(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】基地局、MEC装置、無線電力伝送システム及び基地局アンテナの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20240112BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240112BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20240112BHJP
H04W 52/00 20090101ALN20240112BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/40
H02J50/90
H04W52/00
(21)【出願番号】P 2023160730
(22)【出願日】2023-09-25
【審査請求日】2023-10-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠太
(72)【発明者】
【氏名】平川 昂
(72)【発明者】
【氏名】石井 あかね
(72)【発明者】
【氏名】坂井 英治
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 工起
(72)【発明者】
【氏名】村里 寛
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/085054(WO,A1)
【文献】特開2021-180482(JP,A)
【文献】国際公開第2021/192044(WO,A1)
【文献】特開2021-158839(JP,A)
【文献】OPPO,Discussion on ambient power-enabled IoT[online],3GPP TSG RAN #95e RP-220182,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_95e/Docs/RP-220182.zip>,2022年04月13日
【文献】Naoki SHINOHARA,“History and Innovation of Wireless Power Transfer via Microwaves”,IEEE Journal of Microwaves,2021年01月,Vol. 1, No. 1,p.218-228,DOI: 10.1109/JMW.2020.3030896
【文献】Sanae El HASSANI et al.,“Overview on 5G Radio Frequency Energy Harvesting”,Advances in Science, Technology and Engineering Systems Journal,2019年,Vol. 4, No. 4,p.328-346,DOI: 10.25046/aj040442
【文献】Jing JIANG et al.,“Blockchain Technology Enabled Communication Network for 5G MEC Architecture of Smart Grids”,2022 IEEE 8th International Conference on Computer and Communications (ICCC),2022年12月09日,DOI: 10.1109/ICCC56324.2022.10065994
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 - 50/90
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送システムであって、
基地局アンテナを介して複数の対象装置のそれぞれと通信可能な基地局と、
前記基地局に近い場所に配置された、移動通信網のコアネットワーク内のノードに接続された、又は、前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続された、MEC装置と、を備え、
前記MEC装置は、
前記複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得し、
前記対象関連情報に基づいて、前記基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成し、
前記給電制御情報を前記基地局に送信し、
前記基地局は、
前記MEC装置から前記給電制御情報を受信し、
前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成し、前記ビームを介して前記複数の対象装置に無線電力伝送用の送信信号を送信し、
前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含み、
前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含み、
前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含み、
前記MEC装置は、
前記対象関連情報に基づいて、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対してウェイトを付与し、
前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、前記複数の対象装置それぞれに又は前記複数の利用者それぞれに付与されたウェイトの情報とに基づいて、前記優先度ヒートマップを作成する、
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項2】
請求項1の無線電力伝送システムにおいて、
前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対して発行された給電サービス利用のための複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報と、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、を含み、
前記MEC装置は、前記複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報とに基づいて、前記ウェイトを付与する、
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項3】
請求項2の無線電力伝送システムにおいて、
前記基地局のセルに在圏する複数の対象装置のそれぞれについて、前記対象装置又はその利用者に対して発行されたトークンの数をNtとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のトークンの総数をN0とし、前記対象装置のバッテリの残量をBrとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のバッテリの総残量をB0とし、前記トークンに対する係数をC1とし、前記バッテリの残量に対する係数をC2とし、前記ウェイトの調整値をαとしたとき、前記ウェイトWは次式(1)で計算される、ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【数1】
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの無線電力伝送システムにおいて、
前記MEC装置を複数備え、
前記複数のMEC装置はそれぞれ、前記MEC装置に対応する前記基地局から前記複数の対象装置への無線給電の利用履歴情報を、ブロックチェーンネットワークシステムに構築されている分散台帳又は移動通信網のコアネットワーク若しくは外部のネットワークに設けられているサーバに転送して記録する、ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項5】
請求項4の無線電力伝送システムにおいて、
前記基地局及び前記MEC装置を複数組備え、
前記複数のMEC装置が接続されたブロックチェーンネットワークシステムが構築され、
前記複数のMEC装置の計算機領域を利用して前記ブロックチェーンネットワークシステムに分散台帳が構築されている、
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項6】
無線電力伝送システムであって、
基地局アンテナを介して複数の対象装置のそれぞれと通信可能な基地局と、
前記基地局に近い場所に配置された、移動通信網のコアネットワーク内のノードに接続された、又は、前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続された、MEC装置と、を備え、
前記MEC装置は、
前記複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得し、
前記対象関連情報に基づいて、前記基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成し、
前記給電制御情報を前記基地局に送信し、
前記基地局は、
前記MEC装置から前記給電制御情報を受信し、
前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成し、前記ビームを介して前記複数の対象装置に無線電力伝送用の送信信号を送信し、
前記MEC装置を複数備え、
前記複数のMEC装置はそれぞれ、前記MEC装置に対応する前記基地局から前記複数の対象装置への無線給電の利用履歴情報を、ブロックチェーンネットワークシステムに構築されている分散台帳又は移動通信網のコアネットワーク若しくは外部のネットワークに設けられているサーバに転送して記録する、
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項7】
請求項
6の無線電力伝送システムにおいて、
前記基地局及び前記MEC装置を複数組備え、
前記複数のMEC装置が接続されたブロックチェーンネットワークシステムが構築され、
前記複数のMEC装置の計算機領域を利用して前記ブロックチェーンネットワークシステムに分散台帳が構築されている、
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項8】
基地局に近い場所に配置された、移動通信網のコアネットワーク内のノードに接続された、又は、前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続された、MEC装置であって、
複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得する手段と、
前記対象関連情報に基づいて、基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成する手段と、
前記給電制御情報を前記基地局に送信する手段と、
前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含み、
前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含み、
前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含み、
当該MEC装置は、
前記対象関連情報に基づいて、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対してウェイトを付与する手段と、
前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、前記複数の対象装置それぞれに又は前記複数の利用者それぞれに付与されたウェイトの情報とに基づいて、前記優先度ヒートマップを作成する手段と、を備える、
ことを特徴とするMEC装置。
【請求項9】
請求項
8のMEC装置において、
前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対して発行された給電サービス利用のための複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報と、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、を含み、
当該MEC装置は、前記複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報とに基づいて、前記ウェイトを付与する手段を、備える、
ことを特徴とするMEC装置。
【請求項10】
請求項
9のMEC装置において、
前記基地局のセルに在圏する複数の対象装置のそれぞれについて、前記対象装置又はその利用者に対して発行されたトークンの数をNtとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のトークンの総数をN0とし、前記対象装置のバッテリの残量をBrとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のバッテリの総残量をB0とし、前記トークンに対する係数をC1とし、前記バッテリの残量に対する係数をC2とし、前記ウェイトの調整値をαとしたとき、前記ウェイトWは次式(2)で計算される、ことを特徴とするMEC装置。
【数2】
【請求項11】
請求項
8乃至
10のいずれかのMEC装置において、
当該MEC装置に対応する前記基地局から前記複数の対象装置への無線給電の利用履歴情報を、ブロックチェーンネットワークシステムに構築されている分散台帳又は移動通信網のコアネットワーク若しくは外部のネットワークに設けられているサーバに転送して記録する手段を備える、ことを特徴とするMEC装置。
【請求項12】
請求項11のMEC装置において、
当該MEC装置の計算機領域は、複数のMEC装置が接続されたブロックチェーンネットワークシステムにおける分散台帳の構築に利用されている、
ことを特徴とするMEC装置。
【請求項13】
基地局に近い場所に配置された、移動通信網のコアネットワーク内のノードに接続された、又は、前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続された、MEC装置であって、
複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得する手段と、
前記対象関連情報に基づいて、基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成する手段と、
前記給電制御情報を前記基地局に送信する手段と、
前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含み、
前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含み、
当該MEC装置に対応する前記基地局から前記複数の対象装置への無線給電の利用履歴情報を、ブロックチェーンネットワークシステムに構築されている分散台帳又は移動通信網のコアネットワーク若しくは外部のネットワークに設けられているサーバに転送して記録する手段を備える、
ことを特徴とするMEC装置。
【請求項14】
請求項
13のMEC装置において、
当該MEC装置の計算機領域は、複数のMEC装置が接続されたブロックチェーンネットワークシステムにおける分散台帳の構築に利用されている、
ことを特徴とするMEC装置。
【請求項15】
基地局アンテナを介して複数の対象装置のそれぞれと通信可能な基地局であって、
当該基地局に、移動通信網のコアネットワーク内のノードに又は前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続されたMEC装置から、前記基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を受信する手段と、
前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成し、前記ビームを介して前記複数の対象装置に無線電力伝送用の送信信号を送信する手段と、を備え、
前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含み、
前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含む、
ことを特徴とする基地局。
【請求項16】
基地局アンテナの制御方法であって、
複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得することと、
前記対象関連情報に基づいて、前記基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成することと、
前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成することと、を含み、
前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含み、
前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含み、
前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含み、
当該制御方法は、
前記対象関連情報に基づいて、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対してウェイトを付与することと、
前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、前記複数の対象装置それぞれに又は前記複数の利用者それぞれに付与されたウェイトの情報とに基づいて、前記優先度ヒートマップを作成することと、を含む、
ことを特徴とする基地局アンテナの制御方法。
【請求項17】
請求項
16の基地局アンテナの制御方法において、
前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対して発行された給電サービス利用のための複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報と、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、を含み、
当該制御方法は、前記複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報とに基づいて、前記ウェイトを付与すること、を含む、
ことを特徴とする基地局アンテナの制御方法。
【請求項18】
請求項
17の基地局アンテナの制御方法において、
基地局のセルに在圏する複数の対象装置のそれぞれについて、前記対象装置又はその利用者に対して発行されたトークンの数をNtとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のトークンの総数をN0とし、前記対象装置のバッテリの残量をBrとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のバッテリの総残量をB0とし、前記トークンに対する係数をC1とし、前記バッテリの残量に対する係数をC2とし、前記ウェイトの調整値をαとしたとき、前記ウェイトWは次式(3)で計算される、ことを特徴とする基地局アンテナの制御方法。
【数3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電可能な基地局、MEC装置、無線電力伝送システム及び基地局アンテナの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線フレームに設定された複数の無線リソースの少なくとも一部を用いて基地局(通信中継装置)と端末装置(対象装置)との間で通信を行う通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、非特許文献1には、移動通信システムの基地局であるgNBとIoTデバイス(対象装置)であるタグとの間で無線通信を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】3GPP TSG RAN Meeting #98-e RP-222918,E-meeting,December 12th-16th,2022,"Views on Ambient IoT"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の通信システムの基地局に接続して通信する対象装置として、内蔵電池から供給される電力を主に利用する端末装置がある。この端末装置では、内蔵電池の残量が少なくなったときに内蔵電池を充電する煩雑な作業が必要である。また、内蔵電池ではなく有線接続の電源ラインから供給される電力を利用する端末装置は、そのような電源ラインを利用可能な場所での使用に制限される。このように基地局に接続して通信を行う様々な端末装置への給電をまかなうことができるような給電インフラが未整備である。
【0006】
第5世代及びその後の次世代の移動通信システムでは、基地局に接続して通信する対象装置(例えば、ユーザ装置、センサ、IoTデバイス、タグ等)が急増してくるのが予想され、膨大なトラフィックを捌く通信インフラの整備が進められている。しかしながら、上記通信を行う膨大な数の対象装置への給電をまかなうことができる給電インフラは未整備のままである。
【0007】
また、多数の対象装置へ給電する給電インフラでは、複数の対象装置のそれぞれに対して効果的に給電すること、各対象装置への給電をリアルタイムに低遅延で行うことができる給電サービスを実現すること、各対象装置に対して自律的に給電可能な複数の基地局を分散配置した自立分散型の基地局を提供すること等が課題になっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る無線電力伝送システムは、基地局アンテナを介して複数の対象装置のそれぞれと通信可能な基地局と、前記基地局に、移動通信網のコアネットワーク内のノードに又は前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続されたMEC装置と、を備える。前記MEC装置は、前記複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得し、前記対象関連情報に基づいて、前記基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成し、前記給電制御情報を前記基地局に送信する。前記基地局は、前記MEC装置から前記給電制御情報を受信し、前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成し、前記ビームを介して前記複数の対象装置に無線電力伝送用の送信信号を送信する。
【0009】
前記無線電力伝送システムにおいて、前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含んでもよく、前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含んでもよい。
【0010】
前記無線電力伝送システムにおいて、前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含んでもよく、前記MEC装置は、前記対象関連情報に基づいて、前記複数の対象装置のそれぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対してウェイトを付与し、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、前記複数の対象装置それぞれ又は前記複数の利用者それぞれに付与されたウェイトの情報とに基づいて、前記優先度ヒートマップを作成してもよい。
【0011】
前記無線電力伝送システムにおいて、前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対して発行された給電サービス利用のための複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報と、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、を含んでもよく、前記MEC装置は、前記複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報とに基づいて、前記ウェイトを付与してもよい。
【0012】
前記無線電力伝送システムにおいて、前記基地局のセルに在圏する複数の対象装置のそれぞれについて、前記対象装置又はその利用者に対して発行されたトークンの数をNtとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のトークンの総数をN0とし、前記対象装置のバッテリの残量をBrとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のバッテリの総残量をB0とし、前記トークンに対する係数をC1とし、前記バッテリの残量に対する係数をC2とし、前記ウェイトの調整値をαとしたとき、前記ウェイトWは次式(1)で計算されてもよい。
【数1】
【0013】
前記無線電力伝送システムにおいて、前記複数のMEC装置はそれぞれ、前記MEC装置に対応する前記基地局から前記複数の対象装置への無線給電の利用履歴情報を、ブロックチェーンネットワークシステムに構築されている分散台帳又は移動通信網のコアネットワーク若しくは外部のネットワークに設けられているサーバに転送して記録してもよい。
【0014】
前記無線電力伝送システムにおいて、前記基地局及び前記MEC装置を複数組備えてもよく、前記複数のMEC装置が接続されたブロックチェーンネットワークシステムを備え、前記複数のMEC装置の計算機領域を利用して前記ブロックチェーンネットワークシステムに分散台帳が構築されてもよい。
【0015】
本発明の他の態様に係るMEC装置は、前記基地局に、移動通信網のコアネットワーク内のノードに又は前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続されたMEC装置である。このMEC装置は、前記複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得する手段と、前記対象関連情報に基づいて、基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成する手段と、前記給電制御情報を前記基地局に送信する手段と、を備える。
【0016】
前記MEC装置において、前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含んでもよく、前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含んでもよい。
【0017】
前記MEC装置において、前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含んでもよく、当該MEC装置は、前記対象関連情報に基づいて、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対してウェイトを付与する手段と、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、前記複数の対象装置それぞれに又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに付与されたウェイトの情報とに基づいて、前記優先度ヒートマップを作成する手段と、を備えてもよい。
【0018】
前記MEC装置において、前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対して発行された給電サービス利用のための複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報と、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、を含んでもよく、当該MEC装置は、前記複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報とに基づいて、前記ウェイトを付与する手段を、備えてもよい。
【0019】
前記MEC装置において、前記基地局のセルに在圏する複数の対象装置のそれぞれについて、前記対象装置又はその利用者に対して発行されたトークンの数をNtとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のトークンの総数をN0とし、前記対象装置のバッテリの残量をBrとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のバッテリの総残量をB0とし、前記トークンに対する係数をC1とし、前記バッテリの残量に対する係数をC2とし、前記ウェイトの調整値をαとしたとき、前記ウェイトWは次式(2)で計算されてもよい。
【数2】
【0020】
前記MEC装置において、当該MEC装置に対応する前記基地局から前記複数の対象装置への無線給電の利用履歴情報を、ブロックチェーンネットワークシステムに構築されている分散台帳又は移動通信網のコアネットワーク若しくは外部のネットワークに設けられているサーバに転送して記録する手段を備えてもよい。
【0021】
前記MEC装置において、当該MEC装置の計算機領域は、複数のMEC装置が接続されたブロックチェーンネットワークシステムにおける分散台帳の構築に利用されてもよい。
【0022】
本発明の更に他の態様に係る基地局は、基地局アンテナを介して複数の対象装置のそれぞれと通信可能な基地局である。この基地局は、当該基地局に、移動通信網のコアネットワーク内のノードに又は前記コアネットワークと前記基地局との間の経路のノードに接続されたMEC装置から、前記基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を受信する手段と、前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成し、前記ビームを介して前記複数の対象装置に無線電力伝送用の送信信号を送信する手段と、を備える。
【0023】
前記基地局において、前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含んでもよい。また、前記給電制御情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含む対象関連情報に基づいて、前記MEC装置が生成したものであってもよい。
【0024】
前記基地局において、前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含んでもよい。
【0025】
本発明の更に他の態様に係る基地局アンテナの制御方法は、基地局を介して、複数の対象装置のそれぞれについて前記対象装置に関する情報及び前記対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得することと、前記対象関連情報に基づいて、前記基地局アンテナでビームを形成して前記複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成することと、前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成することと、を含む。
【0026】
前記基地局アンテナの制御方法において、前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれのステータス情報及び前記複数の対象装置の利用者それぞれのステータス情報の少なくとも一方のステータス情報を含んでもよく、前記給電制御情報は、前記ビームの方向を指示するビーム方向指示情報を含んでもよい。
【0027】
前記基地局アンテナの制御方法において、前記ビーム方向指示情報は、前記複数の対象装置の位置と前記複数の対象装置に対する無線給電の優先度とを識別可能な優先度ヒートマップを含んでもよく、当該制御方法は、前記対象関連情報に基づいて、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対してウェイトを付与することと、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、前記複数の対象装置それぞれに又は前記複数の利用者それぞれに付与されたウェイトの情報とに基づいて、前記優先度ヒートマップを作成することと、を含んでもよい。
【0028】
前記基地局アンテナの制御方法において、前記対象関連情報は、前記複数の対象装置それぞれに対して又は前記複数の対象装置の利用者それぞれに対して発行された給電サービス利用のための複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報と、前記複数の対象装置それぞれの位置情報と、を含んでもよく、当該制御方法は、前記複数のトークンの情報と、前記複数の対象装置それぞれのバッテリの残量の情報とに基づいて、前記ウェイトを付与すること、を含んでもよい。
【0029】
前記基地局アンテナの制御方法において、基地局のセルに在圏する複数の対象装置のそれぞれについて、前記対象装置又はその利用者に対して発行されたトークンの数をNtとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のトークンの総数をN0とし、前記対象装置のバッテリの残量をBrとし、前記セルに在圏する複数の対象装置のバッテリの総残量をB0とし、前記トークンに対する係数をC1とし、前記バッテリの残量に対する係数をC2とし、前記ウェイトの調整値をαとしたとき、前記ウェイトWは次式(3)で計算されてもよい。
【数3】
【0030】
前記給電制御情報(ビーム方向指示情報)の生成、前記ウェイトの付与及び前記優先度ヒートマップの作成に用いるプログラムは、機械学習によって作成された学習済モデルであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、複数の対象装置のそれぞれに対して効果的に給電することができる。
本発明の他の態様によれば、複数の対象装置への給電をリアルタイムに低遅延で行うことができる給電サービスを実現することができる。
本発明の更に他の態様によれば、複数の対象装置に対して自律的に給電可能な複数の基地局を分散配置した自立分散型の基地局を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施形態に係るシステムの全体の概略構成の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るシステムの基地局アンテナ制御において送受信される各種情報の一例を示す説明図である。
【
図3】実施形態に係るシステムにおける基地局アンテナの制御手順の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るシステムにおける基地局アンテナの各アンテナ素子に供給される信号の振幅及び位相の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るシステムのウェイト付与及び優先度ヒートマップ作成の方法におけるブロックチェーンネットワーク(BCN)システムとMEC装置と対象装置(IoT端末)との間で送受信される情報の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るシステムにおけるブロックチェーンネットワーク(BCN)システム、MEC装置及び基地局を介した対象装置(IoT端末)への無線電力伝送の一例を示すシーケンス図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るシステムにおけるブロックチェーンネットワーク(BCN)システム及び分散台帳の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、ブロックチェーンネット(BCN)ワークシステム又はサーバと、対象装置(例えばIoT端末、IoTタグ)と通信可能な移動通信網の基地局と、MEC装置とが連携して、複数の対象装置(例えばIoT端末)のそれぞれに対して効果的に給電することができる無線電力伝送システムである。また、本実施形態のシステムでは、複数の対象装置のそれぞれに無線電力伝送用のビーム(以下「WPTビーム」ともいう。)を向けて基地局から各対象装置に効果的に給電することができる。また、本実施形態のシステムでは、MEC装置で自律分散制御することにより、複数の対象装置への給電をリアルタイムに低遅延で行うことができる給電サービスを実現することができる。更に、本実施形態のシステムでは、MEC装置で自律分散制御することにより、複数の対象装置に対して自律的に給電可能な複数の基地局を分散配置した自立分散型の基地局を提供することができる。
【0034】
図1は、本実施形態に係るシステムの全体の概略構成の一例を示す説明図である。
図2は、同システムの基地局アンテナ制御において送受信される各種情報の一例を示す説明図である。本実施形態のシステムは、通信エリア(セル)10Aを形成するセルラー方式の基地局10と、MEC装置20と、を有する。本実施形態に係るシステムは、通信エリア10Aに在圏しているときに基地局10に接続して基地局10と無線通信可能な対象装置30を更に有してもよい。
【0035】
なお、
図1、
図2及び後述の図の例におけるシステムでは、基地局10の通信エリア(セル)10Aに6台の対象装置30(1)~30(3)、30(n)~30(n+2)が在圏しているが、対象装置30の数は1台~5台であってもよいし、7台以上であってもよい。複数の対象装置を互いに区別する場合は、対象装置30(1)~30(3)のように識別番号を付し、単数の対象装置について説明する場合又は複数の対象装置に共通する事項について説明する場合は、識別番号を付さないで説明する。
【0036】
基地局10は、例えば、現在の移動通信で運用されている第5世代などの移動通信システムの標準規格又はそれ以降の世代(例えばB5G(Beyond 5G)又は6G)の移動通信システムの標準規格に準拠した基地局(例えば、eNodeB、gNodeB)である。基地局10は、対象装置30との間でDL(下りリンク)及びUL(上りリンク)の通信を行う機能のほか、対象装置30に対するWPTの無線送電装置としての機能も有するので、以下の実施形態の説明においては、「WPT・モバイル通信基地局」ともいう。基地局10と対象装置30との間の通信及び基地局10から対象装置30へのWPTの無線媒体は、例えば、マイクロ波又はミリ波の電波である。
【0037】
基地局10は、無線電力伝送(WPT)に用いることができる基地局アンテナとしてのアレーアンテナ(以下「WPTアンテナ」ともいう。)110を備える。基地局アンテナ(アレーアンテナ)110は、2次元配置又は3次元配置された複数のアンテナ素子を有する大開口(例えば数10cm×数10cmのサイズ)のアンテナ(レクテナアレイ)である。無線電力伝送(WPT)を行っているとき、基地局アンテナ(アレーアンテナ)110の複数のアンテナ素子それぞれの単体での送信電力は、例えば、数100μW~数10mWである。
【0038】
基地局アンテナ(アレーアンテナ)110は、マイクロ波又はミリ波の電波を介して複数の対象装置30との間でmassive MIMO(mMIMO)伝送方式の通信を行うアンテナ装置として兼用してもよい。
【0039】
基地局10の通信エリア(セル)10Aの全部又は一部は、基地局10から対象装置30に向けてビームフォーミングで形成したフォーカス・ビーム10Bを介して給電可能な無線電力伝送エリア(以下「WPTエリア」という。)になっている。基地局10から10m程度離れた位置にある対象装置30に向けて送信された給電用の電波がミリ波の場合は、WPTエリアにおける電界は、遠方界ではなく近傍界になっている。
【0040】
基地局10は、対象装置30との間のUL通信により、対象装置30に関する対象関連情報を対象装置30から受信してMEC装置20に転送する。
図1及び
図2に示すように通信エリア(セル)10Aに複数の対象装置30(1)~30(3)、30(n)~30(n+2)が在圏する場合は、基地局10は、複数の対象装置30(1)~30(3)、30(n)~30(n+2)それぞれとの間のUL通信により、各対象装置30に関する対象関連情報を対象装置30から受信してMEC装置20に転送する。
【0041】
前記対象関連情報は、例えば、対象装置30のステータス情報及び対象装置30を所有する利用者のステータス情報の少なくとも一方を含む情報(以下、「端末/ユーザステータス情報」ともいう。)である。対象装置30のステータス情報は、対象装置30の位置情報、バッテリ残量の情報、対象装置30に対して発行されているトークンの数などの情報である。利用者のステータス情報は、当該利用者に対して発行されているトークンの数などの情報である。
【0042】
前記トークンは、対象装置30に対して又は対象装置30の利用者それぞれに対して発行されたWPT給電サービス利用のためのトークンである。前記トークンは、WPT給電サービス利用に対する利用料金の課金要素(課金対象)として利用することができる。前記トークンは、ブロックチェーン上の代替不可能なデジタルデータであるNFT(非代替性トークン)であってもよい。
【0043】
基地局10は、基地局10の周辺に位置する対象装置30との間で近距離通信により信号を送受信し、対象装置30の方向及び対象装置30と基地局10との間の距離を測定して対象装置30の位置を特定することにより、対象装置30の位置情報を取得してもよい。近距離通信の無線通信方式は、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信方式、又は、無線媒体としてUWB(超広帯域)無線の電波を用いる通信方式である。UWBは、広帯域(例えば、数GHz帯中の任意の周波数を中心とした数百MHzの帯域幅)の微弱電波での通信技術であり、IEEE802.15.4で定義されている。また、対象装置30の方向及び対象装置30と基地局10との間の距離の測定には、電波の受信角度(AoA:Angle of Arrival)検知方式、TDOA(Time Difference Of Arrival)方式等を用いてもよい。
【0044】
前記対象装置30の位置は、基地局10に設けた単一又は複数のカメラ(撮像手段)により基地局10の周辺を撮影し、その撮影した画像を解析することによって特定してもよい。例えば、基地局10で撮影した画像上で対象装置30の方向の角度(所定基準方向からの角度)及び対象装置30までの距離を推定し、その推定結果に基づいて対象装置30の位置を特定してもよい。
【0045】
基地局10は、対象装置30の周辺における既知の位置座標に設置され基地局10と通信可能な固定端末装置(例えば、IoTデバイス)を介して対象装置30の位置情報を取得してもよい。固定端末装置は、例えば、固定端末装置の周辺に位置する対象装置30との間で近距離通信により信号を送受信し、対象装置30の方向及び対象装置30と基地局10との間の距離を測定して対象装置30の位置を特定する。固定端末装置は、対象装置30の位置情報を基地局10に送信する。
【0046】
前記固定端末装置は、移動通信の第1の無線通信方式によって基地局10との間で無線通信する第1の通信機能と、第2の無線通信方式によって対象装置30との間で無線通信する第2の通信機能と、を有する。第2の無線通信方式は、前記BLE通信方式又は前記無線媒体としてUWB(超広帯域)無線の電波を用いる通信方式等の近距離通信方式である。固定端末装置としてのIoTデバイスは、例えば、固定センサ(例えば、温湿度センサ、照度センサ、人感センサなど)である。固定端末装置は、例えば、通信エリア(セル)10A内又はその近傍のエリアに固定配置された無線接続(例えば無線LAN接続)の固定アクセスポイント装置、又は、対象装置(子機)30に対する親機としての機能を有する移動通信の移動局としてのスマートフォンなどの端末装置(UE)であってもよい。
【0047】
前記固定端末装置の位置は、基地局10に設けた単一又は複数のカメラ(撮像手段)により基地局10の周辺を撮影し、その撮影した画像を解析することによって特定してもよい。例えば、基地局10で撮影した画像上で固定端末装置の方向の角度(所定基準方向からの角度)及び固定端末装置までの距離を推定し、その推定結果に基づいて固定端末装置の位置を特定してもよい。
【0048】
MEC装置20は、基地局10に近い場所に計算機リソースを配置して各種サービスの処理を実施するMEC(「マルチアクセス・エッジ・コンピューティング」又は「モバイル・エッジ・コンピューティング」の略)の機能を有するサーバ(以下、略して「MEC」ともいう。)である。MEC装置20は、例えば、移動通信網のコアネットワーク40内のノード又はコアネットワーク40と基地局10との間の経路のノードに接続される。
図1の例では、MEC装置20は、コアネットワーク40の基地局側に位置するUPF(User Plane Function)401に接続されている。UPF401はユーザーデータパケットの転送を行うU-planeのノードである。
【0049】
MEC装置20は、基地局10から対象装置への無線電力伝送によるWPT給電を制御するWPT制御の機能を有する。WPT制御には、例えば、WPT給電のターゲットの対象装置30に関する対象関連情報(例えば、端末/ユーザステータス情報)を取得して処理することと、WPT給電のターゲットの対象装置30を選択することと、WPT給電のスケジューリングを決定することが含まれる。
【0050】
図1及び
図2において、MEC装置20は、基地局10を介して、複数の対象装置30(1)~30(3)、30(n)~30(n+2)のそれぞれについて対象関連情報(例えば、端末/ユーザステータス情報)を取得し、その対象関連情報に基づいて、基地局アンテナ110でビーム10B(1),10B(n)を形成して複数の対象装置30(1)~30(3)、30(n)~30(n+2)に無線給電するための給電制御情報を自律的に生成し、その給電制御情報を基地局10に送信する。給電制御情報は、例えば、ビーム10B(1),10B(n)の方向を指示するビーム方向指示情報(例えば、後述の優先度ヒートマップ)を含む。
【0051】
基地局10は、MEC装置20から給電制御情報を受信し、その給電制御情報に基づいて、ビーム10B(1),10B(n)を形成するWPTビームフォーミングを行い、そのビーム10B(1),10B(n)を介して複数の対象装置30(1)~30(3)、30(n)~30(n+2)に無線電力伝送用の送信信号を送信する。
【0052】
図1及び
図2のシステムにおいて、複数の対象装置30の位置情報に基づいて、位置が互いに近い複数の対象装置をそれぞれ含むユーザ群である複数のグループG(1),G(n)が構成され、グループG毎にビーム10Bを形成するように基地局10の基地局アンテナ110が制御される。例えば、
図1及び
図2において、互いに近くに位置する複数の対象装置30(1)、30(2)、30(3)を含むように第1番目のグループG(1)が構成され、基地局10は、グループG(1)のエリアに向けて第1のビーム10B(1)を形成する。また、互いに近くに位置する複数の対象装置30(n)、30(n+1)、30(n+2)を含むように第n番目のグループG(n)が構成され、基地局10は、グループG(n)のエリアに向けて第n番目のビーム10B(n)を形成する。
【0053】
また、
図1及び
図2のシステムにおいて、複数のMEC装置20が接続可能なブロックチェーンネットワーク(BCN)システム50を備え、複数のMEC装置20の計算機領域を利用してBCNシステム50に分散台帳が構築されてもよい。
【0054】
ここで、分散台帳は、ブロックチェーンネットワーク(BCN)を構成する複数のノードが同一のデータベースを保持するように構成された分散型の台帳である。特に、BCNシステム50に構築される分散台帳は、所定のアルゴリズムに従い、任意のトランザクションおよびその集合体であるブロックの順序が決定され、BCNのノードである各MEC装置が正しいと認めた分散型の台帳である。BCNの分散台帳は、前記ブロックがハッシュによってリンクされ、トランザクションの記録がすべてそのまま残るため、改ざん耐性を備える。
【0055】
複数のMEC装置20はそれぞれ、MEC装置20に対応する基地局10から複数の対象装置30への無線給電の利用履歴情報を、BCNシステム50に構築されている分散台帳に転送して記録することができる。利用履歴情報は、例えば表1に示すように、各ユーザのユーザ名と、各ユーザが所有するトークンの数、各ユーザが所有するIoT端末30の位置と、各ユーザが所有するIoT端末30が属するグループの識別番号とを含む。
【表1】
【0056】
なお、無線給電の利用履歴情報は、移動通信網のコアネットワーク40若しくは外部のネットワークに設けられている外部サーバに転送して記録してもよい。外部サーバは、単体のコンピュータ装置で構成されたサーバであってもよいし、ネットワークを介して互いに通信可能な複数のコンピュータ装置で構成されたクラウドサーバであってもよい。
【0057】
対象装置30は、例えば、移動通信システムの移動局としての端末装置(以下「UE」(ユーザ装置)ともいう。)である。対象装置30は、基地局10と無線通信可能な通信装置(例えば移動通信モジュール)とセンサなどの各種デバイス(例えば、IoTデバイス、IoTタグなど)とを組み合わせたものであってもよい。
【0058】
対象装置30は、GPS等のGNSS(全地球航法衛星システム)受信機を備え、その受信機の受信結果に基づいて、対象装置(自装置)30の位置(緯度、経度、高度)を特定してもよい。
【0059】
対象装置30は、位置が既知の基地局10との間で前述のBLE通信方式又は無線媒体としてUWB(超広帯域)無線の電波を用いる通信方式等の近距離通信方式により信号を送受信し、基地局10の方向及び対象装置30と基地局10との間の距離を測定して対象装置(自装置)30の位置を特定してもよい。
【0060】
対象装置30は、対象装置30の周辺における既知の位置座標に設置された固定端末装置(例えば、IoTデバイス)を介して対象装置(自装置)30の位置情報を特定してもよい。対象装置30は、例えば、対象装置30の周辺に位置する一又は複数の固定端末装置との間で近距離通信により信号を送受信し、固定端末装置の方向及び対象装置30と固定端末装置との間の距離を測定して対象装置(自装置)30の位置を特定する。
【0061】
前記固定端末装置は、例えば、固定センサ(例えば、温湿度センサ、照度センサ、人感センサなど)などのIoTデバイス、固定アクセスポイント装置、又は、対象装置(子機)30に対する親機としての機能を有する移動通信の移動局としてのスマートフォンなどの端末装置(UE)であってもよい。
【0062】
対象装置30の位置は、対象装置(自装置)30に設けた単一又は複数のカメラ(撮像手段)により対象装置30の周辺を撮影し、その撮影した画像を解析することによって特定してもよい。例えば、対象装置30で撮影した画像上で基地局10の方向の角度(所定基準方向からの角度)及び基地局10までの距離を推定し、その推定結果に基づいて対象装置(自装置)30の位置を特定してもよい。また、対象装置30で撮影した画像上で前記固定端末装置の方向の角度(所定基準方向からの角度)及び前記固定端末装置までの距離を推定し、その推定結果に基づいて対象装置(自装置)30の位置を特定してもよい。
【0063】
以下の実施形態では、対象装置30が、基地局10を介してインターネットに接続可能な端末装置であるIoTデバイス(以下「IoT端末」ともいう。)である場合について説明する。
【0064】
図3は、実施形態に係るシステムにおける基地局アンテナ110の制御手順の一例を示す説明図である。
図3に例示する基地局アンテナ110の制御手順S100は、ステータス情報取得ステップS110と、ウェイト付与ステップS120と、優先度ヒートマップ作成ステップS130と、WPTビーム制御ステップS140とを含む。
【0065】
ステータス情報取得ステップS110において、WPT・モバイル通信基地局10は、ターゲットの通信エリア10Aに在圏する複数のIoT端末30を複数のグループ(ユーザ群)G(1),G(m),G(n)に分け、グループ毎に、IoT端末30の位置情報を含む端末/ユーザステータス情報を取得する。端末/ユーザステータス情報は、IoT端末30のバッテリ残量と、IoT端末30を所有するユーザが有するトークンの数を含む。
【0066】
図3の例では、各IoT端末30の位置情報として、地上の所定位置(例えば基地局10の位置)を原点とした2次元のxy座標系における座標(x
1,y
1),(x
2,y
2),(x
n,y
n),(x
m,y
m)を取得している。
【0067】
なお、位置情報は、各IoT端末に組み込んだGPS等のGNSS(全地球航法衛星システム)受信機で受信された受信結果に基づいて測定(検出)された各IoT端末30の緯度、経度、高度の情報であってもよい。また、各IoT端末30の位置情報は、基地局10とIoT端末30との間の前述のUWB又はBLEの近距離通信を用いて取得した位置情報であってもよい。また、各IoT端末30の位置情報は、各IoT端末30に組み込まれたカメラ(撮像手段)で撮影した基地局10等を含む周囲の画像に基づいて、画像認識により取得してもよい。
【0068】
WPT・モバイル通信基地局10は、各IoT端末30との間の移動通信のUL通信により、各IoT端末30の位置情報を各IoT端末30から受信し、MEC装置20に転送する。
【0069】
次に、ウェイト付与ステップS120において、MEC装置20は、各IoT端末30に、ステータス情報(バッテリ残量、対応ユーザが所有するトークン数など)に応じたウェイトWを付与し、各IoT端末30の位置情報とウェイトWとの対応関係を示すウェイトリストLを作成する。ここで、ウェイトWは、IoT端末30へのWPT給電の優先度を示す指標値であり、ウェイトWの値が大きいほど、対応するIoT端末30へのWPT給電の優先度が高い。
【0070】
次に、優先度ヒートマップ作成ステップS130において、MEC装置20は、各IoT端末の位置情報およびウェイトWの情報に基づき、優先度ヒートマップMを作成(生成)する。優先度ヒートマップMは、複数のIoT端末(対象装置)30の位置と複数のIoT端末30に対する無線給電の優先度とを識別可能なマップデータである。例えば、優先度ヒートマップMは、複数のグループG(1)、G(m)及びG(n)それぞれのIoT端末30の位置と、各基地局10がWPTビームを形成する給電ターゲットの優先度の分布とを示す2次元マップである。図示の優先度ヒートマップMの例では、各位置(x,y)の給電ターゲットの優先度f(x,y)を濃度の高低で示している。MEC装置20は、作成した優先度ヒートマップMをWPT・モバイル通信基地局10に送信する。
【0071】
次に、WPTビーム制御ステップS140において、WPT・モバイル通信基地局10は、MEC装置から受信した優先度ヒートマップMに基づき、基地局アンテナ110の位相および振幅を制御することにより、WPTビーム10B(1)、10B(m)及び10B(n)の方向を制御する。
【0072】
図4は、本実施形態に係るシステムにおける基地局アンテナ(WPTアンテナ)110の一例を示す説明図である。基地局アンテナ(WPTアンテナ)110は、所定の方向及び間隔で配置されたN個のアンテナ素子111(1)~111(N)を有する。前述のWPTビーム制御ステップS140では、基地局アンテナ110の各アンテナ素子111(1)~111(N)に供給される信号の振幅及び位相が制御される。
【0073】
基地局アンテナ(WPTアンテナ)110は、フェイズアレイアンテナ又は分散協調型アンテナにより構築される。フェイズアレイアンテナは、各アンテナ素子111(1)~111(N)に入力する信号の振幅及び位相の調整により任意の方向にビームステアリングするアンテナである。分散協調型アンテナは、各アンテナ素子111(1)~111(N)に入力する信号の振幅及び位相により任意のエリアにホットスポットを生成するアンテナである。
【0074】
図5は、実施形態に係るシステムのウェイト付与及び優先度ヒートマップ作成の方法におけるブロックチェーンネットワーク(BCN)システム50とMEC装置20と対象装置(IoT装置)30との間で送受信される情報の一例を示す説明図である。
図5のウェイト付与及び優先度ヒートマップ作成の方法は、トークン付与ステップS210と、ステータス情報の転送ステップS220と、ウェイトリスト・優先度ヒートマップの生成ステップS230と、利用履歴情報(取引履歴情報)の転送・記録ステップS240とを含む。
【0075】
トークン付与ステップS210において、ブロックチェーンネットワーク(BCN)システム50は、各ユーザに対してトークン(例えば、NFT)を発行し、コアネットワーク40のUPF401を介して各ユーザのIoT端末30(1),30(m),30(n)に配布する。トークン(例えば、NFT)は、例えば、ユーザ、IoT端末又はその両方のブロックチェーンネットワーク(BCN)システムへの寄与に応じて配布される。
【0076】
次に、ステータス情報の転送ステップS220において、MEC装置20は、WPT・モバイル通信基地局10の通信エリア(セル)10Aに在圏する各ユーザのIoT端末30(1),30(m),30(n)から端末/ユーザステータス情報を取得する。端末/ユーザステータス情報は、各ユーザのIoT端末30(1),30(m),30(n)のトークン所有状況(例えばトークン数)、各ユーザのIoT端末30(1),30(m),30(n)のバッテリ残量及び位置情報を含む。
【0077】
次に、ウェイトリスト・優先度ヒートマップの生成ステップS230において、MEC装置20は、各IoT端末30(1),30(m),30(n)に付与するウェイトWを計算する。例えば、MEC装置20は、各ユーザのIoT端末30(1),30(m),30(n)から取得した端末/ユーザステータス情報に基づき、次の(4)式により、各IoT端末30(1),30(m),30(n)に付与するウェイトWを計算する。また、MEC装置20は、各ユーザのIoT端末30(1),30(m),30(n)の位置情報とウェイトWとが対応付けられたウェイトリストLを生成する。
【数4】
【0078】
ここで、Ntは対象のユーザのIoT端末に配布されたトークンの数であり、N0は通信エリア(セル)10Aに在圏するすべてのIoT端末30に配布されたトークンの総数である。また、Brは対象のIoT端末30のバッテリの残量であり、B0は、通信エリア(セル)10Aに在圏するすべてのIoT端末30のバッテリの総残量である。また、C1はトークンに対する係数であり、C2はバッテリの残量に対する係数であり、αはウェイトWの調整値である。
【0079】
MEC装置20は、ウェイトリストLに基づき優先度ヒートマップを生成する。
【0080】
次に、利用履歴情報(取引履歴情報)の転送・記録ステップS240において、MEC装置20は、WPT給電サービスの利用履歴情報を、取引履歴情報として、ブロックチェーンネットワーク(BCN)システムの分散台帳に転送して記録する。
【0081】
図6は、実施形態に係るシステムにおけるブロックチェーンネットワーク(BCN)システム50、MEC装置20及び基地局10を介した対象装置(IoT端末)30への無線電力伝送の一例を示すシーケンス図である。なお、
図6の例では、MEC装置20は利用履歴情報(取引履歴情報)をBCNシステム50に送信しているが、利用履歴情報(取引履歴情報)を前述の外部サーバに送信してもよい。
【0082】
図6において、まず、ユーザのIoT端末30へのWPT給電サービスを開始する前に、MEC装置20は、そのMEC装置(自装置)20が有する最新の利用履歴情報(取引履歴情報)とともに台帳情報要求及び更新要求をBCNシステム50に送信する(S301)と、BCNシステム50は、MEC装置20から受信した利用履歴情報(取引履歴情報)に基づいて分散台帳を更新し(S302)、更新後の台帳情報をMEC装置20に送信する(S303)。MEC装置20は、BCNシステム50から受信した台帳情報をMEC装置(自装置)20内に保存する。
【0083】
次に、ユーザのIoT端末30へのWPT給電サービスを利用するためのループが実行される。このループにおいて、まず、MEC装置20は、WPT・モバイル通信基地局10を介して、対象の通信エリア在圏する複数のIoT端末30について端末/ユーザステータス情報を取得する(S304~S307)。MEC装置20は、そのMEC装置(自装置)20内に保存されている台帳を参照し、各IoT端末30から取得した端末/ユーザステータス情報に基づいて台帳を更新する(S308)。
【0084】
次に、MEC装置20は、各IoT端末30から取得した端末/ユーザステータス情報に基づいて、各IoT端末30に対するウェイトWを計算して各IoT端末30に付与し(S309)、各IoT端末30に付与されたウェイトWと各IoT端末30の位置情報とに基づいて、対象の通信エリアについて優先度ヒートマップMを作成して生成する(S310)。MEC装置20は、優先度ヒートマップMに基づいて、基地局アンテナ110の各アンテナ素子に適用する位相と振幅のリストであるアンテナ素子位相振幅リストを生成する(S311)。MEC装置20は、所定のスケジューリングで規定されたタイミングに、給電制御情報として、アンテナ素子位相振幅リストを含むWPTビーム方向指示と送電指示とをWPT・モバイル通信基地局10に送信する(S312)。
【0085】
次に、WPT・モバイル通信基地局10は、MEC装置20から受信したアンテナ素子位相振幅リストを含むWPTビーム方向指示に基づき、WPT給電時に基地局アンテナ(WPTアンテナ)110の各アンテナ素子に入力する信号の位相及び振幅を設定し(S313)、複数のビームを介して各IoT端末に給電するためのWPT電波の照射を行う(S314)。
【0086】
MEC装置20は、アンテナ素子位相振幅リストを含むWPTビーム方向指示と送電指示とをWPT・モバイル通信基地局10に送信した後、最新の利用履歴情報(取引履歴情報)とともに台帳情報要求及び更新要求をBCNシステム50に送信する(S315)。BCNシステム50は、MEC装置20から受信した利用履歴情報(取引履歴情報)に基づいて分散台帳を更新し(S316)、更新後の台帳情報をMEC装置20に送信する(S317)。一方、WPT電波の照射を受けた各IoT端末30は、IoT端末30に保存されている端末/ユーザステータス情報を更新する(S318)。
【0087】
図7は、実施形態に係るシステムにおけるブロックチェーンネットワーク(BCN)システム50及び分散台帳60の一例を示す説明図である。
図7の例では、複数の基地局10に対応するように設けられた複数のMEC装置20がBCNシステム50を介して互いに通信可能なMEC間分散ネットワークが構築されている。BCNシステム50に構築された分散台帳60は、例えば、Proof of work/Proof of stake等のブロックチェーン技術により管理される。分散台帳60には、ユーザが所有するIoT端末の位置情報及びバッテリ残量、ユーザ(又はユーザが所有するIoT端末)に配布されたトークンの数などの、端末/ユーザステータス情報が記録される。ブロックチェーンネットワーク(BCN)システム50及び分散台帳60は、各MEC装置20の計算機領域を利用して維持される。各MEC装置20は、分散台帳60に基づきWPT優先度ヒートマップを自律的に生成する。複数のMEC装置20のそれぞれについて、MEC装置20が生成したWPT優先度ヒートマップに基づいて、MEC装置20に対応する基地局10のWPTアンテナの制御が実行される。
【0088】
以上、本実施形態によれば、対象装置30の位置情報を含む対象関連情報に基づいて対象装置30に向かうビーム10Bを形成し、そのビーム10Bを介して対象装置30に給電するためのWPT電波の照射を行うことにより、複数の対象装置30のそれぞれに対して効果的に給電することができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、対象装置30に給電するWPT電波を照射するビームを形成する基地局アンテナ(WPTアンテナ)110の制御及び基地局10から対象装置30への給電の制御を、コアネットワーク40を介さずに、基地局10に対応するMEC装置20で自律的に行うことができるので、複数の対象装置30への給電をリアルタイムに低遅延で行うことができる給電サービスを実現することができる。
【0090】
本実施形態によれば、複数のMEC装置20から各対象装置のWPT給電の利用履歴情報を記録することができる分散台帳が構築されたブロックチェーンネットワーク(BCN)システム50を用いて、複数の対象装置30に対して自律的に給電可能な複数の基地局10を分散配置した自立分散型の基地局10を提供することができる。
【0091】
また、本発明は、多数の対象装置へ給電する給電インフラにおいて各対象装置のそれぞれに対して効果的に給電することができるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0092】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにブロックチェーンネットワークシステム、MEC装置、基地局、中継装置、対象装置、通信システム及び無線電力伝送システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0093】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、基地局装置(Node B、Node G)、端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0094】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0095】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0096】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0097】
10 :基地局
10A :通信エリア
10B :ビーム
20 :MEC装置
30 :対象装置(IoT端末)
40 :コアネットワーク
50 :ブロックチェーンネットワークシステム
110 :基地局アンテナ(アレーアンテナ)
【要約】
【課題】複数の対象装置のそれぞれへの給電をリアルタイムに低遅延で行うことができる給電サービスを実現することができる無線電力伝送システムを提供する。
【解決手段】無線電力伝送システムは、基地局とMEC装置とを備える。MEC装置は、基地局を介して、複数の対象装置のそれぞれについて対象装置に関する情報及び対象装置の利用者に関する情報の少なくとも一方を含む対象関連情報を取得し、前記対象関連情報に基づいて、基地局アンテナでビームを形成して複数の対象装置に無線給電するための給電制御情報を生成し、前記給電制御情報を基地局に送信する。基地局は、MEC装置から前記給電制御情報を受信し、前記給電制御情報に基づいて、前記ビームを形成し、前記ビームを介して複数の対象装置に無線電力伝送用の送信信号を送信する。
【選択図】
図2