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特許7418693オーディオシステム、オーディオアンプ、およびオーディオアンプのゲイン調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】オーディオシステム、オーディオアンプ、およびオーディオアンプのゲイン調整方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/68 20060101AFI20240115BHJP
   H03F 3/181 20060101ALI20240115BHJP
   H03F 1/52 20060101ALI20240115BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240115BHJP
   H04R 29/00 20060101ALI20240115BHJP
   H03F 3/20 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
H03F3/68 220
H03F3/181
H03F1/52
H04R3/00 310
H04R29/00 310
H03F3/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020034985
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141363
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 俊文
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072877(JP,A)
【文献】特表2013-521699(JP,A)
【文献】特開2012-212957(JP,A)
【文献】特開2012-244246(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083653(WO,A1)
【文献】特開2017-183788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/50- 3/72
H03F 1/00- 3/45
H04R 3/00
H04R 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローインピーダンス設定のスピーカ装置と、
前記スピーカ装置に接続され、同様の構成を有する複数台のオーディオアンプとを備え、
前記複数台のオーディオアンプは並列接続され、それぞれが
予め設定されたゲイン設定値を記憶するゲイン設定値記憶部と、
入力された音声信号に、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値を用いて信号処理を行う信号処理部と、
前記信号処理部で処理された音声信号を増幅する増幅器と、
オーディオアンプの出力電流値を計測する電流値計測器と、
自オーディオアンプに規定の音声信号を入力した時に前記電流値計測器で計測された電流値に基づいて、前記スピーカ装置に接続されているオーディオアンプの台数を算出し、算出したオーディオアンプの台数に基づいて前記信号処理部での処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値を特定し、特定した値を、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値に加算するゲイン設定値更新部とを備えることを特徴とするオーディオシステム。
【請求項2】
ローインピーダンス設定のスピーカ装置に接続された第1のオーディオアンプであって、前記第1のオーディオアンプと同様の構成を有する少なくとも1台の第2のオーディオアンプに並列接続され、
予め設定されたゲイン設定値を記憶するゲイン設定値記憶部と、
入力された音声信号に、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値を用いて信号処理を行う信号処理部と、
前記信号処理部で処理された音声信号を増幅する増幅器と、
前記第1のオーディオアンプの出力電流値を計測する電流値計測器と、
前記第1のオーディオアンプに規定の音声信号を入力した時に前記電流値計測器で計測された電流値に基づいて、前記スピーカ装置に接続されているオーディオアンプの台数を算出し、算出したオーディオアンプの台数に基づいて前記信号処理部での処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値を特定し、特定した値を、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値に加算するゲイン設定値更新部とを備えることを特徴とするオーディオアンプ。
【請求項3】
前記第1のオーディオアンプで発生した異常を検知する異常検知部と、
前記異常検知部で異常が検知されると、前記第2のオーディオアンプに異常が検知されたことを示す異常検知情報を送信し、前記第2のオーディオアンプから、前記第2のオーディオアンプで異常が検知されたことを示す異常検知情報が送信されると、この異常検知情報を取得する検知情報処理部と、
前記異常検知部で異常が検知されるかまたは、前記検知情報処理部で前記第2のオーディオアンプから送信された異常検知情報が取得されると、前記第1のオーディオアンプの動作を停止させる動作停止回路とを備えることを特徴とする請求項2に記載のオーディオアンプ。
【請求項4】
前記増幅器は、前記電流値計測器で計測された電流値に基づいて、前記スピーカ装置に接続されているオーディオアンプの台数に応じたゲイン設定値範囲内となるように、自オーディオアンプ内の出力電流値を調整し、音声信号の増幅処理を実行することを特徴とする請求項2または3に記載のオーディオアンプ。
【請求項5】
ローインピーダンス設定のスピーカ装置に接続された第1のオーディオアンプであって、前記第1のオーディオアンプと同様の構成を有する少なくとも1台の第2のオーディオアンプに並列接続され、
予め設定されたゲイン設定値を記憶するゲイン設定値記憶部と、
入力された音声信号に、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値を用いて信号処理を行う信号処理部と、
前記信号処理部で処理された音声信号を増幅する増幅器とを備えるオーディオアンプが、
前記第1のオーディオアンプに規定の音声信号を入力した時に計測された電流値に基づいて、前記スピーカ装置に接続されているオーディオアンプの台数を算出し、算出したオーディオアンプの台数に基づいて前記信号処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値を特定し、特定した値を、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値に加算することを特徴とするオーディオアンプのゲイン調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローインピーダンス方式のオーディオシステム、オーディオアンプ、およびオーディオアンプのゲイン調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広く普及しているオーディオアンプには、ハイインピーダンス設定のスピーカ装置に対応したアンプ(以下、「ハイインピーダンスアンプ」と記載する)と、ローインピーダンス設定のスピーカ装置に対応したアンプ(以下、「ローインピーダンスアンプ」と記載する)と、これら双方の設定に切り替えが可能なアンプとがある。
【0003】
ハイインピーダンスアンプは、例えば、大型のオフィスビルやショッピングセンターなどに設置された多数のハイインピーダンス設定のスピーカ装置に接続して使用される。ハイインピーダンスアンプは、一般的に100Vrms、または70Vrmsの出力電圧値で動作する。例えば出力電圧値が100Vrmsで定められているパワーアンプを例に挙げると、定格出力100Wのハイインピーダンスアンプには、比較的小音量で使用するハイインピーダンス設定(例えば、インピーダンス10kΩ)のスピーカ装置を100台接続可能である。また、定格出力200Wのハイインピーダンスアンプには、同様のスピーカ装置を200台接続可能である。また、定格出力100Wのハイインピーダンスアンプを2台並列接続させた場合も、同様のスピーカ装置を200台接続させることが可能になる。
【0004】
一方、ローインピーダンスアンプは、例えばステレオ機器などに用いられ、1台のローインピーダンス設定のスピーカ装置に接続して使用される。ローインピーダンスアンプは接続されたスピーカ装置の性能や接続状態により出力電圧が変化する。例えば、定格出力100Wのローインピーダンスアンプに、大音量の出力に対応可能なローインピーダンス設定(例えば、インピーダンス4Ω)のスピーカ装置を1台接続させると出力電圧値は20Vrmsになり、定格出力200Wのローインピーダンスアンプに同様のスピーカ装置を1台接続させると、出力電圧値は28Vmrsになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-47256号公報
【文献】特開2016-72876号公報
【文献】特開2003-309437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したローインピーダンスアンプの使用場面において、さらに大音量で音声を出力させるために定格入力の大きいスピーカ装置、例えば1台の200Wのスピーカ装置を用いても、接続するローインピーダンスアンプの定格出力が100Wであると上述したように出力電圧値は20Vmrsであり、1台の100Wのスピーカ装置を用いた場合と音圧レベルが変わらない。
【0007】
ここで、複数台のローインピーダンスアンプを並列接続させたとしても、1台あたりの出力電力量が単独で使用する場合よりも低下し、結果として、スピーカ装置から出力される音声の音圧レベルが、単独のローインピーダンスアンプを用いる場合と変わらなくなってしまう。そのため、ローインピーダンスアンプの台数を増やしても、1台の定格入力の大きいスピーカ装置に対応した大音量の音声情報を提供することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、ローインピーダンス設定のスピーカ装置に対し、オーディオアンプの台数に応じた音圧レベルの音声情報を出力させることが可能な、ローインピーダンス方式のオーディオシステム、オーディオアンプ、およびオーディオアンプのゲイン調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のオーディオシステムは、ローインピーダンス設定のスピーカ装置と、並列接続された状態で、前記スピーカ装置に接続された複数台のオーディオアンプとを備え、前記複数台のオーディオアンプはそれぞれ、予め設定されたゲイン設定値を記憶するゲイン設定値記憶部と、入力された音声信号に、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値を用いて信号処理を行う信号処理部と、前記信号処理部で処理された音声信号を増幅する増幅器と、自装置の出力電流値を計測する電流値計測器と、前記電流値計測器で計測された電流値に基づいて、前記スピーカ装置に接続されているオーディオアンプの台数を算出し、算出したオーディオアンプの台数に基づいて前記信号処理部での処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値を特定し、特定した値を、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値に加算するゲイン設定値更新部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のオーディオアンプは、ローインピーダンス設定のスピーカ装置に接続された第1のオーディオアンプであって、少なくとも1台の第2のオーディオアンプに並列接続され、予め設定されたゲイン設定値を記憶するゲイン設定値記憶部と、入力された音声信号に、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値を用いて信号処理を行う信号処理部と、前記信号処理部で処理された音声信号を増幅する増幅器と、前記第1のオーディオアンプの出力電流値を計測する電流値計測器と、前記電流値計測器で計測された電流値に基づいて、前記スピーカ装置に接続されているオーディオアンプの台数を算出し、算出したオーディオアンプの台数に基づいて前記信号処理部での処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値を特定し、特定した値を、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値に加算するゲイン設定値更新部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のオーディオアンプのゲイン調整方法は、ローインピーダンス設定のスピーカ装置に接続された第1のオーディオアンプであって、少なくとも1台の第2のオーディオアンプに並列接続され、予め設定されたゲイン設定値を記憶するゲイン設定値記憶部と、入力された音声信号に、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値を用いて信号処理を行う信号処理部と、前記信号処理部で処理された音声信号を増幅する増幅器とを備えるオーディオアンプが、前記第1のオーディオアンプの出力電流値を計測し、計測された電流値に基づいて、前記スピーカ装置に接続されているオーディオアンプの台数を算出し、算出したオーディオアンプの台数に基づいて前記信号処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値を特定し、特定した値を、前記ゲイン設定値記憶部に記憶されたゲイン設定値に加算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオーディオシステム、オーディオアンプ、およびオーディオアンプのゲイン調整方法によれば、ローインピーダンス設定のスピーカ装置に対し、オーディオアンプの接続台数に応じた音圧レベルの音声情報を出力させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態によるオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態によるオーディオシステムに用いるオーディオアンプで実行されるゲイン調整処理の動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態によるオーディオシステムに用いるオーディオアンプのゲイン設定値更新部に保持された、オーディオアンプの台数ごとのゲイン設定値の加算可能値を示すテーブルである。
図4】(a)は、本発明の第1実施形態によるオーディオシステムで用いるオーディオアンプの並列接続数ごとに、スピーカ装置の入力電力値、入力電圧値、および入力電流値と、各オーディオアンプの出力電力値、出力電圧値、および出力電流値とを示した表であり、(b)は、従来のオーディオシステムで用いるオーディオアンプの並列接続数ごとに、スピーカ装置の入力電力値、入力電圧値、および入力電流値と、各オーディオアンプの出力電力値、出力電圧値、および出力電流値とを示した表である。
図5】本発明の第2実施形態によるオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態によるオーディオシステムに用いるオーディオアンプで実行される異常監視処理の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態によるオーディオシステム内に3台以上のオーディオアンプを設置する場合の、異常検知情報送信用の通信線の接続状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるオーディオシステムの構成〉
本発明の第1実施形態によるオーディオシステム1Aの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態によるオーディオシステム1Aは、ローインピーダンス設定のスピーカ装置10と、スピーカ装置10に接続される2台のオーディオアンプ(第1オーディオアンプ20Aおよび第2オーディオアンプ30A)とを備える。第1オーディオアンプ20Aと第2オーディオアンプ30Aとは、並列接続された状態で、スピーカ装置10に接続されている。
【0015】
第1オーディオアンプ20Aは、リミッター回路21と、プリアンプ回路22と、増幅器23と、電流値計測器24と、CPU25Aとを有する。
【0016】
リミッター回路21は、入力された音声信号に対し、信号レベルが所定値以下に収まるように圧縮等により制限をかける。プリアンプ回路22は、予め設定されたゲイン設定値を記憶するゲイン設定値記憶部221と、入力された音声信号に、ゲイン設定値記憶部221に記憶されたゲイン設定値を用いて信号処理を行う信号処理部222とを有する。増幅器23はパワーアンプであり、信号処理部222で処理された音声信号を増幅する。電流値計測器24は、自オーディオアンプ20Aの出力電流値を計測する。
【0017】
CPU25Aは、ゲイン設定値更新部251を有する。ゲイン設定値更新部251は、電流値計測器24で計測された電流値に基づいて、スピーカ装置10に接続されているオーディオアンプの台数を算出し、算出した台数に基づいて、信号処理部222での処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値を特定する。そして、特定した値を、ゲイン設定値記憶部221に記憶されたゲイン設定値に加算する。
【0018】
第2オーディオアンプ30Aは、第1オーディオアンプ20Aと同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0019】
〈第1実施形態によるオーディオシステムの動作〉
次に、本実施形態によるオーディオシステム1Aの動作として、第1オーディオアンプ20Aおよび第2オーディオアンプ30Aそれぞれにおいて実行されるゲイン調整処理について、図2を参照して説明する。このゲイン調整処理は、オーディオシステム1Aが構築された後、通常使用の前にテストモード動作にて実行される。
【0020】
本実施形態において、スピーカ装置10は定格入力200W、インピーダンス4Ωであり、スピーカ装置10に接続される第1オーディオアンプ20Aおよび第2オーディオアンプ30Aはそれぞれ定格出力100Wである。
【0021】
まず、オーディオシステム1Aにテストモード動作で用いる音声信号が入力されると(S1の「YES」)、第1オーディオアンプ20Aのリミッター回路21にて、当該音声信号の信号レベルが所定の閾値tを超えるか否かが判定される(S2)。この判定に用いられる閾値tは、当該第1オーディオアンプ20Aで正常に増幅処理可能な信号レベル範囲の上限値として予め設定された値である。
【0022】
ここで、信号レベルが閾値tを超えていた場合には(S2の「YES」)、リミッター回路21により当該音声信号に圧縮処理等が施され、所定値内に収まるように制限がかけられる(S3)。
【0023】
次に、入力された音声信号に対し、プリアンプ回路22の信号処理部222において、ゲイン設定値記憶部221に予め記憶されたゲイン設定値を用いた信号処理が実行される(S4)。ここでは、ゲイン設定値記憶部221には、初期状態として、定格出力100Wのオーディオアンプが1台でインピーダンスが4Ωのスピーカ装置10を駆動するために、出力電流5Arms、出力電圧20Vrmsとなるように、ゲイン設定値が記憶されている。
【0024】
次に、信号処理部222で処理が施された音声信号をスピーカ装置10で出力させるために、当該音声信号が増幅器23により増幅される(S5)。そして、電流値計測器24により、増幅器23で増幅された音声信号をスピーカ装置10に送信する信号線を流れる電流値が計測される(S6)。
【0025】
そして、CPU25Aのゲイン設定値更新部251において、電流値計測器24で計測された電流値に基づいて、スピーカ装置10に接続されているオーディオアンプの台数が算出される。ここで、ゲイン設定値更新部251には、予め、スピーカ装置10に接続されたオーディオアンプが1台のみの場合に当該第1オーディオアンプ20Aの出力電流値として、前記初期状態である5 Armsが保持されている。4Ωのスピーカ装置10に前記初期状態のゲイン設定のアンプが例えば2台並列接続された場合には、スピーカ装置10の入力電圧は20Vrmsと変わらず、入力される電流が5Armsとなるよう、1台のオーディオアンプの出力電流が2.5Armsとなる。
【0026】
つまり、計測された電流値が5 Armsであればスピーカ装置10に接続されたオーディオアンプは1台と算出され、計測された電流値が2.5 Armsであれば、5 Arms/2.5 Armsによりオーディオアンプは2台と算出され、計測された電流値が1.7 Armsであれば、5 Arms/1.7 Armsによりオーディオアンプは3台と算出される。本実施例では計測された電流値が2.5 Armsであり、スピーカ装置10に接続されたオーディオアンプは2台と算出される。
【0027】
次に、ゲイン設定値更新部251において、算出したオーディオアンプの台数に基づいて、信号処理部222での処理に用いるゲイン設定値に加算可能な値が算出される。ここで、ゲイン設定値更新部251には、予め、接続されたオーディオアンプの台数ごとのゲイン設定値の加算可能値が保持されている。
【0028】
ゲイン設定値更新部251に保持された、オーディオアンプの台数ごとのゲイン設定値の加算可能値は、スピーカ装置10の定格入力、インピーダンス、およびスピーカ装置10に接続されるオーディオアンプの定格出力に基づいて、図3のテーブルに示すように予め設定されている。ここでは、接続されたオーディオアンプが2台と算出されたことから、図3のテーブルに基づいて、ゲイン設定値の加算可能値は3.0 dBと特定される。
【0029】
そして、ゲイン設定値更新部251により、ゲイン設定値記憶部221に記憶されたゲイン設定値に、特定されたゲイン設定値の加算可能値3.0dBが加算されて更新されることで(S7)、当該第1オーディオアンプ20Aのゲイン調整処理が行われる。同様にして、第2オーディオアンプ30Aにおいても、ゲイン調整処理が実行される。
【0030】
このようにゲイン調整が行われると、並列接続された2台のオーディオアンプ20A、30Aがスピーカ装置10に接続される際に、これらの定格出力が有効に利用され、1台のオーディオアンプが接続されたときよりも大きい音圧レベルで音声が出力される。
【0031】
具体的には、図4(a)に示すように、スピーカ装置10に接続されるオーディオアンプの台数を1台から2台にしてゲイン設定値が3dB加算されたときには、これら2台のオーディオアンプの出力電力値は20.0Vrmsから 28.3Vrmsとなり、1台あたりの出力電力値は100Wが維持される。その結果、2台のオーディオアンプからスピーカ装置10内に200Wの入力電力を与えることができ、より大きな音圧レベルの音声情報を出力させることができる。また、接続させるオーディオアンプの台数をさらに3台、4台・・・と増やしたときにも各オーディオアンプの出力電力値は100Wが維持され、スピーカ装置10内の入力電力が台数に応じて増加してさらに大きな音圧レベルで音声情報を出力させることができる。
【0032】
比較例として図4(b)に、スピーカ装置10に、ゲイン設定値の更新機能を持たない従来のオーディオアンプを接続させたときのスピーカ装置10の入力電力値等を、接続されるオーディオアンプの台数ごとに示す。この場合、スピーカ装置10に接続されるオーディオアンプの台数を1台から2台にした場合、これら2台のオーディオアンプの出力電圧値は20.0Vrmsのまま変わらず、1台あたりの出力電力値は100Wから50Wに低下する。その結果、2台のオーディオアンプからスピーカ装置10への入力電力は合計しても100Wのまま変わらない。また、接続させるオーディオアンプの台数をさらに3台、4台・・・と増やすと各オーディオアンプの出力電力はさらに低下するため、スピーカ装置10内の入力電力は変わらないままとなる。
【0033】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるオーディオシステムの構成〉
本発明の第2実施形態によるオーディオシステム1Bの構成について、図5を参照して説明する。本実施形態によるオーディオシステム1Bは、第1オーディオアンプ20Bが保護回路26をさらに有し、CPU25Bが検知情報処理部252をさらに有し、第2オーディオアンプ30Bも第1オーディオアンプ20Bと同様の追加構成を有する他は、第1実施形態で説明したオーディオシステム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0034】
保護回路26は、異常検知部261と動作停止回路262とを有する。異常検知部261は、第1オーディオアンプ20B内で発生した異常を検知する。第1オーディオアンプ20B内で発生する異常としては例えば、素子不良やユーザーによる誤使用/誤配線により発生する異常電圧、異常電流、異常発熱などがある。動作停止回路262は、異常検知部261で異常が検知されるかまたは、後述するCPU25Bの検知情報処理部252で他のオーディオアンプから送信された異常検知情報が取得されると、第1オーディオアンプ20B内の動作を停止させる。CPU25Bの検知情報処理部252は他のオーディオアンプに通信線40で接続され、異常検知部261で異常が検知されると、異常検知情報を他のオーディオアンプに送信する。また検知情報処理部252は、他のオーディオアンプから送信された、当該他のオーディオアンプで異常が検知されたことを示す異常検知情報を取得する。
【0035】
〈第2実施形態によるオーディオシステムの動作〉
本実施形態によるオーディオシステム1Bでは、通常使用前にテストモード動作で第1実施形態と同様のゲイン調整処理が実行された後、通常使用中に、異常監視処理が実行される。通常使用中に実行される異常監視処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
通常使用中、異常検知部261では、第1オーディオアンプ20B内で異常が検知されたか否かが監視される(S11)。異常が検知されると(S11の「YES」)、CPU25Bの検知情報処理部252により第2オーディオアンプ30Bに異常検知情報が送信され、動作停止回路262により第1オーディオアンプ20B内の動作が停止される(S12)。第2オーディオアンプ30Bにおいても同様の処理が実行され、第2オーディオアンプ30B内の異常が検知されると、異常検知情報が第1オーディオアンプ20Bに送信される。
【0037】
また、第1オーディオアンプ20Bでは異常が検知されていないが(S11の「NO」)、CPU25Bの検知情報処理部252において第2オーディオアンプ30Bから異常検知情報が取得されると(S13の「YES」)、動作停止回路262により第1オーディオアンプ20Bの動作が停止される(S14)。第2オーディオアンプ30Bにおいても同様に、第1オーディオアンプ20Bから異常検知情報が取得されると、第2オーディオアンプ30Bの動作が停止される。
【0038】
以上の第2実施形態によれば、並列接続される複数のオーディオアンプの中のいずれかで異常が検知された場合には、これらすべてのオーディオアンプの動作を停止させることで、異常が発生したオーディオアンプ以外のアンプに負荷が集中して故障が発生することを回避することができる。
【0039】
上述した第2実施形態において、スピーカ装置10に3台以上のn台のオーディオアンプを接続させる場合には、図7に示すように、通信線40でこれらのオーディオアンプ間をデイジーチェーン接続してオーディオシステムを構成する。このように構成することにより、いずれかのオーディオアンプで異常が検知されたときに、他のすべてのオーディオアンプに順次異常検知情報が送信される。
【0040】
上述した第1実施形態および第2実施形態において、スピーカ装置10に接続させるオーディオアンプとして、電流帰還型のオーディオアンプを用いてもよい。電流帰還型のオーディオアンプは、自装置内の電流値計測器で計測された計測値を所定範囲に収めるために、増幅器において出力電流値を調整するように増幅処理を実行する。電流帰還型のオーディオアンプにおける電流値計測器は、第1実施形態および第2実施形態の電流値計測器24と兼用することができる。
【0041】
電流帰還型のオーディオアンプを用いることにより、並列接続時のオーディオアンプの異常電流の抑制が可能となる。例えば、素子バラつき等の要因で想定しているゲインに対して大きなズレが発生すると、並列接続している複数のオーディオアンプそれぞれの出力電圧値にも大きなズレが発生する。その結果、特定のオーディオアンプに異常電流が発生し故障の要因にもなるが、出力電流値を調整する増幅処理を実行することにより、前述した故障を回避する事ができる。
【0042】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、オーディオアンプの接続台数に応じたゲイン調整処理を信号処理部222で行う場合について説明したが、増幅器23において、音声信号を増幅するゲインをオーディオアンプの接続台数に応じて調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B オーディオシステム
10 スピーカ装置
20A,20B 第1オーディオアンプ
21 リミッター回路
22 プリアンプ回路
23 増幅器
24 電流値計測器
25A,25B CPU
26 保護回路
30A,30B 第2オーディオアンプ
40 通信線
221 ゲイン設定値記憶部
222 信号処理部
251 ゲイン設定値更新部
252 検知情報処理部
261 異常検知部
262 動作停止回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7