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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】建築限界確認治具
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240115BHJP
   G01B 3/14 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G01B5/00 Z
G01B3/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020133208
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029745
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501111142
【氏名又は名称】株式会社タチバナ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一馬
(72)【発明者】
【氏名】久保田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】辻本 慶介
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002777(JP,A)
【文献】実公昭47-018697(JP,Y1)
【文献】実公昭48-000108(JP,Y1)
【文献】特開2001-304860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
G01B 3/00- 3/08
G01B 3/11- 3/56
G01B 21/00-21/32
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1水平梁部材、第2水平梁部材、長手方向に伸縮可能な支柱部材、伸縮ベルト部材、及びベース部材を備え、
前記支柱部材の上端部分において、前記支柱部材の長手方向に対して略直角に交わる前記第1水平梁部材が設けられており、
前記第1水平梁部材の下側において、前記支柱部材の長手方向に対して略直角に交わる前記第2水平梁部材が、前記第1水平梁部材との間の距離を変更可能に前記支柱部材に設けられており、
前記第1水平梁部材の一端部から、該第1水平梁部材の一端部と同じ側にある前記第2水平梁部材の一端部にわたって、前記伸縮ベルト部材が設けられており、
前記第2水平梁部材は、前記第2水平梁部材の一端部から前記支柱部材の接続部までの長さを変更可能に構成されており、
前記支柱部材を支持する前記ベース部材が、該支柱部材の下端部分に設けられている建築限界確認治具。
【請求項2】
前記支柱部材を垂直に維持するための姿勢維持機構と、前記支柱部材が垂直であることを確認するための姿勢確認機構とを備える請求項1に記載の建築限界確認治具。
【請求項3】
前記ベース部材のベース角度を調節する角度調節機構を備える請求項1又は2に記載の建築限界確認治具。
【請求項4】
所定の高さに設けられる基準点から前記第1水平梁部材までの距離、及び該基準点から前記第2水平梁部材の一端部までの距離を測定する距離測定機構を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の建築限界確認治具。
【請求項5】
前記距離測定機構が、前記基準点から対象物までの距離をも測定可能に構成される請求項4に記載の建築限界確認治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や車道における建築限界内に構造物が設置されていないかどうかを確認するための建築限界確認治具に関する。
【背景技術】
【0002】
列車や自動車等の車両の走行に支障をきたさないようにするため、線路や道路等において電柱、信号、樹木等の構造物の設置が許されない空間範囲を規定する寸法上の限度として、建築限界が法律で定められている。
【0003】
車道に関する建築限界としては、例えば、図13に示すように、道路構造令第12条の第1図(1)に規定されるものが知られている。この図では、車道に接続して路肩を設ける道路の車道における、歩道又は自転車道等を有しないトンネル又は長さ50メートル以上の橋若しくは高架の道路の車道の場合の建築限界が示されている。尚、図13中のHは建築限界の高さを示しており、a及びeは、車道に接続する路肩の幅員であり、bは、Hから所定の値を減じた値となる。
【0004】
一方、建築限界を確認する方法としては、建築限界に支障していそうな構造物に対して、道路面及び構造物の壁面からの離隔を高所作業車と巻き尺又はレーザー距離計を用いて測量し、図面に落とし込んで限界支障を判断するという方法が一般的に知られている。また近年では、レーザー測定器により測定部の断面をスキャンして建築限界支障物の有無を確認する場合もある。
【0005】
しかしながら、上述のいずれの方法も測量後に確認するプロセスが必要であり、建築限界に支障しているか否かを、現場で一目見て把握できるのではないために使い勝手が良くない。
【0006】
そこで、建築限界を現場で直感的に判断することを可能にする建築限界確認治具が発案されている。従来の建築限界確認治具としては、例えば図14の建築限界確認治具10に示すように、金属製の複数のフレームを現場で組み立てて使用するものがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】道路構造令、第12条の第1図(1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の建築限界確認治具は、部品点数が多く、その組み立てに多くの手間を要すると共に、その設置作業にもユニッククレーンなどの装置や多くの人手を必要とする。
【0009】
また、従来の建築限界確認治具が測定できる建築限界は、基本的には一種類の建築限界のみであり、別のタイプの建築限界を測定する場合は、寸法違いのフレームを別途付け替える必要があり、汎用性に乏しい。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、組み立てや設置の際の作業性が良く、なお且つより多くの種類の建築限界を確認可能な汎用性の高い建築限界確認治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る建築限界確認治具の特徴は、第1水平梁部材、第2水平梁部材、長手方向に伸縮可能な支柱部材、伸縮ベルト部材、及びベース部材を備え、
前記支柱部材の上端部分において、前記支柱部材の長手方向に対して略直角に交わる前記第1水平梁部材が設けられており、
前記第1水平梁部材の下側において、前記支柱部材の長手方向に対して略直角に交わる前記第2水平梁部材が、前記第1水平梁部材との間の距離を変更可能に前記支柱部材に設けられており、
前記第1水平梁部材の一端部から、該第1水平梁部材の一端部と同じ側にある前記第2水平梁部材の一端部にわたって、前記伸縮ベルト部材が設けられており、
前記第2水平梁部材は、前記第2水平梁部材の一端部から前記支柱部材の接続部までの長さを変更可能に構成されており、
前記支柱部材を支持する前記ベース部材が、該支柱部材の下端部分に設けられている点にある。
【0012】
本発明に係る建築限界確認治具は、部品点数が従来の建築限界確認治具よりも少なく、構成もシンプルであるため、その組み立てに多くの手間や人手を必要とせず、少数の作業員で設置することができる。また、支柱部材が伸縮可能であるため、これを短くすることで治具そのものをコンパクトにすることができる。さらに、支柱部材の長さを調節することによって治具の高さを変更することができることに加えて、第2水平梁部材の一端部から支柱部材の接続部までの長さと、第1水平梁部材と第2水平梁部材との間の距離とを変更することによって、伸縮ベルト部材の斜辺角度と長さを変更することができる。このため、種々の建築限界に対応することが可能であり、それらの建築限界を一目見て把握できるように再現することができる。
【0013】
本発明に係る建築限界確認治具においては、前記支柱部材を垂直に維持するための姿勢維持機構と、前記支柱部材が垂直であることを確認するための姿勢確認機構とを備えると好適である。
【0014】
本構成によれば、支柱部材を垂直姿勢に保持して、さらに支柱部材が垂直であることを確認することができるため、建築限界をより正確に再現することができる。
ことができる。
【0015】
本発明に係る建築限界確認治具においては、前記ベース部材のベース角度を調節する角度調節機構を備えると好適である。
【0016】
本構成によれば、ベース部材のベース角度を道路勾配に合わせて変更することが可能となり、種々の建築限界に対応することができる。
【0017】
本発明に係る建築限界確認治具においては、所定の高さに設けられる基準点から前記第1水平梁部材までの距離、及び該基準点から前記第2水平梁部材の一端部までの距離を測定する距離測定機構を備えると好適である。
【0018】
本構成によれば、本発明に係る建築限界確認治具の正確な高さと幅を算出することが可能であり、建築限界をきちんと再現できているかどうかを確認することができる。
【0019】
本発明に係る建築限界確認治具においては、前記距離測定機構が、前記基準点から対象物までの距離をも測定可能に構成されると好適である。
【0020】
本構成によれば、本発明に係る建築限界確認治具(建築限界)と対象物との「離れ寸法」を導き出すことができるため、例えば作業者が、梯子などを使用して、建築限界確認治具(建築限界)と対象物との離間具合を確認する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る建築限界確認治具をトンネルに適用した場合の概略構成図である。
図2】本発明に係る建築限界確認治具の概略構成図である。
図3】第1水平梁部材の高さ限界表示プレートにおける平面図(a)及び側面図(b)である。
図4】支柱部材の角パイプ同士の接続部分における横断面図(a)及び縦断面図(b)である。
図5】第2水平梁部材の接続部材における平面図(a)及び側面図(b)である。
図6】第2水平梁部材の幅限界表示プレートにおける平面図(a)及び側面図(b)である。
図7】ベース部材の側面図である。
図8】第2水平梁部材の横方向及び/又は縦方向の位置を調節することによって、伸縮ベルト部材のベルトの長さと斜辺角度が変わる様子を示す側面図である。
図9】第2水平梁部材の横方向及び/又は縦方向の位置を調節することによって、伸縮ベルト部材のベルトの長さと斜辺角度が変わる様子を示す側面図である。
図10】第2水平梁部材の横方向及び/又は縦方向の位置を調節することによって、伸縮ベルト部材のベルトの長さと斜辺角度が変わる様子を示す側面図である。
図11】第2水平梁部材の横方向及び/又は縦方向の位置を調節することによって、伸縮ベルト部材のベルトの長さと斜辺角度が変わる様子を示す側面図である。
図12】本発明に係る建築限界確認治具の組み立て及び設置の方法を示すフロー図である。
図13】道路構造令第12条の第1図(1)に規定される建築限界を示す図である。
図14】従来の建築限界確認治具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施形態〕
本発明に係る建築限界確認治具の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
(建築限界確認治具)
図1及び図2に示すように、本実施形態における建築限界確認治具1は、第1水平梁部材2、第2水平梁部材4、支柱部材3、伸縮ベルト部材5、及びベース部材6を備える。
【0023】
第1水平梁部材2は、その基端部分が、支柱部材3の第1角パイプ30の先端部分に固定されており、支柱部材3の長手方向と略直角に交わるように支持されている。また、高さ限界表示プレート20が、第1水平梁部材2の先端部分にボルトで固定されている。
【0024】
第1水平梁部材2の構成素材としては、特に限定されるものではないが、強度の確保と軽量化を図るために、アルミ合金製の角パイプなどで構成されることが望ましい。
【0025】
図3に示すように、高さ限界表示プレート20は、横長の平板部材で構成されている。高さ限界表示プレート20の上端面は、第1水平梁部材2よりも高い位置にあり、且つ第1水平梁部材2と略平行になっている。
【0026】
また、高さ限界表示プレート20における横方向の外側端部の上端面には、凸部21が設けられている。凸部21には、後述する伸縮ベルト部材5が掛止されるように構成されている。さらに、高さ限界表示プレート20の横方向の内側端部の上端面には、第1レーザー被照射部22が設けられている。第1レーザー被照射部22には、後述するレーザー測定ユニット7のレーザー光が、所定の状況において照射されるように構成されている。
【0027】
高さ限界表示プレート20の構成素材としては、特に限定されるものではないが、後述する伸縮ベルト部材5を磁石によって固定する場合は鋼鉄製、例えば、熱間圧延鋼板(SPHC)などであることが望ましい。
【0028】
本実施形態における支柱部材3は、外径の大きさがそれぞれ異なる、第1角バイプ30、第2角バイプ31、第3角パイプ32、及び第4角パイプ33を備え、この順番で外径が大きくなる。
【0029】
また、第1角バイプ30、第2角バイプ31、第3角パイプ32、及び第4角パイプ33のそれぞれには、L字型の差し込みピンPを挿入するための複数の貫通穴Aが、長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。
【0030】
本実施形態における支柱部材3は、所謂スライド伸縮式の支柱であって、長手方向に伸縮可能に構成されている。即ち、第4角パイプ33の中に第3角パイプ32を収容可能であり、第3角パイプ32の中に第2角パイプ31を収容可能であり、第2角パイプ31の中に第1角パイプ30を収容可能となっており、第1~第3角パイプ30、31、32のそれぞれの引き出し量を調節することによって、支柱部材3の長さを調節することができる。
【0031】
そして図4に示すように、角パイプ同士の接続部分において、2つの差し込みピンPが、平面視において十字に交差するように貫通穴Aに差し込まれる。これによって、角パイプのそれぞれの位置が固定される。尚、図4では、第3角パイプ32と第4角パイプ33との接続部分が例示されているが、他の角パイプ同士の接続部分についても同様である。また、角パイプ同士の隙間を埋め、且つ差し込みピンPのガタ付きを無くすために、貫通穴Aにドライブッシュを使用しても良い。
【0032】
支柱部材3の構成素材としては、特に限定されるものではないが、強度の確保と軽量化を図るために、アルミ合金などで構成されることが望ましい。
【0033】
図2及び図5に示すように、第2水平梁部材4は、第1水平梁部材2の下側において、支柱部材3の長手方向と略直角に交わるように接続部材43を介して支持されている。
【0034】
図5に示すように、第2水平梁部材4には、L字型の差し込みピンPを挿入するための複数の貫通穴Aが、長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。
【0035】
接続部材43は、角筒により構成されており、支柱部材3の長手方向に対して略直角に交わるように、支柱部材3の第2パイプ31の先端部分に固定されている。また接続部材43には、L字型の差し込みピンPを挿入するための複数の貫通穴Aが設けられている。
【0036】
図8図11に示すように、第2水平梁部材4については、接続部材43を介して横方向にスライドさせて固定することができるように構成されている。
【0037】
第2水平梁部材4の横方向の位置を変更する際は、第2水平梁部材4を固定している差し込みピンPを接続部材43から取り外してから、第2水平梁部材4を横方向にスライドさせて、所定の位置に移動させる。そして、接続部材43と第2水平梁部材4に渡るように、差し込みピンPを接続部材43の貫通穴Aに再び差し込んで、第2水平梁部材4の位置を固定する。
【0038】
また、第1水平梁部材2と第2水平梁部材4との間の距離については、図8図11に示すように、支柱部材3において、第2角パイプ31に対する第1角パイプ30の引き出し量を調節することによって、自在に変更することができる。
【0039】
第2水平梁部材4及び接続部材43の構成素材としては、特に限定されるものではないが、強度の確保と軽量化を図るために、アルミ合金製の角パイプなどで構成されることが望ましい。
【0040】
図2及び図6に示すように、第2水平梁部材4の先端部分には、幅限界表示プレート40がボルトで固定されている。また図2及び図5に示すように、第2水平梁部材4の後端部分には、後述する引張ロープ8を受けるための滑車42が設けられている。
【0041】
図6に示すように、幅限界表示プレート40は、縦長の平板部材で構成されている。幅限界表示プレート40の外側端面は、支柱部材3と略平行になっている。幅限界表示プレート40の横方向の外側端部の上端面には、後述するレーザー測定ユニット7のレーザー光を当てるための第2レーザー被照射部41が設けられている。尚、本実施形態における第2レーザー被照射部41は、後述する伸縮ベルト部材5を掛止することができるように構成されている。
【0042】
幅限界表示プレート40の構成素材としては、特に限定されるものではないが、後述する伸縮ベルト部材5を磁石によって固定する場合は鋼鉄製、例えば、熱間圧延鋼板(SPHC)などであることが望ましい。
【0043】
図2に示すように、伸縮ベルト部材5が、第1水平梁部材2の高さ限界表示プレート20から、第2水平梁部材4の幅限界表示プレート40にわたるように設けられている。
【0044】
図3及び図5に示すように、本実施形態における伸縮ベルト部材5は、その本体50が幅限界表示プレート40に固定されており、ベルト51の先端部分が高さ限界表示プレート20に固定されている。
【0045】
図8図11に示すように、伸縮ベルト部材5は、ベルト51の部分が伸び縮み可能であって、高さ限界表示プレート20と幅限界表示プレート40との間の距離に合わせて、ベルト51の長さを変更することができるように構成されている。
【0046】
本発明に適用可能な伸縮ベルト部材5としては、特に限定されるものではないが、例えば、マグネットタイプのリールバック式ナイロンベルトが望ましい。当該リールバック式ナイロンベルトによれば、その本体50を、磁石により幅限界表示プレート40に吸着させて貼付して、ベルト51の先端部分を、磁石により高さ限界表示プレート20に吸着させて貼付することができる。磁石による貼付のため、建築限界の種々の形状に応じて、ベルト51の長さと斜辺角度を任意に調節し易くなる。
【0047】
図7に示すように、支柱部材3を支持するベース部材6が支柱部材3の下端部分に設けられている。本実施形態におけるベース部材6は、支持アーム部60、ターンバックル61、支点ピン63、接地アーム部64、及びレーザー測定ユニット7を備える。
【0048】
支持アーム部60の下端部分が、支点ピン63を介して接地アーム部64の端部に連結され、支持アーム部60と接地アーム部64とが支点ピン63の周りに旋回可能となっている。そして、支持アームの先端部分と接地アーム部64にわたって設けられているターンバックル61によって、支持アーム部60と接地アーム部64とが所定の角度で保持される。
【0049】
接地アーム部64と支持アーム部60との角度(ベース角度)は、ターンバックル61のナット62を回転させることによって調節することができる。尚、ターンバックル61は公知のものを使用して良い。
【0050】
本実施形態における支持アーム部60は角パイプ30で構成されており、支柱部材3の下端部分が、ベース部材6の支持アーム部60の中に嵌め込まれることによって、支柱部材3がベース部材6によって支持される。
【0051】
ベース部材6を構成する少なくとも支持アーム部60と接地アーム部64は、鋼鉄製であることが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0052】
レーザー測定ユニット7は、台座部材70、レーザー測量器71、及びマイタギアボックス付きの傾斜台72を備える。断面L字型の台座部材70が、支持アーム部60の下端から所定の距離で、支持アーム部60の側面に固定されている。台座部材70の上に傾斜台72が設けられており、傾斜台72の上に、レーザー測量器71が設置されている。レーザー測量器71は、その設置角度を変更調整可能に傾斜台72に取り付けられている。
【0053】
図3に示すように、支柱部材3の上端部における第1水平梁部材2の側と反対側の側面に第1リング状部材34が設けられている。図7に示すように、接地アーム部64の、支点ピン63と反対側の端部に第2リング状部材65が設けられている。尚、第1リング状部材34及び第2リング状部材65としては、例えば公知のアイボルトなどを使用することができる。
【0054】
図3及び図7に示すように、第1リング状部材34及び第2リング状部材65は、引張ロープ8を結び付けることができるように構成されている。
【0055】
(姿勢維持機構)
本実施形態の建築限界確認治具1には、支柱部材3を垂直に維持するための姿勢維持機構が設けられている。姿勢維持機構は、第1リング状部材34、第2リング状部材65、及び引張ロープ8を備える。
【0056】
姿勢維持機構によれば、支柱部材3が例えば幅限界表示プレート40の側に傾き、たわみが生じていて垂直な姿勢となっていない場合、その一端が第1リング状部材34に結び付けられている引張ロープ8を引っ張ることによって支柱部材3のたわみを矯正し、引張ロープ8の他端側を第2リング状部材65に結び付けることによって、支柱部材3を垂直姿勢に保持することができる。
【0057】
(姿勢確認機構)
本実施形態の建築限界確認治具1には、支柱部材3が垂直であることを確認するための姿勢確認機構が設けられている。姿勢確認機構は、レーザー測定ユニット7、及び高さ限界表示プレート20の第1レーザー被照射部22を備える。
【0058】
支柱部材3が垂直姿勢にあるとき、高さ限界表示プレート20の第1レーザー被照射部22は、レーザー測定ユニット7におけるレーザー測量器71の真上に位置するように構成されている。
【0059】
そのため、支柱部材3が、例えば地面に対して垂直であるか否かを確認する場合、レーザー測定ユニット7のレーザー測量器71から鉛直方向上向きにレーザーを発射し、当該レーザーが、高さ限界表示プレート20の第1レーザー被照射部22に当たっていれば、支柱部材3が垂直であることを確認することができる。
【0060】
(角度調節機構)
本実施形態の建築限界確認治具1には、ベース部材6のベース角度を調節するための角度調節機構が設けられている。角度調整機構は、支持アーム部60、ターンバックル61、支点ピン63、及び接地アーム部64を備える。
【0061】
上述したとおり、接地アーム部64と支持アーム部60との角度(ベース角度)については、ターンバックル61のナット62を回転させることによって調節することができる。そのため、ベース角度を道路勾配に合わせて変更することが可能となり、種々の建築限界に対応することができる。即ち、建築限界によっては、その高さの測定方法が、「地面に対して垂直」である場合と、「道路勾配に対して垂直」である場合があり、ベース部材6のベース角度を調節できるようにすれば、そのいずれの場合にも対応することができる。
【0062】
(距離測定機構)
本実施形態の建築限界確認治具1には、支柱部材3における基準点から第1水平梁部材2までの距離、及び基準点から第2水平梁部材の一端部までの距離を測定する距離測定機構が設けられている。距離測定機構は、レーザー測定ユニット7、高さ限界表示プレート20の第1レーザー被照射部22、及び幅限界表示プレート40の第2レーザー被照射部41を備える。
【0063】
図2に示すように、距離測定機構では、レーザー測定ユニット7のレーザー測量器71を基準点として、レーザー測量器71から、高さ限界表示プレート20の第1レーザー被照射部22にレーザーを照射してその直線距離hを測定する。また、レーザー測量器71から、幅限界表示プレート40の第2レーザー被照射部41にレーザーを照射してその直線距離Lを測定する。
【0064】
ここで、レーザー測量器71の設置高さをh1とし、レーザー測量器71の傾斜角度をθとすることによって、以下の計算式により、高さ限界表示プレート20の上端面の高さH1、幅限界表示プレート40の上端面までの高さH2、及びレーザー測量器71から第1レーザー被照射部22にわたる直線から幅限界表示プレート40の外側端面までの距離Wを算出することができる。
H1=h+h1
H2=h1+(L×cosθ)
W=L×sinθ
【0065】
尚、本実施形態における距離測定機構によれば、レーザー測定ユニット7のレーザー測量器71を基準点として、レーザー測量器71から対象物(例えば、トンネルTなど)までの直線距離とレーザー測量器71の傾斜角度を測定して三角関数による演算を行うことによって、レーザー測量器71(基準点)から対象物までの水平/垂直距離を算出することができる。これにより、本実施形態に係る建築限界確認治具1(建築限界AL)と、対象物との「離れ寸法」を導き出すことができるため、例えば作業者が、梯子などに上って、建築限界確認治具1(建築限界AL)と対象物との離間具合を確認する必要がない。
【0066】
(組み立て及び設置の方法)
次いで、本実施形態に係る建築限界確認治具1の組み立て及び設置の方法について、図12に基づいて説明する。
【0067】
先ず、♯01に示すように、ベース部材6におけるターンバックル61のナット62を回転させることによって、ベース角度を、設置する車道Rの勾配角度に合わせる。このとき、水平器などを使用して、台座部材70の取り付け面が水平であることを確認する。当該取り付け面には、後述する傾斜台72及びレーザー測量器71が取り付けられる。
【0068】
♯02に示すように、高さ限界表示プレート20の上端面と幅限界表示プレート40の上端面との間の垂直距離が、建築限界ALのbの長さ(図13参照)に相当するように、第2角パイプ31からの第1角パイプ30の引き出し量を調節した後、2つの差し込みピンPを貫通穴Aに挿入して、第1水平梁部材2と第2水平梁部材4との距離を固定する。
【0069】
♯03に示すように、高さ限界表示プレート20の外側端面と幅限界表示プレート40の外側端面との間の水平距離が、建築限界のaの長さ(図13参照)に相当するように、第2水平梁部材4を横方向にスライド移動させて、第2水平梁部材4の、幅限界表示プレート40の側の長さを調節した後、差し込みピンPを貫通穴Aに挿入して第2水平梁部材4の横方向の位置を固定する。
【0070】
♯04に示すように、伸縮ベルト部材5を、第1水平梁部材2の高さ限界表示プレート20から、第2水平梁部材4の幅限界表示プレート40にわたるように取り付ける。本実施形態では、伸縮ベルト部材5として、マグネットタイプのリールバック式ナイロンベルトを使用している。尚、レーザー測量器71から照射されるレーザーの障害とならないように、リールバック式ナイロンベルトの本体50を、幅限界表示プレート40の裏面側(第2水平梁部材4の取り付け側)に磁石により吸着させる。また、リールバック式ナイロンベルトのベルト51の先端部分についても、高さ限界表示プレート20の裏面側(第1水平梁部材2の取り付け側)に磁石により吸着させる。
【0071】
このとき、図3(b)及び図6(b)に示されるように、高さ限界表示プレート20の凸部21と、幅限界表示プレート40の第2レーザー被照射部41のそれぞれには、伸縮ベルト部材5のベルト51が掛止される。
【0072】
♯05に示すように、確認したい建築限界ALに合わせて、建築限界確認治具1を所定の立ち上げ場所に設置する。このとき、本実施形態に係る建築限界確認治具1によれば、少人数の作業員で設置することができる。
【0073】
♯06に示すように、高さ限界表示プレート20の上端面の高さが、建築限界ALのHの高さ(図13参照)に相当するように支柱部材3の長さを調節して、差し込みピンPを貫通穴Aに挿入して支柱部材3の長さを固定する。
【0074】
♯07に示すように、レーザー測定ユニット7の傾斜台72及びレーザー測量器71を、台座部材70の上に取り付ける。尚、台座部材70は、ベース部材6の支持アーム部60に所定の高さで取り付けられている。
【0075】
♯08に示すように、レーザー測定ユニット7のレーザー測量器71の傾斜角度を90度に設定して、レーザー測量器71を起動させる。このとき、支柱部材3が例えば幅限界表示プレート40の側に傾き、たわみが生じていて垂直な姿勢となっておらず、高さ限界表示プレート20の第1レーザー被照射部22にレーザーが当たっていない場合、その一端が第1リング状部材34(図3参照)に結び付けられている引張ロープ8を引っ張ることによって、高さ限界表示プレート20の第1レーザー被照射部22にレーザーが当たるようにして、支柱部材3のたわみを矯正する。そして、引張ロープ8の他端側を第2リング状部材65(図7参照)に結び付けることによって、支柱部材3を垂直姿勢に保持する。
【0076】
以上のように、本発明に係る建築限界確認治具1を組み立てて設置することによって、例えば、図1に示すように、建築限界確認治具1をトンネルT内の車道Rで使用した場合、トンネルTの構造物が、建築限界に支障していないかどうかを、一目で確認することができる。
【0077】
本発明に係る建築限界確認治具1は、部品点数が従来の建築限界確認治具10(図14参照)よりも少なく、構成もシンプルであるため、その組み立てに多くの手間や人手を必要とせず、少数の作業員で設置することができる。また、支柱部材3が伸縮可能であるため、これを短くすることで治具そのものをコンパクトにすることができる。さらに、支柱部材1の長さを調節することによって治具の高さを変更することができることに加えて、第2水平梁部材4の一端部(幅限界表示プレート40)から支柱部材3の接続部43までの長さと、第1水平梁部材2と第2水平梁部材4との間の距離とを変更することによって、図8図11に示すように伸縮ベルト部材5の斜辺角度と長さを変更することができる。このため、種々の建築限界ALに対応することが可能であり、それらの建築限界ALを一目見て把握できるように再現することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
1.第2水平梁部材は、上記実施形態に記載されるように横方向にスライド移動させる構成に限定されるものではなく、少なくとも第2水平梁部材の一端部(幅限界表示プレート)から支柱部材との接続部(接続部材)までの長さを変更可能に構成されていれば良い。
2.第2水平梁部材については、支柱部材の第2角パイプに固定される上述の構成に限定されるものではなく、支柱部材の長手方向全体に渡って移動させて固定できるように構成されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る建築限界確認治具は、鉄道や車道における建築限界を確認するための技術分野において特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 建築限界確認治具
10 従来の建築限界確認治具
2 第1水平梁部材
20 高さ限界表示プレート
21 凸部
22 第1レーザー被照射部
3 支柱部材
30 第1角パイプ
31 第2角パイプ
32 第3角パイプ
33 第4角パイプ
34 第1リング状部材
4 第2水平梁部材
40 幅限界表示プレート
41 第2レーザー被照射部
42 滑車
43 接続部材(接続部)
5 伸縮ベルト部材
50 本体
51 ベルト
6 ベース部材
60 支持アーム部
61 ターンバックル
62 ナット
63 支点ピン
64 接地アーム部
65 第2リング状部材
7 レーザー測定ユニット
70 台座部材
71 レーザー測量器
72 傾斜台
8 引張ロープ
P 差し込みピン
A 貫通穴
T トンネル
R 車道
AL 建築限界
図1
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図3
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