(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】テープカッター
(51)【国際特許分類】
B65H 35/07 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B65H35/07 H
(21)【出願番号】P 2023137638
(22)【出願日】2023-08-26
【審査請求日】2023-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511101139
【氏名又は名称】横田 安野
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 正判
(72)【発明者】
【氏名】横田 安野
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-047852(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0325409(US,A1)
【文献】特開平07-232850(JP,A)
【文献】登録実用新案第3184756(JP,U)
【文献】実開昭63-166564(JP,U)
【文献】登録実用新案第3203655(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープカッターであって、
粘着テープが環状に巻かれて成る環状テープ体を、着脱可能かつ回転可能に保持するテープ保持体を有する本体部と、
前記本体部に支持され、前記環状テープ体から引き出された前記粘着テープを切断するテープ切断刃と、
前記本体部に支持され、前記粘着テープの粘着面の粘着を受けることにより前記粘着テープを止めるテープ止め部材と、
前記テープ止め部材に当接及び離間するように、前記本体部に移動可能に支持され、かつ前記テープ止め部材を押圧するように、弾性復元力により付勢されている可動部材と、を備え、
前記テープ止め部材と前記可動部材とは、前記環状テープ体から引き出され前記テープ切断刃に至る前記粘着テープの経路を、中途において互いに挟む位置にあり、前記テープ止め部材は、前記粘着テープの前記粘着面の側に位置
し、
前記本体部に支持され、前記可動部材が前記テープ止め部材を押圧するように、前記可動部材を前記弾性復元力により付勢する付勢部材を更に備え、
前記可動部材は、前記本体部に回転可能に支持された回転体を有し、
前記本体部は、前記回転体の中心軸に沿った回転軸の両端部を案内する一対の案内孔を更に有し、それにより、前記可動部材を移動可能かつ回転可能に支持する、テープカッター。
【請求項2】
前記本体部は、二重に開閉可能であり、前記一対の案内孔を有する部分を開閉することにより、前記可動部材の着脱が可能であるとともに、前記一対の案内孔を有する部分を閉じたままで、前記環状テープ体を保持する部分を開閉することにより、前記可動部材を支持したままで、前記環状テープ体を交換することが可能である、請求項1に記載のテープカッター。
【請求項3】
前記本体部は、前記一対の案内孔を有する部分の閉じた状態を解除可能に保持する部材と、前記環状テープ体を保持する部分の閉じた状態を解除可能に保持する部材とを、更に有する、請求項2に記載のテープカッター。
【請求項4】
前記可動部材は、前記本体部に基端部が支持され、前記弾性復元力として自身の曲げ変形の弾性復元力により、前記テープ止め部材を押圧するように付勢される板状ないしシート状の弾性体を有する、請求項1に記載のテープカッター。
【請求項5】
前記テープ止め部材は、引き出された粘着テープの粘着面を受けるテープ受け面が、前記粘着テープの送り先において、角度をもって逃げている、請求項1から4のいずれかに記載のテープカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープカッターに関し、特に、切断したテープが巻き戻されることを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のテープカッターは、切断した粘着テープが巻き戻されて粘着テープ表面に貼りついてしまい、剥がすのに苦労するという欠点を有している(特許文献1の要約書参照)。特許文献1には、この問題を解決することを目指したテープカッターが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるテープカッターは、テープカッターのテープ装着筒に2本の切り込みを入れてクッション取付板を形成し、クッション取付板にクッションを装着して、テープ内周とクッションとの間に適度の接触抵抗を与えるように構成することにより、巻き戻しの問題を解消しようとするものとなっている(同文献の要約書参照)。このため、テープの巻き戻しを妨げる抵抗力と同等の抵抗力が、テープを引き出す時にも作用するので、テープの引出し作業に余分な力を要するという問題があった。
【0004】
特許文献2に開示されるテープカッターは、この問題を解決するものとして、本願と同一発明者により発明されたものである。このテープカッターは、粘着テープが環状に巻かれて成る環状テープ体の内周面を押圧することにより、環状テープ体の回転を妨げる押圧片を有し、粘着テープを引き出すときには、押圧片が環状テープ体の内周面から離れるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-140871号公報
【文献】特許第7076661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、環状テープ体を押圧することにより、その回転を妨げる方式に代えて、粘着テープが持つ粘着性を利用することにより、粘着テープの巻き戻しを妨げる仕組みを作ることができないか、と考えた。本発明は本願発明者のかかる問題意識に基づいてなされたもので、粘着テープが持つ粘着性を利用してテープの巻き戻しを妨げるテープカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、テープカッターであって、本体部と、テープ切断刃と、テープ止め部材と、可動部材と、を備えている。本体部は、粘着テープが環状に巻かれて成る環状テープ体を、着脱可能かつ回転可能に保持するテープ保持体を有する。テープ切断刃は、前記本体部に支持され、前記環状テープ体から引き出された前記粘着テープを切断する。テープ止め部材は、前記本体部に支持され、前記粘着テープの粘着面の粘着を受けることにより前記粘着テープを止める。可動部材は、前記テープ止め部材に当接及び離間するように、前記本体部に移動可能に支持され、かつ前記テープ止め部材を押圧するように、弾性復元力により付勢されている。前記テープ止め部材と前記可動部材とは、前記環状テープ体から引き出され前記テープ切断刃に至る前記粘着テープの経路を、中途において互いに挟む位置にあり、前記テープ止め部材は、前記粘着テープの前記粘着面の側に位置する。
【0008】
この構成によれば、粘着テープを使用するために、環状テープ体から粘着テープを引き出すときには、粘着テープに加えられる張力により、可動部材をテープ止め部材から離れるように押すことができる。それにより、粘着テープがテープ止め部材から離れるので、粘着テープの引き出しが円滑に行われる。粘着テープをテープ切断刃により切断した後には、引き出された粘着テープには、もはや張力が無いので、可動部材は弾性復元力により、粘着テープをテープ止め部材に押圧する。テープ止め部材は粘着テープの粘着面の側に位置するので、押圧された粘着テープは、テープ止め部材に粘着する。それにより、粘着テープの巻き戻りが防止される。
【0009】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様によるテープカッターであって、前記本体部に支持され、前記可動部材が前記テープ止め部材を押圧するように、前記可動部材を前記弾性復元力により付勢する付勢部材を更に備える。
【0010】
この構成によれば、付勢部材により、可動部材がテープ止め部材を押圧するように付勢される。
【0011】
本発明のうち第3の態様によるものは、第2の態様によるテープカッターであって、前記可動部材は、前記本体部に回転可能に支持された回転体を有する。
【0012】
この構成によれば、粘着テープを引き出すときに、引き出される粘着テープを押圧する回転体が回転する。このため、粘着テープの引き出しが、より円滑に行われる。
【0013】
本発明のうち第4の態様によるものは、第1の態様によるテープカッターであって、前記可動部材は、前記本体部に基端部が支持され、前記弾性復元力として自身の曲げ変形の弾性復元力により、前記テープ止め部材を押圧するように付勢される板状ないしシート状の弾性体を有する。
【0014】
この構成によれば、可動部材が簡素に構成される。
【0015】
本発明のうち第5の態様によるものは、第1から第4のいずれかの態様によるテープカッターであって、前記テープ止め部材は、引き出された粘着テープの粘着面を受けるテープ受け面が、前記粘着テープの送り先において、角度をもって逃げている。
【0016】
この構成によれば、テープ受け面に粘着した粘着テープが、テープ受け面から回り込んでテープ止め部材に巻き付くように粘着することにより、粘着テープの引き出しが妨げられることが回避される。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、粘着テープが持つ粘着性を利用してテープの巻き戻しを妨げるテープカッターが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態によるテープカッターの構成を、粘着テープを保持した状態で例示する斜視図である。
【
図2】
図1のテープカッターの試作品の写真である。
【
図3】
図2の試作品を展開し、粘着テープを外した状態の写真である。
【
図4】
図1のテープカッターについて、粘着テープを引き出すときの状態を例示する側面断面図である。
【
図5】
図1のテープカッターについて、粘着テープを引き出さないときの状態を例示する側面断面図である。
【
図6】
図1のテープカッターが有する可動部材の様々な形態を例示する斜視図である。
【
図7】本発明の別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する側面断面図である。
【
図8】
図7のテープカッターが有する可動部材の様々な形態を例示する斜視図である。
【
図9】本発明の更に別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する側面断面図である。
【
図10】本発明の更に別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態によるテープカッターの構成を、粘着テープを保持した状態で例示する斜視図である。
図2は、
図1に例示するテープカッターの試作品の写真である。試作品に装着されている粘着テープ5の幅は、約5cmである。
図1、
図2ともに、遠近法を幾分加味して表現されている。このテープカッター101は、一例として、工業用粘着テープを保持し切断する工業用テープカッターとして構成されている。テープカッター101は、本体部1及びテープ切断刃3を有している。
【0020】
本体部1は、粘着テープ5が環状に巻かれた環状テープ体7を、着脱可能かつ回転可能に保持するテープ保持体9を有している。図示例では、テープ保持体9は、筒状体を成しており、環状テープ体7の空洞に挿入されることにより、環状テープ体7を保持する。筒状のテープ保持体9は、一例として、環状テープ体7の内径よりも外径が小さく設定される。それにより、テープ保持体9は、環状テープ体7を遊びを持って保持する。テープ切断刃3は、本体部1に支持されており、図示例では本体部1に固着されている。テープ切断刃3は、環状テープ体7から引き出された粘着テープ5を切断するのに用いられる。一例として、本体部1は一体成型による合成樹脂製であり、テープ切断刃3は金属製である。
【0021】
本体部1には、粘着テープ5の粘着面の粘着を受けることにより粘着テープ5を止める一対のテープ止め部材23が支持されている。図示例では、テープ止め部材23は、本体部1と一体に成型されている。本体部1には更に、可動部材25が、テープ止め部材23に対して当接及び離間するように、本体部1に移動可能に支持されている。図示例では、可動部材25は円筒形の回転体である。可動部材25の中心軸に沿った回転軸27は、本体部1に形成されている案内孔31によって案内される。それにより、可動部材25は、移動可能かつ回転可能に本体部1に支持される。図示例では、案内孔31は長孔として形成されている。
【0022】
本体部1には更に、可動部材25がテープ止め部材23を押圧するように、可動部材25を付勢する付勢部材33が支持されている。図示例では、付勢部材33は板バネであり、曲げ変形の弾性復元力により、可動部材25を付勢する。付勢部材33を構成する板バネは、例えば金属製又は合成樹脂製である。テープ止め部材23と可動部材25とは、環状テープ体7から引き出されテープ切断刃3に至る粘着テープ5の経路を、中途において互いに挟む位置に配置される。テープ止め部材23は、粘着テープ5の粘着面の側に位置し、可動部材25は非粘着面の側に位置する。
【0023】
図示例では、本体部1は、テープ保持体9の他に、左右の側部壁体11、及びそれらを連結する頭部壁体12を有している。テープ保持体9は左右に分割されており、左側分割片15は左側の側部壁体11に連結され、右側分割片17は右側の側部壁体11に連結されている。テープ切断刃3は、先端部を残して頭部壁体12に埋め込まれることにより、頭部壁体12に支持されている。一対のテープ止め部材23は、左右の側部壁体11から互いに向き合うように突出している。粘着テープ5をテープ止め部材23と可動部材25との間に配置することを容易にするために、一対のテープ止め部材23の間に間隙が設けられる。可動部材25を案内する案内孔31は、左右の側部壁体11に設けられている。可動部材25を付勢する付勢部材33は、その基端部(図示略)が頭部壁体12に支持されている。
【0024】
図示例では、本体部1は開閉可能に構成されている。本体部1には、左右の側部壁体11と頭部壁体12との直線状の連結部に沿って、線状の溝13が形成されている。溝13によって肉厚が薄くなった連結部に沿って、左右の側部壁体11は頭部壁体12に対して折り曲げたり伸ばしたりすることが可能であり、それにより、本体部1を開閉することが可能となっている。左右の側部壁体11の各々には、側部壁体上部16と側部壁体下部18に分ける直線状の境界部に沿って、線状の溝14が形成されている。線状の溝14によって薄くなった境界部に沿って、左右の側部壁体11自体を開閉することが可能となっている。
【0025】
テープ保持体9の左右の分割片15,17は、側部壁体下部18に連結している。一対のテープ止め部材23も、側部壁体下部18に連結されている。可動部材25を案内する案内孔31は、側部壁体上部16に設けられている。このように、本体部1が二重に開閉可能に構成されるのは、溝13に沿って本体部1を開くことにより、可動部材25の装着・脱着を可能にするとともに、溝14のみに沿って本体部1を開くことによって、可動部材25を装着したままで、環状テープ体7を交換することを可能にするためである。
【0026】
図3は、
図2に例示した試作品を展開し、環状テープ体7を外した状態の写真である。図示例のように、本体部1(
図1参照)は合成樹脂の一体成型により製造可能である。図示例では、本体部1は溝13(
図1参照)に沿って開かれてはおらず、溝14(
図1参照)のみに沿って開かれている。すなわち、側部壁体上部16は頭部壁体12に対して折り曲げられたままであり、側部壁体下部18のみが側部壁体上部16に対して開かれている。従って、可動部材25は側部壁体上部16に装着されたままである。
【0027】
テープ保持体9を構成する左側分割片15と右側分割片17の互いに対向する軸方向端部には、薄肉部19,21が、それぞれ形成されている。一方の薄肉部19は、左側分割片15の軸方向端部において、内周面が後退するように形成されている。他方の薄肉部21は、右側分割片17の軸方向端部において、外周面が後退するように形成されている。薄肉部19の内周面と薄肉部21の外周面とが互いに擦り合う状態で、左側分割片15と右側分割片17とが互いに接続される。それにより、互いに擦り合う周面同士の摩擦力により、左側分割片15と右側分割片17との接続状態が維持される。摩擦力を超える力を手指により加えることにより、左側分割片15と右側分割片17とは、互いに引き離すことが可能である。
【0028】
このように、左側分割片15と右側分割片17は、互いに着脱可能である。薄肉部19の内周面と薄肉部21の外周面との互いに対応する部位に、凸部と凹部とを形成し、それらが係合することにより、左側分割片15と右側分割片17とが接続状態を維持するようにしても良い。左側分割片15と右側分割片17とが接続されたときには、筒状のテープ保持体9(
図1参照)が形成される。このとき、本体部1は、溝13と溝14との双方に沿って閉じた状態となり、
図1及び
図2に例示した形状を成す。
【0029】
図示例のように、側部壁体上部16が頭部壁体12に対して折り曲げられた状態を保持するために、左右の側部壁体上部16には、互いに相手側に向かうように突出した突出部材34,35が連結されている。図示例では、突出部材34,35は、本体部1と一体に成型されている。突出部材34,35の先端部には、一例として、テープ保持体9を構成する左側及び右側分割片15,17と同様に、薄肉部が形成されており(図示略)、これら薄肉部が摩擦力をもって互いに擦り合う状態で、突出部材34,35が互いに接続される。突出部材34,35は、図示例のように互いに接続されると、それ以上に互いに接近することはできず、また摩擦力のために、互いに自由に離れることもないので、左右の側部壁体上部16は、図示例のように、頭部壁体12に対して設定された角度で折り曲げられた姿勢を保持する。
【0030】
図4は、テープカッター101について、粘着テープ5を引き出すときの状態を例示する側面断面図である。図示例では、可動部材25を付勢する付勢部材33は板バネであり、その基端部が頭部壁体12に埋め込まれている。テープカッター101を使用するには、テープ保持体9に環状テープ体7を装着し、環状テープ体7から粘着テープ5を引き出す。引き出された粘着テープ5は、テープ止め部材23と可動部材25との間に通される。テープ止め部材23と可動部材25との間を通過する粘着テープ5の粘着面は、テープ止め部材23の方を向くこととなる。
【0031】
粘着テープ5を使用するために、粘着テープ5を図示例のようにテープ切断刃3に近づく方向に引き出すと、引き出される粘着テープ5に加えられる張力により、可動部材25は付勢部材33の付勢力に抗して押され、テープ止め部材23から離れる。引き出した粘着テープ5の先端部を、段ボール箱の表面などの対象物に貼着させ、本体部1を手に保持したまま、貼着させた部位から後退する方向に移動させることにより、粘着テープ5を環状テープ体7から連続して繰り出し、粘着テープ5を対象物に連続して貼着させることができる。この場合も、引き出された粘着テープ5は、張力により可動部材25をテープ止め部材23から引き離すこととなる。粘着テープ5に押されて可動部材25がテープ止め部材23から離れているときには、粘着テープ5の粘着面はテープ止め部材23から離れる。このため、粘着テープ5の引き出しは円滑に行われる。
【0032】
図5は、テープカッター101について、粘着テープ5を引き出さないときの状態を例示する側面断面図である。引き出された粘着テープ5をテープ切断刃3により切断すると、引き出された粘着テープ5は張力を失うので、可動部材25は付勢部材33の付勢力により、粘着テープ5をテープ止め部材23に押圧する。テープ止め部材23は粘着テープ5の粘着面の側に位置するので、押圧された粘着テープ5は、テープ止め部材23に粘着する。それにより、粘着テープ5の巻き戻りが防止される。粘着テープ5を再び引き出すときには、上記の通り、可動部材25がテープ止め部材23から離れる方向に移動するので、粘着テープ5はテープ止め部材23から離れ、粘着テープ5がテープ止め部材23に粘着した状態は解除される。以上の通り、テープカッター101においては、粘着テープ5の粘着力を利用することにより、引き出された粘着テープ5の巻き戻しが妨げられるとともに、巻き戻しを妨げる抵抗力ほどの抵抗を受けることなく、粘着テープ5を引き出すことができる。
【0033】
図6は、テープカッター101が有する可動部材25の様々な形態を例示する斜視図である。
図6(a)に例示される形態は、
図4及び
図5に例示される円筒形の回転体である。可動部材25は、本体部1に形成されている案内孔31に回転軸27が案内されることにより、本体部1に回転可能かつ移動可能に支持される。一方、
図6(b)及び
図6(c)は、可動部材25が回転可能ではない形態を例示している。
図6(c)に例示するように、可動部材25は非回転体の形状にすることも可能である。
図4(a),(b),(c)には、可動部材25を付勢する付勢部材33として、自然状態において既にある程度屈曲した板バネを、さらに弾性的に屈曲させて用いる例を示しているが、屈曲しない平坦な板バネを、弾性的に屈曲させるだけで使用しても良い。
【0034】
粘着テープ5を使用するために粘着テープ5を引き出すときには、粘着テープ5は可動部材25を押圧し、テープ止め部材23から離れる。粘着テープ5の粘着面はテープ止め部材23の方を向いており、非粘着面は可動部材25の方を向くので、粘着テープ5は可動部材25には粘着しない。従って、可動部材25は、本体部1に回転可能に支持されていなくても、粘着テープ5を引き出すときの可動部材25による抵抗力は、粘着テープ5がテープ止め部材23に粘着することによる、巻き戻しを妨げる抵抗力に比べて、遙かに小さいものとなる。このため、粘着テープ5の引き出しは、テープ止め部材23にも可動部材25にも妨げられることなく、円滑に行われる。
【0035】
図6(a)に例示した形態では、可動部材25は回転可能であるので、粘着テープ5を引き出すときには、可動部材25は粘着テープ5を送り出すように回転する。このため、粘着テープ5を引き出すときの可動部材25による抵抗力が、
図6(b)及び
図6(c)に例示する形態に比べて、一層小さいものとなる。また、可動部材25は回転可能であるので、粘着テープ5が両面ともに接着面である両面テープ型である場合においても、粘着テープ5を引き出すときに、可動部材25による抵抗が低く抑えられる。すなわち、
図6(a)の形態は、粘着テープ5として両面テープ型を使用することをも可能にする。
【0036】
図7は、本発明の別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する側面断面図である。このテープカッター102では、可動部材25は、本体部1に基端部が支持され、自身の曲げ変形の弾性復元力により、テープ止め部材23を押圧するように付勢される板状ないしシート状の弾性体として構成されている。図示例では、可動部材25は板バネであり、その基端部が、頭部壁体12の内側壁面に形成された支持孔37に嵌め込まれることにより、頭部壁体12に支持されている。可動部材25を構成する板バネは、例えば金属製又は合成樹脂製である。
【0037】
粘着テープ5を使用するために、粘着テープ5を図示例のようにテープ切断刃3に近づく方向に引き出すと、引き出される粘着テープ5に加えられる張力により、可動部材25はテープ止め部材23を押圧する自身の付勢力に抗して押され、テープ止め部材23から離れる(実線で表された可動部材25参照)。可動部材25の過度の動きを制限するために、本体部1には制限部材39が設けられている。制限部材39は、例えば、一対のテープ止め部材23と同様に、本体部1と一体に成型され、本体部1の左右の側部壁体上部16から互いに向き合うように突出している。制限部材39は、
図3に例示した突出部材34,35を兼ねるものであってもよい。粘着テープ5に押されて可動部材25がテープ止め部材23から離れているときには、粘着テープ5の粘着面はテープ止め部材23から離れる。このため、粘着テープ5の引き出しは円滑に行われる。
【0038】
引き出された粘着テープ5をテープ切断刃3により切断すると、引き出された粘着テープ5は張力を失うので、可動部材25は自身の弾性復元力により、粘着テープ5をテープ止め部材23に押圧する(点線で表された可動部材25参照)。テープ止め部材23は粘着テープ5の粘着面の側に位置するので、押圧された粘着テープ5は、テープ止め部材23に粘着する。それにより、粘着テープ5の巻き戻りが防止される。粘着テープ5を再び引き出すときには、上記の通り、可動部材25がテープ止め部材23から離れる方向に移動するので、粘着テープ5はテープ止め部材23から離れ、粘着テープ5がテープ止め部材23に粘着した状態は解除される。
【0039】
以上の通り、テープカッター102においても、粘着テープ5の粘着力を利用することにより、引き出された粘着テープ5の巻き戻しが妨げられるとともに、巻き戻しを妨げる抵抗力ほどの抵抗を受けることなく、粘着テープ5を引き出すことができる。また、テープカッター102では、可動部材25が簡素に構成される。
【0040】
図8は、テープカッター102に使用可能な可動部材25の様々な形態を例示する斜視図である。
図8(a)に例示される形態は、
図7に例示される板バネである。図示例の可動部材25は、基端部が、頭部壁体12に設けられた支持孔37にはめ込み可能なように屈曲している。可動部材25の先端部は、引き出された粘着テープ5に滑らかに沿うように、緩やかに湾曲している。基端部を支持孔37に押し込むと、屈曲する角度が開くように弾性的に変形することにより、基端部は支持孔37に安定して保持される。手指で可動部材25を挟み、ある程度の力をもって引くことにより、基端部を支持孔37から抜き出すことができる。このように、
図8(a)に例示される可動部材25は、取り替えが容易である。
【0041】
図8(b)に例示される形態では、手指を板バネの先端部により刺激することがないように、板バネの先端部に保護部材41が設けられている。図示例では、保護部材41は円柱状であり、例えば合成樹脂製である。保護部材41に板バネの先端部が埋め込まれ、例えば接着剤により接着される。板バネと保護部材41との双方が合成樹脂製であれば、双方を一体に成型してもよい。
図8(c)に例示される形態では、板バネの先端部を円筒状に湾曲させることにより、保護部材41が形成されている。また、
図8(c)に例示するように、板バネには、適宜に空洞を形成しても良い。
【0042】
図8(d)に例示するように、先端部が湾曲しない板バネを可動部材25として用いることも可能である。更に、
図8(e)に例示するように、基端が折り曲げられない平坦な板バネを、可動部材25として用いることも可能である。この形態の可動部材25は、例えば、
図4及び
図5に例示した付勢部材33と同様に、基端部が頭部壁体12に埋め込まれることにより、頭部壁体12に支持される。
【0043】
図9は、本発明の更に別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する側面断面図である。このテープカッター103では、可動部材25は
図8(b)に例示した形態であり、保護部材41を先端部に有している。
図7と同様に、粘着テープ5が引き出されるときの可動部材25の状態は、実線で表している。また、引き出された粘着テープ5をテープ切断刃3により切断した後の可動部材25の状態は、点線で表している。
【0044】
図10は、本発明の更に別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する側面断面図である。このテープカッター104は、テープ止め部材23の外形に関し、引き出された粘着テープ5の粘着面を受ける面であるテープ受け面43が、粘着テープ5の送り先において、角度をもって逃げている点において、
図7に例示したテープカッター102とは異なっている。図示例では、テープ受け面43が粘着テープ5を送る方向の端部において、角度を持って折れ曲がった逃げ面44につながっている。
【0045】
テープ受け面43に、このような逃げ角を設けることにより、テープ受け面43に粘着した粘着テープ5が、テープ受け面43から回り込んでテープ止め部材23に巻き付くように粘着し、更には引き出された粘着テープ5のテープ止め部材23より環状テープ体7に近い部分、あるいは環状テープ体7に粘着し、粘着テープ5の引き出しが妨げられるのを防ぐことができる。図示例では、逃げ面44は、テープ受け面43に対して鋭角を成すように屈曲している。逃げの角度は、鋭角でなく、直角あるいは鈍角でも良い。
【符号の説明】
【0046】
1 本体部、 3 テープ切断刃、 5 粘着テープ、 7 環状テープ体、 9 テープ保持体、 11 側部壁体、 12 頭部壁体、 13 溝、 14 溝、 15 左側分割片、 16 側部壁体上部、 17 右側分割片、 18 側部壁体下部、 19 薄肉部、21 薄肉部、 23 テープ止め部材、 25 可動部材、 27 回転軸、 31 案内孔、 33 付勢部材、 34,35 突出部材、 37 支持孔、 39 制限部材、 41 保護部材、 43 テープ受け面、 44 逃げ面、 101,102,103,104 テープカッター。
【要約】
【課題】 粘着テープが持つ粘着性を利用してテープの巻き戻しを妨げる。
【解決手段】 本開示のテープカッターは、本体部と、テープ切断刃と、テープ止め部材と、可動部材と、を有する。本体部は、粘着テープが環状に巻かれて成る環状テープ体を、着脱可能かつ回転可能に保持するテープ保持体を有する。テープ切断刃は、本体部に支持され、環状テープ体から引き出された粘着テープを切断する。テープ止め部材は、本体部に支持され、粘着テープの粘着面の粘着を受けることにより粘着テープを止める。可動部材は、テープ止め部材に当接及び離間するように、本体部に移動可能に支持され、かつテープ止め部材を押圧するように、弾性復元力により付勢されている。テープ止め部材と可動部材とは、環状テープ体から引き出されテープ切断刃に至る粘着テープの経路を、中途において互いに挟む位置にあり、テープ止め部材は、粘着テープの粘着面の側に位置する。
【選択図】
図7