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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】調整値算出方法及び出力調整用機器
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/12 20160101AFI20240112BHJP
   G07D 7/00 20160101ALI20240112BHJP
【FI】
G07D7/12
G07D7/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023500500
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006700
(87)【国際公開番号】W WO2022176210
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大治 勝巳
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/056270(WO,A1)
【文献】特開2011-176559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0023228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00- 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射濃度及び透過濃度が全面に渡って均一な媒体である第一媒体を用いて出力が調整された第一撮像素子を有する第一イメージセンサユニットを作成し、
前記第一媒体とは異なる任意の媒体である第二媒体を前記第一イメージセンサユニットによって撮像したときの前記第一撮像素子の出力値である第一出力値に基づいて目標値を設定し、
第二撮像素子を有する第二イメージセンサユニットによって前記第二媒体を撮像したときの前記第二撮像素子の出力値である第二出力値を取得し、
前記第二イメージセンサユニットによって紙葉類を撮像するときの前記第二撮像素子の出力の調整に用いられる調整値を、前記第二出力値と前記目標値とに基づいて算出する、
調整値算出方法。
【請求項2】
複数台の前記第一イメージセンサユニットを作成し、
複数台の前記第一イメージセンサユニットのそれぞれの前記第一出力値に基づいて前記目標値を設定する、
請求項1に記載の調整値算出方法。
【請求項3】
1台の前記第一イメージセンサユニットを作成し、
1台の前記第一イメージセンサユニットによって前記第二媒体を複数回撮像することにより複数の前記第一出力値を取得し、
複数の前記第一出力値の平均値を前記目標値として設定する、
請求項1に記載の調整値算出方法。
【請求項4】
反射濃度及び透過濃度が全面に渡って均一な媒体である第一媒体を用いて出力が調整された第一撮像素子を有する第一イメージセンサユニットによって、前記第一媒体とは異なる任意の媒体である第二媒体を撮像したときの前記第一撮像素子の出力値である第一出力値に基づいて目標値を設定し
前記目標値と、第二撮像素子を有する第二イメージセンサユニットによって前記第二媒体を撮像したときの前記第二撮像素子の出力値である第二出力値とに基づいて調整値を算出するプロセッサ
具備する出力調整用機器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調整値算出方法及び出力調整用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動預け払い機(ATM:Automatic Teller Machine)等に用いられる紙幣取扱装置は、紙幣を鑑別する紙幣鑑別ユニットを有する。紙幣鑑別ユニットは、例えば、紙幣を搬送する搬送機構と、搬送機構によって搬送される紙幣の鑑別に用いられる複数種類の鑑別センサユニットとを有する。複数種類の鑑別センサユニットとして、例えば、紙幣を撮像するイメージセンサユニット、紙幣が有する蛍光成分を検出する紫外線センサユニット、及び、紙幣が有する磁気成分を検出する磁気センサユニットが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-191561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イメージセンサユニットは複数の撮像素子を有しており、個々の撮像素子毎に出力(感度)のバラツキがあるため、複数の撮像素子の出力を均一に揃える調整(以下では「出力調整」と呼ぶことがある)が行われる。また、同一機種の複数の紙幣鑑別ユニットにはそれぞれ同一機種のイメージセンサユニットが搭載される。しかし、同一機種のイメージセンサユニットでも個々のイメージセンサユニット毎に出力のバラツキがあるため、同一機種の複数のイメージセンサユニット間でも出力調整が行われる。
【0005】
出力調整は、反射濃度及び透過濃度が全面に渡って均一な媒体(以下では「高精度媒体」と呼ぶことがある)を用いて行われ、出力調整では、高精度媒体を撮像するイメージセンサユニットのすべての撮像素子の出力が一定の目標値で均一になるように調整される。
【0006】
このように、出力調整では、反射濃度及び透過濃度が厳密に管理された高精度媒体が用いられる。また、同一機種の多数のイメージセンサユニットの出力調整を行うには、複数の媒体間での誤差(以下では「媒体誤差」と呼ぶことがある)が小さい多数の高精度媒体を作成する必要がある。よって、出力調整に用いられる高精度媒体が高価になるため、出力調整に要するコストが高くなっていた。
【0007】
そこで、本開示は、イメージセンサユニットの出力調整に要するコストを削減することができる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の調整値算出方法では、まず、反射濃度及び透過濃度が全面に渡って均一な媒体である第一媒体を用いて出力が調整された第一撮像素子を有する第一イメージセンサユニットを作成する。次いで、前記第一媒体とは異なる任意の媒体である第二媒体を前記第一イメージセンサユニットによって撮像したときの前記第一撮像素子の出力値である第一出力値に基づいて目標値を設定する。次いで、第二撮像素子を有する第二イメージセンサユニットによって前記第二媒体を撮像したときの前記第二撮像素子の出力値である第二出力値を取得する。そして、前記第二イメージセンサユニットによって紙葉類を撮像するときの前記第二撮像素子の出力の調整に用いられる調整値を、前記第二出力値と前記目標値とに基づいて算出する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、イメージセンサユニットの出力調整に要するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施例1の紙幣取扱装置の構成例を示す図である。
図2図2は、本開示の実施例1の紙幣鑑別ユニットの構成例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施例1の紙幣鑑別ユニットの構成例を示す図である。
図4図4は、本開示の実施例1の紙幣鑑別ユニットの構成例を示す図である。
図5A図5Aは、本開示の実施例1のイメージセンサユニットの構成例を示す図である。
図5B図5Bは、本開示の実施例1のイメージセンサユニットの構成例を示す図である。
図6図6は、本開示の実施例1のイメージセンサユニットの装着例を示す図である。
図7図7は、本開示の実施例1の出力調整値の算出方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、本開示の実施例1の出力調整値の算出方法の一例の説明に供する図である。
図9図9は、本開示の実施例1の出力調整値の算出方法の一例の説明に供する図である。
図10図10は、本開示の実施例1の出力調整値の算出方法の一例の説明に供する図である。
図11図11は、本開示の実施例1の出力調整値の算出方法の一例の説明に供する図である。
図12図12は、本開示の実施例2の対象ユニット目標値の設定方法の一例の説明に供する図である。
図13図13は、本開示の実施例2の対象ユニット目標値の設定方法の一例の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。以下の実施例において同一の構成及び同一の処理が行われるステップには同一の符号を付す。
【0012】
[実施例1]
<紙幣取扱装置の構成>
図1は、本開示の実施例1の紙幣取扱装置の構成例を示す図である。図1において、紙幣取扱装置1は、紙幣3を入出金する入出金部6と、入出金部6に入金された紙幣3を鑑別する紙幣鑑別ユニット7と、紙幣鑑別ユニット7から搬送された紙幣3を一時的に収容する複数の保留部8とを有する。また、紙幣取扱装置1は、各保留部8から送られた紙幣3を格納する格納部9と、出金用の紙幣3を補充するための補充部10と、入出金部6へ還流させない紙幣3を回収する回収部11と、紙幣3を搬送する搬送機構12とを有する。なお、実施例では紙葉類の一例として紙幣3を挙げるが、開示の技術が適用可能な紙葉類は紙幣3に限定されず、金券等の他の紙葉類にも開示の技術は適用可能である。
【0013】
<紙幣鑑別ユニットの構成>
図2図3及び図4は、本開示の実施例1の紙幣鑑別ユニットの構成例を示す図である。図2には、紙幣鑑別ユニット7の斜視図を示し、図3及び図4には、紙幣鑑別ユニット7の側面図を示す。また、図3には、紙幣鑑別ユニット7が閉じた状態にある場合を示し、図4には、紙幣鑑別ユニット7が開いた状態にある場合を示す。
【0014】
図1及び図2に示すように、紙幣鑑別ユニット7は、紙幣3の搬送路14を構成する上下一対の搬送路構成体15を搬送機構12の一部として有しており、下側の搬送路構成体15に対して上側の搬送路構成体15が、紙幣3の搬送方向Aに沿った分割面Bで分割可能に設けられている。
【0015】
搬送路構成体15は、紙幣3を搬送する複数の搬送ローラ17と、複数の搬送ローラ17を回転可能に支持するシャーシ18と、複数の搬送ローラ17を駆動する駆動機構(図示せず)とを有する。下側の搬送路構成体15のシャーシ18に対して、上側の搬送路構成体15のシャーシ18が、回動軸19を介してC方向に回動可能に支持されている。複数の搬送ローラ17は、搬送路14に沿って配置されており、矩形状の紙幣3の短辺方向が搬送方向Aと平行にされた状態で紙幣3を搬送する。
【0016】
また、図2図3及び図4に示すように、紙幣鑑別ユニット7は、紙幣3を撮像して撮像する上下一組の2台のイメージセンサユニット21と、各イメージセンサユニット21が着脱可能に装着される上下一組の第一装着部26とを有する。2台のイメージセンサユニット21のうち、一方のイメージセンサユニット21が紙幣3の一方面を撮像し、他方のイメージセンサユニット21が紙幣3の他方面を撮像する。
【0017】
また、紙幣鑑別ユニット7は、紫外線センサ及び磁気センサを有する紫外線/磁気センサユニット22と、紫外線/磁気センサユニット22が着脱可能に装着される第二装着部27とを有する。
【0018】
また、紙幣鑑別ユニット7は、紙幣鑑別ユニット7へ進入する紙幣3の位置を検出する進入センサ24aと、紙幣鑑別ユニット7から退出する紙幣3の位置を検出する退出センサ24bと、紙幣3の厚みを検出する厚みセンサ25とを有する。
【0019】
また、図2図3及び図4に示すように、進入センサ24aは、紙幣3の搬送方向Aにおける進入側に配置されており、搬送路14に向けて光を出射する発光部と、発光部から出射された光を受光する受光部とを有する。同様に、退出センサ24bは、紙幣3の搬送方向Aにおける退出側に配置されており、搬送路14に向けて光を出射する発光部と、発光部から出射された光を受光する受光部とを有する。進入センサ24a及び退出センサ24bは、搬送路14に沿って搬送される紙幣3が発光部から出射された光を遮ることで、紙幣3の位置(紙幣3の通過)を検出する。
【0020】
厚みセンサ25は、搬送方向Aにおいてイメージセンサユニット21と紫外線/磁気センサユニット22との間に配置され、搬送される紙幣3の厚みを検出する。
【0021】
<イメージセンサユニットの構成>
図5A及び図5Bは、本開示の実施例1のイメージセンサユニットの構成例を示す図である。図5Aには、イメージセンサユニット21の側面図を示し、図5Bには、イメージセンサユニット21の正面図を示す。
【0022】
イメージセンサユニット21は、光源30と、複数の撮像素子31と、撮像素子31の出力(以下では「素子出力」と呼ぶことがある)の調整に用いられる調整値(以下では「出力調整値」と呼ぶことがある)を記憶するメモリ32と、複数の撮像素子31及びメモリ32が設けられた回路基板33とを有する。イメージセンサユニット21では、1~X番目までの複数の撮像素子31が、紙幣3の搬送方向Aに対して直交する直線に沿って一列に配列されている。イメージセンサユニット21が有する撮像素子の個数は、例えば、1632個(X=1632)である。
【0023】
光源30は、図5Bに示すように、複数の撮像素子31の配列方向Dに沿ってライン状に設けられており、図5Aに示すように、紙幣3の搬送方向Aにおいて、撮像素子31を挟んだ両側に配置されている。また、イメージセンサユニット21の内部には、複数の撮像素子31に対向する位置に、複数の撮像素子31の配列方向D(つまり、イメージセンサユニット21の主走査方向)に沿ってライン状のレンズ部材35が設けられている。光源30及びレンズ部材35は、光透過性を有するカバー部材36によって覆われている。
【0024】
また、回路基板33には、紙幣鑑別ユニット7と電気的に接続されるコネクタ38と、集積回路37とが設けられている。集積回路37の一例として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が挙げられる。
【0025】
図6は、本開示の実施例1のイメージセンサユニットの装着例を示す図である。上下一組の第一装着部26の各々は、図3図4及び図6に示すように、上側の搬送路構成体15及び下側の搬送路構成体15のそれぞれに、互いに対向して配置されており、搬送路14の分割面B上に開口した状態で設けられている。これにより、上下一対の搬送路構成体15の分割面Bを開くことで、第一装着部26へ容易にアクセスすることができる。また、図6に示すように、第一装着部26には、紙幣鑑別ユニット7と電気的に接続される接続ケーブル41の一端が設けられており、接続ケーブル41の接続端子42が回路基板33のコネクタ38に接続される。
【0026】
<出力調整値の算出方法>
図7は、本開示の実施例1の出力調整値の算出方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。図8図11は、本開示の実施例1の出力調整値の算出方法の一例の説明に供する図である。図7におけるステップS105~S120の処理は、イメージセンサユニット21を出力調整用機器(図示せず)に接続することによって行われ、出力調整用機器が有するプロセッサ(以下では「出力調整用プロセッサ」と呼ぶことがある)によって行われる。出力調整用機器の一例として、コンピュータが挙げられる。
【0027】
図7のステップS105では、出力調整の基準となるイメージセンサユニット(以下では「マスターユニット」と呼ぶことがある)を作成する。マスターユニットの構成はイメージセンサユニット21の構成と同一である。
【0028】
ステップS105では、まず、出力調整用プロセッサからの制御の下で、イメージセンサユニット21によって高精度媒体が撮像され、図8に示すように、イメージセンサユニット21によって高精度媒体が撮像されたときの複数の撮像素子31の各々の出力値OP11が取得される。以下では、複数の撮像素子31の各々の出力値を「素子出力値」と呼ぶことがある。
【0029】
次いで、素子出力値OP11を複数の撮像素子31間で一定の目標値TG1で均一になるように調整するために、出力調整用プロセッサは、図9に示すように、撮像素子31毎に、式(1)によって表される第一出力調整値AJ1を算出し、算出した第一出力調整値AJ1をメモリ32に記憶させる。
AJ1=TG1/OP11 …(1)
【0030】
撮像素子31毎の第一出力調整値AJ1がメモリ32に記憶されたイメージセンサユニット21がマスターユニットとなる。第一出力調整値AJ1がメモリ32に記憶された後、集積回路37は、撮像素子31毎に素子出力値に第一出力調整値AJ1を乗算することにより、マスターユニットの出力調整を行う。つまり、第一調整値AJ1がメモリ32に記憶されることにより、高精度媒体を用いて素子出力が調整された撮像素子31を有するマスターユニットが作成される。
【0031】
次いで、図7のステップS110では、出力調整用プロセッサは、マスターユニットを基準にして出力調整が行われる調整対象のイメージセンサユニット(以下では「対象ユニット」と呼ぶことがある)の素子出力値に対する目標値(以下では「対象ユニット目標値」と呼ぶことがある)を設定する。
【0032】
ステップS110では、出力調整用プロセッサからの制御の下で、メモリ32に第一調整値AJ1が記憶されたマスターユニットによって、高精度媒体とは異なる任意の媒体(以下では「任意媒体」と呼ぶことがある)が撮像される。そして、出力調整用プロセッサは、図10に示すように、マスターユニットによって任意媒体が撮像されたときの素子出力値OP12を対象ユニット目標値TG2として設定し、対象ユニット目標値TG2を、出力調整用機器が有するメモリ(図示せず)に記憶させる。素子出力値OP12は、第一調整値AJ1によって調整された後の素子出力値である。
【0033】
ここで、任意媒体として、反射濃度及び透過濃度が不均一な媒体(以下では「低精度媒体」と呼ぶことがある)を用いることが可能である。低精度媒体は、高精度媒体より媒体誤差が大きいため高精度媒体より安価である。低精度媒体の一例として、一般的なコピー用紙等が挙げられる。
【0034】
次いで、図7のステップS115では、出力調整用プロセッサからの制御の下で、対象ユニット目標値の取得に用いられたものと同一の任意媒体が対象ユニットによって撮像され、出力調整用プロセッサは、図10に示すように、対象ユニットによって任意媒体が撮像されたときの素子出力値OP2を取得する。対象ユニットの構成はイメージセンサユニット21の構成と同一である。
【0035】
次いで、図7のステップS120では、素子出力値OP2を対象ユニット目標値TG2に合わせるように調整するために、出力調整用プロセッサは、図11に示すように、撮像素子31毎に、式(2)によって表される第二出力調整値AJ2を算出し、算出した第二出力調整値AJ2を対象ユニットのメモリ32に記憶させる。第二出力調整値AJ2がメモリ32に記憶されることにより、マスターユニットを基準にして素子出力が調整された撮像素子31を有する対象ユニットが作成される。
AJ2=TG2/OP2 …(2)
【0036】
以上のようにして作成された対象ユニットが、紙幣鑑別ユニット7の製造時に紙幣鑑別ユニット7に装着され、対象ユニットが装着された紙幣鑑別ユニット7が、紙幣取扱装置1の製造時に紙幣取扱装置1に装着される。
【0037】
よって、紙幣鑑別ユニット7に装着された対象ユニットの集積回路37は、対象ユニットが紙幣を撮像するときに、撮像素子31毎の素子出力値に第二出力調整値AJ2を乗算することにより、対象ユニットの出力調整を行う。
【0038】
以上のように、マスターユニットの素子出力は高精度媒体を基準にして調整され、対象ユニットの素子出力はマスターユニットを基準にして調整される。よって、対象ユニットの素子出力も、マスターユニットを介して間接的に、マスターユニットの素子出力と同様に高精度媒体を基準にして調整されていることになる。
【0039】
以上、実施例1について説明した。
【0040】
[実施例2]
<対象ユニット目標値の設定方法>
以下、対象ユニット目標値の設定方法について実施例1と異なる点について説明する。以下では、対象ユニット目標値の設定方法について、設定例1、設定例2、及び、設定例3の3つの設定例を挙げて説明する。
【0041】
<設定例1>
まず、実施例1と同様にして、互いに同一の高精度媒体を用いて素子出力が調整された複数台のマスターユニットを作成する。例えば、マスターユニットM1,M2,M3,M4,M5の5台のマスターユニットを作成する。
【0042】
次いで、出力調整用プロセッサからの制御の下で、マスターユニットM1~M5のそれぞれによって同一の任意媒体が撮像され、出力調整用プロセッサは、図12に示すように、マスターユニットM1~M5のそれぞれによって同一の任意媒体が撮像されたときの素子出力値OP31~OP35を取得する。図12は、本開示の実施例2の対象ユニット目標値の設定方法の一例の説明に供する図である。素子出力値OP31はマスターユニットM1の素子出力値であり、素子出力値OP32はマスターユニットM2の素子出力値であり、素子出力値OP33はマスターユニットM3の素子出力値であり、素子出力値OP34はマスターユニットM4の素子出力値であり、素子出力値OP35はマスターユニットM5の素子出力値である。
【0043】
そして、出力調整用プロセッサは、素子出力値OP31~OP35の平均値AV3を撮像素子31毎に算出し、平均値AV3を対象ユニット目標値として設定する。
【0044】
<設定例2>
まず、実施例1と同様にして、高精度媒体を用いて素子出力が調整された1台のマスターユニットを作成する。
【0045】
次いで、出力調整用プロセッサからの制御の下で、1台のマスターユニットよって同一の任意媒体が複数回撮像される。例えば、1台のマスターユニットによって同一の任意媒体が3回撮像され、図13に示すように、1台のマスターユニットによって同一の任意媒体が3回撮像されたときの素子出力値OP41,OP42,OP43が取得される。図13は、本開示の実施例2の対象ユニット目標値の設定方法の一例の説明に供する図である。
【0046】
そして、出力調整用プロセッサは、素子出力値OP41~OP43の平均値AV4を撮像素子31毎に算出し、平均値AV4を対象ユニット目標値として設定する。
【0047】
<設定例3>
以下、設定例1と異なる点について説明する。
【0048】
出力調整用プロセッサは、全撮像素子31に渡って、素子出力値OP31の平均値AV31、素子出力値OP32の平均値AV32、素子出力値OP33の平均値AV33、素子出力値OP34の平均値AV34、及び、素子出力値OP35の平均値AV35を算出する。
【0049】
次いで、出力調整用プロセッサは、素子出力値OP31~OP35から、平均値AV31~AV35の中で最大値を有する素子出力値と、最小値を有する素子出力値との2つの素子出力値を除外し、素子出力値OP31~OP35のうちから残りの3つの素子出力値を選択する。
【0050】
そして、出力調整用プロセッサは、選択した3つの素子出力値の平均値AV5を撮像素子31毎に算出し、平均値AV5を対象ユニット目標値として設定する。
【0051】
以上、実施例2について説明した。
【0052】
以上のように、本開示の調整値算出方法では、まず、反射濃度及び透過濃度が全面に渡って均一な媒体である第一媒体(実施例の高精度媒体)を用いて出力が調整された第一撮像素子を有する第一イメージセンサユニット(実施例のマスターユニット)を作成する。次いで、第一媒体とは異なる任意の媒体である第二媒体(実施例の任意媒体)を第一イメージセンサユニットによって撮像したときの第一撮像素子の出力値である第一出力値に基づいて目標値(実施例の対象ユニット目標値)を設定する。次いで、第二撮像素子を有する第二イメージセンサユニット(実施例の対象ユニット)によって第二媒体を撮像したときの第二撮像素子の出力値である第二出力値を取得する。そして、第二イメージセンサユニットによって紙葉類を撮像するときの第二撮像素子の出力の調整に用いられる調整値(実施例の第二出力調整値)を、第二出力値と目標値とに基づいて算出する。
【0053】
こうすることで、第一媒体に替えて、第一媒体より安価な第二媒体を用いて第二イメージセンサユニットの出力調整を行うことが可能になるため、イメージセンサユニットの出力調整に要するコストを削減することができる。
【0054】
また、本開示の調整値算出方法では、複数台の第一イメージセンサユニットを作成し、複数台の第一イメージセンサユニットのそれぞれの第一出力値に基づいて目標値を設定する。
【0055】
また、本開示の調整値算出方法では、1台の第一イメージセンサユニットを作成し、1台の第一イメージセンサユニットによって第二媒体を複数回撮像することにより複数の第一出力値を取得し、複数の第一出力値の平均値を目標値として設定する。
【0056】
こうすることで、目標値の精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 紙幣取扱装置
7 紙幣鑑別ユニット
21 イメージセンサユニット
31 撮像素子
32 メモリ
37 集積回路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13