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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】放香装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/02 20060101AFI20240115BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240115BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A45D34/02 510D
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020021582
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126227
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】509282767
【氏名又は名称】スマートチップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 博喜
(74)【代理人】
【識別番号】100211281
【弁理士】
【氏名又は名称】大木下 香織
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢一
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-501834(JP,A)
【文献】特表2018-527973(JP,A)
【文献】国際公開第2019/025007(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131808(WO,A1)
【文献】特開平01-186423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/02
B65D 83/00
B65D 85/00
A61L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の芳香剤を芳香剤ごとに区分して収容する複数のチャンバを備えているとともに、芳香剤の種別に対応する識別記号がチャンバ毎に付されたカートリッジと、前記識別記号の読取装置と、当該読取装置で読み取った情報が与えられる制御装置と、当該制御装置に与えられた前記情報に基づいて選択される特定のチャンバを所定の放香許容位置に位置させるように前記カートリッジを駆動する駆動装置と、前記放香許容位置にあるチャンバ内芳香剤の香りを送り出す送風装置と、少なくとも前記カートリッジを収容するとともに、前記カートリッジを収容した状態で放香許容位置にあるチャンバのみを送風装置による空気の流路に臨ませるように形成されたケースとを含み、
前記カートリッジは有底の容器本体と、この容器本体の開口部を閉塞する蓋体とを備え、
前記チャンバは、前記容器本体の底壁と、当該底壁の外周に位置するとともに放香用の穴が形成された周壁と、容器本体の中央部から放射方向に向けられた複数の仕切壁とにより形成され、
前記カートリッジは前記周壁の一部が相対するように一対配置とされ、これらカートリッジの相対する周壁部分が前記放香許容位置に停止するように設けられ、前記送風装置の送風口が、カートリッジ間に空気が通るように向けられて送風することで、放香許容位置にあるチャンバ内の香りが前記放香用の穴を通じて拾われて前記ケース外に放出可能とした放香装置。
【請求項2】
前記ケースは、前記カートリッジ、読取装置、駆動装置及び送風装置を収容し、当該ケースは、ヘッドマウントディスプレイの下部に着脱可能に設けられているとともに、前記送風装置から吹き出される空気が、前記ヘッドマウントディスプレイの装着者の鼻先近傍に向けられるように構成されている、請求項1記載の放香装置。
【請求項3】
前記ケースは、前記カートリッジ、読取装置、駆動装置及び送風装置を収容し、当該ケースは、電子機器に関連付けて設置可能に設けられている、請求項1記載の放香装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放香装置に係り、更に詳しくは、複数種の芳香剤若しくは香料が収容されたカートリッジから、放香の対象とする芳香剤を選択若しくは特定して放香を行うことができる放香装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジに複数種の芳香剤を個別的に収容し、所定のプログラム等に基づいて特定の芳香剤による放香を行うことができる放香装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この放香装置は、芳香剤を種別ごとに収容する芳香剤収容部を備えたカートリッジと、当該カートリッジが着脱可能に設けられた携帯可能な放香発生器とにより構成されている。
前記カートリッジには、香りを放出する複数の送風溝が芳香剤ごとに設けられている一方、放香発生器側には、カートリッジ側の送風溝に連なる複数の送風溝と、これら送風溝に対応して空気を選択的に供給する複数のブロア等からなる送風装置が設けられ、放香を行うべき芳香剤が選択若しくは特定されたときに、これに対応するブロアが動作して放香溝に空気の流れがもたらされ、それによって前記選択された芳香剤の放香が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5563021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の放香装置にあっては、カートリッジを放香発生器に差し込んで固定的に保持する構成であり、また、送風装置からカートリッジに至る送風溝が芳香剤ごとに個別的に設けられた構成であるため、空気の流路構造が複雑化してしまう、という不都合がある。
また、芳香剤の種別を増加させる場合には、カートリッジの香料収納部のみならず、放香発生器の送風溝もそれに応じて増加する構成となるため、携帯可能な放香装置として利用可能とする場合には、芳香剤の種別数を増加させることに限界があり、製造上の制約が伴う、という不都合がある。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、放香を行う送風時の空気の流路を複数設ける必要性をなくして構造の簡易化を図ることのできる放香装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、カートリッジにおける芳香剤の種別を増加させる制約を緩和させることで、香りの多様性に富んだ放香を行うことができる放香装置を提供することにある。
更に、本発明の目的は、例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等の小型ディスプレイ、或いは、卓上ゲーム機、大型ディスプレイやモニター等の各種電子機器類に装着、接続もしくは関連付けた設置を可能とし、これら機器による映像等の内容に対応した香りを放出することで臨場感を付与することのできる放香装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものである。具体的には、複数種の芳香剤を芳香剤ごとに区分して収容する複数のチャンバを備えているとともに、芳香剤の種別に対応する識別記号がチャンバ毎に付されたカートリッジと、前記識別記号の読取装置と、当該読取装置で読み取った情報が与えられる制御装置と、当該制御装置に与えられた前記情報に基づいて選択される特定のチャンバを所定の放香許容位置に位置させるように前記カートリッジを駆動する駆動装置と、前記放香許容位置にあるチャンバ内芳香剤の香りを送り出す送風装置と、少なくとも前記カートリッジを収容するとともに、前記カートリッジを収容した状態で放香許容位置にあるチャンバのみを送風装置による空気の流路に臨ませるように形成されたケースとを含み、
前記カートリッジは有底の容器本体と、この容器本体の開口部を閉塞する蓋体とを備え、
前記チャンバは、前記容器本体の底壁と、当該底壁の外周に位置するとともに放香用の穴が形成された周壁と、容器本体の中央部から放射方向に向けられた複数の仕切壁とにより形成され、
前記カートリッジは前記周壁の一部が相対するように一対配置とされ、これらカートリッジの相対する周壁部分が前記放香許容位置に停止するように設けられ、前記送風装置の送風口が、カートリッジ間に空気が通るように向けられて送風することで、放香許容位置にあるチャンバ内の香りが前記放香用の穴を通じて拾われて前記ケース外に放出可能とする、という構成を採っている。
【0010】
なお、前記ケースは、前記カートリッジ、読取装置、駆動装置及び送風装置を収容し、当該ケースは、ヘッドマウントディスプレイの下部に着脱可能に設けられているとともに、前記送風装置から吹き出される空気が、前記ヘッドマウントディスプレイ装着者の鼻先近傍に向けられるように構成することができる。
【0011】
また、前記ケースは、前記カートリッジ、読取装置、駆動装置及び送風装置を収容し、当該ケースは、電子機器に関連付けて設置可能に設けられる、という構成も採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動装置を介してカートリッジが駆動可能に設けられ、当該カートリッジにおける何れかのチャンバを所定の放香許容位置に停止したときに、当該チャンバの外側又は内側に送風装置からの空気が通過する構成であるから、放香させようとする芳香剤を収容したチャンバを放香許容位置にセットすれば足りることとなる。すなわち、芳香剤ごとに対応する空気の流路を多数形成する必要性はなく、チャンバの位置だけを変えるように構成するだけで、選択された芳香剤による放香を行うことができる。なお、芳香剤の種別を示す識別記号をカートリッジに付し、この識別記号を読取装置で読み取るように構成しているため、この読取装置の識別情報に基づいて駆動装置の駆動量を設定しておくことでチャンバを放香許容位置に難なく停止させることができる。
また、チャンバを形成する周壁に放香用の穴を形成した構成では、例えば、カートリッジを一対配置としてそれぞれのカートリッジのチャンバを放香許容位置で向き合うように位置させることが可能となる一方、放香許容位置における相対するチャンバ間に送風装置からの空気を通過させるように構成することができ、相対するチャンバ内の香りが同じであれば強い香りを放香させることができるし、相対するチャンバ内の香りが異なれば香りの混合も可能となり、香りの多様性を増すことができる。
た、ヘッドマウントディスプレイに放香装置を装着して装着者の鼻先近傍に空気が吹き出されるように構成した場合には、少ない香気でも効果的な香りを付与できるとともに、映像シーン等に対応した香りを放香させることができ、香りによる臨場感を付与することができる。
更に、電子機器類、例えば、ゲーム機、大型ディスプレイ、モニター等に関連付けて当該芳香装置を大型にして設置した場合には、当該機器類における映像シーン等に応じた香りを離れた距離でも感じることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における放香装置がヘッドマウントディスプレイに装着された状態を示す概略側面図。
図2】前記放香装置の一部断面正面図。
図3】前記放香装置の内部を示す概略平面図。
図4図3の正面図。
図5図3の右側面図。
図6】底蓋を開放した状態を示す図3の底面図。
図7】前記放香装置の一部を破断した概略斜視図。
図8】第1実施形態におけるカートリッジの蓋体の一部を破断した平面図。
図9図8のA-A線に沿うカートリッジの断面図。
図10】芳香許容位置にあるカートリッジに対して空気の流れを示す説明図。
図11】第2実施形態に係る放香装置の概略平面図。
図12図11の放香装置の一部を断面した概略正面図。
図13】第2実施形態におけるカートリッジの一部を破断した概略平面図。
図14図13のB-B線矢視断面図。
図15図14のP部拡大図。
図16】カートリッジの変形例を示す一部破断平面図。
図17図16のC-C線に沿う拡大断面図。
図18】カートリッジの更に他の変形例を示す断面図。
図19図18のQ部拡大図。
図20】カートリッジの他の変形例を示す平面図。
図21図20のE-E線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、特に明示しない限り、上下、左右等の位置若しくは方向を示す用語は、図7に示される放香装置10を矢印D方向に向って見た場合を基準とし、矢印Dの反対方向を「前」、矢印Dの奥行方向を「後」として説明する。これらの位置を示す用語は、発明の内容を理解し易くするための便宜上のものに過ぎず、放香装置10における構成部材若しくは装置各部のレイアウトや、形状を特定するものではない。
【0015】
図1には、第1実施形態に係る放香装置10の使用状態が示され、当該放香装置10は、ヘッドマウントディスプレイHMDの下部に装着されて使用することができるように構成されている。
【0016】
前記放香装置10は、図2に示されるように、ケース11と、当該ケース11内に配置されるとともに、複数種の芳香剤ARを収容する複数のチャンバ12を有するカートリッジ13と、当該カートリッジ13に付された芳香剤の識別記号M(図7図10参照)を読み取る読取装置15と、カートリッジ13を平面内で回転する方向に駆動する駆動装置17と、芳香剤(香料)ARの香りをケース11の外部、具体的には、ヘッドマウントディスプレイHMDの装着者の鼻先近傍に送り出す送風装置18と、これら各装置に電気的に接続されて所定の制御を行う制御装置19と、図示しないバッテリー等の電源装置とを備えて構成されている。ここで、前記カートリッジ13はケース11内で左右一対の関係で位置するように配置されており、前記読取装置15及び駆動装置17は、図3ないし図7にも示されるように、各カートリッジ13の上部側にそれぞれ左右対称的に配置され、左右の駆動装置17間に前記送風装置18及び制御装置19が配置されるようになっている。
【0017】
前記ケース11は、図7に示されるように、横長の略直方体形状に設けられた外観形状に設けられている。具体的には、平面形状が略方形の輪郭を有する底板21と、当該底板21の左右両端部からそれぞれ上方に向けられた左右一対の側板22と、底板21の前後両端部からそれぞれ上方に向けられた前板23及び後板24と、これら各板22~24の上端間を閉塞するように配置されるとともに、図示しない両面テープ若しくは面ファスナー等の接着手段を介してヘッドマウントディスプレイHMDの下面側に着脱自在に設けられる上板25と、底板21の下面側に配置された底蓋板26と、底板21の上方で前記読取装置15等を支持する支持板27とにより構成されている。
【0018】
前記底板21の左右二箇所には、カートリッジ13を出し入れするための略円形の穴28(図6参照)がそれぞれ形成されているとともに、当該穴28の形成縁から上方に向かって起立壁29が連設され、当該起立壁29の内側領域にカートリッジ収容部30が形成されている。このカートリッジ収容部30において、左右一対の起立壁29の相対する部分は、一つのチャンバ12(図8図9参照)の周壁部分の円周方向長さに略対応する幅の切欠部29A(図3図6参照)として形成されており、当該切欠部29Aによってカートリッジ13の放香許容位置が特定されるようになっている。具体的には、放香許容位置は、切欠部29Aにカートリッジ13における一つのチャンバ12の周壁部分が丁度臨んだ位置となる(図10参照)。
前記底板21に形成された穴28は、後板24の下端にヒンジ連結された底蓋板26によって閉塞可能に設けられ、これにより、カートリッジ13をカートリッジ収容部30に収容した状態で、カートリッジ13を下面側から支持できるようになっている。
また、前記底板21と底蓋板26の前端中央部は、図1に示されるように、放香装置10がヘッドマウントディスプレイHMDに装着されたときに、装着者の鼻との干渉を避けるように切り欠いた凹部34として形成されている。
【0019】
前記ケース11において、支持板27には、読取装置15の下部に設けられたレンズ15Aをカートリッジ13に臨ませる透孔27Aが形成されているとともに、駆動装置17の出力軸17Aを挿通させるための挿通穴27Bが形成されている。
【0020】
前記カートリッジ13は、図8図10に示されるように、適宜な樹脂材料を用いて成形された有底の容器本体36と、この容器本体36の開口部すなわち上端を閉塞する蓋体37とを備え、前記チャンバ12は、前記容器本体36の底壁39及び当該底壁39の外周に位置する周壁40と、容器本体36の中央部から放射方向に向けられた複数の仕切壁41とにより形成されている。仕切壁41は、本実施形態では、周方向に30度間隔を隔てて設けられており、これにより、周方向に12種類の芳香剤ARがチャンバ12に収容可能とされている。なお、仕切壁の間隔は30度間隔に限定されず、もっと狭い角度でも、広い角度でも構わない。
容器本体36の中央部は、各仕切壁41の内方端に連なる軸受部42とされ、当該軸受部42の中央部には、駆動装置17の出力軸17Aが挿入可能に設けられて当該出力軸17Aと共にスプライン構造を構成して相対回転不能とする貫通穴42Aが形成されている。
また、前記カートリッジ13の周壁40には放香用の穴40Aが形成され、これらの穴40Aを通じて放香許容位置にあるチャンバ12内の芳香剤ARの香りが放香される。この放香用の穴40Aは、カートリッジ13の使用前において、図示しない帯状の封止材が巻装されて自然蒸散放香が阻止されるように保たれ、使用に際して、封止材を除去するようになっている。
【0021】
前記蓋体37は、ガスバリア性を有するフイルム、金属膜等を用いることができ、接着等の手段を介して前記周壁40、仕切壁41及び軸受部42に貼付されている。この蓋体37には、その上面の周方向に沿って、芳香剤ARの種別を示す識別記号Mが印刷やラベル貼付等によって付されている。また、蓋体37の中央部には、前記軸受部42に設けられた貫通穴42Aに対応する穴37Aが形成されている。
【0022】
前記読取装置15は、下面側に設けられたレンズ15Aを介して前記識別記号Mを読み取り、読み取った情報、すなわち、芳香剤ARの種別を制御装置19に与え、その情報に基づいて制御装置19が駆動装置17に駆動信号を出力するように構成されている。なお、識別記号としてはバーコードやQRコード(登録商標)等が例示できる。
【0023】
前記駆動装置17は、本実施形態ではステッピングモータにより構成されている。この駆動装置17の出力軸17Aは正逆回転可能であり、前述したように、支持板27の挿通穴27Bを通ってカートリッジ13の蓋体37及び軸受部42に形成された穴37A及び貫通穴42Aに挿通され、出力軸17Aは、制御装置19の駆動信号に応じて所定角度ごと、本実施形態では30度ごとに回転することで、カートリッジ13の何れか一つのチャンバ12を放香許容位置に停止(位置決め)できるようになっている。
【0024】
前記送風装置18は、特に限定されるものではないが、例えば、内部にダイヤフラムを備え、当該ダイヤフラムを往復運動させて空気の吸入、吐出を行うエアポンプ等からなるブロアを用いて構成されている。この送風装置18は、上下二段に配置されて連動可能に設けられたタイプであり、下段の送風装置18には、送風口を構成する送風管43が接続され、当該送風管43から空気を吐出可能となっている。また、送風装置18を動作させる数に応じて吐出空気量の強弱調整が可能とされ、従って、本実施形態の場合、弱風とする場合には、下段の送風装置18だけを動作させる一方、強風とする場合に上下2台の送風装置18を同時に動作させるようになっている。
送風装置18において、前記送風管43は、図5等に示されるように斜め下前方(左方)に向けられ、その空気の流れは、図10に示されるように、左右一対のカートリッジ13間を通り、ケース11の底板21及び底蓋板26の中央部に設けられた凹部34に抜けるように構成されている。
【0025】
前記制御装置19は、ヘッドマウントディスプレイHMD側との信号の送受信機能を備えているとともに、前述した装置各部を制御する制御信号を出力可能とされている。この制御装置19は、例えば、読取装置15によって読み取られた識別記号Mに対応するチャンバ12の現在位置を特定してこれを記憶する機能と、現在位置に基づいて駆動装置17の駆動方向と駆動量を決定したり、ヘッドマウントディスプレイHMDから送られた信号に基づいて、駆動装置17を駆動させ、カートリッジの蓋体37に付されている識別記号Mを読み取って駆動装置17の駆動量を決め、求められている香りのチャンバを起立壁29の切欠部29Aの位置に停止させる機能を有する。
【0026】
次に、前記第1実施形態における放香作用について説明する。
【0027】
各カートリッジ13には、それぞれ12種の芳香剤ARが収容されており、それらカートリッジ13の周壁40に巻装されている図示しない帯状の封止材を除去した後、当該カートリッジ13をカートリッジ収容部30内にそれぞれ配置し、底蓋板26でケース11の底部を閉塞する。
【0028】
次いで、ケース11の上板25に設けられた図示しない両面テープ若しくは面ファスナー等の手段を介して放香装置10をヘッドマウントディスプレイHMDの下部に装着し、使用前準備を完了させることができる。
【0029】
例えば、ヘッドマウントディスプレイHMD側の映像シーンに対応して特定の芳香剤ARによる放香を開始すべき信号を制御装置19の送受信部で受信したときに、制御装置19が駆動装置17に駆動信号を出力して左右一対のカートリッジ13をそれぞれ回転させるとともに、各読取装置15に対して、前記特定の芳香剤ARに対応する識別記号Mを検出させる。そして、読取装置15により特定の芳香剤ARがそれぞれ検出されたときに、当該芳香剤ARを収容したチャンバ12が放香許容位置に停止するまで制御装置19が左右の駆動装置17をそれぞれ所定角度ごとに制御する。
【0030】
このようにして特定の芳香剤ARを収容したチャンバ12がそれぞれ放香許容位置に停止したときに、制御装置19が送風装置18に駆動信号を出力し、送風管43から空気の吐出を開始させ、これにより、空気が左右のカートリッジ13間を一つの流路として通過してヘッドマウントディスプレイHMD装着者の鼻先近傍に流れると同時に、放香許容位置に停止している特定のチャンバの芳香剤ARの香りが装着者に与えられる。なお、送風の強弱が必要となるときは、これに応じて制御装置19が上下二つの送風装置18を選択的若しくは合一的に制御して調整することとなる。
【0031】
以後、前記映像シーン等の内容、進行状況に応じて、他の芳香剤ARによる放香を行うべき信号が制御装置19で受信されるごとに、同様の動作を繰り返すこととなる。
【0032】
なお、放香装置10の動作を停止する場合には、次のように行うことができる。
すなわち、カートリッジ13の数あるチャンバ12の一つに芳香剤ARが入ってないチャンバ12を予め設けておき、そのチャンバ12の蓋体37に、中身が空である旨の識別符号Mが付されていて、ヘッドマウントディスプレイHMDから制御装置19に「停止」の信号が送られた場合、或いは、図示しない電源をOFFにした場合に、駆動装置17が起動してカートリッジ13が回転し、読取装置15がその識別記号Mを読み取って芳香剤ARが入ってない空のチャンバ12を切欠部29Aの位置に停止させる。
【0033】
従って、このような第1実施形態によれば、送風装置18から吐出する空気の流路が、カートリッジ13間において単一すなわち一つの流路となり、複数の空気流路を形成する必要を排して簡易な構成とすることができる。
また、左右一対の配置となるように二つのカートリッジ13を設けているので、同一の芳香剤ARによる強い放香を実現できるとともに、異なる芳香剤ARをブレンドして放香する制御も可能となり、香りの多様性を飛躍的に高めることもできる。
更に、放香装置10がヘッドマウントディスプレイHMDに着脱自在に設けられているから、放香装置10にカートリッジ13を出し入れする際に、当該放香装置10をヘッドマウントディスプレイHMDから取り外して行うことができ、取扱性を良好なものとすることができる。
【0034】
次に、本発明の参考例としての第2実施形態について、図11~15を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、必要に応じて同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。

【0035】
この第2実施形態における放香装置10は、ゲーム機、大型のディスプレイ或いはモニター等の電子機器に関連付けて設置されるもので、略円筒状のケース51と、このケース51内の上段側支持板52の上方空間をカートリッジ収容部53として収容されるカートリッジ54(図13図15参照)と、当該カートリッジ54の底面側に付された識別記号Mを読み取る読取装置15と、カートリッジ54を平面内で回転駆動する駆動装置17と、芳香剤ARの香りをケース11の外部に送り出す送風装置18と、これら各装置に電気的に接続されて所定の制御を行う制御装置19と、図示しないバッテリー等の電源装置とを備えて構成されている。前記読取装置15、駆動装置17及び送風装置18は、ケース51内の下段側支持板55に支持され、前記制御装置19は、下段側支持板55とケース51の底板57との間に配置されている。
【0036】
前記上段側支持板52には、読取装置15のレンズ15Aをカートリッジ収容部53に臨ませる透孔52Aが形成されているとともに、駆動装置17の出力軸17Aの挿通穴52Bが中央部に形成され、更に、送風装置18の送風管43をカートリッジ収容部53に臨ませる穴52Cが形成されている。
【0037】
前記ケース51は、上端に蓋板58を備えており、当該蓋板58には、前記上段側支持板52に設けられた穴52Cと同一軸線上に放香用の穴58Aが形成されている。
【0038】
前記カートリッジ54は、図13図15に示されるように、周壁62に向かって周方向所定間隔ごとに延びる仕切壁59により形成された複数のチャンバ60を備えた有底の容器本体61と、この容器本体61の上端及び底壁63の下面に剥離可能にそれぞれ貼付された蓋体として作用するシール片66、67とを備えて構成されている。
各チャンバ60の領域内において、容器本体61の底壁63中央部には、図15に示されるように、上下に貫通する円筒状の送風筒65が設けられ、当該送風筒65には、径方向に多数の穴65Aが形成されている。これにより、チャンバ60の下方に位置する送風装置18の送風管43から上方に向かう空気の流れが送風筒65内を通過するときに、穴65Aを通じて芳香剤ARの香りが拾われ、送風筒65の上端から外部に放出可能となる。ここにおいて、前記送風筒65及び蓋板58の穴58Aにより、送風路が形成されることとなる。
なお、前記シール片66、67は、カートリッジ54を使用する際に剥離することで、前記送風筒65の上下両端を開通させることとなり、この状態でケース51のカートリッジ収容部53にカートリッジ54が収容され、このとき、中央部の貫通穴42Aに駆動装置17の出力軸17Aが挿通されて回転可能となっている。
【0039】
第2実施形態において、芳香剤ARの放香は、放香許容位置にあるチャンバ60内の送風筒65を空気の流路として行われる点で実質的には第1実施形態と同様であるが、前記第1実施形態では、カートリッジ13の外周側から放香が行われるのに対し、第2実施形態では、カートリッジ54のチャンバ60内を通って上方に向かって放香が行われる点で異なっている。また、ディスプレイ等の映像シーンに対応して特定の芳香剤ARが選択されて放香が行われる点は第1実施形態と同様である。
第2実施形態における放香許容位置は、前記ケース51の蓋板58における穴58Aの下であり、当該穴58Aと略同一軸線上に送風筒65の中心が位置するところとなる。
【0040】
従って、このような第2実施形態によれば、大型ディスプレイ等の電子機器に関連付けた設置型として利用できるため、放香装置10の大きさについての制約はなく、第1実施形態のものよりも大型タイプとして提供することが可能になる、という効果を付加できる。
【0041】
なお、前記第2実施形態におけるカートリッジ54は、図16図17に示される構造を備えたカートリッジ54に変更することができる。このカートリッジ54は、仕切壁59間に2つの周方向仕切体70を設けて径方向2箇所に分散したチャンバ60を形成し、これらチャンバ60内の芳香剤ARの香りが周方向仕切体70の面内に設けられた多数の穴70Aを通じて周方向仕切体70間に流れるように設けられている。容器本体61の底壁63には穴63Aが設けられており、その下方から送風装置18の空気が周方向仕切体70間に供給されることで放香が行えるようになっている。その他の構成は第2実施形態におけるカートリッジ54と実質的に同様である。
【0042】
また、図18図19に示されるカートリッジ54を適用することもできる。このカートリッジ54は、容器本体61の上下各面に、蓋体として作用するシール片72、73を設け、これらシール片72、73の面内において、チャンバ60の対応領域に多数の穴72A、73Aを設けたところに特徴を有する。その他の構成は、図13に示したカートリッジ54と同様である。
なお、この変形例においては、シール片72、73には、それぞれ封止片75、76が剥離可能に貼付されるようになっており、使用に際してこれら封止片75、76が剥離される。
【0043】
更に、図20図21に示されるカートリッジ54の適用も可能である。このカートリッジ54は、底壁63の外周側周方向に所定間隔を隔てて筒体80を設けて各筒体内をチャンバ81とし、チャンバ81の底壁63側に穴63Aを設ける一方、チャンバ81の上端側に貼付されたリング状のシール片からなる蓋体82に、前記穴63Aと同一軸線上に位置する穴82Aを設けたところに特徴を有する。前記穴63Aは剥離可能なシール片84の貼付により封止されている一方、前記蓋体82には、リング状のシール片85が剥離可能に貼付されている。このカートリッジ54は、使用に際してシール片84、85を剥離して用いられる。
【0044】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0045】
例えば、前記第1実施形態では、カートリッジ13を左右一対の配置として構成した場合を図示、説明したが、カートリッジ13を一つとし、これに対応して読取装置15、駆動装置17をそれぞれ一つに減じてもよい。これによれば、放香装置10の小型化、軽量化を達成ることができる。また、第1実施形態においても、図13以下に示したカートリッジを適用することが可能である。この場合には、送風装置18からの空気流路の位置を変更すれば足りる。
更に、前記実施形態では、カートリッジ13、54が略水平な姿勢で配置された場合を図示、説明したが、カートリッジ13、54及びその他の装置を縦方向若しくは傾斜方向に配置してもよい。要するに、本発明は、送風装置18から空気が流されたときに、その流れによって芳香剤の香気が拾われて放香を行うことができるものであれば足りる。
また、チャンバ12、60の数は図示構成例に限定されるものではなく、カートリッジ13、54の大きさに応じて増加、減少させることができる。
【0046】
また、前記送風装置18はブロアに限定されず、小型のファンやポンプであってもよく、送風を行う機能を持っていればその他のものも採用できる。但し、前記実施形態で示したタイプのエアポンプからなるブロアであれば、小型化を図りつつ一定の風量を得ることができる点で有利となる。
【0047】
更に、前記制御装置19による制御は、例示的に示したものであり、放香装置10が適用される対象に応じて種々の動作を設定することができる。
【0048】
また、前記ケースは少なくともカートリッジを収容し、その他の装置を外付けすることを妨げない。要するに本発明は、放香を許容する位置にカートリッジのチャンバが位置したときに、当該チャンバに対して一つの空気流路を経て放香を実現できるものであれば足りる。
【符号の説明】
【0049】
10 放香装置
11、51 ケース
12、60、81 チャンバ
13 カートリッジ
15 読取装置
17 駆動装置
18 送風装置
36、61 容器本体
37 蓋体
39 底壁
40 周壁
41 仕切壁
40 穴
43 送風管(送風口)
65 送風筒
58A 穴
AR 芳香剤
M 識別記号
HMD ヘッドマウントディスプレイ
図1
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