(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】照明器具および照明システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/19 20200101AFI20240115BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20240115BHJP
【FI】
H05B47/19
H05B47/16
(21)【出願番号】P 2023090604
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2020144779の分割
【原出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】尾形 大輔
(72)【発明者】
【氏名】稲村 公孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 恭裕
(72)【発明者】
【氏名】平野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 直輝
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220787(JP,A)
【文献】特開2020-013758(JP,A)
【文献】特開2017-037812(JP,A)
【文献】特開2016-057166(JP,A)
【文献】特開2016-169954(JP,A)
【文献】特開2009-222417(JP,A)
【文献】特開2018-085281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
45/00-45/58
47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機器の位置情報を取得可能な照明システムに利用する照明器具であって、
光源部と、
制御部と、
電源部と、
制御装置もしくは他の照明
器具と
無線通信を行う第1通信部と、
前記移動機器へビーコン信号を出力する第2通信部と、を有し、
前記制御装置もしくは前記他の照明
器具からの設定信号を前記第1通信部によって受信し、前記設定信号に基づいて前記第2通信部からの前記ビーコン信号の出力間隔を設定
し、
前記第1通信部による無線通信と前記第2通信部による無線通信とは、互いの通信タイミングが異なり、
前記第1通信部と前記第2通信部とは、それぞれの無線通信を交互に行う、照明器具。
【請求項2】
前記第1通信部による第1プロトコルと前記第2通信部による第2プロトコルとは、互いの周波数が異なる、請求項
1に記載の照明器具。
【請求項3】
自器具の識別情報を含むビーコン信号を送信する無線通信モジュールを各々が有する複数の照明器具と、
前記複数の照明器具を制御する制御装置と、を備え
、移動機器の位置情報を取得可能な照明システムであって、
前記複数の照明器具は、第1照明器具および第3照明器具を含み、
前記第1照明器具は、前記制御装置からの設定信号に基づき、前記無線通信モジュールにより前記ビーコン信号を間欠的に送信し、
前記第3照明器具は、前記制御装置からの前記設定信号に基づき、前記無線通信モジュールによる前記ビーコン信号を送信しない非送信モードを有
し、
前記第1照明器具は、光源部と、制御部と、電源部と、前記制御装置もしくは前記第3照明器具と無線通信を行う第1通信部と、前記移動機器へビーコン信号を出力する第2通信部と、を有し、
前記制御装置もしくは前記第3照明器具からの設定信号を前記第1通信部によって受信し、前記設定信号に基づいて前記第2通信部からの前記ビーコン信号の出力間隔を設定し、
前記第1通信部による無線通信と前記第2通信部による無線通信とは、互いの通信タイミングが異なり、前記第1通信部と前記第2通信部とは、それぞれの無線通信を交互に行う、照明システム。
【請求項4】
前記第1通信部による第1プロトコルと前記第2通信部による第2プロトコルとは、互いの周波数が異なる、請求項3に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具および照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を利用して複数の照明器具を制御する照明システムが種々に提案されている。特許文献1には、従来の照明システムの一例が開示されている。同文献に開示された照明システムは、複数の照明器具と移動機器とを備える。複数の照明器具は、各々が自器具の識別情報を含むビーコン信号を無線通信によって送信する。移動機器は、たとえば使用者が携帯する携帯端末やIDカード等である。移動機器は、複数の照明器具からのビーコン信号を受信し、自機器の位置情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明システムが備える複数の照明器具の個数は様々であり、多数の照明器具を備える場合がある。この際、複数の照明器具からのビーコン信号が相互に混信し、移動機器によって適切に受信することが困難となることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得可能な照明システムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される照明システムは、自器具の識別情報を含むビーコン信号を送信する無線通信モジュールを各々が有する複数の照明器具と、前記複数の照明器具を制御する制御装置と、前記複数の照明器具からの前記ビーコン信号を受信し、自機器の位置情報を取得する移動機器と、を備え、前記複数の照明器具は、第1照明器具および第2照明器具を含み、前記第1照明器具と前記第2照明器具とは、互いに異なるタイミングで前記ビーコン信号を送信する。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の照明器具は、第3照明器具をさらに含み、前記第3照明器具は、前記ビーコン信号を送信しない非送信モードを有する。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記照明器具の前記無線通信モジュールは、第1プロトコルを用いて前記複数の照明器具との相互の無線通信および前記制御装置との無線通信を行う第1無線通信部と、第2プロトコルを用いて前記移動機器と無線通信を行う第2無線通信部と、を有し、前記照明器具は、前記第1プロトコルを用いた前記第1無線通信部の無線通信と、前記第2プロトコルを用いた前記第2無線通信部の無線通信とを、交互に行う。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記移動機器は、前記第2プロトコルを用いた無線通信によって自機器の位置情報を、前記複数の照明器具のいずれかに送信し、前記複数の照明器具のうち前記位置情報を受信した前記照明器具は、前記位置情報を前記第2プロトコルから前記第1プロトコルを用いた無線通信によって転送可能な転送データに変換し、当該転送データを前記第1無線通信部から直接または他の前記照明器具を介して前記制御装置に転送する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1照明器具の前記第2無線通信部が送受信する無線周波数と、前記第2照明器具の前記第2無線通信部が送受信する無線周波数とは、互いに異なる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の前記移動機器と、前記複数の照明器具が設置された環境の特定領域の状態を各々が監視する複数の監視機器と、をさらに備え、前記制御装置は、前記監視機器の異常値情報に基づいて、前記特定領域に設置された前記照明器具および前記複数の移動機器のうち前記特定領域に近い前記移動機器の少なくともいずれかに異常値情報を送信する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の前記移動機器と、前記複数の照明器具が設置された環境の特定領域の状態を各々が検出する複数のセンサ機器と、をさらに備え、前記制御装置は、前記センサ機器の検出情報に基づいて、前記特定領域に設置された前記照明器具および前記複数の移動機器のうち前記特定領域に近い前記移動機器の少なくともいずれかに報知情報を送信する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る照明システムを示すシステム構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る照明システムを示す概略配置図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る照明システムの照明器具の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る照明システムの移動機器の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る照明システムの制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る照明システムの携帯端末の一例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る照明システムのビーコン信号のタイミングチャートである。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る照明システムの第1変形例を示すシステム構成図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る照明システムのビーコン信号のタイミングチャートである。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムであ る。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図15】本発明の第4実施形態に係る照明システムを示すシステム構成図である。
【
図16】本発明の第4実施形態に係る照明システムの給電ユニットを示すブロック図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図18】本発明の第5実施形態に係る照明システムを示すシステム構成図である。
【
図19】本発明の第5実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図20】本発明の第6実施形態に係る照明システムを示す概略配置図である。
【
図21】本発明の第6実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図22】本発明の第6実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図23】本発明の第6実施形態に係る照明システムの第1変形例のシーケンスダイアグラムである。
【
図24】本発明の第7実施形態に係る照明システムを示すシステム構成図である。
【
図25】本発明の第7実施形態に係る照明システムを示す概略配置図である。
【
図26】本発明の第7実施形態に係る照明システムのセンサ機器を示すブロック図である。
【
図27】本発明の第7実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図28】本発明の第7実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【
図29】本発明の第7実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0018】
<第1実施形態>
図1~
図7は、本発明の第1実施形態に係る照明システムを示している。本実施形態の照明システムA1は、複数の照明器具L、移動機器Me、制御装置Ctおよび管理端末Mdを備えている。なお、本実施形態とは異なり、管理端末Mdを備えない構成であってもよい。
【0019】
図1は、照明システムA1を示すシステム構成図である。
図2は、照明システムA1を示す概略配置図である。
図3は、照明システムA1の照明器具を示すブロック図である。
図4は、照明システムA1の移動機器Meを示すブロック図である。
図5は、照明システムA1の制御装置Ctを示すブロック図である。
図6は、照明システムA1の管理端末Mdを示すブロック図である。
【0020】
〔照明器具L〕
複数の照明器具Lは、たとえば屋内の照明に用いられ、天井、壁面、床面等の種々の箇所に設置される。また、照明器具Lは、屋外の照明に用いられる構成であってもよい。照 明器具Lの具体的な形態は何ら限定されず、直管形蛍光灯の代替照明や高天井照明、シーリングライト、ダウンライト、ベースライト、スポットライト等の種々の形態を適宜採用可能である。以降の説明においては、照明器具Lの一般的な構成を述べる場合に照明器具Lと称するとともに、複数の照明器具Lを区別する場合に照明器具L1、・・・照明器具Ln等の符号を適宜用いる場合がある。
図1における複数の照明器具L1~Lnは、それぞれの構成が同一であってもよいし、互いの一部が共通していてもよいし、互いに異なる構成であってもよい。以降の説明においては、特段の記載がない限り、複数の照明器具L1~Lnが同一の構成である場合を例に説明する。また、
図2は、説明の便宜上、9つの照明器具L1~L9(n=9)を備える構成例である。
【0021】
図3は、照明器具Lのブロック図である。照明器具Lは、光源部11、制御部12、記憶部13、無線通信モジュール14および電源部15を備える。
【0022】
光源部11は、照明器具L1において発光機能を果たす部位である。光源部11の具体的構成は何ら限定されず、たとえば、基板と当該基板に列をなして搭載された複数のLEDとからなる。また、照明器具L1は、光源部11からの光を透過させる透明または半透明のカバー(図示略)を適宜有する。
【0023】
制御部12は、制御装置Ctからの指示等に基づいて、照明器具Lの各部を制御するためのものである。制御部12の具体的構成は特に限定されず、たとえばCPUからなる。記憶部13は、制御部12の制御に必要な情報を記憶するためのものであり、たとえば半導体メモリからなる。なお、記憶部13は、照明器具Lの筐体(図示略)に内蔵されるものに限定されず、照明器具Lの筐体の外部に着脱可能に設けられるものであってもよい。
【0024】
無線通信モジュール14は、制御装置Ct、他の照明器具Lおよび移動機器Meと無線通信を行うためのものであり、無線信号を送信および受信するモジュールである。無線通信モジュール14は、たとえば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)通信によって制御部12と接続されているが、これに限定されない。本実施形態の
無線通信モジュール14は、第1無線通信部141および第2無線通信部142を有する。
【0025】
無線通信モジュール14の機能を例示すると、制御装置Ctからの信号を受信し、受信した信号に含まれるデータ(たとえば照明制御信号)を制御部12に送信する。また、照明制御信号を受信したことを示すアクノリッジ信号を制御装置Ctに送信する。また、照明器具Lの動作状況を示すステータス情報信号を制御装置Ctに送信してもよい。
【0026】
本実施形態においては、複数の照明器具Lの各々が有する固有の灯具IDが、無線通信モジュール14に記憶されている。灯具IDの具体例は特に限定されず、たとえばMAC(Media Access Control)アドレスや位置情報である。なお、灯具IDは、第1無線通信部141および第2無線通信部142のいずれか、もしくはこれら以外の無線通信モジュール14の構成要素に記憶されていてもよいし、たとえば記憶部13に記憶されていてもよい。
【0027】
第1無線通信部141は、制御装置Ctおよび他の照明器具Lと第1プロトコルを用いた無線通信を行うためのものである。第1プロトコルを用いた無線通信の通信周波数は何ら限定されず、たとえ920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯等が例示される。また、第1プロトコルの具体例は特に限定されず、たとえば、BLE(Bluetooth Low Energy
)を含むBluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などが例示される。本実施形態においては、第1無線通信部141を有する複数の照明器具Lと制御装置Ctとが、
図1に示すメッシュネットワークである通信ネットワークCn1を構築して いる。第1プロトコルは、後述のように複数の照明器具L間で各種データの転送に用いられるため、それらのデータ転送に必要となる転送速度や、信頼性を確保した上で、メッシュネットワークを構築できるプロトコルが選択される。
【0028】
第2無線通信部142は、移動機器Meと第2プロトコルを用いた無線通信を行うためのものである。第2プロトコルを用いた無線通信の通信周波数は何ら限定されず、たとえ920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯等が例示される。また、第2プロトコルの具体例は特に限定されず、たとえば、BLE(Bluetooth Low Energy)を含むBluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などが例示される。図示された例に
おいては、第2無線通信部142は、SPI(Serial Peripheral Interface)通信によ
って第1無線通信部141と接続されているが、これに限定されない。本実施形態においては、第2無線通信部142を有する照明器具Lと対応するセンサ機器Esとが、通信ネットワークCn2を構築している。
【0029】
第1プロトコルと第2プロトコルとは、互いの通信が干渉しないように通信周波数が異なるものを選択することが好ましい。また、第1無線通信部141による無線通信と第2無線通信部142による無線通信とは、互いの通信タイミングを異ならせて、交互に無線通信を行うことが好ましい。なお、第2プロトコルを用いた無線通信は、たとえば、第1プロトコルを用いた無線通信よりも通信距離が短いものを選択してもよい。
【0030】
無線通信モジュール14は、たとえば第1無線通信部141によって制御装置Ctからセンサ機器Esのデータ取得を要求する要求信号を受信した場合、当該要求信号を第1プロトコルから第2プロトコルに変換することによって転送信号を生成し、この転送信号を制御部12からセンサ機器Esに送信する。
【0031】
また、無線通信モジュール14は、ビーコン信号を送信する。ビーコン信号は、移動機器Meの位置測定に用いられる基準信号であり、照明器具Lの自器具の識別情報(灯具ID)が含まれている。また、ビーコン信号は、タイムスタンプを含んでいてもよい。この識別情報は、照明器具Lの位置を直接示す位置情報であってもよいし、MACアドレス等であってもよい。ビーコン信号がMACアドレスを識別情報として含む場合、移動機器Meでは、この識別情報を当該照明器具Lの位置情報に変換する処理が適宜実行される。本実施形態においては、ビーコン信号は、無線通信モジュール14の第2無線通信部142によって送信される。ビーコン信号の出力間隔は、たとえばCtからの設定信号等によって設定され、たとえば、90~900msである。出力間隔を長くすることで、移動機器Meの電力消費を抑えることができる。
【0032】
また、移動機器Meから送信された位置データを第2無線通信部142が受信した場合、当該測定データを第2プロトコルから無線通信によって転送可能な第1プロトコルに変換することによって転送データを生成し、制御装置Ctに送信する。具体的な例を挙げると、無線通信モジュール14は、移動機器Meからの位置データが第2プロトコルを用いた通信であることを通信データ中のプロトコルフラグから検出する。次いで、第2プロトコルに応じた手順で所定の処理を行って第2無線通信部142によって受信する。そして、測定データを第1プロトコルを用いた通信のデータ形式に変換することで転送データを生成し、通信ネットワークCn1で隣接する照明器具Lに転送する。
【0033】
電源部15は、光源部11、制御部12および無線通信モジュール14等に動作に必要な電力を供給するためのものである。電源部15は、たとえば商用の交流100Vまたは200V電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータとしての機能や、変圧機能等を有する。
【0034】
〔移動機器Me〕
移動機器Meは、使用者等に保持されることによって、あるいは自力で、複数の照明器具Lが配置された場の各所を移動し得る機器である。移動機器Meは、複数の照明器具Lからのビーコン信号を受信することにより、自機器の位置情報を取得する機能を有する。移動機器Meの具体例は何ら限定されず、たとえば、使用者が携帯する携帯端末や、使用者が身につけたり、商用施設のカートに取り付けたりするタグ、あるいは、自力走行が可能な掃除ロボットや搬送ロボット等が適宜挙げられる。
図2に示された例は、移動機器Meが使用者に保持される携帯端末である場合を示している。
【0035】
図4は、移動機器Meが携帯端末や掃除ロボット等である場合のブロック図である。本実施形の移動機器Meは、表示部51、制御部52、記憶部53、無線通信部54および電源部55を備える。
【0036】
以降の説明においては、移動機器Meの一般的な構成を述べる場合に移動機器Meと称するとともに、複数の移動機器Meを区別する場合に移動機器Me1~Men等の符号を適宜用いる場合がある。複数の移動機器Me1~Menは、それぞれの構成が同一であってもよいし、互いの一部が共通していてもよいし、互いに異なる構成であってもよい。以降の説明においては、特段の記載がない限り、複数の移動機器Me1~Menが同一の構成である場合を例に説明する。
【0037】
表示部51は、移動機器Meの操作等に必要な情報や画像を表示するためのものである。表示部51は、たとえば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、本実施形態においてはタッチパネル機能を有している。なお、表示部51がタッチパネルとして機能することに代えて、移動機器Meは、たとえばキーボードやマウス等の操作デバイスを別途備えていてもよい。
【0038】
無線通信部54は、対応する照明器具Lと上述した第2プロトコルを用いた無線通信を行うためのものである。第2無線通信部142を有する照明器具Lと移動機器Meとが、通信ネットワークCn2を構築している。図示された例においては、複数の照明器具Lが配置された場を1つの移動機器Meが移動することにより、複数の照明器具Lと移動機器Meとが第2プロトコルを用いた無線通信を随時可能となっている。無線通信部54が通信ネットワークCn2を介して複数の照明器具Lから受信する信号には、ビーコン信号が含まれる。
【0039】
本実施形態においては、移動機器Meが固有の機器IDを有する。機器IDの具体例は何ら限定されず、たとえばMAC(Media Access Control)アドレスが用いられる。なお、機器IDは、無線通信部54に記憶されていてもよいし、たとえば記憶部53に記憶されていてもよい。
【0040】
制御部52は、移動機器Meの各部を制御するためのものである。制御部52の具体的構成は特に限定されず、たとえばCPUからなる。また、制御部52は、移動機器Meの自機器の位置情報を取得する処理を実行する。制御部52は、たとえば無線通信部54が受信した複数の照明器具Lからのビーコン信号に含まれる複数の照明器具Lの識別情報と各ビーコン信号の受信強度であるRSSIとに基づいて、三点測量方式に基づく測量処理によって自機器の位置情報を取得する。なお、ビーコン信号に含まれる識別情報が照明器具Lの位置情報である場合、この位置情報を測量処理に用いる。また、他の例としては、識別情報が照明器具LのMACアドレスである場合、制御部52は、たとえば記憶部53にあらかじめ格納されたMACアドレスと位置情報との対応データから、当該MACアドレスの照明器具Lの位置情報を特定し、測量処理に用いる。
【0041】
たとえば、照明器具Lから受信した要求信号(転送信号)が、自機器の機器IDを含む場合、当該要求信号を制御部52に送信する。制御部52は、要求信号の要求にしたがって測量処理を行い、自機器の位置情報を取得する。制御部52は、機器ID、自機器の位置情報、測量時刻(タイムスタンプ)等を含む位置データを生成し、無線通信部54から送信する。
【0042】
なお、
図10は、照明システムA1の測量処理に関する変形例を示している。本変形例では、移動機器Meと無線通信等によって通信可能な商用クラウドによって、測量処理が行われる。たとえば、ビーコン信号を受信した移動機器Meは、複数の照明器具Lごとのビーコン信号の識別情報とRSSIとを商用クラウドに送信する。商用クラウドは、識別情報をRSSIとから三点測量方式に基づく測量処理によって、移動機器Meの位置を測定する。そして、移動機器Meの位置情報を、移動機器Meに送信する。
【0043】
また、移動機器Meが携帯端末である場合、公衆通信ネットワークを介して外部クラウド等にデータを送受信する機能を有していてもよい。
【0044】
記憶部53は、制御部52の制御に必要なプログラムや設定条件等の情報を記憶するためのものであり、たとえば半導体メモリ等からなる。
【0045】
電源部55は、表示部51、制御部52および無線通信部54等に動作に必要な電力を供給するためのものである。電源部45は、たとえば商用の交流100Vまたは200V電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータとしての機能や、変圧機能等を有するもの、あるいは充電可能なバッテリーである。バッテリーの充電方式は、接触式の充電器を利用するものでも、非接触式の充電器を利用するものでもよい。
【0046】
移動機器Meが、たとえば自力走行可能な掃除ロボットや搬送ロボット等である場合、移動機器Meは、さらに駆動部(図示略)を有する。駆動部は、モータやギヤ等を適宜備えており、自力走行のための駆動力を発揮し、走行を実現する機構を備える。
【0047】
また、移動機器Meが、タグである場合、上述した表示部51や記憶部53のいずれかまたは双方を備えない構成であってもよい。タグは、社員等が所有するIDカードに内蔵、店舗等のカートに外付け配置、巡回ロボットおよびクリーナーなどの電化製品への内蔵、会議室内の椅子や机および掃除用具などに取付られること、などにより使用される。たとえば、タグがIDカードに内蔵されている場合、機器IDはたとえば社員番号等であって、記憶部53に保存される。また、電源部55は、2.4GHzの電波(BLE、Wi-Fi(登録商標)など)の電波で発電する構成であってもよい。このような電源部55を用いれば、照明システムA1において定期的に送信されている電波を利用して発電することが可能であり、照明システムA1内での利用中の電池切れを防ぐことができる。
【0048】
〔制御装置Ct〕
制御装置Ctは、複数の照明器具L1~Lnの点灯制御や移動機器Meへの位置取得指令を行うものである。制御装置Ctは、本実施形態の場合には、複数の照明器具L1~Lnが設置されている部屋と同じ部屋に設置されていてもよいし、同じ建物の別の部屋や別のフロアに設置されていてもよいし、別の建物に設置されていてもよい。制御装置Ctと複数の照明器具L1~Lnとがある程度離れている場合、制御装置Ctと複数の照明器具L1~Lnとは、無線通信だけでなく、有線通信と無線通信とを利用して互いに通信する構成であってもよい。なお、照明システムA1は、少なくとも1つの制御装置Ctを備えていればよく、他の構成において複数の制御装置Ctを備えていてもよい。なお、本実施形態の制御装置Ctは、複数の照明器具Lと管理端末Mdとの双方に通信可能である。
【0049】
図5は、制御装置Ctのブロック図である。本実施形態においては、制御装置Ctは、表示部21、制御部22、記憶部23、無線通信部24および電源部25を備える。
【0050】
表示部21は、後述する照明システムA1の照明制御方法においては、必ずしも必要ではないが、制御装置Ctの初期設定やメンテナンス等に用いられる。表示部21は、たとえば液晶ディスプレイ等であり、さらにタッチパネル機能を有してもよい。また、表示部21がタッチパネルとして機能することに代えて、制御装置Ctは、たとえばキーボードやマウス等の操作デバイスを別途備えていてもよい。
【0051】
制御部22は、複数の照明器具L1~Lnの点灯制御や移動機器Meへの位置取得指令を行う主要な構成要素であり、制御装置Ctの各部を制御するためのものである。たとえば、制御部22は、無線通信部24が管理端末Mdから受信した指示信号に基づいて、対象とする照明器具Lへ制御信号を送信するように、無線通信部24に制御信号を伝達する。制御部22の具体的構成は特に限定されず、たとえばCPUからなる。記憶部23は、制御部22の制御に必要なプログラムや設定条件等の情報を記憶するためのものであり、たとえば半導体メモリやハードディスクドライブ等からなる。
【0052】
無線通信部24は、複数の照明器具L1~Lnの無線通信モジュール14の第1無線通信部141および管理端末Mdと無線通信を行うためのものである。無線通信部24の周波数帯や準拠する無線通信の規格は、上述の第1プロトコルを用いた無線通信である。
図1に示す例においては、制御装置Ctは、複数の照明器具Lとともに通信ネットワークCn1を構成する。また、制御装置Ctは、管理端末Mdとともに通信ネットワークCn3を構成する。通信ネットワークCn3には、たとえばWi-Fi(登録商標)が用いられる。
無線通信部24は、たとえば、制御部22から複数の照明器具L1~Lnへの制御信号を通信ネットワークCn1を介して送信する。また、移動機器Meへの位置取得信号を通信ネットワークCn1を介して送信する。あるいは、管理端末Mdから通信ネットワークCn3を介して送信されるユーザによる指示信号を受信する。受信した指示信号は、制御部22に伝達される。なお、制御装置Ctは、無線通信部24に加えて、インターネットに接続する有線または無線の通信回路を有していてもよい。
【0053】
電源部25は、表示部21、制御部22および無線通信部24等に動作に必要な電力を供給するためのものである。電源部25は、たとえば商用の交流100Vまたは200V電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータとしての機能や、変圧機能等を有する。
【0054】
制御装置Ctは、複数の照明器具Lの灯具IDや移動機器Meの機器IDを保有しており、これらがたとえば記憶部43に記憶されている。制御装置Ctが保有する灯具IDや機器IDは、照明器具Lが保有する灯具IDとしてのMACアドレスやセンサ機器Esが保有する機器IDとしてのMACアドレスでもよいし、これらのMACアドレスと対応付けされた別の灯具IDや機器IDであってもよい。
【0055】
〔管理端末Md〕
管理端末Mdは、照明システムA1においてユーザが操作する端末である。管理端末Mdは、ユーザの操作を実現可能な携帯性や情報処理能力等を有するものであれば特に限定されず、たとえばタブレット、スマートフォン、ノートPC等である。なお、照明システムA1を構成する複数の照明器具Lが広範な領域に設置されている場合、照明システムA1は、複数の管理端末Mdを備えていてもよい。
【0056】
図6は、管理端末Mdのブロック図である。本実施形態においては、管理端末Mdは、表示部31、制御部32、記憶部33、無線通信部34および電源部35を備える。
【0057】
表示部31は、管理端末Mdの操作等に必要な情報や画像を表示するためのものである。表示部31は、たとえば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、本実施形態においてはタッチパネル機能を有している。なお、表示部31がタッチパネルとして機能することに代えて、管理端末Mdは、たとえばキーボードやマウス等の操作デバイスを別途備えていてもよい。
【0058】
制御部32は、管理端末Mdの各部を制御するためのものである。制御部32の具体的構成は特に限定されず、たとえばCPUからなる。記憶部33は、制御部32の制御に必要なプログラムや設定条件等の情報を記憶するためのものであり、たとえば半導体メモリやハードディスクドライブ等からなる。
【0059】
無線通信部34は、制御装置Ctへ複数の照明器具L1~Lnの点灯/消灯等の指示信号を送信したり、制御装置Ctから複数の照明器具L1~Lnのステータス情報信号等を受信したりする。また、無線通信部34は、制御装置Ctから移動機器Meの位置データおよび位置データの表示要求信号を受信する。無線通信部34の周波数帯や準拠する無線通信の規格は、上述の第1無線通信部141、無線通信部24と同様であってもよいし異なっていてもよく、たとえばWi-Fi(登録商標)が選択される。なお、無線通信部34は
、管理端末Mdとしてのタブレット等に内蔵された無線通信モジュールであってもよいし、USB端子等に接続された外付けの無線通信モジュールであってもよい。本実施形態においては、管理端末Mdと制御装置Ctとによって、通信ネットワークCn3が構築されている。なお、通信ネットワークCn3は、通信ネットワークCn1と同じ第1プロトコルを用いた無線通信を行うものであってもよい。
【0060】
電源部35は、表示部31、制御部32および無線通信部34等に動作に必要な電力を供給するためのものである。電源部35は、たとえば充電可能なバッテリーである。
【0061】
次に、照明システムA1による制御方法の一例について、以下に説明する。
図6および
図7は、照明システムA1のビーコン信号のタイミングチャートであり、
図8および
図9は、照明システムA1の動作例を示すシーケンスダイアグラムである。
【0062】
まず、
図8に示すように、管理端末Mdから移動機器Meに対して位置情報を取得するように要求信号を送信する(ステップS1)。具体的には、ユーザが、管理端末Mdの表示部31を操作することにより、制御部32は、移動機器Meへの測定データの取得を指示するコマンドを生成する。制御部32は、当該コマンドを要求信号として無線通信部34からWi-Fi(登録商標)によって制御装置Ctに送信する。なお、移動機器Meの位置
情報の取得は、管理端末Mdからの要求によって実行する例に限定されず、制御装置Ctから独自に発せられる要求によって実行してもよいし、たとえば、移動機器Meが予め定められたスケジュールにしたがって、あるいは動作状況に応じて、実行してもよい。
【0063】
制御装置Ctは、管理端末Mdからの要求信号を無線通信部24によって受信する。制御部22は、コマンドに含まれる機器ID、時刻情報等を含む要求データを生成する。この要求データを、無線通信部24からメッシュネットワークである通信ネットワークCn1を介して、たとえば複数の照明器具Lのうち制御装置Ctに最も近い照明器具L1に送信する(ステップS2)。
【0064】
要求データを受信した照明器具L1では、無線通信モジュール14の第1無線通信部141から、たとえば隣接する他の照明器具L等の次の照明器具Lに要求データを転送する(ステップS3)。また、照明器具L1は、要求データを第2プロトコルに変換して、通信ネットワークCn2を介して送信する。たとえば、照明器具L1の近傍に移動機器Meが存在する場合、移動機器Meが要求データを受信しうる。本例では、照明器具L1から 移動機器Meには要求データが送信されていない場合について説明する。
【0065】
通信ネットワークCn1において要求データが複数の照明器具L間で順次転送され、照明器具Lnの無線通信モジュール14が受信する。照明器具Lnの制御部12は、受信した要求データを第2プロトコルに準じた要求データに変換し、無線通信モジュール14の第2無線通信部142から通信ネットワークCn2を介して送信する(ステップS4)。
【0066】
図8の例では、照明器具Lnからの要求データが、通信ネットワークCn2を介して移動機器Meの無線通信部54に受信される。照明器具Lnは、
図2に示す例においては、たとえば照明器具L7や照明器具L8である。移動機器Meの制御部52は、要求データに含まれる動作対象を特定する機器IDが、自機器の機器IDと認識した場合、当該要求データに応じて位置情報を取得(推定)するための測量処理を行う(ステップS5)。この測量処理は、上述した複数の照明器具Lからのビーコン信号を用いた三点測量方式に基づく処理である。この測量処理により、制御部52は、自機器の位置情報を取得する。なお、測量処理は、移動機器Meによって完結した処理であってもよいし、商用クラウドにデータを転送することによって商用クラウド上で処理された結果であってもよい。
【0067】
図7は、測量処理に用いられる複数の照明器具Lのビーコン信号の送信タイミングチャートである。線グラフが立ち上がっているタイミングが、
図2に示す照明器具L1~L9のビーコン信号が送信されるタイミングである。照明器具L1~L9の各々は、たとえば300ms毎に定期的にビーコン信号を送信している。また、照明器具L1,L5,L9と照明器具L2,L6,L7と照明器具L3,L4,L8とは、互いのビーコン信号の送信タイミングが異なっており、たとえば100msずつの時間間隔が設けられている。このため、移動機器Meは、互いに異なる3つのタイミングのそれぞれでビーコン信号を受信し、最大で9つの照明器具Lからのビーコン信号を受信する。異なるタイミングでビーコン信号を受信するものの、時間間隔がたとえば100ms程度であれば、移動機器Meの測量処理の精度が不当に低下してしまうことを回避することができる。
【0068】
なお、照明器具L1,L5,L9と照明器具L2,L6,L7と照明器具L3,L4,L8といったグルーピングは、
図2の配置を前提とした場合に、いずれかのグループに、配置が偏った照明器具Lのみが含まれてしまうことを避けるためである。ビーコン信号の送信タイミング設定は、たとえば制御装置Ctから設定信号を各照明器具Lに送信することによって、複数の照明器具Lの初期導入時に設定してもよいし、通常の使用時に適宜設定してもよい。あるいは、複数の照明器具Lの初期導入に、各機器において設定処理を行ってもよい。
【0069】
このような構成においては、ビーコン信号の送信タイミングが互いに異なる2つの照明器具Lの一方が本発明の第1照明器具に相当し、他方が第2照明器具に相当する。
【0070】
次いで、
図9に示すように、移動機器Meの制御部52は、たとえば、移動機器Meの機器ID、位置情報、測量時刻(タイムスタンプ)等を含む位置データDpを生成し、無線通信部44から通信ネットワークCn2を介して送信する(ステップS6)。
【0071】
通信ネットワークCn1において、たとえば移動機器Meと最も近い照明器具Lnは、通信ネットワークCn2を介して位置データDpを受信する。照明器具Lnの無線通信モジュール14は、位置データDp中のプロトコルフラグから第2プロトコルであることを検出し、プロトコルに応じた手順で処理を行うことにより、位置データDpを受信する。そして、位置データDpを第1プロトコルを用いた通信のデータ形式に変換することで転送データDtを生成し、通信ネットワークCn1で隣接する照明器具Lに転送する(ステップS7)。
【0072】
メッシュネットワークである通信ネットワークCn1において、複数の照明器具L間を順次転送された転送データDtは、照明器具L1の無線通信モジュール14によって受信される。照明器具L1は、転送データDtを制御装置Ctに送信する(ステップS8)。
【0073】
制御装置Ctは、転送データDtを受信すると、転送データDtに含まれる移動機器Meの機器ID、位置情報、測量時刻(タイムスタンプ)等を無線信号に変換し、通信ネットワークCn3を介して管理端末Mdに送信する(ステップS9)。
【0074】
管理端末Mdにおいては、制御装置Ctから送信された無線信号を無線通信部34が受信する。制御部32は、無線通信部34が受信した無線信号に含まれる情報を元に、たとえば表示部31に移動機器Meの機器ID、位置情報、測量時刻(タイムスタンプ)等を表示する(ステップS10)。表示部31における表示は、たとえば
図2に示す配置図と類似の図を表示部31に表示し、この配置図において取得した移動機器Meの位置情報に対応した位置に移動機器Meを示すアイコン等を表示する。これらの表示は、管理端末Mdの使用者が理解しやすい形態に加工して表示してもよく、いずれかの情報を敢えて省略して表示してもよい。また、表示形式は、文字表示やアイコン表示、あるいはこれらを併せた表示等を適宜採用できる。
【0075】
次に、照明システムA1の作用について説明する。
【0076】
本実施形態によれば、
図7に示すように、照明器具L1と照明器具L2とがビーコン信号を送信するタイミングが互いに異なる。このため、移動機器Meは、照明器具L1からのビーコン信号と照明器具L2からのビーコン信号とを、より確実に区別して受信することが可能である。したがって、照明システムA1によれば、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器Meの位置情報をより正確に取得することができる。また、本実施形態から理解されるように、複数の照明器具Lの個数がより多い場合には、ビーコン信号の送信タイミングをより多くのタイミングに分けて設定することが混信抑制に好ましい。
【0077】
また、照明器具Lの無線通信モジュール14の第1無線通信部141と第2無線通信部142とは、それぞれの無線通信を交互に行う。これにより、第1無線通信部141による第1プロトコルを用いた無線通信と、第2無線通信部142による第2プロトコルを用いた無線通信との電波干渉を抑制することができる。
【0078】
図10に示した変形例のように、移動機器Meは、自機器の位置の測量処理を、自機器内で実行することに限定されず、商用クラウドに測量処理の一部を実行させてもよい。これは、照明システムA1のシステム構成をより多彩に設定することができるという利点がある。
【0079】
図11~
図29は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0080】
<第2実施形態>
図11および
図12は、本発明の第2実施形態に係る照明システムのビーコン信号の送信タイミングチャートおよびシーケンスダイアグラムを示している。本実施形態においては、複数の照明器具Lのいずれかが、ビーコン信号を送信しない非送信モードに設定されており、本発明における第3照明器具に相当する。
図11に示す例では、照明器具L3,L4,L8が第3照明器具に相当する。他の照明器具L1,L2,L5,L6,L7,L9は、ビーコン信号を送信する送信モードに設定されている。
【0081】
照明器具L3,L4,L8を非送信モードに設定する具体的な処理は何ら限定されない。
図12は、管理端末Mdからの要求に基づいた設定例を示している。これとは異なり、たとえば制御装置Ctから設定信号を各照明器具Lに送信することによって、複数の照明器具Lの初期導入時に設定してもよいし、通常の使用時に適宜設定してもよい。あるいは、複数の照明器具Lの初期導入に、各機器において設定処理を行ってもよい。
【0082】
図12に示すように、非送信モードに設定する対象として、管理端末Mdにおいて照明器具L3,L4,L8を選択し、これらの照明器具がビーコン信号を送信しないOFF設定となるようなモード設定の要求コマンドを送信する(ステップS11)。制御装置Ctは、管理端末Mdからの要求信号に基づいて、設定対象の照明器具Lの器具ID、モード設定コマンド、タイムスタンプ等を含む転送データを作成し、通信ネットワークCn1を介して送信する(ステップS12)。照明器具L1は、受信した転送データの器具IDが自己の器具IDとは異なることを確認し、転送データを次の照明器具Lに転送する(ステップS13)。照明器具L3は、受信した転送データの器具IDに自器具の器具IDが含まれることを認識すると、ビーコン信号をOFF(非送信モード)とし、設定が変更されたことを表すステータス信号を通信ネットワークCn1に送信する(ステップS14)。また、転送データを次の照明器具Lに送信する(ステップS15)。同様に、転送データを受信した照明器具L4は、受信した転送データの器具IDに自器具の器具IDが含まれることを認識すると、ビーコン信号をOFF(非送信モード)とし、ステータス信号を通信ネットワークCn1に送信する(ステップS16)。また、転送データを次の照明器具Lに送信する(ステップS17)。以降は、この処理が他の照明器具Lに引き継がれ、照明器具L8が照明器具L3,L4と同様にして、非送信モードに設定される。
【0083】
本実施形態によっても、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得することができる。また、非送信モードが設定された照明器具L3,L4,L8の消費電力を抑制することができる。なお、
図2に示す配置においては、照明器具L3,L4,L8は、いずれかの領域に偏って配置されたものではない。これは、非送信モードを設定しつつ、移動機器Meの測量処理の精度が低下することを回避するのに好ましい。また、照明システムA2では、ビーコン信号を送信しない非送信モードの照明器具L3,L4,L8と送信モードの照明器具L1,L2,L5,L6,L7,L9とが配置されている。送信モードの照明器具L1,L2,L5,L6,L7,L9については、上述した照明システムA1と同様に、照明器具L1,L5,L9と照明器具L2,L6,L7とのビーコン信号の送信タイミングを互いに異ならせるように同期させた設定が採用されており、ビーコン信号の混信を抑制する効果を有している。
【0084】
<第3実施形態>
図13および
図14は、本発明の第3実施形態に係る照明システムのシーケンスダイアグラムを示している。本実施形態においては、時計ユニットUtが用いられる。時計ユニットUtは、たとえばFM電波を受信することにより、時刻情報を取得する機能と、時刻情報をたとえばWi-Fi(登録商標)によって制御装置Ctに送信する機能とを有する。時
計ユニットUtが時刻情報を送信し(ステップS21)、制御装置Ctが受信する。制御装置Ctは、時刻情報を第1プロトコルに変換することにより時刻データを作成し、通信ネットワークCn1を介して複数の照明器具Lに送信する(ステップS22)。時刻情報を受信した照明器具L1は、自機器の時刻を時刻データに同期させ、また時刻データを次の照明器具Lに転送する(ステップS23)。時刻情報を受信した照明器具Lnは、自機器の時刻を時刻データに同期させ、また時刻データを第2プロトコルに変換して通信ネットワークCn2を介して移動機器Meに送信する(ステップS24)。通信ネットワークCn2を介して時刻データを受信した移動機器Meは、自機器の時刻を時刻データに同期させる。また、移動機器Meは、自機器の位置の測量処理を行ってもよい(ステップS25)。
【0085】
次いで、
図14に示すように、移動機器Meは、上述した照明システムA1における手順と同様に、同期された時刻情報に基づくタイムスタンプを含む位置データDpを送信する(ステップS26)。位置データDpを受信した照明器具Lnは、位置データを転送データDtに変換し次の照明器具Lに転送する(ステップS27)。転送された転送データDtを照明器具L1が受信すると、照明器具L1は、制御装置Ctに転送データDtを転送する(ステップS28)。転送データDtを受信した制御装置Ctは、移動機器Meの位置情報を、時計ユニットUtに同期されたタイムスタンプとともに取得する(ステップS29)。
【0086】
本実施形態によっても、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得することができる。また、本実施形態によれば、複数の照明器具Lと移動機器Meとのそれぞれの時刻をより正確に設定することが可能である。これは、たとえば、移動機器Meが時々刻々と移行する場合に、各時刻における移動機器Meの位置をより正確に取得するのに好ましい。
【0087】
<第4実施形態>
図15~
図17は、本発明の第4実施形態に係る照明システムのシステム構成図、ブロック図およびシーケンスダイアグラムである。本実施形態の照明システムA4は、自力走行可能な移動機器Meを備えており、たとえば掃除ロボットとして構成された移動機器Meを備える。また、照明システムA4は、給電ユニットUpを備えている。給電ユニットUpは、複数の照明器具Lが配置された場の適所に固定設置されており、移動機器Meが自力走行するのに必要な電力を供給する。この場合、移動機器Meは、給電ユニットUpから供給された電力を蓄電するバッテリー等を電源部55に含む。
【0088】
図16に示すように、給電ユニットUpは、リレースイッチ61、制御部62、無線通信部64および電源部65を有する。
【0089】
リレースイッチ61は、たとえば移動機器Meが接続される部位であり、移動機器Meへの電源供給のON/OFFを切り替える機能を果たす。制御部62は、リレースイッチ61を制御するものであり、受信した制御データに基づいて、リレースイッチ61を制御する。無線通信部64は、第2プロトコルを用いた無線通信が可能である。電源部65は、リレースイッチ61、制御部62および無線通信部64等に動作に必要な電力を供給するためのものであり、さらに移動機器Meに必要な電力を供給する。電源部65は、たとえば商用の交流100Vまたは200V電力が接続され、これらの電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータとしての機能や、変圧機能等を有する。
【0090】
図17に示すように、照明システムA4において、たとえば、移動機器Meが給電が必要な状態になると、移動機器Meは、給電ユニットUpに移動する(ステップS31)。移動機器Meは、たとえば給電ユニットUpが設置された位置を予め保存している。移動機器Meは、給電ユニットUpに到着し、給電が可能な状態となると、自機器の位置の測量処理を実行し、位置データDpを送信する(ステップS32)。位置データDpを受信した照明器具Lnは、複数の照明器具Lの通信ネットワークCn1でデータ転送可能な第1プロトコルに変換した転送データDtを作成し、次の照明器具Lに転送する(ステップ
S33)。転送データDtを受信した照明器具L1は、制御装置Ctに転送データDtを転送する(ステップS34)。ステップS35で転送データDtを受信した制御装置Ctは、移動機器Meが給電ユニットUpからの給電が可能な位置にあることを確認する(ステップS36)。次いで、制御装置Ctは、給電を開始する指示(給電ON指示)をWi-Fi(登録商標)等の通信ネットワークCn3を介して給電ユニットUpに送信する(ステ
ップS37)。給電ON指示を受信した給電ユニットUpは、移動機器Meへの給電を開 始する(ステップS38)。
【0091】
本実施形態によっても、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得することができる。また、移動機器Meが給電ユニットUpからの給電が可能な位置に到達した状態で、給電ユニットUpからの給電をより確実に実行することができる。また、移動機器Meが給電可能な位置に存在しないときには、給電ユニットUpを不必要に動作させることを抑制可能である。
【0092】
<第5実施形態>
図18および
図19は、本発明の第5実施形態に係る照明システムのシステム構成図およびシーケンスダイアグラムである。本実施形態の照明システムA5は、自力走行可能な移動機器Meを備えており、たとえば掃除ロボットとして構成された移動機器Meを備える。また、照明システムA5は、複数の照明器具L11,L12,L13,L21,L22,L23を備える。複数の照明器具L11,L12,L13は、建物の同じ階に配置されており、図示された例においては1階に配置されている。一方、複数の照明器具L21,L22,L23は、複数の照明器具L11,L12,L13とは別の階に設置されており、図示された例においては2階に配置されている。移動機器Meとしての掃除ロボットは、自力走行によって、あるいはエレベータ等の昇降装置の補助によって、1階と2階とを行き来可能である。
【0093】
本実施形態の照明器具L11,L21、各々がゲートモジュールとして機能する。ゲートモジュールは、メッシュネットワークである通信ネットワークCn1内において、一部の照明器具Lとともに小さなネットワーク(クラスタ)を構成するモジュールとして機能する。そして、複数のクラスタ間の無線通信は、ゲートモジュール同士によってなされる。ゲートモジュールとして機能する照明器具L11,L21は、たとえば上述した構成の照明器具Lの無線通信モジュール14の設定プログラム等を適宜変更することによって構築可能である。
【0094】
図示された例においては、同じ階に設置された照明器具L11,L12,L13よってクラスタCn11が構築されている。また、同じ階設置された照明器具L21,L22,L23によってクラスタCn12が構築されている。さらに、本実施形態においては、照明器具L11,L12,L13の第2無線通信部142が、第2プロトコルの通信ネットワークCn21を構築しており、照明器具L21,L22,L23の第2無線通信部142が、第2プロトコルの通信ネットワークCn22を構築している。そして、通信ネットワークCn21と通信ネットワークCn22との無線周波数が、互いに異なる設定とされている。本実施形態では、1階に配置された複数の照明器具L11,L12,L13(第1照明器具)の第2無線通信部142が送受信する無線周波数と、2階に配置された複数の照明器具L21,L22,L23(第2照明器具)の第2無線通信部142が送受信する無線周波数とは、互いに異なる。すなわち、照明器具L11,L12,L13の第2無線通信部142は、無線周波数が2.450GHzに設定されており、この周波数で第1ビーコン信号が送信される。一方、照明器具L21,L22,L23の第2無線通信部142は、無線周波数が2.460GHzに設定されており、この周波数で第2ビーコン信号が送信される。
【0095】
次に、照明システムA5の動作について、以下に説明する。
【0096】
たとえば、
図8を参照して説明した照明システムA1におけるステップS1~ステップS5を経て、移動機器Meが自機器の位置情報を取得する。この際、移動機器Meは、1階において清掃等の作業をしている。このため、移動機器Meは、照明器具L11,L12,L13からの第1ビーコン信号を受信し、これに基づいて測量処理を行う。移動機器 Meは、第1ビーコン信号を受信していることから、自機器が1階に位置することを把握する。次いで、移動機器Meは、自機器の1階における位置情報を基に位置データDpを作成し、通信ネットワークCn21を介して送信する(ステップS41)。通信ネットワークCn21を介して位置データDpを受信した照明器具L13は、転送データDtを作成し、転送する(ステップS42)。転送データDtを受信した照明器具L11は、転送データDtを制御装置Ctに転送する(ステップS43)。制御装置Ctは、受信した転送データDtから、移動機器Meが1階に位置しており、且つ1階における位置を認識し、たとえば、当該位置情報を管理端末Mdに送信する(ステップS44)。管理端末Mdでは、受信した位置情報に基づいて、たとえば表示部31に移動機器Meの位置を表示する(ステップS45)。この表示では、たとえば表示部31に1階と2階のフロアマップを表示し、そのうち1階に相当するエリアの該当位置に、移動機器Meを示すアイコン等を表示する。
【0097】
一方、ステップS42~S45と並行したタイミングで、または前後したタイミングで、移動機器Meは、1階から2階に移動する(ステップS46)。そして、2階に到着すると、たとえば、
図8を参照して説明した照明システムA1におけるステップS1~ステップS5を経て、移動機器Meが自機器の位置情報を取得する。この際、移動機器Meは、照明器具L21,L22,L23からの第2ビーコン信号を受信し、これに基づいて測量処理を行う。移動機器Meは、第2ビーコン信号を受信していることから、自機器が2階に位置することを把握する。次いで、移動機器Meは、自機器の2階における位置情報を基に位置データDpを作成し、通信ネットワークCn22を介して送信する(ステップS47)。通信ネットワークCn22を介して位置データDpを受信した照明器具L23は、転送データDtを作成し、転送する(ステップS48)。転送データDtを受信した照明器具L21は、転送データDtを制御装置Ctに転送する(ステップS49)。制御装置Ctは、受信した転送データDtから、移動機器Meが2階に位置しており、且つ2階における位置を認識し、たとえば、当該位置情報を管理端末Mdに送信する(ステップS50)。管理端末Mdでは、受信した位置情報に基づいて、たとえば表示部31に移動機器Meの位置を表示する(ステップS51)。この表示では、たとえば表示部31に表示されたフロアマップにおける2階に相当するエリアの該当位置に、移動機器Meを示すアイコン等を表示する。
【0098】
本実施形態によっても、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得することができる。また、通信ネットワークCn21と通信ネットワークCn22とは、互いの無線周波数が異なる。これにより、移動機器Meは、受信したビーコン信号の無線周波数が通信ネットワークCn21および通信ネットワークCn22のいずれの無線周波数であるかによって、1階および2階のいずれに位置するかをより正確に且つより容易に判断することができる。
【0099】
<第6実施形態>
図20~
図22は、本発明の第6実施形態に係る照明システムの概略配置図およびシーケンスダイアグラムである。本実施形態の照明システムA6は、1以上の監視カメラCmを備える。監視カメラCmは、各々が特定領域の状態を監視するものであり、本発明の監視機器に相当する。
図20に示された例においては、複数の監視カメラCmが配置されている。各監視カメラCmが監視する特定領域は、たとえば作業対象である荷物が順次搬送されるベルトコンベアの一部ずつである。また、照明システムA6は、複数の移動機器Meを備えている。本実施形態の複数の移動機器Meは、たとえばベルトコンベアによって搬送される複数の荷物を対象とする作業の従事者や、ベルトコンベア等の設備の管理者などが身につけたIDカードやウェアラブル端末として構成されている。同図においては、説明の便宜上、9つの照明器具L1~L9および4つの移動機器Me1~Me4を備える場合を例に説明するが、より大きな工場等に照明システムA6が適用される場合、複数の照明器具Lの個数は顕著に多数となり、たとえば100個を超える場合がある。また、複数の移動機器Meの個数も、大幅に多くなる場合がある。
【0100】
次に、照明システムA6の動作について、以下に説明する。
【0101】
照明システムA6では、たとえば
図8を参照して説明した照明システムA1におけるステップS1~ステップS5を経て、移動機器Me1~Me4のそれぞれが自機器の位置情報を取得し、位置データDpを送信する(ステップS61)。これらの位置データDpは、複数の照明器具Lが順次受信し、転送データDtに変換して送信する(ステップS62)。照明器具L1は、これらの転送データDtを受信し、制御装置Ctに転送する(ステップS63)。制御装置Ctは、受信した転送データDtに基づき移動機器Me1~Me4の位置データを管理端末Mdに送信する(ステップS64)。管理端末Mdは、移動機器Me1~Me4を、表示部31のたとえば作業マップに表示する(ステップS65)。作業マップは、たとえば、
図20に図示された内容と同様の図であってもよい。
【0102】
次に、監視カメラCmの撮影画像を画像解析すること等によって、たとえば
図20に図示された作業監視エリアの特定領域Arにおいて異常が発生したことを検知する(ステップS66)。この監視処理および検知処理は、図外の別に設置された制御装置で実行してもよいし、制御装置Ctによって実行してもよい。異常検知情報を受信した管理端末Mdでは、制御部32の特定処理によって、あるいは使用者の操作によって、特定領域Arに近い位置にある移動機器Meを特定する(ステップS67)。
図20に示す例においては、移動機器Me4が該当する。管理端末Mdから、特定された移動機器Me4の情報を制御装置Ctに送信し、制御装置Ctは、移動機器Me4近傍の照明器具Lに異常を報知するコマンドを送信する(ステップS68)。
図20に示す例においては、照明器具L9が該当する。異常報知データは、通信ネットワークCn1を介して照明器具L1から照明器具L9に転送される(ステップS69)。異常報知データを受信した照明器具L9は、異常報知データに基づいた異常報知点灯を行う(ステップS70)。この異常報知点灯は、たとえば、通常の点灯状態とは異なる点滅点灯や、異常を示す色の点灯等であればよい。この異常報知点灯により、特定領域Arの近傍に位置する作業従事者や設備管理者に異常が報知される。
【0103】
図23は、異常報知の異なる例を示している。上述したステップS66,S67が実行されると、制御装置Ctは、作業監視エリアの特定領域Arの近傍に位置する移動機器Me4に異常を放置するコマンドを作成し、通信ネットワークCn1を介して異常報知データとして送信する(ステップS71)。異常報知データを受信した照明器具L1は、通信ネットワークCn1を介して異常報知データを転送する(ステップS72)。転送された異常報知データを照明器具L9が受信し、第2プロトコルに変換して通信ネットワークCn2を介して送信する。移動機器Me4は、照明器具L9からの異常報知データを通信ネットワークCn2を介して受信する。なお、照明器具L9からの送信の他に、照明器具L1等が通信ネットワークCn2に異常報知データを送信可能であり、移動機器Meは、照明器具L9以外の照明器具Lから送信された異常報知データを通信ネットワークCn2を介して受信してもよい。異常報知データを受信した移動機器Meは、異常報知処理を実行する。異常報知処理としては、たとえばブザーを鳴らしたり、表示部51に異常を示すメッセージやアイコン等を表示したりするといった処理が挙げられる。この異常報知処理により、移動機器Me4を身につけた作業従事者や設備管理者に異常が報知される。
【0104】
本実施形態によっても、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得することができる。また、照明システムA6を利用して、異常が発生した特定領域Arの近くの使用者(作業者)を、より早急に特定領域Arに向かわせることができる。これは、作業効率の向上に好ましい。
【0105】
<第7実施形態>
図24~
図29は、本発明の第7実施形態に係る照明システムのシステム構成図、概略配置図、ブロック図およびシーケンスダイアグラムである。本実施形態の照明システムA7は、複数のセンサ機器Esを備える。
図25に示された例においては、複数のセンサ機器Esが配置されている。また、照明システムA7は、複数の移動機器Meを備えている。本実施形態の複数の移動機器Meは、複数の照明器具Lが配置された場での使用者が保持する携帯端末として構成されている。同図においては、説明の便宜上、9つの照明器具L1~L9、4つの移動機器Me1~Me4および3つのセンサ機器Es1~Es3を備える場合を例に説明するが、より大規模な照明システムA7においては、複数の照明器具Lの個数は顕著に多数となり、たとえば100個を超える場合がある。また、複数の移動機器Meや複数のセンサ機器Esの個数も、大幅に多くなる場合がある。
【0106】
〔センサ機器Es〕
センサ機器Esは、設置された環境に関する物理量を測定し、その測定結果を無線通信によって送信する機器である。
図26は、センサ機器Esのブロック図である。本実施形のセンサ機器Esは、センサ部41、制御部42、記憶部43、無線通信部44および電源部45を備える。なお、センサ機器Esの具体的構成は何ら限定されず、専用の機器として設置された構成の他に、照明システムA7が適用された建物(オフィスビル、物流装置、商業施設などの店舗、マンションなどの住居など)に設置された空調設備、照明器具等の制御スイッチ等の形態であってもよい。
【0107】
以降の説明においては、センサ機器Esの一般的な構成を述べる場合にセンサ機器Esと称するとともに、複数のセンサ機器Esを区別する場合にセンサ機器Es1、センサ機器Esn等の符号を適宜用いる場合がある。複数のセンサ機器Es1、センサ機器Esnは、それぞれの構成が同一であってもよいし、互いの一部が共通していてもよいし、互いに異なる構成であってもよい。以降の説明においては、特段の記載がない限り、複数のセンサ機器Es1、センサ機器Esnが同一の構成である場合を例に説明する。
【0108】
センサ部41は、センサ機器Esの環境に関する物理量を測定する機能を果たすものである。センサ部41の機能は特に限定されず、たとえば温度センサ、湿度センサ、照度センサ、人感センサ、風量センサ等の種々の機能が挙げられる。また、センサ部41の測定原理は何ら限定されず、光学的手法や電磁的手法を用いた非接触方式や、接触方式、あるいはセンサ部41内に内蔵した特定部位の状態監視によって測定する方式等、様々な方式を採用できる。
【0109】
制御部42は、センサ機器Esの各部を制御するためのものである。制御部42の具体的構成は特に限定されず、たとえばCPUからなる。記憶部43は、制御部42の制御に必要なプログラムや設定条件等の情報を記憶するためのものであり、たとえば半導体メモリ等からなる。
【0110】
無線通信部44は、対応する照明器具Lと上述した第2プロトコルを用いた無線通信を行うためのものである。第2無線通信部142を有する照明器具Lと対応するセンサ機器Esとが、通信ネットワークCn2を構築している。
【0111】
本実施形態においては、センサ機器Esが固有の機器IDを有する。機器IDの具体例は何ら限定されず、たとえばMAC(Media Access Control)アドレスが用いられる。なお、機器IDは、無線通信部44に記憶されていてもよいし、たとえば記憶部43に記憶されていてもよい。
【0112】
電源部45は、センサ部41、制御部42および無線通信部44等に動作に必要な電力を供給するためのものである。電源部45は、たとえば商用の交流100Vまたは200V電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータとしての機能や、変圧機能等を有するもの、あるいは充電可能なバッテリーである。
【0113】
無線通信部44は、通信ネットワークCn2を介して対応する照明器具Lから受信した要求信号(転送信号)が、自機器の機器IDを含む場合、当該要求信号を制御部42に送信する。制御部42は、要求信号の要求にしたがってセンサ部41に測定要求を送信する。センサ部41は測定の結果得られた測定値を制御部42に出力する。制御部42は、機器ID、センサ機器Esの位置情報、センサ機器Esの種類、測定データの単位、測定値、測定時刻(タイムスタンプ)等を含む測定データを生成し、無線通信部44から送信する。
【0114】
次に、照明システムA7の動作について、
図27~
図29を参照しつつ以下に説明する。
【0115】
照明システムA7では、たとえば
図8を参照して説明した照明システムA1におけるステップS1~ステップS5を経て、
図27に示すように、移動機器Me1~Me4のそれぞれが自機器の位置情報を取得し、位置データDpを送信する(ステップS81,S82)。たとえば、移動機器Me4からの位置データDp4は照明器具L9に送付され(ステップS81)、移動機器Me1の位置データDp1は、照明器具L1に送信される(ステップS82)。照明器具L9は、位置データDp4を照明器具L1に転送する(ステップS83)。本実施形態においては、照明器具L1は、移動機器Me1~移動機器Me4からの位置データDp1~Dp4のすべてを受信する(ステップS84)。そして、位置データDp1~Dp4をまとめて制御装置Ctに転送する(ステップS85)。制御装置Ctは、位置データDp1~Dp4を受信することで、移動機器Me1~Me4の位置を取得する(ステップS86)。
【0116】
次に、
図28に示すように、センサ機器Esによる測定処理を行う(ステップS87,S88)。センサ機器Esによる測定処理は、各々のセンサ機器Esが定められた時刻や時間間隔で実行してもよい。あるいは、たとえば管理端末Mdからの要求を、制御装置Ctおよび複数の照明器具Lによって構築された通信ネットワークCn1を介して近傍の照明器具Lまで送信し、これを通信ネットワークCn2を介して各センサ機器Esが受信することによって実行してもよい。
【0117】
各センサ機器Esは、たとえば要求データに含まれる動作対象を特定する機器IDが、自機器の機器IDと認識した場合、当該供給データに応じた処理を行う。本実施形態では、センサ機器Es3のセンサ部41が温度センサおよび湿度センサであり、センサ機器Es3が設置された環境の温度および湿度を測定する。次いで、センサ機器Es3の制御部42は、たとえば、センサ機器Es3の機器ID、センサ機器Es3の位置情報、センサ機器Esnの種類、測定データの単位、センサ部41から取得した測定値、測定時刻(タイムスタンプ)等を含む測定データDm3を生成し、無線通信部44から通信ネットワークCn2を介して送信する(ステップS87)。同様に、センサ機器Es1は、測定データDm1を生成し、通信ネットワークCn2を介して送信する(ステップS88)。測定データDm3を受信した照明器具L9は、測定データDm3を転送データDtに変換し、通信ネットワークCn1を介して照明器具L1に転送する(ステップS89)。照明器具L1は、測定データDm1~Dm3またはこれらに対応する転送データDtを受信する(ステップS90)。そして、測定データDm1~Dm3をまとめて制御装置Ctに転送する(ステップS91)。制御装置Ctは、測定データDm1~Dm3に含まれる測定値である温度および湿度等と、必要に応じて、制御装置Ctの記憶部23に記憶されていた所定のテーブル等を比較することにより、センサ機器Es1~Es3のそれぞれが設置された場所ごとのWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)値を算出する(ステップS92)。
【0118】
次いで、
図29に示すように、制御装置Ctは、センサ機器Es1~Es3が設置されたそれぞれの場所のWBGT値に基づいて、たとえば各場所における使用者(作業者)の安全度合を判定する。ある場所のWBGT値が、作業を継続するのが好ましくないと判断される値である場合、報知が必要な領域と特定する。本実施形態では、特定領域Ar4がその対象領域として特定されている(ステップS93)。そして、制御装置Ctは、移動機器Me1~Me4の位置情報と特定領域Ar4の位置とを照らし合わせることにより、特定領域Ar4に最も近い移動機器Meとして、移動機器Me4を特定する(ステップS94)。そして、移動機器Me4を対象とした異常報知データを送信する(ステップS95)。この異常報知データは、照明器具L1によって転送され(ステップS96)、照明器具L9が受信する。そして、異常報知データは、照明器具L9から通信ネットワークCn2を介して移動機器Me4に送信される。移動機器Me4は、受信した異常報知データに含まれた内容に基づいて、使用者に異常を報知する(ステップS98)。移動機器Me4は、たとえば、ブザーを鳴らしたり、表示部51に異常を示すメッセージやアイコン等を表示したりするといった異常報知処理を行う。この異常報知処理により、移動機器Me4を身につけた使用者や作業者に異常が報知される。また、これらの処理に加えて、制御装置Ctは、WBGT値に基づいて異常報知が必要であると特定された領域において、所定時間(たとえば15分)異常、ある移動機器Meが同じ位置にとどまっている場合に、この使用者の体調不良が生じたと推測し、他の作業者を向かわせる旨の報知処理を別途行ってもよい。
【0119】
本実施形態によっても、ビーコン信号の混信を抑制し、移動機器の位置情報をより正確に取得することができる。また、WBGT値等に基づいて、領域の安全度合を評価可能であり、使用者(作業者)の安全確保をより確実に行うことができる。また、たとえば異常が報知された特定領域Ar4に、特定の作業者が所定時間以上とどまっている等の場合に、他の作業者を特定領域Ar4により早急に向かわせることができる。
【0120】
本発明に係る照明システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る照明システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。また、上述した実施形態をそれぞれ組み合わせる設計変更も行うことができる。
【符号の説明】
【0121】
A1,A4,A5,A6,A7:照明システム
11 :光源部
12 :制御部
13 :記憶部
14 :無線通信モジュール
15 :電源部
21 :表示部
22 :制御部
23 :記憶部
24 :無線通信部
25 :電源部
31 :表示部
32 :制御部
33 :記憶部
34 :無線通信部
35 :電源部
41 :センサ部
42 :制御部
43 :記憶部
44 :無線通信部
45 :電源部
51 :表示部
52 :制御部
53 :記憶部
54 :無線通信部
55 :電源部
61 :リレースイッチ
62 :制御部
64 :無線通信部
65 :電源部
141 :第1無線通信部
142 :第2無線通信部
Ar :特定領域
Cm :監視カメラ
Cn1,Cn2,Cn21,Cn22:通信ネットワーク
Cn3 :通信ネットワーク
Cn11,Cn12:クラスタ
Ct :制御装置
Dm1,Dm2,Dm3:測定データ
Dp,Dp1,Dp2,Dp3,Dp4:位置データ
Dt :転送データ
Es,Es1,Es2,Es3,Esn:センサ機器
L,L1,L11,L12,L13,L2,L21,L22,L23,L3,L4,L5,L6,L7,L8,L9:照明器具
Ln :照明器具
Md :管理端末
Me,Me1,Me2,Me3,Me4:移動機器
Up :給電ユニット
Ut :時計ユニット