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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】理化学実験用撹拌機
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/33 20220101AFI20240115BHJP
   B01F 27/80 20220101ALI20240115BHJP
   B01F 23/43 20220101ALI20240115BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20240115BHJP
   B01F 101/23 20220101ALN20240115BHJP
【FI】
B01F35/33
B01F27/80
B01F23/43
G01N1/38
B01F101:23
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019109483
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020001034
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2018116946
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245543
【氏名又は名称】東京理化器械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】有賀 眞一
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-290222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00-27/96
B01F 35/00-35/95
F16H 19/00-37/16
F16H 49/00
F16H 61/26-61/36
F16H 63/00-63/38
G01N 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液体中に挿入される撹拌羽根を回転させることによって液体を撹拌する理化学実験用撹拌機において、電源部の切り替えによって回転方向を正転方向及び逆転方向に切替可能なモータと、該モータによって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に対して平行に設けられ、前記撹拌羽根を有する撹拌部材に連結される従動軸とを備え、前記駆動軸には、前記モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第1駆動歯車と、前記モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第2駆動歯車とを備え、前記従動軸には、モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1従動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第1従動歯車と、モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2従動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第2従動歯車とを備えるとともに、前記第1駆動歯車から前記第1従動歯車に伝達される減速比と、前記第2駆動歯車から前記第2従動歯車に伝達される減速比とを異なる減速比に設定し、前記モータが正転方向に回転したときには、前記第1駆動歯車から前記第1従動歯車を介して前記従動軸に回転が伝達され、前記モータが逆転方向に回転したときには、前記第2駆動歯車から前記第2従動歯車を介して前記従動軸に回転が伝達されることを特徴とする理化学実験用撹拌機。
【請求項2】
前記駆動軸及び前記従動軸に平行な中継軸を設けるとともに、該中継軸に、前記第2駆動歯車及び前記第2従動歯車にそれぞれ歯合する中継歯車を設け、前記第2駆動歯車の回転が、前記中継歯車を介して前記第2従動歯車に伝達されることを特徴とする請求項1記載の理化学実験用撹拌機。
【請求項3】
前記中継軸と前記中継歯車との間に、前記モータが正転方向に回転したときの中継歯車の回転を規制するワンウエイクラッチを設けたことを特徴とする請求項2記載の理化学実験用撹拌機。
【請求項4】
容器内の液体中に挿入される撹拌羽根を回転させることによって液体を撹拌する理化学実験用撹拌機において、電源部の切り替えによって回転方向を正転方向及び逆転方向に切替可能なモータと、該モータによって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に対して平行に設けられ、前記撹拌羽根を有する撹拌部材に連結される従動軸とを備え、前記駆動軸には、前記モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた駆動プーリと、前記モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた駆動歯車とを備え、前記従動軸には、モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1従動側ワンウエイクラッチを介して設けられて前記駆動プーリに駆動ベルトで連結された従動プーリと、モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2従動側ワンウエイクラッチを介して設けられた従動歯車とを備えるとともに、前記駆動プーリから駆動ベルトを介して前記従動プーリに伝達される減速比と、前記駆動歯車から前記従動歯車に伝達される減速比とを異なる減速比に設定し、前記モータが正転方向に回転したときには、前記駆動プーリから駆動ベルト、従動プーリを介して前記従動軸に回転が伝達され、前記モータが逆転方向に回転したときには、前記駆動歯車から前記従動歯車を介して前記従動軸に回転が伝達されることを特徴とする理化学実験用撹拌機。
【請求項5】
前記駆動軸及び前記従動軸にそれぞれ平行な第1中継軸及び第2中継軸を設けるとともに、前記第1中継軸に前記駆動歯車に歯合する第1中継歯車を、前記第2中継軸に前記従動歯車に歯合する第2中継歯車をそれぞれ設け、第1中継歯車と第2中継歯車とを歯合させることにより、前記駆動歯車の回転が、第1中継歯車及び第2中継歯車を介して前記従動歯車に伝達されることを特徴とする請求項4記載の理化学実験用撹拌機。
【請求項6】
前記第1中継軸と前記第1中継歯車との間又は前記第2中継軸と前記第2中継歯車との間に、前記モータが正転方向に回転したときの第1中継歯車又は第2中継歯車の回転を規制するワンウエイクラッチを設けたことを特徴とする請求項5記載の理化学実験用撹拌機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌機に関し、詳しくは、低粘度から高粘度までの各種液体を撹拌する際に使用する撹拌機に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業、医薬工業、新素材、食品工業、化粧品などの分野における研究や生産を行う際には、低粘度から高粘度までの各種液体を混合したり、反応させたりするために、撹拌することが行われている。液体を撹拌するための撹拌機として、電気的にモータの回転数を制御して撹拌羽根の回転数を変化させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭54-123776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電気的な制御では、制御系が複雑になるなどの問題があり、製品価格も高価なものとなっていた。また、静穏な作動音は、理化学実験環境において常に求められている要求事項である。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構成の機械的組み合わせによって撹拌羽根の回転数を変化させることができる撹拌機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の理化学実験用撹拌機は、第1の構成として、容器内の液体中に挿入される撹拌羽根を回転させることによって液体を撹拌する撹拌機において、電源部の切り替えによって回転方向を正転方向及び逆転方向に切替可能なモータと、該モータによって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に対して平行に設けられ、前記撹拌羽根を有する撹拌部材に連結される従動軸とを備え、前記駆動軸には、前記モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第1駆動歯車と、前記モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第2駆動歯車とを備え、前記従動軸には、モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1従動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第1従動歯車と、モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2従動側ワンウエイクラッチを介して設けられた第2従動歯車とを備えるとともに、前記第1駆動歯車から前記第1従動歯車に伝達される減速比と、前記第2駆動歯車から前記第2従動歯車に伝達される減速比とを異なる減速比に設定し、前記モータが正転方向に回転したときには、前記第1駆動歯車から前記第1従動歯車を介して前記従動軸に回転が伝達され、前記モータが逆転方向に回転したときには、前記第2駆動歯車から前記第2従動歯車を介して前記従動軸に回転が伝達されることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の理化学実験用撹撹拌機の第2の構成は、容器内の液体中に挿入される撹拌羽根を回転させることによって液体を撹拌する撹拌機において、電源部の切り替えによって回転方向を正転方向及び逆転方向に切替可能なモータと、該モータによって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に対して平行に設けられ、前記撹拌羽根を有する撹拌部材に連結される従動軸とを備え、前記駆動軸には、前記モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた駆動プーリと、前記モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2駆動側ワンウエイクラッチを介して設けられた駆動歯車とを備え、前記従動軸には、モータが正転方向に回転したときに回転を伝達する第1従動側ワンウエイクラッチを介して設けられて前記駆動プーリに駆動ベルトで連結された従動プーリと、モータが逆転方向に回転したときに回転を伝達する第2従動側ワンウエイクラッチを介して設けられた従動歯車とを備えるとともに、前記駆動プーリから駆動ベルトを介して前記従動プーリに伝達される減速比と、前記駆動歯車から前記従動歯車に伝達される減速比とを異なる減速比に設定し、前記モータが正転方向に回転したときには、前記駆動プーリから駆動ベルト、従動プーリを介して前記従動軸に回転が伝達され、前記モータが逆転方向に回転したときには、前記駆動歯車から前記従動歯車を介して前記従動軸に回転が伝達されることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記駆動軸及び前記従動軸に平行な中継軸を設けるとともに、該中継軸に、前記駆動歯車及び前記従動歯車にそれぞれ歯合する中継歯車を設け、前記駆動歯車の回転が、中継歯車を介して前記従動歯車に伝達されること、前記駆動軸及び前記従動軸にそれぞれ平行な第1中継軸及び第2中継軸を設けるとともに、前記第1中継軸に前記駆動歯車に歯合する第1中継歯車を、前記第2中継軸に前記従動歯車に歯合する第2中継歯車をそれぞれ設け、第1中継歯車と第2中継歯車とを歯合させることにより、前記駆動歯車の回転が、第1中継歯車及び第2中継歯車を介して前記従動歯車に伝達されることを特徴とし、また、各中継歯車の回転を規制するワンウエイクラッチを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撹拌機によれば、モータの回転方向によって、減速比が異なる駆動プーリ又は第1駆動歯車と従動プーリ又は第1従動歯車の組み合わせと、第2駆動歯車及び第2従動歯車の組み合わせとに切り替えることができるので、例えば、両組み合わせの減速比を異なる設定とすることにより、モータを正転方向に回転させたときに撹拌羽根の高速回転、モータを逆転方向に回転させたときに撹拌羽根の低速回転に切り替えることができる。したがって、撹拌する液体の粘度に応じてモータの回転方向を切り替えるだけの簡単な操作で、液体の粘度に応じた最適な撹拌状態に設定することができる。また、回転の伝達を駆動ベルトで行うことでギアノイズの発生がなくなって撹拌機作動時の静穏化も図れる。
【0010】
また、第2駆動歯車の回転を1個又は2個以上の中継歯車を介して第2従動歯車に伝達させることにより、モータの正転、逆転の方向切り替えにかかわらず、従動軸の回転方向を同一にしたり、異なる回転方向にしたりすることができる。さらに、中継歯車に減速機能を付加することにより、高速回転と低速回転との回転比を大きくとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の撹拌機の第1形態例を示す断面正面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4】同じく分解斜視図である。
図5】本発明の撹拌機の第2形態例を示す断面平面図である。
図6】本発明の撹拌機の第3形態例を示す断面平面図である。
図7図7のVII-VII断面図である。
図8図7のVIII-VIII断面図である。
図9】同じく分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図4は、本発明の撹拌機の第1形態例を示している。本形態例に示す撹拌機11は、ケーシング12の天板12aと底板12bとの間に、上部がモータ13の回転軸に連結された駆動軸(入力軸)14と、下部にチャック15を装着した従動軸(出力軸)16とを、所定間隔で互いに平行に設けるとともに、底板12bに、駆動軸14及び従動軸16の両者に平行な中継軸17を設けている。各軸14,16,17は、ベアリング18を介してケーシング12に回転可能にそれぞれ設けられており、ケーシング12の背面には、モータ13を制御する制御部19が設けられるとともに、撹拌機11をスタンドなどに取り付けるための支持棒20が設けられている。また、前記モータ13には、回転方向を正逆に切替可能な直流モータが用いられている。さらに、制御部19は、着脱可能、遠隔操作可能に形成されており、撹拌機本体部をドラフト内に、制御部19をドラフト外に設置することが可能に形成されている。
【0013】
前記駆動軸14の上部には、モータ13が正転方向に回転したときに駆動軸14の回転を伝達する第1駆動側ワンウエイクラッチ21を介して第1駆動歯車22が設けられ、駆動軸14の下部には、モータ13が逆転方向に回転したときに駆動軸14の回転を伝達する第2駆動側ワンウエイクラッチ23を介して第2駆動歯車24が設けられている。
【0014】
また、前記従動軸16の上部には、前記第1駆動歯車22に歯合する第1従動歯車25が設けられている。この第1従動歯車25と従動軸16との間には、モータ13が正転方向に回転したときに、駆動軸14から第1駆動側ワンウエイクラッチ21を介して回転する第1駆動歯車22に伴って回転する第1従動歯車25から従動軸16に回転を伝達する第1従動側ワンウエイクラッチ26が設けられている。
【0015】
一方、従動軸16の下部には、第2従動歯車27が設けられており、中継軸17には、軸線方向に長く形成され、上部が第2駆動歯車24に歯合し、下部が第2従動歯車27に歯合する中継歯車28が設けられている。これにより、第2駆動歯車24の回転は、中継歯車28を介して第2従動歯車27に伝達される。また、従動軸16と第2従動歯車27との間には、モータ13が逆転方向に回転したときに、駆動軸14から第2駆動側ワンウエイクラッチ23を介して回転が伝達された第2駆動歯車24から、中継歯車28を介して回転する第2従動歯車27から従動軸16に回転を伝達する第2従動側ワンウエイクラッチ29が設けられている。
【0016】
このように形成した撹拌機11において、第1駆動歯車22から第1従動歯車25に伝達される減速比と、第2駆動歯車24から中継歯車28を介して第2従動歯車27に伝達される減速比とを異なる減速比に設定している。例えば、第1駆動歯車22と第1従動歯車25との減速比を1:1に、第2駆動歯車24と第2従動歯車27との減速比を1:3に設定すると、第1駆動歯車22と第1従動歯車25との組み合わせが高速側となり、第2駆動歯車24と第2従動歯車27との組み合わせが低速側となる。したがって、高速側を毎分1500~150回転に設定すると、モータ13を逆転方向に切り替えた低速側では毎分500~50回転となる。
【0017】
撹拌機11を支持棒20によって所定高さに固定するとともに、撹拌機11の下方に配置した容器内の液体を撹拌するための撹拌羽根を有する撹拌部材をチャック15に連結する。この状態で、モータ13を、正転方向に回転させると、駆動軸14の回転が第1駆動側ワンウエイクラッチ21を介して第1駆動歯車22に伝達され、第1駆動歯車22は、図4に矢印Aで示す反時計回りの正転方向に回転する。この第1駆動歯車22に歯合する第1従動歯車25は、図4に矢印Bで示す時計回りの逆転方向に回転し、第1従動歯車25の回転は、モータ13が正転方向に回転していることから、第1従動側ワンウエイクラッチ26を介して従動軸16に伝達される。この結果、従動軸16にチャック15を介して連結された撹拌部材が時計回りに回転し、撹拌機11の下方に配置された容器内の液体を高速で撹拌する。これにより、低粘度の液体を高速撹拌することができ、低粘度液体の混合効率、反応効率を高めることができる。
【0018】
このとき、モータ13が正転方向に回転していることから、第2駆動側ワンウエイクラッチ23は作動せず、第2駆動歯車24にモータ13の回転が伝達されないため、第2駆動歯車24、中継歯車28及び第2従動歯車27は、撹拌部材の回転には関与していない。
【0019】
一方、モータ13を、図4に矢印Cで示すように、時計回りの逆転方向に回転させると、駆動軸14の回転が第2駆動側ワンウエイクラッチ23を介して第2駆動歯車24に伝達され、第2駆動歯車24も、時計回りの逆転方向に回転する。この第2駆動歯車24の回転は、中継歯車28を介して第2従動歯車27に伝達される。このとき、第2従動歯車27は、図4に矢印Dで示す時計回りの方向に、前記減速比の設定によって低速で回転することになる。第2従動歯車27の回転は、モータ13が逆転方向に回転していることから、第2従動側ワンウエイクラッチ29を介して従動軸16に伝達される。この結果、従動軸16にチャック15を介して連結された撹拌部材が、低速で時計回りに回転して容器内の液体を撹拌する。これにより、高粘度の液体を低速で撹拌することができ、高粘度液体の混合効率、反応効率を高めることができる。
【0020】
このとき、モータ13が逆転方向に回転していることから、第1駆動側ワンウエイクラッチ21は作動せず、第1駆動歯車22にモータ13の回転が伝達されないため、第1駆動歯車22及び第1従動歯車25は、撹拌部材の回転には関与していない。したがって、モータ13の回転方向を切り替えるだけで液体の撹拌状態を高速と低速とに切り替えることができ、液体の粘度に合わせた撹拌状態を得ることができる。
【0021】
図5は、本発明の撹拌機の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した撹拌機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0022】
本形態例に示す撹拌機51は、駆動軸14及び従動軸16の両者に平行な第1中継軸52と第2中継軸53とを設け、第1中継軸52には、大径、小径の2段構成の第1中継歯車54を、第2中継軸53には、第2中継歯車55をそれぞれ設けている。
【0023】
第1中継歯車54は、大径部54aが第2駆動歯車24に、小径部54bが第2中継歯車55にそれぞれ歯合し、第2中継歯車55は、第1中継歯車54の小径部と第2従動歯車27とに歯合している。したがって、モータ13を逆転方向に回動させて第2駆動歯車24を第2駆動側ワンウエイクラッチ23を介して逆転方向に回転させると、第2駆動歯車24の回転は、第1中継歯車54及び第2中継歯車55を介して第2従動歯車27に伝達される。このとき、第2従動歯車27は、前記第1形態例とは逆に、矢印Eで示す反時計回りに回転することになるため、撹拌部材は、モータ13が正転方向に回転しているときには時計回りに高速回転し、モータ13が逆転方向に回転しているときには反時計回りに低速回転することになる。したがって、撹拌機の基本構成を変えることなく、中継歯車の設置数を変更するだけで、撹拌羽根を回転させる従動軸の回転方向を同方向にしたり、逆方向にしたりすることができる。
【0024】
図6乃至図9は、本発明の撹拌機の第3形態例を示している。本形態例の説明においても、前記第1形態例、第2形態例に示した撹拌機の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
本形態例に示す撹拌機71では、モータ正転時における駆動軸14から従動軸16に回転を伝達する手段として、前記第1,第2形態例で採用した歯車に変えて、駆動プーリ72、従動プーリ73及び駆動ベルト74を使用したベルト駆動を採用している。また、底板12bに立設した2本の第1中継軸52及び第2中継軸53には、中継歯車として、第1減速歯車75及び第2減速歯車76をそれぞれ設けている。この第1減速歯車75及び第2減速歯車76は、大径、小径の2段構成の二段歯車からなるもので、大径歯車が駆動側に、小径歯車が従動側に位置するように配意されている。さらに、支持棒20をケーシング12に取り付けるためのブラケット77には、ケーシング12との間に両面接着型の防振用ゲル材などからなる防振材78を介在させている。
【0026】
本形態例で示す撹拌機71は、モータ13を正転方向(図9の矢印A1方向、時計回り)に回転させると、駆動軸14の回転で第1駆動側ワンウエイクラッチ21を介して駆動プーリ72が回転し、この駆動プーリ72の回転が駆動ベルト74によって従動プーリ73を矢印A2方向の時計回りに回転させ、さらに、第1従動側ワンウエイクラッチ26を介して従動軸16に回転が伝達され、チャック15に装着された撹拌部材を矢印A3方向の時計回りに回転させる。このとき、駆動プーリ72と従動プーリ73とを同径とすれば、撹拌部材は、モータ13の回転数と同じ回転数で回転することになる。すなわち、減速比は1:1となる。
【0027】
一方、モータ13を逆転方向(図9の矢印B方向、反時計回り)に回転させると、駆動軸14の回転が第2駆動側ワンウエイクラッチ23を介して駆動歯車79に伝達され、この駆動歯車79の回転は、第1減速歯車75の大歯車75aから小歯車75b、第1減速歯車75の小歯車75bから第2減速歯車76の大歯車76a、そして第2減速歯車76の小歯車76bから従動歯車80に減速された状態で伝達される。従動歯車80は、2個の減速歯車による回転方向の繰り替えにより、モータ13を正転させたときと同じ矢印A3方向の時計回りに回転することになり、第2従動側ワンウエイクラッチ29を介して従動軸16及び撹拌部材を時計回りに回転させる。
【0028】
このとき、駆動プーリ72から従動プーリ73に伝達される減速比を1:1、駆動歯車79から従動歯車80に伝達される減速比を12:1にそれぞれ設定すると、正転時が高速側、逆転時が低速側となり、高速側を毎分1500~100回転に設定すると、モータ13を逆転方向に切り替えた低速側では毎分125~8.4回転となる。
【0029】
この撹拌機作動時には、高速側の回転伝達を駆動ベルト74で行っているので、歯車で回転を伝達する場合のギアノイズが発生せず、さらに、第1中継軸52と第1減速歯車75との間、第2中継軸53と第2減速歯車76との間の双方、あるいは、いずれか一方に、モータ13が正転方向に回転しているときの各減速歯車の回転を規制するワンウエイクラッチを設けておくことにより、駆動軸14の回転によって駆動歯車79が共回りすることを規制でき、減速歯車部分でのギアノイズの発生を防止できる。
【0030】
このように、高速側の回転伝達をベルト伝達で行うことによってギアノイズの発生がなくなり、さらに、ブラケット77とケーシング12との間に防振材78を介在させることにより、撹拌機作動時の振動による騒音の発生を抑制でき、作動音の静穏化を図ることができる。
【0031】
なお、プーリや歯車の組み合わせによる回転比(減速比)は任意に設定することができ、各減速歯車の減速比は同一でも異なっていてもよく、高速側を増速状態にすることもできる。また、モータの回転方向の切り替えは、容器内の液体の状態を目視しながら人為的にモータのスイッチを切り替えるようにしてもよく、液体の粘度を測定し、粘度があらかじめ設定された閾値に到達したときに、人為的あるいは自動的に行うようにしてもよく、モータの負荷電流値を監視して行うようにしてもよい。さらに、撹拌羽根の形状は、撹拌する液体の性状によって任意に設定することができる。また、中継歯車を減速又は増速可能な形状にすることもでき、中継歯車を省略することも可能である。また、各歯車の歯の形状は任意であり、駆動ベルトも、歯付きベルト、Vベルト、平ベルトなどを任意に選択できる。
【符号の説明】
【0032】
11…撹拌機、12…ケーシング、12a…天板、12b…底板、13…モータ、14…駆動軸、15…チャック、16…従動軸、17…中継軸、18…ベアリング、19…制御部、20…支持棒、21…第1駆動側ワンウエイクラッチ、22…第1駆動歯車、23…第2駆動側ワンウエイクラッチ、24…第2駆動歯車、25…第1従動歯車、26…第1従動側ワンウエイクラッチ、27…第2従動歯車、28…中継歯車、29…第2従動側ワンウエイクラッチ、51…撹拌機、52…第1中継軸、53…第2中継軸、54…第1中継歯車、54a…大径部、54b…小径部、55…第2中継歯車、71…撹拌機、72…駆動プーリ、73…従動プーリ、74…駆動ベルト、75…第1減速歯車、75a…大歯車、75b…小歯車、76…第2減速歯車、76a…大歯車、76b…小歯車、77…ブラケット、78…防振材、79…駆動歯車、80…従動歯車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9