前記ボディの周囲方向に沿って複数個の噴射列に配され、互いに隣接する前記噴射列に含まれたそれぞれの前記噴射孔が互い違いにも配される。
【0009】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、前記噴射孔は、噴射角度が30°ないし45°であり、噴射形態が円形であり、互いに隣接する噴射孔が、前記ボディとなす配置角度が互いに異なってもいる。
【0010】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、前記非晶質シリコン粉末を獲得する段階は、前記シリコン溶湯を冷却する段階、冷却された前記シリコン溶湯をフィルタリングし、前記非晶質シリコン粉末と前記冷却流体とを分離する段階、及び分離された前記冷却流体を前記冷却装置に移送し、前記噴射孔を介して噴射する段階を含むものでもある。
【0011】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、前記非晶質シリコン粉末を獲得する段階において、冷却速度は、100K/secないし105K/secであり、前記冷却装置の内部空間を流動する前記シリコン溶湯の移動速度は、0.9L/minないし1.1L/minでもある。
【0012】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、前記非晶質ナノシリコンを獲得する段階は、前記非晶質シリコン粉末を一次湿式粉砕する段階、及び一次湿式粉砕された前記非晶質シリコン粉末を二次湿式粉砕する段階を含み、前記一次湿式粉砕する段階において、粉砕速度は、1,900rpmないし2,100rpmであり、ビード径は、1mm、3mmまたは5mmのうちいずれか一つであり、粉砕時間は、0.5時間ないし1時間であり、前記二次湿式粉砕する段階において、粉砕速度は、2,400rpmないし2,600rpmであり、ビード径は、0.1mm、0.3mm、0.65mmまたは0.8mmのうちいずれか一つであり、粉砕時間は、1.0時間ないし1.5時間でもある。
【0013】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、前記第1混合物を獲得する段階は、前記非晶質ナノシリコンに、前記第1ピッチと蒸溜水とを混合し、前記第1混合物を形成する段階、及び前記第1混合物を噴霧乾燥させる段階を含むものでもある。
【0014】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法において、ディスクを利用し、前記第1混合物を噴霧乾燥させるものの、乾燥温度は、240℃ないし270℃であり、前記ディスクの回転速度は、5,000rpmないし10,000rpmであり、噴霧乾燥後、前記第1混合物において、前記非晶質ナノシリコンの重量%は、60ないし70wt%であり、前記第1ピッチの重量%は、30ないし40wt%でもある。
【0015】
本発明の他の実施形態による非晶質シリコン複合体の製造装置は、シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する溶融炉、前記シリコン溶湯を冷却し、非晶質シリコン粉末を形成する冷却装置、前記非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを形成する湿式粉砕装置、前記非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を形成する混合装置、前記第1混合物を噴霧乾燥させる噴霧乾燥装置、前記第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を形成するコーティング装置、及び前記第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を形成する熱処理装置を含み、前記冷却装置は、一端に、前記シリコン溶湯が流入される入口部を具備し、前記シリコン溶湯が一方向に移動する内部空間を具備するボディ、前記ボディの他端に配され、冷却された前記シリコン溶湯が流出され、前記一方向にテーパ状になる出口部、及び前記ボディの外周面に複数個配され、前記内部空間に冷却流体を噴射する噴射孔を具備し、前記噴射孔は、前記ボディの周囲方向に沿って複数個の噴射列に配され、互いに隣接する前記噴射列に含まれたそれぞれの前記噴射孔が、前記一方向に互い違いに配される噴射孔を具備する。
【0016】
前述のところ以外の他の側面、特徴、利点は、以下の発明を実施するための具体的な内容、請求範囲及び図面から明確になるであろう。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態による非晶質シリコン複合体製造方法、及び非晶質シリコン複合体の製造装置は、非晶質シリコン複合体の体積変化を最小化させることができ、リチウム二次電池の寿命特性と容量特性とを向上ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造装置を示す図である。
【
図3】
図1の冷却装置の噴射孔配置を示す図である。
【
図4】
図1の冷却装置の噴射孔配置を示す図である。
【
図5】
図1の冷却装置の噴射孔配置を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法は、シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する段階、前記シリコン溶湯が結晶化されない間に固化されるように、前記シリコン溶湯を冷却装置で冷却し、非晶質シリコン粉末を獲得する段階、前記非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを獲得する段階、前記非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を獲得する段階、前記第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を獲得する段階、及び前記第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を獲得する段階を含む。
【0020】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施形態を有しうるが、特定実施形態を図面に例示し、発明の説明によって詳細に説明する。しかしながら、それらは、本発明を特定の実施形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むものであると理解されなければならない。本発明の説明において、他の実施形態に図示されているとしても、同一構成要素については、同一識別符号を使用する。
【0021】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素の説明にも使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0022】
本出願で使用された用語は、単に特定の実施形態について説明するために使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。本出願において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。
【0023】
以下、添付された図面に図示された本発明に係わる実施形態を参照し、本発明について詳細に説明する。参照として、本明細書で特別な言及がない限り、%は、重量%を意味するものである。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造装置10を示す図面であり、
図2は、
図1の冷却装置200を示す図面であり、
図3ないし
図5は、
図1の冷却装置200の噴射孔230配置を示す図面である。
【0025】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造装置10は、溶融炉100と、冷却装置200と、フィルタ300と、湿式粉砕装置400と、混合装置500と、噴霧乾燥装置600と、コーティング装置700と、熱処理装置800と、を含むものでもある。
【0026】
溶融炉100は、シリコン溶湯(または、溶融シリコン(silicon melt))を形成するための装置である。溶融炉100は、内部に装入されたシリコン原料と還元材とが混合されれば、それを高温で溶融する。一実施形態として、溶融炉100は、電気炉でもある。溶融炉100は、1,800℃以上の温度において、シリコン原料と還元材とを溶融させ、シリコン溶湯を形成することができる。
【0027】
該シリコン原料は、高純度の珪石(SiO2)でもあり、該還元材は、シリコン原料を還元するための木炭、コークスまたはウッドチップのような炭素系素材でもある。
【0028】
冷却装置200は、溶融炉100で生成されたシリコン溶湯を急速冷却し、非晶質シリコン粉末を形成することができる。溶融炉100で形成されたシリコン溶湯は、耐火物容器などを介し、冷却装置200に流入される。
【0029】
冷却装置200は、ボディ210と、出口部220と、噴射孔230とを具備しうる。
【0030】
ボディ210は、冷却装置200のフレームを形成する部材であり、冷却装置200に流入されたシリコン溶湯が流動する内部空間211を具備する。一実施形態として、ボディ210は、中空の円筒形状を有しうる。ボディ210の一側には、シリコン溶湯が流入される入口部212が配されうる。入口部212に流入されたシリコン溶湯は、一方向(例えば、
図2の冷却装置200の下方)に流動しながら、内部空間211を通過し、その過程において冷却されうる。
【0031】
出口部220は、ボディ210の他側にも配される。一実施形態として、出口部220は、前記一方向にテーパ状になる形状を有しうる。それにより、内部空間211を通過したシリコン溶湯は、出口部220で集められた状態で排出されうる。
【0032】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態による冷却装置200は、ボディ210に、少なくとも1以上の噴射孔230を具備しうる。一実施形態として、噴射孔230は、ボディ210の外周面に複数個配され、冷却装置200の内部空間211に冷却流体を噴射することができる。
【0033】
噴射孔230は、金属材質の連結管(図示せず)などを介し、冷却流体保存槽(図示せず)とも連結される。冷却流体は、前記冷却流体保存槽から前記連結管を介して供給され、噴射孔230に噴射されうる。
【0034】
該冷却流体は、特別に限定されないが、迅速な冷却と安全とのために水を使用することが望ましい。水は、噴射孔230を介して噴射され、冷却装置200の内部空間211を流動するシリコン溶湯を冷却することができる。
【0035】
一実施形態として、複数個の噴射孔230は、ボディ210の外周面に、複数個の噴射列(C)にも配される。さらに具体的には、
図2に示されているように、噴射孔230は、ボディ210の周囲方向に沿い、既設定の間隔で複数個配され、噴射列(C)を形成することができる。そして、それぞれの噴射列(C)は、ボディ210の長手方向、すなわち、シリコン溶湯の流動方向である前記一方向に離隔されるようにも配される。
【0036】
図2には、複数個の噴射孔230が、第1噴射列C1ないし第5噴射列C5をなすように配されるように示されているが、噴射列(C)の個数は、特別に限定されるものではない。
【0037】
一実施形態として、それぞれの噴射列(C)に含まれた噴射孔230は、隣接する噴射列(C)に含まれた噴射孔230と互い違いにも配される。さらに具体的には、
図2に示されているように、第1噴射列C1に含まれたそれぞれの噴射孔230は、隣接する噴射列(C)である第2噴射列C2に配されたそれぞれの噴射孔230と互い違いにも配される。すなわち、第1噴射列C1に含まれたそれぞれの噴射孔230は、第2噴射列C2に含まれたそれぞれの噴射孔230と前記一方向に重ならないようにも配される。
【0038】
同様に、第2噴射列C2と第3噴射列C3と第4噴射列C4と第5噴射列C5とに含まれたそれぞれの噴射孔230は、隣接する噴射列(C)に含まれたそれぞれの噴射孔230と、前記一方向に互い違いにも配される。
【0039】
そのような構成を介し、それぞれの噴射孔230から噴射される冷却流体が、シリコン溶湯の表面に重複して噴射されることを最小化させることができ、シリコン溶湯を効率的に急速冷却させることができる。それにより、冷却工程に必要となる時間を短縮させることができ、工程全体のタクトタイム(tact time)を短縮させることができる。
【0040】
一実施形態として、それぞれの噴射列(C)に含まれた噴射孔230間を延長させる仮想線を描いたとき、前記仮想線は円形でもある。すなわち、それぞれの噴射列(C)に含まれた噴射孔230は、ボディ210の外周面において、同一高を有するようにも配される。
【0041】
他の実施形態として、前記仮想線は、楕円でもある。すなわち、それぞれの噴射列(C)に含まれた噴射孔230は、ボディ210の外周面で互いに異なる高さを有するようにも配される。
【0042】
図2には、第1噴射列C1と第3噴射列C3と第5噴射列C5とに含まれた噴射孔230は、前記一方向に並んで配され、第2噴射列C2と第4噴射列C4とに含まれた噴射孔230が、前記一方向に並んで配されるように示されているが、それに限定されるものではない。例えば、噴射列(C)及び噴射列(C)に含まれた噴射孔230の配置は、冷却装置200と、シリコン溶湯の特性とによっても異なる。
【0043】
例えば、それぞれの噴射列(C)に含まれた噴射孔230は、隣接する噴射列(C)だけではなく、他の噴射列(C)に含まれた噴射孔230と前記一方向に互い違いにも配される。そのような構成を介し、冷却流体がシリコン溶湯の表面に重複して噴射されることを、さらに確実に防止し、さらに効率的に、シリコン溶湯を急速冷却することができる。
【0044】
図3に示されているように、噴射孔230は、それぞれの噴射列(C)に、8個が等間隔(45°)にも配される。ただし、噴射列(C)に含まれた噴射孔230の個数、及び噴射孔230間の角度は、それに限定されるものではなく、冷却装置200またはシリコン溶湯によっても異なる。
【0045】
図3において、シリコン溶湯は、内部空間211の内側同心円に区画された領域で示され、冷却流体が噴射孔230から噴射される領域は、ハッチングで示されている。また、冷却流体とシリコン溶湯とが接触する領域、すなわち、冷却流体によってシリコン溶湯が冷却される領域(以下、「冷却領域A」ともいう)を斜線で示されている。
【0046】
一実施形態として、噴射孔230から噴射される冷却流体の噴射角度(θ)は、30°ないし45°でもある。噴射角度(θ)は、噴射孔230から冷却流体が噴射される範囲を示した角度である。噴射角度(θ)が30°未満である場合、冷却流体が噴射される領域が過度に狭く、シリコン溶湯の全体的な冷却が困難である。
【0047】
一方、噴射角度(θ)が45°を超える場合、冷却流体の噴射圧力が低くなり、冷却効率が落ちる。
【0048】
一実施形態として、噴射孔230から噴射される冷却流体の噴射形態は、円形でもある。それにより、それぞれの噴射孔230から噴射される冷却流体と、シリコン溶湯とが接触する面積がさらに大きくなりうる。
【0049】
一実施形態として、噴射列(C)に含まれた噴射孔230の個数と、噴射孔230の噴射角度(θ)は、それぞれの噴射孔230から噴射された冷却流体が互いに重複しないようにも設定される。
【0050】
さらに具体的には、
図4に示されているように、噴射列(C)に含まれた噴射孔230の個数は、12個でもある。また、冷却領域Aは、冷却装置200の上面から見たとき、実質的に重複しないようにも形成される。すなわち、冷却領域Aは、周囲方向に沿い、連続して配されうる。ここで、「実質的に重複しない」ということは、冷却領域Aが全く重複しないか、あるいは冷却流体の噴射状態により、冷却領域Aが一時的に重複しても、冷却領域Aの全体面積に比べ、冷却領域Aが重複する面積は、無視することができるほど極めて小さな場合をいすれも含む。
【0051】
そのような構成を介し、シリコン溶湯が均一であって急速に冷却され、シリコン溶湯の冷却品質を高めることができ、冷却工程に必要となる時間を画期的に短縮させることができる。
【0052】
一実施形態として、噴射孔230は、ボディ210の外周面と、所定の角度(以下、「配置角度(φ)」ともいう)をなすようにも配される。さらに具体的には、
図5に示されているように、冷却装置200の側面から見たとき、噴射孔230は、ボディ210の外周面に対し、垂直に配されるか、ボディ210の外周面に対し、上に傾いて配されるか、あるいはボディ210の外周面に対し、下に傾いて配されうる。
【0053】
噴射孔230の配置角度(φ)の範囲は、特別に限定されるものではない。一実施形態として、ボディ210の周囲方向及び/または高さ方向に隣接する噴射孔230間の配置角度(φ)は、互いに異なってもいる。
【0054】
望ましくは、噴射孔230の配置角度(φ)は、隣接する噴射列(C)による冷却領域(A)が、前記一方向に互いに重畳しないようにも設定される。それにより、シリコン溶湯が、均一であって急速に冷却され、シリコン溶湯の冷却品質を高めることができ、冷却工程に必要となる時間を短縮させることができる。
【0055】
それにより、冷却装置200の周囲方向及び/または高さ方向に、冷却領域Aが互いに重畳せず、シリコン溶湯を、均一であって急速に冷却することができる。
【0056】
図5には、ボディ210の高さ方向に、5個の噴射列(C)が配されるように示されているが、それに限定されるものではない。他の実施形態として、互いに隣接する噴射列(C)に含まれた噴射孔230によって形成される冷却領域Aは、ボディ210の高さ方向に実質的に重複しないようにも形成される。すなわち、冷却領域Aは、ボディ210の高さ方向に沿って連続しても配される。ここで、「実質的に重複しない」ということは、冷却領域Aが全く重複しないか、冷却流体の噴射状態により、冷却領域Aが一時的に重複しても、冷却領域Aの全体面積に比べ、冷却領域Aが重複する面積は、無視することができるほどに極めて小さい場合をいずれも含む。
【0057】
そのように、本発明の一実施形態による冷却装置200を通過したシリコン溶湯は、急速に冷却されうる。さらに具体的には、本発明によるシリコン溶湯は、常温に放冷される場合に比べ、迅速に冷却され、特に、シリコン溶湯が結晶化されない間に固化され、非晶質のシリコン粉末が得られる。
【0058】
冷却装置200により、シリコン溶湯が冷却される速度は、望ましくは、100K/secないし105K/secでもある。該冷却速度が100K/sec未満である場合、シリコン溶湯が十分に迅速に冷却されず、結晶質のシリコン粉末が生成されてしまう。
【0059】
一方、冷却速度が105K/secを超える場合、形成された非晶質シリコン粉末の結晶粒(crystal grain)の大きさが過度に小さくなる。それにより、非晶質シリコン粉末の硬度が過度に高くなり、その後、湿式粉砕工程において、多くの時間が必要となるだけではなく、所望する粒径の非晶質ナノシリコンを得難い。
【0060】
シリコン溶湯が冷却装置200の内部空間211を移動する速度は、望ましくは、0.9L/minないし1.1L/minでもある。シリコン溶湯の移動速度が0.9L/min未満である場合、シリコン粉末の結晶粒の大きさが小さくなり、シリコン粉末の硬度が過度に高くなってしまう。
【0061】
一方、シリコン溶湯(M)の移動速度が1.1L/minを超える場合、冷却装置200での冷却が正しくなされず、シリコン粉末を得ることができない。
【0062】
噴射孔230から噴射される冷却流体の圧力は、望ましくは、1MPaないし1.5MPaでもある。該冷却流体の噴射圧力が1MPa未満である場合、冷却装置200における冷却が正しくなされず、シリコン粉末を得ることができない。
【0063】
一方、冷却流体の噴射圧力が1.5MPaを超える場合、フィルタ300でもって、非晶質シリコン粉末と冷却流体とをフィルタリングするのに多くの時間が必要となり、生産効率が落ちてしまう。
【0064】
そのような構成を介し、冷却装置200を通過した非晶質シリコン粉末は、7.5ないし8の硬度(モース硬度)を有しうる。非晶質シリコン粉末の硬度が7.5未満である場合、非晶質シリコン粉末を利用し、非晶質シリコン複合体及びリチウム二次電池を製造したとき、体積膨脹を効果的に抑制することができない。
【0065】
一方、非晶質シリコン粉末の硬度が8を超える場合、その後、湿式粉砕工程で多くの時間が必要となるだけではなく、所望する粒径の非晶質ナノシリコンを得難い。
【0066】
フィルタ300は、冷却装置200を経て形成された非晶質シリコン粉末と、冷却流体とをフィルタリングする。フィルタ300は、冷却装置200の出口部220と離隔して配され、非晶質シリコン粉末と冷却流体とが混合されたスラリー(slurry)形態の混合物が流入される。フィルタ300の種類は、特別に限定されるものではなく、非晶質シリコン粉末を冷却流体と分離することができれば、十分である。
【0067】
フィルタリングされた非晶質シリコン粉末は、湿式粉砕装置400に流入される。湿式粉砕装置400は、通常の湿式粉砕装置が利用されうる。湿式粉砕装置400で使用される溶媒として、蒸溜水、エタノール、IPA(isopropyl alcohol)が使用されるが、望ましくは、蒸溜水が使用されうる。
【0068】
一実施形態として、本発明による湿式粉砕装置400は、非晶質シリコン粉末を2段階にわたって湿式粉砕することができる。
【0069】
一次湿式粉砕で使用されるビード(bead)の直径は、望ましくは、1mm、3mmまたは5mmであり、さらに望ましくは、1mmでもある。該一次湿式粉砕における粉砕速度は、望ましくは、1,900rpmないし2,100rpmであり、さらに望ましくは、2,000rpmないし2,100rpmでもある。該一次湿式粉砕における粉砕時間は、0.5時間ないし1.0時間でもある。
【0070】
一次湿式粉砕された非晶質ナノシリコンの中間粒度(D50)は、1μmでもある。
【0071】
次に、湿式粉砕装置400は、一次湿式粉砕された非晶質ナノシリコンを二次湿式粉砕する。
【0072】
該二次湿式粉砕で使用されるビードの直径は、望ましくは、0.1mm、0.3mm、0.65mmまたは0.8mmであり、さらに望ましくは、0.1mmでもある。該二次湿式粉砕における粉砕速度は、2,400rpmないし2,600rpmであり、さらに望ましくは、2,500rpmないし2,600rpmでもある。二次湿式粉砕における粉砕時間は、1.0時間ないし1.5時間でもある。
【0073】
該二次湿式粉砕で得られる非晶質ナノシリコンの中間粒度は、300nmでもある。
【0074】
そのように、本発明の一実施形態による湿式粉砕装置400は、互いに異なる工程条件を有する2段階の湿式粉砕工程を実施し、該一次湿式粉砕工程において、粗加工(rough process)を実施し、該二次湿式粉砕工程において、仕上げ加工(finish process)を実施しうる。
【0075】
さらに具体的には、粗加工である一次湿式粉砕工程においては、相対的に直径が大きいビードを利用して湿式粉砕を実施し、非晶質ナノシリコンの中間粒度を1μm以下に製造することができる。次に、仕上げ加工である二次湿式粉砕工程においては、相対的に直径が小さいビードを利用して湿式粉砕を実施し、非晶質ナノシリコンの中間粒度を300nm以下にすることがきる。
【0076】
それにより、本発明による湿式粉砕装置400は、短時間内に湿式粉砕工程を完了させ、非晶質シリコン粉末の酸化を最小化させることができる。また、本発明による湿式粉砕装置400は、高価のプラズマ装備を利用せず、中間粒度300nm以下の非晶質ナノシリコンを容易に獲得することができる。
【0077】
再び
図1を参照すれば、フィルタリングされた冷却流体は、別途の保存槽(図示せず)に保存され、移送装置(図示せず)を介し、冷却装置200にさらに供給されうる。すなわち、冷却装置200を介して一度噴射された冷却流体は、フィルタ300を経て、再び使用されうる。
【0078】
混合装置500は、湿式粉砕装置400で粉砕された非晶質ナノシリコンに、第1ピッチを混合し、第1混合物を形成することができる。一実施形態として、混合装置500は、湿式混合装置でもあり、溶媒として、蒸溜水が利用されうる。
【0079】
一実施形態として、該第1混合物は、非晶質ナノシリコンと第1ピッチと溶媒とによってのみ構成されうる。すなわち、他のシリコン複合体と異なり、本発明による第1混合物は一次ピッチ以外の炭素系物質またはバインダ、有機溶媒などを含まないのである。
【0080】
該第1ピッチは、その後、噴霧乾燥装置600の熱によって乾燥されて硬化され、それにより、非晶質シリコン複合体の膨脹を抑制することができる。
【0081】
噴霧乾燥装置600は、混合装置500で形成された第1混合物を噴霧乾燥させ、第1混合物に含まれた溶媒を蒸発させる。一実施形態として、噴霧乾燥装置600は、ディスク(disc)を高速で回転させ、第1混合物を噴霧することにより、それを乾燥させることができる。
【0082】
噴霧乾燥温度は、望ましくは、240℃ないし270℃でもある。該噴霧乾燥温度が240℃未満である場合、第1ピッチの流動性が低くなり、非晶質ナノシリコンと第1ピッチとが均一に混合されず、第1混合物が十分に球形化されないのである。
【0083】
一方、噴霧乾燥温度が270℃を超える場合、第1ピッチの流動性が過度に高く、非晶質ナノシリコンと第1ピッチとが混合されず、第1ピッチが非晶質ナノシリコンと分離されてしまう。
【0084】
前述のような噴霧乾燥温度において、第1ピッチの流動性が最適化され、非晶質ナノシリコンと第1ピッチとが均一に混合されうる。それにより、前述のように、本発明による混合装置500及び噴霧乾燥装置600は、別途のバインダを使用せず、第1ピッチの流動性を制御し、非晶質ナノシリコンと第1ピッチとが均一に混合された第1混合物を獲得することができる。
【0085】
噴霧乾燥装置600のディスクの回転速度は、望ましくは、5,000rpmないし10,000rpmでもある。該ディスクの回転速度が5,000rpm未満である場合、回転速度が過度に遅く、平均粒度10μmないし20μmの相対的に大きい粒度を有する第1混合物が回収されてしまう。
【0086】
一方、ディスクの回転速度が10,000rpmを超える場合、回転速度が過度に速く、非晶質ナノシリコンと第1ピッチとが互いに分離され、第1混合物が正しく製造されえない。
【0087】
前記温度範囲と前記回転速度との範囲で得られる望ましい第1混合物の平均粒度は、3μmないし5μmでもある。
【0088】
一実施形態として、噴霧乾燥装置600によって溶媒が蒸発された状態の第1混合物において、非晶質ナノシリコンの重量%は、60ないし70wt%であり、第1ピッチの重量%は、30ないし40wt%でもある。すなわち、噴霧乾燥後、第1混合物は、非晶質ナノシリコンと第1ピッチとによってのみ構成されうる。
【0089】
非晶質ナノシリコンの含有量が60重量%未満である場合、非晶質シリコン複合体の容量が少なくなってしまう。一方、非晶質ナノシリコンの含有量が70重量%を超える場合、非晶質シリコン複合体の体積膨脹を抑制し難い。
【0090】
コーティング装置700は、噴霧乾燥装置600で乾燥された第1混合物に、第2ピッチをコーティングし、第2混合物を形成する。コーティング装置700は、特別に限定されるものではなく、メカノフュージョン(mechanofusion)またはボールミル(ball mill)のような装備を利用することができる。該第2ピッチは、球形化された第1混合物の表面に塗布され、その後、非晶質シリコン複合体の膨脹を抑制することができる。
【0091】
熱処理装置800は、コーティング装置700で得られた第2混合物に熱処理を施す。一実施形態として、熱処理装置800の熱処理温度は、800℃以上1,000℃未満でもある。さらに望ましくは、熱処理温度は、800℃以上900℃以下でもある。該熱処理温度が800℃未満である場合、第2混合物に含まれた非晶質ナノシリコンと、第1ピッチと、第2ピッチとの十分な結合力が確保されえない。
【0092】
一方、熱処理温度が1,000℃以上である場合、非晶質ナノシリコンが結晶化されてしまう。
【0093】
以下、
図1ないし
図6を参照し、本発明の他の実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法について説明する。
【0094】
図6は、本発明の他の実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法を示す図面である。
【0095】
まず、シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する(S100)。溶融炉100に、シリコン原料と還元材とを装入した後、それを混合し、溶融炉100を利用し、加熱して溶融する。溶融炉100の温度は、1,800℃以上でもある。
【0096】
次に、シリコン溶湯を冷却し、非晶質シリコン粉末を獲得する(S200)。該シリコン溶湯を、冷却装置200で急速冷却し、シリコン溶湯が結晶化されない間に固化させる。それにより、シリコン溶湯を、非晶質のシリコン粉末にすることができる。
【0097】
一実施形態として、非晶質シリコン粉末を獲得する段階(S200)は、シリコン溶湯を冷却する段階(S210)、冷却されたシリコン溶湯をフィルタリングし、非晶質シリコン粉末と冷却流体とを分離する段階(S220)、及び分離された冷却流体を冷却装置に移送し、噴射孔を介して噴射する段階(S230)を含むものでもある。
【0098】
シリコン溶湯を冷却する段階(S210)において、冷却装置200でシリコン溶湯を急速冷却することができる。冷却装置200は、前述の構成と同一構成を有することができ、それにより、それぞれの噴射孔230から噴射される冷却流体が、シリコン溶湯の表面に重複して噴射されることを最小化させることができ、シリコン溶湯を効率的に急速冷却することができる。そして、冷却工程に必要となる時間を短縮させ、工程全体のタクトタイムを短縮させることができる。
【0099】
シリコン溶湯を冷却する段階(S210)において、冷却速度は、望ましくは、100K/secないし105K/secでもある。該シリコン溶湯を冷却する段階(S210)において、シリコン溶湯の移動速度は、望ましくは、0.9L/minないし1.1L/minでもある。該シリコン溶湯を冷却する段階(S210)において、冷却流体の噴射圧力は、望ましくは、1MPaないし1.5MPaでもある。また、該シリコン溶湯を冷却する段階(S210)で得られた非晶質シリコン粉末は、モース硬度で、7.5ないし8の硬度を有しうる。
【0100】
次に、フィルタ300を介し、冷却されたシリコン溶湯を、非晶質シリコン粉末と冷却流体とで分離する(S220)。
【0101】
次に、分離された冷却流体を保存槽(図示せず)に保存した後、移送装置(図示せず)を介し、冷却装置200に移送し、噴射孔230を介し、冷却装置200の内部空間211に噴射する(S230)。すなわち、冷却工程で使用された冷却流体をフィルタリングし、再び使用することができる。
【0102】
次に、非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを獲得する(S300)。該湿式粉砕は、湿式粉砕装置400で実施することができる。
【0103】
一実施形態として、非晶質ナノシリコンを獲得する段階は、非晶質シリコン粉末を一次湿式粉砕する段階(S310)と、一次湿式粉砕された非晶質シリコン粉末を二次湿式粉砕する段階(S320)と、を含むものでもある。
【0104】
一次湿式粉砕する段階(S310)において、使用されるビードの直径は、望ましくは、1mm、3mmまたは5mmであり、さらに望ましくは、1mmでもある。一次湿式粉砕する段階(S310)において、粉砕速度は、望ましくは、1,900rpmないし2,100rpmであり、さらに望ましくは、2,000rpmないし2,100rpmでもある。一次湿式粉砕する段階(S310)において、粉砕時間は、0.5時間ないし1.0時間でもある。
【0105】
それにより、一次湿式粉砕する段階(S310)で得られる非晶質ナノシリコンの中間粒度(D50)は、1μmでもある。
【0106】
次に、二次湿式粉砕する段階(S320)において、使用されるビードの直径は、望ましくは、0.1mm、0.3mm、0.65mmまたは0.8mmであり、さらに望ましくは、0.1mmでもある。二次湿式粉砕する段階(S320)において、粉砕速度は、2,400rpmないし2,600rpmであり、さらに望ましくは、2,500rpmないし2,600rpmでもある。二次湿式粉砕する段階(S320)において、粉砕時間は、1.0時間ないし1.5時間でもある。
【0107】
それにより、二次湿式粉砕する段階(S320)で得られる非晶質ナノシリコンの中間粒度は、300nmでもある。
【0108】
さらに具体的には、本発明の一実施形態による非晶質ナノシリコンを獲得する段階(S300)で得られる非晶質ナノシリコンの粒度分布を、下記表1に示す。
【表1】
【0109】
表1において、非晶質シリコン粉末は、フィルタ300を通過した後、湿式粉砕工程を経る前の非晶質シリコン粉末を示す。表1に示されているように、本発明による湿式粉砕工程の条件を満足する場合、中間粒度300nm以下の非晶質ナノシリコンを獲得することができ、短時間内に湿式粉砕工程を完了し、非晶質シリコン粉末の酸化を最小化させることができる。次に、非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を獲得する(S400)。一実施形態として、第1混合物を獲得する段階は、溶媒として蒸溜水が利用される湿式混合工程でもある。また、該第1混合物を獲得する段階は、非晶質ナノシリコンに、第1ピッチと蒸溜水とを混合し、第1混合物を形成する段階(S410)と、第1混合物を噴霧乾燥させる段階(S420)と、を含むものでもある。
【0110】
第1混合物を形成する段階(S410)は、非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、溶媒として蒸溜水を混合し、実施することができる。さらに具体的には、第1混合物を形成する段階(S410)は、第1ピッチ以外の炭素系物質や、バインダまたは有機溶媒を使用しないのである。それにより、製造される第1混合物は、非晶質ナノシリコンと第1ピッチと蒸溜水とによってのみ構成されうる。
【0111】
次に、形成された第1混合物を噴霧乾燥させる(S420)。該噴霧乾燥工程は、噴霧乾燥装置600を利用しても実施される。
【0112】
噴霧乾燥温度は、望ましくは、240℃ないし270℃でもある。また、噴霧乾燥工程におけるディスク回転速度は、望ましくは、5,000rpmないし10,000rpmでもある。前記温度範囲と前記回転速度との範囲で得られる望ましい第1混合物の平均粒度は、3μmないし5μmでもある。
【0113】
該噴霧乾燥工程を経た第1混合物は、溶媒が蒸発され、非晶質ナノシリコンと第1ピッチとによってのみ構成されうる。該第1混合物において、非晶質ナノシリコンの含有量は、重量%で60ないし70wt%であり、第1ピッチの含有量は、重量%で30ないし40wt%でもある。
【0114】
次に、該第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を獲得する(S500)。該コーティング工程は、コーティング装置700を利用して実施することができる。乾燥された第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を形成する。
【0115】
次に、第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を獲得する(S600)。該熱処理工程は、熱処理装置800を利用して実施することができ、望ましい熱処理温度は、800℃以上1,000℃未満でもある。さらに望ましくは、熱処理温度は、800℃以上900℃以下でもある。
【表2】
【0116】
表2は、本発明の一実施形態による非晶質シリコンの製造方法によって製造された非晶質ナノシリコンを利用して製造されたリチウム二次電池(実施例)と、従来の結晶質ナノシリコンを利用して製造されたリチウム二次電池(比較例)の容量特性及び効率特性を示す(1回充放電テスト)。
【0117】
表2に示されているように、結晶質ナノシリコンを利用したリチウム二次電池の場合、バッテリの充電時及び放電時、非可逆反応として、シリコンとリチウムとの反応が起こる。互いに結合されたシリコンとリチウムは、さらに分離されないまま、シリコン・リチウム化合物として存在することになる。該シリコン・リチウム化合物は、リチウム二次電池において、負極活物質としての役割を行えないのである。
【0118】
また、シリコンは、理論的に、原子1個当り4.4個のリチウム原子と結合することができる。それにより、シリコンの体積が大きくなることになり、該過程において、集電体からシリコンが脱離され、非可逆物質が生成され、シリコンが、負極活物質としての役割を行うことができなくなる。
【0119】
一方、非晶質ナノシリコンを利用したリチウム二次電池の場合、比較例に比べ、いかなる場合にも、効率にすぐれて高いということが分かる。特に、該非晶質シリコンの中間粒度が300nmである場合、充電容量、放電容量及び効率にいずれもすぐれるということが分かる。
【0120】
それは、前述のように、本発明による非晶質ナノシリコンの場合、既設定の条件を満足する製造方法を介して製造されることにより、従来の結晶質ナノシリコンに比べ、高い硬度を有するために、シリコンの体積膨脹を効率的に抑制することができるからである。
【0121】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法、及び非晶質シリコン複合体の製造装置10は、所定の硬度を有する非晶質シリコン粉末を基に、非晶質シリコン複合体を製造することができる。それにより、リチウム二次電池の負極活物質として、本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体を利用したとき、リチウム二次電池の損傷を減らすことができ、容量特性と寿命特性とにすぐれるリチウム二次電池を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の一実施形態による非晶質シリコン複合体の製造方法、及び非晶質シリコン複合体の製造装置は、非晶質シリコン複合体の体積変化を最小化させ、リチウム二次電池の寿命特性と容量特性とを向上させて、関連産業分野に利用されうる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する段階と、
前記シリコン溶湯が結晶化されない間に固化されるように、前記シリコン溶湯を冷却装置で冷却し、非晶質シリコン粉末を獲得する段階と、
前記非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを獲得する段階と、
前記非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を獲得する段階と、
前記第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を獲得する段階と、
前記第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を獲得する段階と、を含む、非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目2)
前記冷却装置は、
一端に、前記シリコン溶湯が流入される入口部を具備し、前記シリコン溶湯が一方向に移動する内部空間を具備するボディと、
前記ボディの他端に配され、冷却された前記シリコン溶湯が流出され、前記一方向にテーパ状になる出口部と、
前記ボディの外周面に複数個配され、前記内部空間に冷却流体を噴射する噴射孔と、を具備する、項目1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目3)
前記噴射孔は、
前記ボディの周囲方向に沿って複数個の噴射列に配され、互いに隣接する前記噴射列に含まれたそれぞれの前記噴射孔が互い違いに配される、項目2に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目4)
前記噴射孔は、
噴射角度が30°ないし45°であり、噴射形態が円形であり、互いに隣接する噴射孔が、前記ボディとなす配置角度が互いに異なる、項目2に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目5)
前記非晶質シリコン粉末を獲得する段階は、
前記シリコン溶湯を冷却する段階と、
冷却された前記シリコン溶湯をフィルタリングし、前記非晶質シリコン粉末と前記冷却流体とを分離する段階と、
分離された前記冷却流体を前記冷却装置に移送し、前記噴射孔を介して噴射する段階と、を含む、項目2に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目6)
前記非晶質シリコン粉末を獲得する段階において、
冷却速度は、100K/secないし105K/secであり、
前記冷却装置の内部空間を流動する前記シリコン溶湯の移動速度は、0.9L/minないし1.1L/minである、項目1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目7)
前記非晶質ナノシリコンを獲得する段階は、
前記非晶質シリコン粉末を一次湿式粉砕する段階と、
一次湿式粉砕された前記非晶質シリコン粉末を二次湿式粉砕する段階と、を含み、
前記一次湿式粉砕する段階において、
粉砕速度は、1,900rpmないし2,100rpmであり、ビード径は、1mm、3mmまたは5mmのうちいずれか一つであり、粉砕時間は、0.5時間ないし1時間であり、
前記二次湿式粉砕する段階において、
粉砕速度は、2,400rpmないし2,600rpmであり、ビード径は、0.1mm、0.3mm、0.65mmまたは0.8mmのうちいずれか一つであり、粉砕時間は、1.0時間ないし1.5時間である、項目1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目8)
前記第1混合物を獲得する段階は、
前記非晶質ナノシリコンに、前記第1ピッチと蒸溜水とを混合し、前記第1混合物を形成する段階と、
前記第1混合物を噴霧乾燥させる段階と、を含む、項目1に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目9)
前記第1混合物を噴霧乾燥させる段階において、
ディスクを利用し、前記第1混合物を噴霧乾燥させるが、乾燥温度は、240℃ないし270℃であり、前記ディスクの回転速度は、5,000rpmないし10,000rpmであり、
噴霧乾燥後、前記第1混合物において、前記非晶質ナノシリコンの重量%は、60ないし70wt%であり、前記第1ピッチの重量%は、30ないし40wt%である、項目8に記載の非晶質シリコン複合体の製造方法。
(項目10)
シリコン原料を溶融し、シリコン溶湯を形成する溶融炉と、
前記シリコン溶湯を冷却し、非晶質シリコン粉末を形成する冷却装置と、
前記非晶質シリコン粉末を湿式粉砕し、非晶質ナノシリコンを形成する湿式粉砕装置と、
前記非晶質ナノシリコンに第1ピッチを混合し、第1混合物を形成する混合装置と、
前記第1混合物を噴霧乾燥させる噴霧乾燥装置と、
前記第1混合物に第2ピッチをコーティングし、第2混合物を形成するコーティング装置と、
前記第2混合物を熱処理し、非晶質シリコン複合体を形成する熱処理装置と、を含み、
前記冷却装置は、
一端に、前記シリコン溶湯が流入される入口部を具備し、前記シリコン溶湯が一方向に移動する内部空間を具備するボディと、
前記ボディの他端に配され、冷却された前記シリコン溶湯が流出され、前記一方向にテーパ状になる出口部と、
前記ボディの外周面に複数個配され、前記内部空間に冷却流体を噴射する噴射孔と、を具備し、
前記噴射孔は、前記ボディの周囲方向に沿って複数個の噴射列に配され、互いに隣接する前記噴射列に含まれたそれぞれの前記噴射孔が、前記一方向に互い違いに配される噴射孔を具備する、非晶質シリコン複合体の製造装置。