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  • 特許-酸化エチレンガス除去システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】酸化エチレンガス除去システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20240115BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B01D53/04 220
B01D53/72
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023548002
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033935
(87)【国際公開番号】W WO2023042302
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592010106
【氏名又は名称】カンケンテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】森原 淳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義彦
(72)【発明者】
【氏名】葛岡 弘基
(72)【発明者】
【氏名】今村 啓志
(72)【発明者】
【氏名】林 和也
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/167832(WO,A1)
【文献】特開2008-183533(JP,A)
【文献】特開平07-241427(JP,A)
【文献】特開2020-104056(JP,A)
【文献】国際公開第2007/077742(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/12
B01D 53/34-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の区画空間(12)内に放出される酸化エチレンガスを濃縮する濃縮装置(14)と、その濃縮装置(14)で濃縮した酸化エチレンガスを分解して除去する除去装置(16)とを含む酸化エチレンガス除去システムであって、
上記の濃縮装置(14)は、
吸着構造体(18)を介してその内部空間が第1室(20)及び第2室(22)に区画された吸着器(24a,24b…)を、少なくとも2基以上備える固定式吸着塔(26)、
上流端が上記の区画空間(12)に接続され、下流端が上記の各吸着器(24a,24b…)の第1室(20)に接続されて上記の区画空間(12)より供給されるEO含有エア(CA)を、上記の各吸着器(24a,24b…)の第1室(20)の何れかに切り換え可能に供給する区画空間エア供給流路(28)、
上流端が上記の各吸着器(24a,24b…)の第2室(22)に接続され、下流端が外気に通じる排気口(30)に接続されて上記の何れかの吸着器(24a,24b…)の吸着構造体(18)を通過して酸化エチレンが吸着・除去された再生エア(RA)を上記の排気口(30)へと送給する再生エア送給流路(32)、
上流端が上記の再生エア送給流路(32)に設けられた送気ファン(34)の吐出側にて当該再生エア送給流路(32)に接続され、下流端が上記の吸着器(24a,24b…)の第2室(22)に接続されて上記の再生エア(RA)の一部をパージエア(PA)として当該各吸着器(24a,24b…)の第2室(22)の何れかに切り換え可能に送給するパージエア送給流路(36)、及び
上流端が上記の各吸着器(24a,24b…)の第1室(20)に接続され、下流端が上記の除去装置(16)に接続された濃縮EO排出流路(40)、とを備え、
上記の吸着構造体(18)は、無機の多孔質材料を主体とし、空気中の酸化エチレンを物理的に吸着する粒状又は塊状の吸着材(42)と、その吸着材(42)を収納すると共に、上記の吸着器(24a,24b…)の内部空間を互いに気体の通流が可能な2つの室(20,22)に区画する通気性のケーシング(44)と、そのケーシング(44)内に収納された上記の吸着材(42)の中に埋設されることによって当該吸着材(42)を直に加熱する加熱手段(46)とで構成されると共に、
上記の区画空間エア供給流路(28)上における上記の固定式吸着塔(26)の前段に、上記のEO含有エア(CA)中の水分を除去する水分除去手段(48)が設けられる、
ことを特徴とする酸化エチレンガス除去システム。
【請求項2】
所定の区画空間(12)内に放出される酸化エチレンガスを濃縮する濃縮装置(14)と、その濃縮装置(14)で濃縮した酸化エチレンガスを分解して除去する除去装置(16)とを含む酸化エチレンガス除去システムであって、
上記の濃縮装置(14)は、
吸着構造体(18)を介してその内部空間が第1室(20)及び第2室(22)に区画された吸着器(24a,24b…)を、少なくとも2基以上備える固定式吸着塔(26)、
上流端が上記の区画空間(12)に接続され、下流端が上記の各吸着器(24a,24b…)の第1室(20)に接続されて上記の区画空間(12)より供給されるEO含有エア(CA)を、上記の各吸着器(24a,24b…)の第1室(20)の何れかに切り換え可能に供給する区画空間エア供給流路(28)、
上流端が上記の各吸着器(24a,24b…)の第2室(22)に接続され、下流端が上記の区画空間(12)に接続されて上記の何れかの吸着器(24a,24b…)の吸着構造体(18)を通過して酸化エチレンが吸着・除去された再生エア(RA)を上記の区画空間(12)へと返送する再生エア返送流路(50)、
上流端が上記の再生エア返送流路(50)に設けられた送気ファン(52)の吐出側にて当該再生エア返送流路(50)に接続され、下流端が上記の吸着器(24a,24b…)の第2室(22)に接続されて上記の再生エア(RA)の一部をパージエア(PA)として当該各吸着器(24a,24b…)の第2室(22)の何れかに切り換え可能に送給するパージエア送給流路(54)、及び
上流端が上記の各吸着器(24a,24b…)の第1室(20)に接続され、下流端が上記の除去装置(16)に接続された濃縮EO排出流路(40)、とを備え、
上記の吸着構造体(18)は、親水性ゼオライトからなり、上記のEO含有エア(CA)中の水分と酸化エチレンとを物理的に吸着する粒状又は塊状の吸着材(42)と、その吸着材(42)を収納すると共に、上記の吸着器(24a,24b…)の内部空間を互いに気体の通流が可能な2つの室(20,22)に区画する通気性のケーシング(44)と、そのケーシング(44)内に収納された上記の吸着材(42)の中に埋設されることによって当該吸着材(42)を直に加熱する加熱手段(46)とで構成される、
ことを特徴とする酸化エチレンガス除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空間中に極低濃度で存在する酸化エチレンガスの除去方法とその装置(除去システム)とに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化エチレン(以下、「EO」と略記することもある。)は、きわめて反応性が高いため、他の有機物質を合成する時の中間体として用いられており、また、殺菌力が強いことから、医療用具や精密機器の滅菌などにも用いられている。
上記の用途のうち、例えば医療用具の滅菌に関しては、以前、滅菌に用いられて使用済みとなった酸化エチレンが無処理のまま大気中へ放出されることもあった。しかしながら、この酸化エチレンは、ヒトに対して発ガン性や皮膚・粘膜に対する刺激性を有するのに加え、近年、大気中に排出された酸化エチレンが環境に与える影響も重大な問題になりつつあることから、わが国のみならず諸外国においても酸化エチレンに関する規制が定められるようになっている。
【0003】
このような使用済みの酸化エチレンを除去する技術として、例えば、下記の特許文献1(日本国・特開2014-237090号公報)には、滅菌処理後の廃ガスに含まれる酸化エチレンを除去する廃ガス処理装置であって、石油又は石炭を原料とする活性炭が充填され、前記廃ガスを該活性炭に接触させて酸化エチレンを吸着させて分解することにより該廃ガスから酸化エチレンを除去するための吸着筒を備えることを特徴とする廃ガス処理装置が開示されている。
また、下記の特許文献2(日本国・特開平8-215541号公報)には、排気ガス中の酸化エチレンを吸着する吸着塔、及び排気ガス中の酸化エチレンを燃焼させる触媒燃焼装置が直列に接続されている処理装置が開示されている。
これらの技術によれば、滅菌処理後の廃ガスに含まれるEOの除去効率に優れた処理装置及び処理方法を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-237090号公報
【文献】特開平8-215541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術には次のような課題があった。すなわち、上記従来の処理装置及び処理方法は、医療用具のEO滅菌器から排出される廃ガスのように比較的高い濃度のEOを含むガスの除去処理には有効であろうが、所定の区画空間に僅かな量のEOが放出されるような場合、例えば、酸化エチレン滅菌後の医療用具は、ビニールブースや温蔵庫などで所定期間保管されて滅菌済み医療用具に残留するEOを排出させるようにしているが、そのビニールブースや温蔵庫と言った限られた空間に放出されたEOのように、極低濃度のEOを上記従来の処理装置及び処理方法で除去処理するのは極めて困難であった。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる課題は、所定の限られた空間内に放出された極低濃度の酸化エチレンをも効率的に除去して環境中から除去することが可能な酸化エチレンの除去方法とその装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明における第1の発明は、例えば、図1に示すように、所定の区画空間12中に放出される酸化エチレンの除去方法を次のように構成した。
すなわち、上記の区画空間12内に放出された酸化エチレンを含有するEO含有エアCAを吸引して、濃縮装置14に供給する第1のステップと、上記の濃縮装置14にて、吸引したEO含有エアCAから水分を除去した後、吸着材42で酸化エチレンを吸着して濃縮する第2のステップと、濃縮した酸化エチレンを上記の吸着材42から脱着させて除去装置16に送る第3のステップと、上記の除去装置16で酸化エチレンを分解・除去する第4のステップとを含む。
【0008】
この第1の発明は、例えば、次の作用を奏する。
大気中に存在するEOは、水分と似た特性を有することから、所定の区画空間12に放出されるEOが少量且つ極低濃度である場合、吸着材42を用いてその区画空間12内のEO含有エアCAからEOを吸着・除去するのが非常に困難である。そこで、本発明では、第2のステップにおいて、吸着材42でEO含有エアCA中のEOを吸着させる前にEO含有エアCAから水分を除去するようにしている。こうすることにより、吸着材42におけるEOの吸着効率を著しく向上させることができる。
ここで、「所定の区画空間」とは、EOが滞留する閉鎖された空間を意味し、具体的には、EO滅菌器の内部空間,滅菌済み医療用具に残留するEOを排出させために係る用具を一時的にストックするビニールブースや温蔵庫の内部空間,EOを取り扱う作業場やプラントの内部空間などを例示することができる。
【0009】
本発明においては、例えば、図2に示すように、前記の第2のステップでは、前記の吸着材42として親水性ゼオライトを用いると共に、前記の濃縮装置14を通過した再生エアRAを前記の区画空間12内に戻して循環させるのが好ましい。吸着材42として親水性ゼオライトを用いることにより、当該吸着材によりEO含有エアCA中の水分を除去した上で、又は除去しながら酸化エチレンを吸着することができる為、濃縮装置14において吸着材42の他に別途の水分除去手段(例えば水分除去手段48)を設ける必要がなく、装置構成をシンプルにすることができる。また、濃縮装置14を通過した再生エアRAは、その含有水分量が低くなることから、これを所定の区間空間に戻すことにより所定の区間空間12内のEO含有エアCAの水分量も低下させることができる。これらの効果により、極低濃度の酸化エチレンを含有する大風量のEO含有エアCAであっても処理することができる。
【0010】
また、第2の発明に係る装置は、上述した方法(第1の発明)を実施するための酸化エチレンガス除去システムであって、例えば、図1に示すように、所定の区画空間12内に放出される酸化エチレンを濃縮する濃縮装置14と、その濃縮装置14で濃縮した酸化エチレンガスを分解して除去する除去装置16とを含む。
上記の濃縮装置14は、吸着構造体18を介してその内部空間が第1室20及び第2室22に区画された吸着器24a,24b…を、少なくとも2基以上備える固定式吸着塔26、上流端が上記の区画空間12に接続され、下流端が上記の各吸着器24a,24b…の第1室20に接続されて上記の区画空間12より供給されるEO含有エアCAを、上記の各吸着器24a,24b…の第1室20の何れかに切り換え可能に供給する区画空間エア供給流路28、上流端が上記の各吸着器24a,24b…の第2室22に接続され、下流端が外気に通じる排気口30に接続されて上記の何れかの吸着器24a,24b…の吸着構造体18を通過して酸化エチレンが吸着・除去された再生エアRAを上記の排気口30へと送給する再生エア送給流路32、上流端が上記の再生エア送給流路32に設けられた送気ファン34の吐出側にて当該再生エア送給流路32に接続され、下流端が上記の吸着器24a,24b…の第2室22に接続されて上記の再生エアRAの一部をパージエアPAとして当該各吸着器24a,24b…の第2室22の何れかに切り換え可能に送給するパージエア送給流路36、及び上流端が上記の各吸着器24a,24b…の第1室20に接続され、下流端が上記の除去装置16に接続された濃縮EO排出流路40とを備える。上記の吸着構造体18は、無機の多孔質材料を主体とし、空気中の酸化エチレンを物理的に吸着する粒状又は塊状の吸着材42と、その吸着材42を収納すると共に、上記の吸着器24a,24b…の内部空間を互いに気体の通流が可能な2つの室20,22に区画する通気性のケーシング44と、そのケーシング44内に収納された上記の吸着材42の中に埋設されることによって当該吸着材42を直に加熱する加熱手段46とで構成される。また、上記の区画空間エア供給流路28上における上記の固定式吸着塔26の前段に、上記のEO含有エアCA中の水分を除去する水分除去手段48が設けられる。
【0011】
この第2の発明は、例えば、次の作用を奏する。
EO含有エアCA中のEOを吸着材42にて吸着させる前に、水分除去手段48によってEO含有エアCA中の水分を除去するようにしているので、吸着材42におけるEOの吸着効率を著しく向上させることができる。
また、固定式吸着塔26が少なくとも2基以上の吸着器24a,24b…を備えているので、吸着材42によるEO含有エアCAからのEOの吸着および吸着材42の再生(EO脱着)・冷却と言った2つの異なる工程を、エアの流路の切換えや加熱手段46のオン・オフと言った操作だけで同時に進行させることができる。このため、酸化エチレンガス除去システムを長期間連続運転させることができる。
【0012】
また、第3の発明に係る装置は、上述した方法(第1の発明)を実施するための酸化エチレンガス除去システムであって、例えば、図2に示すように、所定の区画空間12内に放出される酸化エチレンを濃縮する濃縮装置14と、その濃縮装置14で濃縮した酸化エチレンを分解して除去する除去装置16とを含む。
上記の濃縮装置14は、吸着構造体18を介してその内部空間が第1室20及び第2室22に区画された吸着器24a,24b…を、少なくとも2基以上備える固定式吸着塔26、上流端が上記の区画空間12に接続され、下流端が上記の各吸着器24a,24b…の第1室20に接続されて上記の区画空間12より供給されるEO含有エアCAを、上記の各吸着器24a,24b…の第1室20の何れかに切り換え可能に供給する区画空間エア供給流路28、上流端が上記の各吸着器24a,24b…の第2室22に接続され、下流端が上記の区画空間12に接続されて上記の何れかの吸着器24a,24b…の吸着構造体18を通過して酸化エチレンが吸着・除去された再生エアRAを上記の区画空間12へと返送する再生エア返送流路50、上流端がその再生エア返送流路50に設けられた送気ファン52の吐出側にて当該再生エア返送流路50に接続され、下流端が上記の吸着器24a,24b…の第2室22に接続されて上記の再生エアRAの一部をパージエアPAとして当該各吸着器24a,24b…の第2室22の何れかに切り換え可能に送給するパージエア送給流路54、及び上流端が上記の各吸着器24a,24b…の第1室20に接続され、下流端が上記の除去装置16に接続された濃縮EO排出流路40とを備える。上記の吸着構造体18は、親水性ゼオライトからなり、上記のEO含有エアCA中の水分と酸化エチレンガスとを物理的に吸着する粒状又は塊状の吸着材42と、その吸着材42を収納すると共に、上記の吸着器24a,24b…の内部空間を互いに気体の通流が可能な2つの室20,22に区画する通気性のケーシング44と、そのケーシング44内に収納された上記の吸着材42の中に埋設されることによって当該吸着材42を直に加熱する加熱手段46とで構成される。
【0013】
この第3の発明は、例えば、次の作用を奏する。
濃縮装置14において、吸着材42の他に別途の水分除去手段を設けていないので、装置構成をシンプルにすることができると共に、大風量処理に適したものとなる。
また、固定式吸着塔26が少なくとも2基以上の吸着器24a,24b…を備えているので、吸着材42によるEO含有エアCAからのEOの吸着および吸着材42の再生(EOC脱着)・冷却と言った2つの異なる工程を、エアの流路の切換えや加熱手段46のオン・オフと言った操作だけで同時に進行させることができる。このため、酸化エチレンガス除去システムを長期間連続運転させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定の区間空間内に放出された極低濃度の酸化エチレンガスを効率的に除去して環境中から除去することが可能な酸化エチレンガスの除去方法とその装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)の酸化エチレンガス除去システムの一例を示す概略フロー図であり、上段の吸着器24aでEOの吸着を行い、下段の吸着器24bで吸着材42の再生・冷却を行っている状態を示したものである。
図2】本発明の他の実施形態(第2実施形態)の酸化エチレンガス除去システムの一例を示す概略フロー図であり、上段の吸着器24aでEOの吸着を行い、下段の吸着器24bで吸着材42の再生・冷却を行っている状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の酸化エチレンガスの除去方法とそれを用いた酸化エチレンガス除去システムの好適な実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)の酸化エチレンガス除去システム10の一例を示す概略フロー図である。この酸化エチレンガス除去システム10は、所定の区画空間12中に存在するEOを濃縮してまとめた後に分解して除去処理する装置であり、大略、濃縮装置14及び除去装置16で構成される。
なお、所定の区画空間12とは、上述したようにEOが滞留する閉鎖された空間を意味し、本実施形態では、滅菌済み医療用具に残留するEOを排出させために係る用具を一時的にストックするビニールブースや温蔵庫の内部空間を例に説明する。
【0017】
濃縮装置14は、区画空間12内から供給されるEO含有エアCAの中からEOを取り込んで濃縮するための装置であり、固定式吸着塔26,区画空間エア供給流路28,再生エア送給流路32,パージエア送給流路36及び濃縮EO排出流路40で大略構成されている。
【0018】
固定式吸着塔26は、区画空間エア供給流路28を介して区画空間12より供給されるEO含有エアCA中のEOを吸着する装置であり、吸着構造体18を介してその内部空間が第1室20及び第2室22に区画された(図示実施形態では)2基の吸着器24a,24bを備える。
【0019】
吸着構造体18は、無機の多孔質材料を主体とし、空気中のEOを物理的に吸着する粒状又は塊状の吸着材42と、その吸着材42を収納すると共に、吸着器24a,24bの内部空間を互いに気体の通流が可能な2つの室20,22に区画する通気性のケーシング44と、そのケーシング44内に収納された上記の吸着材42の中に埋設されることによって当該吸着材42を直に加熱する加熱手段46とで構成される。
【0020】
上記の吸着材42を形成する無機の多孔質材料として、ゼオライト,シリカゲル,活性アルミナなどを挙げることができるが、例えば酸化エチレンガスの吸着特性や、取扱性などを考慮すれば、ゼオライトが特に好適である。
さらに、吸着材42としてゼオライトを使用する場合には、装置をコンパクトにするため、親水性ゼオライトまたは疎水性ゼオライトを混合あるいは、多段に配置してもよく、天然から産出される天然ゼオライトまたは人工的に合成される人工ゼオライトあるいはそれらの混合物でもよい。
親水性ゼオライトとは、Si/Al比が小さく親水性が高いA型(Si/Al=1.0)、X型(Si/Al=1.0~1.5)あるいは水と炭化水素のような極性の小さい化合物との吸着選択性で水の方が多く吸着するものでもよいが、結晶性アルミのケイ酸塩からなる細孔径6Å未満の合成ゼオライトで、少なくとも水を吸着し、より好ましくは水と酸化エチレンの両方を吸着することができるものが好ましく、燃焼効率を上げるために濃縮するので、脱着するときの酸化エチレンを含む気体の酸化エチレン濃度が吸着するときの酸化エチレンを含む気体の酸化エチレン濃度より大きくなるよう、吸着した酸化エチレンの少なくとも50%以上を加熱などにより酸化エチレンとして脱着するものが特に好ましい。
疎水性ゼオライトとはSi/Al比が大きいもの、あるいは脱Al処理やゼオライト表面のシラノール基をアルキルシラン、アルコキシシランあるいはアルコールなどでアルキル基を修飾して表面極性を低下したもののほか、水と炭化水素のような極性の小さい化合物との吸着選択性で炭化水素をより多く吸着するものでもよいが、水と酸化エチレンの両方を吸着することができるものが好ましい。
あるいは、酸化エチレンと水の濃度が同じ気体と接触した場合において、酸化エチレンを水より多く吸着する吸着材42、酸化エチレンを水より少なく吸着する吸着材42、酸化エチレンと水をほぼ同じ量を吸着する吸着材42のいずれか、または2種類以上を混合あるいは多段に配置して吸着してもよく、水を多く吸着した後に酸化エチレンを吸着するなど実質多段になっていれば分離装置内を枠などで仕切らなくてもよい。
特に物理的に吸着する吸着材42で酸化エチレンを吸着除去する場合、物理吸着による酸化エチレンを吸着する多孔質吸着材42は、親水性か疎水性、あるいは細孔径に関わらず酸化エチレンより濃度あるいは気体に含まれる気体量が多い水の吸着量の方が酸化エチレンの吸着量より多く、短時間で吸着材42の吸着飽和量を越えて破過してしまう。
特に分子径が酸化エチレン(4.2Å)より小さい水(2.8Å)や二酸化炭素(2.8Å)は酸化エチレンより多く吸着されやすい。
あるいは、細孔径が水より大きく酸化エチレンより小さいゼオライトであっても、極性の大きい酸化エチレンが表面に吸着可能であるため除去できるものでもよい。
なお、吸着材42は、無機の多孔質材料を主体とする、すなわち無機の多孔質材料を吸着材42全体に対して50質量%より多く含むものであればよく、全てを無機の多孔質材料で構成する以外にも、例えば必要に応じて50質量%未満の活性炭や有機系吸着材など他の吸着材料を含むものであってもよい。
【0021】
通気性のケーシング44は、例えば、金属金網や耐熱性の樹脂網、或いはパンチングメタルやエキスパンドメタルなどのように、通気性を阻害せず、耐熱性と機械的強度に優れた材料で形成される。
【0022】
加熱手段46は、ケーシング44内に収納された吸着材42の中に埋設され、その吸着材42を直に加熱できるもの、より具体的には、吸着材42それ自体及び/又は吸着材42に吸着されたEOを直に加熱して吸着材42からEOを脱着させることができるものであれば如何なる態様であってもよく、電熱ヒーターやマイクロ波加熱装置や高周波誘導加熱装置などが好適に用いられる。図1で示す実施形態の場合、この加熱手段46として、(図示しないが)アルミナ管や石英管などからなるヒーターパイプの中にニクロム線などの発熱体が装填されたシーズヒーターを、水平方向に蛇行させて略平面状に埋設したものを用いている。このような加熱手段46を用いれば、吸着構造体18の全体を迅速に且つコントロール容易に昇温させることができる。
因みに、加熱手段46としてマイクロ波加熱装置を用いる場合であって、ケーシング44を金属で形成した場合には、その表面をガラスや耐熱性の樹脂などでコーティングしておく必要がある。
【0023】
なお、図1(及び図2)の実施形態では、固定式吸着塔26として、2基の吸着器24a,24bを備える場合を示しているが、この固定式吸着塔26に設ける吸着器24a,24b…の数は2基以上であればよく、目的とする再生エアRAの品質や必要量などに応じて適宜選択できる。例えば、固定式吸着塔26に設ける吸着器24a,24bの数を図示実施形態のように2基とすることによって、後述するようなEO含有エアCA中のEOの吸着および吸着材42の再生・冷却と言った2つの異なる工程を同時に進行させることができるのに加え、吸着装置のサイズをミニマム化できスペース効率に優れたものとなる。
一方、固定式吸着塔26に設ける吸着器24a,24b…の数を3基以上とすることによって、EO含有エアCAの処理風量を増やすことができるのに加え、吸着運転する吸着器24a,24b…を切り換える際に圧力変動やハンチング等が発生するのを抑制することができるようになる。また、吸着材42の再生と冷却とをそれぞれ別個の工程に分離して行うこともできるようになる。
【0024】
ここで、固定式吸着塔26に設ける吸着器24a,24b…は、図1に示すように、その内部空間が吸着構造体18にて高さ方向に二分され、上側が第1室20、下側が第2室222となるように形成するのが好ましい。こうすることにより、パージエアPAのように吸着器24a,24b…内で高温となる気体は、当該吸着器24a,24b…の下側から入り上側へと抜けるようになる。このため、気体の通流がスムーズで効率が良く、ランニングコストの低減にも繋がる。
【0025】
区画空間エア供給流路28は、区画空間12からEO含有エアCAを固定式吸着塔26へと供給する流路であり、上流端が区画空間12に接続された管路28Aを有する。この管路28Aは、例えばステンレスパイプのような金属材料等で形成されており、途中で複数に枝分かれして分岐管28A1,28A2…(図示実施形態では分枝管28A1および28A2の2つ)となり、その下流端が各吸着器24a,24bの第1室20に接続される。また、管路28Aの途中(分岐前)には、後述する水分除去手段48が設けられると共に、各分岐管28A1,28A2…のそれぞれには、バルブ58a,58b…が取り付けられる。かかるバルブ58a,58b…を開閉操作することによって、EO含有エアCAの供給先が切り換えられる。なお、バルブ58a,58b…は、例えばバタフライ弁やボール弁などの通常のバルブのみならずダンパなどを用いるようにしてもよい(以下、全てのバルブ類について同じ。)。
【0026】
水分除去手段48は、区画空間12から取り出されたEO含有エアCAから水分を除去するための装置で、図1の実施形態では、チラー48aとミストセパレーター48bとで構成されている。なお、この水分除去手段48は、上記の構成に限定されるものではなく、EO含有エアCA中の水分を除去できるものであれば如何なるものであってもよく、例えば、シリカゲルカラムのようなものであってもよい。
【0027】
再生エア送給流路32は、吸着器24a,24bの何れかの吸着構造体18を通過してEOが吸着・除去された再生エアRAを排気口30へと送給する流路であり、下流端がその排気口30に接続された管路32Aを有する。その管路32Aは、例えばステンレスパイプのような金属材料等で形成されており、途中で複数に枝分かれして分岐管32A1,32A2…(図示実施形態では分枝管32A1および32A2の2つ)となり、その上流端が各吸着器24a,24bの第2室22に接続される。また、管路32Aの途中には再生エアRAを吸引して排気口30へと送給する送気ファン34が取り付けられると共に、各分岐管32A1,32A2…のそれぞれには、バルブ60a,60b…が取り付けられる。
【0028】
パージエア送給流路36は、その上流端が再生エア送給流路32に設けられた送気ファン34の吐出側にて当該再生エア送給流路32に接続された管路36Aを有する。この管路36Aは、例えばステンレスパイプのような金属材料等で形成されており、その上流端側に管路36Aへ流入させる再生エアRAの風量を調整するバタフライ弁62が設置されると共に、その下流側が分岐して分岐管36A1,36A2…(図示実施形態では分枝管36A1および36A2の2つ)となり、各吸着器24a,24b…の第2室22に接続される。また、各分岐管36A1,36A2…のそれぞれには、バルブ64a,64b…が取り付けられる。このため、このパージエア送給流路36は、再生エアRAの一部をパージエアPAとして取り込んで上記の各吸着器24a,24b…の第2室22の何れかに切り換え可能に送給することができる。
【0029】
濃縮EO排出流路40は、吸着器24a,24b…に供給されたパージエアPAを介して、吸着構造体18の吸着材42で濃縮させた後、その吸着材42から脱着させた相対的に高濃度のEOを除去装置16へと送給するためのものであり、濃縮させたEOを伴ったパージエアPAが通流する管路40Aを有する。この管路34Aは、例えばステンレスパイプのような金属材料等で形成されており、その上流側が分岐して分岐管40A1,40A2…(図示実施形態では分枝管40A1および40A2の2つ)となり、各吸着器24a,24b…の第1室20に接続される。また、各分岐管40A1,40A2…のそれぞれには、バルブ66a,66b…が取り付けられる。そして、この管路40Aの下流側には、濃縮されたEOを伴ったパージエアPAを吸引して除去装置16へと送給する送気ファン68が取り付けられると共に、当該管路40Aの下流端が除去装置16に接続される。
【0030】
除去装置16は、濃縮装置14で濃縮されたEOを分解させて除去するための装置である。この除去装置16で実行されるEOの分解方法は、直接燃焼、触媒燃焼、光触媒,プラズマ,酸・塩基加水分解、スクラバーなどと言った公知の方法を採用することができる。とりわけ、廃棄物を削減する等の観点から、この除去装置16には触媒燃焼式のアベーターを用いるのが好適である。
【0031】
以上のように構成された酸化エチレンガス除去システム10の各バルブ類,加熱手段46,送気ファン34および送気ファン68などは、図示しない制御手段に接続されており、その制御手段によって所定の動作をするように制御されている。
そして、以上のように構成された酸化エチレンガス除去システム10を用いて、区画空間12中のEOを除去する際には、各吸着器24a,24b…のうち、少なくとも1基でEOを吸着して再生エアRAの生成を行い、少なくとも1基で内部の吸着材42の再生(EOの脱着)および冷却を行なう。例えば、図1で示す実施形態の酸化エチレンガス除去システム10では、上段の吸着器24aでEO含有エアCA中のEOを除去して再生エアRAの生成を行なうと共に、下段の吸着器24bで吸着材42の再生(前回の稼働時に吸着させたEOの脱着)・冷却を行なっている。以下、具体的にその方法について説明する。
【0032】
図1に示すように、区画空間エア供給流路28のバルブ58aを開操作すると共にバルブ58bを閉操作する。また、再生エア送給流路32のバルブ60aを開操作すると共にバルブ60bを閉操作する。さらに、パージエア送給流路36のバルブ64bおよび濃縮EO排出流路40のバルブ66bを開操作すると共にパージエア送給流路36のバルブ64aおよび濃縮EO排出流路40のバルブ66aを閉操作し、吸着器24bの加熱手段46を作動させる。そして、吸着器24bの加熱手段46の温度が吸着材42からEOが脱着する所定の温度(例えば吸着材42がゼオライトの場合には180℃以上の所定温度)に達したところで、送気ファン34および送気ファン68の運転を開始させる。すると、区画空間12内からEO含有エアCAが吸引されて濃縮装置14へと供給される、(酸化エチレンガスの除去方法における)第1のステップが実行される。
【0033】
続いて、EO含有エアCAが吸着器24aの第1室20へと向かう途中で水分除去手段48を通過するが、その際にEO含有エアCA中の水分が取り除かれる。然る後、吸着器24aの第1室20に達した水分除去後のEO含有エアCAは、吸着構造体18を通過する際にEOが吸着材42に吸着され、第2室22へ到達したときにはEOが除去された再生エアRAへと変換され、(酸化エチレンガスの除去方法における)第2のステップが完了する。
【0034】
続いて、再生エアRAは送気ファン34によって吸引され、再生エア送給流路32を通って排気口30へと送られ、その排気口30を介して大気中へと放出されるが、この再生エアRAの一部は、パージエア送給流路36へと送られてパージエアPAとして利用される。
【0035】
上記のパージエアPAは、分枝管36A2を通って吸着器24bの第2室22へ順次送られる。吸着器24bの第2室22に達したパージエアPAは、吸着構造体18を通過する際に吸着材42に吸着して濃縮されているEOをその吸着材42から脱着させて、脱着したEOと共に吸着器24bの第1室に到達し、(酸化エチレンガスの除去方法における)第3のステップが完了する。
ここで、その吸着材42の再生、すなわち吸着器24bの吸着材42に吸着させたEOの脱着が完了すると、吸着器24bの加熱手段46の作動を停止する。そうすると、吸着器24bを通流する常温のパージエアPAによる吸着材42の冷却が開始される。
【0036】
そして、高い濃度に濃縮されているEOと共に吸着器24bの第1室20に到達したパージエアPAは、送気ファン68によって吸引され、濃縮EO排出流路40を通って除去装置16へと供給され、その除去装置16でEOが分解・除去される。つまり、(酸化エチレンガスの除去方法における)第4のステップが実行される。
【0037】
以上のような状態で酸化エチレンガス除去システム10を所定の時間に亘って稼働させると、吸着器24aの吸着材42のEO吸着量が飽和状態に近づいてくる。そうすると、吸着器24a,24bの切り換えが必要になる。すなわち、図1の状態にある酸化エチレンガス除去システム10について、区画空間エア供給流路28のバルブ58bを開操作すると共にバルブ58aを閉操作する。また、再生エア送給流路32のバルブ60bを開操作すると共にバルブ60aを閉操作する。さらに、パージエア送給流路36のバルブ64aおよび濃縮EO排出流路40のバルブ66aを開操作すると共にパージエア送給流路36のバルブ64bおよび濃縮EO排出流路40のバルブ66bを閉操作し、吸着器24aの加熱手段46を作動させる。そうすることで、上段の吸着器24aで吸着材42の再生が行なわれると共に、下段の吸着器24bでEOの吸着が行なわれる。
以下、このような各バルブの切り換え操作および各加熱手段46のオン・オフが順に実行され、吸着器24a,24bの動作の切り換えが逐次行なわれる。
【0038】
本実施形態の酸化エチレンガス除去システム10によれば、EO含有エアCA中のEOを吸着材42にて吸着させる前に、水分除去手段48によってEO含有エアCA中の水分を除去するようにしているので、吸着材42におけるEOの吸着効率を著しく向上させることができる。具体的には、区画空間12がEO滅菌済み医療用具を一時的にストックするビニールブースや温蔵庫の場合、EO含有エアCAのEO濃度は概ね5~1000ppmの範囲となるが、再生エアRAのEO濃度は1ppm未満となる。
また、濃縮装置14を区画空間12の外に配置していため、酸化エチレンガス除去システム10を構成する各装置を近くに集約させることができ、EO除去処理の効率化をはかることができる。
【0039】
なお、上述の実施形態では、濃縮装置14に固定式吸着塔26が1基のみ設けられた場合を示しているが、この固定式吸着塔26を2基以上設け、並列に接続するようにしてもよい。こうすることにより、単位時間当たりのEO含有エアCAの処理風量を増やすことができる。
ここで、固定式吸着塔26の数を増やすことによって配管系およびそれに付帯する各バルブも増えることになるが、その場合、(図示はしないが)各バルブについて同じ機能を有するものをそれぞれダクトにまとめて収容し、これらのダクトに各管路の分枝管の機能を持たせるようにするのが好ましい。
【0040】
また、上述の実施形態では、濃縮装置14を区画空間12の外に配置しているが、この濃縮装置14を区画空間12内に配置するようにしてもよい。この場合、長尺で複雑な配管系をなくしてコンパクトにすることができ、その結果、エアの送気動力を削減することができる。
【0041】
また、上述の実施形態では、吸着構造体18の加熱手段46としてシーズヒーター(電熱ヒーター)を用いる場合を示しているが、この加熱手段46は、ケーシング44内に収納された吸着材42の中に埋設されることによって当該吸着材42を直に加熱するものであれば如何なる態様であってもよい。このため、例えば、除去装置16として使用するアベーターの排気をケーシング44内に導入し、その排気の熱(排熱)を加熱手段46の熱源として使用するようにしてもよい。この場合、吸着材42の加熱に用いる電力を省略或いは削減することができる。
【0042】
次に、図2に示す第2実施形態の酸化エチレンガス除去システム10について説明する。
上述した第1実施形態の酸化エチレンガス除去システム10と異なる点は、吸着材42を親水性ゼオライトからなるものに限定すると共に、再生エア送給流路32に代えて再生エア返送流路50を設け、再生エアRAを区画空間12へと戻して循環させる点である。なお、これら以外の部分は前記第1実施形態と同じであるので、前記第1実施形態と同じ図番(符号)を付すと共に、前記第1実施形態の説明を援用して本実施例の説明に代える。
【0043】
吸着材42として使用する親水性ゼオライトは、結晶性アルミのケイ酸塩からなる細孔径6Å未満の合成ゼオライトで、水分と酸化エチレンの両方を吸着することができるものである。この親水性ゼオライトで形成される吸着材42の形状については粒状又は塊状であれば特に限定されるものではないが、EOの吸着効率などを考慮すると、ペレット径2~3mmで且つペレット長4~6mm程度のペレット形状とするのが好ましい。
【0044】
再生エア返送流路50は、吸着器24a,24bの何れかの吸着構造体18を通過してEOが吸着・除去された再生エアRAを区画空間12へと返送して循環させる流路であり、下流端がその区画空間12に接続された管路50Aを有する。その管路50Aは、例えばステンレスパイプのような金属材料等で形成されており、途中で複数に枝分かれして分岐管50A1,50A2…(図示実施形態では分枝管50A1および50A2の2つ)となり、その上流端が各吸着器24a,24bの第2室22に接続される。また、管路50Aの途中には再生エアRAを吸引して区画空間12へと送給する送気ファン52が取り付けられると共に、各分岐管50A1,50A2…のそれぞれには、バルブ70a,70b…が取り付けられる。
【0045】
パージエア送給流路54は、その上流端が再生エア返送流路50に設けられた送気ファン52の吐出側にて当該再生エア返送流路50に接続された管路54Aを有する。この管路54Aは、例えばステンレスパイプのような金属材料等で形成されており、その上流端側に管路54Aへ流入させる再生エアRAの風量を調整するバタフライ弁72が設置されると共に、その下流側が分岐して分岐管54A1,54A2…(図示実施形態では分枝管54A1および54A2の2つ)となり、各吸着器24a,24b…の第2室22に接続される。また、各分岐管54A1,54A2…のそれぞれには、バルブ74a,74b…が取り付けられる。このため、このパージエア送給流路54は、再生エアRAの一部をパージエアPAとして取り込んで上記の各吸着器24a,24b…の第2室22の何れかに切り換え可能に送給することができる。
【0046】
次に、以上のように構成された第2実施形態の酸化エチレンガス除去システム10を用いて、区画空間12中のEOを除去する際には、各吸着器24a,24b…のうち、少なくとも1基でEOを吸着して再生エアRAの生成を行い、少なくとも1基で内部の吸着材42の再生(EOの脱着)および冷却を行なう。例えば、図2で示す実施形態では、上段の吸着器24aでEO含有エアCA中のEOを除去して再生エアRAの生成を行なうと共に、下段の吸着器24bで吸着材42の再生(前回の稼働時に吸着させたEOの脱着)・冷却を行なっている。以下、具体的にその方法について説明する。
【0047】
図2に示すように、区画空間エア供給流路28のバルブ58aを開操作すると共にバルブ58bを閉操作する。また、再生エア返送流路50のバルブ70aを開操作すると共にバルブ70bを閉操作する。さらに、パージエア送給流路54のバルブ74bおよび濃縮EO排出流路40のバルブ66bを開操作すると共にパージエア送給流路54のバルブ74aおよび濃縮EO排出流路40のバルブ66aを閉操作し、吸着器24bの加熱手段46を作動させる。そして、吸着器24bの加熱手段46の温度が吸着材42からEOが脱着する所定の温度(吸着材42が親水性ゼオライトであるので180℃以上の所定温度)に達したところで、送気ファン52および送気ファン68の運転を開始させる。すると、区画空間12内からEO含有エアCAが吸引されて濃縮装置14へと供給される。
【0048】
続いて、濃縮装置14における吸着器24aの第1室20に達したEO含有エアCAが吸着構造体18を通過する際、吸着材42では、EO含有エアCA中の水とEOが吸着されるが、EOよりも圧倒的に多く存在する水分(2,000-20,000ppm)が選択的に(EOよりも先に)吸着される。このため、第2室22へ到達したEO含有エアCAの多くは、再生エアRAには清浄化されておらず、主として水分が低減されたEO含有エアCAとなっている。この水分が低減されたEO含有エアCAは、送気ファン52によって吸引され、再生エア返送流路50を通って区画空間12へと返送される。そして、このような循環が繰り返され、EO含有エアCAの水分が或るレベル以下にまで低減されると、吸着器24aの吸着材42にEO吸着量が増えてEO含有エアCAが再生エアRAへと清浄化されるようになり、区画空間12内のEO濃度が漸減して行くようになる。尤も、吸着構造体18が必要十分な量の吸着材42を有している場合には、1回吸着材を通過させることでEO含有エアCAから水分とEOを吸着・除去して再生エアRAに清浄化させることもできる。
【0049】
続いて、再生エアRAは上述の通り区画空間12へと返送されて循環することになるが、この再生エアRAの一部は、パージエア送給流路54へと送られてパージエアPAとして利用される。
【0050】
上記のパージエアPAは、分枝管54A2を通って吸着器24bの第2室22へ順次送られる。吸着器24bの第2室22に達したパージエアPAは、吸着構造体18を通過する際に吸着材42に吸着して濃縮されているEOをその吸着材42から脱着させて、脱着したEOと共に吸着器24bの第1室に到達了する。
ここで、その吸着材42の再生、すなわち吸着器24bの吸着材42に吸着させたEOの脱着が完了すると、脱臭器24bの加熱手段46の作動を停止する。そうすると、吸着器24bを通流する常温のパージエアPAによる吸着材42の冷却が開始される。
【0051】
そして、高い濃度に濃縮されているEOと共に吸着器24bの第1室20に到達したパージエアPAは、送気ファン68によって吸引され、濃縮EO排出流路40を通って除去装置16へと供給され、その除去装置16でEOが分解・除去される。
【0052】
本実施形態の酸化エチレンガス除去システム10によれば、濃縮装置14に、吸着材42の他に別途の水分除去手段を設けていないので、装置構成をシンプル且つコンパクトにすることができると共に、大風量処理に適したものとなる。
【0053】
なお、上述の実施形態では、濃縮装置14に固定式吸着塔26が1基のみ設けられた場合を示しているが、前述の第1実施形態と同様に、この固定式吸着塔26を2基以上設け、並列に接続するようにしてもよい。こうすることにより、EO含有エアCAの処理風量を増やすことができる。
【0054】
また、濃縮装置14を区画空間12の外に配置しているが、前述の第1実施形態と同様に、この濃縮装置14を区画空間12内に配置するようにしてもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10:酸化エチレンガス除去システム,12:区画空間,14:濃縮装置,16:除去装置,18:吸着構造体,20:第1室,22:第2室,24a・24b:吸着器,26:固定式吸着塔,28:区画空間エア供給流路,30:排気口,32:再生エア送給流路,34:送気ファン,36:パージエア送給流路,40:濃縮EO排出流路,42:吸着材,44:ケーシング,46:加熱手段,48:水分除去手段,50:再生エア返送流路,52:送気ファン,54:パージエア送給流路,CA:EO含有エア,RA:再生エア,PA:パージエア.
図1
図2