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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】流路切換弁および流路切換システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20240115BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
F16K31/122
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020071514
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167646
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098968(JP,A)
【文献】特開平10-122396(JP,A)
【文献】特開2014-211181(JP,A)
【文献】特開2001-173812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/074
F16K 31/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が塞がれた円筒状の本体ケースと、
前記本体ケースの他端を塞ぐように配置された弁座と、
前記弁座に設けられた複数のポートの接続を切り換える回転弁体と、
前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されたベースピストンと、
前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記ベースピストンより前記他端側に配置された、前記ベースピストンより小径の駆動用ピストンと、
前記駆動用ピストンの前記軸方向の移動に応じて前記回転弁体を回転させる動力伝達機構と、を有する流路切換弁であって、
前記本体ケースは、前記ベースピストンおよび前記駆動用ピストンによって区画された、前記一端側から前記他端側に向かって順に並ぶ第1ピストン室と、第2ピストン室と、第3ピストン室と、を有し、
前記ベースピストンは、第1ベース位置と、前記第1ベース位置より前記他端側にある第2ベース位置と、の間を移動可能であり、
前記駆動用ピストンは、前記第1ベース位置にある前記ベースピストンと接する第1停止位置と、前記第2ベース位置にある前記ベースピストンと接する第2停止位置と、前記第2停止位置より前記他端側にある第3停止位置と、の間を移動可能であり、
前記ベースピストンおよび前記駆動用ピストンは、前記第1ピストン室、前記第2ピストン室および前記第3ピストン室の流体圧力に応じて前記軸方向に移動されることを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
前記回転弁体における前記弁座に接する面は、平面視円弧形状または平面視扇形状に形成され、
前記回転弁体における前記弁座に接する面には、前記複数のポートを接続可能な平面視円弧形状の凹部である流体通路と、前記流体通路の端部に連なり、前記ポートを通過する際に当該ポートを塞ぐシール部と、が設けられている、請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流路切換弁と、ベースピストン制御弁と、駆動用ピストン制御弁と、を有する流路切換システムであって、
前記ベースピストン制御弁は、
前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの低圧の流体が流れる低圧ポートとを接続する第1ベース位置用接続状態と、
前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの高圧の流体が流れる高圧ポートとを接続する第2ベース位置用接続状態と、を切り換え、
前記駆動用ピストン制御弁は、
前記第2ピストン室と前記低圧ポートとを接続しかつ前記第3ピストン室と前記高圧ポートとを接続する接触位置用接続状態と、
前記第2ピストン室と前記高圧ポートとを接続しかつ前記第3ピストン室と前記低圧ポートとを接続する分離位置用接続状態と、を切り換えることを特徴とする流路切換システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を用いて流路を切り換える流路切換弁およびその流路切換弁を有する流路切換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流路切換弁の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の流路切換弁は、主弁内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用したアクチュエータを有している。このアクチュエータは、作動室と、作動室に収容された運動変換機構と、を有している。運動変換機構は、有底円筒状の受圧移動体と、受圧移動体の内側に配置された回転駆動体と、を有している。受圧移動体は、作動室内の流体圧力に応じて軸方向に移動する。回転駆動体は、受圧移動体の軸方向の移動に伴って軸周りに回転される。流路切換弁は、回転駆動体の回転を利用して主弁体を回転させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-89902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の流路切換弁は、作動室内の流体圧力に応じて受圧移動体が2つの停止位置の間を移動するものである。そのため、主弁体についても2つの回転位置の間を移動するものであった。これにより、流路切換弁の流路接続パターンは2つとなる。そして、より多くの流路接続パターンを提供可能な流路切換弁が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、流体圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供可能な流路切換弁および流路切換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る流路切換弁は、一端が塞がれた円筒状の本体ケースと、前記本体ケースの他端を塞ぐように配置された弁座と、前記弁座に設けられた複数のポートの接続を切り換える回転弁体と、前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されたベースピストンと、前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記ベースピストンより前記他端側に配置された、前記ベースピストンより小径の駆動用ピストンと、前記駆動用ピストンの前記軸方向の移動に応じて前記回転弁体を回転させる動力伝達機構と、を有する流路切換弁であって、前記本体ケースは、前記ベースピストンおよび前記駆動用ピストンによって区画された、前記一端側から前記他端側に向かって順に並ぶ第1ピストン室と、第2ピストン室と、第3ピストン室と、を有し、前記ベースピストンは、第1ベース位置と、前記第1ベース位置より前記他端側にある第2ベース位置と、の間を移動可能であり、前記駆動用ピストンは、前記第1ベース位置にある前記ベースピストンと接する第1停止位置と、前記第2ベース位置にある前記ベースピストンと接する第2停止位置と、前記第2停止位置より前記他端側にある第3停止位置と、の間を移動可能であり、前記ベースピストンおよび前記駆動用ピストンは、前記第1ピストン室、前記第2ピストン室および前記第3ピストン室の流体圧力に応じて前記軸方向に移動されることを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記回転弁体における前記弁座に接する面は、平面視円弧形状または平面視扇形状に形成され、前記回転弁体における前記弁座に接する面には、前記複数のポートを接続可能な平面視円弧形状の凹部である流体通路と、前記流体通路の端部に連なり、前記ポートを通過する際に当該ポートを塞ぐシール部と、が設けられていることが好ましい。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る流路切換システムは、上記流路切換弁と、ベースピストン制御弁と、駆動用ピストン制御弁と、を有する流路切換システムであって、前記ベースピストン制御弁は、前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの低圧の流体が流れる低圧ポートとを接続する第1ベース位置用接続状態と、前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの高圧の流体が流れる高圧ポートとを接続する第2ベース位置用接続状態と、を切り換え、前記駆動用ピストン制御弁は、前記第2ピストン室と前記低圧ポートとを接続しかつ前記第3ピストン室と前記高圧ポートとを接続する接触位置用接続状態と、前記第2ピストン室と前記高圧ポートとを接続しかつ前記第3ピストン室と前記低圧ポートとを接続する分離位置用接続状態と、を切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る流路切換弁では、ベースピストンは、第1ベース位置と、第1ベース位置より本体ケースの他端側にある第2ベース位置と、の間を移動可能である。駆動用ピストンは、第1ベース位置にあるベースピストンと接する第1停止位置と、第2ベース位置にあるベースピストンと接する第2停止位置と、第2停止位置より本体ケースの他端側にある第3停止位置と、の間を移動可能である。ベースピストンおよび駆動用ピストンは、第1ピストン室、第2ピストン室および第3ピストン室の流体圧力に応じて本体ケースの軸方向に移動される。このようにしたことから、第1ピストン室、第2ピストン室および第3ピストン室の流体圧力を切り換えることにより、ベースピストンが第1ベース位置および第2ベース位置に位置づけられ、駆動用ピストンが、ベースピストンに接する第1停止位置および第2停止位置と、ベースピストンから離れる第3停止位置と、に位置づけられる。そのため、回転弁体が、駆動用ピストンの軸方向の移動に応じて回転されて、第1停止位置、第2停止位置および第3停止位置に対応する3つの回転位置に位置づけられる。したがって、流体圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例に係る流路切換システムを示す図である。
図2図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である(駆動用ピストンが第1停止位置にある状態)。
図3図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である(駆動用ピストンが第2停止位置にある状態)。
図4図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である(駆動用ピストンが第3停止位置にある状態)。
図5】流路切換弁の弁体が複数のポートの接続を切り換える様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る流路切換システムについて、図1図5を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る流路切換システムを示す図である。図1では、流路切換弁、ベースピストン制御弁および駆動用ピストン制御弁を断面図で示している。図1では、流路切換弁、ベースピストン制御弁および駆動用ピストン制御弁の接続関係を二点鎖線で模式的に示している。図2図4は、図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である。図2図4は、駆動用ピストンが第1停止位置、第2停止位置、第3停止位置にある状態を示している。図5は、流路切換弁の弁体が複数のポートの接続を切り換える様子を示す断面図である。図5(a)は、駆動用ピストンが第1停止位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(b)は、駆動用ピストンが第1停止位置と第2停止位置との間の位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(c)は、駆動用ピストンが第2停止位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(d)は、駆動用ピストンが第2停止位置と第3停止位置との間の位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(e)は、駆動用ピストンが第3停止位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図1図4において、破線は紙面手前側にある高圧導管を示している。図1において、二点鎖線は、細管S1~S3、T1~T4を示している。
【0013】
本実施例の流路切換システムは、例えば、ヒートポンプ式冷暖房システムにおいて、流体としての冷媒の流路を切り換えるために用いられる。
【0014】
図1に示すように、流路切換システム1は、流路切換弁5と、ベースピストン制御弁80と、駆動用ピストン制御弁90と、を有している。
【0015】
流路切換弁5は、本体ケース10と、弁座30と、回転弁体40と、ベースピストン50と、駆動用ピストン60と、動力伝達機構70と、を有している。
【0016】
本体ケース10は、略円筒状に形成されている。本体ケース10は、一端10a側から他端10b側に向かって順に並ぶベースピストン収容部11と、駆動用ピストン収容部12と、弁体収容部13と、を有している。ベースピストン収容部11と、駆動用ピストン収容部12と、弁体収容部13と、は軸線L方向に連なっている。本体ケース10の一端10aは、円板状の壁部14によって塞がれている。本体ケース10の他端10bは、円板状の壁部15によって塞がれている。
【0017】
ベースピストン収容部11の内径は、駆動用ピストン収容部12の内径より大きい。本体ケース10の内側には、一端10a側を向く円環状平面であるストッパ面16が設けられている。ストッパ面16は、ベースピストン収容部11と駆動用ピストン収容部12との間に配置されている。本体ケース10の内側には、円環板状の隔壁17が設けられている。隔壁17は、駆動用ピストン収容部12と弁体収容部13とを仕切るように配置されている。駆動用ピストン収容部12の内側には、筒状の軸受18が配置されている。軸受18は、隔壁17の内縁に連設されている。軸受18は、軸線Lと直交する方向の断面形状の外周が多角形状(例えば、正六角形状)で、内周が円形状となるように形成されている。軸受18の一端10a側の端面は、ストッパ面19となる。
【0018】
ベースピストン収容部11の内側には、ベースピストン50が軸線L方向に移動可能に配置される。駆動用ピストン収容部12の内側には、駆動用ピストン60が軸線L方向に移動可能に配置される。本体ケース10は、ベースピストン50および駆動用ピストン60によって区画された第1ピストン室21と、第2ピストン室22と、第3ピストン室23と、を有している。第1ピストン室21と、第2ピストン室22と、第3ピストン室23と、は一端10a側から他端10b側に向かって順に並んでいる。また、第3ピストン室23と、弁体収容部13の内側の弁室24とは、隔壁17によって区画されている。
【0019】
弁座30は、円板状に形成されている。弁座30の外径は、弁体収容部13の内径と同一である。弁座30は、本体ケース10の内側に他端10bを塞ぐように配置されている。
【0020】
弁座30は、高圧ポートpAと、第1入出ポートpB1と、第2入出ポートpB2と、低圧ポートpCと、を有している。第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとは、同一の大きさの円形状に形成されている。第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとは、それぞれの中心が同一の円E1(図5(a)に示す)上に90度間隔で配置されている。高圧ポートpAは、第1入出ポートpB1より小さい円形状に形成されている。高圧ポートpAの中心は、円E2(図5(a)に示す)上に配置されている。円E2は、第1入出ポートpB1の中心が配置される円E1より小さい径でかつ円E1と同心円である。高圧ポートpAの中心は、第1入出ポートpB1の中心および低圧ポートpCの中心から90度ずれた位置に配置されている。軸線Lは、円E1、E2の中心を通る。
【0021】
高圧ポートpAは、高圧導管Aを通じて図示しない圧縮機の吐出口に接続される。第1入出ポートpB1は、第1入出導管B1を通じて図示しない第1熱交換器に接続される。第2入出ポートpB2は、第2入出導管B2を通じて図示しない第2熱交換器に接続される。低圧ポートpCは、低圧導管Cを通じて図示しない図示しない圧縮機の吸入口に接続される。
【0022】
回転弁体40は、略円柱状に形成されている。回転弁体40は、弁室24に配置されている。回転弁体40は、軸線L周りに回転可能である。回転弁体40は、摺動面41を有している。摺動面41は、弁座30の弁座面31に接する面である。摺動面41は、円E1に沿う平面視円弧形状(略C字状)に形成されている。摺動面41には、流体通路42と、第1シール部43および第2シール部44と、が設けられている。摺動面41は、平面視扇形状でもよい。回転弁体40は、軸線L周りに回転することにより、弁座30に設けられた複数のポートの接続を切り換える。
【0023】
流体通路42は、円E1に沿う平面視円弧形状の凹部である。流体通路42は、弁室24と区画されている。流体通路42は、第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続可能に形成されている。回転弁体40の回転位置に応じて、流体通路42は、図5(a)に示すように第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する(第1回転位置RP1)。または、流体通路42は、図5(c)に示すように第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する(第2回転位置RP2)。または、流体通路42は、図5(e)に示すように第1入出ポートpB1と低圧ポートpCとを接続する(第3回転位置RP3)。
【0024】
第1シール部43は、摺動面41における流体通路42の一方の端部に連なる部分である。第1シール部43は、第1入出ポートpB1を通過する際に当該第1入出ポートpB1を塞ぐように形成されている。第1シール部43は、第2入出ポートpB2を通過する際に当該第2入出ポートpB2を塞ぐようにも形成されている。
【0025】
第2シール部44は、摺動面41における流体通路42の他方の端部に連なる部分である。第2シール部44は、第1入出ポートpB1を通過する際に当該第1入出ポートpB1を塞ぐように形成されている。
【0026】
なお、本実施例では、第1シール部43が、所定位置において第1入出ポートpB1および第2入出ポートpB2を完全に塞ぐようにしている。これ以外にも、第1シール部43が、若干のバイパス流量(第1入出ポートpB1または第2入出ポートpB2を介して弁室24と流体通路42との間を流れる冷媒の流量)を確保するように、第1入出ポートpB1および第2入出ポートpB2を少しの隙間を残して塞ぐようにしてもよい。第2シール部44についても同様である。
【0027】
高圧ポートpAは、常に弁室24に開口している。弁室24には高圧の冷媒が流れる。低圧ポートpCは、常に流体通路42に開口している。流体通路42には低圧の冷媒が流れる。第1入出ポートpB1および第2入出ポートpB2は、回転弁体40の回転位置に応じて、弁室24または流体通路42に開口する。
【0028】
ベースピストン50は、2つの部材(樹脂部材50a、50b)を組み合わせることにより略円柱状となるように構成されている。樹脂部材50aに雄ねじが設けられている。樹脂部材50bに雌ねじが設けられている。樹脂部材50aと樹脂部材50bとはねじ締め付けで組み立てられている。樹脂部材50a、50bの間に形成された溝に封止部材であるOリング51が保持されている。ベースピストン50の外径は、ベースピストン収容部11の内径と同一または当該内径より若干小さい。ベースピストン50とベースピストン収容部11との間には、Oリング51が配置されている。
【0029】
ベースピストン50は、第1ベース位置BP1と、第2ベース位置BP2と、の間を移動可能である。第1ベース位置BP1は、図2に示すように、ベースピストン50が壁部14に接する位置である。第2ベース位置BP2は、図3図4に示すように、ベースピストン50が本体ケース10のストッパ面16に接する位置である。第2ベース位置BP2は、第1ベース位置BP1より他端10b側にある。
【0030】
駆動用ピストン60は、2つの部材(樹脂部材60a、60b)を組み合わせることにより略円柱状となるように構成されている。樹脂部材60aに雄ねじが設けられている。樹脂部材60bに雌ねじが設けられている。樹脂部材60a、60bは、ねじ締め付けで組み立てられている。樹脂部材60a、60bの間に形成された溝に封止部材であるOリング61が保持されている。なお、Oリング51、61に代えて、他の種類の封止部材を用いてもよい。駆動用ピストン60は、ベースピストン50より小径である。駆動用ピストン60の外径は、駆動用ピストン収容部12の内径と同一または当該内径より若干小さい。駆動用ピストン60と駆動用ピストン収容部12との間には、Oリング61が配置されている。Oリング61による封止箇所の径は、上記Oリング51による封止箇所の径より小さい。駆動用ピストン60の他端10b側の端面には、ガイド穴62が設けられている。ガイド穴62は、軸線Lと直交する方向の断面形状が多角形状(例えば、正六角形状)である。ガイド穴62には軸受18が嵌合される。軸受18は、ガイド穴62の内側において軸線L方向に相対移動可能である。駆動用ピストン60は、軸受18によって軸線L周りの回転が規制される。駆動用ピストン60の内部には、雌ねじ面63が設けられている。
【0031】
駆動用ピストン60は、第1停止位置SP1と、第2停止位置SP2と、第3停止位置SP3と、の間を移動可能である。第1停止位置SP1は、図2に示すように、駆動用ピストン60が第1ベース位置BP1にあるベースピストン50に接する位置である。第2停止位置SP2は、図3に示すように、駆動用ピストン60が第2ベース位置BP2にあるベースピストン50に接する位置である。第3停止位置SP3は、図4に示すように、駆動用ピストン60がベースピストン50から離れ、軸受18のストッパ面19に接する位置である。第3停止位置SP3は、第2停止位置SP2より他端10b側にある。
【0032】
動力伝達機構70は、回転駆動軸71と、弁軸75と、を有している。回転駆動軸71は、略円柱状に形成されている。回転駆動軸71の外周面には、雄ねじ面73が設けられている。回転駆動軸71は、雄ねじ面73が駆動用ピストン60の雌ねじ面63に接するように配置されている。雄ねじ面73と雌ねじ面63とは螺合している。駆動用ピストン60が軸線L方向に移動すると、雌ねじ面63と雄ねじ面73とのねじ送り作用によって回転駆動軸71が軸線L周りに回転される。弁軸75は、略円柱状に形成されている。弁軸75は、軸受18に挿通されている。弁軸75は、軸受18によって軸線L周りに回転可能に支持されている。弁軸75と軸受18との間には、封止部材であるOリング76が配置されている。なお、Oリング76に代えて、他の種類の封止部材を用いてもよい。弁軸75は、回転弁体40に同軸となるように取り付けられている。弁軸75と回転弁体40との間に、回転弁体40に対して弁座30に押し付ける力を加えるコイルばね77が配置されている。弁軸75の一端10a側の端部は、回転駆動軸71に取り付けられている。弁軸75は、回転駆動軸71とともに回転される。弁軸75が回転されると回転弁体40も回転される。動力伝達機構70は、回転駆動軸71と弁軸75との間に複数の歯車からなる減速機構を有していてもよい。
【0033】
本体ケース10、弁座30、回転弁体40、ベースピストン50、駆動用ピストン60、回転駆動軸71および弁軸75のそれぞれの軸は、軸線Lと一致する。すなわち、これらは全て同軸に配置されている。
【0034】
ベースピストン制御弁80は、コイル81と、コイル81が発生する磁界に応じて移動するプランジャー82と、プランジャー82に連結された弁体83と、を有する電磁弁である。弁体83は、弁座84上に配置されている。弁座84は、第1ポート85と、第2ポート86と、を有している。第1ポート85は、細管S1を通じて低圧導管Cに接続されている。第2ポート86は、細管S2を通じて第1ピストン室21に接続されている。ベースピストン制御弁80は、細管S3を通じて高圧導管Aに接続された弁室88を有している。
【0035】
コイル81に通電しない状態(ベースピストン制御弁80:オフ)で、弁体83は、第1ポート85と第2ポート86とを接続する位置に移動される。ベースピストン制御弁80は、第1ピストン室21と低圧導管Cとを接続する第1ベース位置用接続状態となる。第1ベース位置用接続状態では、ベースピストン50が一端10a側に移動して第1ベース位置BP1に位置づけられる。
【0036】
コイル81に通電した状態(ベースピストン制御弁80:オン)で、弁体83は、第1ポート85のみ覆う位置に移動され、第2ポート86が弁室88に開口する。ベースピストン制御弁80は、第1ピストン室21と高圧導管Aとを接続する第2ベース位置用接続状態となる。第2ベース位置用接続状態では、ベースピストン50が他端10b側に移動して第2ベース位置に位置づけられる。
【0037】
駆動用ピストン制御弁90は、コイル91と、コイル91が発生する磁界に応じて移動するプランジャー92と、プランジャー92に連結された弁体93と、を有する電磁弁である。弁体93は、弁座94上に配置されている。弁座94は、第1ポート95と、第2ポート96と、第3ポート97と、を有している。第1ポート95は、細管T1を通じて第3ピストン室23に接続されている。第2ポート96は、細管T2を通じて低圧導管Cに接続されている。第3ポート97は、細管T3を通じて第2ピストン室22に接続されている。駆動用ピストン制御弁90は、細管T4を通じて高圧導管Aに接続された弁室98を有している。
【0038】
弁体93は、コイル91に通電しない状態(駆動用ピストン制御弁90:オフ)で、第2ポート96と第3ポート97とを接続する位置に移動され、第1ポート95が弁室98に開口する。駆動用ピストン制御弁90は、第2ピストン室22と低圧導管C(低圧ポートpC)とを接続しかつ第3ピストン室23と高圧導管A(高圧ポートpA)とを接続する接触位置用接続状態となる。接触位置用接続状態では、駆動用ピストン60が一端10a側に移動して、駆動用ピストン60がベースピストン50に接する。駆動用ピストン60は、ベースピストン50の位置に応じて、第1停止位置SP1または第2停止位置SP2に位置づけられる。
【0039】
弁体93は、コイル91に通電した状態(駆動用ピストン制御弁90:オン)で、第1ポート95と第2ポート96とを接続する位置に移動され、第3ポート97が弁室98に開口する。駆動用ピストン制御弁90は、第2ピストン室22と高圧導管A(高圧ポートpA)とを接続しかつ第3ピストン室23と低圧導管C(低圧ポートpC)とを接続する分離位置用接続状態となる。分離位置用接続状態では、駆動用ピストン60が他端10b側に移動して、駆動用ピストン60がベースピストン50から離れる。駆動用ピストン60は、第3停止位置SP3に位置づけられる。
【0040】
流路切換システム1の動作の一例について、図2図5を参照して説明する。図5(a)~(e)は、弁座面31(図1のX-X線で示す箇所)に沿う断面図である。図5(a)~(e)において、摺動面41をハッチングで模式的に示している。
【0041】
流路切換システム1では、高圧導管Aに圧縮機の吐出口から吐出された高圧の冷媒が流れる。低圧導管Cに圧縮機の吸入口に向かう低圧の冷媒が流れる。流路切換システム1は、以下の3つの流路接続パターンを提供する。
【0042】
パターン1:第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する。
パターン2:高圧ポートpAと第1入出ポートpB1とを接続し、第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する。
パターン3:高圧ポートpAと第2入出ポートpB2とを接続し、第1入出ポートpB1と低圧ポートpCとを接続する。
【0043】
(パターン1)
ベースピストン制御弁80をオフにする。駆動用ピストン制御弁90をオフにする。ベースピストン制御弁80によって、第1ピストン室21と低圧導管Cとが接続される。駆動用ピストン制御弁90によって、第2ピストン室22と低圧導管Cとが接続される。駆動用ピストン制御弁90によって、第3ピストン室23と高圧導管Aとが接続される。これにより、第1ピストン室21に低圧の冷媒が導入される。第2ピストン室22に低圧の冷媒が導入される。第3ピストン室23に高圧の冷媒が導入される。
【0044】
第1ピストン室21の冷媒と第2ピストン室の冷媒とが同一圧力のため、冷媒圧力によるベースピストン50を移動させる力が生じない。第2ピストン室22の冷媒と第3ピストン室23の冷媒との差圧によって、駆動用ピストン60を一端10a側に移動させる力F1が生じる。駆動用ピストン60は、一端10a側に移動してベースピストン50に接する。ベースピストン50は、駆動用ピストン60に押されて一端10a側に移動し、壁部14に突き当たる。これにより、図2に示すように、ベースピストン50が第1ベース位置BP1に位置づけられ、駆動用ピストン60が第1停止位置SP1に位置づけられる。そして、駆動用ピストン60の移動に応じて、回転弁体40が図5(a)に示す第1回転位置RP1に位置づけられる。図5(a)に示す状態において、第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとが流体通路42によって接続される。高圧ポートpAは、第1入出ポートpB1、第2入出ポートpB2および低圧ポートpCのいずれにも接続されない。
【0045】
(パターン2)
図5(a)に示す状態において、ベースピストン制御弁80をオンにする。駆動用ピストン制御弁90をオフにする。ベースピストン制御弁80によって、第1ピストン室21と高圧導管Aとが接続される。駆動用ピストン制御弁90によって、第2ピストン室22と低圧導管Cとが接続される。駆動用ピストン制御弁90によって、第3ピストン室23と高圧導管Aとが接続される。これにより、第1ピストン室21に高圧の冷媒が導入される。第2ピストン室22に低圧の冷媒が導入される。第3ピストン室23に高圧の冷媒が導入される。
【0046】
第1ピストン室21の冷媒と第2ピストン室の冷媒との差圧によって、ベースピストン50を他端10b側に移動させる力F2が生じる。第2ピストン室22の冷媒と第3ピストン室23の冷媒との差圧によって、駆動用ピストン60を一端10a側に移動させる力F1が生じる。駆動用ピストン60の外径はベースピストン50の外径より小さい。そのため、力F1は力F2より小さい。ベースピストン50は、他端10b側に移動し、ストッパ面16に突き当たる。駆動用ピストン60は、ベースピストン50に押されて他端10b側に移動する。これにより、図3に示すように、ベースピストン50が第2ベース位置BP2に位置づけられ、駆動用ピストン60が第2停止位置SP2に位置づけられる。そして、駆動用ピストン60の移動に応じて、回転弁体40が図5(a)に示す第1回転位置RP1から、図5(b)に示す回転位置を経由して、図5(c)に示す第2回転位置RP2に位置づけられる。図5(c)に示す状態において、高圧ポートpAと第1入出ポートpB1とが弁室24によって接続される。第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとが流体通路42によって接続される。
【0047】
回転弁体40が第1回転位置RP1から第2回転位置RP2に移動する途中で、図5(b)に示すように、第1入出ポートpB1は、流体通路42から外れて第1シール部43に塞がれる。そして、回転弁体40が第2回転位置RP2に移動すると、第1入出ポートpB1は弁室24に開口する。これにより、回転弁体40が第1回転位置RP1から第2回転位置RP2に移動する途中で、第1入出ポートpB1を通じて、流体通路42と弁室24とが接続されることがない。そのため、弁室24内にある高圧の冷媒が低圧側へ移動することを抑制できる。
【0048】
(パターン3)
図5(c)に示す状態において、ベースピストン制御弁80をオンにする。駆動用ピストン制御弁90をオンにする。ベースピストン制御弁80によって、第1ピストン室21と高圧導管Aとが接続される。駆動用ピストン制御弁90によって、第2ピストン室22と高圧導管Aとが接続される。駆動用ピストン制御弁90によって、第3ピストン室23と低圧導管Cとが接続される。これにより、第1ピストン室21に高圧の冷媒が導入される。第2ピストン室22に高圧の冷媒が導入される。第3ピストン室23に低圧の冷媒が導入される。
【0049】
第1ピストン室21の冷媒と第2ピストン室の冷媒とが同一圧力のため、冷媒圧力によるベースピストン50を移動させる力が生じない。第2ピストン室22の冷媒と第3ピストン室23の冷媒との差圧によって、駆動用ピストン60を他端10b側に移動させる力F3が生じる。駆動用ピストン60は、他端10b側に移動してストッパ面19に突き当たる。これにより、図4に示すように、ベースピストン50が第2ベース位置BP2に位置づけられ、駆動用ピストン60が第3停止位置SP3に位置づけられる。そして、駆動用ピストン60の移動に応じて、回転弁体40が図5(c)に示す第2回転位置RP2から、図5(d)に示す回転位置を経由して、図5(e)に示す第3回転位置RP3に位置づけられる。図5(e)に示す状態において、高圧ポートpAと第2入出ポートpB2とが弁室24によって接続される。第1入出ポートpB1と低圧ポートpCとが流体通路42によって接続される。
【0050】
回転弁体40が第2回転位置RP2から第3回転位置RP3に移動する途中で、図5(d)に示すように、第1入出ポートpB1は、弁室24から外れて第2シール部44に塞がれる。第2入出ポートpB2は、流体通路42から外れて第1シール部43に塞がれる。そして、回転弁体40が第3回転位置RP3に移動すると、第1入出ポートpB1は流体通路42に開口する。第2入出ポートpB2は弁室24に開口する。これにより、回転弁体40が第2回転位置RP2から第3回転位置RP3に移動する途中で、第1入出ポートpB1および第2入出ポートpB2を通じて、流体通路42と弁室24とが接続されることがない。そのため、弁室24内にある高圧の冷媒が低圧側へ移動することを抑制できる。
【0051】
以上より、本実施例の流路切換システム1の流路切換弁5は、ベースピストン50が、第1ベース位置BP1と、第1ベース位置BP1より他端10b側にある第2ベース位置BP2と、の間を移動可能である。駆動用ピストン60は、第1ベース位置BP1にあるベースピストン50と接する第1停止位置SP1と、第2ベース位置BP2にあるベースピストン50と接する第2停止位置SP2と、第2停止位置SP2より他端10b側にある第3停止位置SP3と、の間を移動可能である。ベースピストン50および駆動用ピストン60が、第1ピストン室21、第2ピストン室22および第3ピストン室23の冷媒圧力に応じて軸線L方向に移動される。このようにしたことから、第1ピストン室21、第2ピストン室22および第3ピストン室23の冷媒圧力を切り換えることにより、ベースピストン50が第1ベース位置BP1および第2ベース位置BP2に位置づけられ、駆動用ピストン60が、ベースピストン50に接する第1停止位置SP1および第2停止位置SP2と、ベースピストン50から離れる第3停止位置SP3と、に位置づけられる。そのため、回転弁体40が、駆動用ピストン60の軸線L方向の移動に応じて回転されて、第1停止位置SP1、第2停止位置SP2および第3停止位置SP3に対応する第1回転位置RP1、第2回転位置RP2および第3回転位置RP3に位置づけられる。したがって、冷媒圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供できる。
【0052】
また、回転弁体40の摺動面41は、平面視円弧形状に形成されている。摺動面41には、流体通路42と、第1シール部43と、第2シール部44と、が設けられている。流体通路42は、第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続可能な平面視円弧形状の凹部である。第1シール部43は、流体通路42の一方の端部に連なる摺動面41の一部分である。第1シール部43は、第1入出ポートpB1を通過する際に当該第1入出ポートpB1を塞ぐように形成されている。第1シール部43は、第2入出ポートpB2を通過する際に当該第2入出ポートpB2を塞ぐようにも形成されている。第2シール部44は、流体通路42の他方の端部に連なる摺動面41の一部分である。第2シール部44は、第1入出ポートpB1を通過する際に当該第1入出ポートpB1を塞ぐように形成されている。このようにしたことから、回転弁体40を回転させて流路を切り換える際に、第1入出ポートpB1および第2入出ポートを通じて、流体通路42と弁室24とが接続されることがない。そのため、弁室24内にある高圧の冷媒が低圧側へ移動することを抑制できる。
【0053】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…流路切換システム、5…流路切換弁、10…本体ケース、10a…一端、10b…他端、11…ベースピストン収容部、12…駆動用ピストン収容部、13…弁体収容部、14、15…壁部、16…ストッパ面、17…隔壁、18…軸受、19…ストッパ面、21…第1ピストン室、22…第2ピストン室、23…第3ピストン室、24…弁室、30…弁座、31…弁座面、40…回転弁体、41…摺動面、42…流体通路、43…第1シール部、44…第2シール部、50…ベースピストン、50a、50b…樹脂部材、51…Oリング、60…駆動用ピストン、60a、60b…樹脂部材、61…Oリング、62…ガイド穴、63…雌ねじ面、70…動力伝達機構、71…回転駆動軸、73…雄ねじ面、75…弁軸、76…Oリング、77…コイルばね、80…ベースピストン制御弁、81…コイル、82…プランジャー、83…弁体、84…弁座、85…第1ポート、86…第2ポート、88…弁室、90…駆動用ピストン制御弁、91…コイル、92…プランジャー、93…弁体、94…弁座、95…第1ポート、96…第2ポート、97…第3ポート、98…弁室、pA…高圧ポート、pB1…第1入出ポート、pB2…第2入出ポート、pC…低圧ポート、A…高圧導管、B1…第1入出導管、B2…第2入出導管、C…低圧導管、S1~S3…細管、T1~T4…細管

図1
図2
図3
図4
図5