IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エイチアンドエフの特許一覧

特許7418931コンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法
<>
  • 特許-コンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法 図1
  • 特許-コンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法 図2
  • 特許-コンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法 図3
  • 特許-コンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】コンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/08 20060101AFI20240115BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B65G43/08 C
G01B7/00 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020190032
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079075
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2021-08-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000238946
【氏名又は名称】株式会社エイチアンドエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】廣部 伸弘
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-249812(JP,A)
【文献】特開2018-202512(JP,A)
【文献】米国特許第08839949(US,B2)
【文献】特開平07-069429(JP,A)
【文献】特開昭56-023108(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04002724(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/08
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトと、該無端ベルトを案内する上流側案内ローラ及び下流側案内ローラと、走行する前記無端ベルトの任意で設定した点を検出するための上流側検出部及び該上流側検出部の下流側に位置する下流側検出部と、前記上流側案内ローラに取り付けられたエンコーダと、を備えたコンベアのトラッキング補正システムであって、
前記無端ベルトを走行させるための走行指令手段と、
前記上流側検出部による前記任意で設定した点の検出時に該上流側検出部からの第1検出信号を受信し、その受信時における前記エンコーダの第1エンコーダ値を計測し、且つ、前記下流側検出部による前記任意で設定した点の検出時に該下流側検出部からの第2検出信号を受信し、その受信時における前記エンコーダの第2エンコーダ値を計測する計測手段と、
前記第1エンコーダ値及び前記第2エンコーダ値を格納する記憶手段と、
格納された前記第1エンコーダ値及び前記第2エンコーダ値から、前記上流側検出部及び前記下流側検出部の間における前記エンコーダ値の検出部間変位量を算出し、該検出部間変位量と前記上流側検出部及び前記下流側検出部の間の距離とから、スケールファクタを算出する算出手段と、
を有し、
前記コンベアにおいて、案内ローラは、前記上流側案内ローラ及び前記下流側案内ローラに加え、前記無端ベルトの外側に配置され、該無端ベルトの下側部を支持して案内する複数の支持案内ローラを有し、
前記複数の支持案内ローラが互いに等間隔で配置されており、
前記無端ベルトの上側部は、前記上流側案内ローラ及び前記下流側案内ローラに架設されて平坦となっており、下側部は、前記複数の支持案内ローラ同士の間でそれぞれ弛ませた状態が維持されており、
前記無端ベルトの任意で設定した点には搬送物が載置されており、
前記無端ベルトの走行速度は、前記上流側検出部及び前記下流側検出部の間では一定速度であり、
前記任意で設定した点が、前記搬送物を介して、前記上流側検出部及び前記下流側検出部により検出されるものであり、
前記上流側検出部及び前記下流側検出部がいずれも、レーザーが幅方向に照射される反射式レーザーセンサであり、該レーザーが前記搬送物に照射されることにより、前記任意で設定した点が検出されるものであり、
前記第1エンコーダ値の計測、及び、前記第2エンコーダ値の計測は、前記搬送物の1回の搬送で行われるものであり、
前記算出手段において、前記スケールファクタの算出が下記式によるものであり、
Q1=P2-P1(Q1:検出部間変位量、P1:第1エンコーダ値、P2:第2エンコーダ値)
SF=L1/Q1(L1:上流側検出部及び下流側検出部の間の距離、SF:スケールファクタ)
前記算出手段において、前記エンコーダ値の実測変位量に、前記スケールファクタを乗じるトラッキング補正による補正移動量の算出が下記式によるものであり、
L2=Q2×SF(Q2:実測変位量、L2:補正移動量)
前記トラッキング補正による前記補正移動量の算出を繰り返し行うことで、前記無端ベルトの送り量自体を補正せずに、搬送が継続して行われ、
前記補正移動量に基づいて、ロボットが搬送される物体を取り出す、若しくは、搬送される物体に加工を施すものであるコンベアのトラッキング補正システム。
【請求項2】
前記エンコーダが、インクリメンタル型のロータリエンコーダであり、
前記エンコーダ値が、前記上流側案内ローラの回転量が変換されたパルス信号をカウントした値である請求項1記載のコンベアのトラッキング補正システム。
【請求項3】
前記コンベアにおいて、前記無端ベルトの両側に配置された枠体は、前記上流側案内ローラ、前記下流側案内ローラ及び前記複数の支持案内ローラの両端を支持し、且つ、
前記上流側検出部及び前記下流側検出部が搬送方向に沿うように一定の距離をおいて取り付け固定されている請求項記載のコンベアのトラッキング補正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法に関し、更に詳しくは、無端ベルトの送り量に、エンコーダの実測変位量を追従させるためのトラッキング補正システム及びそれを用いてワークを取り出すためのワークの取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を搬送するための搬送装置としては、無端ベルトと、これを案内する案内ローラと、からなるコンベアが知られている。その中でも、例えば、上流側の案内ローラに、無端ベルトの送り量を検出するためのエンコーダが取り付けられたものがある。
このようなコンベアにおいては、エンコーダが、上流側の案内ローラが無端ベルトを送り出す際の回転による変位量を検出することが可能となっている。すなわち、かかるコンベアにおいては、エンコーダの変位量により、無端ベルトの送り量を認識することが可能となっている。
【0003】
ところが、コンベアにおいては、長時間使用すると、無端ベルト自体の伸び、無端ベルトと案内ローラとの間での滑り等に起因するトラッキングズレが生じる恐れがある。
すなわち、実測時において、コンベアにおける無端ベルトの送り量と、それに対応するエンコーダ値の実測変位量とがズレる場合がある。
そうすると、コンベアに搬送される搬送物の実際の位置と、エンコーダの実測変位量に基づく位置情報とにズレが生じるため、コンベアの下流側において、当該位置情報に基づいて、ロボットが搬送物を取り出すことができなくなり、また、搬送物に加工を施すこともできなくなるという事態が生じる。
【0004】
これに対し、従来においては、トラッキングズレが生じた場合、一般に、人為的にベルトの位置、若しくは、エンコーダの変位量の補正を行っていた。
【0005】
ちなみに、他にもズレ対策としては、以下のような技術が知られている。
例えば、ベルト搬送方向にエンコーダスリットを有する無端ベルトと、エンコーダスリットの位置を検知するための位置センサと、無端ベルトの1回転に1回の位置を検出するゼロ点センサと、エンコーダスリットがベルト搬送方向に切れ目があっても、ベルト搬送位置を制御する制御部と、を備えるベルト搬送位置制御方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、タイヤ成型機に搬送するタイヤ部材を搭載したコンベヤを予め走行させて停止させ、実際の停止位置と予め設定された停止位置である設定位置とがずれていた場合には、そのズレ量に基づいて、上記コンベヤの移動機構に取付けられたサーボモータを制御する制御装置に入力される当該コンベヤの原点位置もしくは送り量を再設定するコンベヤの原点位置/送り量の調整方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4234895号公報
【文献】特開2009-34972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来においては、トラッキングズレの補正(以下「トラッキング補正」という。)を人為的に行っていたため、手間がかかると共に、ヒューマンエラーが生じるという欠点があった。
また、上述した特許文献1及び2に記載の方法においては、手間がかかると共に、搬送能力が著しく低下するという欠点がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単にトラッキング補正を行うことができると共に、搬送能力を低下させないコンベアのトラッキング補正システム及びそれを用いたワークの取り出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、上流側検出部及び下流側検出部を一定の距離をおいて配置し、両者が任意の点を検出したときのエンコーダ値の検出部間変位量からスケールファクタを算出し、無端ベルトの送り量は補正せずに、それに対する実測変位量をスケールファクタに基づいて補正することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、(1)無端ベルトと、該無端ベルトを案内する上流側案内ローラ及び下流側案内ローラと、走行する無端ベルトの任意で設定した点を検出するための上流側検出部及び該上流側検出部の下流側に位置する下流側検出部と、上流側案内ローラに取り付けられたエンコーダと、を備えたコンベアのトラッキング補正システムであって、無端ベルトを走行させるための走行指令手段と、上流側検出部による任意で設定した点の検出時に該上流側検出部からの第1検出信号を受信し、その受信時におけるエンコーダの第1エンコーダ値を計測し、且つ、下流側検出部による任意で設定した点の検出時に該下流側検出部からの第2検出信号を受信し、その受信時におけるエンコーダの第2エンコーダ値を計測する計測手段と、第1エンコーダ値及び第2エンコーダ値を格納する記憶手段と、格納された第1エンコーダ値及び第2エンコーダ値から、上流側検出部及び下流側検出部の間におけるエンコーダ値の検出部間変位量を算出し、該検出部間変位量と上流側検出部及び下流側検出部の間の距離とから、スケールファクタを算出する算出手段と、を有し、コンベアにおいて、案内ローラは、上流側案内ローラ及び下流側案内ローラに加え、無端ベルトの外側に配置され、該無端ベルトの下側部を支持して案内する複数の支持案内ローラを有し、複数の支持案内ローラが互いに等間隔で配置されており、無端ベルトの上側部は、上流側案内ローラ及び下流側案内ローラに架設されて平坦となっており、下側部は、複数の支持案内ローラ同士の間でそれぞれ弛ませた状態が維持されており、無端ベルトの任意で設定した点には搬送物が載置されており、無端ベルトの走行速度は、上流側検出部及び下流側検出部の間では一定速度であり、任意で設定した点が、搬送物を介して、上流側検出部及び下流側検出部により検出されるものであり、上流側検出部及び下流側検出部がいずれも、レーザーが幅方向に照射される反射式レーザーセンサであり、該レーザーが搬送物に照射されることにより、任意で設定した点が検出されるものであり、第1エンコーダ値の計測、及び、第2エンコーダ値の計測は、搬送物の1回の搬送で行われるものであり、算出手段において、スケールファクタの算出が下記式によるものであり、
Q1=P2-P1(Q1:検出部間変位量、P1:第1エンコーダ値、P2:第2エンコーダ値)
SF=L1/Q1(L1:上流側検出部及び下流側検出部の間の距離、SF:スケールファクタ)
算出手段において、エンコーダ値の実測変位量に、スケールファクタを乗じるトラッキング補正による補正移動量の算出が下記式によるものであり、
L2=Q2×SF(Q2:実測変位量、L2:補正移動量)
トラッキング補正による補正移動量の算出を繰り返し行うことで、無端ベルトの送り量自体を補正せずに、搬送が継続して行われ、ロボットが搬送される物体を取り出す、若しくは、搬送される物体に加工を施すものであるコンベアのトラッキング補正システムに存する。
【0012】
本発明は、()エンコーダが、インクリメンタル型のロータリエンコーダであり、エンコーダ値が、上流側案内ローラの回転量が変換されたパルス信号をカウントした値である上記(1)記載のコンベアのトラッキング補正システムに存する。
【0013】
発明は、()コンベアにおいて、無端ベルトの両側に配置された枠体は、上流側案内ローラ、下流側案内ローラ及び複数の支持案内ローラの両端を支持し、且つ、上流側検出部及び下流側検出部が搬送方向に沿うように一定の距離をおいて取り付け固定されている上記()記載のコンベアのトラッキング補正システムに存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンベアのトラッキング補正システムにおいて、用いられるコンベアは、無端ベルトと、上流側案内ローラ及び下流側案内ローラと、上流側検出部及び下流側検出部と、エンコーダと、を備えるというシンプルな構成となっており、無端ベルトに特別な加工を施す必要がなく、特別な装置も必要がないので、汎用性に優れるものである。
【0017】
本発明のコンベアのトラッキング補正システムにおいては、上流側検出部及び下流側検出部を一定の距離をおいて配置し、両者が任意の点を検出したときのエンコーダ値の検出部間変位量から、算出手段が、エンコーダ値に対する上記距離の割合であるスケールファクタを算出するので、当該スケールファクタを用いることにより、実測変位量を補正することができる。すなわち、トラッキングズレが生じたとしても、無端ベルトの送り量は補正せずに、エンコーダの実測変位量をそれに合わせる補正をすることができる。
【0018】
このように、上記コンベアのトラッキング補正システムによれば、簡単にトラッキング補正を行うことができるので、位置情報に関して高精度な搬送を行うことができる。また、無端ベルトの送り量は補正しないため、搬送能力を低下させない。
その結果、コンベアの送り量と、エンコーダの実測変位量を補正した補正移動量とが略一致することになるので、その補正移動量に基づいて、高精度で、ロボットが物体を取り出すことが可能となり、また、高精度で、物体に加工を施すことも可能となる。
また、上記トラッキング補正を繰り返すことにより、高精度な搬送を継続して行うことができる。
【0019】
ここで、算出手段による算出は、上記式を用いて行われる。そして、エンコーダ値の実測変位量に、スケールファクタを乗じることにより補正移動量が算出される。
これにより、確実に、上述したトラッキング補正を行うことが可能となる。
【0020】
本発明のコンベアのトラッキング補正システムにおいては、エンコーダとして、インクリメンタル型のロータリエンコーダが好適に用いられる。この場合、エンコーダ値は、上流側案内ローラの回転量が変換されたパルス信号をカウントした値となる。
これにより、上流側案内ローラの回転の度合いは、パルス信号により認識されることとなる。
【0021】
本発明のコンベアのトラッキング補正システムにおいては、無端ベルトの任意で設定した点に搬送物を載置することにより、上流側検出部及び下流側検出部が当該搬送物を検出した位置が上記任意で設定した点となるので、任意で設定した点を容易に検出することが可能となる。
このとき、上流側検出部及び下流側検出部がいずれも、レーザーが幅方向に照射される反射式レーザーセンサであると、搬送物を瞬時に検出できるので、任意で設定した点の検出をより高精度で行うことができる。
【0022】
本発明のワークの取り出し方法は、上述したコンベアのトラッキング補正システムを用い、補正移動量に基づく位置情報により、ロボットにワークを把持させるので、ワークの位置ずれによるエラーが生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態に係るトラッキング補正システムが用いられるコンベアを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムを説明するためのブロック図である。
図3図3は、本実施形態に係るワークの取り出し方法を示すフローチャートである。
図4図4は、本実施形態に係るワークの取り出し方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムは、トラッキングズレの有無に関わらず、実測時のコンベアにおける無端ベルトの送り量に、エンコーダ値の実測変位量を補正することにより追従させるシステムである。
なお、コンベアのトラッキング補正システムによる補正は、段取り替え等の際に定期的に行ってもよく、搬送物の搬送中に連続的に行ってもよい。
【0026】
ここで、本明細書において、「上流」とは、搬送物の搬送方向における上流を意味し、「下流」とは、搬送物の搬送方向における下流を意味する。
また、無端ベルトの「計算上の送り出し量」とは、上流側案内ローラの回転による無断ベルト1の計算上の送り出し量を意味し、無端ベルトの「送り量」とは、無端ベルトの計算上の送り出し量に、トラッキングズレによるズレ量が加わった量を意味する。
また、「エンコーダ値の検出部間変位量」とは、特に上流側検出部と下流側検出部との間におけるエンコーダ値の変位量を意味し、「エンコーダ値の実測変位量」とは、任意で行われる無端ベルトの送り量に対するエンコーダ値の変位量を意味する。すなわち、無端ベルトの送り量に応じて実測変位量は変化する。
【0027】
まず、本実施形態に係るトラッキング補正システムが用いられるコンベアについて説明する。
図1は、本実施形態に係るトラッキング補正システムが用いられるコンベアを模式的に示す斜視図である。
なお、図1のコンベア10は、枠体Fを透過させて示している。
図1に示すように、コンベア10は、無端ベルト1と、該無端ベルト1を案内する複数の案内ローラ2と、走行する無端ベルト1の任意で設定した点Pを検出するための上流側検出部3a及び下流側検出部3bと、上流側の案内ローラ2(以下「上流側案内ローラ2a」ともいう。)に取り付けられたエンコーダEと、下流側の案内ローラ2(以下「下流側案内ローラ2b」ともいう。)に取り付けられたモータMと、案内ローラの両端を支持するための枠体Fとを備える。
そして、無端ベルト1の任意で設定した点Pには直方体状の搬送物Bが載置されている。
【0028】
本実施形態に係るトラッキング補正システムは、これを用いるコンベア10がシンプルな構成となっており、無端ベルトに特別な加工を施す必要がなく、特別な装置も必要がないので、汎用性に優れるものである。
【0029】
コンベア10において、無端ベルト1、並びに、無端ベルト1が架設された上流側案内ローラ2a及び下流側案内ローラ2bの具体例としては、特に限定されないが、例えば、平ベルト及びプーリ、歯付ベルト及び歯付プーリ、チェーン及びスプロケット等の組み合わせで適宜採用することができる。
また、これらの材質については、特に限定されず、金属製であっても樹脂製であってもよい。
【0030】
コンベア10において、無端ベルト1は、側面視で環状である。
ここで、便宜的に、コンベア10の搬送物Bの搬送方向に進行する上側の部分を上側部1aとし、コンベア10の搬送物Bの搬送方向とは反対側に進行する下側の部分を下側部1bとする。
【0031】
無端ベルト1において、上側部1aは、平坦となっており、上面の任意に設定した点Pに搬送物Bを載置した状態で、搬送方向に進行するようになっている。なお、任意で設定した点Pは、無端ベルトの幅方向のX軸及び搬送方向のY軸の値を用いて、上側部1aに適宜設定される。
一方、無端ベルト1の下側部1bは、後述する支持案内ローラ2c同士の間でそれぞれ弛ませた状態を維持しながら、搬送物Bの搬送方向とは反対側に進行するようになっている。
このように、コンベア10においては、無端ベルト1の下側部1bを弛ませた状態とすることで、その自重により、無端ベルト1の上側部1aに張力を付与している。
【0032】
コンベア10において、案内ローラ2は、無端ベルト1の内側に配置された上流側案内ローラ2a及び下流側案内ローラ2bと、無端ベルト1の外側に配置され、無端ベルト1の下側部1bを支持して案内する複数の支持案内ローラ2cとを有する。
すなわち、無端ベルト1は、上流側案内ローラ2a及び下流側案内ローラ2bに架設され、弛ませた下側部1bは、複数の支持案内ローラ2cにより支持されている。
【0033】
コンベア10において、上流側案内ローラ2aには、エンコーダEが取り付けられている。
ここで、エンコーダEとしては、インクリメンタル型のロータリエンコーダを採用している。
この場合、エンコーダEは、上流側案内ローラの回転による機械的な変位をパルス信号に変換するものである。このため、エンコーダEによるエンコーダ値は、そのパルス信号をカウンタでカウントした値となる。
【0034】
コンベア10においては、エンコーダEによるエンコーダ値(パルス信号のカウント数)により、上流側案内ローラ2aの回転量が認識できるようになっている。
すなわち、エンコーダ値から、上流側案内ローラ2aの回転量を算出でき、当該回転量から、無端ベルト1の任意で設定した点の計算上の送り出し量を算出することが可能となっている。
【0035】
コンベア10において、下流側案内ローラ2bには、モータM及び減速ギア(図示しない)が取り付けられている。
すなわち、下流側案内ローラ2bは、モータM及び減速ギアを内蔵する、いわゆる駆動ローラとなっている。
これにより、コンベア10においては、無端ベルト10が駆動され、回転することになる。
【0036】
コンベア10において、支持案内ローラ2cは、上流側案内ローラ2aと下流側案内ローラ2bとの間で互いに等間隔となるように複数が配設されている。
そして、上述したように、無端ベルト1の下側部1bは、隣り合う支持案内ローラ2c同士の間で弛んだ状態となっている。なお、下側部1bを弛ませる箇所は、支持案内ローラ2c同士の間の1箇所であっても、全ての箇所であってもよい。
【0037】
コンベア10において、枠体Fは、無端ベルト1の両側に配置される。
枠体Fは、案内ローラ2(上流側案内ローラ2a、下流側案内ローラ2及び支持案内ローラ2c)の両端を支持している。
また、枠体Fには、2基の検出部が搬送方向に沿うように取り付け固定されている。
すなわち、枠体Fに一方の検出部(以下「上流側検出部3a」という。)が取り付け固定され、当該上流側検出部3aの下流側に一定の距離L1をおいて他方の検出部(以下「下流側検出部3b」という。)が取り付け固定されている。
【0038】
コンベア10において、上流側検出部3a及び下流側検出部3bとしては、いずれも、レーザーが搬送方向に直交する幅方向に照射される反射式レーザーセンサを採用している。
このため、上流側検出部3aは、任意に設定した点Pに載置された搬送物Bが搬送され、上流側検出部3aに到達すると、レーザーが搬送物に照射されることにより、搬送物Bを瞬時に検出することが可能となっている。
同様に、下流側検出部3bは、任意に設定した点Pに載置された搬送物Bが搬送され、下流側検出部3bに到達すると、レーザーが搬送物に照射されることにより、搬送物Bを瞬時に検出することが可能となっている。
【0039】
搬送物Bは、無端ベルト1の任意で設定した点Pに載置される。
なお、搬送物Bが載置された位置を任意で設定した点Pとしてもよい。
これにより、無端ベルト1に任意で設定した点Pが、搬送物Bを介して、上流側検出部3a及び下流側検出部3bにより検出されることになる。その結果、任意で設定した点Pを容易に検出することが可能となる。
【0040】
かかる搬送物Bの形状は、特に限定されないが、上流側検出部3a及び下流側検出部3bによる検出のし易さの観点から、直方体状であることが好ましい。
また、搬送物Bは、実際に加工を施す若しくは施された加工品であってもよい。
【0041】
次に、上述したコンベア10を用いたトラッキング補正システムについて説明する。
図2は、本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムを説明するためのブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係るコンベア10のトラッキング補正システムTは、無端ベルトを走行させるための走行指令手段T1と、検出部による検出時に検出信号を受信し、その受信時におけるエンコーダのエンコーダ値を計測する計測手段T2と、エンコーダ値を格納する記憶手段T3と、格納されたエンコーダ値から、上流側検出部及び下流側検出部の間におけるエンコーダ値の検出部間変位量を算出し、該検出部間変位量と上流側検出部及び下流側検出部の間の距離とから、スケールファクタを算出する算出手段T4と、を有する。
【0042】
なお、コンベア10のトラッキング補正システムTは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、外部記憶装置、入力部及び出力部を備える通常のコンピュータを用いて行われる。
【0043】
走行指令手段T1は、無端ベルト1を搬送方向に走行させる走行指令を発信する。
このときの無端ベルト1の具体的な走行速度は、特に限定されないが、少なくとも、上流側検出部3a及び下流側検出部3bの間では略一定速度であることが好ましい。
走行指令手段T1が走行指令を発信すると、当該走行指令に基づいて、コンベア10のモータMは、下流側案内ローラ2bを回転させる。これにより、無端ベルト1が回転し、無端ベルト1の上側部1aが搬送方向に走行することになる。
また、走行指令手段T1は、無端ベルト1の回転を停止させる際には、停止指令を発信する。
これにより、モータMは、下流側案内ローラ2bの回転を停止させる。
【0044】
計測手段T2は、上流側検出部3aが、搬送される搬送物B(任意に設定した点P)を検出した時に、当該上流側検出部3aからの検出信号(以下「第1検出信号」という。)を受信する。
そして、第1検出信号の受信時におけるエンコーダEのエンコーダ値(以下「第1エンコーダ値」という。)を計測する。
また、その後、計測手段T2は、下流側検出部3bが、搬送される搬送物B(任意に設定した点P)を検出した時に、当該下流側検出部3bからの検出信号(以下「第2検出信号」という。)を受信する。
そして、第2検出信号の受信時におけるエンコーダEのエンコーダ値(以下「第2エンコーダ値」という。)を計測する。
すなわち、計測手段T2は、上流側検出部3a及び下流側検出部3bが搬送物Bを検出した時点でのエンコーダ値をそれぞれ計測する。
なお、第1エンコーダ値の計測、及び、第2エンコーダ値の計測は、搬送物Bの1回の搬送で行われる。
【0045】
記憶手段T3は、少なくとも、計測手段T2が計測した第1エンコーダ値及び第2エンコーダ値を格納する。
なお、格納された第1エンコーダ値及び第2エンコーダ値は、表示手段により表示することも可能である。
【0046】
算出手段T4は、記憶手段T3に格納された第1エンコーダ値及び第2エンコーダ値を呼び出し、これらから、上流側検出部3a及び下流側検出部3bの間におけるエンコーダ値の検出部間変位量を算出する。
すなわち、第1エンコーダ値をP1、第2エンコーダ値をP2とした場合、検出部間変位量Q1は、
Q1=P2-P1
により算出される。
【0047】
また、当該検出部間変位量と、上流側検出部及び下流側検出部の間の距離とから、スケールファクタを算出する。
すなわち、上流側検出部3aと下流側検出部3bとの間の距離をL1とした場合、スケールファクタSFは、
SF=L1/Q1
により算出される。すなわち、スケールファクタSFは、1カウント当たりの距離(送り量)として算出される。なお、トラッキングズレが生じた場合、距離L1は一定であるものの、第1エンコーダ値P1及び第2エンコーダ値P2が変化するため、スケールファクタSFも変化することになる。
【0048】
そして、得られたスケールファクタSFを用いて、エンコーダEの実測変位量を補正する。
無端ベルト1を任意の送り量となるように送り出した場合、それに対するエンコーダ値の実測変位量に、スケールファクタを乗じることにより、補正移動量を算出する。
すなわち、実測変位量をQ2とした場合、補正移動量L2は、
L2=Q2×SF
により算出される。
得られる補正移動量L2は、上述した無端ベルト1の任意の送り量に相当する。
【0049】
このように、コンベア10のトラッキング補正システムTにおいては、無端ベルト1の任意の送り量を、補正移動量L2として算出することで、トラッキング補正を行っている。
この場合トラッキングズレが生じたとしても、無端ベルトの送り量自体は補正しないため、搬送能力を低下させない。
また、搬送される搬送物の位置を高精度で認識できるため、ロボットが物体を取り出すことが可能となり、また、物体に加工を施すことも可能となる。
また、上記トラッキング補正を繰り返すことにより、高精度な搬送を継続して行うことができる。
【0050】
次に、上述したコンベア10のトラッキング補正システムを用いたワークの取り出し方法について説明する。
図3は、本実施形態に係るワークの取り出し方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態に係るワークの取り出し方法は、搬送ステップS1と、取出しステップS2と、載置ステップS3とを備える。
これらのステップを経ることにより、搬送されるワークを確実に取り出すことができる。
なお、ワークは、ロボットが把持可能であれば、平板状であっても、立体形状であってもよい。
【0051】
図4は、本実施形態に係るワークの取り出し方法を説明するための説明図である。
図4に示すように、ワークの取り出し方法においては、まず、無端ベルト1上に配置されたワークWを取り出し位置X1まで搬送する(搬送ステップS1)。
このとき、搬送ステップS1においては、上述したトラッキング補正システムが用いられる。
したがって、搬送されるワークWの位置情報として、エンコーダEによる実測変位量を補正した補正移動量が得られる。
【0052】
次に、取り出し位置X1まで搬送されたワークWをロボットRが把持して取り出す(取出しステップS2)。
このとき、取出しステップS2においては、ロボットに設定されたワークを把持する位置が補正移動量に基づくものとなっている。すなわち、補正移動量に基づく位置情報により、ロボットRにワークWを把持させる。
これにより、ワークの取り出し方法においては、長時間使用し、仮にトラッキングズレが生じたとしても、ワークの位置ずれによる取り出しエラーが生じることを防止することができる。
また、ワークの取り出し方法においては、搬送能力も低下させない。
【0053】
そして、ロボットRがワークWを載置部X2に載置することにより、ワークWが取り出される(載置ステップS3)。
ここで、載置部X2としては、リフターを採用している。
したがって、リフター上にワークが重ねて載置されることにより、いわゆるスタックSが形成される。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0055】
本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムにおいては、コンベア10のベルトとして、無端ベルト1を採用しているが、これに限定されず、直線状のベルトを採用することも可能である。
なお、トラッキングズレは、無端ベルト1のほうが生じ易い。
【0056】
本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムにおいては、無端ベルト1の下側部1bを弛ませた状態とすることで、その自重により、無端ベルト1の上側部1aに張力を付与しているが、張力を付与することが可能であれば、この構成に限定されない。
例えば、無端ベルト1の下側部1bを弛ませず、無端ベルト1を案内する張力調整ローラを取り付け、当該張力調整ローラを動かすことにより、無端ベルト1に張力を付与してもよい。
【0057】
本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムにおいては、エンコーダEとして、インクリメンタル型のロータリエンコーダを採用しているが、これに限定されず、アブソリュート型のロータリエンコーダを採用することも可能である。
【0058】
本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムにおいては、枠体Fに、2基の検出部が搬送方向に沿うように取り付け固定されているが、検出部を取り付け固定するものは枠体Fに限定されない。コンベア10とは別体の部品等に取り付け固定して設置することも可能である。
【0059】
本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムにおいては、上流側検出部3a及び下流側検出部3bとして、いずれも、レーザーが搬送方向に直交する幅方向に照射される反射式レーザーセンサを採用しているが、これに限定されず、監視カメラ、光電センサ等を採用することも可能である。
【0060】
本実施形態に係るコンベアのトラッキング補正システムにおいては、スケールファクタSFは、1カウント当たりの距離としているが、1カウント当たりの時間とすることも可能である。
但し、この場合、搬送速度を一定とし、上流側検出部と下流側検出部との間の搬送に要する時間を設定する必要がある。
【0061】
本実施形態に係るワークWの取り出し方法においては、ロボットRがワークを取り出しているが、ロボットRの代わりに、直行型クランプ装置(ガントリー)等を採用することも可能である。
【0062】
本実施形態に係るワークWの取り出し方法においては、載置部として、リフターを採用しているが、リフターの代わりに、固定式テーブル、パレット、別の搬送装置等を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のコンベアのトラッキング補正システムは、搬送物を搬送するコンベアに対して用いられる。
本発明のコンベアのトラッキング補正システムによれば、簡単にトラッキング補正を行うことができると共に、搬送能力を低下させない。
【符号の説明】
【0064】
1・・・無端ベルト
10・・・コンベア
1a・・・上側部
1b・・・下側部
2・・・案内ローラ
2a・・・上流側案内ローラ
2b・・・下流側案内ローラ
2c・・・支持案内ローラ
3a・・・上流側検出部
3b・・・下流側検出部
B・・・搬送物
E・・・エンコーダ
F・・・枠体
L1・・・距離
M・・・モータ
P・・・任意で設定した点
R・・・ロボット
S1・・・搬送ステップ
S2・・・取出しステップ
S3・・・載置ステップ
T・・・トラッキング補正システム
T1・・・走行指令手段
T2・・・計測手段
T3・・・記憶手段
T4・・・算出手段
X1・・・取り出し位置
X2・・・載置部
W・・・ワーク
図1
図2
図3
図4