(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】LMDプロセスを制御することによって融合不良欠陥を予備成形する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/36 20210101AFI20240112BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
B22F10/36
B22F10/25
(21)【出願番号】P 2022577439
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2020137883
(87)【国際公開番号】W WO2021212888
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】202010319683.2
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522345951
【氏名又は名称】中国航発上海商用航空発動機製造有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】AECC SHANGHAI COMMERCIAL AIRCRAFT ENGINE MANUFACTURING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.77 Hongyin Road, Nicheng Town, Pudong District, Shanghai 201306, China
(73)【特許権者】
【識別番号】519383452
【氏名又は名称】中国航発商用航空発動機有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】AECC COMMERCIAL AIRCRAFT ENGINE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.3998, South Lianhua Road, Minhang District, Shanghai 200241, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】付 俊
(72)【発明者】
【氏名】雷 力明
(72)【発明者】
【氏名】李 雅莉
(72)【発明者】
【氏名】周 新民
(72)【発明者】
【氏名】付 ▲シン▼
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0356778(US,A1)
【文献】国際公開第2020/026306(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107354453(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/36
B22F 10/25
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LMDプロセスを制御することによって融合不良欠陥を予備成形する方法であって、
成形領域及び予備成形欠陥領域を含むモデルを取得し、前記予備成形欠陥領域はプリセット欠陥を有し、
前記モデルに対して分層スライス処理を行い、前記予備成形欠陥領域の各堆積層に、前記プリセット欠陥は、垂直方向における最大寸法a0を有し、前記垂直方向はLMDプロセスのレーザ走査方向と垂直であり、ここでは、a0は区間範囲内の値に指定され、前記区間範囲は予備成形が所望される融合不良欠陥の特徴寸法の可変範囲であり、前記特徴寸法は融合不良欠陥の前記垂直方向における最大寸法であり、
前記成形領域については、LMDプロセスの所定の成形プロセスパラメータを採用して成形を行い、
前記予備成形欠陥領域について、成形プロセスパラメータを以下のように制御し、
堆積層毎に、a0<Dのとき、前記成形領域に対して、堆積層内において成形経路間の走査ピッチと粉末送給率を変更し、これによって前記融合不良欠陥を予備成形し、
堆積層毎に、a0≧Dのとき、前記成形領域に対して、堆積層内においてレーザのエネルギ入力を低下させ、これによって融合不良欠陥を予備成形し、
ここでは、Dは、前記予備成形欠陥領域の堆積層内におけるレーザのスポット直径であることを特徴とする方法。
【請求項2】
a0=(w1+w2)/2に設定し、
ここでは、w1及びw2のそれぞれは、前記区間範囲の下限値及び上限値であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予備成形が所望される融合不良欠陥の位置、形状、数、及び寸法を予め設定し、これにより、前記プリセット欠陥を有する前記予備成形欠陥領域の前記モデルにおける位置、形状、数、及び寸法を確定し、ここでは、予備成形が所望される融合不良欠陥の寸法は、前記特徴寸法を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a0<Dのとき、前記予備成形欠陥領域は、前記堆積層内には、隣接するk番目の成形経路とk+1番目の成形経路とを含み、前記プリセット欠陥は、前記k番目の成形経路と前記k+1番目の成形経路との間に位置し、前記プリセット欠陥の前記垂直方向の第1側における成形経路は、順に、前記k番目の成形経路、k-1番目の成形経路、k-2番目の成形経路、…、1番目の成形経路であり、前記プリセット欠陥の前記垂直方向の第2側における成形経路は順に、前記k+1番目の成形経路、k+2番目の成形経路、…、最後の成形経路であり、ここでは、kは2より大きい任意の自然数であり、
前記予備成形欠陥領域について、成形プロセスパラメータを以下のように制御し、
h(k)=a0+Dであり、
h(k-1)、h(k+1)はDの20%~80%に予め設定され、前記予備成形欠陥領域の堆積層の層厚を維持したまま、f(k)及びf(k+1)のそれぞれはh(k-1)及びh(k+1)によって設定され、
ここでは、h(k-1)は、k-1番目の成形経路とk番目の成形経路とが前記堆積層内の所定の位置に形成する走査ピッチであり、h(k)は、k番目の成形経路とk+1番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、h(k+1)は、k+1番目の成形経路とk+2番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、前記所定の位置は前記プリセット欠陥の前記堆積層内の最大寸法に対応し、f(k)はk番目の成形経路に対応する粉末送給率であり、f(k+1)はk+1番目の成形経路に対応する粉末送給率であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記k-1番目の成形経路及び前記k+2番目の成形経路は、前記予備成形欠陥領域の堆積層内に位置し、
前記予備成形欠陥領域について、さらに以下のように成形プロセスパラメータを制御し、
h(k-2)=a×h(k-1)、
h(k+2)=b×h(k+1)、
f(k-1)=c×f(k)、
f(k+2)=d×f(k+1)、
ここでは、a、b、c、dは1より大きい定数であり、h(k-2)はk-2番目の成形経路とk-1番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、h(k+2)はk+2番目の成形経路とk+3番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、f(k-1)はk-1番目の成形経路に対応する粉末送給率であり、f(k+2)はk+2番目の成形経路に対応する粉末送給率であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
成形プロセスパラメータを以下のように制御し、
前記予備成形欠陥領域について、t0=100
~200μmであり、P0=600
~1000Wであり、D=0.8
~1mmであり、
ここでは、t0は層厚であり、P0はレーザパワーであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
a0≧Dのとき、P2≦0.1×P1に設定し、
ここでは、P2は、前記予備成形欠陥領域に対応するレーザパワーであり、P1は、前記成形領域に対応する前記所定の成形プロセスパラメータのうちの所定のレーザパワーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
LMDプロセスは、同期粉末送給方式を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶融堆積(LMD)プロセスを制御することによって融合不良欠陥を予備成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造(AM)技術は次第に成熟し、すでに航空宇宙、医療、自動車、原子力発電などの分野に広く応用されている。ここでは、レーザ溶融堆積であるLMD(例えば同期粉末送給方式を用いる)技術は、よく見られるAM技術であり、当該技術は、粉末キャリアガスにより球状粉末を搬送して集合し、高エネルギレーザビームを用いて同期に搬送して集合された金属粉末を溶融して、移動する非定常状態の金属溶融池を形成し、高温度勾配で小さな溶融池が迅速に凝固し、層ごとに溶融堆積し、最終的に実体部品を形成し、通常、航空宇宙及び国防装備用の複雑な大型金属構造体の低コスト、短周期での迅速成形、又は高付加価値の部品、例えば、航空エンジンマウントセグメントシステム、リニアセグメントプラットフォーム、ブリスク、タービンブレードなどの部品の迅速修復に適用される。
【0003】
LMD金属成形/修復プロセスは、温度場、応力場などの複数の場の結合に関し、複雑な非平衡状態での凝固過程であり、不安定性要因が多く、気孔、クラック、融合不良などの一般的な欠陥のような、様々なタイプ及び寸法上の欠陥の発生が回避できない。
【0004】
典型的な欠陥である融合不良欠陥は、金属材料同士が融合していないために形成されるものである。AM製造又は修復過程において、溶融池パス間又は層間のオーバーラップが不良であり、又は、修復界面結合面において、いずれも融合不良又は未融着欠陥を引き起こしやすく、欠陥位置での応力集中は比較的に深刻であり、融合不良欠陥は、危険性がクラックに次ぎ、材料の機械的特性を著しく悪化させ、部品の耐用年数に深刻な影響を与える。
【0005】
AM製品は、組織及び特性が異方性の特徴を有するため、従来の鋳造、鍛造、溶接などによる製品と異なり、発生する融合不良欠陥も異なり、従来の製品と比較すると、検出精度が異なり、アクセス性が悪く、検出ブラインドエリアが大きいなどの問題があるので、従来の欠陥検出と評価方法は基本的にAM製品には適しない。したがって、人工的欠陥を有するAM塊状標準試料、欠陥試料又は欠陥部品を製造することは、欠陥の非破壊検査を正確に行うために準備することを可能にするだけでなく、AM中に発生した欠陥に対して定性的かつ定量的研究を正確に行い、タイプ又は寸法の異なる欠陥によるAM成形品の力学的性能への影響を正確にシミュレートし、さらに欠陥によるAM部品の確実性への影響を研究して検証することも可能にし、航空宇宙などの分野でのAM製品の応用に重大な意味を有する。
【0006】
融合不良欠陥を有する金属製品の製造については、現在主に2つの方法がある。1つは、溶接プロセスを制御することで、特定の寸法を有する融合不良欠陥を製造することである。もう1つは、選択性レーザ溶融(SLM)によって融合不良欠陥の輪郭を直接設計し、内部に融合不良欠陥を有する製品を直接成形することである。1つ目の方法で製造される融合不良欠陥を有する試料は、サンプルの組織、特性などが様々な程度で損傷されており、実際の部品製造プロセスにおいて生成された融合不良欠陥の特徴を効果的にシミュレートすることができない。2つ目の方法で製造される融合不良欠陥は一般に連続的組織構造を持たず、部分的融合不良欠陥のみに適しており、実際の部品製造過程で発生する融合不良欠陥の特徴を十分にシミュレートすることができない。また、寸法が小さいと、境界の輪郭が溶けた金属で充填されやすく、成形できない。
【0007】
以上の2種類の方法は、いずれも製品の凝固過程に融合不良欠陥が発生する特徴を正確にシミュレートすることができず、融合不良欠陥箇所の組織構造の特徴を正確に特徴付けることができず、欠陥と力学的特性の影響関係、及び欠陥と部品との確実性の関係を正確かつ効果的に評価することができない。現在、金属付加製造の成形/修復品の典型的な人工欠陥の製造方法と手段はまだ成熟していないため、本発明は、LMD航空エンジン合金部品における融合不良類欠陥の制御方法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、LMDプロセスを制御することによって融合不良欠陥を予備成形する方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、融合不良欠陥を予備成形する方法を提供することであり、当該方法で予備成形された融合不良欠陥は、実際の凝固過程に生じた欠陥をシミュレートすることができ、欠陥箇所の組織構造の連続的で完全な特徴を保持することができる。
【0010】
本発明はLMDプロセスを制御することによって融合不良欠陥を予備成形する方法を提供する。当該方法は、成形領域及び予備成形欠陥領域を含むモデルを取得し、前記予備成形欠陥領域はプリセット欠陥を有し、前記モデルに対して分層スライス処理を行い、前記予備成形欠陥領域の各堆積層に、前記プリセット欠陥は、垂直方向における最大寸法a0を有し、前記垂直方向はLMDプロセスのレーザ走査方向と垂直であり、ここでは、a0は区間範囲内で値に指定され、前記区間範囲は予備成形が所望される融合不良欠陥の特徴寸法の可変範囲であり、前記特徴寸法は融合不良欠陥の前記垂直方向における最大寸法であり、前記成形領域について、LMDプロセスの所定の成形プロセスパラメータを採用して成形を行い、前記予備成形欠陥領域について、成形プロセスパラメータを以下のように制御する。すなわち、堆積層毎に、a0<Dのとき、成形領域に対して、堆積層内において成形経路間の走査ピッチと粉末送給率を変更し、これによって前記融合不良欠陥を予備成形し、堆積層毎に、a0≧Dのとき、成形領域に対して、堆積層内においてレーザのエネルギ入力を低下させ、これによって融合不良欠陥を予備成形し、ここで、Dは、前記予備成形欠陥領域の堆積層内におけるレーザのスポット直径である。
【0011】
一実施形態では、a0=(w1+w2)/2とする。ここでは、w1及びw2のそれぞれは、前記区間範囲の下限値及び上限値である。
【0012】
一実施形態では、予備成形が所望される融合不良欠陥の位置、形状、数、及び寸法を予め設定し、これにより、前記プリセット欠陥を有する前記予備成形欠陥領域の前記モデルにおける位置、形状、数、及び寸法を確定し、ここでは、予備成形が所望される融合不良欠陥の寸法は、前記特徴寸法を含む。
【0013】
一実施形態では、a0<Dである場合、前記予備成形欠陥領域は、前記堆積層内に隣接するk番目の成形経路とk+1番目の成形経路とを含み、前記プリセット欠陥は、前記k番目の成形経路と前記k+1番目の成形経路との間に位置し、前記プリセット欠陥の前記垂直方向の第1側における成形経路は、順に、前記k番目の成形経路、k-1番目の成形経路、k-2番目の成形経路、…、1番目の成形経路であり、前記プリセット欠陥の前記垂直方向の第2側における成形経路は順に、前記k+1番目の成形経路、k+2番目の成形経路、…、最後の成形経路であり、ここでは、kは2より大きい任意の自然数である。前記予備成形欠陥領域について、成形プロセスパラメータを以下のように制御する。すなわち、h(k)=a0+D。h(k-1)、h(k+1)はDの20%~80%に予め設定され、前記予備成形欠陥領域の堆積層の層厚を維持したまま、f(k)及びf(k+1)のそれぞれはh(k-1)及びh(k+1)によって設定され、ここで、h(k-1)は、k-1番目の成形経路とk番目の成形経路とが前記堆積層内の所定の位置に形成する走査ピッチであり、h(k)は、k番目の成形経路とk+1番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、h(k+1)は、k+1番目の成形経路とk+2番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、前記所定の位置は前記プリセット欠陥の前記堆積層内における最大寸法に対応し、f(k)はk番目の成形経路に対応する粉末送給率であり、f(k+1)はk+1番目の成形経路に対応する粉末送給率である。
【0014】
一実施形態において、前記k-1番目の成形経路及び前記k+2番目の成形経路は、前記予備成形欠陥領域の堆積層内に位置する。前記予備成形欠陥領域について、さらに以下のように成形プロセスパラメータを制御する。すなわち、h(k-2)=a×h(k-1)であり、h(k+2)=b×h(k+1)であり、f(k-1)=c×f(k)であり、f(k+2)=d×f(k+1)である。ここで、a、b、c、dは1より大きい定数であり、h(k-2)はk-2番目の成形経路とk-1番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、h(k+2)はk+2番目の成形経路とk+3番目の成形経路とが前記堆積層内の前記所定の位置に形成する走査ピッチであり、f(k-1)はk-1番目の成形経路に対応する粉末送給率であり、f(k+2)はk+2番目の成形経路に対応する粉末送給率である。
【0015】
一実施形態では、成形プロセスパラメータを以下のように制御する。すなわち、前記予備成形欠陥領域について、t0=100-200μmであり、P0=600-1000Wであり、D=0.8-1mmであり、ここで、t0は層厚であり、P0はレーザパワーである。
【0016】
一実施形態では、a0≧Dのとき、P2≦0.1×P1に設定する。ここで、P2は、前記予備成形欠陥領域に対応するレーザパワーであり、P1は、前記成形領域に対応する前記所定の成形プロセスパラメータのうちの所定のレーザパワーである。
【0017】
一実施形態では、LMDプロセスは、同期粉末送給方式を使用する。
【0018】
上記方法はLMDプロセスを制御することによってLMD成形品に融合不良欠陥を予備成形することができ、成形プロセスパラメータを制御することによって、指定位置で対応する寸法の融合不良欠陥を製造することができ、融合不良欠陥を取得し、現在の融合不良欠陥の予備成形の難易度を大幅に簡略化する。上記方法は実際の凝固過程で発生する融合不良欠陥を製造できるだけでなく、融合不良欠陥箇所の組織構造の連続完全特性を保留することもできる。
【0019】
上記方法はさらに欠陥寸法の違いに応じて異なる制御案を採用して欠陥を予備成形し、欠陥寸法が小さい場合、経路計画と粉末送給率を制御することによって欠陥を予備成形し、欠陥寸法が大きい場合、レーザパワーを低下させることによって欠陥を予備成形する。
【0020】
上記方法を利用して融合不良欠陥を予備成形することは、LMD融合不良欠陥と無破壊検査信号の間の真実な対応関係を正確に分析することに有利であり、製品性能の評価結果と合わせて、融合不良欠陥と製品性能との影響関係を実際に分析し研究し、さらに融合不良欠陥とAM部品の確実性の関係を分析することに用いられる。
本発明に係る上記の、及び他の特徴、性質と利点は、以下の図面と実施例の説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による方法を示す例示的なステップフロー図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、具体的な実施形態及び図面を参照しながら本発明をさらに説明し、以下の説明においては、本発明を十分理解するためにより多くの細部を説明している。しかし、本発明は、その説明と異なる他の多くの形態によっても実施することができ、当業者が本発明の内包から逸脱することなく、実際の応用状況に応じて類似の拡張、演繹をすることができることは明らかである。したがって、本発明の保護範囲は、この具体的な実施形態の内容によって限定されるべきものではない。
【0023】
例えば、明細書では後述する第1の特徴が第2の特徴の上方又は上に形成されることは、第1及び第2の特徴が直接関連する方式で形成された実施形態を含んでもよく、第1及び第2の特徴の間に付加的特徴を形成する実施形態を含んで、第1及び第2の特徴の間が直接関連しなくもよい。さらに、第1の要素が第2の要素に接続されているか、又は第2の要素に結合されていると説明する場合、この説明は、第1及び第2の要素が直接互いに接続されているか又は互いに結合されている実施形態を含み、第1の要素が第2の要素に間接的に接続されているか、又は互いに結合されているように1つ又は複数の他の介在要素が追加されている実施形態も含む。
【0024】
本発明は、LMDプロセスを制御することによって融合不良欠陥を予備成形する方法を提供する。LMDプロセスは、以下の第1実施例から第3実施例に示されるように、同期粉末送給方式を使用することができる。同期粉末送給とは、レーザ走査と金属粉末送給とが同時に行われ、金属粉末をレーザ走査の位置にリアルタイムで送給でき、移動する金属溶融池を形成することを意味する。本発明の方法を、
図1から
図10を参照して以下に説明する。
【0025】
ステップS1では、成形領域1及び予備成形欠陥領域2を含むモデル10を得る。
【0026】
予備成形欠陥領域2にはプリセット欠陥3を有する。例えば、UG、CAD等の三次元モデリングソフトウェアを用いて、付加製造の成形品又は修復品のモデルを、成形領域1と、プリセット欠陥3を有する予備成形欠陥領域2とに分割し、これにより、成形領域1及び予備成形欠陥領域2を含むモデル10を得る。
【0027】
後続の実施例では、ステップS1において、予備成形が所望される融合不良欠陥の位置、形状、数、及び寸法を予め設定することができ、これにより、モデル10におけるプリセット欠陥3を有する予備成形欠陥領域2の位置、形状、数、及び寸法を決定することができる。なお、予備成形が所望される融合不良欠陥の寸法は、後述する垂直方向SD2における最大寸法を含む。
【0028】
ステップS2では、モデル10に対して分層スライス処理を行う。
【0029】
予備成形欠陥領域2の各堆積層4に、プリセット欠陥3は、LMDプロセスのレーザ走査方向SD1に垂直な垂直方向SD2における最大寸法a0を有する。
【0030】
a0は、予備成形が所望される融合不良欠陥の垂直方向SD2における最大寸法の可変範囲である区間範囲内の値に指定され得る。換言すれば、前記区間範囲は、下限値w1と上限値w2とを有しており、すなわち、垂直方向SD2における予備成形が所望される融合不良欠陥の最大寸法は、下限値w1と上限値w2との間で変動することができ、a0は、下限値w1と上限値w2との間の値に指定され得る。a0は、ステップS1でのモデリング過程において予め設定されることができる。異なる堆積層4について、a0は異なっていてもよい。
【0031】
融合不良欠陥自体は不規則的な形状の欠陥であり、特定の寸法で特徴付けることは困難である。しかしながら、特定の融合不良欠陥を予備成形又は得るには、予備成形が所望される融合不良欠陥の寸法を説明し、はかる必要がある。本発明では、垂直方向SD2における予備成形が所望される融合不良欠陥の最大寸法を特徴寸法とし、これにより、予備成形が所望される融合不良欠陥をはかり、又は寸法的特徴付ける。望ましい特徴寸法は、通常、不確定値であるか、又は可変範囲を有する。このため、これに対応して、プリセット欠陥3の垂直方向SD2における最大寸法a0も、前述した可変範囲又は区間範囲内の値に指定されることになり、対応する寸法の融合不良欠陥を容易に得ることができる。
【0032】
例えば、a0は、下限値w1又は上限値w2に指定可能である。好ましくは、a0は、前記区間範囲の下限値w1と上限値w2との平均値であり、すなわち、a0=(w1+w2)/2である。
【0033】
a0は下限値w1又は上限値w2に指定することを例として、下限値w1又は上限値w2に基づいて融合不良欠陥を予備成形する際の増量設計を考慮し、実際に予備成形された融合不良欠陥の特徴寸法がある範囲内で変動することを許容する必要がある。下限値w1を用いて融合不良欠陥を予備成形すれば、実際に得られた融合不良欠陥の寸法が小さく、前記区間範囲より小さい可能性が大きい。上限値w2を用いて融合不良欠陥を予備成形すれば、実際に得られた融合不良欠陥の大きさが大きく、前記区間範囲よりも大きい可能性が大きい。これにより、実際に得られた融合不良欠陥の寸法の大きさを正確に制御する難易度を増やす。
【0034】
一方、a0が下限値w1又は上限値w2に指定される場合に比べて、a0が下限値w1と上限値w2の平均値(又は、a0=(w1+w2)/2)に指定され、プリセット欠陥3の寸法の大きさを特徴付ける場合には、実際に得られた融合不良欠陥の寸法の大きさが前記区間内で上下に変動する余地があるため、実際に得られた融合不良欠陥が前記望ましい可変範囲内にある可能性が大きく増加する。それと同時に、融合不良欠陥自体が不規則的な形状であるため、実際に予備成形された融合不良欠陥の寸法の大きさにより多くの変動の余地があることは欠陥寸法の合格率を増加することができ、融合不良欠陥を有するLMD成形品の予備成形の成功率を向上させ、欠陥の非破壊検査の検出率を増大させる。次に、モデル10に対して成形プロセスパラメータの設定、例えば経路計画プロセスを行うことができる。
【0035】
ステップS31では、成形領域1について、LMDプロセスの所定の成形プロセスパラメータを用いて成形を行う。
【0036】
「所定の成形プロセスパラメータを用いる」ことは、従来の、通常の、又は標準的な成形プロセスパラメータ(レーザパワー、走査ピッチ、粉末送給率、成形経路などを含む)を用いることができ、これにより、成形領域1が緻密な冶金学的結合を呈し、融合不良欠陥などの欠陥の発生を可能な限り低減することができる。ここで言及した「所定の…」(例えば、所定のレーザパワー、所定の走査ピッチ、所定の粉末送給率、所定の成形経路等)とは、成形領域1に用いられる所定の成形プロセスパラメータを意味する。
【0037】
ステップS32では、予備成形欠陥領域2について、成形プロセスパラメータを以下のように制御する。a0<Dのとき、成形領域1に対して、堆積層4内で成形経路(後述するk-1番目の成形経路51、k番目の成形経路50、k+1番目の成形経路61等を含む)間の走査ピッチ及び粉末送給率を変更し、これにより、溶着不良欠陥を予備成形する。a0≧Dのとき、成形領域に対して、堆積層4内においてレーザのエネルギ入力を低下させ、これによって融合不良欠陥を予備成形する。ここで、Dは、予備成形欠陥領域2の堆積層4内におけるレーザのスポット直径である。
【0038】
前述したように、a0はプリセット欠陥3の垂直方向SD2における最大寸法であり、プリセット欠陥3の寸法の大きさの特徴付けである。a0は、予備成形が所望される融合不良欠陥の垂直方向SD2における最大寸法の可変範囲に応じて設定されるので、a0も予備成形が所望される融合不良欠陥の寸法の大きさに対する特徴付けである。一般に、スポット直径Dは、レーザ走査経路の単一パス溶融池の幅である。異なる堆積層については、Dは異なってもよいことを理解されたい。
【0039】
レーザのエネルギ入力を低減することは、レーザ走査経路の単一パス溶融池の幅を単位として行われ、換言すれば、少なくとも単一パス溶融池の幅のエネルギ入力を低下させ、すなわち、レーザのエネルギ入力を低減することによって予備成形可能な融合不良欠陥の最小寸法は単一パス溶融池の幅である。したがって、a0<Dのとき、実際には、レーザのエネルギ入力を低減することで所望寸法の融合不良欠陥を予備成形することができない。
【0040】
また、成形経路間の走査ピッチ及び粉末送給率を変更して融合不良欠陥を予備成形する場合、LMD成形は、プリセット欠陥3が存在する領域を避けるため、プリセット欠陥3が存在する領域に隙間が形成される。a0<Dとは、堆積層4内に単一パス溶融池の幅より小さい隙間のみを残しておく必要があることを意味する。a0≧Dとは、堆積層4内に残しておく隙間幅が単一パス溶融池の幅よりも大きいことを意味する。隙間幅が大きすぎると、成形領域1における2パス溶融池のオーバーラップによって予備成形欠陥領域3の頂部を閉じることができなくなり、又は成形領域1は堆積することができなくなる。分析によると、予備成形欠陥領域2における隙間幅が単一パス溶融池より小さい場合、2パス溶融池のオーバーラップによって予備成形欠陥領域2の頂部の閉鎖を実現することを許容できる。逆に、予備成形欠陥領域2内の隙間幅が単一パス溶融池以上である場合、特に隙間幅が単一パス溶融池よりもはるかに大きい場合に、2パス溶融池のオーバーラップによって予備成形欠陥領域2の頂部の閉鎖を達成することを完全に保証することはできない。例えば、a0=3Dのとき、隙間幅は複数パスの溶融池がオーバーラップする幅に達し、このとき、成形領域1の下方がこの隙間である場合には、成形領域1の下方に2パス又は複数パス溶融池の閉鎖を支持する領域がないことを意味する。このとき、低出力焼結(すなわち、レーザのエネルギ入力を低減する)の方式を採用すれば、予備成形欠陥領域2の頂部の2パス又は複数パス溶融池の閉鎖を支持することができ、これにより、融合不良欠陥の予備成形を実現することができる。
【0041】
したがって、本発明では、a0<Dと判断した場合、プリセット欠陥3又は予備成形が所望される融不良欠陥の寸法が小さく、成形経路間の走査ピッチ及び粉末送給率を変えることによって融合不良欠陥を予備成形することができる。一方、a0≧Dと判断した場合には、プリセット欠陥3又は予備成形が所望される融合不良欠陥の寸法が大きく、レーザのエネルギ入力を低減することにより融合不良欠陥を予備成形することができる。a0とDとを比較して、予備成形が所望される融合不良欠陥の相対的な寸法の大きさを判定し、寸法の大きさによって異なる制御案を用いて欠陥予備成形を行うことにより、予備成形が所望される融合不良欠陥をより容易に得ることができ、融合不良欠陥の予備成形成功率を向上させることができる。
【0042】
a0<Dの場合、予備成形欠陥領域2は、堆積層4内に、隣接するk番目の成形経路50及びk+1番目の成形経路61を含むことができる。プリセット欠陥3は、k番目の成形経路50とk+1番目の成形経路61との間に位置する。このように、プリセット欠陥3の垂直方向SD2の第1側における成形経路は順に、k番目の成形経路50、k-1番目の成形経路51、k-2番目の成形経路52であり、このように類推して、最後は1番目の成形経路71であり、プリセット欠陥3の垂直方向SD2の第2側における成形経路は順に、k+1番目の成形経路61、k+2番目の成形経路62であり、このように類推して、最後は成形経路72である。ここで、kは、2より大きい任意の自然数であってもよい。例えば、
図3に示す実施形態では、k>3、さらに、k=6である。
図3は、プリセット欠陥3の左側に順次位置するk番目の成形経路50、k-1番目の成形経路51、k-2番目の成形経路52、k-3番目の成形経路53、プリセット欠陥3の右側に順次位置するk+1番目の成形経路61、k+2番目の成形経路62、k+3番目の成形経路63、k+4番目の成形経路64を示し、全体的には、成形経路の番号は、左側から右側に向かって次第に増大する。
【0043】
予備成形欠陥領域2について、成形プロセスパラメータを以下のように制御する。すなわち、h(k)=a0+Dである。h(k-1)、h(k+1)はDの20%~80%に予め設定することができ、予備成形欠陥領域2の堆積層4の層厚t0を一定に保ったまま、f(k)及びf(k+1)のそれぞれはh(k-1)及びh(k+1)に従って設定する。ここで、h(k-1)は、k-1番目の成形経路51とk番目の成形経路50とが堆積層4内の所定の位置Z0に形成する走査ピッチであり、h(k)は、k番目の成形経路50とk+1番目の成形経路61とが堆積層4内の所定の位置Z0に形成する走査ピッチであり、h(k+1)は、k+1番目の成形経路61とk+2番目の成形経路62が堆積層4内の所定の位置Z0に形成する走査ピッチであり、このように類推する。ここで、所定の位置Z0は、堆積層4内の所定の欠陥3の最大寸法に対応する。f(k)はk番目の成形経路50に対応する粉末送給率であり、f(k+1)はk+1番目の成形経路61に対応する粉末送給率であり、このように類推する。大体、h(k-1)、h(k+1)は大きく設定されるほど、f(k)及びf(k+1)のそれぞれは大きく設定される。層厚t0は、堆積層4の堆積高さである。20%×D≦h(k-1)≦80%×D、20%×D≦h(k+1)≦80%×Dは、対応するオーバーラップ率が20%~80%であることを保証できる。
【0044】
さらに、k-1番目の成形経路51及びk+2番目の成形経路62は、予備成形欠陥領域2の堆積層4内に位置することができる。
【0045】
予備成形欠陥領域2について、さらに成形プロセスパラメータを以下のように制御する。すなわち、h(k-2)=a×h(k-1)であり、h(k+2)=b×h(k+1)であり、f(k-1)=c×f(k)であり、f(k+2)=d×f(k+1)である。ここでは、a、b、c、dは1より大きい定数である。以上の説明からわかるように、h(k-2)はk-2番目の成形経路52とk-1番目の成形経路51とが堆積層4内の所定の位置Z0に形成する走査ピッチであり、h(k+2)はk+2番目の成形経路62とk+3番目の成形経路63とが堆積層4内の所定の位置Z0に形成する走査ピッチであり、f(k-1)はk-1番目の成形経路51に対応する粉末送給率であり、f(k+2)はk+2番目の成形経路62に対応する粉末送給率である。予備成形欠陥領域2は、堆積層4内により多くの成形経路を含むことができることを理解されたい。以上の説明から類推すると、例えば、h(k-3)=a’×h(k-2)であり、h(k+3)=b’×h(k+2)であり、f(k-2)=c’×f(k-1)であり、f(k+3)=d’×f(k+2)である…となり、ここでは、a’、b’、c’、d’…はいずれも1より大きい定数である。全体的には、予備成形欠陥領域2の堆積層4において、k番目の成形経路50から左側に向かって走査ピッチが次第に増大し、k+1番目の成形経路61から右側に向かって走査ピッチも次第に増大する。あるいは、予備成形欠陥領域2の堆積層4において、プリセット欠陥3が存在する位置に近づくほど、成形経路間の走査ピッチは減少する傾向にある。プリセット欠陥3が存在する位置に近づくほど、成形経路の粉末送給率は対応して減少する傾向にある。
【0046】
a0<Dの場合、成形プロセスパラメータを以下のように制御することができる。すなわち、予備成形欠陥領域2については、t0=100-200μmであり、P0=600-1000Wであり、D=0.8-1mmである。ここで、t0は層厚であり、P0はレーザパワーである。
【0047】
a0≧Dの場合、堆積層4内でレーザのエネルギ入力を低下させ、換言すれば、P2=m×P1に設定する。ここでは、P2は、予備成形欠陥領域2に対応するレーザパワーであり、P1は、成形領域1に対応する所定の成形プロセスパラメータのうちの所定のレーザパワーであり、mは、1より小さい定数である。P2≦0.1×P1に設定することができる。
【0048】
本明細書において、ある成形プロセスパラメータ「=」特定の数値と示すことは数学的に厳密に等しいことを要求するわけではなく、「≒」を意味し、例えば±10%のマージンを含むことができることを理解されたい。
【0049】
以下、本発明の具体的な実施例を提供する。ここで、第1実施例及び第2実施例は、LMD成形品における融合不良欠陥寸法が比較的小さい(a0<D)場合を対象とし、第3実施例は、LMD成形品における融合不良欠陥寸法が比較的大きい(a0≧D)場合を対象とする。後ろの実施例は、前の実施例の部品符号及び一部の内容を流用し、同じ符号を用いて同じ又は類似の特徴を示し、同じ技術的内容の説明を選択的に省略することを理解されたい。省略された部分の説明について、前の実施例を参照してよく、後ろの実施例は詳細な説明を省略する。また、LMD成形品は、LMDプロセスによって製造されたLMD製造品であってもよいし、LMDプロセスによって修復成形されたLMD修復品であってもよいことを理解されたい。
(第1実施例)
【0050】
(1)予備成形が所望される融合不良欠陥のLMD成形品における位置、形状、数及び寸法を予め設定する。
図2に示すように、3つの異なる堆積層にそれぞれに1つのプリセット欠陥3が設けられ、予備成形が所望される融合不良欠陥をシミュレートする。予備成形が所望される融合不良欠陥は、ほぼ不規則的な孔状である。ある堆積層4について、予備成形が所望される融合不良欠陥の垂直方向SD2における最大寸法は、約0.65mm~1mmであり、すなわち、w1=0.65mmであり、w2=1mmである。a0=(w1+w2)/2=0.825mmとする。
【0051】
(2)予備成形が所望される融合不良欠陥の位置、形状、数及び寸法に応じて、LMD成形品のモデル10を、3つの予備成形欠陥領域2と成形領域1とに分割し、成形領域1と予備成形欠陥領域2とを含むモデル10を得る。
【0052】
モデル10に対して分層スライス処理と経路計画処理を行う。成形領域1について、LMDプロセスの所定の成形プロセスパラメータを採用して成形を行う。予備成形欠陥領域2の境界と成形領域1の境界は通常のオーバーラップ率を採用し、緻密な冶金的結合を呈する。
【0053】
(3)予備成形欠陥領域2については、プリセット欠陥3の形状と寸法に応じて、予備成形欠陥領域2については、堆積層4内で
図3に示す経路計画を行う。
【0054】
図3は、レーザ走査方向SD1と、堆積層4内においてレーザ走査方向SD1に垂直な垂直方向SD2とを示す。成形領域1については、レーザ走査方向SD1は、各成形経路の延伸方向であり、予備成形欠陥領域2については、レーザ走査方向SD1は、成形経路毎の起点から終点に向かう方向であり、堆積層4にとっては、レーザ走査方向SD1は確定されたものである。
【0055】
予備成形欠陥領域2の走査ピッチと粉末送給率を制御し、同期粉末送給のLMDプロセスを採用して層ごとに堆積し、これによって融合不良欠陥を予備成形する。ここでは、現在の堆積層4内の融合不良欠陥の予備成形を完成し、次の堆積層4は上記成形プロセスパラメータを繰り返して採用し、層間の成形プロセスパラメータ(例えば、成形経路、粉末送給率など)は適宜調整することができ、最終的には、融合不良欠陥の予備成形を完成する。
【0056】
以下のように、成形プロセスパラメータを制御する。
h(k)=a0+D
h(k-2)=1.2×h(k-1)
h(k+2)=1.17×h(k+1)
f(k-1)=1.12×f(k)
f(k+2)=1.19×f(k+1)
ここで、予備成形欠陥領域2については、D=1mmであり、h(k-1)=0.2mmであり、h(k+1)=0.22mmであり、f(k)=6g/minであり、f(k+1)=5g/minであり、t0=200μmであり、P0=1000Wである。予備成形欠陥領域2全体については、走査ピッチは0.5mm以下に制御され、粉末送給率は12g/min以下に制御される。
【0057】
検出した結果、実際に得られた融合不良欠陥7の研磨状態の様子を
図4に示すとおりであり、融合不良欠陥7の垂直方向SD2における最大寸法は約0.68mm~0.85mmであり、予想通りである。
(第2実施例)
【0058】
(1)予備成形が所望される融合不良欠陥のLMD成形品内における位置、形状、数及び寸法を予め設定する。
【0059】
図5と
図6に示すように、堆積層に1つのプリセット欠陥3が設けられ、予備成形が所望される融合不良欠陥をシミュレートする。予備成形が所望される融合不良欠陥は、ほぼ不規則的な線状であり、寸法が小さい。ある堆積層4に対して、予備成形が所望される融合不良欠陥の垂直方向SD2における最大寸法は、約20μm~40μmであり、すなわち、w1=20μmであり、w2=40μmである。a0=(w1+w2)/2=30μmとする。予備成形が所望される融合不良欠陥は、レーザ走査方向SD1に沿った長さ寸法も有し、100μm~120μm程度に予め設定することができる。
【0060】
(2)予備成形が所望される融合不良欠陥の位置、形状及び寸法に応じて、LMD成形品のモデル10を、3つの予備成形欠陥領域2と成形領域1とに分割し、成形領域1と予備成形欠陥領域2とを含むモデル10を得る。
【0061】
モデル10に対して分層スライス処理と経路計画処理を行う。成形領域1に対して、LMDプロセスの所定の成形プロセスパラメータを採用して成形を行う。予備成形欠陥領域2の境界と成形領域1の境界は通常のオーバーラップ率を採用し、緻密な冶金的結合を呈する。
【0062】
(3)予備成形欠陥領域2については、プリセット欠陥3の形状と寸法に応じて、予備成形欠陥領域2については、堆積層4内で
図6に示す経路計画を行う。
【0063】
予備成形欠陥領域2の走査ピッチと粉末送給率を制御し、同期粉末送給のLMDプロセスを採用して層ごとに堆積し、これによって融合不良欠陥を予備成形する。
【0064】
以下のように、成形プロセスパラメータを制御する。すなわち、以下の数式を満たす。
h(k)=a0+D
h(k-2)=1.07×h(k-1)
h(k+2)=1.07×h(k+1)
f(k-1)=1.16×f(k)
f(k+2)=1.16×f(k+1)
ここで、予備成形欠陥領域2については、D=0.8mmであり、h(k-1)=0.32mmであり、h(k+1)=0.32mmであり、f(k)=5g/minであり、f(k+1)=5g/minであり、t0=100μmであり、P0=600Wである。予備成形欠陥領域2全体に対して、走査ピッチは0.4mm以下に制御され、粉末送給率は8g/min以下に制御される。
【0065】
検査した結果、実際に得られた融合不良欠陥7の研磨状態の形態を
図7に示すとおりであり、融合不良欠陥7の垂直方向SD2における最大寸法は約25μmであり、予想通りである。また、融合不良欠陥7の長さ寸法は約105μmであり、予想通りである。
(第3実施例)
【0066】
(1)予備成形が所望される融合不良欠陥のLMD成形品内における位置、形状、数及び寸法を予め設定する。
【0067】
図8と
図9に示すように、堆積層に1つのプリセット欠陥3が設けられ、予備成形が所望される融合不良欠陥をシミュレートする。予備成形が所望される融合不良欠陥は、ほぼ不規則的な長尺状であり、寸法が大きい。ある堆積層4に対して、予備成形が所望される融合不良欠陥の垂直方向SD2における最大寸法は、約6mm~7mm、すなわち、w1=6mmであり、w2=7mmである。a0=(w1+w2)/2=6.5mmとする。予備成形が所望される融合不良欠陥は、レーザ成形高さ方向に沿った高さ寸法も有し、0.8mm~1mm程度に予め設定することができる。
【0068】
(2)予備成形が所望される融合不良欠陥の位置、形状及び寸法に応じて、LMD成形品のモデル10を、3つの予備成形欠陥領域2と成形領域1とに分割し、成形領域1と予備成形欠陥領域2とを含むモデル10を得る。
【0069】
モデル10に対して分層スライス処理と経路計画処理を行う。成形領域1に対して、LMDプロセスの所定の成形プロセスパラメータを採用して成形を行う。予備成形欠陥領域2の境界と成形領域1の境界は通常のオーバーラップ率を採用し、緻密な冶金的結合を呈する。
【0070】
(3)予備成形領域2に対して、堆積層4内においてレーザのエネルギ入力を低下させ、これによって融合不良欠陥を予備成形する。
【0071】
同期粉末送給のLMDプロセスを使用して、層ごとに堆積する。予備成形欠陥領域2のレーザのエネルギ入力が低いため、予備成形欠陥領域2で同期して送給される粉末は十分に溶融堆積できず、予備焼結状態となった粉末は予備成形欠陥領域2に充填され、この堆積層4を形成する予備焼結疎粉末は次の堆積層の成形を支持する。
【0072】
以下のように、成形プロセスパラメータを制御する。
P2=0.1×P1
ここで、P1=2800Wであり、t0=1mmであり、v0=1000mm/minであり、h0=0.25mmであり、D=5mmであり、v0は、予備成形欠陥領域2全体に対する走査速度であり、h0は、予備成形欠陥領域2全体に対する走査ピッチである。
【0073】
検査した結果、実際に得られた融合不良欠陥7の研磨状態の様子を
図10に示すとおりであり、融合不良欠陥7の垂直方向SD2における最大寸法は約6.3mmであり、予想通りである。また、融合不良欠陥7の高さ寸法は約0.93mmであり、同じく予想通りである。
【0074】
上記方法はLMDプロセスを制御することによって、予備成形が所望される融合不良欠陥の寸法、位置、形状又は数などに応じて、LMD成形品のモデルを予備成形欠陥領域と成形領域に分け、予備成形欠陥領域の成形プロセスパラメータを変更することによって、融合不良欠陥の予備成形を完成し、成形領域に使用される成形プロセスパラメータによって緻密な冶金的結合を呈し、ここでは、AMプロセスの特徴と組み合わせて、点から線まで、線から面まで、二次元から三次元までの過程となる。
【0075】
さらに、上述の方法はAM製品の組織及び性能に損傷を与えることなく、融合不良欠陥の発生位置を制御し、AMの正常な凝固過程で生じる融合不良欠陥を実際にシミュレートすることができる。
【0076】
また、上記方法は融合不良欠陥の寸法判定根拠を提供し、a0<Dのとき、予備成形欠陥領域の堆積層内の成形経路間の走査ピッチ及び成形経路に対応する粉末送給率を制御することによって、予備成形欠陥領域における融合不良欠陥の予備成形位置のオーバーラップ率の制御を実現する。一方、a0≧Dのとき、予備成形欠陥領域の堆積層内のレーザのエネルギ入力を低減することにより、融合不良欠陥の予備成形位置で同期して送給される粉末が十分に溶融堆積できず、予備焼結状態となった粉末がこの予備成形位置に充填され、この堆積層を形成する予備焼結疎粉末が次層の成形を支持する。
【0077】
上記方法は実際のLMDプロセスにおける融合不良欠陥の発生過程をシミュレートすることができ、融合不良欠陥を有するAM標準サンプルを予備成形し、それによってAM製品欠陥と無破壊検査信号の関係を正確に分析し、無破壊検査プロセスの最適化に有利であり、より高い欠陥検出精度を取得するだけでなく、良好な無破壊検査結果を得ることもできる。また、AM性能サンプル又は部品の典型的な構造又は重要な位置で融合不良欠陥を予備成形することによって、AM融合不良欠陥と組織及び性能との関係を効果的に分析評価することができ、さらに融合不良欠陥とAM部品の確実性との関係を分析評価し、部品の耐用年数を予測し、AM部品の応用に有力な理論支持を提供し、広い研究と応用見通しを有する。
【0078】
本発明は、好ましい実施例によって前記の通り開示されたが、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、種々の変更や修正をすることができ、例えば、異なる実施形態での変換方式は適当組み合わせることができる。そのため、本発明の技術的解決手段の内容から逸脱しない限り、本発明の技術趣旨に基づいて以上の実施例に対して行われたいかなる修正、等価物による変更及び修飾は、全て本発明の請求項に限定される範囲には含まれるべきである。