(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】再帰反射装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
G01C15/06 T
(21)【出願番号】P 2023110591
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590003250
【氏名又は名称】株式会社マイゾックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 博己
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤治
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187857(JP,A)
【文献】特開2020-204576(JP,A)
【文献】特表平11-512176(JP,A)
【文献】特開2009-204557(JP,A)
【文献】特開2018-54541(JP,A)
【文献】特開2017-156096(JP,A)
【文献】特開2009-236663(JP,A)
【文献】特開2000-56110(JP,A)
【文献】特開2019-138782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが互いに直交した平面をなす3つの反射面、および、これらの前記反射面に向かって入射する入射光を透過するとともに前記入射光が前記反射面にて反射された再帰反射光を透過する光透過面を有するコーナーキューブプリズムを備えた再帰反射装置であって、
前記光透過面は、正三角形状をなす面であり、その底辺に対応する辺である非隣接辺と、前記底辺を除く2本の等辺に対応する辺である2本の隣接辺と、を備え、
8以上の偶数個の前記コーナーキューブプリズムの配置が、それらの前記光透過面の前記各隣接辺同士を密接させてひとつながりの環列をなすように構成されるプリズムアッセンブリを備え、
前記環列をなす前記コーナーキューブプリズムのそれぞれは、その前記光透過面を前記環列の輪の外側に向けた状態に配置され、かつ、
前記環列の輪の中心軸に対して垂直な向きの前記入射光が前記コーナーキューブプリズムに向けて入射されるという条件下において、
前記入射光が前記光透過面を透過する入射位置から、前記再帰反射光が前記光透過面を透過する出射位置に至るまでの光路長である第一の長さ、および、
前記中心軸に対して垂直な方向で見た、前記入射位置から前記中心軸までの最短距離と、
前記中心軸に対して垂直な方向で見た、前記中心軸から前記出射位置までの最短距離との和である第二の長さ、
の2つの長さが等しい関係を成立させる状態で、前記コーナーキューブプリズムが配置されている、
再帰反射装置。
【請求項2】
請求項1に記載された再帰反射装置であって、
前記プリズムアッセンブリは、8個の前記コーナーキューブプリズムを、それらの前記光透過面の前記各隣接辺同士の全体が密接された状態に配置した構成を備えている、
再帰反射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された再帰反射装置であって、
前記プリズムアッセンブリが、前記コーナーキューブプリズムを、個別に付け外すことが可能な保持状態で保持する保持機構を備えている、
再帰反射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の再帰反射装置であって、
前記保持機構は、
前記環列をなす前記コーナーキューブプリズムを前記中心軸の軸方向両側から挟み込む本体部の対と、
前記本体部のそれぞれに設けられて、前記保持状態にある前記コーナーキューブプリズムにおける前記非隣接辺を前記外側から掛止する掛止突起と、
前記本体部のそれぞれに取り付けられて、前記掛止突起が前記非隣接辺を掛止している前記コーナーキューブプリズムにおける、前記各隣接辺の間の角部に前記外側から係合される係合部と、を備え、
前記保持状態にある前記コーナーキューブプリズムを個別に付け外すことが、前記係合部の取り外しにより可能となる退避状態を実現する、
再帰反射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の再帰反射装置であって、
前記保持機構は、前記中心軸に対応する位置および方向に穿たれた貫通孔を備え、
前記貫通孔は、棒状部材が摺動可能に挿通されることで、前記プリズムアッセンブリを前記棒状部材が延びる方向に沿って摺動させることを可能とする、
再帰反射装置。
【請求項6】
請求項3に記載の再帰反射装置であって、
前記保持機構は、前記環列をなすように配置された前記コーナーキューブプリズムに対応する数のへこみを有し、
前記各へこみは、前記コーナーキューブプリズムのそれぞれにおける3つの前記反射面が集まるコーナー部分が装着されることで、前記コーナーキューブプリズムのそれぞれを保持する、
再帰反射装置。
【請求項7】
請求項5に記載の再帰反射装置であって、
前記棒状部材に対して外嵌される外嵌部材と、
前記外嵌部材に対して外嵌される外筒と、を備え、
前記外嵌部材は、
前記棒状部材に対して外嵌された状態において前記棒状部材の径方向外方の一方側に張り出す張出部と、
対をなす前記本体部のいずれかに対して係止し、当該本体部の周方向の回り止めを行う係止部と、を備え、
前記外筒は、前記外嵌部材に外嵌される際に、前記張出部を前記一方側から締め付けることで、前記外嵌部材を前記棒状部材に押止させる、
再帰反射装置。
【請求項8】
請求項7に記載の再帰反射装置であって、
対をなす前記本体部の少なくとも1つに水平検出器が取り付けられている、
再帰反射装置。
【請求項9】
請求項3に記載の再帰反射装置であって、
前記保持機構は、前記中心軸に対応する位置および方向に空けられた差し込み穴を備え、
前記差し込み穴には、前記保持機構に掛かる外力を支持する支柱体が差し込まれている、
再帰反射装置。
【請求項10】
請求項9に記載の再帰反射装置であって、
前記支柱体に支持され、かつ、測位システムのターゲットを取り付け可能な取付部を備えている、
再帰反射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再帰反射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セオドライトやトータルステーションは、これらがセットされる位置から発振された光を再帰反射装置が再帰反射した再帰反射光の入射方向を測定し、もって測量に資するデータを得る。このような再帰反射装置には、再帰反射が可能なコーナーキューブプリズムが用いられることがある。
【0003】
再帰反射装置に関しては、6つのコーナーキューブプリズムを組み合わせることにより、周方向の全周からの光を再帰反射可能なようにする技術が従前公知である(例えば特許文献1を参照)。特許文献1に開示された技術では、プリズムアッセンブリを構成する6つのコーナーキューブプリズムが第1部材と第2部材との組に挟持され、この挟持状態は保持機構により保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された再帰反射装置では、コーナーキューブプリズムの屈折率の影響を受けて、コーナーキューブプリズムの再帰反射が行われる仮想的な反射面の位置と、再帰反射装置における実際の中心軸の位置との間にズレ(オフセット)が生じる。これに対しては、再帰反射装置におけるオフセットをなくしたいというニーズがあった。
【0006】
本開示は、周方向の全周からの光を再帰反射することが可能な再帰反射装置において、この再帰反射装置のオフセットをなくすことを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の再帰反射装置は次の手段をとる。
【0008】
まず、第1の開示に係る再帰反射装置は、それぞれが互いに直交した平面をなす3つの反射面、および、これらの前記反射面に向かって入射する入射光を透過するとともに前記入射光が前記反射面にて反射された再帰反射光を透過する光透過面を有するコーナーキューブプリズムを備えた再帰反射装置であって、前記光透過面は、正三角形状をなす面であり、その底辺に対応する辺である非隣接辺と、前記底辺を除く2本の等辺に対応する辺である2本の隣接辺と、を備え、8以上の偶数個の前記コーナーキューブプリズムの配置が、それらの前記光透過面の前記各隣接辺同士を密接させてひとつながりの環列をなすように構成されるプリズムアッセンブリを備え、前記環列をなす前記コーナーキューブプリズムのそれぞれは、その前記光透過面を前記環列の輪の外側に向けた状態に配置され、かつ、前記環列の輪の中心軸に対して垂直な向きの前記入射光が前記コーナーキューブプリズムに向けて入射されるという条件下において、前記入射光が前記光透過面を透過する入射位置から、前記再帰反射光が前記光透過面を透過する出射位置に至るまでの光路長である第一の長さ、および、前記入射位置から前記中心軸までの最短距離と、前記中心軸から前記出射位置までの最短距離との和である第二の長さ、の2つの長さが等しい関係を成立させる状態で、前記コーナーキューブプリズムが配置されているものである。
【0009】
なお、ここでいう「正三角形状をなす面」には、正三角形において各角が丸められて形成される面や各角が面取りされて平坦に形成される面が含まれる。同じく、「底辺」とは、正三角形の2本の等辺において両端となる頂点の間を結ぶ線分である。
【0010】
また、ここでいう「入射位置」とは、反射面に入射される入射光が光透過面を透過する、光透過面上の位置である。同じく、「出射位置」とは、入射光が反射面で反射して再帰される再帰反射光が光透過面を透過する、光透過面上の位置である。
【0011】
第1の開示に係る再帰反射装置によれば、3つの反射面はそれぞれが互いに直交した平面をなすことから、光透過面の入射位置に入射する入射光と、光透過面の出射位置で再帰される再帰反射光と、が平行関係となる。また、プリズムアッセンブリのコーナーキューブプリズムにおいて光透過面は、環列の周方向の全周で光を再帰反射することができる。また、プリズムアッセンブリは、コーナーキューブプリズムの再帰反射が行われる仮想的な反射面の位置と、再帰反射装置における実際の中心軸の位置との間のズレを調整することができる。これにより、周方向の全周からの光を再帰反射することが可能な再帰反射装置において、この再帰反射装置のオフセットをなくすことができる。
【0012】
ここで、第1の開示に係る再帰反射装置は、後述する第2の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第2の開示に係る再帰反射装置において、前記プリズムアッセンブリは、8個の前記コーナーキューブプリズムを、それらの前記光透過面の前記各隣接辺同士の全体が密接された状態に配置した構成を備えているものである。
【0013】
上述した第1の開示では、複数のコーナーキューブプリズムを、それらの光透過面の各隣接辺同士を密接させてひとつながりの環列をなすことで、この環列の周方向の全周で光を再帰反射する。このため、プリズムアッセンブリにおいて、コーナーキューブプリズムの光透過面の隣接辺が隣の光透過面の隣接辺と密接しない非密接部分が存在する場合、この非密接部分では上記全周での光の再帰反射が起こらない。これに対し、第2の開示に係る再帰反射装置の構成によれば、各コーナーキューブプリズムから上記非密接部分をなくして、この非密接部分により上記全周での光の再帰反射が起こらなくなることを避けることができる。これにより、入射光が再帰反射する光透過面の有効範囲を広くとることができる。また、8個のコーナーキューブプリズムでプリズムアッセンブリを構成すると、10以上の偶数個のコーナーキューブプリズムでプリズムアッセンブリを構成する場合よりも、その中心軸の径方向におけるサイズを再帰反射装置全体において小さく設定することができる。
【0014】
ここで、第1の開示または第2の開示に係る再帰反射装置は、後述する第3の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第3の開示に係る再帰反射装置において、前記プリズムアッセンブリが、前記コーナーキューブプリズムを、個別に付け外すことが可能な保持状態で保持する保持機構を備えているものである。
【0015】
第3の開示に係る再帰反射装置によれば、プリズムアッセンブリにおいてコーナーキューブプリズムが破損した際には、この破損したコーナーキューブプリズムだけを外して、破損していないコーナーキューブプリズムを代わりに付けることができる。
【0016】
ここで、第3の開示に係る再帰反射装置は、後述する第4の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第4の開示に係る再帰反射装置において、前記保持機構は、前記環列をなす前記コーナーキューブプリズムを前記中心軸の軸方向両側から挟み込む本体部の対と、前記本体部のそれぞれに設けられて、前記保持状態にある前記コーナーキューブプリズムにおける前記非隣接辺を前記外側から掛止する掛止突起と、前記本体部のそれぞれに取り付けられて、前記掛止突起が前記非隣接辺を掛止している前記コーナーキューブプリズムにおける、前記各隣接辺の間の角部に前記外側から係合される係合部と、を備え、前記保持状態にある前記コーナーキューブプリズムを個別に付け外すことが、前記係合部の取り外しにより可能となる退避状態を実現するものである。
【0017】
第4の開示に係る再帰反射装置によれば、保持状態にあるコーナーキューブプリズムを個別に付け外す際、本体部の片方に設けられた掛止突起は、掛止対象のコーナーキューブプリズムが保持機構から脱落することを抑えることができる。また、退避状態にあるコーナーキューブプリズムを外す際、このコーナーキューブプリズムを掛止突起に掛止している状態で角部を外側に引き出してコーナーキューブプリズムを外すことができる。
【0018】
ここで、第4の開示に係る再帰反射装置は、後述する第5の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第5の開示に係る再帰反射装置において、前記保持機構は、前記中心軸に対応する位置および方向に穿たれた貫通孔を備え、前記貫通孔は、棒状部材が摺動可能に挿通されることで、前記プリズムアッセンブリを前記棒状部材が延びる方向に沿って摺動させることを可能とするものである。
【0019】
第5の開示に係る再帰反射装置によれば、プリズムアッセンブリの保持機構に備えられている貫通孔が棒状部材を摺動することで、当該プリズムアッセンブリは棒状部材が延びる方向に沿って摺動することができる。
【0020】
ここで、第3の開示に係る再帰反射装置は、後述する第6の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第6の開示に係る再帰反射装置において、前記保持機構は、前記環列をなすように配置された前記コーナーキューブプリズムに対応する数のへこみを有し、前記各へこみは、前記コーナーキューブプリズムのそれぞれにおける3つの前記反射面が集まるコーナー部分が装着されることで、前記コーナーキューブプリズムのそれぞれを保持するものである。
【0021】
第6の開示に係る再帰反射装置によれば、コーナーキューブプリズムのそれぞれを保持機構の各へこみに装着させてプリズムアッセンブリを構成することで、当該コーナーキューブプリズムのそれぞれの位置合わせの作業性を向上させることができる。
【0022】
ここで、第5の開示に係る再帰反射装置は、後述する第7の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第7の開示に係る再帰反射装置において、前記棒状部材に対して外嵌される外嵌部材と、前記外嵌部材に対して外嵌される外筒と、を備え、前記外嵌部材は、前記棒状部材に対して外嵌された状態において前記棒状部材の径方向外方の一方側に張り出す張出部と、対をなす前記本体部のいずれかに対して係止し、当該本体部の周方向の回り止めを行う係止部と、を備え、前記外筒は、前記外嵌部材に外嵌される際に、前記張出部を前記一方側から締め付けることで、前記外嵌部材を前記棒状部材に押止させるものである。
【0023】
第7の開示に係る再帰反射装置によれば、外嵌部材は、その張出部を外筒により棒状部材の径方向外方の一方側から締め付けられることで棒状部材に押止され、もって棒状部材に対する外嵌部材の位置ズレや回動が生じにくくなる。また、外嵌部材は、その係止部が本体部のいずれかに対して係止し、当該本体部の周方向の回り止めを行う。これらにより、プリズムアッセンブリは、棒状部材に対する周方向において所定の位置に位置することができる。
【0024】
ここで、第7の開示に係る再帰反射装置は、後述する第8の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第8の開示に係る再帰反射装置は、対をなす前記本体部の少なくとも1つに水平検出器が取り付けられているものである。
【0025】
第8の開示に係る再帰反射装置によれば、水平検出器は、水平方向に対するプリズムアッセンブリの傾きを検出することができる。これにより、プリズムアッセンブリが摺動する棒状部材が延びる方向に沿う方向において水平出しの精度が向上され、再帰反射装置を用いた測定の精度を向上させることができる。
【0026】
ここで、第3の開示に係る再帰反射装置は、後述する第9の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第9の開示に係る再帰反射装置において、前記保持機構は、前記中心軸に対応する位置および方向に空けられた差し込み穴を備え、前記差し込み穴には、前記保持機構に掛かる外力を支持する支柱体が差し込まれているものである。
【0027】
第9の開示に係る再帰反射装置によれば、支柱体が、光を遮ることなく、コーナーキューブプリズムの環列の輪の中心軸に沿う方向においてプリズムアッセンブリを補強することができる。
【0028】
ここで、第9の開示に係る再帰反射装置は、後述する第10の開示に係る再帰反射装置であっても良い。第10の開示に係る再帰反射装置において、前記支柱体に支持され、かつ、測位システムのターゲットを取り付け可能な取付部を備えているものである。
【0029】
第10の開示に係る再帰反射装置によれば、保持機構の支柱体に測位システムのターゲットを取り付けることで、この再帰反射装置の位置をトータルステーション、および測位システムのそれぞれで測定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示は、上記各構成をもつことにより、周方向の全周からの光を再帰反射することが可能な再帰反射装置において、この再帰反射装置におけるオフセットをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1の実施形態に係る再帰反射装置100の使用状態を示す説明図である。
【
図2】第1の実施形態に係る再帰反射装置100の斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る再帰反射装置100の正面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る再帰反射装置100の平面図である。
【
図8】第1の実施形態に係る再帰反射装置100の分解斜視図である。
【
図9】
図3で保持機構150が挟持を緩めて係合部210を外したときの説明図である。
【
図10】第2の実施形態に係る再帰反射装置600の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施形態>
本開示の第1の実施形態に係る再帰反射装置100は、
図1に示すように、測量を行いたい測定地点に設置固定される。そして、再帰反射装置100は、トータルステーション900を使用して行う測量作業において、このトータルステーション900が発振するレーザー光LRを再帰反射する用途に使用される。
【0033】
<第1の実施形態に係る再帰反射装置の構成>
再帰反射装置100は、
図8に示すように、8以上の偶数個(本実施形態では8個)のコーナーキューブプリズム131を備えたプリズムアッセンブリ130(
図2参照)を備えている。プリズムアッセンブリ130は、
図2に示すように、そのコーナーキューブプリズム131が、これらの光透過面133の各隣接辺136B同士を密接させてひとつながりの環列137をなす配置となるように構成されている。環列137をなすコーナーキューブプリズム131のそれぞれは、その光透過面133を環列137の輪の外側に向けた状態に配置されている。また、プリズムアッセンブリ130は、コーナーキューブプリズム131を、個別に付け外すことが可能な保持状態で保持する保持機構150を備えている。なお、ここでいう入射光は、
図5および
図6に示すように、トータルステーション900(
図1参照)が放出するレーザー光LRであって光透過面133に入射されるものである。
【0034】
<コーナーキューブプリズムの構成>
コーナーキューブプリズム131は、
図8に示すように、それぞれが互いに直交した平面をなす3つの反射面132、および1つの光透過面133を有する、直角三角錐形状をなす。この直角三角錐形状において、3つの反射面132は、その直角の角が1つに集まってコーナー部分132Aを構成する。
【0035】
3つの反射面132は、それぞれが直角二等辺三角形状をなす面である。また、光透過面133は、正三角形状をなす面である。ここで、上記「直角二等辺三角形状をなす面」は、直角二等辺三角形状において各角が丸められた面や各角が面取りされた面を含む概念である。また、上記「正三角形状をなす面」は、正三角形状において各角が丸められた面や各角が面取りされた面を含む概念である。本実施形態においては、コーナーキューブプリズム131は、上記直角三角錐形状における、全ての稜線および(コーナー部分132Aを含む)全ての角部分に面取り加工が施されたものである。この面取り加工は、例えば、レーザー光LRのビーム径より小さい幅の面を形成する糸面取り加工である。
【0036】
光透過面133は、正三角形状の底辺に対応する辺である非隣接辺136Aと、底辺を除く2本の等辺に対応する辺である2本の隣接辺136Bと、を備えている。同じく、光透過面133は、各隣接辺136Bの間に角部134を備えている。すなわち、光透過面133において角部134の対辺が非隣接辺136Aとなる。
【0037】
3つの反射面132には、入射光を反射する反射材が設けられている。また、光透過面133は、3つの反射面132に入射する入射光およびこの入射光が3つの反射面132にて反射された再帰反射光を透過する。この再帰反射光は、入射光と平行で、かつ、この入射光とは反対の向きに進む光である。
【0038】
<プリズムアッセンブリの構成>
プリズムアッセンブリ130は、
図8に示すように、上述したコーナーキューブプリズム131を8個配置した構成である。すなわち、プリズムアッセンブリ130は、8個のコーナーキューブプリズム131を、それらの光透過面133の各隣接辺136B同士の全体が密接された状態に配置した構成を備えている。言い換えると、プリズムアッセンブリ130を構成するコーナーキューブプリズム131は、その光透過面133の隣接辺136Bの両端が、隣の光透過面133の隣接辺136Bの両端と隣り合う関係となる。
【0039】
また、プリズムアッセンブリ130のコーナーキューブプリズム131のそれぞれは、
図2に示すように、その光透過面133の向きが互い違いになるように並べられる。言い換えると、プリズムアッセンブリ130における8枚の光透過面133は、正反四角柱の側面と同じ形状を呈するように並べられる。
【0040】
また、コーナーキューブプリズム131は、後述する、第一の長さ、および第二の長さが等しい関係を成立させる状態で配置されている。
【0041】
ここで、第一の長さは、環列137の輪の中心軸C10に対して垂直な向きの入射光がコーナーキューブプリズム131に向けて入射されるという条件下において、入射光が光透過面133を透過する入射位置IPから、再帰反射光が光透過面133を透過する出射位置OPに至るまでの光路長である。ここで、「光路長」とは、ある物質中を光が進む場合に定義される値であり、長さの次元を有する。ここで、物質の屈折率が部位によらず均質とみなすことができる場合、光路長は、物質中を光が進むルートの長さの総和と、この物質の屈折率との積として与えられる。
【0042】
本実施形態においては、コーナーキューブプリズム131は、その屈折率(以下、「n」とも称する。)が部位によらず均質となるように調製されている。また、コーナーキューブプリズム131において、入射位置IPに入射した入射光は、
図5に示すように、まず、第一反射位置RP1に至ってそこで反射する。この反射光は、第一反射位置RP1から第二反射位置RP2に至って再帰反射光となる。この再帰反射光は、出射位置OPに至ってそこから出射される。したがって、第一の長さは、(L11+L12+L13)×nの形で与えられる。ここで、L11は、入射位置IPから第一反射位置RP1までの長さである。また、L12は、第一反射位置RP1から第二反射位置RP2までの長さである。また、L13は、第二反射位置RP2から出射位置OPに至るまでの長さである。
【0043】
また、第二の長さは、
図6に示すように、上記条件下における、入射位置IPから中心軸C10までの最短距離である入射最短距離L21と、中心軸C10から出射位置OPまでの最短距離である出射最短距離L22との和である。
【0044】
また、ここでいう「入射位置IP」とは、反射面132に入射される入射光が光透過面133を透過する、光透過面133上の位置である。同じく、「出射位置OP」とは、入射光が反射面132で反射して再帰される再帰反射光が光透過面133を透過する、光透過面133上の位置である。
【0045】
<保持機構の構成>
保持機構150は、
図2に示すように、環列137をなすコーナーキューブプリズム131のそれぞれを、その光透過面133が環列137の輪の外側に向いた状態で保持する。保持機構150は、
図8に示すように、本体部110の対と、軸部140と、掛止突起220と、係合部210と、貫通孔103とを備えている。本体部110の対は、環列137をなす8個のコーナーキューブプリズム131を、中心軸C10の軸方向両側から挟み込んで挟持状態とする。軸部140は、コーナーキューブプリズム131を所定の位置に位置合わせさせる。掛止突起220は、コーナーキューブプリズム131における非隣接辺136Aを環列137の輪の外側から掛止する。係合部210は、掛止突起220が掛止しているコーナーキューブプリズム131における角部134を環列137の輪の外側から係合する。貫通孔103は、棒状部材60が摺動可能に挿通されることで、プリズムアッセンブリ130を棒状部材60(
図5参照)が延びる方向に沿って摺動させることを可能とする。以下に本体部110と、軸部140と、掛止突起220と、係合部210と、貫通孔103とを説明する。
【0046】
<本体部の構成>
本体部110の対は、一端側本体部A110と、他端側本体部B110との対である。ここで、一端側本体部A110は、他端側本体部B110に対向する部分である対向部分A111を有する。他端側本体部B110は、一端側本体部A110に対向する部分である対向部分B111を有する。本実施形態においては、対向部分A111および対向部分B111は、それぞれ黒色の「むくみ糸巻き」の意匠(角丸正方形の4辺をそれぞれ内側に湾曲させた形状)をかたどった金属板をなす。そして、対向部分A111、B111の各辺は、プリズムアッセンブリ130をなすコーナーキューブプリズム131のそれぞれにおいて各非隣接辺136Aの並びに沿うように位置される。
【0047】
対となる本体部110において、一端側本体部A110の対向部分A111、および他端側本体部B110の対向部分A111は、
図8に示すように、同じ形状をなす。このため、以下においては、対向部分A111、B111のそれぞれの構成について、その詳細な説明を対向部分B111の形状の説明により代表させて行う。そして、対向部分A111の構成については、対向部分B111における構成のそれぞれの符号である頭文字「B」を頭文字「A」に置き換えることで対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0048】
対向部分B111には、その内側に湾曲した4辺のそれぞれに対応して、挿込穴B111Fが2つずつ設けられている。本実施形態において、挿込穴B111Fは、掛止片221(後述)が挿込可能な大きさの長穴であり、かつ掛止片221が挿し込まれることで対向部分B111から突起部221A(後述)が突出されるように形成されている。そして、挿込穴B111Fは、上記挟持状態において本体部110の対に挟み込まれるコーナーキューブプリズム131の非隣接辺136Aに沿うように位置されている。また、挿込穴B111Fの長穴は、その長手方向が挟持状態において非隣接辺136Aと平行となる向きに配設されている。2つの挿込穴B111Fは、それぞれが互いに離間し、かつ角部134から離れるように位置されている。
【0049】
対向部分B111における4つの角丸は、
図4に示すように、それぞれ係合穴B111Aを1つずつ備えている。本実施形態において、係合穴B111Aは、
図9に示すように、ネジ穴B111Bと、このネジ穴B111Bの開口縁部を円筒状のしゃくり面としてなるザグリB111Cとを備えたザグリ穴である。ここで、ザグリB111Cは、係合部210(後述)が「すきまばめ」のはめあいで取り付けられて係合される凹部である。ネジ穴B111Bは、ザグリB111Cの底面の中央において、この底面に垂直に空けられた穴である。この穴は、係合部210が係合穴B111Aに取り付けられたとき、皿ネジ201Aの軸が係合部210から張り出されている張り出し長さよりも深くなるように設計されている。そして、係合穴B111Aは、上記挟持状態において本体部110の対に挟み込まれるコーナーキューブプリズム131の角部134に接触するように位置されている。
【0050】
対向部分B111は、
図8に示すように、軸部140の軸方向における端に対して「すきまばめ」のはめあいをなす嵌込穴B117を備えている。ここで、嵌込穴B117の穴底には、ザグリ穴B118の下穴B118Aが貫通されている。ザグリ穴B118は、嵌込状態(後述)の軸部140をネジ81にてねじ止めするためのネジ穴である。ザグリ穴B118のザグリはネジ81の頭81Bを全て収容し、下穴B118Aの深さはネジ81の軸81Aより短くなるように設計されている。また、軸部140のネジ穴142A(後述)の深さがネジ81の軸81Aより長くなるように設計されている。すなわち、他端側本体部B110において、支持部240(後述)は、ネジ81の頭81Bに干渉することなく付設される。
【0051】
一端側本体部A110のザグリ穴A118(
図5参照)の構成も、上記ザグリ穴B118と同じであり、一端側本体部A110において、水平検出器320(後述)は、ネジ81の頭81Bに干渉することなく付設される。
【0052】
一端側本体部A110は、対向部分A111の側と反対側において非対向部分A112を有する。この非対向部分A112は、環列137の輪の中心軸C10に対して垂直な面をなす台である。非対向部分A112には、ザグリ穴A118と干渉しない位置に、3つのネジ穴A112Aが設けられている。
【0053】
他端側本体部B110は、
図5に示すように、対向部分B111の側と反対側において非対向部分B112を有する。この非対向部分B112には、他端側に突出される、外ねじの筒をなす内筒部230が設けられている。すなわち、非対向部分B112には、他端側貫通孔B113(後述)に棒状部材60が摺動可能に挿通されている状態において当該棒状部材60の外周に沿うように外方に延び出された管壁をなす内筒部230が設けられている。
【0054】
内筒部230は、雄ねじ部231と、ガイド面233と、係止溝234と、を備えている。雄ねじ部231は、支持部240(後述)の雌ねじ部241に螺合する螺合状態とされるねじ山の面である。ガイド面233は、内筒部230の筒の内周縁部をC面取りした傾斜面である。このガイド面233は、偏心型位置決めピン70(後述)が棒状部材60に対して外嵌された外嵌状態において、偏心型位置決めピン70の一端側斜面73A(後述)がスライドする面である。係止溝234は、内筒部230の筒の軸方向における端を矩形に切り欠いて形成される溝(ノッチ)である。この係止溝234は、外嵌状態の偏心型位置決めピン70における係止部74が係止可能な大きさである。
【0055】
<軸部の構成>
軸部140は、軸部貫通孔143(後述)を備えた筒をなす。この筒の軸方向における両端は、それぞれ、嵌込穴A117、B117に対して所定の配設向きではめ込まれた嵌込状態とされている。また、軸部140の両端には、この軸部140が嵌込穴A117、B117に対して上記配設向きとされたときに、ザグリ穴A118またはザグリ穴B118に連通されるネジ穴142Aが設けられている。これらのネジ穴142Aには、ザグリ穴A118またはザグリ穴B118に入れられたネジ81が螺合される。この構成は、軸部140を本体部110の対に対して固定する。すなわち、軸部140は、嵌込状態(
図5参照)で固定されるとき、本体部110の対に挟持状態を実現させるものである。ここで、軸部140は、フレーム141と、筒部142とを金属インサート成形により一体成形させた構成である。フレーム141は、プリズムアッセンブリ130を構成する位置に8個のコーナーキューブプリズム131のそれぞれを合わせるジグである。また、筒部142は、軸部貫通孔143と、上記ネジ穴142Aとを備えた筒である。以下にフレーム141と、筒部142とを説明する。
【0056】
<フレームの構成>
軸部140のフレーム141は、環列137をなすように配置される8個のコーナーキューブプリズム131に対応する8つのへこみ141Aを有している。これら8つのへこみ141Aは、軸部140の周方向において略等間隔に設けられた、略三角錐形状のへこみである。各へこみ141Aは、8個のコーナーキューブプリズム131のそれぞれにおけるコーナー部分132Aが装着されることで、コーナーキューブプリズム131のそれぞれを保持する。この際、各へこみ141Aは、各コーナーキューブプリズム131における各反射面132に対し、環列137の輪の内側から係合する状態となる。また、各へこみ141Aに装着された、各コーナーキューブプリズム131の各コーナー部分132Aは、環列137の周方向において互いに離れた状態に位置されている。
【0057】
本実施形態においては、各へこみ141Aは、
図9に示すように、装着対象となるコーナーキューブプリズム131のコーナー部分132Aに対して、遊びS20を持った形状に形成されている。この遊びS20の大きさは、コーナーキューブプリズム131の角部134を環列137の輪の外側に引き出す際(
図9の想像線を参照)の、コーナー部分132Aのぐらつきを吸収できる大きさに設定されている。
【0058】
<筒部の構成>
筒部142は、本体部110の対を固定するとともにフレーム141を補強する。ここで、筒部142は、その筒の軸方向における両端の間にくびれ142Bを備えている。本実施形態においては、くびれ142Bは、円筒形の軸方向両側に円錐台をつなぎ合わせた砂時計形状を呈する。筒部142の筒の軸方向における端には、嵌込状態の一端側本体部A110におけるザグリ穴A118の下穴A118Aに対応する(連通される)ネジ穴142Aが設けられている。同じく、筒部142の筒の軸方向における上記端と反対側の端には、嵌込状態の他端側本体部B110におけるザグリ穴B118の下穴B118Aに対応する(連通される)ネジ穴142Aが設けられている。これらのネジ穴142Aは、本体部110の対において下穴A118A、B118Aに連通されているとき、へこみ141Aに装着したコーナーキューブプリズム131の非隣接辺136Aが掛止突起220に掛止するような位置関係にある。なお、ネジ穴142Aは、その深さがネジ81の軸81Aより長くなるように設定されている。
【0059】
<掛止突起と係合部との組み合わせ>
保持機構150の対向部分B111には、掛止突起220と、係合部210と、が付設されている。以下に掛止突起220と、係合部210とを説明する。
【0060】
<掛止突起の構成>
掛止突起220は、
図2に示すように、対向部分A111および対向部分B111のそれぞれにおける、内側に湾曲した4辺に対応して2つずつ設けられる。これら掛止突起220は、コーナーキューブプリズム131の非隣接辺136Aに対し、環列137の輪の外側から掛止された掛止状態とされる。これにより、掛止突起220は、コーナーキューブプリズム131の位置ズレを抑える。
【0061】
各掛止突起220は、
図8に示すように、掛止片221が対向部分A111の挿込穴(図示せず)、または対向部分B111の挿込穴B111Fに挿し込まれて構成されている。ここで、対向部分A111の挿込穴に対する掛止片221の挿し込みの構成と、挿込穴B111Fに対する掛止片221の挿し込みの構成とは同じ構成である。従って、以下においては対向部分A111の挿込穴、または挿込穴B111Fに対する掛止片221の挿し込みの構成の説明を、挿込穴B111Fに対する掛止片221の挿し込みの構成の説明によって代表して行う。
【0062】
掛止片221は、挿込穴B111Fに挿し込まれる側において幅広となる二股の爪221Bを有し、これらの爪221Bが拡開しようとする力によって挿込穴B111Fの側面に係合する。これにより、掛止片221は、挿込穴B111Fに挿し込まれた状態に固定される。
【0063】
また、掛止突起220は、
図9に示すように、掛止片221が挿込穴B111F(
図8参照)に挿し込まれた状態において、爪221B(
図8参照)とは反対側の突起部221Aが対向部分B111から突出し、この突起部221Aが各非隣接辺136Aを掛止する。ここで、対向部分B111の各辺に設けられた2つの掛止突起220における2つの突起部221Aは、挟持状態において本体部110の対に挟み込まれるコーナーキューブプリズム131の非隣接辺136Aに沿うように位置されている。
【0064】
<係合部の構成>
係合部210は、
図8に示すように、対向部分A111および対向部分B111における、むくみ糸巻きの4つの角丸(
図4参照)に取り付けられる。係合部210は、掛止状態(
図9参照)にある各コーナーキューブプリズム131における各角部134に対し、環列137の輪の外側から係合された係合状態とされる。これにより、係合部210は、コーナーキューブプリズム131の位置ズレを抑える。ここで、係合部210は、皿ネジ201Aを介して係合穴B111Aに取り付けられる。
【0065】
係合部210は、
図9に示すように、係合穴B111AのザグリB111Cに対して「すきまばめ」のはめあいをなす中空円筒211Aと、その長手方向における端の底面から
図9の一端側に突出する接触部211Fとを備えている。中空円筒211Aは、ザグリB111Cと略同じ外径で、中空円筒211AがザグリB111Cに対して「すきまばめ」のはめあいをなすときに、ザグリB111Cと同心となるザグリ穴211Bが設けられている。ここで、ザグリ穴211Bの皿ザグリ211Cは、皿ネジ201Aの頭201Bに対して「すきまばめ」のはめあいをなす大きさである。また、ザグリ穴211Bの下穴211Dは、その長さが皿ネジ201Aの軸201Cの長さよりも短くなるように設計されている。接触部211Fは、中空円筒211AがザグリB111Cに対して「すきまばめ」のはめあいをなすときに、コーナーキューブプリズム131の角部134の側を向いて、これに面で接触する支持部位である。ここで、接触部211Fは、中空円筒211Aの筒径方向外方の片側(
図9では左側)に張り出した平坦な傾斜面211Gと、中空円筒211Aの筒径方向内方に切り欠いた断面が楕円となる平坦な切り欠き面211Hとを有する。
【0066】
また、係合部210は、
図9に示すように、皿ネジ201Aの着脱により、上記係合状態と、後述する退避状態とに切り替えられる。ここで、退避状態においては、係合部210および皿ネジ201Aは、本体部110に対して分離された状態となる。これにより、係合部210および皿ネジ201Aは、へこみ141Aにコーナー部分132Aが装着されているコーナーキューブプリズム131における角部134に対して接触しないように退避される。
【0067】
また、係合部210は、
図3に示すように、対向部分B111から対向部分A111の側(
図3では上側)に向かって突出する接触部211Fを備えている。この接触部211Fの対向部分B111からの突出寸法は、掛止片221の突起部221Aにおける対向部分B111からの突出寸法と略同じとなるように設定されている。
【0068】
<貫通孔の構成>
貫通孔103は、
図5に示すように、一端側貫通孔A113、他端側貫通孔B113、および軸部貫通孔143で構成される。一端側本体部A110は、挟持状態の本体部110の対において中心軸C10に対応する位置および方向に穿たれた一端側貫通孔A113を備えている。同じく、他端側本体部B110は、挟持状態の本体部110の対において中心軸C10に対応する位置および方向に穿たれた他端側貫通孔B113を備えている。また、軸部140の筒部142には、挟持状態の本体部110の対において中心軸C10に対応する位置および方向に穿たれた、軸部貫通孔143を備えている。一端側貫通孔A113、他端側貫通孔B113、および軸部貫通孔143は、同心であり、同じ直径の円筒形をなす。一端側貫通孔A113、他端側貫通孔B113、および軸部貫通孔143には、棒状部材60(
図1参照)が摺動可能に挿通される。この構成は、棒状部材60が延びる方向に沿ってプリズムアッセンブリ130を摺動させることを可能とする。
【0069】
一端側貫通孔A113は、棒状部材60(
図1参照)の外径と略同一の円形の孔であり、嵌込穴A117の穴底の中央において底面が垂直に貫通されるように設けられている。同じく、他端側貫通孔B113は、棒状部材60の外径と略同一の円形の孔であり、嵌込穴B117の穴底の中央において底面が垂直に貫通されるように設けられている。
【0070】
軸部貫通孔143は、棒状部材60(
図1参照)の外径と略同一の円形の孔であり、筒部142の軸方向における端面の中央において軸方向に貫通されるように設けられている。
【0071】
<付属の構成>
再帰反射装置100は、
図8に示すように、偏心型位置決めピン70と、支持部240と、水平検出器320と、を備えている。これらについて、以下で説明する。
【0072】
<偏心型位置決めピンの構成>
偏心型位置決めピン70は、
図7に示すように、棒状部材60の外周面に対して外嵌される部材であり、張出部71と、把持部72の対と、一端側斜面73A(
図5参照)と、他端側斜面73B(
図5参照)と、係止部74と、を備えている。ここで、偏心型位置決めピン70は、本開示における「外嵌部材」に相当する。また、本実施形態の説明においては、偏心型位置決めピン70が棒状部材60の外周面に対して外嵌された状態のことを、「外嵌状態」とも称する。本実施形態において、偏心型位置決めピン70は、側面の1か所に軸方向(
図7では紙面に垂直な方向)に延びるスリットS30が形成された円筒形状を呈する。このスリットS30は、筒の周方向において対となる把持部72のそれぞれの端に挟まれる空間である。
【0073】
<張出部の構成>
張出部71は、外嵌状態において、この棒状部材60(
図1参照)の径方向外方における一方側に張り出すものである。本実施形態において、張出部71は、偏心型位置決めピン70の筒におけるスリットS30側となる部分の反対側の部分を、部分的に肉厚にした構成である。
【0074】
<把持部の構成>
把持部72は、偏心型位置決めピン70の円筒形状において、その側面を構成する部分である。この把持部72は、外嵌状態の張出部71において棒状部材60をその周方向の両端から覆うように延び出される。
【0075】
<一端側斜面および他端側斜面の構成>
一端側斜面73Aは、
図5に示すように、外嵌状態において、この棒状部材60の径方向内方に傾斜する、把持部72の一端側に設けられた傾斜面である。当該一端側斜面73Aは、内筒部230のガイド面233の一部に対向する面であり、一端側斜面73Aがガイド面233をスライドすると、このスライドに追従して把持部72(
図7参照)が棒状部材60を押止する。同じく、他端側斜面73Bは、外嵌状態において、この棒状部材60の径方向内方に傾斜する、把持部72の他端側に設けられた傾斜面である。当該他端側斜面73Bは、支持部240のガイド面243の一部に対向する面であり、他端側斜面73Bが支持部240のガイド面243をスライドすると、このスライドに追従して把持部72が棒状部材60を押止する。本実施形態において一端側斜面73Aは、偏心型位置決めピン70の筒における他端側本体部B110側の端の外縁をC面取りしたものである。同じく、他端側斜面73Bは、偏心型位置決めピン70の筒における一端側斜面73Aとは反対側の端の外縁をC面取りしたものである。
【0076】
<係止部の構成>
係止部74は、外嵌状態において、この棒状部材60が延びる方向に沿って張出部71(
図7参照)の一端側に延び出された突起である。ここで、係止部74は、一端側斜面73Aが内筒部230のガイド面233の一部に対向するとき、係止溝234と係合するように延び出されている。そして、係止部74は、他端側本体部B110の係止溝234に対して係止させることで、当該他端側本体部B110の回り止めを行う。
本実施形態において、係止部74は、偏心型位置決めピン70の筒におけるスリットS30とは反対側の筒壁を、他端側本体部B110側に延長したものである。具体的には、係止部74は、直方体形状を呈する。
【0077】
<支持部の構成>
支持部240は、外嵌状態の偏心型位置決めピン70をその棒状部材60の径方向外方から外嵌する筒(本実施形態では止めネジ付きのソケット)をなす。この支持部240は、本開示における「外筒」に相当する。支持部240は、雌ねじ部241と、ガイド面243と、摺動孔244と、収容空間S10と、を備えている。雌ねじ部241は、内筒部230の雄ねじ部231と螺合状態となるねじ山の面である。ガイド面243は、棒状部材60の径方向外方に広がった傾斜面である。このガイド面243は、偏心型位置決めピン70が棒状部材60に対して外嵌された外嵌状態において、偏心型位置決めピン70の他端側斜面73Bがスライドする面である。摺動孔244は、棒状部材60と「すきまばめ」のはめあいをなす孔であり、支持部240の筒において雌ねじ部241の側と反対側に設けられる。収容空間S10は、支持部240の筒において雌ねじ部241と摺動孔244との間にあり、螺合状態において偏心型位置決めピン70を「すきまばめ」のはめあいで収容する。
【0078】
<水平検出器の構成>
水平検出器320は、取付板320Aと、3つの取付孔320Bと、挿通孔320Cと、気泡管320Dと、を備えている。取付板320Aは、角丸正方形形状の板であり、その面積は非対向部分A112の面積よりも小さく設計されている。取付孔320Bは、取付板320Aを非対向部分A112にネジ81にて取り付け可能とする、取付板320Aに設けられた孔である。挿通孔320Cは、棒状部材60と「すきまばめ」のはめあいをなす孔であり、取付板320Aに設けられている。気泡管320Dは、標線(図示省略)付き透明円盤の中に液体と気泡とを封入したものであり、取付板320Aにあけられた穴に嵌め込まれた状態に設けられている。
【0079】
<棒状部材の構成>
棒状部材60は、
図1に示すように、その外周にプリズムアッセンブリ130が取り付けられて、このプリズムアッセンブリ130を支持する柱体である。本実施形態においては、棒状部材60は、その長さ方向(
図1では上下方向)に紅白に色分けされた円柱体であり、その下端には、測定地点の大地GRに突き当てられる石突(図示省略)が取り付けられている。棒状部材60は、その延びる方向がコーナーキューブプリズム131(
図2参照)のなす環列137(
図2参照)の輪の中心軸C10と重なるように位置される。
【0080】
<第1の実施形態に係る再帰反射装置の組み立て手順>
上述した第1の実施形態に係る再帰反射装置100の組み立て手順について説明する。再帰反射装置100の組み立てにあたっては、作業者(図示せず)は、まず、一端側本体部A110および他端側本体部B110のそれぞれに、係合部210を8つずつ取り付ける取り付け作業を行う。
【0081】
次に、作業者は、一端側本体部A110および他端側本体部B110により、軸部140をその軸方向両側から挟み込んでこれらを一体化させる一体化作業を行う。この一体化作業において、作業者は、一端側本体部A110と軸部140とを上述した嵌込状態とし、これらを4個のネジ81によりネジ止めする。また、作業者は、他端側本体部B110と軸部140とを上述した嵌込状態とし、これらを4個のネジ81によりネジ止めする。
【0082】
次に、作業者は、軸部140におけるへこみ141Aの1つに、1個のコーナーキューブプリズム131を装着する作業を行う。この作業は、以下においては「第1装着作業」とも称する。第1装着作業において、作業者は、コーナーキューブプリズム131のコーナー部分132Aをへこみ141A側に向けた状態で、正三角形状の光透過面133の1辺(非隣接辺136Aとされるべき辺)を掛止突起220の内側に掛止させて掛止状態とする。ついで、作業者は、上記掛止状態にあるコーナーキューブプリズム131の光透過面133において、上記1辺を底辺とした場合に頂角となる角部(角部134とされるべき角部)を軸部140に向けて押し込む。これにより、作業者は、上記掛止状態にあるコーナーキューブプリズム131の各反射面132を、へこみ141Aに係合させる。そして、作業者は、軸部140に向けて押し込んだ角部に係合部210を係合させ、この係合部210を1個の皿ネジ201Aにより対向部分B111にネジ止めする。
【0083】
次に、作業者は、軸部140においてまだコーナーキューブプリズム131が装着されていないへこみ141Aのうち、既にコーナーキューブプリズム131が装着されたへこみ141Aに隣り合うへこみ141Aを1つ選択する。そして、作業者は、選択したへこみ141Aに1個のコーナーキューブプリズム131を装着する作業を行う。この作業は、以下においては「第2装着作業」とも称する。作業者は、第2装着作業を、コーナーキューブプリズム131が装着されていないへこみ141Aの数が2つになるまで(すなわち5回だけ)繰り返し実行する。第2装着作業におけるコーナーキューブプリズム131の装着手順は、第1装着作業におけるコーナーキューブプリズム131の装着手順と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0084】
次に、作業者は、軸部140においてまだコーナーキューブプリズム131が装着されていない2つのへこみ141Aのそれぞれに、コーナーキューブプリズム131を1個ずつ装着する作業を行う。この作業は、以下においては「第3装着作業」とも称する。第3装着作業におけるコーナーキューブプリズム131の装着手順は、2個のコーナーキューブプリズム131の装着を同時並行で行うという点を除いて、第1装着作業におけるコーナーキューブプリズム131の装着手順と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0085】
次に、作業者は、一端側本体部A110の非対向部分A112に水平検出器320を付設する付設作業を行う。この付設作業において、作業者は、水平検出器320の取付板320Aを、3個のネジ81により非対向部分A112にネジ止めする。
【0086】
次に、作業者は、偏心型位置決めピン70および支持部240を他端側本体部B110に組み付ける組み付け作業を行う。この組み付け作業により、再帰反射装置100の組み立ては完了する。組み付け作業において、作業者は、偏心型位置決めピン70の係止部74を他端側本体部B110の係止溝234に係止させる。また、作業者は、支持部240の収容空間S10に偏心型位置決めピン70を収容する。そして、作業者は、支持部240の雌ねじ部241を他端側本体部B110の雄ねじ部231と螺合させる。
【0087】
<コーナーキューブプリズムを外す手順>
上述した第1の実施形態に係る再帰反射装置100においてコーナーキューブプリズム131を外す手順について、
図9を用いて説明する。
【0088】
まず、作業者(図示せず)は、保持状態にあるコーナーキューブプリズム131を外す際、このコーナーキューブプリズム131の角部134と係合状態の係合部210を本体部110から取り外して退避状態にする。ここで、係合部210が取り付けられている対をなす本体部110において対向部分の「むくみ糸巻き」の意匠をかたどった板の各角丸は、中心軸C10の軸方向から見たときに当該角丸が属する対向部分と対向する対向部分に覆い隠されることなく露見されている。
【0089】
次に、作業者(図示せず)は、退避状態にあるコーナーキューブプリズム131を外す際、掛止状態のまま当該コーナーキューブプリズム131の角部134を環列137(
図2参照)の輪の外側に引き出す。
【0090】
なお、作業者(図示せず)は、退避状態にあるコーナーキューブプリズム131を外す際、挟持状態の本体部110の対においてザグリ穴A118、B118(
図8参照)のネジ81を緩めても良い。
【0091】
<再帰反射装置の設置手順>
上述した第1の実施形態に係る再帰反射装置100の設置手順について説明する。
【0092】
まず、測量者(図示せず)は、再帰反射装置100を棒状部材60に取り付けた状態でこの棒状部材60を測定地点の大地GR(
図1参照)に突き当てて固定する。
【0093】
次に、測量者は、水平検出器320を確認しながら、棒状部材60が鉛直方向を向くようにその傾きを調整する。これにより、プリズムアッセンブリ130の中心軸C10が鉛直方向を向くこととなる。
【0094】
次に、測量者は、
図5および
図6に示すように、プリズムアッセンブリ130を棒状部材60が延びる方向に沿って摺動させ、プリズムアッセンブリ130の高さ調整を行う。この際、測量者は、支持部240と内筒部230との螺合状態を一時的に緩めて、プリズムアッセンブリ130が摺動させる。
【0095】
次に、測量者は、
図5に示すように、支持部240と他端側本体部B110の内筒部230とを螺合状態にさせる。そうすると、偏心型位置決めピン70は、その一端側斜面73Aがガイド面233をスライドし、他端側斜面73Bがガイド面243をスライドする。これにより、支持部240が偏心型位置決めピン70を外嵌することで、張出部71が一方側から嵌め付けられ、把持部72が棒状部材60を強く押止する。また、偏心型位置決めピン70の係止部74が内筒部230の係止溝234を係止することで、棒状部材60に対するプリズムアッセンブリ130の位置ズレや回動が抑制される。
【0096】
<作用・効果>
上述した再帰反射装置100によれば、3つの反射面132はそれぞれが互いに直交した平面をなすことから、光透過面133の入射位置IPに入射する入射光と、光透過面133の出射位置OPで再帰される再帰反射光と、が平行関係となる。また、プリズムアッセンブリ130のコーナーキューブプリズム131において光透過面133は、環列137の周方向の全周で光を再帰反射することができる。また、プリズムアッセンブリ130は、コーナーキューブプリズム131の再帰反射が行われる仮想的な反射面132の位置と、再帰反射装置100における実際の中心軸C10の位置との間のズレを調整することができる。これにより、周方向の全周からの光を再帰反射することが可能な再帰反射装置100において、この再帰反射装置100のオフセットをなくすことができる。
【0097】
上述した再帰反射装置100によれば、中心軸C10の一端側から見たときに、対向部分B111の各角丸(
図4参照)は、当該角丸が属する他端側の対向部分B111と対向する一端側の対向部分A111の一端側本体部A110に覆い隠されることなく露見される。これにより、本体部110の対は、プリズムアッセンブリ130をなすコーナーキューブプリズム131のそれぞれを、光透過面133の向きが互い違いになるようにセットすることができる。さらに、作業者は、係合部210を取り付けている皿ネジ201Aを容易に各角丸から外すことができる。
【0098】
上述した再帰反射装置100によれば、複数のコーナーキューブプリズム131を、それらの光透過面133の各隣接辺136B同士を密接させてひとつながりの環列137をなすことで、この環列137の周方向の全周で光を再帰反射する。このため、プリズムアッセンブリにおいて、コーナーキューブプリズムの光透過面の隣接辺が隣の光透過面の隣接辺と密接しない非密接部分(図示せず)が存在する場合、この非密接部分では上記全周での光の再帰反射が起こらない。これに対し、再帰反射装置100の構成によれば、各コーナーキューブプリズム131から上記非密接部分をなくして、この非密接部分により上記全周での光の再帰反射が起こらなくなることを避けることができる。これにより、入射光が再帰反射する光透過面133の有効範囲ERを広くとることができる。また、8個のコーナーキューブプリズム131でプリズムアッセンブリ130を構成すると、10以上の偶数個のコーナーキューブプリズム131でプリズムアッセンブリを構成する場合よりも、その中心軸C10の径方向におけるサイズを再帰反射装置全体において小さく設定することができる。
【0099】
上述した再帰反射装置100によれば、対向部分B111における、4辺のそれぞれに対応して設けられた掛止突起220は、挟持状態において保持状態にあるコーナーキューブプリズム131のそれぞれの各非隣接辺136Aを環列137の輪の外側から掛止することができる。すなわち、挟持状態における8つの突起部221Aは、保持状態にあるコーナーキューブプリズム131のそれぞれの各非隣接辺136Aを環列137の輪の外側から掛止することができる。
【0100】
上述した再帰反射装置100によれば、挟持状態における4つの係合部210は、掛止突起220が非隣接辺136Aを掛け止めしているコーナーキューブプリズム131のそれぞれにおいて、各角部134に対しその環列137の輪の外側から係合することができる。すなわち、係合部210は、その接触部211Fにおいてコーナーキューブプリズム131のそれぞれの角部134と係合可能となる。
【0101】
上述した再帰反射装置100によれば、プリズムアッセンブリ130においてコーナーキューブプリズム131が破損した際には、この破損したコーナーキューブプリズム131だけを外して、破損していないコーナーキューブプリズム131を代わりに付けることができる。
【0102】
上述した再帰反射装置100によれば、保持状態にあるコーナーキューブプリズム131を個別に付け外す際、本体部110の片方に設けられた掛止突起220は、掛止対象のコーナーキューブプリズム131が保持機構150から脱落することを抑えることができる。また、退避状態にあるコーナーキューブプリズム131を外す際、このコーナーキューブプリズム131を掛止突起220に掛止している状態で角部134を環列137の輪の外側に引き出してコーナーキューブプリズム131を外すことができる。
【0103】
上述した再帰反射装置100によれば、保持状態にあるコーナーキューブプリズム131を外す際、コーナーキューブプリズム131を、その光透過面133を突起部221Aの表面に当てて起こし上げることができる。
【0104】
上述した再帰反射装置100によれば、プリズムアッセンブリ130の保持機構150に備えられている一端側貫通孔A113、他端側貫通孔B113、および軸部貫通孔143が棒状部材60を摺動することで、当該プリズムアッセンブリ130は棒状部材60が延びる方向に沿って摺動することができる。すなわち、棒状部材60が一端側貫通孔A113、他端側貫通孔B113、および軸部貫通孔143に摺動可能に挿通されることで、プリズムアッセンブリ130は棒状部材60が延びる方向に沿って摺動することができる。
【0105】
上述した再帰反射装置100によれば、コーナーキューブプリズム131のそれぞれを保持機構150の各へこみ141Aに装着させてプリズムアッセンブリ130を構成することで、当該コーナーキューブプリズム131のそれぞれの位置合わせの作業性を向上させることができる。
【0106】
上述した再帰反射装置100によれば、コーナー部分132Aのぐらつきを吸収する遊びS20により、退避状態にあるコーナーキューブプリズム131を外す際、コーナーキューブプリズム131を掛止状態のまま、より容易に外すことができる。
【0107】
上述した再帰反射装置100によれば、偏心型位置決めピン70は、その張出部71を支持部240により棒状部材60の径方向外方の一方側から締め付けられることで棒状部材60に押止され、もって棒状部材60に対する偏心型位置決めピン70の位置ズレや回動が生じにくくなる。また、偏心型位置決めピン70は、その係止部74が他端側本体部B110に対して係止し、当該他端側本体部B110の周方向の回り止めを行う。これらにより、プリズムアッセンブリ130は、棒状部材60に対する周方向において所定の位置に位置することができる。
【0108】
上述した再帰反射装置100によれば、張出部71は、支持部240により上記一方側から締め付けられ、棒状部材60の軸心に近づくこととなる。
【0109】
上述した再帰反射装置100によれば、螺合状態において偏心型位置決めピン70は、内筒部230と支持部240との間に挟み込まれることで一端側斜面73Aおよび他端側斜面73Bのそれぞれが棒状部材60の径方向内方に動き、把持部72が棒状部材60を強く押止する。これにより、支持部240は、偏心型位置決めピン70に外嵌される際、張出部71をこの張出部71が張り出す一方側から締め付けることで偏心型位置決めピン70を棒状部材60に押止させることができる。すなわち、外嵌状態の偏心型位置決めピン70は、内筒部230と支持部240との間に挟み込まれることで一端側斜面73Aおよび他端側斜面73Bのそれぞれが棒状部材60の径方向内方に動く。これにより、把持部72は、一端側斜面73Aおよび他端側斜面73Bの動きに追従して棒状部材60を押止することができる。
【0110】
上述した再帰反射装置100によれば、外嵌状態の偏心型位置決めピン70は、その張出部71が支持部240により締め付けられていないとき、把持部72が棒状部材60を押止する。また、外嵌状態の偏心型位置決めピン70は、その張出部71が支持部240により上記一方側から締め付けられることで、把持部72が棒状部材60を押止する力よりも強い力で棒状部材60を押止する。このため、外嵌状態の偏心型位置決めピン70は、支持部240の締め付けにより棒状部材60を押止する力が強くなり、もって棒状部材60に対する偏心型位置決めピン70の位置ズレや回動が生じにくくなる。
【0111】
上述した再帰反射装置100によれば、水平検出器320は、水平方向に対するプリズムアッセンブリ130の傾きを検出することができる。これにより、プリズムアッセンブリ130が摺動する棒状部材60が延びる方向に沿う方向において水平出しの精度が向上され、再帰反射装置100を用いた測定の精度を向上させることができる。
【0112】
<第2の実施形態>
続いて、本開示の第2の実施形態にかかる再帰反射装置600の構成について、
図1、
図10および
図11を用いて説明する。第2の実施形態にかかる再帰反射装置600は、第1の実施形態にかかる再帰反射装置100を変形した実施形態である。したがって、上記第1の実施形態にかかる再帰反射装置100の各構成と共通する構成については、第1の実施形態にかかる再帰反射装置100の各構成に付した符号の数字に「500」を加えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0113】
<第2の実施形態に係る再帰反射装置の構成>
本開示の第2の実施形態に係る再帰反射装置600は、
図1に示すように、測量を行いたい測定地点に設置固定されて、この測定地点からトータルステーション900までの距離を測定可能とするために用いられる。また、当該再帰反射装置600には、測位システム(図示せず)のターゲット920(
図10参照)が取り付けられている。ここで、ターゲット920は、再帰反射装置600においてプリズムアッセンブリ630が備えている保持機構650に取り付けられている。以下にターゲット920とともに保持機構650を説明する。
【0114】
<保持機構の構成>
保持機構650は、
図10に示すように、環列(図示せず)をなすコーナーキューブプリズム631のそれぞれを、その光透過面633が環列の輪の外側に向けた状態で保持する。ここで、保持機構650は、本体部610の対と、軸部640(
図11参照)と、掛止突起720と、係合部710と、貫通孔603(
図11参照)と、一端側ベースA820と、支柱体565(
図11参照)と、他端側ベースB820とを備えている。本体部610の対は、環列をなす8個のコーナーキューブプリズム631を、中心軸C60の軸方向(
図11参照)両側から挟み込んだ挟持状態とする。軸部640は、コーナーキューブプリズム631を所定の位置に位置合わせさせる。掛止突起720は、コーナーキューブプリズム631における非隣接辺636Aを環列の輪の外側から掛止する。係合部710は、掛止突起720が掛止しているコーナーキューブプリズム631における角部634を環列の輪の外側から係合する。貫通孔603には、支柱体565がはめあいをなすように収容される。この支柱体565は、本体部610の対に掛かる外力を支持する。一端側ベースA820は、測位システム(図示せず)のターゲット920が支持されるとともに、このターゲット920の重量を支柱体565に掛ける。支柱体565は、一端側ベースA820に掛かる外力が他端側ベースB820に掛かるようにする。他端側ベースB820は、支柱体565に掛かる外力が棒状部材560に掛かるようにする。以下に本体部610の対と、貫通孔603と、一端側ベースA820と、支柱体565と、他端側ベースB820とを説明する。
【0115】
<本体部の構成>
本体部610の対は、一端側本体部A610と、他端側本体部B610との対である。ここで、一端側本体部A610は、他端側本体部B610に対向する部分である対向部分A611を有する。他端側本体部B610は、一端側本体部A610に対向する部分である、対向部分B611を有する。本実施形態においては、対向部分A611および対向部分B611は、それぞれ「むくみ糸巻き」の意匠をかたどった金属板をなす。そして、対向部分A611、B611の各辺は、プリズムアッセンブリ630をなすコーナーキューブプリズム631のそれぞれにおいて各非隣接辺636Aの並びに沿うように位置される。
【0116】
対となる本体部610において、一端側本体部A610は、第1の実施形態にかかる一端側本体部A110を変形した実施形態である。したがって、上記第1の実施形態にかかる一端側本体部A610の各構成と共通する構成については、第1の実施形態にかかる一端側本体部A110の各構成に付した符号の数字に「500」を加えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0117】
対向部分B611には、その内側に湾曲した4辺のそれぞれに対応して、挿込穴(図示せず)が2つずつ設けられている。本実施形態において、挿込穴は、掛止片721が挿込可能な大きさの長穴であり、かつ掛止片721が挿し込まれることで対向部分B611から突起部721Aが突出されるように形成されている。そして、挿込穴は、上記挟持状態において本体部610の対に挟み込まれるコーナーキューブプリズム631の非隣接辺636Aに沿うように位置されている。また、挿込穴の長穴は、その長手方向が挟持状態において非隣接辺636Aと平行となる向きに配設されている。2つの挿込穴は、それぞれが互いに離間し、かつ角部634から離れるように位置されている。
【0118】
対向部分B611における4つの角丸は、
図11に示すように、それぞれ係合穴B611Aを1つずつ備えている。本実施形態において、係合穴B611Aは、ネジ穴B611Bと、このネジ穴B611Bの開口縁部を円筒状のしゃくり面としてなるザグリB611Cとを備えたザグリ穴である。ここで、ザグリB611Cは、係合部710を「すきまばめ」のはめあいで取り付けて係合させることが可能な形状である。ネジ穴B611Bは、ザグリB611Cの底面の中央において、この底面に垂直に空けられた穴である。この穴は、係合部710が係合穴B611Aに取り付けられたとき、皿ネジ701Aの軸が係合部710から張り出されている張り出し長さよりも深くなるように設計されている。そして、係合穴B611Aは、上記挟持状態において本体部610の対に挟み込まれるコーナーキューブプリズム631の角部634に接触するように位置されている。
【0119】
対向部分B611は、軸部640の軸方向における端に対して「すきまばめ」のはめあいをなす嵌込穴B617を備えている。ここで、嵌込穴B617の穴底には、ザグリ穴(図示せず)の下穴(図示せず)が貫通されている。ザグリ穴は、軸部640が嵌込穴B617に対して所定の配設向きではめ込まれた嵌込状態において、この軸部640をネジ581にてねじ止めするためのネジ穴である。ここで、ザグリ穴のザグリはネジ581の頭581Bを全て収容し、下穴の深さはネジ581の軸581Aより短くなるように設計されている。また、軸部640のネジ穴642Aの深さがネジ581の軸581Aより長くなるように設計されている。すなわち、他端側本体部B610において、他端側ベースB820は、ネジ581の頭581Bに干渉することなく配設される。
【0120】
一端側本体部A610のザグリ穴A618の構成も、上記ザグリ穴と同じであり、一端側ベースA820は、ネジ581の頭581Bに干渉することなく配設される。
【0121】
他端側本体部B610は、対向部分B611の側と反対側において非対向部分B612を有する。ここで、非対向部分B612は、他端側ベースB820と面で接触する平坦面を備える。
【0122】
<貫通孔の構成>
貫通孔603は、一端側貫通孔A613、他端側貫通孔B613、および軸部貫通孔643で構成される。一端側本体部A610は、挟持状態の本体部610の対において中心軸C60に対応する位置および方向に穿たれた一端側貫通孔A613を備えている。同じく、他端側本体部B610は、挟持状態の本体部610の対において中心軸C60に対応する位置および方向に穿たれた他端側貫通孔B613を備えている。また、軸部640の筒部642には、挟持状態の本体部610の対において中心軸C60に対応する位置および方向に穿たれた、軸部貫通孔643を備えている。一端側貫通孔A613、他端側貫通孔B613、および軸部貫通孔643は、同心であり、同じ直径の円筒形をなす。貫通孔603には、支柱体565(
図11参照)が遊びを持った状態で挿通される。この支柱体565は、コーナーキューブプリズム631の環列(図示せず)の輪の中心軸C60に沿うように位置されている。
【0123】
一端側貫通孔A613は、支柱体565の外径と略同一の円形の孔であり、嵌込穴A617の穴底の中央において底面が垂直に貫通されるように設けられている。同じく、他端側貫通孔B613は、支柱体565の外径と略同一の円形の孔であり、嵌込穴B617の穴底の中央において底面が垂直に貫通されるように設けられている。
【0124】
軸部貫通孔643は、支柱体565の外径と略同一の円形の孔であり、筒部642の軸方向における端面の中央において軸方向に貫通されるように設けられている。
【0125】
<一端側ベースの構成>
一端側ベースA820は、一端側基台A820Aと、差し込み穴A820Bと、ザグリ穴A820Cと、ニップルA820Dと、を備えている。
【0126】
一端側基台A820Aは、対向部分A611において、その内側に湾曲した4辺のうち対向する2辺の間隔より小さい外径の円筒をなす。本実施形態では、この円筒は、黒色に塗装された金属製の筒であり、ターゲット920を支持することが可能な強度をもつ。
【0127】
差し込み穴A820Bは、支柱体565に対して「すきまばめ」のはめあいが可能であり、一端側基台A820Aの筒の中心軸C70に対応する位置および方向に空けられた穴である。そのため、支柱体565が差し込み穴A820Bに差し込まれた状態(以下、「一端側差込状態」とも称する。)においては、支柱体565が延びる方向と中心軸C60とが重なる関係となる。すなわち、差し込み穴A820Bは中心軸C60に対応する位置および方向に空けられた構成となる。
【0128】
ザグリ穴A820Cは、一端側基台A820Aに、差し込み穴A820Bと同心となるように空けられた孔である。ザグリ穴A820Cは、差し込み穴A820Bと連通することで、支柱体565が一端側差込状態にあるときにこの支柱体565をネジ592でねじ止めすることを可能とする。本実施形態においては、ザグリ穴A820Cは、そのザグリ部分がネジ592の頭部と「すきまばめ」のはめあいをなし、同じく下穴部分がネジ592の軸部と「すきまばめ」のはめあいをなすように形成されている。
【0129】
ザグリ穴A820Cにおけるザグリ部分の開口縁部からは、一端側基台A820Aにおいて差し込み穴A820Bとは反対側に突出するニップルA820Dが延設されている。このニップルA820Dは、その内周面がザグリ穴A820Cのザグリ部分の内側面とつらいちとなる筒をなす。また、ニップルA820Dにおける外側面には、ターゲット920のソケット(後述、図示せず)と螺合する雄ねじA820Eが設けられている。なお、ここでいうニップルは、本開示における「取付部」に相当する。
【0130】
<支柱体の構成>
支柱体565は、一端側差込状態であり、かつ他端側差込状態(後述)であるときに保持機構650に掛かる外力を支持する丸棒である。ここで、支柱体565は、挟持状態の保持機構650において一端側貫通孔A613、他端側貫通孔B613、および軸部貫通孔643のそれぞれを貫通する丸棒であり、その両端にはネジ592と螺合可能なネジ穴565Aが設けられている。そして、支柱体565は、その延びる方向において、一端側差込状態であり、かつ他端側差込状態であるとき、支持間隔L31が被補強間隔L32以上となるように設計されている。ここで、支持間隔L31は、一端側差込状態における差し込み穴A820Bの穴底A820Fと、他端側ベースB820においてネジ592の頭592Bの座面592Fとの間隔である。被補強間隔L32は、一端側差込状態における差し込み穴A820Bの穴底A820Fと、他端側ベースB820においてザグリ穴B820Cのザグリの底B820Gとの間隔である。
【0131】
<他端側ベースの構成>
他端側ベースB820は、他端側基台B820Aと、差し込み穴B820Bと、ザグリ穴B820Cと、取付穴B820Eと、を備えている。
【0132】
他端側基台B820Aは、対向部分B611において、その内側に湾曲した4辺のうち対向する2辺の間隔より小さい外径の円筒をなす。
【0133】
差し込み穴B820Bは、支柱体565に対して「すきまばめ」のはめあいが可能であり、他端側基台B820Aの筒の中心軸C80に対応する位置および方向に空けられた穴である。そのため、支柱体565が差し込み穴B820Bに差し込まれた状態(以下、「他端側差込状態」とも称する。)においては、支柱体565が延びる方向と中心軸C60とが重なる関係となる。すなわち、差し込み穴B820Bは中心軸C60に対応する位置および方向に空けられた構成となる。
【0134】
ザグリ穴B820Cは、他端側基台B820Aに、差し込み穴B820Bと同心となるように空けられた孔である。ザグリ穴B820Cは、差し込み穴B820Bと連通することで、支柱体565が他端側差込状態にあるときにこの支柱体565をネジ592でねじ止めすることを可能とする。本実施形態においては、ザグリ穴B820Cは、そのザグリ部分がネジ592の頭部と「すきまばめ」のはめあいをなし、同じく下穴部分がネジ592の軸部と「すきまばめ」のはめあいをなすように形成されている。なお、本実施形態におけるザグリ穴B820Cは、他端側基台B820Aと一体成型された座金B820Dの内周でザグリを形成したものである。
【0135】
取付穴B820Eは、他端側基台B820Aにおいて差し込み穴B820Bの側と反対側の端に設けられ、棒状部材560に対して「すきまばめ」のはめあいをなすように形成されている。
【0136】
<ターゲットの構成>
ターゲット920は、全地球航法衛星システム(以下、「GNSS」とも称する)のサービスに対応した通信モジュール(図示せず)を備えている。ここで、GNSSのサービス提供の用に用いられるインフラストラクチャー(図示せず)は、少なくとも4つの人工衛星を含む衛星セグメントと、これらの人工衛星を管制する管制セグメントとを有する。なお、ターゲット920としては、従前公知のターゲットを使用することができる。そのターゲットの形状は設計により適宜選択可能である。本実施形態のターゲット920は、雄ねじA820Eと螺合可能なソケット(図示せず)を有する。
【0137】
<第2の実施形態に係る再帰反射装置の組み立て手順>
上述した第2の実施形態に係る再帰反射装置600の組み立て手順について説明する。再帰反射装置600の組み立てにあたっては、作業者(図示せず)は、まず、一端側本体部A610および他端側本体部B610のそれぞれに、係合部710を8つずつ取り付ける取り付け作業を行う。
【0138】
次に、作業者は、一端側本体部A610および他端側本体部B610により、軸部640をその軸方向両側から挟み込んでこれらを一体化させる一体化作業を行う。この一体化作業の具体的手順は、第1の実施形態の説明にて上述した一体化作業の具体的手順と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0139】
次に、作業者は、軸部640の8つのへこみ641Aにコーナーキューブプリズム631をそれぞれ装着する作業を行う。この作業は、第1の実施形態の説明にて上述した「第1装着作業」「第2装着作業」および「第3装着作業」と同様の作業を、この順で実行する作業である。このため、上記作業の具体的手順についてはその詳細な説明を省略する。
【0140】
次に、作業者は、一端側ベースA820および他端側ベースB820をネジ止めするネジ止め作業を行う。このネジ止め作業により、再帰反射装置600の組み立ては完了する。ネジ止め作業において、作業者は、支柱体565を軸部貫通孔643に挿通させた上で、この支柱体565の両端に設けられたネジ穴565Aに対して、一端側ベースA820および他端側ベースB820をネジ止めする。
【0141】
<再帰反射装置の設置手順>
上述した第2の実施形態に係る再帰反射装置600の設置手順について説明する。再帰反射装置600の設置にあたっては、測量者(図示せず)は、まず、再帰反射装置600の取付穴B820Eに棒状部材560を取り付ける。
【0142】
次に、測量者は、棒状部材560を測定地点の大地GRに突き当てて固定する。
【0143】
次に、測量者は、棒状部材560が鉛直方向を向くようにその傾きを調整する。この際、再帰反射装置600のニップルA820Dにターゲット920が取り付けられている場合には、測量者は、ターゲット920の通信モジュール(図示せず)からの情報を確認しても良い。
【0144】
<作用・効果>
上述した再帰反射装置600によれば、他端側ベースB820のザグリ穴B820Cがネジ592の頭592Bに係合する際、一端側本体部A610が他端側に追従して動くため、一端側ベースA820に掛かる力が非対向部分A612に掛かりにくくなる。これにより、支柱体565が、コーナーキューブプリズム631の環列(図示せず)の輪の中心軸C60に沿う方向においてプリズムアッセンブリ630を補強することができる。
【0145】
上述した再帰反射装置600によれば、支柱体565が、光を遮ることなく、コーナーキューブプリズム631の環列(図示せず)の輪の中心軸C60に沿う方向においてプリズムアッセンブリ630を補強することができる。
【0146】
上述した再帰反射装置600によれば、このターゲット920が取得した測位情報から再帰反射装置600が位置されている位置情報(図示省略)を確認することができる。これにより、ターゲット920が取得した測定地点の位置の位置情報(図示省略)と、トータルステーション900がセットされる位置から再帰反射装置600までの距離の情報とを比較することができる。
【0147】
上述した再帰反射装置600によれば、保持機構650の支柱体565に測位システム(図示せず)のターゲット920を取り付けることで、この再帰反射装置600の位置をトータルステーション900、および測位システムのそれぞれで測定することができる。
【0148】
本開示は、上記各構成をもつことにより、周方向の全周からの光を再帰反射することが可能な再帰反射装置において、この再帰反射装置のオフセットをなくすことができる。
【0149】
<他の実施形態>
以上、本発明を実施するための形態について、上述した実施形態によって説明した。し
かしながら、当業者であれば、本発明の目的を逸脱することなく種々の代用、手直し、変
更が可能であることは明らかである。すなわち、本発明の目的を実施するための形態は、
本明細書に添付した請求の範囲の精神および目的を逸脱しない全ての代用、手直し、変更
を含みうるものである。例えば、本発明を実施するための形態として、以下のような各種
の形態を実施することができる。
【0150】
本開示に係る再帰反射装置において、コーナーキューブプリズムのそれぞれにおける各隣接辺は、付け外し可能な面ファスナーにより突き合わされて固定されていても良い。係る場合、保持機構を用いることなく、複数のコーナーキューブプリズムでプリズムアッセンブリをなすことができる。
【0151】
本開示に係る再帰反射装置において、プリズムアッセンブリを構成するコーナーキューブプリズムは、8個に限定されない。例えば、10個のコーナーキューブプリズムでプリズムアッセンブリを構成しても良い。係る場合、プリズムアッセンブリは、横から見た場合に、十面の正三角形と二面の正五角形からなる正反五角柱の形状を呈する。これにより、そのプリズムアッセンブリにおいて環列の輪の中心軸に対する光透過面の傾斜角をより小さく設定することができる。
【0152】
本開示に係る再帰反射装置において、掛止突起における掛止片の突起部は、そのコーナーキューブプリズム側の面を、このコーナーキューブプリズム側に凸となるなめらかな曲面としても良い。係る場合、掛止状態のコーナーキューブプリズムを取り外す際、その光透過面を突起部の曲面に当てながらコーナーキューブプリズムを回転させることで、このコーナーキューブプリズムをよりスムーズに取り外すことができる。
【0153】
本開示に係る第1の実施形態における再帰反射装置において、支持部の収容空間には、弾性体が設けられても良い。上記追加構成として、弾性体は、自然状態のときに外嵌状態の偏心型位置決めピンを収容可能であり、支持部と内筒部との間に挟まれることで棒状部材の径方向内方に変形して圧縮状態となるものであっても良い。上記追加構成として、支持部は、圧縮状態の弾性体が外嵌状態の偏心型位置決めピンを外嵌しても良い。なお、弾性体には、例えば筒状のゴムを用いても良い。
【符号の説明】
【0154】
60 棒状部材
70 偏心型位置決めピン
71 張出部
72 把持部
73A 一端側斜面
73B 他端側斜面
74 係止部
81 ネジ
81A 軸
81B 頭
100 再帰反射装置
103 貫通孔
110 本体部
130 プリズムアッセンブリ
131 コーナーキューブプリズム
132 反射面
132A コーナー部分
133 光透過面
134 角部
136A 非隣接辺
136B 隣接辺
137 環列
140 軸部
141 フレーム
141A へこみ
142 筒部
142A ネジ穴
142B くびれ
142C 平坦面
142D 斜面
143 軸部貫通孔
150 保持機構
201A 皿ネジ
201B 頭
201C 軸
210 係合部
211A 中空円筒
211B ザグリ穴
211C 皿ザグリ
211D 下穴
211F 接触部
211G 傾斜面
211H 切り欠き面
220 掛止突起
221 掛止片
221A 突起部
221B 爪
230 内筒部
231 雄ねじ部
233 ガイド面
234 係止溝
240 支持部
241 雌ねじ部
243 ガイド面
244 摺動孔
320 水平検出器
320A 取付板
320B 取付孔
320C 挿通孔
320D 気泡管
560 棒状部材
565 支柱体
565A ネジ穴
581 ネジ
581A 軸
581B 頭
592 ネジ
592B 頭
592F 座面
600 再帰反射装置
603 貫通孔
610 本体部
630 プリズムアッセンブリ
631 コーナーキューブプリズム
632A コーナー部分
633 光透過面
634 角部
636A 非隣接辺
636B 隣接辺
640 軸部
641 フレーム
641A へこみ
642 筒部
642A ネジ穴
643 軸部貫通孔
650 保持機構
701A 皿ネジ
710 係合部
720 掛止突起
721 掛止片
721A 突起部
900 トータルステーション
910 レーザー光源
920 ターゲット
A110 一端側本体部
A111 対向部分
A112 非対向部分
A112A ネジ穴
A113 一端側貫通孔
A117 嵌込穴
A118 ザグリ穴
A118A 下穴
A610 一端側本体部
A611 対向部分
A612 非対向部分
A613 一端側貫通孔
A617 嵌込穴
A618 ザグリ穴
A618A 下穴
A820 一端側ベース
A820A 一端側基台
A820B 差し込み穴
A820C ザグリ穴
A820D ニップル
A820E 雄ねじ
A820F 穴底
B110 他端側本体部
B111 対向部分
B111A 係合穴
B111B ネジ穴
B111C ザグリ
B111F 挿込穴
B112 非対向部分
B113 他端側貫通孔
B117 嵌込穴
B118 ザグリ穴
B118A 下穴
B610 他端側本体部
B611 対向部分
B611A 係合穴
B611B ネジ穴
B611C ザグリ
B612 非対向部分
B613 他端側貫通孔
B617 嵌込穴
B820 他端側ベース
B820A 他端側基台
B820B 差し込み穴
B820C ザグリ穴
B820D 座金
B820E 取付穴
B820G 底
C10 中心軸
C60 中心軸
C70 中心軸
C80 中心軸
ER 有効範囲
ERC 領域
GR 大地
IP 入射位置
L11 長さ
L12 長さ
L13 長さ
L21 入射最短距離
L22 出射最短距離
L31 支持間隔
L32 被補強間隔
LR レーザー光
OP 出射位置
RP1 第一反射位置
RP2 第二反射位置
S10 収容空間
S20 遊び
S30 スリット
【要約】
【課題】再帰反射装置におけるオフセットをなくす。
【解決手段】コーナーキューブプリズム131の配置が、それらの光透過面133の各隣接辺136B同士を密接させてひとつながりの環列137をなすように構成されるプリズムアッセンブリ130を備え、環列137をなすコーナーキューブプリズム131のそれぞれは、その光透過面133を環列137の輪の外側に向けた状態に配置され、かつ、環列137の輪の中心軸C10に対して垂直な向きの入射光がコーナーキューブプリズム131に向けて入射されるという条件下において、入射光が光透過面133を透過する入射位置から、再帰反射光が光透過面133を透過する出射位置に至るまでの光路長、および、入射位置から中心軸C10までの最短距離と、中心軸C10から出射位置までの最短距離との和、の2つの長さが等しい関係を成立させる状態で、コーナーキューブプリズム131が配置されている。
【選択図】
図2