(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ジアリールアセチレン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/26 20060101AFI20240115BHJP
C07C 15/58 20060101ALI20240115BHJP
C07C 41/24 20060101ALI20240115BHJP
C07C 43/215 20060101ALI20240115BHJP
C07C 25/24 20060101ALI20240115BHJP
C07C 22/08 20060101ALI20240115BHJP
C07C 17/23 20060101ALI20240115BHJP
C07C 15/54 20060101ALI20240115BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
C07C1/26
C07C15/58
C07C41/24
C07C43/215
C07C25/24
C07C22/08
C07C17/23
C07C15/54
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2023541631
(86)(22)【出願日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2023005415
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2022023288
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小林 政史
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-005031(JP,A)
【文献】EDDARIR, A et al.,Building block synthesis of predominantly (E) symmetrical and unsymmetrical 1,2-difluorostilbenes fr,Tetrahedron,2013年,Vol.69, No.52,pp.11191-11196
【文献】RANU, B C et al.,Stereoselective debromination of aryl-substituted vic-dibromide with indium metal,Chemical Communications (Cambridge),1998年,Vol. 19,pp.2113-2114
【文献】HEN, S Y et al.,A new synthesis of stilbene natural product piceatannol,Bulletin of the Korean Chemical Society,2008年,Vol.29, No.9,pp.1800-1802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式中、R1からR5は、同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン元素、水酸基、アミノ基又は1価の有機基であり、R1からR5の2つ以上が組み合わさって縮合環を形成していてもよい。)
で表されるジアリールアセチレン誘導体の製造方法であって、
(a)下記式(2):
【化2】
(式中、Xはハロゲン元素を表す)
で表されるテトラハロゲン化エチレンと、下記式(3):
【化3】
(式中、R1からR5は前記のとおりである)
で表されるアリールボロン酸誘導体とを、触媒及び塩基の存在下で反応させて、下記式(4):
【化4】
(式中、R1からR5、及びXは前記の通りである)
で表されるジアリールジハロゲン化エチレンを得る工程、そして
前記式(4)で表されるジアリールジハロゲン化エチレンに
アルキルリチウムを作用させて、前記式(1)で表されるジアリールアセチレン誘導体を得る工程を含
み、
前記1価の有機基が、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基の窒素上に炭素数1~4のアルキル基又はアリール基が1つ結合したN-1置換アミノ基、アミノ基の窒素上に炭素数1~4のアルキル基又はアリール基が2つ結合したN,N-2置換アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルエステル基、及びアシルアミノ基、からなる群から選ばれる、方法。
【請求項2】
前記1価の有機基が、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルエステル基、及びアシルアミノ基からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記縮合環が、
ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、及び、これらの縮合環上にハロゲン元素、水酸基、アミノ基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基の窒素上に炭素数1~4のアルキル基又はアリール基が1つ結合したN-1置換アミノ基、アミノ基の窒素上に炭素数1~4のアルキル基又はアリール基が2つ結合したN,N-2置換アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルエステル基、及びアシルアミノ基からなる群から選ばれる1価の有機基を有する縮合環からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒及び塩基が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びKOHの組み合わせ、並びに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びK
3PO
4の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアリールアセチレン誘導体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェニルアセチレンおよびその誘導体は、π電子共役系を有する分子で、医農薬や高分子材料の合成中間体として重要な化合物である。その用途に関しては、たとえば、高分子材料として酸素ガス(特許文献1)、炭酸ガス(特許文献2、非特許文献1)などのガス分離膜や、単分子として液晶材料(特許文献3)、スチルベン系医薬中間体(特許文献4)などが報告されている。
【0003】
従来法におけるジフェニルアセチレンの製造方法は、薗頭反応と呼ばれる、パラジウム触媒、塩基およびハロゲン化銅(I)塩を用いたフェニルアセチレンとヨウ化ベンゼンの反応(特許文献4、非特許文献2)が良く知られているが、精製が煩雑で触媒が完全に除去できない、反応を不活性ガス雰囲気下で行う必要がある、置換基を有する生成物を得るためには、置換基を有するアリールアセチレンをあらかじめ入手しておく必要がある、といった欠点が存在し、必ずしも簡便な方法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-167220号公報
【文献】特開2010-214324号公報
【文献】再表2019/116702
【文献】特表2012-533600号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】福井大学大学院工学研究科 研究報告 2013年、61巻、56-60頁
【文献】J.Organomet.Chem.2005,690,4453-4461
【文献】Russ.J.Appl.Chem.2006,79,1849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような従来の製造方法に鑑みて、本発明はジアリールアセチレン誘導体の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を提供する。
[1]
下記式(1):
【化1】
(式中、R1からR5は、同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン元素、水酸基、アミノ基又は1価の有機基であり、R1からR5の2つ以上が組み合わさって縮合環を形成していてもよい。)
で表されるジアリールアセチレン誘導体の製造方法であって、
(a)下記式(2):
【化2】
(式中、Xはハロゲン元素を表す)
で表されるテトラハロゲン化エチレンと、下記式(3):
【化3】
(式中、R1からR5は前記のとおりである)
で表されるアリールボロン酸誘導体とを、触媒及び塩基の存在下で反応させて、下記式(4):
【化4】
(式中、R1からR5、及びXは前記の通りである)
で表されるジアリールジハロゲン化エチレンを得る工程、そして
前記式(4)で表されるジアリールジハロゲン化エチレンに有機アルカリ金属を作用させて、前記式(1)で表されるジアリールアセチレン誘導体を得る工程を含む、方法。
[2]
前記1価の有機基が、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルエステル基、及びアシルアミノ基からなる群から選ばれる、[1]に記載の方法。
[3]
前記縮合環が、ナフタレン環又はアントラセン環である、[1]に記載の方法。
[4]
前記触媒及び塩基が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びKOHの組み合わせ、並びに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びK
3PO
4の組み合わせからなる群から選ばれる、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記有機アルカリ金属が、アルキルリチウムである、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記触媒及び塩基が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びKOHの組み合わせ、並びに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びK
3PO
4の組み合わせからなる群から選ばれ、前記有機アルカリ金属が、アルキルリチウムである、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[7]
下記式(1):
【化5】
(式中、R1からR5は、同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン元素、水酸基、アミノ基又は1価の有機基であり、R1からR5の2つ以上が組み合わさって縮合環を形成していてもよい。)
で表されるジアリールアセチレン誘導体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規なジアリールアセチレン誘導体の新規な製造方法が提供される。この方法は、
反応液に触媒が存在した状態で、目的物まで一連の反応を行うことができる、
反応を大気圧下で行うことができる、
置換基を有する生成物を得るためには、置換基を有するアリール化合物を用意すればよく、従来法のように、アセチル基をあらかじめ反応基質に導入しておく必要がない、
といった利点があり、簡便にジアリールアセチレン誘導体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[作用]
本発明は、式(1)で表されるジアリールアセチレン誘導体の製造方法に関するが、従来法としてよく用いられてきた薗頭カップリング反応の替わりに、鈴木カップリング反応を利用することを特徴としている。本発明の製造方法は、テトラハロゲン化エチレンの1種であるテトラクロロエチレンを出発原料とすることができるので、出発原料の入手及び取り扱いが容易である。本発明の製造方法において、第1工程として、触媒(特に、パラジウム触媒)及び塩基存在下、式(2)で表されるテトラハロゲン化エチレンに対して式(3)で表されるアリールボロン酸誘導体を反応させて式(4)で表されるジアリールジハロゲン化エチレンを生成し、第2工程として、式(4)で表されるジアリールジハロゲン化エチレンを有機アルカリ金属で処理して、式(1)で表されるジアリールアセチレン誘導体を生成することを特徴とする。後述するように、第1工程と第2工程は連続的に行うことができ、実質的には1つの工程で目的物のジアリールアセチレン誘導体を製造することができる。第1工程における触媒の役割はテトラハロゲン化エチレンとアリールボロン酸誘導体のカップリング反応を触媒することであり、塩基は、テトラハロゲン化エチレンの活性化とアリールボロン酸の活性化の役割を果たす。すなわち、テトラハロゲン化エチレンからの脱ハロゲン化を促進(例えば、CX2=CX2+K+→CX2=C+X+KX;ここでXは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素)、及びアリールボロン酸からのホウ素官能基の脱離を促進(例えば、ArB(OH)2+OH-→Ar-+B(OH)3;ここでArはアリール基)させることで、パラジウムの触媒反応を促進させることである。一方、第2工程における有機アルカリ金属の役割はハロゲン元素の引き抜きによる反応基質のアルカリ金属化、及び引き続き起こる脱アルカリ金属ハロゲン化物による三重結合形成である(例えば、有機アルカリ金属がn-ブチルリチウムである場合、ハロゲン元素をX、アリール基をAr、n-ブチル基をn-Buで表して、反応式は、
ArCX=CXAr+n-BuLi→ArCLi=CXAr+n-BuX、
ArCLi=CXAr→ArC≡CAr+LiX
となり、目的物とハロゲン化n-ブチル及びハロゲン化リチウムが生成する。)。ArCLi=CXArは不安定な化合物であり、温度が上がるとハロゲン化リチウムを放出して目的物であるジアリールアセチレンに変換される。
【0010】
第1工程の反応は、鈴木カップリング反応と呼ばれる反応の1種であり、アリールボロン酸の芳香環上には、様々な置換基を比較的容易に導入することができる。そのため、本発明の製法を用いることで、反応基質の入手が比較的容易であり、非常に高い自由度でジアリールアセチレンの芳香環上の置換基を選択することができる。さらには、第1工程の反応の後、反応物の分離操作を行うことなく、触媒と生成物が混在した状態で第2工程の有機アルカリ金属処理を行えるために、従来法よりも簡便な操作で目的物を得ることができる。
【0011】
[第1工程]
第1工程では、触媒(特に、パラジウム触媒)及び塩基存在下、テトラハロゲン化エチレンに対して式(3)で表されるアリールボロン酸誘導体を反応させて式(4)で表されるジアリールジハロゲン化エチレンを生成する。テトラハロゲン化エチレンとしては、テトラフルオロエチレン、テトラクロロエチレン、テトラブロモエチレン、テトラヨードエチレンなどが使用できるが、好ましくはテトラクロロエチレン、テトラブロモエチレン、より好ましくはテトラクロロエチレンが使用できる。特に、テトラクロロエチレンはハロゲン含有化合物の合成原料として従来から使用されており、入手が極めて容易である。テトラブロモエチレンは非特許文献3の方法でペンタブロモエチレンから合成可能である。
【0012】
[式(3)で表されるアリールボロン酸誘導体]
式(3)で表されるアリールボロン酸誘導体は、当業界で周知の方法で製造できる。例えば、ハロゲン化アリールマグネシウム(ArMgBr;ここでArはアリール基)とボロン酸トリメチル(B(OMe)3;ここでMeはメチル基)を反応させてアリールボロン酸ジメチル(ArB(OMe)2)を製造し、これを加水分解して製造することができる。式(3)で表されるアリールボロン酸誘導体の製造方法において、使用するアリール化合物の官能基がボロン酸との反応に影響することがないので、ベンゼン環上に様々な置換基を導入することができる。
式(3)において、R1からR5は、独立して、水素の他、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素、水酸基、アミノ基又は反応に影響しない1価の有機基であり、R1からR5の2つ以上が組み合わさって縮合環を形成してもよい。1価の有機基としては、例えば、アルキル基、N-1置換アミノ基、N,N-2置換アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルエステル基、アシルアミノ基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、炭素数1~4のアルキル基、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、などが挙げられる。アルキル基の水素はハロゲン元素で置換されていてもよく、ハロゲン化アルキル基としては、例えば、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、特に、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基、特に、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n-ヘプタフルオロプロピル基、iso-ヘプタフルオロプロピル基、n-ノナフルオロブチル基、sec-ノナフルオロブチル基、iso-ノナフルオロブチル基、t-ノナフルオロブチル基、などが挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~4のアルコキシ基、特に、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基などが挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基、ナフタセニルオキシ基、ペンタセニルオキシ基などが挙げられる。N-1置換アミノ基としては、例えば、アミノ基の窒素上に前述した炭素数1~4のアルキル基、アリール基、などの置換基が1つ結合したものが挙げられ、より具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、などが挙げられる。N,N-2置換アミノ基としては、例えば、アミノ基の窒素上に前述した炭素数1~4のアルキル基、アリール基、などの置換基が2つ結合したものが挙げられ、これら2つの置換基は同じものであってよく、違うものであってもよい。より具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、などが挙げられる。アルキルエステル基としては、例えば、カルボキシル基をアルキル基で保護したもの、例えば、メチルエステル基(即ち、-COOCH3)、エチルエステル基(即ち、-COOC2H5)、などが挙げられる。アシルアミノ基としては、例えば、アミノ基をアシル基で保護したもの、例えば、ホルミルアミノ基(即ち、-NHCHO)、アセチルアミノ基(即ち、-NHCOCH3)、ベンゾイルアミノ基(即ち、-NHCOC6H5)などがあげられる。R1からR5の2つ以上が組み合わさってベンゼン環と縮合環を形成しても良い。そのような縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環などが挙げられ、さらにその縮合環上にフッ素などのハロゲン元素や、水酸基、アミノ基、前述した1価の有機基を有していても良い。
【0013】
[触媒]
第1工程で使用する触媒としては、例えば、パラジウム触媒、特に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)などが挙げられ、より好ましくは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムである。パラジウム触媒は、酸素に弱いので、不活性雰囲気下で反応を行うことが好ましい。不活性雰囲気を形成するガスとしては、例えば、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、など)などが挙げられる。
【0014】
[塩基]
第1工程で使用する塩基は、テトラハロゲン化エチレン及びアリールボロン酸誘導体の反応を促進するとともに遊離するハロゲン及びボロン酸を、反応に影響を与えない安定な副生物へと変換することを目的として上記触媒とともに作用する。
第1工程で使用する塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属リン酸塩(例えばリン酸カリウム)、4級アンモニウム塩(例えばフッ化テトラブチルアンモニウム)、3級アミン(例えばトリエチルアミン)、有機強塩基(例えばDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)、MTBD(7-メチル-1,5,7―トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン))、などが挙げられ、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、より好ましくは水酸化カリウムである。
【0015】
[溶媒]
第1工程で使用する溶媒としては、例えば、極性溶媒が挙げられ、好ましくは、水、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグライム、トリグライムなどのエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコールであるが、それらを単独で用いても良いし、混合して用いても良く、より好ましくは、THF又はTHFと水の混合物である。
【0016】
[第1工程の反応条件]
第1工程の反応温度は、好ましくは、-100~200℃、より好ましくは、0~100℃、さらに好ましくは、25~60℃である。
【0017】
式(3)で表されるアリールボロン酸誘導体のモル当量数は、テトラハロゲン化エチレンに対して0.01~100モル当量、好ましくは0.1~10モル当量、より好ましくは5モル当量である。触媒のモル当量数はテトラハロゲン化エチレンに対して0.0001~1モル当量、好ましくは0.1~0.5モル当量、より好ましくは0.09~0.1モル当量である。塩基は、それ自身をそのまま反応に使用しても良く、あらかじめ水に溶かした状態で用いてもよい。塩基のモル当量数は、テトラハロゲン化エチレンに対して0.01~100モル当量、好ましくは0.1~10モル当量、より好ましくは0.5~1モル当量である。
【0018】
[第2工程]
第1工程で式(4)で表されるジアリールジハロゲン化エチレンが得られ、これを単離してから第2工程の反応である、有機アルカリ金属で処理してハロゲン―リチウム交換反応を行わせるか、又は単離精製操作を行うことなく、第2工程の反応である、有機アルカリ金属で処理してハロゲン―リチウム交換反応を行った後に脱ハロゲン化リチウムを放出する反応を行わせることにより、式(1)で表されるジアリールアセチレンが得られる。第1工程では、反応液に水を加えてクエンチすることで反応を停止させることができる。第2工程の有機アルカリ金属は水と反応しうるので、第1工程の生成物の精製を行わない場合、反応混合物から水を取り除く操作を行ってから、得られた粗生成物を第2工程に利用することができる。反応混合物から水を取り除く操作は、当業界で通常行われている操作でよく、例えば、反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機層を分液し、有機層を硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの乾燥剤と混合し、乾燥剤をろ過する操作が挙げられる。
【0019】
[有機アルカリ金属]
第2工程で使用する有機アルカリ金属は、ジアリールジハロゲン化エチレンをハロゲン―リチウム交換反応により、アルカリ金属化し、次いでアルカリ金属ハロゲン化物を脱離することにより、三重結合を形成する。有機アルカリ金属としては、例えば、アルキルアルカリ金属、特に、アルキルリチウム、特に、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、などのブチルリチウム;アルカリ金属ピペリジド、特に、リチウムテトラメチルピペリジド;アルカリ金属ジイソプロピルアミド、特に、リチウムジイソプロピルアミド;アルカリ金属ヘキサメチルジシラザン、特に、リチウムヘキサメチルジシラザン;などが挙げられるが、好ましくは、アルキルリチウム、より好ましくは、ブチルリチウム、特に、n-ブチルリチウムである。
【0020】
[第2工程の反応条件]
第2工程の溶媒は、有機アルカリ金属に使用できるものであればよく、例えば、極性溶媒、好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジグライム、トリグライムなどのエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられるが、より好ましくは、THFである。
第2工程の反応温度は、好ましくは、-100~200℃、より好ましくは、-100~25℃、さらにより好ましくは、-78~25℃である。アルキルリチウム、特にn-ブチルリチウムを用いた反応は、反応して得られる中間体(リチオ化体)が不安定なため、低温で行うことが好ましい。この場合、第2工程の反応においては、低温でハロゲン―リチウム交換反応が起こり、昇温する際に、このリチオ化体が分解してハロゲン化リチウムを放出することによりアセチレン化合物が生成する。
有機アルカリ金属のモル当量数は、出発原料のテトラハロゲン化エチレンに対して0.1~10モル当量、好ましくは0.5~5モル当量、より好ましくは2~4モル当量である。
【0021】
[反応装置]
反応装置は一般の有機合成に用いられるものが使用できる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら例に限定されるものではない。以下に示す実施例において用いた試薬のうち、テトラクロロエチレンは関東電化工業株式会社製のものを使用した。その他の試薬や溶媒は、アルドリッチ、東京化成、富士フイルム和光純薬、佐々木化学薬品、ナカライテスク、関東化学などの化学品製造会社から入手した。リサイクル型分取HPLCは日本分析工業社のJAIGEL-1HとJAIGEL-2Hを装着したLC-9201、LC-9110NEXT、またはLC-9210NEXTを使用した。分析はHRMS(Thermo Fisher Scientific EXACTIVE Plus)、NMR(バリアン社製MERCURY 300と日本電子社製JNM-ECS 400)、およびGC-MS(アジレント社製5973N)を使用した。
【0023】
(実施例1、実施例2)ジフェニルアセチレンの製造
以下の反応スキームに従って製造した。
【化6】
第1工程の粗生成物のGC-MSを行ったところ、1,2-ジクロロ-1,2-ジフェニルエチレンとジフェニルアセチレンの存在を示唆する質量分析結果が得られた。
【0024】
(実施例1)ジフェニルアセチレンの製造(第1工程の塩基:KOH)
【化7】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。フェニルボロン酸(304.6mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.8mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(83.5mg、0.504mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0025】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に浸漬して撹拌をした。このナスフラスコに、n-ブチルリチウム(n-BuLi)(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。ジエチルエーテル(Et2O)(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、ジフェニルアセチレン(63.5mg、0.356mmol)を収率71%で得た。ジフェニルアセチレンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 7.30-7.40 (m, 6H), 7.48-7.58 (m, 4H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 89.3, 123.2, 128.2, 128.3, 131.6 ppm; HRMS (ESI) calculated for C14H11 ([M+H]+): 179.0855, found 179.0857.
【0026】
(実施例2)ジフェニルアセチレンの製造(第1工程の塩基:K
3PO
4)
【化8】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。フェニルボロン酸(304.6mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.9mg、0.05mmol)を加えた後、K
3PO
4(529.9mg、2.50mmol)を加えた。これにTHF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。テトラクロロエチレン(83.7mg、0.505mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0027】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きの後、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、ジフェニルアセチレン(32.4mg、0.182mmol)を収率36%で得た。ジフェニルアセチレンの同定は、実施例1のスペクトルとの比較で行った。
【0028】
(実施例3)p-メチルフェニル誘導体 表1
【化9】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。p-トリルボロン酸(338.2mg、2.49mmol)とPd(PPh
3)
4(57.5mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(83.0mg、0.501mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0029】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ジ-p-トリルエチン(54.4mg、0.264mmol)を収率53%で得た。1,2-ジ-p-トリルエチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 2.36 (s, 6H), 7.15 (d, J = 8.2 Hz, 4H), 7.42(d, J = 8.2 Hz, 4H) ppm;13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 21.4, 88.8, 120.3, 129.1, 131.4, 138.2 ppm; HRMS (ESI) calculated for C16H15([M+H]+): 207.1168, found 207.1168.
【0030】
(実施例4)m-メチルフェニル誘導体 表1
【化10】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。m-トリルボロン酸(340.0mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.5mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(83.1mg、0.501mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0031】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ジ-m-トリルエチン(43.1mg、0.209mmol)を収率42%で得た。1,2-ジ-m-トリルエチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 2.35 (s, 6H), 7.14 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.23 (dd, J = 8.4 Hz, 7.6 Hz, 2H), 7.30-7.38 (m, 4H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 21.2, 89.2, 123.1, 128.2, 128.6, 129.1, 132.2, 138.0 ppm; HRMS (ESI) calculated for C16H14Na ([M+Na]+): 229.0988, found 229.0987.
【0032】
(実施例5)o-メチルフェニル誘導体 表1
【化11】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。o-トリルボロン酸(338.7mg、2.49mmol)とPd(PPh
3)
4(58.0mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(82.4mg、0.497mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0033】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ジ-o-トリルエチン(30.0mg、0.145mmol)を収率29%で得た。1,2-ジ-o-トリルエチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 2.53 (s, 6H), 7.13-7.28 (m, 6H), 7.51 (d, J= 7.2 Hz, 2H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 20.9, 92.3, 123.3, 125.6, 128.2, 129.5, 131.8, 139.9 ppm; HRMS (ESI) calculated for C16H14Na ([M+Na]+): 229.0988, found 229.0984.
【0034】
(実施例6)p-エチルフェニル誘導体 表1
【化12】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。(p-エチルフェニル)ボロン酸(375.2mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.7mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(82.1mg、0.495mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0035】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ビス(p-エチルフェニル)エチン(66.9mg、0.285mmol)を収率58%で得た。1,2-ビス(p-エチルフェニル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 1.24 (t, J = 8.0 Hz, 6H), 2.66 (q, J = 8.0 Hz, 4H), 7.17 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.45 (d, J = 7.6 Hz, 4H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 15.3, 28.8, 88.9, 120.6, 127.9, 131.5, 144.4 ppm; HRMS (ESI) calculated for C18H18Na ([M+Na]+): 257.1301, found 257.1296.
【0036】
(実施例7)p-(n-プロピル)フェニル誘導体 表1
【化13】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。(p-(n-プロピル)フェニル)ボロン酸(409.8mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.4mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(83.0mg、0.500mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0037】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ビス(p-(n-プロピル)フェニル)エチン(69.6mg、0.265mmol)を収率53%で得た。1,2-ビス(p-(n-プロピル)フェニル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 0.93 (t, J = 7.6 Hz, 6H), 1.63 (sext, J = 7.6 Hz, 4H), 2.58 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 7.14 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.43 (d, J = 8.0 Hz, 4H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 13.7, 24.4, 37.9, 88.9, 120.6, 128.5, 131.4, 142.9 ppm; HRMS (ESI) calculated for C20H22Na ([M+Na]+): 285.1614, found 285.1606.
【0038】
(実施例8)p-(n-ブチル)フェニル誘導体 表1
【化14】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。(p-(n-ブチル)フェニル)ボロン酸(444.1mg、2.49mmol)とPd(PPh
3)
4(57.0mg、0.049mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(82.9mg、0.50mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0039】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ビス(p-(n-ブチル)フェニル)エチン(99.6mg、0.343mmol)を収率69%で得た。1,2-ビス(p-(n-ブチル)フェニル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 0.92-1.00 (m, 6H), 1.32-1.45 (m, 4H), 1.57-1.70 (m, 4H), 2.64 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 7.17 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.47 (d, J = 8.0 Hz, 4H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 13.9, 22.3, 33.4, 35.6, 88.9, 120.6, 128.4, 131.4, 143.1 ppm; HRMS (ESI) calculated for C22H26Na ([M+Na]+): 313.1927, found 313.1924.
【0040】
(実施例9)p-(t-ブチル)フェニル誘導体 表1
【化15】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。(p-(t-ブチル)フェニル)ボロン酸(444.5mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.8mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(83.3mg、0.502mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0041】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ビス(p-(t-ブチル)フェニル)エチン(89.1mg、0.307mmol)を収率61%で得た。1,2-ビス(p-(t-ブチル)フェニル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 1.32 (s, 18H), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 4H) ppm;13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 31.2, 34.8, 88.8, 120.4, 125.3, 131.3, 151.3 ppm; HRMS (ESI) calculated for C22H26Na ([M+Na]+): 313.1927, found 313.1924.
【0042】
(実施例10)p-メトキシフェニル誘導体 表1
【化16】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。(p-メトキシフェニル)ボロン酸(378.7mg、2.49mmol)とPd(PPh
3)
4(57.2mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(83.5mg、0.504mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0043】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ビス(p-メトキシフェニル)エチン(28.2mg、0.118mmol)を収率23%で得た。1,2-ビス(p-メトキシフェニル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 3.81 (s, 6H), 6.83-6.89 (m, 4H), 7.40-7.48 (m, 4H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 55.2, 87.9, 113.9, 115.7, 132.8, 159.3 ppm; HRMS (ESI) calculated for C16H14O2Na ([M+Na]+): 261.0886, found261.0887.
【0044】
(実施例11)p-フルオロフェニル誘導体 表1
【化17】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。(p-フルオロフェニル)ボロン酸(349.3mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.4mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(82.7mg、0.499mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0045】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ビス(p-フルオロフェニル)エチン(5.8mg、0.027mmol)を収率5%で得た。1,2-ビス(p-フルオロフェニル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 7.00-7.09 (m, 4H), 7.45-7.56 (m, 4H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 87.9, 115.7 (d, J= 22.0 Hz), 119.2 (d, J = 3.8 Hz), 133.4 (d, J = 8.6 Hz), 162.5 (d, J = 248.8 Hz). HRMS (ESI) calculated for C14H9F2 ([M+H]+): 215.0667, found 215.0664.
【0046】
(実施例12)p-(トリフルオロメチル)フェニル誘導体 表1
【化18】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン酸(473.8mg、2.49mmol)とPd(PPh
3)
4(57.3mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(82.2mg、0.496mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0047】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ビス(p-トリフルオロメチルフェニル)エチン(46.0mg、0.146mmol)を収率29%で得た。1,2-ビス(p-トリフルオロメチルフェニル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 7.59-7.68 (m, 8H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 90.1, 123.8 (q, J = 270.8 Hz), 125.4 (q, J = 3.8 Hz), 126.4, 130.5 (q, J = 33.4 Hz), 132.0 ppm; HRMS (ESI) calculated for C16H8F6Na ([M+Na]+): 337.0422, found 337.0421.
【0048】
(実施例13)2-ナフチル誘導体 表1
【化19】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした2-ナフチルボロン酸(429.7mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.8mg、0.05mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、テトラクロロエチレン(83.0mg、0.501mmol)を加えた後、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0049】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、1,2-ジ(ナフチレン-2-イル)エチン(38.9mg、0.140mmol)を収率28%で得た。1,2-ジ(ナフチレン-2-イル)エチンの同定は、次のスペクトルから判断した。
1H NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 7.44-7.57 (m, 4H); 7.62 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.76-7.94 (m, 6H), 8.10 (s, 2H) ppm; 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ = 90.2, 120.6, 126.6, 126.7, 127.8 (overlapping), 128.0, 128.4, 131.5, 132.9, 133.1 ppm; HRMS (ESI) calculated for C22H14Na ([M+Na]+): 301.0988, found 301.0955.
【0050】
【0051】
(実施例14)テトラブロモエチレンの合成
非特許文献3の手順を参考に合成を行った。シュレンク管にペンタブロモエタン(1.69g、3.98mmol)を加え、20M NaOH水溶液(10mL)を室温で加えた。その後、溶液を5時間、室温にて撹拌した。水(2mL)を加え、混合物からEt2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層を塩化カルシウムで乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、テトラブロモエチレン(1.11g、3.23mmol)を収率81%で得た。またスペクトル測定により純度は高かった。テトラブロモエチレンの同定は、次のスペクトルから判断した。
13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ= 92.3 ppm; HRMS (ESI) calculated for C2HBr4 ([M+ H]+): 340.6806, found 340.6794.
【0052】
(実施例15)テトラブロモエチレンを原料に用いたジフェニルアセチレン合成の反応
【化20】
ガラス製の試験管型反応器を真空引きの後、窒素雰囲気下にした。フェニルボロン酸(304.6mg、2.50mmol)とPd(PPh
3)
4(57.5mg、0.05mmol)を加え、次にテトラブロモエチレン(172.0mg、0.501mmol)を加えた後、THF(1.0mL)を加え撹拌を開始した。これに5M KOH水溶液(0.5mL)を加え、アルミブロック式スターラーにて60℃で撹拌を18時間続けた。その後、反応液に水(10mL)を加え反応を停止した後、Et
2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、真空引きを行うことで、粗生成物をナスフラスコに得た。
【0053】
粗生成物の入っているナスフラスコに対して窒素置換を行った後、低水分THF(5.0mL)を加え、溶解させ、ナスフラスコを-78℃の恒温槽に付けて撹拌をした。このナスフラスコに、n-BuLi(1.58Mヘキサン溶液、1.0mL、1.6mmol)を滴下して0.5時間、同じ温度で撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら-78℃から室温に0.5時間かけてゆっくりと昇温を行った。水(10mL)を加え、反応を停止した。Et2O(20mL×3回)で有機物を抽出した。合体させた有機層は、飽和食塩水(20mL×1回)で洗浄を行い、その後、無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた。綿栓ろ過と濃縮を行い、さらにシリカゲルを用いたショートカラム(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を行い、濃縮と真空引きを行い、粗生成物を得た。得られた粗生成物はリサイクル型HPLCに装着した分取GPCカラムにより精製を行い、ジフェニルアセチレン(45.8mg、0.257mmol)を収率51%で得た。ジフェニルアセチレンの同定は、実施例1のスペクトルとの比較で行った。
【要約】
ジアリールアセチレン誘導体の新規な製造方法を提供すること。
テトラハロゲン化エチレンとフェニルボロン酸をクロスカップリング反応させた後、塩基処理を行うことで両末端にアリール置換基を有するアルキン誘導体を提供する。