(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】化粧料用保護シート
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
A45D33/00 640
(21)【出願番号】P 2020137746
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-04-19
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(73)【特許権者】
【識別番号】503221964
【氏名又は名称】大成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【氏名又は名称】横田 裕弘
(74)【代理人】
【識別番号】100130878
【氏名又は名称】鶴目 朋之
(72)【発明者】
【氏名】末次 祥子
(72)【発明者】
【氏名】村嶋 良太
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-019321(JP,A)
【文献】実開昭64-023907(JP,U)
【文献】実開昭58-112206(JP,U)
【文献】中国実用新案第207721397(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0059102(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料容器の蓋部と化粧料の間に配置され、化粧料の表面を被覆可能に形成された化粧料用保護シートであって、平坦部と、該平坦部の周縁に該平坦部よりも上方へ膨出し該平坦部を囲うように形成されたリム部を備え、該リム部には、該リム部の天面の一部を上方へ突出させた凸部を設け
、該凸部の高さが0.01~1mmである化粧料用保護シート。
【請求項2】
前記凸部は、前記リム部に沿って所定の間隔で複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧料用保護シート。
【請求項3】
化粧料容器の蓋部と化粧料の間に配置され、化粧料の表面を被覆可能に形成された化粧料用保護シートであって、平坦部と、該平坦部の周縁に該平坦部よりも上方へ膨出し該平坦部を囲うように形成されたリム部を備え、該リム部には、該リム部の天面の一部を凹陥させて該リム部の内周面側と外周面側とを連通するように形成した凹部を設けた化粧料用保護シート。
【請求項4】
前記凹部は、前記リム部に沿って所定の間隔で複数形成されていることを特徴とする請求項3に記載の化粧料用保護シート。
【請求項5】
蓋部の裏側には鏡が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧料用保護シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料を保護するため、化粧料収納部と蓋部の間に設けられる化粧料用保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料収納容器には、輸送中や使用中に化粧料を保護するため、化粧料収納部と蓋部の間に保護シートを用いることが多い(特許文献1)。特にメイクアップ化粧料において、化粧料の飛散や化粧道具への付着等を防止するために、使用が終わるまで化粧料を被覆可能な保護シートを利用している。かかる保護シートに関しては、使用時に紛失しないように各種の形状が検討され、収納容器も検討がなされてきた(特許文献2、3)。
【0003】
一般的にかかる保護シートは平板なシート状である上、化粧料の上方に配置される蓋部の裏面も平板状に形成されている部分があり、保護シートが蓋部の裏面に面接触すると互いに密着して剥がれにくくなる場合があった。特にメイクアップ化粧料容器の場合は蓋部の裏面に鏡が設けられている場合が多く、保護シートと鏡面が互いに密着して両者の間の空気が抜けると保護シートを剥がすことがより困難となる。蓋と保護シートに間隙が設けられていても、輸送中の振動や静電気の作用などにより、保護シートが蓋側に密着することがあった。
【0004】
また、蓋部の裏面が鏡の場合、保護シートが鏡に付着した状態のままだと鏡が見づらくなってしまう。その点、特許文献2、3には保護シートを剥がすときに保持するためのつまみを有するものが開示されているが、商品の美観の点からはかかるつまみ等を設けることは好ましくなかった。そこで、従来は蓋の裏面と保護シートとの間に薄い板状のもの等を差し込んで剥がす必要があった。
【0005】
さらに、蓋部を開けたときに保護シートが蓋部の裏面に付着していた場合、化粧料が露出するため化粧料表面に不用意に触ってしまうこともあり、蓋部を開けた時には、保護シートが化粧料の表面を確実に覆っていることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-167058
【文献】特開2002-65348
【文献】特開2004-298257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、従来の化粧料用保護シートのかかる欠点を克服し、化粧料容器の蓋部に密着することを防ぐとともに、商品の美観も損なわず、蓋部を開けた時には化粧料の表面を確実に覆っている化粧料用保護シートの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、化粧料容器の蓋部と化粧料の間に配置され、化粧料の表面を被覆可能に形成された化粧料用保護シートであって、蓋部に対向する面には凸部を設けたことを特徴とする化粧料用保護シートである。
【0009】
また本発明は、その周縁部近傍に前記凸部が形成されていることを特徴とする化粧料用保護シートである。
【0010】
また、本発明は、その周縁部には周縁部以外の平坦部よりも上方へ膨出するリム部が形成され、該リム部にはリム部よりさらに上方へ突出する前記凸部が形成されていることを特徴とする化粧料用保護シートである。
【0011】
また、本発明は、その周縁部には周縁部以外の平坦部よりも上方へ膨出するリム部が形成され、該リム部にはその一部を凹陥させて凹部が形成され、該凹部により区切られた該リム部により前記凸部を形成することを特徴とする化粧料用保護シートである。
【0012】
また、本発明は、化粧料容器の蓋部と化粧料の間に配置され、化粧料の表面を被覆可能に形成された化粧料用保護シートであって、その周縁部には周縁部以外の平坦部よりも蓋部側へ膨出するリム部が形成され、該リム部の天面には、リム部の内周壁側と外周壁側と連通するように形成された切り欠き部を備えたことを特徴とする化粧料保護シートである。
【0013】
さらに、本発明は、蓋部の裏側には鏡が設けられていることを特徴とする化粧料用保護シートである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる保護シートは、化粧料容器の蓋部に対向する面に凸部を設けることにより蓋との面接触を防ぐことができる。また、蓋部に密着しないためつまみ等を設ける必要がなく、保護シートの外観を損なわず、蓋部から剥がす煩わしさもない。さらに、蓋部を開けた時には常に化粧料表面を覆っているため、化粧料表面を傷つけることがなく、不用意に手指に付着することを避けることができる。
【0015】
また、本発明にかかる保護シートでその周縁部には周縁部以外の平坦部よりも上方へ膨出するリム部が形成され、該リム部に前記凸部が形成されたものや、該リム部の一部に凹部を形成し、該凹部により区切られたリム部が前記凸部を形成するものは、これらの凸部の間から空気が流入し、これにより、保護シートと蓋部の密着を防ぐことができる。
【0016】
さらに、本発明にかかる保護シートで該リム部の天面に切り欠き部を備えたものは、かかる切り欠き部から空気が流入し、これにより、保護シートと蓋部の密着を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本発明に係る化粧料用保護シートを備えた化粧料容器の構成を表す図。
【
図5】本発明に係る化粧料用保護シートを備えた化粧料容器の部分拡大断面図。
【
図6】本発明に係る化粧料用保護シートで異なる実施態様の平面図。
【
図7】本発明に係る化粧料用保護シートで異なる実施態様の正面図。
【
図8】本発明に係る化粧料用保護シートで異なる実施態様の断面図。
【
図9】本発明に係る化粧料用保護シートでさらに異なる実施態様の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の化粧料用保護シートの実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0019】
本発明の保護シート1は、
図4に示すように、容器本体2の上部開口を封止する蓋部3を備えた化粧料容器内において、収納部4内の化粧料の表面を覆うように配置される。本実施態様の化粧料容器は、収納部4の開口縁部41に上方へ凸状に突出する環状凸部42が形成されている。また、本実施態様の化粧料容器の蓋部3はその裏側に鏡5が設けられているが、かかる鏡5は設けていなくてもよい。
【0020】
本発明の保護シート1は、
図1に示すように平面視で円形に形成されており、平板に形成された平坦部11と、平坦部11の周縁に平坦部11よりも上方へ膨出するリム部12を備える。なお、本実施態様では円形に形成されているが、形状は円形に限らず、楕円形、正方形、長方形などのその他の形状でもよく、また、その周縁部にリム部12を設けることなく、全体が平坦な板状に形成してもよい。さらに、リム部12の形成方法は特に限定されないが、一例として、バキューム成型で形成することができる。またリム部12を設けない場合は、打ち抜き等の方法により形成することができる。
【0021】
保護シート1は、収納部4の環状凸部42にリム部12を被せるように化粧料容器内に配置される。このように、リム部12を環状凸部42に被せることにより、蓋部3を開けた際に保護シート1が横滑り等して落下することを防ぐことができる。
【0022】
そして、蓋部3を閉めた時には平坦部11と鏡5との間には空隙が生じるため、両者が互いに接することはなく、通常はリム部12が鏡に接することになる。このようにリム部12が形成されていることで、平坦部11と鏡が密着することは防げるが、何らかの理由によりリム部12で囲まれた密閉空間の空気が外に押し出されるなどすると、該空間内が負圧となり、リム部12が鏡5に密着して剥がしにくいという現象が生じる場合がある。なお、あらかじめ鏡5とリム部12の間に隙間を設けておいても良いが、その場合も、輸送中の振動や静電気の作用などにより同じようにリム部12が鏡5に密着する現象が確認されている。
【0023】
その点、本実施態様のリム部12には、さらにその天面から上方へ突出する凸部13が形成されている。従って、
図5に示すように蓋部3を閉めると凸部13の天面部131が鏡5に当接し、凸部13の高さの分だけ鏡5との間に更に空隙が生じる。そして、かかる空隙から保護シート1と鏡5の間に空気が流入し、その結果、リム部12が蓋部3に密着して剥がしにくくなることを有効に防ぐことができる。なお、凸部13の天面部131は常に鏡5に当接している必要はなく、蓋部3を閉めた状態で天面部131と鏡5とが互いに離間していてもよい。
【0024】
本実施態様の凸部13は、リム部12に対して等間隔に3箇所が形成されているが、凸部13の数はこれに限定されず1箇所でもよいが、複数箇所が好ましく、3箇所以上がより好ましい。
【0025】
本実施態様の凸部13は、その断面形状および平面視形状が略矩形に形成されているが、凸部13の断面形状はかかる矩形に限定されず、正方形、半円形、半楕円形、三角形、台形、その他の多角形などでもよい。また、平面視形状も略矩形に限定されず、正方形、円形、半円形、楕円形、半楕円形、三角形、台形、その他の多角形などでもよい。さらに、微細な凸部13を多数形成することによりエンボス加工としても良い。
【0026】
凸部13の高さ、幅に関しては、蓋部3(本実施態様では鏡5)とリム部12の密着を防ぐことができれば特に制限されないが、高さは、0.01~1mm、更に0.05~0.3mmが好ましく、幅は0.1~7mm、更に0.5~4mmの範囲が好ましい。
【0027】
また、凸部13の代わりにリム部12の一部を凹陥させて凹部14を形成してもよい。凹部14は、
図6~8に示すように、リム部12の内周壁121と外周壁122とを連通するように形成することが好ましい。このように、リム部12の一部において凹部14を形成することにより、環状のリム部12はその途中で凹部14により連続性が断たれることになる。すなわち、本実施態様のリム部12は、凹部14で区切られ、断続的に設けられた凸部を構成する。かかる構成より、凹部14を通じて保護シート1と鏡5の間に空気が流入し、これにより保護シート1が蓋部3に密着して剥がしにくくなることを有効に防ぐことができる。
【0028】
凹部14の数は特に限定されず1箇所でもよいが、複数箇所が好ましく、3箇所以上がより好ましい。また、凹部14の深さ、幅に関しては、特に制限されないが、深さは0.01~1mm、更に0.05~0.3mmが好ましく、幅は0.1~7mm、更に0.5~4mmの範囲が好ましい。
【0029】
さらに、凸部はリム部12上に形成するものや、凹部14で区切られたリム部12そのものにより形成するものに限らず、例えば、平坦部11に別途形成してもよい。このように平坦部11に形成される凸部は、その高さがリム部12の高さよりも高く突出するように形成される。なお、平坦部11に凸部を形成する場合、保護シート1が弾性変形を起こすと所望の効果を得られない可能性があるため、弾性変形する可能性が少ない保護シート1の周縁部近傍が好ましく、特に、弾性変形する可能性がない収納部4の環状凸部42の内側の開口縁部41上に形成することが好ましい。
【0030】
すなわち、本発明における凸部は、保護シート1の大部分を占める平坦部11と蓋部3との面接触を防ぐとともに、平坦部11と蓋部3との間の空気の流入を確保するものであればよく、そのためには1箇所の凸部でも良いが、所定の間隔を空けて複数個所設けることが好ましく、3箇所以上の凸部を保護シート1の周縁部に沿って均等の間隔で配置することが特に好ましい。
【0031】
さらに、
図9、10に示すように、リム部12の天面に溝状の切り欠き部15を設けることによって、平坦部11への空気の流入を生じさせることができる。かかる切り欠き部15は、リム部12の内周壁121側から外周壁122側へ連通するように形成されている。
図10に示すように、本実施態様の切り欠き部15は断面形状がV字の溝状であるが、U字やコの字であっても良い。
【0032】
本実施態様の切り欠き部15は1箇所のみ形成されているが、これを複数個所設けても良い。切り欠き部15の深さは特に限定されないが、0.01~1mm、更に0.05~0.3mmの範囲が好ましく、また、その幅は0.01~4mm、更に0.05~2mmの範囲が好ましい。
【0033】
本発明の保護シート1の好ましい材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0034】
本発明の保護シート1は、化粧料コンパクト等の容器に限らず、クリームや固形アイシャドウ等を入れるジャーボトル、液状物を入れるビンなど、開封時に破棄される保護シートとしても好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 … … 保護シート
2 … … 容器本体
3 … … 蓋部
4 … … 収納部
5 … … 鏡
11 … … 平坦部
12 … … リム部
13 … … 凸部
14 … … 凹部
15 … … 切り欠き部
41 … … 開口縁部
42 … … 環状凸部
131 … … 天面部