(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】カラオケ装置
(51)【国際特許分類】
G10K 15/04 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
G10K15/04 302D
(21)【出願番号】P 2020109535
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 惇也
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247552(JP,A)
【文献】実開平05-054940(JP,U)
【文献】特開2015-011243(JP,A)
【文献】特開2018-072595(JP,A)
【文献】特開2017-138359(JP,A)
【文献】特開2016-035360(JP,A)
【文献】特開2020-030010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
G10H 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気システムが導入されたカラオケルームに設置され、楽曲の歌詞データが記憶されたカラオケ装置であって、
歌唱された楽曲の歌詞データ内の所定の子音を含む特定歌詞文字に基づく室内環境の評価値を累積する算出部と、
室内環境の累積評価値が換気に関する所定条件を満たすか否かを判定する判定部と、
室内環境の累積評価値が所定条件を満たす場合に換気を推奨又は実行する制御部と、
前記制御部による換気の推奨又は実行に応じて室内環境の累積評価値を更新する更新部と、を有することを特徴とするカラオケ装置。
【請求項2】
前記算出部は、子音の種別に応じて重み付けした室内環境の評価値を累積することを特徴とする請求項1に記載のカラオケ装置。
【請求項3】
前記制御部は、室内環境の累積評価値に対応した時間が経過するまで前記カラオケルームの換気を実行し、
前記更新部は、室内環境の累積評価値をリセットすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカラオケ装置。
【請求項4】
歌唱音声の入力レベルを測定する測定部を有し、
前記算出部は、入力レベルに応じて室内環境の累積評価値を補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカラオケ装置。
【請求項5】
歌唱者の人数を取得する取得部を有し、
前記算出部は、歌唱者の人数に応じて室内環境の累積評価値を補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカラオケ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症対策の一つとして施設内の換気が重要視されている。特に、施設の中でもカラオケルームには高い遮音性が求められており、ドアや窓を開放することなく給気と排気を機械によって強制的に行う第一種換気が望ましい。施設内の換気システムとして、施設内の環境状態を監視して強制的に施設内を換気するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この換気システムは、室内の温度や湿度等の環境情報の悪化から室内環境に依存した疾病リスクを把握して、強制的に室内を換気することで飛沫感染等による感染症の拡大を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カラオケ歌唱時に歌詞に「サ行」や「パ行」等の文字が含まれていると、歌唱音声に摩擦音や破裂音が含まれて飛沫が生じ易い。特許文献1には、環境情報の悪化に基づいて強制的に換気することが開示されているが、歌唱に伴う飛沫までは考慮されていないため、カラオケルームが適切に換気されないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、カラオケルームに有効な感染症対策を実現することができるカラオケ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、換気システムが導入されたカラオケルームに設置され、楽曲の歌詞データが記憶されたカラオケ装置であって、歌唱された楽曲の歌詞データ内の所定の子音を含む特定歌詞文字に基づく室内環境の評価値を累積する算出部と、室内環境の累積評価値が換気に関する所定条件を満たすか否かを判定する判定部と、室内環境の累積評価値が所定条件を満たす場合に換気を推奨又は実行する制御部と、前記制御部による換気の推奨又は実行に応じて室内環境の累積評価値を更新する更新部と、を有するカラオケ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飛沫が生じ易い所定の子音を含む特定歌詞文字から室内環境の評価値が求められ、この室内環境の評価値の累積によってカラオケルーム内の飛沫の発生量が推測される。室内環境の累積評価値が所定条件を満たすと、カラオケルーム内の換気の推奨又は実行によって室内環境が改善されて室内環境の累積評価値が更新される。このように、歌唱に伴う飛沫の発生を監視して、カラオケルームに有効な感染症対策を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態のカラオケ装置の構成図である。
【
図2】第1実施形態のカラオケ装置の機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態の室内環境の累積評価値の変化の一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態のカラオケ装置の処理を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態の室内環境の累積評価値の変化の一例を示す図である。
【
図6】第3実施形態のカラオケ装置の機能ブロック図である。
【
図7】第4実施形態のカラオケ装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1を参照して、第1実施形態のカラオケ装置10について説明する。
図1は、第1実施形態のカラオケ装置10の構成図である。
図2は、第1実施形態のカラオケ装置10の機能ブロック図である。なお、
図2の機能ブロック図には、説明の便宜上、換気の要否の判定処理に関する機能ブロックを図示している。
【0010】
図1に示すように、カラオケ装置10は、換気システム16が導入されたカラオケルームに設置されており、カラオケ本体11と、モニタ12と、スピーカ13と、マイクロフォン14と、リモコン装置15と、を備えている。モニタ12は、カラオケ本体11からの映像信号等に基づいて、カラオケ演奏に合わせて背景映像と共に歌詞テロップを表示する。スピーカ13は、カラオケ本体11からの放音信号に基づいて、楽曲の伴奏音と共に歌唱者の歌唱音声を放音する。マイクロフォン14は、歌唱者の歌唱音声を歌唱音声信号に変換してカラオケ本体11に入力する。
【0011】
リモコン装置15は、タッチパネルを主体に構成されている。リモコン装置15は、検索メニューや検索結果等の各種情報をタッチパネルに表示すると共に、タッチパネルによって入力を受け付けている。リモコン装置15とカラオケ本体11は無線通信を介してペアリングされており、リモコン装置15とカラオケ本体11の間で各種情報が相互に送受信される。リモコン装置15は、利用者のタッチ操作に基づいて楽曲を検索する。タッチパネルに表示された転送ボタンのタッチによって、楽曲IDが予約楽曲情報としてカラオケ本体11に送信される。
【0012】
カラオケ本体11は、リモコン装置15から受信した予約楽曲情報を記憶部21(
図2参照)の予約管理テーブルに登録する。記憶部21には、楽曲ID毎に楽曲データ等のカラオケ歌唱に関する各種データが記憶されている。カラオケ本体11は、予約管理テーブルから登録順に予約楽曲情報を読み出し、この予約楽曲情報の楽曲IDに対応する楽曲データ等を記憶部21から読み出す。楽曲データには、カラオケ楽曲の伴奏音の元になる伴奏データ、歌唱の採点基準となるリファレンスデータ、モニタ12に表示される歌詞テロップの元になる歌詞データが含まれている。
【0013】
カラオケ本体11がカラオケ演奏を開始すると、伴奏データの再生に同期して、歌詞データ及び背景映像データに基づいて歌詞テロップと背景映像がモニタ12に表示される。また、カラオケ本体11ではカラオケ演奏の伴奏音信号とマイクロフォン14から入力された歌唱音声信号がミキサによって適切な比率でミキシングされて、このミキシング信号がアンプによって増幅されてスピーカ13から放音される。このように、歌唱者がカラオケ演奏に合わせて歌唱すると、スピーカ13から伴奏音と共に歌唱音声が放音される。歌唱音声はリファレンスデータに基づいて採点される。
【0014】
図2に示すように、カラオケ本体11は、カラオケ演奏処理に加えて、カラオケルームの換気の要否を判定可能に構成されている。カラオケ本体11には、記憶部21と、演奏部22と、算出部23と、判定部24と、制御部25と、更新部26とが設けられている。記憶部21には、予約楽曲情報が登録順に並べられた予約管理テーブル、楽曲IDに対応付けられた楽曲データ、背景映像データ等が記憶されている。演奏部22は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)音源等によって構成されている。演奏部22は、記憶部21から楽曲データを読み出して、楽曲データに含まれる伴奏データを再生する。
【0015】
算出部23は、歌唱された楽曲の歌詞データ内の所定の子音を含む特定歌詞文字に基づく室内環境の評価値を累積する。特定歌詞文字として歌唱時に飛沫が生じ易い歌詞文字が設定されているため、室内環境の評価値によって歌唱後の飛沫の発生量を推測することが可能になっている。この場合、楽曲のカラオケ演奏の終了後に記憶部21から算出部23に楽曲データが読み出され、楽曲データに含まれる歌詞データ内から所定の子音を含む特定歌詞文字が抽出される。そして、歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされ、このカウント値が室内環境の評価値として累積される。
【0016】
ここで、本実施形態の所定の子音とは、歌詞文字をローマ字表記したときの「P」、「B」、「T」、「D」、「K」、「G」、「S」、「H」に対応する音である。すなわち、本実施形態の特定歌詞文字は、語句の先頭の破裂音である「ぱ行」、「ば行」、「た行」、「だ行」、「か行」、「が行」の各文字、及び語句の先頭の摩擦音である「さ行」、「は行」の各文字である。なお、本実施形態では、日本語の歌詞を前提として所定の子音が決定されたが、英語の歌詞の場合には所定の子音に「F」、「V」等に対応する音が含まれていてもよい。
【0017】
例えば、楽曲Xのある歌唱区間の歌詞が「きぶんは さいこう あなたも わたしも ぱっぱら ぱー」である場合、各語句の先頭の破裂音は「き」が1つと「ぱ」が2つであり、各語句の先頭の摩擦音は「さ」が1つである。特定歌詞文字の出現回数が4回であるため、室内環境の評価値は「4」になる。楽曲Xの歌詞データの全ての特定歌詞文字がカウントされて、特定歌詞文字の出現回数が30回である場合には、楽曲Xのカラオケ演奏の終了後の室内環境の評価値は「30」になる。楽曲のカラオケ演奏の終了毎に室内環境の評価値が累積されて累積評価値として保持される。
【0018】
判定部24は、室内環境の累積評価値が換気に関する所定条件を満たすか否かを判定する。所定条件としては、換気が必要と推測される室内環境の累積評価値に対する閾値が設定されており、この閾値はカラオケルームの広さや換気システム16の能力等に基づいて予め決められている。室内環境の累積評価値が閾値以上の場合に所定条件を満たすと判定され、室内環境の累積評価値が閾値未満の場合に所定条件を満たさないと判定される。閾値が「50」に設定された場合、一曲又は複数曲のカラオケ演奏の終了後の室内環境の累積評価値が「50」以上になるまで所定条件は満たされない。
【0019】
制御部25は、室内環境の累積評価値が所定条件を満たす場合に換気を実行する。制御部25から換気システム16に換気の指示信号が出力され、換気システム16が指示信号を受けてカラオケルームの換気を開始する。換気システム16は、所定の換気時間をタイマーで計測し、換気時間の経過後に自動的にカラオケルームの換気を終了する。ここでは、所定条件に応じた換気時間、すなわち閾値に相当する評価値だけ室内環境を改善するのに必要な換気時間が設定されている。例えば、閾値が「50」の場合には換気時間が10分に設定されている。
【0020】
更新部26は、制御部25による換気の実行に応じて室内環境の累積評価値を更新する。カラオケルームの換気前の室内環境の累積評価値から閾値に相当する評価値が減算されて、カラオケルームの換気後の室内環境の累積評価値に更新される。例えば、閾値が「50」の場合には10分間だけ換気されて、換気前の室内環境の累積評価値から「50」だけ低くなった値に更新される。更新後の室内環境の累積評価値は算出部23に出力され、算出部23では更新後の室内環境の累積評価値に対して、楽曲のカラオケ演奏が終了する度に室内環境の評価値が累積される。
【0021】
なお、本実施形態では、制御部25は、室内環境の累積評価値が所定条件を満たす場合に換気システム16に換気を指示する構成にしたが、室内環境の累積評価値が所定条件を満たす場合に利用者に換気を推奨してもよい。制御部25からモニタ12に換気の推奨メッセージが出力され、モニタ12に推奨メッセージを表示させて利用者にカラオケルームの換気を促してもよい。制御部25からスピーカ13に換気の推奨音声が出力され、スピーカ13に推奨音声を放音させて利用者にカラオケルームの換気を促してもよい。換気の推奨方式は上記方式に限定されず、例えば、警告音や点滅等によって換気が推奨されてもよい。また、更新部26は、制御部25による換気の推奨に応じても室内環境の累積評価値を更新するため、換気の推奨を受けた利用者が実際にカラオケルームを換気することが望ましい。このため、利用者がカラオケルームの換気を実施するまでは、演奏部22によるカラオケ演奏が禁止されてもよい。例えば、モニタ12に換気の確認用画面が表示され、画面上で換気済みにチェックが入れられるまでは楽曲のカラオケ演奏が停止される。
【0022】
カラオケ本体11の各部の処理は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。また、メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。
【0023】
図3を参照して、カラオケ装置10の処理動作について具体例を挙げて説明する。
図3は、第1実施形態の室内環境の累積評価値の変化の一例を示す図である。なお、
図3では、
図1及び
図2の符号を適宜使用して説明する。
【0024】
カラオケ装置10には、利用者Uによって楽曲X1-X3が予約されている。カラオケ装置10の記憶部21には、楽曲X1-X3の歌詞データが記憶されている。また、判定部24には、換気の要否を判定するための所定条件として、室内環境の累積評価値に対する閾値が「50」に設定されている。利用者Uによってカラオケ装置10にカラオケ演奏が指示されると、カラオケ装置10によって楽曲X1から順番にカラオケ演奏が開始される。モニタ12に楽曲X1の歌詞テロップが表示され、利用者Uが歌詞テロップを見ながら楽曲X1を歌唱する。
【0025】
図3に示すように、時刻t1に楽曲X1のカラオケ演奏が終了して、算出部23によって楽曲X1の歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされる。特定歌詞文字の出現回数のカウント値「30」が室内環境の累積評価値になる。室内環境の累積評価値「30」が閾値「50」未満であるため、判定部24に室内環境の累積評価値が所定条件を満たさないと判定される。このため、制御部25から換気システム16に換気が指示されることがなく、室内環境の累積評価値が「30」に維持された状態で、カラオケ装置10によって楽曲X2のカラオケ演奏が開始される。
【0026】
時刻t2に楽曲X2のカラオケ演奏が終了して、算出部23によって楽曲X2の歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされる。特定歌詞文字の出現回数のカウント値「25」が、楽曲X1のカラオケ演奏の終了時点の室内環境の累積評価値「30」に累積される。室内環境の累積評価値が「55」になって閾値「50」を超えるため、判定部24に室内環境の累積評価値が所定条件を満たすと判定される。このため、制御部25から換気システム16に換気が指示され、換気システム16によってカラオケルームが10分間だけ換気される。
【0027】
また、制御部25から換気システム16に換気が指示された場合、更新部26によって室内環境の累積評価値が更新される。換気システム16の換気時間は、室内環境の累積評価値から閾値に相当する評価値「50」が低下するまで、換気によってカラオケルーム内の室内環境が改善される時間に設定されている。換気時間の経過後に換気によってカラオケルーム内の室内環境が改善されるので、更新部26によって室内環境の累積評価値が「55」から「5」に更新される。室内環境の累積評価値が更新後の「5」に維持された状態で、カラオケ装置10によって楽曲X3のカラオケ演奏が開始される。
【0028】
時刻t3に楽曲X3のカラオケ演奏が終了して、算出部23によって楽曲X3の歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされる。特定歌詞文字の出現回数のカウント値「35」が、楽曲X2のカラオケ演奏の終了時点の室内環境の累積評価値「5」に累積される。室内環境の累積評価値が「40」になるが、室内環境の累積評価値が閾値「50」未満であるため、判定部24に室内環境の累積評価値が所定条件を満たさないと判定される。このため、制御部25から換気システム16に換気が指示されることがなく、室内環境の累積評価値が「40」に維持される。
【0029】
なお、本実施形態では、換気システム16の動作中もカラオケ演奏が実施されて、カラオケ演奏の終了後に室内環境の評価値が累積される構成にしたが、換気システム16の動作中はカラオケ演奏が停止されてもよい。
【0030】
図4を参照して、カラオケ装置10の処理動作の流れについて説明する。
図4は、第1実施形態のカラオケ装置10の処理を示すフローチャートである。なお、
図4に示すフローチャートは一例を示すものであり、カラオケ装置10の処理動作は、このフローチャートに限定されない。なお、
図4では、
図1及び
図2の符号を適宜使用して説明する。
【0031】
利用者Uにカラオケルームの利用が開始され、カラオケ装置10に対して楽曲が予約される。
図4に示すように、利用者Uによって楽曲の演奏開始が指示されると、カラオケ装置10によってカラオケ演奏が開始される(ステップS01)。楽曲のカラオケ演奏が終了すると(ステップS02)、歌唱に伴う飛沫の発生量を推測するために、算出部23によって楽曲の歌詞データの特定歌詞文字がカウントされて、このカウント値が室内環境の評価値として累積される(ステップS03)。一曲目のカラオケ演奏の終了後は、室内環境の評価値がそのまま累積評価値として使用される。
【0032】
次に、判定部24によって室内環境の累積評価値が所定条件を満たすか否かが判定される(ステップS04)。室内環境の累積評価値が閾値未満の場合には(ステップS04でNo)、室内環境の累積評価値が所定条件を満たさないため、カラオケルームの換気が不要になってステップS7に処理が移行する。室内環境の累積評価値が閾値以上の場合には(ステップS04でYes)、室内環境の累積評価値が所定条件を満たすため、換気システム16によってカラオケルームが換気される(ステップS05)。換気によってカラオケルーム内の飛沫量が減少して室内環境が改善される。
【0033】
また、換気によってカラオケルームの室内環境が改善される分だけ、更新部26によって室内環境の累積評価値が更新される(ステップS06)。そして、カラオケルームの利用時間が終了するまで、ステップS01からステップS06の処理が繰り返されて、カラオケルームの室内環境の悪化が抑えられている(ステップS07)。
【0034】
なお、本実施形態では、カラオケ演奏の終了後に算出部23の累積処理、判定部24の判定処理が実施されたが、カラオケ演奏中に算出部23の累積処理、判定部24の判定処理が実施されてもよい。例えば、楽曲のカラオケ演奏の進行に伴って歌詞テロップが表示されたときに、算出部23によって歌詞テロップに含まれる特定歌詞文字の出現回数がカウントされて室内環境の評価値が累積される。また、特定歌詞文字の出現回数がカウントされる度に、判定部24によって室内環境の累積評価値が所定条件を満たすか否か判定される。この場合、室内環境の累積評価値が所定条件を満たした時点で、制御部25が換気を推奨又は実行して、更新部26が室内環境の累積評価値を更新してもよい。あるいは、この楽曲のカラオケ演奏が終了した時点で、制御部25が換気を推奨又は実行して、更新部26が室内環境の累積評価値を更新してもよい。
【0035】
以上、第1実施形態によれば、飛沫が生じ易い所定の子音を含む特定歌詞文字から室内環境の評価値が求められ、この室内環境の評価値の累積によってカラオケルーム内の飛沫の発生量が推測される。室内環境の累積評価値が所定条件を満たすと、カラオケルーム内の換気の推奨又は実行によって室内環境が改善されて室内環境の累積評価値が更新される。このように、歌唱に伴う飛沫の発生を監視して、カラオケルームに有効な感染症対策を実現することができる。
【0036】
<変形例>
第1実施形態では、特定歌詞文字の出現回数のカウント値が室内環境の評価値として累積されたが、以下の変形例に示すように、子音の種別に応じて重み付けした室内環境の評価値が累積されてもよい。歌詞データの語句の先頭の特定歌詞文字の出現回数をカウントする際に、特に飛沫が生じ易いと推測される一部の破裂音及び摩擦音のカウント値に重み付けを行い、その他の破裂音及び摩擦音のカウント値に重み付けを行わない。なお、一部の破裂音及び摩擦音は同じ重み付け係数で重み付けされてもよいし、異なる重み付け係数で重み付けされてもよい。
【0037】
具体的には、「ぱ行」の破裂音のカウント値は1.5倍に重み付けされ、「さ行」の摩擦音のカウント値は1.2倍に重み付けされ、それ以外の破裂音及び摩擦音のカウント値は重み付けされない。楽曲Xのある歌唱区間の歌詞が「きぶんは さいこう あなたも わたしも ぱっぱら ぱー」である場合、各語句の先頭の破裂音は「き」が1つと「ぱ」が2つであり、各語句の先頭の摩擦音は「さ」が1つである。「き」は重み付けされず、「ぱ」は1.5倍に重み付けされ、「さ」は1.2倍に重み付けされるため、室内環境の評価値は「5.2」になる。
【0038】
以上、変形例によれば、子音の種別毎の飛沫の発生し易さを考慮して、より正確に室内環境の評価値を累積することができる。
【0039】
<第2実施形態>
第2実施形態のカラオケ装置10について説明する。
図5は、第2実施形態の室内環境の累積評価値の変化の一例を示す図である。なお、第2実施形態のカラオケ装置10は、室内環境の累積評価値に対応した時間が経過するまでカラオケルームを換気して、室内環境の累積評価値をリセットする点で、第1実施形態のカラオケ装置10と相違する。したがって、第2実施形態については、第1実施形態と同様な構成については説明を省略する。また、
図5では、
図1及び
図2に示す第1実施形態の符号を適宜使用して説明する。
【0040】
図5に示すように、時刻t4に楽曲X1のカラオケ演奏が終了して、算出部23によって楽曲X1の歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされる。特定歌詞文字の出現回数のカウント値「30」が室内環境の累積評価値になる。室内環境の累積評価値「30」が閾値「50」未満であるため、判定部24に室内環境の累積評価値が所定条件を満たさないと判定される。このため、制御部25から換気システム16に換気が指示されることがなく、室内環境の累積評価値が「30」に維持された状態で、カラオケ装置10によって楽曲X2のカラオケ演奏が開始される。
【0041】
時刻t5に楽曲X2のカラオケ演奏が終了して、算出部23によって楽曲X2の歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされる。特定歌詞文字の出現回数のカウント値「25」が、楽曲X1のカラオケ演奏の終了時点の室内環境の累積評価値「30」に累積される。室内環境の累積評価値が「55」になって閾値「50」を超えるため、判定部24に室内環境の累積評価値が所定条件を満たすと判定される。このため、制御部25から換気システム16に換気が指示され、換気システム16によってカラオケルームが換気される。
【0042】
換気システム16は、室内環境の累積評価値が「50」の場合に、カラオケルームの広さ等の条件に基づいて、10分間の換気によってカラオケルームから飛沫を除去できる能力を持っている。換気システム16は、室内環境の累積評価値が「50」を超える場合には、室内環境の累積評価値「10」に相当する飛沫を除去するのに2分間の換気の延長を必要とする。室内環境の累積評価値「55」に対応した11分間が経過するまで、換気システム16によってカラオケルームが換気されて、カラオケルームから飛沫が除去される。
【0043】
また、制御部25から換気システム16に換気が指示された場合、更新部26によって室内環境の累積評価値が更新される。換気システム16の換気時間は、上記したように室内環境の累積評価値がリセットされるまで、換気によってカラオケルーム内の室内環境が改善される時間に設定されている。換気時間の経過後に換気によってカラオケルーム内の室内環境が改善されるので、更新部26によって室内環境の累積評価値が「55」から「0」に更新される。室内環境の累積評価値がリセットされた状態で、カラオケ装置10によって楽曲X3のカラオケ演奏が開始される。
【0044】
時刻t6に楽曲X3のカラオケ演奏が終了して、算出部23によって楽曲X3の歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされる。特定歌詞文字の出現回数のカウント値「35」が、楽曲X2のカラオケ演奏の終了時点の室内環境の累積評価値「0」に累積される。室内環境の累積評価値が「35」になるが、室内環境の累積評価値が閾値「50」未満であるため、判定部24に室内環境の累積評価値が所定条件を満たさないと判定される。このため、制御部25から換気システム16に換気が指示されることがなく、室内環境の累積評価値が「35」に維持される。
【0045】
なお、本実施形態においても、換気システム16の動作中もカラオケ演奏が実施されて、カラオケ演奏の終了後に室内環境の評価値が累積されてもよいし、換気システム16の動作中はカラオケ演奏が停止されてもよい。
【0046】
以上、第2実施形態によれば、カラオケルームの飛沫が十分に抑えられるまで換気を実行して、カラオケルームに対してより効果的な感染症対策を実現することができる。
【0047】
<第3実施形態>
図6を参照して、第3実施形態のカラオケ装置30について説明する。
図6は、第3実施形態のカラオケ装置30の機能ブロック図である。なお、第3実施形態のカラオケ装置30は、歌唱音声の入力レベルに応じて室内環境の累積評価値を補正する点で、第1実施形態のカラオケ装置10と相違する。したがって、第3実施形態については、第1実施形態と同様な構成については説明を省略する。
【0048】
図6に示すように、第3実施形態のカラオケ装置30は、第1の実施形態のカラオケ装置10(
図1参照)と略同様に構成されており、カラオケルームの換気の要否を判定可能に構成されている。カラオケ装置30のカラオケ本体31には、記憶部32と、演奏部33と、測定部34と、算出部35と、判定部36と、制御部37と、更新部38とが設けられている。歌唱音声の音量は飛沫の発生量に影響を及ぼすので、測定部34によって歌唱者の歌唱音声が測定されて、算出部35によって歌唱音声の大きさを考慮した室内環境の評価値が算出される。
【0049】
測定部34にはマイクロフォン14から歌唱音声が入力されて、歌唱音声の入力レベルが測定部34に測定される。歌唱音声の入力レベルは、公知の歌唱採点技術を用いて、歌唱の音節(ノート)毎に測定されてもよい。また、測定部34は、歌唱音声中の全ての音節の入力レベルの平均値を算出して、入力レベルの基準値に対する入力レベルの平均値の比率(以下、基準値比とする)を算出する。なお、入力レベルの基準値は、一般的な歌唱者の歌唱音声の入力レベルであり、予め楽曲毎にカラオケ装置30に記憶しておくことができる。
【0050】
算出部35には測定部34から入力レベルの基準値比が入力され、算出部35によって入力レベルの基準値比を用いて室内環境の評価値が補正される。この場合、楽曲の歌詞データの特定歌詞文字の出現回数がカウントされて室内環境の評価値が算出され、この室内環境の評価値に入力レベルの基準値比が乗算されて室内環境の評価値が補正される。
【0051】
例えば、利用者Uの歌唱音声の入力レベルが一般的な歌唱者の歌唱音声の入力レベルよりも大きく、測定部34によって入力レベルの基準値比として「1.15」が算出されたものとする。楽曲Xの歌詞データ内の特定歌詞文字の出現回数から求められた室内環境の評価値は「30」であり、この「30」に「1.15」が乗算されて室内環境の累積評価値が「34.5」に補正される。このように、歌唱者の歌唱音声が比較的大きい場合には、歌詞データ内の特定歌詞文字の出現回数から求めた室内環境の評価値が高くなるように補正される。
【0052】
また例えば、利用者Uの歌唱音声の入力レベルが一般的な歌唱者の歌唱音声の入力レベルよりも小さく、測定部34によって入力レベルの基準値比として「0.95」が算出されたものとする。楽曲Xの歌詞データ内の特定歌詞文字の出現回数から求められた室内環境の評価値は「30」であり、この「30」に「0.95」が乗算されて室内環境の累積評価値が「28.5」に補正される。このように、歌唱者の歌唱音声が比較的小さい場合には、歌詞データ内の特定歌詞文字の出現回数から求めた室内環境の評価値が低くなるように補正される。
【0053】
なお、測定部34は、歌唱音声中の全ての音節の入力レベルの平均値を基準値と比較して基準値比を算出したが、測定部34による入力レベルの基準値比の算出方法は特に限定されない。例えば、測定部34は、ワン・コーラスの音節の入力レベルの平均値を基準値と比較して基準値比を算出してもよいし、歌唱音声中の全ての音節の入力レベルの最大値と最小値の中間値を基準値と比較して基準値比を算出してもよい。
【0054】
以上、第3実施形態によれば、歌唱音声の音量を考慮して、より正確に室内環境の累積評価値を算出することができる。
【0055】
<第4実施形態>
図7を参照して、第4実施形態のカラオケ装置40について説明する。
図7は、第4実施形態のカラオケ装置40の機能ブロック図である。なお、第4実施形態のカラオケ装置40は、歌唱者の人数に応じて室内環境の累積評価値を補正する点で、第1実施形態のカラオケ装置10と相違する。したがって、第4実施形態については、第1実施形態と同様な構成については説明を省略する。
【0056】
図7に示すように、第4実施形態のカラオケ装置40は、第1の実施形態のカラオケ装置10(
図1参照)と略同様に構成されており、カラオケルームの換気の要否を判定可能に構成されている。カラオケ装置40のカラオケ本体41には、記憶部42と、演奏部43と、取得部44と、算出部45と、判定部46と、制御部47と、更新部48とが設けられている。歌唱者の人数は飛沫の発生量に影響を及ぼすので、取得部44によって歌唱者の人数が取得されて、算出部45によって歌唱者の人数を考慮した室内環境の評価値が算出されている。
【0057】
取得部44にはカメラ18から歌唱者の撮影映像が入力されて、同時に歌唱した歌唱者の人数が取得部44に取得される。歌唱者の人数は、撮影映像に対して公知の顔認識処理が施されることで取得されてもよい。例えば、利用者U1、U2がデュエットしており、取得部44によって歌唱者の人数として「2」が取得されたものとする。楽曲Xの歌詞データ内の特定歌詞文字の出現回数から求められた室内環境の評価値は「30」であり、この「30」に「2」が乗算されて室内環境の累積評価値が「60」に補正される。このように、歌唱者の人数に応じて、歌詞データ内の特定歌詞文字の出現回数から求めた室内環境の評価値が高くなるように補正される。
【0058】
なお、取得部44は、撮影映像から歌唱者の人数を取得したが、取得部44による歌唱者の人数の取得方法は特に限定されない。例えば、取得部44は、カラオケ装置40に接続されたマイクロフォン14の本数から歌唱者の人数を取得してもよいし、カラオケ装置40に入力された歌唱音声信号を分析して、同時に歌唱した歌唱者の人数を取得してもよい。
【0059】
以上、第4実施形態によれば、歌唱者の人数を考慮して、より正確に室内環境の累積評価値を算出することができる。
【0060】
また、各実施形態及び変形例では、所定の子音を含む特定歌詞文字として破裂音及び摩擦音を表した歌詞文字を例示したが、特定歌詞文字は適宜変更が可能である。
【0061】
また、各実施形態では、カラオケ装置10、30、40がカラオケコマンダである一例について説明したが、カラオケ装置10、30、40はネットワークを介してサーバに接続された携帯電話等の携帯機器によって構成されてもよい。
【0062】
また、上記した各実施形態及び変形例において、カラオケ装置10、30、40に対してプログラムをインストールすることによって、カラオケ装置10、30、40にカラオケルームの換気の要否の判定機能が追加されてもよい。このプログラムは記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
【0063】
また、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0064】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0065】
10、30、40:カラオケ装置
23、35、45:算出部
24、36、46:判定部
25、37、47:制御部
26、38、48:更新部
16 :換気システム
34 :測定部
44 :取得部