(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】生成装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240115BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
(21)【出願番号】P 2022169189
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2021214707の分割
【原出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】506310050
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】内海 洋
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-031710(JP,A)
【文献】特開2004-008983(JP,A)
【文献】中国実用新案第210736278(CN,U)
【文献】米国特許第04692229(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 9/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電される対をなす電極と、隔膜と、を用いて電解水を生成する生成装置であって、
前記隔膜を介して仕切られた複数の室を有する電解槽と、
前記隔膜の損傷を抑制する膜保護構造と、を備え、
前記電解槽は、
前記室を区画する凹部を備える対をなすカバー部材と、
前記室を区画する開口部を備え、前記電極及び前記隔膜を介して前記カバー部材間に挟み込まれる隔壁と、を有し、
前記膜保護構造は、前記隔膜と別体で、前記隔膜の位置を固定する膜保護部材を含
み、
前記膜保護部材は、
前記隔膜と前記隔壁との間に介在されて前記開口部の内部に突出し、前記隔膜を支持する膜支持部を有し、
前記膜支持部は、
前記室内の水流方向に沿って長手状の複数の支持本体部と、
これら支持本体部同士を連結してこれら支持本体部間の間隔を保つ連結部と、を備え、
前記連結部は、前記支持本体部より厚みが小さい
ことを特徴とする生成装置。
【請求項2】
膜保護部材は
、カバー部材
と隔壁との隙間を水密に閉塞するシール部材である
ことを特徴とする請求項1記載の生成装置。
【請求項3】
連結部は、支持本体部の長手方向において、隔壁側とその反対側である隔膜側とで交互に配置されている
ことを特徴とする請求項
1または2記載の生成装置。
【請求項4】
電解槽は、給水源及び電源部に対し並列に複数配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水を生成する生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された電解水生成装置が知られている。
【0003】
この従来の電解水生成装置は、電極を収納する一対のカバー部材と、隔壁を介してこれらカバー部材間に挟み込まれる隔壁と、により電解槽を二室、あるいは三室に仕切って形成し、各電極に通電することで電解水を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような電解水生成装置は、隔膜に破れ等の損傷が生じると、電解水を適切に生成できず、隔膜の交換等のメンテナンスが必要になる。そのため、隔膜の損傷を長期に亘り抑制することが望まれている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、隔膜の損傷を抑制できる生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生成装置は、給電される対をなす電極と、隔膜と、を用いて電解水を生成する生成装置であって、前記隔膜を介して仕切られた複数の室を有する電解槽と、前記隔膜の損傷を抑制する膜保護構造と、を備え、前記膜保護構造は、前記隔膜と別体で、前記隔膜の位置を固定する膜保護部材を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、隔膜の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る生成装置の縦断面図である。
【
図7】同上生成装置の一方のカバー部材を隔壁側から示す正面図である。
【
図9】同上生成装置の一部を拡大して示す横断面図である。
【
図10】同上生成装置の膜保護部材を示す正面図である。
【
図11】同上膜保護部材の一部を示す縦断面図である。
【
図12】(a)は同上生成装置の一例を示す斜視図、(b)は同上生成装置の他の例を示す斜視図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る生成装置のシール部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図3において、1は電解水を生成する生成装置(電解水生成装置)を示す。生成装置1は、例えば電解液である食塩水の電解によって、少なくとも酸性電解水である次亜塩素酸水(電解除菌水)を生成するための三室型電解装置(次亜塩素酸水生成装置)である。
【0012】
この生成装置1は、三室型の電解槽(電解セル)5を備えている。電解槽5は、一方の電極室(第1電極室)である陰極室6と、他方の電極室(第2電極室)である陽極室7と、これら陰極室6及び陽極室7間に位置する中間室8とを有している。
【0013】
陰極室6と中間室8とは、一方の隔膜(第1隔膜)であるイオン交換膜としての陰極側隔膜11で仕切られている。陽極室7と中間室8とは、他方の隔膜(第2隔膜)であるイオン交換膜としての陽極側隔膜12で仕切られている。つまり、電解槽5内は、2つの膜11,12によって、3つの室6,7,8に仕切られている。
【0014】
そして、陰極室6内には一方の電極(第1電極)である平板状の陰極13が設けられ、この陰極13は陰極側隔膜11と近接して対向している。陽極室7内には他方の電極(第2電極)である平板状の陽極14が設けられ、この陽極14は陽極側隔膜12と近接して対向している。これら陰極13及び陽極14には、電力を供給する電源部が接続されている。
【0015】
また、生成装置1は、電解槽5の中間室(電解液室)8に電解液である食塩水を供給する食塩水供給部21を備えている。
【0016】
食塩水供給部21は、食塩水が貯留されるタンク22と、このタンク22内の食塩水を中間室8に供給する供給配管23と、この供給配管23の途中に設けられたポンプと、中間室8内の食塩水をタンク22に戻す戻し配管25とを有している。なお、
図3に図示した循環式の構成には限定されず、例えば電解液を循環させない構成等でもよい。
【0017】
さらに、生成装置1は、電解槽5の陰極室6及び陽極室7に電解原水である水(例えば軟水器を通った水道水等)を供給する水供給部31と、電解槽5の陰極室6及び陽極室7で生成された電解水を電解槽5外に排出する電解水排出部32とを備えている。
【0018】
水供給部31は、第1電極室である陰極室6に水を供給する第1供給配管33と、第2電極室である陽極室7に水を供給する第2供給配管34とを有している。
【0019】
電解水排出部32は、陰極室6で生成されたアルカリ性電解水である苛性ソーダ水(NaOH水溶液)を排出する第1排出配管36と、陽極室7で生成された酸性電解水である次亜塩素酸水(HClO水溶液)を排出する第2排出配管37とを有している。
【0020】
そして、生成装置1は、食塩水供給部21のポンプを作動させ、供給配管23から電解槽5の中間室8に食塩水を供給するとともに、水供給部31の第1供給配管33及び第2供給配管34から電解槽5の陰極室6及び陽極室7に水を供給する。同時に、電源部から負電圧及び正電圧を陰極13及び陽極14にそれぞれ印加する。
【0021】
中間室8へ流入した食塩水中において電離しているナトリウムイオン(Na+)は、陰極13に引き寄せられ、陰極側隔膜11を通過して、陰極室6へ流入する。そして、以下の通り陰極室6において、陰極13で水が分解されて苛性ソーダ水を得る。
【0022】
H2O+2e- → 1/2H2+OH-
Na++e- → Na
Na+OH- → NaOH+e-
【0023】
また、中間室8内の食塩水中において電離している塩素イオン(Cl-)は、陽極14に引き寄せられ、陽極側隔膜12を通過して、陽極室7へ流入する。そして、以下の通り陽極14にて塩素イオンが還元され塩素ガスが発生し、陽極室7内で水と反応して次亜塩素酸水を生じる。
【0024】
H2O → 2H++1/2O2+2e-
2Cl- → Cl2+2e-
Cl2+H2O ⇔ HClO+HCl
【0025】
このようにして生成された苛性ソーダ水は、陰極室6から第1排出配管36を通って排出され、次亜塩素酸水は、陽極室7から第2排水配管37を通って排出される。
【0026】
次に、生成装置1の詳細な構造について説明する。
【0027】
図1及び
図2に示すように、生成装置1は、構造的に、対をなすカバー部材である外板41と、これら外板41の間に挟み込まれる隔壁42と、がシール部材43,44を介して水密に組み合わせられて構成されている。
【0028】
外板41には、隔壁42の一側面側、陰極側隔膜11及び陰極13を覆う陰極用外板41aと、隔壁42の他側面側、陽極側隔膜12及び陽極14を覆う陽極用外板41bと、が設定されている。本実施の形態において、陰極用外板41aと陽極用外板41bとは、隔壁42を挟んで基本的に互いに対称または略対称な構造となっているので、これらの構造については、特記しない限り、まとめて外板41の構造として説明する。
【0029】
外板41は、合成樹脂等により正面視で四角形状に形成されている。外板41は、隔壁42と等しいまたは略等しい外形を有する。本実施の形態では、外板41は、上下方向に長手方向を有する長方形状の外形を有する。陰極用外板41aと隔壁42との間に陰極13と陰極側隔膜11とが配置され、陽極用外板41bと隔壁42との間に陽極14と陽極側隔膜12とが配置されている。外板41の隔壁42側の側面には、凹部51が形成されている。凹部51は、外板41の厚み方向に窪んでいる。陰極用外板41aの凹部51は、陰極室6を形成するものであり、陽極用外板41bの凹部51は、陽極室7を形成するものである。本実施の形態において、凹部51は、上下方向に長手方向を有する四角形状に形成されている。陰極用外板41aの凹部51と陰極側隔膜11との間に、陰極室6が区画され、陽極用外板41bの凹部51と陽極側隔膜12との間に、陽極室7が区画される。陰極用外板41aの凹部51を少なくとも覆う広さで陰極13及び陰極側隔膜11が位置し、陽極用外板41bの凹部51を少なくとも覆う広さで陽極14と陽極側隔膜12とが位置する。
【0030】
また、
図1及び
図3に示すように、外板41には、供給口52が下部に形成され、排出口53が上部に形成されている。供給口52は、下方に開口され、排出口53は上方に開口されている。供給口52は、凹部51よりも下方に位置し、排出口53は、凹部51よりも上方に位置する。本実施の形態において、供給口52と排出口53とは、外板41の短手方向において、互いに等しいまたは略等しい位置にある。すなわち、供給口52と排出口53とは、同一垂直線上または略同一垂直線上に位置する。
図3に示すように、供給口52が水供給部31と接続され、排出口53が電解水排出部32と接続されている。すなわち、陰極用外板41aの供給口52及び排出口53は、第1供給配管33及び第1排出配管36と接続され、陽極用外板41bの供給口52及び排出口53は、第2供給配管34及び第2排出配管37と接続されている。
【0031】
また、供給口52と凹部51とが、配管構造である供給配管構造54により接続され、凹部51と排出口53とが、配管構造である排出配管構造55により接続されている。供給配管構造54及び排出配管構造55は、それぞれ外板41に通路状に形成されている。これらの構造により、陰極室6及び陽極室7に対し、水が、水供給部31から供給口52及び供給配管構造54を介して下方から供給され、生成された電解水が、排出配管構造55及び排出口53を介して上方から排出される。すなわち、陰極室6及び陽極室7に対して、陰極13、陽極14、陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12に沿う方向に水が供給及び排出されるように構成されている。
【0032】
好ましくは、
図4及び
図5に示すように、外板41には、凹部51内に位置して、分岐部56が形成されている。分岐部56は、陰極室6及び陽極室7内を水の供給方向及び電解水の排出方向に対して交差または直交する方向に仕切って分岐する。分岐部56は、凹部51の長手方向、すなわち水の供給方向及び電解水の排出方向である上下方向に直線状に連なる長手リブ状に形成されている。より好ましくは、分岐部56は、複数設定されている。本実施の形態において、分岐部56は、陰極室6及び陽極室7内の水の供給方向及び電解水の排出方向に対して交差または直交する方向に3つ以上、図示される例では4つ設定されている。これら分岐部56は、互いに等間隔、かつ、平行または略平行に配置されている。分岐部56は、凹部51の縁部に対して、
図4及び
図5の左右方向及び上下方向に離れて位置する。分岐部56,56間、及び、凹部51の縁部と分岐部56との間に、それぞれ分岐流路57が形成され、分岐部56の上部及び下部と凹部51の縁部との間に、分岐流路57が合流する合流部58,59が分岐流路57と交差する方向に延びて形成されている。
【0033】
図1、
図2及び
図6に示す隔壁42は、陰極用外板41aと陽極用外板41bとの間に介在される中間フレームである。隔壁42は、合成樹脂等により正面視で四角形状の外形を有して形成されている。隔壁42は、外板41と等しいまたは略等しい外形を有する。本実施の形態において、隔壁42は、上下方向に長手方向を有する。隔壁42の内方には、隔壁42を一側面と他側面とに亘り厚み方向に貫通する開口部61が形成されている。開口部61は、中間室8を形成するものである。開口部61と陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12との間に、中間室8が区画される。開口部61は、凹部51の外形と等しいまたは略等しい外形を有する。開口部61により、隔壁42が枠状または額縁状となっている。開口部61は、隔壁42の正面視での中央部に配置されている。
【0034】
隔壁42には、供給口62が下部に形成され、排出口63が上部に形成されている。供給口62は、下方に開口され、排出口63は上方に開口されている。本実施の形態において、供給口62と排出口63とは、隔壁42の短手方向において、互いに等しいまたは略等しい位置にある。すなわち、供給口62と排出口63とは、同一垂直線上または略同一垂直線上に位置する。また、供給口62と排出口63とは、外板41の供給口52と排出口53とに対し、短手方向にずれて位置する。
【0035】
図1及び
図3に示すように、供給口62及び排出口63は、食塩水供給部21と接続されている。供給口62が供給配管23と接続され、排出口63が戻し配管25と接続されている。供給口62と開口部61とが、供給配管構造64により接続され、開口部61と排出口63とが、排出配管構造65により接続されている。供給配管構造64及び排出配管構造65は、それぞれ外板41に通路状に形成されている。これらの構造により、中間室8に対し、食塩水が、食塩水供給部21から供給口62及び供給配管構造64を介して下方から供給され、排出配管構造65及び排出口63を介して上方から排出される。すなわち、中間室8に対して、陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12に沿って食塩水が供給及び排出されるように構成されている。
【0036】
図1、
図7ないし
図9に示すシール部材43及び
図10に示すシール部材44は、外板41と隔壁42との隙間を水密に閉塞する。シール部材43は、陰極用外板41aの周縁部と陰極13の周縁部との間、陰極側隔膜11と隔壁42との間、隔壁42と陽極側隔膜12との間、及び、陽極14の周縁部と陽極用外板41bの周縁部との間にそれぞれ配置され、シール部材44は、陰極側隔膜11と隔壁42との間、及び、陽極側隔膜12と隔壁42との間において、シール部材43の周縁部と隔壁42の周縁部との間にそれぞれ配置される。
【0037】
シール部材43は、ゴム、弾性を有する合成樹脂等により面状に形成されている。シール部材43は、例えば0.5mm程度の厚みに形成されている。本実施の形態において、シール部材43は、正面視で外板41及び隔壁42と等しいまたは略等しい外形を有して形成されている。本実施の形態において、シール部材43は、上下方向に長手方向を有する。また、シール部材43の内方には、シール部材43を一側面から他側面に亘り厚み方向に貫通する穴部70が形成されている。穴部70により、シール部材43が枠状または額縁状となっている。
【0038】
穴部70は、外板41の凹部51及び膜11,12の略全体を露出させる大きさに形成されている。本実施の形態において、穴部70は、上下方向に長手方向を有する略四角形状に形成されている。穴部70は、シール部材43の正面視での中央部に配置されている。
【0039】
図10及び
図11に示すシール部材44は、合成樹脂等により形成された繊維、すなわち化学繊維等、軟質の部材により面状に形成されている。シール部材44は、例えば0.5mm程度の厚みに形成されている。本実施の形態において、シール部材44は、正面視で外板41、隔壁42及びシール部材43と等しいまたは略等しい外形を有して形成されている。本実施の形態において、シール部材44は、上下方向に長手方向を有する。また、シール部材44の内方には、シール部材44を一側面から他側面に亘り厚み方向に貫通する穴部71が形成されている。穴部71に、格子状の膜支持部72が形成されている。
【0040】
穴部71は、穴部70と同様に、膜11,12の略全体を露出させる大きさに形成されている。本実施の形態において、穴部71は、上下方向に長手方向を有する略四角形状に形成されている。穴部71は、シール部材44の正面視での中央部に配置されている。
【0041】
膜支持部72は、陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12を支持して陰極13及び陽極14に対する位置を安定させ、安定した電気分解を維持させる部分である。膜支持部72は、穴部71の隔壁42側に配置され、開口部61すなわち中間室8に挿入される。本実施の形態において、シール部材44,44の膜支持部72,72は、中間室8において互いに近接または接触する位置にある。膜支持部72は、上下方向に沿って長手状の支持本体部72aと、これら支持本体部72a同士を連結する連結部72bと、を一体的に備える。
【0042】
支持本体部72aは、シール部材44の穴部71の周縁部の面に対して隔壁42側に突出している。
【0043】
連結部72bは、支持本体部72a同士が互いの間隔を一定または略一定に保つとともに厚み方向に容易に変形しないように支持本体部72a同士を連結する。連結部72bは、支持本体部72aの長手方向である上下方向の複数箇所に形成されている。上下に並ぶ連結部72bは、支持本体部72aに対し、隔壁42側とその反対側である膜11,12側とで交互に配置されている。連結部72bは、支持本体部72aよりも厚みが小さく設定されており、隔壁42の開口部61において、中間室8内を食塩水が上下に通過できるように構成されている。
【0044】
そして、
図1及び
図2に示すように、陰極用外板41a、シール部材43、陰極13、シール部材43、陰極側隔膜11、シール部材44、隔壁42、シール部材44、陽極側隔膜12、シール部材43、陽極14、シール部材43、陽極用外板41bが、厚み方向に順次重ねられて配置され、固定手段によって互いに厚み方向に圧接されることで、電解槽5が構成されている。固定手段は、例えばボルトやナットからなり、陰極用外板41a、シール部材43、陰極13、シール部材43、シール部材44、隔壁42、シール部材44、シール部材43、陽極14、シール部材43、陽極用外板41bの周縁部に形成された貫通穴73に亘りボルトが挿通され、このボルトの先端にナットが螺着されて締め付けられることにより、外板41,41間に隔壁42が圧接保持される。
【0045】
ここで、本実施の形態において、生成装置1には、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制する膜保護構造75が設けられている。
【0046】
膜保護構造75は、各部への物理的接触と、水圧と、電気分解時の陰極13及び/または陽極14からの熱と、の少なくともいずれかによる陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制する。
【0047】
膜保護構造75の第1の例として、電解槽5にて陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12と接触する部分に形成された面取り部81を含む。
図1及び
図5に示すように、面取り部81は、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12との物理的接触により陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12との損傷を抑制する部分である。例えば、面取り部81は、外板41の凹部51の縁部(エッジ部)及び/または分岐部56の陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に対向する部分の角部(エッジ部)等に形成されている。その他、面取り部81は、隔壁42の開口部61の縁部等、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12と接触し得る箇所に任意に形成してよい。
【0048】
また、膜保護構造75の第2の例として、陰極室6及び/または陽極室7に対して陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に沿う方向つまり上下方向に水を供給する供給口52と、陰極室6及び/または陽極室7から陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に沿う方向つまり上下方向に電解水を排出する排出口53と、の少なくともいずれかを含む。すなわち、供給口52及び排出口53は、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に対し交差する方向への水流により生じる水圧による陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制する部分である。
【0049】
同様に、膜保護構造75の第3の例として、
図1及び
図6に示す中間室8に対して陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12に沿う方向つまり上下方向に食塩水を供給する供給口62と、中間室8から陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12に沿う方向つまり上下方向に食塩水を排出する排出口63と、の少なくともいずれかを含む。すなわち、供給口62及び排出口63は、陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12に対し交差する方向への水流により生じる水圧による陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12の損傷を抑制する部分である。
【0050】
さらに、膜保護構造75の第4の例として、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を支持可能な三つ以上の支持部を含む。本実施の形態では、
図1、
図4及び
図5に示す分岐部56が支持部の機能を有する。分岐部56は、陰極室6及び/または陽極室7に水が供給され電気分解が行われるときに陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を支持可能となっている。分岐部56を陰極室6及び/または陽極室7に三つ以上設定することで、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を支える強度を分散し、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の分岐部56との物理的接触による損傷を抑制する。
【0051】
また、膜保護構造75の第5の例として、陰極室6及び/または陽極室7内の分岐部56間の分岐流路57に均等または略均等に水を供給する配管構造である供給配管構造54を含む。
【0052】
供給配管構造54は、供給口52から流入した水を陰極室6及び/または陽極室7に導く導入配管部83と、この導入配管部83から水を分岐部56間に分岐させる複数の分岐配管部84と、を有する。導入配管部83は、陰極室6及び/または陽極室7の短手方向の一方寄りの上部にある供給口52からL字状に屈曲して外板41の短手方向に沿って配置されている。導入配管部83は、一定または略一定の流路面積を有する。分岐配管部84は、導入配管部83から上下方向に沿って、互いに平行または略平行に配置される。各分岐配管部84の上端部が、各分岐流路57に対向する位置で合流部59と連通している。分岐配管部84は、導入配管部83以下の流路面積を有し、かつ、供給口52から遠い位置の分岐配管部84ほど、流路面積が大きくなるように形成されている。このため、供給配管構造54は、供給口52から流入する水を、導入配管部83から各分岐配管部84へと、分岐部56間の分岐流路57に均等または略均等に分配するように構成されている。供給配管構造54は、水圧による陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制する部分である。
【0053】
また、膜保護構造75の第6の例として、陰極室6及び/または陽極室7内の分岐部56間の分岐流路57から均等または略均等に電解水を排出する配管構造である排出配管構造55を含む。
【0054】
排出配管構造55は、陰極室6及び陽極室7から電解水を排出する複数の分岐配管部86と、これら分岐配管部86から電解水を合流させて排出口53へと導く導出配管部87と、を有する。分岐配管部86は、上下方向に沿って、互いに平行または略平行に配置される。分岐配管部86の下端部が、分岐流路57に対向する位置で合流部58と連通している。分岐配管部86は、導出配管部87以下の流路面積を有し、かつ、排出口53から遠い位置ほど、流路面積が大きくなるように形成されている。導出配管部87は、L字状に屈曲して外板41の短手方向に沿って配置され、陰極室6及び陽極室7の短手方向の一方寄りの上部にある排出口53に連通している。導出配管部87に各分岐配管部86が接続されている。このため、排出配管構造55は、分岐部56間の分岐流路57から合流部59を経て排出口53へと陰極室6及び/または陽極室7の電解水を均等または略均等に排出するように構成されている。排出配管構造55は、水圧による陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制する部分である。
【0055】
さらに、膜保護構造75の第7の例として、
図6に示す中間室8において陰極室6及び陽極室7の分岐流路57に対応する位置に食塩水を均等または略均等に流す配管構造である供給配管構造64及び排出配管構造65を含む。
【0056】
供給配管構造64は、供給口62から流入した食塩水を中間室8に導く導入配管部90と、この導入配管部90から食塩水を分岐部56間に対応する位置に分岐させる複数の分岐配管部91と、を有する。これら導入配管部90と分岐配管部91との構造は、供給配管構造54の導入配管部83と分岐配管部84との構造と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0057】
また、排出配管構造65は、中間室8から食塩水を排出する複数の分岐配管部93と、これら分岐配管部93から食塩水を合流させて排出口63へと導く導出配管部94と、を有する。これら分岐配管部93と導出配管部94との構造は、排出配管構造55の分岐配管部86と導出配管部87との構造と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0058】
また、膜保護構造75の第8の例として、
図9に示すようにシール部材43から凹部51の縁部を超えて陰極室6及び/または陽極室7内に突出して形成された突出部96を含む。突出部96は、凹部51の縁部が陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12(
図1)と直接接触することを阻止する部分である。すなわち、突出部96は、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12(
図1)との物理的接触により陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12(
図1)との損傷を抑制する部分である。突出部96は、穴部70の縁部を構成し、凹部51の縁部を所定距離、例えば1mm超えて陰極室6及び/または陽極室7内に突出している。なお、
図10及び
図11に示すシール部材44についても、開口部61(
図1)の縁部から同様に突出するように穴部71の縁部に突出部97を備えていてよい。
【0059】
さらに、膜保護構造75の第9の例として、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を陰極13及び/または陽極14に接近させた位置に保持するシール部材44を含む。本実施の形態では、シール部材44は、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12と、隔壁42と、の間に膜支持部72が介在されることで、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を陰極13及び/または陽極14に近接させた位置に固定し、電気分解時の陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の位置を安定させて陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の振動を抑制し、陰極13及び/または陽極14との接触による陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の焼けを防止する。すなわち、シール部材44は、電気分解時の陰極13及び/または陽極14からの熱による陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制する膜保護部材である。
【0060】
そして、生成装置1は、
図12(a)に示すように、給水源に対し、電解槽5を1つ備えるものでもよいし、
図12(b)に示すように、給水源に対し複数の電解槽5を並列に備えるものでもよい。
図12(b)に示す例では、外板41と隔壁42とを交互に配置することで、電解槽5を複数連続で重ねて構成する。この場合、隔壁42間に位置する外板41には、両側面に室を形成するための凹部51(
図1)が形成される。なお、複数の電解槽5を重ねる場合には、電解槽5毎に絞りを設け、室6,7,8に流入する水、室6,7,8から排出する水を均一または略均一とすることが好ましい。さらに、各電解槽5に電解水の電気特性、例えば抵抗値等に基づき陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷に起因する食塩水の漏れ等の異常を検出する異常検知装置を設置して、いずれの電解槽5の陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に異常があったかを発見できるようにしておくことが好ましい。
【0061】
このように、第1の実施の形態によれば、膜保護構造75を備えることで、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制できる。そのため、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の使用寿命を延ばすことができ、生成装置1の陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12等のメンテナンスの頻度を減らして低コストでの電解水の生成が可能となる。
【0062】
膜保護構造75は、物理的接触と、水圧と、電気分解時の電極からの熱と、の少なくともいずれかによる陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制することで、水を陰極室6及び陽極室7に供給し食塩水を中間室8に供給して陰極側隔膜11及び陽極側隔膜12を用いて電気分解により電解水を生成し排出する生成装置1において、水の給排や電気分解等の際に生じ得る物理的接触、過大な水圧、電極からの熱に対し、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を確実に保護できる。
【0063】
具体的に、膜保護構造75は、電解槽5にて陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12と接触する部分に形成された面取り部81を含むことで、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12との物理的接触による陰極側隔膜11及び/または陽陽極側隔膜12の損傷を抑制できる。
【0064】
膜保護構造75は、陰極室6及び/または陽極室7に対して陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に沿う方向に電解原水を供給する供給口52と、陰極室6及び/または陽極室7から陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に沿う方向に電解水を排出する排出口53と、の少なくともいずれかを含むことで、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に加わる水圧(負荷)を抑制でき、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制できる。
【0065】
また、外板41の下部に供給口52を配置し、外板41の上部に排出口53を配置したことで、外板41と隔壁42とを厚み方向に交互に重ねることが可能となるので、外板41と隔壁42とを多数交互に重ねて複数の電解槽5をコンパクトに構成できる。
【0066】
膜保護構造75は、陰極室6及び/または陽極室7内に形成され陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を支持可能な三つ以上の分岐部56を含むことで、分岐部56,56間の空間(分岐流路57)を狭くし、かつ、分岐部56自体を相対的に細く形成して陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を分岐部56によって高強度に支持し、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12への負荷を分散して陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の水圧等による損傷を抑制できる。
【0067】
分岐部56を互いに平行なリブ状に形成したことで、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12を効果的に支持しつつ、陰極室6及び/または陽極室7内に流入する水及び陰極室6及び/または陽極室7から排出される電解水を、それぞれ陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12に沿って分岐部56によりガイドし、効率よく流すことができる。
【0068】
膜保護構造75は、陰極室6及び/または陽極室7内の分岐部56間に均等に水を供給する供給配管構造54、排出配管構造55等の配管構造を含むことで、分岐部56間での陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12への水圧の偏りを抑制し、陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷をより抑制できる。また、分岐部56を三つ以上設定したことで、分岐部56,56間の空間(分岐流路57)が狭くなっているものの、これらに対し水を均一または略均一に分散することで、水を通過させやすくでき、処理性能を確保できる。
【0069】
膜保護構造75は、外板41と隔壁42との隙間を水密に閉塞するシール部材43から凹部51の縁部を超えて陰極室6及び/または陽極室7内に突出して形成された突出部96を含むことで、凹部51の縁部の陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12との物理的接触による陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の損傷を抑制できる。
【0070】
給水源に対し、電解槽5を並列に複数配置することで、電解水の精製能力を5~10L/分程度に増加させることができる。
【0071】
また、膜保護構造75が、繊維により形成され陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の位置を固定するシート状の膜保護部材であるシール部材44を含むことで、電気分解時の陰極13及び/または陽極14からの熱による陰極側隔膜11及び/または陽極側隔膜12の焼けすなわち損傷を抑制できる。
【0072】
なお、上記の第1の実施の形態においては、膜11,12のそれぞれと隔壁42との間にシール部材44を配置したが、これに限らず、
図13に示す第2の実施の形態のように、膜支持部72の厚みを第1の実施の形態よりも大きく、例えば2倍程度に設定することで、膜11,12のいずれか一方と隔壁42との間に配置し、膜支持部72を開口部61から膜11,12の他方に近接させるように配置しても、同様に膜保護部材として作用させることができる。
【0073】
また、上記の各実施の形態において、供給口52,62と排出口53,63との上下関係は逆に設定してもよい。つまり、供給口52,62を上部、排出口53,63を下部に配置してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 生成装置
5 電解槽
6 室である陰極室
7 室である陽極室
8 室である中間室
11 隔膜である陰極側隔膜
12 隔膜である陽極側隔膜
13 電極である陰極
14 電極である陽極
41 カバー部材である外板
42 隔壁
43 シール部材
44 膜保護部材であるシール部材
51 凹部
61 開口部
72 膜支持部
75 膜保護構造