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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】分別装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
B09B5/00 E
B09B5/00 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019163307
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021041315
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500558687
【氏名又は名称】株式会社ファインテック
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】岡田 素行
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-154624(JP,A)
【文献】特開2001-025754(JP,A)
【文献】特開2003-056983(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2018-0075897(KR,A)
【文献】国際公開第2013/027402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物から包材を含む第1の分別物を分別する分別装置であって、
水平方向に延びたハウジングと、
前記ハウジング内で、水平方向に延びたシャフトにより旋回し、前記ハウジングに投入された処理対象物を攪拌する回転羽根と、
前記ハウジングの内側上面に断続的に、らせん状に配置された複数のガイドベーンと、
前記ハウジングの水平方向の一方の端に設けられた、処理対象物の投入口と、
前記ハウジングの水平方向の他方の端に設けられた、前記第1の分別物を排出する排出口と、
前記ハウジングの下方に設けられた、第2の分別物を排出する排出ユニットと、
前記シャフトを介して前記回転羽根を回転駆動する駆動ユニットと、
前記投入口の近傍のハウジング内に、前記シャフトに沿って処理対象物の搬送用の空気を導入するための空気導入ユニットと
前記回転羽根の先端に交換可能に取り付けられた先端部材であって、前記回転羽根に対して割れやすい材料により形成された先端部材と、
前記回転羽根の回転速度をモニターする第1のセンサーと、
前記ハウジングの振動をモニターする第2のセンサーと、
前記第1のセンサーによる回転速度が第1の閾値より低下し、かつ、前記第2のセンサーによる振幅が第2の閾値より増加すると、前記先端部材の破壊としてカウントする監視装置とを有する、分別装置。
【請求項2】
請求項1において、さらに、
前記空気導入ユニットから導入される空気流量および前記駆動ユニットによる前記回転羽根の回転速度を協調制御する制御ユニットを有する、分別装置。
【請求項3】
請求項1または2において、さらに、
前記複数のガイドベーンの間に、前記ハウジングの外側から、前記ハウジングを貫通して内側に突き出るように着脱可能に配置された複数の破袋用の刃を有する、分別装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記破袋用の刃は角刃である、分別装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記先端部材は、前記回転羽根に対して、靭性および延性が低く、硬度が大きな材料により形成されている、分別装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記先端部材は、セラミック製である、分別装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記監視装置は、前記カウントが所定の回数を超えると、前記先端部材の交換を示唆する警告を出力する、分別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物から包材を含む物を他の物から分別する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、包材に収納された廃棄物を包材と廃棄物とに分別し、さらに廃棄物を脱水処理して減容・減量化するシステムが開示されている。このシステムは、ドラムの外周面の下部側が網目状に形成され、ドラムの一端面側に投入口、他端面側には包材を排出する排出口が設けられ、内部には複数の攪拌板が放射状に立設された回転軸が挿通され、天井部には包材を排出口へ向かって案内する複数枚の整流板が突設された遠心分別機と、整流板に包材を破断するための破断部が設けられ、さらに遠心分別機と分別された廃棄物を搬送するスクリューコンベアを含む脱水処理装置とを有し、スクリューコンベアの搬出口に開口部の大きさを調整可能な開口部調整機構が設けられている。
【0003】
このシステムは、家庭などから出る生ゴミや食品工場から排出される食品残渣を、包材、たとえばゴミ袋に詰めたまま投入して、分別するのに適している。このシステムでは、投入されたゴミ袋を切り裂いたり、引き裂いたり、内容物を破砕したりして、破砕された内容物は篩いにかけられた後取り出され、ゴミ袋の破片等の異物は別の排出口から排出される。したがって、生ゴミや容器など多様なものを含む廃棄物を処理対象物として分別処理し、資源化(再資源化)するシステムを提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-25754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複合生ゴミを対象とした分別装置が要望されている。複合生ゴミの一例は、ホテルまたはレストラン厨房から排出される生ゴミであり、調理残渣、賞味期限切れ食材、食べ残し、油粕(グリストラップ)、割り箸、手拭きペーパー、ティッシュペーパー、伝票類などが混入している食品残渣である。複合生ゴミの他の一例は、コンビニエンスストアなどから排出される生ゴミであり、プラスチック容器・紙容器などに包装された賞味期限切れで廃却されるゴミ、レジ袋に入った生ゴミ、家庭から排出されるごみ袋に入った生ゴミなどである。特に、ホテルやレストランから排出される複合生ゴミには、本や食器類(スプーン、ホーク、ナイフなど)が混入していることがある。これらの生ゴミ以外の様々な物(異物、第1の分別物)を含む生ゴミなどの処理対象物を、再生利用可能な食品残渣と、異物とに、安定して、故障による稼働停止を抑制しながら、分別することができる、信頼性の高い分別装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、処理対象物から包材を含む第1の分別物(異物)を分別する分別装置である。分別装置は、水平方向に延びたハウジングと、ハウジング内で、水平方向に延びたシャフトにより旋回し、ハウジングに投入された処理対象物を攪拌する回転羽根と、ハウジングの内側上面に断続的に、らせん状に配置された複数のガイドベーンと、ハウジングの水平方向の一方の端に設けられた、処理対象物の投入口と、ハウジングの水平方向の他方の端に設けられた、第1の分別物を排出する排出口と、ハウジングの下方に設けられた、第2の分別物を排出する排出ユニットと、シャフトを介して回転羽根を回転駆動する駆動ユニットと、投入口の近傍のハウジング内に、シャフトに沿って処理対象物の搬送用の空気を導入するための空気導入ユニットとを有する。
【0007】
この分別装置においては、回転羽根が回転することにより処理対象物が攪拌および粉砕されることと、回転羽根が回転することにより生成される空気の流れ(風)と、回転羽根の回転とともに処理対象物が回転することによる遠心力と、重力などの作用により、軽く、空気の流れの影響を受けやすい包材などの異物と食品残渣などの再生利用可能な廃棄物(第2の分別物、例えば、有機性廃棄物)とが分離される。処理対象物は、回転羽根により生成される風および/または遠心力と、ガイドベーンとにより、投入口から排出口に向かってハウジング内を移動しながら異物と分別物とに分離される。ハウジング内の滞留時間が短いと、再生利用可能なものも異物との分離が進まずに、異物とともに廃棄されてしまう。一方、ハウジング内の滞留時間が長すぎると、処理効率が低下する。
【0008】
滞留時間は、ガイドベーンの角度と、回転羽根の回転数とである程度制御できる。投入される処理対象物のサイズ、内容物、包装形態などは様々であり、回収先などの条件により、刻々と変化する。ハウジングの内側に取り付けられたガイドベーンの角度を分別処理しながら変えることは難しく、回転羽根の回転数を低下しようとすると、処理対象物の攪拌および破砕の効率が低下し、分離効率も低下する。回転羽根の回転数を上げようとすると、回転羽根の強度、駆動ユニットの出力が不足する可能性があり、分別装置の稼働率が低下したり、メンテナンスコストが増加したりする可能性がある。
【0009】
この分別装置は、空気導入ユニットを設けることにより、投入口の近傍のハウジング内に、シャフトに沿って処理対象物の搬送用の空気を導入し、回転羽根、ガイドベーンに加えて、搬送用の空気の量により処理対象物の滞留時間の制御を可能とする。このため、ガイドベーンの角度を固定した状態であっても、回転羽根の回転数と搬送用の空気量との制御により、処理対象物の分別の効率と、分別装置の稼働率とを向上できる条件で、分別装置を稼働させることができる。
【0010】
本願に含まれるその他の発明については、以下の詳細な説明においてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】分別装置の概要を示す斜視図。
図2】分別装置の概要を示す正面図。
図3】分別装置の構造を模式的に示す断面図。
図4】分別装置の回転羽根の周囲の構造を示す断面図。
図5】分別装置の回転羽根とガイドベーンとの関係を示す断面図。
図6図4に示した分別装置の断面VI-VIを示す図。
図7】回転羽根の先端に取り付けられた先端部材を示す図。
図8】回転速度を検出するセンサーの一例。
図9】回転速度を検出する信号の一例。
図10】振動を検出するセンサーの一例。
図11】振動を検出する信号の一例。
図12】回転速度信号と振動信号から分別装置の状態を判断する条件を示す一例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、分別装置1の外観を斜視図により示し、図2に、分別装置1の正面図を用いて、内部で回転する回転羽根10を破線により示し、図3に、分別装置1の内部の構成を模式的に示している。分別装置1は、再利用可能な有機性廃棄物4を含む処理対象物2から、再利用が難しい包材などの異物(第1の分別物)3を除去する異物分離装置であり、処理対象物2を上下方向に攪拌する回転羽根10を内蔵したハウジング(本体ドラム)20と、ハウジング20内へ通じる投入口(ホッパー)21と、ハウジング20内から分別された異物3を排出する排出口(異物排出口)22と、回転羽根10を回転駆動する駆動モーター(駆動ユニット)40と、回転羽根10の下側に配置され、流動物状態(スラリー状、スラッジ状、泥状、以降では主にスラリーとも称する)の異物が除かれた分別物(第2の分別物)4をフィルタリングする多孔部材(フィルター、スクリーン、篩い板)50とを含む。ハウジング20の多孔部材50の下側が分別された有機性廃棄物(廃棄物、第2の分別物)4の貯留タンク(第1のタンク)52となっており、貯留タンク52にいったん蓄えられた廃棄物4は、貯留タンク52の下側に配置されたスクリューコンベア54により、次の工程、例えば、乾燥工程へ送られる。
【0013】
回転羽根10を駆動するユニット(モーター)40は、プーリ41および42と、ベルト43とを介して回転羽根10の軸11に接続されており、モーター40の回転速度(回転数)を制御することにより回転羽根10の回転速度(回転数)を制御できる。回転羽根10は、水平方向に延びたシャフト11の周りに取り付けられ、シャフト11に沿って延びた複数枚、本例では、4枚の回転板12を含む。ハウジング20の内側上面には、ガイドベーン25が、らせん状に断続的に配置されている。回転羽根10は、遠心ファンとしての機能を含み、処理対象物2、特に分離された軽量の異物3は、回転羽根10から得られる遠心力と風力とによりガイドベーン25に沿って排出口22に運ばれ、放出される。
【0014】
すなわち、この分別装置1は、処理対象物2から包材を含む異物(第1の分別物)3を分別する分別装置であって、水平方向に延びたドラム状のハウジング20と、ハウジング20内で、水平方向に延びたシャフト11により旋回し、ハウジング20に投入された処理対象物2を攪拌する回転羽根10と、ハウジング20の内側上面に断続的に、らせん状に配置された複数のガイドベーン25と、ハウジング20の水平方向の一方の端に設けられた、処理対象物2の投入口21と、ハウジング20の水平方向の他方の端に設けられた、異物3を排出する排出口22と、ハウジング20の下方に設けられた、第2の分別物(有機性廃棄物)4を排出する排出ユニット(多孔部材)50と、シャフト11を介して回転羽根10を回転駆動する駆動ユニット40とを有する。
【0015】
さらに、分別装置1は、投入口21の近傍のハウジング20内に、シャフト11に沿って処理対象物の搬送用の空気39を導入するための空気導入ユニット30と、分別装置1の動作を制御する制御装置60とを有する。制御装置60は、回転羽根10を駆動する駆動ユニット40と空気導入ユニット30とを協調制御する協調制御ユニット61と、複数のセンサー63および64などにより分別装置1の状態を監視する監視ユニット62とを含む。
【0016】
廃棄されるゴミによる環境破壊を防止するために、ゴミの廃棄処理に際しては、処分方法または再利用方法に応じてゴミを分別することが一般化している。これら分別されたゴミは、焼却処分または有機肥料として再利用する生ゴミと、埋め立て処分または循環資源として再利用するゴミとに分別することが望ましい。ところが手作業によって分別する場合には、膨大な人件費および作業時間を要することになる。
【0017】
そこで、さほど人手をかけずに短時間で生ゴミとパックゴミとに分離するための分離装置、すなわち、遠心分別破袋機を用いて、包材に収納された廃棄野菜や生ゴミ等の廃棄物の包材を破いて包材と廃棄物とを分離する装置が要望されている。従来の分離装置においても、ガイドベーン25がドラム状のハウジング20の上部内側に、回転羽根10の回転板12の回転軸11に対して角度を付けて取り付けられている。この構成により、回転板12を回転させると、投入口21から排出口22に向けて様々な異物3を排出させるための風を発生させる機能が得られる。しかしながら、回転羽根10の回転数は、処理対象物2の破砕の効果に影響を与え、また、風の風量・速度は様々なサイズおよび形状の異物3の排出効果にも影響を与える。したがって、回転羽根10の回転数と、それに伴う風速をそれぞれ最適にすることが望ましいが、そのためには、取り付け角度の異なるガイドベーンを複数用意する必要がある。また、ガイドベーン25の先端25aは、処理対象物2に含まれる包装用の袋、容器、ごみ袋などを破砕するための刃となっており、その先端25aの刃の角度が変わることにより破砕効率も変動する。
【0018】
分別装置1の分別の対象となる処理対象物2が、上述したような複合生ゴミを含む廃棄物の場合、分別装置1に投入される廃棄物の性状が一定であることは少なく、さらに、廃棄物の発生元が変われば、その性状はさらに変動する。また、多くの場合、発生元の異なる廃棄物が混載され、または連続して分別装置1に投入される。したがって、処理対象物2の性状に合わせて、その都度に、角度の異なるガイドベーンに交換することは、時間と手間を必要として不便であり、また、最適な角度のガイドベーンを選択することも難しい。特に、近年増加している大型の廃棄物に含まれる大型の包装容器、袋のハウジング20の中の滞留状態は、回転羽根10の回転数により大きな影響を受ける。したがって、多様な複合生ゴミを含む処理対象物2を分別する装置1においては、処理対象物2の性状に合わせて、回転羽根10の回転数と、ハウジング20の内部の風速とを、短時間に、それぞれ最適な状態に設定できることが要望されている。
【0019】
この分別装置1においては、投入口21の近傍のハウジング20内に、シャフト11に沿って処理対象物の搬送用の空気39を導入するための空気導入ユニット30を設けている。具体的には、空気導入ユニット30は、投入口21が設けられたハウジング20の一方の端の壁20aに設けられた2本のエアーノズル31と、空気の供給源35となるファンまたはブロワと、供給源35とノズル31とを接続する空気管34とを含む。ノズル31は、回転羽根10の軸11の周りに90度の間隔を開けて配置されており、軸11に90度ピッチで設けられた4枚の回転板12の間に、2本のノズル31から同時に搬送用の空気39が供給されないようにしている。したがって、回転板12の間の空間に供給される搬送用の空気39の量を回転羽根10の回転数とは別に安定して制御しやすい。具体的には、ハウジング20の垂直(鉛直)方向に対して45度ずつのピッチでノズル31が配置されている。
【0020】
処理対象物2の搬送用の空気39を、ハウジング20の外側から強制的にハウジング20の内部に供給する導入ユニット30を設けることにより、回転羽根10の回転数とは別に、ハウジング20の内部で処理対象物2を投入口21から排出口22に向けて搬送する空気(風)39が得られる。このため、回転羽根10の回転数の制御に加えて、搬送用の空気39の量を制御することにより、処理対象物2の滞留時間を制御できる。例えば、回転羽根10の回転数を下げても、搬送用の空気39の量を増加することにより、滞留時間を一定に保つことも可能となる。逆に、回転羽根10の回転数を上げても、搬送用の空気39の量を減らすことにより、分別に必要な滞留時間を確保することができる。
【0021】
分別装置1の制御装置60は、空気導入ユニット30から導入される空気39の流量および駆動ユニット40による回転羽根10の回転速度(回転数)を協調制御する協調制御ユニット61を有していてもよい。搬送用のエアー39の流量を調節することにより、大型の包装容器などを含む処理対象物2および異物(大型廃棄物)3の搬出速度を制御でき、駆動用のモーター40を駆動するインバータで回転数を調節することにより回転羽根10の回転数を制御できる。すなわち、回転羽根10は、破砕および分別に適した回転羽根10の回転速度で稼働させることができ、分別に適した滞留時間となるように搬送用の空気39の量を制御できる。また、過度な回転速度で回転羽根10を回転させなくても、所定の分別効率を得るために十分な搬送速度を搬送用の空気39により得ることができる。したがって、回転羽根10の摩耗や破損を抑制することが可能となり、安定した稼働が期待できる分別装置1を提供できる。また、各々の要素を独立に決めることができ、投入された処理対象の廃棄物2の性状にあわせて、分別装置1を、いつでも最適に運転できる。
【0022】
搬送用の空気39は、投入口21から処理対象物2をハウジング20の内部に、確実に投入する機能も果たす。回転羽根10が回転することにより投入口21では、処理対象物2を投入する方向とは逆方向に風が発生することがある。これ対し、搬送用の空気39を投入口21に対して排出口22に向けて注入することにより、投入口21から風の逆流を抑制するエアーカーテンとしての機能と、投入口21を通過した処理対象物2をハウジング20の内部に引き込む機能が得られ、その点でも、搬出用に空気39を供給することは効果的である。
【0023】
次に、海外においては、麻袋や厚くて頑丈なビニール系の袋に廃棄物が詰められた処理対象物2が分別装置1に投入されることもある。したがって、分別装置1において、処理対象物2に含まれている包袋を確実に破袋できるようにすることは有用である。
【0024】
図3に示すように、ハウジング20の上部内側に設けられたガイドベーン25の内側先端はガイド刃25aとなっており、ハウジング20に搬送される処理対象物2がガイド刃25aに触れると破袋できる構造となっている。さらに、処理対象物2が、ガイド刃25aと、回転板12の先端12aとの間に挟まれた状態になると処理対象物2は破砕されやすい。また、回転羽根10の回転方向の基点側に当たるガイド刃25aの端、すなわち、本例では、時計方向に回転する回転羽根10に対して、ガイド刃25aの反時計方向の端に、内側に突き出たエッジ刃26が設けられている。このため、回転羽根10によりハウジング20の内部で旋回する処理対象物2の包袋がエッジ刃26に接し、さらに破袋されやすい構造としている。
【0025】
図4ないし図6に示すように、この分別装置1は、複数のガイドベーン25の間に、ハウジング20の外側から、ハウジング20を貫通して内側に突き出るように着脱可能に配置された複数の破袋用の刃29を含むカッティングユニット27を有する。破袋用の刃は、典型的には、角刃である。具体的には、カッティングユニット27は、複数の角刃29と、それらが突き出るように取り付けられたベース28とを有し、ベース28をハウジング20に予め設けられた開口に取り付けることにより、角刃29がハウジング20の内部に突き出るように構成されている。したがって、ガイドベーン25の間においても処理対象物2がハウジング20の内部に突き出た角刃29に接触し、さらに、効率よく破袋することができる。エッジ刃26だけでなく、複数の角刃29を設けることにより、麻袋や厚くて頑丈なビニール系の袋も確実に破袋ができる。また、大型の袋詰めされた処理対象物2は、ガイドベーン25の間に滞留しやすいが、滞留している間に角刃29に接して袋の一部でも破けると、その後の破壊プロセスが順調に進むようになる。
【0026】
また、このカッティングユニット27は、角刃29が摩耗したり、破損した場合は、ベース28を取り外すだけで、角刃29を交換したり、ベース28を含めてカッティングユニット27を適当な単位で交換したりすることができる。したがって、角刃29がベース28に取り付けられている一体構造のカッティングユニット27は、角刃が摩耗した場合、簡単に交換が可能である。
【0027】
さらに、分別装置1においては、回転羽根10の先端12aに交換可能に取り付けられた先端部材15を有する。分別装置1においては、回転板12の先端12aに、破壊されても交換が比較的容易な先端部材15を取り付けておくことにより、ガイド刃25aと先端部材15との隙間を減らして破袋効率を向上したり、角刃29に処理対象物2を押圧して破袋を促進できる。
【0028】
図7に示すように、また、この板状の先端部材15は、水に濡れた雑誌や紙の束などが異物3として含まれる処理対象物2の処理についても有用である。このような異物3は、回転羽根10と多孔部材50との間などに噛み込まれてしまい、回転板12が回転をしなくなったり、回転板12が屈曲したり破損してしまう可能性がある。先端部材15を、回転羽根10、すなわち回転板12に対して割れやすい材料により形成することにより、回転板12が屈曲したり破損してしまうことを避けることができる。また、先端部材15が部分的に破損しても、回転羽根10の性能に大きな影響がすぐに現れることはなく、分別装置1の稼働率が低下することを抑制できる。さらに、先端部材15は、回転板12を交換しなくても、更新(交換)が容易な構造なので、メンテナンスに要する時間および費用を軽減できる。
【0029】
板状の先端部材15は、回転羽根10、すなわち回転板12に対して、靭性および延性が低く、硬度が大きな材料により形成されていてもよい。先端部材は、セラミック製であってもよい。先端部材15の硬度が高ければ、異物3として混入している紙の束を崩す力が大きくなり、噛み込むことを抑制できる。また、先端部材15では異物3として混入した紙の束を崩すことができないような大きな力が働いた場合には、靭性と延性とが小さい先端部材15は破損し易く、噛み込まずに先端部材15が破損し、回転羽根10が停止したり、破損したりして分別装置1が異常停止するような事態の発生を抑制できる。
【0030】
一方、回転羽根10が異常停止したり、破損したりするような異常な事象が発生した場合には、それを瞬時に検知して分別装置1の稼働を緊急停止する必要がある。また、破損することを前提として取り付けられている先端部材15が部分的に破損した程度で分別装置1を緊急停止することは望ましくない。一方、先端部材15が所定の範囲を超えて破損した状態になると分別性能を確保するためにメンテナンスを行った方がよい場合もある。
【0031】
回転羽根10の回転状態を駆動ユニット40であるモーター電流の変動からトルク(回転力)の変動として間接的に検知することが可能である。しかしながら、回転羽根10の回転数は600rpmの場合、減速比によるが、モーターは1200rpmの高速回転で運転を行う。このために、回転慣性が大きく、瞬時にモーターのトルク変動を間接的にモーター電流の変動から検知することは容易ではない。
【0032】
この分別装置1においては、回転羽根10の回転速度をモニターする第1のセンサー63と、ハウジング20の振動をモニターする第2のセンサー64とを設け、監視装置62により、第1のセンサー63による回転速度が第1の閾値より低下し、かつ、第2のセンサー64による振幅が第2の閾値より増加すると、先端部材15の破壊としてカウントするようにしている。そして、先端部材15が破壊されたと想定される事象のカウントが所定の回数を超えると、先端部材15の交換を示唆する警告を監視装置62が出力するようにしている。
【0033】
図8に示すように、第1のセンサー63の一例は、回転羽根10が1回転すると少なくとも300パルス/回転以上のパルスを出力できるロータリ・エンコーダ63aと、ロータリ・エンコーダ63aから出力されるパルス列の間隔を計測するクロックカウンター63bとを含む、パルス間隔カウント回路である。1,000(パルス/回転)のロータリ・エンコーダ63aを採用すると、回転羽根12が1,000rpmで回転する場合、クロック信号が10MHzであれば、1/1,000回転ごとに、即ち60μSec毎に、600クロックパルスのカウント値が得られる。この値は、回転速度が低下すれば大きくなる。
【0034】
図9に示すように、したがって、クロックパルスのカウント値の逆数を回転速度信号63sとして得ることにより、1/1,000回転ごとに、回転羽根12の速度変化をモニターすることができる。しかしながら、回転速度をモニターするだけでは信頼性良く、回転板12がドラム(ハウジング)10の内側と紙の束などの異物3でかじったこと(異物3を介して接して回転不良になったこと)、または、先端部材15が破損したことを検出できない場合があり得る。
【0035】
図10に、第2のセンサー64の一例を示し、図11に、振動信号の幾つかの例を示している。第2のセンサー64は、ハウジング20の振動を検出する振動センサー64aと、その出力信号を増幅してノイズを取り除いた振動信号1を出力する増幅器およびHPF(高域周波数通過フィルタ)ユニット64bと、プラス電圧の振動信号2を取り出す整流回路63cと、信号の立ち上がりを強調した振動信号3(振動信号64s)を出力するファスト・アタック、スローリリース回路64dとを含む。
【0036】
図12に示すように、監視ユニット62は、1/1000回転毎に、回転速度信号63sと振動信号64sとをモニターする。監視ユニット62は、回転速度信号63sの1回転毎の平均回転速度をVRaveとし、分別装置1を起動して平均回転速度VRaveが起動回転速度VRset00以上になり、以下の条件(1)が成立したときからモニターを開始する。
VRave≧VRset00・・・(1)
そして、監視ユニット62は、現在の1/1000回転毎の回転速度VR0が以下の条件(2)を満足すると、回転速度は正常であると判断する。
VR0/VRave≧1.0・・・(2)
一方、回転速度VR0が第1の閾値VRset1(典型的には、0.8)に対し、以下の条件(3)になると速度低下があったと判断し、以下の条件(4)が成立すると、回転羽根10が停止したと判断する。
VR0/VRave<VRset1・・・(3)
VR0<VRset01・・・(4)
一方、振動信号64sに対しては、監視ユニット62は、振動信号64sの値Vibを第2の閾値Vibset1と比較し、以下の条件(5)を満足すると正常と判断し、以下の条件(6)が発生すると振動が発生したと判断する。
Vib<Vibset1・・・(5)
Vib>Vibset1・・・(6)
【0037】
監視ユニット62は、条件(3)と条件(6)とが同時に発生した時点(事象)65を、先端部材15が何等かの要因により破損したと判断する。さらに、条件(4)でない場合、すなわち、回転羽根10が継続して回転していると判断した場合は、事象65の発生回数をカウントして、カウントを積算しながら分別装置1の運転を続行する。そして、事象65の発生回数が所定の値を超えると、先端部材15の交換を促す表示を出力して、メンテナンスのために分別装置1の運転を自動停止させる。監視ユニット62は、メンテナンスを促す表示のみを行い、自動停止を行わなくてもよい。一方、条件(4)が成立すると、監視ユニット62は、分別装置1を緊急停止する。
【0038】
このような制御を行うことにより、分別装置1は、先端部材15の軽微な破損の場合には、逐一、運転を停止することなく、処理能力をさほど阻害させることなく、分別処理を継続することができる。一方、重大な事故が発生する可能性がある事態が発生した場合には、分別装置1を遅滞なく安全に停止させることができる。
上記には、処理対象物から包材を含む第1の分別物を分別する分別装置であって、水平方向に延びたハウジングと、前記ハウジング内で、水平方向に延びたシャフトにより旋回し、前記ハウジングに投入された処理対象物を攪拌する回転羽根と、前記ハウジングの内側上面に断続的に、らせん状に配置された複数のガイドベーンと、前記ハウジングの水平方向の一方の端に設けられた、処理対象物の投入口と、前記ハウジングの水平方向の他方の端に設けられた、前記第1の分別物を排出する排出口と、前記ハウジングの下方に設けられた、第2の分別物を排出する排出ユニットと、前記シャフトを介して前記回転羽根を回転駆動する駆動ユニットと、前記投入口の近傍のハウジング内に、前記シャフトに沿って処理対象物の搬送用の空気を導入するための空気導入ユニットとを有する分別装置が開示されている。分別装置は、さらに、前記空気導入ユニットから導入される空気流量および前記駆動ユニットによる前記回転羽根の回転速度を協調制御する制御ユニットを有していてもよい。分別装置は、さらに、前記複数のガイドベーンの間に、前記ハウジングの外側から、前記ハウジングを貫通して内側に突き出るように着脱可能に配置された複数の破袋用の刃を有していてもよい。前記破袋用の刃は角刃であってもよい。分別装置は、さらに、前記回転羽根の先端に交換可能に取り付けられた先端部材であって、前記回転羽根に対して割れやすい材料により形成された先端部材を有していてもよい。前記先端部材は、前記回転羽根に対して、靭性および延性が低く、硬度が大きな材料により形成されていてもよい。前記先端部材は、セラミック製であってもよい。分別装置は、さらに、前記回転羽根の回転速度をモニターする第1のセンサーと、前記ハウジングの振動をモニターする第2のセンサーと、前記第1のセンサーによる回転速度が第1の閾値より低下し、かつ、前記第2のセンサーによる振幅が第2の閾値より増加すると、前記先端部材の破壊としてカウントする監視装置とを有していてもよい。前記監視装置は、前記カウントが所定の回数を超えると、前記先端部材の交換を示唆する警告を出力してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 分別装置、 10 回転羽根
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