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特許7418681記録制御装置、記録制御方法、および記録制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】記録制御装置、記録制御方法、および記録制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/93 20060101AFI20240115BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20240115BHJP
   G11B 27/00 20060101ALI20240115BHJP
   H04N 5/77 20060101ALI20240115BHJP
   H04N 5/76 20060101ALI20240115BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240115BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H04N5/93
G11B20/10 301Z
G11B27/00 D
H04N5/77
H04N5/76
H04N7/18 J
G07C5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020000383
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021111804
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】中村 功大
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092464(JP,A)
【文献】特開2005-328154(JP,A)
【文献】特開2015-046948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/76 - 5/956
H04N 7/18
G11B 20/10
G11B 27/00
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を撮影中にその撮影中の映像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得する撮影中の映像を所定単位ごとに区切って記録するための動画像ファイルを設定し、前記撮影中の映像を前記所定単位を満たすまで前記動画像ファイルに記録する記録制御部と、
前記動画像ファイルに記録された映像を再生する表示制御部と、
ユーザの操作入力を受け付ける操作受付部と、
を備え、
前記映像の記録中にその直前部分を再生する指示を前記操作受付部がユーザから受けたとき、
前記記録制御部は、映像の新たな記録先となる後続の動画像ファイルを設定して記録先を変更するとともに、それまで記録先であった先行の動画像ファイルを閉じ、
前記表示制御部は、前記先行の動画像ファイルの終端より所定時間遡る時点から再生することを特徴とする記録制御装置。
【請求項2】
前記記録制御部は、前記所定時間遡る時点が前記先行の動画像ファイルよりさらに一つ以上前の動画像ファイルに含まれる場合であって所定基準より前である場合には、前記直前部分を再生する指示を契機とする前記後続の動画像ファイルへの記録先の変更はしないことを特徴とする請求項1に記載の記録制御装置。
【請求項3】
前記記録制御部は、前記直前部分を再生する指示を契機として前記後続の動画像ファイルに記録先を変更した場合、前記直前部分の再生を終了した後、前記先行の動画像ファイルと前記後続の動画像ファイルとを結合することを特徴とする請求項1に記載の記録制御装置。
【請求項4】
車両の周囲を撮影中にその撮影中の映像を取得する過程と、
前記撮影中の映像を所定単位ごとに区切って記録するための動画像ファイルを設定する過程と、
前記撮影中の映像を前記所定単位を満たすまで前記動画像ファイルに記録する過程と、
前記動画像ファイルに記録された映像を再生する過程と、
前記映像の記録中にその直前部分を再生する指示をユーザから受けたとき、映像の新たな記録先となる後続の動画像ファイルを設定して記録先を変更するとともに、それまで記録先であった先行の動画像ファイルを閉じる過程と、
前記先行の動画像ファイルの終端より所定時間遡る時点から再生する過程と、
を備えることを特徴とする記録制御方法。
【請求項5】
車両の周囲を撮影中にその撮影中の映像を取得する機能と、
前記撮影中の映像を所定単位ごとに区切って記録するための動画像ファイルを設定し、前記撮影中の映像を前記所定単位を満たすまで前記動画像ファイルに記録する機能と、
前記動画像ファイルに記録された映像を再生する機能と、
ユーザの操作入力を受け付ける機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記映像の記録中にその直前部分を再生する指示をユーザから受けたとき、
前記記録する機能は、映像の新たな記録先となる後続の動画像ファイルを設定して記録先を変更するとともに、それまで記録先であった先行の動画像ファイルを閉じ、
前記再生する機能は、前記先行の動画像ファイルの終端より所定時間遡る時点から再生することを特徴とする記録制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を記録する記録制御装置、記録制御方法、および記録制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送用の録画装置においては、番組を録画しながらその録画中の番組を先頭から再生する追いかけ再生の機能が一般的であり、同様の機能がドライブレコーダに適用された例もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-8483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、追いかけ再生は、あくまで録画した最初からの再生を前提としており、先頭以外の任意の部分を即再生することは前提としていなかった。また、車両の乗員にとって、走行中に撮影しながらすぐに再生したいと思う内容は、必ずしも撮影した映像の先頭部分ではなかった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両周囲の撮影中に直前の映像を再生できる記録制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の記録制御装置は、車両の周囲を撮影中にその撮影中の映像を取得する画像取得部と、画像取得部で取得する撮影中の映像を所定単位ごとに区切って記録するための動画像ファイルを設定し、撮影中の映像を所定単位を満たすまで動画像ファイルに記録する記録制御部と、動画像ファイルに記録された映像を再生する表示制御部と、ユーザの操作入力を受け付ける操作受付部と、を備える。映像の記録中にその直前部分を再生する指示を操作受付部がユーザから受けたとき、記録制御部は、映像の新たな記録先となる後続の動画像ファイルを設定して記録先を変更するとともに、それまで記録先であった先行の動画像ファイルを閉じ、表示制御部は、先行の動画像ファイルの終端より所定時間遡る時点から再生する。
【0007】
本発明の別の態様は、記録制御方法である。この方法は、車両の周囲を撮影中にその撮影中の映像を取得する過程と、撮影中の映像を所定単位ごとに区切って記録するための動画像ファイルを設定する過程と、撮影中の映像を所定単位を満たすまで動画像ファイルに記録する過程と、動画像ファイルに記録された映像を再生する過程と、映像の記録中にその直前部分を再生する指示をユーザから受けたとき、映像の新たな記録先となる後続の動画像ファイルを設定して記録先を変更するとともに、それまで記録先であった先行の動画像ファイルを閉じる過程と、先行の動画像ファイルの終端より所定時間遡る時点から再生する過程と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システム、プログラムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両周囲の撮影中に直前の映像を再生できる記録制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ドライブレコーダの機能構成を模式的に示すブロック図である。
図2】映像の記録処理と再生処理の時間的関係について第1の例を示す図である。
図3】映像の記録処理と再生処理の時間的関係について第2の例を示す図である。
図4】映像の記録過程と再生過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。以下説明する実施の形態においては、記録制御装置として主にドライブレコーダおよびナビゲーション装置を例示する。
【0012】
図1は、ドライブレコーダ10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0013】
ドライブレコーダ10は、画像取得部12、音声取得部14、車両情報取得部16、イベント検出部18、記録制御部20、一時記憶部22、通信部24、操作受付部26、画像処理部50、表示制御部28、音声出力部29を備える。画像取得部12は、車両情報取得部16の一部として構成されてもよく、画像取得部12が車両情報取得部16に含まれてもよい。ドライブレコーダ10は、車両に搭載される。通信部24は、外部機器との間で無線通信接続によって情報を送受信する。操作受付部26は、ユーザの操作入力を受け付ける。表示制御部28は、撮影した映像の表示装置49への表示を制御する。表示装置49は、ナビゲーション装置11が備えるモニタであるが、変形例としては、ドライブレコーダ10が表示装置49を内蔵する形で構成してもよいし、図示しないがインフォテインメントシステムや電子ミラー、ヘッドアップディスプレイなどの車両に装備されている表示装置に重畳表示や割り込み表示する形で構成してもよい。音声出力部29は、録音した音声や警告音などの音声を出力するスピーカ47への音声出力を制御する。スピーカ47は、ナビゲーション装置11または車両が備えるスピーカであるが、変形例としては、ドライブレコーダ10がスピーカ47を内蔵する形で構成してもよい。ドライブレコーダ10とナビゲーション装置11の接続は、通信部24を介した無線通信接続であってもよいし、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)やUSB(Universal Serial Bus)などの有線通信接続であってもよい。
【0014】
画像取得部12は、車両の周囲を撮影中にその撮影中の映像を取得する。画像取得部12は、車両に設けられる前方カメラ40および後方カメラ42が撮影する映像を取得する。前方カメラ40は、車両の周囲、特に自車両の前方を撮影するように構成される。後方カメラ42は、車両の周囲、特に自車両の後方を撮影するように構成される。前方カメラ40は、自車両の前方および室内の双方を撮影するように構成されてもよく、自車両の前方や側方および室内をすべて撮影する構成として、周囲360度を撮影可能な一つの全周カメラで構成してもよいし、前後や側方を撮影する複数のカメラで構成してもよい。前方カメラ40、後方カメラ42は、ドライブレコーダ10に内蔵されてもよいし、ドライブレコーダ10とは別体であってもよい。後方カメラ42は、ナビゲーション装置11にも後方の映像を送るカメラであり、ドライブレコーダ10とナビゲーション装置11の両方のカメラとして兼用される。
【0015】
画像取得部12は、車両の走行に関する車両情報として前方カメラ40、後方カメラ42が撮影した映像を取得してもよく、画像取得部12を車両情報取得部16の一部とみなしてもよい。画像取得部12は、前方カメラ40からの映像を取得し、また、後方カメラ42からの映像を、ギアがリバースに入れられていることを示す車両情報が取得されるかどうかにかかわらず取得する。表示制御部28は、ギアがドライブやパーキングなどリバース以外に入れられていることを示す車両情報が取得される間は前方カメラ40からの映像を表示装置49に表示させる。ギアがリバースに入れられていることを示す車両情報が取得される間は後方カメラ42からの映像を表示装置49に表示させる。変形例としては、ギアがリバースに入れられていることを示す車両情報が取得されるかどうかにかかわらず、前方カメラ40からの映像だけでなく、後方カメラ42からの映像も合わせて表示装置49に常時表示させてもよい。
【0016】
音声取得部14は、車両に設けられるマイク44が取得する音声データを取得する。マイク44は、車両の内外から集音するよう構成される。マイク44は、ドライブレコーダ10に内蔵されてもよいし、ドライブレコーダ10とは別体であってもよいし、前方カメラ40または後方カメラ42と一体であってもよい。あるいは、ナビゲーション装置11に内蔵されてもよい。ナビゲーション装置11に内蔵される場合、マイク44はナビゲーション装置11の音声認識操作に用いられる。音声取得部14は、車両の走行に関する車両情報としてマイク44により音声を取得してもよく、音声取得部14を車両情報取得部16の一部とみなしてもよい。
【0017】
車両情報取得部16は、車両に設けられる車載装置46から車両の走行に関する車両情報を取得する。車載装置46の具体例として、車速センサ、舵角センサ、アクセル操作量センサ、ブレーキ操作量センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レーダセンサ、ライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)、位置情報センサ(例えば、GNSS;Global Navigation Satellite System)、乗員の着座センサなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。車両情報取得部16は、各種制御ECU(Electronic Control Unit)を介して車両情報を取得してもよいし、ナビゲーション装置11を介して車両情報を取得してもよい。また、ナビゲーション装置11が内蔵する位置情報センサから位置情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、通信部24を介してユーザの携帯電話等の端末に内蔵された加速度センサ、ジャイロセンサ、位置情報センサ等の各センサによって検出された情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、ドライブレコーダ10が内蔵するセンサから車両の走行に関する情報を取得してもよい。例えば、ドライブレコーダ10が加速度センサや位置情報センサなどのセンサを内蔵してもよい。なお、前方カメラ40、後方カメラ42やマイク44を車載装置の一つとしてみなし、車両情報取得部16が画像取得部12や音声取得部14を含むように構成されてもよい。
【0018】
車両情報取得部16は、例えば車両の状態に関する情報、車両に対する操作に関する情報、車両の速度に関する情報、車両の位置に関する情報、車両の周囲の障害物に関する情報、車両の運転支援機能の作動状態に関する情報などを車載装置46から取得する。車両情報取得部16が取得する各種情報は、後述する画像処理部50による画像認識で車両周囲の物体を検出するのとは異なり、カメラ以外のセンサからの検知情報である。車両情報取得部16は、車両の状態に関する情報として、例えばドアや窓の開閉状態を示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両に対する操作に関する情報として、例えばドアや窓の開閉を指示する操作があったことを示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両の周囲の障害物に関する情報として、車両の周囲の一定範囲内に他車両が存在するか否かや、走行中の車線上に歩行者や自転車、落下物や建造物などの障害物が存在するか否かを示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両内に乗員が存在するか否かを示す情報を取得してもよい。車両情報取得部16は、車両の運転支援機能の作動状態に関する状態として、自動運転機能や遠隔操作機能のオンオフに関する情報や、特定の運転支援機能が作動中であるか否かに関する情報を取得してもよい。運転支援機能として、例えば、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC;Adaptive Cruise Control)やレーン・キープ・アシスト(LKAS;Lane Keeping Assistance System)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
イベント検出部18は、画像取得部12が取得する映像データ、音声取得部14が取得する音声データ、車両情報取得部16が取得する車両情報に基づいて、予め定められた各種イベント(以下、「トリガーイベント」という)の発生を検出する。
【0020】
トリガーイベントは、車両の事故やトラブル等の重大事象として想定され、その発生や検出があった場合に映像データを上書き禁止データとして保存する契機となる保存契機イベントである。イベント検出部18は、トリガーイベントとして、例えば車両の衝突、接触、横転、転落などの事故や、周辺車両の運転者による粗暴行為や危険運転などのトラブルの発生を検知する。イベント検出部18は、例えば前方カメラ40、後方カメラ42によって取得される映像データやマイク44によって取得される音声データから、所定の認識パターンに基づく画像認識や音声認識によって事故やトラブルの発生を検出してもよい。イベント検出部18は、例えば車両の走行速度や加速度の情報、アクセル、ブレーキおよびステアリングなどの操作情報から、急発進、急停止、急旋回などによる車両挙動の急激な変化を認識することでトリガーイベントの発生を検出してもよい。イベント検出部18は、前方カメラ40、後方カメラ42の映像データや車両のレーダセンサなどの情報から、所定の認識パターンに基づいて車両周囲の物体との接近、走行中の車線からの逸脱などを認識することでトリガーイベントの発生を検出してもよい。イベント検出部18は、ドライブレコーダ10に設けられた保存開始ボタンの押下や保存開始を示す音声指示を操作受付部26が受け付けたときにも、これをトリガーイベントの発生として検出してもよい。
【0021】
画像処理部50は、画像から様々な物体を検出するための画像認識パターンを予め記憶するとともに、その画像認識パターンに基づいて所定の画像認識アルゴリズムを用いて画像に写る物体を検出する。画像認識パターンは、深層学習などの機械学習によって定義されてもよいし、特にドライブレコーダのカメラによって撮影し得る物体、例えば四輪車、二輪車、歩行者、道路設置物などの道路およびその周辺に存在し得る物体に特化した画像認識パターンであってもよい。画像処理部50は、道路上の白線や車線をさらに認識する。画像処理部50は、後方カメラ42によって撮影される画像から検出された物体のうち、四輪車や二輪車などの車両を周辺車両として検出する。
【0022】
記録制御部20は、前方カメラ40または後方カメラ42により常時撮影されて画像取得部12が取得した映像データ、マイク44により常時集音されて音声取得部14が取得した音声データ、車両情報取得部16が取得した車両情報を、一時記憶部22へ一時的に記憶させる。記録制御部20は、一時記憶部22に記憶される映像データおよび音声データをリングバッファ方式で記録媒体48に記録する。
【0023】
一時記憶部22は、フラッシュメモリないしソリッドステートドライブ(SSD;Solid State Drive)などの不揮発性メモリ、または、DRAMなどの揮発性メモリで構成されるバッファメモリであってもよい。記録媒体48は、例えば、SDカード(登録商標)などのメモリカードであり、ドライブレコーダ10に設けられるスロットに挿入して使用され、ドライブレコーダ10から取り外し可能となるよう構成される。記録媒体48は、ソリッドステートドライブやハードディスクドライブなどの補助記憶装置で構成されてもよいし、このような補助記憶装置としてナビゲーション装置11が内蔵する補助記憶装置を利用してもよい。なお、一時記憶部22へ記憶させる音声データや記録媒体48に記録される音声データは、映像データと合成された動画像ファイルの形式で記憶ないし記録される。ただし、ユーザが選択するモードに応じて、音声データが含まれない無音の映像データとして動画像ファイルが記憶ないし記録される場合もある。したがって、以下に説明する「動画像ファイル」の概念には、特に説明しないが、音声データが含まれる場合と含まれない場合とがあり得る。
【0024】
一時記憶部22へ記憶させる映像データは、MPEG2-TSなどの所定時間で区切られたストリーミング形式の動画像ファイルとして記憶させてもよい。記録媒体48へ記録する映像データは、一時記憶部22へ記憶させる動画像ファイルと同じ形式でもよいし、異なる形式、例えばMP4形式などのより圧縮率の高い形式でもよい。
【0025】
記録制御部20は、動画像ファイルをリングバッファ方式で一時記憶部22および記録媒体48へ記録するため、一時記憶部22および記録媒体48に記録されたデータが容量一杯になると、最も古いデータから上書きされる。記録制御部20は、動画像ファイルを上書き可能の属性で一時記憶部22および記録媒体48にいったん記録する。
【0026】
記録制御部20は、イベント検出部18によりトリガーイベントの発生が検出された場合に、記録媒体48に記録された動画像ファイルのうち、少なくともトリガーイベントの検出タイミングを含む期間の動画像ファイルに上書き不可の保存形式を設定する。上書き可能および上書き不可の属性は、例えば動画像ファイルに含まれる所定のフラグ等に書き込むことによって設定してもよいし、動画像ファイルから独立したインデックス等の管理ファイルに上書き可否の属性を書き込むことによって設定してもよい。元の動画像ファイル自体に上書き可否の属性を書き込む場合、例えば元の動画像ファイルのうち上書き不可とする保存対象の期間の開始位置と終了位置を示す情報を書き込んでもよい。この場合、保存対象以外の部分、すなわち上書き可能とする部分を後から別データで上書きする際に、保存対象の開始位置から終了位置までが結果的に切り出されて残るようにそれ以外の部分に上書きする。また、保存対象とする部分を元の動画像ファイルから切り出して独立させたファイルの形で別途保存することで、上書き可能と上書き不可を区別する仕様としてもよい。保存対象として切り出す部分が複数の動画像ファイルをまたぐ場合、それぞれの動画像ファイルから切り出して連結したファイルを保存してもよい。独立させたファイルの形で別途保存する場合、上書き可能なデータが記録された領域とは異なる特定の領域、例えば特定のフォルダに記録することで、上書き可能と上書き不可を区別する仕様としてもよい。上書き不可の属性が設定されたデータは、ユーザの明示的な操作によって削除または上書き可能の属性への変更がされるまで上書き禁止の状態が保持される。
【0027】
記録制御部20は、画像取得部12で取得する撮影中の映像を所定単位ごとに区切って記録するためのコンテナとして動画像ファイルを設定する。所定単位は、例えば1分間であり、動画像ファイルへのフレーム画像の記録を1分ごとに区切って新たに動画像ファイルを設定する。記録制御部20は、撮影中の映像を構成する複数のフレーム画像を、所定単位(例えば1分間)を満たすまで動画像ファイルに記録する。記録制御部20は、新たに後続の動画像ファイルを設定すると、その後続の動画像ファイルに映像の記録先を変更するとともに、それまで記録先であった先行の動画像ファイルを閉じる。記録制御部20は、動画像ファイルを閉じるときにファイルの終端に終端を示す情報を付加することにより、その動画像ファイルを再生の対象とすることができる。表示制御部28は、動画像ファイルに記録された映像を再生する。
【0028】
ここで、車両の走行中に運転者が見逃した光景や通り過ぎた目標物等、あらためて見直したい場面が生じることがある。例えば、交通情報表示、道路案内表示、道路標識、看板、事故現場、目的地、曲がる予定であった場所、駐車場の空き状況、飲食店の行列状況、人物や動物の出現等を通り過ぎて見直したい場合が想定される。このような場合、従来であればドライブレコーダ10によって映像を記録していても、直前に見逃したり通り過ぎたりした場面を即再生することはできず、メモリカードに保存して後から確認するしかなかった。本実施の形態においては、ドライブレコーダ10等に、直前部分の再生(以下、「直前再生」という)を指示するためのボタン(以下、「直前再生ボタン」ともいう)を設け、ユーザは撮影中にもかかわらず直前再生ボタンを操作して直前部分の即再生を指示することができる。直前再生ボタンは、例えば専用のボタンとしてドライブレコーダ10の本体に設けてもよいし、通常の再生ボタンと兼用のボタンとしてドライブレコーダ10の本体に設けてもよい。兼用ボタンの場合、例えば1回押下する場合は通常の再生指示となり、長押しまたは2回以上の連打をした場合にだけ直前再生ボタンとして機能するようにしてもよい。また、長押し時間の長さ、または連打の回数に応じて、再生開始タイミングまでの遡る時間を10秒ずつ長くするようにしてもよい。変形例においては、直前再生ボタンを長押しする間、記録中のポイントの直前にあるGOP(Group Of Pictures)から逆再生し、長押しが解除された時点から順再生する仕様としてもよい。その場合、GOPに含まれるキーフレームだけを表示することで早回しの巻き戻しのように逆再生してもよい。直前再生ボタンは、ドライブレコーダ10、ナビゲーション装置11、または携帯電話等の情報端末に含まれる表示装置49のタッチパネル上に表示してユーザが操作できるようにしてもよい。あるいは、操作受付部26はマイク44を介した音声入力により直前再生の指示を受けてもよい。
【0029】
記録制御部20は、映像の記録中に直前再生の指示を操作受付部26がユーザから受けたとき、映像の新たな記録先となる後続の動画像ファイルを設定して記録先を変更するとともに、それまで記録先であった先行の動画像ファイルを閉じる。表示制御部28は、閉じられた先行の動画像ファイルの終端より所定時間、例えば20秒遡る時点から再生し、直前再生が指示された時点の記録位置に達したときに再生を終了する。変形例として、直前再生が指示された時点からさらに10秒後等の所定時間経過時点まで再生するようにしてもよい。記録制御部20は、所定時間遡る時点が先行の動画像ファイルよりさらに一つ前の動画像ファイルに含まれる場合であって所定基準より前である場合には、直前部分を再生する指示を契機とする後続の動画像ファイルへの記録先の変更はしない。より具体的には、所定時間遡る時点が先行の動画像ファイルよりさらに一つ前の動画像ファイルに含まれる場合であって、所定時間遡る時点から再生開始して一つ前の動画像ファイルの終端に達するまでに先行の動画像ファイルへの記録が終了し得る場合には、直前部分を再生する指示を契機とする後続の動画像ファイルへの記録先の変更はしない。動画像ファイルを1分ごとに区切る仕様の場合、直前再生のために遡る時間が動画像ファイルの長さと等しい1分またはそれ以上である場合には、後続の動画像ファイルへ記録先を変更せずに、先行の動画像ファイルに含まれる直前部分を再生することができる。詳細は、図3において後述する。
【0030】
記録制御部20は、直前部分を再生する指示を契機として後続の動画像ファイルに記録先を変更した場合、直前部分の再生を終了した後、先行の動画像ファイルと後続の動画像ファイルとを結合する。結合後の動画像ファイルが1分間のファイルとなるように、後続の動画像ファイルの長さは、先行の動画像ファイルの長さに応じた1分未満の長さ、すなわち1分間から先行の動画像ファイルの長さを差し引いた長さに決定される。変形例においては、直前再生後に先行の動画像ファイルと後続の動画像ファイルを結合しない前提とし、後続の動画像ファイルも通常通りに1分間のファイルとしてもよい。
【0031】
記録制御部20は、直前再生の対象となった動画像ファイルに対しては、上書き不可の保存形式を設定する。この場合、直前再生の対象となった動画像ファイル全体を上書き不可としてもよいし、直前再生の対象となった部分だけを上書き不可の形式にしたり、その部分だけを元の動画像ファイルから切り出して上書き不可の形式で保存したりしてもよい。イベント検出部18は、ユーザから直前再生の指示があったことをトリガーイベントとして検出し、その検出を契機として直前再生の対象となった動画像ファイルに上書き不可の保存形式を設定してもよい。また、直前再生の対象となったことを契機として上書き不可の形式に設定する動画像ファイルの上限個数を設けてもよい。上限個数は、例えば10個である。直前再生の対象となった動画像ファイルを上書き不可の形式に設定するか否かをユーザに選択させるようにしてもよい。例えば、直前再生の終了時に、画面に「保存しますか?」と表示し、ユーザが保存を選択した場合にだけ上書き不可の形式に設定してもよい。直前再生の対象となった動画像ファイルのうち、上書き不可の形式で保存する対象を動画像ファイルではなく静止画ファイルとする仕様でもよい。この場合、静止画ファイルとして保存する場面をユーザに指定させてもよく、例えば直前再生中にユーザが指定した位置で再生を一時停止し、ユーザが指定した領域を拡大表示してその拡大された領域を切り出して静止画ファイルとして保存するようにしてもよい。
【0032】
図2は、映像の記録処理と再生処理の時間的関係について第1の例を示す。図の上段は再生指示までの状態を示し、下段は再生指示後の状態を示す。いずれも左端の位置から記録を開始して、右端が記録中の位置を示す。図の上段に示すように、記録制御部20が第1動画像ファイル60aを記録先として映像の記録を開始し(t1)、1分後に動画像ファイルを区切り(t2)、新たな記録先となる第2動画像ファイル60bを設定してこれを新たな記録先として記録を継続する。さらに1分後に動画像ファイルを区切り(t3)、新たな記録先となる第3動画像ファイル60cを設定してこれを新たな記録先として記録を継続する。映像記録中の任意のタイミングt5においてユーザが直前再生を指示したとき、下段に示すように、記録制御部20が第3動画像ファイル60cを閉じて終端を示す情報を付加するとともに、新たな記録先となる第4動画像ファイル60dを設定してこれを新たな記録先として記録を継続する。同時に、下段に示すように再生指示タイミングt5の直前部分61、すなわちt5から20秒遡ったタイミングt4からt5にかけての20秒間の部分を表示制御部28が再生する。表示制御部28が直前部分61を再生する間も記録制御部20は第4動画像ファイル60dへの映像の記録を継続する。ただし、第3動画像ファイル60cと第4動画像ファイル60dを後から結合して1分間のファイルとなるように第4動画像ファイル60dの残りの記録時間が決定され、その記録時間が経過したときに(t6)、新たな記録先となる第5動画像ファイル60eを設定してこれを新たな記録先として記録を継続する(t7)。
【0033】
直前部分61の再生および第4動画像ファイル60dへの記録が終了した後、記録制御部20は第3動画像ファイル60cと第4動画像ファイル60dを結合して一つの動画像ファイルとする(t3~t6)。その上で、この動画像ファイルに上書き不可の保存形式を設定する。これにより、再生指示のあった動画像ファイルか否かにかかわらず、最終的にはすべての動画像ファイルが1分間の長さとなる。なお、変形例として、直前再生を指示された動画像ファイルとその後続の動画像ファイルとを結合しないことを前提とし、第4動画像ファイル60dを含む後続の動画像ファイルは1分間の動画像ファイルとしてもよい。この場合、直前再生を指示された第3動画像ファイル60cは、再生終了後も1分未満の動画像ファイルとして残る。また、変形例として、直前再生の指示タイミングt5から所定時間遡る時点が一つ前の第2動画像ファイル60bに含まれる場合、記録中である第3動画像ファイル60cを閉じず、新たな記録先となる後続の動画像ファイルも設定しないまま再生を開始してもよい。この場合、再生位置が第2動画像ファイル60bの終端に差し掛かったタイミングで新たな記録先となる後続の動画像ファイルを設定して記録先を変更し、第3動画像ファイル60cを閉じる。ただし、このような処理をするのは、直前再生を指示されたときに遡る時間が1分未満である仕様の場合であり、1分以上遡る仕様の場合は後述する図3のように制御する。
【0034】
図3は、映像の記録処理と再生処理の時間的関係について第2の例を示す。図の上段は再生指示までの状態を示し、下段は再生指示後の状態を示す。いずれも左端の位置から記録を開始して、右端が記録中の位置を示す。本図では、直前再生を指示された場合に1分遡った時点から再生する例を説明する。図の上段に示すように、記録制御部20が第6動画像ファイル62aを記録先として映像の記録を開始し(t11)、1分後に動画像ファイルを区切り(t12)、新たな記録先となる第7動画像ファイル62bを設定してこれを新たな記録先として記録を継続する。さらに1分後に動画像ファイルを区切り(t14)、新たな記録先となる第8動画像ファイル62cを設定してこれを新たな記録先として記録を継続する。映像記録中の任意のタイミングt15においてユーザが直前再生を指示したとき、下段に示すように、タイミングt15から1分遡った時点であるt13の位置から1分間の直前部分63を再生する。ここで、t13の位置は、映像を記録中である第8動画像ファイル62cより一つ前の第7動画像ファイル62bに含まれるため、t13から第7動画像ファイル62bを再生する目的でわざわざ第8動画像ファイル62cを閉じる必要がなく、t15の再生指示以降も第8動画像ファイル62cへの映像の記録を継続できる(t16)。また、t13から再生開始して第7動画像ファイル62bの終端であるt14までの時間αは、再生指示タイミングt15から第8動画像ファイル62cの終了予定タイミングt17までの時間βと等しい。すなわち、t13から再生開始した第7動画像ファイル62bの再生終了までに第8動画像ファイル62cへの記録も終了して閉じることができる。このように、再生指示のタイミングt15から1分以上遡って再生する場合は、記録中であった第8動画像ファイル62cを閉じることなく一つ前の第7動画像ファイル62bを再生し、t14からt15までの部分も、第8動画像ファイル62cの記録終了タイミングをまたいで第7動画像ファイル62bから継続的に再生することができる。図3においては1分遡った時点から再生する例として説明したが、一つ以上前のさらに長い時間遡った時点から再生するとした場合においても同様に制御できる。例えば映像記録中の任意のタイミングt15においてユーザが2分間遡った直前再生を指示した場合は、映像を記録中となる第8動画像ファイル62cより二つ前の第6動画像ファイル62aまで遡った位置からの2分間を直前部分として再生すればよい。
【0035】
図4は、映像の記録過程と再生過程を示すフローチャートである。画像取得部12が映像を取得し(S10)、映像の記録先となる動画像ファイルの設定がない場合は(S12のN)、記録制御部20が新しい動画像ファイルを設定し(S14)、その動画像ファイルに映像を記録する(S16)。S12において動画像ファイルの設定がある場合はS14をスキップし(S12のY)、動画像ファイルに映像を記録する(S16)。動画像ファイルへの映像の記録が1分を経過していたら(S18のY)、記録制御部20が新たに後続の動画像ファイルを設定し(S20)、映像の記録先をその後続の動画像ファイルに変更し(S22)、先行の動画像ファイルを閉じる(S24)。S18において1分が経過していなければ、S20~S24をスキップする(S18のN)。ここで、ユーザから直前再生の指示があった場合(S26のY)、記録制御部20が新たに後続の動画像ファイルを設定し(S28)、映像の記録先をその後続の動画像ファイルに変更し(S30)、先行の動画像ファイルを閉じ(S32)、表示制御部28が所定時間遡って再生開始する(S34)。S26において再生指示がなかった場合、S28~S34をスキップする(S26のN)。再生位置が直前部分の終端に達した場合(S36のY)、直前再生を終了し(S38)、動画像ファイルの結合が必要な場合は(S40のY)、先行の動画像ファイルと後続の動画像ファイルを結合し(S42)、結合の必要がない場合はS42をスキップする(S40のN)。S36において直前部分の終端に達していなければS38~S42をスキップする(S36のN)。本図のフローを抜けて最初に戻り、本図のフローを繰り返す。
【0036】
以上、実施の形態において説明したように、車両周囲の撮影中に直前の映像を即再生することができる。これにより、車両の走行中に運転者が見逃した光景や通り過ぎた目標物等、あらためて見直したい場面が生じたときに、簡単な操作だけで即座に直前の映像を再生して確認することができる。またこのような直前部分の再生のために動画像ファイルを分割した場合であっても後続の動画像ファイルと結合することにより、途中で再生することによるファイル管理上の影響を最小限にすることができる。さらに、直前部分の再生方法を調整することで、動画像ファイルの不必要な分割処理をなくし、ファイル管理上の影響を最小限にすることができる。
【0037】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0038】
10 ドライブレコーダ、 12 画像取得部、 20 記録制御部、 26 操作受付部、 28 表示制御部、 49 表示装置。
図1
図2
図3
図4