(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】脱免疫化志賀毒素Aサブユニットエフェクターを含むCD38結合性タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240115BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240115BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240115BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240115BHJP
C07K 14/25 20060101ALI20240115BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240115BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240115BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240115BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240115BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240115BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20240115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240115BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240115BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/25
C07K14/705
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K1/14
A61P35/00
A61K35/74 D
A61K39/395 T
A61K47/68
(21)【出願番号】P 2021541634
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2020014831
(87)【国際公開番号】W WO2020154531
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-17
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500287639
【氏名又は名称】ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】515238389
【氏名又は名称】モレキュラー テンプレーツ,インク.
【氏名又は名称原語表記】MOLECULAR TEMPLATES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】チャットパドイエイ ニベディタ
(72)【発明者】
【氏名】ポーマ エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィラート エリン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527882(JP,A)
【文献】特表2017-518027(JP,A)
【文献】特表2017-513459(JP,A)
【文献】特表2017-509317(JP,A)
【文献】特表2016-534092(JP,A)
【文献】ROBINSON GL. et al.,MT-4019: a de-immunized engineeredtoxin body targeting CD38 for multiple myeloma,Cancer Research,Vol. 7713 Supplement,2017年,Abstract 2659
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドと、
b)1)配列番号34の配列を含むvHCDR1;
2)配列番号35の配列を含むvHCDR2;及び
3)配列番号36の配列を含むvHCDR3
を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、
c)1)配列番号31の配列を含むvLCDR1;
2)配列番号32の配列を含むvLCDR2;及び
3)配列番号33の配列を含むvLCDR3
を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と
を含む、CD38結合性融合タンパク質。
【請求項2】
CD38結合性タンパク質が、配列番号79の配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項3】
VLが、配列番号43の配列を含み、VHが、配列番号44の配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項4】
VLが、配列番号43の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含み、VHが、配列番号44の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項5】
VLが、配列番号41の配列を含み、VHが、配列番号44の配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項6】
VLが、配列番号41の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含み、VHが、配列番号44の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項7】
志賀毒素AサブユニットエフェクターポリペプチドとCD38結合性ドメインの間に第1のリンカーを含む、請求項1~
6のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項8】
第1のリンカーが、タンパク質性リンカーである、請求項
7に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項9】
第1のリンカーが、約1~約50アミノ酸残基を含む、請求項
8に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項10】
第1のリンカーが、配列番号70の配列を含む、請求項
8又は
9に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項11】
第1のリンカーが、配列番号70~75のいずれか1つの配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、請求項
8又は
9に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項12】
VHとVLの間に第2のリンカーを含む、請求項1~
11のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項13】
第2のリンカーが、配列(Gly
4Ser)
n(配列番号195)を含み、nが、1、2、3、4又は5に等しい、請求項
12に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項14】
nが1に等しい、請求項
13に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項15】
そのN末端からC末端に、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-第1のリンカー-VH-第2のリンカー-VLを含む、請求項
12~
14のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項16】
そのN末端からC末端に、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-第1のリンカー-VL-第2のリンカー-VHを含む、請求項
12~
14のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項17】
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドが、配列番号46の配列を含む、請求項
15に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項18】
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドが、配列番号45~69のいずれか1つの配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも95%、少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、請求項1~
12のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項19】
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドが、配列番号46の配列を含み、VLが、配列番号43の配列を含み、VHが、配列番号44の配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項20】
タンパク質が、配列番号79の配列に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項21】
ホモ二量体である、請求項1~
20のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項22】
2つの同一のポリペプチドを含み、各ポリペプチドが、配列番号79の配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項23】
2つの同一のポリペプチドを含み、各ポリペプチドが、配列番号79に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【請求項24】
請求項1~
23のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項25】
請求項
24に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項26】
請求項
25に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
(i)請求項2に記載のCD38結合性融合タンパク質と、
(ii)薬学的に許容される担体又は賦形剤と
を含む組成物。
【請求項28】
CD38結合性融合タンパク質の少なくとも約90%が、ホモ二量体の形態である、請求項
27に記載の組成物。
【請求項29】
CD38結合性融合タンパク質の少なくとも約95%が、ホモ二量体の形態である、請求項
28に記載の組成物。
【請求項30】
CD38結合性融合タンパク質が発現される条件下で、請求項
26に記載の宿主細胞を培養し、前記タンパク質を回収するステップを含む、請求項1~
23のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質を作製する方法。
【請求項31】
CD38結合性融合タンパク質を、細菌プロテインLと接触させるステップを含む、請求項1~
23のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質を精製する方法。
【請求項32】
プロテインLが、P.マグヌス(P. magnus)から単離される又はそれに由来する、請求項
31に記載の方法。
【請求項33】
プロテインLが、樹脂にコンジュゲートされる、請求項
31又は
32に記載の方法。
【請求項34】
それを必要とする対象に
おいて多発性骨髄腫を治療するための薬剤であって、治療有効量の請求項1~
23のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質又は請求項
27~
29のいずれかに記載の組成物を
含む、薬剤。
【請求項35】
請求項1~23のいずれかに記載のCD38結合性融合タンパク質又は請求項27~29のいずれかに記載の組成物の、それを必要とする対象における多発性骨髄腫を治療するための医薬の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.関連出願の相互参照
本出願は、各々、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、2019年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/945,107号、2019年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/945,106号及び2019年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/795,633号の利益を主張する。
【0002】
II.電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりその全体において組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:MTEM_009_01WO_SeqList_ST25 UPDATED 23 JAN 2020.txt、記録日2020年1月23日、ファイルサイズ238キロバイト)。
【0003】
III.技術分野
本発明は、各々(1)CD38結合性領域又はドメイン及び(2)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(「志賀毒素エフェクターポリペプチド」)を含む結合性タンパク質(各結合性タンパク質は「CD38結合性タンパク質」である)に関する。
【背景技術】
【0004】
IV.発明の背景
以下は、本発明の理解において有用でありうる情報を含む。ここで提供される情報が先行技術である、若しくは本発明に関連するという承認又は本明細書において具体的に若しくは暗に言及される任意の刊行物若しくは文書が先行技術であるという承認ではない。
【0005】
CD38は、多発性骨髄腫を有する対象において悪性形質細胞で高度に発現される。多発性骨髄腫は、終末器官損傷につながる形質細胞の過剰増殖が関与する形質細胞の血液悪性腫瘍である。多発性骨髄腫では、悪性形質細胞は、Mタンパク質と呼ばれる(骨髄腫タンパク質又はモノクローナルタンパク質としても知られる)異常な免疫グロブリンを産生することによって疾患の一因となり、単クローン性免疫グロブリン血症又は血漿中の異常に高いレベルのMタンパク質をもたらしうる。さらに、悪性形質細胞は、骨髄に蓄積し、それによって、健常細胞を押し出す可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CD38発現細胞の選択的殺滅、又は有益な薬剤の、CD38発現細胞への選択的送達により治療されうる、例えば、造血器がんなど、様々な疾患を治療するための、治療用分子としての使用のためのCD38結合性タンパク質を有することが所望されるであろう。低抗原性及び/又は低免疫原性、低オフターゲット毒性並びに強力なオンターゲット細胞毒性を呈する、細胞毒性である、CD38結合性の細胞ターゲッティングタンパク質を有することが所望されるであろう。例えば、CD38発現細胞に対する強力な細胞毒性を維持しながら、1)望ましくない抗原性及び/又は免疫原性の可能性が低減されており(例えば、変異によって)、及び/又は2)非特異的毒性の可能性が低減されている(例えば、安定性の改善によって)、細胞毒性志賀毒素Aサブユニット由来の構成要素を含むCD38結合性タンパク質を有することが所望されるであろう。さらに、低抗原性及び/又は低免疫原性、低オフターゲット毒性、高安定性及び/又はカーゴをCD38発現標的細胞へ送達する能力を呈するCD38結合性治療用及び/又は診断用タンパク質を有することが所望されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
V.発明の簡単な概要
本明細書に記載されるように、本発明は、少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び少なくとも1つのCD38結合性ドメインを、任意のリンカーと共に含むCD38結合性融合タンパク質を提供する。
【0008】
したがって、一部の態様では、本発明は、a)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、b)1)配列番号34の配列を含むvHCDR1、2)配列番号35の配列を含むvHCDR2、及び3)配列番号36の配列を含むvHCDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)並びにc)1)配列番号31の配列を含むvLCDR1、2)配列番号32の配列を含むvLCDR2、及び3)配列番号33の配列を含むvLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含むCD38結合性融合タンパク質を提供する。
【0009】
さらなる実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号79の配列を含む。
【0010】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号43の配列を含むVL及び配列番号44の配列を含むVHを有する。
【0011】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、a)配列番号43の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVL、及びb)配列番号44の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVHを有する。
【0012】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号41の配列を含むVL、及び配列番号44の配列を含むVHを有する。
【0013】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号41の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVL、及び配列番号44の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVHを有する。
【0014】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、a)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、b)1)配列番号22の配列を含むvHCDR1、2)配列番号23の配列を含むvHCDR2、及び3)配列番号24の配列を含むvHCDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びにc)1)配列番号19の配列を含むvLCDR1、2)配列番号20の配列を含むvLCDR2、及び3)配列番号21の配列を含むvLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0015】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号37の配列を含むVL、及び配列番号38の配列を含むVHを有する。
【0016】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号37の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVL、及び配列番号38の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVHを有する。
【0017】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、a)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、b)1)配列番号28の配列を含むvHCDR1、2)配列番号29の配列を含むvHCDR2、及び3)配列番号30の配列を含むvHCDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びにc)1)配列番号25の配列を含むvLCDR1、2)配列番号26の配列を含むvLCDR2、及び3)配列番号27の配列を含むvLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0018】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号39の配列を含むVL、及び配列番号40の配列を含むVHを有する。
【0019】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号39の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVLを有し、配列番号40の配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むVHを有する。
【0020】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、志賀毒素AサブユニットエフェクターポリペプチドとCD38結合性ドメインの間に第1のリンカーを含む。一部の実施形態では、第1のリンカーは、タンパク質性リンカーであり、約1~約40個のアミノ酸でありうる。一部の実施形態では、第1のリンカーは、配列番号70の配列を含む。
【0021】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号70~75のいずれか1つの配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む第1のリンカーを有する。
【0022】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、VHとVLの間に第2のリンカーを含む。一部の実施形態では、この第2のリンカーは、配列(Gly4Ser)n(配列番号195)(ここで、nは、1、2、3、4又は5に等しい)を含み、一部の実施形態では、n=1である。
【0023】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、そのN末端からC末端に、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-第1のリンカー-VH-第2のリンカー-VLを含む。
【0024】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、そのN末端からC末端に、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-第1のリンカー-VL-第2のリンカー-VHを含む。
【0025】
追加の態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号46の配列を含む志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを有する。
【0026】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号45~69のいずれか1つの配列又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを有する。
【0027】
追加の態様では、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドが、配列番号46の配列を含み、VLが、配列番号43の配列を含み、VHが、配列番号44の配列を含む、請求項1に記載のCD38結合性融合タンパク質。
【0028】
さらなる態様では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号79の配列に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0029】
追加の態様では、本発明のCD38結合性融合タンパク質は、ホモ二量体である。一部の実施形態では、ホモ二量体は、2つの同一のポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、配列番号79の配列を含む。一部の実施形態では、ホモ二量体は、2つの同一のポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、配列番号79に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質の少なくとも約90%、95%又は98%は、ホモ二量体の形態である。
【0030】
一部の態様では、本発明は、本発明のCD38結合性融合タンパク質及び薬学的に許容される担体又は賦形剤の組成物を提供する。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、CD38結合性融合タンパク質をコードする核酸、並びに核酸を含む発現ベクター、並びに本明細書における核酸及び/又は発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。同様に、本発明は、CD38結合性融合タンパク質が発現される条件下で、宿主細胞を核酸及び/又は発現ベクターと共に培養し、タンパク質を回収するステップを含むことを提供する。一部の実施形態では、タンパク質は、CD38結合性融合タンパク質を、細菌プロテインL(bacterial protein L)と接触させることによって精製される。一部の場合には、プロテインLは、P.マグヌス(P. magnus)から単離されている又はそれに由来し、これは樹脂にコンジュゲートされうる。
【0032】
追加の態様では、本発明は、それを必要とする対象に、本発明のCD38結合性融合タンパク質を投与するステップを含む、多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1B】
図1A及び
図1Bでは、それぞれ少なくとも1つのCD38結合性領域及び少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターを含む例示的なCD38ターゲティング分子の略図が提供される。
図1Aにおいて、CD38結合性領域は、一般的に、リンカーによって分離された抗CD38 VH及びVLドメインを含むscFvであり、scFvは、志賀毒素成分に対してN又はC末端のいずれかである。1つの例示的なCD38ターゲティング分子において、CD38結合性領域は、scFvであり、scFvは、隣接するscFvとの分子間の可変ドメイン交換に関与していることが示される(
図1B、左下)。
図1A及び
図1Bにおける例示的な分子の描示は、本発明の実施形態の、限定されたセットの構造的特色の、ある特定の、一般的配置を例示的な目的とする。これらの例示的な分子は、本発明の分子の、任意の構造的特色及び/又は構成要素の配置に関して、完全に規定的であることを意図せず、そのようにみなされるべきでもないことが理解されるものとする。
図1A及び
図1Bの概略図に示された、特色の相対的サイズ、位置、又は数は、簡略化されている。
図1A及び
図1Bにおける概略図は、本発明の、任意の実施形態における分子構造の相対的サイズに関する、任意の情報を、正確に描写することを意図しない。
【
図2】51種のCD38ターゲティング分子のプール中の様々な分子に関するCD38陽性H929ヒト骨髄腫細胞に対する代表的なCD
50値を示す図である。CD38ターゲティング分子は、示した通り、VH-VL又はVL-VHのいずれかの方向でありうる。灰色の四角は、プールの追加のメンバーを表す。1×10
3pMのスクリーニングのカットオフは垂直の点線によって表され、左側のCD
50値は、カットオフより有効(potent)であり、右側のCD
50値は、カットオフほど有効(potent)ではない。このアッセイにおいて20,000pM又はそれ未満のCD
50を示さなかった試験された52種の分子はいずれも、
図2に含めなかった。試験された最も有効な分子の一部は、CD38ターゲティング分子ファミリー#6及び#7に含まれる。
【
図3】様々な濃度のCD38ターゲティング分子#3及び#4を使用した代表的な細胞毒性アッセイを示す図である。CD38ターゲティング参照分子#1及びターゲティングドメインを有さない志賀毒素エフェクターポリペプチドを、それぞれ陽性及び陰性対照として使用した。CTM#3及びCTM#4は、CD38陽性H929細胞(
図3A)及びMOLP-8細胞(
図3B)に対して濃度依存性の細胞毒性を示した。CD38陽性H929及びMOLP-8細胞への細胞毒性活性(
図3A~3B)を、CD38陰性U266細胞に対する細胞毒性活性(
図3C)と比較することによって、CD38発現細胞への細胞毒性の特異性を調査した。CTM#3もCTM#4も、試験された条件下でU266細胞への有意な細胞毒性活性を示さなかった(
図3C)。
【
図4B】ヒト細胞(
図4A)又は非ヒト霊長類(
図4B)細胞のいずれかを使用して試験されたCD38ターゲティング分子#1、#2、及び#4の代表的な細胞毒性アッセイを示す図である。BLCL-C162は、アカゲザルCD38を発現するアカゲザル細胞株である。CD38ターゲティング参照分子#1及びターゲティングドメインを有さない志賀毒素エフェクターポリペプチドを、それぞれ陽性及び陰性対照として使用した。CTM#1、CTM#2、及びCTM#4は、CD38陽性MOLP-8細胞(
図4A)及びCD38陽性BLCL-C162細胞(
図4B)に対して濃度依存性の細胞毒性を示した。アカゲザル及びカニクイザルにおけるCD38の配列が同一であることに留意されたい。
【
図5】無細胞のインビトロのタンパク質翻訳アッセイにおけるCD38ターゲティング分子#4の濃度依存性のタンパク質合成阻害活性を示す図である。タンパク質合成阻害は、本明細書に記載される志賀毒素の1つの活性である。CD38ターゲティング参照分子#1及びターゲティングドメインを有さない志賀毒素エフェクターポリペプチドを、陽性対照として使用した。相対発光単位(RLU;relative luminescence unit)によって測定されたルシフェラーゼのタンパク質合成は、陽性対照の参照分子に匹敵するCTM#4による濃度依存的な方式で減少した。
【
図6B】
図6A~6Bにおいて、組換えヒトCD38タンパク質(
図6A)又は組換えカニクイザルCD38タンパク質(
図6B)へのCD38ターゲティング分子(CTM#2、CTM#3、及びCTM#4)の結合特徴を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA;enzyme-linked immunosorbent assay)結合アッセイを用いて決定した。分子は、それぞれヒト及びカニクイザルCD38の両方に結合した、CD38ターゲティング分子#2(配列番号77)、CD38ターゲティング分子#3(配列番号78)、及びCD38ターゲティング分子#4(配列番号79)、それに対してヒトCD38(
図6A)に結合しているがカニクイザルCD38(
図6B)に結合していないCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)である。
【
図7】CD38の3次元タンパク質構造の図解、及びヒトCD38細胞外ドメインを使用したエピトープマッピング変異誘発によって決定された、CD38ターゲティング分子#4との結合に関するCD38における重要な残基の配置を示す図である。
図7において、重要な表面の接近可能な接触残基F216及びL262は、赤色で示され、重要な構造的な残基L124及びL230は、紫色で示され、ジスルフィド対に参加する重要な構造的な残基C119/C201及びC254/C275は、灰色で示される。
【
図8H】ダラツムマブの存在下における、CD38発現細胞への、様々な例示的なCD38ターゲティング分子(CTM#1、CTM#2、CTM#4、CTM#7、及びファミリー#5のCTM)の細胞毒性活性を示す図である。ダラツムマブの一連の希釈物で前処理したCD38陽性細胞への、0.5μg/mLのCTM#1、CTM#7、又はファミリー#5のCD38ターゲティング分子の細胞毒性活性を、ヒト骨髄腫H929細胞(
図8A)、ヒトリンパ腫ST486細胞(
図8B)、及びヒト多発性骨髄腫MOLP-8細胞(
図8C)を使用して測定した。10g/mLのダラツムマブで前処理した細胞に投与された、CTM#1、CTM#7、又はファミリー#5のCTMの一連の希釈物の細胞毒性活性を、CD38陽性ヒトリンパ腫ST486細胞(
図8D)、ヒト多発性骨髄腫MOLP-8細胞(
図8E)を使用して測定した。50μg/mLのダラツムマブに曝露されたヒトCD38発現細胞に投与されたCTM#4の一連の希釈物の細胞毒性活性を、ヒト骨髄腫H929細胞又はヒト多発性骨髄腫MOLP-8細胞(
図8F)のいずれかを使用して測定した。
図8Gは、一連の濃度のダラツムマブに曝露されたヒト骨髄腫MOLP-8細胞に対する、CTM#4の投与後の48時間に測定されたCTM#4の代表的なCD
50値(nM)を示す図である。
図8Hは、CTM#4での曝露後の48時間に一連の濃度のダラツムマブで処理されたヒト多発性骨髄腫MOLP-8細胞に投与された、CTM#4の一連の希釈物の細胞毒性活性及びCD
50値(nM)を示す図である。
図8Hにおいて、CTM#4のCD
50値(nM)は、下の表に具体的なダラツムマブ濃度(nM)で示される。CTM#4の細胞毒性活性をダラツムマブの存在下で保持したところ、約10,000nMのダラツムマブ濃度でCD
50値の穏やかなシフトがみられた。
【
図9】12日にわたり6用量で体重1キログラム当たり1ミリグラム(mg/kg;milligram per kilogram)のCD38ターゲティング分子#3又はCD38ターゲティング分子#4が投与されたBALB/cマウスの経時的な体重の変化を示す図である。CTM#3を受けたマウスの半分が12日目の最後の計画された用量の前に死亡したため、12日目の前にCTM#3グループは投与を中止した。
【
図10】より低い程度に脱免疫化されたCD38ターゲティング対照分子(配列番号84)と比較した、CTM#1、CTM#2、又はCD38ターゲティング参照分子#1が投与されたマウスから採取した血清試料に適用した溶液中のELISAアッセイを使用して測定した場合の血清抗薬物免疫グロブリンGの量を示す図である。マウスにそれぞれ、2週間にわたり週3回、次いで4週目から5週目にわたり週3回より多く、すなわち5週間にわたり合計12用量で、0.25mg/kgのそれぞれのCD38ターゲティング分子を投与した。マウス血清を、研究の投与期間の間及び投与が終わった後の異なるタイムポイントで収集した。
【
図11D】ヒトがんのインビボの異種移植マウスモデルにおける経時的なヒト腫瘍増殖を示す図である。マウスに少量及び大量のCD38を発現するヒト骨髄腫腫瘍細胞(LP1細胞、
図11A;H929細胞、
図11B;MM1.S細胞、
図11C;MOLP-8細胞、
図11D)を注射し、CD38ターゲティング分子#4又は媒体のみの陰性対照のいずれかを投与した。青色は、媒体のみの対照の測定値を示す;全ての他のデータは、様々な用量(例えば1.5、3、4.5、5、6、9、10、又は12mg/kg)及び投与スケジュール(例えば2週に1回(BIW;biweekly);週1回(QW;once per week);又は隔週(Q2W;very other week))でのCTM#4に関するものである。
【
図12A】
図12Aは、例示的なCD38ターゲティング分子での処理を受けているがんの播種性異種移植マウスモデルにおける平均生物発光シグナルを示す図である。
図12Aは、MM1.S-luc播種性多発性骨髄腫マウスモデルにおける平均生物発光シグナルを示す図である。
【
図12B】
図12Bは、異種移植片腫瘍細胞におけるルシフェラーゼ活性の生物発光イメージングを使用して収集されたマウスの画像を示す図である:媒体のみが投与されたマウスは、その体全体にわたり広範囲に強烈なシグナルを示したが、それに対してCD38ターゲティング分子#4(CTM#4)が投与されたマウスは、この方法によって検出可能なMM1.S-luc腫瘍細胞を有さないようであった。10匹のマウスのうち10匹で完全な腫瘍の排除が観察された。
【
図12C】Daudi-luc播種性異種移植マウスモデルにおける平均生物発光シグナルを示す図である。
図12Cは、異種移植片腫瘍細胞におけるルシフェラーゼ活性の生物発光イメージングを使用して収集されたマウスの画像を示す図である:適切な研究の日に、媒体のみが投与されたマウスはその体全体にわたり広範囲に強烈なシグナルを示したが、それに対してCD38ターゲティング参照分子#1が投与されたマウスは低減したシグナルを呈示した。
【
図13】非変性条件下でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC;size exclusion chromatography)によって分析されたCTM#4の試料調製物中に存在するタンパク質種のサイズ及び比率をグラフで示す図である。SEC分析に関して、SECカラムを通した後に溶出した材料の280ナノメートル(nm;nanometer)の波長における紫外線(uv;ultraviolet)光の吸光度を、ミリ吸光度単位(mAU;milli-absorbance unit)で、溶出時間にわたり分(min;minute)でプロットした。ソフトウェアを使用して、280nmのトレースで個々のピーク、及び280nmにおける各ピークの紫外光の最大吸光度の溶出時間を確認した。18.81分を中心としたピーク(#2)は、1014アミノ酸残基を含み、約110kDaの理論上の分子量を有するCTM#4の非共有結合のホモ二量体形態を表し、17.38分を中心としたピーク(#1)は、1又は2以上のより大きい分子量の種、例えばCTM#4の多量体及び/又は集合体を表す。個々のピークの純度は、そのピークの面積を試料の総ピーク面積で割ることによって計算してもよい。約25分におけるピークは、緩衝液溶出によって引き起こされるuv吸光度における予測されるシグナルを表す。
【
図14】
図14Aは、例示的なCD38ターゲティング分子、例えばCTM#4などの略図である。CTM#4は、タンパク質様のリンカーを介して融合した、操作された脱免疫化(DI;deimmunized)志賀毒素サブユニットAエフェクターポリペプチド(SLT-1A)及び抗CD38単鎖可変断片(scFv;single chain variable fragment)を含む連続するポリペプチドを含む。
図14Bは、例示的なCD38ターゲティング分子、例えばCTM#4などの可能性のある作用機構を示す略図であり、これは、細胞表面CD38を介したCD38発現細胞への特異的な結合、これらの標的細胞への内在化;エンドソームからゴルジ体へ、次いで小胞体へ、さらにサイトゾルへの逆行する経路における細胞内の自己経路決定;及びサイトゾルに入ったら、リボソームの不可逆的な酵素による不活性化とそれによる標的細胞死を含む。このCTM#4に関する推定の作用機構は、患者の免疫機能状況とは無関係である。
【
図15】CTM#4が、初代細胞培養において患者由来の多発性骨髄腫細胞を殺滅することを示す図である。
図15は、一連の濃度(Conc;concentration)のCTM#4の投与後の全体の多発性骨髄腫細胞生存率のパーセント、及びダラツムマブ耐性患者(#13)からの1つの試料を含む6人の異なる患者(010、011、012、013、014、及び015)からの骨髄穿刺液(BMA;bone marrow aspirate)により得られた多発性骨髄腫細胞試料に対するCTM#4のCD
50値(nM)を示す図である。
図15において、表の中央の列は、患者試料におけるMM細胞のCD38受容体の密度を報告する。CTM#4投与の48時間後、初代多発性骨髄腫細胞への有効なCTM#4細胞毒性(例えば3.5~8.5nMのCD
50値)が、広範囲のCD38発現レベルにわたり観察された(例えば、細胞1個当たり1.4~67.5×10
5個のCD38分子のCD38の細胞表面密度)。
【
図16】インビトロにおけるヒト多発性骨髄腫細胞へのCTM#4の投与後にリアルタイムGloアッセイを使用して測定された細胞生存率の時間経過研究からの結果を示す図である。
図16は、経時的な、多発性骨髄腫細胞パネルからの異なる細胞型(ANBL-6、NCI-H929、RMPI-8226、及びMOLP-8)にわたる、及び非多発性骨髄腫対照細胞株(HCT116)におけるCTM#4のCD50値(ng/mL)を示す図である。
図16において、表は、下の2本の線(CTM#4又はCD38TM4)でCD
50値(pM)を報告する。
図16において、表は、細胞表面CD38の発現レベルを報告しており、その値を、CD38発現の線において高又は中のいずれかとして特徴付ける。
【
図17】マウスにヒト多発性骨髄腫MM1.S細胞を植え付けて播種性異種移植片を形成し、CTM#4で処理した後の腫瘍体積の時間経過を示す図である。マウスを、CTM#4で、週1回(QW)又は隔週(Q2W)で処理し、任意選択で米国における現行の多発性骨髄腫のための標準的治療(SOC;standard of care)と共に処理した。
【
図18A】CTM#4の一連の希釈物の投与の後のヒト全血(左のパネル)における全ナチュラルキラー(NK;natural killer)細胞数のフローサイトメトリーを使用したex vivoの分析を示す図である。このアッセイにおいてNK集団の半分を殺滅するように計算されたCTM#4の濃度(CD
50)が示される。
【
図18B】CTM#4の一連の希釈物の投与の後のカニクイザル全血における全ナチュラルキラー(NK;natural killer)細胞数のフローサイトメトリーを使用したex vivoの分析を示す図である。このアッセイにおいてNK集団の半分を殺滅するように計算されたCTM#4の濃度(CD
50)が示される。
【
図19】CTM#4投与に対するヒト多発性骨髄腫ANBL-6細胞の用量応答曲線及び表形式の結果の要約を示す図である。ANBL-6細胞を、CTM#4と共に連続的に48又は72時間インキュベートするか、又はCTM#4に2時間曝露するかのいずれかとし、洗浄し、48又は72時間のタイムポイントまでCTM#4非含有の培地中で維持した。
図19は、試験された4つの条件:48時間のタイムポイント-0.03nM、ウォッシュアウトなし、及び0.16nMで2時間のウォッシュアウト;72時間のタイムポイント-0.01nM、ウォッシュアウトなし、及び0.1nMで2時間のウォッシュアウトに関するANBL-6細胞に対するCTM#4のCD
50値を示す図である。
【
図20】再発性及び/又は不応性多発性骨髄腫(RRMM;relapsed and/or refractory multiple myeloma)を有すると類別される患者のためのCTM#4単独療法の臨床研究の第1の相の設計を示す概略図である。研究設計は、用量漸増フェーズ(パート1)及び拡大フェーズ(パート2)を含む。両方のパートにおいて、患者は、進行性疾患(PD;progressive disease)、許容できない毒性、又は離脱が起こるまで処理される。
【
図21】CTM#4単独療法の臨床研究のための投与スキームを例示する概略図である。用量漸増は、50μg/kgのCTM#4から開始し、次いで
図21で示されるように、療法のサイクル1で観察された用量制限毒性(DLT;dose-limiting toxicity)の数に従って進行することになる。50μg/kg用量の評価の後、それに続く用量漸増及び最大耐量(MTD;maximum tolerated dose)決定は、他の利用可能な非DLT安全性、臨床有効性、薬物動態(PK;pharmacokinetic)及び薬力学(PD;pharmacodynamic)データの考察と共に、過剰用量対照を用いたベイズのロジスティック回帰モデル(BLRM;Bayesian Logistical Regression Model)から知ることになる。
【
図22B】
図22Aに、CTM#4単独療法の臨床研究の一次的及び二次的な目的を列挙し、
図22Bに、それらの探索的目的を列挙した。
【
図23D】
図23A及び
図23Bは、抗CD38抗体であるダラツムマブ、HB-7、AT13-5、及びOKT-10の存在下における、CD38を発現するMOLP-8細胞へのCD38結合性タンパク質(CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)を含む)の結合を示す図である。
図23Cは、CD38結合性タンパク質(CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)を含む)のCD38を発現するMOLP-8細胞への競合的結合を示す図である。全てのシグナルをフローサイトメトリーによって検出した。
図23Dは、抗CD38抗体であるダラツムマブ、HB-7、AT13-5、OKT-10、及び抗CD38結合scFv(第1の左の列)の存在下におけるCD38結合性タンパク質の結合(上の行)をまとめた表である。
図23A~Dで使用されているように:CD38TM1-融合タンパク質は、配列番号228のアミノ酸配列を含むCD38結合融合タンパク質を指し;CD38TM2-融合タンパク質は、配列番号229の配列を含むCD38結合融合タンパク質を指し;CD38TM3-融合タンパク質は、配列番号230の配列を含むCD38結合融合タンパク質を指す。
【
図24】
図24A及び
図24Bは、それぞれIMACカラム及びプロテインL(Pro-L;protein L)カラムによるCTM#3及びCTM#4の精製を示す図である。MWマーカーは、どこに分子量マーカーが配置されているかを示す。CD38TM3のVH及びVLは、標準的なモノクローナル抗体精製樹脂(プロテインA又はプロテインL)に結合しないことから、それをHis-タグ及びIMACカラムを使用して精製した(
図24A)。精製をより簡単にするために、ラムダ軽鎖であるCD38TM3の軽鎖を、プロテインLに結合することができるようにフレームワーク突然変異によって改変して、追加のタグを用いずに親和性精製を可能にした。得られたCD38TM4は、プロテインLに結合することができ、したがってプロテインLの親和性によって精製することができる。
【
図25D】CD38ターゲティング分子の成分として使用するのに好適な様々な例示的なCD38ターゲティング部分の配列を示す図である。
図25Aは、CD38結合性領域ファミリー#1及びCD38結合性タンパク質#1(CD38TM1)に関する配列を提供する。
図25Bは、CD38結合性領域ファミリー#2及びCD38結合性タンパク質#2(CD38TM2)に関する配列を提供する。
図25Cは、CD38結合性領域ファミリー#3及びCD38ターゲティング部分#3(CD38TM3)に関する配列を提供する。
図25Dは、CD38結合性領域ファミリー#3及びCD38ターゲティング部分#4(CD38TM4)に関する配列を提供する。
図25Dで示されるように、CD38TM3のVLドメインの最初の21個のアミノ酸を、カッパ軽鎖であるCD38TR1のVLドメインの最初の22個のアミノ酸で置き換え、CD38TM4のVLドメインを得た。CDR配列は、下線で示される。
【
図26】それぞれNからC末端にわたりVH-GGGGS-VLを含有する2つの同一なscFvによって形成されたダイアボディのX線構造の図解を示す図であり、VH及びVLは、CD38TM4に由来する。一方のscFv鎖(鎖A)のVHが他方のscFv鎖(鎖B)のVLと複合体化して、CD38結合ドメインを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
VII.発明の詳細な説明
本発明は、CD38結合性タンパク質、及びその組成物の多様な実施形態を提供し、各CD38結合性タンパク質は、(1)志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットに由来する少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドと、(2)以下に記載されるように、リンカーを有していてもよい、CD38分子の細胞外部分に特異的に結合することが可能な少なくとも1つのCD38結合性領域とを含む。本発明の各CD38結合性タンパク質については、少なくとも1つの結合性領域は、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、例えば、免疫グロブリン型結合性領域などに対して異種である。
【0035】
A.定義
これらの、本発明の特色、態様、及び利点、並びに他の、本発明の特色、態様、及び利点は、以下の記載、付属の特許請求の範囲、及び添付の図に照らして、よく理解されるであろう。本発明の前述の要素は、本発明の他の実施形態を行うために、本明細書の以下で、そのような複合又は除去に反対する言明がなされない限りにおいて、個別に組み合わされる場合もあり、自由に除去される場合もある。
【0036】
本発明が、よりたやすく理解されうるために、下記では、一部の用語が規定される。さらなる定義は、本発明の、「発明を実施するための形態」中で見出されうる。
【0037】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用される、「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その」という用語は、そうでないことが明確に指示されない限りにおいて、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
【0038】
本明細書及び付属の特許請求の範囲において、2つの分子種である、A及びBに言及する場合に使用される、「及び/又は」という用語は、A及びBのうちの少なくとも1つを意味する。本明細書及び付属の特許請求の範囲において、A、B、及びCなど、3つ以上の種に言及する場合に使用される、「及び/又は」という用語は、A、B、若しくはCのうちの少なくとも1つ、又はA、B、若しくはCの任意の組合せのうちの少なくとも1つ(各分子種は、単数又は複数である可能性がある)を意味する。
【0039】
「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドへと組み込まれたアミノ酸への言及を含む。「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸又はアミノ酸残基の、任意のポリマーを含む。「ポリペプチド配列」という用語は、ポリペプチドを、物理的に構成する、一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。
【0040】
「タンパク質」とは、1つ又は2つ以上の、ポリペプチド又はポリペプチド「鎖」を含む高分子である。例えば、タンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は11以上のポリペプチドを含みうる。タンパク質が1つより多いポリペプチドを含む実施形態では、タンパク質のポリペプチドは、互いに同一である場合も、異なっている場合もある。タンパク質は、単量体、又は二量体、三量体、四量体などといった多量体でありうる。
【0041】
「ペプチド」とは、合計約15~20アミノ酸残基未満のサイズの、小型のポリペプチドである。「アミノ酸配列」という用語は、長さに応じて、ペプチド又はポリペプチドを、物理的に構成する、一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。場合によって、「残基」とは、本明細書で使用される場合、タンパク質中の位置及びその関連アミノ酸配列同一性を示すものとする。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で開示されるポリペプチド配列及びタンパク質配列は、左から右へと書かれ、それらの、アミノ末端からカルボキシ末端への順序を表す。
【0042】
「アミノ酸」、「アミノ酸残基」、「アミノ酸配列」、又はポリペプチド配列という用語は、天然に存在するアミノ酸(L立体異性体及びD立体異性体を含む)を含み、そうでないことが指し示されない限りにおいて、また、セレノシステイン、ピロリシン、N-ホルミルメチオニン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシプロリンヒプシン、ピログルタミン酸、及びセレノメチオニンなど、天然に存在するアミノ酸と同様に機能しうる、天然アミノ酸の、公知のアナログも含む。
【0043】
「修飾」とは、本明細書で使用される場合、ポリペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、及び/若しくは欠失又はタンパク質に化学的に連結された部分への変更を意味する。例えば、修飾は、タンパク質に結合した炭水化物又はPEG構造の変更でありうる。本明細書において「アミノ酸修飾」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を意味する。明確にするために、特に断りのない限り、アミノ酸修飾は常に、DNAによってコードされるアミノ酸、例えば、DNA及びRNAにコドンを有する20種のアミノ酸に対するものである。
【0044】
「アミノ酸置換」又は「置換」とは、本明細書で使用される場合、親ポリペプチド配列中の特定の位置のアミノ酸の、異なるアミノ酸との置換えを意味する。特に、一部の実施形態では、置換は、特定の位置に天然に存在しない、生物内に、又は任意の生物中に天然に存在しないアミノ酸に対してである。例えば、置換N297Aとは、297位のアスパラギンがアラニンと置き換わっているバリアントポリペプチド、この場合には、Fcバリアントを指す。明確には、核酸コード配列を変更するが、出発アミノ酸を変更しないように改変されている(例えば、CGG(アルギニンをコードする)をCGA(依然としてアルギニンをコードする)に交換して、宿主生物発現レベルを高めること)タンパク質は、「アミノ酸置換」ではない;すなわち、同一タンパク質をコードする新規遺伝子の作出に関わらず、タンパク質が、出発する特定の位置で同一アミノ酸を有する場合、アミノ酸置換ではない。
【0045】
ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子のアミノ酸残基に関する、「保存的置換」という語句は、ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子の、アミノ酸組成の変更であって、ペプチド、ペプチド領域、ポリペプチド領域、タンパク質、又は分子全体の機能及び構造を、実質的に変化させない変更(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W. H. Freeman and Company, New York (2nd ed., 1992))を参照されたい)を指す。
【0046】
「アミノ酸挿入」又は「挿入」とは、本明細書で使用される場合、親ポリペプチド配列中の特定の位置でのアミノ酸配列の付加を意味する。例えば、-233E又は233Eは、233位の後及び234位の前のグルタミン酸の挿入を示す。さらに、233ADE又はA233ADEは、233位の後及び234位の前のAlaAspGluの挿入を示す。
【0047】
「アミノ酸欠失」又は「欠失」とは、本明細書で使用される場合、親ポリペプチド配列中に特定の位置のアミノ酸配列の除去を意味する。例えば、E233-又はE233#、E233()又はE233delは、233位のグルタミン酸の欠失を示す。さらに、EDA233-又はEDA233#は、233位で始まる配列GluAspAlaの欠失を示す。
【0048】
本明細書で使用される、「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合によって結合されたアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド及びペプチドを含む。ペプチジル基は、天然に存在するアミノ酸及びペプチド結合、又は合成ペプチド模倣構造、すなわち、ぺプトイドなどの「アナログ」を含む(参照により全文で組み込まれる、Simon et al., PNAS USA 89(20):9367 (1992)を参照されたい)。当業者に理解されるように、アミノ酸は、天然に存在する場合も、又は合成である(例えば、DNAによってコードされるアミノ酸ではない)場合もある。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン、オルニチン及びノルロイシン(noreleucine)が、本発明の目的のために考慮される合成アミノ酸であり、D-及びL-(R又はS)両方の立体配置のアミノ酸が利用されうる。本発明のバリアントは、全て参照により全文で組み込まれる、Cropp & Shultz, 2004, Trends Genet. 20(12):625-30、Anderson et al., 2004, Proc Natl Acad Sci USA 101 (2):7566-71、Zhang et al., 2003, 303(5656):371-3、及びChin et al., 2003, Science 301(5635):964-7によって記載される方法を含むがこれに限定されない、例えば、Schultzらによって開発された技術を使用して組み込まれた合成アミノ酸の使用を含む修飾を含みうる。さらに、ポリペプチドは、1つ又は2つ以上の側鎖又は末端の合成的誘導体化、グリコシル化、ペグ化、環状並べ替え、環化、他の分子へのリンカー、タンパク質又はタンパク質ドメインへの融合、及びペプチドタグ又は標識の付加を含みうる。
【0049】
本明細書において「野生型又はWT」とは、対立遺伝子変異を含む、天然に見られるアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を意味する。WTタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有する。
【0050】
「バリアントタンパク質」又は「タンパク質バリアント」又は「バリアント」とは、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親タンパク質のものとは異なるタンパク質を意味する。タンパク質バリアントは、タンパク質自体、タンパク質を含む組成物、又はそれをコードするアミノ配列を指す場合もある。一部の実施形態では、タンパク質バリアントは、親タンパク質と比較して、少なくとも1つのアミノ酸修飾アミノ酸修飾を、例えば、親と比較して、約1~約70の、一部の実施形態では、約1~約5つのアミノ酸修飾を有する。以下に記載されるように、一部の実施形態では、親ポリペプチド、例えば、Fc親ポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4由来のFc領域などのヒト野生型配列であるが、バリアントを有するヒト配列も「親ポリペプチド」として働く場合がある。一部の実施形態では、本明細書におけるタンパク質バリアント配列は、親タンパク質配列と少なくとも約80%の同一性を有し、一部の実施形態では、親タンパク質配列に対して、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%、少なくとも約95%又は少なくとも約99%の同一性を有する。バリアントタンパク質は、バリアントタンパク質自体、タンパク質バリアントを含む組成物又はそれをコードするDNA配列を指す場合もある。
【0051】
本明細書において「抗原結合ドメイン」又は「ABD」とは、ポリペプチド配列の一部として存在する場合には、本明細書において記載されるように標的抗原と特異的に結合する6つの相互性決定領域(CDR;Complementary Determining Regions)のセットを意味する。したがって、「抗CD38抗原結合性ドメイン」は、本明細書において概説されるようなCD38抗原に結合する。当技術分野で公知のように、これらのCDRは、一般に、各々、3つのCDR:重鎖のためのvhCDR1、vhCDR2、vhCDR3並びに軽鎖のためのvlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3を含む、可変重鎖CDR(vhCDR又はVHCDR)の第1のセット及び可変軽鎖CDR(vlCDR又はVLCDR)の第2のセットとして存在する。当技術分野で理解されるように、CDRは、重鎖可変及び軽鎖可変領域の各々においてフレームワーク領域によってわけられる:軽鎖可変領域については、これらは(VL)FR1-vlCDR1-(VL)FR2-vlCDR2-(VL)FR3-vlCDR3-(VL)FR4であり、重鎖可変領域については、これらは(VH)FR1-vhCDR1-(VH)FR2-vhCDR2-(VH)FR3-vhCDR3-(VH)FR4である。
【0052】
本発明の抗原結合性ドメインは、複数の形式で、例えば、Fab、Fv及びscFvで実施されうる。「Fab」形式では、6つのCDRのセットは、2つの異なるポリペプチド配列、重鎖可変領域(vh又はVH;vhCDR1、vhCDR2及びvhCDR3を含有する)及び軽鎖可変領域(vl又はVL;vlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3を含有する)によって提供され、VHのC末端は、重鎖のCH1ドメインのN末端に結合され、VLのC末端は、軽鎖定常ドメインのN末端に結合されている(したがって、軽鎖を形成している)。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は一緒になってFvを形成し、これは、本明細書において概説されるように、scFv又はFabのいずれかでありうる。したがって、一部の場合には、抗原結合性ドメインの6つのCDRは、VH及びVLによって提供される。scFv形式では、VH及びVLは、本明細書において概説されるように、一般に、リンカーの使用を介して単一ポリペプチド配列に共有結合によって結合され、これは(N末端から出発して)VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHのいずれかでありうる。
【0053】
「Fab」又は「Fab領域」とは、本明細書で使用される場合、VH、CH1、VL、及びCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドを意味する。Fabは、単離におけるこの領域を指す場合も、全長抗体又は抗体断片の文脈におけるこの領域を指す場合もある。
【0054】
「Fv」又は「Fv断片」又は「Fv領域」とは、本明細書で使用される場合、単一抗体のVL及びVHドメインを含むポリペプチドを意味する。当業者により理解される通り、これらは、2つのドメイン、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインで構成されている。
【0055】
本明細書において「一本鎖Fv」又は「scFv」とは、scFv又はscFvドメインを形成するために、一般に、本明細書において記載されるような、scFvリンカーを使用して、軽鎖可変ドメインに共有結合によって結合された重鎖可変ドメインを意味する。scFvドメインは、N-からC末端にいずれかの配向でありうる(vh-リンカー-vl又はvl-リンカー-vh)。一般に、リンカーは、当技術分野で一般に知られ、上記で記載されるようなscFvリンカーである。
【0056】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、例えば、インタクトな免疫グロブリン又は免疫グロブリンの抗原結合性部分又は免疫グロブリンに類縁若しくは由来する抗原結合性タンパク質を含む。インタクトな抗体構造ユニットは、四量体(tetramertetrameric)タンパク質を含むことが多い。各四量体は、通常、2つの同一の対のポリペプチド鎖から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(通常、約25kDaの分子量を有する)及び1つの「重」鎖(通常、約50~70kDaの分子量を有する)を有する。ヒト免疫グロブリン軽鎖は、カッパ又はラムダ軽鎖を有すると分類されうる。一部の実施形態では、本発明は、一般に、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むがこれに限定されないいくつかのサブクラスを有するIgGクラスに基づく抗原結合性ドメイン(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖)を含む抗体構造を提供する。一般に、IgG1は356(D又はE)、IgG2及びIgG358(L又はM)で多型を有する種々のアロタイプを有する。本明細書において表される配列は、356D/358Mアロタイプを使用するが、他のアロタイプも本明細書に含まれる。すなわち、本明細書において含まれるIgG1 Fcドメインを含めて任意配列が、356D/358Mと置き換わる356E/358Lアロタイプを有しうる。IgG4は、IgG3よりも頻繁に使用される。
【0057】
IgG1は、356(D又はE)及び358(L又はM)で多型を有する種々のアロタイプを有することに注意されたい。本明細書において表される配列は、356D/358Mアロタイプを使用するが、他のアロタイプも本明細書に含まれる。すなわち、本明細書において含まれるIgG1 Fcドメインを含めて任意配列が、356D/358Mと置き換わる356E/358Lアロタイプを有しうる。
【0058】
したがって、「アイソタイプ」とは、本明細書で使用される場合、その定常領域の化学的及び抗原的特徴によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。「IgGサブクラス修飾」又は「アイソタイプ修飾」とは、本明細書で使用される場合、1つのIgGアイソタイプのアミノ酸を、異なる、アラインされたIgGアイソタイプ中の対応するアミノ酸に変換するアミノ酸修飾を意味する。例えば、EU296位で、IgG1はチロシンを含み、IgG2はフェニルアラニンを含むので、IgG2におけるF296Y置換は、IgGサブクラス修飾と考えられる。同様に、241位でIgG1はプロリンを有し、IgG4はそこでセリンを有するので、S241Pを有するIgG4分子は、IgGサブクラス修飾と考えられる。サブクラス修飾は、本明細書においてアミノ酸置換と考えられることは注意すること。
【0059】
「Fc」又は「Fc領域」又は「Fcドメイン」とは、本明細書で使用される場合、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1)、一部の場合には、ヒンジの一部を含まない抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。IgGについては、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCH2及びCH3(Cγ2及びCγ3)及びCH1(Cγ1)とCH2(Cγ2)の間の下部ヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は変わる可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、普通、残基C226又はP230をそのカルボキシル末端に含むように定義され、番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスに従う。したがって、「CH」ドメインは、IgGの文脈では、以下の通りである:「CH1」とは、KabatにおけるようなEUインデックスに従って118~215位を指す。「ヒンジ」とは、KabatにおけるようなEUインデックスに従って216~230位を指す。「CH2」とは、KabatにおけるようなEUインデックスに従って231~340位を指し、「CH3」とは、KabatにおけるようなEUインデックスに従って341~447位を指す。したがって、「Fcドメイン」は、-CH2-CH3ドメインを含み、ヒンジドメイン(ヒンジ-CH2-CH3)を含んでもよい。一部の実施形態では、以下により十分に記載されるように、アミノ酸修飾は、例えば、1つ又は2つ以上のFc?R受容体への、又はFcRn受容体への結合を変更するために、Fc領域に行われる。
【0060】
本明細書において「重鎖定常領域」とは、ヒトIgG抗体のCH1-ヒンジ-CH2-CH3部分を意味する。
【0061】
「軽鎖定常領域」とは、カッパ又はラムダに由来するCLドメインを意味する。
【0062】
「可変ドメイン」とは、本明細書で使用される場合、それぞれ、カッパ、ラムダ、及び重鎖免疫グロブリン遺伝子座を構成するV?(V.カッパ)、V?(V.ラムダ)、及び/又はVH遺伝子のいずれかによって実質的にコードされる1つ又は2つ以上のIgドメインを含む免疫グロブリンの領域を意味する。したがって、「重鎖可変ドメイン」は、(VH)FR1-vhCDR1-(VH)FR2-vhCDR2-(VH)FR3-vhCDR3-(VH)FR4を含み、「軽鎖可変ドメイン」は、(VL)FR1-vlCDR1-(VL)FR2-vlCDR2-(VL)FR3-vlCDR3-(VL)FR4を含む。
【0063】
各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する、一般に、当技術分野で及び本明細書において、「Fvドメイン」又は「Fv領域」と呼ばれる約100~110又は111以上のアミノ酸の可変領域を含む。可変領域では、重鎖及び軽鎖のVドメイン各々について、抗原結合性部位を形成する3つのループが集められる。ループの各々は、相補性決定領域(本明細書において以下、「CDR」と呼ばれる)と呼ばれ、ここでは、アミノ酸配列の変動は、最も重大である。「可変」とは、可変領域のいくつかのセグメントが、抗体間で配列において大きく異なるという事実を指す。可変領域内の可変性は、均一に分布しているわけではない。そうではなく、V領域は、各々9~15アミノ酸長であるか、又はそれより長い「超可変領域」と呼ばれる極めて可変性のより短い領域によって区切られた、15~30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる相対的に不変のストレッチからなる。
【0064】
各VH及びVLは、以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つの超可変領域(「相補性決定領域」、「CDR」)及び4つのFRから構成される。
【0065】
超可変領域は、一般に、軽鎖可変領域中の約アミノ酸残基24~34(LCDR1;「L」は軽鎖を表す)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)並びに重鎖可変領域中のおよそ約31~35B(HCDR1;「H」は重鎖を表す)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)のアミノ酸残基;Kabat et al., SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)並びに/又は超可変ループを形成する残基(例えば、軽鎖可変領域中の残基26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)及び91~96(LCDR3)並びに重鎖可変領域中の26~32(HCDR1)、53~55(HCDR2)及び96~101(HCDR3);Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917を包含する。本発明の特定のCDRは以下に記載されている。
【0066】
当業者により理解される通り、CDRの正確な番号付け及び配置は、異なる番号付けシステムの間で異なりうる。しかし、本発明の重鎖可変及び/又は軽鎖可変配列は、本発明の関連(固有の)CDRを含むということは理解されるべきである。したがって、本発明の各重鎖可変領域は、本発明のvhCDR(例えば、vhCDR1、vhCDR2及びvhCDR3)であり、本発明の各軽鎖可変領域は、本発明のvlCDR(例えば、vlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3)である。
【0067】
CDR番号付けの有用な比較は、以下の通りである(表4)、Lafranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27(1):55-77 (2003)を参照されたい:
【0068】
【0069】
本明細書では、一般に、可変ドメイン中の残基に言及する場合にはKabat番号付けシステムが(軽鎖可変領域のおよそ、残基1~107及び重鎖可変領域の残基1~113)、Fc領域についてはEU番号付けシステムが(例えば、Kabat et al.、前掲(1991))使用される。
【0070】
本発明は、多数の異なるCDRセットを提供する。この場合には、「完全CDRセット」は、3つの軽鎖可変及び3つの重鎖可変CDR、例えば、vlCDR1、vlCDR2、vlCDR3、vhCDR1、vhCDR2及びvhCDR3を含む。これらは、それぞれより大きな軽鎖可変又は重鎖可変ドメインの一部でありうる。さらに、本明細書においてより十分に概説されるように、重鎖可変及び軽鎖可変ドメインは、重鎖及び軽鎖が使用される場合(例えば、Fabが使用される場合)には別個のポリペプチド鎖上にある場合があり、又はscFv配列の場合には、単一ポリペプチド鎖上にある場合がある。
【0071】
CDRは、抗体の抗原結合性、又はより詳しくは、エピトープ結合性部位の形成に寄与する。
【0072】
「エピトープ」とは、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域中の特異的抗原結合性部位と相互作用する決定基を指す。エピトープは、アミノ酸又は糖側鎖などの分子のグループ化であり、通常、特定の構造的特徴並びに特定の電荷特徴を有する。単一抗原は、2つ以上のエピトープを有する可能性がある。エピトープは、結合に直接的に関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)及び結合に直接的に関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的に抗原に結合するペプチドによって効果的に遮断されるアミノ酸残基、言い換えれば、特異的に抗原に結合するペプチドのフットプリント内であるアミノ酸残基を含みうる。エピトープは、コンホメーション又は線形のいずれかでありうる。コンホメーションエピトープは、線形ポリペプチド鎖の異なるセグメントに由来する空間的に並置されたアミノ酸によって生成される。線形エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって生成されたものである。コンホメーション及び非コンホメーションエピトープは、後者ではなく前者への結合が、変性性溶媒の存在の喪失であるという点で区別されうる。
【0073】
特定の抗原又はエピトープに「特異的結合」又は「~に特異的に結合する」又は「~に特異的な」は、非特異的相互作用とは測定可能に異なっている結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に、結合活性を有さない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較して、分子の結合を決定することによって測定されうる。例えば、特異的結合は、標的と同様である対照分子との競合によって決定されうる。
【0074】
「Kassoc」又は「Ka」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すように意図されるのに対し、「Kdis」又は「Kd」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すように意図される。「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、解離定数を指すように意図され、これはKaに対するKDの比(すなわち、KD/Ka)から得られ、モル濃度(M)で表される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定されうる。一部の実施形態では、抗体のKDを決定する方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによって、例えば、BIACORE(登録商標)システムなど、バイオセンサーシステムを使用することによってである。一部の実施形態では、抗体のKDは、バイオレイヤー干渉法によって決定される。一部の実施形態では、KDは、抗原発現細胞を用いるフローサイトメトリーを使用して測定される。一部の実施形態では、KD値は、固定化された抗原を用いて測定される。他の実施形態では、KD値は、固定化された抗体(例えば、親マウス抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体バリアント)を用いて測定される。一部の実施形態では、KD値は、二価結合様式で測定される。他の実施形態では、KD値は、一価結合様式で測定される。特定の抗原又はエピトープの特異的結合は、例えば、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、少なくとも約10-12M、少なくとも約10-13M、少なくとも約10-14Mの抗原又はエピトープに対するKDを有する抗体によって示されうる。通常、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原又はエピトープと比較して、対照分子に対して20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍以上又はそれより高いKDを有する。
【0075】
タンパク質配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、最大配列同一性パーセントを達成するために、必要に応じて、ギャップを導入した後に、任意の保存的置換を配列同一性の一部として考えずに、特定の(親の)配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して当業者のスキル内である多様な方法で達成されうる。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適当なパラメータを決定できる。1つの特定のプログラムとして、参照により本明細書に組み込まれる、米国付与前公開番号20160244525の段落[0279]~[0280]で概説されるALIGN-2プログラムがある。核酸配列のための別の近似アラインメントは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics, 2:482-489 (1981)のローカル相同性アルゴリズムによって提供されている。このアルゴリズムは、Dayhoff, Atlas of Protein Sequences and Structure, M.O. Dayhoff ed., 5 suppl. 3:353-358、National Biomedical Research Foundation社、Washington、D.C.、USAによって開発され、Gribskov, Nucl. Acids Res. 14(6):6745-6763 (1986)によって規格化されたスコアリングマトリックスを使用することによってアミノ酸配列に適用されうる。
【0076】
配列の同一性パーセントを決定するためのこのアルゴリズムの実施の一例が、「BestFit」ユーティリティーアプリケーションにおいてGenetics Computer Group社(Madison、WI)によって提供されている。この方法のデフォルトパラメータは、ウィスコンシン配列解析パッケージプログラムマニュアルバージョン8(Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual, Version 8)(1995)(Genetics Computer Group社、Madison、WIから入手可能)に記載されている。本発明の文脈において同一性パーセントを確立するための別の方法は、John F. Collins及びShane S. Sturrokによって開発され、IntelliGenetics、Inc.社(Mountain View、CA)によって配布された、エジンバラ大学(University of Edinburgh)によって著作権で保護されたプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。この一連のパッケージから、スコアリングテーブルのためにデフォルトパラメータを使用する(例えば、12のギャップオープンペナルティー、1のギャップエクステンションペナルティー、及び6のギャップ)、Smith-Watermanアルゴリズムを使用できる。生成したデータから、「マッチ」値は「配列同一性」を反映する。配列間の同一性又は類似性パーセントを算出するための他の適切なプログラムは、一般に、当技術分野で公知であり、例えば、別のアラインメントプログラムとして、デフォルトパラメータを用いて使用されるBLASTがある。例えば、BLASTN及びBLASTPは、以下のデフォルトパラメータを使用して使用できる:遺伝暗号=標準、フィルター=なし、鎖=両方、カットオフ=60、予測=10、マトリックス=BLOSUM62、記載=50配列、並べ替え=HIGH SCORE、データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss Protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、http://をblast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiの前に配置することによって位置が指定されるインターネットアドレスで見出すことができる。
【0077】
本発明のアミノ酸配列(「発明配列」)と、親のアミノ酸配列間の同一性の程度は、「発明配列」の長さ又は親の配列の長さのいずれか短い方によって除された、2つの配列のアラインメントにおける正確なマッチ数として算出される。結果は、同一性パーセントで表される。
【0078】
「核酸」という用語は、一本鎖、二本鎖、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む任意の形態の2つ以上のヌクレオチドを有するRNA又はDNA分子を含む。「ヌクレオチド配列」という用語は、一本鎖形態の核酸のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序付けを含む。
【0079】
「プロモーター」という用語は、本明細書で使用される場合、所望の分子をコードする核酸配列など、転写されるべき核酸配列に作動可能に連結したDNA配列を含む。プロモーターは、一般に、転写されるべき核酸配列の上流に位置し、RNAポリメラーゼ及び他の転写因子による特異的結合のための部位を提供する。
【0080】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に移すことが可能である。通常、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、及び「遺伝子導入ベクター」とは、目的の遺伝子の発現を方向付けることが可能な、遺伝子配列を標的細胞に移すことができる任意の核酸コンストラクトを意味し、これはベクターの全て若しくは一部のゲノム組込み又は染色体外エレメントとしてのベクターのベクターの一過性若しくは遺伝性の維持によって達成されうる。したがって、この用語は、クローニング及び発現媒体並びに組込みベクターを含む。
【0081】
「調節エレメント」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸配列の発現のいくつかの態様を制御するヌクレオチド配列を含む。調節エレメントの例として例示的に、核酸配列の複製、転写、及び/又は転写後プロセシングに寄与する、エンハンサー、配列内リボソーム進入部位(IRES;internal ribosome entry site)、イントロン、複製起点、ポリアデニル化シグナル(pA)、プロモーター、エンハンサー、転写終結配列、及び上流調節ドメインが挙げられる。場合によっては、調節エレメントはまた、シス調節DNAエレメント並びに転位因子(TE、transposable element)も含みうる。当業者は、日常的な実験のみで発現コンストラクトにおいてこれら及び他の調節エレメントを選択し、使用することが可能である。発現コンストラクトは、遺伝子組換えアプローチを使用して、又は周知の方法論を合成的に使用して生成できる。
【0082】
「制御エレメント」又は「制御配列」とは、ポリヌクレオチドの複製(replication)、複製(duplication)、転写、スプライシング、翻訳又は分解を含む、ポリヌクレオチドの機能調節に寄与する分子の相互作用に関与するヌクレオチド配列である。調節は、プロセスの頻度、速度又は特異性に影響を及ぼす可能性があり、増強性又は阻害性でありうる。当技術分野で公知の制御エレメントとして、例えば、プロモーター及びエンハンサーなどの転写調節配列が挙げられる。プロモーターは、いくつかの条件下で、RNAポリメラーゼに結合し、普通、プロモーターから下流に(3’方向に)位置するコーディング領域の転写を開始できるDNA領域である。
【0083】
本発明の目的では、ポリペプチド又はポリペプチド領域に言及する場合の、「~に由来する」という語句は、ポリペプチド又はポリペプチド領域が、「親」タンパク質内に元来見出されるアミノ酸配列と、「親」分子の、一部の機能(複数可)及び構造(複数可)が、実質的に保存される限りにおいて、元のポリペプチド又はポリペプチド領域と比べた、一部のアミノ酸残基の付加、欠失、切断、再配列、又は他の変化を、今後において含みうるアミノ酸配列とを含むことを意味する。当業者は、当技術分野で公知の技法、例えば、タンパク質配列アライメントソフトウェアを使用して、ポリペプチド又はポリペプチド領域が由来した親分子を同定することが可能であろう。
【0084】
本発明の目的では、かつ、志賀毒素ポリペプチド配列又は志賀毒素由来ポリペプチドに関して、「野生型」という用語は、一般に、例えば、病原性細菌など、生存種において見出される、天然に存在する志賀毒素タンパク質配列(複数可)を指し、この場合、この志賀毒素タンパク質配列(複数可)は、最も高頻度で生じるバリアントのうちの1つである。これは、少なくとも1つの志賀毒素タンパク質バリアントを含む種の、統計学的検出力のある数の天然に存在する生物個体をサンプリングする場合に、なおも天然に存在するものの所与の種の生物個体のうちの1パーセント未満において見出される低頻度で存在する志賀毒素タンパク質配列と対照的である。その天然環境の外部における、天然単離物のクローン拡大(単離物が、生物であるのか、生物学的配列情報を含む分子であるのかに関わらない)は、クローン拡大が、この種の天然に存在する集団内に存在しない、新たな配列の変動を導入しない、及び/又は互いに対する、配列バリアントの相対的比率を変更しない限りにおいて、天然存在要件を変化させない。
【0085】
本明細書で使用される場合、「会合した」、「~を会合させること」、「連結された」、又は「~を連結すること」という用語は、分子の、2つ又は3つ以上の構成要素が、つながれるか、接合されるか、接続されるか、若しくは他の形でカップリングされて、単一の分子を形成する状態、又は2つ分子の間の、会合、連結、接合、及び/若しくは他の任意の接続を作出することにより、2つ分子を、互いと会合させて、単一の分子を形成する作用を指す。例えば、「連結された」という用語は、単一の分子が、形成されるように、1つ又は2つ以上の原子間相互作用により会合した2つ又は3つ以上構成要素を指す場合があり、この場合、原子間相互作用は、共有結合的でありうる、及び/又は非共有結合的でありうる。2つの構成要素の間の共有結合的会合の非限定例は、ペプチド結合及びシステイン間のジスルフィド結合を含む。2つの分子構成要素の間の非共有結合的会合の非限定例は、イオン結合及び水素結合を含む。
【0086】
本発明の目的では、「連結された」という用語は、単一の分子が形成されるように、1つ又は2つ以上の原子間相互作用により会合させた2つ又は3つ以上の分子構成要素を指し、この場合、原子間相互作用は、少なくとも1つの共有結合を含む。本発明の目的では、「~を連結すること」という用語は、上記で記載した通り、連結された分子を作出する作用を指す。
【0087】
本発明の目的では、「融合された」という用語は、ペプチド結合が、カルボン酸基の炭素原子の参与を伴うのか、例えば、?-炭素、?-炭素、?-炭素、?-炭素など、別の炭素原子を伴うのかに関わらず、ペプチド結合である、少なくとも1つの共有結合により会合した2つ又は3つ以上のタンパク質性構成要素を指す。一体に融合された、2つのタンパク質性構成要素の非限定例は、例えば、結果として得られる分子が、単一の、連続ポリペプチドであるように、ペプチド結合を介して、ポリペプチドへと融合された、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチドを含む。本発明の目的では、「~を融合させること」という用語は、例えば、翻訳されると、単一のタンパク質性分子を産生する、遺伝子領域の組換え融合から作出される融合タンパク質など、上記で記載した融合分子を作出する作用を指す。
【0088】
「::」という記号は、その前後のポリペプチド領域が、連続ポリペプチドを形成するように、物理的に、一体に連結されていることを意味する。
【0089】
本明細書で使用される、「発現された」、「~を発現すること」、又は「~を発現する」という用語、及びこれらの文法的変化形は、ポリヌクレオチド又は核酸の、タンパク質への翻訳を指す。発現されたタンパク質は、細胞内にとどまる場合もあり、細胞表面膜の構成要素となる場合もあり、細胞外腔へと分泌される場合もある。
【0090】
本明細書で使用された、少なくとも1つの細胞表面において、著明量の細胞外標的生体分子を発現する細胞は、「標的陽性細胞」又は「標的+細胞」であり、指定の細胞外標的生体分子と、物理的にカップリングされた細胞である。
【0091】
本明細書で使用される、「?」という記号は、記号に後続する生体分子に結合することが可能な、免疫グロブリン型結合性領域の略記である。「?」という記号は、記号に後続する生体分子に、10-5以下の解離定数(KD;dissociation constant)により記載される結合アフィニティーで結合するその能力に基づく、免疫グロブリン型結合性領域の機能的特徴を指すように使用される。
【0092】
本明細書で使用される、「重鎖可変(VH)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL)ドメイン」という用語は、それぞれ、対応する天然抗体の、少なくとも定性的抗原結合能を保持する、任意の抗体のVHドメイン又はVLドメイン(例えば、ヒトVHドメイン又はヒトVLドメイン)のほか、これらの任意の派生物(例えば、天然のマウスVHドメイン又はマウスVLドメインに由来するヒト化VHドメイン又はヒト化VLドメイン)を指す。VHドメイン又はVLドメインは、3つのCDR又は抗原結合性領域(ABR;antigen-binding region)により中断された、「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域は、抗原のエピトープに特異的に結合するように、CDR又はABRを位置合せするのに用いられる。アミノ末端から、カルボキシ末端へと、VH及びVLドメインのいずれも、以下のフレームワーク(FR;framework)と、CDR領域又はABR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4;又は、同様に、FR1、ABR1、FR2、ABR2、FR3、ABR3、及びFR4を含む。本明細書で使用される、「HCDR1」、「HCDR2」、又は「HCDR3」という用語は、それぞれ、VHドメイン内の、CDR1、CDR2、又はCDR3を指すのに使用され、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、それぞれ、VLドメイン内の、CDR1、CDR2、又はCDR3を指すように使用される。本明細書で使用される、「HABR1」、「HABR2」、又は「HABR3」という用語は、それぞれ、VHドメイン内の、ABR1、ABR2、又はABR3を指すのに使用され、「LABR1」、「LABR2」、又は「LABR3」という用語は、それぞれ、VLドメイン内の、CDR1、CDR2、又はCDR3を指すように使用される。ラクダ科動物のVHH断片、軟骨魚類のIgNARである、VNAR断片、一部の単一ドメイン抗体、及びこれらの派生物については、同じ基本配置:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む、単一の重鎖可変ドメインが存在する。本明細書で使用される、「HCDR1」、「HCDR2」、又は「HCDR3」という用語は、単一の重鎖可変ドメイン内の、CDR1、CDR2、又はCDR3のそれぞれを指すのに使用されうる。
【0093】
本発明の目的では、「エフェクター」という用語は、アロステリック効果(複数可)、及び/又は1つ若しくは2つ以上の因子の動員を結果としてもたらす、細胞毒性、生物学的シグナル伝達、酵素的触媒、細胞内経路決定、及び/又は分子間結合などの生物学的活性をもたらすことを意味する。
【0094】
本発明の目的では、「志賀毒素エフェクターポリペプチド」、「志賀毒素エフェクターポリペプチド領域」、及び「志賀毒素エフェクター領域」という語句は、少なくとも1つの志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットに由来する、ポリペプチド又はポリペプチド領域を指し、この場合、ポリペプチド又はポリペプチド領域は、少なくとも1つの志賀毒素機能を呈することが可能である。例えば、配列番号45~69は、StxA及びSLT-1Aに由来する。
【0095】
本発明の目的では、志賀毒素のエフェクター機能は、志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチド領域により付与される生物学的活性である。志賀毒素エフェクター機能の非限定例は、細胞への侵入の促進;脂質膜の変形;細胞への内在化の促進;クラスリン媒介性エンドサイトーシスの刺激;細胞内経路決定を、例えば、ゴルジ体、小胞体、及び細胞質ゾルなど、多様な細胞内区画へと方向付けること;細胞内経路決定を、カーゴにより方向付けること;リボソーム機能(複数可)の阻害;タンパク質合成の阻害、例えば、N-グリコシダーゼ活性などの触媒活性、及びリボソームの触媒性阻害;タンパク質合成の低減、カスパーゼ活性の誘導、エフェクターであるカスパーゼの活性化、細胞増殖抑制性効果の招来、及び細胞毒性を含む。志賀毒素触媒活性は、例えば、リボソームの不活化、タンパク質合成の阻害、N-グリコシダーゼ活性、ポリヌクレオチド:アデノシングリコシダーゼ活性、RNアーゼ活性、及びDNアーゼ活性を含む。志賀毒素は、リボソーム不活化タンパク質(RIP)である。RIPは、核酸、ポリヌクレオシド、ポリヌクレオチド、rRNA、ssDNA、dsDNA、mRNA(及びポリA)、及びウイルス性核酸を脱プリン化させうる(例えば、Barbieri L et al., Biochem J 286: 1-4 (1992); Barbieri L et al., Nature 372: 624 (1994); Ling J et al., FEBS Lett 345: 143-6 (1994); Barbieri L et al., Biochem J 319: 507-13 (1996); Roncuzzi L, Gasperi-Campani A, FEBS Lett 392: 16-20 (1996); Stirpe F et al., FEBS Lett 382: 309-12 (1996); Barbieri L et al., Nucleic Acids Res 25: 518-22 (1997); Wang P, Tumer N, Nucleic Acids Res 27: 1900-5 (1999); Barbieri L et al., Biochim Biophys Acta 1480: 258-66 (2000); Barbieri L et al., J Biochem 128: 883-9 (2000); Brigotti M et al., Toxicon 39: 341-8 (2001); Brigotti M et al., FASEB J 16: 365-72 (2002); Bagga S et al., J Biol Chem 278: 4813-20 (2003); Picard D et al., J Biol Chem 280: 20069-75 (2005)を参照されたい)。一部のRIPは、抗ウイルス活性及びスーパーオキシドジスムターゼ活性を示す(Erice A et al., Antimicrob Agents Chemother 37: 835-8 (1993); Au T et al., FEBS Lett 471: 169-72 (2000); Parikh B, Tumer N, Mini Rev Med Chem 4: 523-43 (2004); Sharma N et al., Plant Physiol 134: 171-81 (2004))。志賀毒素触媒活性は、インビトロ及びインビボのいずれにおいても観察されている。志賀毒素エフェクター活性についてのアッセイの非限定例は、例えば、タンパク質合成の阻害活性、脱プリン化活性、細胞増殖の阻害、細胞毒性、スーパーコイルドDNAに対する弛緩活性、及びヌクレアーゼ活性など、多様な活性を測定する。
【0096】
本明細書で使用される、志賀毒素エフェクター機能の保持とは、適切な定量的アッセイにより、再現可能に測定される通り、同じ条件下で、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照(例えば、志賀毒素A1断片)、又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、志賀毒素A1断片)を含むCD38結合性タンパク質と同等なレベルの志賀毒素機能活性を呈することが可能であることを指す。志賀毒素の、リボソーム不活化又はリボソーム阻害のエフェクター機能について、志賀毒素エフェクター機能の保持とは、例えば、当業者に公知のアッセイ、及び/又は本明細書で記載されているアッセイを使用することなどにより、インビトロ状況において、10,000pM以下のIC50を呈することである。標的陽性細胞殺滅アッセイにおける、志賀毒素の、細胞毒性のエフェクター機能について、志賀毒素エフェクター機能の保持とは、例えば、当業者に公知のアッセイ、及び/又は本明細書で記載されているアッセイを使用することにより示される通り、細胞型、及びそれによる、適切な細胞外標的生体分子の発現に応じて、1,000nM以下のCD50を呈することである。
【0097】
本発明の目的では、リボソームの阻害に関する「同等な」という用語は、実験により測定される、リボソーム阻害活性のレベルであって、適切な定量的アッセイにより、再現可能性を伴って測定され、同じ条件下で、参照分子(例えば、第2のCD38結合性タンパク質又は第3のCD38結合性タンパク質)の活性から、再現可能に、10%以内にあるレベルを意味する。
【0098】
本発明の目的では、細胞毒性に関する「同等な」という用語は、実験により測定される、細胞毒性のレベルであって、適切な定量的アッセイにより、再現可能性を伴って測定され、同じ条件下で、参照分子(例えば、第2のCD38結合性タンパク質又は第3の結合性タンパク質)の活性から、再現可能に、10%以内にあるレベルを意味する。
【0099】
細胞毒性に関して、本明細書で使用される、「弱毒化された」という用語は、分子が、同じ条件下で、参照分子により呈されるCD50の、10倍~100倍の間のCD50を呈するか、又は呈したことを意味する。
【0100】
志賀毒素のエフェクター機能活性のレベルを決定する場合、不正確なIC50及びCD50値が考えられるべきではない。一部の試料について、正確な曲線の当てはめに要求されるデータ点を収集できないために、IC50又はCD50についての正確な値は、得られない場合がある。例えば、理論的に、所与の試料についての濃度系列中で、それぞれ、50%を超えるリボソームの阻害又は細胞死が生じない場合、IC50もCD50も決定されえない。例えば、下記の実施例において記載されるアッセイなど、例示的な志賀毒素のエフェクター機能アッセイからのデータについての解析において記載される通り、曲線を正確に当てはめるのに不十分なデータは、実際の志賀毒素のエフェクター機能を表すものとして考えられるべきではない。
【0101】
志賀毒素のエフェクター機能の活性が検出できないことは、細胞への侵入、細胞内経路決定、及び/又は酵素活性の欠如ではなく、不適正な発現、ポリペプチドフォールディング、及び/又はタンパク質安定性のためでありうる。志賀毒素エフェクター機能についてのアッセイは、著明量の志賀毒素のエフェクター機能活性を測定するのに、多量の、本発明のポリペプチドを要求しない場合がある。低エフェクター機能又はエフェクター機能の消失の根底をなす原因が、実験により、タンパク質の発現又は安定性と関連することが決定される程度において、当業者は、志賀毒素の機能的エフェクター活性が、回復され、測定されうるように、当技術分野で公知のタンパク質化学法及び分子改変法を使用して、このような因子を補償することが可能でありうる。例として述べると、細胞ベースの、不適正な発現は、異なる発現制御配列を使用することにより補償される場合があり;ポリペプチドフォールディング及び/又は安定性の不適正は、末端の配列の安定化、又は分子の三次元構造を安定化させる、非エフェクター領域内の補償変異から利益を得る場合がある。
【0102】
一部の志賀毒素エフェクター機能、例えば、細胞内経路決定機能は、容易に測定可能ではない。例えば、細胞内経路決定の不適正のために、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、細胞毒性でない、及び/又は異種エピトープを送達しないのかどうかを識別する、規定の定量的アッセイは存在しないが、試験が利用可能な場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、適切な野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較した、任意の著明レベルの細胞内経路決定について解析されうる。しかし、本発明の結合性タンパク質の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素が、野生型志賀毒素Aサブユニットコンストラクトと同等(comparable又はequivalent)細胞毒性を呈する場合、細胞内経路決定活性レベルは、少なくとも、被験条件下では、野生型志賀毒素Aサブユニットコンストラクトの細胞内経路決定活性レベルと、それぞれ、同等(comparable又はequivalent)であると推定される。
【0103】
個々の志賀毒素機能のための、新たなアッセイが利用可能な場合、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む結合性タンパク質は、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性の、1000倍若しくは100倍以内にあるか、又は機能的ノックアウト志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して、3倍~30倍、若しくは30倍以上の活性を呈する志賀毒素エフェクター機能など、これらの志賀毒素エフェクター機能の任意のレベルについて解析されうる。
【0104】
十分な細胞内経路決定も、例えば、T細胞エピトープの提示に基づく細胞毒性アッセイ、又は細胞質ゾル及び/若しくは小胞体に局在化する標的基質を伴う毒素エフェクター機能に基づく細胞毒性アッセイなどの細胞毒性アッセイにおいて、分子の細胞毒性活性レベルを観察することにより推定されうるにとどまる。
【0105】
本明細書で使用される、「有意」な志賀毒素エフェクター機能の保持とは、適切な定量的アッセイにより、再現可能に測定される通り、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照(例えば、志賀毒素A1断片)と同等なレベルの志賀毒素機能活性を指す。インビトロにおけるリボソームの阻害について、著明な志賀毒素のエフェクター機能は、アッセイにおいて使用されるリボソームの供給源(例えば、細菌供給源、古細菌供給源、又は真核生物(藻類、真菌、植物、又は動物)供給源)に応じて、300pM以下のIC50を呈することである。これは、触媒的に破壊された、SLT-1A 1~251二重変異体(Y77S/E167D)によって示された、約100,000pMのIC50と比較して、著明に大きな阻害である。実験室の細胞培養物中の、標的陽性細胞殺滅アッセイにおける細胞毒性について、著明な志賀毒素のエフェクター機能は、結合性領域の標的生体分子(複数可)及び細胞型、特に、この細胞型による、査定される分子によりターゲティングされる、適切な細胞外標的生体分子(複数可)及び/又は細胞外エピトープ(複数可)の発現及び/又は細胞表面表示に応じて、100、50、30nM、又は30nM以下のCD50を呈することである。これは、細胞株に応じて、100~10,000nMのCD50を有する、細胞をターゲティングする結合性領域を伴わない、志賀毒素Aサブユニット単独(又は野生型志賀毒素A1断片)と比較して、適切な標的陽性細胞集団に対する、著明に大きな細胞毒性である。
【0106】
本発明の目的では、かつ、本発明の分子の志賀毒素エフェクター機能に関して、「妥当な活性」という用語は、天然に存在する(又は野生型)志賀毒素を含む分子に関して、本明細書で規定される、少なくとも中程度のレベル(例えば、11倍~1,000倍以内)の志賀毒素エフェクター活性を呈することを指し、この場合、志賀毒素エフェクター活性は、内在化の効率、細胞質ゾルへの細胞内経路決定の効率、標的細胞(複数可)による、送達されたエピトープの提示、リボソームの阻害、及び細胞毒性から選択される。細胞毒性について、志賀毒素エフェクター活性の妥当なレベルは、例えば、野生型志賀毒素コンストラクトが、0.5nM(例えば、野生型志賀毒素A1断片を含む結合性タンパク質)のCD50を呈する場合に、500nM以下のCD50を呈することなど、野生型の志賀毒素コンストラクトの1,000倍以内であることを含む。
【0107】
本発明の目的では、かつ、本発明の分子の細胞毒性に関して、「最適の」という用語は、野生型志賀毒素A1断片(例えば、志賀毒素Aサブユニット、又は一部の、切断された、そのバリアント)及び/又は天然に存在する(又は野生型)志賀毒素を含む分子の細胞毒性の、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍以内のレベルの、志賀毒素触媒性ドメインに媒介された細胞毒性を指す。
【0108】
志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性が、野生型志賀毒素Aサブユニット又はその断片と比べて、低減される場合であってもなお、効力が最高度であるバリアントは、細胞毒力低減バリアントにおいて最小化又は低減される、所望されない効果を呈しうるため、実際は、弱毒化志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用する適用も、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの使用と同等以上に有効でありうることに注意されたい。野生型志賀毒素は、極めて強力であり、わずか1つの毒素分子が、中毒細胞の細胞質ゾルに達した後、又は、おそらく、わずか40個の毒素分子が、中毒細胞へと内在化された後に、中毒細胞を殺滅することが可能である。例えば、細胞内経路決定又は細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能が、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して、大幅に低減された志賀毒素エフェクターポリペプチドであってもなお、例えば、ターゲティング型細胞殺滅、カーゴ分子の送達、並びに/又は特異的細胞及びそれらの細胞内区画の検出を伴う適用など、実際の適用に十分に、やはり強力でありうる。加えて、一部の活性低減型志賀毒素エフェクターポリペプチドは、カーゴ(例えば、さらなる外因性素材)を、CD38陽性標的細胞の、一部の細胞内位置又は細胞内区画へと送達するために、特に有用でありうる。
【0109】
分子の細胞毒性活性に関する、「選択的細胞毒性」という用語は、CD38標的について陽性の細胞集団(例えば、標的細胞型)と、非標的バイスタンダー細胞集団(例えば、CD38標的について陰性の細胞型)との間の、細胞毒性の相対レベルであって、細胞毒性選択性の計量、又は非標的細胞との対比での、標的細胞を殺滅する選択性の指標をもたらすように、標的細胞型についての50%細胞毒性濃度(CD50)の、非標的細胞型についてのCD50に対する比として表されうる細胞毒性の相対レベルを指す。
【0110】
所与の細胞外標的生体分子(又は所与の標的生体分子の細胞外エピトープ)の細胞表面表示及び/又は細胞表面密度は、一部の結合性タンパク質が、最も適切に使用されうる適用に影響を及ぼしうる。所与の標的生体分子の細胞表面表示及び/又は細胞表面密度の、細胞間の差違は、所与の、結合性タンパク質の、細胞への内在化の効率及び/又は細胞毒力を、定量的かつ定性的に変化させうる。所与の標的生体分子の細胞表面表示及び/又は細胞表面密度は、標的生体分子について陽性の細胞の間で大幅に変動する場合もあり、なお又は同じ細胞上でも、細胞サイクル又は細胞分化の異なる地点で、大幅に変動する場合もある。特定の細胞又は細胞集団における、所与の標的生体分子、及び/又は所与の標的生体分子の、一部の細胞外エピトープについての全細胞表面表示は、蛍光活性化細胞分取(FACS;fluorescence-activated cell sorting)によるフローサイトメトリーを伴う方法など、当業者に公知の方法を使用して決定されうる。
【0111】
ポリペプチド領域又はポリペプチド内の特色に関して、本明細書で使用される、「破壊された」、「破壊」、又は「~を破壊すること」という用語、及びこれらの文法的変化形は、領域内の、又は破壊された特色を構成する、少なくとも1つのアミノ酸の変化を指す。アミノ酸変化は、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させる、例えば、欠失、反転、挿入、又は置換など、多様な変異を含む。アミノ酸変化はまた、例えば、アミノ酸官能基内の、1つ若しくは2つ以上の原子の変化、又は1つ若しくは2つ以上の原子の、アミノ酸官能基への付加などの化学的変化も含む。
【0112】
本明細書で使用される、「脱免疫化された」とは、対象(例えば、ヒト対象)への投与の後で、例えば、野生型のペプチド領域、ポリペプチド領域、又はポリペプチドなどの参照分子と比較した、潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性の低減を意味する。これは、1つ又は2つ以上の、デノボにおける、抗原性エピトープ及び/又は免疫原性エピトープの導入に関わらない、参照分子と比較した、全体的な潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性の低減を含む。一部の実施形態では、「脱免疫化された」とは、分子が、哺乳動物への投与の後で、例えば、野生型志賀毒素A1断片又は前記のものを含む結合性タンパク質など、それが由来した「親」分子と比較した、抗原性及び/又は免疫原性の低減を呈したことを意味する。一部の実施形態では、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、参照「親」分子と比較した、相対的抗原性であって、同じ条件下で、例えば、定量的なELISA解析又はウェスタンブロット解析のような、当業者に公知のアッセイ及び/又は本明細書で記載されるアッセイなど、同じアッセイにより測定された参照分子の抗原性より、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は90%以上低減される、相対的抗原性を呈することが可能である。一部の実施形態では、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、参照「親」分子と比較した、相対的免疫抗原性であって、同じ条件下で、例えば、所与の時点において分子の非経口投与を受けた後の哺乳動物(複数可)において産生される抗分子抗体の定量的測定のような、当業者に公知のアッセイ及び/又は本明細書で記載されるアッセイなど、同じアッセイにより測定された参照分子の免疫抗原性より、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約99%、又は99%以上低減される、相対的免疫抗原性を呈することことが可能である。
【0113】
例示的な結合性タンパク質の相対的免疫原性は、時間経過にわたる、反復非経口投与の後における、結合性タンパク質に対する、インビボにおける抗体応答についてのアッセイを使用して決定された。
【0114】
本発明の目的では、「B細胞及び/又はCD4+T細胞が脱免疫化された」という語句は、分子が、哺乳動物への投与の後で、B細胞の抗原性若しくは免疫原性、及び/又はCD4+T細胞の抗原性若しくは免疫原性に関して、潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を低減したことを意味する。一部の実施形態では、「B細胞が脱免疫化された」とは、分子が、哺乳動物への投与の後で、例えば、野生型志賀毒素A1断片など、それが由来した「親」分子と比較した、B細胞の抗原性及び/又は免疫原性の低減を呈したことを意味する。一部の実施形態では、「CD4+T細胞が脱免疫化された」とは、分子が、哺乳動物への投与の後で、例えば、野生型志賀毒素A1断片など、それが由来した「親」分子と比較した、CD4T細胞の抗原性及び/又は免疫原性の低減を呈したことを意味する。
【0115】
志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、B細胞エピトープ、CD4+T細胞エピトープ、B細胞エピトープ領域、又はCD4+T細胞エピトープ領域に関する、「内因性」という用語は、野生型志賀毒素Aサブユニット内に存在するエピトープを指す。
【0116】
本発明の目的では、「CD8+T細胞が高度に免疫化された」という語句は、分子が、生存する対象(例えば、ヒト対象)内の、有核細胞の内部に存在する場合、CD8+T細胞の抗原性又は免疫原性に関して、潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を増大させていることを意味する。一般に、CD8+T細胞免疫化分子は、固有の特色(複数可)のために、又は本発明のCD38結合性タンパク質の構成要素として、有核細胞の早期エンドソーム区画への細胞内在化が可能である。
【0117】
本発明の目的では、「異種」という用語は、異なる供給源を意味し、例えば、異種志賀Aサブユニットポリペプチドは、例えば、内因性とは対照的に、天然の志賀毒素の、任意のAサブユニットの一部として、天然では見出されない。本発明の融合タンパク質は、非異種構成要素、例えば、志賀毒素及び抗CD38抗原結合性ドメインを含む。
【0118】
本発明の結合性タンパク質の、ポリペプチドの構成要素に関する、「埋め込まれた」という用語及びその文法的変化形は、出発ポリペプチド領域と、同じ総数のアミノ酸残基を共有する、新たなポリペプチド配列を作出するための、ポリペプチド領域内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸の、異なるアミノ酸による、内部における置換えを指す。したがって、「埋め込まれた」という用語は、さらなるアミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド構成要素の、出発ポリペプチドへの、外部、末端における融合も、さらなるアミノ酸残基の、内部における、さらなる挿入も含まず、存在するアミノ酸に対する置換だけを含む。内部における置換えは、アミノ酸残基置換だけにより達せられる場合もあり、一連の置換、欠失、挿入、及び/又は反転により達せられる場合もある。1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入が使用される場合、挿入に隣接して、同等数の近位アミノ酸が、欠失される結果として、埋め込まれたペプチドをもたらさなければならない。これは、本発明の結合性タンパク質のポリペプチド構成要素に関して、出発ポリペプチドと比較して、アミノ酸残基数を増大させた、新たなポリペプチドを結果としてもたらす、ポリペプチド内の内部における、1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を指す、「挿入された」という用語の使用と対照的である。
【0119】
本発明の結合性タンパク質のポリペプチド構成要素に関する、「挿入された」という用語及びその文法的変化形は、出発ポリペプチドと比較して、アミノ酸残基数を増大させた、新たなポリペプチド配列を結果としてもたらす、ポリペプチド内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を指す。本発明の結合性タンパク質のポリペプチド構成要素に関する、「部分的に挿入された」、「埋め込まれ、挿入された」という語句及びその文法的変化形は、結果として得られるポリペプチド長さが増大したが、挿入されたポリペプチドの全体の長さと同等な、アミノ酸残基の数未満だけ増大した場合を指す。挿入は、ポリペプチド内の挿入部位に対して近位でない、ポリペプチドの他の領域が、欠失され、この結果として、最終的なポリペプチドの全長の減少もたらす場合であってもなお、最終的なポリペプチドは、T細胞エピトープペプチドポリペプチド領域内の内部における、1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入を含むため、「純粋」であれ、「部分的」であれ、既に記載された挿入のうちのいずれかを含む。
【0120】
本発明の目的では、本発明の結合性タンパク質の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の位置に言及する、「アミノ末端に対して近位の」という語句は、結合性タンパク質が、適切なレベルの、本明細書で言及される、志賀毒素のエフェクター機能活性(例えば、ある特定のレベルの細胞毒力)を呈することが可能である限りにおいて、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の、少なくとも1つのアミノ酸残基が、結合性タンパク質のアミノ末端から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13以上、例えば、最大で、18~20アミノ酸残基以内にある場合の距離を指す。したがって、本発明の一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドに対して、アミノ末端側に融合させたアミノ酸残基(複数可)は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの機能活性が、本明細書で要求される、適切な活性レベルを下回って低減されるように、志賀毒素のエフェクター機能を低減する(例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端領域の近傍の構造(複数可)の立体障害となることにより)べきではない。
【0121】
本発明の目的では、本発明の結合性タンパク質内の、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の、別の構成要素(例えば、細胞をターゲティングする結合性領域、分子部分、及び/又はさらなる外因性素材)と比較した位置に言及する、「アミノ末端に対して、より近位の」という語句は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の、少なくとも1つのアミノ酸残基が、本発明の結合性タンパク質の、直鎖状のポリペプチド構成要素のアミノ末端に対して、他の参照構成要素と比較して近接する場合の位置を指す。
【0122】
本発明の目的では、「志賀毒素ファミリーのメンバーの、1つのAサブユニットに由来する、活性の酵素ドメイン」という語句は、触媒性リボソーム不活化機構を介して、タンパク質合成を阻害する能力を有することを指す。天然に存在する志賀毒素の酵素活性は、例えば、生細胞の非存在下におけるRNA翻訳を伴う、インビトロアッセイ、又は生細胞内のRNA翻訳を伴う、インビボアッセイなど、当業者に公知のアッセイを使用する、タンパク質の翻訳を阻害する能力により規定されうる。当業者に公知のアッセイ、及び/又は本明細書で記載されているアッセイを使用して、志賀毒素の酵素活性の効力は、例えば、リボソームニッキングアッセイなど、リボソームRNA(rRNA)に対する、N-グリコシダーゼ活性を観察することにより、直接的に評価される場合もあり、並びに/又はリボソーム機能及び/若しくはタンパク質合成の阻害を観察することにより、間接的に評価される場合もある。
【0123】
本発明の目的では、「志賀毒素A1断片領域」という用語は、志賀毒素A1断片から本質的になるポリペプチド領域、及び/又は志賀毒素の志賀毒素A1断片に由来するポリペプチド領域を指す。
【0124】
本発明の目的では、結合性タンパク質に関する、「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」という用語は、一般に、結合性タンパク質のポリペプチド鎖(例えば、単一の、連続ポリペプチド鎖)の、最後のアミノ酸残基を指す。結合性タンパク質は、2つ以上のポリペプチド又はタンパク質を含むことが可能であり、したがって、本発明の結合性タンパク質は、複数のアミノ末端及びカルボキシ末端を含みうる。例えば、結合性タンパク質の「アミノ末端」は、出発アミノ酸残基の一級アミノ基を伴うか、又はN-アルキル化された、アルファアミノ酸残基のクラスのメンバーである、出発アミノ酸残基の場合の、等価の窒素を伴うアミノ酸残基とのペプチド結合を有さない、出発アミノ酸残基により、一般に特徴付けられる、ポリペプチドのアミノ末端を表す、ポリペプチド鎖の第1のアミノ酸残基により規定されうる。同様に、結合性タンパク質の「カルボキシ末端」は、その一級カルボキシル基のアルファ炭素へのペプチド結合により連結されたアミノ酸残基を有さない、終端アミノ酸残基により、一般に特徴付けられる、ポリペプチドのカルボキシル末端を表す、ポリペプチド鎖の、最後のアミノ酸残基により規定されうる。
【0125】
本発明の目的では、ポリペプチド領域に関する、「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」という用語は、さらなるアミノ酸残基が、この領域の外部において、ペプチド結合により連結されるのかどうかに関わらず、この領域の、領域境界を指す。言い換えれば、この領域が、他のペプチド又はポリペプチドへと融合されているのかどうかに関わらず、ポリペプチド領域の末端を指す。例えば、2つのタンパク質性領域を含む融合タンパク質、例えば、ペプチド又はポリペプチドと、志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む結合性領域は、別のタンパク質性領域、例えば、結合性領域の起始を表す、残基251~252位におけるアミノ酸残基を伴うペプチド結合にも関わらず、カルボキシ末端が、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のアミノ酸残基251を終端とする、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を有しうる。この例では、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端領域とは、融合タンパク質の末端ではなく、領域境界の内部を表す、残基251を指す。したがって、ポリペプチド領域について、「末端」、「アミノ末端」、及び「カルボキシ末端」という用語は、境界が、物理的に、末端にあるのであれ、大型のポリペプチド鎖内に埋め込まれた、内部の位置にあるのであれ、ポリペプチド領域の境界を指すように使用される。
【0126】
本発明の目的では、「志賀毒素A1断片のカルボキシ末端領域」という語句は、天然に存在する志賀毒素A1断片に由来するポリペプチド領域であって、疎水性残基(例えば、StxA-A1及びSLT-1A1のV236、並びにSLT-2A1のV235)で起始し、これに、疎水性残基と、志賀毒素A1断片ポリペプチド間で保存される、フーリン切断部位を終端とする領域とが後続し、天然の志賀毒素Aサブユニット内の、A1断片とA2断片との接合部を終端とする領域を指す。本発明の目的では、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端領域は、例えば、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端を含むか、又はこれから本質的になるペプチド領域など、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端ポリペプチドに由来するペプチド領域を含む。志賀毒素A1断片のカルボキシ末端に由来するペプチド領域の非限定例は、天然位置の、Stx1A(配列番号2)内又はSLT-1A(配列番号1)内の、236位~239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、又は251位;及びSLT-2A(配列番号3)内の、235位~239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、又は250位におけるアミノ酸残基配列を含む。
【0127】
本発明の目的では、連結された分子部分及び/又は結合性領域に関する、「A1断片のカルボキシ末端ポリペプチドに対して近位の」という語句は、志賀毒素A1断片ポリペプチドの最後の残基を規定することアミノ酸残基から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12アミノ酸残基以内にあることを指す。
【0128】
本発明の目的では、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的に遮蔽する」という語句は、例えば、天然位置の、Stx1A(配列番号2)内若しくはSLT-1A(配列番号1)内の236~251位、又はSLT-2A(配列番号3)内の235~250位のうちのいずれか1つにおけるアミノ酸残基に由来するアミノ酸残基など、A1断片由来領域のカルボキシ末端におけるアミノ酸残基へと連結された、及び/又は融合された、4.5kDa又は4.5kDa以上のサイズの、任意の分子部分(例えば、免疫グロブリン型結合性領域)を含む。本発明の目的では、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的に遮蔽する」という語句はまた、例えば、A1断片由来領域及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドの最後のアミノ酸に対して、カルボキシ末端側のアミノ酸残基など、A1断片由来領域のカルボキシ末端におけるアミノ酸残基へと連結された、及び/又は融合された、4.5kDa又は4.5kDa以上のサイズの、任意の分子部分(例えば、免疫グロブリン型結合性領域)も含む。本発明の目的では、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を、立体的に遮蔽する」という語句はまた、例えば、真核細胞のERAD(小胞体関連分解;endoplasmic reticulum-associated degradation)機構による認識など、細胞による、A1断片由来領域のカルボキシ末端の認識を物理的に防止する、4.5kDa又は4.5kDa以上のサイズの、任意の分子部分(例えば、免疫グロブリン型結合性領域)も含む。
【0129】
本発明の目的では、少なくとも40アミノ酸を含み、A1断片由来領域を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端領域へと連結された(例えば、融合された)ポリペプチドを含む、例えば、免疫グロブリン型結合性領域などの結合性領域は、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を立体的に遮蔽する」分子部分である。
【0130】
本発明の目的では、少なくとも40アミノ酸を含み、A1断片由来領域を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端領域へと連結された(例えば、融合された)ポリペプチドを含む、例えば、免疫グロブリン型結合性領域などの結合性領域は、「A1断片由来領域のカルボキシ末端を損なう」分子部分である。
【0131】
本発明の目的では、「志賀毒素ファミリーのメンバーのA1断片」という用語は、志賀毒素Aサブユニットの中に保存され、野生型志賀毒素Aサブユニット内の、A1断片とA2断片との間に位置する、フーリン切断部位における、フーリンによるタンパク質分解の後で残存する、アミノ末端の志賀毒素Aサブユニットの断片を指す。
【0132】
本発明の目的では、「A1断片領域のカルボキシ末端におけるフーリン切断モチーフ」という語句は、志賀毒素Aサブユニットの中に保存され、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット内の、A1断片とA2断片との接合部を架橋する、特異的なフーリン切断モチーフを指す。
【0133】
本発明の目的では、「A1断片領域のカルボキシ末端に対して近位のフーリン切断部位」という語句は、例えば、A1断片由来領域の、例えば、本発明の結合性タンパク質の分子部分など、分子の別の構成要素への連結部に対して近位の位置など、A1断片領域又はA1断片由来の領域のカルボキシ末端に位置する、フーリン切断モチーフを含む、A1断片領域内又はA1断片由来の領域内の、最後のアミノ酸残基を規定するアミノ酸残基から、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つ以上のアミノ酸残基未満の距離内に、アミノ酸残基を有する、任意の、同定可能なフーリン切断部位を指す。
【0134】
本明細書で使用される場合、「追加のCD38ターゲッティング治療剤」という用語は、CD38を標的とし、治療的効果又は利益をもたらす追加の治療剤(例えば、分子)を意味する。この追加のCD38ターゲッティング治療剤は、結合性タンパク質と相補的であり、そのCD38ターゲッティング活性において結合性タンパク質と直接的に競合しない。追加のCD38ターゲッティング治療剤は、抗CD38抗体又はCD38シグナル伝達に干渉する小分子阻害剤を含みうる、本質的にそれらからなりうる、又はそれらからなりうる。例えば、追加のCD38ターゲッティング治療剤は、結合性タンパク質が結合する抗原決定基と重複しない抗原決定基に結合する、又は追加のCD38ターゲッティング治療薬に結合した場合に、本発明の結合性タンパク質によるそのCD38分子の結合を妨げないような方法でCD38分子に結合する抗CD38抗体療法を含みうる、本質的にそれらからなりうる、又はそれらからなりうる。例えば、追加のCD38ターゲッティング治療剤は、例えば、ダラツムマブなど、抗CD38モノクローナル抗体療法を含みうる、本質的にそれらからなりうる、又はそれらからなりうる。
【0135】
本発明の目的では、「破壊されたフーリン切断モチーフ」という語句は、(i)本明細書のI-B節で記載された、特異的フーリン切断モチーフを指し、(ii)これは、分子に、フーリンによる切断の、参照分子と比較した低減であって、例えば、同じ条件下で、同じアッセイにおいて観察される、参照分子のフーリンによる切断から30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、又はそれ未満(切断なしに相当する100%を含む)であることが再現可能に観察されるフーリンによる切断の低減などの、フーリンによる切断の低減を分子に付与しうる変異及び/又は切断を含む。参照分子と比較した、フーリンによる切断の百分率は、参照分子の切断される素材:切断されない素材の比で除された、所望の分子の切断される素材:切断されない素材の比(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット;国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)として表されうる。適切な参照分子の非限定例は、本明細書で記載される、野生型志賀毒素のフーリン切断モチーフ及び/又はフーリン切断部位を含む、いくつかの分子を含む。
【0136】
本発明の目的では、「フーリンによる切断に抵抗性の」という語句は、分子又はその特異的ポリペプチド領域が、当業者に利用可能な、任意の手段であって、本明細書で記載される方法の使用を含む手段によりアッセイされる通り、(i)野生型志賀毒素Aサブユニット内の、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端、又は(ii)天然位置の、A1断片と、A2断片との接合部における、天然に存在するフーリン切断部位が破壊されないコンストラクトの、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端より低度の、フーリンによる切断を、再現可能に呈することを意味する。
【0137】
本発明の目的では、「志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する、活性の酵素ドメイン」という語句は、志賀毒素の酵素活性に基づく、リボソームの触媒性不活化を介して、タンパク質合成を阻害する能力を有するポリペプチド構造を指す。分子的構造が、タンパク質合成に対する阻害活性、及び/又はリボソームの触媒性不活化を呈する能力は、例えば、生細胞の非存在下におけるRNA翻訳アッセイを伴う、インビトロアッセイ、又は生細胞内のリボソームを伴う、インビボアッセイなど、当業者に公知の、多様なアッセイを使用して観察されうる。例えば、当業者に公知のアッセイを使用して、志賀毒素の酵素活性に基づく、分子の酵素活性は、例えば、リボソームニッキングアッセイなど、リボソームRNA(rRNA)に対する、N-グリコシダーゼ活性を観察することにより、直接的に評価される場合もあり、並びに/又はリボソーム機能、RNA翻訳、及び/若しくはタンパク質合成の阻害を観察することにより、間接的に評価される場合もある。
【0138】
志賀毒素エフェクターポリペプチドに関して、本明細書で使用される、「組合せ」とは、2つ又は3つ以上のサブ領域を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドについて記載し、この場合、各サブ領域は、以下、例えば、(1)内因性のエピトープ内又はエピトープ領域内の破壊;及び(2)A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフのうちの少なくとも1つを含む。
【0139】
本明細書で使用される場合、本発明の分子に関して、「結合性タンパク質」は、「CD38結合性タンパク質」又は「CD38結合性分子」又は「CD38結合性融合タンパク質」と同義的に使用される。前記の分子型の全ては、多様な「CD38結合性タンパク質」を含む。一般に、本発明のタンパク質は、CD38結合性ドメイン(「抗CD38抗原結合性ドメイン」(ABD;antigen binding domain)及び本明細書においてより十分に記載されるような任意のリンカーとも本明細書において呼ばれる)及び志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを、本明細書においてより十分に記載されるような任意のリンカーと共に含む「CD38結合性融合タンパク質」と本明細書において呼ばれる。
【0140】
B.序説
本発明は、CD38に結合し、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む結合性タンパク質(リンカーを含んでもよい;「CD38結合性融合タンパク質」と本明細書において呼ばれる)の属を提供する。本発明のCD38結合性融合タンパク質は、例えば、(1)CD38発現細胞の増殖を阻害する分子として、(2)CD38発現細胞を殺滅するための細胞毒性分子として、(3)他の細胞の中で特定のCD38陽性細胞型(複数可)を選択的に殺滅するために、(4)カーゴ分子を、CD38発現細胞の内部へと送達するための非毒性送達媒体として、(5)CD38発現細胞が関与する疾患及び状態の診断、予後又は特徴付けのための診断用分子として、及び(6)多発性骨髄腫のような造血器がんを含むいくつかの血液がん及びCD38陽性細胞増殖障害など、CD38発現細胞が関与する様々な疾患、障害、及び状態を治療するための治療用分子として有用である。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、それを必要とする対象において、非ホジキンリンパ腫(NHL;non-Hodgkin's lymphoma)、バーキットリンパ腫(BL;Burkitt’s lymphoma)、B慢性リンパ性白血病(B-CLL;B chronic lymphocytic leukemia)、B及びT急性リンパ性白血病(ALL;acute lymphocytic leukemia)、T細胞リンパ腫(TCL;T cell lymphoma)、急性骨髄性白血病(AML;acute myeloid leukemia)、有毛細胞白血病(HCL;hairy cell leukemia)、ホジキンリンパ腫(HL;Hodgkin's Lymphoma)、及び慢性骨髄性白血病(CML;chronic myeloid leukemia)を治療するために使用されうる。一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質は、それを必要とする対象において、再発性又は不応性多発性骨髄腫を治療するために使用されうる。一部の実施形態では、本発明のCD-38結合性タンパク質は、それを必要とする対象において、黒色腫を治療するために使用されうる。
【0141】
志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、新規結合性タンパク質を改変するためのロバストかつ強力な足場を提供する(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、国際公開第2017/019623号パンフレット、国際公開第2018/106895号パンフレット、及び国際公開第2018/140427号パンフレットを参照されたい)。細胞ターゲッティング部分としてのCD38結合性免疫グロブリン由来断片の、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドとの会合によって、CD38発現細胞を標的とする治療用及び診断用分子の改変が可能となる。
【0142】
C.CD38結合性融合タンパク質の一般的構造
本発明のCD38結合性融合タンパク質は、(1)細胞表面と会合したCD38の細胞外部分に特異的に結合することが可能な結合性領域、及び(2)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(本明細書において「志賀毒素エフェクターポリペプチド」と呼ばれる)を含む志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含みうる。一部の実施形態では、本発明の結合性タンパク質は、同一CD38結合性領域のうち2つ又は3つ以上及び同一であるか又は異なっているかに関わらず2つ又は3つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む。本発明のCD38結合性融合タンパク質の1つの限定されない例として、以下により十分に記載されるように、細胞表面と会合している場合にCD38の細胞外部分に特異的に結合する一本鎖可変断片、又は前記のもののホモ二量体を含む免疫グロブリン型結合性領域に融合された志賀毒素エフェクターポリペプチドがある。
【0143】
一部の実施形態では、本発明の結合性タンパク質の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、例えば、1)エレメントの特定の組合せを欠く分子バリアントと比較した、抗原性及び/又は免疫原性の低減を呈する、2)エレメントの特定の組合せを欠く分子バリアントと比較した、プロテアーゼによる切断の低減を呈する、3)エレメントの特定の組合せを欠く分子バリアントと比較した、いくらかの投与量における、多細胞生物に対する非特異的毒性の低減を呈する、及び/又は4)強力な細胞毒性を呈する能力など、2つ又は3つ以上の特性をもたらす構造的エレメントを単一分子に組み合わせる。
【0144】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性融合タンパク質は、単量体である。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、ホモ二量体である。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、2つの同一のポリペプチドを含むホモ二量体である。一部の実施形態では、単量体CD38結合性融合タンパク質は、配列番号233の配列又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一な配列を含む。
【0145】
1.CD38結合性領域
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質は、CD38への、及び/又は例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウスなど)中のCD38発現性細胞若しくはCD38陽性細胞などの細胞の細胞表面に存在するCD38への、特異的な、高親和性結合を呈することが可能な免疫グロブリン型ポリペプチド(例えば、VH及びVL)を含む、結合性領域(「結合性ドメイン」又は「抗原結合性ドメイン(ABD;antigen binding domain)とも呼ばれる)を含む。
【0146】
本発明は、いくつかのCD38結合性ドメインを提供する。CD38結合性ドメインの特定のCDRは、以下に記載されている。上記のように、CDRの正確な番号付け及び配置は、異なる番号付けシステムの間で異なりうる。しかし、本発明の重鎖可変及び/又は軽鎖可変領域は、本明細書中に存在する本発明のCDRを含むということは理解されるべきである。したがって、本発明の各重鎖可変領域は、本発明のvhCDR(例えば、vhCDR1、vhCDR2及びvhCDR3)であり、本発明の各軽鎖可変領域は、本発明のvlCDR(例えば、vlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3)である。
【0147】
本発明は、新規CD38結合性ドメインを含む結合性タンパク質を提供する。このような抗原結合性ドメイン(ABD;antigen binding domains)は、ヒト及びカニクイザルCD38タンパク質と結合できる。
図25A~Dは、ヒト及びカニクイザルCD38の両方と結合できる4つの異なる抗CD38 ABDを含む4つの異なる結合性タンパク質を描示する。一部の実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、Fab形式で、例えば、2つの異なるポリペプチド鎖上に配置され、一部の実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、本明細書において一般的に概説されるように、互いに融合されて、scFvを形成する。或いは、
図1に示され、以下により十分に記載されるように、二量体化されている2つのCD-38結合性融合タンパク質単量体に由来するCD-38結合性ドメインは、次いで、互いに会合する;すなわち、一方の単量体ポリペプチド鎖に由来する1つのVHが、もう一方の単量体ポリペプチド鎖に由来するVLと会合し、逆もまた同様であり、その結果、2つの抗CD38結合ドメインが、非共有結合的に会合したホモ二量体で形成され、これはまた、2つの志賀構成要素も含有する。
【0148】
また、CDR及び/又はフレームワーク領域のうち1つ又は2つ以上の中にアミノ酸修飾を有する抗CD38 ABDも本明細書に含まれ、本明細書において概説されるように、一部の実施形態では、6つのCDRのセットは、0、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸修飾を有しうる(アミノ酸置換が特定の用途を見出す)。CDRは、アミノ酸修飾を有しうる(例えば、CDRのセット中に1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸修飾)(すなわち、6つのCDRのセット中の変更の総数が6つ未満のアミノ酸修飾である限り、CDRは修飾されてもよく、CDRの任意の組合せが変更される;例えば、vlCDR1中に1つの変更、vhCDR2中に2つあり、vhCDR3中にはないなどがありうる)。一部の実施形態では、各CDRは、単一アミノ酸置換しか有さない。一部の実施形態では、vhCDR3中のアミノ酸置換は避けられる。一部の場合には、ヒト及びカニクイザルCD38のいずれか又は両方に対する結合親和性は増大される場合があり、一方で、他の実施形態では、結合親和性が低減される場合がある。これらの実施形態では、ヒト及びカニクイザルCD38への結合は保持される。Biacoreアッセイ又は実施例1、2若しくは3に概説される結合アッセイなど、抗CD38抗原結合性ドメインが、本明細書において概説されるVH及びVL配列と比較して、変異を含有するか否かを試験するための適切なアッセイは、当技術分野で公知である。
【0149】
一部の実施形態では、フレームワーク(CDRを除く)が、ヒト生殖系列配列に対して少なくとも約80%、約85%又は約90%の同一性を保持する限り、本明細書において概説される抗CD38 ABDはまた、重鎖可変及び軽鎖可変フレームワーク領域のいずれか又は両方のフレームワーク領域中にアミノ酸修飾(やはり、アミノ酸置換が特定の用途を見出す)を有しうる。したがって、フレームワーク領域が、ヒト生殖系列配列と少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%の同一性を保持する限り、例えば、本明細書において記載されるような同一のCDRを、ヒト生殖系列配列由来の異なるフレームワーク配列と組み合わせることができる。
【0150】
別の態様では、本発明は、上記で一覧される重鎖可変及び軽鎖可変領域のバリアントを含むCD38結合性ドメインを提供する。重鎖可変領域は、本明細書における「VH」配列と、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一であり、及び/又は1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10のアミノ酸変異(amino acid changes)を含有しうる。軽鎖可変領域は、本明細書における「VL」配列と、少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一であり、及び/又は1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10のアミノ酸変異を含有しうる。これらの実施形態では、抗原結合性ドメインが、ヒト及びカニクイザルCD38になおも結合する限り、本発明は、これらのバリアントを含む。Biacoreアッセイ又は実施例1、2若しくは3のものなど、抗CD38抗原結合性ドメインが、本明細書において概説されるVH及びVL配列と比較して、変異を含有するか否かを試験するための適切なアッセイは、当技術分野で公知である。
【0151】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM1(
図25A)であり、配列番号109に対して少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号113に対して少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0152】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM1(
図25A)であり、配列番号110を含むvhCDR1、配列番号111を含むvhCDR2、配列番号112を含むvhCDR3、配列番号114を含むvlCDR1、配列番号115を含むvlCDR2、及び配列番号116を含むvlCDR3を含む。一部の実施形態では、このような6つのCDRのうち1つ又は2つ以上は、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸修飾を有する。実施形態では、任意の単一CDRは、1つ又は2つ以下のアミノ酸置換を含有し、修飾された抗CD38抗原結合性ドメインは、ヒトCD38への結合を保持する。
【0153】
一部の実施形態では、CD38TM1(
図25A)のCD38結合性ドメインは、配列番号109に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメインを有する。
【0154】
一部の実施形態では、CD38TM1(
図25A)のCD38結合性ドメインは、配列番号113に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0155】
一部の実施形態では、CD38TM1(
図25A)のCD38結合性ドメインは、配列番号109に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメイン及び配列番号113に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0156】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM1(
図25A)であり、配列番号109を有するVH及び配列番号113を有するVLを有する。
【0157】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM2(
図25B)であり、配列番号117に対して少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一なアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号121に対して少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一なアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0158】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM2(
図25B)であり、配列番号118を含むvhCDR1、配列番号119を含むvhCDR2、配列番号120を含むvhCDR3、配列番号122vlCDR1、配列番号23を含むvlCDR2、及び配列番号124を含むvlCDR3を含む。一部の実施形態では、このような6つのCDRのうち1つ又は2つ以上は、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸修飾を有する。実施形態では、単一CDRは、1つ又は2つ以下のアミノ酸置換を含有し、修飾された抗CD38抗原結合性ドメインは、ヒト及び/又はカニクイザルCD38への結合を保持する。
【0159】
一部の実施形態では、CD38TM2(
図25B)のCD38結合性ドメインは、配列番号117に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメインを有する。
【0160】
一部の実施形態では、CD38TM1(
図25A)のCD38結合性ドメインは、配列番号121に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0161】
一部の実施形態では、CD38TM2(
図25B)のCD38結合性ドメインは、配列番号117に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメイン及び配列番号121に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0162】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM2(
図25B)であり、配列番号117を有するVH及び配列番号121を有するVLを有する。
【0163】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM3(
図25C)であり、配列番号101と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一なアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号105と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一なアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0164】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM3(
図25C)であり、配列番号102を含むvhCDR1、配列番号103を含むvhCDR2、配列番号104を含むvhCDR3、配列番号106を含むvlCDR1、配列番号7を含むvlCDR2、及び配列番号108を含むvlCDR3を含む。一部の実施形態では、このような6つのCDRのうち1つ又は2つ以上は、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸修飾を有する。実施形態では、単一CDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含有し、修飾された抗CD38抗原結合性ドメインは、ヒト及び/又はカニクイザルCD38への結合を保持する。
【0165】
一部の実施形態では、CD38TM3(
図25C)のCD38結合性ドメインは、配列番号101に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメインを有する。
【0166】
一部の実施形態では、CD38TM3(
図25C)のCD38結合性ドメインは、配列番号105に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0167】
一部の実施形態では、CD38TM3(
図25C)のCD38結合性ドメインは、配列番号101に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメイン及び配列番号105に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0168】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM3(
図25C)であり、配列番号101を有するVH及び配列番号105を有するVLを有する。
【0169】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、本発明においてCD38TM4(
図25D)であり、配列番号101と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一なアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号125と少なくとも80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)同一なアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0170】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM4(
図25D)であり、配列番号102を含むvhCDR1、配列番号3を含むvhCDR2、配列番号104を含むvhCDR3、配列番号106を含むvlCDR1、配列番号107を含むvlCDR2、及び配列番号108を含むvlCDR3を含む。一部の実施形態では、このような6つのCDRのうち1つ又は2つ以上は、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸修飾を有する。実施形態では、単一CDRは、1つ又は2つのアミノ酸置換を含有し、修飾された抗CD38抗原結合性ドメインは、ヒト及び/又はカニクイザルCD38への結合を保持する。
【0171】
一部の実施形態では、CD38TM4(
図25D)のCD38結合性ドメインは、配列番号101に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメインを有する。
【0172】
一部の実施形態では、CD38TM1(
図25A)のCD38結合性ドメインは、配列番号125に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0173】
一部の実施形態では、CD38TM4(
図25D)のCD38結合性ドメインは、配列番号101に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVHドメイン及び配列番号125に1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以下のアミノ酸変異を有するVLドメインを有する。
【0174】
一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、CD38TM4(
図25D)であり、配列番号101を有するVH及び配列番号125を有するVLを有する。
【0175】
各CD38結合性ドメインの重鎖及び軽鎖可変領域及び/又はCDR中の本明細書において記載される配列バリアントに加えて、重鎖及び/又は軽鎖可変領域(複数可)のフレームワーク領域(複数可)において変更が行われる場合もある。一部の実施形態では、6つのCDRを不変に維持し、ヒト及び/又はカニクイザルCD38への結合を保持しながら、表4に記載されるフレームワーク領域配列に対して少なくとも80、85、90又は95%の同一性を保持するフレームワーク領域における変動が行われる。
【0176】
一部の実施形態では、変動は、CD38結合性ドメインのヒト及び/又はカニクイザルCD38への結合を保持しながら、フレームワーク領域及び6つのCDRの両方で行われる。これらの実施形態では、CDRは、6つのCDRのセット中にアミノ酸修飾(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸修飾を有しうる、すなわち、6つのCDRのセット中の変更の総数が、6つ未満のアミノ酸修飾である限り、CDRは修飾されてもよく、CDRの任意の組合せが変更される;例えば、vlCDR1中に1つの変更、vhCDR2中に2つあり、vhCDR3中にはないなどがありうる)。
【0177】
a.CD38結合ドメインの形式
図1に示され、本明細書において記載されるように、本発明のCD38結合性ドメインは、異なるポリペプチド鎖上又は単一ポリペプチド鎖上にありうるVH及びVLドメインを含む。例えば、CD38結合性融合タンパク質が単量体である一部の実施形態では、VH及びVLはscFvを形成しうることに注意されたい。本明細書に記載され、
図1に示されるような一部の場合には、VH及びVLは、単一ポリペプチド鎖上にあるが、それらの間のリンカーは、分子内会合を可能にするには短すぎ、したがって、2つの抗CD38結合性領域及び2つの志賀構成要素を含有するホモ二量体が形成される。他の実施形態では、VH及びVLの間のリンカーは、scFv形成を可能にするのに十分に長く、したがって、タンパク質融合物は、単量体である。
【0178】
一部の実施形態では、組成物は、本明細書において記載されるCD38結合性ドメインを含むscFvを含む。scFvは、ヒト及びカニクイザルCD38に結合し、scFvリンカーによって連結された重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、そのN末端からC末端に、VH-リンカー-VLを含む。一部の実施形態では、CD38結合性ドメインは、そのN末端からC末端に、VL-リンカー-VHを含む。
【0179】
2.志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素
本発明の結合性タンパク質は、志賀毒素Aサブユニットに由来する少なくとも1つの志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素機能(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010);国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、国際公開第2017/019623号パンフレット、国際公開第2018/106895号パンフレット、及び国際公開第2018/140427号パンフレットを参照されたい)を呈することが可能な、志賀毒素ファミリーの、志賀毒素Aサブユニットメンバーに由来するポリペプチドであり、カルボキシ末端を有する、志賀毒素A1断片に由来する領域を含む。志賀毒素機能は、例えば、細胞への内在化の増大、エンドソーム区画から細胞質ゾルへの細胞内経路決定の方向付け、細胞内分解の回避、リボソームの触媒性不活化(タンパク質合成の阻害)、並びに細胞増殖抑制効果及び/又は細胞毒性効果の招来を含む。
【0180】
毒素タンパク質の志賀毒素ファミリーは、構造的かつ機能的に類縁である、多様な天然に存在する毒素、例えば、志賀毒素、志賀様毒素1、及び志賀様毒素2から構成される(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。志賀毒素ファミリーのホロトキシンメンバーは、一部の宿主細胞の表面上に存在する、特異的なグリコスフィンゴ脂質に選択的に結合するターゲティングドメインと、細胞の内部に入ると、リボソームを、恒久的に不活化させることが可能な酵素的ドメインとを含有する(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。志賀毒素ファミリーのメンバーは、同じ全体構造及び作用機構を共有する(Engedal N et al., Microbial Biotech 4: 32-46 (2011))。例えば、Stx、SLT-1と、SLT-2とは、無細胞系において、識別不能な酵素活性を提示する(Head S et al., J Biol Chem 266: 3617-21 (1991); Tesh V et al., Infect Immun 61: 3392-402 (1993); Brigotti M et al., Toxicon 35:1431-1437 (1997))。
【0181】
志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)血清型1から単離された、真性志賀毒素(Stx;true Shiga toxin)、腸管出血性大腸菌(E. coli)の血清型から単離された、志賀様毒素1(SLT1又はStx1又はSLT-1又はSlt-I;Shiga-like toxin 1)バリアント、及び腸管出血性大腸菌の血清型から単離された、志賀様毒素2(SLT2又はStx2又はSLT-2;Shiga-like toxin 2)バリアントを包含する。SLT1は、Stxと、1アミノ酸残基だけ異なり、いずれも、ベロ細胞毒素又はベロ毒素(VT;verocytotoxin又はverotoxin)と称されている(O’Brien A, Curr Top Microbiol Immunol 180: 65-94 (1992))。SLT1バリアントと、SLT2バリアントとは、一次アミノ酸配列レベルでは、互いと、約53~60%類似するに過ぎないが、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通する、酵素活性及び細胞毒性の機構を共有する(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。規定された亜型である、Stx1a、Stx1c、Stx1d、及びStx2a~Stx2gなど、39を超える、異なる志賀毒素について記載されている(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012))。志賀毒素コード遺伝子が、遺伝子水平伝播を介して、細菌種間に拡散しうるため、志賀毒素ファミリーのメンバーは、天然では、いかなる細菌種にも限定されない(Strauch E et al., Infect Immun 69: 7588-95 (2001); Bielaszewska M et al., Appl Environ Micrbiol 73: 3144-50 (2007); Zhaxybayeva O, Doolittle W, Curr Biol 21: R242-6 (2011))。種間伝播の例として述べると、志賀毒素は、ヒト対象から単離されたA.ヘモリティクス(A. haemolyticus)の株において発見された(Grotiuz G et al., J Clin Microbiol 44: 3838-41 (2006))。志賀毒素をコードするポリヌクレオチドが、新たな亜種又は種に侵入すると、志賀毒素のアミノ酸配列は、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通の細胞毒性機構を、やはり維持しながら、遺伝的浮動及び/又は選択圧のために、わずかな配列の変動を発生させることが可能であると推測される(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012)を参照されたい)。
【0182】
本発明のCD38結合性タンパク質の一部の実施形態では、以下により十分に記載されるように、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド構成要素は、少なくとも以下の志賀毒素エフェクターポリペプチドサブ領域:(1)脱免疫化されたサブ領域、(2)志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端近傍の、プロテアーゼによる切断に抵抗性のサブ領域の組合せを含む。
【0183】
一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、配列番号45~69のいずれか1つの配列、又はそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも95%、少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む。一部の実施形態では、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、配列番号46の配列を含む。
【0184】
a.特定の実施形態における有用な志賀毒素構成要素
当技術分野で記載されているように、以下に一般的に記載されるように、本発明のCD38結合性領域との組合せについて用途を見出すいくつかの志賀毒素構成要素がある。具体的には、2019年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/795,633号からの実施形態番号1~番号11は、参照によりその全体において具体的に組み込まれる。
【0185】
(i)野生型志賀毒素構成要素
一部の実施形態では、表20の配列番号1、配列番号2又は配列番号3において描示されるものなど、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドが使用されうる、(例えば、全て、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2017/019623号パンフレット、特に、野生型配列の配列及び断片については、国際公開第2017/019623号パンフレットの段落[21]において言及されるものなどを参照されたい)。
【0186】
(ii)破壊された、フーリン切断モチーフを含む、志賀毒素構成要素
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端に、破壊されたフーリン切断モチーフを含む(例えば、参照によりその全体において本明細書に明確に組み込まれる、国際公開第2015/191764号パンフレット、具体的には、段落[8]、[9]並びに破壊されたモチーフ及び破壊されたモチーフを含む毒素ポリペプチドの配列を参照されたい)。この関連で特に有用な実施形態は、配列番号46である。
【0187】
志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットは、志賀毒素機能に重要な、それらのA1断片領域のカルボキシ末端において、保存された、フーリン切断部位を含む。フーリン切断部位モチーフ及びフーリン切断部位は、標準的技法を使用する当業者により、及び/又は本明細書における情報を使用することにより同定されうる。
【0188】
志賀毒素細胞毒性のモデルは、中毒細胞内のフーリンによる、志賀毒素Aサブユニットの、細胞内タンパク質分解性プロセシングが、1)A1断片の、志賀ホロトキシンの残りの部分からの遊離、2)A1断片のカルボキシ末端における、疎水性ドメインを露出させることによる、A1断片の、小胞体からの逃避、3)A1断片の酵素的活性化に不可欠であることである(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010)を参照されたい)。中毒細胞の小胞体内の、志賀ホロトキシンのうち、志賀毒素A1断片の、A2断片及び構成要素の残りの部分からの効率的な遊離は、野生型志賀毒素と同等である、細胞質ゾルへの、効率的な細胞内経路決定、最大の酵素活性、効率的なリボソームの不活化、及び最適の細胞毒性の達成に不可欠である(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット及びこの中の参考文献を参照されたい)。
【0189】
志賀毒素中毒時に、Aサブユニットは、保存されたアルギニン残基(例えば、StxA内及びSLT-1A内の251位におけるアルギニン残基、並びにStx2A内及びSLT-2A内の250位におけるアルギニン残基)のカルボキシ結合において、フーリンにより、タンパク質分解的に切断される。志賀毒素Aサブユニットの、フーリンによる切断は、エンドソーム区画内及び/又はゴルジ区画内で生じる。フーリンとは、多種多様な細胞型、全ての被験ヒト組織、及び大半の動物細胞により発現される、特化されたセリンエンドプロテアーゼである。フーリンは、最小限の、二塩基性のコンセンサスモチーフである、R-x-(R/K/x)-R(配列番号181)に中心化されることが多い、アクセス可能なモチーフを含むポリペプチドを切断する。志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーは、フーリンにより切断される、保存されたS-R/Y-x-x-R(配列番号182)モチーフを伴う、保存され、表面に露出された、伸展ループ構造(例えば、StxA内及びSLT-1A内の242~261、並びにSLT-2内の241~260)を含む。StxA内のアミノ酸残基242~261に位置する、表面露出された、伸展ループ構造は、最小限のフーリン切断モチーフである、R-x-x-R(配列番号183)を挟む特徴を含む、StxAの、フーリンに誘導される切断に要求される。
【0190】
志賀毒素Aサブユニット内及び志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、フーリン切断モチーフ及びフーリン切断部位は、標準的方法を使用する当業者により、及び/又は本明細書における情報を使用することにより同定されうる。フーリンは、最小限のコンセンサスモチーフである、R-x-x-R(配列番号183)を切断する(Schalken J et al., J Clin Invest 80: 1545-9 (1987); Bresnahan P et al., J Cell Biol 111: 2851-9 (1990); Hatsuzawa K et al., J Biol Chem 265: 22075-8 (1990); Wise R et al., Proc Natl Acad Sci USA 87: 9378-82 (1990); Molloy S et al., J Biol Chem 267: 16396-402 (1992))。多くのフーリン阻害剤が、R-x-x-R(配列番号183)というモチーフを含むペプチドを含むことは、これと符合する。フーリンの合成阻害剤の例は、ペプチドであるR-V-K-R(配列番号190)を含む分子(Henrich S et al., Nat Struct Biol 10: 520-6 (2003))である。一般に、2つのアミノ酸残基により隔てられた、2つの、正に帯電したアミノ酸を伴う、表面においてアクセス可能な、二塩基性アミノ酸モチーフを含むペプチド又はタンパク質は、モチーフ内の最後の塩基性アミノ酸のカルボキシ結合において生じる切断を伴う、フーリンによる切断に対して感受性であることが予測される。
【0191】
フーリンにより切断される、基質内のコンセンサスモチーフは、ある程度の特異性を伴って、同定されている。Schechter I, Berger, A, Biochem Biophys Res Commun 32: 898-902 (1968)において記載されている命名法を使用して、P14~P6’と表示されうる、20の連続アミノ酸残基の領域を含む、フーリン切断部位モチーフについて記載されている(Tian S et al., Int J Mol Sci 12: 1060-5 (2011))。この命名法に従うと、フーリン切断部位は、P1と名指されたアミノ酸残基のカルボキシ結合にあり、フーリン切断モチーフのアミノ酸残基は、この参照P1残基から、アミノ末端へと向かう方向に、P2、P3、P4などと番号付けされる。P1参照残基から、カルボキシ末端へと向かう、モチーフのアミノ酸残基は、P2’、P3’、P4’などのプライム表記を伴って番号付けされる。この命名法を使用すると、P6~P2’領域は、フーリンの酵素ドメインが結合するフーリン切断モチーフのコア基質を画定する。2つのフランキング領域である、P14~P7及びP3’~P6’は、それらの間に位置する、フーリン切断部位のコアへのアクセシビリティーを増大させる、極性のアミノ酸残基に富むことが多い。
【0192】
一般的、フーリン切断部位は、P4-P3-P2-P1(配列番号192)に対応するコンセンサスモチーフである、R-x-x-R(配列番号183)[ここで、「R」は、アルギニン残基(表1、前出を参照されたい)を表し、ダッシュ「-」は、ペプチド結合を表し、小文字の「x」は、任意のアミノ酸残基を表す]により記載されることが多い。しかし、他の残基及び位置も、フーリン切断モチーフを、さらに規定する一助となりうる。わずかながら、より洗練されたフーリン切断部位コンセンサスモチーフは、P4-P3-P2-P1(配列番号192)に対応するコンセンサスモチーフである、R-x-[K/R]-R(配列番号191)(ここで、前傾スラッシュ「/」は、「又は」を意味し、同じ位置における代替的アミノ酸残基を分かつ)として報告されることが多い。フーリンが、このモチーフを含有する基質の切断に対する強い優先性を有することが観察されたからである。
【0193】
最小限のフーリン切断部位である、R-x-x-R(配列番号183)に加えて、ある特定の位置において、ある特定のアミノ酸残基への優先性を伴う、大型のフーリン切断モチーフについても記載されている。多様な公知のフーリン基質を比較することにより、20アミノ酸残基長の、フーリン切断部位モチーフ内のアミノ酸残基についての、ある特定の物理化学的特性が特徴付けられている。フーリン切断モチーフのP6~P2’領域は、フーリンの酵素ドメインと、物理的に相互作用する、フーリン切断部位のコアを画定する。2つのフランキング領域である、P14~P7及びP3’~P6’は、それらの間に位置する、フーリン切断部位のコアへの表面アクセシビリティーを増大させる、極性のアミノ酸残基に富む、親水性であることが多い。
【0194】
一般に、P5~P1位におけるフーリン切断モチーフ領域は、正の電荷及び/又は高等電点を伴うアミノ酸残基を含む傾向がある。特に、フーリンによるタンパク質分解の位置をマーキングするP1位は一般に、アルギニンにより占有されるが、他の正に帯電したアミノ酸残基も、この位置において生じうる。P2及びP3位は、可撓性のアミノ酸残基により占有される傾向があり、特に、P2は、アルギニン、リシンにより、又は、場合によって、グリシンのような、極めて小型で、可撓性のアミノ酸残基により占有される傾向がある。P4位は、フーリン基質内の、正に帯電したアミノ酸残基により占有される傾向がある。しかし、P4位が、脂肪族のアミノ酸残基により占有される場合、正に帯電した官能基の欠如は、P5及び/又はP6位(複数可)に位置する、正に帯電した残基により補償されうる。P1’及びP2’位は一般に、脂肪族のアミノ酸残基及び/又は疎水性のアミノ酸残基により占有され、P1’位は、最も一般に、セリンにより占有される。
【0195】
2つの、親水性のフランキング領域は、極性であり、親水性であり、小型のアミノ酸官能基を有するアミノ酸残基により占有される傾向があるが;ある特定の、検証されたフーリン基質内では、フランキング領域は、親水性のアミノ酸残基を含有しない(Tian S, Biochem Insights 2: 9-20 (2009)を参照されたい)。
【0196】
天然の志賀毒素Aサブユニット内の、志賀毒素のA1断片とA2断片との接合部において見出される、20アミノ酸残基の、フーリン切断モチーフ及びフーリン切断部位は、ある特定の志賀毒素内で、十分に特徴付けられている。例えば、StxA(配列番号2)及びSLT-1A(配列番号1)では、このフーリン切断モチーフは、天然位置の、L238~F257に存在し、SLT-2A(配列番号3)では、このフーリン切断モチーフは、天然位置の、V237~Q256に存在する。本明細書で記載される、アミノ酸相同性実験及び/又はフーリン切断アッセイに基づき、当業者は、他の天然の志賀毒素Aサブユニット内又は志賀毒素エフェクターポリペプチド内でも、フーリン切断モチーフを同定することが可能であり、この場合、モチーフは、実際のフーリン切断モチーフであるか、又は真核細胞内の、これらの分子の、フーリンによる切断の後で、A1断片及びA2断片の産生を結果としてもたらすことが予測される。
【0197】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来ポリペプチドと、(2)志賀毒素A1断片由来ポリペプチドのカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフとを含む。志賀毒素A1断片由来ポリペプチドのカルボキシ末端は、例えば、タンパク質配列アライメントソフトウェアを使用して、(i)天然に存在する志賀毒素により保存されたフーリン切断モチーフ、(ii)天然に存在する志賀毒素により保存された、表面に露出され、伸展したループ、及び/又は(iii)ERAD系により認識されうる、主に疎水性である、アミノ酸残基の連なり(すなわち、疎水性「パッチ」)を同定することによるなど、当技術分野で公知の技法を使用することにより、当業者により同定されうる。
【0198】
本発明の、プロテアーゼによる切断に抵抗性である結合性タンパク質の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、任意のフーリン切断モチーフを、完全に欠く場合がある、並びに/又は(2)は、その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフ、及び/若しくは志賀毒素A1断片のカルボキシ末端に由来する領域を含む。フーリン切断モチーフの破壊は、フーリン切断モチーフ内のアミノ酸残基に対する、多様な変化であって、例えば、翻訳後修飾(複数可)、アミノ酸官能基内の、1つ又は2つ以上の原子の変化、1つ又は2つ以上原子の、アミノ酸官能基への付加、非タンパク質性部分(複数可)との会合、及び/又は分枝状タンパク質性構造を結果としてもたらす、アミノ酸残基、ペプチド、ポリペプチドなどへの連結などの変化を含む。
【0199】
プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書で記載される、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている、及び/又は当業者に公知である方法を使用して、天然に存在するのであれ、そうでないのであれ、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドから作出されうるが、この場合、結果として得られる分子は、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能をやはり保持する。
【0200】
フーリン切断部位又はフーリン切断モチーフに関する、本発明の目的では、「破壊」又は「破壊された」という用語は、天然に存在するフーリン切断部位及び/又はフーリン切断モチーフからの変化であって、例えば、志賀毒素A1断片領域、又はそれに由来する同定可能な領域のカルボキシ末端に対して近位の、フーリンによる切断の、野生型志賀毒素Aサブユニット、又は野生型ポリペプチド配列だけを含む、野生型志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドの、フーリンによる切断と比較した低減を結果としてもたらす変異などの変化を指す。フーリン切断モチーフ内のアミノ酸残基に対する変化は、例えば、フーリン切断モチーフのカルボキシ末端の、欠失、挿入、反転、置換、及び/又は切断など、フーリン切断モチーフ内の変異のほか、例えば、分子を、アミノ酸残基の官能基とコンジュゲートさせるか、又はこれへと連結することを伴う、グリコシル化、アルブミン化などの結果としての翻訳後修飾などを含む。フーリン切断モチーフは、約20のアミノ酸残基から構成されるため、理論的に、これらの20の位置のうちのいずれか1つの、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が関わる変化、修飾、変異、欠失、挿入、及び/又は切断は、フーリンによる切断に対する感受性の低減を結果としてもたらしうるであろう(Tian S et al., Sci Rep 2: 261 (2012))。フーリン切断部位及び/又はフーリン切断モチーフの破壊は、例えば、トリプシン、及び哺乳動物の血管系において一般的な細胞外プロテアーゼなど、他のプロテアーゼによる切断に対する抵抗性を増大させる場合もあり、そうでない場合もある。所与のプロテアーゼによる切断への感受性に対する、所与の破壊の効果は、当技術分野で公知の技法を使用して、当業者により調べられうる。
【0201】
本発明の目的では、「破壊されたフーリン切断モチーフ」とは、天然の志賀毒素Aサブユニット内の、志賀毒素のA1断片とA2断片との接合部領域において見出される、保存された、フーリン切断モチーフを表す、20アミノ酸残基の領域に由来し、フーリンによる、志賀毒素Aサブユニットの切断が、A1断片及びA2断片の産生を結果としてもたらすように、位置させた、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の変化を含む、フーリン切断モチーフであり;この場合、破壊されたフーリン切断モチーフは、当業者に公知である、及び/又は本明細書で記載されている、適切なアッセイを使用して、実験により再現可能な形で、フーリンによる切断をモニタリングするのに、十分に大きなサイズの、カルボキシ末端のポリペプチドへと融合された、野生型の志賀毒素A1断片領域を含む参照分子と比較した、フーリンによる切断の低減を呈する。
【0202】
フーリン切断部位及びフーリン切断モチーフを破壊しうる変異の種類の例は、非標準的アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸による置換を含む、アミノ酸残基の欠失、挿入、切断、反転、及び/又は置換である。加えて、フーリン切断部位及びフーリン切断モチーフは、部位内又はモチーフ内の、少なくとも1つのアミノ酸をマスキングする、共有結合的に連結された構造の付加であって、例えば、PEG化、低分子アジュバントのカップリング、及び/又は部位特異的アルブミン化の結果としての付加などの付加による、アミノ酸の修飾を含む変異によっても破壊されうる。
【0203】
フーリン切断モチーフが、変異及び/又は非天然アミノ酸残基の存在により破壊されている場合、ある特定の、破壊されたフーリン切断モチーフは、任意のフーリン切断モチーフと関連するものであると、容易には認識可能でない場合もあるが、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端は、認識可能であり、それが破壊されなかった場合も、フーリン切断モチーフが、どこに位置するのかを規定するであろう。例えば、破壊されたフーリン切断モチーフは、志賀毒素Aサブユニット及び/又は志賀毒素A1断片と比較した、カルボキシ末端の切断のために、フーリン切断モチーフのうちの、20アミノ酸残基未満を含みうる。
【0204】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来ポリペプチドと、(2)志賀毒素A1断片ポリペプチド領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフとを含み;この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチド(及びそれを含む、任意の結合性タンパク質)は、フーリンによる切断に対して、例えば、A1断片のカルボキシ末端、及び/又はA1断片と、A2断片との間で保存された、フーリン切断モチーフを含む、野生型志賀毒素ポリペプチドなどの参照分子と比較して、より抵抗性である。例えば、1つの分子に対する、フーリンによる切断の、参照分子と比較した低減は、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載され、同じ条件を使用して行われる、インビトロにおけるフーリン切断アッセイを使用し、次いで、切断から得られる、任意の断片のバンド密度の定量を実施して、フーリンによる切断の変化を、定量的に測定することにより決定されうる。
【0205】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、インビトロ及び/又はインビボにおいて、フーリンによる切断に対して、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較して、より抵抗性である。
【0206】
一般に、本発明の結合性タンパク質の、プロテアーゼによる切断への感受性は、それを、その、フーリンによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドを、志賀毒素A1断片を含む、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドで置き換えた、同じ分子と比較することにより調べられる。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、本発明のCD38結合性融合タンパク質は、インビトロにおける、フーリンによる切断の、そのカルボキシ末端において、ペプチド又はポリペプチドへと融合された、野生型志賀毒素A1断片を含む参照分子と比較した、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は98%以上の低減を呈する。
【0207】
複数のフーリン切断モチーフの破壊について記載されている。例えば、最小限のR-x-x-Rモチーフ(配列番号183)内の、2つの保存されたアルギニンを、アラニンへと変異させることは、フーリン及び/又はフーリン様プロテアーゼによるプロセシングを完全に遮断した(例えば、Duda A et al., J Virology 78: 13865-70 (2004)を参照されたい)。フーリン切断部位モチーフは、約20のアミノ酸残基から構成されるため、理論的に、これらの20のアミノ酸残基位置のうちのいずれか1つの、1つ又は2つ以上が関わる、ある特定の変異は、フーリンによる切断を失効化させうるか、又はフーリンによる切断効率を低減しうるであろう(例えば、Tian S et al., Sci Rep 2: 261 (2012)を参照されたい)。
【0208】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性融合タンパク質は、少なくとも1つの志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含み、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素Aサブユニットの、保存された、高度にアクセス可能な、プロテアーゼによる切断に感受性のループに由来する、1つ又は2つ以上のアミノ酸の破壊を含む。例えば、StxA及びSLT-1Aでは、この、高度にアクセス可能な、プロテアーゼ感受性ループは、天然位置のアミノ酸残基242~261にあり、SLT-2Aでは、この、保存されたループは、天然位置のアミノ酸残基241~260にある。ポリペプチド配列の相同性に基づき、当業者は、この、保存された、高度にアクセス可能なループ構造を、他の志賀毒素Aサブユニット内でも同定しうる。このループ内のアミノ酸残基に対する、ある特定の変異は、ループ内の、ある特定のアミノ酸残基の、タンパク質分解性切断へのアクセシビリティーを低減することが可能であり、これは、フーリン切断感受性を低減しうるであろう。
【0209】
一部の実施形態では、本発明の分子は、志賀毒素Aサブユニット間で保存された、表面露出型プロテアーゼ感受性ループ内に変異を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。一部の実施形態では、本発明の分子は、志賀毒素Aサブユニットの、このプロテアーゼ感受性ループ内の変異であって、フーリン切断感受性が低減されるように、ループ内の、ある特定のアミノ酸残基に対する表面アクセシビリティーを低減する変異を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。
【0210】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、破壊されたフーリン切断モチーフは、例えば、最小限のフーリン切断モチーフである、R/Y-x-x-R(配列番号180)の、1及び4位におけるアミノ酸残基など、コンセンサスアミノ酸残基である、P1及びP4の一方又は両方の、存在、位置、又は官能基に照らした破壊を含む。例えば、最小限のフーリンコンセンサス部位である、R-x-x-R(配列番号183)内の、2つのアルギニン残基の一方又は両方の、アラニンへの変異は、フーリン切断モチーフを破壊し、この部位における、フーリンによる切断を防止するであろう。同様に、最小限のフーリン切断モチーフである、R-x-x-R(配列番号183)内のアルギニン残基の一方又は両方の、当業者に公知の、任意の非保存的アミノ酸残基へのアミノ酸残基置換は、モチーフのフーリン切断感受性を低減するであろう。特に、アルギニンの、例えば、A、G、P、S、T、D、E、Q、N、C、I、L、M、V、F、W、及びYなど、陽性電荷を欠く、任意の非塩基性アミノ酸残基へのアミノ酸残基置換は、破壊されたフーリン切断モチーフを結果としてもたらすであろう。
【0211】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、破壊されたフーリン切断モチーフは、介在するアミノ酸残基の数が、2以外であることに関して、コンセンサスアミノ酸残基である、P4とP1との間隔の破壊を含み、したがって、P4及び/又はP1を、異なる位置へと変更し、P4及び/又はP1の指定を廃する。例えば、最小限のフーリン切断部位のフーリン切断モチーフ内、又はコアのフーリン切断モチーフ内の欠失は、フーリン切断モチーフのフーリン切断感受性を低減するであろう。
【0212】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換であって、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR248、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR251;並びにSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR/Y247、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR250などのアミノ酸残基置換を含む。
【0213】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、破壊されていない、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)を含むが、代わりに、例えば、天然位置の、例えば、241~247及び/又は252~259における、フーリン切断モチーフのフランキング領域内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基におけるアミノ酸残基置換など、破壊されたフランキング領域を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフの、P1~P6領域内に位置するアミノ酸残基のうちの、1つ又は2つ以上の置換;P1’の、例えば、R、W、Y、F、及びHなどのバルクアミノ酸への変異誘発;及びP2’の、極性かつ親水性のアミノ酸残基への変異誘発;並びに、フーリン切断モチーフの、P1’~P6’領域内に位置するアミノ酸残基のうちの、1つ又は2つ以上の、1つ又は2つ以上の、バルクかつ疎水性のアミノ酸残基による置換を含む。
【0214】
一部の実施形態では、フーリン切断モチーフの破壊は、フーリン切断モチーフ内の、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、挿入、反転、及び/又は変異を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然位置の、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)若しくは志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)のアミノ酸249~251、又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3)のアミノ酸247~250、或いは保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列内の、同等な位置における、アミノ酸配列の破壊を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、フーリン切断モチーフ内の、少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む破壊を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、プロテアーゼ切断モチーフ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含む破壊を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの反転されたアミノ酸が、プロテアーゼモチーフ領域内にある、アミノ酸の反転を含む破壊を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、非標準アミノ酸又は側鎖が化学修飾されたアミノ酸へのアミノ酸置換などの変異を含む破壊を含む。
【0215】
本発明のCD38結合性融合タンパク質についての、一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフ内の、カルボキシ末端のアミノ酸残基のうちの、9つ、10、11、又は12以上の欠失を含む。これらの実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断部位又は最小限のフーリン切断モチーフを含まなくなる。言い換えれば、一部の実施形態は、A1断片領域のカルボキシ末端における、フーリン切断部位を欠く。
【0216】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の欠失、及びアミノ酸残基置換の両方を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基欠失及び置換であって、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR248、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR251;並びにSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるY247、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR250などのアミノ酸残基置換を含む。
【0217】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基欠失及びアミノ酸残基置換並びにカルボキシ末端の切断を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失及び置換であって、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR248、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR251;並びにSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基であるR/Y247、及び/又は任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換されたR250などのアミノ酸残基の欠失及び置換を含む。
【0218】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内のアミノ酸置換、及びカルボキシ末端の切断の両方を含み、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291又は292位以降のアミノ酸を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R248及び/又はR251を含み;SLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、Y247及び/又はR250を含む。
【0219】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、挿入されたアミノ残基(複数可)が、デノボで、フーリン切断部位を作出しない限りにおいて、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む。一部の実施形態では、例えば、249若しくは250における、したがって、R248とR251との間における、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む、StxA及びSLT-1A由来ポリペプチド;又は248若しくは249における、したがって、Y247とR250との間における、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基の挿入を含む、SLT-2A由来ポリペプチドなど、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の挿入は、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内の、アルギニン残基の間の、天然の間隔を破壊する。
【0220】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基挿入及びカルボキシ末端の切断の両方を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基挿入及びアミノ酸残基置換の両方を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の挿入、及びアミノ酸残基の欠失の両方を含む。
【0221】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の欠失、アミノ酸残基の挿入、及びアミノ酸残基置換を含む。
【0222】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換、及びカルボキシ末端の切断を含む。
【0223】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ペプチド結合により、アミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含む分子部分へと、直接融合されており、この場合、融合構造は、単一の、連続ポリペプチドを伴う。これらの融合についての実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフに後続するアミノ酸配列は、融合体接合部において、デノボで、フーリン切断部位を作出しないものとする。
【0224】
上記のプロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドのサブ領域、及び/又は破壊されたフーリン切断モチーフのうちのいずれかは、単独で使用される場合もあり、本発明の方法を含む、本発明の、各個別の実施形態と組み合わせて使用される場合もある。
【0225】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフ及び/又はフーリン切断部位を含みうる。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端に対して近位において、フーリンによる切断をもたらしうる、公知の補償構造を含まない。本発明における使用に適切な、破壊された、フーリン切断モチーフ及びフーリン切断部位の非限定例については、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている。
【0226】
本明細書では、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットが、成熟志賀毒素Aサブユニットを産生するために除去され、当業者に認識可能な、それらのアミノ末端における、約22アミノ酸のシグナル配列を含有する、前駆体形態を含むことに注目して、配列表に提示される、天然の志賀毒素Aサブユニットの、特異的アミノ酸位置に言及することにより、ある特定のフーリン切断モチーフの破壊が指し示される。さらに、本明細書では、天然で、天然の志賀毒素Aサブユニット内の特異的位置(例えば、アミノ末端から251位におけるアルギニン残基に、R251)に存在する特異的アミノ酸(例えば、アルギニン残基に、R)に続き、論じられる特定の変異において、この残基が置換されたアミノ酸(例えば、R251Aは、アミノ末端からのアミノ酸残基251における、アラニンによる、アルギニンのアミノ酸置換を表す)に言及することにより、変異を含む、ある特定のフーリン切断モチーフの破壊が指し示される。
【0227】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフを含み、本明細書では、このような実施形態は、野生型の志賀毒素Aサブユニット及び/又は野生型の志賀毒素A1断片融合タンパク質と比べた、それらの特性(複数可)について記載するのに、「フーリンによる切断に抵抗性」又は「プロテアーゼによる切断に抵抗性」の志賀毒素エフェクターポリペプチドと称される。
【0228】
一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上の変異を有する、切断型志賀毒素Aサブユニットから本質的になる。
【0229】
一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、最小限のフーリン切断部位コンセンサスモチーフ内のアルギニン残基の一方又は両方の、A、G、又はHによるアミノ酸残基置換(野生型志賀毒素ポリペプチドと比べた)を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、フーリン切断モチーフ領域内のアミノ酸置換を含む破壊を含み、この場合、置換は、配列番号3のアミノ酸247、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸248、配列番号3のアミノ酸250、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸251、並びに、保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列内の同等な位置からなる群から選択される天然位置のアミノ酸において生じる。一部の実施形態では、置換は、任意の、非保存的アミノ酸への置換であり、置換は、天然位置のアミノ酸残基位置において生じる。一部の実施形態では、変異は、R247A、R248A、R250A、R251A、並びに保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド内、及び/又は非天然の志賀毒素エフェクターポリペプチド配列内の同等な位置からなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0230】
一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、欠失である変異を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、StxA(配列番号2)内及びSLT-1A(配列番号3)内、天然位置の、247~252における領域、若しくはSLT-2A(配列番号3)内、天然位置の、246~251における領域の欠失;StxA(配列番号2)内及びSLT-1A(配列番号3)内、天然位置の、244~246における領域、若しくはSLT-2A(配列番号3)内、天然位置の、243~245における領域の欠失;又はStxA(配列番号2)内及びSLT-1A(配列番号3)内、天然位置の、253~259における領域、若しくはSLT-2A(配列番号3)内、天然位置の、252~258における領域の欠失である変異を含む。
【0231】
一部の実施形態では、プロテアーゼによる切断に抵抗性である志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットと比較した、カルボキシ末端の切断である変異を含む破壊されたフーリン切断モチーフを含み、切断は、フーリン切断モチーフ内の1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失を結果としてもたらす。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限の切断部位である、Y/R-x-x-R(配列番号180)内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を欠失させる、カルボキシ末端の切断であって、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、250、249、248、247、246、245、244、243、242、241、240、又は239位以前のアミノ酸残基を終端とする切断;及びSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、249、248、247、246、245、244、243、242、241、又は240位以前のアミノ酸残基を終端とする切断などの切断を含む。一部の実施形態は、可能な場合、前述の変異のうちのいずれかの組合せを含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。
【0232】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフのカルボキシ末端の、部分的な切断である変異(複数可)を含むが、本発明の、一部のCD38結合性融合タンパク質は、全20アミノ酸残基である、フーリン切断モチーフのカルボキシ末端の、完全な切断である、破壊されたフーリン切断モチーフを含まない。例えば、一部の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、StxA(配列番号2)又はSLT-1A(配列番号1)内の、天然の240位までの志賀毒素A1断片領域の、部分的な、カルボキシ末端の切断を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含むが、239位以前における、カルボキシ末端の切断は含まない。同様に、ある特定の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、SLT-2A(配列番号3)内の、天然の239位までの、志賀毒素A1断片領域の、部分的な、カルボキシ末端の切断を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含むが、238位以前における、カルボキシ末端の切断は含まない。変異が、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、フーリンによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、最大のカルボキシ末端の切断においても、フーリン切断モチーフのP14及びP13位は、依然として存在する。
【0233】
一部の他の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフの完全な又は部分的なカルボキシ末端の切断である変異(複数可)を含む。例えば、ある特定の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、StxA(配列番号2)若しくはSLT-1A(配列番号1)中の天然の236位又はSLT-2A(配列番号3)中の235位までの、志賀毒素A1断片領域の完全なカルボキシ末端の切断を含む破壊されたフーリン切断モチーフを含む。例えば、ある特定の低減された細胞毒性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、StxA(配列番号2)又はSLT-1A(配列番号1)中の天然の240位又はSLT-2A(配列番号3)中の239位を越えた、志賀毒素A1断片領域の完全なカルボキシ末端の切断を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含む。低減された細胞毒性志賀毒素エフェクターポリペプチドは、外因性素材を細胞及び/又は特定の細胞内区画へ送達するために有用である。
【0234】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内のアミノ酸残基置換、及びカルボキシ末端の切断の両方を含む、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、R248及び/又はR251を含み;SLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを含み、適切な場合、任意の、正に帯電していないアミノ酸残基で置換された、天然位置のアミノ酸残基である、Y247及び/又はR250を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、切断型志賀毒素エフェクターポリペプチドはまた、最適の細胞毒性を維持するために、P9、P8、及び/又はP7位におけるアミノ酸残基である、フーリン切断モチーフも含む。
【0235】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、1つ又は2つ以上の、内部のアミノ酸残基の欠失である変異(複数可)を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内の、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失を有する変異(複数可)を含む。例えば、例えば、249、250、247、252など、周囲の残基の欠失と組み合わされうる、天然位置のアミノ酸残基である、R248及び/又はR251の内部欠失を含むStxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチド;並びに、例えば、248、249、246、251など、周囲の残基の欠失と組み合わされうる、天然位置のアミノ酸残基である、Y247及び/又はR250の内部欠失を含むSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドである。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)を欠失させる、4つの連続アミノ酸残基の欠失である変異、例えば、R248~R251を欠くStxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びY247~R250を欠くSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドなどを含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、コアであるフーリン切断モチーフを挟むアミノ酸残基における、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基の欠失であって、例えば、SLT-1A又はStxAにおける、アミノ酸244~247及び/又はアミノ酸252~255の欠失などの欠失を有する変異(複数可)を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、表面に露出された、プロテアーゼによる切断に感受性のループの全体の内部欠失である変異であって、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然位置のアミノ酸残基241~262の欠失;及びSLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然位置のアミノ酸残基240~261の欠失などの変異を含む。
【0236】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、フーリン切断モチーフ内の、アミノ酸残基の内部欠失である変異、及びカルボキシ末端の切断である変異の両方を含む。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)内のアミノ酸残基の欠失である変異、及びカルボキシ末端の切断である変異の両方を含む。例えば、プロテアーゼによる切断に抵抗性の、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、アミノ酸残基である、247及び/又は252をなおも有する、切断型のStxAポリペプチド又はSLT-1Aポリペプチドにおける、天然位置のアミノ酸残基である、248~249及び/若しくは250~251、又はアミノ酸残基である、246及び/若しくは251をなおも有する、切断型のSLT-2Aにおける、アミノ酸残基である、247~248及び/又は249~250の欠失である変異(複数可)を含む、破壊されたフーリン切断モチーフを含みうる。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型の志賀毒素Aサブユニットと比較した、最小限のフーリン切断部位である、R/Y-x-x-R(配列番号180)を欠失させる、4つの連続アミノ酸残基の欠失、及びカルボキシ末端の切断を有する変異を含む、例えば、StxA及びSLT-1A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを有し、R248~R251を欠き;SLT-2A由来の志賀毒素エフェクターポリペプチドでは、天然の、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、又は292位以降のアミノ酸残基を終端とする切断などを有し、Y247~R250を欠く。
【0237】
一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対して1つ若しくは2つ以上の変異を含み、1つ若しくは2つ以上の変異は、天然位置の、志賀毒素のAサブユニット(配列番号1~2及び4~6)のアミノ酸248~251;又は志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3及び配列番号7~18)のアミノ酸247~250の領域、或いは志賀毒素Aサブユニット又はその派生物内の、同等な領域の、少なくとも1つのアミノ酸残基を変化させる。一部の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、フーリン切断モチーフのうちの、最小限のフーリン切断部位において、野生型志賀毒素Aサブユニットと比べて、1つ又は2つ以上の変異を含む。一部の実施形態では、最小限のフーリン切断部位は、コンセンサスアミノ酸配列である、R/Y-x-x-R(配列番号180)及び/又はR-x-x-R(配列番号183)により表される。
【0238】
(iii)カルボキシ末端小胞体保持/賦活シグナルモチーフを有する志賀毒素構成要素
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、全て参照により明確に組み込まれる、国際公開第2018/140427号パンフレットの段落[52]、及び国際公開第2015/138435号パンフレットの段落[28]、[107]~[113]に列挙されるものなど、カルボキシ末端の、KDELファミリーのメンバーの、小胞体保持/賦活シグナルモチーフを含む。
【0239】
(iv)脱免疫化された、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
一部の実施形態では、結合性タンパク質の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、野生型志賀毒素、野生型志賀毒素ポリペプチド、及び/又は野生型ポリペプチド配列だけを含む、志賀毒素エフェクターポリペプチドなどと比較して脱免疫化される。志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチドは、天然に存在するのであれ、そうでないのであれ、本明細書で記載される方法、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び国際公開第2018/140427号パンフレットにおいて記載されている方法、並びに/又は当業者に公知の方法によって脱免疫化される場合があり、この場合、結果として得られる分子は、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を保持する。脱免疫化された、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ポリペプチドを、ヒト対象などの対象へ投与した後の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を低減するための、少なくとも1つの、推定の、内因性エピトープ領域の破壊を含みうる。
【0240】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープなどの、内因性エピトープ又はエピトープ領域の破壊を含む。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書で記載される少なくとも1つの、内因性の、エピトープ領域の破壊を含み、この場合、破壊は、対象へポリペプチドを投与した後で、志賀毒素エフェクターポリペプチドの潜在的抗原性及び/又は潜在的免疫原性を低減し、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、著明レベルの志賀毒素細胞毒性など、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニット機能を呈することが可能である。
【0241】
エピトープ領域に関して、本明細書で使用される、「破壊された」又は「破壊」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸残基の、エピトープ領域内の欠失、少なくとも1つの反転されたアミノ酸残基が、エピトープ領域内に存在する、2つ又は3つ以上のアミノ酸残基の反転、少なくとも1つのアミノ酸の、エピトープ領域への挿入、及び少なくとも1つのアミノ酸残基の、エピトープ領域内の置換を指す。変異によるエピトープ領域の破壊は、非標準的アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸によるアミノ酸置換を含む。エピトープ領域は、エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸をマスキングする、共有結合的に連結された化学的構造の付加による、アミノ酸の修飾を含む変異によっても、代替的に破壊されうる、例えば、ペグ化(Zhang C et al., BioDrugs 26: 209-15 (2012)を参照されたい)、低分子アジュバント(Flower D, Expert Opin Drug Discov 7: 807-17 (2012)、及び部位特異的アルブミン化(Lim S et al., J Control Release 207-93 (2015))を参照されたい。
【0242】
本明細書では、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットが、成熟志賀毒素Aサブユニットを産生するために除去され、当業者に認識可能な、それらのアミノ末端における、約22アミノ酸のシグナル配列を含有する、前駆体形態を含みうることに注目して、配列表に提示される、天然の志賀毒素Aサブユニットの、特異的アミノ酸位置に言及することにより、いくつかのエピトープ領域及び破壊が指し示される。さらに、本明細書では、天然で、天然の志賀毒素Aサブユニット内の特異的位置(例えば、アミノ末端から33位におけるセリン残基に、S33)に存在する特異的アミノ酸(例えば、セリン残基に、S)に続き、論じられる特定の変異において、この残基が置換されたアミノ酸(例えば、S33Iは、アミノ末端からのアミノ酸残基33における、イソロイシンによる、セリンのアミノ酸置換を表す)に言及することにより、いくつかのエピトープ領域の破壊が指し示される。
【0243】
一部の実施形態では、脱免疫化された、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、本明細書で提供される少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含む。一部の実施形態では、脱免疫化された、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、国際公開第2015/113005号パンフレット又は国際公開第2015/113007号パンフレットに記載された少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含む。
【0244】
一部の実施形態では、脱免疫化された、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸1~15;配列番号3のアミノ酸3~14;配列番号3のアミノ酸26~37;配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸27~37;配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸39~48;配列番号3のアミノ酸42~48;配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3のアミノ酸53~66;配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3のアミノ酸94~115;配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸141~153;配列番号3のアミノ酸140~156;配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸179~190;配列番号3のアミノ酸179~191;配列番号3のアミノ酸204;配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸205;配列番号3のアミノ酸210~218;配列番号3のアミノ酸240~258;配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸243~257;配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸254~268;配列番号3のアミノ酸262~278;配列番号3のアミノ酸281~297;及び配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸285~293又は志賀毒素Aサブユニットポリペプチド、保存された志賀毒素エフェクターポリペプチドサブ領域、及び/若しくは非天然の、志賀毒素エフェクターポリペプチド配列中の同等な位置からなる天然位置のアミノ酸の群から選択されるアミノ酸配列の、少なくとも1つの破壊を含む、全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、又はSLT-2A(配列番号3)を含む。
【0245】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、切断型志賀毒素Aサブユニットを含む。志賀毒素Aサブユニットの切断は、志賀毒素エフェクター機能(複数可)に影響を及ぼさずに、全エピトープ領域(複数可)の欠失を結果としてもたらしうるであろう。著明な酵素活性を呈することが示された、最小の志賀毒素Aサブユニット断片は、StxAの残基75~247から構成されるポリペプチドであった(Al-Jaufy A et al., Infect Immun 62: 956-60 (1994))。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのカルボキシ末端の、アミノ酸1~251への切断は、2つの、予測されるB細胞エピトープ領域、2つの、予測されるCD4陽性(CD4+)T細胞エピトープ、及び予測される不連続B細胞エピトープを除去する。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのアミノ末端の、75~293への切断は、少なくとも3つの、予測されるB細胞エピトープ領域、及び3つの、予測されるCD4+T細胞エピトープを除去する。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのアミノ末端及びカルボキシ末端の両方の、75~251への切断は、少なくとも5つの、予測されるB細胞エピトープ領域;4つの、推定CD4+T細胞エピトープ;及び1つの、予測される、不連続B細胞エピトープを欠失させる。
【0246】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、B細胞又はT細胞エピトープ領域内の、少なくとも1つの変異、例えば、欠失、挿入、反転、又は置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む破壊を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含む破壊を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つの反転されたアミノ酸が、エピトープ領域内に存在する、アミノ酸の反転を含む破壊を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、非標準アミノ酸又は側鎖が化学修飾されたアミノ酸へのアミノ酸置換などの変異を含む破壊を含む。
【0247】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然配列と比較して、1つ又は2つ以上の変異を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットであって、A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、及びKからなる群から選択される、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はこれらから本質的になりうる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、天然配列と比較して、単一の変異を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含み、この場合、置換は、DからA、DからG、DからV、DからL、DからI、DからF、DからS、DからQ、EからA、EからG、EからV、EからL、EからI、EからF、EからS、EからQ、EからN、EからD、EからM、EからR、GからA、HからA、HからG、HからV、HからL、HからI、HからF、HからM、KからA、KからG、KからV、KからL、KからI、KからM、KからH、LからA、LからG、NからA、NからG、NからV、NからL、NからI、NからF、PからA、PからG、PからF、RからA、RからG、RからV、RからL、RからI、RからF、RからM、RからQ、RからS、RからK、RからH、SからA、SからG、SからV、SからL、SからI、SからF、SからM、TからA、TからG、TからV、TからL、TからI、TからF、TからM、TからS、YからA、YからG、YからV、YからL、YからI、YからF、及びYからMから選択される。
【0248】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然のアミノ酸残基配列と比較して、1つ又は2つ以上の変異を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットであって、免疫原性残基の、少なくとも1つのアミノ酸置換、及び/又はエピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はこれから本質的になり、この場合、少なくとも1つの置換は、配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1又は配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1又は配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1又は配列番号2の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286から選択される天然位置のアミノ酸群で生じる。
【0249】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、免疫原性残基の、少なくとも1つの置換、及び/又はエピトープ領域内の、少なくとも1つの置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はこれから本質的になり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸置換は、以下の天然の位置:配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1又は配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1又は配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1又は配列番号2の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286のうちの1つに位置する、天然に存在するアミノ酸と比べた、非保存的アミノ酸(例えば、下掲の表3を参照されたい)へのアミノ酸置換である。
【0250】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、K1からA、G、V、L、I、F、M、又はH;T4からA、G、V、L、I、F、M、又はS;D6からA、G、V、L、I、F、S、Q、又はR;S8からA、G、V、I、L、F、又はM;T8からA、G、V、I、L、F、又はM;T9からA、G、V、I、L、F、M、又はS;S9からA、G、V、L、I、F、又はM;K11からA、G、V、L、I、F、M、又はH;T12からA、G、V、I、L、F、M、S、又はK;S12からA、G、V、I、L、F、又はM;S33からA、G、V、L、I、F、M、又はC;S43からA、G、V、L、I、F、又はM;G44からA又はL;S45からA、G、V、L、I、F、又はM;T45からA、G、V、L、I、F、又はM;G46からA又はP;D47からA、G、V、L、I、F、S、M、又はQ;N48からA、G、V、L、M、又はF;L49からA、V、C、又はG;Y49からA、G、V、L、I、F、M、又はT;F50からA、G、V、L、I、又はT;A51からV;D53からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;V54からA、G、I、又はL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;G56からA、又はP;I57からA、G、V、又はM;L57からA、V、C、G、M、又はF;D58からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;P59からA、G、又はF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、T、又はR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、又はR;G62からA;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;V88からA又はG;I88からA、V、C、又はG;D94からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;S96からA、G、V、I、L、F、又はM;T104からA、G、V、L、I、F、M;又はN;A105からL;T107からA、G、V、L、I、F、M、又はP;S107からA、G、V、L、I、F、M、又はP;L108からA、V、C、又はG;S109からA、G、V、I、L、F、又はM;T109からA、G、V、I、L、F、M、又はS;G110からA;S112からA、G、V、L、I、F、又はM;D111からA、G、V、L、I、F、S、Q、又はT;S112からA、G、V、L、I、F、又はM;D141からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;G147からA;V154からA又はG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;T180からA、G、V、L、I、F、M、又はS;T181からA、G、V、L、I、F、M、又はS;D183からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;L185からA、G、V又はC;S186からA、G、V、I、L、F、又はM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K又はH;S189からA、G、V、I、L、F、及びM;D197からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;D198からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K又はH;C242からA、G又はV;R247からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;S247からA、G、V、I、L、F、又はM;Y247からA、G、V、L、I、F、又はM;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、又はH;D264からA、G、V、L、I、F、S、又はQ;G264からA;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、又はSから選択される、少なくとも1つのアミノ酸置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はこれから本質的になる。
【0251】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A又はD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iのうち少なくとも1つを伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はこれから本質的になる。これらのエピトープを破壊する置換は、破壊されているが、なおも、志賀毒素のエフェクター機能を保持する、エピトープ領域1つ及び/又は複数のエピトープ領域当たり複数の置換を伴う、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成するように組み合わされうる。例えば、天然位置の残基における置換である、K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、又はD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iは、可能な場合、本発明の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを作出するように、天然位置の残基における置換である、K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、又はD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iと組み合わされうる。
【0252】
本明細書で記載されるいずれの脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドのサブ領域、及び/又はエピトープを破壊する変異も、単独で又は組み合わせて使用される場合もあり、本発明の方法におけるその使用を含む、本発明のCD38結合性タンパク質の、各個別の実施形態とさらに組み合わせて使用される場合もある。
【0253】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上の変異を有する切断型志賀毒素Aサブユニットから本質的になりうる。志賀毒素Aサブユニットの切断は、例えば、触媒活性及び細胞毒性など、志賀毒素エフェクター機能に影響を及ぼさずに、全エピトープ(複数可)及び/又はエピトープ領域(複数可)、B細胞エピトープ、CD4+T細胞エピトープ、及び/又はフーリン切断部位の欠失を結果としてもたらしうるであろう。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのカルボキシ末端の、アミノ酸1~251への切断は、2つの、予測されるB細胞エピトープ領域、2つの、予測されるCD4陽性(CD4+)T細胞エピトープ、及び予測される不連続B細胞エピトープを除去する。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのアミノ末端の、75~293への切断は、少なくとも3つの、予測されるB細胞エピトープ領域、及び3つの、予測されるCD4+T細胞エピトープを除去する。SLT-1A、StxA、又はSLT-2Aのアミノ末端及びカルボキシ末端の両方の、75~251への切断は、少なくとも5つの、予測されるB細胞エピトープ領域;4つの、推定CD4+T細胞エピトープ;及び1つの、予測される、不連続B細胞エピトープを欠失させる。
【0254】
一部の実施形態では、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、提示された、内因性のB細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域内の、少なくとも1つの変異(野生型志賀毒素ポリペプチドと比較して)、例えば、欠失、挿入、反転、又は置換を伴う、全長又は切断型の志賀毒素Aサブユニットを含みうるか、又はこれから本質的になりうる。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、内因性の、B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失を含む変異(野生型志賀毒素ポリペプチドと比較して)を含む破壊を含む。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、内因性の、B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域内の、少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を含む破壊を含む。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの反転されたアミノ酸残基が、内因性の、B細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域内に存在する、アミノ酸残基の反転を含む破壊を含む。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、アミノ酸置換、非標準アミノ酸、及び/又は側鎖が化学修飾されたアミノ酸残基へのアミノ酸置換などの変異(野生型志賀毒素ポリペプチドと比較して)を含む破壊を含む。本明細書で記載されるような使用に適切な脱免疫化志賀毒素エフェクターサブ領域の非限定例は、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット及び国際公開第2018/140427号パンフレットに記載されている。
【0255】
他の実施形態では、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドは、全長志賀毒素Aサブユニットよりも短い、切断型志賀毒素Aサブユニットを含み、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置の、B細胞エピトープ領域内、及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域内で破壊される。
【0256】
脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを作出するために、提示されるエピトープ領域内の、任意のアミノ酸残基を、多様な手段により修飾することは、例えば、野生型志賀毒素ポリペプチドと比べた、側鎖の、欠失、挿入、反転、再配列、置換、及び化学修飾を表す修飾など、原理的に、エピトープの破壊を結果としてもたらしうる。しかし、ある特定のアミノ酸残基の修飾、及びある特定のアミノ酸修飾の使用は、ある特定のレベルの志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を維持しながら、抗原性及び/又は免疫原性を低減することに成功する可能性が高い。例えば、末端の切断及び内部のアミノ酸置換は、これらの種類の修飾が、志賀毒素エフェクターポリペプチド内の、アミノ酸残基の全体的な間隔を維持するために好ましく、したがって、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構造及び機能を維持する可能性が高い。
【0257】
本発明の一部の実施形態の中に、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸75~251を含むか、又はこれから本質的になる脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドがあり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置の、エピトープ領域内で破壊される。一部の他の実施形態の中に、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸1~241を含むか、又はこれから本質的になる、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドがあり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置の、エピトープ領域内で破壊される。実施形態は、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸1~251を含むか、又はこれから本質的になる脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、提示される、天然位置の、エピトープ領域内で破壊される。実施形態は、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸1~261を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドであり、この場合、少なくとも1つのアミノ酸残基は、天然位置の、エピトープ領域内で破壊される。
【0258】
本発明の脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを作出するのに使用されうる、多数の、多岐にわたる、内部のアミノ酸置換が存在する。エピトープ領域内で使用することが可能な置換アミノ酸のうちで、以下の置換アミノ酸残基-G、D、E、S、T、R、K、及びHは、エピトープの抗原性及び/又は免疫原性を低減する可能性が最も高いことが予測される。グリシンを除き、これらのアミノ酸残基は全て、極性残基及び/又は帯電残基として分類されうる。置換することが可能なアミノ酸のうちで、以下のアミノ酸A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、及びKは、置換されるアミノ酸に応じて、著明レベルの志賀毒素のエフェクター機能(複数可)の保持をもたらしながら、抗原性及び/又は免疫原性を低減する可能性が最も高いことが予測される。一般に、置換は、極性アミノ酸残基及び/又は帯電アミノ酸残基を、非極性かつ非帯電の残基へと変化させるべきである(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレットを参照されたい)。加えて、アミノ酸残基のR基官能側鎖の全体のサイズ及び/又は全長を低減することも、エピトープ破壊に有益でありうる(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレットを参照されたい)。しかし、エピトープ破壊を付与する可能性が最も高い置換についての、これらの一般的検討事項にも関わらず、目的は、著明な志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を保存することであるため、置換アミノ酸は、例えば、極性残基及び/又は帯電残基を置換する、類似するサイズの、非極性及び/又は非帯電残基など、置換されるアミノ酸に相似する場合に、志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を保存する可能性が高くなりうるであろう。
【0259】
国際公開第2015/113007号パンフレットでは、多くの変異が、多様な志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合性タンパク質の、志賀毒素のエフェクター機能に対する効果(複数可)について実験により調べられた。表2は、単独の、又は1つ若しくは2つ以上の他の置換と組み合わせたアミノ酸置換が、強力なレベルの志賀毒素のエフェクター機能(複数可)の呈示を妨げなかった、国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットにおいて記載されている結果についてまとめる。表2は、国際公開第2016/196344号パンフレットにおいて記載されている、エピトープ領域の番号付けスキームを使用する。
【0260】
【0261】
国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットにおける、実験による証拠に基づき、志賀毒素のAサブユニット内の、ある特定のアミノ酸位置は、著明な志賀毒素エフェクター機能を、なおも保持しながら、エピトープの破壊を許容することが予測される。例えば、以下の天然に存在する位置:配列番号1又は配列番号2のアミノ酸1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1又は配列番号2の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1又は配列番号2の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1又は配列番号2の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286は、細胞毒性など、志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を保持しながら、単独のアミノ酸置換、又は組合せにおけるアミノ酸置換を許容する。
【0262】
国際公開第2015/113007号パンフレット及び国際公開第2016/196344号パンフレットにおける実験データは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、例えば、前述の切断及び置換を許容する位置の新たな組合せのほか、類縁の志賀毒素Aサブユニット内の、同一の位置又は保存された位置における新たな置換など、著明な志賀毒素のエフェクター機能を呈する、志賀毒素エフェクターポリペプチドの能力を保持しながら、志賀毒素エフェクターポリペプチドの抗原性及び/又は免疫原性を低減しうる、他の、エピトープを破壊する置換、及びエピトープを破壊する置換の組合せを示す。
【0263】
本明細書における被験置換のうちの、保存的官能基を有するアミノ酸残基への、他のアミノ酸置換も、著明な志賀毒素のエフェクター機能を温存しながら、抗原性及び/又は免疫原性を低減しうることが予測可能である。例えば、K1A、K1M、T4I、D6R、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、T12K、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、D47G、N48V、N48F、L49A、F50T、A51V、D53A、D53N、D53G、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、A105L、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184A、D184F、L185V、L185D、S186A、S186F、G187A、G187T、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、又はD264A、G264A、T286A、及び/又はT286Iのうちのいずれかと類似することが当業者に公知である、他の置換は、少なくとも1つの、志賀毒素のエフェクター機能を維持しながら、内因性エピトープを破壊しうる。特に、K1A、K1M、T4I、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、S33I、S33C、S43N、G44L、S45V、S45I、T45V、T45I、G46P、D47M、N48V、N48F、L49A、A51V、D53A、D53N、V54L、V54I、R55A、R55V、R55L、G56P、I57F、I57M、D58A、D58V、D58F、P59A、E60I、E60T、E61A、E61V、E61L、G62A、R84A、V88A、D94A、S96I、T104N、T107P、L108M、S109V、T109V、G110A、D111T、S112V、D141A、G147A、V154A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184F、L185V、S186A、S186F、G187A、R188A、R188L、S189A、D198A、R204A、R205A、C242S、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、D264A、G264A、T286A、及びT286Iと類似する、保存的アミノ酸残基へのアミノ酸置換は、同じ効果又は同様の効果を及ぼしうる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、K1からG、V、L、I、F及びH;T4からA、G、V、L、F、M、及びS;S8からA、G、V、L、F、及びM;T9からA、G、L、F、M、及びS;S9からA、G、L、I、F、及びM;K11からG、V、L、I、F、及びM;S33からA、G、V、L、F、及びM;S43からA、G、V、L、I、F、及びM;S45からA、G、L、F、及びM;T45からA、G、L、F、及びM;D47からA、V、L、I、F、S、及びQ;N48からA、G、L、及びM;L49からG;Y49からA;D53からV、L、I、F、S、及びQ;R55からG、I、F、M、Q、S、K、及びH;D58からG、L、I、S、及びQ;P59からG;E60からA、G、V、L、F、S、Q、N、D、及びM;E61からG、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;R84からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;V88からG;I88からG;D94からG、V、L、I、F、S、及びQ;S96からA、G、V、L、F、及びM;T107からA、G、V、L、I、F、M、及びS;S107からA、G、V、L、I、F、及びM;S109からA、G、I、L、F、及びM;T109からA、G、I、L、F、M、及びS;S112からA、G、L、I、F、及びM;D141からV、L、I、F、S、及びQ;V154からG;R179からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;T180からA、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、F、M、及びS;D183からV、L、I、F、S、及びQ;D184からG、V、L、I、S、及びQ;S186からG、V、I、L、及びM;R188からG、V、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からG、V、I、L、F、及びM;D197からV、L、I、F、S、及びQ;D198からA、V、L、I、F、S、及びQ;R204からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からG、V、L、I、F、M、Q、S、K及びH;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、F、及びM;R248からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R250からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R251からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;D264からA、G、V、L、I、F、S、及びQ;並びにT286からA、G、V、L、I、F、M、及びSなど、実験による被験アミノ酸への、類似する保存的アミノ酸置換を含みうる。
【0264】
同様に、電荷、極性を除去するアミノ酸置換、及び/又は側鎖長を短縮するアミノ酸置換は、少なくとも1つの、志賀毒素のエフェクター機能を維持しながら、エピトープを破壊しうる。一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、以下の群:A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、又はKから選択される、適切なアミノ酸で、位置:配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の4;配列番号1又は配列番号2の6;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の11;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の12;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の44;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の46;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の50;配列番号1又は配列番号2の51;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の54;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1又は配列番号2の56;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の57;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1又は配列番号2の84;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の88;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の96;配列番号1又は配列番号2の104;配列番号1又は配列番号2の105;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の107;配列番号1又は配列番号2の108;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1又は配列番号2の111;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の112;配列番号1又は配列番号2の141;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の147;配列番号1又は配列番号2の154;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号3の197;配列番号1又は配列番号2の198;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号3の241;配列番号1又は配列番号2の242;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286におけるアミノ酸残基を置換することなど、側鎖電荷が除去されるような置換、極性が除去されるような置換、及び/又は側鎖長さが短縮されるような置換により破壊される、1つ又は2つ以上のエピトープを含みうる。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K1からA、G、V、L、I、F、M若しくはH;T4からA、G、V、L、I、F、M、若しくはS;D6からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;S8からA、G、V、I、L、F、若しくはM;T8からA、G、V、I、L、F、M、若しくはS;T9からA、G、V、I、L、F、M、若しくはS;S9からA、G、V、L、I、F、若しくはM;K11からA、G、V、L、I、F、M若しくはH;T12からA、G、V、I、L、F、M、若しくはS;S33からA、G、V、L、I、F、若しくはM;S43からA、G、V、L、I、F、若しくはM;G44からA若しくはL;S45からA、G、V、L、I、F、若しくはM;T45からA、G、V、L、I、F、若しくはM;G46からA若しくはP;D47からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;N48からA、G、V、L、若しくはM;L49からA若しくはG;F50;A51からV;D53からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;V54からA、G、若しくはL;R55からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;G56からA若しくはP;I57からA、G、M、若しくはF;L57からA、G、M、若しくはF;D58からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;P59からA、G、若しくはF;E60からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、若しくはR;E61からA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、若しくはR;G62からA;D94からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;R84からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;V88からA若しくはG;I88からA、G、若しくはV;D94;S96からA、G、V、I、L、F、若しくはM;T104からA、G、V、I、L、F、M、若しくはS;A105からL;T107からA、G、V、I、L、F、M、若しくはS;S107からA、G、V、L、I、F、若しくはM;L108からA、G、若しくはM;S109からA、G、V、I、L、F、若しくはM;T109からA、G、V、I、L、F、M、若しくはS;G110からA;D111からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;S112からA、G、V、L、I、F、若しくはM;D141からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;G147からA;V154からA若しくはG;R179からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;T180からA、G、V、L、I、F、M、若しくはS;T181からA、G、V、L、I、F、M、若しくはS;D183からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;D184からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;L185からA、G、若しくはV;S186からA、G、V、I、L、F、若しくはM;G187からA;R188からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;S189からA、G、V、I、L、F、若しくはM;D197からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;D198からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K若しくはH;C242からA、G、V、若しくはS;S247からA、G、V、I、L、F、若しくはM;Y247からA、G、V、L、I、F、若しくはM;R248からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;R250からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;R251からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、若しくはH;C262からA、G、V、若しくはS;D264からA、G、V、L、I、F、S、若しくはQ;G264からA;又はT286からA、G、V、L、I、F、M、若しくはSのうち1つ又は2つ以上を含みうる。
【0265】
加えて、著明な志賀毒素のエフェクター機能を保持しながらエピトープを破壊する、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、1つのエピトープ領域内の任意のアミノ酸置換が、著明レベルの志賀毒素のエフェクター機能をなおも保持しながら複数のエピトープ領域が破壊された脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成するように、著明な志賀毒素のエフェクター機能を保持しながらエピトープを破壊する、同じであるか又は異なるエピトープ領域内の、任意の他のアミノ酸置換と組合せ可能である。一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、前述の置換のうちの、2つ若しくは3つ以上の組合せ、並びに/又は国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び/若しくは国際公開第2018/140427号パンフレットにおいて記載されている置換の組合せを含みうる。
【0266】
国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び国際公開第2018/140427号パンフレットに記載された研究に基づき、志賀毒素のAサブユニット内の、ある特定のアミノ酸領域は、著明な志賀毒素エフェクター機能を、なおも保持しながら、エピトープの破壊を許容することが予測される。例えば、天然位置の、1~15、39~48、53~66、55~66、94~115、180~190、179~190、及び243~257におけるエピトープ領域は、志賀毒素の酵素活性及び細胞毒性を損なわずに、複数のアミノ酸置換の組合せを、同時に許容した。
【0267】
(v)破壊された、フーリン切断モチーフを含む、脱免疫化志賀毒素
組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドは、2つ又は3つ以上のサブ領域(すなわち、重複しないサブ領域)を含み、この場合、各サブ領域は、以下:(1)内因性のエピトープ内又はエピトープ領域内の破壊、及び(2)A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフのうちの少なくとも1つを含む。
【0268】
組合せ志賀毒素エフェクターポリペプチドの、一部の実施形態は、(1)内因性のエピトープ内又はエピトープ領域内の破壊、及び(2)A1断片に由来する領域のカルボキシ末端における、破壊されたフーリン切断モチーフの両方を含む。国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び国際公開第2018/140427号パンフレットに記載されている、個々の、脱免疫化された、志賀毒素エフェクターサブ領域(例えば、表2、前出を参照されたい)のうちのいずれもが、一般に、志賀毒素エフェクターポリペプチドを作出するために、本明細書で記載される、国際公開第2015/191764号パンフレットにおいて記載されている、及び/又は当技術分野で公知の、破壊されたフーリン切断モチーフを含む、任意の志賀毒素エフェクターサブ領域と組み合わされうることが予測される。
【0269】
組合せによる、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、フーリン切断モチーフの破壊、1つ若しくは2以上の個別のエピトープの破壊、及び/又は異種分子のカーゴなど、それらのそれぞれのサブ領域の特色を組み合わせ、これらの組合せは、場合によって、それらの部分的に脱免疫化されたサブ領域の総和と比較して、免疫原性を、相乗作用的に低減した志賀毒素エフェクターポリペプチドを結果としてもたらす。
【0270】
ある特定の濃度で、無細胞毒性又は低減細胞毒性を呈する、脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチド、例えば、Y77S、R179A、及び/若しくはE167Dを含む志賀毒素エフェクターポリペプチド又は天然の240位を越えたカルボキシ末端での切断型は、外因性素材を細胞中に送達するための脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドとしてなおも有用でありうる。
【0271】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)その志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端において破壊されたフーリン切断モチーフを含み(例えば、その全体において参照により本明細書に明確に組み込まれる、国際公開第2015/191764号パンフレット、並びに具体的には、段落[8]、[9]並びに破壊されたモチーフ及び破壊されたモチーフを含む毒素ポリペプチドの配列を参照されたい)及び(ii)脱免疫化されている;例えば、参照により本明細書に明確に組み込まれる、国際公開第2018/140427号パンフレット、段落[80]以下参照並びに段落[81]及び[82]の「実施形態セット番号5」を参照されたい。
【0272】
b.他の構造的変動
当業者は、例えば、1)潜在的抗原性及び/若しくは潜在的免疫原性を低減する、内因性エピトープの破壊、並びに/或いは2)タンパク質分解性切断を低減する、フーリン切断モチーフの破壊のうちの、1つ又は2つ以上などと共に、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、全体的な構造及び機能を維持することにより、それらの生物学的活性を減少させずに、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合性タンパク質、並びに前者のうちのいずれかをコードするポリヌクレオチドへと変動が施されうることを認識するであろう。例えば、一部の修飾は、発現を容易としうる、精製を容易としうる、薬物動態特性を改善しうる、及び/又は免疫原性を改善しうる。このような修飾は、当業者に周知であり、例えば、アミノ末端において付加され、起始部位をもたらす、メチオニン、いずれかの末端に配置され、好都合に位置した制限部位又は終結コドンを作出する、さらなるアミノ酸、並びにいずれかの末端へと融合されて、簡便な検出及び/又は精製をもたらす、生化学的アフィニティータグを含む。微生物系(例えば、原核細胞)を使用して作製されるポリペプチドの免疫原性を改善する、一般的な修飾は、例えば、N-ホルミルメチオニン(fMet;N-formylmethionine)の存在は、ヒト対象などの対象において、所望されない免疫応答を誘導しうるため、ポリペプチドを作製した後で、例えば、細菌宿主系などにおける作製時にホルミル化されうる、起始部のメチオニン残基を除去することである。
【0273】
本明細書ではまた、本発明の結合性タンパク質、又は本発明の結合性タンパク質のタンパク質性構成要素のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端における、エピトープタグ又は他の部分の配列など、さらなるアミノ酸残基の組入れも提供される。さらなるアミノ酸残基は、例えば、クローニングを容易とする目的、発現を容易とする目的、翻訳後修飾目的、合成を容易とする目的、精製目的、検出を容易とする目的、及び投与を含む、多様な目的で使用されうる。エピトープタグ及び部分の非限定例は、キチン結合性タンパク質ドメイン、エンテロペプチダーゼ切断部位、因子Xa切断部位、FIAsHタグ、FLAGタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP;green fluorescent protein)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ部分、HAタグ、マルトース結合性タンパク質ドメイン、mycタグ、ポリヒスチジンタグ、ReAsHタグ、Strepタグ、StrepタグII、TEVプロテアーゼ部位、チオレドキシンドメイン、トロンビン切断部位、及びV5エピトープタグである。
【0274】
上記の実施形態のうちの、一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合性タンパク質のポリペプチド配列は、全ての、要求される構造的特色が依然として存在し、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、単独で、又は結合性タンパク質の構成要素として、任意の要求される機能(複数可)を呈することが可能である限りにおいて、ポリペプチド領域(複数可)へと導入される、1つ又は2つ以上の保存的アミノ酸置換により変動させられる。本明細書で使用される、「保存的置換」という用語は、1つ又は2つ以上のアミノ酸が、別の、生物学的に類似するアミノ酸残基により置き換えられることを表示する。例えば、類似する特徴を伴うアミノ酸残基、例えば、小型アミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸による置換(例えば、表3を参照されたい)を含む。内因性の、哺乳動物ペプチド及び哺乳動物タンパク質において、通例見出されない残基による、保存的置換は例えば、アルギニン残基又はリシン残基の、例えば、オルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸による保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における、表現型的なサイレント置換に関する、さらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。
【0275】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合性タンパク質は、それが、(1)志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端において、破壊されたフーリン切断モチーフ並びに(2)少なくとも1つの、内因性のB細胞エピトープ領域及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域において破壊されたアミノ酸を含み、破壊されたアミノ酸が、破壊されたフーリン切断モチーフと重複しない限りにおいて、本明細書で列挙されるポリペプチド配列と比較して、最大で、20、15、10、9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、又は1つのアミノ酸置換を有する、本明細書で記載される、本発明のポリペプチド領域の、機能的断片又はバリアントを含みうる。志賀毒素エフェクターポリペプチドのバリアント、及び本発明の結合性タンパク質は、細胞毒性の変更、細胞増殖抑制効果の変更、免疫原性の変更、及び/又は血清半減期の変更など、所望の特性を達成するために、結合性領域内又は志賀毒素エフェクターポリペプチド領域内などで、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基を変化させるか、又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基を欠失させるか、若しくは挿入することにより、本明細書で記載されるポリペプチドを変更する結果として、本発明の範囲内にある。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38結合性タンパク質は、シグナル配列を、さらに伴う場合もあり、これを伴わない場合もある。
【0276】
したがって、一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT-2A(配列番号3)などの志賀毒素Aサブユニットなど、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット又はその断片に対する、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の、全配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はこれから本質的になり、この場合、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然に存在するSLT-1Aサブユニットと関連する1つ又は2つ以上の活性、例えば、標的媒介性内部移行、触媒活性及び/又は細胞毒性活性を有する。
【0277】
一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を増大させるために、変異されるか、挿入されるか、又は欠失される、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を有する。一部の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を含み、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性及び/又は細胞毒性活性を低減するか、又は消失させるために、変異されうるか、又は欠失されうる。例えば、志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーの触媒活性及び/又は細胞毒性活性は、変異又は切断により、減少させうるか、又は消失させうる。
【0278】
志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーの細胞毒性は、変異及び/又は切断により、変化しうるか、低減しうるか、又は消失しうる。位置を表示されたチロシン77、グルタミン酸167、アルギニン170、チロシン114、及びトリプトファン203は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性に重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988); Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992); Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993); Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993); Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994); Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタミン酸167及びアルギニン170の両方の変異誘発は、無細胞リボソーム不活化アッセイにおいて、Slt-I A1の酵素活性を消失させた(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体内の、Slt-I A1のデノボ発現を使用する、別の手法では、グルタミン酸167及びアルギニン170の両方の変異誘発は、この発現レベルにおける、Slt-I A1断片の細胞毒性を消失させた(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。切断解析は、残基75~268のStxAの断片が、インビトロにおいて、著明な酵素活性を依然として保持することを裏付けた(Haddad J et al., J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1~239を含有する、Slt-I A1の切断断片は、インビトロにおける、著明な酵素活性、及び細胞質ゾル内のデノボ発現による細胞毒性を提示した(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。残基1~239へと切断された、Slt-I A1断片の、小胞体内の発現は、細胞質ゾルへと逆行移動できなかったため、細胞毒性ではなかった(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
【0279】
志賀毒素Aサブユニット内の酵素活性及び/又は細胞毒性に最も重要な残基は、他の残基位置の中でも、以下の残基位置:アスパラギン75、チロシン77、チロシン114、グルタミン酸167、アルギニン170、アルギニン176、及びトリプトファン203へとマッピングされた(Di R et al., Toxicon 57: 525-39 (2011))。特に、グルタミン酸E167からリシンへの変異、及びアルギニン176からリシンへの変異を含有する、Stx2Aの二重変異体コンストラクトが、完全に不活化される一方、Stx1及びStx2における、多くの単一の変異は、細胞毒性の、10倍の低減を示した。さらに、Stx1Aの、1~239又は1~240への切断は、その細胞毒性を低減し、同様に、Stx2Aの、保存された疎水性残基への切断は、その細胞毒性を低減した。志賀毒素Aサブユニット内の、真核生物リボソームへの結合及び/又は真核生物リボソームの阻害に最も重要な残基は、他の残基位置の中でも、以下の残基位置:アルギニン172、アルギニン176、アルギニン179、アルギニン188、チロシン189、バリン191、及びロイシン233へとマッピングされている(McCluskey A et al., PLoS One 7: e31191 (2012))。しかし、ある特定の修飾は、志賀毒素エフェクターポリペプチドにより呈される、志賀毒素機能活性を増大させうる。例えば、Stx1A内の残基位置アラニン231を、グルタミン酸へと変異させることは、インビトロにおいて、Stx1Aの酵素活性を増大させる(Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。
【0280】
一部の実施形態では、SLT-1A(配列番号1)又はStxA(配列番号2)に由来する、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、変異される、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を含み、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基は、75位におけるアスパラギン、77位におけるチロシン、114位におけるチロシン、167位におけるグルタミン酸、170位におけるアルギニン、176位におけるアルギニンの置換、及び/又は203位におけるトリプトファンの置換を含む。75位におけるアスパラギンの、アラニンへの置換、77位におけるチロシンの、セリンへの置換、114位におけるチロシンの、セリンへの置換、167位におけるグルタミン酸の、グルタミン酸への置換、170位におけるアルギニンの、アラニンへの置換、176位におけるアルギニンの、リシンへの置換、203位におけるトリプトファンの、アラニンへの置換、及び/又は231位におけるアラニンの、グルタミン酸による置換など、このような置換の例は、先行技術に基づき、当業者に公知であろう。志賀毒素の酵素活性及び/又は細胞毒性を増強又は低減する、他の変異は、本発明の範囲内にあり、本明細書で開示される周知の技法及びアッセイを使用して決定されうる。
【0281】
3.構成要素及び/又はそれらの亜構成要素を繋ぐリンカー
個別のCD38結合性領域、志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び/又は結合性タンパク質の構成要素は、当技術分野で周知である、及び/又は本明細書で記載される、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、互いと、適切に連結されうる。個別のポリペプチドの、結合性領域の亜構成要素、例えば、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、CDR領域、及び/又はABR領域は、当技術分野で周知である、及び/又は本明細書で記載される、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、互いと、適切に連結されうる。本発明のタンパク質性構成要素、例えば、多重鎖結合性領域は、当技術分野で周知である、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、互いと、又は、他のポリペプチド構成要素と、適切に連結されうる。ペプチド構成要素、例えば、KDELファミリーの小胞体保持/賦活シグナルモチーフは、当技術分野で周知のタンパク質性リンカーなど、1つ又は2つ以上のリンカーを介して、別の、本発明の構成要素と、適切に連結されうる。
【0282】
本明細書の「リンカー」により、scFv及び/又は他のタンパク質とタンパク質の融合構造とで使用されるような、2つのタンパク質ドメインを一体につなぐドメインリンカーを意味する。一般に、伝統的なペプチド結合を含めて、各ドメインがその生物学的機能の保持を可能とするのに十分な長さ及び可撓性を有する2つのドメインの組換え接合を可能にする組換え技術によって生成される、いくつかの使用されうる適切なリンカーがある。リンカーペプチドは、以下のアミノ酸残基:Gly、Ser、Ala又はThrを優勢に含みうる。リンカーペプチドは、互いに対して正確なコンホメーションをとり、それらが所望の活性を保持するように、2つの分子を連結するのに十分な長さを有するべきである。一部の実施形態では、リンカーは、約1~約50アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、約1~約30アミノ酸長である。一実施形態では、一部の実施形態での使用が見出されている約5~約10アミノ酸又は8~15アミノ酸を有する、1~20アミノ酸長のリンカーが使用されうる。有用なリンカーは、例えば、(GS)n(配列番号193)、(GSGGS)n(配列番号194)、(GGGGS)n(配列番号195)、及び(GGGS)n(配列番号196)[ここで、nは、少なくとも1つ(一般に、3~4)の整数である]を含む、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び他の可撓性リンカーを含む。或いは、ポリエチレングリコール(PEG;polyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーを含むがこれらに限定されない、様々な非タンパク質性ポリマーが、リンカーとしての使用を見出されうる。他のリンカー配列は、CL/CH1ドメインの全ての残基ではないが、任意の長さのCL/CH1ドメインの任意の配列;例えば、CL/CH1ドメインの最初の5~12アミノ酸残基を含みうる。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えばC又はC由来でもありうる。リンカーは、例えば、C1、C2、C3、C4、C1、C2、C、C、及びCを含む、任意の同位体の免疫グロブリン重鎖由来でありうる。リンカー配列は、Ig様タンパク質(例えば、TCR、FcR、KIR)、ヒンジ領域由来配列、及び他のタンパク質からの他の天然の配列など、他のタンパク質由来でもありうる。任意の適切なリンカーが使用されうるが、多くの実施形態は、例えば、(GS)n(配列番号193)、(GSGGS)n(配列番号194)、(GGGGS)n(配列番号195)、及び(GGGS)n(配列番号196)[ここで、nは少なくとも1つ(一般に2~3~4~5)の整数である]を含む、グリシン-セリンポリマーを利用する。「scFvリンカー」は、一般にこれらのグリシン-セリンポリマーを含む。
【0283】
適切なリンカーは、一般に、本発明の各ポリペプチド構成要素が、いかなるリンカー又は他の構成要素を伴わずに、個別に作製されたポリペプチド構成要素と、極めて類似の三次元構造でフォールディングすることを可能とするリンカーである。適切なリンカーは、分枝状であれ、環状であれ、多様な非タンパク質性炭素鎖など、前述のうちのいずれかを欠く、単一のアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及びリンカーを含む。
【0284】
適切なリンカーは、例えば、化学リンカーなど、非タンパク質性リンカーでありうる。当技術分野で公知の、多様な非タンパク質性リンカーは、免疫グロブリンポリペプチドを、異種ポリペプチドへとコンジュゲートさせるのに、一般に使用されるリンカーなど、細胞をターゲティングする結合性領域を、本発明の結合性タンパク質の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素へと連結するのに使用されうる。例えば、ポリペプチド領域は、例えば、カルボキシ、アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、カルボニル、ヒドロキシル、及び/又は環状基など、それらのアミノ酸残基及び炭水化物部分の官能側鎖を使用して連結されうる。例えば、ジスルフィド結合及びチオエーテル結合は、2つ又は3つ以上のポリペプチドを連結するのに使用されうる。加えて、非天然のアミノ酸残基は、ケトン基など、他の官能側鎖と共に使用されうる。非タンパク質性化学リンカーの例は、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート、S-(N-スクシンイミジル)チオアセテート(SATA;S-(N-succinimidyl) thioacetate)、N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-cu-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT;N-succinimidyl-oxycarbonyl-cu-methyl-a-(2-pyridyldithio) toluene)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)-ペンタノエート(SPP;N-succinimidyl 4-(2-pyridyldithio)-pentanoate)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC又はMCC;succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl) cyclohexane carboxylate)、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート、4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル-6-(α-メチル-α-(ピリジルジチオール)-トルアミド)ヘキサノエート、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP;N-succinimidyl-3-(-2-pyridyldithio)-proprionate)、スクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド)ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド)ヘキサノエート、マレイミドカプロイル(MC;maleimidocaproyl)、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB;maleimidocaproyl-valine-citrulline-p-aminobenzyloxycarbonyl)、3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS;3-maleimidobenzoic acid N-hydroxysuccinimide ester)、アルファ-アルキル誘導体、スルホNHS-ATMBA(スルホスクシンイミジルN-[3-(アセチルチオ)-3-メチルブチリル-ベータ-アラニン])、スルホジクロロフェノール、2-イミノチオラン、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS-(2-チオピリジル)-L-システインを含むがこれらに限定されない。
【0285】
タンパク質性リンカーは、本発明の組換え融合結合性タンパク質への組込みのために選び出されうる。本発明の組換え融合細胞ターゲティングタンパク質のために、リンカーは、典型的に、約1~約50アミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、リンカーは、約5~30アミノ酸残基を含みうる。一般に、タンパク質性リンカーは、例えば、トレオニン、プロリン、グルタミン、グリシン、及びアラニンなど、極性残基、非帯電残基、及び/又は帯電残基を伴うアミノ酸残基の大部分を含む。タンパク質性リンカーの非限定例は、アラニン-セリン-グリシン-グリシン-プロリン-グルタミン酸(ASGGPE(配列番号197))、バリン-メチオニン(VM)、アラニン-メチオニン(AM)、AM(G2-4S)xAM[ここで、Gは、グリシンであり、Sは、セリンであり、xは、1~10の整数である](配列番号198)を含む。
【0286】
タンパク質性リンカーは、所望の特性に基づき選択されうる。タンパク質性リンカーは、融合体の分子フォールディング、安定性、発現、可溶性、薬物動態特性、薬力学特性、及び/又は融合コンストラクトの文脈における、同じドメイン自体の活性と比較した、融合ドメインの活性のうちの、1つ又は2つ以上を最適化するなど、特異的特色を念頭に置く当業者により選び出されうる。例えば、タンパク質性リンカーは、可撓性、非可撓性、及び/又は切断性に基づき選択されうる。当業者は、リンカーを選び出す場合に、データベースと、リンカーデザイン用のソフトウェアツールとを使用しうる。一部の場合では、ある特定のリンカーは、発現を最適化するように選び出さされうる。ある特定のリンカーは、同一なポリペプチド又はタンパク質の間の分子間相互作用を促進して、ホモ二量体など、ホモ多量体を形成するように選び出されうる。
【0287】
可撓性のタンパク質性リンカーは、12アミノ酸残基長より大型であり、例えば、グリシン、セリン、及びトレオニンなど、小型で非極性のアミノ酸残基、極性のアミノ酸残基、及び/又は親水性のアミノ酸残基に富むことが多い。可撓性のタンパク質性リンカーは、構成要素間の空間的分離を増大させる、及び/又は構成要素間の分子内相互作用を可能とするように選び出されうる。例えば、当業者には、多様な「GS」リンカーが、公知であり、例えば、(GxS)n(配列番号199)、(SxG)n(配列番号200)、(GGGGS)n(配列番号195)、及び(G)n(配列番号201)[ここで、xは、1~6であり、nは、1~30である]など、場合によって、反復単位である、複数のグリシン、及び/又は1つ若しくは2つ以上のセリンから構成される。可撓性のタンパク質性リンカーの非限定例は、GKSSGSGSESKS(配列番号202)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号203)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号204)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号205)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号206)、SRSSG(配列番号207)、及びSGSSC(配列番号208)を含む。
【0288】
非可撓性のタンパク質性リンカーは、剛直なアルファ-螺旋構造であり、プロリン残基、及び/又は1つ若しくは2つ以上の、戦略的に位置させたプロリンに富むことが多い。非可撓性リンカーは、連結された構成要素間の、分子内相互作用を防止するように選び出されうる。
【0289】
本発明のCD38結合性タンパク質についての、一部の実施形態では、標的細胞内に存在するプロテアーゼによる切断をもたらすように、1つ又は2つ以上のプロテアーゼ感受性部位を含むリンカーが使用されうる。本発明の結合性タンパク質についての、一部の実施形態では、脊椎動物への投与の後における、望ましくない毒性を低減するように、切断性ではないリンカーが使用されうる。
【0290】
本発明のCD38結合性タンパク質についての、一部の実施形態では、CD38結合性領域は、共有結合的連結及び非共有結合的連結の両方を含む、当業者に公知の、任意の数の手段を使用して、志賀毒素エフェクターポリペプチドへと連結される。
【0291】
本発明のCD38結合性タンパク質についての、一部の実施形態では、分子は、重鎖可変(VH)ドメインと、軽鎖可変(VL)ドメインとを接続するリンカーを伴うscFvである、結合性領域を含む。例えば、15残基の(Gly4Ser)3ペプチド(配列番号183)など、この目的に適切な、当技術分野で公知のリンカーが、多数存在する。非共有結合的ホモ二量体構造の形成に使用されうる、適切なscFvリンカーは、GGGS、(配列番号185)、GGGGS(配列番号186)、GGGGSGGG(配列番号187)、GGSGGGG(配列番号188)、GSTSGGGSGGGSGGGGSS(配列番号189)、及びGSTSGSGKPGSSEGSTKG(配列番号190)を含む。
【0292】
CD38結合性タンパク質の構成要素を連結するために適切な方法は、接合が、結合性領域の結合能、志賀毒素エフェクターポリペプチドの構成要素の細胞への内在化、及び/又は、該当する場合、本明細書で記載されるアッセイを含む、適切なアッセイにより測定される、所望の志賀毒素のエフェクター機能(複数可)を、実質的に損なわない限りにおいて、このような連結を達するための、現在、当技術分野で公知である、任意の方法による方法でありうる。
【0293】
結合性タンパク質の構成要素、例えば、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び/又は免疫グロブリン型CD38結合性領域は、さらなる構成要素、例えば、さらなる外因性素材を連結するために適切な接合部分をもたらすように改変されうる(国際公開第2018/106895号パンフレットを参照されたい)。
【0294】
一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、リンカー、及びCD38結合性ドメインを含むか、又はこれらからなる。リンカーは、タンパク質性リンカーであってよく、約1~約50アミノ酸残基を含みうる。一部の実施形態では、タンパク質性リンカーは、1~50アミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号70~75のいずれか1つの配列、又はそれらと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含むか、又はこれらからなる。一部の実施形態では、リンカーは、配列場号70の配列を含むか、又は配列番号70の配列からなる。
D.本発明のCD38結合性タンパク質の目的では、具体的な順序又は配向性は、具体的に言及されない限りにおいて、構成要素:志賀毒素エフェクターポリペプチド(複数可)、結合性領域(複数可)、及び互いに又は全結合性タンパク質との関係で代わりうる、任意であってもよいリンカー(複数可)について固定されない(例えば、
図1を参照されたい)。本発明の結合性タンパク質の構成要素は、結合性領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドの所望の活性(複数可)が、消失しないという条件で、いかなる順序でも配置されうる。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、そのN末端からC末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-第1のリンカー-VH-第2のリンカー-VLを含む。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質、そのN末端からC末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-第1のリンカー-VL-第2のリンカー-VHを含む。CD38結合性融合タンパク質の有用な実施形態。
【0295】
当業者により理解される通り、本発明のCD38結合性融合タンパク質は、一般に、
図1に示されるように、様々なフォーマットでありうる。
【0296】
一部の実施形態では、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3に示されるなど、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38ターゲティング部分(本明細書では、CD38結合性領域又はドメインとも称される)のいずれか1つに、リンカーを使用して連結されうる。
【0297】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-D1-1(配列番号47)である。
【0298】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-D1(配列番号45)である。
【0299】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-D1-2(配列番号47)である。
【0300】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-D1-3(配列番号48)である。
【0301】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-D1-4(配列番号49)である。
【0302】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント1(配列番号55)である。
【0303】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント2(配列番号56)である。
【0304】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント3(配列番号57)である。
【0305】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント4(配列番号58)である。
【0306】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント5(配列番号59)である。
【0307】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント6(配列番号60)である。
【0308】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント7(配列番号61)である。
【0309】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント8(配列番号62)である。
【0310】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント9(配列番号63)である。
【0311】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント10(配列番号64)である。
【0312】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント11(配列番号65)である。
【0313】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント12(配列番号66)である。
【0314】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント13(配列番号67)である。
【0315】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント14(配列番号68)である。
【0316】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素は、
図13に示されるように、CD38TM1、CD38TM2、CD38TM3、及びCD38TM4から選択される、CD38結合性ドメインへと連結されたSLT-1A-comboバリアント15(配列番号69)である。
【0317】
以下の実施形態は、CD38を発現する細胞を含む、細胞表面において、CD38と物理的にカップリングされた細胞をターゲティングする、CD38結合性融合タンパク質を含む、例示的なCD38結合性タンパク質のある特定の構造について、より詳細に記載する。
【0318】
当業者により理解される通り、本発明のCD38結合性融合タンパク質は、最小限、必要に応じて、適切なリンカーと共に、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及びCD38結合性ドメインを含む。CD38結合性ドメインは、一般に、正確に会合した場合、ヒトCD38に結合するVH及びVLを含む。
【0319】
本発明の特に有用なCD38結合性タンパク質は、CD38結合性タンパク質#1(配列番号76)、CD38結合性タンパク質#2(配列番号77)、CD38結合性タンパク質#3(配列番号78)、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)、CD38結合性タンパク質#5(配列番号80)、CD38結合性タンパク質#6(配列番号81)、及びCD38結合性タンパク質#7(配列番号82)を含むがこれらに限定されない。
【0320】
特に有用な実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質は、N末端からC末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-リンカー-VH-リンカー-VLを含む。この実施形態では、志賀毒素ポリペプチドは、配列番号46を有し、VH及びVLは、対、配列番号101と105;配列番号101と125;配列番号109と113及び配列番号117と121とから選択される。
【0321】
特に有用な実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質は、N末端からC末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド-リンカー-VH-リンカー-VLを含む。この実施形態では、志賀毒素ポリペプチドは、配列番号46を有し、VH及びVLは、対、配列番号101と105;配列番号101と125;配列番号109と113及び配列番号117と121とから選択される。
【0322】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、N末端からC末端まで、又はC末端からN末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及びCD38結合性ドメインを含む。CD38結合性融合タンパク質は、志賀毒素AサブユニットエフェクターポリペプチドとCD38結合性ドメインとを連結する第1のリンカーをさらに含みうる。
【0323】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、N末端からC末端まで、又はC末端からN末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0324】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、N末端からC末端まで、又はC末端からN末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、第1のリンカー、VH、及びVLを含む。
【0325】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、N末端からC末端まで、又はC末端からN末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、第1のリンカー、VH、第2のリンカー、及びVLを含む。
【0326】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、N末端からC末端まで、又はC末端からN末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、VL、及びVHを含む。
【0327】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、N末端からC末端まで、又はC末端からN末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、第1のリンカー、VL、及びVHを含む。
【0328】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、N末端からC末端まで、又はC末端からN末端まで、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、第1のリンカー、VL、第2のリンカー、及びVHを含む。
【0329】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、(i)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド;(ii)配列番号34の配列を含むvHCDR1、配列番号35の配列を含むvHCDR2、及び配列番号36の配列を含むvHCDR3を含むVH;並びに(iii)配列番号31の配列を含むvLCDR1、配列番号32の配列を含むvLCDR2、及び配列番号33の配列を含むvLCDR3を含むVLを含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、(i)志賀毒素サブユニットエフェクターポリペプチドと(ii)VH又は(iii)VLとを連結する第1のリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、(ii)VHと(iii)VLとを連結する第2のリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、第1のリンカーは、配列番号70の配列を含む。一部の実施形態では、第2のリンカーは、配列番号75の配列を含む。
【0330】
一部の実施形態では、VLは、配列番号43の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号44の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号43の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含み、VHは、配列番号44の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号43の配列を含み、VLは配列番号44の配列を含む。
【0331】
一部の実施形態では、VLは、配列番号41の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号44の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号41の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含むか、又はこれからなり、VHは、配列番号44の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号41の配列を含み、VHは配列番号44の配列を含む、又はこれからなる。
【0332】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、(i)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド;(ii)配列番号22の配列を含むvHCDR1、配列番号23の配列を含むvHCDR2、及び配列番号24の配列を含むvHCDR3を含むVH;並びに(iii)配列番号19の配列を含むvLCDR1、配列番号20の配列を含むvLCDR2、及び配列番号21の配列を含むvLCDR3を含むVLを含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号37の配列を含むか、又はこれからなり、VHは、配列番号38の配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号37の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含み、VHは、配列番号37の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、(i)志賀毒素サブユニットエフェクターポリペプチドと(ii)VH又は(iii)VLとを連結する、第1のリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、(ii)VHと(iii)VLとを連結する第2のリンカーをさらに含む。
【0333】
一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、(i)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド;(ii)配列番号28の配列を含むvHCDR1、配列番号29の配列を含むvHCDR2、及び配列番号30の配列を含むvHCDR3を含むVH;並びに(iii)配列番号25の配列を含むvLCDR1、配列番号26の配列を含むvLCDR2、及び配列番号27の配列を含むvLCDR3を含むVLを含む、(i)CD38結合性タンパク質を含む。一部の実施形態では、VLは配列番号39の配列を含み、VHは配列番号40の配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号39の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含み、VHは、配列番号40の配列、又はそれと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、(i)志賀毒素サブユニットエフェクターポリペプチドと(ii)VH又は(iii)VLとを連結する第1のリンカーをさらに含む。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、(ii)VHと(iii)VLとを連結する第2のリンカーをさらに含む。
【0334】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性融合タンパク質は、配列番号76~82及び228~232のうちのいずれか1つに示されたポリペプチドを含む。CD38結合性融合タンパク質は、アミノ末端のメチオニン残基を含んでもよい。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号79~82のうちのいずれか1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、配列番号79の配列を含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、2つの同一のポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、配列番号79と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%アミノ酸配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、2つの同一のポリペプチドを含み、各ポリペプチドは、配列番号79の配列を含む。一部の実施形態では、CD38結合性融合タンパク質は、2つの同一のポリペプチドからなり、各ポリペプチドは、配列番号79の配列からなる。CD38結合性融合タンパク質の一般的な機能
【0335】
本発明のCD38結合性タンパク質は、例えば、細胞の殺滅;細胞増殖の阻害;細胞内へのカーゴの送達;生物学的情報の収集;免疫応答の刺激、及び/又は健康状態の回復を伴う、多岐にわたる適用において有用である。一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質は、CD38をターゲティングする(すなわち、CD38ターゲティング分子である)。本発明のCD38結合性タンパク質は、例えば、CD38の発現と関連するがん及び免疫障害を含む、様々な疾患の診断又は治療のための、CD38を発現する特異的細胞型に対するインビボターゲティングを伴う適用における、例えば、細胞をターゲティングする、細胞毒性の治療分子;細胞をターゲティングする、非毒性の送達媒体;及び/又は細胞をターゲティングする診断用分子などとしての、治療用分子及び/又は診断用分子として有用である。
【0336】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質は、特定の細胞型の細胞表面と会合したCD38分子の細胞外部分に結合し、これらの細胞に侵入することが可能である。標的細胞型内に内在化されると、本発明の結合性タンパク質についての、一部の実施形態は、酵素的に活性の、細胞毒性である志賀毒素エフェクターポリペプチド断片を、標的細胞の細胞質ゾルへと経路決定し、最終的に、細胞を殺滅することが可能である。代替的に、本発明の結合性タンパク質の非毒性バリアント又は低減毒性バリアントは、さらなる外因性素材を、CD38陽性標的細胞へと送達するのに使用されうる。この系は、任意の数の、多岐にわたる志賀毒素エフェクターポリペプチドを、CD38結合性領域(複数可)に付随させ、例えば、ヒト対象など、対象へのCD38結合性タンパク質の投与を伴う適用のために脱免疫化されたエフェクター、及び特にインビボでの安定性を改善するためにプロテアーゼによる切断に対する感受性を低減したエフェクターなど、異なる機能的な特徴を有する、本発明の結合性タンパク質のバリアントを作製しうるという点で、モジュラーである。
【0337】
E.志賀毒素Aサブユニット細胞毒性によるCD38陽性細胞の死滅
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合性タンパク質の一部の実施形態は、細胞毒性である。本発明のCD38結合性タンパク質の一部の実施形態は、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素の存在のみにより細胞毒性である。志賀毒素のAサブユニットファミリーのメンバーは、各々、細胞の細胞質ゾルに入ると、真核細胞を殺滅することが可能な、酵素的に活性のポリペプチド領域を含む。志賀毒素ファミリーのメンバーは、真核細胞を殺滅するように適応させられているため、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドの一部の実施形態を含むCD38結合性タンパク質など、志賀毒素に由来する分子についての、強力な細胞殺滅活性を呈しうる。
【0338】
本発明の結合性タンパク質についての、一部の実施形態に関して、結合性タンパク質の結合性領域によって結合されたCD38と物理的にカップリングされた細胞(例えば、CD38陽性細胞)に接触すると、結合性タンパク質は、細胞の殺滅を引き起こすことが可能である。一部の実施形態に関して、結合性タンパク質のCD
50値は、5nM未満、2.5nM未満、1nM未満、0.5nM未満、又は0.25nM未満であり、これは、非ターゲティング型の、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号1~18)より、はるかに強力である。例えば、配列番号76、78~81、及び228~232のうちのいずれか1つを含む、これから本質的になる、又はこれからなるCD38結合性タンパク質は、約0.1~約0.2nMのCD
50値によって特徴付けられるものなど、弱毒化されたレベルのCD38を発現する細胞を含む、CD38を発現する細胞を強力に死滅させる(実施例、下記、表7~9及び
図3を参照されたい)。
【0339】
一部の実施形態に関して、結合性タンパク質のCD
50値は、50ng/mL未満、30ng/mL未満、20ng/mL未満、15ng/mL未満、10ng/mL未満、5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.4ng/mL未満、0.3ng/mL未満、0.2ng/mL未満、0.1ng/mL未満である。例えば、配列番号76、78~81、及び228~232のうちのいずれか1つを含む、これから本質的になる、又はこれからなるCD38結合性タンパク質は、約0.05又は0.1ng/mLのCD
50値によって特徴付けられるものなど、弱毒化されたレベルのCD38を発現する細胞を含む、CD38を発現する細胞を強力に死滅させる(実施例、下記、表7~9及び
図3を参照されたい)。
【0340】
細胞の殺滅は、例えば、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織内の標的細胞、又は多細胞生物内のような、インビボ状況にある標的細胞など、標的細胞についての、様々な条件下で、本発明の分子を使用して達せられうる。
【0341】
一部の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合性タンパク質は、(1)脱免疫化された、志賀毒素エフェクターサブ領域、(2)志賀毒素A1断片に由来する領域のカルボキシ末端の近傍における、プロテアーゼによる切断に抵抗性の領域、(3)カルボキシ末端の、小胞体保持/賦活シグナルモチーフ;及び/又は(4)異種分子カーゴが、一部の実施形態では、これらの構造的修飾は、志賀毒素の細胞毒力を、例えば、野生型志賀毒素A1断片などの、野生型志賀毒素Aサブユニットポリペプチドを含む参照分子と比較して、著明に変化させない。したがって、脱免疫化されている、プロテアーゼによる切断に抵抗性である、及び/又は分子カーゴを保有する、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38結合性タンパク質は、1つ又は2つ以上の、他の多様な機能性又は特性をもたらしながら、強力な細胞毒性を維持しうる。
【0342】
結合性タンパク質構成要素は、先行技術から選び出され、又は当業者に公知の規定の方法を使用して作出されうる(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、国際出願PCT/US2017/065074、及び国際公開第2018/106895号パンフレットを参照されたい)。例えば、脱免疫化され、フーリンによる切断に抵抗性の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、及び国際公開第2016/196344号パンフレットに既に記載されている。部位特異的コンジュゲーション部位を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び志賀毒素エフェクター足場は、国際公開第2018/106895号パンフレットに既に記載されている。
【0343】
F.細胞型の間の選択的細胞毒性
本発明の一部のCD38結合性タンパク質は、非標的バイスタンダー細胞の存在下における、特異的標的細胞の、選択的殺滅において使用される。細胞をターゲティングする結合性領域(複数可)を介して、志賀毒素エフェクターポリペプチドの、特異的CD38陽性細胞への送達をターゲティングすることにより、本発明の結合性タンパク質は、非標的細胞の存在下で、選択された細胞型の、排他的殺滅又は選択的殺滅を結果としてもたらす、細胞型特異的な、制限的細胞殺滅活性を呈しうる。加えて、本発明のCD38結合性タンパク質を使用する、細胞毒性の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の、細胞ターゲティング型送達は、非標的細胞の存在下で、CD38陽性標的細胞へと、排他的に、又は選択的に制限された、細胞毒性である構成要素を送達する。
【0344】
一部の実施形態に関して、本発明の結合性タンパク質は、ある特定の濃度で、細胞毒性である。一部の実施形態では、本発明の結合性タンパク質を、細胞型の混合物へと投与すると、細胞毒性である結合性タンパク質は、結合性領域によって結合された細胞外CD38と、物理的にカップリングされた細胞を、いかなる細胞外CD38とも、物理的にカップリングされていない細胞型と比較して、選択的に殺滅することが可能である。一部の実施形態では、本発明の、細胞毒性である結合性タンパク質は、2つ又は3つ以上の異なる細胞型の混合物中の、特異的細胞型の死滅を、選択的に、又は優先的に引き起こすことが可能である。これは、細胞毒性活性を、特異的細胞型へと、標的生体分子を発現しない「バイスタンダー」細胞型に対して、3倍の細胞毒性効果など、高度の優先性でターゲティングすることを可能とする。代替的に、標的生体分子が、十分に低量で発現する、及び/又は低量で、ターゲティングされない細胞型と、物理的にカップリングする場合、結合性領域の標的生体分子の発現は、排他的に1つの細胞型への発現ではない場合がある。これは、著明量の標的生体分子を発現しないか、又は著明量の標的生体分子と物理的にカップリングされていない、「バイスタンダー」細胞型に対して、3倍の細胞毒性効果など、高度の優先性による、特異的細胞型に対する、ターゲティングされた細胞殺滅を可能とする。
【0345】
一部の実施形態では、細胞毒性である結合性タンパク質を、2つの異なる細胞型の集団へと投与すると、細胞毒性である結合性タンパク質は、そのメンバーが、細胞毒性である結合性タンパク質の結合性領域の、細胞外標的生体分子を発現しない細胞の集団に対する、細胞毒性である、同じ結合性タンパク質のCD50用量の、少なくとも3分の1の用量で、そのメンバーが、細胞毒性である結合性タンパク質の結合性領域の、細胞外標的生体分子を発現する、標的細胞の集団上において、50%細胞毒性濃度(CD50)により規定される細胞死を引き起こすことが可能である。
【0346】
一部の実施形態に関して、本発明の結合性タンパク質の、結合性領域によって結合された細胞外CD38と物理的にカップリングされた細胞型の集団に対する細胞毒性活性は、結合性領域によって結合されたいかなる細胞外CD38とも物理的にカップリングされていない細胞型の集団に対する細胞毒性活性の、少なくとも3倍である。本発明に従い、選択的細胞毒性は、(a)結合性領域によって結合された細胞外CD38と物理的にカップリングされた、特異的細胞型の細胞集団に対する細胞毒性の、(b)結合性領域によって結合されたいかなる細胞外CD38とも物理的にカップリングされていない細胞型の細胞集団に対する細胞毒性に対する比(a/b)との関係で定量されうる。一部の実施形態では、細胞毒性比は、結合性領域の標的生体分子と物理的にカップリングされていない、細胞又は細胞型の集団と比較した、結合性領域の標的生体分子と物理的にカップリングされた、細胞又は細胞型の集団について、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも250倍、少なくとも500倍、少なくとも750倍、又は少なくとも1000倍である、選択的細胞毒性を指し示す。
【0347】
この優先的細胞殺滅機能は、様々な条件下、及びエクスビボで操作された細胞型の混合物、インビトロで培養された、細胞型の混合物を伴う組織、又はインビボにおける、複数の細胞型の存在下(例えば、多細胞生物内の、インサイチュー又は天然の位置における)など、非標的バイスタンダー細胞の存在下における、ターゲティングされた細胞の、ある特定の、細胞毒性である、本発明の結合性タンパク質による殺滅を可能とする。
【0348】
G.志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びCD38結合性タンパク質の、作製、製造、及び精製
本明細書に記載される志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38結合性タンパク質は、当業者に周知の技法を使用して作製されうる。例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38結合性タンパク質は、標準的合成法により製造される場合もあり、組換え発現系の使用により製造される場合もあり、他の任意の適切な方法により製造される場合もある。したがって、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合性タンパク質は、例えば、(1)標準的な固相法又は液相法を使用して、段階的に、又は断片アセンブリーにより、結合性タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド構成要素を合成し、最終的なポリペプチド化合生成物を単離及び精製する方法;(2)本発明の結合性タンパク質のタンパク質若しくはタンパク質構成要素をコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞内で発現させ、発現産物を、宿主細胞若しくは宿主細胞培養物から回収する方法;又は(3)本発明の結合性タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチドの、無細胞のインビトロ発現法、及び発現産物を回収する方法を含む、多数の方式で合成される場合もあり、(1)、(2)、又は(3)の方法の任意の組合せを行って、タンパク質構成要素の断片を得、その後、ペプチド又はポリペプチド断片を接続して(例えば、ライゲーションして)、ポリペプチド構成要素を得、ポリペプチド構成要素を回収することにより合成される場合もある。
【0349】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質、又は本発明の結合性タンパク質のタンパク質構成要素が、固相又は液相のペプチド合成により合成されうる。本発明のポリペプチド及び結合性タンパク質は、標準的な合成法により、適切に製造されうる。したがって、ペプチドは、例えば、ペプチドを、標準的な固相法又は液相法を介して、段階的に、又は断片のアセンブリーにより合成するステップと、最終的なペプチド生成物を、単離及び精製するステップとを含む方法により合成されうる。この文脈では、国際公開第1998/011125号パンフレット、又は、とりわけ、Fields G et al., Principles and Practice of Solid-Phase Peptide Synthesis (Synthetic Peptides, Grant G, ed., Oxford University Press, U.K., 2nd ed., 2002)、及びこの中の合成例が参照されうる。
【0350】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38結合性タンパク質は、当技術分野で周知の組換え法を使用して調製(作製及び精製)されうる。一般に、コードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換されるか、又はこれをトランスフェクトされた宿主細胞を培養し、タンパク質を、細胞培養物から精製又は回収することにより、タンパク質を調製するための方法については、例えば、Sambrook J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, U.S., 1989); Dieffenbach C et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., U.S., 1995)において記載されている。任意の適切な宿主細胞は、本発明のポリペプチド及び/又は結合性タンパク質を作製するのに使用されうる。宿主細胞は、本発明のポリペプチドの発現を駆動する、1つ又は2つ以上発現ベクターを、安定的に、又は一過性にトランスフェクトされるか、これらにより形質転換されるか、これらを形質導入するか、又はこれらを感染させられる細胞でありうる。加えて、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合性タンパク質は、細胞毒性の変更、細胞増殖抑制効果の変更、及び/又は血清半減期の変更など、所望の特性を達成するために、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸の変化、又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸の欠失若しくは挿入を結果としてもたらす、本発明のポリペプチド又は結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドの修飾により作製されうる。
【0351】
本発明のポリペプチド又はCD38結合性タンパク質を作製するのに選び出されうる、多種多様な発現系が存在する。例えば、本発明の結合性タンパク質を発現させるための宿主生物は、大腸菌及び枯草菌(B. subtilis)などの原核生物、酵母及び糸状菌(出芽酵母(S. cerevisiae)、メタノール資化酵母(P. pastoris)、アワモリコウジカビ(A. awamori)、及びK.ラクティス(K. lactis)のような)、藻類(コナミドリムシ(C. reinhardtii)のような)、昆虫細胞株、哺乳動物細胞(CHO細胞のような)、植物細胞株などの真核生物、及びトランスジェニック植物(シロイヌナズナ(A. thaliana)及びベンサミアナタバコ(N. benthamiana)のような)などの真核生物を含む。
【0352】
したがって、本発明はまた、上記で列挙された方法に従い、本発明のポリペプチド、若しくは本発明の結合性タンパク質のタンパク質構成要素の一部若しくは全部をコードするポリヌクレオチド、宿主細胞へと導入されると、本発明のポリペプチド若しくは結合性タンパク質の一部若しくは全部をコードすることが可能な、少なくとも1つの、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は本発明のポリヌクレオチド若しくは発現ベクターを含む宿主細胞を使用して、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合性タンパク質を作製するための方法も提供する。
【0353】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質を作製する方法での使用のため、CD38結合性タンパク質をコードする核酸が、調製される。一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質を作製する方法は、宿主細胞を、CD38結合性タンパク質をコードする核酸と接触させるステップを含む。CD38結合性タンパク質は、CD38結合性タンパク質が発現される条件下で、宿主細胞を培養し、タンパク質を回収することよって作製されうる。多様な宿主細胞を使用して組換えタンパク質を作製するための培養条件が、当業者に公知である。例えば、一部の実施形態では、宿主細胞は、タンパク質を発現するのに十分な時間、5%CO2雰囲気を伴い、95℃で、培養培地中に維持されうる。
【0354】
宿主細胞系又は無細胞系において、組換え法を使用して、タンパク質が発現される場合、高純度であるか、又は実質的に均質である調製物を得るために、所望のタンパク質を、宿主細胞因子など、他の構成要素から分離(又は精製)することが有利である。精製は、遠心分離法、抽出法、クロマトグラフィー/分画法(例えば、ゲル濾過によるサイズ分離、イオン交換カラムによる電荷分離、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、シリカ上又はDEAEなどのカチオン交換樹脂上におけるクロマトグラフィー、等電点電気泳動、及び夾雑物を除去する、Protein A Sepharoseクロマトグラフィー)、及び沈殿法(例えば、エタノール沈殿又は硫酸アンモニウム沈殿)など、当技術分野で周知の方法により達せられうる。本発明のポリペプチド及び/又は結合性タンパク質の純度を増大させるのに、任意の数の生化学的精製法が使用されうる。一部の実施形態では、本発明のポリペプチド及び結合性タンパク質は、ホモ多量体形態(例えば、2つ又は3つ以上の本発明のポリペプチド又は結合性タンパク質を含む分子複合体)中で精製されてもよい。
【0355】
複数の実施形態では、本明細書で記載される、CD38結合性タンパク質を作製する方法であって、CD38結合性タンパク質が発現される条件下で、本明細書で記載される宿主細胞を培養すし、タンパク質を回収するステップを含む方法が、本明細書に提示される。一部の実施形態では、方法は、CD38結合性タンパク質をプロテインLと接触させるステップを含む。一部の実施形態では、プロテインLは、ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus)のプロテインLである。一部の実施形態では、プロテインLは組換えにより作製される。一部の実施形態では、プロテインLの断片又はバリアントが使用されてよく、断片又はバリアントは、プロテインLの、カッパ軽鎖可変ドメイン(例えば、ヒトVκI、VκIII及びVκIV亜型)への結合を維持する。一部の実施形態では、プロテインLは、樹脂にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、プロテインLは、マトリックスである。抗体断片のプロテインL精製の例は、Royce, BioProcess International 2015; 13:6に記載される。
【0356】
下記の実施例は、例示的な、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38結合性タンパク質を作製するための方法の非限定例のほか、作製法についての、具体的であるが、非限定的な態様についての記載である。
【0357】
CD38結合性融合タンパク質を含む、医薬組成物及び/又は診断組成物の作製又は製造
本発明のCD38結合性タンパク質を含む組成物が本明細書に提示される。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、二量体(例えば、ホモ二量体)の形態でありうる。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、CD38結合性タンパク質の集団のメンバーであり、集団のCD38結合性タンパク質の少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%が、ホモ二量体の形態である。一部の実施形態では、集団のCD38結合性タンパク質の少なくとも約90%がホモ二量体の形態である。一部の実施形態では、集団のCD38結合性タンパク質の少なくとも約90%がホモ二量体の形態である。一部の実施形態では、集団のCD38結合性タンパク質の少なくとも約95%がホモ二量体の形態である。
【0358】
一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、二量体(例えば、ホモ二量体)の形態である。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、CD38結合性タンパク質の集団のメンバーであり、集団は、単量体及び二量体より高次の多量体(例えば、三量体、四量体など)を実質的に含まない。一部の実施形態では、単量体及び二量体より高次の多量体(例えば、三量体、四量体など)を「実質的に含まない」集団は、約2:1~約9:1以下の、単量体又は二量体よりも高次の多量体に対する二量体の比を有する。一部の実施形態では、比は、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、又は約9:1である。
【0359】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38結合性タンパク質のうちのいずれかの、薬学的に許容される塩又は溶媒和物は、本発明の範囲内にある。
【0360】
本発明の文脈では、「溶媒和物」という用語は、溶質(この場合、本発明に従うタンパク質性化合物又は薬学的に許容されるその塩)と溶媒との間で形成される、化学量論比が規定された複合体を指す。問題の溶媒が水である場合、このような溶媒和物は、通常、水和物と称される。
【0361】
本発明のポリペプチド及びタンパク質、又はこれらの塩は、保管又は投与のために調製された医薬組成物であって、典型的に、薬学的に許容される担体中に、有効量の、本発明の分子、又はその塩を含む医薬組成物として製剤化されうる。「薬学的に許容される担体」という用語は、標準的医薬担体のうちのいずれかを含む。薬学技術分野では、治療用分子への使用のための薬学的に許容される担体が周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. (A. Gennaro, ed., 1985)において記載されている。本明細書で使用される、「薬学的に許容される担体」は、任意で全ての、生理学的に許容される、すなわち、適合性である、溶媒、分散媒、コーティング、抗微生物剤、等張剤、及び吸収遅延剤などを含む。
【0362】
VIII.ポリヌクレオチド、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明のポリペプチド及び結合性タンパク質を超えて、本発明のポリペプチド構成要素及び結合性タンパク質、又はこれらの機能的な部分をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内に包含される。「ポリヌクレオチド」という用語は、それらの各々が、デオキシリボ核酸(DNA;deoxyribonucleic acid)のポリマー、リボ核酸(RNA;ribonucleic acid)のポリマー、ヌクレオチドアナログを使用して作出される、これらのDNA又はRNAのアナログ、並びにこれらの派生物、断片、及びホモログのうちの、1つ又は2つ以上を含む、「核酸」という用語と同等である。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり、三本鎖の場合もある。このようなポリヌクレオチドは、例えば、RNAコドンの第3の位置において許容されることが公知であるが、異なるRNAコドンと同じアミノ酸をコードする揺らぎを考慮に入れると、例示的なタンパク質をコードすることが可能な、全てのポリヌクレオチドを含むことが、具体的に開示される(Stothard P, Biotechniques 28: 1102-4 (2000)を参照されたい)。
【0363】
一態様では、本発明は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは結合性タンパク質、又はこれらの断片若しくは派生物をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、例えば、本発明のポリペプチド又は結合性タンパク質のアミノ酸配列のうちの1つを含むポリペプチドと、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は99%以上同一であるポリペプチドをコードする核酸配列を含みうる。本発明はまた、厳密な条件下で、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素及び/若しくは結合性タンパク質、又はこれらの断片若しくは派生物、或いは任意のこのような配列のアンチセンス又は相補体をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも含む。
【0364】
本発明の分子(例えば、CD38結合性タンパク質)の派生物又はアナログは、とりわけ、同じサイズのポリヌクレオチド(又はポリペプチド)配列にわたり、又はアライメントが、当技術分野で公知の、コンピュータ相同性プログラムによりなされる、アライメントされた配列と比較した場合に、ポリヌクレオチド(又は本発明の結合性タンパク質)に対して、例えば、少なくとも約45%、約50%、約70%、約80%、約95%、約98%、なお又は約99%の同一性(例えば、80~99%の同一性)により、実質的に相同な領域を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子を含む。例示的なプログラムは、Smith T, Waterman M, Adv. Appl. Math 2: 482-9 (1981)によるアルゴリズムを使用する、デフォルト設定を使用する、GAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for UNIX、Genetics Computer Group社, University Research Park、Madison、WI、U.S.)である。また、本発明の結合性タンパク質をコードする配列の相補体と、厳密な条件(例えば、Ausubel F et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, NY, U.S, 1993)を参照されたい)、及びこれを下回る条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドも含まれる。当業者には、厳密な条件が公知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, NY, U.S, Ch. Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989))において見出すことができる。
【0365】
本発明は、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターをさらに提供する。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド構成要素及び/又は結合性タンパク質をコードすることが可能なポリヌクレオチドは、発現ベクターを作製するための、当技術分野で周知の素材及び方法を使用して、細菌プラスミド、ウイルスベクター、及びファージベクターを含む、公知のベクターへと挿入されうる。このような発現ベクターは、任意の、選ばれた宿主細胞又は無細胞発現系(例えば、pTxb1及びpIVEX2.3)内で、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合性タンパク質の作製を支援するのに必要なポリヌクレオチドを含むであろう。当業者には、特異的種類の宿主細胞又は無細胞発現系を伴う使用のための発現ベクターを含む特異的ポリヌクレオチドが周知であり、規定の実験を使用して決定されうる、及び/又は購入されうる。
【0366】
本明細書で使用される、「発現ベクター」という用語は、1つ又は2つ以上の発現単位を含む、直鎖状又は環状のポリヌクレオチドを指す。「発現単位」という用語は、所望のポリペプチドをコードし、宿主細胞内で、核酸セグメントの発現をもたらすことが可能な、ポリヌクレオチドセグメントを表す。発現単位は、典型的に、全てが、作動可能に構成された、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターを含む。発現ベクターは、1つ又は2つ以上の発現単位を含有する。したがって、本発明の文脈では、単一のポリペプチド鎖を含む、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は結合性タンパク質をコードする発現ベクターが、単一のポリペプチド鎖のための、少なくとも1つの発現単位を含むのに対し、例えば、2つ又は3つ以上ポリペプチド鎖(例えば、1つの鎖が、VLドメインを含み、第2の鎖が、毒素エフェクターポリペプチドへと連結された、VHドメインを含む)を含むタンパク質は、タンパク質の2つのポリペプチド鎖の各々について1つずつの、少なくとも2つの発現単位を含む。本発明の多重鎖結合性タンパク質を発現させるために、各ポリペプチド鎖の発現単位はまた、異なる発現ベクター上に、個別に含有される場合もある(例えば、発現は、各ポリペプチド鎖のための発現ベクターが導入された、単一の宿主細胞により達成されうる)。
【0367】
当技術分野では、ポリペプチド及びタンパク質の、一過性発現又は安定的発現を方向付けることが可能な発現ベクターが周知である。発現ベクターは、一般に、それらの各々が、当技術分野で周知である、以下:異種シグナル配列又は異種シグナルペプチド、複製起点、1つ又は2つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの、1つ又は2つ以上を含むがこれらに限定されない。当技術分野では、利用されうる、任意の調節的制御配列、組込み配列、及び有用なマーカーが公知である。
【0368】
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターの複製又は発現を支援しうる細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌など、原核細胞の場合もあり、真核細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、両生類細胞、鳥類細胞、又は哺乳動物細胞)の場合もある。本発明のポリヌクレオチドを含むか、又は本発明のポリペプチド及び/若しくは結合性タンパク質を産生することが可能な、宿主細胞株の作出及び単離は、当技術分野で公知の、標準的技法を使用して達せられうる。
【0369】
本発明の範囲内の、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素エフェクタータンパク質は、それを、宿主細胞による、より最適の発現など、所望の特性を達成するのに、より適切としうる、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を変化させるか、又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を欠失させるか、若しくは挿入することを介して、結合性タンパク質のポリペプチド構成要素及び/又はタンパク質性構成要素をコードするポリヌクレオチドを修飾することにより作製される、本明細書で記載されるポリペプチド及び分子の、バリアント又は派生物でありうる。
【0370】
IX.固体基質上に固定化された分子
本発明の一部の実施形態は、固体基質上に固定化された、本発明の分子(例えば、本発明の結合性タンパク質、融合タンパク質、又はポリヌクレオチド)、又はこれらの任意のエフェクター断片を含む。本明細書で開示される固体基質は、当技術分野で公知の、マイクロビーズ、ナノ粒子、ポリマー、マトリックス材料、マイクロアレイ、マイクロ滴定プレート、又は任意の固体表面(例えば、米国特許第7,771,955号明細書を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。これらの実施形態に従い、本発明の分子は、当業者に公知の技法(例えば、Jung Y et al., Analyst 133: 697-701 (2008)を参照されたい)を使用して、例えば、ビーズ、粒子、又はプレートなどの固体基質へと、共有結合的に、又は非共有結合的に連結されうる。固定化された、本発明の分子は、当技術分野で公知の技法を使用する、スクリーニング適用のために使用されうる(例えば、Bradbury A et al., Nat Biotechnol 29: 245-54 (2011); Sutton C, Br J Pharmacol 166: 457-75 (2012); Diamante L et al., Protein Eng Des Sel 26: 713-24 (2013); Houlihan G et al., J Immunol Methods 405: 47-56 (2014)を参照されたい)。
【0371】
本発明のCD38結合性融合タンパク質が固定化されうる固体基質の非限定例は、マイクロビーズ、ナノ粒子、ポリマー、ナノポリマー、ナノチューブ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、ストレプトアビジンコーティングビーズ、逆相磁気ビーズ、カルボキシ終端ビーズ、ヒドラジン終端ビーズ、シリカ(ナトリウムシリカ)ビーズ及びイミノ二酢酸(IDA;iminodiacetic acid)修飾ビーズ、アルデヒド修飾ビーズ、エポキシ活性化ビーズ、ジアミノジプロピルアミン(DADPA;diaminodipropylamine)修飾ビーズ(一級アミン表面基を伴うビーズ)、生体分解性ポリマービーズ、ポリスチレン基質、アミノポリスチレン粒子、カルボキシルポリスチレン粒子、エポキシポリスチレン粒子、ジメチルアミノポリスチレン粒子、ヒドロキシポリスチレン粒子、着色粒子、フローサイトメトリー粒子、スルホン酸ポリスチレン粒子、ニトロセルロース表面、強化ニトロセルロース膜、ナイロン膜、ガラス表面、活性化ガラス表面、活性化石英表面、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF;polyvinylidene difluoride)膜、ポリアクリルアミドベースの基質、ポリ(塩化ビニル)基質、ポリ(メタクリル酸メチル)基質、ポリ(ジメチルシロキサン)基質、及び共有結合的連結を形成することが可能な、光反応性分子種(ニトレンラジカル、カルベンラジカル、及びケチルラジカルなど)を含有する、光ポリマーを含む。本発明のCD38結合性融合タンパク質が固定化されうる固体基質の、他の例は、一般に、例えば、細胞表面、ファージ、及びウイルス粒子などの分子ディスプレイシステムにおいて使用される。
【0372】
X.送達デバイス及びキット
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象への送達のための、医薬組成物又は診断用組成物など、1つ又は2つ以上の、本発明の、物の組成物を含むデバイスに関する。したがって、1つ又は2つ以上の、本発明の組成物を含む送達デバイスは、静脈内注射、皮下注射、筋内注射、若しくは腹腔内注射;又は当業者により認知される他の適切な手段により、対象に本発明の物の組成物を投与するのに使用されうる。
【0373】
本発明の範囲内にはまた、本発明の、少なくとも1つの、物の組成物を含むキットもあり、パッケージング及び使用説明書があってもよい。キットは、薬物投与及び/又は診断情報の収集に有用でありうる。本発明のキットは、少なくとも1つのさらなる試薬(例えば、標準物質、マーカーなど)を含んでもよい。キットは、典型的に、キットの内容物の、対象となる使用を指し示す表示を含む。キットは、試料中又は対象において、細胞型(例えば、腫瘍細胞)を検出するか、又は対象が、本発明の化合物、組成物、若しくは、例えば、本明細書で記載される方法など、関連する方法を使用する治療戦略に応答する群に属するのかどうかを診断するための試薬及び他のツールをさらに含みうる。
【0374】
XI.CD38結合性タンパク質及び/又はその医薬組成物及び/又は診断用組成物を使用するための方法
一般に、ある特定の造血系がん、例えば、多発性骨髄腫など、CD38の過剰発現と関連する疾患又は状態、並びにCD38陽性細胞の増殖制御の喪失と関連する他の状態の、予防及び/又は治療において使用されうる、薬理学的な活性薬剤のほか、これを含む組成物を提供することが、本発明の目的である。したがって、本発明は、本発明のポリペプチド、CD38結合性タンパク質、及び医薬組成物を、CD38発現細胞の、ターゲティングされた殺滅、このようなCD38のターゲティングされた細胞への、さらなる外因性素材の送達、診断情報を収集するための、ターゲティングされた細胞の内部の標識付け、に使用する方法を提供する。
【0375】
特に、現在、当技術分野で公知の薬剤、組成物、及び/又は方法と比較して、ある特定の利点を有する、このような薬理学的活性薬剤、組成物、及び/又は方法を提供することが、本発明の目的である。したがって、本発明は、指定されたタンパク質配列を伴う、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び結合性タンパク質、並びにそれらの医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、本明細書で記載されるアミノ酸配列のいずれも、以下の方法、又は例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願第20150259428号明細書、国際公開第2016/196344号パンフレット、国際公開第2017/019623号パンフレット、国際公開第2018/106895号パンフレット、及び国際公開第2018/140427号パンフレットにおいて記載されている、多様な方法など、当業者に公知の、結合性タンパク質を使用するための任意の方法において使用される、結合性タンパク質の構成要素として、具体的に利用されうる。
【0376】
本発明は、CD38陽性細胞又はCD38陽性細胞の集団の増殖を阻害する方法であって、インビトロ、エクスビボ、又はインビボにおいて、細胞又は集団を、細胞毒性の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むCD38結合性タンパク質、又は本発明のCD38細胞結合性タンパク質を含む医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。本発明は、CD38陽性細胞を殺滅する方法であって、細胞を、インビトロ、エクスビボ、又はインビボにおいて、細胞を、細胞毒性の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むCD38結合性タンパク質、又は本発明のCD38細胞結合性タンパク質を含む医薬組成物と接触させるステップを含む方法も提供する。本発明の志賀CD38結合性タンパク質及び医薬組成物は、1つ又は2つ以上の細胞を、特許請求される、物の組成物のうちの1つと接触させて、CD38を発現する細胞型を殺滅するのに使用されうる。一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質又は医薬組成物は、異なる細胞型の混合物中の、CD38を過剰発現する細胞型を殺滅するのに使用されうる。一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質又は医薬組成物は、異なる細胞型の混合物中の、ミエローマ細胞など、CD38陽性の造血系がん細胞を殺滅するのに使用されうる。当業者は、当技術分野で周知の様々な方法の1つ又は2つ以上を使用して、CD38結合性タンパク質の治療濃度又は投与量を決定しうる。
【0377】
一部の実施形態では、本発明の、ある特定のCD38結合性タンパク質及び医薬組成物は、インビトロにおいて、そのような治療を必要とする、ヒト対象など、対象のエクスビボ又はインビボにおいて、細胞の集団へと投与されると、強力な細胞殺滅活性を示しうる。CD38を発現する特異的細胞型に対する、高アフィニティーの結合性領域を使用して、酵素的に活性の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの送達をターゲティングすることにより、細胞殺滅活性は、生物内の、CD38を発現する細胞を、特異的かつ選択的に殺滅することに制限されうる。
【0378】
本発明は、それを必要とする対象における、CD38陽性血液がん細胞を殺滅する方法であって、対象に、少なくとも1つの、本発明のCD38結合性タンパク質、又はその医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、対象は、抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ)など、CD38ベースの治療をかつて受けていない。一部の実施形態では、対象は、免疫応答性である。一部の実施形態では、対象は、免疫不全状態である。一部の実施形態では、対象は、自己幹細胞移植をかつて受けていない。
【0379】
一部の実施形態では、対象は、CTM#4の投与の前に、抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ)など、1又は2以上のCD38ベースの治療をかつて受けた。一部の実施形態では、方法は、CTM#4に加えて、抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ)など、CD38ベースの治療を投与するステップをさらに含む。
【0380】
一部の実施形態では、対象は、多発性骨髄腫を有し、CD38結合性タンパク質は、対象に投与される最初の治療である。一部の実施形態では、対象は、多発性骨髄腫を有し、CD38結合性タンパク質は、別の治療と逐次的に、又は同時に投与される。
【0381】
一部の実施形態では、本発明のCD38結合性タンパク質又はその医薬組成物は、がん細胞と物理的にカップリングされて見出される細胞外CD38をターゲティングすることにより、対象におけるがん細胞を殺滅するのに使用されうる。「がん細胞」又は「がん性細胞」という用語は、異常に加速化された形で、及び/又は調節不能な形で、増殖及び分裂する、多様な新生物性細胞を指すが、当業者には明らかであろう。本発明の方法及び組成物から利益を得うる、CD38陽性造血系がん(悪性又は非悪性)は、当業者に明らかであろう。新生物性細胞は、以下のうちの1つ又は2つ以上:調節不能の増殖、分化の欠如、局所的組織浸潤、血管新生、及び転移と関連することが多い。
【0382】
CD38陽性血液細胞、例えば、対象から除去された、単離した細胞集団からの、T細胞及び/又はB細胞の、エクスビボでの枯渇のため、本発明のCD38結合性タンパク質、又はその医薬組成物を利用することは、本発明の範囲内である。
【0383】
本発明の組成物の「有効用量」の投与は、疾患症状の重症度の低下、無疾患症状時間の頻度及び持続時間の増大、又は疾患の罹患に起因する、機能障害若しくは身体障害の防止を結果としてもたらしうる。本発明の組成物の有効量は、投与経路、治療される生物の種類、及び検討下にある、具体的対象の身体特徴に依存するであろう。医療技術分野の当業者には、これらの因子、及びこの量の決定との、それらの関係が周知である。この量及び投与法は、最適の有効性を達成するように微調整される場合があり、体重、食餌、併用医薬、及び医療技術分野の当業者に周知である、他の因子のような因子に依存しうる。ヒトにおける使用に最も適切な、投与量のサイズ及び投与レジメンは、本発明により得られる結果により導かれる場合があり、適正にデザインされた臨床試験により確認されうる。有効な投与量及び治療プロトコールは、実験動物において、低用量で始め、次いで、効果をモニタリングしながら、投与量を増大させ、また、投与レジメンも、体系的に変動させる、従来の手段により決定されうる。所与の対象に最適の投与量を決定する場合、臨床医により、多数の因子が検討されうる。投与量は、医療ケア分野の当業者により、特定の患者のための治療利益を最大化するのに要求される通りに、選択及び再調整されうる。このような検討事項は、当業者に公知である。
【0384】
一部の実施形態では、本発明は、血液がんを治療する方法であって、CD38結合性タンパク質又はこれを含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、血液がんを治療する方法であって、有効量のCD38結合性タンパク質又はこれを含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。血液がんは、例えば、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL;Non-Hodgkin's lymphoma)、バーキットリンパ腫(BL;Burkitt's lymphoma)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL;B chronic lymphocytic leukemia)、B細胞及びT細胞急性リンパ球性白血病(ALL;B and T acute lymphocytic leukemia)、T細胞リンパ腫(TCL;T-cell lymphoma)、急性骨髄性白血病(AML;acute myeloid leukemia)、有毛細胞白血病(HCL;hairy cell leukemia)、ホジキンリンパ腫(HL;Hodgkin's Lymphoma)、慢性骨髄性白血病(CML;chronic myeloid leukemia)でありうる。一部の実施形態では、血液がんは、多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、骨髄腫は、再発され、又は難治性である。
【0385】
一部の実施形態では、本発明は、多発性骨髄腫と関連する状態を治療する方法であって、CD38結合性タンパク質又はこれを含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、多発性骨髄腫に関連する状態を治療する方法であって、有効量のCD38結合性タンパク質又はこれを含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0386】
一部の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、CD38結合性タンパク質又はこれを含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、黒色腫を治療する方法であって、有効量のCD38結合性タンパク質又はこれを含む組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0387】
一部の実施形態では、本方法は、自己幹細胞を、対象に移植するステップを含まない。
【0388】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知である、様々な方法のうちの、1つ又は2つ以上を使用して、1つ又は2つ以上の適切な投与経路を介して投与されうる。当業者により理解される通り、投与経路及び/又は投与方式は、所望される結果に応じて変動するであろう。許容可能な投与経路とは、典型的に、対象となる作用部位における注射、又はこれと連絡する注射と関連する非経口投与(例えば静脈内投与)によるなど、対象となる治療又は診断使用と併せて、臨床医によって検討されうる、当技術分野で公知の任意の投与経路を指しうる。
【0389】
本発明の医薬組成物は、典型的に、同じ対象に、複数の機会において投与されるであろう。単回投与間の間隔は、対象における、血液レベル又は他のマーカーの調節に基づき、変動しうる、又は規則的若しくは不規則なサイクルでありうる。
【0390】
一部の実施形態では、本発明は、ヒト対象など、哺乳動物対象において、CD38の過剰発現と関連する血液細胞がんを治療するための方法であって、本発明の有効量の細胞毒性CD38結合性タンパク質又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、血液細胞がんは、多発性骨髄腫(MM;multiple myeloma)である。
【0391】
H.CD38結合性融合タンパク質の製剤
本発明は、以下にさらに詳細に記載されるCD38の過剰発現と関連するがん、及び/又は状態、疾患、若しくは症状(例えば、多発性骨髄腫など、CD38陽性細胞の造血系がんを含む血液がん)の治療又は予防のための、医薬組成物中での使用のためのCD38結合性タンパク質を提供する。本発明は、本発明のCD38結合性タンパク質、又は本発明に従う、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、少なくとも1つの、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は媒体と併せて含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の結合性タンパク質の、ホモ二量体形態を含みうる。このような、各疾患、各状態、各障害、又は各症状は、本発明に従う医薬組成物の使用に関する、別個の実施形態であることが想定される。本発明は、下記でより詳細に記載される、本発明に従う治療の、少なくとも1つの方法における使用のための医薬組成物も提供する。
【0392】
本明細書で使用される、「対象」という用語は、任意の生物、一般に、ヒト及び動物など、哺乳動物対象を指す。「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用される。一部の実施形態では、対象は、霊長動物(例えば、ヒト又は非ヒト霊長動物)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、愛玩動物(例えば、ネコ、イヌなど)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラットなど)の哺乳動物でありうる。一部の実施形態では、対象は、CD38細胞の過剰発現と関連する少なくとも1つの状態の症状、徴候(sign及び/又はindication)を提示しうる。
【0393】
本明細書で使用される、「~を治療する」、「~を治療すること」、又は「治療」という用語、及びこれらの文法的変化形は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一部の実施形態では、これらの用語は、有益であるか、又は所望の臨床結果を得る手法を指しうる。用語は、状態、障害、若しくは疾患の発生若しくは発症速度を緩徐化すること、これと関連する症状を低減若しくは緩和すること、状態の完全な退縮若しくは部分的な退縮をもたらすこと、又は上記のいずれかによる、何らかの組合せを指す場合がある。本発明の目的では、有益であるか、又は所望の臨床結果は、検出可能であれ、検出不能であれ、症状の低減又は緩和、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(例えば、非増悪)、疾患の進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善又は抑制、及び寛解(部分寛解であれ、完全寛解であれ)を含むが、これらに限定されない。「~を治療する」、「~を治療すること」、又は「治療」はまた、治療を施されない場合に予測される生存時間と比べた、生存の延長も意味しうる。したがって、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)は、既に、問題の疾患又は障害に罹患している対象でありうる。「~を治療する」、「~を治療すること」、又は「治療」という用語は、病理学的状態又は症状の重症度の増大の、治療の非存在と比べた阻害又は軽減を含むが、対象とする疾患又は状態の、完全な根絶を含意することは、必ずしも意図されない。
【0394】
本明細書で使用される、「~を予防する」、「~を予防すること」、「予防」という用語、及びこれらの文法的変化形は、状態又は疾患の発症を予防するか、又はこれらの病理を変化させる手法を指す。したがって、「予防」とは、予防的(prophylactic又はpreventive)手段を指す場合がある。本発明の目的では、有益であるか、又は所望の臨床結果は、検出可能であれ、検出不能であれ、疾患の症状、進行、又は発生の予防又は緩徐化を含むがこれらに限定されない。したがって、予防を必要とする対象(例えば、ヒト)は、未だ、問題の疾患又は障害に罹患していない対象でありうる。「予防」という用語は、疾患の発生の、治療の非存在と比べた緩徐化を含むが、対象とする疾患、障害、又は状態の、恒久的な予防を含意することは、必ずしも意図されない。したがって、ある特定の文脈における、状態「を予防すること」又は状態の「予防」とは、状態を発症する危険性を低減するか、又は状態と関連する症状の発症を予防するか、若しくは遅延させることを指しうる。
【0395】
本明細書で使用される、「有効量」とは、本明細書で開示される、疾患、障害、又は状態を、治療及び/又は予防するのに有効な量である。一部の実施形態では、有効量は、標的状態を、予防若しくは治療すること、又は状態と関連する症状を、有益に緩和することなど、対象において、少なくとも1つの、所望の治療効果をもたらす、組成物(例えば、治療用組成物、治療用化合物、又は治療剤)の量又は用量である。最も所望される有効量とは、それを必要とする、所与の対象のために、当業者により選択される、特定の治療の、所望の有効性をもたらす量である。この量は、治療用組成物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、及びバイオアベイラビリティーを含む)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類、病期、全般的健康状態、所与の投与量に対する応答性、及び医薬の種類を含む)、製剤中の、薬学的に許容される担体の性質、及び投与経路を含むがこれらに限定されない、当業者により理解される、様々な因子に応じて変動するであろう。臨床技術分野及び薬理学技術分野における当業者は、規定の実験を介して、すなわち、組成物の投与に対する、対象の応答をモニタリングし、これに応じて、投与量を調整することにより、有効量を決定することが可能であろう(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro A, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed., 1995)を参照されたい)。
【0396】
一部の実施形態では、本明細書で記載される、CD38結合性タンパク質は、静脈内注入を意図する。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、低温保護剤及び界面活性剤を含有する緩衝水溶液中で製剤化される。一部の実施形態では、本明細書で記載される、CD38結合性タンパク質は、低温保存剤としてスクロース、及び界面活性剤としてポリソルベート80を含有し、4.8~5.2の範囲のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝水溶液中で製剤化される。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、約1mM~約100mMの間のクエン酸ナトリウムを含む、溶液中で製剤化される。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、約1mM~約300mMの間のスクロースを含む、溶液中で製剤化される。一部の実施形態では、CD38結合性タンパク質は、約0.01%~約0.15%の間のポリソルベート80の水溶液を含む、溶液中で製剤化される。一部の実施形態では、水溶液は、約4.3~約5.5の範囲のpHを有する。一部の実施形態では、組成物は、約20mMのクエン酸ナトリウム、約200mMのスクロース、及び約0.02%のポリソルベート80の水溶液を含み、水溶液は、約4.8~約5の範囲のpHを有する。一部の実施形態では、本明細書で記載される、CD38結合性タンパク質は、200mMスクロース及び0.02%(体積/体積)ポリソルベート80を含む、pH5.0の、20mMのクエン酸ナトリウム緩衝液中で製剤化される。例示的な製剤を以下に列挙する:
【0397】
【0398】
本発明の医薬組成物の製剤は、単位剤形で提示されうると好都合であり、薬学技術分野で周知の方法のうちのいずれかにより調製されうる。このような形態では、組成物は、適切な量の活性成分を含有する、単位用量へと分割される。組成物は、任意の適切な投与経路及び投与手段のために製剤化されうる。
【0399】
一部の実施形態では、医薬組成物は:(i)(A)細胞毒性の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド;及び(B)ヒトCD38の細胞外部分を特異的に結合することができる結合性領域を含み、結合性領域が:(a)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR2;及び配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域;並びに;(b)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR1;配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR2;及び配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域を含む、CD38結合性タンパク質;及び(iii)薬学的に許容される担体、賦形剤、又は緩衝液を含む。
【0400】
本発明の診断用組成物は、本発明のCD38結合性タンパク質と、1つ又は2つ以上の検出促進剤とを含む。本発明の診断用組成物を、作製又は製造する場合、本発明の結合性タンパク質は、1つ又は2つ以上の検出促進剤へと、直接的に、又は間接的に連結されうる。多様な検出促進剤を、タンパク質又は分子のタンパク質性構成要素、とりわけ、免疫グロブリン及び免疫グロブリン由来ドメインへと組み込む、固定する、及び/又はコンジュゲートするための、当業者に公知の標準的技法が、多数存在する。
【0401】
生物の疾患又は状態に対する、診断適用及び/又は予後診断適用などのための情報収集法のために、本発明のポリペプチド又は結合性タンパク質に作動可能に連結されうる、同位体、染料、比色薬剤、造影剤、蛍光剤、生物発光剤、及び磁性剤など、当業者に公知の検出促進剤が多数存在する(例えば、Cai W et al., J Nucl Med 48: 304-10 (2007); Nayak T, Brechbiel M, Bioconjug Chem 20: 825-41 (2009); Paudyal P et al., Oncol Rep 22: 115-9 (2009); Qiao J et al., PLoS ONE 6: e18103 (2011); Sano K et al., Breast Cancer Res 14: R61 (2012)を参照されたい。)。薬剤の組込みは、スクリーン手順、アッセイ手順、診断手順、及び/又はイメージング法における、診断用組成物の存在の検出を可能とするような形の組込みである。
【0402】
同様に、一般に、医療分野で使用される、非侵襲性のインビボイメージング技法、例えば:コンピュータ断層撮影イメージング(CTスキャン;computed tomography imaging)、光学イメージング(直接的な蛍光イメージング及び生物発光イメージングを含む)、核磁気共鳴イメージング(MRI;magnetic resonance imaging)、ポジトロン放射断層撮影(PET;positron emission tomography)、単一光子放射断層撮影(SPECT;single-photon emission computed tomography)、超音波コンピュータ断層撮影イメージング、及びx線コンピュータ断層撮影イメージングなど、当業者に公知である、多数のイメージング法が存在する。
【0403】
1.CTM#4の投与
一部の実施形態では、有効量は、第1の有効量であり、本発明の方法は、第2の有効量を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第2の有効量は、後続する用量である。一部の実施形態では、CTM#4の開始用量は、体重1kg当たり約665μg、及び後続する用量は体重1kg当たり約831μgである。一部の実施形態では、開始用量は、体重1kg当たり約831μgであり、後続する用量は、体重1kg当たり約1039μgである。一部の実施形態では、開始用量は、体重1kg当たり約1039μgであり、後続する用量は、体重1kg当たり約1299μgである。一部の実施形態では、開始用量は、体重1kg当たり約1299μgであり、後続する用量は、体重1kg当たり約1624μgである。
【0404】
一部の実施形態では、50μg/kgのCTM#4 CD38結合性融合タンパク質は、毎週1回ずつ、対象に投与される。例えば、CTM#4 CD38結合性タンパク質は、1、2、3、4週間、又はそれ以上、対象に投与されうる。一部の実施形態では、CD38分子は、1、8、15、及び/又は22日目に、対象に投与される。
【0405】
一部の実施形態では、100μg/kgのCTM#4 CD38ターゲティング分子は、毎週1回ずつ、対象に投与される。例えば、CD38結合性タンパク質は、1、2、3、4週間、又はそれ以上、対象に投与されうる。一部の実施形態では、CD38分子は、1、8、15、及び/又は22日目に、対象に投与される。
【0406】
一部の実施形態では、200μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、毎週1回ずつ、対象に投与される。例えば、CD38結合性タンパク質は、1、2、3、4週間、又はそれ以上、対象に投与されうる。一部の実施形態では、CD38分子は、1、8、15、及び/又は22日目に、対象に投与される。
【0407】
一部の実施形態では、335μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、毎週1回ずつ、対象に投与される。例えば、CD38結合性タンパク質は、1、2、3、4週間、又はそれ以上、対象に投与されうる。一部の実施形態では、CD38分子は、1、8、15、及び/又は22日目に、対象に投与される。
【0408】
一部の実施形態では、500μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、毎週1回ずつ、患者に投与される。例えば、CD38結合性タンパク質は、1、2、3、4週間、又はそれ以上、対象に投与されうる。一部の実施形態では、CD38分子は、1、8、15、及び/又は22日目に、対象に投与される。
【0409】
一部の実施形態では、550μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、毎週1回ずつ、患者に投与される。例えば、CTM#4 CD38結合性タンパク質は、1、2、3、4週間、又はそれ以上、対象に投与されうる。一部の実施形態では、CD38分子は、1、8、15、及び/又は22日目に、対象に投与される。
【0410】
一部の実施形態では、665μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、毎週1回ずつ、対象に投与される。例えば、CD38結合性タンパク質は、1、2、3、4週間、又はそれ以上、対象に投与されうる。一部の実施形態では、CD38分子は、1、8、15、及び/又は22日目に、対象に投与される。
【0411】
一部の実施形態では、50μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、隔週ごとに、対象に投与される。一部の実施形態では、CTM#4 CD38分子は、1及び15日目に、対象に投与される。
【0412】
一部の実施形態では、100μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、隔週ごとに、対象に投与される。一部の実施形態では、CD38分子は、1及び15日目に、対象に投与される。
【0413】
一部の実施形態では、200μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、隔週ごとに、対象に投与される。一部の実施形態では、CTM#4 CD38分子は、1及び15日目に、対象に投与される。
【0414】
一部の実施形態では、335μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、隔週ごとに、対象に投与される。一部の実施形態では、CTM#4 CD38分子は、1及び15日目に、対象に投与される。
【0415】
一部の実施形態では、500μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、隔週ごとに、対象に投与される。一部の実施形態では、CTM#4 CD38分子は、1及び15日目に、対象に投与される。
【0416】
一部の実施形態では、550μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、隔週ごとに、対象に投与される。一部の実施形態では、CTM#4 CD38分子は、1及び15日目に、対象に投与される。
【0417】
一部の実施形態では、665μg/kgのCTM#4 CD38結合性タンパク質は、隔週ごとに、対象に投与される。一部の実施形態では、CTM#4 CD38分子は、1及び15日目に、対象に投与される。
【0418】
2.多発性骨髄腫を含む、血液がんを治療する方法。
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、対象の体重1kg当たり50μg、100μg、200μg、335μg、500μg、又は665μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0419】
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、1、8、15、及び22日目のそれぞれに、対象の体重1kg当たり50μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、8日目は1日目より1週間後であり;15日目は8日目より1週間後であり;22日目は15日目より1週間後である。
【0420】
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、1、8、15、及び22日目のそれぞれに、対象の体重1kg当たり100μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、8日目は1日目より1週間後であり;15日目は8日目より1週間後であり;22日目は15日目より1週間後である。
【0421】
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、1、8、15、及び22日目のそれぞれに、対象の体重1kg当たり200μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、8日目は1日目より1週間後であり;15日目は8日目より1週間後であり;22日目は15日目より1週間後である。
【0422】
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、1、8、15、及び22日目のそれぞれに、対象の体重1kg当たり335μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、8日目は1日目より1週間後であり;15日目は8日目より1週間後であり;22日目は15日目より1週間後である。
【0423】
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、1、8、15、及び22日目のそれぞれに、対象の体重1kg当たり500μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、8日目は1日目より1週間後であり;15日目は8日目より1週間後であり;22日目は15日目より1週間後である。
【0424】
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、1、8、15、及び22日目のそれぞれに、対象の体重1kg当たり550μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、8日目は1日目より1週間後であり;15日目は8日目より1週間後であり;22日目は15日目より1週間後である。
【0425】
一部の実施形態では、血液がん(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法は、1、8、15、及び22日目のそれぞれに、対象の体重1kg当たり665μgの量で、CTM#4 CD38結合性タンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、8日目は1日目より1週間後であり;15日目は8日目より1週間後であり;22日目は15日目より1週間後である。
【0426】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書で記載される、CTM#4細胞毒性CD38結合性タンパク質又はCTM#4細胞毒性CD38結合性融合タンパク質を含む医薬組成物を投与するステップによって、(一般に、MMの診断が確認された)ヒト対象を治療するCTM#4方法を提供する。
【0427】
一部の実施形態では、対象は、成人のヒト患者(例えば、18歳以上)である。一部の実施形態では、対象は、若い対象(例えば、18歳より若い)である。一部の実施形態では、対象は、男性である。一部の実施形態では、対象は、女性である。一部の実施形態では、対象は、多発性骨髄腫の診断が確認されている。
【0428】
一部の実施形態では、対象は、再発性又は難治性多発性骨髄腫(RRMM;Relapsed or Refractory Multiple Myeloma)を患っている。一部の実施形態では、RRMMのヒト対象は、RRMM患者に臨床的な利点を与えることが公知の利用可能な療法による治療に失敗し、これらに非忍容性であり、これらの候補ではない。
【0429】
一部の実施形態では、RRMM対象は、少なくとも3つのMM治療経験があり、少なくとも1つのプロテアーゼ阻害剤(PI;protease inhibitor)ベースの治療、少なくとも1つの免疫調節薬(IMiD;immunomodulatory drug)ベースの治療に対して難治性であるか、又は非忍容性であり、及び少なくとも1つのステロイドベースの治療に対して難治性であるか、又は非忍容性であってもよい。MM治療経験は、ダラツムマブを含むが、これに限定されない、1つ又は2つ以上の抗CD38治療を含みうる。
【0430】
一部の実施形態では、RRMM対象は、ダラツムマブを含む、少なくとも3つのMM治療経験があり、ダラツムマブ、少なくとも1つのプロテアソーム阻害剤(PI)ベースの治療、少なくとも1つの免疫調節薬(IMid)ベースの治療に対して再発性又は難治性であり、及び少なくとも1つのステロイドベースの治療に対して再発性又は難治性であってもよい。
【0431】
一部の実施形態では、RRMM対象は、少なくとも3つのMM治療経験があり、少なくとも1つのプロテアソーム阻害剤(PI)ベースの治療、少なくとも1つの免疫調節薬(IMid)ベースの治療に対して難治性であり、及び少なくとも1つのステロイドベースの治療に対して難治性であってもよい。MM治療経験は、いかなる抗CD38治療も含まない。
【0432】
一部の実施形態では、2つの治療経験のうちの1つが、PIベースの治療とIMiDベースの治療の組合せを含む場合、RRMM対象は、少なくとも2つのMM治療経験があり、対象は、少なくとも1つのPIベースの治療、少なくとも1つのIMiDベースの治療に対して難治性であり、及び少なくとも1つのステロイドベースの治療に対して難治性であってもよい。1つ又は2つ以上のMM治療経験は、ダラツムマブを含むが、これに限定されない、抗CD38治療を含みうる。
【0433】
一部の実施形態では、RRMM対象は、少なくとも2つのMM治療経験があり、これら2つの治療経験のうちの1つが、PIベースの治療とIMiDベースの治療との組合せを含み、他の治療経験はダラツムマブを含み、対象は、ダラツムマブ、少なくとも1つのPIベースの治療、少なくとも1つのIMiDベースの治療に対して再発性又は難治性であり、及び少なくとも1つのステロイドベースの治療に対して再発性又は難治性であってもよい。
【0434】
一部の実施形態では、2つの治療経験のうちの1つが、PIベースの治療とIMiDベースの治療との組合せを含む場合、RRMM対象は、少なくとも2つのMM治療経験があり、対象は、少なくとも1つのPIベースの治療、少なくとも1つのIMiDベースの治療に対して難治性であり、及び少なくとも1つのステロイドベースの治療に対して難治性であってもよい。MM治療経験は、いかなる抗CD38治療も含まない。
【0435】
一部の実施形態では、RRMM対象は、ダラツムマブを含むが、これに限定されない、抗CD38治療経験があり、対象は、本明細書で記載される、CTM#4 CD38結合性タンパク質による治療中いつでも、抗CD38治療に対して再発性又は難治性である。
【0436】
一部の実施形態では、対象は、いかなるMM治療経験もない。一部の実施形態では、対象は、いかなる抗CD38ベースの治療経験もない。
【0437】
一部の実施形態では、RRMM対象は、以下の、血清タンパク質電気泳動(SPEP;serum protein electrophoresis)における≧500mg/dL(≧5g/L)のMタンパク質の血清濃度;尿タンパク質電気泳動(UPEP;urine protein electrophoresis)における≧200mg/24hのMタンパク質の尿中濃度;及び、血清FLC比が異常であれば、血清FLCアッセイによって測定された、≧10mg/dL(1リットル当たり≧100ミリグラム[mg/L])の含まれる遊離軽鎖(FLC;free light chain)レベルを含む、基準(critia)のうちの少なくとも1つを含有する。
【0438】
一部の実施形態では、RRMM対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG;Eastern Cooperative Oncology Group)のパフォーマンスステータススコアが0又は1である。
【0439】
一部の実施形態では、RRMM対象は、スクリーニング心電図(ECG;electrocardiogram)において、男性では≦450ミリ秒(ms;millisecond)又は女性では≦470msのQTcFと規定される、正常な、Fridericia法により補正されたQT間隔(QTcF;QT interval corrected by the Fridericia method)を有する。
【0440】
一部の実施形態では、RRMM対象は、以下の、直接ビリルビンが<2.0*ULNでなければならないジルベール症候群の参加者を除き、総ビリルビン≦1.5*基準範囲上限(ULN;upper limit of the normal range);血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT;Alanine aminotransferase)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST;aspartate aminotransferase)≦2.5*ULN;modification of diet in renal disease(MDRD)式を使用して、推算糸球体濾過値(eGFR;estimated glomerular filtration rate)≧1分当たり30ミリリットル(mL/min/1.73平方メートル[m2];好中球絶対数(ANC;absolute neutrophil count)≧立方ミリメートル当たり750(/mm3)(≧1リットル当たり1.0*109[/L]);血小板数≧50,000/mm3(≧75*109/L);ヘモグロビン≧7.5g/dLを含む、臨床検査基準に適合する、又は実質的に適合する。
【0441】
一部の実施形態では、RRMM対象は、(1)多発性神経障害、臓器肥大、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症、及び皮膚変化(POEMS;polyneuropathy, organomegaly, endocrinopathy, monoclonal gammopathy and skin changes)症候群、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、孤立性形質細胞腫、アミロイドーシス、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、又は免疫グロブリンM(IgM;Immunoglobulin M)骨髄腫;(2)NCI CTCAE Grade≧3の感覚運動性ニューロパチー;(3)以下の、14日以内のPI及びIMiDを含む骨髄腫特異的療法、7日以内の骨髄腫のためのコルチコステロイド療法、14日以内の局在する骨病変のための放射線療法、30日以内の大手術、90日以内の自己幹細胞移植を含む、治療/手順のいずれかの最終用量;(4)同種幹細胞移植又は臓器移植を受けている;(5)脱毛を除く、従来の骨髄腫治療又は手順(化学療法、免疫療法、放射線療法)に対する有害反応から、NCI CTCAE V5 Grade≦1又はベースラインへと回復していない;(6)MMの中枢神経系(CNS;central nervous system)障害の臨床徴候;(7)任意の臓器の、公知の、又は疑わしい軽鎖アミロイドーシス(アミロイドーシスの他の証拠を伴わない、骨髄生検におけるアミロイドの存在が許容できる);(8)うっ血性心不全(ニューヨーク心臓協会)≧クラスII又は左室駆出率(LVEF;left ventricular ejection fraction<40%、心筋症、アクティブ虚血、又は過去6カ月以内の、狭心症又は心筋梗塞など、任意の他の管理不良の心臓状態、抗凝結薬を含む治療を必要とする、臨床的に重大な不整脈、又は、臨床的に重大な管理不良の高血圧;(9)全身治療を必要とする慢性又は活動性感染症、及び完全に治癒されていない症候性ウイルス感染症歴(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV;human immunodeficiency virus)又はB型若しくはC型肝炎ウイルス);(10)任意のモノクローナル抗体の注入又はキメラ抗原受容体(CAR;Chimeric Antigen Receptor)T細胞療法後の、全身性炎症反応症候群(SIRS;systemic inflammatory response syndrome)/サイトカイン放出症候群(CRS:cytokine release syndrome)反応歴;及び(11)プレドニゾン又は等価物の1日当たり>10ミリグラム(mg/日)の用量で、全身性コルチコステロイドの使用を必要とする慢性状態を含む、1つ又は2つ以上の状態を持たない。一部の実施形態では、対象は、重大な心膜又は心嚢液貯留歴を持たない。一部の実施形態では、対象は、カナマイシン又は他のアミノグリコシドへの過敏性又は深刻な毒性反応歴を持たない。
【0442】
一部の実施形態では、本明細書で記載される対象は、4、5、又は6週間など、3又はそれ以上の連続する週の間、週に1回又は2回、体重1キログラム当たり、1~1500μgのCD38結合性タンパク質を、静脈内に注入される。例示的な投与量は、体重1キログラム当たり、50、100、200、335、500、550、及び665μgのCD38結合性タンパク質を含む。例示的な投与レジメンは、4週間の間、1週間に1回、1、8、15、及び28日目;又は4週間の間、2週間ごとに1回、1及び15日目を含む。
【0443】
本発明の方法の一部の実施形態では、治療されるがんは、多発性骨髄腫(MM)である。
[実施例]
【0444】
以下の実施例は、(1)免疫グロブリン型のCD38結合性領域;並びに(2)脱免疫化及びフューリン切断耐性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む本発明の例示的なCD38結合性タンパク質を説明する。例示的な結合性タンパク質の各CD38結合性領域は、1又は2以上の特異的な細胞型の表面に物理的にカップリングされたヒトCD38ターゲティング分子の細胞外部分への高親和性結合を呈示する。例示的な結合性タンパク質の各志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、真核生物リボソーム阻害をもたらす触媒活性を呈示する。これらの本発明の例示的な結合性タンパク質は、標的細胞によって発現されたCD38に結合し、細胞表面と会合し、その後内在化によって標的細胞に入る。次いで、内在化した結合性タンパク質は、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分をサイトゾルへと効果的に経路決定し、志賀毒素エフェクターの触媒活性の結果としてリボソーム阻害を介して標的細胞を直接殺滅する。例示的なCD38結合性タンパク質は、抗CD38抗体であるダラツムマブの存在下でCD38発現細胞を殺滅することが可能である。
【実施例1】
【0445】
A.実施例1.脱免疫化及びフューリン切断耐性志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチドを含むCD38結合性タンパク質
結合性タンパク質を作り出し、試験した。結合性タンパク質はそれぞれ、1)ヒトCD38と結合する細胞ターゲティング結合性領域、及び2)フューリン切断耐性である脱免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。前もって、志賀毒素Aサブユニット由来の結合性タンパク質を構築したところ、それが、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のサイトゾルへの細胞内在化及び直接の細胞内経路決定を促進することが示された(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、WO2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/196344、PCT/US2017/065074、及び国際公開第2018/106895号パンフレットを参照されたい)。この実施例において、結合性タンパク質ターゲティング細胞表面CD38を作り出した。以下で実証されるように、これらのCD38結合性タンパク質は、外部から投与されると、CD38を発現するヒトがん細胞に特異的に結合し殺滅することが可能であった。
【0446】
1.例示的なCD38結合性タンパク質の構築
当業界において公知の技術を使用して、タンパク質様のリンカーによって分離された、1)脱免疫化及びフューリン切断耐性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、及び2)CD38結合免疫グロブリン由来のポリペプチドを含む例示的なCD38結合性タンパク質を作り出した(例えば、
図1A~1Bを参照されたい)。得られた細胞ターゲティング融合タンパク質を、それぞれ脱免疫化及びフューリン切断耐性志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドに融合したCD38結合免疫グロブリン由来のポリペプチドを含む連続するポリペプチドを含むように構築した。
【0447】
この実施例において、結合性タンパク質の全ての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、SLT-1A(配列番号1)又はStxA(配列番号2)のアミノ酸1~251由来であり、それらのうち特定のものは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する2又は3以上のアミノ酸残基置換、例えば、脱免疫化する置換及び/若しくはフューリン切断モチーフを破壊する置換(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、及び国際公開第2016/196344号パンフレットを参照されたい)、又は精製に役立つ3つのアミノ酸残基の挿入などを含有していた。結合性タンパク質の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号45~69に提供される。それぞれの例示的なCD38結合性タンパク質につき、志賀毒素エフェクターポリペプチドを、タンパク質様のリンカーを使用してCD38結合性領域に連結した。
【0448】
脱免疫化志賀毒素エフェクターに融合したCD38ターゲティング抗体のライブラリーを様々な効果及び安全性モデルでスクリーニングして、候補を同定した。最初に、50種を超える異なるCD38結合性タンパク質を構築し、インビトロでCD38陽性骨髄腫及びリンパ腫細胞にターゲティングされた細胞毒性に関してスクリーニングした。この実施例の実験で試験された結合性タンパク質の全てを細菌系で生産し、例えば、キチンが結合したタグを介したインテイン媒介精製などの当業者に公知の技術を使用して(例えば、国際公開第2016/126950号パンフレットの実施例1を参照されたい)、結合性タンパク質においてポリヒスチジンタグを使用して、及び/又は結合性タンパク質において免疫グロブリンドメインと結合した細菌タンパク質を使用して、例えば、プロテインA又はプロテインLなどの細菌タンパク質を使用して、カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0449】
この実施例において生産及び試験された例示的な結合性タンパク質としては、CD38結合性タンパク質#1(配列番号76、
図25A)、CD38結合性タンパク質#2(配列番号77、
図25B)、CD38結合性タンパク質#3(配列番号78、
図25C)、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79、
図25D)、CD38結合性タンパク質#5(配列番号80)、及びCD38結合性タンパク質#6(配列番号81)が挙げられる。
【0450】
最初に、25セットの抗CD38抗体の可変ドメイン配列由来の50種のCD38結合性タンパク質を作り出した。抗CD38抗体のそれぞれにつき、単鎖可変断片(scFv)を生成した。ここで抗体のCD38結合ドメインの可変領域を、軽鎖(VL)がアミノ末端に近接しているか(VL-VH)又は重鎖(VH)がアミノ末端に近接しているか(VH-VL)のいずれかの2つの方向のうち一方に整列させた。scFvを脱免疫化志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドに融合して、スクリーニング、分析、及び比較のための50種を超える異なるCD38結合性タンパク質を作り出した。各CD38結合性タンパク質は、可能性のあるCD38結合性領域として少なくとも1つの単鎖可変断片を含む。
【0451】
50種のCD38結合性タンパク質をインテイン-キチン結合ドメイン(CBD;intein-chitin binding domain)タグを含む大腸菌(E.coli)で生産し、次いでキチン親和性及びジチオスレイトール(DTT;dithiothreitol)溶出で精製した(国際公開第2016/126950号パンフレットで上述した通り)。得られたCD38結合性タンパク質を、CD38陽性細胞への細胞毒性に関してスクリーニングした。本明細書でCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)として言及される参照分子も使用して、例えば細胞毒力の基準を設定することによってスクリーニング結果を評価した。
【0452】
2.II.CD38陽性細胞への細胞毒性に関するCD38結合性タンパク質のスクリーニング
例示的な結合性タンパク質の細胞毒性活性は、組織培養細胞ベースの毒性アッセイを使用して測定される。同質の細胞集団中の細胞の半分を殺滅する外部から投与された結合性タンパク質の濃度(50%細胞毒性濃度)を、特定の結合性タンパク質について決定した。例示的な結合性タンパク質の細胞毒性は、各結合性タンパク質の結合性領域の標的生体分子に関して標的生体分子陽性又は標的生体分子陰性の細胞のいずれかを含む細胞殺滅アッセイを使用して試験される。
【0453】
この実施例で使用された特定のCD38発現標的細胞(MOLP-8、H929、ST486、Daudi、ANBL6、MM.1S、LP-1、及びRPMI8226)は、ATCC社(Manassas VA、U.S.)より入手可能な不死化腫瘍細胞又はDSMZ(The Leibniz Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulture)(Braunschweig、DE))であった。
【0454】
細胞殺滅アッセイを以下の通り実行した。ヒト腫瘍細胞株の細胞を、384-ウェルプレート中の20μLの細胞培養培地にプレーティングした(典型的には細胞2×103個/ウェルで)。試験しようとする一連の(典型的には10倍希釈の)タンパク質を適切な緩衝液中で調製し、5μLの希釈物又は陰性対照として緩衝液だけを細胞に添加した。細胞培養培地のみを含有する対照ウェルを、ベースライン補正のために使用した。細胞試料を、タンパク質又は緩衝液だけと共に、37℃、5%二酸化炭素(CO2;carbon dioxide)の雰囲気中で2~3日インキュベートした。全細胞生存又は細胞生存率パーセントを、相対発光単位(RLU)で測定した場合のCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay 2.0(G924A Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造元の説明書に従って使用した発光リードアウトを使用して決定した。
【0455】
実験ウェルの生存率パーセントは、以下の式:(被験RLU-平均培地RLU)÷(平均細胞RLU-平均培地RLU)×100を使用して計算した。logタンパク質濃度、対、生存率パーセントを、Prism(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.A.)にプロットし、log(阻害剤)対反応(3パラメータ)解析を使用して、被験タンパク質についての50%細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。可能な場合、試験された各例示的な細胞ターゲティングタンパク質のCD50値を計算した。試験された濃度にわたる曲線の形状に基づいてCD50値を計算できなかった場合、最大限のCD50値を、最大限の試験された値を超えるものとして記録した。一部の実験において、結合性タンパク質の最大限の濃度で処理された生体分子標的陰性細胞は、緩衝液だけの対照と比較して、生存率の変化を示さなかった。
【0456】
所与のCD38結合性タンパク質の細胞毒性活性の特異性を、有意な量のCD38を発現する細胞(標的陽性細胞)に対する細胞殺滅活性を、任意の細胞表面に物理的に結合したCD38を有意な量でほとんどを呈示しない細胞(標的陰性細胞)に対する細胞殺滅活性と比較することによって決定した。これは、分析されている結合性タンパク質の標的生体分子の細胞表面発現について陽性である細胞集団に対する所与の結合性タンパク質の50%細胞毒性濃度を決定すること、次いで、同じ結合性タンパク質濃度範囲を使用して、CD38結合性タンパク質の標的生体分子の細胞表面発現について陰性である細胞集団に対する50%細胞毒性濃度の決定を試みることによって達成された。一部の実験で、最大限の量の志賀毒素を含有する分子で処理された標的陰性細胞は、「緩衝液だけ」の陰性対照と比較して、生存率の変化を示さなかった。加えて、単離した志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを、非ターゲティング陰性対照として使用した。
【0457】
表5のデータは、CD38陽性腫瘍細胞に対する25種の抗CD38抗体可変ドメイン配列由来の50種のCD38結合性タンパク質についての上述した細胞殺滅アッセイを使用した細胞毒性の結果を示す。右側の列に、それぞれCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)の細胞毒性と比較した細胞毒性を示す。試験された各細胞型につき、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号80)の細胞毒性を6つの異なる実験で分析し、平均を計算し、比較のために使用した(例えば表5に示される変化倍率計算)。
図2は、Cell Titer-Glo生存率アッセイを使用して決定した場合の、CD38陽性H929骨髄腫細胞に対するこれらの51種のCD38結合性タンパク質の細胞毒性活性をスクリーニングした結果を示す。追加の細胞毒性データは、表7~9及び13~14並びに
図3A~3C、4A~4B及び8A~8Eで報告される。CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)についてのこのアッセイにおける代表的なCD
50値は、ST486細胞に対して37pM、及びDaudi細胞に対して44pMである。
【0458】
【0459】
50種のCD38結合性タンパク質の最初のプールを、この細胞殺滅アッセイを使用して、細胞毒力によって18種の分子に絞った。次いで、これらの18種のサブセットをさらなる試験のために選択した。表6において、同じCDR配列を有するスクリーニングライブラリーからのタンパク質のセットは、ファミリーにグループ分けされ、例えば、ファミリー#1は、タンパク質3及び4を含み、ファミリー#2は、タンパク質49及び50を含み、ファミリー#3は、タンパク質45及び46を含み、ファミリー#5は、タンパク質1及び2を含み、ファミリー#6は、タンパク質7及び8を含む(表2を参照されたい)。これらのファミリーのそれぞれにつき、CD38結合性領域は、構造的に類似しており、同一なCDR配列を有する。各ファミリーは、そのCDRのセットによって定義することができる:ファミリー#1は、配列番号19~24によって表される6つのCDRのセットを含み、ファミリー#2は、配列番号25~30によって表される6つのCDRのセットを含み、ファミリー#3は、配列番号31~36によって表される6つのCDRのセットを含み、以下同様である。
【0460】
【0461】
図2は、プール中の様々な分子のCD38陽性H929骨髄腫細胞に対する代表的なCD
50値を示し、特定の分子をマークした。1nMのスクリーニングのカットオフは垂直の点線によって表され、左側のCD
50値は、カットオフより有効であり、右側のCD
50値は、カットオフほど有効ではない。20,000ng/mL又はそれ未満のCD
50を示さなかった分子はいずれも
図2に入れなかった。
【0462】
図2は、ファミリー1~3及び5~6からのタンパク質が、インビトロにおけるCD38陽性骨髄腫細胞に有効な細胞毒性を示したことを示し、これらは、プール中の他の分子の多くより有効であった。ファミリー1~3及び5~6からのCD38結合性タンパク質をさらに以下のように特徴付けた。
【0463】
3.スクリーニングからの候補の選択及び最良のヒットのさらなる試験
50種の候補のライブラリーを、とりわけ、インビトロにおけるCD38陽性細胞への細胞毒力、ヒト及びカニクイザルCD38の両方に対する結合親和性、モノクローナルCD38抗体との競合、及び製造の容易さを検討することによって絞り込んだ。スクリーニングプールを様々な基準によって絞る際に、ファミリー1~3及び5~6におけるCD38結合性領域を、以下の分子:CD38結合性タンパク質#1(配列番号76)、CD38結合性タンパク質#2(配列番号77)、CD38結合性タンパク質#3(配列番号78)、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)、CD38結合性タンパク質#5(配列番号80)、及びCD38結合性タンパク質#6(配列番号81)を使用してより詳細に研究した。表7は、スクリーニングから得られたこれらの5つの例示的なCD38結合性タンパク質の最初のCD50値を示す。ファミリー#1は、CD38結合性タンパク質#1(配列番号76)を含み、ファミリー#2は、CD38結合性タンパク質#2(配列番号77)を含み、ファミリー#3は、CD38結合性タンパク質#3(配列番号78)及びCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を含み、ファミリー#5は、CD38結合性タンパク質#5(配列番号80)を含み、ファミリー#6は、CD38結合性タンパク質#6(配列番号81)を含む。
【0464】
【0465】
スクリーニングからの特定の候補のタンパク質生産及び精製を最適化した後、追加の細胞殺滅アッセイを実行して、候補CD38結合性タンパク質をさらに評価し、比較した。CD38結合性タンパク質を、例えばプロテインA又はプロテインLクロマトグラフィーの使用などの様々な方法を介して精製した。一部のCD38結合性タンパク質を、志賀毒素エフェクターポリペプチドにおける追加のアミノ酸残基の導入又はCD38結合scFv領域の軽鎖におけるアミノ酸置換によって変更した。
【0466】
細胞毒性アッセイを、上述した様々なCD38結合性タンパク質を使用して実行し、表8及び
図3A~3Cに報告した。加えて、CD38発現細胞への細胞毒性の特異性を、CD38陰性細胞株U266からの細胞を用いて細胞毒性アッセイを実行することによって示した。試験された条件下で、CD38陰性細胞への有意な細胞毒性活性は、示されなかった(例えば、
図3C及び表7~8、最後の列を参照されたい)。
【0467】
【0468】
CD38結合性タンパク質#6(配列番号81)がCD38特異性及び高い細胞毒力を示したにも関わらず、CD38結合性タンパク質#6(配列番号81)の相対的な細胞毒性活性は、他の多くの候補ほど高くなかった。
【0469】
CD38結合性タンパク質を、ヒト又は非ヒト霊長類細胞のいずれかである霊長類細胞における細胞毒性活性について試験した。BLCL-C162は、CD38を発現するアカゲザル細胞株である。表9A~9B、
図4A(ヒト)、及び
図4B(サル)に結果を示す。
【0470】
【0471】
【0472】
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)のANBL6細胞への2時間の曝露を測定して、約0.1及び0.16nMのCD50値を特徴とする細胞毒性を得た。
【0473】
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)のANBL6細胞への2時間の曝露を測定して、約0.1及び0.16nMのCD50値を特徴とする細胞毒性を得た。
【0474】
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)は、インビトロで、全血及びPBMC中のCD38陽性標的細胞に対して細胞毒性であったことから、このアッセイにおいて赤血球の存在は細胞毒性を阻害しなかったことが示される。
【0475】
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)は、インビトロで多発性骨髄腫対象由来の試料に対して細胞毒性であった。
【0476】
特定のCD38結合性タンパク質の触媒(リボソーム阻害)及び細胞毒性活性を試験して、これらの細胞毒性分子の作用機構を調査した。CD38結合性タンパク質のリボソーム不活性化性能を、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translationキット(L1170、Promega社、Madison、WI、U.S.)を使用した無細胞のインビトロのタンパク質翻訳アッセイを使用して決定した。キットは、Luciferase T7 Control DNA(L4821、Promega社、Madison、WI、U.S.)及びTNT(登録商標)Quick Master Mixを含む。リボソーム活性反応物を、製造元の使用説明書に従い調製した。希釈液の系列(典型的に、10倍)を、適切な緩衝液中で調製し、各希釈液にわたり、同一のTNT反応混合物成分の系列を作出した。試験しようとする分子を、Luciferase T7 Control DNAと共にTNT反応混合物のそれぞれと合わせた。試験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーションの後、Luciferase Assay Reagent(E1483、Promega社、Madison、WI、U.S.)を、全ての被検試料へと添加し、ルシフェラーゼタンパク質の翻訳量を、製造元の使用説明書に従い、発光により測定した。翻訳の阻害レベルは、log変換された全タンパク質濃度、対、相対発光単位の非線形回帰分析により決定した。ソフトウェア(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.A.)を使用して、50%阻害濃度(IC
50)値は、「用量反応阻害」という標題下の、応答(3パラメータ)対log(阻害剤)についての、Prismソフトウェアの関数[Y=ボトム+((トップ-ボトム)/(1+10^(X - Log IC50)))]を使用して、各試料について計算した。表10及び
図5に結果を示す。
【0477】
【0478】
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の触媒活性は、SLTAエフェクターポリペプチド単独及びCD38ターゲティング参照対照分子#1(表10)と同等であった。
【0479】
4.細胞結合及び精製CD38の結合アッセイを使用したCD38ターゲティングについての結合性タンパク質の試験
細胞結合親和性アッセイを実行して、特定のCD38結合性タンパク質のCD38発現細胞への結合親和性を定量化した。
【0480】
CD38結合性タンパク質の、組換えヒトCD38タンパク質又は組換えカニクイザルCD38タンパク質(Sino Biological社、Wayne、Pennsylvania、U.S.)への結合を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)結合アッセイを用いて決定した。Nunc(登録商標)Maxisorp(商標)プレートを、PBS中の組換え、ヒト又はカニクイザルCD38で、4℃で一晩コーティングした。ウェルを洗浄し、ブロックし、次いで試験されているCD38結合性タンパク質の一連の希釈物と共にインキュベートした。結合したCD38結合性タンパク質は、脱免疫化毒素ドメインを検出するマウスモノクローナル抗体、次いで抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;horseradish peroxidase)コンジュゲート二次抗体を用いた2段階方法で検出される。TMB Ulttraを用いてHRPシグナルを検出し、酸で反応を止めた後、ELISAシグナル(450ナノメートル(nm)での吸光度(「Abs450」))を、プレートリーダーを用いて読んだ。このアッセイにおいて、以下の分子、CD38結合性タンパク質#2(配列番号77)、CD38結合性タンパク質#3(配列番号78)、及びCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)はそれぞれヒト及びサルCD38の両方に結合したが、それに対してCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)は、ヒトCD38に結合したが(
図6A)カニクイザルCD38に結合しなかった(
図6B)(表11)。他の実験において、CD38結合性タンパク質#1(配列番号76)はまた、ヒト及びカニクイザルCD38タンパク質に結合することも示された。
【0481】
【0482】
この実験において試験された全てのCD38結合性タンパク質は、ヒトCD38に類似の結合親和性で結合したが、分子のなかでもカニクイザルCD38への結合は異なっていた。以下の分子、CD38結合性タンパク質#1(配列番号76)、CD38結合性タンパク質#2(配列番号77)、CD38結合性タンパク質#3(配列番号78)、及びCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)はそれぞれ、カニクイザルCD38に結合した。カニクイザル動物は、例えば薬物動態学、薬力学、及び毒物学に関するCD38結合性タンパク質のインビボにおける作用及び挙動の決定、推測、及び理解を助けるためのヒト対象のためのモデルとして使用できるため、ヒト及びカニクイザルCD38の両方に結合することは有用であり、その場合、このようなモデルは、ヒトなどの関連する種に変換可能な結合性タンパク質によって標的結合及び標的細胞殺滅を有しうる。
【0483】
別の実験において、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)の結合特徴を、蛍光ベースのフローサイトメトリーアッセイを使用して分析した。CD38陽性(CD38+)細胞(細胞株A又はFのいずれかの)を含有する試料を、下記で「1×PBS+1%BSA」と称される1パーセントのウシ血清アルブミン(BSA;bovine serum albumin)(Calbiochem社、San Diego、CA、U.S.)を含有する1×PBSに懸濁し、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)の100μLの様々な希釈物と共に4℃で1時間インキュベートした。1時間インキュベーションの後に、細胞試料を1×PBS+1%BSAで2回洗浄した。細胞試料を、α-SLT-1A pAb1を含有する100μLの1×PBS+1%BSAと共に4℃で1時間インキュベートし、次いで再び洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC;fluorescein isothiocyanate)にコンジュゲートした抗ウサギ二次抗体を含有する100μLの1×PBS+1%BSA溶液と共に4℃で1時間インキュベートした。細胞試料を1×PBS+1%BSAで2回洗浄し、200μLの1×PBSに再懸濁し、蛍光ベースのフローサイトメトリーに供して、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)の細胞への結合レベルの指標である、十分な二次抗体と結合した細胞のパーセンテージを各試料でアッセイした。相対蛍光単位である平均蛍光強度(MFI;mean fluorescence intensity)単位での全ての試料のデータを、いずれの細胞ターゲティング分子でも処理されていないが、ウサギポリクローナル抗体α-SLT-1A(pAb1)(Harlan Laboratories, Inc.社、Indianapolis、IN、U.S.)、次いで抗ウサギ二次抗体と共にインキュベートされた細胞の陰性対照試料を使用してデータをゲーティングすることによって得た。統合されたMFI(iMFI;integrated MFI)を、陽性細胞のパーセンテージにMFIを掛けることによって計算した。「結合飽和」という標題下の1つの部位の結合のPrismソフトウェアの関数[Y=Bmax×X/(KD+X)]を使用して、Bmax及びKDを、ベースライン補正データを使用して計算した。2つのCD38+細胞型に結合するCD38ターゲティング参照分子#1の測定されたBmaxはおよそ100,000iMFIと測定され、これらのCD38+細胞に結合するCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)のKD値はおよそ2~7nMと測定された。CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)は、このアッセイにおいて、記載された条件下でCD38陰性への結合を示さなかった。
【0484】
5.結合性タンパク質のCD38結合エピトープのマッピング
プールからのCD38結合性タンパク質候補の特徴付けを助けるために、さらなるCD38結合研究を実行した。エピトープマッピングサービス(ショットガン変異誘発による)を、Integral Molecular, Inc.社(Philadelphia、Pennsylvania、U.S.)(標準的なアッセイのセットアップであり、必要に応じて、アラニンスキャニング、及びヒトの残基からカニクイザルの残基にアミノ酸を変化させるための追加の突然変異を含む)によって実行して、CD38細胞外ドメイン(ECD)に結合するための接触残基を同定した。
【0485】
アッセイを以下の通りに実行した。野生型又は突然変異CD38 ECDを、HEK293細胞の細胞表面で発現させ、次いで特定のアミノ酸が突然変異した場合の目的のCD38結合性タンパク質のCD38 ECDに結合する能力を、フローサイトメトリーによって同じ目的のCD38結合性タンパク質の野生型CD38 ECDへの結合と比較した。CD38もターゲティングする一連の対照分子を用いて、分子の発現又は全体のフォールディングに影響を与える突然変異についてアッセイを制御した。表12は、特定の突然変異を有するCD38 ECDタンパク質を発現した表面への結合を、そのCD38結合性タンパク質の野生型CD38への結合のパーセンテージとして示す。太字でマークした値は、結合にとって重要なアミノ酸及び結合性タンパク質にとって接近可能な表面(公開されたCD38構造の詳細に基づく)を示す。
【0486】
【0487】
図7は、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)による結合に関する重要な残基のCD38における配置を示す。
図7において、重要な表面の接近可能な接触残基F216及びL262は、赤色で示され、重要な構造的な残基L124及びL230は、紫色で示され、ジスルフィド対に参加する重要な構造的な残基C119/C201及びC254/C275は、灰色で示される。
【0488】
エピトープマッピングアッセイを、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)に関して上述したように実行した。CD38ターゲティング参照分子#1による結合に関して重要なCD38中の残基は、F216、L262、Q272、及びF273であった。
【0489】
6.ダラツムマブの存在下における細胞毒性活性
細胞殺滅アッセイを、上述したように、ただし抗CD38モノクローナル抗体であるダラツムマブの存在下で実行して、ダラツムマブが試験されているCD38結合性タンパク質の活性に干渉するかどうかを評価した。ダラツムマブは、多発性骨髄腫を治療するために承認されたモノクローナル抗体である。細胞毒性アッセイを実行して、どのCD38結合性タンパク質がダラツムマブの存在下でCD38発現細胞を殺滅するかを識別した。
【0490】
目的のCD38結合性タンパク質を、ダラツムマブの存在下における細胞毒性活性について試験した。この実験において、細胞生存率アッセイを、上述したのと同様にして実行した。CD38陽性細胞をプレーティングした後、ダラツムマブを、500μg/mLから開始した(4倍希釈で2ng/mLに)一連の希釈で細胞に添加した。ダラツムマブを、CD38結合性タンパク質の添加の1.5時間前に細胞に添加し、ダラツムマブを実験にわたりウェル中でそのままとした。CD38結合性タンパク質を、500ng/mLの一定濃度でウェルに添加した(ダラツムマブ添加後の1.5時間に、さらに実験にわたりウェル中でそのままとした)。したがって、ダラツムマブの最大濃度で、CD38結合性タンパク質に対して千倍の過量のダラツムマブが存在する。72時間後に細胞生存率リードアウト(CellTiter Glo2.0)を行った。
図8A~8Eに、このアッセイの一部の結果を示す。
図8A~8Eは、ダラツムマブが、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)の細胞毒性活性を十分にブロックできるが、CD38結合性タンパク質#1(配列番号76)及びCD38結合性タンパク質#2(配列番号77)の細胞毒性活性にはほとんど作用がないことを示す。H929及びST486細胞株に関して、ダラツムマブの存在下におけるCD38結合性タンパク質(全ての細胞が殺滅された)の500ng/mL処理で、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の細胞毒性活性における変化はなかった。CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)について、高濃度のダラツムマブの存在下でCD38結合性タンパク質の細胞毒性活性は低減した;しかしながら、効力の変化にも関わらず、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)はそれでもなお、他のCD38結合性タンパク質、例えばダラツムマブの存在下におけるCD38結合性タンパク質#1(配列番号76)及びCD38結合性タンパク質#2(配列番号77)でみられたレベルまで細胞生存率に影響を与えることができた。表13は、CD38結合性タンパク質より1000倍高いモノクローナル抗体である、単一濃度(0.5μg/mL)のCD38結合性タンパク質及び単一濃度のダラツムマブ(500μg/mL)でのモノクローナル抗体の存在下における、選択されたCD38結合性タンパク質の細胞毒性活性に焦点を当てている。
【0491】
図8A~8Eは、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)が、インビトロにおいて、ある範囲にわたるダラツムマブ濃度で、ダラツムマブの存在下で、CD38発現細胞に対して強く細胞毒性であったことを示す。
【0492】
【0493】
【0494】
ファミリー#5及び7のCD38結合性タンパク質、加えてCD38ターゲティング参照分子#1は全て、CD38陽性MOLP-8骨髄腫細胞及びST486リンパ腫細胞に対して高い効力を示した(表14;
図8Cを参照されたい)。
【0495】
ファミリー#5のCD38結合性タンパク質は、ダラツムマブの存在下で細胞毒性を示し(表14;
図8Dを参照されたい)、CD
50値は、ダラツムマブが供給されていない並行試料の10倍以内であった。対照的に、標的細胞を10μg/mLのダラツムマブで前処理した場合(一連の希釈で(0.2~20,000ng/mLに)CD38結合性タンパク質を添加する30分前にダラツムマブを添加し、実験にわたり保持した)、CD38結合性タンパク質#7及びCD38ターゲティング参照分子#1の細胞毒性活性は完全に阻害された。
【0496】
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)は、インビトロで、先行してダラツムマブに曝露された対象からのものを含む多発性骨髄腫対象由来の試料に対して細胞毒性であった(表15を参照されたい)。骨髄試料を6人の多発性骨髄腫対象から収集し、一般的な技術を使用してex vivoで培養した。ベースラインにおける6つの対象試料における細胞上の細胞表面CD38のレベルを、一般的な当業者に公知の技術を使用して評価したところ、137,000~6,750,000抗体結合能力単位までのCD38密度で様々であったことが見出された(表15:列2を参照されたい)。CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を、ある範囲にわたる濃度で細胞に投与し、次いでこれを48時間又は72時間のいずれかで培養した。CD50値を上述したように計算した。表15に代表的な結果を報告する。
【0497】
【0498】
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)は、このex vivoの対象細胞培養コホートにおいて、広範囲のCD38レベルを発現する様々な多発性骨髄腫腫瘍細胞を枯渇させた。CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)は、48時間の処理の後、0.38~0.85μg/mLの範囲、及び72時間の処理の後、0.23~0.51μg/mLの範囲のCD50濃度で、腫瘍細胞を枯渇させた(1つの対象試料は、72時間のタイムポイントで技術的に評価不能であった)。
【0499】
例示的なCD38ターゲティング分子のCD38への競合結合も試験した(
図23を参照されたい)。CTM#1(配列番号228)、CTM#2(配列番号229)、CTM#3(配列番号230)が抗CD38抗体であるダラツムマブ(Dara)、HB-7、AT13-5、又はOKT-10の存在下でCD38に結合できるかどうかを試験した。
図23A及び23Bで示されるように、CTM#1(配列番号228)及びCTM#2(配列番号229)は、ダラツムマブ、HB-7、AT13-5、及びOKT-10の存在下でCD38に結合することができたことから、これらの分子は、ダラツムマブ、HB-7、AT13-5、及びOKT-10と結合したエピトープと異なるCD38上のエピトープに結合できることが示される。CTM#3(配列番号230)は、OKT-10の存在下でCD38に結合することができたが、ダラツムマブ、HB-7及びAT13-5の存在下では結合できなかったことから、CTM#3(配列番号230)は、OKT-10と結合したエピトープと異なるCD38上のエピトープに結合できることが示される。これらの結果から、CTM#3(配列番号230)が、CD38上のエピトープを、ダラツムマブ、HB-7及びAT13-5と共有する、又は部分的に共有すること(例えば部分的にオーバーラップするエピトープ)が示唆された。
【0500】
例示的なCD38ターゲティング分子のCD38発現細胞への競合結合を試験した(
図23Cを参照されたい)。MOLP-8細胞を、20μg/mLのCD38ターゲティング分子(約400nM)又は対照分子(志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド単独)と共に70分間インキュベートした。次いで0.5μg/mLの抗CD38を添加し、細胞と共に48時間インキュベートした。志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分を認識する一次抗体、及びFITCコンジュゲート抗IgG二次抗体、続いてフローサイトメトリーによって、CD38結合を検出した。二次抗体のみの対照からシグナルを引いた後にCD38ターゲティング分子の平均蛍光強度(MFI)を計算し、対照として志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド単独から測定されたMFIのパーセンテージとしてプロットした。
図23C及び23Dで示されるように、CTM#1(配列番号228)及びCTM#2(配列番号229)は、CD38に競合方式で結合しており、それらがCD38上の同じエピトープに結合するという事実と一致する。CTM#3(配列番号230)は、CTM#1(配列番号228)及びCTM#2(配列番号229)と半競合的にCD38に結合する。
【0501】
7.ヒト骨髄穿刺液における結合性タンパク質の試験
ヒト多発性骨髄腫細胞に対するCTM#4の細胞毒性をさらに評価するために、骨髄穿刺液(BMA)を、ダラツムマブに耐性の1人の対象(013)を含む様々な多発性骨髄腫対象(標識された010、011、012、013、014、及び015)から得た。BMAを、増加する濃度のCTM#4(約0.053~33.33μg/mLの範囲)で処理した。
図15で示されるように、CTM#4は、BMA腫瘍細胞に対して細胞毒性であり、これらの患者由来の多発性骨髄腫細胞に対して、48時間後に約3.5~8.5nM、及び72時間後に約0.23~0.51μg/mLのCD
50値を示した。CD38発現レベルとCTM#4細胞毒力との間の厳密な相関は観察されなかった。
【0502】
8.薬力学的なモデル
CTM#4細胞毒性の時間経過を決定するために、細胞毒性を、Real Time Gloアッセイを使用して、様々な高度にCD38を発現する(MOLP6、RPMI-8226)及び中程度にCD38を発現する(ANBL6、NCI-H929)細胞株で、CTM#4での処理後におよそ72時間測定した。
図16で示されるように、生存率の作用が、最も高い感受性の株(例えばNCI-H929)で8時間以内に観察された。
【0503】
試験されたほとんどの多発性骨髄腫細胞型について、CTM#4のCD
50値は、約48時間後に漸近線に到達する。
図16において、表は、下の2本の線(CTM#4又はCD38TM4)でCD
50値(pM)を報告する。
図16において、表は、細胞表面CD38の発現レベルを報告しており、その値を、CD38発現の線において高又は中のいずれかとして特徴付ける。CTM#4、CD38TM4のCD38ターゲティング部分の細胞毒性を単独で(志賀毒素エフェクターポリペプチドから解離させて)試験したところ、正確なCD
50値は、試験されたCD38TM4濃度の範囲で決定できなかった;しかしながら、このアッセイにおいて、ANBL-6、NCI-H929、MOLP-8、及びHCT116細胞についてCD
50値が180,000pMより大きいことが決定された(
図16、表の最後の行)。CD38発現レベルとCTM#4細胞毒力との間の厳密な相関は観察されなかった。
【0504】
2つの細胞株、NCI-H929及びMOLP8は、最も短い細胞死の誘導を実証し、細胞毒性は、CTM#4投与の最初の8時間以内に観察された、それぞれ<0.038及び0.081±0.018ng/mLのCD50値によって特徴付けられた。複数の骨髄腫細胞株であるANBL-6及びRPMI-8226は、CTM#4に対してNCI-H929及びMOLP8ほど感受性が高くなかった(72時間でそれぞれ1.949±0.0467及び0.136±0.027ng/mLのCD50値、並びにそれぞれ28時間及び24時間での細胞死の誘導)。この研究において、CTM#4は、CD38陰性HCT116結腸がん細胞への作用を実証しなかった。
【0505】
全血中でCTM#4が活性かどうかを決定するために、ヒト及びカニクイザル全血をCTM#4で72時間処理した。ナチュラルキラー(NK)細胞枯渇をフローサイトメトリーを使用してex vivoで決定した。
図18A~18Bで示されるように、CTM#4は、ヒト及びカニクイザル全血の両方においてNK細胞数を低減した。
【0506】
別々のアッセイで、ANBL-6多発性骨髄腫細胞を、CTM#4と共に連続的に48又は72時間処理するか、又はCTM#4に2時間曝露するかのいずれかとし、洗浄し、48又は72時間のタイムポイントまでCTM#4非含有の培地中で維持した。RealTime-Glo生存率アッセイを使用して細胞生存率を決定した。
図19で示されるように、2時間の処理に加えてウォッシュアウトは、48時間のタイムポイントで細胞毒性の5倍の増加、及び72時間のタイムポイントで細胞毒性の10倍の増加をもたらす。
【0507】
9.マウスモデル
他の種の哺乳類対象のためのマウスモデルを使用して、選択されたCD38結合性タンパク質を評価した。
【0508】
a.マウスモデルにおける忍容性
忍容性、毒性及び安全性を評価するために、BALB/Cマウスを、0.25~2mg/kgで12日にわたり6回用量(1日目、3日目、5日目、8日目、10日目及び12日目)で、それぞれPBSで希釈した、媒体(20mMクエン酸ナトリウム、200mMソルビトール、pH5.5)又はCD38結合性タンパク質で処理した。研究にわたり、体重をモニターし、臨床的な観察を行った。表16、表17、及び
図9に、これらの研究の一部の結果を示す。平均の体重減少が>20%であるか又は>10%の死亡率のグループはいずれも投与を止め、動物を安楽死させずに回復させることとした。体重減少が>20%のグループ内で、個々の体重減少のエンドポイントを記録した個体は、安楽死させることとなった。CD38結合性タンパク質を、表16及び17で示された通り異なる研究で試験した。表16に、異なる濃度での複数のCD38結合性タンパク質に関するデータを提供する。加えて、肝臓酵素機能における変化を示す一部の臨床化学(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(alk phos)及び総ビリルビン)を、4回目の用量の後(8日目の用量後の12時間)に行った。表17に、それらの値を報告する。
【0509】
【0510】
【0511】
CD38結合性タンパク質#3(配列番号78)及び関連分子であるCD38結合性領域中に同じCDRを有するCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を単一の研究で比較した。表16及び
図9に、処理したマウスにおける体重の変化を示す。両方とも0.5mg/kgで忍容性を示したが、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)が、体重の変化が見られず、死亡もなかったため、1mg/kgでより優れた忍容性を示したが、それに対してCD38結合性タンパク質#3(配列番号78)は、1mg/kgで体重の減少を伴い、6匹のうち3匹が死亡した(表16を参照されたい)。生き残ったCD38結合性タンパク質#3(配列番号78)処理グループの動物は、第6の計画的な用量を受けなかった。2つの分子間の差は、プロテインL精製を容易にする軽鎖におけるアミノ酸変化であり、これが驚くべきことに、より低い毒性であり、したがって、より多くの量の投与に加えてより低頻度の投与を可能にし、著しい利益をもたらす。
【0512】
b.相対的な免疫原性
ヒト免疫系の哺乳類モデルを使用して、特定のCD38結合性タンパク質の免疫原性の可能性を調査した。何週間にもわたる繰り返しの非経口投与の後に、インビボの結合性タンパク質に対する抗体応答のためのアッセイを使用して、例示的な結合性タンパク質の相対的な免疫原性を決定した(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照されたい)。溶液中のELISAを使用して、異なる結合性タンパク質に特異的な血清マウス抗体の相対量を決定した。
【0513】
この免疫原性アッセイは、一般的に哺乳動物における分子の相対的な免疫原性の指標であるマウスの使用を含む。マウス研究を実行し、それにおいて、BALB/cマウスをランダムにグループ1つ当たり6匹のマウスからなる処理グループに割り振り、異なる処理グループのマウスに異なる結合性タンパク質を投与した。まず血清試料を各マウスから収集し、その後、結合性タンパク質に曝露した。次に、処理グループの各マウスに、試料結合性タンパク質の1用量当たり体重1キログラム当たり0.25ミリグラム(mg/kg)の試料分子を、2週間にわたり週3回の腹腔内注射によって投与した。1週間いずれの試料も投与しなかった後、試料結合性タンパク質の1用量当たり0.25mg/kgの腹腔内注射を追加の2週間にわたり週3回投与することで、5週間のインターバルにわたり合計12回の用量の結合性タンパク質が投与された。5週の投与インターバル中及びその後に、全てのマウスから血清を収集して、溶液中のELISAを使用して投与された結合性タンパク質をターゲティングする抗体を観察した。
【0514】
投与された結合性タンパク質を認識する抗体を検出するための溶液中のELISAを、以下の通りに実行した。各CD38結合性タンパク質及びそのそれぞれのマウス処理グループにつき、異なるELISAアッセイを、ただし同じ一般的な溶液中のELISAアッセイのセットアップを使用して、実行した。溶液中のELISAアッセイのために、ELISAプレートのウェルを、CD38組換えヒトタンパク質でコーティングした。マウス処理グループでの注射に使用した同じ結合性タンパク質を、そのグループからの単一のマウスから収集された血清と共に溶液中で4℃で一晩インキュベートし、次いで形成されたあらゆる複合体(例えば血清中に存在する結合性タンパク質及び抗体を含む複合体)を、コーティングされたELISAプレートのウェルを使用して捕捉した。捕捉された、マウス免疫グロブリンG分子(IgG;immunoglobulin G)を含む免疫複合体を、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした二次抗体である抗マウスIgGを使用して検出した。クロモジェニックHRP基質を添加し、次いで化学発光の結果として光の放出を検出することによって、ウェル地のHRP活性を検出した。HRP活性又は「ELISAシグナル」を、プレートリーダーを使用して450nmで測定した。「血清なし」陰性対照ウェルから測定したままのバックグラウンドシグナルを引いた後に、ELISAシグナル値を吸光度値(Abs450nm)として計算した。血清を希釈して、アッセイのために飽和レベル未満の吸光度値の読み取りを可能にし、希釈比率は、所与の日に測定された全ての処理グループにおける全てのマウスで同じであった。対照として、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号80)と同じscFvを含むが、より低い程度に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むCD38ターゲティング対照分子#1(配列番号84)をマウスに投与し、抗薬物抗体応答を示すのに使用した。
【0515】
図10は、脱免疫化志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分のみを含むCD38結合性タンパク質:CD38結合性タンパク質#1(配列番号76)、CD38結合性タンパク質#2(配列番号77)、及びCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)の、より低い程度に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号80)と同じscFvを含むCD38ターゲティング対照分子(配列番号84)と比較した相対的な免疫原性を、合計12用量の目的の分子の低用量(0.25mg/kg)投与の2サイクルにわたり示す。
【0516】
CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)及び別の対照CD38ターゲティング分子を、サイクル間に2週間の中断を入れて2サイクルにわたり(1日目、3日目、5日目、8日目、10日目、12日目;29日目、31日目、33日目、36日目、38日目、及び40日目に投与)、非ヒト霊長類に0.05mg/kgの用量で静脈内投与した。CD38ターゲティング対照分子#1(配列番号84)と同じ志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、より低い程度に脱免疫化されたCD38ターゲティング対照分子と比較して、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)を受けている動物においてあらゆる炎症/免疫応答の重症度を低減した(グロブリンレベル、IgGレベル、IgAレベル、好中球数、単球数、及びアルブミン還元によって測定した場合)。加えて、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)は、6回目の用量の後に検出可能であったが、それに対して対照CD38ターゲティング分子は定量化の限界未満であった。これはおそらくより多くの抗薬物抗体が配合されたことに起因する。
【0517】
c.効果
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の二量体を含む組成物は、数種のヒト骨髄腫異種移植マウスモデルにおいて皮下と播種の両方で有効であった。週1回及び隔週スケジュールの両方を使用して完全な腫瘍退縮が観察された。加えて、ヒトCD38を発現する同系マウス細胞株は、免疫適格マウスモデルにおいてCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)処理に応答することが示された。
【0518】
(i)マウス異種移植モデル:皮下LP-1
CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)のインビボにおける活性を、LP-1ヒト多発性骨髄腫異種移植片を含む雌CB17重症複合免疫不全(SCID;severe combined immunodeficient)マウスを含むマウス異種移植モデルを使用して評価した。マウスの皮下から右脇腹にLP-1ヒト多発性骨髄腫細胞を植え付け、静脈内用量の媒体で週1回(QW)、静脈内用量のCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)で21日間にわたり週1回、又は静脈内用量のCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)で14日間にわたり2週間に1回(Q2W)処理した。CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の用量は、5、6、又は10mg/kg体重であった。
【0519】
腫瘍体積及び体重を、一般的な当業者に公知の技術を使用して週2回測定し、平均腫瘍体積(MTV;mean tumor volume)を、式(0.5×[長さ×幅2])を使用して計算した。平均腫瘍体積がおよそ94mm3に達したら、マウスを処理グループにランダム化し(グループ1つ当たりn=6匹のマウス)、QWスケジュールで媒体(リン酸塩緩衝生理食塩液(PBS;phosphate buffered saline))を、又はQWスケジュールで、5.0又は6.0mg/kgで、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を、又はQ2Wスケジュールで、10.0mg/kgで、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を静脈内投与した。QW投与を受けたマウスを0日目、7日目、14日目及び21日目に処理した。Q2W投与を受けたマウスを0日目及び14日目に処理した。全ての処理を0日目に開始した。腫瘍サイズ及び体重を週2回測定し、28日目に対照腫瘍がおよそ1800mm3に達したら研究を終結させた。
【0520】
28日目に増殖速度阻害を決定した。腫瘍増殖の阻害を、同日を含む研究の28日目までのデータを使用して、GRIのパーセント([対照グループの平均増殖速度-処理グループの平均増殖速度]/媒体グループの平均増殖速度)を計算することによって決定した。処理グループと媒体との腫瘍増殖の統計的比較を、各グループにおける動物の指数関数的な増殖速度に適用されたt検定を使用して実行した。表18(LP-1)及び
図11A~11Dに、これらの研究の一部の結果を示す。
図11A~11Dは、各グループの経時的な(日)平均腫瘍体積(mm
3)をグラフにより示す。
図11A~11Dでは、用語「BIW」は、用量レジメンで言及される場合、「隔週」を意味するものとして使用される。用語「AUC」は、曲線下面積を意味する。
【0521】
【0522】
全ての用量グループで、処理は許容された。処理及び測定の間、動物の死亡又は動物の除去はなかった。28日目に、全ての動物が分析に組み入れられた。
【0523】
5mg/kg又は6mg/kgのいずれかのCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を週1回でのLP-1ヒト多発性骨髄腫異種移植片を含む雌CB17 SCIDマウスの処理は、媒体処理と比較して著しい抗腫瘍活性をもたらした。
【0524】
(ii)マウス異種移植モデル:皮下H929
インビボにおけるCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の活性を、NCI-H929ヒト多発性骨髄腫異種移植片を含む雌非肥満糖尿病(NOD;nonobese diabetic diabetic)重症複合免疫不全(SCID)マウスを含むマウス異種移植モデルを使用して評価した。マウスの皮下から右脇腹にNCI-H929ヒト多発性骨髄腫細胞を植え付け、静脈内用量の媒体(PBS)で21日間にわたり週1回(QW)、又はCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)で14日間にわたり2週間に1回(Q2W)処理した。CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の用量は、5、6、又は10mg/kg体重であった。
【0525】
腫瘍体積及び体重を、一般的な当業者に公知の技術を使用して週2回測定し、平均腫瘍体積(MTV)を、式(0.5×[長さ×幅2])を使用して計算した。平均腫瘍体積がおよそ121mm3に達したら、マウスを処理グループにランダム化し(グループ1つ当たりn=8匹のマウス)、QWスケジュールで媒体(リン酸塩緩衝生理食塩液(PBS))を、又はQWスケジュールで、5.0、6.0、又は10.0mg/kgでCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を、又はQ2Wスケジュールで、10.0mg/kgでCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を静脈内投与した。QW投与を受けたマウスを0日目、7日目、14日目及び21日目に処理した。Q2W投与を受けたマウスを0日目及び14日目に処理した。全ての処理を0日目に開始した。腫瘍サイズ及び体重を週2回測定し、29日目に対照腫瘍がおよそ1700mm3に達したら、研究を終結させた。
【0526】
29日目に増殖速度阻害を決定した(上述した通り)。表18(H929)及び
図11A~11Dに、これらの研究の一部の結果を示す。
【0527】
全ての用量グループで、処理は許容された。処理及び測定の間、動物の死亡又は動物の除去はなかった。29日目に、全ての動物が分析に組み入れられた。
【0528】
週1回の5mg/kg又は6mg/kgのいずれかのCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)での、又は2週間に1回の10mg/kgのCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)での、NCI-H929ヒト多発性骨髄腫異種移植片を含む雌非肥満糖尿病(NOD/SCID)マウスの処理は、媒体処理と比較して著しい抗腫瘍活性をもたらした。
【0529】
追加のマウス皮下異種移植モデルを使用して、上述したのと同様にして、さらに、当業者に公知の技術を使用して、ただし例えばMOLP8細胞などの他の細胞型を使用して、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の活性をインビボで評価した。表18(MOLP-8)及び
図11Dに、これらの研究の一部の結果を示す。
【0530】
(iii)マウス異種移植モデル:皮下MM1.S
インビボにおけるCD38結合性タンパク質#4(CTM#4)の活性を、MM1.Sヒト多発性骨髄腫異種移植片を含む雌CB17重症複合免疫不全(SCID)マウスを含むマウス異種移植モデルを使用して評価した。マウスの皮下から右脇腹にMM1.Sヒト多発性骨髄腫細胞を植え付け、静脈内用量の媒体で週1回(QW)、静脈内用量のCD38結合性タンパク質#4で21日間にわたり週1回、又は静脈内用量のCD38結合性タンパク質#4で14日間にわたり2週間に1回(Q2W)処理した。CD38結合性タンパク質#4の用量は、5、6、又は10mg/kg体重であった。
【0531】
腫瘍体積及び体重を、一般的な当業者に公知の技術を使用して週2回測定し、平均腫瘍体積(MTV)を、式(0.5×[長さ×幅2])を使用して計算した。平均腫瘍体積がおよそ94mm3に達したら、マウスを処理グループにランダム化し、QWスケジュールで媒体(リン酸塩緩衝生理食塩液(PBS))を、QWスケジュールでCD38結合性タンパク質#4を、Q2WスケジュールでCD38結合性タンパク質#4を、BIWスケジュールでCD38ターゲティング抗体(ダラツムマブ、SOC)を、BIWスケジュールでSOCと組み合わせて、QWスケジュールでCD38結合性タンパク質#4を、又はBIWスケジュールでSOCと組み合わせて、Q2WスケジュールでCD38結合性タンパク質#4を静脈内投与した。QW投与を受けたマウスを0日目、7日目、14日目及び21日目に処理した。Q2W投与を受けたマウスを0日目及び14日目に処理した。全ての処理を0日目に開始した。腫瘍サイズ及び体重を週2回測定し、28日目に対照腫瘍がおよそ1800mm3に達したら、研究を終結させた。
【0532】
図12A~B及び
図17に、この研究からの一部の結果を示す。両方の組合せ群(CTM#4+SOC)で完全退縮が観察された。
【0533】
D.マウス異種移植モデル:播種性
インビボにおけるCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の活性を、MM1.S-Lucヒト多発性骨髄腫の播種性腫瘍を含む雌SCID/Beigeマウスを含むマウス異種移植モデルを使用して評価した。
【0534】
SCID Beigeマウスに、一般的な当業者に公知の技術を使用して、尾静脈注射によってMM1.S-Luc腫瘍細胞(ルシフェラーゼ発現で標識されたMM1.S細胞)を植え付けた。各マウスの腫瘍負荷を、一般的な当業者に公知の技術を使用した生物発光イメージングを使用して週1回測定した。腫瘍負荷を、14日目、21日目、28日目、35日目、及び42日目に光子/秒で測定し、平均生物発光シグナルを各処理グループにつき計算した。14日目に、平均生物発光シグナルがおよそ1.11×107光子/秒に達したら、動物を処理グループにランダム化した(n=8/グループ)。媒体のみ又はCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を、2mg/kgで2週間にわたり1日おきに週3回(2日の中断を含む)腹腔内に投与し、続いて、次の投与サイクルを開始する前に1週間中断した(1日おき×3、2オフ;2週間オン、1週間オフ)。加えて、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を、4、6、及び10mg/kgで週1回投与した。全てのグループが28日の期間にわたり投与された。1日おき×3、2オフ;2週間オン、1週間オフのスケジュールで処理されたマウスに、媒体(PBS)又はCD38結合性タンパク質を、14日目、16日目、18日目、21日目、23日目、25日目、35日目、及び37日目に投与した。週1回のスケジュールでCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)を受けたマウスを、14日目、21日目、27日目、及び35日目に処理した。
【0535】
抗腫瘍活性を、%T/Cを計算することによって決定した。パーセントT/Cは、処理グループの平均生物発光シグナル(BLI)を媒体グループの平均生物発光(BLI)シグナルで割って100をかけたものと定義され、これを42日目に、
図12Aに示されるいくつかの結果を用いて計算した。
図12Aにおいて、CD38結合性タンパク質#4(配列番号79)は「CTM#4」と称され、これは、媒体のみの対照と共に実験データに示される唯一のタンパク質であった。また
図12Bは、異種移植片腫瘍細胞におけるルシフェラーゼ活性の生物発光イメージングを使用して収集されたマウスの画像も示す:媒体のみが投与されたマウスは、その体全体にわたり広範囲に強烈なシグナルを示したが、それに対してCD38結合性タンパク質#4(CTM#4)(配列番号79)が投与されたマウスは、この方法によって検出可能な腫瘍細胞を有さないようであった。
【0536】
MM1.S-Lucヒト多発性骨髄腫の播種性腫瘍を含む雌SCID/Beigeマウスの、週1回の4mg/kg、6mg/kg、又は10mg/kgのCD38結合性タンパク質#4での処理は、媒体処理と比較して著しい抗腫瘍活性をもたらした。4mg/kg又はそれより高い用量で、さらにどちらも週1回の投与スケジュールで、著しい抗腫瘍活性が観察された。
【0537】
インビボにおけるCD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)の活性を、Daudi-Lucヒト多発性骨髄腫播種性腫瘍を含むSCID/Beigeマウスを含むマウス異種移植モデルを使用して評価した。CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)を、サイクル間に1週間の中断を入れて2サイクルにわたり(1日目、3日目、5日目、8日目、10日目、12日目、22日目、24日目、26日目、29日目、31日目、及び33日目に投与)、マウスに0.5mg/kg又は0.6mg/kgの用量で投与した。媒体のみの対照グループと比較して、CD38ターゲティング参照分子#1(配列番号83)を受けたマウスにおいて、Daudi-Luc細胞の注射による植え付け後4日もの早期に、低減された腫瘍負荷が観察された(
図12Cを参照されたい)。
【0538】
(iv)マカク属のカニクイザルにおけるCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の毒性及び薬力学
非ヒト霊長類において、体重当たり約0.2~0.75mg/kgのCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)の1~4週にわたり週1回の静脈内投与を試験した。15日目及び22日目に抗薬物抗体が観察された。2又は4用量での≦0.75mg/kgのCD38結合性タンパク質#4(配列番号79)のQWでの投与は、関連する臨床徴候を起こすことなく十分許容された。非ヒト霊長類における試験は、CD38結合性タンパク質#4の投与が、循環するCD38±NK細胞、B細胞、及びT細胞の数を減少させることができることを示した。
【実施例2】
【0539】
B.実施例2.志賀毒素Aサブユニット由来のポリペプチドを含むCD38-ターゲティング融合タンパク質
この実施例のCD38ターゲティング融合タンパク質は、当業界において公知の技術を使用して調製された、CD38結合性領域、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及びタンパク質様のリンカーを含む細胞ターゲティング結合性領域ポリペプチド(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び/又はPCT/US2016/043902を参照されたい)を含む。この実施例の細胞ターゲティング融合タンパク質の一部は、それぞれ細胞ターゲティング結合性領域のポリペプチド及び志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む単一の連続するポリペプチドを含むように構築される。
【0540】
1.志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含むCD38ターゲティング融合タンパク質への取り込み後の結合機能性の保持に関するCD38結合性領域の試験
この実施例のCD38結合性タンパク質のCD38結合特徴は、蛍光ベースのフローサイトメトリーによって決定される。この実施例の特定のCD38-ターゲティング融合タンパク質のCD38陽性細胞へのBmaxは、およそ50,000~200,000MFIと測定され、KDは0.01~100nMの範囲以内である。
【0541】
2.結合性領域の融合後における志賀毒素機能の保持に関するCD38結合性タンパク質の試験
細胞ターゲティングタンパク質を、異種領域の融合の後に、志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能の保持に関して試験する。分析された志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能は、真核生物リボソームの触媒不活性化、細胞毒性、及び推論によって、自己を方向付ける、サイトゾルへの細胞内経路決定である。
【0542】
3.結合性タンパク質のリボソーム阻害能力の試験
結合性タンパク質の志賀毒素Aサブユニット由来の志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の触媒活性は、リボソーム阻害アッセイを使用して試験される。
【0543】
この実施例の細胞ターゲティングタンパク質のリボソーム不活性化性能は、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translationキット(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を使用した無細胞のインビトロのタンパク質翻訳アッセイを使用して決定される。キットは、Luciferase T7 Control DNA(L4821 Promega社、Madison、WI、U.S.)及びTNT(登録商標)Quick Master Mixを含む。リボソーム活性反応物は、製造元の説明書に従って調製される。試験しようとする志賀毒素由来の細胞ターゲティングタンパク質の一連の10倍希釈物を適切な緩衝液中で調製し、各希釈物につき一連の同一なTNT反応混合物成分を作製した。各試料の一連の希釈物を、Luciferase T7 Control DNAと共にTNT反応混合物のそれぞれと合わせる。試験試料を30セルシウス度(℃)で1.5時間インキュベートする。インキュベーションの後、Luciferase Assay Reagent(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての試験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質翻訳の量を、製造元の説明書に従って発光により測定する。
【0544】
翻訳阻害のレベルは、総タンパク質の対数変換された濃度の非線形回帰分析とそれに対する相対発光単位によって決定される。統計ソフトウェア(GraphPad Prism、San Diego、CA、U.S.)を使用して、50%阻害濃度(IC50)値を、「用量応答-阻害」という標題下のlog(阻害剤)対応答(3パラメータ)[Y=ボトム+((トップ-ボトム)/(1+10^(X - Log IC50)))]のPrismソフトウェアの関数を使用して各試料につき計算する。1又は2以上の実験からの各志賀毒素由来の細胞ターゲティングタンパク質のIC50値を計算する。
【0545】
4.CD38結合性タンパク質のCD38発現細胞への細胞毒性の試験
この実施例のCD38細胞ターゲティング融合タンパク質の細胞毒性特徴は、前の実施例で上述したように一般的な細胞殺滅アッセイによって決定される。この実施例の結合性タンパク質のCD50値は、黒色腫細胞の場合、細胞株に応じておよそ0.01~100nMである。
【実施例3】
【0546】
C.実施例3:再発性又は不応性多発性骨髄腫を有する参加者における例示的なCD38結合性タンパク質の安全性、忍容性、薬物動態学(PK)、及び効果を評価するための研究
この研究の目的(相1試験)は、例示的なCD38結合性タンパク質であるCD38結合性タンパク質#4(「CTM#4」、配列番号79)の安全性及び忍容性を評価することである。この研究は、最大耐量(MTD)及び/又は推奨される相2の用量(RP2D;recommended phase 2 dose)を確立すると予想され、さらに、再発性又は不応性多発性骨髄腫(RRMM)を有する参加者におけるCD38ターゲティング分子単独療法の予備的な評価を提供すると予想される。
【0547】
研究は、2つの相:用量漸増フェーズ(パート1)及び拡大フェーズ(パート2)で実行される。研究は、およそ81~102人の参加者(パート1に39~60人の参加者及びパート2におよそ54人の参加者)を登録する。
【0548】
用量漸増フェーズ(パート1)において、開始用量レベルは、50マイクログラム/キログラム(mcg/kg;microgram/kilogram)、週1回である。コホート1からの利用可能な安全性、PK、薬力学、及び効果のデータを検討した後、用量は、後続のコホートで100、200、335、500、及び665mcg/kgに漸増させ、次いで必要に応じて665mcg/kgを過ぎたら1.25増加させる。CTM#4を2週に1回投与する別の用量漸増も行ってもよい。
【0549】
拡大フェーズ(パート2)において、研究は、2つのタイプのRRMMコホート:ダラツムマブ再発性又は不応性(RR;relapsed or refractory)コホート(週1回及び2週に1回のCTM#4投与)及び抗CD38療法ナイーブコホート(週1回のCTM#4投与)を評価する。各拡大コホートのための開始用量は、研究の用量漸増フェーズからの利用可能な安全性、効果、PK、及び薬力学的なデータの検討の後にパート1で決定されたMTD/RP2D(週1回及び2週に1回)である。以下の表19に、対象投与コホートを記載する。
【0550】
【0551】
研究の全体の期間は、およそ34カ月である。参加者は、経過観察評価のために研究薬物の最後の用量の後に30日間フォローアップされる。
【0552】
この研究の主要転帰尺度は、以下を含む:
1.パート1:全体及び用量レベル当たりの処理中に発生した有害事象(TEAE;treatment-emergent adverse event)を有する参加者の数[時間枠:12カ月まで]。
2.パート1:各用量レベルで用量制限毒性(DLT)を有する参加者の数[時間枠:12カ月まで]。DLTは、少なくとも研究薬物療法での療法に関する可能性がある、研究者によって検討される事象のいずれかとして定義される。DLTは、血液学的又は非血液学的DLTでありうる。血液学的DLTは、サイクル1中に生じる血液学的TEAEが4以上のあらゆるグレードでありうるが、以下の例外を除く:明らかに外的な原因に起因する血液学的AE、グレード4のリンパ球減少症、7日より長く連続して続くグレード4の好中球減少症(ANC<500細胞/mm3)、あらゆるグレード及び期間の発熱性好中球減少症、臨床的に意味のある出血を伴うグレード3以上の血小板減少症、あらゆる期間のグレード4の血小板減少症、グレード3以上の毛細血管漏出症候群、又は基礎疾患と明らかに関係しないグレード3以上の溶血(例えば陰性の直接クームス試験)。非血液学的DLTは、サイクル1中に生じる非血液学的TEAEが3以上のあらゆるグレードでありうるが、以下の例外を除く:明らかに外的な原因に起因する非血液学的AE、72時間以内にうまく回復可能な(グレード4からグレード2以上;グレード3からグレード1以上又はベースライン)無症状の検査上の変化(腎臓及び肝臓検査値及びグレード4のリパーゼ/アミラーゼレベル以外)、制吐薬で管理可能なグレード3の吐き気/嘔吐、72時間未満続くグレード3の疲労、7日以内にグレード1以上又はベースラインに消散するALT又はASTのグレード3の上昇、グレード3の症状の再発を起こさない対症療法(例えば抗ヒスタミン剤、NSAID、麻酔剤、IVフルイド)に応答するグレード3のIRR。
3.毒性は、国立がん研究所の有害事象に関する有害事象共通用語規準バージョン5.0(NCI CTCAE 5.0;National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events version 5.0)に従って評価される。
4.パート1:3より大きいか又はそれに等しい(3以上の)グレードのTEAEを有する参加者の数[時間枠:12カ月まで]。グレード3以上のTEAEは、NCI CTCAE 5.0に従って評価される。
5.パート1:重篤な有害事象(SAE;serious adverse event)を有する参加者の数[時間枠:12カ月まで]。
6.パート1:TEAEによりCTM#4を中止した参加者の数[時間枠:12カ月まで]。
7.パート1:投与の遅延、投与の中断及び投与の低減を含む処理関連の投与が変更された参加者の数[時間枠:12カ月まで]。
8.パート1:検査値が臨床的に有意に変化した参加者の数[時間枠:12カ月まで]。
9.パート1:バイタルサインの測定値が臨床的に有意に変化した参加者の数[時間枠:12カ月まで]。
10.パート2:総合応答率(ORR;overall response rate)[時間枠:12カ月まで]。国際骨髄腫作業部会(IMWG;International Myeloma Working Group)統一効果判定規準(Uniform Response Criteria)によって定義されているように研究中に部分奏効(PR;partial response)又はそれより優れた状態を達成した参加者のパーセンテージ。PRは、血清Mタンパク質の50パーセント(%)以上の低減であり、さらに、90%以上の、又は24時間(h)当たり200ミリグラム(mg/)未満(<)の尿のMタンパク質の24時間における低減である。血清及び尿のMタンパク質が測定できない場合、Mタンパク質基準の代わりに、関連する及び関連しない遊離軽鎖(FLC)レベル間の差の50%以上の減少が必要である。血清及び尿のMタンパク質及び血清FLCアッセイが測定できない場合、Mタンパク質の代わりに、ベースラインのパーセンテージが30%以上という条件で、骨髄形質細胞における50%以上の低減が必要である。加えて、ベースライン時に存在する場合、軟部組織の形質細胞腫の50%以上のサイズ低減が必要である。2回の連続した評価が必要である;放射線撮影研究を実行した場合、進行性の又は新しい骨病変の公知の証拠はない。
[1]この研究の二次転帰尺度としては、以下が挙げられる:
1.パート1及びパート2、Cmax:CTM#4の最高血中濃度[時間枠:サイクル1及び2、1日目:投与前、及び投与後の複数のタイムポイントにおいて(168時間まで)(各サイクルは28日である)]。
2.パート1及びパート2、Tmax:CTM#4の最高血中濃度(Cmax;maximum observed concentration)到達する時間[時間枠:サイクル1及び2、1日目:投与前、及び投与後の複数のタイムポイントにおいて(168時間まで)(各サイクルは28日である)]。
3.パート1及びパート2、AUClast:CTM#4の時間0から最後の定量化可能な濃度の時間までの濃度-時間曲線下面積[時間枠:サイクル1及び2、1日目:投与前、及び投与後の複数のタイムポイントにおいて(168時間まで)(各サイクルは28日である)]。
4.パート1:総合応答率(ORR)[時間枠:12カ月まで]。ORRは、IMWG統一効果判定規準によって定義されているように研究中にPR又はそれより優れた状態を達成した参加者のパーセンテージと定義される。PRは、血清Mタンパク質の50%以上の低減、及び90%以上又は200mg/24時間未満の24時間の尿のMタンパク質における低減である。血清及び尿のMタンパク質が測定できない場合、Mタンパク質基準の代わりに、関連する及び関連しないFLCレベル間の差の50%以上の減少が必要である。血清及び尿のMタンパク質及び血清FLCアッセイが測定できない場合、Mタンパク質の代わりに、ベースラインのパーセンテージが30%以上という条件で、骨髄形質細胞における50%以上の低減が必要である。加えて、ベースライン時に存在する場合、軟部組織の形質細胞腫の50%以上のサイズ低減が必要である。2回の連続した評価が必要である;放射線撮影研究を実行した場合、進行性の又は新しい骨病変の公知の証拠はない。
5.パート1:臨床的有用率(CBR;clinical benefit rate)[時間枠:12カ月まで]。CBRは、IMWG統一効果判定規準によって定義されているように研究中に最小応答(MR)又はそれより優れた状態を達成した参加者のパーセンテージと定義される。MRは、血清Mタンパク質の25%以上の、ただし49%未満又はそれに等しい(≦)低減、及び24時間の尿のMタンパク質における50%~89%の低減と定義される。加えて、ベースライン時に存在する場合、軟部組織の形質細胞腫のサイズにおける25%~49%の低減も必要である。溶解性骨病変のサイズ又は数は増加しない(圧迫骨折の発生は応答を排除しない)。
6.パート1及びパート2:無進行生存(PFS;progression-free survival)[時間枠:用量投与の日付から任意の原因による死亡まで(12カ月まで)]。PFSは、最初の用量の日付から、IMWG基準による進行性疾患(PD)の日付、又は任意の原因による死亡の日付までの時間である。PD:絶対的増加が0.5グラム/デシリットル(g/dL)以上の血清M成分における最も低い応答値からの25%の増加;初発のM成分が5g/dL以上の場合の再発を定義するための、1g/dL以上の血清M成分の増加;尿M成分(絶対的増加≧200mg/24時間)であり;測定可能な血清及び尿のMタンパク質レベルがみられない参加者においてのみ:関連する及び関連しないFLCレベル間の差(絶対的増加>10ミリグラム/デシリットル[mg/dL])であり;測定可能な血清及び尿のMタンパク質レベルがみられない参加者、及びFLCレベルによって測定可能な疾患がない参加者においてのみ、骨髄の形質細胞%(絶対%≧10%);既存の骨病変又は軟部組織の形質細胞腫のサイズにおける新しい又は明確な増加の発生であり;高カルシウム血症の発生は単に、形質細胞増殖障害に起因する可能性があり;新しい療法が必要になる前に、2回連続して評価される。
7.パート1及びパート2:応答期間(DOR;duration of response)[時間枠:応答の最初の証拠書類の日付から最初の文書化されたPDの日付まで(12カ月まで)]。DORは、応答の最初の証拠書類の日付から最初の文書化されたPDの日付までの時間である。PDは、絶対的増加が0.5g/dL以上の血清M成分における最も低い応答値からの25%の増加;初発のM成分が5g/dL以上の場合の再発を定義するための、1g/dL以上の血清M成分の増加;尿M成分(絶対的増加≧200mg/24時間)であり;測定可能な血清及び尿のMタンパク質レベルがみられない参加者においてのみ:関連する及び関連しないFLCレベル間の差(絶対的増加>10mg/dL);測定可能な血清及び尿のMタンパク質レベルがみられない参加者、及びFLCレベルによって測定可能な疾患がない参加者においてのみ、骨髄の形質細胞%(絶対%≧10%);既存の骨病変又は軟部組織の形質細胞腫のサイズにおける新しい又は明確な増加の発生;形質細胞増殖障害に単に起因する可能性がある高カルシウム血症の発生であり;新しい療法が必要になる前に、2回連続して評価される。
8.パート1及びパート2:MRを達成した参加者のパーセンテージ[時間枠:12カ月まで]。25%の腫瘍低減と定義されるMRを達成した参加者のパーセンテージ。MRは、IMWG統一効果判定規準によって定義されているように、血清Mタンパク質の25%以上、ただし49%以下の低減及び24時間の尿のMタンパク質における50%~89%の低減と定義される。
9.パート1及びパート2:CTM#4の投与後に抗薬物抗体を有する参加者の数[時間枠:12カ月まで]。
10.パート2:用量の変更、処理の中断、及びバイタルサインを含むDLT及び他のTEAEを有する参加者の数[時間枠:12カ月まで]。DLTは、少なくとも研究薬物療法での療法に関する可能性がある、研究者によって検討される事象のいずれかとして定義される。毒性は、NCI CTCAE 5.0に従って評価される。
11.パート2:全生存(OS;overall survival)[時間枠:用量投与の日付から任意の原因による死亡まで(12カ月まで)]。OSは、用量投与の日付から任意の原因による死亡までの時間と定義される。
12.パート2:応答までの時間(TTR;time to response)[時間枠:研究処理の最初の用量の日付から応答の最初の証拠書類の日付まで(12カ月まで)]。研究処理の最初の用量の日付から応答の最初の証拠書類の日付(PR又はより優れた)までの時間。PRは、血清Mタンパク質の50%以上の低減、及び24時間の尿のMタンパク質における90%以上又は200mg/24時間未満への低減である。血清及び尿のMタンパク質が測定できない場合、Mタンパク質基準の代わりに、関連する及び関連しないFLCレベル間の差の50%以上の減少が必要である。血清及び尿のMタンパク質及び血清FLCアッセイが測定できない場合、Mタンパク質の代わりに、ベースラインのパーセンテージが30%以上という条件で、骨髄形質細胞における50%以上の低減が必要である。加えて、ベースライン時に存在する場合、軟部組織形質細胞腫の50%以上のサイズ低減が必要である。2回の連続した評価が必要である;放射線撮影研究を実行した場合、進行性の又は新しい骨病変の公知の証拠はない。
13.パート2:完全奏効(CR;complete response)又は最良部分奏効(VGPR;very good partial response)を達成した参加者のパーセンテージ[時間枠:12カ月まで]。CR又はVGPRは、IMWG基準によって定義される。CRは、血清及び尿の陰性の免疫固定、あらゆる軟部組織の形質細胞腫の消失、及び骨髄における5%未満形質細胞と定義され;測定可能な疾患が血清FLCレベルによってのみである参加者において、CR基準に加えて0.26~1.65の正常なFLC比率が必要であり;2回の連続した評価が必要である。VGPRは、免疫固定によって検出可能であるが電気泳動では検出可能ではない血清及び尿M成分、又は血清M成分における90%以上の低減、加えて尿M成分<100mg/24時間と定義され;測定可能な疾患が血清FLCレベルによってのみである参加者において、VGPR基準に加えて、関連する及び関連しないFLCレベル間の差の>90%の減少が必要であり;2回の連続した評価が必要である。
[2]研究に参加するために、対象は、18歳以上(成人、年長者)でなければならず、男性又は女性のどちらでもよい。研究のパート1の追加の組入れ基準は、以下を含む:
1.MMの確認された診断を有する。
2.RRMMを有し、この参加者集団において臨床上の利益を付与することが公知の利用可能な療法での治療が失敗している、それに不耐性である、又はそのための候補ではない。
3.前の療法のための以下の基準の全てを満たすべきである:
・少なくとも1種のプロテアソーム阻害剤(PI)、少なくとも1種の免疫調節薬(IMiD)、及び少なくとも1種のステロイドに不応性であるべきである。
・3回以上の前の治療ラインを受けているべきであるか、又はこれらのラインの1つがPI及びIMiDの組合せを含む場合、少なくとも2回の前の治療ラインを受けているべきであるかのいずれかである。
・抗CD38療法での前の治療(ダラツムマブを含む)が許容される。
4.以下のうち少なくとも1つとして定義される測定可能な疾患を有する:
・血清タンパク質電気泳動(SPEP)で500mg/dL(5g/L)以上の血清Mタンパク質。
・尿タンパク質電気泳動(UPEP)で200mg/24時間以上の尿Mタンパク質。
・血清FLC比率が異常な場合、関連するFLCレベルが10mg/dL以上(100ミリグラム/リットル[mg/L]以上)の血清FLCアッセイの結果。
5.0又は1のパフォーマンスステータススコア米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG;Eastern Cooperative Oncology Group)を有する。
6.スクリーニング心電図(ECG)で、男性において450ミリ秒(ms)以下又は女性において470ms以下のQTcFと定義された、Fridericiaの方法によって補正された正常なQT間隔(QTcF)を有する。
7.研究のエントリー時に以下の臨床検査基準を満たす:
・総ビリルビン≦1.5×正常な範囲の上限(ULN)、ただし直接のビリルビンが<2.0×ULNでなければならないが、ジルベール症候群を有する参加者の場合を除く。
・血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が2.5×ULN以下でなければならない。
・推測の糸球体濾過率(eGFR)≧30ミリリットル/分(mL/分/1.73平方メートル[m2]、腎疾患における食物の修正(MDRD)の式を使用)。
・絶対好中球数(ANC)≧1000/立方ミリメートル(/mm3)(≧1.0×109/リットル[/L]);スポンサーとの議論の後、骨髄において形質細胞が50%を超える参加者の場合、750/mm3以上(0.75×109/L以上)の数が許容される可能性がある。
・75,000/mm3以上(75×109/L以上)の血小板数;スポンサーとの議論の後、骨髄において形質細胞が50%を超える参加者の場合、50,000/mm3以上(50×109/L以上)の値が許容される可能性がある。
・ヘモグロビン≧7.5g/dL(このレベルに到達させるために参加者に輸注することは許容されない)。
[3]研究のパート2のための追加の組入れ基準は、以下を含む:
1.MMの確認された診断を有する。
2.前の療法のための以下の基準の全てを満たすべきである:
・少なくとも1種のPI及び少なくとも1種のIMiDに不応性又は不耐性であるべきである。
・3回以上の前の治療ラインを受けているべきか、又はこれらのラインの1つがPI及びIMiDの組合せを含む場合、少なくとも2回の前の治療ラインを受けているべきであるかのいずれかである。
・抗CD38療法ナイーブ拡大コホートに登録された参加者を除いて、抗CD38療法での前の治療(ダラツムマブを含む)が許容される。
・ダラツムマブ-RRコホート(週1回及び2週間に1回のCTM#4投与):参加者は、治療中のどのような時でもダラツムマブに対してRRでなければならない。注目すべきことに、他の抗CD38療法に対する参加者のRRは除外される。
・抗CD38療法ナイーブコホート(週1回の投与):参加者は、どのような前の抗CD38療法を受けていてはならない。
3.以下のうち少なくとも1つとして定義される測定可能な疾患を有する:
・SPEPにおいて500mg/dL以上(5g/L以上)の血清Mタンパク質。
・UPEPにおいて200mg/24時間以上の尿Mタンパク質。
・血清FLC比率が異常な場合、関連するFLCレベルが10mg/d以上(100mg/L以上)の血清FLCアッセイの結果。
4.0又は1のECOGパフォーマンスステータススコアを有する。
5.スクリーニングECGで、男性において450ms以下又は女性において470ms以下のQTcFと定義された正常なQTcFを有する。
6.研究のエントリー時に以下の臨床検査基準を満たす:
・総ビリルビン≦1.5×ULN、ただし直接のビリルビンが<2.0×ULNでなければならないジルベール症候群を有する参加者の場合を除く。
・血清ALT及びASTは2.5×ULN以下でなければならない。
・MDRDの式を使用して30mL/分/1.73m2以上のeGFR。
・1000mm3以上(1.0×109/L以上)のANC;スポンサーとの議論の後、骨髄において形質細胞が50%を超える参加者の場合、750/mm3以上(0.75×109/L以上)の数が許容できる。
・75,000/mm3以上(75×109/L以上)の血小板数;スポンサーとの議論の後、骨髄において形質細胞が50%を超える参加者の場合、50,000/mm3以上(50×109/L以上)の値が許容される可能性がある。
・7.5g/dL以上のヘモグロビン(このレベルに到達させるために参加者に輸注することは許容されない)。
[4]対象は、彼又は彼女が以下の基準の1又は2以上を満たす場合、研究から除外される:
1.多発性ニューロパチー、臓器巨大症、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症及び皮膚変化(POEMS)症候群、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、孤立性形質細胞腫、アミロイドーシス、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、又は免疫グロブリンM(IgM)骨髄腫を有する。
2.NCI CTCAEグレードが3以上の感覚性又は運動性ニューロパチーを有する。
3.CTM#4の最初の用量の前に以下の最小限インターバル以内で以下の治療/手順のいずれかの最終的な用量を受けている:
・PI及びIMiDなどの骨髄腫特異的な療法-14日。
・抗CD38(a)療法(MTD/RP2Dが確立されたら、ウォッシュアウト期間は、抗CD38療法を受けている参加者のために研究の拡大相(パート2)において調整することができる)-90日。
・骨髄腫のためのコルチコステロイド療法-7日。
・局所的な骨病変のための放射線療法-14日。
・大手術-30日。
・自己幹細胞移植-90日。
・治験療法-30日。
4.同種幹細胞移植又は臓器移植を受けている。
5.脱毛を除く前の骨髄腫処理又は手順(化学療法、免疫療法、放射線療法)に対する有害反応から1以下のNCI CTCAE V5グレード又はベースラインまで回復していない。
6.MMの中枢神経系(CNS)障害の臨床徴候を有する。
7.任意の臓器の公知の、又は疑いのある軽鎖アミロイドーシスを有する(アミロイドーシスの他の証拠のない骨髄生検におけるアミロイドの存在が許容できる)。
8.うっ血性心不全(ニューヨーク心臓協会)のII以上のクラス若しくは左室駆出率(LVEF<40%、心筋症、活動性虚血、若しくはこれまでの6カ月以内の他のあらゆる制御不能な心臓の状態、例えば狭心症若しくは心筋梗塞、抗凝血剤などの療法を必要とする臨床的に有意な不整脈、又は臨床的に有意な制御不能な高血圧を有する。
9.全身療法を必要とする慢性又は活動性感染、加えて、完全に治癒していない症候的なウイルス感染の病歴(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)又はB型若しくはC型ウイルス性肝炎)を有する。
10.いずれかのモノクローナル抗体又はキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法剤の輸注後に全身性炎症反応症候群(SIRS)/サイトカイン放出症候群(CRS)反応の病歴を有する。
11.プレドニゾン又はそれに等しいものの10ミリグラム/日(mg/日)より多くの用量での全身性コルチコステロイドの使用を必要とする慢性状態。
【0553】
本発明の一部の実施形態について、例示を目的として記載してきたが、本発明が、本発明の精神から逸脱したり、特許請求の範囲を超えたりしない限りにおいて、多くの修飾、変動、及び適応を伴い、当業者の技術の範囲内にある、多数の均等物又は代替的解決法の使用を伴って実施されうることが明らかであろう。
【0554】
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、又は特許出願が、参照によりその全体において組み込まれることが、具体的かつ個別に指し示された場合と同じ程度において、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。国際特許出願公開第2014/164680号パンフレット、国際特許出願公開第2014/164693号パンフレット、国際特許出願公開第2015/138435号パンフレット、国際特許出願公開第2015/138452号パンフレット、国際特許出願公開第2015/113005号パンフレット、国際特許出願公開第2015/113007号パンフレット、国際特許出願公開第2015/191764号パンフレット、国際特許出願公開第2016/196344号パンフレット、国際特許出願公開第2017/019623号パンフレット、国際特許出願公開第2018/106895号パンフレット、及び国際特許出願公開第2018/140427号パンフレットは、各々、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。米国特許出願第2015/259428号明細書、同第2016/17784号明細書、及び同第2017/143814号明細書の発明は、各々、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列についての、GenBank(National Center for Biotechnology Information、U.S.)による、全ての電子的に利用可能な生物学的配列情報の完全な発明は、各々、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0555】
【配列表】