IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 後藤 将彦の特許一覧

特許7418769シングルリード向け木管楽器用リガチャー
<>
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図1
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図2
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図5
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図3
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図4
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図7
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図6
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図8
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図9
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図10
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図11
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図12
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図13
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図14
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図15
  • 特許-シングルリード向け木管楽器用リガチャー 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】シングルリード向け木管楽器用リガチャー
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/02 20200101AFI20240115BHJP
【FI】
G10D9/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023542702
(86)(22)【出願日】2023-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2023015254
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】705000640
【氏名又は名称】後藤 将彦
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】後藤 将彦
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-117857(JP,A)
【文献】国際公開第2007/006967(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/234329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースのテーブル面に沿って設けられるリードの幅方向に跨り、マウスピースに対して固定されるベース部と、リードをマウスピー スのテーブル面に対して押付ける押付プレート部と、該ベース部に螺合する締付ネジ部とを有し、前記押付プレート部は、前記締付ネジ部が厚み方向に貫通するバカ穴部と、該バカ穴部から延在する、少なくとも1つの押付部とを有し、前記ベース部は、前記締付ネジ部が螺合可能なネジ穴部を有し、前記押付プレート部は、マウスピースの前記ベース部が設けられる位置において、前記ベース部の上方に位置し、テーブル面の延び方向に沿って設けられ、前記締付ネジ部が前記バカ穴部を貫通し、前記ネジ穴部に対して締め付けられることにより、前記押付プレート部が前記押付部を介してリードをマウスピースに対して押付け可能とし、
前記押付部は、前記バカ穴部を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部により構成され、前記押付プレート部は、マウスピースの前記ベース部が設けられる位置において、前記ベース部の上方に位置し、前記ベース部の幅を上方から跨ぐように、テーブル面の延び方向に沿って設けられ、前記押付プレート部が前記一対の押付部を介してリードをマウスピースに対して押付け可能とし、
前記押付プレート部は、前記バカ穴部が設けられ、前記ベース部の幅より長い中央部を有し、前記一対の押付部はそれぞれ、前記中央部の対応する端部全体から下方に延在する傾斜部を有し、前記一対の押付部それぞれは、前記傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面が設けられ、
前記押付面には、互いに前記押付プレート部の幅方向に間隔を隔てた一対の突起部を有し、前記一対の突起部それぞれは、下方に突起する湾曲面を構成し、湾曲面を介して、リードに点接触する、ことを特徴とする、シングルリード向け木管楽器用リガチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルリード向け木管楽器用リガチャーに関し、より詳細には、優れた音質を確保しつつ、シンプルで、デザイン性に優れた構造であり、装着が簡便で、演奏中のずれが抑制可能であり、分解性、メインテナンス性に優れたシングルリード向け木管楽器用リガチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サキソフォーン、クラリネット等の木管楽器は、クラシック演奏だけでなく、ジャズ、ポップス、演歌演奏においても多用されている。
このような木管楽器は、通常、リガチャーによりリードをマウスピースに締め付け固定し、リードの振動音を楽器で増幅させて演奏される。
より詳細には、マウスピースは、リードの裏面の一方の端部側を当接固定するテーブル面と、テーブル面からティップに向かって傾斜状に延びるフェイシングとを有し、くわえ部側において、裏面の他方の端部との間にティップオープニングを形成することにより、ティップオープニングに息を吹き込むことにより、リードを片持ち梁状に上下振動させて発音可能とする。
【0003】
木管楽器の中でもサキソフォン向けのマウスピースには、メタル製、ラバー製、木製、陶器製等多種材質があるとともに、リガチャーも材質、構造において多種用いられ、クラシック、ジャズ等音楽ジャンルに応じて、使い分けられている。
このようなシングルリード向け木管楽器のリガチャーとして、たとえば、特許文献1に開示のようなタイプがある。
【0004】
このリガチャーは、リードが動かないように、リードとマウスピースとを締め付けるためのリガチャーであって、リードとマウスピースとを巻回するための金属製、たとえば、真鍮製の薄板部と、マウスピースを挟んでリードに対向する位置で薄板部の両端の締め付けを行なう締め付け部と、リードに対して突出し、その先端でリードに接触する突出部と、突出部の近傍における薄板部の曲げ強度を補強することでリードと薄板部との接触を回避するために、突出部が設けられた薄板部の面と対向する面に設けられ、歌口側からみて横手方向に、突出部の最外端よりも両側に張り出した形状の補強材と、を備え、補強材は、薄板部のリード側の面に設けられた穴の周囲に付加され、補強材を取り付ける薄板部の面を略平面に形成し、締め付け部は、ねじ穴と円筒部とねじとで、マウスピースを挟んでリードに対向する位置で薄板部の両端の締め付けを行なう。
このような構成のリガチャーによれば、強く締め付けても、リードのエッジ部分にリガチャーが触れることがなく、所望の音を出すことができると記載されているが、リガチャーがリードに対して、リードの長手方向にリガチャーの幅方向全体に亘って面接触し、敢えて点接触を排除している。
【0005】
しかしながら、特許文献2、特許文献3に記載されているように、楽器の演奏の際の音量ではなく、音質の観点からは、リガチャーのリードに対する接触面積は小さいほど好ましく、この点において、面接触でなく、線接触または点接触がよい。
この点、特許文献4には、別のリガチャーが開示されている。
【0006】
このリガチャーは、マウスピースのテーブル面に沿って設けられるリードの幅方向に跨り、マウスピースに対して固定されるベース部と、リードをマウスピースのテーブル面に対して押付ける押付プレート部と、ベース部に螺合する締付ネジ部とを有し、押付プレート部は、締付ネジ部が厚み方向に貫通するバカ穴部と、バカ穴部を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部とを有し、ベース部は、締付ネジ部が螺合可能なネジ穴部を有し、押付プレート部は、リードとベース部の間のスペースに設けられ、リードの表皮部の湾曲おもて面に対してテーブル面の延び方向に面接触するように設けられ、締付ネジ部がネジ穴部に対して締め付けられることにより、押付プレート部がリードをマウスピースに対して押付け可能とするようになっている。
【0007】
このリガチャーの場合、押圧プレートによりリードとの接触面積を小さくすることが可能であるが、押圧プレートがベース部とリードとの間のスペース、すなわち、ベース部の下方に設けられることから、全体構造が大型でやぼったく、重く、マウスピースにリードを当てた状態での装着が不便で、演奏中にマウスピースの楽器に対する差し込み深さを調整するのに、指でリガチャーを握ってマウスピースの長手方向を中心に回転すると、リガチャーのリードに固定位置がずれて、演奏に支障が生じることがある。
【0008】
さらに、押圧プレートがリガチャーとリードとの間の狭いスペースに設けられ、構造が複雑であることに起因して、雌ネジがリガチャー本体に対してロウ付けされており、リガチャー自体の分解性、および分解して洗浄等のメインテナンス性も不便であるとともに、リガチャー本体がロウ付けによる熱の影響で、柔らかくなってしまい、音質に対する悪影響を引き起こすことがある。
【文献】特許第4695225号
【文献】US 2004/0177743 A1
【文献】米国特許第5000073号
【文献】US 2014/0305279 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上より、本発明の目的は、優れた音質を確保しつつ、シンプルで、デザイン性に優れた構造であり、装着が簡便で、演奏中のずれが抑制可能であり、分解性、メインテナンス性に優れたシングルリード向け木管楽器用リガチャーを提供することにある。
本発明の目的は、シンプルで、デザイン性に優れた構造でありながら、音質を向上可能なシングルリード向け木管楽器用リガチャーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明のシングルリード向け木管楽器用リガチャーは、
マウスピースのテーブル面に沿って設けられるリードの幅方向に跨り、マウスピースに対して固定されるベース部と、リードをマウスピースのテーブル面に対して押付ける押付プレート部と、該ベース部に螺合する締付ネジ部とを有し、
前記押付プレート部は、前記締付ネジ部が厚み方向に貫通するバカ穴部と、該バカ穴部から延在する、少なくとも1つの押付部とを有し、
前記ベース部は、前記締付ネジ部が螺合可能なネジ穴部を有し、
前記押付プレート部は、マウスピースの前記ベース部が設けられる位置において、前記ベース部の上方に位置し、テーブル面の延び方向に沿って設けられ、前記締付ネジ部が前記バカ穴部を貫通し、前記ネジ穴部に対して締め付けられることにより、前記押付プレート部が前記押付部を介してリードをマウスピースに対して押付け可能とする、ことを特徴とする、構成としている。
【0011】
以上の構成を有するシングルリード向け木管楽器用リガチャーによれば、マウスピース
のテーブル面に沿って設けられるリードの幅方向に跨り、マウスピースに対して固定されるベース部に対して、押付プレート部を、ベース部の上方に位置決めし、締付ネジ部を押付プレート部のバカ穴部に貫通させ、ベース部のネジ穴部に対して締め付けることにより、押付プレート部が押付部を介してリードをマウスピースに対して押付け可能で、押付部がバカ穴部から延在することにより、マウスピースのテーブル面の面に対して、真上からリードを押し付け可能であるから、優れた音質を確保可能であるとともに、押付プレート部が、ベース部の上方に位置し、テーブル面の延び方向に沿って設けられることから、シンプルで、デザイン性に優れた構造であり、リガチャーのマウスピースに対する装着が簡便で、たとえば、演奏中にマウスピースの楽器本体への差し込み深さを調整するのに、シングルリード向け木管楽器用リガチャーを片手で握って、楽器本体に対してマウスピースを長手方向を中心に回転させる際、演奏中のリードのマウスピースに対するずれが抑制可能である一方、締付ネジ部の締付を単に緩めるだけで、ベース部、押付プレート部および締付ネジ部をばらばらに分解可能であり、分解性、メインテナンス性に優れるリガチャーを提供することが可能である。
【0012】
また、前記押付部は、前記バカ穴部を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部により構成され、
前記押付プレート部は、マウスピースの前記ベース部が設けられる位置において、前記ベース部の上方に位置し、前記ベース部の幅を上方から跨ぐように、テーブル面の延び方向に沿って設けられ、前記押付プレート部が前記一対の押付部を介してリードをマウスピースに対して押付け可能とするのでもよい。
さらに、前記一対の押付部はそれぞれ、互いにリードの幅方向に間隔を隔てた2つの押付面を有するのがよい。
さらにまた、前記一対の押付部は、リードの表皮部のおもて面の形状に応じて、前記締付ネジ部による押付力により、前記押付部のリードに対する接触面積が調整可能であるのがよい。
さらに、前記押付プレート部は、前記バカ穴部が設けられ、前記ベース部の幅より長い中央部を有し、前記一対の押付部はそれぞれ、前記中央部の対応する端部から下方に延在する脚部を有し、該脚部の下端に、前記押付面が設けられるのがよい。
さらにまた、前記押付プレート部は、前記中央部が、裏面に凹部を有し、前記ベース部のおもて面には、該凹部と相補形状の凸部を有するのがよい。
【0013】
加えて、前記押付プレート部は、前記ベース部の上方に逃げ可能なように、側断面がコの字状であるのがよい。
また、前記バカ穴部は、前記中央部の長手方向に長軸が位置する楕円開口であるのがよい。
さらに、前記一対の脚部は、リードの幅方向内で、リードの幅方向に互いに遠ざかるように斜め下方に延びるのがよい。
さらにまた、前記押付面は、リードの表皮部の湾曲面に沿うように、リードの幅方向にアーチ状であるのがよい。
【0014】
加えて、前記ベース部は、マウスピースの外周面を覆う環状に形成され、前記締付ネジ部により前記ベース部に対して締め付けることにより、前記ベース部が、リードの幅方向のエッジ部または、マウスピースの直径方向反対部に押し付けられるのがよい。
【0015】
また、前記環状ベース部は、純銀製であり、外周側面には、各々平面または曲面からなる多面部からなる不規則模様が環状に形成され、互いに隣接する多面部は、マウスピースと同心状の同一円筒面内に包含されないように凹凸状に設けられ、前記多面部の各々は、曲面上で多角形を構成し、互いに隣接する多面 部は、多角形の辺を共有するのがよい。
さらに、前記環状ベース部は、厚みが1ミリないし3ミリの純銀製平板を鍛造により不規則模様を形成する前記多面部を形成し、純銀製平板を環状に曲げ加工するのがよい。
【0016】
さらにまた、前記ベース部は、マウスピースの円弧より半径の小さいアーチ状断面が長手方向に一定に形成され、対向する長手方向縁部それぞれには、他方に向かう凸状部が設けられ、マウスピースのテーブル面近傍下方の外周面には、該凸状部が嵌合可能な長溝が、設けられるのでもよい。
加えて、前記締付ネジ部は、雄ネジ部と、雄ネジ部の先端に設けられ、指で回転可能なヘッド部とを有するのがよい。
また、前記締付ネジ部は、前記押付プレートに固定され、上方に延びるねじ部に螺合するナット部であるのがよい。
さらに、前記ベース部および/または前記押付プレート部は、そのおもて面がラッカー仕
上げであるのがよい。
さらにまた、前記一対の押付部間の長手方向の間隔は、リードおもて面の表皮部の長さの三分の一ないし二分の一であるのがよい。
【0017】
加えて、押付プレート部は、バカ穴部が設けられ、ベース部の幅より長い中央部を有し、一対の押付部はそれぞれ、中央部の対応する端部全体から下方に延在する傾斜部を有し、一対の押付部それぞれは、傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面が設けられるのでもよい。
また、押付面には、互いに押付プレート部の幅方向に間隔を隔てた一対の突起部を有し、一対の突起部それぞれは、下方に突起する湾曲面を構成し、湾曲面を介して、リードに点接触するのでもよい。
さらに、前記押付プレート部は、金属製、たとえば、真鍮製平板を曲げ加工することにより構成され、前記中央部および前記一対の押付部は、一体であるのがよい。
さらにまた、前記ベース部は、ラバー製マウスピースの円弧より半径の小さいアーチ状断面が長手方向に一定に形成され、対向する長手方向縁部それぞれには、他方に向かって下方に傾斜して延びる凸状部が設けられ、ラバー製マウスピースのテーブル面近傍下方の外周面には、該凸状部が嵌合可能な長溝が、設けられ、
前記ベース部の凸状部が前記長溝に嵌合する際、前記ベース部とラバー製マウスピースのテーブル面との間には、スペースが形成されるのでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図を参照しながら、木管楽器としてサキソフォンを例として、本発明のシングルリード向け木管楽器用リガチャー10を用いる場合を説明する。
【0019】
図1および図2に示すように、マウスピースMPは、リードRの裏面の一方の端部側を当接
固定するテーブル面Tと、テーブル面Tからティップに向かって傾斜状に延びるフェイシングFとを有し、くわえ部側において、裏面の他方の端部との間にティップオープニングO
を形成することにより、リードRを片持ち梁状に上下振動させて発音可能とする。本発明
のシングルリード向け木管楽器用リガチャー10は、マウスピースMPの外周側面に対して、マウスピースMPの長手方向のまわりに環状に設けられ、マウスピースMPに対して固定される。マウスピースMPは、ソプラノサキソフォン、アルトサキソフォン、テナーサキソフォン、またはバリトンサキソフォン用のメタル製またはラバー製マウスピースMPである。
【0020】
本発明のシングルリード向け木管楽器用リガチャー10は、マウスピースMPのテーブル面Tに沿って設けられるリードRの幅方向に跨り、マウスピースMPに対して固定されるベース部12と、リードRをマウスピースMPのテーブル面Tに対して押付ける押付プレート部14と、ベース部12に螺合する締付ネジ部16とから概略構成される。
【0021】
図3に示すように、ベース部12は、バカ穴部28を有し、バカ穴部28をリードRの表
皮部SRの長手方向範囲で、リードRの幅wの中央に位置決めし、押付プレート部14(後に説明)のバカ穴部18と整列させることにより、締付ネジ部16がバカ穴部18を貫通し、ベース部12に設けられる、後に説明する凸部40のネジ穴部22に対して締め付けられることにより、押付プレート部14が一対の押付部20を介してリードRをマウスピー
スMPに対して押付け可能とする。
ベース部12は、マウスピースMPの外周面44を覆う環状に形成され、締付ネジ部16によりベース部12に対して締め付けることにより、ベース部12が、リードRの幅方向の
エッジ部Eまたは、マウスピースMPの直径方向反対部に押し付けられる。
ベース部12をマウスピースMPに装着した際、ベース部12の下面と、マウスピースMPのテーブル面Tに位置決めしたリードRの表皮部SRのおもて面との間隔は、小さいほど好ましいが、たとえば、1ミリ以下に設定される。
【0022】
ベース部12の幅w1は、リードRの表皮部SRの長手方向長さの五分の一ないし三分の一程度、厚みt1は、マウスピースMPの厚みより薄く、数ミリ程度、径は、マウスピースMPの外周面44を覆うことが可能な大きさであり、材質は、金属製、たとえば、真鍮製、特に銀製が好ましい。
【0023】
図4に示すように、押付プレート部14は、締付ネジ部16が厚み方向に貫通するバカ穴部18と、バカ穴部18を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部20とを有する。バカ穴部18の径は、締付ネジ部16の雄ネジ部54(後に説明)が貫通可能な大きさである。
より詳細には、押付プレート部14の上面には、上面が平面状の環状突起部31が設けられ、環状突起部31の上面には、バカ穴部18が設けられている。
押付プレート部14は、マウスピースMPのベース部12が設けられる位置において、ベース部12の上方に位置し、ベース部12の幅w1を上方から跨ぐように、テーブル面T
の延び方向に沿って設けられ、押付プレート部14は、側断面が略コの字状である。
【0024】
一対の押付部20はそれぞれ、互いにリードRの幅方向に間隔を隔てた2つの押付面24
を有する。
より具体的には、押付プレート部14には、バカ穴部18が設けられ、かつベース部12の幅w1より長い中央部26を有し、一対の押付部20はそれぞれ、中央部26の対応
する端部から下方に延在する脚部30を有し、脚部30の下端に、押付面24が設けられる。
押付面24は、リードRの表皮部SRの湾曲面に沿うように、リードRの幅方向にアーチ状である。
【0025】
押付面24について、リードRの表皮部SRのおもて面の湾曲程度に応じて、締付ネジ部1
6の締付による押付プレート部14のリードRに対する押付力により、押付面24の表皮
部SRのおもて面に対する接触面積の調整が可能である。
より詳細には、押付面24のリードRの長手方向の断面は、中央部26側から長手方向
先端部に下方に傾斜する形状である。より具体的には、一対の押付プレート部14のうち、中央部26からティップ側に設けられる押付面24は、中央部26側から長手方向ティップ側先端部に下方に傾斜する形状であり、中央部26から楽器側に設けられる押付面24は、中央部26側から長手方向楽器側先端部に下方に傾斜する形状である。
いずれも、まず長手方向先端部がリードRの表皮部SRのおもて面に接触し、押付力の増
大により、長手方向先端部から中央部側に接触部が増大するように、脚部30の剛性、特に厚みを設定しておく。
【0026】
一方、押付面24のリードRの幅方向の断面は、リードRの幅方向中心から幅方向先端部に亘って湾曲形状である。より具体的には、一対の押付プレート部14いずれも、一方の脚部30の押付面24は、リードRの幅方向中心から幅方向先端部に亘って湾曲形状であり
、他方の脚部30の押付面24は、リードRの幅方向中心から、幅方向逆向きの先端部に
亘って湾曲形状である。この場合、まず幅方向先端部がリードRの表皮部SRのおもて面に
接触し、押付力の増大により、幅方向先端部からリードRの幅方向中心に向かって接触部
が増大するように、脚部30の剛性、特に厚みを設定しておき、リードRの表皮部SRのお
もて面の湾曲形状には、リードRの種類に応じて種々あるところ、押付力の調整により、
長手方向および幅方向の接触部の増減により、接触面積の調整が可能であり、リードRの
種類に対して汎用性を確保可能である。
以上、図16に示すように、本シングルリード向け木管楽器用リガチャー10は、従来のベース部の下方、すなわち、ベース部とリードRとの間に設置されていた場合に比して、リガチャー自体が低重心構成となるとともに、押付面24によるリードRの表皮部SRのお
もて面への接触は、リードRの長手方向に間隔を隔てた2か所の位置で、各位置において
は、各押付面24は表皮部SRのおもて面に対して、線接触であり、かつ、締付ネジ部16の締付程度により押付力を通じて線接触面積の調整が可能であることから、シンプルな構造でありながら、音質の向上、調整が可能となる。
【0027】
バカ穴部18は、中央部26の長手方向に長軸が位置する楕円開口であり、後に説明する締付ネジ部16の雄ネジ部54が貫通可能な大きさに設定される。
一対の脚部30は、リードRの幅方向内で、リードRの幅方向に互いに遠ざかるように斜め下方に延びる。
ベース部12および/または押付プレート部14は、おもて面をラッカー仕上げしてもよ
く、それにより、楽器自体と同様に、音質向上が可能である。
一対の押付部20間の長手方向の間隔Dは、リードRのおもて面の表皮部SRの長さの三分の一ないし二分の一が好ましい。
押付プレート部14の中央部26の幅は、マウスピースMPの幅の三分の一ないし二分の一が好ましく、コの字状の高さ、すなわち、押付部20に対する中央部26の高さh2は、締付ネジ部16を後に説明する凸部41のネジ穴部22にねじ込むことにより、一対の押付部20それぞれの押付面24がリードRをマウスピースMPのテーブル面Tに対して押付固定可能なように、ベース部12のアーチ高さに応じて、定めればよいが、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10全体の重心をなるべく低くして、音質向上に資する観点から、なるべく低いのが好ましく、たとえば、5ミリ以内がよく、材質は、金属製、たとえば、真鍮製、特に銀製がよい。
【0028】
図16に示すように、押付プレート部14は、バカ穴部18と同心状に、裏面に楕円状断面の凹部36を有し、ベース部12に固定される凸部40(後に説明)に凹部36を嵌め込むことにより、押付プレート部14は、ベース部12に対して相対回転不能に固定されるようにしている。より詳細には、凸部40の上面が凹部36の環状底面37に当たることにより、押付プレート部14のマウスピースMPのテーブル面Tに対する相対高さが定まるとともに、押付プレート部14の凸部40、かくしてベース部12に対する相対回転を不能にしている。
押付プレート部14のマウスピースMPのテーブル面Tに対する相対高さは、締付ネジ部16によるネジ込みにより、マウスピースMPのテーブル面Tに設定されるリードRの表皮部SRのおもて面を押付固定可能なように、設定すればよい。
【0029】
変形例として、押付プレート部14は、バカ穴部18が設けられ、ベース部12の幅w1
より長い中央部26を有し、一対の押付部20はそれぞれ、中央部26の対応する端部28全体から下方に延在する傾斜部(図示せず)を有し、一対の押付部20それぞれは、傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面24が設けられるのでもよい。
この場合、押付面24には、互いに押付プレート部14の幅方向に間隔を隔てた一対の突起部(図示せず)を有し、一対の突起部それぞれは、押付によりリードRの表皮部SRのお
もて面が凹まない範囲で、下方に突起する湾曲面を構成し、湾曲面を介して、リードRに
点接触するのでもよい。
【0030】
図5に示すように、締付ネジ部16は、雄ネジ部54と、雄ネジ部54の先端に、同心状に設けられ、指で摘まんで回転可能なヘッド部56とを有する。
締付ネジ部16による締付により、締付ネジ部16とマウスピースMPに固定されるベース部12との間の押付プレート部14は、ベース部12側、すなわち、リードRのおもて
面に対して押し付けられ、リードRがマウスピースMPのテーブル面Tに対して固定される
。押付プレート部14のリードRに対する押付力は、締付ネジ部16による締付程度によ
り調整可能である。
ヘッド部56は、軽量性の観点から、中実状でなく、上板と上板の周縁から下方に延びる環状板とからなるのが好ましく、上板を略多角形として、環状板を指で摘まんで、雄ネジ部54の長手方向を中心に回転しやすくするのがよい。
図8に示すように、雄ネジ部54の長さl2は、雄ネジ部54のシャンク部62の下面64が、押付プレート部14の環状突起部31の上面に当たるまで、締付ネジ部16による締付ける際、雄ネジ部54の下端部が、凸部40の下面からなるべく突出しないように設定するのがよい。
また、雄ネジ部54の根元部には、雄ネジ部54と同心状にシャンク部62が設けられ、この場合、シャンク部62の質量に応じて、音質が変わることから、シャンク部62の径および/または長さl1を調整するのがよい。
凸部40の突出部43の上面に対して、押付プレート部14の下面の凹部36の環状底面37が当接する状態で、締付ネジ部16の締付により、雄ネジ部54のシャンク部62の下面64が、押付プレート部14の環状突起部31の上面に当たることにより、押付プレート部14がリードRをマウスピースMPのテーブル面Tに対して押付固定することが可能である。
【0031】
図6に示すように、ベース部12のバカ穴部28に下方から挿入される凸部40が設けられる。凸部40は、雌ネジ状のねじ穴部22を有する楕円断面の突出部43と、突出部43の下部に設けられた張り出しフランジ部41を有し、張り出しフランジ部41がベース部12の内周面に当たるまで凸部40をベース部12の下方よりバカ穴部28に通し、突出部43の上面がベース部12の外周面から突出し、押付プレート部14の下面の凹部36を突出部43に嵌め込んだ状態で、押付プレート部14のバカ穴部18にねじ穴部22を上下方向に整列し、上方から締付ネジ部16により、バカ穴部18を介してねじ穴部22に螺合可能にしている。なお、凹部36および凸部40は、長軸がマウスピースMPの幅方向に向く楕円状であり、凸部40を凹部36に嵌め込むことにより、押付プレート部14がベース部12に対して相対回転しないようにしてある。
この場合、図1に示すように、張り出しフランジ部41が環状ベース部12の内周面に当たるまで、環状ベース部12の下方から楕円断面を有する凸部40を楕円状開口22に通し、環状上面が環状ベース部12の外周面から突出するようにすれば、凸部40を環状ベース部12に対して相対回転不能に設定することが可能である。押付プレート部14の下面の凹部36を突出部43に嵌め込むことにより、同様に、押付プレート部14を環状ベース部12に対して相対回転不能に設定することが可能であり、リードRをマウスピースMPのテーブル面Tに位置決めした状態で、締付ネジ部16の雄ネジ部54を凸部40のネジ穴部22に螺合させることにより、押付面24によりリードRをテーブル面Tに向かって押付固定することが可能である。
以上のように、環状ベース部12の場合、環状ベース部12自体に厚み方向にネジ穴部を設けないとしても、従来のようにロウ付けにより、ねじ穴部を有する凸部40を環状ベース部12に固定する必要はなく、ロウ付けの加熱に起因する音質への悪影響は回避可能である。
なお、凸部40の張り出しフランジ部41が環状ベース部12の内周面に当たる際、張り出しフランジ部41が内周面から突出せず、面一となるのが好ましいので、環状ベース部12の厚みとの関係で、許容可能であれば、張り出しフランジ部41の厚み分、環状ベース部12の内周面に、張り出しフランジ部41と相補形状の窪みを設けるのでもよい。
【0032】
図7に示すように、弾性リング17が、押付プレート部14と締付ネジ部16との間に介在する。より詳細には、弾性リング17は、円形開口19を有する環状であり、円形開口19に雄ネジ部54を通して、締付ネジ部16を締付けることにより、押付プレート部14に対して押し付けられ、上下方向に潰れることにより、その反発力により、押付プレート部14の押付力が補強される。弾性リング17の剛性の選択により、音質を変えることが可能であり、たとえば、剛性の低いゴム製の場合、柔らかい音色となり、剛性の高いスプリングワッシャーの場合は、明るくエッジが立つ反面若干音が細くなる。なお、弾性リング17はオプションであり、その場合には、雄ネジ部54のシャンク部62の下面64が、押付プレート部14の環状突起部31の上面に直接当たる。
なお、締付ネジ部16の締付により、凸部41を環状リング12のバカ穴部28に通す際、押付プレート部14の凹部36を凸部41の突起部43に嵌め込む際、いずれも、横方向へのガタは多少許容される。
【0033】
図13に示すように、環状ベース部12の変形例として、純銀製としたうえで、外周側面38には、各々平面または曲面からなる多面部46からなる不規則模様PNが環状に形成され、互いに隣接する多面部46は、マウスピースMPと同心状の同一円筒面内に包含されないように凹凸状に設けられるのでもよい。凹凸の高さの差は、0.1ミリ以上に設定される。0.1ミリ未満では、外周側面16の表面積の増大により、マウスピースMPを介して本発明の音質改善効果を得るのが困難である。不規則模様PNは、槌目模様でもよく、梨地模様でもよい。
多面部46の各々は、曲面上で多角形を構成し、互いに隣接する多面部46が、多角形の辺17を共有するのでよい。多面部46において、多角形の大きさおよび形状が異なることにより、不規則模様PNが構成されている。
【0034】
このような環状ベース部12は、厚みが1ミリないし3ミリの純銀製平板を鍛造により不規則模様PNを形成する多面部46を形成し、純銀製平板を環状に曲げ加工するのがよい。
【0035】
これにより、純銀製薄肉構造上ゆえ強度が弱い欠点を鍛造により補強するとともに、鍛造の結果として、多面部46から構成される槌目模様であり、各多面部46の形状、大きさにバラツキのある不規則な模様が得られ、それが、和太鼓の共鳴箱の内周面に形成される凹凸状よろしく、音響効果が得られ、さらに、特に暗い屋内でライトの光に対して不規則模様PNの多面部46が種々の方向にキラキラ反射して、マウスピースMPが装着される木管楽器のデザイン性を向上することが可能である。
純銀製環状ベース部12の幅w1は、リードRの横幅Wの80%以上に設定される。80%
以下では、マウスピースMPを介して音質効果を得るのが困難である。
純銀製環状ベース部12の厚みt1は、リードRの横幅Wに応じて設定され、3ミリ以下に
設定される。3ミリ以上では、マウスピースMPを介して本発明の音質改善効果を得るのが
困難である。
純銀製環状ベース部12の幅w1および厚みt1について、幅w1を確保する場合には、多
面部46において、多角形の大きさを増大して、不規則模様PNの密度を低くするのでもよく、リガチャー10の強度確保可能な範囲で厚みt1をなるべく薄くするのが好ましい。
【0036】
さらなる変形例として、純銀製環状ベース部12の不規則模様PNを形成する多面部46は、幅方向に1条であり、周方向に横縞状に連なるように形成されるのでもよい。
【0037】
音質改善部としては、サキソフォン用メタル製またはラバー製マウスピースMPの外周側面16の凹凸であって、マウスピースMPの外周側面において、環状に、各々平面または曲面からなる多面部46により構成される不規則模様PNとして、マウスピースMPの円筒部と同心状にない凹凸状が形成するのがよく、これは研削加工により形成されるのでもよい。このような純銀製環状ベース部12の表面全体に金メッキを施すのもよく、それにより、金材質特有の複雑な温かい音色を引き出すことが可能となる。
なお、このような音質改善体としての純銀製環状ベース部12において、材質を特に純銀製とすることにより、銀は、金、銅に比べて、特定の固有振動数を有さないことから、外表面に設ける多面部46により構成される不規則模様PNによる凹凸の効果を顕著にする効果がある。
【0038】
さらなる変形例として、図14に示すように、純銀製シャンクリングという音質改善体を装着したマウスピースMPに適用してもよい。より詳細には、音質改善体は、純銀製シャンクリングであって、厚みが0.5ミリないし1.5ミリの純銀製平板鍛造により多面部46を形成し、純銀製平板を環状に曲げ加工し、マウスピースのティップオープンニングOと逆側
の端部60に締まり嵌めされ、純銀製シャンクリングにおいても、純銀製ベース部と同様に、外周面に凹凸状の不規則模様PNを設けることにより、種々の振動数に対して分散的に呼応するので、複数倍音を含む音の豊かさとともに、音の響き、または伸び感に優れる効果を有し、純銀製ベース部および純銀製シャンクリング両方用いることにより、このような効果およびでデザイン性向上はさらに際立つ。
【0039】
以上、表面凹凸状の純銀製環状ベース部12を用いて、マウスピースMPに対してリードR
を締付固定すれば、マウスピースMPの外周側面において、環状に、各々平面または曲面からなる多面部46により構成される不規則模様PNとして、マウスピースMPの円筒部と同心状にない凹凸状が形成されるので、マウスピースMPにティップオープニングを介して息を吹き込んで発音する際、無音状態から、スムーズかつ連続的に有音状態とすることが可能で、有音状態において、凹凸による外周側面の表面積増大および不規則模様PNゆえに、リードRの特定の振動数に共鳴して、その音のみが強調されるのではなく、和太鼓の共鳴箱
の内周面の波動形状としての凹凸形状よろしく、種々の振動数に対して分散的に呼応するので、複数倍音を含む音の豊かさとともに、音の響き、または伸び感に優れ、有音状態からフェードアウトする際も、スムーズかつ連続的に無音状態とすることが可能であり、総じて、音をコントロールするのに重要なアンブシュアが確立していない経験の浅い演奏者でも、音の操作性が容易になることで、音楽性の高い演奏が可能であるとともに、特に暗い屋内でライトの光に対して不規則模様PNの多面部46が種々の方向にキラキラ反射して、マウスピースMPが装着される木管楽器のデザイン性を向上することも可能である。
なお、このような不規則模様PNを有する純銀製環状ベース部12の場合、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10によりリードRをマウスピースMPのテーブル面Tに装着する際、純銀製環状ベース部12の内周面は、マウスピースMPのテーブル面Tと直径方向反対側位置でマウスピースMPに当たるが、それに加えて、純銀製環状ベース部12の内周面がマウスピースMPのテーブル面Tに位置決めされるリードRの幅方向の両エッジ部Eの上隅に直接当たるようにすれば、このような音質改善効果をさらに助長することが可
能となる。
【0040】
以上の構成を有するシングルリード向け木管楽器用リガチャー10によれば、マウスピースMPのテーブル面Tに沿って設けられるリードRの幅方向に跨り、マウスピースMPに対して固定されるベース部12に対して、押付プレート部14を、ベース部12の上方に位置決めし、締付ネジ部16を押付プレート部14のバカ穴部18に貫通させ、ベース部12のネジ穴部22に対して締め付けることにより、押付プレート部14が一対の押付部20を介してリードRをマウスピースMPに対して押付け可能で、一対の押付部20がバカ穴部1
8を挟んで互いに逆方向に延在することにより、マウスピースMPのテーブル面Tの面に対
して、テーブル面Tの長手方向に間隔を隔てた2か所で真上からリードRを押し付け可能であるから、優れた音質を確保可能であるとともに、押付プレート部14が、ベース部12の上方に位置し、テーブル面Tの延び方向に沿ってベース部12の幅w1を上方から跨ぐように設けられることから、シンプルで、デザイン性に優れた構造であり、リガチャー10のマウスピースMPに対する装着が簡便で、たとえば、演奏中にマウスピースMPの楽器本体への差し込み深さを調整するのに、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10を片手で握って、楽器本体に対してマウスピースMPを長手方向を中心に回転させる際、演奏中のリードRのマウスピースMPに対するずれが抑制可能である一方、締付ネジ部16の締付を
単に緩めるだけで、ベース部12、押付プレート部14および締付ネジ部16をばらばらに分解可能であり、分解性、メインテナンス性に優れるリガチャー10を提供することが可能である。
なお、装着の際、図1に示すように、ベース部12、押付プレート部14および締付ネジ部16をバラバラにした状態で、リードRをベース部12の開口に通し、マウスピースMPに固定し、次いで、押付プレート部14の凸部をベース部12の凹部に差し込んで、押付プレート部14をベース部12に対して位置決めし、そのうえで、締付ネジ部16を締付けることにより、押付プレート部14をリードRの表皮部SRの湾曲おもて面に押し付
けるのがよいが、本シングルリード向け木管楽器用リガチャー10は、分解可能な別個の要素部品から構成されるからこそ、ベース部12、押付プレート部14、締付ネジ部16およびオプションとしての弾性リング17それぞれの選択、組み合わせにより、様々な音色をアレンジすることが可能となる。
また、ベース部12、押付プレート部14および締付ネジ部16がバラバラで要素部品からなるものでも、それによりロウ付けを採用せずに、ねじ構造により組み立てることから、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10の製造の際の音質への悪影響要因を削減することが可能である。
【0041】
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について、図9ないし図11を参照しながら詳細に説明する。
本発明の第2実施形態の特徴は、ベース部12にあり、第1実施形態においては、ベース部12がマウスピースMPの周面全体を覆う環状であるのに対して、本実施形態においては、ベース部12がマウスピースMPの周面全体を覆わず、マウスピースMPの上部のみを覆うアーチ状である点である。
【0042】
より詳細には、べース部12は、マウスピースMPより半径の小さいアーチ状断面が長手方向に一定に形成され、対向する長手方向縁部48それぞれには、他方に向かう凸状部50が設けられ、マウスピースMPのテーブル面Tの下方近傍の外周面には、凸状部50が嵌
合可能な長溝52が、設けられる。長溝52は略断面コの字状で、テーブル面Tと平行に略水平に設けられ、深さは、数ミリ程度であり、マウスピースMPのテーブル面Tから下方
数ミリの位置に設けるのがよい。
長溝52の長さは、押付プレート部14によるリードRの固定位置を調整可能な観点か
ら定めればよく、マウスピースMPのウィンドウとテーブル面Tとの境界からマウスピースMPの楽器側開口端面まで延びるのが好ましい。
特に、長溝52は、マウスピースMPの楽器側端部に抜けるように設けることにより、ベース部12をマウスピースMPに装着する際、楽器側端部からティップ側に向かって差し込み可能とするのがよい。
ベース部12をマウスピースMPに装着し、締付ネジ部16により押付プレート部14をリードRに対して押付固定後に、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10のマウスピ
ースMPの長手方向位置を調整する場合には、ベース部12の凸状部50を長溝52に沿って、単に長手方向に摺動させるだけでよい。
また、アーチ状ベース部12自体にネジ穴部22を設ける代わりに、第1実施形態の凸部40を省略しており、締付ネジ部16をアーチ状ベース部12のネジ穴部22に直接螺合させているが、これは、第1実施形態の場合、環状ベース部12であることから、加工効率確保の観点から環状ベース部12にネジ穴部22を設けずに、別途、ねじ穴を有する凸部40を設けている。
なお、ベース部12のアーチ形状を調整することにより、第1実施形態と同様に、ベース部12がリードRの幅方向エッジ部E上隅に当たるようにしつつ、ベース部12を銀製として、外表面に不規則模様PNを設けることにより、音質向上に役立てるのでもよい。
【0043】
さらなる変形例として、一般的に、メタル製マウスピースMPに比し、ラバー製マウスピースMPの径は大きいことから、マウスピースMPのテーブル面Tの両脇に斜めの長溝52を設けることが可能である。より詳細には、マウスピースMPのテーブル面Tに平行な水平向きの長溝52でなく、マウスピースMPの中心に向かう斜めの長溝52を設けるとともに、アーチ状ベース部12の対向する長手方向縁部48それぞれには、他方に向かって下方に傾斜する凸状部50を設けることにより、ベース部12のマウスピースMPの幅方向の張り出しを抑制しつつ、マウスピースMPの脇から横向きに凸状部50を長溝52に嵌合する場合に比べて、ベース部12をマウスピースMPの中心により向かう向きに強固に固定することが可能となる。
【0044】
以下に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について、図12および図15を参照しながら詳細に説明する。
本発明の第3実施形態の特徴は、締付ネジ部16にあり、第1実施形態においては、締付ネジ部16がベース部12のネジ穴部22に螺合する雄ネジ部54と、指で摘まんで回転させるヘッド部56と有するのに対して、本実施形態においては、締付ネジ部16が、ベース部12側に設ける雄ネジ部に螺合するナット状である点である。
【0045】
より詳細には、締付ネジ部16は、押付プレート部14に固定され、上方に延びるねじ部に螺合するナット部58であり、ナット部58を雄ネジ部に螺合させ、回転させながら下方に移動させることにより、第1実施形態と同様に、押付プレート部14の押付面24をリードRの表皮部SRの湾曲おもて面に押付可能である。図15に示すように、上方に延
びる雄ねじ部は、第1実施形態における凸部40の上面から上方に延びるように凸部40に固定されており、第1実施形態と同様に、環状ベース部12のバカ穴部28に雄ネジ部を通して、環状ベース部12の内周面に張り出しフランジ部41が当たるように設けている。
なお、第1実施形態のように、棒状の雄ネジ部54を下向きでベース部12のネジ穴22の延びる方向に整合する場合に比べて、本実施形態においては、ナット部58の開口部を雄ネジ部の上端から差し込み、下方に進めながら回転させればよいので、リガチャー装着の際の操作が楽である。
【0046】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10の押付プレート部14として、バカ穴部18を有する中央部26を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部20を有するものとして説明したが、それに限定されることなく、たとえば、中央部26から一方の長手方向に延在する単一の押付部20を設けるのでもよく、場合により、中央部26からティップ側に一方の長手方向に延在する単一の押付部20、または中央部26から楽器側に一方の長手方向に延在する単一の押付部20でもよく、押付プレート部14のマウスピースMPに対する向きの選択により、どちらかにするのがよい。
【0047】
たとえば、本実施形態において、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10の押付プレート部14として、バカ穴部18を有する中央部26を挟んで互いに逆方向に延在する、一対の押付部20を有し、一対の押付部20それぞれが、脚部30を有し、一対の押付部それぞれは、各々が中央部26の対応する端部から下方に延在する脚部30を一対有し、各脚部30はリードRの幅方向内で、リードRの幅方向に互いに遠ざかるように斜め下方に延び、脚部30の下端に、押付面24が設けられる、長手方向に線対称構造のものとして説明したが、それに限定されることなく、たとえば、一対の脚部30が中央部26のティップ側端部にのみ設けられ、中央部26の楽器側端部には、単一の脚部30が楽器側端部の中央部26に設けられ、単一の押付面24が設けられるのでもよく、たとえば、一対の脚部30が中央部26のティップ側端部にのみ設けられ、中央部26の楽器側端部には、楽器側端部全体から下方に延在する傾斜部を有し、傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面24が設けられるのでもよく、たとえば、中央部26のティップ側端部には、単一の脚部30がティップ側端部にのみ設けられ、単一の押付面24が設けられ、中央部26の楽器側端部には、楽器側端部全体から下方に延在する傾斜部を有し、傾斜部の下端全体から延在し、下面に押付面24が設けられるのでもよく、いずれも、押付プレート部14がベース部12の幅w1を跨ぐように、ベース部12の上方に位置するシンプルな構造
である点では共通であるが、所望する音質に応じて、押付プレート部14の態様を選択すればよい。
【0048】
たとえば、本実施形態において、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10の押付プレート部14として、長手方向および幅方向それぞれに間隔を隔てた4か所の位置でリードRを上方から固定するものとして説明したが、それに限定されることなく、長手方向に
間隔を隔てた2か所の位置でリードRを上方から固定する限り、たとえば、押付面24に
下方に突出する線状突起部、点状突起部を設けることにより、押付面24がリードRに対
して、線接触または点接触するのでもよい。
たとえば、本実施形態において、シングルリード向け木管楽器用リガチャー10の押付プレート部14として、上面に環状突起部31を有し、締付ネジ部の雄ネジ部54の根元に設けられたシャンク部62の下面64が環状突起部31の上面に当たるまで、締付ネジ部16を締め付けることにより、押付プレート部14がリードRを上方から押付固定するも
のとして説明したが、それに限定されることなく、押付プレート部14がリードRを上方
から押付固定可能である限り、たとえば、押付プレート部14の上面の環状突起部31を省略して、シャンク部62の下面64が押付プレート部14の上面に当たるまで締付ネジ部16を締め付けるのでもよい。
【0049】
たとえば、本実施形態において、サキソフォン用マウスピースMPに装着するリガチャー10として説明したが、それに限定されることなく、サキソフォンに限らず、クラリネット等シングルリードR向け木管楽器に用いるマウスピースMPに適用可能である。
たとえば、本実施形態において、押付プレート部14として、バカ穴部18を有する中央部26に対して、互いに長手方向逆向きに延在する一対の押付部20が設けられ、各押付部20は、斜め下方に延びる脚部30が押付プレート部14の幅方向に間隔を隔て一対設けられ、各脚部30の下端部に押付面24が設けられるものとして説明したが、それに限定されることなく、中央部26に対して、互いに長手方向逆向きに延在する一対の押付部20が設けられる限り、各押付部20において、または押付部20いずれかにおいて、単一の脚部30が押付プレート部14の中央部に設けられるのでもよい。
【0050】
たとえば、本実施形態において、環状またはアーチ状ベース部12の外表面に、鍛造加工の際の槌目模様の凹凸を設ける場合として説明したが、それに限定されることなく、製造段階の鍛造加工とは別に、たとえば、ベース部12の完成後に、梨地模様等の不規則模様PNを加工するのでもよく、外観の向上および/または音質改善が可能である。
【0051】
たとえば、本実施形態において、ベース部12、押付プレート部14、および締付ネジ部16から構成されるシングルリード向け木管楽器用リガチャー10として、一種類の押付プレート部14を用いる場合として説明したが、それに限定されることなく、ベース部12および締付ネジ部16は共通に、ベース部12および締付ネジ部16の間に介在し、締付ネジ部16が貫通するバカ穴部18が設けられる限り、形態が異なる押付プレート部14を準備し、リードRの形態、要求する音質に応じて、選択するのでもよい。この場合、
押付プレート部14を交換するには、ベース部12はマウスピースMPに装着した状態で、締付ネジ部16による締付を緩めるだけでよい。または、ベース部12と押付プレート部14との組み合わせとして、第1実施形態の環状ベース部12、第2実施形態のアーチ状ベース部12、あるいは凹凸状の不規則模様PNを有するベース部12を準備し、所望の形態の押付プレート部14と組合わせることにより、デザイン性、音質を変えるのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の環状ベース部12の斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の押付プレート部14の斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の締付ネジ部16の斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の凸部41の斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の弾性リングの斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の図1と同様な図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の図2と同様な図である。
図11】本発明の第2実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の図8と同様な図である。
図12】本発明の第3実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の図9と同様な図である。
図13】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10のベース部12の変形例である。
図14】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10のマウスピースMPに設けられるシャンクリングを示す斜視図である。
図15】本発明の第3実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の図1と同様な図である。
図16】本発明の第1実施形態に係るシングルリード向け木管楽器用リガチャー10の押付プレート部14の底面図である。
【符号の説明】
【0053】
MP マウスピース
O ティップオープニング
P ピーク
TP ティップ
F フェイシング
T テーブル面
R リード
D 一対の押付部間の長手方向の間隔
E エッジ部
SR 表皮部
PN 不規則模様
l1 シャンク部62の高さ
l2 雄ネジ部54の長さ
10 シングルリード向け木管楽器用リガチャー
12 ベース部
14 押付プレート部
16 締付ネジ部
17 弾性リング
18 バカ穴部
19 開口
20 一対の押付部
22 ネジ穴部
24 押付面
26 中央部
28 バカ穴部
30 脚部
31 環状突起部
32 下端
34 裏面
36 凹部
37 環状底面
38 おもて面
40 凸部
41 張り出しフランジ部
43 上面
44 外周面
46 多面部
48 長手方向縁部
50 凸状部
52 長溝
54 雄ネジ部
56 ヘッド部
57 ネジ部
58 ナット部
60 端部
62 シャンク部
64 下面
【要約】
【課題】優れた音質を確保しつつ、シンプルで、デザイン性に優れた構造であり、装着が簡便で、演奏中のずれが抑制可能であり、分解性、メインテナンス性に優れたシングルリード向け木管楽器用リガチャーを提供する。
【解決手段】マウスピース(MP)のテーブル面(T)に沿って設けられるリード(R)の幅方向に跨り、マウスピース(MP)に対して固定されるベース部(12)と、リード(R)をマウスピース(MP)のテーブル面(T)に対して押付ける押付プレート部(14)と、該ベース部(12)に螺合する締付ネジ部(16)とを有し、前記押付プレート部(14)は、前記締付ネジ部(16)が厚み方向に貫通するバカ穴部(18)と、該バカ穴部(18)から延在する、少なくとも1つの押付部(20)とを有し、前記ベース部(12)は、前記締付ネジ部(16)が螺合可能なネジ穴部(22)を有し、前記押付プレート部(14)は、前記ベース部(12)の上方に位置し、テーブル面(T)の延び方向に沿って設けられ、前記締付ネジ部(16)が前記バカ穴部(18)を貫通し、前記ネジ穴部(22)に対して締め付けられることにより、前記押付プレート部(14)が前記押付部(20)を介してリード(R)をマウスピース(MP)に対して押付け可能とする、ことを特徴とする、シングルリード向け木管楽器用リガチャー(10)。
図1
図2
図5
図3
図4
図7
図6
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16