(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】無線周波数リソースを割り当てる方法、デバイス、コンピュータープログラム製品、及び非一時的情報記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20240112BHJP
H04W 16/02 20090101ALI20240112BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W16/02
(21)【出願番号】P 2022565037
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021011558
(87)【国際公開番号】W WO2021205850
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-06-29
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】シベル、ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ボリスキン、アルテム
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-547282(JP,A)
【文献】特表2008-516542(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135998(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/164328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数リソースを第1の無線アクセスネットワークに接続された第1のデバイスに割り当てる方法であって、前記無線周波数リソースは、前記第1のデバイスと、第2の無線アクセスネットワークに接続された少なくとも1つの第2のデバイスとの間で共有され、
該方法は、前記第1のデバイスによって実行される以下のステップ、すなわち、
前記第2のデバイスによる前記無線周波数リソースの使用を表す情報を取得するステップと、
前記第2のデバイスに許容可能な衝突率の閾値を取得するステップと、
前記第2のデバイスによる前記無線周波数リソースの前記使用を表す前記取得された情報から、前記第1のデバイスの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて前記第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求めるステップと、
前記求められた値が前記取得された閾値未満である場合に、前記少なくとも1つの周波数リソース割り当てを前記第1のデバイスに使用するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2のデバイスによる前記無線周波数リソースの使用を表す前記情報は、周波数リソース割り当てパターンと、衝突率推定に関係した時間間隔の値とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
別の周波数リソース割り当てパターンによって規定される前記第1のデバイスの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて前記第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求めることは、時間間隔の間の周波数リソース割り当ての重複を取得するために、前記周波数リソース割り当てパターン及び前記別の周波数リソース割り当てパターンをマッピングすることと、前記取得された重複を前記時間間隔の間の前記第2のデバイスによる前記無線周波数リソースの使用の全体時間によって除算することによって前記値を求めることとを含み、前記時間間隔は、前記衝突率推定に関係した時間間隔から規定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のデバイスによる前記無線周波数リソースの使用を表す前記情報は、前記第1のデバイスによって、アプリケーションレイヤ若しくは物理レイヤを通じて前記第2のデバイスから取得されるか、検知することによって取得されるか、又は事前に構成されたデータから取得される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のデバイスへの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて前記第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求めることは、事前に構成された周波数リソース割り当てパターンのデータベースから求められ、該データベースは、前記第1のデバイスの推定衝突率及び前記第2のデバイスの推定衝突率を周波数リソース割り当てパターンの各可能な組み合わせに関連付ける、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のデバイスに許容可能な衝突率の閾値を取得することは、
前記第2のデバイスに許容可能な衝突率の少なくとも第1の閾値及び第2の閾値を取得することであって、該第1の閾値及び該第2の閾値はそれぞれ、
座標および時間で定義された空間ゾーン又は干渉信号のレベルに関連付けられる、少なくとも第1の閾値及び第2の閾値を取得することと、
前記第1の閾値及び前記第2の閾値の中から1つの前記閾値を選択することと、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の閾値及び前記第2の閾値の中から1つの前記閾値を選択することは、
前記第1のデバイスのロケーションを求めることと、
前記ロケーションに応じた前記閾値を選択することと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の閾値及び前記第2の閾値の中から1つの前記閾値を選択することは、
前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の距離を求めることと、
前記距離に応じた前記閾値を選択することと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の閾値及び前記第2の閾値の中から1つの前記閾値を選択することは、
前記第1のデバイスによって検知されたときの干渉信号のレベルを求めることと、
前記干渉信号のレベルに応じた前記閾値を選択することと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のデバイスに許容可能な衝突率の前記少なくとも第1の閾値及び第2の閾値は、前記第1のデバイスによって、前記
第1の無線アクセスネットワークから取得されるか、アプリケーションレイヤ若しくは物理レイヤを通じて前記第2のデバイスから取得されるか、又は事前に構成されたデータから取得される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のデバイスに許容可能な衝突率の新たな閾値を受信することを更に含み、該新たな閾値は、前記第1のデバイスが原因で前記第2のデバイスによって経験され
た実際の衝突率から求められる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のデバイスに許容可能な衝突率の新たな閾値を受信することを更に含み、該新たな閾値は、前記第1のデバイス及び少なくとも第3のデバイスが原因で前記第2のデバイスによって経験され
た実際の衝突率から求められる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の無線アクセスネットワーク及び前記第2の無線アクセスネットワークは、異なる無線アクセス技術を実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1の無線アクセスネットワークに接続されたデバイスであって、該デバイスは、第2の無線アクセスネットワークに接続された少なくとも1つの第2のデバイスと無線周波数リソースを共有し、
該デバイスは、
前記第2のデバイスによる前記無線周波数リソースの使用を表す情報を取得する手段と、
前記第2のデバイスに許容可能な衝突率の閾値を取得する手段と、
前記第2のデバイスによる前記無線周波数リソースの前記使用を表す前記取得された情報から、前
記デバイスの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて前記第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求める手段と、
前記求められた値が前記取得された閾値未満である場合に、前記少なくとも1つの周波数リソース割り当てを前
記デバイスに使用する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項15】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータープログラ
ムであって、前記プログラムコード命令が前記プログラマブルデバイスによって実行されると、前記プログラムコード命令は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を実施させる、コンピュータープログラ
ム。
【請求項16】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータープログラムを記憶する非一時的情報記憶媒体であって、前記プログラムコード命令が該非一時的情報記憶媒体から読み出され、前記プログラマブルデバイスによって実行されると、前記プログラムコード命令は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法を実施させる、非一時的情報記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、無線周波数リソースの一部分を第1のデバイスに割り当てる方法及びデバイスに関し、より詳細には、上記無線周波数リソースが上記第1のデバイスと少なくとも1つの第2のデバイスとの間で共有される場合における上記方法及び上記デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、異なるシステムが同じ通信リソース、特に周波数リソースを共有することによって動作するときに、共存問題が発生する。実際、幾つかの周波数帯域、特に免許不要周波数帯域は、複数のデバイスが配備されるために過密になる場合がある。
【0003】
過去の数年の間に、IEEE802.11(Wi-Fi)及びBluetooth等の異なる無線アクセス技術(RAT:radio access technology)に従って動作するような通信システムが、ISM(「Industrial, Scientific, and Medical」(産業科学医療)の頭字語)の免許不要2.4GHz帯域にますます多く配備されてきている。ISM帯域は、電気通信以外の産業、科学及び医療(ISM)の目的、例えば、電子レンジ、ガレージドアオープナー、ベビーモニター用に国際的に当初から予約された無線スペクトルの一部分である。当初の割り当ての意図にかかわらず、近年では、短距離低電力無線通信システムへのこれらの帯域の使用が急速に増大している。ISM帯域を使用するデバイスがますます多くなるにつれて、スペクトルはより混雑し、その結果、この帯域におけるサービス品質が劣化する。
【0004】
IEEE802.11(Wi-Fi)及びBluetoothの2つの規格の周波数レンジが共有されることによって、これらの2つのプロトコルが、日常的な情報伝送中の様々な時点において重複する伝送周波数を用いて動作するとき、伝送干渉及びデータ破損が不可避的にもたらされる。その結果もたらされる周波数重複は、異なるプロトコルを使用する無線デバイスがそれらのデータ伝送を調整する能力を欠いていることに起因して、双方のデバイスファミリーにおいてネットワーク性能及び伝送レートを劣化させる。この問題は、ネットワーク内の無線デバイスの数が増加するにつれて悪化し、無線デバイスが互いに配置されている近接性によって更に影響を受ける。
【0005】
同じタイプの問題は、免許不要ITS(「Intelligent Transport System」(高度道路交通システム)の頭字語)5.9Ghz帯域において発生する。実際、IEEE802.11p、IEEE802.11ac、C-V2X(「Cellular Vehicle to Everything」(セルラービークルツーエブリシング)の頭字語)、CBTC(「Communications-Based Train Control」(通信ベースの列車制御)の頭字語)規格に従って動作するような通信システムが、ITS帯域内にますます多く配備されてきている。
【0006】
デバイス及び無線アクセス技術(RAT)の間の共存は、例えば、日和見的ランダムアクセス(opportunistic random access)又は幾つかの衝突回避方式を使用する複数の異なる方法で対処することができる。
【0007】
日和見的ランダムアクセス技術は、特に、同じ無線リソースを共有するデバイスの数が多いときに、ネットワークリソースを効率的に割り当てる方法を提供する。従来、データを送信する予定があるデバイスは、通信媒体をリスンし、利用可能な送信ウィンドウを検出すると、データの送信を開始する。衝突リスクは、送信を有効に開始する前にランダムな待機時間を適用することによって制限される。しかしながら、この技術は、幾つかのデバイスが、データを送信するために同じ無線リソース、すなわち同じ周波数を同時に選択し得ることを回避していない。日和見的ランダムアクセス技術は、したがって、性能損失、すなわち高い衝突率という代償を払って良好なスペクトル使用を提供する。
【0008】
したがって、衝突回避技法が、リソース競合を回避するために使用される。これらの技法は、複数のデバイスが同じ無線リソースに同時にアクセスする状況をなくすことを試みる。これらの技法は、ネットワーク内のいずれのデバイスも、ネットワーク上の他のトラフィックと衝突することなくデータを送信することができることを確保する。
【0009】
衝突管理は、キャリア検知多重アクセス(CSMA:carrier sense multiple access)を有するネットワークに主として見られる。データを送信する予定があるデバイスは、或る時間の間、チャネルをリスンして、他のデバイスが共有無線リソースを使用しているか否かを判断しなければならない。デバイスは、チャネルがアイドルであることが検知された場合にのみ送信を開始することができ、そうでない場合には、送信は延期される。2つの主な手法、すなわち衝突検出及び衝突回避が、CSMAにおいて開発されている。衝突検出を用いると、衝突を生み出す送信機は送信を停止し、それらの送信をランダムな時間の間延期する。したがって、衝突は回避されず、多くの場合に送信の反復が行われる。衝突回避は、RTS(「Request To Send」(送信要求)の頭字語)メッセージ及びCTS(「Clear To Send」(送信可)の頭字語)メッセージの交換に基づく専用のプロトコルを実施することによって、複数のデバイスが同じ周波数リソース上で同時に送信することを防止するもう1つの手法である。しかしながら、そのようなプロトコルは、オーバーヘッドを必然的に伴い、これによって、伝送性能は劣化する。
【0010】
したがって、衝突回避技法は、スペクトル使用を不十分にするという代償を払って、良好な性能すなわち低い衝突率を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、良好な性能とスペクトルの良好な使用との双方を維持しながら、同じ無線周波数リソース、例えば同じ周波数帯域又はチャネルを使用してデバイス間で無線リソースを共有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
少なくとも1つの実施の形態の一般的な態様によれば、無線周波数リソースを第1の無線アクセスネットワークに接続された第1のデバイスに割り当てる方法が提示される。無線周波数リソースは、上記第1のデバイスと、第2の無線アクセスネットワークに接続された少なくとも1つの第2のデバイスとの間で共有される。本方法は、第1のデバイスによって実行される以下のステップ、すなわち、
上記第2のデバイスによる上記無線周波数リソースの使用を表す情報を取得するステップと、
第2のデバイスに許容可能な衝突率の閾値を取得するステップと、
上記第2のデバイスによる上記無線周波数リソースの使用を表す取得された情報から、第1のデバイスの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求めるステップと、
求められた値が取得された閾値未満である場合に、上記少なくとも1つの周波数リソース割り当てを第1のデバイスに使用するステップと、
を含む。
【0013】
本明細書において詳述する方法は、同じRAT又は異なるRATを使用する異なるデバイスの同じ周波数リソース、例えば帯域又はチャネルに共存が存在するどのようなところであっても有効に利用することができる。
【0014】
第2のデバイスに関係した少なくとも1つの閾値によって規定される所与の衝突率を許容することによって、本方法は、正常な受信パケットの数を送信パケットの数によって除算したものに換算した良好な性能を維持しながら、スペクトルを良好に使用することを可能にする。
【0015】
特定の特徴によれば、上記第2のデバイスによる上記無線周波数リソースの使用を表す上記情報は、周波数リソース割り当てパターンと、衝突率推定の時間間隔の値(例えば、フレーム長さ)とを含む。
【0016】
特定の実施の形態によれば、別の周波数リソース割り当てパターンによって規定される第1のデバイスの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求めることは、時間間隔(例えば、T)の間の周波数リソース割り当ての重複を取得するために、上記周波数リソース割り当てパターン及び上記別の周波数リソース割り当てパターンをマッピングすることと、取得された重複を上記時間間隔の間の上記第2のデバイスによる上記無線周波数リソースの使用の全体時間によって除算することによって値を求めることとを含み、上記時間間隔(T)は、衝突率推定に関係した上記時間間隔から(例えば、フレーム長さから)規定される。
【0017】
特定の実施の形態によれば、上記第2のデバイスによる上記無線周波数リソースの使用を表す上記情報は、第1のデバイスによって、アプリケーションレイヤ若しくは物理レイヤを通じて上記第2のデバイスから取得されるか、検知することによって取得されるか、又は事前に構成されたデータから取得される。
【0018】
特定の実施の形態によれば、第1のデバイスへの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求めることは、事前に構成された周波数リソース割り当てパターンのデータベースから求められ、上記データベースは、第1のデバイスの推定衝突率及び第2のデバイスの推定衝突率を周波数リソース割り当てパターンの各可能な組み合わせに関連付ける。
【0019】
特定の実施の形態によれば、第2のデバイスに許容可能な衝突率の閾値を取得することは、
第2のデバイスに許容可能な衝突率の少なくとも第1の閾値及び第2の閾値を取得することであって、該第1の閾値及び該第2の閾値はそれぞれ、空間ゾーン又は干渉信号のレベルに関連付けられる、少なくとも第1の閾値及び第2の閾値を取得することと、
上記第1の閾値及び上記第2の閾値の中から1つの上記閾値を選択することと、
を含む。
【0020】
特定の実施の形態によれば、上記第1の閾値及び上記第2の閾値の中から1つの上記閾値を選択することは、
上記第1のデバイスのロケーションを求めることと、
上記ロケーションに応じた閾値を選択することと、
を含む。
【0021】
特定の実施の形態によれば、上記第1の閾値及び上記第2の閾値の中から1つの上記閾値を選択することは、
上記第1のデバイスと上記第2のデバイスとの間の距離を求めることと、
上記距離に応じた閾値を選択することと、
を含む。
【0022】
特定の実施の形態によれば、上記第1の閾値及び上記第2の閾値の中から1つの上記閾値を選択することは、
第1のデバイスによって検知されたときの干渉信号のレベルを求めることと、
上記干渉信号のレベルに応じた閾値を選択することと、
を含む。
【0023】
特定の実施の形態によれば、第2のデバイスに許容可能な衝突率の上記少なくとも第1の閾値及び第2の閾値は、上記第1のデバイスによって、ネットワークから取得されるか、アプリケーションレイヤ若しくは物理レイヤを通じて上記第2のデバイスから取得されるか、又は事前に構成されたデータから取得される。
【0024】
特定の実施の形態によれば、本方法は、第2のデバイスに許容可能な衝突率の新たな閾値を受信することを更に含み、この新たな閾値は、第1のデバイスが原因で第2のデバイスによって経験された実際の衝突率から求められる。
【0025】
特定の実施の形態によれば、本方法は、第2のデバイスに許容可能な衝突率の新たな閾値を受信することを更に含み、この新たな閾値は、第1のデバイス及び少なくとも第3のデバイスが原因で第2のデバイスによって経験された実際の衝突率から求められる。
【0026】
特定の特徴によれば、第1の無線アクセスネットワーク及び第2の無線アクセスネットワークは、異なる無線アクセス技術を実施する。
【0027】
少なくとも1つの実施の形態の一般的な態様によれば、第1の無線アクセスネットワークに接続されたデバイスが提示される。このデバイスは、第2の無線アクセスネットワークに接続された少なくとも1つの第2のデバイスと無線周波数リソースを共有する。本デバイスは、
上記第2のデバイスによる上記無線周波数リソースの使用を表す情報を取得する手段と、
第2のデバイスに許容可能な衝突率の閾値を取得する手段と、
上記第2のデバイスによる上記無線周波数リソースの使用を表す取得された情報から、第1のデバイスの少なくとも1つの周波数リソース割り当てについて第2のデバイスによって経験されたときの推定衝突率を表す値を求める手段と、
求められた値が取得された閾値未満である場合に、上記少なくとも1つの周波数リソース割り当てを第1のデバイスに使用する手段と、
を備える。
【0028】
1つ以上の実施の形態は、上述した方法のうちの任意のものの少なくとも一部を実行するプログラムコード命令を含むコンピュータープログラム製品も提供する。本実施の形態のうちの1つ以上は、上述した方法のうちの任意のものの少なくとも一部を実行する命令が記憶されたコンピューター可読記憶媒体も提供する。
【0029】
本発明の特徴は、実施形態の少なくとも1つの例の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】様々な実施形態を実施することができるシナリオを示す図である。
【
図2】同じ無線周波数リソースを使用する第1のデバイスと1つの第2のデバイスとの間の決定論的無線周波数リソース割り当ての原理を示す図である。
【
図3】同じ無線周波数リソースを使用する第1のデバイスと1つの第2のデバイスとの間の決定論的無線周波数リソース割り当ての原理を示す図である。
【
図4】1つの特定の実施形態による、同じ無線周波数リソースを使用する第1のデバイスと1つの第2のデバイスとの間の決定論的無線周波数リソース割り当ての原理を示す図である。
【
図5】第1の実施形態による無線周波数リソース割り当ての方法のフローチャートである。
【
図6】事前に構成された無線割り当てパターンのデータベースを示す図である。
【
図7】第2の実施形態による無線周波数リソース割り当ての方法のフローチャートである。
【
図8】異なる閾値を異なる空間ゾーンに関連付ける原理を示す図である。
【
図10】第3の実施形態による無線周波数リソース割り当ての方法のフローチャートである。
【
図11】異なる閾値を異なるレベルの干渉信号に関連付ける原理を示す図である。
【
図12】特定の実施形態によるデバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、様々な実施形態を実施することができるシナリオを示している。2つの個別のデバイスD1及びD2が、同じ無線周波数リソース、例えば同じ周波数帯域又はチャネルを共有する。D1は、RAN1で示される第1の無線アクセスネットワークを使用してデータを送受信し、D2は、RAN2で示される第2の無線アクセスネットワークを使用してデータを送受信する。デバイスD1及びD2は、例えば通信端末である。
【0032】
1つの実施形態において、RAN1及びRAN2は同一であり、1つの同じ無線アクセス技術を使用する。一例として、デバイスD1は列車内に配置され、RAN1はCBTCに準拠し、デバイスD2は別の列車内に配置され、RAN2もCBTCに準拠している。
【0033】
別の実施形態において、RAN1及びRAN2は異なり、異なる無線アクセス技術を使用する。一例として、デバイスD1は列車内に配置され、RAN1はCBTCに準拠し、デバイスD2は自動車等の車両内に配置され、RAN2はC-V2Xに準拠している。逆に、デバイスD1は自動車等の車両内に配置され、RAN1はC-V2Xに準拠し、デバイスD2は列車内に配置され、RAN2はCBTCに準拠している。列車及び自動車はそれ自体、通信端末ではない。しかしながら、それらは、そのような通信端末D1及びD2を備えることができる。より一般的には、デバイスD1及びD2は、Wi-Fi接続能力を有する車両(すなわちIEEE802.11に適合)、スマートフォン(すなわちIEEE802.11acに適合)、4G/5G能力を有する車両(すなわちC-V2Xに適合する)、列車(CBTCに適合)等に配置することができる。
【0034】
図1において、S1及びS2は、各デバイスがその現在のロケーションにおいて受信する平均受信変調搬送波電力を示す。I
12は、デバイスD2が受ける干渉信号レベルを表し、I
21は、デバイスD1が受ける干渉信号レベルを表す。したがって、I
12は、デバイスD2の送信に対するデバイスD1の送信の影響を表し、I
21は、デバイスD1の送信に対するデバイスD2の送信の影響を表す。1つの実施形態において、干渉信号レベルは、信号対干渉比(SIR又はS/I(signal-to-interference ratio))と解釈される。これは、平均受信変調搬送波電力Sと、平均受信同一チャネル干渉電力、すなわち有用な信号の送信機以外の送信機からのクロストークとの間の商である。
【0035】
図2及び
図3は、1つの特定の実施形態による、同じ無線周波数リソース(RR:radio frequency resource)、例えば同じ周波数帯域又はチャネルを使用する第1のデバイスD1と1つの第2のデバイスD2との間の決定論的無線周波数リソース割り当ての原理を示している。1つのデバイスの周波数リソース割り当て(RA:resource allocation)は、RAパターンによって規定される。したがって、RAパターンは、周波数リソース割り当てが所与のデバイスについて行われる特定の方法を規定する。決定論的周波数リソース割り当ての場合に、周波数リソース割り当ては、パターンによって規定される。RAパターンは、
図2及び
図3に示すように同一のフレームのシーケンスを含む周期的なトラフィックに関連付けられた決定論的パターンとすることができる。各RAパターンは、したがって、周期的ステップ関数、すなわちデバイスD1用のF1(t)及びデバイスD2用のF2(t)として規定される。
図2及び
図3において、ハッチング付きブロックY1及びグレーブロックY2が、それぞれD1及びD2による通信に使用される時間間隔に対応する。グレーブロックとハッチング付きブロックとの間のギャップは、RRがアイドル状態にある時間間隔を表す。
【0036】
D1及びD2にそれぞれ関係した時間間隔dT1及びdT2は、一般にdTi=Pi*Kiとして定義される。ここで、iは、デバイスを識別するインデックス(例えばi=0又は1)であり、Piは、Diのフレームの長さであり、Kiは、各デバイスによって独立に選択される任意の整数である(例えば、
図2に示すようにK1=K2=4)。実際、
図2において、時間間隔dT1及びdT2は、4つのフレームに等しくなるように規定される。ただし、時間間隔dT1及びdT2内のフレームの数は異なってもよい。dT1及びdT2の相違は、D1及びD2が経験する衝突率の相違をもたらす。衝突率は、RA1とRA2との間の時間オフセットであるオフセットt0にも依存する。Kiの値が大きい場合には、オフセットt0に対する衝突率の変動は減少する。各デバイスは、そのデバイス自体の最小要件を満たす任意の時間間隔を選択し、したがってKi値を選択する。一例として、列車の時間間隔は、例えば列車緊急停止を行う緊急通信等のクリティカル通信を確保するための最小時間量と定義することができ、都市エリアでは通常は数秒である(列車速度に依存する)。車両安全アプリケーションの場合に、時間間隔はそれよりも短い場合がある。推定衝突率は、時間間隔dT当たりの平均衝突数と定義される。RR使用のいずれの重複も、
図3に示すように衝突としての資格を有すると仮定すると、D1の推定衝突率は1/4、すなわち25%であるのに対して、D2の衝突率は2/4、すなわち50%である。この差は、各デバイスのフレームの長さ及び時間間隔の値によって説明される。
【0037】
決定論的パターンが
図2及び
図3に示されているが、実施形態は、無線周波数リソースのランダム使用にも適用される。ランダム周波数リソース割り当てに関係した1つの実施形態において、衝突率は、平均周波数リソース負荷によっても解釈することができるという条件で、ランダムな周波数リソース割り当てRA1と、D2によって選択される任意のタイプの周波数リソース割り当てRA2との間の衝突の確率に基づいて推定することができる。例えば、RRのD1使用が50%チャネル負荷を有するランダム周波数リソース割り当てによって特徴付けられ、RRのD2使用も50%チャネル負荷を有するランダムなものである場合に、推定衝突率は、2つのランダム周波数リソース割り当ての間の衝突の確率として計算することができ、25%(すなわち0.5×0.5=0.25)である。同じ25%の衝突率は、RRのD2使用が決定論的であり、50%のチャネル負荷を有する場合に推定することができる。
【0038】
図4は、1つの特定の実施形態による、同じ無線周波数リソース(RR)を使用する第1のデバイスD1と1つの第2のデバイスD2との間の決定論的無線周波数リソース割り当ての原理を示している。
図2及び
図3の要素と同一の要素は、同じ参照符号によって識別され、更に開示されない。
【0039】
P1及びP2は、それぞれRAパターンRA1及びRA2の周期、すなわちフレームの長さである。t0は、RA1とRA2との間の時間オフセットである。2つの周期的ステップ関数F1(t)及びF2(t)が重複する結果、P1及びP2の最小公倍数(LCM:least common multiple)に等しいビート周期P0を有するビートが生じる。
図4に示すように、2つの周期的ステップ関数の使用によって、「機会ウィンドウ(opportunity window)」を形成することができる。この「機会ウィンドウ」は、ビート周期P0ごとに繰り返される。デバイスD2が「機会ウィンドウ」の継続時間の間にしか通信しない場合には、衝突は発生しないか又は衝突率のレベルは許容可能なものとなる。このタイプのスケジューリングには、ビート周期に対する時間同期が必要となる。より具体的には、このタイプのスケジューリングには、ビート周期P0及び時間オフセットt0の知識が必要となる。これらは、データの検知から取得することもできるし、ネットワーク、例えば、列車又は車両がいずれかの基地局によってカバーされる場合に列車又は車両の基地局が提供することもできる。
【0040】
各周期的ステップ関数は、以下のように記述することができる。
【数1】
【0041】
ここで、Piは、対応する周期的ステップ関数Fi(t)の周期であり、siは、無線周波数リソースが対応するデバイスDiによって使用される時間間隔であり、t0は、F2(t)とF1(t)との間の時間オフセットである。
【0042】
1つの実施形態において、各デバイスの衝突率及び任意の選択された時間間隔Tは、以下のように推定することができる。
【数2】
【0043】
ここで、D1の場合にi=1であり、D2の場合にi=2であり、G(t)は、例えば、以下のように定義される重なり関数である。
【数3】
【0044】
F1(t)及びF2(t)が周期関数である場合に、重なり関数G(t)も、F1(t)及びF2(t)の周期の最小公倍数(LCM)に等しい周期P0を有する周期関数である。1つの実施形態において、したがって、重なり関数P0の周期に等しい時間間隔T、すなわち、
【数4】
を選択することが有利であり得る。
【0045】
1つの実施形態において、値T=P0が、衝突率の漸近値を専らフレーム長P1及びP2に基づいて計算するのに使用される。
【0046】
重なり関数の周期性のおかげで、Tのそのような定義は、衝突率関数Ciを時間オフセットt0に対して不変にする。その上、T=P0について計算されたCiの値は、TがP0よりもはるかに大きい場合に、選択された任意の時間間隔Tについての漸近値とみなすことができる。
【0047】
図4において、機会ウィンドウは、ゼロの衝突率によって特徴付けられる。他の実施形態において、機会ウィンドウは、その値が0とC
2との間にある任意の衝突率をサポートすることができる。ここで、C
2は、時間間隔T=LCM(P1,P2)について計算される衝突率の値である。
【0048】
図5は、第1の実施形態による無線周波数リソース割り当ての方法のフローチャートを示している。より詳細には、本方法は、無線周波数リソースの一部分を第1のデバイス、例えばデバイスD1に割り当てるためのものである。この無線周波数リソースは、この第1のデバイスD1と、少なくとも1つの第2のデバイス、例えばデバイスD2との間で共有される。本方法は、
図1における第1のデバイスD1の観点から開示される。第1のデバイスD1は、RAN1によってアプリケーションレイヤを通じてD2の存在の通知を受けることができる。この場合に、D1及びD2のアプリケーションレイヤは、所与の地理的エリアにおけるそれらの存在と、他の情報(以下を参照)とを互いに通知するために、情報を交換する。この目的のために、MEC(「Multi-access Edge Computing」(マルチアクセスエッジコンピューティング)の頭字語)デバイス、例えばMECサーバーを使用することができる。前身はモバイルエッジコンピューティングであるマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)は、セルラーネットワークのエッジにおいて及びより一般的には任意のネットワークのエッジにおいてクラウドコンピューティング能力及びITサービス環境を可能にするETSIに定義されたネットワークアーキテクチャ概念である。
【0049】
ステップS200において、第1のデバイスD1は、第2のデバイス、すなわち
図1におけるデバイスD2による上記無線周波数リソースの使用を表す情報を取得する。
【0050】
1つの実施形態において、第2のデバイスD2による上記無線周波数リソースの使用を表す情報は、周波数リソース割り当てパターン(RAパターン)と、衝突率の定義に関係した時間間隔(例えばdT2又はP2)とを含む。第2のデバイスD2による無線周波数リソースの使用を表す情報は、第1のデバイスD1がアプリケーションレイヤ又は物理レイヤを通じて第2のデバイスD2から直接取得することもできるし、検知することによって取得することもできるし、例えば工場において、例えば規格文書に定義された事前に構成されたデータから取得することもできる。1つの実施形態(分散使用の場合に関係した実施形態)において、これらの事前に構成されたデータは、D2に関連した対応する規格から抽出することができ、D1のメモリに記憶することができる。或いは、このデータは、RAN1を通じてアクセス可能なMECデバイスに記憶することができる。
【0051】
ステップS210において、第1のデバイスD1は、第2のデバイスD2に許容可能な衝突率の1つの閾値Thを取得する。言い換えると、衝突率は、閾値Th未満である場合には許容可能な衝突率とみなされる一方、閾値Th以上である場合には、許容不能な衝突率とみなされる。閾値Thは、干渉レベル、例えばSIRの観点からのその最小要件に従って、このように許容可能な衝突率に関連付けられ、各デバイスに帰属し、各デバイスの変調符号化方式、各デバイスの波形、各デバイスの周波数割り当て等の各デバイス自体の無線構成によって決まる正常な受信パケットの十分な割合を確保する。閾値Thは、第1のデバイスD1が、第2のデバイスD2からそれらのアプリケーションレイヤを通じて直接取得することができる。一変形形態では、デバイスD1及びD2が同一の無線アクセス技術を使用するとき、閾値Thは、第1のデバイスD1が、第2のデバイスD2からそれらの物理レイヤを通じて取得することができる。実際、この後者の場合に、D1及びD2は、物理レイヤにおいて共通の仕様を有するので、次に来るデータのそれらの閾値について合意するために予備データを交換することができる。別の変形形態では、閾値Thは、第1のデバイスD1が、ネットワーク、例えば、列車又は車両がいずれかの基地局によってカバーされる場合に列車又は車両の基地局から取得することができる。更に別の変形形態では、閾値Thは、第1のデバイスD1が、例えば工場において、例えば規格文書に定義された事前に構成されたデータから取得することができる。1つの実施形態(分散使用の場合に関係した実施形態)において、これらの事前に構成されたデータは、D2に関連した対応する規格から抽出することができ、D1のメモリに記憶することができる。或いは、このデータは、RAN1を通じてアクセス可能なMECデバイスに記憶することができる。
【0052】
ステップS212において、第1のデバイスD1は、第1のデバイスD1の少なくとも1つの周波数リソース割り当てRA
1について、第2のデバイスD2によって経験されたときの推定衝突率を表す値C
2
nmを求める。ここで、n及びmは、それぞれD1及びD2の周波数リソース割り当てを識別するものである。値C
2
nmは、特に第2のデバイスD2による無線周波数リソースの使用を表す取得された情報から求められる。第1のデバイスの少なくとも1つの周波数リソース割り当てRA1は、既定の周波数リソース割り当てのリストにおいて選択された1つの周波数リソース割り当てとすることができる。一実施形態において、周波数リソース割り当てRA1は、
図2に示すような同一のフレームのシーケンスを含む周期的トラフィックに関連付けられた決定論的パターン等のRAパターンによって規定される。推定衝突率C
2
nmは、したがって、
図3又は
図4に示すようなRR使用の重複を取得するために、双方の関数F1(t)及びF2(t)をマッピングすることによって求めることができる。一変形形態では、周波数リソース割り当てRA1はランダムな割り当てである。
【0053】
ステップS214において、値C2
nmは閾値Thと比較される。C2
nm<Thである場合には、本方法はステップS216において継続する。そうでない場合には、本方法はステップS212において継続する。RA1と異なる別の周波数リソース割り当て、例えば異なるパターンを第1のデバイスD1についてこのように試験することができる。
【0054】
一変形形態では、第1のデバイスD1は、
図6に示すような事前に構成されたRAパターンのデータベースから推定衝突率を表す値C
2
nmを決定する。タイムセンシティブネットワーク(TSN:time sensitive network)の場合に、このデータベースは、好ましくは、デバイスD1又はMECデバイスに記憶することができる。一方、非TSNの場合には、このデータベースは、クラウドに記憶することができる。
図6において、データベースは、インデックスn及びmによって識別される2つのRAパターンの選択された組み合わせについて、D1によって経験されたときの推定衝突率C
1
nmを提供する。このように、nは、D1の事前に選択されたRAパターンのリストにおいてRAパターンを識別し、mは、D2の事前に選択されたRAパターンのリストにおいてRAパターンを識別する。
【0055】
データベースは、インデックスn及びmによって識別される2つのRAパターンの選択された組み合わせについて、D2によって経験されたときの推定衝突率C2
nmも提供する。そのようなデータベースは、これらのデバイスのうちの少なくとも一方、例えば第1のデバイスD1に設けて、その周波数リソース割り当てを容易にすることができる。実際、データベースを使用することによって、所与の閾値Thを満たすRAパターンを求める計算時間を削減することができる。実際、第1のデバイスD1は、閾値Thを満たす適切なRAパターンをデータベースから直接選択することができる。
【0056】
ステップS216において、周波数リソース割り当てRA1が、第1のデバイスD1用に使用される。
【0057】
図7は、第2の実施形態による無線周波数リソース割り当ての方法のフローチャートを示している。
図2のステップと同一のステップは、同じ参照符号によって識別され、更に開示されない。
【0058】
この第2の実施形態による方法は、ステップS200~S216を含む。この第2の実施形態において、ステップS210は、
図7に示すように幾つかのステップを含む。
【0059】
ステップS202において、第1のデバイスD1は、第2のデバイスD2に許容可能な衝突率の少なくとも2つの閾値を取得する。これらの少なくとも2つの閾値のそれぞれは、
図8によって示されるように特定の空間ゾーンに関連付けられている。
図8において、C
2は、D2によって経験されたときの推定衝突率である。
図8には、インデックスn及びmによって識別される2つのRAパターンの特定の選択された組み合わせへの言及がなく、これが、C
2
nmの代わりにC
2が使用される理由である。この実施形態は、デバイスD2が列車内に存在し、デバイスD1が車両内、例えば自動車内に存在する場合に特によく適している。この場合には、列車(D2として動作する)は、最悪のシナリオ(すなわち、車両速度、位置、移動方向、アンテナパターン、最大許容送信電力、及び伝播チャネル状態)について、車両からの干渉信号レベル(すなわちI12)を予測することができ、したがって、許容可能な衝突率の異なる閾値に関連付けられた空間ゾーン(複数の場合もある)を規定することができる。これらの閾値及び関連付けられた空間ゾーンは、(既に上記で説明したように)第1のデバイスD1が第2のデバイスD2から直接取得することもできるし、事前に構成されたデータから取得することもできるし、ネットワーク等から取得することもできる。閾値に関する上記情報は、D2が、例えば物理媒体又はアプリケーションレイヤを通じてブロードキャストすることによってリアルタイムで提供することもできるし、例えばジオロケーションマップとリンクされたタイムスケジュールの形態で事前に提供することもできる。
図8には、3つの空間ゾーンがデバイスD2の周囲に画定されている。Li(x,y,t)は、Tiとして示される閾値に関連付けられた第iの空間ゾーンの外郭線であり、(x,y)は、座標系における座標であり、tは時間である。
図8では、空間ゾーンは、D2の周囲の円によって画定される。ただし、本実施形態は、空間ゾーンのこの特定の画定に限定されるものではなく、空間ゾーンは
図9に示すように異なる形態を有することができることが理解されるであろう。一例示的な実施形態において、閾値は、インフラストラクチャの要素(例えば、線路及び自動車道路)に関して画定される空間ゾーンに関連付けることができる。したがって、第1のデバイスD1は、第2のデバイスD2に許容可能な衝突率の3つの閾値を取得することができ、各閾値は、特定の空間ゾーンに関連付けられている。
【0060】
ステップS204において、第1のデバイスD1は、自身のジオロケーションを表す情報、又は、D2までのその相対距離を求めることを可能にする情報を取得する。取得された情報は、第1のデバイスD1がどの空間ゾーンに属するのかを判断するのに使用される。幾つかの重複する空間ゾーンが画定される一変形形態では、第1のデバイスD1は、適切な閾値を選択するために第2のデバイスD2のジオロケーションデータも取得することができる。
【0061】
ステップS206において、第1のデバイスD1は、ステップS204において取得された情報に応じて、取得された少なくとも2つの閾値の中から1つの閾値Thを選択する。
図8に関して、第1のデバイスD1は、空間ゾーン2に属し、したがって、T1、T2及びT3の中から閾値T2を選択する。一変形形態では、第1のデバイスD1は、ステップS204において取得された情報から、第2のデバイスD2からのその距離を求め、この距離に応じた閾値を選択する。
【0062】
この距離は、ジオロケーションデータに基づいて直接計算することもできるし、検知によって推定することもできる。信号レベルは、ステップS204において取得された通信に関連した幾つかの追加情報(例えば、伝播チャネル及び干渉信号到来方向についての情報)を使用して、デバイス間の相対位置及び/又は距離を推定するのに使用することができる。第1の近似形態では、フリスの公式に基づく従来のリンクバジェット推定を使用して、所与の距離Rにある2つのデバイスの間の信号レベルの減衰を計算することができる。これは、D1が、受信信号(I21)に基づいてD2までの距離を推定するために適用することができる。実際、フリスの公式は、以下の式として定義される。
【数5】
ここで、D
t及びD
rは、それぞれ送信アンテナ(D2)及び受信アンテナ(D1)の(等方性放射体に対する)見通し線に沿ったアンテナ指向性であり、λは波長であり、Rはアンテナ間の距離であり、パラメーターαは、媒体内の減衰、アンテナアライメント、偏波、マルチパス等の無線チャネル特性に影響を及ぼす因子を考慮するものである。ここで、双方のアンテナが互いの遠方場にあるようにR≫λであり、波長λについて単一値を仮定することができるほど帯域幅が十分狭いと更に仮定することにする。したがって、この式によって、別のアンテナから1つのアンテナによって受信される電力を、この電力が距離Rから送信されたときに計算することが可能になり、その結果、逆の方法で距離Rを受信電力から推定することができる。
【0063】
空間ゾーンに基づくこの実施形態は、第2のデバイスD2が存在する場合にも存在しない場合にも機能する。実際、第1のデバイスD1は、例えばタイムスケジュールによって規定されるか又はネットワークから取得されるD2の今後の到来を予想した周波数リソース割り当てについて決定することができる。例えば、車両(デバイスD1として動作する)は、列車(デバイスD2として動作する)が今後到来した時に列車がRRを必要とすることをこのように予想する。
【0064】
図10は、第3の実施形態による無線周波数リソース割り当ての方法のフローチャートを示している。
図2のステップと同一のステップは、同じ参照符号によって識別され、更に開示されない。
【0065】
この第3の実施形態による方法は、ステップS200~S216を含む。この第3の実施形態において、ステップS210は、
図10に示すように幾つかのステップを含む。
【0066】
ステップS202において、第1のデバイスD1は、第2のデバイスD2に許容可能な衝突率の少なくとも2つの閾値を取得する。これらの少なくとも2つの閾値のそれぞれは、
図11に示すように干渉信号の特定のレベルに関連付けられている。閾値及び関連付けられた干渉ゾーンのレベルは、(既に上記で説明したように)第1のデバイスD1が第2のデバイスD2から取得することもできるし、事前に構成されたデータから取得することもできるし、ネットワーク等から取得することもできる。この情報は、D2が、例えば物理媒体又はアプリケーションレイヤを通じてブロードキャストすることによってリアルタイムで提供することができる。干渉信号レベルに基づくこの実施形態は、第2のデバイスD2が有効に存在することを必要とする。
【0067】
閾値は、第1のデバイスD1によって検知されたときの干渉信号レベル(すなわちI21)の関数として定義することができる。この実施形態において、D2の閾値は、次のように定義することができる。I21_min(j)<I21<I21_max(j)である場合に、閾値はT(j)に等しい。ここで、jは、干渉信号レベルの範囲を識別する数である。
【0068】
I21_min(j)及びI21_max(j)の値は、伝播チャネル状態及びD1の物理レイヤ(すなわち指向性、パターン、最大送信電力等)の最悪のシナリオを考慮してD2によって定義される。実際、閾値を定義するとき、D2は、D1について限られた情報しか有していないか又は全く情報を有しておらず、したがって、最悪の場合(すなわち、最大レベルの干渉信号を引き起こす場合)を考慮しなければならない。
【0069】
この実施形態において、第1のデバイスD1は、その位置も、D2までのその距離も知る必要はない。この情報は、D2によって定義されるI21_min(j)及びI21_max(j)の値を通じて閾値の定義に既に含まれている。相反性によって、伝播チャネル状態は、いずれの方向においても同じである。これによって、D2が、D1からの干渉信号の起こり得るレベル(すなわちI12)を予測し、それに応じて閾値を定義することが可能になる。
【0070】
ステップS204において、第1のデバイスD1は、干渉信号のレベルI21を取得する。1つの実施形態において、干渉信号のレベルI21は、場合によっては或る信号処理を使用する測定によって取得される。
【0071】
ステップS206において、第1のデバイスD1は、ステップS204において取得された情報に応じて、ステップS202において取得された少なくとも2つの閾値の中から1つの閾値Thを選択する。
【0072】
上述した方法は、第2のデバイスD2から第1のデバイスD1及び/又は同じRRを使用する他のデバイスへのフィードバックを含むことができる。
【0073】
1つの実施形態において、フィードバックメカニズムは、D2が、D1に起因してD2によって経験された実際の影響をD1に通知するのに使用することができる。これによって、D1が、共有される無線周波数リソースのその使用をそれに応じて適応させることが可能になる。D2によってD1に提供されるフィードバック情報は、新たな閾値及び/又は新たな時間間隔dT2を含むことができる。したがって、1つの特定の実施形態において、第1のデバイスD1は、新たな閾値を受信する。これらの新たな閾値は、第1のデバイスが原因で第2のデバイスによって経験された実際の衝突率から求められたものである。
【0074】
別の実施形態において、フィードバックメカニズムは、マルチデバイスのシナリオを予想するのに使用することができる。特に、フィードバックメカニズムは、D2が、その閾値(複数の場合もある)を、同じRRが3つ以上のデバイスによって使用される場合に適応させることを可能にすることができる。1つの実施形態において、第3のデバイスD3が、D1及びD2と同じRRを使用する。D2に関連付けられた閾値(複数の場合もある)Thは、D2に対するD1及びD3の累積的影響(すなわちI12+I32)がD2の最小要件を満たしていることを保証するように決定することができる。
【0075】
上記方法は、デバイスD1及びD2がRRの等しい使用権を有する場合に使用することもできるし、デバイスD1(又はD2)が主デバイスであり、デバイスD2(又はD1)が副デバイスである場合に使用することもできる。極端な場合には、主デバイスに関連付けられた閾値(複数の場合もある)は、主デバイスが、副デバイスによって経験された衝突率にかかわらず、任意のRAを選択することが可能である場合に対応する値になる傾向があり得る。例えば、主デバイスのRR使用を有利にするために、その衝突率の閾値は、0に等しく設定される場合がある。そのような閾値が取得された後、副デバイスは、同じRRの衝突のない使用を保証するRAを決定するか又はこのRRの使用を回避するかのいずれかを行わなければならない。
【0076】
図12は、第1のデバイスD1のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示している。
【0077】
図10に示すハードウェアアーキテクチャの一例によれば、デバイスD1は、プロセッサ又はCPU(「Central Processing Unit」(中央処理装置)の頭字語)101と、ランダムアクセスメモリRAM102と、リードオンリーメモリROM103と、SD(「Secure Digital」(セキュアデジタル)の頭字語)カードリーダー104又はHDD(「Hard Disk Drive」(ハードディスクドライブ)の頭字語)等の記憶ユニット又は記憶媒体リーダーと、デバイスD1がデータを送受信することを可能にする少なくとも一組の通信インターフェースCOM105とを備え、これらは、通信バス110によって接続される。
【0078】
プロセッサ101は、ROM103、外部メモリ(SDカード等)、記憶媒体(HDD等)、又は通信ネットワーク(RAN1又は別の通信ネットワーク等)からRAM102内にロードされた命令を実行することが可能である。デバイスD1に電源が投入されると、プロセッサ101は、RAM102から命令を読み出し、それらの命令を実行することが可能である。これらの命令は、
図5又は
図7に関して説明した方法をプロセッサ101に実施させるコンピュータープログラムを形成する。
【0079】
図5及び
図7に関して説明した方法は、プログラマブル機械、例えば、DSP(「Digital Signal Processor」(デジタル信号プロセッサ)の頭字語)、マイクロコントローラー又はGPU(「Graphics Processing Unit」(グラフィックス処理装置)の頭字語)による命令のセットの実行によってソフトウェアの形態で実施することもできるし、機械又は専用の構成要素(チップ又はチップセット)、例えば、FPGA(「Field-Programmable Gate Array」(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の頭字語)若しくはASIC(「Application-Specific Integrated Circuit」(特定用途向け集積回路)の頭字語)によってハードウェアの形態で実施することもできる。一般に、デバイスD1は、
図5及び
図7に関して説明した方法を実施するように適合又は構成された電子回路類を含む(デバイスD2についても全く同じである)。