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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】電子装置および行動予測システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240115BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240115BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G06Q10/04
G08B25/04 K
G08B21/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019199514
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072007
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】谷 栄剛
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149704(WO,A1)
【文献】特開2010-003024(JP,A)
【文献】特開2001-056805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G08B 25/04
G08B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用者の各移動端末から送信される動態データを受信する受信手段と、
前記動態データに基づき各利用者の行動履歴を生成する生成手段と、
前記行動履歴に基づき各利用者間の行動の類似性を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき利用者間の行動の類似性に関する行動類似情報を作成する作成手段と、
前記行動類似情報に基づき行動に類似性のある他の利用者の行動を参照して対象の利用者の行動を予測する予測手段とを有し、
前記予測手段は、対象の利用者の行動を予測するとき、対象の利用者から動態データを受信しているか否かを検出し、動態データを受信している場合には、対象の利用者の動態データに基づく行動履歴が過去の行動履歴と異なるか否かを検出し、
前記予測手段は、前記行動類似情報に基づき対象の利用者と行動に類似性があることが検出された類似者を識別し、類似者の動態データを受信しているか否かを検出し、動態データを受信している場合には、類似者の動態データに基づく行動履歴が過去の行動履歴と異なるか否かを検出し、
前記予測手段は、対象の利用者の行動履歴が過去の行動履歴と異なり、かつ類似者の行動履歴が過去の行動履歴と同じであるとき、対象の利用者の行動に異常があると判定し、
対象の利用者の行動履歴が過去の行動履歴と異なり、かつ類似者の行動履歴が過去の行動履歴と異なるとき、対象の利用者の行動に異常が無いと判定し、
対象の利用者から動態データが受信されず、かつ他の利用者から動態データが受信されない場合には、対象の利用者の行動に異常が無いと判定する、電子装置。
【請求項2】
電子装置はさらに、前記予測手段が対象の利用者の行動に異常有を検出したとき、決められた利用者または管理者に警告を通知する通知手段を含む、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記動態データは、移動端末の位置情報および時間情報を含み、
前記生成手段は、前記位置情報および前記時間情報に基づき行動履歴を生成し、
前記検出手段は、行動履歴に基づき移動端末の時間的および位置的に近似する移動端末を検出する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記検出手段は、検出された利用者の数に応じて行動の類似性を判定するための近似範囲または重複範囲を動的に変化させる、請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
請求項1ないしいずれか1つに記載の電子装置と、当該電子装置との間でデータ通信を行う複数の利用者の各移動端末とを含み、
各移動端末は、それぞれの動態データを前記電子装置に送信し、
前記電子装置は、利用者の行動に異常有を検出したとき、移動端末または管理者の端末に警告を通知する、行動予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末や車載装置等の移動端末から送信される動態データを利用して利用者の行動を予測する電子装置および行動予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの携帯端末から送信される位置情報を取得することで他の利用者にその現在位置を通知したり、あるいは利用者を監視する見守りサービス等が現在多く展開されている。また、特許文献1では、事前に登録した定型行動パターンから外れるような異常行動パターンを検出した場合、その旨を自動的に着信端末に通知する携帯端末を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-258976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯端末の位置情報を利用したサービスにおいて、普段外出していることが多い曜日/時間帯に外出していない場合や、過去に移動したことがない場所に移動している場合には、異常行動として警告を通知する機能がある。こうした機能は、携帯端末から動態データ(位置情報および時間情報)を受け取るサーバーを含むシステムによって実現される。
【0005】
図1(A)は、利用者Aの携帯端末の動態データがサーバーに送信されない場合の警告例を説明する図である。サーバーは、当日、利用者Aの携帯端末から動態データが送信されないことを検知すると、利用者Aの過去の当日と同じ曜日/時間帯の動態データから当日の行動Pを予測する。次に、サーバーは、当日の行動が過去の移動実績に基づく行動Pと異なることを検出し、システム管理者または警告の通知を希望する利用者に警告を通知する。
【0006】
図1(B)は、利用者Aの携帯端末の動態データと過去の行動範囲を比較して場合の警告例を説明する図である。サーバーは、当日、利用者Aの携帯端末から動態データを受信すると、利用者Aの過去の当日と同じ曜日/時間帯の動態データから当日の行動範囲Qを予測する。次に、サーバーは、当日の行動と過去の移動実績に基づく行動範囲Qとを比較し、行動範囲Qと異なる場合には、システム管理者または警告の通知を希望する利用者などに警告を通知する。
【0007】
このように、普段外出しているのに外出していないことや、過去に移動したことがない場所を移動していることが検出された場合に、利用者Aの行動を異常と予測し警告を通知しているが、利用者Aの行動の異常の判定に利用されるデータは、利用者Aの過去の動態データしかないため、利用者Aの異常と予測される行動は、それが何らかの理由があってのことなのか、あるいは不測の事態によってのことなのかを正確に判断することができず、通知された警告の信頼度が十分に高いとは言えない、という課題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決し、利用者の行動予測の信頼度の向上を図る電子装置および行動予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子装置は、複数の利用者の各移動端末から送信される動態データを受信する受信手段と、前記動態データに基づき各利用者の行動履歴を生成する生成手段と、前記行動履歴に基づき利用者間の行動の類似性を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき利用者間の行動の類似性に関する行動類似情報を作成する作成手段と、前記行動類似情報に基づき行動に類似性のある他の利用者の行動を参照して対象の利用者の行動を予測する予測手段とを有する。
【0010】
ある実施態様では、電子装置はさらに、前記予測手段が対象の利用者の行動に異常有を検出したとき、決められた利用者または管理者に警告を通知する通知手段を含む。ある実施態様では、前記動態データは、移動端末の位置情報および時間情報を含み、前記生成手段は、前記位置情報および前記時間情報に基づき行動履歴を生成し、前記検出手段は、行動履歴に基づき移動端末の時間的および位置的に近似する移動端末を検出する。ある実施態様では、前記予測手段は、対象の利用者の動態データに基づく行動履歴が過去の行動履歴と異なり、かつ前記他の利用者の動態データに基づく行動履歴が過去の行動履歴と同じであるとき、対象の利用者の行動に異常があると判定する。ある実施態様では、前記予測手段は、対象の利用者の動態データに基づく行動履歴が過去の行動履歴と異なり、かつ前記他の利用者の動態データに基づく行動履歴が過去の行動履歴と異なるとき、対象の利用者の行動に異常が無いと判定する。ある実施態様では、前記予測手段は、前記行動類似情報が対象の利用者と他の利用者の行動の類似性を規定している場合に、対象の利用者から動態データが受信されず、かつ他の利用者から動態データが受信されない場合には、対象の利用者の行動に異常が無いと判定する。
【0011】
本発明に係る行動予測システムは、上記記載の電子装置と、当該電子装置との間でデータ通信を行う複数の利用者の各移動端末とを含み、各移動端末は、それぞれの動態データを前記電子装置に送信し、前記電子装置は、利用者の行動に異常有を検出したとき、移動端末または管理者の端末に警告を通知する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、行動類似情報に基づき行動に類似性のある他の利用者の行動を参照して対象の利用者の行動を予測するようにしたので、対象の利用者の行動の予測の信頼度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(A)は、利用者Aの携帯端末の動態データがサーバーに送信されない場合の警告例を説明する図、図1(B)は、利用者Aの携帯端末の動態データと過去の行動範囲を比較して場合の警告例を説明する図である。
図2】本発明の実施例に係る行動予測システムの構成例を示す図である。
図3】本発明の実施例に係る車載装置の内部構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例に係る動態データ送信プログラムの機能的な構成を示す図である。
図5】本発明の実施例に係るサーバーの内部構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施例に係る行動予測プログラムの機能的な構成を示す図である。
図7】本発明の実施例に係る行動履歴の一例を示す図である。
図8】本発明の実施例に係る行動類似性テーブルの一例を示す図である。
図9】本発明の実施例に係る行動の類似性の検出例を示す図である。
図10】本発明の実施例に係る行動予測部の予測例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施する形態について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る行動予測システムの構成例を示す図である。同図に示すように、行動予測システム10は、1つまたは複数の移動端末20(利用者が持ち歩くスマートフォンのような携帯端末20A、車椅子や電動カートあるいは二輪車等に搭載された端末20B、自動車等の移動体に搭載された車載装置20Cなど)と、当該移動端末20とネットワーク30を介して接続される1つまたは複数のサーバー40とを含んで構成される。ネットワーク30は、イントラネットワーク、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、4G/5G等の公衆無線回線網、近距離無線通信等の種々の接続を含み、移動端末20とサーバー40との間で有線および/または無線によるデータ通信を可能にする。
【0015】
移動端末20は、ネットワークを介してサーバー40に接続されるクライアントであることができ、サーバー40が提供する種々の情報またはサービスを利用することができる。本実施例では、移動端末20は、それ自身の位置情報を動態データとしてサーバー40に送信するように動作し、サーバー40は、移動端末20から送信された動態データを受け取り、動態データに基づき移動端末20の行動を予測し、予測された行動に異常がある場合には、何らかの警告を、管理者または警告を必要とする利用者の移動端末20に通知する。
【実施例
【0016】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。図3は、利用者が利用する車両に搭載された車載装置の構成例を示すブロック図である。本実施例に係る車載装置100は、利用者からの入力を受け取る入力部110、GPS信号等を利用して自車位置を検出する位置検出部120、自車位置周辺の案内等を行うナビゲーション部130、ネットワーク30やその他の電子機器との間で無線または有線によるデータ通信を行う通信部140、表示部150、音声出力部160、アプリケーションソフトウエアや道路地図データ等を格納する記憶部170および各部を制御する制御部180を含んで構成される。但し、ここに示す構成は一例であり、車載装置100は、他の機能、例えば、オーディオ・ビジュアル機能、テレビ・ラジオ放送の受信機能等を包含するものであってもよい。
【0017】
制御部180は、ある実施態様では、ROM/RAM等を備えたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含み、制御部180は、ROM/RAMに格納されたプログラムを実行したり、記憶部170に格納されたアプリケーションを実行する。行動予測システム10の一部を構成する車載装置100において、制御部180は、定期的に自車位置を算出し、算出した自車位置に基づき動態データをサーバー40に送信する動態データ送信プログラムを実行する。なお、このような動態データ送信プログラムは、行動予測システム10を構成する複数の移動端末20のそれぞれにおいて実行され、各移動端末20は自身の動態データをサーバー40に送信する。
【0018】
図4に、動態データ送信プログラムの機能的な構成を示す。本実施例に係る動態データ送信プログラム200は、送信時間管理部210、自車位置取得部220、動態データ生成部230および動態データ送信部240を含んで構成される。動態データ送信プログラム200は、車載装置100が起動されたとき、つまり、利用者が自車で走行を開始したとき動作される。
【0019】
送信時間管理部210は、自車の動態データをサーバー40に送信するための時間を管理する。1つの例では、送信時間管理部210は、車載装置100が起動されている期間中、一定の時間間隔で動態データをサーバー40に送信するよう送信時間を管理する。例えば、毎日のAM10:00~PM17:00の期間中、5分間隔で動態データを送信するようにする(但し、車載装置がオフの期間は除く)。あるいは、決められた曜日(例えば、月、水、金)、決められた日(例えば、1、3、5、…31のような奇数日)、決められた月(例えば、1~6月の期間)に、車載装置が動作している期間中に動態データをサーバー40に送信するようにする。送信時間の管理をどのように設定するかは、任意であるが、例えば、行動予測システム10の設計仕様に沿うように予め設定したり、利用者が入力部110を介して設定または変更できるようにしたり、あるいはサーバー40からのリクエストまたは指示に基づき設定するようにすることが可能である。
【0020】
自車位置取得部220は、送信時間管理部210による送信時間の管理に基づき現在の自車位置を位置検出部120から取得し、取得した現在の位置情報を動態データ生成部230に提供される。
【0021】
動態データ生成部230は、自車位置取得部220で取得された自車位置に基づき動態データを生成する。動態データのフォーマットは任意であるが、少なくとも自車位置、自車位置を検出したときの時間、および利用者を識別する情報(例えば、利用者の固有な情報でもよいし、利用者に関連付けされた車載装置または車両の固有の情報であってもよい)を含む。
【0022】
動態データ送信部240は、動態データ生成部230で生成された動態データを送信時間管理部210で設定された送信時間に従いサーバー40に送信する。例えば、送信時間管理部210によって5分間隔で動態データを送信することが決められている場合には、動態データ送信部240は、5分間隔で生成された動態データをサーバー40に送信する。なお、動態データを送信するとき、動態データ送信部240は、通信部140を介してサーバー40との通信接続を確立する。
【0023】
行動予測システム10の一部を構成するサーバー40は、複数の移動端末20(車載装置100を含む)から送信された動態データを受信し、これらの動態データに基づき複数の利用者のそれぞれの行動を予測する。
【0024】
図5にサーバー40の典型的な内部構成を示す。サーバー40は、ネットワーク30を介して複数の移動端末20との間でデータ通信を可能にする通信部300と、通信部300を介して複数の移動端末20(車載装置100を含む)から送信された動態データを受信する受信部310と、受信部310で受信された動態データに基づき生成された行動履歴や行動予測データ等を記憶する記憶部320と、各部を制御する制御部330を含んで構成される。
【0025】
制御部330は、ある実施態様では、ROM/RAM等を備えたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含み、制御部330は、ROM/RAMまたは記憶部320に格納された行動予測プログラムを実行する。図6に、本実施例の行動予測プログラム400の機能的な構成を示す。行動予測プログラム400は、動態データを受信する動態データ受信部410と、受信した動態データに基づき各利用者の行動履歴を生成する行動履歴生成部420と、行動履歴に基づき利用者間の行動の類似性を検出する類似性検出部430と、類似性検出部430の検出結果に基づき行動類似性テーブルを生成する行動類似性テーブル生成部440と、行動類似性テーブルに基づき対象の利用者の行動を予測する行動予測部450と、行動予測部450によって異常が検出されたとき警告と通知する警告通知部460とを含んで構成される。
【0026】
動態データ受信部410は、図2に示すように複数の移動端末20から送信された動態データを通信部300を介して受信し、受信した動態データを行動履歴生成部420へ提供する。行動履歴生成部420は、動態データに含まれる利用者の識別情報に基づき利用者毎の行動履歴を生成する。行動履歴には、利用者が、何時、何処に、どのくらい滞在したか等の情報が含まれる。図7に行動履歴の一例を示すが、ここには、利用者が行動をした日時(例えば、月日、曜日など)、移動の開始地点、開始時刻、到着地点、到着時刻、開始地点から到着地点までの経路、到着地点での滞在時間、到着地点の近傍に施設等が存在する場合にはその施設名などが含まれる。各利用者から収集される動態データのサンプル数が多ければ多いほど、各利用者の行動履歴の信憑性あるいは信頼性は向上するが、その一方において、あまりに長期間において収集された動態データは、利用者の直近の行動を反映しなくなるおそれがある。それ故、行動履歴生成部420は、例えば、動態データのサンプル数が一定以上に到達した場合には、一定期間よりも前に収集された古い動態データを削除するようにしてもよい。
【0027】
類似性検出部430は、各利用者の行動履歴に基づき、利用者間の行動の類似性を検出する。具体的には、行動履歴に基づき利用者間の時間的および位置的に近似する行動を検出する。例えば、利用者Aのある行動履歴が、日時Tに地点Xまたは施設Xaに向けて移動し、地点Xまたは施設Xaで時間Yだけ滞在する場合に、同じ日時Tに、地点Xまたは施設Xaの近傍に移動し、地点Xまたは施設Xaの近傍に時間Yと重複する時間を滞在する行動履歴を持つ他の利用者Bを検出する。利用者Aと利用者Bの滞在する位置が近似するか否かは、座標情報をもって判定することができるが、それ以外にも滞在する位置に施設が存在する場合には、施設が共通か否かをもって判定することも可能である。行動が類似するか否かを決定するための時間的および位置的な近似範囲または重複範囲は予め設定されるが、この近似範囲または重複範囲を狭めることは、利用者間の行動の類似度の検出精度を高め、他方、近似範囲または重複範囲を広げることは、検出精度を下げることになる。ある実施態様では、類似性検出部430は、行動に類似性があるとして検出された利用者の数に応じて近似範囲または重複範囲を動的に変化させるようにしてもよい。例えば、検出される利用者の数が閾値を超える場合には、近似範囲または重複範囲をより狭め、反対に検出される利用者数が少ない場合には、近似範囲または重複範囲を広げるように調整する。類似性検出部430は、予め決められた時間に利用者間の行動の類似性の検出を行うことができ、例えば、定期的に1日に1回、あるいは何日かに1回行う。あるいは、類似性検出部430は、利用者から動態データを受信したときに当該利用者の動態データに基づく行動履歴と類似性のある行動履歴をもつ他の利用者を検出するようにしてもよい。
【0028】
行動類似性テーブル生成部440は、類似性検出部430の検出結果に基づき、行動の類似性のある利用者を関連付けまたはグループ化した行動類似性テーブルを生成する。図7に行動類似性テーブルの一例を示す。行動類似性テーブルには、少なくとも類似性のある行動を識別するための情報と、類似性のある行動を行った利用者との関係が規定される。図の例では、行動類似性テーブルは、類似性の行動を識別するための情報として曜日および時間帯等の時間情報を含み、関連付けする利用者として対象者と類似者とを規定する。類似者は、必ずしも1人には限らず複数の場合もある。さらに、類似性の行動を示す類似観点が規定される。例えば、行動の類似性が検出された滞在場所および滞在時間、または滞在施設および滞在時間が示される。また、行動の類似性の検出において、開始地点から到着地点までの経路が考慮された場合には、経路が類似観点に含まれ、さらに滞在場所としてその地点の施設が考慮された場合には、施設が類似観点に含まれる。行動類似性テーブル生成部440は、例えば、類似性検出部430が1日に1回実施された場合には、これと同期して類似性検出部430の検出結果を反映するように行動類似性テーブルを更新する。この行動類似性テーブルは、行動履歴とともに記憶部320のデータベースに格納される。
【0029】
行動予測部450は、対象の利用者の行動を予測するとき、行動類似性テーブルを参照し、対象の利用者と行動に類似性のある利用者の行動履歴を利用して対象の利用者の行動に異常があるか否かを検出する。ある実施態様では、行動予測部450は、行動類似性テーブルを参照し、現在の日時に該当する対象の利用者を特定し、特定した対象の利用者の行動を予測する。例えば、現在の日時が月曜日の午前9時であるとき、行動予測部450は、図8に示すような行動類似性テーブルの中から該当する曜日と時間帯を検索し、そこに示される対象の利用者を特定し、特定した対象の利用者から動態データが受信されているか否か、受信されている場合には、その動態データに基づく行動履歴と行動類似性テーブルに規定された他の利用者からの動態データに基づく行動履歴とを比較し、対象の利用者の行動を予測する。また、別な実施態様では、行動予測部450は、利用者から動態データが受信されたとき、当該利用者を対象の利用者として特定し、特定した対象の利用者に該当する行動類似性テーブルを参照して、現在の日時に該当する行動を特定し、特定した行動に規定される他の利用者からの動態データに基づく行動履歴と対象の利用者の動態データに基づく行動履歴とを比較して対象の利用者の行動を予測するようにしてもよい。あるいは、行動予測部450は、予め決められたスケジュールおよびルールに従い対象の利用者を特定し、対象の利用者と行動が類似する他の利用者の動態データまたはその行動履歴を参照して対象の利用者の行動を予測するようにしてもよい。なお、行動予測部450の詳細な動作例は後述する。
【0030】
警告通知部460は、行動予測部450により利用者の行動に異常が検出されたとき、当該利用者の異常を知らせるための警告を、管理者あるいは予め決められた利用者に通知する。
【0031】
次に、本実施例の行動予測システムの動作例について説明する。以下の説明では、一例として、利用者Aが行動を予測される対象の利用者、利用者Bが利用者Aに類似する行動を行う利用者とし、警告の通知を受ける管理者がスマートフォン20Aを所持するものとする。
【0032】
行動予測システム10のサービスを受ける利用者Aの過去の動態データに基づく行動履歴から、任意の曜日/時間帯で同じ場所に移動している、または同じ場所(施設)に滞在している頻度が高いなどの、行動に「類似性」が見られる他の利用者Bの有無を検出する。これは、上記した類似性検出部430により実施される。例えば、図9(A)に示すように、利用者A、利用者Bから水曜日の9~10時に動態データが受信され、利用者Aの動態データに基づく行動履歴S1_Aが場所Lに向かうルートであり、利用者Bの動態データに基づく行動履歴S1_Bが同じ場所Lに向かうルートである。また、図9(B)に示すように、利用者A、利用者Bから水曜日の11~12時に動態データが受信され、利用者Aの動態データに基づく行動履歴S2_Aが場所Lから離れるルートであり、利用者Bの動態データに基づく行動履歴S2_Bが同じ場所Lから離れるルートである。このような場合、利用者Aと利用者Bは、同じ時間帯に同じ場所Lに滞在していたことが検出され、その結果、図9(C)に示すように、水曜日の時間帯9~12時において利用者Aと利用者Bとの行動の類似性を示す情報が行動類似性テーブルに生成され、保存される。ここでは、類似観点として滞在場所および滞在時間の類似性を検出するが、これに加えて、行動履歴に含まれる経路や施設などを類似性の判定に加えるようにしてもよい。なお、利用者Aの行動と類似する行動を行う利用者は1人に限らず、複数の利用者が検出される場合もある。行動の類似性の検出および行動類似性テーブルの更新は、例えば、1回/日等の間隔で定期的に実施される。
【0033】
次に、行動予測部450の動作例について説明する。行動予測部450は、対象の利用者Aの行動を予測するとき、利用者Aから当日の動態データが受信されているか否かの検出、または利用者Aから受信された動態データが過去の行動履歴と異なるか否かを検知する。
【0034】
行動予測部450は、データベース内の行動類似性テーブルを参照し、同日と同じ曜日/時間帯に利用者Aと行動に類似性がことが検出された他の利用者Bを識別する。次に、行動予測部450は、当日の利用者Bの動態データが受信されているか否か、受信されている場合には、利用者Bは過去の行動履歴と同じ範囲内を移動しているか否かを判定する。
【0035】
行動予測部450は、利用者Bの動態データが受されている場合、利用者A、Bの行動履歴を比較し、利用者Aの行動の異常性の有無を判定する。両者の行動の比較例を図10に示す。
【0036】
図10(A)に示すように、利用者Aの動態データに基づく行動履歴S3_Aが過去の行動履歴S1_A(図9(A)を参照)と異なるが、利用者Bの動態データに基づく行動履歴S1_Bは、過去の行動履歴と同じであるとき:
この場合、利用者Bが通常の行動をしているため、利用者Aが道に迷った等の不測の事態であることが予測され、行動予測部450は、利用者Aの行動に異常有りと判定する。
【0037】
図10(B)に示すように、利用者Aも利用者Bも動態データに基づく行動履歴S3_A、S3_Bが過去の行動履歴S1_A、S1_Bとは異なるとき:
この場合、利用者Bも通常の行動をしておらず、当日は利用者Aも利用者Bも別行動であることが予測され、行動予測部450は、利用者Aの行動に異常無しと判定する。
【0038】
図10(C)に示すように、利用者Aも利用者Bも過去の行動履歴とは異なり、当日は、利用者Aからも利用者Bからも動態データの受信がないとき:
この場合、利用者Aも利用者Bも用事がないと予測され、利用者Aの行動に異常無しと判定する。
【0039】
警告通知部460は、行動予測部450により利用者Aの行動に異常がると判定されたとき、管理者等に、利用者Aの行動に異常があることを示す警告を管理者のスマートフォン20Aに通知する。
【0040】
このように本実施例によれば、従来のように利用者Aのみの過去の動態データ(または行動履歴)に基づき行動を予測するよりも、行動に類似性がある他の利用者Bの過去の動態データ(または行動履歴)を加えて行動を予測するようにしたので、行動予測の幅を広げることができ、利用者Aの行動の予測の精度が上がり、警告を通知する信頼度を向上することができる。
【0041】
本実施例では、利用者A、Bが車両に搭載する例を示したが、利用者または移動端末は、必ずしも移動体を必要とするものではない。例えば、移動端末は、利用者が持ち歩くスマートフォンであってもよく、その場合、スマートフォンの動態データがサーバー40に送信され、スマートフォンを持ち歩く利用者の行動を予測することができる。また、利用者の行動を予測する時間は任意に設定することが可能であり、例えば、行動予測部450は、利用者からの動態データが受信されたことをトリガーにして利用者の行動の予測を不定期に実施するようにしてもよいし、特定の利用者の行動の予測を定期的に実施するようにしてもよい。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:行動予測システム
20、20A、20B、20C:移動端末
100:車載装置
200:動態データ送信プログラム
400:行動予測プログラム
410:動態データ受信部
420:行動履歴生成部
430:類似性検出部
440:行動類似性テーブル生成部
450:行動予測部
460:警告通知部
図1
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