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  • 特許-波長変換部材及びそれを備える光源装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】波長変換部材及びそれを備える光源装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240112BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022578125
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045813
(87)【国際公開番号】W WO2022163175
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021011731
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】八谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】桜井 利之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 翔平
(72)【発明者】
【氏名】山内 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】坂 慎二
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159175(JP,A)
【文献】特表2011-530789(JP,A)
【文献】特開2019-053130(JP,A)
【文献】特開2015-144245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
F21V 7/30
F21V 9/30
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光によって蛍光を発する蛍光体であって、前記励起光が入射する入射面及び前記入射面と対向する裏面を有する蛍光体と、
前記蛍光体の前記裏面側に配置された反射膜であって、金属層、及び、前記金属層の中に分散したセラミック粒子を有する反射膜と、を備え、
前記セラミック粒子は結晶性であり、且つ、前記セラミック粒子の融点は前記金属層を構成する金属の融点よりも高く、
前記セラミック粒子が、前記蛍光体を構成するセラミック焼結体の粒子であることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
前記セラミック粒子が酸化物粒子であることを特徴とする請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記セラミック粒子が透光性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記セラミック粒子が励起光により発光する酸化物粒子であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
さらに、前記反射膜の、前記蛍光体と反対側に配置されて、前記蛍光体の熱を放熱する放熱部材を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
光源装置であって、
請求項5に記載の波長変換部材と、
前記蛍光体の前記入射面に前記励起光を照射する光源と、を備える光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材及びそれを備える光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蛍光体と、蛍光体の表面に焼き付けられた金属の反射膜であってガラス成分を含有する反射膜と、を備える光学部材が開示されている。銀(Ag)等の金属にガラス成分を添加して反射膜を形成することにより、反射膜の蛍光体に対する濡れ性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-534396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、反射膜を焼き付ける際に、金属の反射膜に含まれるガラス成分が軟化する温度まで加熱している。このとき、軟化したガラス成分の流動性が高くなるため、ガラス成分同士が凝集したり、ガラス成分が蛍光体との界面近くに多く分布したりすることがあった。また、ガラス成分が蛍光体との界面まで流動した場合には、蛍光体とガラスとが反応する恐れがあった。その結果、蛍光体成分が変質して、反射膜の反射率が低下することがあった。
【0005】
本発明の目的は、反射膜の密着強度が弱くなることを抑制し、反射膜の反射率の低下を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、励起光によって蛍光を発する蛍光体であって、前記励起光が入射する入射面及び前記入射面と対向する裏面を有する蛍光体と、
前記蛍光体の前記裏面側に配置された反射膜であって、金属層、及び、前記金属層の中に分散したセラミック粒子を有する反射膜と、を備え、
前記セラミック粒子は結晶性であり、且つ、前記セラミック粒子の融点は前記金属層を構成する金属の融点よりも高く、
前記セラミック粒子が、前記蛍光体を構成するセラミック焼結体の粒子であることを特徴とする波長変換部材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、反射膜は金属層と金属層の中に分散した結晶性のセラミック粒子とを有している。そして、セラミック粒子の融点は、金属層を構成する金属の融点よりも高い。そのため、金属層を構成する金属の融点よりも高い温度まで加熱した状態で金属層を蛍光体の表面に焼き付けることができる。これにより、反射膜の密着強度を強くすることができる。なお、仮に、金属層を構成する金属の融点よりも高い温度まで加熱した状態で金属層を蛍光体の表面に焼き付ける場合であっても、セラミック粒子は溶融せず流動しないため、セラミック粒子が蛍光体との界面に集まることがなく、溶融した金属の中に分散させることができる。セラミック粒子が溶融した金属の中に分散しているので、溶融した金属の粘性が上がり、膜形状を維持することができる。これにより、反射膜の反射率が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、光源装置100の概略図である。
図2図2は、波長変換部材1の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る光源装置100について説明する。なお、以下の説明においては、光源装置100が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向5(本開示の第1方向に対応)が定義される。図1に示されるように、本実施形態に係る光源装置100は、波長変換部材1と、光源2とを備える。光源2は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)であり、所定の波長領域の光L1を発する。波長変換部材1は、後述の蛍光体10を含んでいる。蛍光体10は光L1が入射されると、光L1とは別の波長の光を蛍光として放出する。波長変換部材1において、蛍光体10が発する蛍光は、蛍光体10での蛍光の発生に寄与しなかった光L1とともに、光L2として、所定の方向に放射される。本実施形態の光源装置100は、図1に示すように、反射型の光源装置であって、ヘッドランプ、照明、プロジェクタなどの各種光学機器において使用される。
【0010】
波長変換部材1は、蛍光体10と、反射膜20と、接合層30と、放熱部材40とを備える。図1に示されるように、蛍光体10、反射膜20、接合層30及び放熱部材40は、この順に上下方向に積層される。
【0011】
蛍光体10は板状のセラミック焼結体であり、蛍光性を有する結晶粒子を含む蛍光相と、透光性を有する結晶粒子を含む透光相とを備えている。以下の説明において、蛍光体10の上面(反射膜20と反対側の面)を第1面11と呼び、蛍光体10の下面(反射膜20と対向する面)を第2面12と呼ぶ。蛍光体10の蛍光相は、第1面11から入射する光L1を吸収し、異なる波長の光を放出する。言い換えると、蛍光体10の蛍光相は、第1面11から入射する光L1を励起光として、励起光と異なる波長の蛍光を発する。
【0012】
透光相の結晶粒子は、化学式Alで表される組成を有し、蛍光相の結晶粒子は、化学式A12:Ceで表される組成(いわゆる、ガーネット構造)を有することが好ましい。なお、「A12:Ce」とは、A12の中にCeが固溶し、元素Aの一部がCeに置換されていることを示す。
【0013】
化学式A12:Ce中の元素Aおよび元素Bは、それぞれ下記の元素群から選択される少なくとも1種類の元素から構成されている。
元素A:Sc、Y、Ceを除くランタノイド(ただし、元素AとしてさらにGdを含んでいてもよい)
元素B:Al(ただし、元素BとしてさらにGdを含んでいてもよい)
蛍光体10として、セラミック焼結体を使用することで、蛍光相と透光相との界面で光が散乱し、光の色の角度依存性を減らすことができる。これにより、色の均質性を向上することができる。
【0014】
図1に示されるように、蛍光体10の第2面12には、反射膜20が積層されている。反射膜20は蛍光体10を透過した光、及び蛍光体10で発生した光を反射する。反射膜20は、金属層21(例えば、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銀合金など)と、金属層21の内部に分散した複数の結晶性の酸化物粒子22とを備える。結晶性の酸化物粒子22は、本発明の結晶性のセラミック粒子の一例である。なお、結晶性の酸化物粒子22は、例えば、Al、YAG、TiO、Y、SiO、Cr、Nb、Taなどの結晶であり、ガラスなどの非晶質の酸化物粒子は含まれない。
【0015】
接合層30は、反射膜20と放熱部材40との間に配置され、金(Au)と錫(Sn)を含むAuSn半田から形成されている。接合層30は、蛍光体10と放熱部材40とを接合するとともに、蛍光体10で発生する熱を放熱部材40に伝える。
【0016】
放熱部材40は、例えば、銅、銅モリブデン合金、銅タングステン合金、アルミニウム、窒化アルミニウムなど、蛍光体10よりも高い熱伝導性を有する材料から形成されている平板状の部材である。放熱部材40は、接合層30を通して伝わる蛍光体10の熱を外部に放熱する。
【実施例
【0017】
以下、本発明について実施例を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0018】
[実施例1]
実施例1では、以下の手順で、波長変換部材1を作製した(図2参照)。まず、蛍光相と透光相が6:4となるように原料を秤量した(S11)。次に、秤量した原料をエタノールとともにボールミルに投入し、16時間粉砕混合を行った(S12)。なお、エタノールに代えて純水を用いることもできる。次に、粉砕混合を行うことによって得られたスラリーを乾燥し、造粒した後、バインダと、水とを加えた(S13)。次に、せん断力を加えながら混練を行うことで坏土を作製し、これを押出成形機でシート状に成形した(S14)。作製した成形体を大気雰囲気中において約1700℃で焼成した(S15)。得られた焼成体を厚さ250μmに切断し、表面に鏡面加工を施すことによって蛍光体10を作製した。
【0019】
銀(Ag)粉末(平均粒径約1~100μm)及びアルミナ(Al)粉末(平均粒径約0.1~10μm)に、アクリル系のバインダと溶剤を加えて混合した(S16)。アルミナ粉末と銀粉末とを混合する際には、アルミナ粉末は体積比で3~50%程度に調整することが好ましく、体積比で5~20%程度に調整することがさらに好ましい。本実施例においては、アルミナ粉末は、体積比で約5%となるように調整した。次に、得られたスラリーを蛍光体10の第2面12に塗布し、乾燥させた(S17)。その後、大気雰囲気中で銀の融点(961.8℃)以上の温度(例えば1000℃)に加熱した(S18)。これにより、蛍光体10の第2面12に反射膜20を成膜した。
【0020】
さらに、第2面12に反射膜20が成膜された蛍光体10と放熱部材40との間に、接合層30としてAuSn半田箔を挟んだ状態でリフロー炉に投入し、波長変換部材1と放熱部材40とを接合した(S19)。これにより、蛍光体10と放熱部材40の接合体である波長変換部材1が製造された。上述のように、平均粒径約0.1~10μmのアルミナ粉末を用いているので、製造された波長変換部材1の反射膜20に分散したアルミナ粒子の平均粒径は約0.1~10μmであった。
【0021】
実施例1では、反射膜20を成膜する際に、銀の融点以上の温度まで加熱した。なお、アルミナの融点は2072℃と非常に高温であり、反射膜20を成膜する際にアルミナの融点までは加熱していない。そのため、反射膜20を成膜する際に、銀粒子は溶融し、溶融した銀は流動するが、アルミナ粒子は結晶性のため流動しない。そのため、アルミナ粒子が蛍光体10との界面に集まることがなく、アルミナ粒子を溶融した銀の中に分散させることができた。これにより、アルミナ粒子が蛍光体10との界面に集まることによって生じる反射膜20の反射率の低下を抑制することができた。また、反射膜20の内部に分散するアルミナ粒子は透光性が高いため、アルミナ粒子によって光が吸収されることによる光量の減少を抑えることができた。
【0022】
実施例1では、反射膜20を成膜する際に、蛍光体10の表面に銀を高温で焼き付けている。そのため、蒸着で銀の反射膜20を成膜する場合と比べて、反射膜と蛍光体表面との密着強度を著しく高めることができた。また、蒸着で銀の反射膜20を成膜する場合と比べて、厚い反射膜を成膜することができる。一般に、蒸着で蛍光体10の表面に銀の反射膜20を成膜する場合には数百nmの厚さが限度である。これに対して、上述のように蛍光体10の表面に銀の反射膜20を焼き付ける場合には、蒸着で反射膜を形成する場合と比べて、反射膜20の厚さを厚くすることができる。実施例1においては、厚さ5~10μmの反射膜20を成膜した。また、上述のように蛍光体10の表面に銀の反射膜20を焼き付ける場合には、蒸着で反射膜を形成する場合と比べて、安価に反射膜20を成膜することができる。
【0023】
なお、上述のようにして反射膜20を成膜する際に、アルミナ粒子を混入せずに銀粒子だけを混入した場合には、銀の融点以上の温度まで加熱した際に溶融した銀が部分的に凝集することがある。このように、溶融した銀が部分的に凝集してしまうと、銀を蛍光体10の第2面12の全体に広げることが困難となる。これに対して、本実施例のように、溶融した銀の中にアルミナ粒子が分散している場合には、溶融したAgの粘性が上がり、溶融した銀が部分的に凝集することが阻害され、溶融した銀を蛍光体10の第2面12の全体に広げることができる。
【0024】
[実施例2]
実施例2では、反射膜20の内部に分散する酸化物粒子がアルミナ粒子ではなく、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の粒子である点を除いて、実施例1と同様の製法で波長変換部材1を製造した。以下の説明においては、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の粒子を単にYAG粒子と呼ぶ。
【0025】
実施例2においても、実施例1と同様に、反射膜20を成膜する際に、蛍光体10の表面に銀を焼き付けている。そのため、蒸着で銀の反射膜20を成膜する場合と比べて、反射膜と蛍光体表面との密着強度を著しく高めることができるとともに、5~100μmの厚い反射膜を成膜することができた。また、アルミナ粒子と同様に、YAG粒子が溶融した銀を引きつける核のような役割を果たすため、溶融した銀が部分的に凝集することが阻害され、溶融した銀を蛍光体10の第2面12の全体に広げることができる。
【0026】
なお、YAG粒子は青色光を吸収して黄色光を発光する蛍光体である。そのため、反射膜20の内部にYAG粒子を分散させることにより、反射膜20の内部において光量を増加させることができる。
【0027】
[実施例3]
実施例3においては、アルミナ粉末と銀粉末とを混合する際に、平均粒径約5~50μmのアルミナ粉末を用いたことと、厚さ10~150μmの反射膜20を成膜したこととを除いて、実施例1と同様にして波長変換部材1を製造した。平均粒径約5~50μmのアルミナ粉末を用いているので、製造された波長変換部材1の反射膜20に分散したアルミナ粒子の平均粒径は約5~50μmであった。実施例3の波長変換部材1も、実施例1の波長変換部材1と同様の効果を奏することが確認された。
【0028】
<実施形態の作用効果>
本実施形態に係る波長変換部材1は、励起光L1によって蛍光を発する蛍光体10と、蛍光体10の第2面12側に配置された反射膜20とを有している。これにより、例えば、図1に示すように、蛍光体10において光L2が放射される方向とは異なる方向に放射される光(例えば、下側に向かって進む光)は、反射膜20によって上側に反射されるため、波長変換部材1から放射される光量を増加することができる。さらに、反射膜20は銀などの金属層21と金属層21の中に分散した結晶性の酸化物粒子22とを有している。そして、酸化物粒子22の融点は、金属層21を構成する金属の融点よりも高い。そのため、金属層21を構成する金属の融点よりも高い温度まで加熱した状態で金属層を蛍光体10の表面に焼き付けることができる。これにより、反射膜20の蛍光体10に対する密着強度を強くすることができる。なお、仮に、金属層21を構成する金属の融点よりも高い温度まで加熱した状態で金属層21を蛍光体10の表面に焼き付ける場合であっても、酸化物粒子22は溶融せず流動しないため、酸化物粒子22が蛍光体10との界面に集まることがなく、溶融した金属の中に分散させることができる。酸化物粒子22が溶融した金属の中に分散しているので、溶融した金属の粘性が上がり、溶融した金属が部分的に凝集してしまうことを抑制することができる。これにより、反射膜20の反射率が低下することを抑制することができる。
【0029】
上記実施形態において、酸化物粒子22(例えば、アルミナ粒子又はYAG粒子)が透光性を有している。これにより、酸化物粒子22によって光が吸収されることによる光量の減少を抑えることができる。また、例えば透光性を有する酸化物粒子としてアルミナ粒子やYAG粒子の他に、TiO、Y、SiO、Cr、Nb、Ta、などがある。
【0030】
上記実施形態において、酸化物粒子22が励起光により発光する酸化物粒子(例えば、YAG粒子)である場合、酸化物粒子22が発光するので、反射膜20の内部において光量を増加させることができる。また、例えば発光する酸化物粒子としてYAG粒子の他に、LuAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)などがある。
【0031】
上記実施形態において、波長変換部材1は、蛍光体10の熱を外部に放出する放熱部材40を備える。これにより、蛍光体10において、励起光によって蛍光を発するときに発生する熱を効率的に外部に放出することができるため、蛍光体10の温度上昇による消光を抑制することができる。したがって、波長変換部材1から放射される光量の低減を抑制することができる。
【0032】
上記実施形態において、光源装置100は、蛍光体100に光L1を照射する光源2を備えている。上述のように反射膜20は、蒸着によって形成される反射膜と比べて膜厚を厚くすることができ、反射膜20の蛍光体10対する密着強度を上げることができる。これにより、反射膜20の熱的な耐性を向上させることができるため、蛍光体10に入射する光L1の輝度を上げることが可能となり、光源装置100の発光強度を向上することができる。
【0033】
<変更形態>
上述の実施形態及び上記実施例は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、蛍光体10及び反射膜20の材料は、上述の材料に限定されず、適宜の材料を用いることができる。接合層30は、金と錫から形成されるAuSn半田に限られず、他の材料から形成される半田であってもよいし、銀や銅(Cu)などの微細粉末を焼結したものであってもよい。放熱部材40は、上述した材料からなる単層構造の部材であってもよいし、同種または異なる材料から形成されている多層構造の部材であってもよい。また、放熱部材40の表面を金、ニッケルなどでメッキしてもよい。また、接合層30との密着性を高めるため、及び/又は、反射膜20の酸化防止のために、接合層30と反射膜20との間に、金属膜(例えば金(Au)の薄膜、ニッケル(Ni)の薄膜など)を成膜することができる。
【0034】
上記実施例においては、反射膜20の金属層21は銀により形成されていたが、本発明はこのような態様には限られない。金属層21として、銀以外の金属(例えば、銀合金等の合金、白金、アルミニウムなど)を用いることができる。
【0035】
上記実施例においては、反射膜20に含まれる結晶性の酸化物粒子として、アルミナ粒子及びYAG粒子が用いられていたが、本発明はこのような態様には限られない。反射膜20の金属層21の内部に分散される粒子は、必ずしもアルミナ粒子、YAG粒子でなくてもよく、反射膜20の金属層21を構成する金属の融点よりも高い融点を有する結晶性のセラミック粒子であればよい。結晶性のセラミック粒子として、例えば、アルミナ粒子及びYAG粒子以外の適宜の酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物の粒子、表面がセラミック化した金属粒子などを用いることができる。なお、上述のように、結晶性のセラミック粒子には、ガラスのような非晶質の酸化物の粒子は含まれない。
【0036】
酸化物粒子は、大気雰囲気中で安定している。そのため、結晶性のセラミック粒子として、上記実施例のように結晶性の酸化物粒子を用いる場合には、上述のS18の工程のように、焼成温度の調整が容易な大気雰囲気中で焼成することができる。
【0037】
結晶性のセラミック粒子として、蛍光体10を構成するセラミック焼結体の粒子を用いることができる。反射膜20の熱膨張係数と蛍光体10の熱膨張係数とに差がある場合には、波長変換部材1を使用する際の発熱に伴って、反射膜20と蛍光体10との剥離が生じる恐れがある。これに対して、結晶性のセラミック粒子として、蛍光体10を構成するセラミック焼結体の粒子を用いた場合には、そうでない場合と比べて、反射膜20の熱膨張係数と蛍光体10の熱膨張係数との差を小さくすることができ、反射膜20と蛍光体10との剥離を抑制することができる。また、セラミック粒子と蛍光体とが接触している場合には、これらの組成が変化する可能性がある。しかしながら、結晶性のセラミック粒子として、蛍光体10を構成するセラミック焼結体の粒子を用いた場合には、そのような組成の変化を抑制することができる。
【0038】
また、上記実施例においては、蛍光体10の第2面12に直接反射膜20が焼き付けられていたが、本開示はこのような態様には限られない。例えば、蛍光体10の第2面12と反射膜20との間に、密着膜や増反射膜が成膜されていてもよい。密着膜や増反射膜は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化クロムなどから形成することができる。なお、密着膜や増反射膜は、上述した材料からなる単層膜であってもよいし、同種または異なる材料からなる多層膜であってもよい。蛍光体10の第2面12に、このような増反射膜が成膜されている場合であっても、上述の実施例1、2と同様に、反射膜20の蛍光体10(及び増反射膜)に対する密着強度を強くすることができる。
【0039】
以上、発明の実施形態及びその変更形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが請求の範囲の記載からも明らかである。
【0040】
明細書、及び図面中において示した製造方法における各処理の実行順序は、特段に順序が明記されておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるので無い限り、任意の順序で実行しうる。便宜上、「まず、」「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。
【符号の説明】
【0041】
1 波長変換部材
10 蛍光体
20 反射膜
21 金属層
22 酸化物粒子
30 接合層
40 放熱部材
図1
図2