(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】プラネタリウム演出システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G09B 27/00 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
G09B27/00 B
(21)【出願番号】P 2019213041
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】508067839
【氏名又は名称】有限会社大平技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 遥香
(72)【発明者】
【氏名】大平 貴之
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-138368(JP,A)
【文献】特開2013-065236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出システムであって、
観客の自画像が格納されたデータベースと、
前記データベースから前記自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影するディジタル映像装置と、
を備え
、
前記データベースにおいて、前記観客の前記自画像と、前記スクリーンに投影される天体又は星座とが対応づけられ、
前記ディジタル映像装置は、前記自画像から生成した前記観客像を、前記スクリーンに投影されている天体又は星座のうち、当該自画像と対応づけられた天体又は星座の位置に投影する
ことを特徴とする、プラネタリウム演出システム。
【請求項2】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出システムであって、
観客の自画像が格納されたデータベースと、
前記データベースから前記自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影するディジタル映像装置と、
を備え
、
前記データベースにおいて、前記観客の前記自画像と、黄道十二星座のうち前記観客の誕生日に太陽が位置する誕生日星座とが対応づけられ、
前記ディジタル映像装置は、前記自画像から生成した前記観客像を、前記スクリーンに投影されている星座のうち、当該自画像と対応づけられた前記誕生日星座の位置、又は前記誕生日星座を構成する天体の位置に投影する
ことを特徴とする、プラネタリウム演出システム。
【請求項3】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出システムであって、
観客の自画像が格納されたデータベースと、
前記データベースから前記自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影するディジタル映像装置と、
前記プラネタリウム内に着席した前記観客が情報を入力可能な端末装置と
を備え
、
前記データベースにおいて、前記自画像と前記端末装置とが対応づけられ、
前記ディジタル映像装置は、天体に関する問題に対して正解の入力操作が行われた前記端末装置に対応づけられている前記自画像から生成された前記観客像の投影位置を選択的に前記スクリーンで地平線上から上方へ移動させる
ことを特徴とする、プラネタリウム演出システム。
【請求項4】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出システムであって、
観客の自画像が格納されたデータベースと、
前記データベースから前記自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影するディジタル映像装置と、
を備え
、
前記自画像には、胴部領域、前記胴部領域の上側に隣接した頭部領域、前記胴部領域の両側に隣接した一対の腕部領域、前記胴部領域の下側に隣接した脚部領域が設定され、
前記ディジタル映像装置は、前記自画像のうち前記頭部領域、前記腕部領域、及び前記脚部領域の少なくとも一つの自画像部分を、前記胴部領域の自画像部分に対して動かした観客像を生成する
ことを特徴とする、プラネタリウム演出システム。
【請求項5】
前記ディジタル映像装置は、前記観客像の投影位置を選択的に前記スクリーン上で移動させ、かつ/又は、当該観客像の大きさを選択的に変化させる
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のプラネタリウム演出システム。
【請求項6】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出方法であって、
前記スクリーンに投影される天体又は星座と対応づけられた観客の自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、
前記スクリーンに投影されている天体又は星座のうち、前記自画像と対応づけられた天体又は星座の位置に前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影する
ことを特徴とする、プラネタリウム演出方法。
【請求項7】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出方法であって、
黄道十二星座のうち観客の誕生日に太陽が位置する誕生日星座と対応づけられた前記観客の自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、
前記スクリーンに投影されている星座のうち、前記自画像と対応づけられた前記誕生日星座の位置、又は前記誕生日星座を構成する天体の位置に前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影する
ことを特徴とする、プラネタリウム演出方法。
【請求項8】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出方法であって、
前記プラネタリウム内に着席した観客が情報を入力可能な端末装置と対応付けられた前記観客の自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、
天体に関する問題に対して正解の入力操作が行われた前記端末装置に対応づけられている前記自画像から生成された前記観客像の投影位置を選択的に前記スクリーンで地平線上から上方へ移動させた前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影する
ことを特徴とする、プラネタリウム演出方法。
【請求項9】
ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出方法であって、
観客の自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影する
ことを含み、
前記自画像には、胴部領域、前記胴部領域の上側に隣接した頭部領域、前記胴部領域の両側に隣接した一対の腕部領域、前記胴部領域の下側に隣接した脚部領域が設定され、
前記観客像を生成することは、前記自画像のうち前記頭部領域、前記腕部領域、及び前記脚部領域の少なくとも一つの自画像部分を、前記胴部領域の自画像部分に対して動かした観客像を生成することを含む
ことを特徴とする、プラネタリウム演出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラネタリウム演出システム及び方法に係り、より詳細には、ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラネタリウムの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、光学式恒星投影機と、映像生成装置及び映像投影用プロジェクタを有するディジタル映像装置を備え、光学式恒星投影機で輝星を投影し、映像投影用プロジェクタで輝星よりも暗い星の映像することによって、美しくリアルな星空を再現可能でありながら、星を瞬かせたり、星に色を付けたりするなど、様々な映像演出も可能にする多機能な複合プラネタリウムシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、小学校では学習指導要領に基づき様々な体験学習が重視され、科学教育の一環としてプラネタリウムや科学館のような校外施設における校外学習が盛んに行われている。
【0005】
ところが、プラネタリウムに小学校の学級単位又は学年単位で引率されてきた児童は、必ずしも全員が当初から星空に興味を持っているとは限らず、さらに、低学年ほど長時間集中することが難しいため、プラネタリウムにおいてスクリーンに投影されている星空の解説を聞かずに騒いだり、居眠りをしたりすることがあった。このため、プラネタリウムの上映においては、児童の興味を引きつけて学習効果を高めるために様々な解説や投影プログラムの工夫がなされてきた。例えば、児童たちを引率してきた担任教諭がプラネタリウムの操作及び解説をすることによって、児童たち学習意欲を高める取り組みもなされている。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおいて、観客の参加意識を高めることができるプラネタリウム演出システム及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のプラネタリウムの演出システムは、ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出システムであって、観客の自画像が格納されたデータベースを備え、前記データベースから前記自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影するディジタル映像装置を備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のプラネタリウム演出方法は、ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出方法であって、観客の自画像を取り込んで、前記自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、前記観客像を含む映像を前記スクリーンに投影することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプラネタリウム演出システム及び方法によれば、ドーム状のスクリーンに星空を投影するプラネタリウムにおいて、観客の自画像に基づく観客像を観客の分身としてスクリーンに投影することにより、観客の参加意識を効果的に高めることができる映像投影システム及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態によるプラネタリウム演出システムの概略図である。
【
図2】プロジェクタによるドーム状のスクリーン上の分割投影領域の説明図である。
【
図3】ドーム状のスクリーンの周囲に投影された観客像の模式図である。
【
図4】本発明の実施形態においてデータベースに格納される情報の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態においてデータベースにおける、観客と黄道十二星座との対応関係を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態において、黄道十二星座上に投影された観客像の模式図である。
【
図7】本発明の実施形態において、選択的に移動して投影された観客像の模式図である。
【
図9】
図8に示した自画像に基づいて投影される変形した観客像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるプラネタリウム演出システム及び方法を説明する。
図1に、本発明の実施形態におけるプラネタリウム演出システムの概略図を示す。本実施形態のプラネタリウム演出システムは、ドーム状のスクリーン10に星空を投影するプラネタリウムにおけるプラネタリウム演出システムであって、観客の描いた自画像が格納されたデータベース2と、データベース2から自画像を取り込んで、自画像の少なくとも一部分を含む観客像を生成し、観客像を含む映像をスクリーン10に投影するディジタル映像装置3とを備える。
データベース2は、例えば、内部メモリ又はハードディスクのような記憶媒体で構成されてもよいし、USBメモリで構成されていてもよい。
【0012】
さらに、本実施形態では、プラネタリウム100のドームの中心に、光学式恒星投影機4が設置されている。光学式恒星投影機4は、恒星のうち一定の光度より明るい星(以下、輝星と称する)、例えば、2.0等星より明るい星をドーム状のスクリーン10に投影する機能を有する。光学式恒星投影機及びディジタル映像装置3は、コントローラ30によって統合制御される。
【0013】
一方、ディジタル映像装置3は、輝星以外の恒星(以下、微光星と称する)、例えば、2.1等星より暗い星含む星空の映像を生成し、その映像をスクリーン10に投影する。また、ディジタル映像装置3は、スクリーン10の周囲の地平線11上のスカイラインを形成する周辺景色12又はそのシルエットもスクリーン10に投影する。
【0014】
ディジタル映像装置3は、映像生成装置31と、ドーム状のスクリーン10の周囲に配置された3台の映像投影用のプロジェクタ32(32a,32b,32c)とを備えている。
映像生成装置31は、データベース2からこれら自画像をそれぞれ取り込んで、これら自画像それぞれの少なくとも一部分を含む観客像をそれぞれ生成する。観客像としては、全身の自画像をそのまま全身の観客像としてもよいし、また、自画像の一部分、例えば、頭部(顔部分)だけを観客像としてもよい。
そして、各プロジェクタ32(32a,32b,32c)が、これら観客像を含む映像をスクリーン10に投影する。
【0015】
図2に、プロジェクタによるドーム状スクリーン上の分割投影領域を示す。同図に示すように、プロジェクタ32a,32b,32cには、それぞれスクリーン10の全周を3等分割した範囲A,B及びCが割り当てられている。映像投影用プロジェクタ32a,32b,32cの各々は、割り当てられた範囲A,B及びCに映像をそれぞれ投影する。
なお、本実施形態では3台のプロジェクタ32a,32b,32cを備えているが、4台以上のプロジェクタを配置してもよい。
【0016】
図3に、ドーム状のスクリーン10に投影された観客像5(5a、5b、5c)の例を示す。同図では、観客像5として、スクリーン10の周囲の地平線11上に、男子児童像5a、女子児童像5b及び引率教師像5cが投影されている。これら男子児童像5a及び女子児童像5b及び引率教師像5cは、プラネタリウムに引率されてきた、プラネタリウムの観客である児童及び引率教師が予め作成した全身自画像(例えば、似顔絵)をスキャナでそれぞれ読み込み、データベース2に格納しておいたものをそのまま全身の観客像として投影したものである。観客像は、スキャンした全身自画像の周辺を透明処理し、人物の範囲、又はその範囲の更に一部分だけをコンピュータで抽出して生成される。
【0017】
なお、
図3では、男子児童像5a及び女子児童像5b及び引率教諭像5cを代表して示しているが、プラネタリウムに引率されてきた全児童の観客像がスクリーン10に投影されることが好ましい。また、プラネタリウムの解説の開始前から又は開始時点において、全児童の観客像がスクリーン10の周囲の地平線11上のスカイラインを構成する周辺景色12に重ねて並べて投影されていることが好ましい。さらに、児童の観客像を配置する座標をそれぞれの児童ごとに任意に動かすことによって、児童たちがまるで歩いているような演出をしてもよい。
【0018】
プラネタリウムで学校団体の貸し切り上映を行う場合においては、事前に学校で児童が自画像を描く段階から、プラネタリウムにおける学習への主体的な参加が始まっている。プラネタリウムの上映に先立ち、プラネタリウムで投影される自画像の作成を通じて、児童の参加意識や高揚感が高められ、学習意欲が向上することが期待される。
【0019】
そして、プラネタリウムにおいて、児童が作成した自画像に基づく観客像がドーム状のスクリーン10に投影されると、児童がスクリーン10上の自分の観客像を探す結果、児童の興味をスクリーン10に効果的に向けさせることができる。そして、児童の分身である観客像がスクリーン10に投影されることにより、児童の参加意識を効果的に高めることができる。特に、星空と共に観客像を投影することにより、自分の分身が星空と一体となり、児童の参加意識を一層効果的に高めることができる。その結果、ドーム状のスクリーン10に投影されている星空等の解説に児童の興味を引きつけて、プラネタリウムにおける学習効果の向上を図ることができる。
【0020】
ここで、
図4を参照して、データベース2に格納される情報を説明する。
同図に示す例では、データベース2に、スカイライン画像データベース2a、画像データベース2b、氏名データベース2c、及び出題データベース2dが含まれている。
スカイライン画像データベース2aには、
図1及び
図2に示したスカイラインを構成する周辺景色の画像が格納されており、ディジタル映像装置3が、データベース2から周辺景色の画像を読み込んで、スクリーン10に投影する。
画像データベース2bには、プラネタリウムの観客である児童及び引率教師が予め作成した全身自画像(例えば、似顔絵)をスキャナでそれぞれ取り込んだものが格納されている。各児童等の自画像には、識別子として児童の出席番号がそれぞれ付与されている。
なお、識別子は、出席番号に限定されず、任意好適なものを用いることができる。また、児童等の自画像は学校の教室で作成したものを、スキャンしてデータ化するのが好ましい。データ化された自画像の情報は、通信回線を介してプラネタリウムのデータベース2に送ってもよいし、USB等の記憶媒体に格納してプラネタリウムに持参してデータベース2に格納してもよい。また、自画像をそのままプラネタリウムに持参して、プラネタリウムでスキャンしてデータベース2に格納してもよい。
【0021】
また、氏名データベース2cには、各児童等の氏名の情報が格納されている。各児童等の氏名は、識別子としての出席番号を介して、画像データベース2bの自画像と対応付け(紐付け)られている。
出題データベース2dでは、プラネタリウムにおける解説において出題される問題とその解答が格納されている。
図4に示す例では、出題データベース2dに、「この中で一番大きな惑星は?」という問題と、その解答として「A」の「木星」というデータが格納されている。
【0022】
さらに、
図5に示すように、データベース2には、上記の各データベース2a~2dに加えて、又は氏名データベース2cの代わりに、誕生日データベース2e及び星座データベース2fが格納されていてもよい。
誕生日データベース2eには、各児童等の氏名及び誕生日の情報が格納され、各児童等の氏名には、識別子として児童の出席番号がそれぞれ付与されている。
また、星座データベース2fには、黄道十二星座と、各星座の期間の情報が格納されている。黄道十二星座の各星座の期間は、地球から見て、天球上の各星座の方向に太陽が位置する期間である。
【0023】
なお、黄道十二星座として、占星術で使用されるいわゆる黄道十二宮を採用してもよい。ただし、黄道十二星座の天球上の範囲は、国際天文学連合によって88星座の一部として定められているのに対し、黄道十二宮は、黄道を12等分して12の星座に割り当てているため、黄道十二星座と黄道十二宮とはその範囲が厳密には一致していない。
【0024】
そして、誕生日を介して、誕生日データベース2eの各児童等の氏名と黄道十二星座のうちの誕生日星座とが対応づけられている。
図5に示す例では、誕生日データベース2e中の出席番号1番の児童の誕生日である3月11日は、うお座の2月19日~3月20の期間に含まれ、出席番号2番の児童の誕生日である4月21日は、おうし座の4月20~5月20の期間に含まれる。
したがって、画像データベース2bの各児童等の自画像は、出席番号と誕生日をキーとして、星座データベース2fの黄道十二星座の誕生日星座と対応づけられる。
【0025】
次に、
図6を参照して、プラネタリウムにおける演出例を説明する。本演出例では、データベース2において、
図5に示した誕生日データベース2e及び星座データベース2fを有し、上述したように、観客としての児童等の自画像と、黄道十二星座のうち児童等の誕生日に太陽が位置する誕生日星座とが対応づけられている。
そして、ディジタル映像装置3は、自画像から生成した観客像を、スクリーンに投影されている星座のうち、当該自画像と対応づけられた誕生日星座の位置に投影する。
【0026】
図6は、黄道十二星座上に投影された観客像の模式図である。同図では、児童の全身自画像のうち頭部だけを観客像として投影している。
児童の分身としての似顔絵を該当する誕生日星座に重ねて投影するにあたっては、誕生日星座を構成する恒星の位置に、似顔絵を投影するとよい。具体的には、各星座のα星から順に明るい星の位置に児童の似顔絵を重ねて投影するとよい。例えば、
図6に示す例では、魚座のα星であるアルレシャに、観客像として出席番号1番の男子児童の頭部の似顔絵5bを重ねて投影し、おうし座のα星であるアルデバランに、観客像として出席番号2番の女子児童の似顔絵5aを重ねて投影している。これにより、黄道十二星座の各星座におけるα星の位置を児童に強く印象付けることができ、プラネタリウムにおける学習効果の向上を図ることができる。
なお、誕生日星座の位置に似顔絵を投影するにあたっては、誕生日星座の範囲内又は近傍であって、誕生日星座を構成する恒星以外の位置に似顔絵を投影することもできる。
【0027】
図6ではまた、3月下旬から4月中旬にかけて、地球から見て太陽が天球上のおひつじ座の方向に位置することを説明するために、太陽像Sをおひつじ座に重ねて投影している。
そして、出席番号1番の男子児童の誕生日の太陽の天球上の位置へ、太陽像Sを黄道7に沿って移動させて、太陽像Sを男子児童の分身である似顔絵5bの近くに、又は似顔絵5bに重ねて投影すれば、自分の誕生には、自分の誕生日星座に太陽が位置するために、自分の誕生日星座が見えにくくなるという天文学の基礎知識を児童に強く印象づけて理解させるうえで有効である。これにより、プラネタリウムにおける学習効果の向上を図ることができる。
【0028】
また、
図6では、黄道十二星座に児童の似顔絵を投影した例を示しているが、黄道十二星座以外の星座の位置又は天体の位置に、観客の自画像としての児童の似顔絵を投影してもよい。
その場合には、例えば、データベース2において、児童の自画像と、スクリーン10に投影される特定の天体又は星座とを対応づけておくとよい。例えば、データベース2に、オリオン座等の星座、及び天の川や星雲といった天体の情報を格納した星座・天体データベースを設け、この星座・天体データベースの特定の星座又は天体と、画像データベース2bの各自画像とを対応付けておくとよい。また、画像データベース2bと対応付けられた氏名データベース2cの各氏名を、星座・天体データベースの特定の星座又は天体と対応付けておいてもよい。
そのうえで、ディジタル映像装置3は、自画像から生成した観客像5を、スクリーン10に投影されている天体又は星座のうち、当該自画像と対応づけられた天体又は星座の位置に投影するとよい。
【0029】
次に、
図7を参照して、プラネタリウムにおける他の演出例を説明する。本演出例では、プラネタリウム内に着席した観客としての児童等が情報を入力可能な端末装置を更に備えている。
図4に示す例では、端末装置としてモバイル端末(携帯端末)6が示されている。
モバイル端末6としては、観客が所有するスマートフォンのようなモバイル端末を利用してもよし、観客にモバイル端末を配布し、後で回収するようにしてもよい。また、端末装置は、無線に限らず、有線でプラネタリウムの演出システム、例えばコントローラ30に接続されていてもよいし、レスポンスアナライザのようにプラネタリウムの各座席に予め装備されているものでもよい。かかる装備を利用する場合には、出席番号順に児童を着席させる等により、座席と児童とを対応付けておくことが望ましい。
そして、
図4に示すように、モバイル端末6のような端末装置の操作結果、例えば、クイズの解答入力情報は、プラネタリウムの演出システムのコントローラ30において集計される。
【0030】
本演出例では、データベース2においては、画像データベース2bの各自画像と各モバイル端末6とが対応づけられている。ディジタル映像装置3は、特定の情報の入力操作(例えば、正解の解答入力操作)が行われたモバイル端末6に対応づけられている自画像から生成された観客像の投影位置を、
図7に示すように、選択的にスクリーンで移動させ、かつ/又は、当該観客像の大きさを選択的に変化させる。
【0031】
具体的に、出題データベース2dにおいて、「この中で一番大きな惑星は?」という問題に対して、出席番号2番の女子児童が、モバイル端末6で正解の「A」又は「木星」を選択する解答入力操作を行った場合の演出例を説明する。
かかる場合、コントローラ30は、各モバイル端末6における解答入力操作の内容を集計し、映像生成装置31は、正解を入力した出席番号2番の女子児童の分身である観客像5bを、
図7に示すように、地平線11上から上方へ移動させて投影する。
図7に示す例では、女子児童の観客像5bを囲む装飾と「正解!!」の文字表示も投影されている。また、女子児童の観客像5bを上方へ移動させるとともに、拡大して投影してもよい。このように、クイズ形式の問題に単に回答するだけでなく、正解者の観客像が移動表示及び/又は拡大表示することによって、観客像を目立たせて正解を強く印象づけることができ、観客の参加意識をより高めて教育効果を上げることができる。
【0032】
図7に示した例では、クイズ形式の問題に解答した場合に、正解者の観客像を移動指せた例を説明したが、ディジタル映像装置3は、任意のタイミングで任意の観客像の投影位置を選択的にスクリーン10上で移動させ、かつ/又は、当該観客像の大きさを選択的に変化させることができる。
【0033】
また、プラネタリウムのコンソールスペース(コントローラ30)で操作することによって、所望の観客像をスクリーン10上で選択的に移動させ、かつ/又は、当該観客像の大きさを選択的に変化させてもよい。
【0034】
次に、
図8及び
図9を参照して、自画像を変形した観客像について説明する。
図8は、自画像の作成例を示す模式図である。
図9は、
図8に示した自画像に基づいて投影される変形した観客像の模式図である。
本実施形態では、
図8に示す所定用紙である台紙8に、男子児童の全身の自画像50が描かれている。台紙8には、胴部領域80、胴部領域80の上側に隣接した頭部領域81、胴部領域80の両側に隣接した一対の腕部領域82及び83、胴部領域80の下側に隣接した脚部領域84及び85が設定されている。胴部領域80には、自画像50の胴部が描かれ、頭部領域81には、自画像50の頭部が描かれ、腕部領域82及び83には、自画像50の左右の腕が描かれ、脚部領域84及び85には、自画像50の左右の脚が描かれる。
【0035】
ディジタル映像装置3は、台紙8に描かれた自画像50のうち、頭部領域81、腕部領域82及び83、及び脚部領域84及び85の少なくとも一つに描かれた自画像部分を、胴部領域80に対して回転するように変形させた観客像を生成する。
【0036】
図9に示す観客像51bでは、男子児童の自画像50のうち、頭部領域81に描かれた頭部を、首をかしげるように胴部領域に対して回転するように変形させ、腕部領域83に描かれた右腕を斜め上方へ振り上げるように、胴部領域に対して回転するように変形させ、かつ、脚部領域84に描かれた左足を外側に開くように、胴部領域80に対して回転するように変形させている。自画像の身体の各部を動かすことによって、まるで自画像の手足が動いたり、頭の向きが変わったりするような変化を演出することができる。また、身体の各部は、動かして静止させた状態で投影してもよいし、動かし続けた状態で投影してもよい。
【0037】
このように、観客の分身としての観客像51bを自画像に対して変形させることにより、より躍動感のある魅力的な自画像を表現できることになり、観客の参加意識をより効果的に高めることができる。また、観客像を変形させることにより、観客像に解説対象となっている恒星を指さすポインタとしての役割を与えることもできる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲内で種々の変更及び変形を行うことができる。上述した実施形態では、光学式恒星投影機とディジタル映像装置とを備えた複合プラネタリウムにおける演出システムの例を説明したが、本発明では、プラネタリウムは、光学式恒星投影機を設けず、ディジタル式の投影装置だけで恒星を投影するものであってもよいし、光学式恒星投影機で輝星及び微光星を含む恒星を投影しつつ、ディジタル映像装置で恒星以外の天体や映像を投影するものであってもよい。
また、観客は、学校団体の児童、生徒に限定されず、例えば、老人ホームの入居者と児童とのペアであってもよいし、家族連れであってもよい。
また、自画像は、似顔絵などの観客が描いた絵に限定されず、例えば、観客が写っている写真やコンピュータグラフィックスでもよい。
また、スクリーンに投影される観客像は静止画像に限定されない。例えば、特に意欲のある児童が自画像を動かしたいと考えたときには、多数の(例えば、数枚乃至数十枚の)自画像の静止画を描かせて、これら静止画で構成されたアニメーションを作成し、このアニメーションを動画の観客像としてスクリーンに投影することもできる。
【符号の説明】
【0039】
10 スクリーン
11 地平線
12 周辺風景
2(2a,2b,2c,2d) データベース
3 ディジタル映像装置
30 コントローラ
31 映像生成装置
32(32a,32b,32c) プロジェクタ
4 光学式恒星投影機
5(5a,5b,5c) 観客像
50 自画像
51b 変形した観客像
6 モバイル端末
7 黄道
8 台紙
80 胴部領域
81 頭部領域
82,83 腕部領域
84,85 脚部領域