(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/123 20060101AFI20240115BHJP
F16F 15/129 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16F15/123 D
F16F15/123 B
F16F15/129 C
(21)【出願番号】P 2020030443
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-098833(JP,U)
【文献】特開昭61-041019(JP,A)
【文献】実開昭63-146250(JP,U)
【文献】実開平02-146230(JP,U)
【文献】特開昭57-079333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/123
F16F 15/129
F16F 15/134
F16D 11/00- 23/14
F16F 15/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1収容部を有する第1回転体と、
前記第1回転体と相対回転可能に配置され、複数の第2収容部を有し、前記第2収容部は円周方向の両端部に押圧面を有する、第2回転体と、
前記第1収容部及び前記第2収容部に収容され、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
複数の第1切欠及び第2切欠と、複数のストップ部材と、を有し、複数の前記第1切欠及び第2切欠は、前記第2収容部の円周方向の両側に円周方向に延びるように形成されており、複数のストップ部材は、前記第1回転体に固定され前記第1切欠内及び前記第2切欠内において円周方向に移動可能である、ストッパ機構と、
を備え、
前記第2回転体は、前記第2収容部の一方の押圧面に円周方向に突出する突出部を有し、
前記第1切欠は孔であって、前記第1切欠の前記第2収容部に近い端部は、前記突出部に向かって延びて
おり、
前記第2切欠は孔であって、前記第2収容部に近い端部は前記第2収容部に連通している、
ダンパ装置。
【請求項2】
複数の第1収容部を有する第1回転体と、
前記第1回転体と相対回転可能に配置され、複数の第2収容部を有し、前記第2収容部は、円周方向の両端部に押圧面を有するとともに、一方の押圧面に円周方向に突出する突出部を有する、第2回転体と、
前記第1収容部及び前記第2収容部に収容され、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する複数の弾性部材と、
複数の第1切欠及び第2切欠と、複数のストップ部材と、を有し、複数の前記第1切欠及び第2切欠は、前記第2収容部の円周方向の両側に円周方向に延びるように形成されており、前記第1切欠は孔であって、前記第1切欠の前記第2収容部に近い端部は、前記突出部に向かって延びており、複数のストップ部材は、前記第1回転体に固定され前記第1切欠内及び前記第2切欠内において円周方向に移動可能である、ストッパ機構と、
前記突出部が形成された第2収容部の押圧面に支持されるとともに、前記弾性部材の端面を支持するスプリングシート
と、
を備え、
前記スプリングシートは、端面支持部と外周支持部とを有し、
前記端面支持部は、径方向の中央部に、前記弾性部材側に向かって凹み前記突出部が嵌まり込む凹部を有し、
前記外周支持部は、前記弾性部材の径方向外側部の一部を支持す
る、
ダンパ装置。
【請求項3】
前記第2回転体は、前記第2収容部の他方の押圧面に円周方向に突出する突出部を有し、
前記第2切欠は孔であって、前記第2切欠の前記第2収容部に近い端部は、前記突出部に向かって延びている、
請求項
2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第2切欠は孔であって、前記第2収容部に近い端部は前記第2収容部に連通している、請求項
2又は3に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記第1切欠は、第1ピッチ径上に円弧状に形成され、
前記第2切欠は、前記第1ピッチ径より内周側の第2ピッチ径上に円弧状に形成された孔である、
請求項
1又は2に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで発生した動力をトランスミッション側に伝達するとともに、回転変動を減衰するために、車両には、ダンパ装置を有する動力伝達装置が搭載されている。
【0003】
この種のダンパ装置は、入力回転体と、出力回転体と、複数のコイルスプリングと、を有している。コイルスプリングは、入力回転体の窓部及び出力回転体の窓孔に配置され、入力回転体と出力回転体とを回転方向に弾性的に連結している。
【0004】
また、ダンパ装置には、特許文献1に示されるように、入力回転体と出力回転体との互いの相対回転を規制するために、ストッパ機構が設けられている。ストッパ機構は、複数のストップピンと切欠とによって構成されている。ストップピンは、入力回転体に固定され、出力回転体に形成された切欠を通過している。
【0005】
特許文献1では、ストッパ機構を構成する切欠として、外周側に開く切欠が形成されているが、他の構成として、円弧状のストッパ用の孔を形成し、このストッパ用孔にストップピンを通過させたものも提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ダンパ装置の回転変動性能を良好にするためには、入力回転体に対する出力回転体の捩り角度を広くすること(すなわち、広角化すること)が好ましい。この広角化のためには、出力回転体の切欠又はストッパ用孔の円周方向の長さを長く確保する必要がある。
【0008】
しかし、出力回転体において、ストッパ用孔を含む切欠と窓孔とは、径方向において重なる位置に配置される場合が多く、このため、ストッパ用孔を長く形成することができない。
【0009】
本発明の課題は、ダンパ装置において、ストッパ機構を構成するストッパ用孔を、円周方向に長く形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るダンパ装置は、第1回転体と、第2回転体と、複数の弾性部材と、ストッパ機構と、を備えている。第1回転体は複数の第1収容部を有する。第2回転体は、第1回転体と相対回転可能に配置され、複数の第2収容部を有し、第2収容部は円周方向の両端部に押圧面を有する。複数の弾性部材は、第1収容部及び第2収容部に収容され、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。ストッパ機構は、複数の第1切欠及び第2切欠と、複数のストップ部材と、を有する。複数の第1切欠及び第2切欠は、第2収容部の円周方向の両側に円周方向に延びるように形成されている。複数のストップ部材は、第1回転体に固定され、第1切欠内及び第2切欠内において円周方向に移動可能である。
【0011】
また、第2回転体は、第2収容部の一方の押圧面に円周方向に突出する突出部を有し、第1切欠は孔であって、第1切欠の第2収容部に近い端部は、突出部に向かって延びている。
【0012】
ここでは、第2収容部の一方の押圧面に突出部が形成されている。したがって、ストッパ機構の第1切欠(孔)の円周方向の端部を、突出部に向かって長く形成することができる。この結果、第1回転体と第2回転体との捩り角度を広角化することができる。
【0013】
(2)好ましくは、第2回転体は、第2収容部の他方の押圧面に円周方向に突出する突出部を有している。この場合、第2切欠は孔であって、第2切欠の第2収容部に近い端部は、突出部に向かって延びている。
【0014】
(3)好ましくは、第2切欠は孔であって、第2収容部に近い端部は第2収容部に連通している。この場合は、ストッパ機構の第2切欠を円周方向に長く形成することができ、捩り角度を広角化することができる。
【0015】
(4)好ましくは、第1切欠は、第1ピッチ径上に円弧状に形成され、第2切欠は、ピッチ径より内周側の第2ピッチ径上に円弧状に形成された孔である。
【0016】
ここでは、第1切欠と孔としての第2切欠とが、径方向にずれた位置に形成されている。このため、円周方向に隣接する2つの切欠を近づけることができ、第1回転体及び第2回転体のそれぞれの強度が不均一になるのを抑えることができる。
【0017】
(5)好ましくは、ダンパ装置はスプリングシートをさらに備えている。スプリングシートは、突出部が形成された第2収容部の押圧面に支持されるとともに、弾性部材の端面を支持する。このスプリングシートは、端面支持部と外周支持部とを有している。端面支持部は、径方向の中央部に、弾性部材側に向かって凹み突出部が嵌まり込む凹部を有している。また、外周支持部は、弾性部材の径方向外側部の一部を支持する。
【0018】
ここでは、第2収容部にスプリングシートを設けた場合でも、前記同様に、ストッパ機構の切欠を円周方向に長く形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明では、ダンパ装置において、ストッパ機構を構成するストッパ用孔を、円周方向に長く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置の断面図。
【
図2】
図1のダンパ装置のダンパユニットの正面図。
【
図4】
図1のダンパ装置に設けられたスプリングシートの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
-第1実施形態
[全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置1(以下、単に「ダンパ装置」と記載する場合もある)の断面図である。また、
図2はダンパ装置1の正面図であり、一部の部材を取り外して、又は部材の一部を削除して示している。
図1において、O-O線は回転軸である。
図1において、ダンパ装置1の左側にエンジンが配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置される。
【0022】
なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置1の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。なお、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向に完全に一致している必要はなく、例えば、
図2の上部に示された窓部及び窓孔を基準とした左右方向も含む概念である。また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の直径方向に完全に一致している必要はなく、例えば、
図2の上部に示された窓部及び窓孔を基準とした上下方向も含む概念である。
【0023】
このダンパ装置1は、図示しないフライホイールと駆動ユニットの入力軸との間に設けられ、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するための装置である。ダンパ装置1は、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、を有している。
【0024】
[トルクリミッタユニット10]
トルクリミッタユニット10は、ダンパユニット20の外周側に配置されている。トルクリミッタユニット10は、フライホイールとダンパユニット20との間で伝達されるトルクを制限する。トルクリミッタユニット10は、第1サイドプレート11及び第2サイドプレート12と、摩擦ディスク13と、プレッシャプレート14と、コーンスプリング15と、を有している。
【0025】
第1サイドプレート11と第2サイドプレート12とは複数のリベットによって互いに固定されている。摩擦ディスク13は、コアプレート131及び1対の摩擦部材132を有している。プレッシャプレート14及びコーンスプリング15は、第1サイドプレート11と摩擦ディスク13との間に配置されている。コーンスプリング15は、プレッシャプレート14を介して摩擦ディスク13を第2サイドプレート12に押圧している。
【0026】
[ダンパユニット20]
ダンパユニット20は、入力側プレート21(第1回転体の一例)と、ハブフランジ22(第2回転体の一例)と、入力側プレート21とハブフランジ22との間に配置されたダンパ部23と、から構成されている。
【0027】
<入力側プレート21>
入力側プレート21は、第1プレート211と第2プレート212とを有している(以下、第1プレート211及び第2プレート212を併せて「入力側プレート21」と記載する場合もある)。第1プレート211及び第2プレート212は、ともに中心孔を有する環状の部材である。第1プレート211と第2プレート212とは、4個のストップピン24によって、軸方向に所定の間隔をあけて互いに固定されている。したがって、第1プレート211と第2プレート212とは、軸方向及び回転方向に相対的に移動不能である。また、第1プレート211には、ストップピン24によって摩擦ディスク13のコアプレート131の内周部が固定されている。
【0028】
第1プレート211及び第2プレート212には、それぞれ1対の
第1窓部21a(第1収容部の一例)及び第2窓部21bが形成されている。1対の第1窓部21aは、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。
図2では、第2プレート212の第1窓部21a及び第2窓部21bが示されているが、第1プレート211の第1窓部及び第2窓部も同様の構成である。1対の第1窓部21aは、それぞれのプレート211,212を切り起こして形成されており、円周方向の両端面に押圧面21cを有し、外周縁及び内周縁にそれぞれ支持部を有している。また、1対の第2窓部21bは、第1窓部とは90°の間隔をあけて、
回転軸Oを挟んで対向して配置されている。1対の第2窓部21bは、軸方向に貫通する矩形の開口であり、円周方向の両端面に押圧面21dを有している。
【0029】
<ハブフランジ22>
ハブフランジ22は、入力側プレート21からのトルクを出力側の装置に伝達するための部材である。ハブフランジ22は、ハブ221とフランジ222とを有している。ハブ221とフランジ222とは、
図2に示すように、複数の歯と、この歯が噛み合う複数の凹部と、によって一体化されている。
【0030】
ハブ221は筒状の部材であり、第1プレート211及び第2プレート212の中心孔内に配置されている。ハブ221の内周部にはスプライン孔が形成されており、このスプライン孔に出力側の部材がスプライン係合可能である。
【0031】
フランジ222は、
図2及び
図3に示すように、円板状に形成され、第1プレート211と第2プレート212との軸方向間に配置されている。フランジ222は、中心孔と、それぞれ1対の第1窓孔22a(第2収容部の一例)及び第2窓孔22bと、4個のストッパ用孔22c(第1切欠及び第2切欠の一例)と、を有している。
【0032】
第1窓孔22aは、回転軸Oを挟んで対向して配置されており、第1プレート211及び第2プレート212の第1窓部21aと対応する位置に形成されている。第1窓孔22aは、円周方向の両端面に押圧面22dを有している。そして、各押圧面22dは、径方向の中心部に、対向する押圧面22dに向かって膨らむように突出する突出部22eを有している。
【0033】
第2窓孔22bは、第1窓孔22aとは90°の間隔をあけて、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。すなわち、第2窓孔22bは、第1プレート211及び第2プレート212の第2窓部21bと対応する位置に形成されている。第2窓孔22bは円弧状に形成されており、第2窓孔22bのピッチ径(孔の径方向の幅の中央位置の半径)は、第1窓孔22aの径方向の中心位置よりも径方向内側に位置している。第2窓孔22bは、円周方向の両端面に押圧面22fを有しており、両押圧面22f間の距離は、入力側プレート21の第2窓部21bの両押圧面21d間の距離より長く設定されている。
【0034】
ストッパ用孔22cは、第1窓孔22aの円周方向の両側において、円弧状に延びる長孔である。ストッパ用孔22cの第1窓孔22aから離れた側の端部は、第2窓孔22bの径方向外側にまで延びている。また、ストッパ用孔22cの第1窓孔22aに近い方の端部は、第1窓孔22aの突出部22eに向かって延びている。具体的には、ストッパ用孔22cの第1窓孔22a側の端部は、直線Lに到達している。ここで、直線Lは、第1窓孔22aの突出部22eが形成されていない外周側の端面と内周側の端面とをつなぐ直線である。
【0035】
このような構成では、第1窓孔22aに突出部22eが形成されていない場合に比較して、ストッパ用孔22cの第1窓孔22a側の端部を、より長く延ばして形成することができる。この結果、第1窓孔22aを挟む1対のストップピン24の間の角度を、90度に近づけることができる。なお、4つのストッパ用孔22cのピッチ径は同じである。すなわち、4つのストッパ用孔22cは、同一円周上に形成されている。
【0036】
また、ストッパ用孔22cにはストップピン24が軸方向に貫通している。このため、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24がストッパ用孔22c内において移動可能な範囲で相対回転可能である。言い換えれば、ストップピン24とストッパ用孔22cとによってストッパ機構25が構成されており、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24がストッパ用孔22cの端面に当接することによって、互いの相対回転が禁止される。
【0037】
<ダンパ部23>
ダンパ部23は、入力側プレート21とハブフランジ22とを回転方向に弾性的に連結するための機構であり、
図1及び
図2に示すように、それぞれ2個のコイルスプリング27及び樹脂部材28と、コイルスプリング27の端面を支持する1対のスプリングシート30と、ヒス発生機構31(
図1参照)と、を有している。
【0038】
コイルスプリング27はフランジ222の第1窓孔22aに収容され、樹脂部材28はフランジ222の第2窓孔22bに収容されている。また、コイルスプリング27及び樹脂部材28は、第1プレート211及び第2プレート212の各窓部21a,21bによって、軸方向及び径方向に支持されている。
【0039】
なお、樹脂部材28は、入力側プレート21の第2窓部21bに対して、円周方向に隙間なく配置されている。一方、樹脂部材28は、フランジ222の第2窓孔22bの円周方向の幅よりも短い。すなわち、入力側プレート21とハブフランジ22とが相対回転していない(捩り角度「0」)の中立時においては、樹脂部材28の両端部と、フランジ222の第2窓孔22bの押圧面22fと、の間には、隙間(隙間の詳細については後述)が形成されている。
【0040】
スプリングシート30は、フランジ222の第1窓孔22aの円周方向の両端部に配置されている。スプリングシート30は、コイルスプリング27の端面を支持するとともに、コイルスプリング27の外周部の一部(円周方向の両端部)を支持する。
【0041】
図4及び
図5に示すように、スプリングシート30は、端面支持部301と、外周支持部302と、を有している。なお、
図4はスプリングシート30の側面図(円周方向の一方側から視た図)であり、
図5は
図4のV-V線断面図である。
【0042】
端面支持部301は、コイルスプリング27の端面を支持するとともに、入力側プレート21の第1窓部21aの押圧面21c及びフランジ222の第1窓孔22aの押圧面22dに支持されている。端面支持部301の、第1窓孔22aの押圧面22dに支持されている面には、
図5に示すように、コイルスプリング27側に向かって円弧状に凹む凹部301aが形成されている。また、この凹部301aの中央部、すなわち、径方向の中央部でかつ軸方向の中央部に、円周方向に貫通する孔301bを有している。そして、フランジ222の第1窓孔22aの突出部22eが、この凹部301aに嵌まり込んでいる。
【0043】
以上のように、コイルスプリング27は、第1プレート211及び第2プレート212の第1窓部21aと、フランジ222の第1窓孔22aと、にスプリングシート30を介して円周方向に隙間なく収容されている。
【0044】
外周支持部302は、端面支持部301の外周端部から円周方向に延びて形成されている。この外周支持部302は、コイルスプリング27の両端部の外周部と、第1窓部21a及び第1窓孔22aの内周面と、の間に配置されている。このため、コイルスプリング27が遠心力によって、あるいは圧縮された状態で、外周側に移動しても、コイルスプリング27と第1窓部21a及び第1窓孔22aとの接触を避けることができる。
【0045】
ヒス発生機構31は、第1プレート211及び第2プレート212と、ハブフランジ22と、の軸方向間に配置されている。ヒス発生機構31は、
図1に示すように、第1ブッシュ41と、第2ブッシュ42と、第3ブッシュ43と、コーンスプリング44と、を有している。
【0046】
第1ブッシュ41及び第2ブッシュ42は、ハブ221の外周面において、第1プレート211の内周端部とフランジ222との軸方向間に配置されている。第2ブッシュ42は、ハブ221と相対回転不能に係合しており、第1ブッシュ41との間で摩擦接触する。第3ブッシュ43は、第2プレート212の内周端部とフランジ222との軸方向間に配置されている。第3ブッシュ43は第2プレート212と相対回転不能に係合しており、フランジ222と摩擦接触する。コーンスプリング44は、第3ブッシュ43と第2プレート212との間に圧縮された状態で配置されている。
【0047】
以上のような構成によって、第1プレート211及び第2プレート212と、ハブフランジ22と、が相対回転した際に、ヒステリシストルクが発生する。
【0048】
[動作]
エンジンからフライホイールに伝達されたトルクは、トルクリミッタユニット10を介してダンパユニット20に入力される。ダンパユニット20では、トルクリミッタユニット10の摩擦ディスク13が固定されている入力側プレート21にトルクが入力され、このトルクは、コイルスプリング27及び樹脂部材28を介してハブフランジ22に伝達される。そして、ハブフランジ22から、出力側の電動機、発電機、変速機等に動力が伝達される。
【0049】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、出力側からエンジンに過大なトルクが伝達される場合がある。このような場合は、トルクリミッタユニット10によってエンジン側に伝達されるトルクが所定値以下に制限される。
【0050】
<正側捩り特性>
ダンパユニット20における正側の捩り特性、すなわち、エンジンからトルクが入力された場合(正側トルクの入力)の特性について説明する。
【0051】
正側トルクが入力されると、
図2において、入力側プレート21はR1方向に回転する。このため、2つのコイルスプリング27は、入力側プレート21の第1窓部21aのR2側の押圧面21cに支持されているスプリングシート30と、フランジ222の第1窓孔22aのR1側の押圧面22dに支持されているスプリングシート30と、の間で圧縮される。
【0052】
なお、
図2に示すように、樹脂部材28は、中立時において、入力側プレート21の第2窓部21bに隙間なく支持されているが、フランジ222の第2窓孔22bにおいては、R1側及びR2側にそれぞれθ1の円周方向隙間が存在している。また、ストップピン24と各ストッパ用孔22cとの間には、R1側及びR2側にθ2の円周方向隙間が存在している。ここで、各円周方向隙間(以下、単に「隙間」と記載する)の関係は、以下のように設定されている。
【0053】
θ1<θ2
以上のような隙間の設定により、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度(以下、「捩り角度」と記載した場合、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度である)がθ1になるまでは、樹脂部材28は圧縮されない。そして、捩り角度がθ1を超えると、樹脂部材28は、入力側プレート21の第2窓部21bのR2側押圧面21dと、フランジ222の第2窓孔22bのR1側押圧面22fとの間で圧縮される。このため、正側の捩り特性は、
図6で示すように、捩り角度がθ1までは特性C1となり、捩り角度がθ1を超えると特性C2となる。
【0054】
また、捩り角度がθ2になると、ストッパ用孔22cのR1側の端面にストップピン24が当接し、入力側プレート21とハブフランジ22との互いの相対回転が禁止される。
【0055】
<負側捩り特性>
ダンパユニット20における負側の捩り特性、すなわち、駆動ユニット側から逆にトルクが入力された場合(負側トルクの入力)の特性について説明する。
【0056】
負側トルクが入力されると、
図2において、ハブフランジ22は入力側プレート21に対してR1方向に回転する。このため、2つのコイルスプリング27は、ハブフランジ22の第1窓孔22aのR2側押圧面22dに装着されたスプリングシート30と、入力側プレート21の第1窓部21aのR1側押圧面21cに装着されたスプリングシート30と、の間で圧縮される。
【0057】
樹脂部材28の作動については、正側トルクが入力された場合と同様である。すなわち、捩り角度が-θ1になるまでは圧縮されず、捩り角度が-θ1以下では、
図6に示すように、低剛性の捩り特性C1となる。また、捩り角度が-θ1になると、樹脂部材28は、ハブフランジ22の第2窓孔22bのR2側押圧面22fと、入力側プレート21の第2窓部21bのR1側押圧面21dと、の間で圧縮され始める。このため、捩り角度が-θ1を超えると、
図6に示すように、高剛性の捩り特性C2となる。
【0058】
捩り角度が-θ2になると、ストップピン24がストッパ用孔22cのR2側端面に当接し、入力側プレート21とハブフランジ22との互いの相対回転が禁止される。
【0059】
このような実施形態では、スプリングシート30に凹部301aが形成され、この凹部301aに、フランジ222の第1窓孔22aに形成された突出部22eが嵌まり込んでいる。そして、この突出部22eに向かってストッパ用孔22cの端部が延びている。このため、ストッパ用孔22cの円周方向の長さを長くすることができる。すなわち、スプリングシート30に凹部301aがなく、窓孔の端面が1つの平面で形成されている場合(突出部がない場合)に比較して、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度を大きくすること(すなわち、広角化)が可能になる。
【0060】
また、同様の理由により、フランジ222の第1窓孔22aの両側のストッパ用孔22cの端部を互いに近づけることができる。この結果、第1窓孔22aの両側のストップピン24の間の角度を90度に近づけることができ、入力側プレート21及びハブフランジ22の強度の不均一性を抑えることができる。
【0061】
-第2実施形態-
図7及び
図8に本発明の第2実施形態によるダンパユニット20’及びフランジ50を示している。第2実施形態において、フランジ50以外の構成は、第1実施形態と同様である。また、フランジ50において、第1窓孔及びストッパ用孔の構成以外は第1実施形態のフランジ222と同様である。
【0062】
フランジ50は、中心孔と、それぞれ1対の第1窓孔51a(第2収容部の一例)及び第2窓孔51bと、それぞれ1対の第1ストッパ用孔52a(第1切欠の一例)及び第2ストッパ用孔52b(第2切欠の一例)と、を有している。各窓孔51a,51bの配置は、第1実施形態と同様である。
【0063】
第1窓孔51aは、R1側の押圧面51dに突出部51eを有している。突出部51eは、押圧面51dの径方向の中心部に、円周方向に(より具体的にはR2側に向かって)膨らむように突出している。
【0064】
1対の第1ストッパ用孔52aは、第1窓孔51aの円周方向のR1側において、円弧状に延びる長孔である。第1ストッパ用孔52aのR1側の端部は、第2窓孔51bの径方向外側にまで延びている。また、第1ストッパ用孔52aのR2側の端部は、第1窓孔51aの突出部51eに向かって延びている。具体的には、第1ストッパ用孔52aのR2側の端部は、直線Lに到達している。ここで、直線Lは、第1窓孔51aの突出部51eが形成されていない外周側の押圧面と内周側の押圧面とをつなぐ直線である。
【0065】
1対の第2ストッパ用孔52bは、第1窓孔51aの円周方向のR2側において、円弧状に延びる長孔である。第2ストッパ用孔52bのR2側の端部は、第2窓孔51bの径方向外側にまで延び、第2ストッパ用孔52bのR1側の端部は、第1窓孔51aの径方向の中間部に連通している。
【0066】
このような構成では、第1窓孔51aに突出部51eが形成されていない場合に比較して、第1ストッパ用孔52aのR2側の端部を、より長く延ばして形成することができる。また、第2ストッパ用孔52bは第1窓孔51aに連通しているので、第1窓孔51aを挟む1対のストップピン24の間の角度を、90度に近づけることができる。
【0067】
また、第1窓孔51aの一方の端部は第1ストッパ用孔52aと連通していないので、フランジ50の強度の低下を抑えることができる。
【0068】
第2実施形態の捩り特性は第1実施形態と同様であり、このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
ここで、第2実施形態では、1対の第1窓孔51aの径方向位置は同じであるが、第1ストッパ用孔52aのピッチ半径P1(第1ストッパ用孔52aの径方向中央部の半径)は、第2ストッパ用孔52bのピッチ半径P2よりも大きい。すなわち、第1ストッパ用孔52aと第2ストッパ用孔52bとは、径方向にずれた位置に形成されている。
【0070】
このため、第1ストッパ用孔52aのR2側の端部を、第1窓孔51aの径方向の中央部(すなわち突出部51e)に向かって延ばすことができる。また、第2ストッパ用孔52bのR1側の端部を、第1窓孔51aの径方向の中心部に連通させることができる。
【0071】
第2実施形態において、第1窓孔51aのR1側の押圧面51dに用いられるスプリングシート30は、第1実施形態のスプリングシート30と同様である。また、第1窓孔51aのR2側の押圧面に用いられるスプリングシートは、従来から周知のスプリングシートであり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0072】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0073】
(a)前記実施形態では、ハブフランジ22を、ハブ221とフランジ222の2つの部材により構成したが、1つの部材によって構成してもよい。
【0074】
(b)前記実施形態では、コイルスプリングの両端部にスプリングシートを設けたが、スプリングシートがなくてもよい。さらに、コイルスプリングの一方の端部にのみスプリングシートを設けてもよい。
【0075】
(c)第1実施形態において、第1窓孔22aの両端部の押圧面22dに突出部22eを設けたが、一方の押圧面のみに突出部を形成し、他方の押圧面を平坦面にしてもよい。この場合、他方の押圧面に向かって延びるストッパ用孔は、外周側に開く切欠でもよい。
【0076】
(d)弾性部材の構成は、2つのコイルスプリング及び2つの樹脂部材に限定されない。例えば、すべての弾性部材をコイルスプリングにしてもよく、また個数は限定されない。
【0077】
(e)前記実施形態では、本発明をトルクリミッタ付きダンパ装置に適用したが、他のダンパ装置にも同様に適用することができる。
【0078】
【符号の説明】
【0079】
21 入力側プレート(第1回転体)
21a 第1窓部(第1収容部)
21c 押圧面
22 ハブフランジ(第2回転体)
22a,51a 第1窓孔(第2収容部)
22c ストッパ用孔(第1切欠及び第2切欠)
22d 押圧面
22e 突出部
24 ストップピン
25 ストッパ機構
27 コイルスプリング(弾性部材)
28 樹脂部材(弾性部材)
30 スプリングシート
301 端面支持部
302 外周支持部
301a 凹部
302 外周支持部
50 フランジ
52a 第1ストッパ用孔(第1切欠)
52b 第2ストッパ用孔(第2切欠)