(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】波照明システム及び波照明方法
(51)【国際特許分類】
G03B 15/02 20210101AFI20240115BHJP
F21S 10/02 20060101ALI20240115BHJP
H05B 45/20 20200101ALI20240115BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20240115BHJP
H05B 47/115 20200101ALI20240115BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240115BHJP
【FI】
G03B15/02 Z
F21S10/02
H05B45/20
H05B47/105
H05B47/115
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023111040
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、2022年7月12日に御船山楽園ホテル(佐賀県武雄市武雄町大字武雄4100)において開催された展示会「チームラボ かみさまがすまう森」で公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、2022年7月13日にウェブサイト(https://www.youtube.com/watch?v=tEC8D9pEO_c)に作品PR動画(「Living Crystallized Light」)をアップロードし公開。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】猪子 寿之
(72)【発明者】
【氏名】小山 嘉
(72)【発明者】
【氏名】秋山 耀
(72)【発明者】
【氏名】常盤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】金村 杏美
(72)【発明者】
【氏名】恩智 英治
(72)【発明者】
【氏名】木下 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 花乃介
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-020480(JP,A)
【文献】特開2022-139201(JP,A)
【文献】特開平10-116047(JP,A)
【文献】特開2001-305648(JP,A)
【文献】特開2001-013899(JP,A)
【文献】特開2006-185651(JP,A)
【文献】特開2005-070362(JP,A)
【文献】特開2004-281186(JP,A)
【文献】特開2003-323144(JP,A)
【文献】特開平03-093102(JP,A)
【文献】国際公開第2010/007568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/02
F21S 10/02
H05B 45/20
H05B 47/105
H05B 47/115
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を蓄えるための容器と、
前記容器内の液体に対して所定の発光周期で色が変化する光を照射する照明装置と、
前記容器内の液体に対して所定の振動周期の振動を与える一又は複数の振動装置を備え、
前記照明装置は1発光周期内で2色以上に照射する光の色を変化させ、
前記発光周期と前記振動周期が異なる
波照明システム。
【請求項2】
1発光周期内で変化する色の数をNとした場合に、前記振動周期は、前記発光周期に対して±(10/N)%以内でずれている
請求項1に記載の波照明システム。
【請求項3】
前記一又は複数の振動装置には、第1振動装置と第2振動装置が含まれる。
請求項1に記載の波照明システム。
【請求項4】
前記第1振動装置による振動の第1振動周期と前記第2振動装置による振動の第2振動周期とが異なる
請求項3に記載の波照明システム。
【請求項5】
前記第2振動周期は前記第1振動周期に対して±1%以内でずれている
請求項4に記載の波照明システム。
【請求項6】
前記容器内の液体の水面付近の物体を検出するセンサと、
前記センサによって前記物体が検出されたときに、前記容器内の液体に対して与える振動の前記振動周期が変化するように前記一又は複数の振動装置を制御する制御装置をさらに備える
請求項1に記載の波照明システム。
【請求項7】
容器内の液体に対して所定の発光周期で色が変化する光を照射する工程と、
前記容器内の液体に対して所定の振動周期の振動を与える工程を含み、
1発光周期内で2色以上に照射する光の色が変化し、
前記発光周期と前記振動周期が異なる
波照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波照明システム及び波照明方法に関する。具体的には、本発明は、容器内の液体を振動させて波を発生させながら、その水面を照明する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、さざ波の立つ水面を撮影装置によって撮影する際に、さざ波と同じ周期で撮影装置における露光を行うことで、さざ波を静止させて観察できるようになることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記特許文献1の撮影装置の原理を応用し、容器内の液体に対して所定周期の振動を与えて水面を波立たせるとともに、その振動周期と同じ周期で水面を照明することで、肉眼でも水面の波が静止しているように観察できるようになると考えた。また、本発明者は、例えば本願の
図8に示すように、ストロボスコープ等の照明装置を用いて一つの発光周期(T
L)の中で発光色を複数の色(赤、緑、青)に変化させることで、水面の波を複数の色で輝かせることができるようになるとも考えた。なお、本願の出願時点において、
図8に示した技術が公知であってことを出願人及び発明者が自認するものではない。
【0005】
ただし、
図8に示した例のように、水面の波の振動周期(T
V)と発光周期(T
L)が一致している場合、ある視点から水面の一点に着目すると、その一点における波の色は常に一定となることため、ある視点から水面を観賞する者に代り映えしない印象を与えることになる。そこで、本発明は、水面を波立たせてながら複数の色で照明するにあたり、鑑賞者に対してより変化に富む印象を与えられるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、上記の目的を達成する手段について鋭意検討した結果、液体を波立たせるための振動の周期と液体に照射する光の色が変化する周期とを異ならせることで、波の色を変化させることができるようになるという知見を得た。そして、本発明者は、上記知見に基づけば上記の目的を達成できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成又は工程を有する。
【0007】
本発明の第1の側面は、波照明システム100に関する。本発明に係る波照明システム100は、容器10、照明装置20、及び一又は複数の振動装置30,40を備える。容器10は、液体Lを蓄えるために用いられる。照明装置20は、容器10内の液体Lに対して、所定の発光周期(TL)で色が変化する光を照射する。つまり、照明装置20は、1発光周期(TL)内で2色、3色、4色以上で光の色を変化させる。振動装置30,40は、容器10内の液体Lに対して所定の振動周期(TV)の振動を与える。なお、複数の振動装置30,40を用いて液体Lに振動を与える場合、ここにいう振動周期(TV)とは、各振動装置30,40の振動波を合成した合成波の振動周期を意味する。そして、本発明では、照明装置20による発光周期(TL)と振動装置30,40による振動周期(TV)を異ならせることとしている。
【0008】
前述した通り、発光周期(TL)と振動周期(TV)が一致している場合、ある視点から水面上の一点を観察すると、そこで発生する波の色は常に一定となる。一方で、上記構成のように、発光周期(TL)と振動周期(TV)とを異ならせることで、水面上の一点で発生する波の色が徐々に移り変わることになる。これにより、水面の波を複数の色で輝かせることができるため、鑑賞者に対してより変化に富む印象を与えることができるようになる。
【0009】
本発明に係る波照明システム100において、振動周期(TV)は、発光周期(TL)に対して±20Hz以内でずれていることが好ましく、±10Hz以内でずれていることがより好ましく、±1Hz以内でずれていることが特に好ましい。これにより、波の色が移り変わる様子を鑑賞者に観察させることができる。なお、1発光周期(TL)内で変化する色の数をN(ただしNは1以上の自然数)とした場合に、振動周期(TV)は、発光周期(TL)に対して±(10/N)%以内でずれているということとしてもよい。この場合、例えば発光周期(TL)が10ms(周波数100Hz)であり、1発光周期の間に光が3色に変化するときには(N=3)、振動周期(TV)は、発光周期(TL)の±3.33%、すなわち9.667~10.333ms(103.444~96.777Hz)となる。また、振動周期(TV)は、発光周期(TL)に対して±(100/N)%以内でずれていることとしてもよい。この場合、例えば発光周期(TL)が10ms(周波数100Hz)であり、1発光周期の間に光が3色に変化するときには(N=3)、振動周期(TV)は、発光周期(TL)の±0.33%、すなわち9.967~10.033ms(100.331~99.671Hz)となる。この場合には、波の色が移り変わる様子をさらに肉眼で視認しやすくなる。
【0010】
本発明に係る波照明システム100において、一又は複数の振動装置には、第1振動装置30と第2振動装置40が含まれることが好ましい。このとき、第1振動装置30と第2振動装置40の振動周期は同じであってもよいし異なっていてもよい。このように、複数の振動装置30,40によって容器10の液体Lに対して振動を与えることで、水面に複雑な波形を作ることができる。
【0011】
本発明に係る波照明システム100において、第1振動装置30による振動の第1振動周期(TV1)と第2振動装置40による振動の第2振動周期(TV2)とが異なることとしてもよい。このように、第1振動周期(TV1)と第2振動周期(TV1)が異なることで、これらの振動の合成波の振幅(波の高さ)が周期的に変化するようになる。これにより、水面にさらに複雑な波形を作ることができる。
【0012】
本発明に係る波照明システム100において、第2振動周期(TV2)は第1振動周期(TV1)に対して±1%以内でずれていることが好ましい。特に、第2振動周期(TV2)は第1振動周期(TV1)に対して±0.1%以内でずれていることとしてもよい。このように、第2振動周期(TV2)と第1振動周期(TV1)との差が微差であることで、合成波は振幅(波の高さ)が緩やかに変化することとなる。
【0013】
本発明に係る波照明システム100は、センサ50と制御装置60をさらに備えることが好ましい。センサ50は、容器10内の液体Lの水面付近の物体を検出する。例えば、センサ50は、水面に触れようとする人の手を検出することができる。制御装置60は、センサ50によって物体が検出されたときに、容器10内の液体Lに対して与える振動の振動周期(TV)が変化するように一又は複数の振動装置30,40を制御する。これにより、例えば鑑賞者が水面に触れようとすると波形が変化するといったように、インタラクティブな演出を行うことができる。なお、振動装置30,40が複数存在する場合、センサ50による物体の検知に応じて、複数の振動装置30,40の振動周期を変化させることとしてよいし、どれか一つの振動装置40の振動周期を変化させることとしてもよい。
【0014】
本発明の第2の側面は、波照明方法に関する。本発明に係る波照明方法は、容器10内の液体Lに対して所定の発光周期(TL)で色が変化する光を照射する工程(光照射工程)と、容器10内の液体Lに対して所定の振動周期(TV)の振動を与える工程(振動付与工程)を含む。この場合に、発光周期(TL)と振動周期(TV)が異なることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水面を波立たせてながら複数の色で照明するにあたり、より変化に富む演出を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、波照明システムの一実施形態を表した断面図である。
【
図2】
図2は、波照明システムの一実施形態を表した分解斜視図である。
【
図3】
図3は、波照明システムの一実施形態の機能を示したブロック図である。
【
図4】
図4は、2つの振動装置よって形成される波を模式的に示している。
【
図5】
図5は、発光周期と振動周期の関係性の一例を模式的に示している。
【
図6】
図6は、発光周期と振動周期の関係性の別例を模式的に示している。
【
図7】
図7は、波照明方法の一実施形態を表したフロー図である。
【
図8】
図8は、波照明システムが解決すべき課題を説明するための図であって、発光周波数と振動周波数の関係性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る波照明システム100の断面図を示し、
図2は、この波照明システム100の分解斜視図を示している。また、
図3は、波照明システム100の機能ブロックを示したものである。これらの図に示されるように、波照明システム100は、基本的に、容器10、照明装置20、第1振動装置30、第2振動装置40、センサ50、及び制御装置60を備える。
【0019】
容器10は、液体Lを蓄えるためのものである。容器10は、底板11とその周囲に立設された側壁12を有しており、液体Lを貯水するための空間が形成されている。容器10は、例えば金属製やプラスチック製であり、液体Lを漏洩させることなく貯水することができる。
図2に示した例では、容器10は、その底板11が矩形状(四角形状)に形成されている。ただし、容器10の底板11の形状はこれ以外にも、円形、楕円形、三角形、五角形、その他多角形とすることも可能である。容器10に充填する液体Lの種類は特に制限されず、透明な液体(水)であってもよいし、着色された透明又は半透明な液体であってもよい。また、容器10に充填する液体Lの量は、細かい波を形成するためには、例えば水深が1~20mmとなる程度であることが好ましく、2~15mm又は3~10mmとなることが特に好ましい。
【0020】
照明装置20は、容器10内の液体Lに対して光を照射するように構成されている。照明装置20は、例えば天井に取り付けたりスタンドに固定することによって容器10の直上に配置すればよい。この場合、照明装置20の光軸は鉛直方向と平行ととなる。ただし、光軸が鉛直方向に対して傾斜するように照明装置20を配置して、容器10の斜め上方向から液体Lに対して光を照射することもできる。
【0021】
また、照明装置20としては、瞬間的に発光する有色の光源を一定間隔で繰り返し発光させることが可能なものが用いられる。具体的には照明装置20としては公知のストロボスコープを用いればよい。照明装置20は、1発光周期(TL)内で液体Lに照射する光の色を複数の色に周期的に変化させる。例えば、1発光周期(TL)内で、2色、3色、4色、又はそれ以上に光の色を変化させればよい。照明装置20は、例えばR(赤)、G(緑、)B(青)のいずれかで発光する単色LEDを3色以上備えていてもよいし、発光色を制御可能なフルカラーLEDを一又は複数備えるものであってもよい。1発光周期(TL)は、例えば1~1000ms(周波数:1000~1Hz)とすることができ、肉眼で視認することを考慮すると、1発光周期(TL)は、10~100ms(周波数:100~10Hz)とすることが好ましい。
【0022】
第1振動装置30及び第2振動装置40は、容器10内の液体Lに対して振動を付与することによって、液体に波を発生させるために用いられる。本実施形態において、各振動装置30,40としては、音波を出力可能なスピーカが用いられている。その他、各振動装置30,40としては、モータ等のアクチュエータを電力によって機械的に振動を発生させる公知の装置を利用するとも可能である。
図1に示されるように、各振動装置30,40は、音波の出力部分を容器10の底板11に密着又は近接させた状態で固定されている。このため、各振動装置30,40された音波によって容器10の底板11が振動し、その振動が容器10内の液体Lに伝達される。このため、容器10の液体Lは、振動装置30,40された音波の周波数と実施的に同じ周波数で振動し、液体Lの水面に波が生成される。
【0023】
また、
図4は、液体Lが蓄えられた容器10を平面視したものであり、第1振動装置30及び第2振動装置40の配置と、各振動装置30,40からの振動によって生成された波紋を模式的に表している。
図4に示されるように、第1振動装置30と第2振動装置40は容器10の裏側に間隔を空けて配置されている。このように波源が2点ある場合には2つの波が重なり合うことになるが、2つの波が同位相で交わる点は波の高さが強くなり、2つの波が逆位相で交わる点は波の高さが低くなるか又はゼロになる。
【0024】
センサ50は、容器10内の液体Lに物体が近づいたことや液体Lに物体が侵入したことを検出する目的で設けられている。主な検出対象は、人の手指である。例えば、センサ50としては、エリアセンサを用いればよい。具体的には、センサ50(エリアセンサ)は、容器10の側壁12に取り付けられており、水面あるいは底板11と平行に検査光を照射し、その検査光を再び受光する。そして、センサ50は、検査光が物体で反射したこと又は物体によって検査光が遮断されたことによって生じた検査光の変化に基づいて、物体の存在を検出する。センサ50は検査光の状態が変化したときに、物体の検出信号を生成して、これを制御装置60に伝達する。
【0025】
制御装置60は、
図3に示されるように、照明装置20、第1振動装置30、第2振動装置40、及びセンサ50と無線又は有線で接続されており、これらの各装置の制御を行う。具体的には、制御装置60は、第1振動装置30の発光状態(発光色、発光輝度、発光周期等)を制御することができる。また、制御装置60は、各振動装置30,40の振動状態(振動強度、振動周期等)を制御することができる。また、前述した通り、センサ50は物体の検出信号を制御装置60に伝達する。制御装置60は、センサ50から受け取った物体の検出信号に基づいて、照明装置20の発光状態や各振動装置30,40の振動状態を変化させたり制御したりすることができる。制御装置60としては、汎用的なパーソナルコンピュータ(PC)を用いることもできるし、本システム専用に設計されたマイクロコンピュータを用いることもできる。制御装置60は、基本的にプロセッサ(CPU等)、メモリ(RAM等)、及び入出力用のインターフェースを含む。メモリには、所定のプログラムが記憶されており、プロセッサは、このプログラムに従って、入出力用インターフェースを介して各装置20,30,40,50の制御を実行する。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、波照明システム100は、主に容器10及び各振動装置30,40の支持構造を備えている。支持構造には、浮床材70、グレーチング80、及び支持台90が含まれる。浮床材70は、容器10の底板11の裏面側に敷かれている。浮床材70は、液体を蓄える容器10を浮床として、容器10全体を効率よく振動させる目的で配置る。浮床材70の例は、ゴムチップマットである。ゴムチップマットの材料は特に限定されないが、ウレタンやEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)といった公知の材料を用いればよい。浮床材70には、各振動装置30,40(スピーカ)の配置に対応する位置に穴部が形成されており、各振動装置30,40はこの孔部に挿入されることになる。これにより、各振動装置30,40に容器10の液体Lが付着することを防止している。また、グレーチング80は、ステンレスやアルミ等の金属で形成された格子状の構造物である。各振動装置30,40は、グレーチング80の開口部に配置された状態で、このグレーチング80に固定されている。これにより、各振動装置30,40が容器10の底板11の裏面側に密着又は近接した状態を維持できる。また、支持台90は、主に、容器10、各振動装置30,40、浮床材70、グレーチング80を、鑑賞者が容器10内の液体Lに生じた波を観察したり液体Lに触れたりし易い高さに嵩上げするために用いられている。なお、作図の都合上、
図2においては支持台90の図示を省略する。
【0027】
続いて、
図5及び
図6を参照して、照明装置20の発光周期と振動装置30,40の振動周期の関係について具体的説明する。なお、
図5及び
図6は、発光周期と振動周期のずれの関係性を模式的に表したものであり、実際の周期・周波数に厳密には対応していない。
図5は、まず本発明の基本概念を示している。
図5に示した例では、照明装置20の発光周期を符号T
Lで示しており、1つの発光周期(T
L)においてR(赤)、緑(G)、青(B)の順に発光色が変化する。この発光周期(T
L)が繰り返されることで、発光色はR、G、Bの順で周期的に変化することになる。また、
図5に示した例では、照明装置20の発光周波数は100Hzに設定されていることから、発光周期(T
L)は10msである。
【0028】
一方で、
図5では、振動装置30,40によって液体Lに付与される振動の振動周期を符号T
Vで示している。なお、
図5に示した例では、各振動装置30,40による振動の振動周期が一致しているため、液体Lに付与される振動の振幅は一定である。ここで、1つの振動周期(T
V)において最も振幅が強くなった時が、容器10の液体Lの波の頂点に相当する。このため、ある視点から容器10の液体Lの一点に発生する波を観察していると、その波は、各振動周期(T
V)の振幅の最大時点において、照明装置20の発光色と対応した色に光って見えることになる。例えば、
図5に示した例では、最初の振動周期(T
V)の振幅の最大時点では、照明装置20は青色(G)の光を照射していることから、液体Lの波は青く見える。
【0029】
また、
図5に示されるように、振動周期(T
V)は発光周期(T
L)と同じではなく、微小なズレ幅でずれている。具体的には、
図5に示した例では、振動周波数は100.3Hzに設定されていることから、振動周期(T
V)は9.97msである。上記したとおり、発光周期(T
L)は10msであることから、振動周期(T
V)はこれよりも短くなっており、ずれが生じている。このように振動周期(T
V)が発光周期(T
L)よりも短い場合、照明装置20の光はR・B・Gの順で周期的に変化するのに対して、容器10内の液体Lの波の色は反対にR・B・Gの順で周期的に変化することとなる。なお、
図5に示した例では、1発光周期(T
L)が10ms(100Hz)であり、振動周期(T
V)が9.97ms(100.3Hz)であることから、10msで0.03msのずれが生まれる。1秒あたりのずれ量は3msである。また、
図5の例では、照明装置20の発光色は10msの1発光周期(T
L)の間に3色に変化するため、各色の発光時間は約3.3msとなる。従って、ある視点から液体Lの水面の一点に生じる波を観察していると、およそ1.1秒(1100ms)でその波の色が変化することになるといえる。これにより、鑑賞者に対して、液体Lの波の色が徐々に移り変わる様を鑑賞させることができる。
【0030】
なお、
図5に示した例では、振動周期(T
V)が発光周期(T
L)に対して短く設定されている場合を説明したが、振動周期(T
V)を発光周期(T
L)に対して長く設定した場合にも同様に波の色を変化させることができる。例えば、上記の例とは反対に、10msの発光周期(T
L)に対して、振動周期(T
V)を10.3msに設定してもよい。また、上記
図5に示した例では、1つの発光周期(T
L)内で発光色が3色に変化しているが、例えば1つの発光周期(T
L)内で発光色を4色に変化させてもよい。この場合、例えば10ms(100Hz)の発光周期(T
L)に対して、振動周期(T
V)は9.925ms(100.75Hz)又は10.025ms(99.75Hz)とすることが好適である。
【0031】
次に、
図6は、応用例であり、第1振動装置30の振動周期(T
V1)と第2振動装置40の振動周期(T
V2)が異なる場合を示している。第1振動装置30の振動周期(T
V1)を「第1振動周期」といい、第2振動装置40の振動周期(T
V2)を「第2振動周期」とという。
図6に示した例では、第1振動周期(T
V1)は9.97ms(100.3Hz)に設定され、第2振動周期(T
V2)は9.96ms(100.4Hz)に設定されている。この場合、液体Lに付与される振動の振動周期(T
V)は、第1振動装置30の振動と第2振動装置40の振動を合成した合成波の振動周期に相当する。第1振動周期(T
V1)が9.97msであり、第2振動周期(T
V2)が9.96msである場合、それらの合成波の振動周期(T
V)は、それぞれの波の平均値に近い値(約9.965ms)となる。周波数についても同様である。
【0032】
また、第1振動装置30の振動波と第2振動装置40の振動波は、上記の通り周期が異ることから、徐々に位相がずれていき、その後再び位相が一致するという周期を繰り返す。2つの振動波の位相が一致している時は互いに強め合うことから合成波の振幅が大きくなり、2つの振動波の位相が逆転している時は互いに弱め合うことから合成波の振幅は小さくなる。2つの振動波の振幅が等しい場合、位相が一致している時は合成波の振幅は最大で各振動派の2倍となり、位相が逆転している時は合成波の振幅は最小でゼロとなる。合成波の振幅は、最大値と最小値の間での変化を周期的に繰り返す。このように、第1振動装置30の振動波と第2振動装置40の振動波の周期を異ならせることで、それらの合成波に、振幅が周期的に変化するうねりを作り出すことができる。
【0033】
図6に示したように、合成波の振幅は周期的に変化することになるが、この合成波の振幅は液体Lに形成される波の高さに相当する。波の高さが大きいと、照明装置20から照射された光を反射する量も多くなるなることから、鑑賞者にはその波は比較的強く輝いて見える。一方で、波の高さが小さいと、照明装置20から照射された光を反射する量が少なくなることから、鑑賞者にはその波は比較的弱く輝いて見える。このように、波の高さに周期的なうねりを形成することで、波の見え方に変化を生み出すことができる。
【0034】
なお、第1振動装置30の振動周期(T
V1)と第2振動装置40の振動周期(T
V2)だけでなく、合成波の振動周期(T
V:例えば約9.965ms)も、照明装置20の発光周期(T
L:例えば10ms)に対してずれが生じている。このため、
図6に示した例でも、鑑賞者に対して、液体Lの波の色が徐々に移り変わる様を鑑賞させることができる。
【0035】
続いて、
図7は、制御装置60による照明装置20、第1振動装置30、及び第2振動装置40の制御フローの例を示している。まず、制御装置60は、照明装置20、第1振動装置30、及び第2振動装置40に対してそれぞれ制御信号を送出し、各装置を駆動させる(ステップS1~S3)。具体的には、制御装置60は、照明装置20を発光させるとともに、第1振動装置30及び第2振動装置40を駆動して液体Lに対して振動を付与する。このとき、制御装置60は、照明装置20の発光状態(発光色、発光輝度、発光周期等)を指定する。図示した例では、制御装置60は、照明装置20を100Hz(発光周期10ms)とし、1発光周期の間にRGBの3色で発光させる。同様に、制御装置60は、第1振動装置30及び第2振動装置40の振動状態(振動強度、振動周期等)を指定する。図示した例では、制御装置60は、第1振動装置30を100.3Hz(振動周期9.97ms)で駆動し、第2振動装置40を100.4Hz(振動周期9.96ms)で駆動する。なお、
図7では、第2振動装置40の初期の振動周波数を、第1周波数としている。
図7に示した例において、制御装置60は、照明装置20と第1振動装置30については、停止信号を送出するまでの間、ここで指定された条件に従って発光や振動を継続させる。
【0036】
一方で、制御装置60は、第2振動装置40については、センサ50の検出信号に応じて振動状態を変化させる。すなわち、制御装置60は、センサ50から受信する信号に基づいて、センサ50が液体Lの水面付近で物体を検出したか否かを判断する(ステップS4)。物体が検出されていない状態では、制御装置60は、ステップS3に戻り、第2振動装置40を初期状態のまま駆動させる。一方で、物体が検出されたき、制御装置60は、第2振動装置40の振動周波数を変化させる(ステップS5)。具体的には、図示した例では、制御装置60は、第2振動装置40の振動周波数を100.4Hz(振動周期9.96ms)から101.3Hz(振動周期9.87ms)に変化させている。なお、
図7では、第2振動装置40の変化後の振動周波数を、第2周波数としている。この第2周波数は、第1周波数と異なる値であればよく、例えば第1振動装置30の振動周波数(100.3Hz)や照明装置20の発光周波数(100Hz)と同じ値とすることもできる。このように、第2振動装置40の振動周波数を変化させることで、第1振動装置30と第2振動装置40の振動波を合成した合成波の状態が変化する。これにより、液体Lの水面に触れた鑑賞者に対して、あたかも自分の手指に水面が反応したかのような印象を与えることができる。その後、制御装置60は、第2振動装置40の振動周波数を第2周波数に変更してから一定時間が経過したか否かを判断し(ステップS6)、一定時間経過後に、再び、第2振動装置40の振動周波数を第1周波数に戻す。ここにいう一定時間は特に制限されないが、5~60秒程度とすることが適切である。制御装置60は、第2振動装置40については、停止信号を送出するまでの間、ここで説明した制御処理(ステップS3~S6)を繰り返し実行すればよい。
【0037】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0038】
10…容器 11…底板
12…側壁 20…照明装置
30…第1振動装置 40…第2振動装置
50…センサ 60…制御装置
70…浮床材 80…グレーチング
90…支持台 100…波照明システム
L…液体
【要約】
【課題】水面を波立たせてながら複数の色で照明するにあたり、より変化に富む演出を実行する。
【解決手段】波照明システムは、液体を蓄えるための容器と、容器内の液体に対して所定の発光周期で色が変化する光を照射する照明装置と、容器内の液体に対して所定の振動周期の振動を与える一又は複数の振動装置を備えており、発光周期と振動周期が異なる。
【選択図】
図5