(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】耐塩素堅牢性布帛及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 31/04 20190101AFI20240115BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240115BHJP
D06M 15/423 20060101ALI20240115BHJP
D06P 1/18 20060101ALI20240115BHJP
D06P 1/20 20060101ALI20240115BHJP
D06P 3/54 20060101ALI20240115BHJP
D06P 3/82 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A41D31/04 D
A41D31/00 503G
D06M15/423
D06P1/18
D06P1/20
D06P3/54 Z
D06P3/82 E
(21)【出願番号】P 2017064945
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2020-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】三谷 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 洸一
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】金丸 治之
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243002(JP,A)
【文献】特開昭62-54762(JP,A)
【文献】特開2010-144279(JP,A)
【文献】特開2007-177350(JP,A)
【文献】特開2010-255139(JP,A)
【文献】特開2004-137628(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/120702(JP,A1)
【文献】特開平11-61656(JP,A)
【文献】特開平11-158402(JP,A)
【文献】特開平9-176971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/00 -31/32
D06P 1/00 - 7/00
D06M 13/00 -15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有し、
前記ポリエステル繊維が、ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料で染色され、
前記セルロース繊維が、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、及びアントラキノンチアゾール系スレン染料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料で染色され、且つ
濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になる、耐塩素堅牢性布帛。
【請求項2】
前記セルロース繊維が架橋されている、請求項1に記載の耐塩素堅牢性布帛。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耐塩素堅牢性布帛を含む、ユニフォーム素材。
【請求項4】
塩素漂白を行う作業者用のユニフォーム素材である、請求項3に記載のユニフォーム素材。
【請求項5】
ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有する布帛に対して、
ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料によるポリエステル繊維の染色、並びに
アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、及びアントラキノンチアゾール系スレン染料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料によるセルロース繊維の染色を行
い、
濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になる耐塩素堅牢性布帛を製造する、
耐塩素堅牢性布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素漂白等に使用される高濃度の塩素と接触しても変色が抑制できる耐塩素堅牢性布帛、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウィルス、細菌、カビ等の病原菌による感染予防のために、例えば介護、食品製造、医療、または清掃等においては、機器、備品、作業台、または汚物処理装置等に塩素漂白が実施されている。塩素漂白処理は、次亜塩素酸ナトリウムとアルカリ化合物との混合溶液をスプレー等で対象物に噴霧したり、又は当該混合溶液に対象物を浸漬したりして作業している。こうした現状の中で、介護、食品製造、医療、または清掃等に用いられるユニフォームの布帛に対しては、飛散した塩素に曝されても変色の少ない(即ち、耐塩素堅牢性に優れる)ことが要望されている。
【0003】
従来、繊維製品に耐塩素堅牢性を向上させる技術について種々提案さている。例えば、特許文献1には、セルロース系繊維の耐塩素堅牢性向上剤として、多塩基酸で調整されたポリアルキレン水溶液を用いることが提案されている。特許文献2には、セルロース系繊維の耐塩素堅牢性を向上させる方法として、エチレンチオ尿素とアミノプラスト系薬剤とで処理する方法が提案されている。特許文献3には、カチオン染料可染ポリエステル繊維の耐塩素堅牢性を向上させる方法として、ベンゾフェノン系化合物で処理する方法が提案されている。特許文献4には、繊維表面にヒドラジン系化合物とバインダーを被膜形成する塩素堅牢度向上繊維構造物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-194188号公報
【文献】特許昭63-309681号公報
【文献】特許第3253369号公報
【文献】特開2005-290611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、水道水中の活性塩素の影響による染色物の変色現象は、染料が塩素により変褪色しており、塩素の持つ酸化作用が原因の複雑な分解反応で、染料のアミノ基やアゾ基が破壊され、染料の持つ色素母体自体が破壊されることにより色の変色や濃度低下が起こしていると考えられている。一方、水道水やプールに含まれる数10ppmの塩素濃度を想定した環境では、これまでのポリエステルに染められた分散染料では変色や褪色を起こす事がなかった。また、還元/酸化工程を経て染色されるスレン染料は、セルロース系繊維の染色において基本的に直接染料、反応染料の水溶性染料より塩素堅牢度は高く変色や褪色を起こす事がなかった。しかしながら、介護、食品製造、医療、清掃等の現場では、塩素漂白の作業を行う際に、漂白用次亜塩素酸ナトリウムを原液又は高濃度のまま塗り付け放置することがあり、このような状況では、分散染料やスレン染料といえども塩素による変色を起こしてしまう。
【0006】
そのため、特許文献1~4の技術でも、耐塩素堅牢性を十分に高めることができず、比較的低濃度の塩素との接触に対する耐性を付与できるに止まっていた。実際、特許文献1~4の技術では、水道水やプールに含まれる塩素に対する堅牢性を向上させることが可能であっても、塩素漂白等に使用される高濃度の塩素との接触に対する耐性は不十分である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、塩素漂白等に使用される高濃度の塩素と接触しても変色を抑制でき、優れた耐塩素堅牢性を有する布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になる布帛は、前記課題を解決でき、塩素漂白等に従事する者のユニフォーム素材として好適に使用できることを見出した。また、本発明者等は、ポリエステル系繊維とセルロース繊維を含む混用布帛であって、当該ポリエステル繊維が特定の分散染料で染色されてなり、且つ当該セルロース繊維が特定のスレン染料で染色されている布帛は、格段に優れた耐塩素堅牢性を有していることをも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になる、耐塩素堅牢性布帛。
項2. ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有する、項1に記載の耐塩素堅牢性布帛。
項3. 前記ポリエステル繊維が、ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料で染色され、且つ
前記セルロース繊維が、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アシルアミノアントラキノン系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、アントラキノンチアゾール系スレン染料、ペンザントロン系スレン染料、ピラントロン系スレン染料、及びアントラキノンアクリドン系染スレン料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料で染色されている、項2に記載の耐塩素堅牢性布帛。
項4. 前記セルロース繊維が架橋されている、項2又は3に記載の耐塩素堅牢性布帛。
項5. 項1~4のいずれかに記載の耐塩素堅牢性布帛を含む、ユニフォーム素材。
項6. 塩素漂白を行う作業者用のユニフォーム素材である、項5に記載のユニフォーム素材。
項7. ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有し、
前記ポリエステル繊維が、ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料で染色され、且つ
前記セルロース繊維が、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アシルアミノアントラキノン系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、アントラキノンチアゾール系スレン染料、ペンザントロン系スレン染料、ピラントロン系スレン染料、及びアントラキノンアクリドン系染スレン料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料で染色されている、耐塩素堅牢性布帛。
項8. ポリエステル繊維及びセルロース繊維を含有する布帛に対して、
ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料によるポリエステル繊維の染色、並びに
アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アシルアミノアントラキノン系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、アントラキノンチアゾール系スレン染料、ペンザントロン系スレン染料、ピラントロン系スレン染料、及びアントラキノンアクリドン系染スレン料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料によるセルロース繊維の染色を行う、耐塩素堅牢性布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐塩素堅牢性布帛は、優れた耐塩素堅牢性を有しており、塩素漂白液と直接接触しても、変色を抑制し、優れた外観を維持することができる。また、本発明の耐塩素堅牢性布帛の一態様では、ポリエステル繊維とセルロース繊維を含み、且つアミノ基やアゾ基を守る立体位置にバルキーな置換基が導入されている特定の分散染料と特定のスレン染料による染色が施されていることによって、飛躍的に耐塩素堅牢性を高めることができているので、塩素漂白を行う作業者用のユニフォーム素材として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の耐塩素堅牢性布帛は、濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後の変色が、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)で3級以上になることを特徴とする。以下、本発明の耐塩素堅牢性布帛について詳述する。
【0012】
[耐塩素堅牢性]
本発明の耐塩素堅牢性布帛は、下記塩素接触試験における判定結果が3級以上になる。本発明の耐塩素堅牢性布帛は、このような耐塩素堅牢性を有しているので、塩素漂白等に使用される高濃度の塩素と接触しても変色を抑制することが可能になる。より優れた耐塩素堅牢性を具備させるという観点から、下記塩素接触試験における判定結果として、好ましくは4級又は5級、更に好ましくは5級になるものが挙げられる。このような耐塩素堅牢性を具備させるには、後述するように、布帛に含まれる繊維の種類に応じて特定の染料を選択して繊維を染色すればよい。
【0013】
(塩素接触試験)
濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置後に、当該次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を滴下した布帛部位の変色の程度を変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)を用いて等級判定する。具体的には、塩素接触試験は下記手順に従って行うことができる。
(1)試験対象となる布帛を10cm×10cmに裁断し、試験片とする。
(2)次亜塩素酸ナトリウムを5質量%含み、pHが14である水溶液を準備し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液とする。次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHを14に調整するには、水酸化ナトリウムを用いて行う。なお、濃度5質量%且つpH14の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液は、花王株式会社製の衣料用「ハイター」等として市販されており、市販品を使用してもよい。
(3)試験片に次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置する。
(4)次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液の滴下から24時間後にJIS L0217-103法に準じて1回の洗濯を施し、十分に風乾する。
(5)風乾した試験片の次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液を滴下した部位の色を、変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)を用いて等級判定し、5級(良好)~1級(不良)に分類する。
【0014】
なお、前記塩素接触試験で使用される次亜塩素酸ナトリウム濃度水溶液は、市販塩素系漂白剤を0~5倍程度希釈した塩素漂白液が想定されており、前記塩素接触試験において3級以上に分類される布帛は、介護、食品製造、医療、清掃等の現場での漂白処理作業時に塩素漂白液が付着しても、変色を抑制できると考えられる。
【0015】
[耐塩素堅牢性布帛の形成に使用される糸]
本発明の耐塩素堅牢性布帛の形成に使用される糸の構成繊維の種類については、前記耐塩素堅牢性を具備できることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維等が挙げられる。これらの繊維は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の繊維を用いる場合には、交撚、混紡、混繊、交織、交編する等の方法を用いることができる。
【0016】
ポリエステル繊維の構成樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエステル繊維は、長繊維又は短繊維のいずれであってもよく、適宜に選択することができる。また、ポリエステル繊維の単糸繊度については、特に制限されないが、例えば、0.6~4.2dtexが挙げられる。ポリエステル繊維の断面形状は特に制限されるものでなく、また、ポリエステル繊維中には、二酸化チタン、二酸化ケイ素、顔料等の添加剤が含まれていてもよい。
【0017】
セルロース繊維は、βグルコース分子の縮合体からなり、立体構造を有し逆配置になる2個のグルコースユニットを繰り返した構造を持った高分子の繊維である。セルロース繊維は、天然植物繊維であってもよく、また、木材、綿、竹等を溶解した後に繊維化させた再生繊維であってもよい。セルロース繊維としては、具体的には、綿、麻等の天然植物繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート等の再生繊維が挙げられる。これらの中でも、好ましくは天然植物繊維、更に好ましくは綿が挙げられる。また、セルロース繊維の単糸繊度については、特に制限されず、適宜に選択することができる。
【0018】
ポリアミド系繊維の構成樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。アクリル系繊維の構成樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリアクリルニトリル等が挙げられる。ポリウレタン系繊維の構成樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0019】
これらの繊維の中でも、前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、好ましくはポリエステル繊維とセルロース繊維の組み合わせが挙げられる。ポリエステル繊維とセルロース繊維を組み合わせて使用する場合、ポリエステル繊維とセルロース繊維を用いて、交撚、混紡、混繊、交織、又は交編すればよいが、好ましくは、ポリエステル繊維とセルロース繊維を含む混紡糸を使用することが挙げられる。また、ポリエステル繊維とセルロース繊維を含む混紡糸を使用する場合、布帛の経糸及び緯糸の双方に当該混紡糸を使用してもよく、また、布帛の経糸及び緯糸のいずれか一方に当該混紡糸を使用し、他方に当該混紡糸以外の糸(例えば、ポリエステル繊維からなる糸等)を使用してもよい。
【0020】
本発明の耐塩素堅牢性布帛の形成において、ポリエステル繊維とセルロース繊維を使用する場合、これらの繊維の混率(質量比率)については、特に制限されないが、例えば、ポリエステル繊維/セルロース繊維の混率として、95/5~10/90、好ましくは80/20~20/80、更に好ましくは75/25~25/75が挙げられる。
【0021】
本発明の耐塩素堅牢性布帛の形成に使用される糸の太さについては、特に制限されないが、例えば、短繊維からなる糸であれば、10~100番手であることが好ましく、長繊維からなる糸であれば、総繊度で50~300dtexであることが好ましい。
【0022】
[耐塩素堅牢性布帛の組織]
本発明の耐塩素堅牢性布帛は、織物又は編物のいずれであってもよい。
【0023】
織物としては、例えば、平織組織、綾織組織、朱子組織等の織組織が挙げられる。これらの織物は、エアージェット織機、ウォーターフェット織機、レピア織機、フライシャトル織機等を使用することによって得ることができる。
【0024】
また、編物としては、例えば、天竺、鹿の子、スムース等の編組織が挙げられる。これらの網組織は、丸編機、経編機等を使用することによって得ることができる。
【0025】
本発明の耐塩素堅牢性布帛の目付については、特に制限されず、布帛の組織、糸の番手等に応じて適宜設定すればよい。
【0026】
[耐塩素堅牢性の付与]
本発明の耐塩素堅牢性布帛において、前記耐塩素堅牢性を具備させるための手段については、特に制限されず、使用する糸の構成繊維の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、ポリエステル繊維とセルロース繊維を使用する場合であれば、(i)ポリエステル繊維をピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料で染色し、且つ(ii)セルロース繊維を、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アシルアミノアントラキノン系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、アントラキノンチアゾール系スレン染料、ペンザントロン系スレン染料、ピラントロン系スレン染料、及びアントラキノンアクリドン系染スレン料よりなる群から選択される少なくとも1種のスレン染料で染色する方法が挙げられる。ポリエステル繊維とセルロース繊維を組み合わせて使用する場合には、このように特定の分散染料と特定のスレン染料を使用して染色したものを使用することによって、布帛に前記耐塩素堅牢性を具備させ、塩素漂白液が付着しても変色を抑制することが可能になる。以下、ポリエステル繊維とセルロース繊維を組み合わせて使用する場合に、染色に使用される分散染料及びスレン染料について説明する。
【0027】
(分散染料)
ポリエステル繊維の染色に使用される分散染料は、ピリドンアゾ系分散染料及び/又はアントラキノン系分散染料である。
【0028】
ピリドンアゾ系分散染料としては、具体的には、下記一般式(1)に示す化合物(黄色分散染料)が挙げられる。
【化1】
【0029】
一般式(1)において、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、スルホニルオキシ基、又はカルボニル基を示す。ここで、ハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、低級アルコキシ基としては、具体的には、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられる。スルホニルオキシ基としては、具体的には、基-O-S(=O)-O-R4(R4は、置換されていてもよいフェニル基である)が挙げられる。カルボニル基としては、具体的には、基-CO-R5(R5は、置換されていてもよいフェニル基である)が挙げられる。ここで、R4及びR5における置換されていてもよいフェニル基とは、フェニル基、置換基(炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等)を1~3個有するフェニル基等が挙げられる。
【0030】
前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、一般式(1)におけるR1及びR2として、好ましくは水素原子又はスルホニルオキシ基、更に好ましくは水素原子又は基-O-S(=O)-O-R4(R4はフェニル基)が挙げられる。
【0031】
一般式(1)において、R3は、水素原子、又はアルキル基を示す。ここで、アルキル基としては、具体的には、炭素数1~3個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、好ましくはメチル基が挙げられる。
【0032】
一般式(1)に示す化合物の中でも、前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、好ましくは、R
1が水素原子、R
2がスルホニルオキシ基、且つR
3が炭素数1~3個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である化合物;更に好ましくは下記一般式(1a)に示す化合物[一般式(1)において、R
1が水素原子、R
2が基-O-S(=O)-O-R
4(R
4はフェニル基)、且つR
3がメチル基である化合物]が挙げられる。
【化2】
【0033】
ピリドンアゾ系分散染料は、Huntsman Japan株式会社製の「Terasil Yellow W-6GS」(一般式(1a)に示す化合物の染料)等が市販されており、本発明では、市販品のピリドンアゾ系分散染料を使用することができる。
【0034】
ポリエステル繊維の染色において、これらのピリドンアゾ系分散染料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
アントラキノン系分散染料としては、具体的には、下記一般式(2)に示す化合物(赤色分散染料)及び下記一般式(3)に示す化合物(青色分散染料)が挙げられる。
【化3】
【化4】
【0036】
一般式(2)において、R6は、置換されていてもよいフェニル基である。ここで、R6における置換されていてもよいフェニル基とは、置換基(炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等)を1~3個有するフェニル基等が挙げられる。
【0037】
一般式(2)に示す化合物の中でも、前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、好ましくは下記一般式(2a)に示す化合物[一般式(2)において、R
6がフェニル基である化合物]が挙げられる。
【化5】
【0038】
一般式(3)において、Yは、酸素原子、硫黄原子、又はイミノ基である。前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、一般式(3)におけるYとして、好ましくは酸素原子が挙げられる。
【0039】
一般式(3)において、R7は、低級アルコキシアルキル基、低級アルコキシアルコキシアルキル基、低級アルコキシカルボニルアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル基である。
【0040】
ここで、低級アルコキシアルキル基における低級アルキル部分としては、具体的には炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のもの、好ましくは炭素数2~4の直鎖状のもの、更に好ましくは炭素数3の直鎖状のものが挙げられる。また、低級アルコキシアルコキシアルキル基における低級アルコキシ部分を構成するアルキル部分としては、具体的には炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のもの、好ましくは炭素数1~3の直鎖状のもの、更に好ましくはメチル基が挙げられる。低級アルコキシアルキル基の好適な具体例として、基-(CH2)n-O-(CH2)m-CH3(nは1~5、好ましくは2~4、更に好ましくは2又は3;mは0~4、好ましくは0~2、更に好ましくは0又は1)が挙げられる。
【0041】
前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、一般式(3)におけるR7として、好ましくは低級アルコキシアルキル基、更に好ましくは基-(CH2)n-O-(CH2)m-CH3(nは1~5、mは0~4)、特に好ましくはメトキシプロピル基(-C3H6OCH3)又はエトキシエチル基(-C2H4OC2H3)が挙げられる。
【0042】
一般式(3)に示す化合物の中でも、前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、好ましくは、Yが酸素原子、且つR
7が低級アルコキシアルキル基である化合物;更に好ましくは、下記一般式(3a)に示す化合物[一般式(3)において、Yが酸素原子、且つR
7がメトキシプロピル基である化合物]が挙げられる。
【化6】
【0043】
アントラキノン系分散染料としては、Dyestar株式会社製の「Dianix Red FB」(一般式(2a)に示す化合物の染料)、「Dianix Blue BG」(一般式(3a)に示す化合物の染料)等が市販されており、当該市販品を使用することができる。
【0044】
ポリエステル繊維の染色において、これらのアントラキノン系分散染料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
ポリエステル繊維の染色では、ピリドンアゾ系分散染料及びアントラキノン系分散染料の中から、1種の分散染料を選んで単独で使用してもよく、また2種以上の分散染料を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
(スレン染料)
セルロース繊維の染色に使用されるスレン染料は、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アシルアミノアントラキノン系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、アントラキノンチアゾール系スレン染料、ペンザントロン系スレン染料、ピラントロン系スレン染料、及びアントラキノンアクリドン系染スレン料よりなる群から選択される少なくとも1種である。このように特定のスレン系染料を選択してセルロース繊維を染色することによって、前記耐塩素堅牢性を好適に具備させることが可能になる。なお、スレン染料としては、インダントロン系スレン染料が汎用されているが、インダントロン系スレン染料では、還元能が強すぎるため、前記耐塩素堅牢性を具備させることができない。
【0047】
アントラキノンカルバゾール系スレン染料としては、具体的には、下記一般式(4)に示す化合物が挙げられる。下記一般式(4)に示す化合物からなるアントラキノンカルバゾール系スレン染料は、例えば、Dyestar株式会社製の「Indanthrene Yellow 3R」として市販されており、本発明では当該市販品を使用することができる。
【化7】
【0048】
アシルアミノアントラキノン系スレン染料としては、具体的には、下記一般式(5)に示す化合物が挙げられる。下記一般式(5)に示す化合物からなるアシルアミノアントラキノン系スレン染料は、例えば、Dyestar株式会社製の「Indanthrene Red 5GK」として市販されており、本発明では当該市販品を使用することができる。
【化8】
【0049】
アントラキノンオキサゾール系スレン染料としては、具体的には、下記一般式(6)に示す化合物が挙げられる。下記一般式(6)に示す化合物からなるアントラキノンオキサゾール系スレン染料は、例えば、Dyestar株式会社製の「Indanthrene Red FBB」として市販されており、本発明では当該市販品を使用することができる。
【化9】
【0050】
アントラキノンチアゾール系スレン染料としては、具体的には、下記一般式(7)に示す化合物が挙げられる。下記一般式(7)に示す化合物からなるアントラキノンチアゾール系スレン染料は、例えば、Dyestar株式会社製の「Indanthrene Blue CLB」として市販されており、本発明では当該市販品を使用することができる。
【化10】
【0051】
ペンザントロン系スレン染料としては、具体的には、下記一般式(8)に示す化合物が挙げられる。下記一般式(8)に示す化合物からなるペンザントロン系スレン染料は、例えば、Dyestar株式会社製の「Indanthrene Direct Black RB」として市販されており、本発明では当該市販品を使用することができる。
【化11】
【0052】
ピラントロン系スレン染料としては、具体的には、下記一般式(9)に示す化合物が挙げられる。下記一般式(9)に示す化合物からなるピラントロン系スレン染料は、例えば、Dyestar株式会社製の「Indanthrene Brilliant Green FFB」として市販されており、本発明では当該市販品を使用することができる。
【化12】
【0053】
アントラキノンアクリドン系スレン染料としては、具体的には、下記一般式(10)に示す化合物が挙げられる。下記一般式(10)に示す化合物からなるアントラキノンアクリドン系スレン染料は、例えば、Dyestar株式会社製の「Indanthrene Red Violet RRK」として市販されており、本発明では当該市販品を使用することができる。
【化13】
【0054】
セルロース繊維の染色において、これらのスレン染料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのスレン系染料の中でも、前記耐塩素堅牢性を好適に具備させるという観点から、好ましくは、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、アシルアミノアントラキノン系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、アントラキノンチアゾール系スレン染料、及びペンザントロン系スレン染料;更に好ましくは、アントラキノンカルバゾール系スレン染料、ペンザントロン系スレン染料、アントラキノンオキサゾール系スレン染料、及びアントラキノンチアゾール系スレン染料が挙げられる。
【0055】
[セルロース繊維の架橋処理]
本発明の耐塩素堅牢性布帛において、前記特定のスレン染料で染色されたセルロース繊維が含まれる場合、染色されたセルロース繊維は架橋処理が施されていることが好ましい。染色されたセルロース繊維は架橋処理を施すことによって、セルロース繊維を疎水化して塩素の浸透を効果的に防御することが可能になるので、耐塩素堅牢性をより一層向上させることができる。
【0056】
セルロース繊維の架橋処理とは、セルロースに対して結合する樹脂(架橋剤)を使い、セルロース繊維内の隣り合う分子鎖の間を架橋することである。
【0057】
セルロース繊維の架橋処理に使用可能な樹脂(架橋剤)の種類については、特に制限されないが、例えば、メチロールエチレン尿素、メチロールトリアゾン、メチロールウロン、メチロールプロピレン尿素、メチロールグリオキザールモノウレイン、メチロールグリオキザールジウレイン等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
セルロース繊維の架橋処理に使用可能な樹脂は、三木理研工業株式会社製の「リケンレジンRG-286」、「リケンレジンRG-115E」、「リケンレジンMS-296」、DIC北日本ポリマ株式会社製の「ベッカミンNS-11」、「ベッカミンNS-19」等が市販されており、本発明では、これらの市販品を使用することができる。
【0059】
[用途]
本発明の耐塩素堅牢性布帛は、塩素が接触しても変色を抑制できるので、塩素との接触が懸念される介護用作業服、食品製造用作業服、清掃用作業服等の作業服のユニフォーム素材として使用できる。
【0060】
特に、本発明の耐塩素堅牢性布帛は、塩素漂白液が付着しても変色を抑制することができるので、塩素漂白を行う作業者用のユニフォーム素材としてとりわけ好適である。
【0061】
[製造方法]
本発明の耐塩素堅牢性布帛の製造方法については、前記耐塩素堅牢性を具備する布帛を製造できることを限度として特に制限されず、使用する糸の構成繊維の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0062】
以下、ポリエステル繊維とセルロース繊維を組み合わせて、本発明の耐塩素堅牢性布帛を製造する場合であれば、ポリエステル繊維とセルロース繊維を含む布帛に対して、前記分散染料によるポリエステル繊維の染色と、前記スレン染料によるセルロース繊維の染色とを行えばよい。
【0063】
また、染色処理に供される布帛は、必要に応じて、精練、糊抜き、精練、漂白、プレセット等の染色前処理を施しておいてもよい。
【0064】
ポリエステル繊維及びセルロース繊維の染色は、連続染色法、バッチ染色法等の公知の方法で行うことができる。
【0065】
連続染色法は、一般的なサーモゾル・パッドスチームプロセスで行えば良く、例えば、分散染料とスレン染料を同浴でパディングしサーモゾル後、ケミカルパッド、スチーミング、酸化を行う1浴2段染法であってもよく、また、分散染料をまずパディングしサーモゾル後、スレン染料をパディングしケミカルパッド、スチーミング、酸化を行う2浴2段染法で行ってもよい。
【0066】
ここで、サーモゾルとは、分散染料をパディングし乾燥後、乾熱高温処理することによってポリステル繊維を染色することを意味する。ケミカルパッドとは、スレン染料を還元するための苛性ソーダ、ハイドロサルファイト溶液を布帛にパディングする工程であり、スチーミングはスレン染料をロイコ化合物としてセルロース繊維に吸着させる工程であり、酸化はスレン染料を酸化して不溶化する工程である。ここでの温度、時間、薬剤濃度等の条件は、付与すべき耐塩素堅牢性の程度、色相、色濃度等に応じて適宜設定すればよい。
【0067】
また、バッチ染色は、液流染色機、高温ジッガー染色機、ビーム染色機等の染色機を用いて行うことができる。バッチ染色の場合には、例えば、布帛のポリエステル繊維を前記分散染料で染色した後、セルロース繊維を前記スレン染料で染色すればよい。前記分散染料によるポリエステル繊維の染色は、130~135℃の温度条件で行うことが好ましく、処理時間、浴比等の条件は、付与すべき耐塩素堅牢性の程度等に応じて適宜設定すればよい。セルロース繊維の染色は、スレン染料を苛性ソーダ、ハイドロサルファイト溶液でスレン染料をロイコ化合物としてセルロース繊維に吸着させた後、酸化すればよく、温度、薬剤濃度、処理時間等の条件は、付与すべき耐塩素堅牢性の程度、色相、色濃度等に応じて適宜設定すればよい。
【0068】
また、セルロース繊維に架橋処理を施す場合には、分散染料及びスレン染料にて染色された布帛に対して、パディング法で樹脂(架橋剤)液とそれを反応させるための触媒を布帛に配し、乾燥後にテンター等の熱処理機で乾熱処理して樹脂とセルロース繊維との反応を完了させればよい。乾熱処理条件は、例えば、温度150~160℃、時間2~3分が挙げられる。なお、樹脂をパディングする際に、柔軟剤、消臭剤、抗菌剤等の加工剤を併用してもよい。また、架橋後には、必要に応じて、サンフォライズ等の物理加工を行ってもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例に従って本発明を具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されて解釈されるものではない。本発明の実施例における測定方法、又は評価方法は、以下の通りである。
【0070】
1.布帛の製造
実施例1
経糸及び緯糸にポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維/綿の混率(質量比)65/35の34番双糸の混紡糸を用い、経糸密度113本/2.54cm、緯糸密度54本/2.54cmの綾織物を製織し、通常の方法で糊抜き精練漂白を行った。得られた綾織物について、以下に示す条件で、分散染料によるポリエステルの染色及びスレン染料による綿の染色を、それぞれ別浴で染色する2浴2段法の連染法で行った。
【0071】
先ず、パッダー、乾燥機、及びサーモゾル機を有する連続装置のサーモゾル染色機(株式会社山東鐵工所製)を使用し、綾織物中のポリエステルを下記条件で染色した。綾織物を下記処方1に示す分散染料液に含浸した後、マングルで60質量%の絞り率で絞り、その後、130℃で60秒間乾燥し、200℃で90秒間の乾熱処理でサーモゾルを行った。続いて、オープンソーパー(株式会社山東鐵工所製)を使用して、還元洗浄、ソーピング、及び湯洗を行った後、130℃で60秒間乾燥し、ポリエステルが染色された綾織物を得た。
【0072】
<処方1:分散染料液>
・Dianix Red FB 20g/l
(Dyestar株式会社製アントラキノン系分散染料;前記一般式(2a)で示される化合物の分散染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【0073】
次に、前記サーモゾル染色機のパッダー及び乾燥機を使用し、ポリエステルが染色された綾織物に含まれる綿を下記条件で染色した。ポリエステルが染色された綾織物を下記処方2に示すスレン染料液に含浸した後、マングルで60質量%の絞り率で絞り、130℃で60秒間乾燥させた。続いて、パッダー、スチーマー、酸化、ソーパー、及び乾燥機を有するパッドスチーム染色機(株式会社山東鐵工所製)を使用し、下記処方3に示す還元浴に含浸した後、マングルで60質量%の絞り率で絞り、100℃で30秒間スチーム処理した。その後常温で過酸化水素10cc/lの浴に含浸して30秒間酸化処理を行った後に、ソーピングを行い、130℃で60秒間乾燥することにより、ポリエステル及び綿が染色された綾織物を得た。
【0074】
<処方2:スレン染料液>
・Indanthrene Red FBB 20g/l
(Dyestar株式会社製アントラキノンオキサゾール系スレン染料;前記一般式(6)で示される化合物のアントラキノンオキサゾール系スレン染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【0075】
<処方3:還元浴>
・ハイドロサルファイト 30g/l
・カセイソーダ 60g/l
【0076】
次に、ポリエステル及び綿が染色された綾織物に対して、綿を構成しているセルロース繊維の架橋処理を行った。具体的には、下記処方4に示す架橋処理液を、ポリエステル及び綿が染色された綾織物に浸漬した後、マングルにて絞り率60%で絞り、ネット乾燥機にて130℃×2分の乾燥を行った。更にテンター(市金工業社株式会社製)にて160℃×2分の熱処理を行い、架橋処理が施された綾織物を得た。
<処方4:架橋処理液>
・リケンレジンMS-150 40g/l
(三木理研工業株式会社製 グリオキザール樹脂 固形分60%)
・リケンフィクサーMX-27 12g/l
(三木理研工業株式会社製 複合金属塩 固形分35%)
【0077】
更に、架橋処理が施された綾織物に対して、サンフォライズ(サンフォライズ社株式会社製)にて、シリンダー温度120℃、追い込み率2%で機械的防縮処理を行い、布帛を得た。
【0078】
実施例2
処方1の分散染料液を下記処方5の分散染料液に変更し、且つ処方2のスレン染料液を下記処方6のスレン染料液に変更したこと以外は、実施例1と全く同一方法で布帛を製造した。
【0079】
<処方5:分散染料液>
・Dianix Blue BG 20g/l
(Dyestar株式会社製アントラキノン系分散染料;前記一般式(3a)で示される化合物の分散染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【0080】
<処方6:スレン染料液>
・Indanthrene Blue CLB 20g/l
(Dyestar株式会社製アントラキノンチアゾール系スレン染料;前記一般式(7)で示される化合物のスレン染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【0081】
実施例3
処方1の分散染料液を下記処方7の分散染料液に変更し、且つ処方2のスレン染料液を下記処方8のスレン染料液に変更する以外したこと以外は、実施例1と全く同一方法で布帛を製造した。
【0082】
<処方7>
・Terasil Yellow W-6GS 20g/l
(Huntsman Japan株式会社製ピリドンアゾ系分散染料;前記一般式(1a)で示される化合物の分散染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【0083】
<処方8>
・Indanthrene Yellow 3R 20g/l
(Dyestar株式会社製アントラキノンカルバゾール系スレン染料;前記一般式(4)で示される化合物のスレン染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【0084】
実施例4
架橋処理を行わなかったこと以外は、実施例1と全く同一方法でと全く同一方法で布帛を製造した。
【0085】
実施例5
経糸にポリエステルマルチフィラメント加工糸167dtex/48fを用い、緯糸にポリエステル/綿の混率(質量比)65/35の23番単糸の混紡糸を用い、経糸密度119本/2.54cm、緯糸密度58本/2.54cmの綾織物を製織し、通常の方法で糊抜き精練漂白を行った。得られた綾織物について、以下に示す条件で、分散染料によるポリエステルの染色及びスレン染料による綿の染色を、それぞれ別浴で液流染色機によるバッチ染色法で行った。
【0086】
下記処方9に示す分散染料液を用い、液流染色機(サーキュラーCUT-MF;株式会社日阪製作所製)にて、温度135℃、時間30分、浴比(綾織物:分散染料液の質量比)1:20の条件で、綾織物を染色し、ポリエステルが染色された綾織物を得た。
<処方9>
・Dianix Red FB 1%o.m.f
(Dyestar株式会社製アントラキノン系分散染料;前記一般式(2a)で示される化合物の分散染料)
・ニッカサンソルトSN-250E 0.5g/l
(日華化学株式会社製:分散剤)
・酢酸(48%) 0.1g/l
【0087】
次に、前記液流染色機を使用し、ポリエステルが染色された綾織物に含まれる綿を下記条件で染色した。なお、綿の染色は、染色機内の空気を窒素置換した状態で行った。下記処方10に示すスレン染料液を用い、前記液流染色機にて、温度60℃、時間60分、浴比(綾織物:分散染料液の質量比)1:20の条件で、ポリエステルが染色された綾織物を染色し、公知の条件で酸化、ソーピング、水洗を行った後、130℃で60秒間乾燥することにより、ポリエステル及び綿が染色された綾織物を得た。
<処方10:スレン染料液>
・Indanthrene Red FBB 1%o.m.f
(Dyestar株式会社製アントラキノンオキサゾール系スレン染料;前記一般式(6)で示される化合物のスレン染料)
・ハイドロサルファイト 3g/l
・カセイソーダ 6g/l
無水芒硝 10g/l
【0088】
次いで、実施例1と同条件の架橋処理を行い、布帛を得た。
【0089】
比較例1
処方1の分散染料液を前記処方5の分散染料液に変更したこと以外は、実施例1と同条件でポリエステルが染色された綾織物を得た。
【0090】
次いで、実施例1で用いたサーモゾル染色機のパッダー及び乾燥機を使用し、ポリエステルが染色された綾織物に含まれる綿を染色した。具体的には、ポリエステルが染色された綾織物を下記処方11に示す反応染料液に含浸した後、マングルで60質量%の絞り率で絞り、130℃で60秒間乾燥させた。続いて、パッダー、スチーマー、ソーパー、及び乾燥機を有するパッドスチーム染色機(株式会社山東鐵工所製)を使用し、下記処方12に示す還元浴に含浸した後、マングルで60質量%の絞り率で絞り、100℃で30秒間スチーム処理した。更に、ソーピングを行い、130℃で60秒間乾燥することにより、ポリエステル及び綿が染色された綾織物を得た。
<処方11:反応染料液>
・Remazol Brilliant Blue RN 20g/l
(Dyestar株式会社製アントラキノン系反応染料;下記一般式(11)に示す化合物のアントラキノン系反応染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
・ポリミンLニュー(日本化薬社製)(還元防止剤) 10g/l
【化14】
<処方12>
・カセイソーダ 10g/l
・無水芒硝 250g/l
【0091】
次いで、実施例1と同条件の架橋処理、及び機械的防縮処理を行い、布帛を得た。
【0092】
比較例2
処方6のスレン染料液を下記処方13のスレン染料液に変更したこと以外は、実施例2と全く同一方法で布帛を得た。
<処方13:スレン染料液>
・Indanthrene Blue BC 20g/l
(Dyestar株式会社製インダントロン系スレン染料;下記一般式(12)に示す化合物のスレン染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【化15】
【0093】
比較例3
処方7の分散染料液を下記処方14の分散染料液に変更したこと以外は、実施例3と全く同一方法で布帛を得た。
<処方14:分散染料液>
・Sumikaron Yellow SE-5G 20g/l
(住友ケムテックス(株)製ニトロ系分散染料;下記一般式(13)に示す化合物の分散
染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
【化16】
【0094】
比較例4
処方8のスレン染料液を下記処方15の反応染料液に変更し、且つ、架橋処理を行わなかったこと以外は、比較例3と同一の方法で布帛を得た。
<処方15:反応染料液>
・Remazol Yellow GR 20g/l
(Dyestar株式会社製ピアゾロンアゾ系反応染料;下記一般式(14)に示す化合物の反応染料)
・アルギン酸ソーダ (マイグレーション防止剤) 1g/l
・ポリミンLニュー(日本化薬社製) (還元防止剤) 10g/l
【化17】
【0095】
2.布帛の耐塩素堅牢性の評価
前記で得られた各布帛を10cm×10cmに裁断して試験片とした。試験片に、5質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム含有、pH14;花王株式会社製の衣料用「ハイター」)を0.2ml滴下し、25℃で24時間放置した後に、JIS L0217-103法に準じて1回の洗濯を施した。その後、十分に風乾して、各試験片の変色状態を変退色用グレースケール(JIS L 0804:2004)を用いて等級判定した。判定結果は、5級(良好)~1級(不良)に分類した。
【0096】
得られた結果を表1に示す。この結果、実施例1~5の布帛は、判定結果が4級以上であり、塩素漂白液と接触しても変色が抑制され、優れた耐塩素堅牢性を有していることが明らかとなった。特に、セルロース繊維に架橋処理を施した実施例1~3及び5の布帛は、判定結果が5級であり、格段に優れた耐塩素堅牢性を有していた。また、本結果から、ポリエステル繊維とセルロース繊維を含む混紡糸で形成された布帛に対して、特定の分散染料によるポリエステル繊維の染色と、特定のスレン染料によるセルロース繊維の染色とを行うことによって、優れた耐塩素堅牢性を付与できることも確認された。
【0097】