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特許7418767マルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】マルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20240115BHJP
【FI】
G06F30/23
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023114738
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】202211363620.2
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520448452
【氏名又は名称】浙大城市学院
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】胡 英涛
(72)【発明者】
【氏名】徐 文杰
(72)【発明者】
【氏名】▲ざん▼ 良通
(72)【発明者】
【氏名】丁 智
(72)【発明者】
【氏名】王 震
(72)【発明者】
【氏名】丁 超
(72)【発明者】
【氏名】湯 慧萍
(72)【発明者】
【氏名】陳 成
(72)【発明者】
【氏名】銭 海敏
(72)【発明者】
【氏名】趙 蕊
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0054207(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114065593(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113484909(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113963130(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111476900(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G01N 33/24
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法であって、
モンテカルロシミュレーション方法を利用してランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルを生成するステップ1と、
Delaunay三角グリッドオープンソースツールボックスDFNsMeshGenerator3Dを呼び出し、割れ目面と基質境界面に対して三角グリッド分けを行い、Delaunay四面体グリッド生成器TetGenを呼び出して岩石基質に対して四面体グリッド分けを行うステップ2であって、
割れ目面の三角グリッド分けを行う際に、6つの基質境界面の三角グリッドを同時に得ることを保証するために、DFNsMeshGenerator3D入力ファイルに6つの割れ目面の頂点と中心座標を追加し、6つの基質境界面に対して三角グリッド分けを行う必要があり、
岩石基質四面体グリッド分けの際に、割れ目面及び6つの基質境界面の三角グリッド形態のままにすることを保証するために、TetGenの入力ファイルは、割れ目面と基質境界面の三角グリッドユニットのノードリストと面リストとを含むべきであるステップ2と、
割れ目間のマクロスケール不均質性、三次元割れ目ネットワークマクロスケール不均質性又は割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルを割り当て又は投影するステップ3であって、
不均質性を構築することは、
割れ目間のマクロスケール不均質性を構築するサブステップであって、シミュレーション領域におけるすべての割れ目に番号をつけ、割れ目の開度と割れ目の大きさとの間のべき乗則関係に基づき、各割れ目の平均開度値bcorrelated,iを算出し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルの各割れ目に各割れ目の平均開度値bcorrelated,iを付与し、各割れ目の大きさが異なるため、それによって得られた割れ目間開度の違いは、割れ目間のマクロスケール不均質性であるサブステップと、
割れ目ネットワークマクロスケール不均質性を構築するサブステップであって、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルにおける各割れ目の平均割れ目の開度bcorrelated,iに基づき、すべての割れ目の平均開度値bconstantを算出し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルの各割れ目の平均割れ目の開度値にbconstantを付与し、それによって得られた割れ目ネットワークの違いは、割れ目ネットワークマクロスケール不均質性であるサブステップと、
割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築するサブステップであって、逐次ランダム累積法に基づき、割れ目の開度標準差σとHurst指数Hを与えることによって、自己アフィン粗さの特徴を有する割れ目面を生成し、得られた各割れ目の平均開度値bcorrelated,iに基づき、転位法を使用して正規分布に合致するランダム割れ目の開度場を構築し、重心補間法を利用してランダム割れ目の開度場をランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルの各割れ目の三角グリッドノードに投影し、それによって得られた割れ目内部開度の違いは、割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性であるサブステップとを含むステップ3と、
割れ目面の三角グリッドユニットと基質四面体グリッドユニットに対してデータ変換を行い、マルチスケール不均質性を有し、且つ岩石基質を考慮する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル又はグリッドモデルを得るステップ4と
を含む、ことを特徴とするマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項2】
前記ステップ1におけるモンテカルロシミュレーション方法に必要なパラメータは、
シミュレーション対象の実情に基づいて決定されたシミュレーション領域の長さ、幅と高さ、及び
シミュレーション対象の実情に基づいて決定された、数と生成状況と密度と大きさと
を含むネットワーク割れ目幾何パラメータである、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項3】
前記ステップ1には、具体的には、dfnWorksオープンソースソフトウェア又は他のモデリングソフトウェアを利用してモンテカルロシミュレーション方法を使用してランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルを生成することが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項4】
前記ステップ2は、生成された割れ目幾何パラメータを処理変換してDelaunay三角グリッドオープンソースツールボックスDFNsMeshGenerator3Dの入力ファイルを得る必要がある、ことを特徴とする請求項2に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項5】
割れ目の開度と割れ目の大きさのべき乗則関係表現式は、
ここで、iは、三次元割れ目ネットワークモデルにおけるi本目の割れ目であり、i=1、2、3、…、Nであり、ここで、Nは、割れ目総数であり、bcorrelated,iは、i本目の割れ目の平均割れ目の開度であり、rは、i本目の割れ目の大きさであり、γとβは、べき乗則関係の特徴係数と特徴指数である、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項6】
前記ステップ3における割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築することは、以下のサブステップを含み、
ステップ3.3.3.各離散割れ目の二次元デカルト座標開度分布場を得、
として表され、
MATLAB(登録商標)重心補間法を利用して三次元デカルト座標に生成された二次元デカルト座標割れ目の開度場を三次元割れ目ネットワークモデルの各割れ目の三角グリッドノードに投影するため、三次元割れ目ネットワークモデルにおける各割れ目の割れ目の開度分布binternal,i(X)は、
として表され、
式において、X=(x’,y’,z’)、binternal,i(X)=0は、X座標点の割れ目の開度が0、即ち割れ目内部の上下面の接触領域であることを表す、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項7】
前記ステップ3における割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築するHは、Hurst指数であり、割れ目が天然岩石である場合、値の範囲は、0.45~0.87であり、H値が小さければ小さいほど、粗さは、大きくなる、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項8】
前記ステップ3において、逐次ランダム累積アルゴリズムを利用して二次元デカルト座標割れ目の開度場を生成する場合、MATLAB(登録商標)を使用して空間投影を行う際に開度場が割れ目ネットワークモデルにおける割れ目を完全に覆うことができることを保証するように、二次元割れ目の中心が三次元割れ目の中心に整合し、且つ二次元割れ目のサイズが三次元割れ目ネットワークモデルにおける各割れ目の平面サイズよりも大きいことを保証する必要がある、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項9】
MATLAB(登録商標)を利用して空間投影を行う場合、各グリッドノード座標に基づいて補間計算を行って割れ目の開度値を得る必要があり、これを踏まえて各三角グリッドユニットの3つのノードに対して平均値を取ると、各三角グリッドの平均割れ目の開度を得ることができ、三角グリッドの分けが細ければ細かいほど、割れ目ネットワークモデルの割れ目の開度場の描写は、正確になる、ことを特徴とする請求項8に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【請求項10】
前記ステップ4には、
.vtkフォーマットファイルを生成してParaviewを使用して割れ目面の三角グリッドユニットと基質四面体グリッドユニットに対してデータ変換を行い、マルチスケール不均質性を有し、且つ岩石基質を考慮する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル又はグリッドモデルを得ることと、必要に応じてグリッドモデルに対して可視化分析を行い、.mshフォーマットファイルを生成してOpenGeosysを使用して浸透流と溶質遷移シミュレーションを展開することとが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダム割れ目モデルの確立技術分野に属し、特にマルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法に関する。
【背景技術】
【0002】
岩体における大量に発育するランダム割れ目の互いの分割関係は、空間的に連通する割れ目ネットワークを形成し、これらの連通性が良好な割れ目ネットワークは、地下流体運動と汚染物遷移の主なチャンネルを構成しており、地下水の浸透流と汚染物遷移及び核種遷移レートなどの特殊な問題に対して重要な制御作用がある。現在、複雑な割れ目岩体を表す数学モデルは、全体的には、等価連続媒体モデル、離散割れ目ネットワークモデルと割れ目ネットワーク岩体(又は割れ目-穴隙二重媒体)モデルに分けられる。連続方法と比べて、離散割れ目ネットワーク方法は、それが各割れ目幾何特徴を正確に考慮する優位性があるため、広く応用されており、このような方法により、離散割れ目岩体内の流体流動と溶質遷移の特徴を正確に予測することができる。
【0003】
割れ目ネットワークモデルがマルチスケール不均質性を有するため、割れ目岩体内の溶質遷移プロセスを正確に特徴付けることは、依然として一定の挑戦性を有する。このマルチスケール不均質性は、主に以下を含み、(1)割れ目ネットワークマクロスケール不均質性、例えばネットワークランダム分布、割れ目密度と割れ目大きさ、(2)割れ目間開度分布マクロ不均質性、即ち異なる割れ目間の割れ目の開度は、変異性を有する。一般的には、異なる割れ目の開度は、同じ値、ランダム値、割れ目の大きさとの関連又は半関連関係であってもよく、(3)割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性により、各割れ目内部の開度分布は、異なる。近年、研究者は、上記3種類の異なる不均質スケールにおける浸透流(優位性のある流チャンネル、滲透率の変化)と溶質遷移(「早期到着」と「尾引き」の非フィク遷移特徴)についていくつかの研究を行った。例えば、割れ目ネットワークモデルを利用して割れ目ランダム分布と割れ目密度などのネットワークスケール不均質性が異なる溶質透過曲線、平均破壊時間の不決定性に対する影響を検討する。なお、いくつかの学者の研究によると、不均一に分布する割れ目の開度により、割れ目ネットワークモデルに極めて低流速と高流速の領域が形成され、顕著な優先的な浸透流経路が形成され、さらに溶質の「早期到着」と「尾引き」の特徴が増強されることが分かった。しかしながら、天然割れ目岩体は、割れ目ネットワークと多孔質岩石で構成され、割れ目ネットワークと周囲の岩石基質との間の相互作用が溶質遷移行為、特に長時間スケールの溶質遷移プロセスに明らかな影響がある。そのため、割れ目と岩石基質との間の物質交換プロセスを考慮することは、割れ目岩体における溶質遷移行為を正確に予測することに重要な意義がある。近年、コンピュータ技術の発展と数値シミュレーション技術の進歩に伴い、割れ目-基質システムにおける溶質遷移行為に対する表示シミュレーション研究で、一部の学者は、三次元割れ目ネットワーク分布と岩石基質の影響を同時に考慮し始める。
【0004】
しかしながら、三次元離散割れ目ネットワーク幾何特徴が、比較的に複雑であり、且つランダム分布の特徴を有するため、割れ目ネットワークと岩石基質のグリッドの分け及び正確な描写と両方間の溶質交換のシミュレーションは、まだ一定の困難があり、それに関連する数値モデル又はシミュレーションソフトウェア報道は、比較的に少ない。そのため、マルチスケール不均質性と岩石基質影響を同時に考慮する三次元割れ目ネットワーク岩体モデルを構築することは、複雑な割れ目ネットワーク岩体における流体流動と溶質遷移メカニズムのさらなる研究に役立ち、核廃棄物処理、地下汚染物対策などの大型地下工事の安全で安定した運行の向上には重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題に対して、本発明の目的は、マルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明で採用される技術案は、以下の通りである。
【0007】
ステップ1.モンテカルロシミュレーション方法を利用してランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルを生成し、
ステップ2.Delaunay三角グリッドオープンソースツールボックスDFNsMeshGenerator3Dを呼び出し、割れ目面と基質境界面に対して三角グリッド分けを行い、Delaunay四面体グリッド生成器TetGenを呼び出して岩石基質に対して四面体グリッド分けを行い、
割れ目面の三角グリッド分けを行う際に、6つの基質境界面の三角グリッドを同時に得ることを保証するために、DFNsMeshGenerator3D入力ファイルに6つの割れ目面の頂点と中心座標を追加し、6つの基質境界面に対して三角グリッド分けを行う必要があり、
岩石基質四面体グリッド分けの際に、割れ目面及び6つの基質境界面の三角グリッド形態のままにすることを保証するために、TetGenの入力ファイルは、割れ目面と基質境界面の三角グリッドユニットのノードリストと面リストとを含むべきであり、
ステップ3.割れ目間のマクロスケール不均質性又は三次元割れ目ネットワークマクロスケール不均質性又は割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルを割り当て、それは、
割れ目間のマクロスケール不均質性を構築し、シミュレーション領域におけるすべての割れ目に番号をつけ、割れ目の開度と割れ目の大きさとの間のべき乗則関係に基づき、各割れ目の平均開度値bcorrelated,iを算出し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルの各割れ目に開度値bcorrelated,iを付与し、各割れ目の大きさが異なるため、それによって得られた割れ目間開度の違いは、割れ目間のマクロスケール不均質性であるサブステップと、
割れ目ネットワークマクロ不均質性を構築し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルにおける各割れ目の平均割れ目の開度bcorrelated,iに基づき、すべての割れ目の平均開度値bconstantを算出し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルの各割れ目の平均割れ目の開度値にbconstantを付与し、それによって得られた割れ目ネットワークの違いは、割れ目ネットワークマクロ不均質性であるサブステップと、
割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築し、逐次ランダム累積法に基づき、割れ目の開度標準差σとHurst指数Hを与えることによって、自己アフィン粗さの特徴を有する割れ目面を生成し、得られた各割れ目の平均開度値bcorrelated,iに基づき、転位法を使用して正規分布に合致するランダム割れ目の開度場を構築し、重心補間法を利用してランダム割れ目の開度場をランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルの各割れ目の三角グリッドノードに投影し、それによって得られた割れ目内部開度の違いは、割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性であるサブステップとを含み、
ステップ4.割れ目面の三角グリッドユニットと基質四面体グリッドユニットに対してデータ変換を行い、マルチスケール不均質性を有し、且つ岩石基質を考慮する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル又はグリッドモデルを得る。
【0008】
さらに、前記ステップ1におけるモンテカルロシミュレーション方法に必要なパラメータは、
シミュレーション対象の実情に基づいて決定されたシミュレーション領域の長さ、幅と高さ、及び
シミュレーション対象の実情に基づいて決定された、数と生成状況と密度と大きさとを含むネットワーク割れ目幾何パラメータである。
【0009】
さらに、ステップ1には、具体的には、dfnWorksオープンソースソフトウェア又は他のモデリングソフトウェア又は自主開発コードを利用してモンテカルロシミュレーション方法を使用してランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルを生成することが含まれる。
【0010】
さらに、前記ステップ2は、生成された割れ目幾何パラメータを処理変換してDelaunay三角グリッドオープンソースツールボックスDFNsMeshGenerator3Dの入力ファイルを得る必要がある。
【0011】
さらに、割れ目の開度と割れ目の大きさのべき乗則関係表現式は、
ここで、iは、三次元割れ目ネットワークモデルにおけるi本目の割れ目であり、i=1、2、3、…、Nであり、ここで、Nは、割れ目総数であり、bcorrelated,iは、i本目の割れ目の平均割れ目の開度であり、rは、i本目の割れ目の大きさであり、γとβは、べき乗則関係の特徴係数と特徴指数である。
【0012】
さらに、前記ステップ3における割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築することは、以下のサブステップを含む。
【0013】
ステップ3.3.3.各離散割れ目の二次元デカルト座標開度分布場を得、
MATLAB(登録商標)重心補間法を利用して三次元デカルト座標に生成された二次元デカルト座標割れ目の開度場を三次元割れ目ネットワークモデルの各割れ目の三角グリッドノードに投影するため、三次元割れ目ネットワークモデルにおける各割れ目の割れ目の開度分布binternal,i(X)は、
式において、X=(x’,y’,z’)、binternal,i(X)=0は、X座標点の割れ目の開度が0、即ち割れ目内部の上下面の接触領域であることを表す。
【0014】
さらに、前記ステップ3における割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築するHは、Hurst指数であり、割れ目が天然岩石である場合、値の範囲は、0.45~0.87であり、H値が小さければ小さいほど、粗さは、大きくなる。
【0015】
さらに、前記ステップ3において、逐次ランダム累積アルゴリズムを利用して二次元デカルト座標割れ目の開度場を生成する場合、MATLAB(登録商標)を使用して空間投影を行う際に開度場が割れ目ネットワークモデルにおける割れ目を完全に覆うことができることを保証するように、二次元割れ目の中心が三次元割れ目の中心に整合し、且つ二次元割れ目のサイズが三次元割れ目ネットワークモデルにおける各割れ目の平面サイズよりも大きいことを保証する必要がある。
【0016】
さらに、MATLABを利用して空間投影を行う場合、各グリッドノード座標に基づいて補間計算を行って割れ目の開度値を得る必要があり、これを踏まえて各三角グリッドユニットの3つのノードに対して平均値を取ると、各三角グリッドの平均割れ目の開度を得ることができ、三角グリッドの分けが細ければ細かいほど、割れ目ネットワークモデルの割れ目の開度場の描写は、正確になる。
【0017】
さらに、前記ステップ4には、
.vtkフォーマットファイルを生成してParaviewを使用して割れ目面の三角グリッドユニットと基質四面体グリッドユニットに対してデータ変換を行い、マルチスケール不均質性を有し、且つ岩石基質を考慮する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル又はグリッドモデルを得ることと、必要に応じてグリッドモデルに対して可視化分析を行い、.mshフォーマットファイルを生成してOpenGeosysを使用して浸透流と溶質遷移シミュレーションを展開することとが含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有益な効果は、本出願が、三次元割れ目ネットワークランダム分布と複雑な構造によるマクロ不均質性だけでなく、割れ目表面の粗さによるミクロスケール不均質性も考慮しており、モンテカルロ方法によって実際の割れ目ネットワーク岩体に類似する粗い三次元割れ目ネットワーク岩体モデルを再構築しており、複雑な割れ目ネットワーク構造及び周囲の岩石基質をより現実的にシミュレーションすることができ、岩体割れ目浸透流と汚染物遷移の理論研究業務に比較的に正確な数値モデルを提供したことである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のフローチャートである。
図2】本発明の割れ目ネットワーク構造概略図である。
図3】本発明の割れ目面と境界面の三角グリッド概略図である。
図4】本発明の岩石基質四面体グリッド概略図である。
図5】本発明のマルチスケール不均質性割れ目ネットワークモデル概略図である。
図6】本発明のマルチスケール不均質性と岩石基質を考慮する割れ目ネットワーク岩体モデル概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の上記目的、特徴と利点をより明らかに分かりやすくするために、以下では、図面を結び付けながら本発明の具体的な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
以下の記述において、本発明を十分に理解することを容易にするために、多くの具体的な詳細を記述するが、本発明は、ここで記述される方法と異なる他の方法で実施されてもよく、当業者は、本発明の内包を損なうことなく類似している普及を行うことができるため、本出願は、以下に開示される具体的な実施例に制限されない。
【0022】
本発明は、マルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法を提供し、図1に示すように、この方法は、以下のステップを含む。
【0023】
ステップ1:まず、UbuntuシステムでdfnWorksオープンソースソフトウェア又は他のモデリングソフトウェアを開いて入力ファイルに変数を追加し、シミュレーション領域の長さ、幅と高さがいずれも15mであり、ネットワーク割れ目組数が1であり、割れ目数が40であり、割れ目密度が0.5であるように設定し、割れ目生成状況は、Fisher分布を呈し、ここで、割れ目生成状況(傾向、傾斜角)とFisher定数の値は、それぞれ90°、45°と10であり、割れ目大きさは、切断べき乗関数分布を呈し、ここで、割れ目半径の上下限の値は、それぞれ2mと8mであり、べき乗指数は、1.8であり、割れ目平均開度と割れ目の大きさは、べき乗則関係を呈し、べき乗則関係の特徴係数γと特徴指数βの値は、それぞれ5.0×10-4と0.5である。
【0024】
次に、dfnWorksオープンソースソフトウェア又は他のモデリングソフトウェアのdfnGenモジュールに基づき、モンテカルロシミュレーション方法を採用して図2に示すランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルを生成する。
【0025】
ステップ2:まず、Pythonスクリプトを利用してdfnWorksで生成された割れ目幾何パラメータを一定のフォーマットの入力ファイルに変換し、Delaunay三角グリッドオープンソースツールボックスDFNsMeshGenerator3Dを呼び出すとともに、三次元割れ目ネットワークと基質境界面に対して三角グリッド分けを行う。割れ目面の三角グリッド分けを行う際に、6つの境界面の三角グリッドを同時に得ることを保証するために、入力ファイルに6つの割れ目面の頂点と中心座標を追加する必要があり、6つの境界面を割れ目面として三角グリッド分けを行い、割れ目面と境界面の三角形グリッドの分け結果は、図3の通りである。図3において、x、y、zは、三次元座標系であり、黒くて短い実線は、グリッド線分であり、3本の短い実線で囲まれた三角形は、上記三角グリッドである。
【0026】
次に、Pythonスクリプトを利用して割れ目面と基質境界面の三角グリッドユニットを抽出し、三角グリッドユニットのノードリストと、面リストとを含むPLC入力幾何ファイルを構築し、Delaunay四面体グリッド生成器TetGenを呼び出して岩石基質に対して四面体グリッド分けを行い、図4に示すように、図において、四面体グリッドを示すために、正直方体の割れ目岩体モデルを分割処理しており、ここで、円で示された領域は、典型的な四面体グリッド構造を提示した。
【0027】
ステップ3、割れ目間のマクロスケール不均質性、三次元割れ目ネットワークマクロスケール不均質性又は割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を構築し、ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルを割り当て又は投影し、不均質性を構築することは、以下のサブステップを含む。
【0028】
割れ目間のマクロスケール不均質性を構築し、まず、シミュレーション領域におけるすべての割れ目に番号をつけ、割れ目の開度と割れ目の大きさとの間のべき乗則関係に基づき、各割れ目の平均開度値bcorrelated,iを算出し、
割れ目の開度と割れ目の大きさのべき乗則関係表現式は、
式において、iは、ランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルにおけるi本目の割れ目であり、i=1、2、3、…、Nであり、ここで、Nは、割れ目総数であり、値は、40であり、bcorrelatedであり、iは、i本目の割れ目の割れ目の開度であり、rは、i本目の割れ目の大きさであり、γとβは、べき乗則関係の特徴係数と特徴指数である。
【0029】
ランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルの各割れ目に各割れ目の平均開度値bcorrelated,iを付与し、各割れ目の大きさが異なるため、それによって得られた割れ目間開度の違いは、割れ目間のマクロスケール不均質性である。
【0030】
割れ目ネットワークマクロスケール不均質性を構築することであって、ランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルにおける各割れ目の割れ目の開度に基づき、N本の割れ目に対応する平均開度値bconstant=7.95e-5mを算出することができ、ランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルの各割れ目に対してN本の割れ目に対応する平均開度値bconstantを付与し、それによって得られたランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルは、割れ目ネットワークマクロ不均質性をシミュレーションするために用いられてもよい。平均割れ目の開度の計算表現式は、
【0031】
【0032】
間の平均割れ目の開度である。即ちランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルにおける各割れ目の平均割れ目の開度に基づき、まず、上に距離y=bcorrelated,iに移動して法線方向変位をシミュレーションしてから、右にx=1.5mmに移動して剪断作用による水平変位をシミュレーションすることによって、正規分布に合致するランダム割れ目の開度場を簡単且つ迅速に構築する。
【0033】
そして、各離散割れ目の二次元デカルト座標開度分布場を得、
として表されてもよい。
【0034】
MATLAB重心補間法を利用して三次元デカルト座標に生成された二次元デカルト座標割れ目の開度場をランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルの各割れ目の三角グリッドノードに投影することによって、三次元割れ目ネットワークマルチスケール不均質性を得、図5に示すように、図において、各割れ目のうちの割れ目の開度分布が示されており、Apertureの意味は、開度値であり、異なる階調は、異なる開度値を表し、且つ階調が浅ければ浅いほど、開度値は、小さくなり、階調が深ければ深いほど、開度値は、大きくなる。ここで、ランダム三次元離散割れ目ネットワークモデルにおける各割れ目の割れ目の開度分布binternal,i(X)は、
として表されてもよく、
式において、X=(x’,y’,z’)、binternal,i(X)=0は、割れ目面内部の接触領域を表す。
【0035】
ステップ4:Pythonスクリプトを利用して割れ目面の三角グリッドユニットと基質四面体グリッドユニットに対してデータ変換を行うことで、マルチスケール不均質性を有し、且つ岩石基質を考慮する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル又はグリッドモデルを得ることができ、図6に示すように、図において、異なる割れ目の開度を有するネットワーク割れ目と周囲の四面体グリッド岩石基質を組み合わせた空間構造が示されており、Apertureの意味は、開度値である。必要に応じてグリッドモデルを可視化ファイル又は浸透流と溶質遷移シミュレーションを展開するための有限要素グリッドに変換することができ、例えば、.vtkフォーマットファイルを生成してParaviewを使用して可視化分析し、.mshフォーマットファイルを生成してOpenGeosys(OGS)を使用して浸透流と溶質遷移シミュレーションを展開する。
【0036】
当業者は、本発明によるテキスト記述、図面及び特許請求の範囲に基づいて特許請求の範囲によって限定される本発明の思想と範囲条件から逸脱することなく、様々な変化と変更を行うことができる。本発明の技術的思想と実質に基づいて上記実施例に対する任意の修正、同等の変化は、いずれも本発明の請求項によって限定される保護範囲内である。
【要約】      (修正有)
【課題】マルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル特徴付け法を開示する。
【解決手段】モンテカルロシミュレーション方法を利用してランダム三次元離散割れ目ネットワーク岩体モデルを生成し、岩体モデルに対して三角グリッドと四面体グリッドの分けを行ってから、不均質性を構築し、モデルの各割れ目の平均開度値、即ち割れ目間のマクロ不均質性を付与し、モデルのすべての割れ目の平均開度値、即ち割れ目ネットワークマクロ不均質性を付与し、自己アフィン法と投影法を利用してモデルの各割れ目のランダム開度場、即ち割れ目内部の開度ミクロスケールの不均質性を付与し、最後に、割れ目面の三角グリッドユニットと基質四面体グリッドユニットに対してデータ変換を行い、マルチスケール不均質性を有する三次元割れ目ネットワーク岩体モデル又はグリッドモデルを得る。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6