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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】肘用サポータ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/08 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
A41D13/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020127053
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024447
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】308019874
【氏名又は名称】株式会社TOSCOM
(73)【特許権者】
【識別番号】500309964
【氏名又は名称】有限会社サンエスケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 俊
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一仁
(72)【発明者】
【氏名】北原 亮
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-100916(JP,U)
【文献】特開2019-108625(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/08
A63B71/08-71/12
A61F5/02-5/34
A61F13/06-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の肘に装着して使用する肘用サポータにおいて、肘及びその前後の部位を覆う弾性伸縮する筒状のサポータ基部と、このサポータ基部の表面に、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材の塗布により形成し、かつ肘関節の中心の周りの所定範囲を除いた肘関節の周辺部を覆う肘関節着圧メンバ部,この肘関節着圧メンバ部の下側端であって肘の屈伸方向を含む面に対する両側位置から手首側の方向へ所定長さにわたって一体に延設形成し、かつ肘を動かした際に当該肘の動きに対して主荷重となる所定の荷重を付与可能な一対の主荷重付加部を有する主荷重付加メンバ部,及び前記肘関節着圧メンバ部の上側端であって肘の屈伸方向を含む面に対する両側位置から肩側の方向へ所定長さにわたって一体に延設形成し、かつ肘を動かした際に当該肘の動きに対して前記主荷重よりも小さい補助荷重を付与可能な一対の補助荷重付加部を有する補助荷重付加メンバ部を設けた荷重付加パターン部とを備えることを特徴とする肘用サポータ。
【請求項2】
前記弾性付着材には、シリコンゴム素材を用いることを特徴とする請求項1記載の肘用サポータ。
【請求項3】
前記補助荷重付加メンバ部は、前記主荷重付加メンバ部に対して塗布密度を小さく形成することを特徴とする請求項1又は2記載の肘用サポータ。
【請求項4】
前記補助荷重付加メンバ部は、メッシュ形状部により形成することを特徴とする請求項3記載の肘用サポータ。
【請求項5】
前記主荷重付加部は、前記肘関節着圧メンバ部の周方向における中間区域に、当該中間区域以外の塗布密度よりも小さく設定した小密度エリア部を形成してなることを特徴とする請求項1記載の肘用サポータ。
【請求項6】
前記小密度エリア部は、メッシュ形状部により形成することを特徴とする請求項5記載の肘用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肘及びその前後の部位を覆うことにより肘の筋肉や関節を保護する肘用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テニス,ゴルフ,野球等のスポーツでは、肘を酷使することも多いため、肘に、テニスヒジ,ゴルフヒジ,野球ヒジ等と呼ばれる炎症を起こすことが知られている。このような炎症は、肘を多用することによる疲労の蓄積を含め、無理な力が加わることによる関節の捻りなどにより痛みとして発生する。このため、肘に装着し、肘及びその前後の部位を覆うことにより肘の筋肉や関節を保護する肘用サポータも提案されている。
【0003】
従来、この種の肘用サポータとしては、特許文献1で開示される肘用屈曲部サポーター,特許文献2で開示される肘用サポーター,及び特許文献3で開示される肘に装着するサポーターが知られている。特許文献1の肘用屈曲部サポーターは、屈伸部を除く他の領域において、サポーター本来の緊縛固定を有効に果たすと共に、肘等の屈伸部においては屈伸を容易にする肘用屈曲部サポーターの提供を目的としたものであり、具体的には、ほぼ筒状長手状のパイル編みしてなるサポーターであって、ほぼその中央において外側領域に足し糸をして編成した湾曲凸部を形成すると共に、該湾曲凸部と対向する内側領域においてフロートメッシュにて編成した非パイル領域とした湾曲部凹部を形成して構成したものである。
【0004】
また、特許文献2の肘用サポーターは、着用者の腕や手首の筋肉を活性化させ、快適に登山やハイキングを行うことが期待できる肘用サポーターの提供を目的としたものであり、具体的には、着用者の腕の少なくとも肘関節上下を被覆する筒状のサポーター本体と、前記サポーター本体の一端の周囲に、略半周ずつ設けられた第l及び第2の伸縮阻害部と、他端の周囲表面に略半周ずつ設けられた第3及び第4の伸縮阻害部とを備え、第1の伸縮阻害部は上腕二頭筋を、第2の伸縮阻害部は上腕三頭筋を圧迫し、第3の伸縮阻害部は腕橈骨筋・長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋を圧迫し、第4の伸縮阻害部は橈側手根屈筋・尺側手根屈筋を圧迫し得るように、第1及び第2の伸縮阻害部と第3及び第4の伸縮阻害部とを、略90゜ねじれの位置に配置して構成したものである。
【0005】
さらに、特許文献3の肘に装着するサポーターは、経絡の上流から経絡に沿って金色体を配置し、最後に銀色体を配置することで、経絡に関連する筋肉が弛緩し、痛みを緩和させることを目的としたものであり、具体的には、肘に装着する本体の内面に、経絡に沿う位置に金色体と銀色体を配置させ、サポーター本体には左右の区別および装着方向を容易に特定可能なようにマークが付され、ユーザはそのマークに従いサポーターを装着するだけで、金色体および銀色体を正しく経絡に沿った位置に接触させることができるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-285587号公報
【文献】特開2003-286606号公報
【文献】特開2010-220677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した肘の保護を目的とする従来の肘用サポータは、次のような問題点があった。
【0008】
第一に、いずれも肘を含む肘の前後の部位を覆う弾性伸縮する筒状のサポータ本体部を備え、このサポータ本体部に対して所定の機能性部分を組合わせることにより付加価値を高めた構成を備える点では一致するも、肘用サポータの本来の目的となる、肘の動きに対して保護することにより肘の炎症を防止する観点、即ち、サポータの本来の性能を高める観点からは、必ずしも十分とは言えず、更なる改善の余地があった。
【0009】
第二に、構造的な面からは、複雑化及び煩雑化する傾向があり、製造の容易性及び低コスト性の観点からも必ずしも十分な考慮がされているとは言えないとともに、装着性(フィット感)や使用感等の使用時における快適性の観点からも必ずしも十分な配慮がされているとは言えないなど、これらを高める観点からも更なる改善の余地があった。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した肘用サポータの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するため、人体の肘Heに装着して使用する肘用サポータ1を構成するに際して、肘He及びその前後の部位を覆う弾性伸縮する筒状のサポータ基部2と、このサポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により形成し、かつ肘関節Hejの中心の周りの所定範囲Amを除いた肘関節Hejの周辺部を覆う肘関節着圧メンバ部3s,この肘関節着圧メンバ部3sの下側端3sdであって肘Heの屈伸方向Fjを含む面に対する両側位置から手首側の方向Fwへ所定長さLw…にわたって一体に延設形成し、かつ肘Heを動かした際に当該肘Heの動きに対して主荷重となる所定の荷重を付与可能な一対の主荷重付加部3dp,3dqを有する主荷重付加メンバ部3d,及び肘関節着圧メンバ部3sの上側端3suであって肘Heの屈伸方向Fjを含む面に対する両側位置から肩側の方向Fsへ所定長さLs…にわたって一体に延設形成し、かつ肘Heを動かした際に当該肘Heの動きに対して主荷重よりも小さい補助荷重を付与可能な一対の補助荷重付加部3up,3uqを有する補助荷重付加メンバ部3uを設けた荷重付加パターン部3とを備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、本発明の好適な態様により、弾性付着材Rには、シリコンゴム素材Rsを用いることが望ましい。また、補助荷重付加メンバ部3uは、主荷重付加メンバ部3dに対して塗布密度を小さく形成することができ、一例として、メッシュ形状部Ssにより形成することが望ましい。一方、主荷重付加部3dp,3dqは、肘関節着圧メンバ部3sの周方向Fmにおける中間区域Adp,Adqに、当該中間区域Adp,Adq以外の塗布密度よりも小さく設定した小密度エリア部3ip,3iqを形成することができるとともに、この小密度エリア部3ip,3iqは、メッシュ形状部Ssにより形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
このような構成を有する本発明に係る肘用サポータ1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 肘用サポータ1は、肘関節着圧メンバ部3s,主荷重付加メンバ部3d及び補助荷重付加メンバ部3uの組合わせによる相乗的作用により、肘Heに対して安定に装着することができる。特に、一対の主荷重付加部3dp,3dqにより、肘関節Hejから手首側にかけて両側から押さえるとともに、肘関節着圧メンバ部3s及び補助荷重付加メンバ部3uにより、肘Heに対して固定するため、肘Heの負担を軽減し、苛酷な肘Heの動きに対して効果的な保護を図れるなど、肘用サポータ1における本来の性能を高めることにより、肘Heの炎症防止効果に寄与できる。
【0015】
(2) サポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により荷重付加パターン部3を形成するシンプルな構成により実施できるため、製造の容易性及び低コスト性を高めることができるとともに、装着性(フィット感)や使用感などの使用時における快適性を高めることができる。これにより、肘Heを使用するスポーツのみならず、荷物を上げ下げする作業等においても最適な肘用サポータ1として利用できる。
【0016】
(3) 補助荷重付加メンバ部3uを構成するに際し、肘関節着圧メンバ部3sの上側端3suであって屈伸方向Fjを含む面に対する両側位置から肩側の方向Fsへ所定長さLs…にわたって一体に延設形成した一対の補助荷重付加部3up,3uqにより構成したため、主荷重付加メンバ部3dに対する反対方向の荷重を補助的に作用させることができる。これにより、肘Heに対する肘用サポータ1のズレを効果的に防止し、肘Heに対する固定をより安定化させることができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、弾性付着材Rに、シリコンゴム素材Rsを用いれば、汎用的な素材の利用により低コストに実施できるとともに、シリコンゴム素材Rsの物性により、前述した本発明に係る作用効果を十分に発揮できる良好な荷重付加パターン部3を形成することができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、補助荷重付加メンバ部3uを構成するに際し、主荷重付加メンバ部3dに対して塗布密度を小さく形成すれば、肘Heを屈伸させる際の動きに対する荷重及びそのバランスを最適な状態に設定できるため、肘関節Hejの無用な負担をより軽減することができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、補助荷重付加メンバ部3uをメッシュ形状部Ssにより形成すれば、弾性付着材Rの塗布により形成した場合であっても、層厚を変更するなどの手法を採用することなく弾性付着材Rによる塗布密度を設定できるため、任意の塗布密度による補助荷重付加メンバ部3uを容易に形成することができる。しかも、作用する荷重の大きさや方向を広い範囲で容易に設定可能なため、使用感を含めた、より細かな調整を的確に行うことができるとともに、ハニカム形状のメッシュも容易に形成できるため、特に、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した荷重を作用させることができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、肘関節着圧メンバ部3sの周方向Fmにおける主荷重付加部3dp,3dqの中間区域Adp,Adqに、当該中間区域Adp,Adq以外の塗布密度よりも小さく設定した小密度エリア部3ip,3iqを形成すれば、肘Heの周方向において付与される荷重の大きさや方向を任意に設定できるため、使用感を含めた、より細かな調整を的確かつ容易に行うことができる。
【0021】
(8) 好適な態様により、小密度エリア部3ip,3iqを、メッシュ形状部Ssにより形成すれば、弾性付着材Rの塗布により形成した場合であっても、層厚を変更するなどの手法を採用することなく弾性付着材Rによる塗布密度を設定できるため、任意の塗布密度による小密度エリア部3ip,3iqを容易に形成できる。しかも、ハニカム形状のメッシュも容易に形成できるため、特に、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した荷重を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好適実施形態に係る肘用サポータの一部抽出拡大図を含む使用状態を示す外観斜視図、
図2】同サポータの平面図、
図3】同サポータの底面図、
図4】同サポータにおける荷重付加パターン部の展開図、
図5】同サポータの図2中X-X線位置の断面正面図、
図6】同サポータの作用説明図、
図7】同サポータの製造に用いるサポータ製造装置を構成するプラテン部の斜視図を含むセッティング工程の説明図、
図8】同サポータ製造装置のプラテン部にサポータ基部をセッティングした状態を示す断面側面図、
図9】同サポータ製造装置を構成するスクリーン印刷部及びプラテン部にセッティングしたサポータ基部の断面正面図を含む弾性付着材の塗布工程の説明図、
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係る肘用サポータ1の構成について、図1図6を参照して具体的に説明する。
【0025】
肘用サポータ1は、図1に示すように、人体の肘Heに装着して使用するものであり、肘He及びその前後の部位を覆う弾性伸縮する筒状のサポータ基部2を備える。サポータ基部2は、ポリウレタン,ポリエステル,ナイロン,アクリル等の化学繊維、及び絹,木綿等の天然繊維の、一又は二以上の繊維素材を用いることにより弾性伸縮可能に縫製したものである。
【0026】
サポータ基部2において、2sはサポータ基部2の先端側(手首側)の開口部に設けたバンド状に縫製したズレ防止用の口ゴム部、2bはサポータ基部2の後端側(肩側)の開口部に設けたバンド状に縫製したズレ防止用の口ゴム部をそれぞれ示す。これらの口ゴム部2s及び2b、更に、一部の特定領域Asを除き、サポータ基部2は全体を同一の縫製方式により均一に縫製する。
【0027】
また、図2に示すように、サポータ基部2には、一部の特定領域Asを設ける。即ち、全体の縫製方式に対して、縫製方式を変更した特定領域Asを設ける。この特定領域Asは、サポータ基部2を肘Heに装着した際に、肘関節Hejの内側に位置する部位、即ち、肘Heの屈伸時に、上腕と前腕に挟まれる部位になる。このため、縫製方式として、縫製密度がより粗くなる(小さくなる)縫製方式を採用し、屈伸時に挟まれた際に、屈伸動作に影響しないように、換言すれば、より違和感が生じないように考慮することが望ましい。なお、図2及び図3は、肘用サポータ1を偏平に畳んだ(潰した)状態であり、図2は特定領域Asが幅方向の中央に位置する平面図を示し、図3は底面図を示す。
【0028】
なお、例示する標準サイズのサポータ基部2は、全長が200mm程度,装着前の直径が70mm程度である。このサポータ基部2は、肘用サポータ1のいわばニュートラルゾーンとして機能するため、装着部位におけるいわば荷重付与の必要がない部位に対して無用に締め付けることがなく、肘Heを含む腕全体の動き(可動域)の筋肉や関節の機能を邪魔することがないように考慮することが望ましい。
【0029】
一方、サポータ基部2の表面2fには、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により形成する荷重付加パターン部3を設ける。荷重付加パターン部3は、大別して三つのメンバ部3s,3d,3u、即ち、肘関節着圧メンバ部3s,主荷重付加メンバ部3d,補助荷重付加メンバ部3uにより構成する。例示の場合、弾性付着材Rには、シリコンゴム素材Rsを用いた。このように、弾性付着材Rに、シリコンゴム素材Rsを用いれば、汎用的な素材の利用により低コストに実施できるとともに、シリコンゴム素材Rsの物性により、前述した本発明に係る作用効果を十分に発揮できる良好な荷重付加パターン部3を形成できる利点がある。
【0030】
肘関節着圧メンバ部3sは、図1に示すように、肘関節Hejの中心の周りの所定範囲Amを除いた肘関節Hejの周辺部を覆うようにリング状に形成する。この場合、肘関節着圧メンバ部3sと主荷重付加メンバ部3dは、連続形状を有するため、明確な境界部分は存在しないが、図4に一点鎖線で示すリング形状の部分が肘関節着圧メンバ部3sと主荷重付加メンバ部3dの境界部となる。ただし、この一点鎖線は、肘関節着圧メンバ部3sと主荷重付加メンバ部3dの境界部を特定するものではない。なお、図4中、Kf,Kfは、図3における上下辺部(折畳部)を示している。
【0031】
肘関節着圧メンバ部3sは、肘Heに装着した際に、図6に示すように、肘関節Hejを囲むように装着され、楕円状の係合ラインKcとして機能する着圧プレートとなる。これにより、肘Heを屈伸させた場合であっても肘Heを締め付けることはなく、肘用サポータ1を安定に固定することによりズレ防止を図ることができる。
【0032】
主荷重付加メンバ部3dは、一対の主荷重付加部3dp,3dqにより構成する。主荷重付加部3dp,3dqは、図4に示すように、肘関節着圧メンバ部3sの下側端3sdであって肘Heの屈伸方向Fj(図5)を含む面に対する両側位置(図4の場合は上下両側位置)から手首側の方向Fwへ所定長さLw…にわたって、それぞれ一体に延設形成し、かつ肘Heを動かした際に当該肘Heの動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能に設ける。
【0033】
この場合、各主荷重付加部3dp,3dqと肘関節着圧メンバ部3sは、一体に連続形成するとともに、各主荷重付加部3dp,3dqと肘関節着圧メンバ部3sは、相対的に強い着圧領域を構成するため、弾性付着材Rの塗布は、以下に記載する小密度エリア部3ip,3iqを除いて、領域全体をいわゆるベタ塗り部Smにより形成する。
【0034】
一方、各主荷重付加部3dp,3dqを構成するに際しては、肘関節着圧メンバ部3sの周方向Fmにおける主荷重付加部3dp,3dqの中間区域Adp,Adqに、当該中間区域Adp,Adq以外の塗布密度よりも小さく設定した小密度エリア部3ip,3iqを形成する。このような小密度エリア部3ip,3iqを形成すれば、肘Heの周方向において付与される荷重の大きさや方向を任意に設定できるため、使用感を含めた、より細かな調整を的確かつ容易に行うことができる。
【0035】
この場合、小密度エリア部3ip,3iqは、メッシュ形状部Ss、より望ましくは、図1に示す補助荷重付加メンバ部3uと同様のハニカム形状を用いたメッシュ形状部Ssにより形成する。小密度エリア部3ip,3iqを形成するに際し、このようなメッシュ形状部Ssにより形成すれば、弾性付着材R(シリコンゴム素材Rs)の塗布により形成した場合であっても、層厚を変更するなどの手法を採用することなく弾性付着材Rによる塗布密度を設定できるため、任意の塗布密度による小密度エリア部3ip,3iqを容易に形成できる。しかも、ハニカム形状のメッシュも容易に形成できるため、特に、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した荷重を作用させることができる。
【0036】
これにより、肘用サポータ1を肘Heに装着した際には、図6に示すように、主荷重付加部3dp,3dqに対して、小密度エリア部3ip,3iq,及び荷重付加パターン部3の存在しないサポータ基部2(ニュートラルゾーン)が組合わさることにより、サポータ基部2の周方向Ffに対してリング状に組合わさるサポートラインKsとして機能するとともに、特に、小密度エリア部3ip,3iqを含む主荷重付加部3dp,3dqが、肘関節Hejから手首側にかけた肘近傍の筋肉を両側から押さえることにより、肘関節Hejを屈伸した際における肘Heの負担を軽減することができる。
【0037】
他方、補助荷重付加メンバ部3uは、図4に示すように、肘関節着圧メンバ部3sの上側端3suから、肩側の方向Fsへ所定長さLs…にわたって一体に延設形成し、かつ肘Heを動かした際に、当該肘Heの動きに対して、主荷重よりも小さい補助荷重を付与可能な機能を備える。実施形態の補助荷重付加メンバ部3uは、肘関節着圧メンバ部3sの上側端3suであって屈伸方向Fjを含む面に対する両側位置から肩側の方向Fsへ所定長さLs…にわたって一体に延設形成した一対の補助荷重付加部3up,3uqにより構成した。このように、補助荷重付加メンバ部3uを、一対の補助荷重付加部3up,3uqにより構成すれば、主荷重付加メンバ部3dに対する反対方向の荷重を補助的に作用させることができるため、肘Heに対する肘用サポータ1のズレを効果的に防止し、肘Heに対する固定をより安定化させることができる。
【0038】
また、補助荷重付加メンバ部3uは、主荷重付加メンバ部3dに対して塗布密度を小さく形成する。このように、補助荷重付加メンバ部3uを構成するに際し、主荷重付加メンバ部3dに対して塗布密度を小さく形成すれば、肘Heを屈伸させる際の動きに対する荷重及びそのバランスを最適な状態に設定できるため、肘関節Hejの無用な負担をより軽減することができる。
【0039】
この場合、塗布密度を小さく形成するに際しては、上述した小密度エリア部3ip,3iqと同様のメッシュ形状部Ss、望ましくはハニカム形状によるメッシュ形状部Ssにより形成する。このように、補助荷重付加メンバ部3uをメッシュ形状部Ssにより形成すれば、弾性付着材Rの塗布により形成した場合であっても、層厚を変更するなどの手法を採用することなく弾性付着材Rによる塗布密度を設定できるため、任意の塗布密度による補助荷重付加メンバ部3uを容易に形成することができる。しかも、作用する荷重の大きさや方向を広い範囲で容易に設定可能なため、使用感を含めた、より細かな調整を的確に行うことができるとともに、ハニカム形状のメッシュも容易に形成できるため、特に、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した荷重を作用させることができる。
【0040】
なお、各図において、肘関節着圧メンバ部3sのように、ベタ塗り部Smにより形成する領域は、細かい(小さい)メッシュ形状により表し、小密度エリア部3ip,3iq及び補助荷重付加メンバ部3uを形成するメッシュ形状部Ssは、粗い(大きい)メッシュ形状により表している。また、荷重付加パターン部3を設けるに際し、メッシュ形状部Ssとベタ塗り部Smを組合わせることにより塗布密度を異ならせれば、双方の層厚を同一に設定できるため、荷重付加パターン部3の全領域にわたって表面の平坦性を確保できるとともに、目的とする所定の荷重を容易に設定できる。
【0041】
よって、このような本実施形態に係る肘用サポータ1によれば、基本構成として、肘He及びその前後の部位を覆う弾性伸縮する筒状のサポータ基部2と、このサポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により形成し、かつ肘関節Hejの中心の周りの所定範囲Amを除いた肘関節Hejの周辺部を覆う肘関節着圧メンバ部3s,この肘関節着圧メンバ部3sの下側端3sdであって肘Heの屈伸方向Fjを含む面に対する両側位置から手首側の方向Fwへ所定長さLw…にわたって一体に延設形成し、かつ肘Heを動かした際に当該肘Heの動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能な一対の主荷重付加部3dp,3dqを有する主荷重付加メンバ部3d,及び肘関節着圧メンバ部3sの上側端3suから肩側の方向Fsへ所定長さLs…にわたって一体に延設形成し、かつ肘Heを動かした際に当該肘Heの動きに対して主荷重よりも小さい補助荷重を付与可能な補助荷重付加メンバ部3uを有する荷重付加パターン部3とを備えるため、肘関節着圧メンバ部3s,主荷重付加メンバ部3d及び補助荷重付加メンバ部3uの組合わせによる相乗的作用により、肘Heに対して安定に装着することができる。特に、一対の主荷重付加部3dp,3dqにより、肘関節Hejから手首側にかけて両側から押さえるとともに、肘関節着圧メンバ部3s及び補助荷重付加メンバ部3uにより、肘Heに対して固定するため、肘Heの負担を軽減し、苛酷な肘Heの動きに対して効果的な保護を図れるなど、肘用サポータ1における本来の性能を高めることにより、肘Heの炎症防止効果に寄与できる。
【0042】
また、サポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により荷重付加パターン部3を形成するシンプルな構成により実施できるため、製造の容易性及び低コスト性を高めることができるとともに、装着性(フィット感)や使用感などの使用時における快適性を高めることができる。これにより、肘Heを使用するスポーツのみならず、荷物を上げ下げする作業等においても最適な肘用サポータ1として利用できる。
【0043】
次に、このような肘用サポータ1の製造に用いて好適なサポータ製造装置Mの構成について、図7図9を参照して説明する。
【0044】
サポータ製造装置Mは、大別して、図7に示すプラテン部50と図9に示すスクリーン印刷部60を備えて構成する。プラテン部50は、全体を硬質合成樹脂素材等により筒状に形成したプラテン本体部51を備える。例示の場合、プラテン本体部51の外径は、90mm程度に選定した。これにより、図8に示すように、プラテン部50に対してサポータ基部2をセッティングすることができる。なお、プラテン本体部51の一端側は、回転駆動部55の回転出力軸55cに取付けられるとともに、回転駆動部55は不図示のコントローラに接続されることにより駆動制御される。
【0045】
一方、スクリーン印刷部60は、プラテン部50にセッティングしたサポータ基部2の表面2fに、弾性付着材R(シリコンゴム素材Rs等)の塗布により荷重付加パターン部3を形成する機能を備える。この場合、スクリーン印刷部60には、円筒形の曲面に印刷可能な曲面印刷用スクリーン印刷ユニットを使用する。これにより、上述したプラテン部50にセッティングしたサポータ基部2の表面2fに対して、弾性付着材Rを印刷により塗布することができる。したがって、スクリーン印刷部60は、前述した荷重付加パターン部3を印刷する版形成されたスクリーン61を備える。なお、図9において、62はスクリーン印刷部60のスキージ、Rsはスクリーン61上における固化前の粘性を有するシリコンゴム素材を示す。
【0046】
次に、このようなサポータ製造装置Mを用いた肘用サポータ1の製造方法について、図7図9を参照して説明する。
【0047】
最初に、別途の縫製工程によりサポータ基部2の製作を行う。そして、製作したサポータ基部2は、セッティング工程によりプラテン部50に対するセッティングを行う。この場合、口ゴム部2dを大径化するように拡げ、プラテン本体部51の外周面51f上を被覆するように定位置(印刷位置)に装着する。したがって、この状態のサポータ基部2は、図8に示すように、プラテン本体部51の外周面51fに弾性圧接する。
【0048】
次いで、図9に示すように、印刷工程(塗布工程)において、スクリーン印刷部60を用いて、サポータ基部2の表面2fに対して、荷重付加パターン部3の印刷を行う。この場合、プラテン部50上のサポータ基部2の印刷開始位置に、荷重付加パターン部3が版形成されたスクリーン61の印刷開始位置を当接させ、この後、プラテン部50を回転させるとともに、スクリーン61を当該回転に同期させて移動させる。これにより、スクリーン61上のシリコンゴム素材Rsは、スクリーン61上に当接させたスキージ62により刷り込まれ、サポータ基部2の表面2f上に、シリコンゴム素材Rsによる荷重付加パターン部3が形成(塗布)される。したがって、得られる荷重付加パターン部3の厚さ(層厚)Ld(図5参照)はいずれの部位においても一定となる。
【0049】
そして、印刷工程が終了したなら、塗布されたサポータ基部2をプラテン部50に装着したまま、荷重付加パターン部3に対する乾燥処理を行う。この場合、乾燥処理は、自然乾燥処理であってもよいし、加熱による強制乾燥処理であってもよい。また、自然乾燥処理と強制乾燥処理を組み合わせた段階的な乾燥処理であってもよい。乾燥処理によりシリコンゴム素材Rsが硬化したなら、プラテン部50からサポータ基部2を離脱させる。これにより目的とする肘用サポータ1を得ることができる。
【0050】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0051】
例えば、弾性付着材Rとしてシリコンゴム素材Rsを例示したが、同様の機能を有する各種ゴム素材或いは各種弾性樹脂素材を利用することができるとともに、塗布密度を異ならせるに際しては、厚さ(層厚)を変えるなどの他の手法により塗布密度を異ならせる場合を排除するものではない。また、メッシュ形状部Ssの形状は、例示したハニカム形状が望ましいが、各種多角形などの他の形状により形成する場合を排除するものではない。さらに、主荷重付加部3dp,3dqは、肘関節着圧メンバ部3sの周方向Fmにおける中間区域Adp,Adqに、当該中間区域Adp,Adq以外の塗布密度よりも小さく設定した小密度エリア部3ip,3iqを形成することが望ましいが必須の構成要素となるものではない。なお、本発明における荷重とは、荷重付加パターン部3を形成する形成面に対して面方向の荷重のみならず面垂直方向の荷重(着圧)を含むとともに、面方向の荷重は特定の面方向に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る肘用サポータは、人体の肘に装着して使用するサポータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:肘用サポータ,2:サポータ基部,2f:サポータ基部の表面,3:荷重付加パターン部,3s:肘関節着圧メンバ部,3sd:肘関節着圧メンバ部の下側端,3su:肘関節着圧メンバ部の上側端,3d:主荷重付加メンバ部,3dp:主荷重付加部,3dq:主荷重付加部,3ip:小密度エリア部,3iq:小密度エリア部,3u:補助荷重付加メンバ部,3up:補助荷重付加部,3uq:補助荷重付加部,He:肘,Hef:肘関節,R:弾性付着材,Rs:シリコンゴム素材,Am:所定範囲,Adp:中間区域,Adq:中間区域,Fj:肘の屈伸方向,Fw:手首側の方向,Fs:肩側の方向,Fm:肘関節着圧メンバ部の周方向,Lw…:所定長さ,Ls…:所定長さ,Ss:メッシュ形状部
図1
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