(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】救命浮輪、救命浮輪キット
(51)【国際特許分類】
B63C 9/08 20060101AFI20240115BHJP
B63B 43/04 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B63C9/08 J
B63B43/04
(21)【出願番号】P 2020010234
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2023-01-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開した日: 令和 1年 6月13日 公開した場所: 特定非営利法人みなと研究会駐車場(山形県酒田市上安町1丁目5番地2) 公開者: 守屋 元志
(73)【特許権者】
【識別番号】591146022
【氏名又は名称】守屋 元志
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(74)【代理人】
【識別番号】100214938
【氏名又は名称】樋熊 政一
(72)【発明者】
【氏名】守屋 元志
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-152084(JP,A)
【文献】特表平4-506499(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1530573(KR,B1)
【文献】特開2008-285133(JP,A)
【文献】特開平10-166989(JP,A)
【文献】特開2004-122917(JP,A)
【文献】特開2009-120773(JP,A)
【文献】特開2016-61124(JP,A)
【文献】中国実用新案第205440814(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/00
B63B 43/04
B60R 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮輪本体と、
前記浮輪本体の外表面を覆う使用済み自動車用エアバッグと、
を備え
、
前記浮輪本体は、遊具用浮輪であり、
前記使用済み自動車用エアバッグは、自動車用エアバッグとして使用されていた際にガス導入部用として設けられた開口を有し、
前記浮輪本体の外径は、
前記使用済み自動車用エアバッグの前記開口に基づく開口部の開口径よりも大きく、
前記使用済み自動車用エアバッグの内腔径の110%以下の大きさである、救命浮輪。
【請求項2】
前記浮輪本体の外径は、前記使用済み自動車用エアバッグの内腔径の70%
以上の大きさであり、
前記使用済み自動車用エアバッグの前記開口部は、前記浮輪本体の最大高さ部よりも常に内径側に位置する、請求項
1に記載の救命浮輪。
【請求項3】
前記使用済み自動車用エアバッグは、前記開口部を有する一面側と、自動車用エアバッグとして使用されていた際において、展開時に乗員側に面する他面側と、を有し、
前記浮輪本体の中心穴部と、前記使用済み自動車用エアバッグの前記他面側により、略つづみ型の立体ポケット部が形成され、
前記略つづみ型の立体ポケット部に配置されるゴム風船と、
前記ゴム風船と前記浮輪本体又は前記使用済み自動車用エアバッグとを連結する紐状体と、を更に備える、請求項
1又は請求項
2に記載の救命浮輪。
【請求項4】
前記使用済み自動車用エアバッグは、前記開口部を有する一面側と、自動車用エアバッグとして使用されていた際において、展開時に乗員側に面する他面側と、を有し、
前記浮輪本体の中心穴部と、前記使用済み自動車用エアバッグの前記他面側により、略つづみ型の立体ポケット部が形成され、
前記略つづみ型の立体ポケット部に配置される防災用品と、
前記防災用品と、前記浮輪本体又は前記使用済み自動車用エアバッグとを連結する紐状体と、を更に備え、
前記防災用品は、笛、発煙筒、電灯、ラジオのうち、少なくともいずれか一つを含む、請求項
1又は請求項
2に記載の救命浮輪。
【請求項5】
前記使用済み自動車用エアバッグが、前記浮輪本体の中心穴部の位置に対応する位置に設けられた開口部を有し、前記開口部に、開閉自在な蓋部が設けられている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の救命浮輪。
【請求項6】
前記使用済み自動車用エアバッグの一面側と他面側のそれぞれに、前記浮輪本体の中心穴部の位置に対応する位置に設けられた開口部を有し、
前記浮輪本体の前記中心穴部付近に、網状部材が設けられている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の救命浮輪。
【請求項7】
前記網状部材の所定の高さ位置に、前記網状部材を縫うようにして設けられた紐状部材を備える、請求項
6に記載の救命浮輪。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の救命浮輪を構成する前記浮輪本体および前記使用済み自動車用エアバッグと、自動車のエアバッグ用インフレータのリサイクル品と、前記エアバッグ用インフレータと前記浮輪本体の間を連結するガス導入管と、を備える救命浮輪キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災用の救命浮輪に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、台風や高潮等による河川の氾濫、洪水等の災害が増加している。このような状況下において、特に沿岸域や河川地域の各家庭においては、防災グッズとして救命浮輪を常備しておくことが望まれている。
従来、救命浮輪としては、海難救助に用いられるものが知られている。例えば、特許文献1には、落水時に海上で浮遊して救助を待つための救命浮輪が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような膨張タイプの救命浮輪は、一般に、ナイロン等の高強度の基布に放水加工を施したものにより膨張体が形成されているため、コストが高い。また、発泡スチロール等の浮力体を用いるタイプの救命浮輪も存在するが、このような救命浮輪は、コストが高いことに加えて、小さく折り畳むことができないため、一般家庭等においては収納場所の確保が困難となることが多い。このような背景から、救命浮輪は一般家庭にほとんど普及していないのが実情である。
また、遊具の浮輪については、通常、軟質塩化ビニール等の低強度の材質により制作されているため、流木等の浮遊物が浮いている災害時の使用については、強度、耐久性の面で不安がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、災害時にも対応できる低コストの救命浮輪を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、浮輪本体と、前記浮輪本体の外表面を覆う使用済み自動車用エアバッグと、を備える救命浮輪に関する。
【0007】
また、前記浮輪本体は、遊具用浮輪であってもよい。
【0008】
また、前記使用済み自動車用エアバッグは、自動車用エアバッグとして使用されていた際にガス導入部用として設けられた開口に基づく開口部を有し、前記浮輪本体の外径は、前記使用済み自動車用エアバッグの前記開口部の開口径よりも大きく、前記使用済み自動車用エアバッグの内腔径と同等又はそれ以下であってもよい。
【0009】
また、前記浮輪本体の外径は、前記使用済み自動車用エアバッグの内腔径の70%~110%の大きさであり、前記使用済み自動車用エアバッグの前記開口部は、前記浮輪本体の最大高さ部よりも常に内径側に位置してもよい。
【0010】
また、前記使用済み自動車用エアバッグは、前記開口部を有する一面側と、自動車用エアバッグとして使用されていた際において、展開時に乗員側に面する他面側と、を有し、前記浮輪本体の中心穴部と、前記使用済み自動車用エアバッグの前記他面側により、略つづみ型の立体ポケット部が形成され、前記略つづみ型の立体ポケット部に配置されるゴム風船と、前記ゴム風船と前記浮輪本体又は前記使用済み自動車用エアバッグとを連結する紐状体と、を更に備えていてもよい。
【0011】
また、前記使用済み自動車用エアバッグは、前記開口部を有する一面側と、自動車用エアバッグとして使用されていた際において、展開時に乗員側に面する他面側と、を有し、前記浮輪本体の中心穴部と、前記使用済み自動車用エアバッグの前記他面側により、略つづみ型の立体ポケット部が形成され、前記略つづみ型の立体ポケット部に配置される防災用品と、前記防災用品と、前記浮輪本体又は前記使用済み自動車用エアバッグとを連結する紐状体と、を更に備え、前記防災用品は、笛、発煙筒、電灯、ラジオのうち、少なくともいずれか一つであってもよい。
【0012】
また、前記使用済み自動車用エアバッグが、前記浮輪本体の中心穴部の位置に対応する位置に設けられた開口部を有し、前記開口部に、開閉自在な蓋部が設けられていてもよい。
【0013】
また、前記使用済み自動車用エアバッグの一面側と他面側のそれぞれに、前記浮輪本体の中心穴部の位置に対応する位置に設けられた開口部を有し、前記浮輪本体の前記中心穴部付近に、網状部材が設けられていてもよい。
【0014】
また、前記網状部材の所定の高さ位置に、前記網状部材を縫うようにして設けられた紐状部材を備えていてもよい。
【0015】
また、本発明は、救命浮輪を構成する前記浮輪本体および前記使用済み自動車用エアバッグと、自動車のエアバッグ用インフレータのリサイクル品と、前記エアバッグ用インフレータと前記浮輪本体の間を連結するガス導入管と、を備える救命浮輪キットに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、災害時にも対応できる低コストの救命浮輪を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【
図1B】上記実施形態に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観の写真を示す図である。
【
図2】上記実施形態に係る救命浮輪の下面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【
図3】上記実施形態に係る救命浮輪の浮輪本体と使用済み自動車用エアバッグとの寸法関係を説明するための断面図である。
【
図4】上記実施形態に係る救命浮輪における、ゴム風船および防災用品の設置状態を示すための図である。
【
図5】第2実施形態に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態の変形例に係る救命浮輪の下面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【
図7A】第3実施形態に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【
図7B】第3実施形態の変形例に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【
図8】第3実施形態に係る救命浮輪の接続索の利用方法を示すための図である。
【
図9】第4実施形態に係る救命浮輪キットを構成する救命浮輪およびエアバッグ用インフレータの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る救命浮輪について、図面を参照しながら説明する。
図1Aは、本実施形態に係る救命浮輪1の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
図1Bは、本実施形態に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観の写真を示す図である。
図2は、本実施形態に係る救命浮輪の下面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【0019】
図1A、
図1Bに示すように、本実施形態の救命浮輪1は、浮輪本体10と、浮輪本体10の外表面を覆う使用済み自動車用エアバッグ20と、を備える。
本実施形態の浮輪本体10は、市販の遊具用浮輪であり、安価で、容易に入手可能なものを用いることができる。遊具用浮輪の材質は、例えば軟質塩化ビニールであり、安価であるものの、それ単体では高い強度を有するとはいえない。少なくとも災害用の救命浮輪の材質としては、十分な強度を有しているとはいえない。そこで、本実施形態の救命浮輪1は、使用済み自動車用エアバッグ20により、浮輪本体10の外表面を覆っている。
【0020】
使用済み自動車用エアバッグ20は、自動車に用いられていたものであり、自動車の廃車や、エアバッグの交換修理等に伴って自動車から外され、通常であれば廃棄される廃棄品である。本実施形態においては、このような使用済み自動車用エアバッグ20を、救命浮輪用の部材としてリサイクルして、遊具用浮輪を組み合わせて用いる。
【0021】
自動車用エアバッグには、通常、強度と気密性を確保するために、ナイロン66等のポリアミド樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)等の糸で織られた布が用いられている。そして、気密性を確保するために、このような布を、ウレタンやシリコーンなどのガス不透過性樹脂で被覆している。また、縫製部においても、気密性を良好とするためにシール材が塗布されている。このように、強度と気密性を有する自動車用エアバッグ20は、救命浮輪1において、空気の導入によって膨らむ膨張体である遊具用浮輪を覆う布材として極めて好適である。
【0022】
使用済み自動車用エアバッグ20としては、好ましくは、ステアリングホイールから展開して運転者の前面衝突を保護する運転者用エアバッグとして設置されていた自動車用エアバッグを用いる。このような自動車用エアバッグは、全体としては扁平楕円体に近い形状を有している場合が多い。そして、自動車用エアバッグとして使用されていた際にガス導入部用として設けられた開口に基づく開口部21を有する一面側22(
図1A、
図1B参照)と、展開時に乗員側に面する他面側23(
図2参照)とを有する。本実施形態では、この形状を有効活用する。
【0023】
ドーナツ形状の浮輪本体10と略扁平楕円体の使用済み自動車用エアバッグ20は、外縁が対応する形状となっており、救命浮輪1を製作する上で、極めて良好な組み合わせである。すなわち、浮輪本体10と、使用済み自動車用エアバッグ20は、その外縁が略対応する形状となっているため、浮輪本体10のサイズと使用済み自動車用エアバッグ20のサイズを適切に組み合わせることにより、使用済み自動車用エアバッグ20をほとんど追加裁断、追加縫製等の追加工をすることなく、浮輪本体10を覆うことができる。例えば、追加裁断をしない場合は、裁断部における布のほつれもなく、高い耐久性を確保することができる。
【0024】
図3は、本実施形態の救命浮輪1の浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20との寸法関係を説明するための断面図である。
使用済み自動車用エアバッグ20は、前述のとおり、一面側22に開口部21を有している。よって、この開口部21を通じて、使用済み自動車用エアバッグ20内にまだ完全に膨張していない浮輪本体10を挿入し、その後、浮輪本体10に空気を入れて膨張させることにより、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20を実質的に一体化させることができる。このとき、
図3に示すように、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21の位置と、浮輪本体10の中心穴部11の位置は概ね一致する。例えば、一面側22(上面側)から見たときに、少なくとも、開口径D2aの使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21の面積の50%以上が、内径D1aの浮輪本体10の中心穴部11とオーバーラップしていることが好ましい。もしくは、内径D1aの浮輪本体10の中心穴部11の面積の50%以上が、開口径D2aの使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21とオーバーラップしていることが好ましい。
なお、開口部21は、自動車用エアバッグとして使用されていた際にガス導入部用として設けられた開口をそのまま用いるのが理想である。但し、自動車用エアバッグとして使用されていた際にガス導入部用として設けられた開口に基づいて、この開口を追加工して開口部21を形成してもよい。
【0025】
ここで、浮輪本体10および使用済み自動車用エアバッグ20の膨張時において、浮輪本体10の外径D1bが、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21の開口径D2aよりも大きく、かつ使用済み自動車用エアバッグ20の内腔径D2bと同等又はそれ以下となるように、浮輪本体10のサイズと使用済み自動車用エアバッグ20のサイズを選択して組み合わせることが好ましい。これにより、使用済み自動車用エアバッグ20内で浮輪本体10を適切に膨張させることができ、かつ、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20が組み合わさった状態を簡便に維持することができる。すなわち、仮に浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20とを結合する特別な結合手段を有していなくても、寸法関係から、浮輪本体10が膨張状態においては、基本的には使用済み自動車用エアバッグ20から浮輪本体10が外れることがなくなり、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20が組み合わさった状態を維持することができる。また、このような状態となるように製造することも容易である。
【0026】
より好ましくは、浮輪本体10の外径D1bを、使用済み自動車用エアバッグ20の内腔径D2bの70%~110%の大きさとし、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21が、浮輪本体10の最大高さ部よりも常に内径側に位置する態様とする。
浮輪本体10の外径D1bを、使用済み自動車用エアバッグ20の内腔径D2bの70%~110%の大きさとすることにより、使用済み自動車用エアバッグ20内における浮輪本体10の片寄りが少なくなり、安定した状態となる。なお、浮輪本体10の外径D1bは、使用済み自動車用エアバッグ20の内腔径D2bの70%~100%の大きさとすることがより好ましいが、110%とした場合であっても、使用済み自動車用エアバッグ20の内腔面を押し込む等の作用により、浮輪本体10は概ね膨張することができる。
ここで、浮輪本体10の最大高さ部とは、
図3に示される高さHの部分であり、この部分は、浮輪本体10の全周に亘って存在する。よって、この全周に亘って存在する最大高さ部は、一面側22(上面側)からみたときに、直径D1cの略円形形状を形成する。そして、仮に使用済み自動車用エアバッグ20内で浮輪本体10が片寄って配置されたとしても、開口径D2aの使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21は、常に直径D1cの略円形形状の範囲内に入るように構成する。これにより、より安定的に、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20が組み合わさった状態を維持することができる。
【0027】
なお、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20を、テープや紐状部材、使用済み自動車用シートベルト等を用いて固定してもよい。特に、浮輪本体10のサイズと使用済み自動車用エアバッグ20のサイズに差異がある場合には、これらの部材を用いて固定することが好ましい。例えば、粘着テープを用いて両者を固定してもよい。また、紐状部材や使用済み自動車用シートベルトを、ドーナツ状の浮輪本体10の一部に巻き付け、巻き付けた紐状部材や使用済み自動車用シートベルトを使用済み自動車用エアバッグ20に固定し、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20を連結してもよい。また、外表面が使用済み自動車用エアバッグ20に覆われている状態のドーナツ状の浮輪本体10に、紐状部材や使用済み自動車用シートベルトを巻き付け、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20を連結してもよい。
【0028】
なお、浮輪本体10の内径D1a、外径D1b、直径D1c、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21の開口径D2aおよび内腔径D2bは通常略円形であるが、完全な円形でなくてもよい。円形でない場合は、周長から円換算で考えたときに、上述の関係性を有することが好ましい。
【0029】
なお、上述のとおり、浮輪本体10のサイズと使用済み自動車用エアバッグ20のサイズを適切に組み合わせることにより、使用済み自動車用エアバッグ20をほとんど追加裁断することなく、浮輪本体10を覆うことが理想的であるが、使用済み自動車用エアバッグ20を、浮輪本体10の形状、サイズにあわせて、適切な形状、サイズに加工してもよい。例えば、使用済み自動車用エアバッグ20の外縁および開口部21を、加工により適切な形状、サイズに形成してもよい。
【0030】
図1A、
図1B、
図2に示すように、使用済み自動車用エアバッグには、つかみ索70として機能する使用済み自動車用シートベルトが縫い付けられている。使用済み自動車用エアバッグに、このようなつかみ索70が取り付けられていることにより、有事において複数の人が救命浮輪につかまることができる。自動車用シートベルトは丈夫であり、つかみ索70として極めて好適である。
【0031】
このつかみ索70としての使用済み自動車用シートベルトは、自動車に用いられていたものであり、自動車の廃車や、シートベルトの交換修理等に伴って自動車から外され、通常であれば廃棄される廃棄品である。本実施形態においては、このような使用済み自動車用シートベルトを、救命浮輪用のつかみ索70としてリサイクルする。リサイクル品である使用済み自動車用シートベルトを再利用することにより、災害時にも対応できる低コストのつかみ索70付きの救命浮輪1を提供することができる。
なお、使用済み自動車用シートベルトにより構成されているつかみ索70は、後述の防災用品50が接続されている紐状体60を連結する防災用品連結部としても有効に機能する。
【0032】
図4は、本実施形態の救命浮輪1の略つづみ型の立体ポケット部30および救命浮輪1に付属するゴム風船40および防災用品50の設置状態を説明するための図であり、浮輪本体10および使用済み自動車用エアバッグ20は断面図で示されている。
図4に示すように、本実施形態の救命浮輪1は、浮輪本体10の中心穴部11と、使用済み自動車用エアバッグ20の他面側23(下面側)により、略つづみ型の立体ポケット部30を形成する。この略つづみ状の立体ポケット部30は、その形状から、様々な備品を収容する上で極めて有能である。すなわち、浮輪本体10の中心穴部11は、浮輪本体10の高さH(
図3参照)の中間位置から他面側23(下面側)に向かって末広がりとなっているため、多くの物を収容でき、かつ、救命浮輪1が揺れたとしても、救命浮輪1から備品が飛び出す可能性が少ない。
【0033】
この立体ポケット部30には、ゴム風船40が配置されている。例えば、異なる色の複数個のゴム風船40が配置されていてもよい。
図1A、
図2、
図4に示すように、ゴム風船40は、好ましくは、浮輪本体10又は使用済み自動車用エアバッグ20と紐状体60で連結され、立体ポケット部30の外に出ても紛失しないようになっている。ゴム風船40を膨らませてから、紐状体60を結び付けてもよい。例えば紐状体60は、前述のつかみ索70としての使用済み自動車用シートベルトと簡便に接続することもできる。ゴム風船40は、
図4に示すように、異なる色の複数個のゴム風船40(複数色のゴム風船40)であってもよい。
【0034】
近年、要救護者の捜索に、ドローンが用いられるようになった。ゴム風船40と救命浮輪1との組み合わせは、水難事故におけるドローン捜索において、顕著な効果を発揮する。
すなわち、ゴム風船40は、安価にカラフルなものを数多く準備することが可能であり、昼間の時間帯においては、懐中電灯等の照明手段よりも効果の高い目印となる。また、軽量で、かつ膨張前は場所もとらないため、備品の配置場所および浮力に限りのある救命浮輪1においても、ゴム風船40であれば、立体ポケット部30に数多く配置することが可能である。
そして、救命浮輪1と同様に、膨張後のゴム風船40は浮力を有するため、ゴム風船40を浮輪本体10又は使用済み自動車用エアバッグ20と紐状体60等により連結しておけば、救命浮輪1の全体的な浮力の足しにもなる。加えて、ゴム風船40は水中に沈まないため、居場所を知らせる目印として確実に機能する。また、特別な道具を使うことなく、息を吹き込むことによって、目立つように大きく膨らませることが可能である。このように、ゴム風船40と救命浮輪1を組み合わせることにより、水難時において、夜間に入る前に発見され、救出される可能性を顕著に高めることができる。
もちろん、ゴム風船40は、ドローン捜索に限らず、居場所を知らせるための有効な目印となる。例えば、空からの救援ヘリコプターに対して、居場所を知らせることもできる。
【0035】
また、この略つづみ型の立体ポケット部30には、種々の防災用品50を配置することが可能である。防災用品として、例えば、
図1A、
図2、
図4に示すような、笛50A、発煙筒50B、電灯、ラジオを配置することができる。少なくとも、これらの防災用品のうち、いずれか一つを配置してもよい。電灯、ラジオは、防水型の電灯、防水型の携帯ラジオであることが好ましい。防災用品50は、LED照明付きラジオ50Cであってもよい。
防災用品50は、好ましくは、浮輪本体10又は使用済み自動車用エアバッグ20と紐状体60で連結され、立体ポケット部30の外に出ても紛失しないようになっている。例えば紐状体60は、
図1A、
図2、
図4に示すように、前述のつかみ索70としての使用済み自動車用シートベルトと簡便に接続することもできる。
【0036】
例えば、防災用品50としての合図用の笛(呼子)50Aは、小さいながらも、被災者が居場所を知らせる上で有用なグッズである。例えば足や体が動かせなくても、手と口を動かすことができれば、笛を吹くことができる。また、防災用品50としての電灯は、夜の暗闇の中で居場所を知らせる上で非常に有用である。また、ラジオがあれば、現在の状況を把握することができる。ゴム風船40は、防災用品50に含めて考えることもできる。
【0037】
このように、救命浮輪にゴム風船40、笛50A、発煙筒50B、電灯(例えば、LED照明付きラジオ50C)を装着することで、被災者が困難な状況でも、周囲に居場所を知らせることができる。
【0038】
発煙筒50Bは、居場所を知らせる道具として実績のある防災用品50である。そして、この発煙筒50Bとしては、リサイクル品を用いることが好ましい。例えば、本実施形態の発煙筒50Bは、自動車に用いられていたものであり、自動車の廃車等に伴って不要となり、通常であれば廃棄される廃棄品である。このように、発煙筒50Bとしてリサイクル品を用いれば、救命浮輪1を低コストで提供することができる。なお、電灯等についても、自動車に付属されていたリサイクル品を用いてもよい。
【0039】
このように、浮輪本体10の外表面を覆う使用済み自動車用エアバッグ20、つかみ索、防災用品50として、自動車のリサイクル品を用いることにより、救命浮輪1を低コストで提供することができる。また、資源の有効利用にも資する。さらに、これらの部材を一か所から調達することも可能となり、部材の調達が容易となる。
【0040】
なお、ゴム風船40、笛50A、発煙筒50B、LED照明付きラジオ50Cといった複数の防災用品50は、収容袋(不図示)にひとまとめにして収容しておくことが好ましい。この場合、収容袋に、膨張前のゴム風船40を多数収容しておくこともできる。収容袋としては、耐水性のものを採用することが好ましく、例えば、ジップロック(登録商標)、ファスナー式のイージージッパー(登録商標)といった耐水性の収容袋を用いることができる。複数の防災用品50を収容した収容袋は、立体ポケット部30に配置することが可能である。これにより、複数の防災用品50がバラバラになることがなく、防災用品50を使用しようとした際の取り扱いが簡便になる。
また、防災用品50を収容した収容袋と、浮輪本体10又は使用済み自動車用エアバッグ20とを紐状体60で連結してもよい。これにより、複数の防災用品50がバラバラになることなく、複数の防災用品50と、浮輪本体10又は使用済み自動車用エアバッグ20とを紐状体60を用いて連結することができる。
なお、収容袋が耐水性を有していれば、収容した防災用品50が水で故障や劣化する可能性を低減することができる。
【0041】
なお、ゴム風船40や防災用品50を立体ポケット部30に収容する必要がないときは、使用済み自動車用エアバッグ20の他面側23(下面側)にも、一面側22(上面側)に設けられた開口部21と同様の開口部(下面側開口部(不図示))を設け、要救護者が救命浮輪1における浮輪本体10の中心穴部11に入れるように構成してもよい。
【0042】
以上説明した本実施形態の救命浮輪1によれば、以下のような効果が奏される。
【0043】
(1)本実施形態の救命浮輪1は、浮輪本体10と、浮輪本体10の外表面を覆う使用済み自動車用エアバッグ20と、を備える。
これにより、災害時にも対応できる低コストの救命浮輪1を提供することができる。
【0044】
(2)本実施形態の救命浮輪1の浮輪本体10は、遊具用浮輪である。
これにより、災害時にも対応できる低コストの救命浮輪1を提供することができる。
【0045】
(3)本実施形態の救命浮輪1の使用済み自動車用エアバッグ20は、自動車用エアバッグとして使用されていた際にガス導入部用として設けられた開口に基づく開口部21を有し、浮輪本体10の外径D1bは、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21の開口径D2aよりも大きく、使用済み自動車用エアバッグ20の内腔径D2bと同等又はそれ以下である。
これにより、使用済み自動車用エアバッグ20内で浮輪本体10を適切に膨張させることができ、かつ、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20が組み合わさった状態を簡便に維持することができる。
【0046】
(4)本実施形態の救命浮輪1の浮輪本体10の外径D1bは使用済み自動車用エアバッグ20の内腔径D2bの70%~110%の大きさであり、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21は、浮輪本体10の最大高さ部よりも常に内径側に位置する。
これにより、より安定的に、浮輪本体10と使用済み自動車用エアバッグ20が組み合わさった状態を維持することができる。
【0047】
(5)本実施形態の救命浮輪1の使用済み自動車用エアバッグ20は、開口部21を有する一面側22と、自動車用エアバッグとして使用されていた際において、展開時に乗員側に面する他面側23と、を有し、浮輪本体10の中心穴部11と、使用済み自動車用エアバッグ20の他面側23により、略つづみ型の立体ポケット部30が形成され、略つづみ型の立体ポケット部30に配置されるゴム風船40と、ゴム風船40と浮輪本体10又は使用済み自動車用エアバッグ20とを連結する紐状体60と、を更に備える。
このように、ゴム風船40と救命浮輪1を組み合わせることにより、水難時において、救出される可能性を顕著に高めることができる。さらに、略つづみ型の立体ポケット部30は、多くの物を収容でき、かつ、救命浮輪1が揺れたとしても、救命浮輪1から備品が飛び出す可能性が少ない。
【0048】
(6)本実施形態の救命浮輪1の使用済み自動車用エアバッグ20は、開口部21を有する一面側22と、自動車用エアバッグとして使用されていた際において、展開時に乗員側に面する他面側23と、を有し、浮輪本体10の中心穴部11と、使用済み自動車用エアバッグ20の他面側23により、略つづみ型の立体ポケット部30が形成され、略つづみ型の立体ポケット部30に配置される防災用品50と、防災用品50と浮輪本体10又は使用済み自動車用エアバッグ20とを連結する紐状体60と、を更に備え、防災用品50は、笛、発煙筒、電灯、ラジオのうち、少なくともいずれか一つを含む。
これにより、被災者が困難な状況でも、周囲に居場所を知らせること等が可能となる。また、略つづみ型の立体ポケット部30は、多くの物を収容でき、かつ、救命浮輪1が揺れたとしても、救命浮輪1から備品が飛び出す可能性が少ない。
【0049】
(7)本実施形態の救命浮輪1の使用済み自動車用エアバッグ20は、開口部21を有する一面側22と、他面側23と、を有し、浮輪本体10の中心穴部11と、使用済み自動車用エアバッグ20の他面側23により、防災用品を収容するための略つづみ型の立体ポケット部30が形成されている。
このように、略つづみ型の立体ポケット部30を形成することにより、防災用品50を収容することができ、かつ、救命浮輪1が揺れたとしても、収容した防災用品50が救命浮輪1から飛び出す可能性が少ない。
【0050】
(8)本実施形態の救命浮輪1は、防災用品を備え、前記防災用品は、自動車のリサイクル品を含む。
これにより、救命浮輪1を低コストで提供することができる。また、資源の有効利用にも資する。さらに、救命浮輪1を構成する部材の調達も容易となる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0052】
本実施形態の救命浮輪1は、浮輪本体10の中心穴部11の位置に対応する位置に開口部21が設けられており、この開口部21に、開閉自在な蓋部25が設けられている。蓋部25として、使用済み自動車用エアバッグを裁断した布を用いることが好ましいが、他の部材を用いてもよい。蓋部25の一部は、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21付近に縫い付けられており、この縫い付けられた部分26の周辺が、蓋部25が開閉する際に折れ曲がり、ヒンジの役割を果たす。そして、蓋部25の下面と、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21周辺の上面部には、それぞれ面ファスナー27が貼り付けられており(蓋部25の下面側の面ファスナーは不図示)、蓋部25の下面の面ファスナーと、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21周辺の上面部の面ファスナー27が接合することにより、蓋部25が閉じている状態を維持することができる。
このような蓋部25を設けることにより、より確実に、救命浮輪1の立体ポケット部30に防災用品50等の備品を収容することが可能となり、救命浮輪1が揺れたとしても、救命浮輪1から防災用品50等の備品が飛び出す可能性が低くなる。
【0053】
なお、蓋部25を使用済み自動車用エアバッグ20に縫い付けることなく、面ファスナーのみによって固定される態様を採用してもよい。すなわち、開閉自在な蓋部25を、着脱自在な蓋部25により構成してもよい。
【0054】
図6は、本実施形態の変形例に係る救命浮輪1の下面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
【0055】
本変形例においては、使用済み自動車用エアバッグ20の他面側23(下面側)にも、一面側22(上面側)に設けられた開口部21と同様の開口部(下面側開口部21B)を設ける態様において、この下面側開口部21Bに、蓋部25と同様の構造の開閉自在な下面側蓋部25Bを設けている。
図6に示すように、下面側蓋部25Bは、縫い付けられた部分26Bで縫い付けられており、下面側蓋部25Bの上面側と、下面側開口部21Bの下面側には、それぞれ面ファスナー27Bが設けられている(下面側蓋部25Bの上面側の面ファスナーは不図示)。この場合は、救命浮輪1の立体ポケット部30に防災用品50を収容したい場合は、下面側蓋部25Bを閉じた状態とする。一方、要救護者が救命浮輪1における浮輪本体10の中心穴部11に入るときには、下面側蓋部25Bを開けた状態とする。
【0056】
以上説明した本実施形態の救命浮輪1によれば、(1)~(8)に加えて、以下のような効果が奏される。
【0057】
(9)本実施形態の救命浮輪1は、使用済み自動車用エアバッグ20が、浮輪本体10の中心穴部11の位置に対応する位置に設けられた開口部21を有し、この開口部21に、開閉自在な蓋部25が設けられている。
これにより、より確実に、救命浮輪1の立体ポケット部30に防災用品50を収容することが可能となる。
(10)本実施形態の救命浮輪1は、使用済み自動車用エアバッグ20の一面側22に設けられた、浮輪本体10の中心穴部11の位置に対応する位置に設けられた開口部21と、使用済み自動車用エアバッグ20の他面側23に設けられた、浮輪本体10の中心穴部11の位置に対応する位置に設けられた下面側開口部21Bを有し、少なくとも下面側開口部21Bに、下面側蓋部25Bが設けられている。
これにより、下面側蓋部25Bを閉じた状態とすることにより、救命浮輪1の立体ポケット部30に防災用品50を収容することができる。また、下面側蓋部25Bを開けた状態とすることにより、要救護者が救命浮輪1における浮輪本体10の中心穴部11に入ることができる。
【0058】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。
図7Aは、第3実施形態に係る救命浮輪の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略することがある。
本実施形態の救命浮輪1は、つかみ索70としての使用済み自動車用シートベルトに、複数の接続索80が着脱自在に接続されている。この接続索80は、つかみ索70と同様、使用済み自動車用シートベルトにより構成されている。
複数の接続索80それぞれの両端には、環状の金具としてのカラビナ81A、81Bが設けられている。接続索80の一端側は、カラビナ81Aによって、つかみ索70としての使用済み自動車用シートベルトに着脱自在に接続されている。接続索80の他端側は、カラビナ81Bによって、共通金具82に着脱自在に接続され、ひとつにまとめられている。
本実施系形態においては、4本のつかみ索70それぞれに、接続索80が接続されている。複数(4本)の接続索80はそれぞれ、1m程度の長さであることが好ましい。
【0059】
このような構成により、要救護者の救助が容易となる。例えば、要救護者が発見されたときに、共通金具82にヘリコプターや大型ドローンから吊り下げられたロープを接続することにより、ヘリコプターや大型ドローンによって、浮輪本体10の中心穴部11に入っている状態の要救護者等を牽引して誘導することもできる。さらに、浮輪本体10~つかみ索70~接続索80の接続強度を十分確保できる構造を採用し、かつ救命浮輪1と要救護者の固定状態を十分確保できる構造を採用すれば、ヘリコプターや大型ドローンによって、可能な範囲内で救命浮輪1を引き上げることもできる。また、共通金具82にボートからのロープを接続し、ボートにより救命浮輪1を牽引することもできる。
【0060】
図7Bは、本実施形態の変形例に係る救命浮輪1の上面側を斜めから見たときの外観を示す斜視図である。
本変形例においては、浮輪本体10の中心穴部11付近に網状部材90が設けられている。網状部材90としては、例えば防風用ネットの網といった、丈夫な網状部材が用いられる。網状部材90の上部は、開口した状態で、浮輪本体10の中心穴部11付近、例えば、使用済み自動車用エアバッグ20の開口部21に固定されている。網状部材90は、使用済み自動車用エアバッグ20の下面側開口部21Bを通過した後、下部において、紐92Cにより縛られて閉じた状態となっている。浮輪本体10の下面部付近(使用済み自動車用エアバッグ20の下面側開口部21B付近)から網状部材90の下部までの距離は、例えば約70cmとすることが好ましいが、これに限らない。
【0061】
網状部材90が、浮輪本体10の中心穴部11付近に強固に固定されている構造を採用すれば、例えば、子供等の要救護者が浮輪本体10の中心穴部11に入っているときに、要救護者が救命浮輪1から不意に脱落するのを防ぐことができる。また、浮輪本体10の中心穴部11に防災用品50を入れる場合は、網状部材90により、防災用品50が救命浮輪1から落ちて紛失するのを防ぐことができる。
【0062】
網状部材90の浮輪本体10の下面部付近(使用済み自動車用エアバッグ20の下面側開口部21B付近)には、第1の紐状部材(不図示)が設けられている。また、浮輪本体10の下面部から距離L1の位置には、第2の紐状部材92Aが設けられている。さらに、そこから距離L2の位置には、第3の紐状部材92Bが設けられている。紐状部材としては、ナイロン等の紐を用いてもよいし、ワイヤー等を用いてもよい。例えば、距離L1を約20cm、距離L2を約20cm、第3の紐状部材92Bから網状部材90の下部までの距離L3を約30cmとして、浮輪本体10の下面部付近から網状部材90の下部までの距離を、約70cmとしてもよい。
【0063】
これらの紐状部材は、
図7Bに示すように、網状部材90の所定の高さ位置(上下方向位置)に、水平断面で見たときの網状部材90に沿って周回するような態様で、網状部材90を縫うようにして設けられている。
よって、これらの紐状部材を引っ張るようにして結ぶことにより、その部分で網状部材90が絞られ、網状部材90を閉じることができる。
例えば、第1の紐状部材を引っ張るようにして結べば、浮輪本体10の下面部付近(使用済み自動車用エアバッグ20の下面側開口部21B付近)で、網状部材90を閉じることができる。この場合、浮輪本体10の中心穴部11に防災用品50を入れたときに、防災用品50を取り出しやすくなる。
例えば、第2の紐状部材92Aを引っ張るようにして結べば、浮輪本体10の下面部付近から約20cm下方で、網状部材90を閉じることができる。例えば、第3の紐状部材92Bを引っ張るようにして結べば、浮輪本体10の下面部付近から約40cm下方で、網状部材90を閉じることができる。このように、用途に応じて、複数の高さ位置の紐状部材のうち、所望の紐状部材を結ぶことにより、より効果的に救命浮輪1を利用することができる。例えば、浮輪本体10の中心穴部11に入れる防災用品50の大きさ等に応じて、第1の紐状部材、第2の紐状部材92A、第3の紐状部材92Bのうち、いずれかの紐状部材を引っ張るようにして結び、その部分で網状部材90を絞って使用してもよい。
また、浮輪本体10の中心穴部11に要救護者が入る場合は、第1~第3の紐状部材を絞らず、
図7Bに示すように、網状部材90の中間部分が開いている状態にしておくことが好ましい。
【0064】
図8は、本実施形態に係る救命浮輪1の接続索80の他の利用方法を示すための図である。
図8に示すように、
図7A、
図7Bに示される複数本(4本)の接続索80を、つかみ索70から外した上で、長尺の1本となるようにカラビナ81A、81Bを連結し、長尺の連結索として用いることも可能である。例えば、約1mの接続索80を4本連結して、約4mの連結索として用いることも可能である。長尺の連結索は、様々な用途で使用することが可能である。
例えば、連結した長尺の連結索の一端側を救命浮輪1のつかみ索70等に連結し、他端側を建築物や木に接続することにより、洪水の現場において、救命浮輪1が流されないように繋ぐこともできる。
【0065】
以上説明した本実施形態の救命浮輪1によれば、(1)~(10)に加えて、以下のような効果が奏される。
【0066】
(11)本実施形態の救命浮輪1は、使用済み自動車用エアバッグ20の一面側22と他面側23のそれぞれに、浮輪本体の中心穴部11の位置に対応する位置に設けられた開口部21、21Bを有し、浮輪本体10の中心穴部11付近に、網状部材90が設けられている。
これにより、例えば浮輪本体10の中心穴部11に防災用品50を入れる場合に、網状部材90により、防災用品50が救命浮輪1から落ちて紛失するのを防ぐことができる。
【0067】
(12)本実施形態の救命浮輪1は、網状部材90の所定の高さ位置に、網状部材90を縫うようにして設けられた紐状部材を備える。
これにより、網状部材90の所定の高さ位置(上下方向位置)で、網状部材90を閉じることができる。よって、用途に応じて、より効果的に救命浮輪1を利用することができる。
【0068】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態に係る救命浮輪キット100を構成する救命浮輪1、エアバッグ用インフレータ110、ガス導入管120の外観を示す斜視図である。
本実施形態においては、救命浮輪1と、エアバッグ用インフレータ110と、ガス導入管120によって、救命浮輪キット100が構成されている。
そして、エアバッグ用インフレータ110は、自動車のエアバッグ用インフレータ(ガス発生器)110のリサイクル品であり、これを用いて、浮輪本体10を膨張させる。
【0069】
より詳細には、エアバッグ用インフレータ110は、自動車に用いられていたものであり、自動車の廃車や、エアバッグの交換修理等に伴って自動車から外され、通常であれば廃棄される廃棄品である。このエアバッグ用インフレータ110は、火薬と、火薬を収容するガス発生容器を備える。
本実施形態においては、このようなエアバッグ用インフレータ110を、浮輪本体10を膨張させるためのガス発生器としてリサイクルして利用する。
【0070】
エアバッグ用インフレータ110と浮輪本体10の間は、ガス導入管120により連結される。また、ガス導入管120に圧力調整手段しての減圧弁130等を設けて、エアバッグ用インフレータ110から浮輪本体10に導入されるガスの圧力を調整してもよい。エアバッグ用インフレータ110は、火薬等により非常に高い瞬時圧力を発生させることがあるが、圧力調整手段を設けることにより、浮輪本体10に急激に高い圧力がかかることを防ぐことができる。
【0071】
ここで、ガス導入管120のガス吐出部140は、浮輪本体10のガス導入部(不図示)と接続可能に構成されており、ガス導入時においては、ガス吐出部140と、浮輪本体10のガス導入部とが接続される。
【0072】
なお、災害時の被災者は、自力で息を吹き込むことにより浮輪本体10を膨張させることが困難である場合がある。また、手動ポンプを用いて浮輪本体10を膨張させることも困難である場合がある。しかしながら、リサイクル品である自動車のエアバッグ用インフレータ110を再利用することにより、このような場合でも、浮輪本体10を膨張させて、救命浮輪1を形成することが可能となる。
【0073】
このように、本実施形態によれば、浮輪本体10と、浮輪本体10の外表面を覆う使用済み自動車用エアバッグ20と、自動車のエアバッグ用インフレータ110とを備える、救命浮輪キット100を提供することができる。ここで、使用済み自動車用エアバッグ20と、自動車のエアバッグ用インフレータ110はリサイクル品であるため、低コストで救命浮輪キット100を提供することができる。
【0074】
なお、リサイクル品である自動車のエアバッグ用インフレータ110は、他のガス導入式救命用具のガス導入器として用いることもできる。例えば、ガス導入式救命用具として、ガス導入式の救命胴衣(不図示)がある場合は、エアバッグ用インフレータ110を、ガス導入式の救命胴衣のガス導入器として用いることもできる。この場合においても、エアバッグ用インフレータ110とガス導入式の救命胴衣の間は、ガス導入管120により連結することが好ましい。また、ガス導入管に圧力調整手段しての減圧弁130等を設けることが好ましい。
但し、エアバッグ用インフレータ110は必須の構成ではなく、救命浮輪キット100は、エアバッグ用インフレータ110に替えて、手動ポンプを備えていてもよい。
【0075】
以上説明した本実施形態の救命浮輪1によれば、(1)~(12)に加えて、以下のような効果が奏される。
【0076】
(13)本実施形態の救命浮輪キット100は、救命浮輪1を構成する浮輪本体10および使用済み自動車用エアバッグ20と、自動車のエアバッグ用インフレータ110のリサイクル品と、エアバッグ用インフレータ110と浮輪本体10の間を連結するガス導入管120と、を備える。
これにより、被災者が自力で息を吹き込むこと等が困難な場合であっても、浮輪本体10を膨張させて、救命浮輪1を形成することができる救命浮輪キット100を提供することが可能となる。
【0077】
以上の実施形態の救命浮輪1によれば、台風や高潮等による河川の氾濫、洪水等の災害時においても、身の安全確保を図ることが可能となり、さらに、居場所を知らせることができる。また、市販の遊具用浮輪とリサイクル品を用いて構成することができるため、安価であり、各家庭への普及も期待できる。そして、丈夫な材質である使用済み自動車用エアバッグを用いているため、強度および耐久性も有する。よって、災害時において多くの人命を救うことにもつながる。
【0078】
以上、本発明の救命浮輪の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 救命浮輪
10 浮輪本体
20 使用済み自動車用エアバッグ
21 開口部
21B 下面側開口部
22 一面側(上面側)
23 他面側(下面側)
25 蓋部
25B 下面側蓋部
30 立体ポケット部
40 ゴム風船
50 防災用品
50A 笛
50B 発煙筒
50C LED照明付きラジオ
60 紐状体
70 つかみ索(使用済み自動車用シートベルト)
80 接続索(使用済み自動車用シートベルト)
90 網状部材
92A 第2の紐状部材
92B 第3の紐状部材
100 救命浮輪キット
110 自動車のエアバッグ用インフレータのリサイクル品
120 ガス導入管